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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】垂直離着陸エアモビリティ
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/22 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
B64C27/22
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020148372
(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公開番号】P2021109645
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0001066
(32)【優先日】2020-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 根 硯
(72)【発明者】
【氏名】全 賢 雨
(72)【発明者】
【氏名】朴 世 桓
(72)【発明者】
【氏名】金 宰 亨
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109263949(CN,A)
【文献】国際公開第2018/217667(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0337614(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0092461(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭乗空間及び搭乗口を有する胴体と、
胴体に設けられた翼と、
翼に設けられた複数のローターで構成され、複数のローターのうち、一部のローターは胴体のリフティングまたはクルージングのために上方または下方への傾動が可能なティルティングローターであり、ティルティングローターを除いた残りのローターは胴体のリフティングのためのリフティングローターであり、ティルティングローターは少なくとも4つのローターで構成され、胴体の中心を基準に左側と右側にそれぞれ少なくとも2つずつ配置され、リフティングローターは2つ以上設けられることにより、一部のローターの故障でも残りのローターによって飛行制御が安定的に行われるようにするローターユニットと、
を含み、
翼は主翼、及び主翼よりも長さが短い尾翼で構成され、主翼の前方には2つのティルティングローターと2つのリフティングローターが横方向に整列するように配置され、主翼の後方には2つのリフティングローターが設けられ、尾翼には2つのティルティングローターが設けられ、主翼の後方のリフティングローターと尾翼のティルティングローターは横方向に整列するように配置されることを特徴とする垂直離着陸エアモビリティ。
【請求項2】
ティルティングローターは、偶数個のローターで構成され、胴体の中心を基準に左側と右側にそれぞれ同じ個数で配置されたことを特徴とする請求項1に記載の垂直離着陸エアモビリティ。
【請求項3】
リフティングローターは、少なくとも4つのローターで構成され、胴体の中心を基準に左側と右側にそれぞれ少なくとも2つずつ配置されたことを特徴とする請求項1に記載の垂直離着陸エアモビリティ。
【請求項4】
ティルティングローターは、胴体に近接して設けられた近接ティルティングローター、及び胴体から遠く離隔して設けられた離隔ティルティングローターで構成され、近接ティルティングローターは、胴体よりも上方に離れて配置されたことを特徴とする請求項1に記載の垂直離着陸エアモビリティ。
【請求項5】
リフティングローターのうちの少なくとも一つのローターは二葉プロペラ型であることを特徴とする請求項1に記載の垂直離着陸エアモビリティ。
【請求項6】
リフティングローターは、未作動時に飛行抵抗を最小限に抑えるために停止することを特徴とする請求項1に記載の垂直離着陸エアモビリティ。
【請求項7】
リフティングローターは、クルージング時に飛行抵抗を最小限に抑えるために停止することを特徴とする請求項1に記載の垂直離着陸エアモビリティ。
【請求項8】
リフティングローターは、未作動時に飛行抵抗を最小限に抑えるために停止し、飛行方向と並んだ方向に整列することを特徴とする請求項5に記載の垂直離着陸エアモビリティ。
【請求項9】
リフティングローターのうちの二葉プロペラ型ローターは、上部プロペラと下部プロペラの2つのプロペラが備えられたことを特徴とする請求項5に記載の垂直離着陸エアモビリティ。
【請求項10】
ーターユニットは主翼と尾翼に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の垂直離着陸エアモビリティ。
【請求項11】
ィルティングローターは主翼の両側の最外側に配置されたことを特徴とする請求項10に記載の垂直離着陸エアモビリティ。
【請求項12】
2つのティルティングローター、及び主翼の後方側に配置された2つのリフティングローターは主翼の両側の最外側に配置されたことを特徴とする請求項10に記載の垂直離着陸エアモビリティ。
【請求項13】
尾翼に設けられた2つのティルティングローターは、胴体よりも上方に離れて配置されたことを特徴とする請求項10に記載の垂直離着陸エアモビリティ。
【請求項14】
尾翼は胴体の上部から上方に傾くように延び、ティルティングローターは尾翼の最外側に設けられたことを特徴とする請求項10に記載の垂直離着陸エアモビリティ。
【請求項15】
主翼のティルティングローターは主翼の最外側に設けられ、尾翼のティルティングローターは胴体と主翼の後方のリフティングローターとの間に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の垂直離着陸エアモビリティ。
【請求項16】
リフティングローターは、胴体に近接して設けられた近接リフティングローター、及び胴体から遠く離隔して設けられた離隔リフティングローターで構成され、近接リフティングローターは、胴体に近い側が上方を向くようにプロペラが傾いたことを特徴とする請求項1に記載の垂直離着陸エアモビリティ。
【請求項17】
搭乗口は、胴体の側面に設けられ、胴体に近接して配置されたリフティングローター及びティルティングローターの下部空間を介して搭乗者が搭乗口に達することが可能な近接空間を形成することを特報とする請求項1に記載の垂直離着陸エアモビリティ。
【請求項18】
搭乗空間及び搭乗口を有する胴体と、
胴体に設けられた翼と、
翼に設けられた複数のローターで構成され、複数のローターのうち、一部のローターは胴体のリフティングまたはクルージングのために上方または下方への傾動が可能なティルティングローターであり、ティルティングローターを除いた残りのローターは胴体のリフティングのためのリフティングローターであり、ティルティングローターは少なくとも4つのローターで構成され、胴体の中心を基準に左側と右側にそれぞれ少なくとも2つずつ配置され、リフティングローターは2つ以上設けられることにより、一部のローターの故障でも残りのローターによって飛行制御が安定的に行われるようにするローターユニットと、
を含み、
リフティングローターは、胴体に近接して設けられた近接リフティングローター、及び胴体から遠く離隔して設けられた離隔リフティングローターで構成され、近接リフティングローターは、胴体に近い側が上方を向くようにプロペラが傾いたことを特徴とする垂直離着陸エアモビリティ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直離着陸エアモビリティに関し、より詳細には、垂直離着陸が可能で、複数のローターが効果的に配置でき、一部ローターの故障への対応が容易で、騒音/振動への対応に効果的に可能で、搭乗の便宜性が増大できる垂直離着陸エアモビリティに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、都心の環境汚染と交通問題によりエアモビリティへの関心が増大している。エアモビリティは、都市の交通難を解消し且つ環境汚染を低減させることができる効果的な移動手段として脚光を浴びている。このようなエアモビリティには、個人または複数の搭乗者が搭乗でき、都心での離着陸が可能で、垂直離着陸機能が備えられる。また、搭乗者の利便性のために乗り降りが有利で、ローターの作動による騒音及び振動を考慮して設計されるが、特に、搭乗者の安全を確保する必要があるため、一部のローターの故障でも残りのローターによる飛行が可能である技術的な解決案が望ましい。
【0003】
ところが、従来のエアモビリティ技術は、ローターの個数が限定的であって、一部のローターの故障時に飛行バランスを取り難い構造であり、乗り降り及び騒音/振動の問題が全く考慮されていないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2018-0334251号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、その目的は、垂直離着陸が可能で、複数のローターが効果的に配置でき、一部ローターの故障への対応が容易で、騒音/振動への対応が容易で、搭乗の便宜性が増大できる垂直離着陸エアモビリティを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による垂直離着陸エアモビリティは、搭乗空間及び搭乗口を有する胴体と、胴体に設けられた翼と、翼に設けられた複数のローターで構成され、複数のローターのうち、一部のローターは胴体のリフティングまたはクルージングのために上方または下方への傾動が可能なティルティングローターであり、ティルティングローターを除いた残りのローターは胴体のリフティングのためのリフティングローターであり、ティルティングローターは少なくとも4つのローターで構成され、胴体の中心を基準に左側と右側にそれぞれ少なくとも2つずつ配置され、リフティングローターは2つ以上設けられることにより、一部のローターの故障でも残りのローターによって飛行制御が安定的に行われるようにするローターユニットと、を含むことを特徴とする。
【0007】
ティルティングローターは、偶数のローターで構成され、胴体の中心を基準に左側と右側にそれぞれ同じ個数で配置される。
【0008】
リフティングローターは、少なくとも4つのローターで構成され、胴体の中心を基準に左側と右側にそれぞれ少なくとも2つずつ配置される。
【0009】
ティルティングローターは、胴体に近接して設けられた近接ティルティングローター、及び胴体から遠く離隔して設けられた離隔ティルティングローターで構成され、近接ティルティングローターは、胴体よりも上方に離れて配置される。
【0010】
リフティングローターのうちの少なくとも一つのローターは、二葉プロペラ型にできる。
【0011】
リフティングローターは、未作動時に飛行抵抗を最小限に抑えるために停止することができる。
【0012】
リフティングローターは、クルージング時に飛行抵抗を最小限に抑えるために停止することができる。
【0013】
リフティングローターは、未作動時に飛行抵抗を最小限に抑えるために停止し、飛行方向と並んだ方向に整列される。
【0014】
リフティングローターのうちの二葉プロペラ型ローターは、上部プロペラと下部プロペラの2つのプロペラが備えられる。
【0015】
翼は主翼と尾翼で構成され、ローターユニットは主翼と尾翼に設けられる。
【0016】
主翼には2つのティルティングローター及び2つ以上のリフティングローターが設けられ、ティルティングローターは主翼の両側の最外側に配置される。
【0017】
主翼には2つのティルティングローターと4つのリフティングローターが設けられ、2つのティルティングローターと2つのリフティングローターは主翼の前方側に配置され、残りの2つのリフティングローターは主翼の後方側に配置される。
【0018】
2つのティルティングローター、及び主翼の後方側に配置された2つのリフティングローターは、主翼の両側の最外側に配置される。
【0019】
尾翼には2つのティルティングローターが設けられる。
【0020】
尾翼に設けられた2つのティルティングローターは、胴体よりも上方に離れて配置される。
【0021】
尾翼は胴体の上部から上方に傾くように延び、ティルティングローターは尾翼の最外側に設けられる。
【0022】
翼は主翼、及び主翼よりも長さが短い尾翼で構成され、主翼の前方には2つのティルティングローターと2つのリフティングローターが横方向に整列するように配置され、主翼の後方には2つのリフティングローターが設けられ、尾翼には2つのティルティングローターが設けられ、主翼の後方のリフティングローターと尾翼のティルティングローターは、横方向に整列するように配置される。
【0023】
主翼のティルティングローターは主翼の最外側に設けられ、尾翼のティルティングローターは胴体と主翼の後方のリフティングローターとの間に配置される。
【0024】
リフティングローターは、胴体に近接して設けられた近接リフティングローター、及び胴体から遠く離隔して設けられた離隔リフティングローターで構成され、近接リフティングローターは、胴体に近い側が上方を向くようにプロペラが傾くことができる。
【0025】
搭乗口は、胴体の側面に設けられ、胴体に近接して配置されたリフティングローター及びティルティングローターの下部空間を介して搭乗者が搭乗口に達することが可能な近接空間を形成することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の垂直離着陸エアモビリティによれば、垂直離着陸が可能で、複数のローターを効果的に配置したので、一部ローターの故障への対応が容易であり、騒音/振動への対応に効果的であるうえ、搭乗の便宜性が増大できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による垂直離着陸エアモビリティの斜視図である。
図2】本発明による垂直離着陸エアモビリティのリフティング状態を示す平面図である。
図3】本発明による垂直離着陸エアモビリティのクルージング状態を示す平面図である。
図4】本発明による垂直離着陸エアモビリティのリフティング状態を示す正面図である。
図5】本発明による垂直離着陸エアモビリティの近接空間を示す図である。
図6】本発明による垂直離着陸エアモビリティの飛行計画を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照して、本発明による垂直離着陸エアモビリティの実施例を詳しく説明する。
【0029】
本発明の垂直離着陸エアモビリティは、代表的には、個人または多数の搭乗者が都心で活用できるUAM(Urban Air Mobility)を挙げることができ、UAMに限定されるものではなく、ドローンなどを含む様々な有人/無人の垂直離着陸が必要な飛行体を含む概念である。本発明の代表的な実施形態は、UAMについて取り扱っている。UAM用エアモビリティの場合、都心での乗り降りが速くて便利にするため、ローターの配置及び設計が重要である。また、搭乗者は、タクシーなどの楽な乗り心地を希望するため、騒音及び振動に対しても設計が必要であり、都心での離着陸が必要なことから、垂直離着陸機能が必須的に備えられる。特に、多数の搭乗者が頻繁に利用するので、事故を未然に防止する必要がある。そのため、複数のローターを設けるが、複数のローターの一部が故障した場合、残りのローターによって飛行のバランス制御が可能とする。そして安全に目的地または修理工場まで到着した後は、整備がよく行われるようにして最大限に乗客の安全を保障する。
【0030】
本発明は、このような多目的機能を備えたエアモビリティを提供するものであって、図1は本発明の一実施形態に係る垂直離着陸エアモビリティの斜視図、図2は本発明の一実施形態に係る垂直離着陸エアモビリティのリフティング状態を示す平面図、図3は本発明の一実施形態に係る垂直離着陸エアモビリティのクルージング状態を示す平面図、図4は本発明の一実施形態に係る垂直離着陸エアモビリティのリフティング状態を示す正面図である。
【0031】
本発明に係る垂直離着陸エアモビリティは、搭乗空間及び搭乗口を有する胴体100と、胴体100に設けられた翼300、500と、翼300、500に設けられた複数のローターから構成され、複数のローターのうち、一部のローターは胴体100のリフティングまたはクルージングのために上方または下方への傾動が可能なティルティングローターT1~T4であり、ティルティングローターT1~T4を除いた残りのローターは胴体のリフティングのためのリフティングローターL1~L4であり、ティルティングローターT1~T4は少なくとも4つのローターからなり、胴体の中心を基準に左側と右側にそれぞれ少なくとも2つずつ配置され、リフティングローターL1~L4は2つ以上設けられることにより、一部のローターの故障でも残りのローターを用いて飛行制御が安定的に行われるようにするローターユニットT1~T4、L1~L4と、を含んでなる。
【0032】
図示の如く、本発明のエアモビリティは、胴体100と翼300、500から構成され、胴体100には搭乗者が多数搭乗できる。図示した実施形態の場合、ドライバーを除く合計4人の搭乗が可能である。また、垂直離着陸と水平クルージングのために多数のローターが設けられる。複数のローターのうち、一部のローターは、胴体のリフティング又はクルージングのために上方または下方への傾動が可能なティルティングローターT1~T4であり、ティルティングローターを除く残りのローターは、胴体100のリフティングのためのリフティングローターL1~L4である。
【0033】
本発明のエアモビリティは、電気動力を使用するDEP(distributed electric propulsion)分散電気推進eVTOL(electric vertical takeoff and landing)であって、電気動力垂直離着陸飛行体への適用時に非常に有用である。それぞれのローターは、単一または複数の電気モータで駆動され、図1に示すように、モータに電気エネルギーの供給のために胴体の下部および/または胴体内部の搭乗シートの下部および/または胴体から尾翼を向いて後方に延びた延長部の内部にバッテリーBを装着する。
【0034】
また、乗り場における胴体の支持及び地上移動のために、図4に示すように、胴体の下部に独立した動力駆動が可能なホイールWが提供される。ホイールWは、独立したモータを備えて、地上ではまるで車両と一緒に胴体を移動できる。乗り場では、安全のためにローターの駆動による胴体の移動が困難であるため、このように独立したホイールを介してエアモビリティの駐車または出車または移動が必要である。また、ティルティングローターT1~T4には、クルージングの際に十分な推進力を提供することができるように、五葉プロペラ型の適用が望ましい。
【0035】
ティルティングローターT1~T4は、プロペラを回転させる構成に加えて、ローター自体を傾動させるための別途のアクチュエータが設けられる。このようなティルティングアクチュエータに対して様々な手段が知られており、詳細な説明は省略する。ティルティングローターT1~T4は、上方への傾動時には地面と略水平関係をなしてリフティングローターL1~L4と一緒にリフティングの役割を果たす。ティルティングローターT1~T4がその状態で下方に回転する場合には、胴体の正面を眺めるようにして胴体の飛行乃至クルージング時に推力を発生させる。
【0036】
また、胴体100は、飛行時に揚力の発生が必要であるが、これをティルティングローターT1~T4によって実現し、必要に応じて揚力を補強するために、リフティングローターL1~L4が一緒に作動することも可能である。そのような場合は、離着陸前後に胴体の速度が速くないため十分な揚力が確保されない場合を代表的な例として挙げることができる。また、リフティングのためにティルティングローターT1~T4の容量またはパワーを増大させる場合には、追ってのクルージングの際にティルティングローターT1~T4による騒音/振動が過多であるという問題が発生するので、ティルティングローターT1~T4の容量とパワーはリフティングとクルージングのための程度に最小化し、リフティングの際に十分な揚力を形成するものはリフティングローターL1~L4を別途設けて対応するようにする。
【0037】
このような点において、本発明の好適な実施形態は、図示の如く、主翼300に6つのローターを構成し、尾翼500に2つのローターを構成する6+2構造を提案するものである。主翼300に取り付けられる6つのローターのうち、4つのローターはリフティングローターL1~L4、2つのローターはティルティングローターT1、T2にして、搭乗空間に近い主翼300でのクルージング時の騒音/振動を最小限に抑え、搭乗空間から遠い尾翼500に残りの2つのティルティングローターT3、T4を設置する。
【0038】
ティルティングローターT1~T4は、偶数個のローターで構成され、胴体の中心を基準に左側と右側にそれぞれ同じ個数で配置できる。つまり、普段のバランス制御のためにはティルティングローターが偶数個で設けられ、左右両側に同じ個数でティルティングローターT1~T4が配置されることが望ましい。また、リフティングローターL1~L4も、図示されているように、少なくとも4つのローターL1、L2、L3、L4で構成され、胴体100の中心を基準に左側と右側にそれぞれ少なくとも2つずつ配置される。リフティングローターL1~L4も、偶数個で設けられる場合、バランス制御の面で有利である。ティルティングローターT1~T4とリフティングローターL1~L4の中からいずれか一つのローターでも故障した場合、他のリフティングローターとティルティングローターを介してリフティング時のバランス制御が容易であり、よって、ホバリングや過渡区間のようにリフティングが必要な時点で十分な揚力を提供して胴体のバランス制御が容易である。これにより緊急事態での制御が可能となる。
【0039】
一方、ティルティングローターT1~T4は、胴体100に近接して設けられた近接ティルティングローターT3、T4、及び胴体100から遠く離隔して設けられた離隔ティルティングローターT1、T2で構成され、近接ティルティングローターT3、T4は、胴体100よりも上方に離れて配置される。この場合は図2及び図4を参照して把握することができる。実施形態の場合、ティルティングローターT1~T4は、合計4つが設けられるが、これらのうち、2つが主翼300に、2つが尾翼500にそれぞれ設けられる。ティルティングローターが主翼300に設けられる場合には、もしティルティングローターが胴体100に近く配置されると、クルージング時に持続的な騒音/振動を誘発するので、NVHの面で悪影響があって乗り心地を阻害させる。よって、主翼300に設置されるティルティングローターT1、T2の場合には、最大限に胴体100から遠く離れて配置することが望ましい。
【0040】
尾翼500にも2つのティルティングローターT3、T4が設けられる。この場合、尾翼500が主翼300よりも短い長さを有するため、尾翼500の端にティルティングローターT3、T4を設ける場合でも、胴体100とはある程度近接するしかなくなる。よって、この場合には、ティルティングローターT3、T4を胴体100よりも上方に配置することにより、騒音/振動による影響を最小限に抑えるようにする。特に胴体100に近いローターは、乗客が胴体に乗り降りする場合において不便であり、頭をぶつかるなどの事故が発生するので、胴体100に近いティルティングローターT3、T4は、できる限り上方に配置することにより、図4に示すように乗客よりも上方に位置して乗り降りのための近接空間を形成する。このため、主翼300を胴体の上端に設置して高さを高めることにより、これに設置されるリフティングローターL1、L2の位置を高くすることができ、ティルティングローターT3、T4を尾翼500に配置し、乗り降りの際にはこれを上方に向けて傾動させることにより、十分な乗り降り空間を設ける。
【0041】
その結果、図5のボックス部分のように主翼のリフティングローターL1と胴体100との間、及び尾翼500のティルティングローターT3の下方にわたって近接空間PAが非常に広く設けられ、その広い近接空間PAを介して乗客が楽で安全に胴体に接近して乗り降りが可能である。また、リフティングローターL1~L4のうちの少なくとも一つのローターは二葉プロペラ型である。リフティングローターL1~L4は、未作動時に飛行抵抗を最小限に抑えるために停止することができ、特に、リフティングローターL1~L4は、クルージング時に飛行抵抗を最小限に抑えるために停止することができる。また、リフティングローターL1~L4は、未作動時に飛行抵抗を最小限に抑えるために停止し、飛行方向と並んだ方向に整列することができる。
【0042】
具体的には、リフティングローターL1~L4は、胴体の垂直離着陸時にのみ必要なローターである。よって、胴体100のクルージング時には、リフティングローターL1~L4を停止させることがむしろ飛行抵抗の低減に効率的である。さらに、リフティングローターL1~L4を停止させる場合には、飛行抵抗の最小化のためにリフティングローターL1~L4のプロペラの向きが胴体の飛行方向と並んで位置するようにローターを制御することにより、燃費を向上させることができる。したがって、プロペラが並ぶようにするために、リフティングローターL1~L4のプロペラは、回転中心を基準に両側にそれぞれプロペラが1つずつ設けられた二葉プロペラ型が望ましい。これにより、リフティングローターL1~L4のプロペラは、直線の形状となるものであり、その結果、未使用時には飛行方向と並ぶように整列させることができる。ただし、この場合、プロペラの個数が足りなくて推進力が不足するおそれがあるので、図1乃至図4に示すように、リフティングローターL1~L4の二葉プロペラ型ローターの場合には、上部プロペラUPと下部プロペラLPの2つのプロペラを備えて推進力を倍加させることが必要である。
【0043】
前述したように、主翼300には、2つのティルティングローターT1、T2と2つ以上のリフティングローターL1、L2が設けられ、ティルティングローターT1、T2は、主翼300の両側の最外側に配置され得る。具体的には、主翼300には2つのティルティングローターT1、T2と4つのリフティングローターL1~L4が設けられ、2つのティルティングローターT1、T2と2つのリフティングローターL1、L2は主翼300の前方側に配置され、残りの2つのリフティングローターL3、L4は主翼300の後方側に配置さる。また、2つのティルティングローターT1、T2、及び主翼300の後方側に配置された2つのリフティングローターL3、L4は、主翼300の両側の最外側に配置されることにより、ローターの故障時にもバランス制御が行われた状態でクルージングができるようにする。
【0044】
また、尾翼500には、2つのティルティングローターT3、T4が設けられる。尾翼500に設けられた2つのティルティングローターT3、T4は、胴体100よりも上方に離れて配置されることにより、乗り降りのための近接空間を確保し、騒音/振動が胴体に直接伝達される現象を防止する。また、これを実現するために、図4の実施形態のように、尾翼500は、胴体100の上部から上方に傾くように延び、ティルティングローターT3、T4は、尾翼500の最外側に設けられる。これにより、尾翼500のティルティングローターT3、T4は胴体100よりも上方に配置される。
【0045】
一方、翼は主翼300、及び主翼300よりも長さが短い尾翼500で構成され、主翼300の前方には2つのティルティングローターT1、T2と2つのリフティングローターL1、L2が横方向に整列するように配置され、主翼300の後方には2つのリフティングローターL3、L4が設けられ、尾翼500には2つのティルティングローターT3、T4が設けられ、主翼300の後方のリフティングローターL3、L4と尾翼500のティルティングローターT3、T4は横方向に整列するように配置される。そして、主翼300のティルティングローターT1、T2は主翼300の最外側に設けられ、尾翼500のティルティングローターT3、T4は胴体100と主翼300の後方のリフティングローターL3、L4との間に配置される。このような配置構造を介して、リフティング時とクリージング時の両方とも、完璧なバランス制御が可能となる。
【0046】
特に、図4に示すように、リフティングローターL1~L4は、胴体に近接して設けられた近接リフティングローターL1、L2、及び胴体から遠く離隔して設けられた離隔リフティングローターL3、L4で構成されるが、ここで、近接リフティングローターL1、L2は、胴体100に近い側が上方を向くようにプロペラが傾くことができる。つまり、乗客Pは、胴体に近接した位置で乗り降りをするのが一般的であるので、胴体100に近接した部分は、乗客Pのヘッドルームを最大限に確保する必要がある。このために、近接リフティングローターL1、L2は、胴体100に近い側が上方を向くようにプロペラが傾くように設計する。
【0047】
これにより、搭乗口は、胴体100の側面に設けられることが可能となり、正面または背面ではなく、側面に搭乗口が設けられることにより、まるでベン形式の車両のように多数の搭乗環境でもすべての乗客が楽に乗り降りすることができるようになる。このような構成により、図5に示すように、胴体100に近接して配置されたリフティングローターL1、L2及びティルティングローターT3、T4の下部空間を介して搭乗者が搭乗口に達することが可能な近接空間PAを形成することができる。
【0048】
図6は、本発明の実施形態に係るエアモビリティの飛行計画を示す図である。図6の場合、グラフの横軸は水平距離で、縦軸は垂直距離である。まず、搭乗段階で、エアモビリティは主翼の中央の後方にローターの配置がなく、尾翼に装着されたローターは主翼よりも高く位置することにより、十分な搭乗空間が設けられる。また、ティルティングローターの場合、乗客が搭乗する間には上方に傾動して水平をなすことにより、乗客の搭乗が可能な空間の高さを確保する。乗客の搭乗後は、エアモビリティのティルティングローターを水平に整列させることにより、リフティングモードに実現される。それにより、リフティングローターとティルティングローターがすべて動作することにより、エアモビリティがリフティングに必要な十分な揚力を形成する。それにより、エアモビリティは垂直に上昇して離陸(Hover、Takeoff、A1)をする。そのため、一定の高さに上昇した後、航空管制通信を行い、本格的な飛行のために飛行高度に上昇するとともに前進する過渡区間(Transition)A3を飛行する。この時、4つのティルティングローターは、下方への傾動を開始し、前進速度に応じて主翼による揚力が発生する。
【0049】
同時に、4つのリフティングローターは、主翼による揚力とリフティングローターによる揚力との和が、エアモビリティが必要とする揚力に相応するように制御される。主翼による揚力が、エアモビリティが必要とする揚力をすべて担当することができれば、リフティングローターは停止し、特に飛行抵抗を最小限に抑えるために飛行方向と同じ方向に整列するように停止する。その後、クルージング時(Cruise、A4)には、リフティングローターを停止し飛行方向と並ぶようにして飛行抵抗を最小限に抑え、2つ以上のティルティングローターが前進飛行のための推力を発生させるように動作する。そして、目的地周辺では、再び下降する過渡区間(Transition、A5)を経た後、一定距離を移動し(A6)、垂直に着陸(Hover、Landing、A7)を行う。
【0050】
特に、過渡区間の場合には、垂直移動と水平移動とが混在する状況であるので、この場合には、揚力の計算が非常に重要であり、計上または測定された揚力によって、必要な補充揚力を求め、その分だけリフティングローターを制御するようにする。すなわち、ティルティングローターは、速度の制御なしにティルティングの程度のみを制御する場合、過渡区間ではリフティングローターの速度制御が必要である。一方、揚力自体を制御しようとする場合には、ティルティングローターの速度制御が必要である。本発明の垂直離着陸エアモビリティによれば、垂直離着陸が可能で、複数のローターを効果的に配置することにより一部ローターの故障への対応が容易であり、騒音/振動への対応に効果的であり、搭乗の便宜性が増大することができる。
【0051】
本発明の垂直離着陸エアモビリティを実施形態に関連して説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で多様な改良及び変化を加えることができる。
【符号の説明】
【0052】
100 胴体
300 主翼
500 尾翼
T1~T4 ティルティングローター
L1~L4 リフティングローター
UP 上部プロペラ
LP 下部プロペラ
B バッテリー
PA 近接空間
P 乗客
W ホイール
図1
図2
図3
図4
図5
図6