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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】熱球形化装置及びトナー製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20240909BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20240909BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20240909BHJP
   B01J 2/16 20060101ALN20240909BHJP
【FI】
G03G9/08 381
G03G9/097 374
C08J3/12 Z
B01J2/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020154208
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048410
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】山下 大輔
(72)【発明者】
【氏名】三浦 正治
(72)【発明者】
【氏名】田村 順一
(72)【発明者】
【氏名】岡村 竜次
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 陽介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】土川 黎
(72)【発明者】
【氏名】溝尾 祐一
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-160491(JP,A)
【文献】特開2013-046911(JP,A)
【文献】特開2009-112919(JP,A)
【文献】特開2018-045006(JP,A)
【文献】特開2018-156000(JP,A)
【文献】特開2009-053352(JP,A)
【文献】特開2017-035670(JP,A)
【文献】特開2020-086288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08
G03G 9/097
C08J 3/12
B01J 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子供給装置、熱処理装置、およびイオナイザーを有する粒子熱球形化装置であって、
該微粒子供給装置は、インジェクションエアーにより樹脂微粒子を搬送し、該熱処理装置に樹脂微粒子を供給する装置であり、
該熱処理装置は、供給された樹脂微粒子を、気流内において熱処理することで球形化する装置であり、
該微粒子供給装置によって該樹脂微粒子が該熱処理装置まで搬送される流路内にイオンを供給するように、該イオナイザーが設けられており、
該熱処理装置は、
(1)該樹脂微粒子の熱処理が行われる処理室と、
(2)該微粒子供給装置により搬送された該樹脂微粒子を、該処理室に供給するための原料供給手段と、
(3)樹脂微粒子を熱処理するための熱風を該処理室に供給する熱風供給手段と、
(4)熱処理された樹脂微粒子を冷却するための冷風を該処理室に供給する冷風供給手段と、
(5)熱処理された樹脂微粒子を回収する回収手段と、
を有し、
該微粒子供給装置は、導入管、及び該導入管の出口部に対向して設けられた分配部材を有しており、
該分配部材は、導入管の出口部に対向する部分に突起状部材が設けられており、更に該分配部材は該突起状部材を中心に該原料供給手段に向かう2以上の流路を有する供給管を有する、
ことを特徴とする樹脂微粒子熱球形化装置。
【請求項2】
該イオナイザーは、前記分配部材が有する該流路に接続されている請求項に記載の樹脂微粒子熱球形化装置。
【請求項3】
微粒子供給装置、熱処理装置、およびイオナイザーを有する粒子熱球形化装置を用いるトナーの製造方法であって、
該微粒子供給装置を用いて、インジェクションエアーによりトナー前駆体粒子を搬送して、該熱処理装置にトナー前駆体粒子を供給し、
該熱処理装置を用いて、供給されたトナー前駆体粒子を気流内において熱処理し、球形化されたトナー粒子を得るものであり、
該微粒子供給装置によって該トナー前駆体粒子が該熱処理装置まで搬送される流路内において、該イオナイザーによりイオンが供給されることを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項4】
該熱処理装置は、
(1)該樹脂微粒子の熱処理が行われる処理室と、
(2)該微粒子供給装置により搬送された該樹脂微粒子を、該処理室に供給するための原料供給手段と、
(3)樹脂微粒子を熱処理するための熱風を該処理室に供給する熱風供給手段と、
(4)熱処理された樹脂微粒子を冷却するための冷風を該処理室に供給する冷風供給手段と、
(5)熱処理された樹脂微粒子を回収する回収手段と、
を有し、
該微粒子供給装置は、
導入管、及び
該導入管の出口部に対向して設けられた分配部材
を有しており、
該分配部材は、導入管の出口部に対向する部分に突起状部材が設けられており、更に該分配部材は該突起状部材を中心に該原料供給手段に向かう2以上の流路を有する供給管を有する樹脂微粒子熱球形化装置を用いる請求項に記載のトナーの製造方法。
【請求項5】
該イオナイザーは、前記分配部材が有する該流路に接続されている樹脂微粒子熱球形化装置を用いる請求項に記載のトナーの製造方法。
【請求項6】
前記熱処理前に、無機酸化物を外添する工程を有し、
該無機酸化物の個数平均粒径が前記樹脂微粒子の重量平均粒径の1/40以上1/20以下である請求項に記載のトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式、トナージェット方式に用いられるトナー製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式のフルカラー複写機が広く普及し、印刷市場への適用も始まっている。印刷市場では、幅広いメディア(紙種)に対応しながら、高速、高画質、高い生産性が要求されるようになってきている。トナーにおいては、小粒径かつ粒度分布がシャープなトナーによる帯電性の安定化などにより、現像性や転写性が安定化し、高画質化を図ることができる。
一般的な、トナー粒子の製造方法として溶融混練粉砕法が知られている。具体的には、結着樹脂、色材、離型剤などのトナー構成材料を溶融混練し、冷却固化した後、混練物を粉砕手段により微細化しトナー粒子を得る手法であり、その後、必要に応じて所望の粒度分布に分級したり、流動化剤などを添加したりして、トナーを製造する。
混練物の粉砕手段として各種粉砕装置が用いられるが、被粉砕物の投入口および排出口を有するケーシング内に、中心回転軸に支持され、外周面に複数の凸部と凹部とを有する回転子と、この回転子の外側に、この回転子の外周面と所定の間隙を設けて配置され、その内周面に複数の凸部と凹部とを有する固定子とを備え、投入口から排出口を流れる気流にのって回転子と固定子とが対抗する処理部を被粉砕物が通過する際に、回転子もしくは固定子の凸部もしくは凹部に衝突することで被粉砕物を粉砕する機械式粉砕装置(特許文献1)などが知られている。
また、トナーの現像性などの向上のために、熱処理によるトナー粒子の球形化が行われている。熱処理によりトナー粒子を溶融し球形化する技術としては、原料である粉体粒子を分散させるための旋回機構と、分散された粉体原料をその内側から加熱する加熱機構を持つ熱処理装置が提案されている(特許文献2)。
しかしこの装置構成でトナー用粉体粒子を熱処理する場合、原料の分散気流と加熱気流がお互いに逆の旋回方向となる。このため粉体粒子の処理量を増加させると、粉体粒子が互いに衝突し合一し粗大粒子になる場合や、装置内で生じる気流の乱れによって装置の天面や壁面に粉体粒子が付着し融着物が生じる場合があった。
これに対し、熱風を旋回して供給するための旋回部材を装置内に具備させることでトナー用粉体粒子同士の衝突を抑制する熱処理装置が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-237816号公報
【文献】特開昭62-133466号公報
【文献】特開2013-20245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の通り、高画質化のためにトナーの小粒径化が求められている。トナー原料の混合物を溶融混練後、粉砕処理を行った後、粒度調整のために分級処理したトナー用粉体粒子を熱球形化処理するトナーの工程において、トナー用粉体粒子の平均粒径よりも熱球形化処理後のトナーの平均粒径が大きくなってしまうことが知られており、この平均粒径の増加幅は、トナー用粉体粒子が小粒径であるほど顕著になる。この要因は定かではないが、粒子が気流により搬送される際、小粒径成分が大粒径成分の表層に付着し、熱球形化の際、トナー原料の主成分である樹脂同士が融着するため粒径が大粒径側にシフトするものと考えられる。
本発明の目的は、上記の如き問題点を解決し、熱球形化処理前後の粒径が増加することを抑制する樹脂粒子の熱球形化装置及び、熱球形化処理前後の粒径が増加することを抑制するトナーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、微粒子供給装置、熱処理装置、およびイオナイザーを有する粒子熱球形化装置であって、
該微粒子供給装置は、インジェクションエアーにより樹脂微粒子を搬送し、該熱処理装置に樹脂微粒子を供給する装置であり、
該熱処理装置は、供給された樹脂微粒子を、気流内において熱処理することで球形化する装置であり、
該微粒子供給装置によって該樹脂微粒子が該熱処理装置まで搬送される流路内にイオンを供給するように、該イオナイザーが設けられており、
該熱処理装置は、
(1)該樹脂微粒子の熱処理が行われる処理室と、
(2)該微粒子供給装置により搬送された該樹脂微粒子を、該処理室に供給するための原料供給手段と、
(3)樹脂微粒子を熱処理するための熱風を該処理室に供給する熱風供給手段と、
(4)熱処理された樹脂微粒子を冷却するための冷風を該処理室に供給する冷風供給手段と、
(5)熱処理された樹脂微粒子を回収する回収手段と、
を有し、
該微粒子供給装置は、導入管、及び該導入管の出口部に対向して設けられた分配部材を有しており、
該分配部材は、導入管の出口部に対向する部分に突起状部材が設けられており、更に該分配部材は該突起状部材を中心に該原料供給手段に向かう2以上の流路を有する供給管を有する、
ことを特徴とする樹脂微粒子熱球形化装置に関する。
また、本発明は、微粒子供給装置、熱処理装置、およびイオナイザーを有する粒子熱球形化装置を用いるトナーの製造方法であって、
該微粒子供給装置を用いて、インジェクションエアーによりトナー前駆体粒子を搬送して、該熱処理装置にトナー前駆体粒子を供給し、
該熱処理装置を用いて、供給されたトナー前駆体粒子を気流内において熱処理し、球形化されたトナー粒子を得るものであり、
該微粒子供給装置によって該トナー前駆体粒子が該熱処理装置まで搬送される流路内において、該イオナイザーによりイオンが供給されることを特徴とするトナーの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、処理前後の平均粒径の変化を抑制することが出来る樹脂微粒子熱球形化装置を提供することができる。この要因に関しては定かではないが以下のように想定される。
熱球形化処理前後で、被処理物の粒径が大きくなってしまう要因は2つ想定できる。一つ目は、微粒子供給装置から熱処理装置に被処理物である微粒子が供給される際、搬送エアーから受ける搬送力はエアーを受ける粒子の投影面積に比例することから被処理物の粒径や円形度の違いにより搬送力にばらつきがあることや、搬送エアーが乱流を生じさせてしまい投入位置の微妙な差で、被処理物粒子が熱処理装置内部で、粒子ごとに速度差を持っており、これにより加熱中の粒子が衝突しあうことで融着し粒径が大きくなってしまうことである。2つ目は、微粒子供給装置から熱処理装置に被処理物である微粒子が供給される際、被処理微粒子が単一粒子になっておらず微粒子同士が付着し二次粒子を形成したまま熱処理装置内へ供給され、融着することで粒径が大きくなることである。前者の要因が主要因であれば、同一の円形度および同一の粒度分布半値幅をもつ微粒子であれば、平均粒径が小さくなるほど大粒径成分と小粒径成分のエアーを受ける投影面積の差は小さくなり、これに伴い微粒子平均径が小さいほど粒子同士の速度差は小さくなるため熱球形化後の粒径上昇が小さくなるものと思われる。しかし、被処理物は小粒径であるほど、熱球形化処理後の粒径上昇が大きい傾向があるため、後者の熱処理装置に被処理物が供給される際に、被処理微粒子が二次粒子を形成していることが熱球形化の主要因であるものと想定される。このため、供給時の微粒子の凝集を解し、一次粒子の状態で熱処理装置に供給すれば熱球形化後の粒径上昇を抑制できるものと思われる。微粒子供給装置のインジェクションエアーから受けるエネルギーや熱処理装置入口などに配置された分散部材などとの衝突などの力によって微粒子の凝集は、ある程度解砕されるものと思われるが、特に小粒径樹脂微粒子の熱球形化においては十分でないと考えられる。
これに対し、本発明者らの鋭意検討の結果、微粒子供給装置によって該樹脂微粒子が該熱処理装置まで搬送される流路内にイオンを供給するように、該イオナイザーが設けられていることを特徴とする熱球形化装置を用いる場合、熱球形後の粒径上昇を抑制できることを見出した。トナーの主成分である結着樹脂に用いられる樹脂として、ポリエステル樹脂、スチレン-アクリル酸共重合体、ポリオレフィン系樹脂などが知られているが、これらの樹脂の微粒子は粉砕等の処理工程において表面が帯電することが知られている。例えば低抵抗の金属酸化物粒子を高被覆率で樹脂表面に付着させることで低抵抗化する処理を行うことで、表面帯電を抑えることは可能であるが、表面電荷をドライビングフォースとする電子写真に用いるトナーの用途としては、過度な表面低抵抗化は適さない。このため、粉砕、分級などの処理ののちに熱球形化装置に供給されるトナー用粉体粒子は静電凝集しているものと考えられる。貯蔵中のトナー用粉体粒子にイオナイザーによりイオンを供給することで電荷をキャンセルし、静電凝集を抑制し熱球形化後の粒径上昇を抑制できると考えたが効果がみられなかった。一方、エアーによる搬送中のトナー用粉体粒子にイオナイザーによりイオンを供給した場合、熱球形化後の粒径上昇を抑制できることが確認された。インジェクションエアーによりトナー用粉体粒子がある程度解砕されたのちに、静電帯電サイトをキャンセルすることで効果が発現したと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に用いられる熱球形化装置の1例を示す概略図である。
図2】本発明の実施例に用いる熱球形化装置の概略図である。
図3】本発明の実施例に用いる熱球形化装置の分配部材の平面図である。
図4】本発明の実施例に用いる熱球形化装置の概略図である。
図5】本発明の比較例に用いる熱球形化装置の概略図である。
図6】本発明の実施例に用いる熱処理装置本体の斜視図である。
図7】本発明の実施例に用いる熱球形化装置の熱風の旋回部材である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0009】
本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
【0010】
本発明は微粒子供給装置、熱処理装置、およびイオナイザーを有する粒子熱球形化装置であって、該微粒子供給装置は、インジェクションエアーにより樹脂微粒子(トナーの製造にあっては、トナー前駆体粒子)を搬送し、該熱処理装置に樹脂微粒子を供給する装置であり、該熱処理装置は、供給された樹脂微粒子を、気流内において熱処理することで球形化する装置であり、該微粒子供給装置によって該樹脂微粒子が該熱処理装置まで搬送される流路内にイオンを供給するように、該イオナイザーが設けられていることを特徴とする樹脂微粒子熱球形化装置であれば、ほかに制限を持たない。しかし、熱処理装置内部での樹脂融着の抑制や装置構成のスペースの観点から該熱球形化装置は、図1に示すような熱球形化装置であることが好ましい。
【0011】
図1の熱球形化装置は、樹脂微粒子の熱処理が行われる処理室6と、微粒子供給装置により搬送された該樹脂微粒子を、該処理室に供給するための原料供給手段1と、樹脂微粒子を熱処理するための熱風を該処理室に供給する熱風供給手段7と、熱処理された樹脂微粒子を冷却するための冷風を該処理室に供給する冷風供給手段8と、熱処理された樹脂微粒子を回収する回収手段10を有し、該熱処理装置と該微粒子供給装置との間に、導入管3、及び該導入管の出口部に対向して設けられた分配部材を有しており、該分配部材は、導入管の出口部に対向する部分に突起状部材4が設けられており、更に該分配部材は該突起状部材を中心に該原料供給手段に向かう2以上の流路を有する供給管5を有するものである。
【0012】
ここで、原料定量供給手段1により定量供給された粉体粒子は、圧縮気体流量調整手段2により調整されたインジェクションエアーによって、導入管3に導かれる。また、原料定量供給手段1と圧縮気体流量調整手段2とを、微粒子供給装置と称する。導入管3は、粉体粒子の供給方向が、鉛直方向となるように設置されている。導入管3を通過した粉体粒子は、該導入管の出口部に対向して設けられた円錐状の突起状部材4により均一に分散され、2以上の流路を有する供給管5に導かれ、熱処理が行われる処理室6に導かれる。尚、突起状部材4と供給管5とを有する部材を分配部材と称する。円錐状の突起物は、均一に分散できるものであればこの形状に限定されるものではなく、8角錐等の多面形状であってもよい。
【0013】
粉体粒子の供給方向が鉛直方向となるように設置された導入管を用いて粉体粒子を供給することで、配管内流速のばらつきの抑制が可能となる。そして、この状態で粉体粒子が分配部材によって瞬時に分配されることで、粉体粒子が均一に近い状態で処理室に供給される。圧縮気体調整手段より供給されるエアー流量は、0.1乃至1.0m3/minの範囲内であることが好ましい。圧縮気体調整手段より供給されるエアー流量が上記の範囲内であれば、粉体粒子の分散が良好になり、熱処理装置の処理室で、粉体粒子が均一に近い状態で熱処理される。更に、粉体粒子供給口14それぞれの近傍に設置された流量調整手段15にて各流路への2次エアー導入量を調整することにより、各流路の粉体粒子の流量を調整することができる。
【0014】
粉体粒子を熱処理室へ導く流路は、2方向以上に分割される。その中でも、図6に示すように、供給管5は4以上の流路を有し、流路は突起状部材を中心に処理室の壁面に向かって放射状に広がっていることがより好ましい構成である。また、トナーの熱処理が行われる円筒形状の処理室6を持つ。
【0015】
供給された粉体粒子を熱処理するための熱風は、図1に示す熱風供給手段7から供給される。処理室内に供給される熱風は、熱風供給手段7の出口部における温度が100℃~300℃であることが好ましい。100℃未満の場合は、熱球形化が不十分な場合があり、300℃超の場合は、出口部において樹脂粒子が融着し、壁部に付着してしまうなどの弊害が顕著となる。
【0016】
更に熱処理された粉体粒子は冷風供給手段8から供給される冷風によって冷却される。冷風供給手段8から供給される温度は-20℃乃至30℃であることが好ましい。冷風の温度が上記の範囲内であれば、粉体粒子を効率的に冷却することができ、粉体粒子の均一な球形化処理を阻害することなく、粉体粒子の融着を抑制することができる。
【0017】
次に、冷却された粉体粒子は、処理室の下端にある回収手段10によって回収される。なお、回収手段の先にはブロワー(不図示)が設けられ、ブロワーによる吸引によって搬送される構成となっている。
【0018】
熱処理装置の熱風供給手段の出口11は、柱状部材(規制手段)9の上端部に対向している。また、この柱状部材9は、その上端部の中心部に、供給された熱風を周方向に分配するための略円錐形状の熱風分配部材12を具備している。
【0019】
熱風を旋回させるための旋回部材13は、処理室内の内壁面に沿って熱風を螺旋状に回転させて導入することができる構成であればよい。例えば図7に示したような、熱風を回転させるための回転部材13が、複数のブレード16を有しており、その枚数や角度により、熱風の回転を制御することができるものであればよい。
【0020】
なお、柱状部材9には、粉体粒子の融着を防止するために、冷却ジャケットを設けることが好ましい。
【0021】
熱風を旋回させるための旋回部材13は、熱風の回転方向が供給された粉体粒子の回転方向と同方向になるように設けられている。
【0022】
処理室に供給された粉体粒子の回転方向と、熱風の回転方向とが同一であることによって、処理室内における乱流の発生を抑制し、処理室内での粉体粒子同士の衝突が少なくなり、粉体粒子の合一粗大化を防ぐことが出来る。熱処理装置の回収手段10は、螺旋状に回転する粉体粒子の回転方向を維持するように、処理室の外周部に設けられている。
【0023】
粉体粒子の流れを規制するための規制手段の柱状部材9は、断面が略円形状であることが好ましい。また、柱状部材9は、処理室の下流側にいくに従って柱状部材9の根元部が太くなっていても構わない。これにより、粉体粒子回収手段側端部の粉体粒子の流速が速くなり、粉体粒子の排出性を向上させることができるとともに、回収部における付着や融着を抑制することができる。図1の熱処理装置では、冷風供給手段から供給される冷風は、装置外周部から処理室内周面に、水平かつ接線方向から供給されるよう構成されており、これによって処理室壁面への粉体粒子の付着が抑制される。また、冷風供給手段から供給される冷風の旋回方向が、熱風の旋回方向と同方向であることによって、処理室内で乱流が起こらないため、粉体粒子の合一粗大化を抑制することができる。
【0024】
熱処理装置において、粉体粒子供給口14から供給される粉体粒子は、装置外周部から処理室内周面に、水平かつ接線方向から供給されるよう構成されている。このため、処理室内に供給された粉体粒子には強い遠心力がかかり、粉体粒子の分散性が向上する。
【0025】
粉体供給口から供給される粉体粒子の回転方向、冷風供給手段から供給された冷風の回転方向、熱風供給手段から供給された熱風の回転方向は、すべて同方向であることが好ましい。これにより、処理室内で乱流が起こらず、装置内の回転流が強化され、粉体粒子に強力な遠心力がかかり、粉体粒子の分散性が更に向上するため、合一粒子の少ない、形状の揃ったトナーを得ることができる。冷風供給手段は、粉体粒子供給手段より下流側に、複数設けられていることが好ましい。冷風供給手段が、粉体供給手段より下流側にあることにより、導入された冷風が処理室内の熱処理ゾーンを冷却してしまうことがなく、粉体粒子の球形化に必要な熱処理温度が必要以上になることを防止する。処理室に導入される冷風の風量や温度は独立して制御可能である。このため、図1に示したように、冷風供給手段が3段設けられていることが好ましい。例えば、1段目の冷風(8-1)は処理室内に導入された粉体粒子を熱処理ゾーンに効率よく送り込むための冷風、2段目(8-2)は粉体粒子を冷却するため冷風、3段目の冷風(8-3)は粉体粒子回収手段を冷却するための冷風とし、それぞれの冷風の機能を分離することが可能となる。尚、図1中の6~15を熱処理装置と称する。
【0026】
該微粒子供給装置から該熱処理装置までの微粒子が搬送される流路内にイオンを供給するように、該イオナイザーが設けられていればイオン供給位置は特に限定されないが、図1に示す熱処理装置を用いる場合、分配部材により複数の流路に微粒子を分配する際に突起状部材4と微粒子の接触により再度摩擦帯電し凝集してしまう懸念があるため、図1中のイオナイザー接続位置(B)で示される圧縮気体流量調整手段2から導入管3までの流路よりも、イオナイザー接続位置(A)で示される分配部材から熱処理装置の粉体供給口14まで流路にイオンを供給することが好ましい。イオナイザー接続位置(A)にイオンを供給する場合は、分配手段毎に分岐される各流路それぞれに接続する必要がある。
【0027】
本発明における、イオナイザーは空気や窒素ガスなどの気体をイオン化し、気流によりイオンを、凹凸を有する微粒子表面に搬送するという観点から、コロナ放電により発生させたイオンをブロワなどの風に搬送させる有風コロナ放電型のイオナイザーであることが好ましい。有風コロナ放電型のイオナイザーの中でも、コロナ放電の針電極前面の対向電極にあけた細孔から、針電極先端で発生したイオンを圧縮エアーによって噴射するジェットイオナイザーが、発生したイオンが減少する前に微粒子表層にイオンを搬送するという観点で好ましい。
【0028】
本発明の熱処理装置は、溶融混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法など公知の製造方法で得られた粉体粒子に適用することが可能である。以下、溶融混練粉砕法によってトナーを製造する手順について説明する。
【0029】
<トナー粒子の製造法>
まず、原料混合工程では、トナー内添剤として、少なくとも結着樹脂、着色剤を所定量秤量して配合し、混合する。必要に応じて、トナーの加熱定着時にホットオフセットの発生を抑制する離型剤、該離型剤を分散させる分散剤、帯電制御剤などを混合してもよい。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等がある。
【0030】
更に、上記で配合し、混合したトナー原料を溶融混練して、樹脂類を溶融し、その中の着色剤等を分散させる。該溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。近年では、連続生産できる等の優位性から、1軸または2軸押出機が主流となっており、例えば、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が一般的に使用される。更に、トナー原料を溶融混練することによって得られる着色樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
【0031】
上記で得られた着色樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕される。更に、イノマイザー(ホソカワミクロン社製)、クリプトロン(川崎重工社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボミル(ターボ工業社製)等の機械式粉砕機を用い微粉砕することでトナー用微粉砕物を得る。粉砕工程では、このように段階的に所定のトナー粒度まで粉砕される。
【0032】
得られたトナー用微粉砕物をターボプレックス、TSPセパレータ、TTSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)等の分級装置により所望の粒度分布に調整することでトナー用粉体粒子を得る。
【0033】
続いて、トナー用粉体粒子を本発明の熱処理装置を用いて熱球形化処理を行うことで、トナー粒子を得る。トナーの求められる機能性を付与するために、必要に応じて、熱球形化処理前(熱処理前)にトナー用粉体粒子にシリカ粒子などの無機酸化物を添加してもよい。無機酸化物添加の効果としては、熱球形化処理により、トナー表層に強く固着され、耐ブロッキング性が向上するなどの機能の付与などが例示できる。また、無機酸化物の添加によって、トナー用粉体粒子の流動性の向上や粒子間の非静電付着力の減少などから、インジェクションエアーにより粒子が単一粒子となりやすくなり、熱球形化処理後の粒径増加を抑制できる効果もある。前記無機酸化物は一種類用いてもよいし、2種類用いてもよい。本発明の熱球形化装置を用いる場合、少なくとも一種類の無機酸化物一次粒子の個数平均粒径はトナー用粉体粒子の重量平均粒径の1/40以上1/20以下であることがより好ましい。1/40以上であれば、トナー用粉体粒子の凝集体を形成している場合でも、スペーサーの役割を果たし粒子間の空隙にイオナイザーにより発生させたイオンが到達しやすくなり熱球形化処理後の粒径増加を抑制でき、1/20以上の場合は無機酸化物微粒子がトナー用粉体粒子から脱離しやすくなるため熱球形化装置を汚染してしまうという懸念がある。
【0034】
トナーの転写性の向上に対応するためには、トナーの平均円形度は0.960以上であることが好ましく、更に好ましくは0.965以上である。クリーニング不良を発生させないという観点から円形度0.990以下が好ましい。また、トナーの重量平均粒径は、トナーにより形成される画像の高画質化という観点から、小粒径であることが好ましく、具体的には重量平均粒径3~7μmが好ましく、重量平均粒径3~6μmがより好ましく、重量平均粒径3~5μmであればより好ましい。重量平均粒径3μm未満の場合、クリーニングブレードをすり抜けやすくなり、画像不良の要因となる。
【0035】
<トナーの原料>
次に、本発明で使用する結着樹脂及び着色剤を少なくとも含むトナー粒子の原材料について説明する。
【0036】
<結着樹脂>
電子写真に用いられるトナーに用いられる結着樹脂としては、一般的な樹脂を用いることができ、ポリエステル樹脂、スチレン-アクリル酸共重合体、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが例示できる。この中でも、低温定着性を良好にするという観点から非晶性ポリエステル樹脂が用いられ、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、低分子量ポリエステルと高分子量ポリエステルを併用することが知られている。また、さらなる低温定着性の向上と保管時の耐ブロッキング性の観点から結晶性ポリエステルを可塑剤として用いることもある。
【0037】
<着色剤>
トナーに含有できる着色剤としては、以下のものが挙げられる。
【0038】
該着色剤としては、公知の有機顔料若しくは油性染料、カーボンブラック、又は磁性体などが挙げられる。
【0039】
シアン系着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物などが挙げられる。
【0040】
マゼンタ系着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物などが挙げられる。
【0041】
イエロー系着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物などが挙げられる。
【0042】
黒色系着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、又は、前記イエロー系着色剤、マゼンタ系着色剤、及びシアン着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。
【0043】
該着色剤は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0044】
<離型剤>
必要に応じて、トナーの加熱定着時にホットオフセットの発生を抑制する離型剤を用いてもよい。該離型剤としては、低分子量ポリオレフィン類、シリコーンワックス、脂肪酸アミド類、エステルワックス類、カルナバワックス、炭化水素系ワックスなどが一般的に例示できる。
【0045】
トナー及び原材料の各種物性の測定法について以下に説明する。
【0046】
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、50μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
【0047】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0048】
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
【0049】
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
【0050】
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を1μm以上30μm以下に設定する。
【0051】
具体的な測定法は以下の通りである。
【0052】
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0053】
<トナーの平均円形度の測定方法>
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000型」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定・解析条件で測定した。
【0054】
フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000型」(シスメックス社製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は、1視野が512画素×512画素であり、1画素あたり0.37×0.37μmの画像処理解像度で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積や周囲長等が計測される。
【0055】
次に、各粒子像の投影面積Sと周囲長Lを求める。上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円形当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度は、円形当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
円形度C=2×(π×S)1/2/L
【0056】
粒子像が真円形の時に円形度は1.000になり、粒子像の外周の凹凸の程度が大きくなるほど円形度は小さい値になる。
【0057】
各粒子の円形度を算出後、円形度0.2から1.0の範囲を800分割したチャンネルに振り分け、各チャンネルの中心値を代表値として平均値を計算し平均円形度の算出を行う。
【0058】
具体的な測定方法としては、イオン交換水20mlに、分散剤として界面活性剤、好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.02g加えた後、測定試料0.02gを加え、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散機(例えば「VS-150」(ヴェルヴォクリーア社製など)を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とした。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。
【0059】
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測して、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径2.00μm以上200.00μm以下に限定し、トナーの平均円形度を求めた。
【0060】
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えばDuke Scientific社製5200Aをイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
【0061】
なお、本願実施例では、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用し、解析粒子径を円相当径2.00μm以上、200.00μm以下に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
【0062】
<無機微粒子の個数平均粒径(D1)の測定方法>
無機微粒子の一次粒子の個数平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)「JEM2800」(日本電子製)を用いて測定する。
【0063】
まず、測定サンプルの調整を行う。無機微粒子約5mgに対し、イソプロパノール1mlを加え、超音波分散機(超音波洗浄機)で5分間分散させる。次に、TEM用の支持膜付きマイクログリッド(150メッシュ)に上記分散液を1滴たらし、乾燥させることで測定サンプルを準備した。
【0064】
次に、透過型電子顕微鏡(TEM)により、加速電圧200kVの条件のもと、視野中の外添剤が十分に測長できる倍率(例えば200k~1M倍)にて画像を取得し、ランダムに100個の無機微粒子の一次粒子の長径を測定してその個数平均粒径を求める。一次粒子の粒径の測定は手動でもよいし計測ツールを用いてもよい。
【実施例
【0065】
以下、実施例及び比較例にて熱球形化を実施するためのトナー用粉体粒子の製造例を記す。
【0066】
<結着樹脂ポリエステルの製造例>
・ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:72.0質量部(0.20モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸:
28.0質量部(0.17モル;多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)
・2-エチルヘキサン酸錫(エステル化触媒):0.5質量部
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、220℃の温度で撹拌しつつ、8時間反応させた。
【0067】
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、大気圧に戻した。
・無水トリメリット酸:
3質量部(0.01モル;多価カルボン酸総モル数に対して4.0mol%)
・tert-ブチルカテコール(重合禁止剤):0.1質量部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度180℃に維持したまま、1時間反応させ結着樹脂を得た。ASTM D36-86に従って測定した得られた結着樹脂の軟化点は110℃であった。
【0068】
<シリカ微粒子の製造例>
酸素ガスをバーナーに供給し、着火用バーナーに点火した後、水素ガスをバーナーに供給して火炎を形成し、これに原料である四塩化ケイ素を投入しガス化させることでシリカ微粒子を得た。得られたシリカ微粒子を電気炉に移し、薄層状に敷きつめた後、900℃で加熱処理を施し焼結させた。具体的な方法としては、原料の四塩化ケイ素ガス量は130kg/hr、水素ガス50Nm3/hrおよび酸素ガスの量25Nm3/hr、火炎中のシリカ濃度0.10kg/Nm3、滞留時間0.005secとした。得られたシリカ微粒子を電気炉に移し、薄層状に敷きつめた後、900℃で加熱処理を施し焼結させた。その後、疎水化処理として、ヘキサメチルジシラザンによって表面処理を行なうことにより、シリカ微粒子1を得た。さらに、四塩化ケイ素量、酸素ガス量、水素ガス量、シリカ濃度、滞留時間、焼結条件を調整しシリカ微粒子2~5を得た。
シリカ微粒子1~5の個数平均径を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
<トナーの製造例>
・結着樹脂ポリエステル 90質量部
・フィッシャートロプシュワックス(炭化水素ワックス、最大吸熱ピークのピーク温度90℃) 5質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 5質量部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、二軸混練機(PCM-30型、株式会社池貝製)にて混練した。混練時のバレル温度は、混練物の出口温度が120℃になるよう設定した。混練物の出口温度は、安立計器社製ハンディタイプ温度計HA-200Eを用い直接計測した。得られた混練物を冷却し、ピンミルにて重量平均粒径100μm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。
【0071】
機械式粉砕機(ターボ工業社製ターボミルT250-CRS-ローター形状RS型)を用いて、ローター回転数10000rpm、粉砕フィード10kg/hの条件で、上記粗砕物を粉砕し、トナー用微粉砕物1を得た。また、同様にローター回転数10000rpm、粉砕フィード10kg/hの条件でトナー用微粉砕物1を粉砕することで、トナー用微粉砕物2を得た。さらに、同様にローター回転数12000rpm、粉砕フィード10Kg/hの条件でトナー用微粉砕物2を粉砕することで、トナー用微粉砕物3を得た。トナー用微粉砕物1の重量平均粒径は6.24μmであり、トナー用微粉砕物2の重量平均粒径は5.15μmであり、トナー用微粉砕物3の重量平均粒径は4.22μmであった。
【0072】
トナー用微粉砕物1~3を、エルボージェット分級機(日鉄鉱業社製)を用い、微粉を除去し粒度調整することでトナー用粉体粒子1~3を得た。トナー用粉体粒子1の重量平均粒径は6.50μmであり、トナー用粉体粒子2の重量平均粒径は5.51μmであり、トナー用粉体粒子3の重量平均粒径は4.41μmであった。
【0073】
さらに、トナー用粉体粒子3を100質量部、シリカ微粒子1を2質量部、ヘンシェルミキサー(FM-75型、日本コークス社製)に投入し回転羽根の周速を50.0m/secとし混合時間3分で混合することにより、トナー用粉体粒子3の表面にシリカ微粒子1を付着させることでトナー用粉体粒子4を得た。シリカ微粒子2~5も同様にしてトナー用粉体粒子3に付着させることでトナー用粉体粒子5~8を得た。トナー用粉体粒子の粒径を表2にまとめた。
【0074】
【表2】
【0075】
<熱球形化処理装置1>
図2に示すように、イオナイザー接続位置(A)の位置にイオナイザー接続ノズル21を介し、イオナイザー20を接続した微粒子供給装置、熱処理装置、イオナイザーを有する装置を熱球形化装置1とする。分配手段は図3に示すように、微粒子供給装置から搬送された粒子を4方向に分岐させるものであり供給管5の内径は直径20mmであり、熱処理装置の供給口14(直径20mm)と配管で接続される。分配部材4は円錐形状であって、高さ40mm、直径40のものを用いた。流量調整機構15を用い、各流路の流速を10.0m/sになるように調整した。熱処理装置の処理室の内径は直径150mm、規制手段(柱状部材9)の外径は直径110mmとした。イオナイザー20はイオンジェットノズル(NIH-55、春日電機)を、イオナイザー側を一口、熱処理装置接続側を4口に分岐したイオナイザー接続ノズル21(NIH-55-C500)を介して供給口14近傍のイオナイザー接続位置(A)に接続した。
【0076】
<熱球形化処理装置2>
図4に示すように、イオナイザー接続位置(B)の位置に入口出口がともに1口のイオナイザー接続ノズル21を介し、イオナイザー20を接続した以外は熱球形化装置1と同様の微粒子供給装置、熱処理装置、イオナイザーを有する装置を熱球形化装置2とする。
【0077】
<熱球形化処理装置3>
図5に示すように、冷風供給口8-1の位置からイオンを供給できるようにイオナイザー20を接続した以外は熱球形化装置1と同様の微粒子供給装置、熱処理装置、イオナイザーを有する装置を熱球形化装置3とする。
【0078】
<熱球形化処理装置4>
イオナイザーを用いない以外は熱球形化装置1と同様の装置を熱球形化装置4とする。
【0079】
〔実施例1〕
熱球形化処理装置1を用いて、トナー用粉体粒子1~3を処理することでトナー1~3を得た。このときの運転条件は、イオナイザー:入力電源24V、イオナイザーエアー圧:0.4MPa、イオナイザーエアー量0.15m3/min、フィード量=10kg/hr、熱風温度=150℃、熱風風量=8.0m3/min、冷風総量=2.0m3/min(冷風供給手段8-1:1.0m3/min、冷風供給手段8-2:0.5m3/min、冷風供給手段8-3:0.5m3/min)、圧縮気体風量=0.4m3/min、ブロワー風量=12.0m3/minであった。また、流量調整機構によって各供給口の流速を同一になるよう調整した。運転時間は1時間とした。
【0080】
〔実施例2〕
熱球形化処理装置2を用いた以外は同様にして、トナー用粉体粒子1~3を処理することでトナー4~6を得た。
【0081】
〔比較例1〕
熱球形化処理装置3を用いた以外は同様にして、トナー用粉体粒子1~3を処理することで比較トナー1~3を得た。
【0082】
〔比較例2〕
熱球形化処理装置4を用いた以外は同様にして、トナー用粉体粒子1~3を処理することで比較トナー4~6を得た。
【0083】
本実施例及び比較例では、重量平均粒径(D4)を測定し、トナー用粉体粒子からの重量平均粒径変化量の評価を行った。下記評価ランクによる実施例1、2及び比較例1、2の評価結果を表3に示す。なお、後述の表4における粒径差の評価ランクも下記A~Fを適用した。
A・・・0.1μm未満 :非常に良好である
B・・・0.1以上0.2μm未満 :良好である
C・・・0.2以上0.3μm未満 :
D・・・0.3以上0.4μm未満 :
E・・・0.4以上0.5μm未満 :許容できるレベルである
F・・・0.5以上 :本発明では許容できない
【0084】
【表3】
【0085】
表3に示されるように、同一条件における熱球形化処理後の、球形化の程度(円形度の変化量)は同等であるが、実施例のほうが粒径の上昇が小さく、粗大化が抑制されており、実施例1のほうが実施例2よりも抑制効果が高いことが確認される。これは、イオナイザーによる静電凝集をキャンセルした後、分散部材などとの衝突においてトナー粒子が一部摩擦帯電され、再度わずかに静電凝集が引き起こされたためと考えられる。また、比較例1及び2を比較すると、処理後のトナー粒径に差がみられない。これは、熱処理装置内部に突入後はトナーの熱球形化が開始されるため、凝集体の合一も開始されるため、冷却口におけるイオン供給では効果が得られないことを示唆している。
【0086】
〔実施例3〕
熱球形化処理装置1を用いて、トナー用粉体粒子4~8を処理することでトナー7~11を得た。このときの運転条件は、イオナイザー:入力電源24V、イオナイザーエアー圧:0.4MPa、イオナイザーエアー量0.15m3/min、フィード量=10kg/hr、熱風温度=220℃、熱風風量=8.0m3/min、冷風総量=2.0m3/min(冷風供給手段8-1:1.0m3/min、冷風供給手段8-2:0.5m3/min、冷風供給手段8-3:0.5m3/min)、圧縮気体風量=0.4m3/min、ブロワー風量=12.0m3/minであった。また、流量調整機構によって各供給口の流速を同一になるよう調整した。運転時間は1時間とした。
【0087】
〔実施例4〕
熱球形化処理装置2を用いた以外は同様にして、トナー用粉体粒子4~8を処理することでトナー12~16を得た。
【0088】
〔比較例3〕
熱球形化処理装置3を用いた以外は同様にして、トナー用粉体粒子4~8を処理することで比較トナー7~11を得た。
【0089】
〔比較例4〕
熱球形化処理装置4を用いた以外は同様にして、トナー用粉体粒子4~8を処理することで比較トナー12~16を得た。
【0090】
本実施例及び比較例では、製造した微粉砕品を1時間毎にサンプリングし、重量平均粒径(D4)を測定し、トナー用粉体粒子からの重量平均粒径変化量の評価を行った。また1時間運転後、装置を停止し、分散機構及び熱処理装置に、シリカ微粒子の脱離による付着(汚れ具合)を確認した。
A・・・付着はほとんどない。
B・・・若干付着確認できる。
C・・・付着多数認められ、トナー用微粒子から多量のシリカが脱離し表面のシリカ量が処理前後で変化してしまう。
【0091】
実施例3、4及び比較例3、4の評価結果を表4に示す。
【0092】
【表4】
【0093】
表4に示すように、シリカ微粒子をトナー用粉体粒子表面に付着させた場合においても、実施例のほうが、比較例に対しトナーの粗大化が抑制されていることが確認できる。さらに、トナー用粉体粒子6、7を用いた場合、他の条件と比較しても顕著に粗大化が抑制されていることが確認された。これは、トナー用粉体粒子に大粒径のシリカ微粒子が付着していることにより、トナー用粉体粒子凝集体の粒子間の空隙が大きくなり、イオンが供給されやすくなったためと推察できる。トナー用粉体粒子8を用いた場合は、熱球形化処理後、分散部材などに多量のシリカが付着しており、トナーからシリカ微粒子が脱離していることが示唆される。これは、トナー用粉体粒子に対してシリカ微粒子が大きすぎるため、表面への固着がされにくく、容易にはがれてしまうためと考えられる
【符号の説明】
【0094】
1.原料定量供給手段、2.圧縮気体流量調整手段、3.導入管、4.突起状部材、5.供給管、6.処理室、7.熱風供給手段、8.冷風供給手段、9.規制手段、10.回収手段、11.熱風供給手段出口、12.熱風分配部材、13.旋回部材、14.粉体粒子供給口、15.流量調整機構、16.ブレード、20.イオナイザー、21.イオナイザー接続ノズル、(A).イオナイザー接続位置(A)、(B).イオナイザー接続位置(B)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7