(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】トナー製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/08 20060101AFI20240909BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
G03G9/08 381
G03G9/097 374
(21)【出願番号】P 2020156970
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】田村 順一
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 陽介
(72)【発明者】
【氏名】山下 大輔
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】溝尾 祐一
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-020244(JP,A)
【文献】特開2015-079166(JP,A)
【文献】特開2013-020245(JP,A)
【文献】特開2017-194540(JP,A)
【文献】特開2017-029952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08
G03G 9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理前トナー粒子と無機微粒子とを混合し、熱処理前トナー粒子混合物を得る混合工程、および
該熱処理前トナー粒子混合物を、気体を用いた供給手段により、熱球形化処理を行う処理室内に供給して熱風と接触させて、供給された該熱処理前トナー粒子混合物を該熱風により熱球形化処理して、熱球形化トナー粒子を得る熱処理工程、
を有するトナーの製造方法であって、
該熱処理前トナー粒子は、重量平均粒径が3.0μm以上5.5μm以下であり、
該供給手段から供給される際の該熱処理前トナー粒子混合物の速度が25m/sec以上70m/sec以下であ
り、
該熱処理工程において、該熱処理前トナー粒子混合物の供給量をF(kg/min)とし、該熱処理前トナー粒子混合物と共に該供給手段から供給される風量をQ(m
3
/min)としたとき、該Fと該Qとが下記式(2)を満たすことを特徴とするトナーの製造方法。
0.025≦F/Q≦0.400 式(2)
【請求項2】
該熱処理工程において、該熱処理前トナー粒子混合物が気体と共に供給され、
供給される該気体の温度が、該熱処理前トナー粒子混合物のガラス転移温度未満である請求項
1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】
該供給手段から供給される際の該熱処理前トナー粒子混合物の速度が30m/sec以上50m/sec以下である請求項1
又は2に記載のトナーの製造方法。
【請求項4】
該無機微粒子の体積平均粒径が10nm以上300nm以下である請求項1~
3のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
【請求項5】
該熱処理前トナー粒子の平均円形度をC
1、該熱球形化トナー粒子の平均円形度をC
2としたとき、該C
1および該C
2が下記式(1)を満たす請求項1~
4のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
0.010≦C
2-C
1 式(1)
【請求項6】
該熱球形化トナー粒子における該無機微粒子の量が、該熱処理前トナー粒子混合物における該無機微粒子の量を基準として、80質量%以上である請求項1~
5のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
【請求項7】
該熱処理工程において用いられる装置が、
(1)該トナー粒子の熱処理が行われる円筒形状の処理室と、
(2)該処理室の中心軸上に、該処理室の下端部から上端部に向けて突出するように配置された、断面が略円形状である柱状部材と、
(3)該処理室に該トナー粒子を供給するためのトナー粒子供給手段と、
(4)供給された該トナー粒子を熱処理するための熱風を供給する熱風供給手段と、
(5)該処理室の下端部側に設けられたトナー粒子排出口から、熱処理された該トナー粒子を処理室外に排出し、回収する回収手段と、
を有し、
該熱風供給手段は、熱風が該処理室の内周面に沿って回転しながら供給されるように設けられ、該トナー粒子供給手段は、該柱状部材の外周面に設けられた複数の粒子供給口により構成され、該トナー粒子排出口は、該トナー粒子の旋回方向を維持するように、該処理室の外周部に設けられた装置である請求項1~
6のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
【請求項8】
該熱処理前トナー粒子混合物が、放射状に広がる8方向の供給管によって、該処理室内に供給される請求項1~7のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
【請求項9】
該熱処理前トナー粒子は、重量平均粒径が4.8μm以上5.5μm以下であり、
該供給手段から供給される際の該熱処理前トナー粒子混合物の速度が30m/sec以上70m/sec以下であり、
該熱処理工程において、該熱処理前トナー粒子混合物が気体と共に供給され、
供給される該気体の温度が、該熱処理前トナー粒子混合物のガラス転移温度未満である請求項1に記載のトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式、トナージェット方式に用いられるトナー製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式のフルカラー複写機が広く普及し、印刷市場への適用も始まっている。印刷市場では、幅広いメディア(紙種)に対応しながら、高速、高画質、高い生産性が要求されるようになってきている。高い現像性や転写性を達成するため、トナー粒子の熱球形化処理が有効である(特許文献1)。これはトナー粒子表面への大粒径微粒子が熱処理により固着することでトナー同士にスペーサー効果が発現するためである。またトナーにおいては、小粒径化による高画質化が進んでいる。小粒径化により細線の再現性が向上するなどのメリットが存在する。小粒径化することで付着力も増大するため、外添剤によるスペーサー効果など外添剤の固着や円形度アップなど、熱球形化処理はより重要度が増している。
このような小粒径化トナーに対し熱球形化処理を行うと、トナー粒子の合一により粒径の増大や分布のブロード化など、弊害が大きくなる傾向にあった。また、前記課題に対して、トナー粒子の合一を抑制するため、高風速でトナー粒子を搬送し、凝集を解そうとすることでトナー粒子の合一を抑制する方法があるが、トナー粒子から外添剤が外れてしまうという問題が発生してしまった。小粒径トナー製造時に熱球形化を行うためには、トナー粒子合一による粒径増大やブロード化、トナー粒子からの外添剤外れを抑える必要があるという点に関して、更に改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記の如き問題点を解決し、熱球形化処理時の粒径増加を抑制するとともに、外添剤外れを抑制することで粒度分布がシャープで外添剤維持率の高いトナーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、熱処理前トナー粒子と無機微粒子とを混合し、熱処理前トナー粒子混合物を得る混合工程、および
該熱処理前トナー粒子混合物を、気体を用いた供給手段により、熱球形化処理を行う処理室内に供給して熱風と接触させて、供給された該熱処理前トナー粒子混合物を該熱風により熱球形化処理して、熱球形化トナー粒子を得る熱処理工程、
を有するトナーの製造方法であって、
該熱処理前トナー粒子は、重量平均粒径が3.0μm以上5.5μm以下であり、
該供給手段から供給される際の該熱処理前トナー粒子混合物の速度が25m/sec以上70m/sec以下であり、
該熱処理工程において、該熱処理前トナー粒子混合物の供給量をF(kg/min)とし、該熱処理前トナー粒子混合物と共に該供給手段から供給される風量をQ(m
3
/min)としたとき、該Fと該Qとが下記式(2)を満たすことを特徴とするトナーの製造方法に関する。
0.025≦F/Q≦0.400 式(2)
【発明の効果】
【0006】
本発明により、熱球形化処理時の粒径増加を抑制するとともに、外添剤外れを抑制することで粒度分布がシャープで外添剤維持率の高いトナー製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に用いられる熱球形化装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
小粒径化トナーの熱球形化処理を行うと、トナー粒子は合一しやすくなり、粒径増大や分布のブロード化など、弊害が大きくなる傾向にあった。そのため、上記熱球形化処理をする装置内に供給する際の風速を高くすることで合一を抑制しようとするが、過剰に風速を高くすることでトナー粒子から外添剤が外れ、狙った外添剤被覆率が得られなかった。本発明者らがこの点を改良しようと検討を進めた結果、トナー粒子径に対し、供給手段から供給される際の熱処理前トナー粒子混合物の速度を上記範囲とすることで上記の弊害なく小粒径トナーの熱球形化を行うことに成功した。
【0009】
本発明で弊害なく小粒径トナーの熱球形化を行うことが可能となったメカニズムについては現状確定には至っていないが、本発明者らは以下のように想定している。
【0010】
本発明では、トナー粒子の重量平均粒径が3.0μm以上5.5μm以下のとき、気体を用いた供給手段から供給される際の熱処理前トナー粒子混合物の速度を25m/sec以上70m/sec以下にすることが重要である。上記範囲とすることで熱処理前のトナー粒子混合物の凝集塊が熱風との接触により解れ、熱球形化時の合一による粒径増大や分布のブロード化を抑制できる。さらに、適度な速度により、無機微粒子がトナー粒子から外れず維持されることで狙いの無機微粒子被覆率が得られると推測している。上記トナー粒子の重量平均粒径が5.5μmより大きければ上記課題は発生せず、3.0μmより小さいと上記範囲でも上記課題を解決できない。
【0011】
さらに、粒度分布を良化させ、無機微粒子を外さなくするためには、上記供給速度が30m/sec以上50m/sec以下であることがより好ましい。
【0012】
本発明における“熱球形化処理”とは、上記熱処理前トナー粒子の平均円形度をC1、上記熱球形化トナー粒子の平均円形度をC2としたとき、上記C1および上記C2が下記式(1)を満たすような条件で熱球形化処理を行うことである。この程度の熱球形化処理を行った場合に、熱球形化時の合一による粒径増大が生じやすくなるが、熱処理前トナー粒子混合物を所定の速度で、熱球形化処理を行う処理室内に供給することで、粒径の増大を抑えることができる。尚、熱球形化処理後のトナー粒子の円形度を高くすることが出来、結果、転写効率を高められる。
0.010≦C2-C1 式(1)
【0013】
また、上記の条件で熱処理前トナー粒子混合物に対して熱球形化処理を施すことによって、上記熱球形化トナー粒子における無機微粒子の量を、上記熱処理前トナー粒子混合物における該無機微粒子の量を基準として、80質量%以上とすることができる。これは、トナー粒子に外添される無機微粒子のトナー粒子からの外れ抑制を表し(以後、外添剤維持率とも称する。)、80質量%以上であれば外添剤外れ抑制がなされていると判断できる。
【0014】
また、上記熱処理前トナー粒子混合物の供給量をF(kg/min)とし、上記熱処理前トナー粒子混合物と共に上記供給手段から供給される風量をQ(m3/min)としたとき、上記Fと上記Qが下記式(2)を満たすことが粒径増大や分布のブロード化を抑制に効果があり、さらに無機微粒子がほとんど外れることなく狙いの無機微粒子被覆率が得られる。
0.025≦F/Q≦0.400 式(2)
【0015】
また、上記熱処理前トナー粒子混合物を供給するために用いられる気体の温度が、上記熱処理前トナー粒子混合物のガラス転移温度未満にすることが好ましい。上記気体の温度が、上記熱処理前トナー粒子混合物のガラス転移温度未満であることで、凝集塊がより解れやすくなる。
【0016】
次に、本発明の製造方法および製造装置で、トナー粒子を製造する手順について説明する。
【0017】
<トナー粒子の製造法>
次に、本発明の製造方法および製造装置で、トナー粒子を製造する手順について説明する。
【0018】
まず、原料混合工程では、トナー内添剤として、少なくとも結着樹脂、着色剤を所定量秤量して配合し、混合する。必要に応じて、トナーの加熱定着時にホットオフセットの発生を抑制する離型剤、該離型剤を分散させる分散剤、帯電制御剤などを混合してもよい。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等がある。
【0019】
更に、上記で配合し、混合したトナー原料を溶融混練して、樹脂類を溶融し、その中の着色剤等を分散させる。該溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。近年では、連続生産できる等の優位性から、1軸または2軸押出機が主流となっており、例えば、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、池貝社製PCM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が一般的に使用される。更に、トナー原料を溶融混練することによって得られる着色樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
【0020】
上記で得られた着色樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕される。更に、イノマイザー(ホソカワミクロン社製)、クリプトロン(川崎重工社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボミル(ターボ工業社製)等の機械式粉砕機で微粉砕される。粉砕工程では、このように段階的に所定のトナー粒度まで粉砕される。
【0021】
上記で得られたトナー用紛体粒子を必要に応じて微粉カット、粗粉カットなどの分級処理を行っても良い。
【0022】
本発明のトナーの製造方法においては、熱処理工程の前に、得られたトナー用粉体粒子に無機微粒子を添加することが重要である。トナー用粉体粒子に無機微粒子を添加する方法としては、トナー用粉体粒子と無機微粒子を所定量配合し、ヘンシェルミキサー、メカノハイブリッド(日本コークス社製)、スーパーミキサー、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)等の粉体にせん断力を与える高速撹拌機を外添機として用いて、撹拌・混合する。
【0023】
続いて、得られたトナー用粉体粒子と無機微粒子の混合物に対し、熱処理工程で
図1のような熱処理装置を用いてトナー用粉体粒子の球形化処理を行う。
【0024】
原料定量供給手段(トナー粒子供給手段)1により定量供給された混合物は、圧縮気体調整手段2により調整された圧縮気体によって、原料供給手段の鉛直線上に設置された導入管3に導かれる。導入管を通過した混合物は、原料供給手段の中央部に設けられた円錐状の突起状部材4により均一に分散され、放射状に広がる8方向の供給管5に導かれ熱処理が行われる円筒形状の処理室6に導かれる。
【0025】
このとき、処理室に供給された混合物は、処理室の中心軸上に処理室の下端部から上端部に向けて突出するように設けられた混合物の流れを規制するための、断面が略円形状の規制手段(柱状部材)9によって、その流れが規制される。このため処理室に供給された混合物は、処理室内を旋回しながら熱風と接触させて熱処理された後、冷却される。
【0026】
供給された混合物を熱処理するための熱は、熱風供給手段7から供給され、分配部材12で分配され、熱風を旋回させるための旋回部材13により、処理室内に熱風を螺旋状に旋回させて導入される。その構成としては、熱風を旋回させるための旋回部材13が、複数のブレードを有しており、その枚数や角度により、熱風の旋回を制御することができる。処理室内に供給される熱風は、熱風供給手段7の出口部における温度が100℃以上300℃以下であることが好ましく、130℃以上170℃以下であることがより好ましい。熱風供給手段の出口部における温度が上記の範囲内であれば、混合物を加熱しすぎることによるトナー粒子の融着や合一を防止しつつ、トナー粒子を均一に球形化処理することが可能となる。このときの円形度としては、0.955以上0.980以下であることが好ましい。熱風は熱風供給手段出口11から供給される。
【0027】
更に熱処理された熱処理トナー粒子は冷風供給手段8から供給される冷風によって冷却され、冷風供給手段8から供給される温度は-20℃乃至30℃であることが好ましい。冷風の温度が上記の範囲内であれば、熱処理トナー粒子を効率的に冷却することができ、混合物の均一な球形化処理を阻害することなく、熱処理トナー粒子の融着や合一を防止することができる。冷風の絶対水分量は、0.5g/m3以上15.0g/m3以下であることが好ましい。
【0028】
次に、冷却された熱処理トナー粒子は、処理室の下端にある回収手段(トナー粒子排出口)10によって処理室外に排出し、回収される。なお、回収手段の先にはブロワー(不図示)が設けられ、それにより吸引搬送される構成となっている。
【0029】
また、規則手段9の外周面に設けられた粉体粒子供給口14は、供給された混合物の旋回方向と熱風の旋回方向が同方向になるように設けられており、表面処理装置の回収手段10は、旋回された粉体粒子の旋回方向を維持するように、処理室の外周部に設けられている。さらに、冷風供給手段8から供給される冷風は、装置外周部から処理室内周面に、水平かつ接線方向から供給されるよう構成されている。粉体供給口から供給される熱処理前トナー粒子の旋回方向、冷風供給手段から供給された冷風の旋回方向、熱風供給手段から供給された熱風の旋回方向がすべて同方向である。そのため、処理室内で乱流が起こらず、装置内の旋回流が強化され、熱処理前トナー粒子に強力な遠心力がかかり、熱処理前トナー粒子の分散性が更に向上するため、合一粒子の少ない、形状の揃った熱処理トナー粒子を得ることができる。
【0030】
上述のような熱球形化処理によって、本発明のトナーの平均円形度は上記式(1)を満たすことができる。
【0031】
<トナーの原料>
次に、本発明で使用する結着樹脂及び着色剤を少なくとも含むトナー粒子の原材料について説明する。
【0032】
<結着樹脂>
電子写真に用いられるトナーに用いられる結着樹脂としては、一般的な樹脂を用いることができ、ポリエステル樹脂、スチレン-アクリル酸共重合体、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが例示できる。この中でも、低温定着性を良好にするという観点から非晶性ポリエステル樹脂が用いられ、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、低分子量ポリエステルと高分子量ポリエステルを併用することが知られている。また、さらなる低温定着性の向上と保管時の耐ブロッキング性の観点から結晶性ポリエステルを可塑剤として用いることもある。
【0033】
<着色剤>
トナーに含有できる着色剤としては、以下のものが挙げられる。
【0034】
該着色剤としては、公知の有機顔料若しくは油性染料、カーボンブラック、又は磁性体などが挙げられる。
【0035】
シアン系着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物などが挙げられる。
【0036】
マゼンタ系着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物などが挙げられる。
【0037】
イエロー系着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物などが挙げられる。
【0038】
黒色系着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、又は、前記イエロー系着色剤、マゼンタ系着色剤、及びシアン着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。
【0039】
該着色剤は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0040】
<離型剤>
必要に応じて、トナーの加熱定着時にホットオフセットの発生を抑制する離型剤を用いてもよい。該離型剤としては、低分子量ポリオレフィン類、シリコーンワックス、脂肪酸アミド類、エステルワックス類、カルナバワックス、炭化水素系ワックスなどが一般的に例示できる。
【0041】
<無機微粒子>
本発明において、無機微粒子は外添剤としてトナー粒子と混合するが、上述のように熱処理前トナー粒子と混合されることに加え、更に、熱球形化トナー粒子に外添してもよい。外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウムの如き無機微粉体が好ましい。無機微粉体は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
【0042】
流動性向上のための外添剤としては、体積平均粒径が10nm以上300nm以下であることが好ましい。流動性向上や耐久性安定化を両立させるためには、比表面積が上記範囲の無機微粉体を併用してもよい。
【0043】
外添剤は、トナー粒子に対して被覆率が40%以上85%以下となるように添加量を調整することが好ましい。熱球形化トナー粒子と外添剤との混合は、上述したようなヘンシェルミキサーの如き公知の混合機を用いることができる。
【0044】
トナー及び原材料の各種物性の測定法について以下に説明する。
【0045】
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、50μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
【0046】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0047】
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
【0048】
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
【0049】
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を1μm以上30μm以下に設定する。
【0050】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0051】
<トナー粒子の個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法の(7)の工程において、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、分析/個数統計値(算術平均)画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
【0052】
<トナー粒子のガラス転移温度(Tg)の測定方法>
ガラス転移温度は、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。
【0053】
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
【0054】
具体的には、樹脂又はトナー約3mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いて、以下の条件で測定する。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:30℃
測定終了温度:180℃
【0055】
測定範囲30乃至180℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。一度180℃まで昇温させ10分間保持し、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、温度30乃至100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、樹脂のガラス転移温度(Tg)とする。
【0056】
<平均円形度の測定方法>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
【0057】
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(「VS-150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
【0058】
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
【0059】
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
【0060】
尚、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
【0061】
<熱処理前後のトナー粒子における無機微粒子の量の測定方法>
熱処理前後のトナー粒子における無機微粒子の量は蛍光X線測定により算出する。各元素の蛍光X線の測定は、JIS K0119-1969に準ずる。具体的には、以下のとおりである。
【0062】
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置(商品名:Axios、PANalytical社製)と、測定条件設定および測定データ解析をするための付属の専用ソフト(商品名:SuperQ ver.4.0F、PANalytical社製)とを用いる。また、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空とし、測定径(コリメーターマスク径)は27mmとし、測定時間は10秒とする。なお、同装置にて、軽元素を測定する場合には、プロポーショナルカウンター(PC)で検出し、重元素を測定する場合には、シンチレーションカウンター(SC)で検出する。
【0063】
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミニウムリングの中にトナー約4gを入れて平らにならす。そして、錠剤成型圧縮機(商品名:BRE-32、(株)前川試験機製作所製)を用いて、20MPaで60秒間加圧し、厚さ約2mm、直径約39mmに成型したペレットを用いる。上記条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置を基に元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:cps)から、該元素の濃度を算出する。例えばシリカ微粒子の場合は、トナー粒子100質量部に対してシリカ微粒子を0.1質量部、1.0質量部、2.5質量部となるようにトナー粒子とそれぞれ混合し、これらを検量線用の試料とする。それぞれの試料について、上記錠剤成型圧縮機を用い、上述のようにして検量線用の試料のペレットを作製し、PETを分光結晶に用いた際に回折角(2θ)=109.08°において観測されるSi-Kα線の計数率(単位:cps)を測定する。この際、X線発生装置の加速電圧、電流値は、それぞれ、24kV、100mAとする。得られたX線の計数率を縦軸に、検量線用試料中のシリカ微粒子の量を横軸として、一次関数の検量線を得る。
【0064】
次に、上記錠剤成型圧縮機を用いて、分析対象のトナーを上述のようにしてペレットとし、そのSi-Kα線の計数率を測定する。そして、上記検量線からトナー粒子中のシリカ微粒子の含有量を算出する。
【実施例】
【0065】
<ポリエステル樹脂Lの製造例>
・ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:72.0質量部(0.20モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸:
28.0質量部(0.17モル;多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)
・2-エチルヘキサン酸錫(エステル化触媒):0.5質量部
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応させた。
【0066】
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、大気圧に戻した。
・無水トリメリット酸:
3質量部(0.01モル;多価カルボン酸総モル数に対して4.0mol%)
・tert-ブチルカテコール(重合禁止剤):0.1質量部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度180℃に維持したまま、1時間反応させ、ASTM D36-86に従って測定した軟化点が90℃に達したことを確認してから温度を下げて反応を止め、結着樹脂成分としてポリエステル樹脂Lを得た。
【0067】
<ポリエステル樹脂Hの製造例>
・ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:72.3質量部(0.20モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸:
18.3質量部(0.11モル;多価カルボン酸総モル数に対して65.0mol%)
・フマル酸:
2.9質量部(0.03モル;多価カルボン酸総モル数に対して15.0mol%)
・2-エチルヘキサン酸錫(エステル化触媒):0.5質量部
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた。
【0068】
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180まで冷却し、大気圧に戻した。
・無水トリメリット酸:
6.5質量部(0.03モル;多価カルボン酸総モル数に対して20.0mol%)
・tert-ブチルカテコール(重合禁止剤):0.1質量部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度160℃に維持したまま、15時間反応させ、ASTM D36-86に従って測定した軟化点が137℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め、結着樹脂成分としてポリエステル樹脂Hを得た。
【0069】
<結晶性ポリエステル樹脂>
・1,6-ヘキサンジオール:
34.5質量部(0.29モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・ドデカン二酸:
65.5質量部(0.28モル;多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)
・2-エチルヘキサン酸錫:0.5質量部
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
【0070】
次に、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度200℃に維持したまま、4時間反応させた。
【0071】
さらに、反応槽内の圧力を序々に開放して常圧へ戻した後、脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族モノアルコールからなる群より選ばれた1種以上の脂肪族化合物を、原料モノマー100.0mol%に対し7.0mol%加え、常圧下にて200℃で2時間反応させた。
【0072】
その後、再び反応槽内を5kPa以下へ減圧して200℃で3時間反応させることにより、結晶性ポリエステル樹脂を得た。
【0073】
[無機微粒子1の製造例]
熱処理前トナー粒子に外添混合する無機微粒子として、下記要領でシリカ微粒子を製造した。
【0074】
シリカ微粒子の製造には、燃焼炉は、内炎と外炎が形成できる二重管構造の炭化水素-酸素混合型バーナーを用いた。バーナー中心部にスラリー噴射用の二流体ノズルが接地され、原料の珪素化合物が導入される。二流体ノズルの周囲から炭化水素-酸素の可燃性ガスが噴射され、還元雰囲気である内炎及び外炎を形成する。可燃性ガスと酸素の量及び流量の制御により、雰囲気と温度、火炎の長さ等が調整される。火炎中において珪素化合物からシリカ微粒子が形成され、さらに所望の粒径になるまで融着させる。その後、冷却後、バグフィルター等により捕集することによって得られる。
【0075】
原料の珪素化合物として、ヘキサメチルシクロトリシロキサンを用いて、シリカ微粒子を製造し、得られたシリカ微粒子100質量部に、ヘキサメチルジシラザン4質量部で表面処理した。得られたシリカ微粒子を無機微粒子1とし、平均粒子径について表1に示す。
【0076】
[無機微粒子2の製造例]
シリカ原体の平均粒子径を表1のとおりに変更した以外は無機微粒子1と同様の手法で無機微粒子2を作製した。平均粒子径について表1に示す。
【0077】
【0078】
<熱処理前トナー粒子混合物1の製造例>
・非晶性ポリエステル樹脂L 80質量部
・非晶性ポリエステル樹脂H 20質量部
・結晶性ポリエステル樹脂 5質量部
・フィッシャートロプシュワックス(炭化水素ワックス、最大吸熱ピークのピーク温度90℃) 8質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 7質量部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、二軸混練機(PCM-30型、株式会社池貝製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ピンミルにて重量平均粒径100μm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T-250、ターボ工業(株)製)にて目的粒径となるように回転数やパス回数を調整して微粉砕した。さらに回転型分級機(200TSP、ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、熱処理前トナー粒子を得た。回転型分級機(200TSP、ホソカワミクロン社製)の運転条件は、目的粒径および粒度分布が得られるように回転数を調整して分級を行った。
【0079】
得られた熱処理前トナー粒子100質量部に、無機微粒子1を1.34質量部添加し、ヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)で、回転数30s-1、回転時間10minで混合し、熱処理前トナー粒子混合物1を得た。表2に物性を載せる。
【0080】
<熱処理前トナー粒子混合物2~14の製造例>
表1及び2に示す材料、条件に変更した以外は、熱処理前トナー粒子混合物1と同様に製造し、熱処理前トナー粒子混合物2~14を得た。表2に物性を載せる。
【0081】
【0082】
〔実施例1〕
<熱球形化トナー粒子1の製造例>
熱処理前トナー粒子混合物1を用い、
図1で示す表面処理装置によって熱球形化処理を行い、熱球形化トナー粒子1を得た。運転条件はフィード量=2.3kg/minとし、処理室への供給風量(エアー)=13m
3/min、供給流路の最大風速=40m/sec、エアー温度25℃、また、熱風温度C=170℃、熱風流量=30m
3/min、冷風温度E=-5℃、冷風流量=12m
3/min、冷風絶対水分量=3g/m
3、ブロワー風量=70m
3/minとした。得られた処理トナー粒子の物性は表3に載せる。
【0083】
<トナー1の製造例>
100質量部の熱球形化トナー粒子1に、疎水性シリカ(BET:200m2/g)1.0質量部、及び、イソブチルトリメトキシシランで表面処理したチタニア微粒子(BET:80m2/g)1.0質量部を、ヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)で回転数30s-1、回転時間10min.で混合して、トナー1を得た。
【0084】
〔実施例2~12(実施例9~11は参考例である。)、比較例1、2〕
<熱球形化トナー粒子2~14の製造例>
熱球形化トナー粒子2~14に対し、表3に示す条件に変更した以外は、熱球形化トナー粒子1と同様に製造し、熱球形化トナー粒子2~14を得た。得られた処理トナー粒子の物性は表3に載せる。
【0085】
<トナー2~14の製造例>
熱球形化トナー粒子1を熱球形化トナー粒子2~14に変更した以外は、トナー1の製造例と同様に製造し、トナー2~14を得た。
【0086】
【0087】
<磁性コア粒子1の製造例>
・工程1(秤量・混合工程):
Fe2O3 62.7質量部
MnCO3 29.5質量部
Mg(OH)2 6.8質量部
SrCO3 1.0質量部
前記材料を前記組成比となるようにフェライト原材料を秤量した。その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕・混合した。
・工程2(仮焼成工程):
得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)で、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記の通りである。
(MnO)a(MgO)b(SrO)c(Fe2O3)d
前記式において、a=0.257、b=0.117、c=0.007、d=0.393
・工程3(粉砕工程):
得られた仮焼フェライトをクラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。得られたスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
・工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、仮焼フェライト100質量部に対して分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム1.0質量部、バインダーとしてポリビニルアルコール2.0質量部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。得られた粒子を粒度調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
・工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
・工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)37.0μmの磁性コア粒子1を得た。
【0088】
<被覆樹脂1の調製>
シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量%
メチルメタクリレートモノマー 0.2質量%
メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量%
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
トルエン 31.3質量%
メチルエチルケトン 31.3質量%
アゾビスイソブチロニトリル 2.0質量%
前記材料のうち、シクロヘキシルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、メチルエチルケトンを、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び撹拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに入れ、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした。その後、80℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合させた。得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥して被覆樹脂1を得た。
【0089】
次いで、30質量部の被覆樹脂1を、トルエン40質量部及びメチルエチルケトン30質量部に溶解させて、重合体溶液1(固形分30質量%)を得た。
【0090】
<被覆樹脂溶液1の調製>
重合体溶液1(樹脂固形分濃度30%) 33.3質量%
トルエン 66.4質量%
カーボンブラックRegal330(キャボット製) 0.3質量%
(一次粒径25nm、窒素吸着比表面積94m2/g、DBP吸油量75mL/100g)
を、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで1時間分散した。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過し、被覆樹脂溶液1を得た。
【0091】
<磁性キャリア1の製造例>
(樹脂被覆工程):
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに、磁性コア粒子1及び被覆樹脂溶液1を投入した(被覆樹脂溶液1の投入量は、100質量部の磁性コア粒子1に対して樹脂成分として2.5質量部になる量)。投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80質量%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後冷却した。得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)38.2μmの磁性キャリア1を得た。
【0092】
<二成分系現像剤1の製造例>
92.0質量部の磁性キャリア1と8.0質量部のトナー1をV型混合機(V-20、セイシン企業製)により混合し、二成分系現像剤1を得た。
【0093】
<二成分系現像剤2~14の製造例>
トナー1をトナー2~14に変更した以外は、二成分系現像剤1の製造例と同様に製造し、二成分系現像剤2~14を得た。
【0094】
<熱処理前後のトナー粒子の重量平均粒径変化>
熱処理前トナー粒子の重量平均粒径をD1、熱球形化トナー粒子の重量平均粒径をD2としたとき、D2-D1の粒径変化を評価した。C以上を本発明の効果が得られていると判断した。評価結果を表6に示す。
【0095】
(評価基準)
A:D2-D1が0.1μm以下 (非常に優れている)
B:D2-D1が0.1μmより大きい、0.3μm以下(良好である)
C:D2-D1が0.3μmより大きい、0.5μm以下(本発明では問題ないレベルである)
D:D2-D1が0.5より大きい (本発明では許容できない)
【0096】
<熱処理前後トナーの外添剤維持率>
熱処理前トナー粒子混合物における無機微粒子量をR1、熱球形化トナー粒子における無機微粒子量をR2としたとき、R2/R1×100を外添剤維持率として評価した。C以上を本発明の効果が得られていると判断した。評価結果を表6に示す。
【0097】
(評価基準)
A:R2/R1×100が95%以上 (非常に優れている)
B:R2/R1×100が90%以上、95%未満(良好である)
C:R2/R1×100が80%以上、90%未満(本発明では問題ないレベルである)
D:R2/R1×100が80%未満 (本発明では許容できない)
【0098】
<画質>
二成分系現像剤を用いて、画質の評価を行った。
【0099】
画像形成装置として、キヤノン製デジタル商業印刷用プリンターimageRUNNER ADVANCE C5560改造機を用い、ブラック位置の現像器に二成分系現像剤1を入れた。装置の改造点としては、定着温度、プロセススピード、現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、及び、レーザーパワーを自由に設定できるように変更した。画像出力評価は、所望の画像比率のFFh画像(ベタ画像)を出力し、FFh画像のトナーの載り量が所望になるようにVDC、VD、及びレーザーパワーを調整して、後述の評価を行った。FFhとは、256階調を16進数で表示した値であり、00hが256階調の1階調目(白地部)であり、FFhが256階調の256階調目(ベタ部)である。
紙:GFC-081(81.0g/m2)
(キヤノンマーケティングジャパン株式会社)
Vcontrast:300V
(現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、及びレーザーパワーにより調整)
評価画像:上記A4用紙に1ドット、1スペースの縦線画像を配置
試験環境:常温常湿環境:温度23℃/湿度50%RH(以下「N/N」)
定着温度:170℃
プロセススピード:377mm/sec
【0100】
上記評価画像を出力し、画質性を評価した。Blur(ISO13660で定義されたラインのぼやけ方を表す数値)の値を画質性の評価指標とした。パーソナルIAS(イメージ・アナリシス・システム)(QEA社製)を用いて測定した。得られたBlurの値を下記の評価基準に従って評価した。C以上を本発明の効果が得られていると判断した。評価結果を表7に示す。
【0101】
(評価基準)
A:Blurの値35μm未満 (非常に優れている)
B:Blurの値35μm以上40μm未満 (良好である)
C:Blurの値40μm以上44μm未満 (本発明では問題ないレベルである)
D:Blurの値44μm以上 (許容できない)
【0102】
<転写効率>
紙:CS-680(68.0g/m2)
(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)
紙上のトナーの載り量:0.35mg/cm2(FFh画像)
(現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、及びレーザーパワーにより調整)
評価画像:上記A4用紙の中心に2cm×5cmの画像を配置
試験環境:高温高湿環境(温度30℃/湿度80%RH(以下H/H))
プロセススピード:377mm/sec
【0103】
評価機の安定化及び耐久評価として、画像比率0.1%の帯チャートを用いて、A4用紙に10000枚出力を行った。その後、静電潜像担持体上に上記評価画像を形成し、中間転写体に転写され、かつ記録紙に転写される前に、評価機を止めた。止めた評価機の中間転写体を取り出し、転写された画像に透明な粘着テープを貼ってトナーを採取し、粘着テープごと記録紙に貼り付けた。光学濃度系で画像の濃度を測定し、粘着テープのみを記録紙に貼った箇所の濃度を差し引き、転写濃度Aを求めた。また、評価機の静電潜像担持体を取り出し、転写残トナーについても同様の方法で転写残濃度Bを求めた。粘着テープは透明で弱粘着のスーパーステック(リンテック社製)を使用し、光学濃度計はX-Riteカラー反射濃度計(X-Rite社製)を使用した。そして、下記式を用いて、転写効率を算出した。得られた転写効率を下記の評価基準に従って評価した。C以上を本発明の効果が得られていると判断した。評価結果を表7に示す。
転写効率={転写濃度A/(転写濃度A+転写残濃度B)}×100
【0104】
(評価基準)
A:転写効率98.0%以上 (非常に優れている)
B:転写効率95.0%以上、98.0%未満 (良好である)
C:転写効率90.0%以上、95.0%未満 (本発明では問題ないレベルである)
D:転写効率90.0%未満 (許容できない)
【0105】
【0106】
【0107】
比較例1は熱処理前後の重量平均粒径変化が許容できないほど大きく、結果粒度分布がブロードとなり、画質も許容できない結果となっている。
【0108】
比較例2は、熱処理後の外添剤維持率が許容できないため、転写効率の評価で外添剤が埋まり、付着力が高くなることで転写効率が許容できないほど低く、許容できない結果となっている。
【符号の説明】
【0109】
1.原料定量供給手段(トナー粒子供給手段)、2.圧縮気体流量調整手段、3.導入管、4.突起状部材、5.供給管、6.処理室、7.熱風供給手段、8.冷風供給手段、9.規制手段(柱状部材)、10.回収手段(トナー粒子排出口)、11.熱風供給手段出口、12.分配部材、13.旋回部材、14.粉体粒子供給口