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特許7551419情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240909BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20240909BHJP
   A61B 6/46 20240101ALI20240909BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
A61B6/00 550C
A61B6/00 550D
A61B6/00 530A
A61B6/03 560J
A61B6/46 536Q
A61B5/055 380
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020158455
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052210
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】田中 亨
(72)【発明者】
【氏名】石川 亮
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-018457(JP,A)
【文献】特開2002-109538(JP,A)
【文献】特表2001-511570(JP,A)
【文献】特開2015-173720(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0153793(US,A1)
【文献】特開2010-008164(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0324031(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
A61B 5/055
A61B 8/00 - 8/15
A61B 1/00 - 1/32
G01T 1/161 - 1/166
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を撮影した、互いに異なる第1の医用画像と第2の医用画像を取得する第1の取得部と、
前記第1の医用画像における前記対象物と前記対象物の外の境界である第1の輪郭に関する第1の輪郭情報と、前記第2の医用画像における前記対象物と前記対象物の外の境界である第2の輪郭に関する第2の輪郭情報と、を取得する第2の取得部と、
前記第1の輪郭情報または前記第2の輪郭情報に基づいて前記第1の輪郭をぼかした第1の加工情報と、前記第1の輪郭情報または前記第2の輪郭情報に基づいて前記第2の輪郭をぼかした第2の加工情報と、を生成する生成部と、
前記第1の加工情報と前記第2の加工情報に基づいて、前記第1の医用画像と前記第2の医用画像の間の前記対象物の変形に関する情報である変形情報を取得する第3の取得部と、を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記第1の輪郭および前記第1の輪郭に隣接する画素を含む領域である第1の輪郭部に対してぼかす処理を行うことで前記第1の加工情報を生成し、
前記第2の輪郭および前記第2の輪郭に隣接する画素を含む領域である第2の輪郭部に対してぼかす処理を行うことで前記第2の加工情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記生成部は、前記第1の輪郭情報に基づいて前記第1の輪郭部における互いに隣り合う画素の画素値の勾配を緩やかにする処理を行うことで前記第1の加工情報を生成し、前記第2の輪郭情報に基づいて前記第2の輪郭部における互いに隣り合う画素の画素値の勾配を緩やかにする処理を行うことで前記第2の加工情報を生成することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記互いに隣り合う画素の画素値の勾配を緩やかにする処理とは、互いに隣り合う画素の画素値を平滑化する処理であることを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記生成部は、前記第1の医用画像における前記第1の輪郭および前記対象物の外部の領域に対して互いに隣り合う画素の画素値の変化を緩やかにする処理を行い、前記第2の医用画像における前記第2の輪郭および前記対象物の外部の領域に対して互いに隣り合う画素の画素値の変化を緩やかにする処理を行うことを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記生成部は、前記第1の輪郭および前記第2の輪郭をマスクすることによって、前記第1の加工情報および前記第2の加工情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記生成部は、前記第1の輪郭および前記第2の輪郭を消去することによって、前記第1の加工情報および前記第2の加工情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記生成部は、前記第1の医用画像における前記対象物に対して、前記第1の輪郭までの距離に基づいてぼかす処理を行う事で第1の加工情報を生成し、
前記第2の医用画像における前記対象物に対して、前記第2の輪郭までの距離に基づいてぼかす処理を行う事で第1の加工情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記生成部は、前記第1の輪郭までの距離が近くなるに応じてぼかす度合を強くするようにぼかす処理を行うことで、前記第1の加工情報を生成し、
前記第2の輪郭までの距離が近くなるに応じてぼかす度合を強くするようにぼかす処理を行うことで、前記第2の加工情報を生成することを特徴とする請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記第1の加工情報は、前記第1の輪郭情報に基づいて、前記第1の医用画像における前記対象物の内部であって且つ前記第1の輪郭部に含まれない領域とは独立して、前記第1の輪郭部内の前記第1の輪郭をぼかした第1の加工画像であり、
前記第2の加工情報は、前記第2の輪郭情報に基づいて、前記第2の医用画像における前記対象物の内部であって且つ前記第2の輪郭部に含まれない領域とは独立して、前記第2の輪郭部内の前記第2の輪郭をぼかした第2の加工画像であることを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記第3の取得部は、前記第1の医用画像と前記第2の医用画像との間で前記対象物の第1の位置合わせ処理を実行し、前記第1の位置合わせ処理の結果に基づいて、前記第1の加工情報と前記第2の加工情報との間で前記対象物の第2の位置合わせ処理を実行し、前記第2の位置合わせ処理の結果に基づいて、前記第1の医用画像と前記第2の医用画像の間の前記対象物の変形情報を取得することを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記互いに隣り合う画素の画素値の勾配を緩やかにする処理とは、前記第1の医用画像において前記対象物の内部の画素値を前記対象物の外部の画素値として適用するとともに、前記第2の医用画像において前記対象物の内部の画素値を前記対象物の外部の画素値として適用する処理であることを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記第3の取得部は、前記変形情報に基づいて、前記第1の医用画像と前記第2の医用画像との間における前記対象物の変形に関する情報を表示部に表示させることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記対象物は肺であり、前記変形情報は前記肺の動態情報であることを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記第1の医用画像および前記第2の医用画像は異なる時相で撮影された医用画像であることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項16】
対象物を撮影した、互いに異なる第1の医用画像と第2の医用画像を取得する第1の取得工程と、
前記第1の医用画像における前記対象物と前記対象物の外の境界である第1の輪郭に関する第1の輪郭情報と、前記第2の医用画像における前記対象物と前記対象物の外の境界である第2の輪郭に関する第2の輪郭情報と、を取得する第2の取得工程と、
前記第1の輪郭情報に基づいて、前記第1の医用画像における前記第1の輪郭をぼかした第1の加工情報と、前記第2の輪郭情報に基づいて、前記第2の医用画像における前記第2の輪郭をぼかした第2の加工情報と、を生成する生成工程と、
前記第1の加工情報と前記第2の加工情報に基づいて、前記第1の医用画像と前記第2の医用画像の間の前記対象物の変形情報を取得する第3の取得工程と、を実行することを特徴とする情報処理方法。
【請求項17】
請求項16に記載の情報処理方法を実行させるプログラムを格納した記録媒体。
【請求項18】
対象物を撮影した、互いに異なる第1の医用画像と第2の医用画像を取得する第1の取得部と、
前記第1の医用画像における前記対象物と前記対象物の外の境界である第1の輪郭に関する第1の輪郭情報と、前記第2の医用画像における前記対象物と前記対象物の外の境界である第2の輪郭に関する第2の輪郭情報と、を取得する第2の取得部と、
前記第1の輪郭情報および前記第2の輪郭情報に基づいて前記第1の医用画像における対象物と前記第2の医用画像における対象物との位置合わせ処理を実行する実行部と、
前記位置合わせ処理の結果に基づいて、前記第1の医用画像と前記第2の医用画像の間の前記対象物の変形情報を取得する第3の取得部を有し、
前記位置合わせ処理前記第1の医用画像における前記対象物の内部領域に対する前記第1の輪郭からの距離に基づく重みと、前記第2の医用画像における前記対象物の内部領域に対する前記第2の輪郭からの距離に基づく重みと、を用いた位置合わせ処理であることを特徴とする情報処理装置。
【請求項19】
前記実行部は、前記第1の輪郭からの距離および前記第2の輪郭からの距離が大きくなるほど、大きな重みを用いて前記位置合わせ処理を行うことを特徴とする請求項18に記載の情報処置装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野において、医師は、被検体の観察対象となる観察部位(対象物)を種々のモダリティにより撮像して得られる医用画像を用いて診断を行う。特に、肺や心臓のように疾患の有無や様態が臓器の動きに表れる部位の場合、複数の時相で撮像した画像を観察して診断することがある。
【0003】
複数の時相で撮像した画像の観察を支援する技術として、画像間の位置合わせを行うことにより、観察部位の動きを解析した動態情報を提示する技術がある。画像間の位置合わせ手法の一つとして、非特許文献1では、トポロジーを保存した滑らかな非線形位置合わせ手法を開示している。これによると、例えば、医用画像間の位置合わせにおいて、生体に起こり得ない変形を抑制した位置合わせを実施できるという効果があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Mirza F.Beg,Michael I.Miller,Alain Trouve et al:Computing Large Deformation Metric Mappings via Geodesic Flows of Diffeomorphisms.International Journal of Computer Vision,61(2), 139-157,2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医用画像は観察部位だけでなく観察部位の周囲も含んだ画像となっており、観察部位とその周囲との境界である輪郭が存在する。しかしながら、観察部位の周囲も含んだ画像全体を処理の対象として、例えば非特許文献1のような技術を用いた位置合わせを行った場合に、観察部位の輪郭近傍の局所的な変化が変形推定に悪影響を及ぼす場合がある。その結果として、観察部位の内部領域の位置合わせ精度が低くなるという課題があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、観察部位(対象物)と該観察部位の外との境界近傍の局所的な変化による変形推定への悪影響を低減することができる情報処理装置および情報処理方法、プログラムを格納した記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明に係る情報処理装置は、対象物を撮影した、互いに異なる第1の医用画像と第2の医用画像を取得する第1の取得部と、前記第1の医用画像における前記対象物と前記対象物の外の境界である第1の輪郭に関する第1の輪郭情報と、前記第2の医用画像における前記対象物と前記対象物の外の境界である第2の輪郭に関する第2の輪郭情報と、を取得する第2の取得部と、前記第1の輪郭情報または前記第2の輪郭情報に基づいて前記第1の輪郭をぼかした第1の加工情報と、前記第1の輪郭情報または前記第2の輪郭情報に基づいて前記第2の輪郭をぼかした第2の加工情報と、を生成する生成部と、前記第1の加工情報と前記第2の加工情報に基づいて、前記第1の医用画像と前記第2の医用画像の間の前記対象物の変形に関する情報である変形情報を取得する第3の取得部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、観察部位(対象物)と該観察部位の外との境界近傍の局所的な変化による変形推定への悪影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る情報処理装置の機器構成の一例を示す図。
図2】第1実施形態における全体の処理手順の一例を示すフロー図。
図3】第1実施形態における輪郭抑制画像(加工情報とも称する)の生成の処理手順の一例を示すフロー図。
図4】第1実施形態における輪郭抑制画像(加工情報とも称する)の一例を示す図。
図5】第1実施形態における変形情報の取得の処理手順の一例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に従って本明細書に開示の情報処理装置の好ましい実施形態について詳説する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本明細書に開示の情報処理装置の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。また、本明細書の開示は下記実施形態に限定されるものではなく、本明細書の開示の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、それらを本明細書の開示の範囲から除外するものではない。即ち、後述する実施例及びその変形例を組み合わせた構成も全て本明細書に開示の実施形態に含まれるものである。
【0011】
<第1実施形態>
第1の実施形態に係る情報処理装置は、複数の時相で撮像された被検体の観察部位(対象物)の画像を取得し、解析することで、画像間における観察部位の動態情報を求め、保存または表示する装置である。本実施形態に係る情報処理装置は、複数の時相で撮像された画像間の観察部位の動態情報を得るために、画像間における観察部位の変形に関する情報である変形情報を推定する位置合わせ機能を有している。さらに、本実施形態に係る情報処理装置は、観察部位の変形情報を推定する過程において、観察部位と該観察部位の外との境界である輪郭を含む領域である輪郭部内の該輪郭をぼかす処理を行う。そして、この処理によって輪郭部の輪郭情報を抑制した輪郭抑制画像(加工画像または加工情報とも称する)を生成して利用することを特徴とする。これにより、観察部位の輪郭形状の局所的な変化が変形推定に及ぼす影響を抑制し、画像間の観察部位の内部領域の変形情報を高い精度で推定することができる。そして、その変形情報から観察部位の動態情報を算出し表示することで、ユーザは容易に画像間の観察部位の動態情報を観察できる。
【0012】
以下、図1から図5を用いて、本実施形態の構成および処理を説明する。
【0013】
なお、本実施形態では、観察部位を肺とし、X線CT装置により呼吸状態が異なる2時相で撮像した3次元画像を例として説明を行う。ただし、本明細書に開示の情報処理装置の実施はこれに限らず、心臓のように自発的な動きを行う任意の部位を撮像した画像でもよい。また、被検体が運動(例えば、屈伸運動)を行った任意の部位を撮像した画像でもよい。
【0014】
図1は、本実施形態に係る情報処理装置の構成を示す。同図に示すように、本実施形態における情報処理装置10は、データサーバ11および表示部12と接続されている。
【0015】
データサーバ11は、観察部位を異なる2時相で撮像した画像(第1の医用画像と第2の医用画像)を保持している。第1の医用画像および第2の医用画像は、同一のモダリティで同一の被検体を予め撮像して得られた3次元断層画像(ボリュームデータ)である。ここで、第1の医用画像および第2の医用画像は、一回の検査で連続する時刻に撮像した時系列画像でもよいし、異なる日時に異なる検査で撮像した画像でもよい。また、3次元断層画像を撮像するモダリティは、X線CT装置ではなく、MRI装置、3次元超音波撮影装置、光音響トモグラフィ装置、PET/SPECT、OCT装置などであってもよい。また、3次元画像に限らず、単純X線装置や2次元超音波装置などで撮像した2次元画像でもよい。第1の医用画像および第2の医用画像は、情報処理装置10に備えられた画像取得部110を介して情報処理装置10に入力される。
【0016】
表示部12は、第1の医用画像と第2の医用画像と情報処理装置10が算出する動態情報を表示するモニタである。
【0017】
情報処理装置10は、以下の構成要素により構成される。画像取得部110(第1の取得部とも称する)は、情報処理装置10に入力される第1の医用画像と第2の医用画像を取得する。輪郭抑制画像生成部120(生成部または第2の取得部とも称する)は、第1の医用画像における観察部位と該観察部位の外との境界である輪郭(第1の輪郭とも称する)を含む領域である輪郭部(第1の輪郭部とも称する)に関する輪郭情報(第1の輪郭情報とも称する)を抑制した第1の輪郭抑制画像(第1の加工情報または第1の加工画像とも称する)と、第2の医用画像における観察部位と該観察部位の外との境界である輪郭(第2の輪郭とも称する)を含む領域である輪郭部(第2の輪郭部とも称する)に関する輪郭情報(第2の輪郭情報とも称する)を抑制した第2の輪郭抑制画像(第2の加工情報または第2の加工画像とも称する)を生成する。なお、輪郭情報を抑制する処理とは、例えば輪郭をぼかす処理を含み、第1および第2の医用画像における観察部位の内部であって且つ該輪郭部に含まれない領域とは独立して処理が行われる。変形情報推定部130(第3の取得部とも称する)は、第1の輪郭抑制画像と第2の輪郭抑制画像を利用して第1の医用画像と第2の医用画像の間の観察部位の変形情報を推定し、取得する。動態情報算出部140(第4の取得部とも称する)は、変形情報に基づいて観察部位の動態に関する情報である動態情報を取得する。ここで動態情報とは、例えば観察部位の局所的な移動量や体積変化率などである。表示制御部150は、第1の医用画像と第2の医用画像、観察部位の動態情報を表示部12に表示させる表示制御を行う。
【0018】
上記の情報処理装置10の各構成要素は、コンピュータプログラムに従って機能する。例えば、CPUがRAMをワーク領域としてROM又は記憶部などに記憶されたコンピュータプログラムを読み込み、実行することで、各構成要素の機能が実現される。なお、情報処理装置10の構成要素の一部又は全ての機能が専用の回路を用いることで実現されてもよい。また、CPUの構成要素の一部の機能が、クラウドコンピュータを用いることで実現されてもよい。
【0019】
例えば、情報処理装置10とは異なる場所にある演算装置がネットワークを介して情報処理装置10に通信可能に接続され、情報処理装置10と演算装置がデータの送受信を行うことで、情報処理装置10の構成要素の機能が実現されてもよい。
【0020】
次に、図2を用いて、図1の情報処理装置10の処理の例について説明する。
【0021】
図2は、情報処理装置10が行う全体の処理手順のフローチャートを示している。
【0022】
(S200)(画像の取得)
ステップS200において、画像取得部110(第1の取得部)は、第1の医用画像と第2の医用画像をデータサーバ11から取得する。具体的には、例えば、観察部位が肺である場合、最大吸気位の画像を第1の医用画像、最大呼気位の画像を第2の医用画像として取得する。そして、取得した第1の医用画像と第2の医用画像を、輪郭抑制画像生成部120および変形情報推定部130、表示制御部150へと出力する。
【0023】
なお、本実施形態では上述のように最大吸気位と最大呼気位の画像を取得したが、本発明の実施はこれに限らない。被検体の呼吸による肺野の運動が捉えられるのであれば、他の呼吸状態の時相の画像を取得してもよい。例えば、連続する複数の時相のCT画像からなる時系列CT画像(CT動画像、4DCT)の解析を行う場合には、隣接する時相のCT画像を取得してもよい。
【0024】
(S210)(輪郭抑制画像の生成)
ステップS210において、輪郭抑制画像生成部120(生成部/第2の取得部)は、第1の医用画像から観察部位の輪郭位置を抽出し(輪郭情報を取得)、第1の医用画像における観察部位と観察部位の外の境界である第1の輪郭を含む領域である第1の輪郭部に関する第1の輪郭情報を抑制することにより、相対的に観察部位の内部であって且つ第1の輪郭部に含まれない内部領域を強調した第1の輪郭抑制画像(第1の加工情報とも称する)を生成する。同様に、第2の医用画像における観察部位と観察部位の外の境界である第2の輪郭を含む領域である第2の輪郭部に関する第2の輪郭情報を抑制することにより、相対的に観察部位の内部であって且つ第2の輪郭部に含まれない内部領域を強調した第2の輪郭抑制画像(第2の加工情報とも称する)を生成する。そして、生成した第1の輪郭抑制画像と第2の輪郭抑制画像を変形情報推定部130(第3の取得部とも称する)へと出力する。
【0025】
図3は、本ステップの処理フローの一例をより詳しく説明する図である。以下、図3に沿って、ステップS210の処理の詳細な流れについて説明する。
【0026】
(S212)(領域の抽出)
ステップS212において、輪郭抑制画像生成部120は、第1の医用画像から観察部位の領域を抽出することにより、第1のラベル画像を生成する。同様に、第2の医用画像から観察部位の領域を抽出することにより、第2のラベル画像を生成する。ここでは、観察部位と観察部位の外の境界を輪郭として、前記輪郭の内部を観察部位の領域として抽出する。
【0027】
本実施形態において、ラベル画像は、抽出した観察部位の領域に対応する画素(前景画素)には画素値=255などの既定の画素値が格納されるものとし、抽出されなかった領域に対応する画素(背景画素)には画素値=0などの抽出した領域とは異なる既定の画素値が格納されるものとする。
【0028】
ここで、画像からの観察部位の領域を抽出する処理は公知の画像処理手法を利用できる。例えば、画素値の任意の閾値を利用した閾値処理でもよいし、グラフカット処理をはじめとする既知のセグメンテーション処理でもよい。また、不図示の図形描画ソフトを用いて、ユーザが手動により観察部位の領域を抽出してもよいし、公知の画像処理手法を用いて抽出した観察部位の領域をユーザが手動により修正した領域でもよい。本実施形態の場合、CT画像から肺の領域を抽出する公知のセグメンテーション手法を用いて、第1の医用画像および第2の医用画像から肺の領域抽出を行う。
【0029】
(S214)(領域の収縮)
ステップS214において、輪郭抑制画像生成部120は、第1のラベル画像における前景画像の領域を収縮した第1のマスク画像を生成する。同様に、第2のラベル画像における前景画素の領域を収縮した第2のマスク画像を生成する。ここでいう領域の収縮とは、言い換えると、第1のラベル画像における前景画像の領域よりも更に内側、つまり輪郭の更に内側を前景画像の領域の境界としてマスク画像を形成する。
【0030】
本実施形態において、前景画素の領域を収縮する処理は、例えばモルフォロジー変換の収縮処理のように公知の画像処理技術を利用できる。
【0031】
本ステップは、ステップS212で抽出した領域が、観察部位の領域よりも大きく抽出(過抽出)される場合があることを予め考慮して、その領域を修正することを目的としている。これにより、後段のステップS216において、本ステップで生成したマスク画像を用いて、第1の医用画像と第2の医用画像にマスク処理を施す際に、過抽出された領域の影響を抑制できるという効果がある。
【0032】
具体的な例として、観察部位の輪郭は明確な画像特徴を有している一方で、観察部位の内部領域の輪郭付近において画像特徴が乏しい場合に効果がある。例えば、肺のような臓器の場合、周囲の組織(骨や他の臓器)との間の画素値の差が大きいため、輪郭は明確な画像特徴を有している。一方、内部領域の輪郭付近では、肺の中の主要な特徴である血管が輪郭付近ほど細く、画像上では解像されなくなるため画像特徴が乏しい。このような場合、観察部位の領域が過抽出されていると、マスク処理によって前景画素に対応する画像の領域を取得する際に、周囲の組織の画素も観察部位として取得してしまい、それが後段の位置合わせ処理においてノイズとなってしまう場合がある。そこで、本実施形態では、本ステップで得られる領域を収縮したマスク画像を用いることで、このノイズを抑制する。過抽出が生じていない状況下でこのマスク画像を利用してマスク処理を行うと内部領域の一部が削られてしまう恐れがあるが、観察部位の内部領域が輪郭付近において画像特徴が乏しいという性質を有しているなら、画像特徴を失ってしまうリスクは少ないといえる。すなわち、収縮するサイズは、観察部位の内部領域の画像特徴に基づいて決めることが望ましい。また、観察部位ごとに適したサイズを設定することが望ましい。具体的には、例えば、観察部位の臓器の輪郭より3mm程度内側の領域で血管などの特徴が画像上で解像されていない場合、ラベル画像の前景画素の領域を輪郭から3mm程度収縮することでマスク画像を生成する。なお、収縮するサイズは、上述のように内部領域の特徴が解像されていない領域のサイズと必ずしも同一でなくてもよい。収縮するサイズは観察部位で固定されたサイズではなく、観察部位の中でも場所によって変えてもよい。例えば、観察部位の輪郭付近の画像特徴の強度に基づいて変えてもよい。具体的には、観察部位の輪郭と内部領域の間で画素値の差が大きい(輪郭の画像特徴の強度が強い)場合には、収縮するサイズを大きくしてもよい。
【0033】
なお、ここで、マスク処理によって削られる輪郭を含む領域を輪郭部と称する。
【0034】
(S216)(輪郭情報の抑制)
ステップS216において、輪郭抑制画像生成部120は、第1のマスク画像を利用して第1の医用画像にマスク処理を施すことで、観察部位の輪郭情報を抑制した(ぼかした)第1の輪郭抑制画像(第1の加工情報または第1の加工画像)を生成する。同様に、第2のマスク画像を利用してマスク処理を施すことで、観察部位の輪郭情報を抑制した(ぼかした)第2の輪郭抑制画像(第2の加工情報または第2の加工画像)を生成する。
【0035】
本ステップにおけるマスク処理では、第1の輪郭抑制画像の各画素において、同じ位置の第1のマスク画像の画素が前景画素である場合、第1の医用画像の同じ位置の画素値を格納する。一方、第1のマスク画像の画素が背景画素である場合、観察部位の画素値の代表値を格納する。このとき、代表値は観察部位の輪郭付近における内部領域の画素値と類似した値が好ましい。これによって、マスク処理後の輪郭抑制画像において、観察部位の輪郭付近の画素値の勾配が緩やかになることで、輪郭をぼかして輪郭情報を抑制できる。また、同様の方法で、第2の医用画像から第2の輪郭抑制画像を生成する。上述の処理を言い換えると、観察部位の輪郭を含む輪郭情報が抑制される対象の領域は、前景画像(観察部位に相当)とその外側との境界である輪郭を含む輪郭部に相当し、マスク処理によってこの輪郭部における輪郭をぼかす処理(輪郭情報を抑制する処理)がなされる。ここでいうぼかす処理は、上述したマスク処理によって輪郭を消す場合だけでなく、輪郭部における互いに隣り合う画素値の勾配を緩やかにする処理も含まれる。なお、輪郭情報が抑制される対象の領域である輪郭部は少なくとも輪郭を含むが、輪郭および輪郭の周囲(外側や内側)の画素を含む領域でも良い。また、輪郭部は輪郭の内側の画素を含まずに輪郭および輪郭の外側の画素を含む領域でも良い。
【0036】
観察部位が肺の場合を例として、輪郭情報を抑制するマスク処理を具体的に説明する。本実施形態においては、代表値として肺全体の空気領域の平均画素値を利用する。図4に具体的な例を示す。同図に示す画像400は第1の医用画像の一例であり、観察部位410である肺の内側に描画されている肺の輪郭に沿った破線420は、第1のマスク画像の前景画素の領域の輪郭の位置を示している。このとき、上述のように破線420で囲まれた第1のマスク画像の画素が前景画素の位置においては、第1の医用画像の同じ位置の画素値を第1の輪郭抑制画像の画素に格納する。一方、破線420の外である第1のマスク画像の画素が背景画素の位置においては、代表値である肺全体の空気領域の平均画素値を第1の輪郭抑制画像の画素に格納することで、画像430に示す第1の輪郭抑制画像を生成する。同図の例では、破線420よりも外側の領域が輪郭部440に相当する。同図に示すように、本実施形態における輪郭抑制画像とは、肺の輪郭の情報を抑制する(ぼかす)ことで、肺野内の情報を相対的に強調した(その一例としては、肺野内の情報のみを残した)画像に相当する。言い換えれば、上述した輪郭部440内の輪郭をぼかす処理は、観察部位の内部(肺野内)であって且つ輪郭部440に含まれない領域(内部領域とも称する)とは独立して行われる。そして、上述した例では、輪郭部440内の輪郭をぼかす処理は前記観察部位の外部に対しても行われる例を示した。
【0037】
なお、観察部位の代表値は平均画素値でなくてもよい。例えば、観察部位の領域における画素値の中央値などの他の統計値でもよい。また、第1のマスク画像の各背景画素の位置から最近傍の位置にある前景画素を探索し、その前景画素と同じ位置の第1の医用画像の画素値を第1の輪郭抑制画像の画素に格納してもよい。あるいは、観察部位の輪郭付近において取りうる画素値の範囲が既知の場合、あらかじめユーザがその範囲に基づいて指定した所定の値を代表値としてもよい。
【0038】
これにより、第1の医用画像と第2の医用画像から観察部位の輪郭情報を抑制し、相対的に観察部位の内部領域を強調した第1の輪郭抑制画像(第1の加工情報または第1の加工画像)と第2の輪郭抑制画像(第2の加工情報または第2の加工画像)を生成できる。臓器の内部領域を強調する別の方法として、例えば、線強調処理などを施し、臓器の内部領域の構造を直接的に強調することもできる。しかしながら、臓器のように強調する内部領域の対象が血管などの細い構造である場合、強調処理のパラメータによっては、内部領域の一部の情報を失ってしまう可能性もある。一方で、臓器の輪郭を抽出する処理は、直接的に内部領域を強調するよりも比較的容易であることが多い。そのような場合、直接的に内部領域を強調するよりも観察部位の輪郭情報を抑制することで相対的に内部領域を強調する方が比較的容易である。さらに、内部領域に対しては輪郭付近を除いて画素値を変換する処理を行っていないことから、内部領域の情報を失ってしまうリスクが少ないという利点がある。
【0039】
以上の処理により、観察部位の輪郭を抑制した輪郭抑制画像が生成される。
【0040】
(S220)(変形情報の推定)
ステップS220において、変形情報推定部130(第3の取得部とも称する)は、第1の医用画像と第2の医用画像の間の観察部位の変形情報を、第1の輪郭抑制画像(第1の加工情報または第1の加工画像)と第2の輪郭抑制画像(第2の加工情報または第2の加工画像)に基づいて推定して取得する。そして、取得した変形情報を動態情報算出部140へと出力する。
【0041】
本実施形態において、第1の医用画像と第2の医用画像の間の変形情報を推定するための位置合わせ処理は、多段階で行う。図5は本ステップの多段階の位置合わせ処理フローの一例をより詳しく説明する図である。本ステップでは、まず、図5に示すステップS222において、第1の医用画像と第2の医用画像の間で観察部位の大まかな位置を合わせる初期位置合わせ処理を行う。次に、ステップS224において、初期位置合わせ処理の結果に基づいて、第1の輪郭抑制画像と第2の輪郭抑制画像の間の位置合わせ処理を行い、最後に、その結果に基づいて、ステップS226において、第1の医用画像と第2の医用画像の間の変形情報を推定する。以下、図5に沿って、各ステップの詳細について説明する。
【0042】
(S222)(初期位置合わせ)
ステップS222において、変形情報推定部130は、第1の医用画像と第2の医用画像の間で観察部位の大まかな位置を合わせる初期位置合わせ処理を行い、その結果を第1の変形情報として取得する。
【0043】
本実施形態において、第1の医用画像および第2の医用画像を低解像化した画像を利用して大まかな位置合わせを行う。これは、一般的な多段階の位置合わせ処理において、Coarse-to-Fineと呼ばれる基本的な考え方に基づくものであり、位置合わせの初期の段階で低解像度の画像を用いるのには次の理由がある。位置合わせ前の段階においては、2つの画像の位置が大きくずれていることも多く、そのような場合において、高解像度の画像の各画素単位の値の一致/不一致の情報は、位置合わせ処理におけるノイズとなってしまうためである。すなわち、位置合わせ処理における局所解に陥るリスクが高くなってしまう。解像度の低い画像を用いることには、大まかな画像情報を重点的に利用するという効果があるため、位置合わせ処理の初期段階に低解像度の画像を用いることにはメリットがある。
【0044】
本ステップにおける位置合わせ処理は、公知の画像処理手法を利用できる。例えば、変形後の画像間の画像類似度が高くなるように、一方の画像を変形させる非線形な位置合わせを行う。画像類似度としては、一般的に用いられているSum of Squared Difference(SSD)や相互情報量、相互相関係数などの公知の方法を用いることができる。また、画像の変形のモデルとしては、Thin Plate Spline(TPS)などの放射基底関数に基づく変形モデルや、Free Form Deformation(FFD)、Large Deformation Diffeomorphic Metric Mapping(LDDMM)等の公知の変形モデルを利用できる。
【0045】
なお、初期位置合わせでは、大まかな位置が合っていればよく、必ずしも非線形な位置合わせでなくてもよい。例えば、画像間の画像類似度が高くなるように、平行移動量と回転量のみを推定する剛体変換や、アフィン変換に基づく線形な位置合わせを行ってもよい。
【0046】
また、初期位置合わせに利用する画像は、第1の医用画像および第2の医用画像を低解像化した画像でなくてもよい。例えば、ステップS212で取得した第1のラベル画像および第2のラベル画像に基づいて初期位置合わせを行ってもよい。この場合、ラベル画像の前景画素が示す領域の輪郭の位置を点群として取得し、Iterative Closest Pointなどの点群間の公知の位置合わせ手法を用いることで、第1の医用画像と第2の医用画像の間で観察部位の大まかな位置を合わせることができる。
【0047】
(S224)(輪郭抑制画像間の位置合わせ)
ステップS224において、変形情報推定部130(実行部)は、ステップS222で取得した第1の変形情報を初期値として、第1の輪郭抑制画像と第2の輪郭抑制画像の間の位置合わせを行い、その結果を第2の変形情報として取得する。
【0048】
医用画像の位置合わせにおいては、生体に起こり得ない変形を防ぐため、変形の自由度を拘束するための正則化項を考慮した位置合わせを行うことが多い。このとき、画像間の観察部位の位置合わせを行う際に、観察部位の輪郭形状が画像間で変化(変形)していると、その変形の影響を受けて、内部領域の位置合わせ精度が低くなってしまう場合がある。本実施形態では、観察部位の輪郭情報を抑制した画像間で位置合わせを行うことで、画像間における輪郭の変形推定の影響を抑制することが可能となり、内部領域の位置を重点的に合わせることができる。
【0049】
具体的な例として、観察部位を肺とした場合について説明する。肺全体の形状は、肺周囲の筋肉の伸縮によって変形し、その変形に伴い肺の内部領域の構造(血管や気管など)も変形している。これらの変形に加えて、肺の輪郭においては、肺の周囲の形状(例えば肋骨と肋間筋の凹凸)に合わせた局所的な変形が生じている。しかしながら、肺全体の大きな変形とは異なり、肺の輪郭の局所的な変形の影響は、肺の内部領域には及んでいない場合がある。例えば、肺の輪郭形状において、肋骨に接している個所が、その周辺の肋間筋に接している個所に比べて、肋骨に押されて少し窪んでいる(その結果として、肺の輪郭形状に局所的な凹凸が生じている)という状況を考える。ここで、第1の医用画像と第2の医用画像は呼吸の時相が異なる(肺の膨らみ方が異なる)ため、肋骨に対する輪郭の個所の相対位置には、画像間で変化が生じる。すなわち、第1の医用画像である肋骨が接していて窪んでいる輪郭の個所は、呼吸によって位置がずれて、第2の医用画像では肋間筋に接していて窪んでいない場合がある。言い換えると、ある肋骨に接して窪んでいる輪郭の個所が、画像間で異なる個所の場合がある。このとき、第1の医用画像と第2の医用画像をそのまま位置合わせに用いると、「窪んでいる個所」を同じ部位として対応付けてしまい、その結果、位置合わせの精度が低下してしまう場合がある。そこで、第1の輪郭抑制画像と第2の輪郭抑制画像の間で位置合わせを行うことにより、肺の輪郭形状の局所的な変化が変形推定に及ぼす影響を抑制し、内部領域の位置合わせを重点的に行うことができる。
【0050】
言い換えると、変形情報推定部130は、それぞれ輪郭が抑制された第1の輪郭抑制画像と第2の輪郭抑制画像の間の位置合わせを行うことで、該位置合わせに対する、前記第1の医用画像における肺の輪郭および前記第2の医用画像における肺の輪郭の寄与の割合を、輪郭より内側の領域の寄与の割合よりも低くすると言うことができる。
【0051】
(S226)(元画像間の位置合わせ)
ステップS226において、変形情報推定部130は、ステップS224で取得した第2の変形情報を初期値として、第1の医用画像と第2画像の間の第3の変形情報を推定して取得する。そして、第3の変形情報を最終的な第1の医用画像と第2の医用画像の間の変形情報として、動態情報算出部140へと出力する。
【0052】
ステップS224では輪郭抑制画像を利用して内部領域の位置合わせを行っているため、第1の医用画像と第2の医用画像の間で輪郭の形状が一致していない場合がある。本ステップでは、観察部位の輪郭の形状と内部領域の構造の両方を含む元画像(第1の医用画像と第2の医用画像)の間で位置合わせを行うことで、内部領域の位置がずれないように輪郭の形状の位置合わせを行う。より詳細な位置合わせを行うために、本ステップで利用する画像をステップS222やS224で位置合わせに利用した画像よりも高い解像度の画像にすることが好ましい。あるいは、ステップS224で変形の自由度を拘束するための正則化項を設定している場合、ステップS224よりも変形の自由度が高くなるような正則化項を位置合わせに用いてもよい。
【0053】
ここで、元画像より先に輪郭抑制画像を利用して内部領域の位置合わせを行う効果について説明する。前述のように、輪郭情報を含む画像間の位置合わせでは、輪郭の局所的な変化が変形推定に及ぼす影響によって、内部領域の位置合わせ精度が低く位置ずれが生じることがある。これは、臓器の内部領域の主要な特徴である血管のように、画像特徴が局所的であり、かつ、類似する画像特徴(他の血管など)が密に存在する場合に起こりうる。例えば、多段階の位置合わせの前段において、画像間で異なる血管の位置が対応づいてしまう場合がある。このような場合、画像特徴が局所的であるために位置合わせの局所解に陥ってしまい、後段で詳細な位置合わせを行っても解消することが困難である。一方で、臓器の輪郭の形状は、血管のような細かい構造よりも大局的な画像特徴である。大局的な画像特徴は、多段階の位置合わせの前段で位置ずれが残っていたとしても局所解に陥りづらく、後段で詳細な位置合わせを行うことで比較的容易に位置を合わせることができる。したがって、元画像より先に輪郭抑制画像を利用して内部領域の位置を重点的に合わせておくことで、観察部位の全体の位置を精度高く合わせることができる。
【0054】
以上の処理により、第1の医用画像と第2の医用画像の間の観察部位の変形情報が推定、取得される。
【0055】
本実施形態では、ステップS222からステップS226で説明した3段階の多段位置合わせについて説明したが、本発明の範囲はこれに限らない。例えば、2段階や4段階以上の多段位置合わせでもよい。このとき、位置合わせに利用する画像は、例えば、各段で元画像(第1の医用画像と第2の医用画像)と輪郭抑制画像を交互に切り替えてもよいし、複数段で連続して一方の画像間の位置合わせを行い、後段で他方の画像間の位置合わせを行う構成であってもよい。また、多段位置合わせではなく、1段階のみの位置合わせでもよい。この場合、第1の輪郭抑制画像と第2の輪郭抑制画像の間で位置合わせを行い推定した変形情報を、第1の医用画像と第2の医用画像の間の変形情報としてステップS230へと処理を進める。
【0056】
また、本実施形態では、ステップS224の後にステップS226の処理を実行するが、これに限られず、ステップS226の処理をステップS224の処理よりも先に実行するようにしてもよい。
【0057】
(S230)(動態情報の算出)
ここで、図2のフロー図を再び参照する。ステップS230において、動態情報算出部140は、ステップS220で推定した変形情報に基づいて第1の医用画像と第2の医用画像の間の観察部位の動態情報を算出する。そして、算出した動態情報を表示制御部150へと出力する。
【0058】
本実施形態では、動態情報として局所的な移動量を算出する。第1の医用画像と第2の医用画像が3次元画像の場合、ステップS220で推定した変形情報は各画素の3次元の移動ベクトルであり、各画素における移動ベクトルのノルムを移動量として算出できる。また、動態情報は移動量に限らず、例えば、変形情報から体積変化率(ヤコビアン)を算出してもよい。
【0059】
(S240)(表示)
ステップS240において、表示制御部150は、ステップS230で算出した動態情報を可視化して表示部12に表示する制御を行う。
【0060】
動態情報として算出した移動量の可視化方法として、移動量マップを生成して表示部12に表示させることができる。移動量マップは、例えば、第1の医用画像の肺野内の位置の画素に移動量に応じたグレースケール値あるいはカラースケール値を画素値として格納した画像であり、第1の医用画像および第2の医用画像と並列表示してもよいし、第1の医用画像と重畳表示してもよい。第1の医用画像ではなく第2の医用画像の肺野内の位置の画素に移動量を画素値として格納した移動量マップでもよい。その場合、第2の医用画像と重畳表示してもよい。また、同様の方法で、移動量以外の動態情報も可視化して表示部12に表示できる。
【0061】
なお、可視化方法は移動量マップに限らず、例えばユーザが指定した位置の移動量や体積変化率の数値を表示してもよい。
【0062】
以上によって、情報処理装置10の処理が実施される。
【0063】
上記によれば、観察部位の輪郭近傍の局所的な変化が変形推定に及ぼす影響を軽減して、画像間の位置合わせ精度を向上することができる。また、その結果として、観察部位の動態情報を精度よく計測して可視化することができる。
【0064】
なお、上記の実施形態では、ステップS230による動態情報の算出や、ステップS240による動態情報の表示制御を行ったが、本発明の範囲はこれに限らない。すなわち、これらの処理を省略し、ステップS220で得た変形情報を出力するだけの構成であってもよい。また、ステップS220で得た変形情報を用いた上記以外の処理を行う構成であってもよい。これによると、他の目的で画像間の位置合わせを行う目的において、その精度を向上させることができる。例えば、第1の医用画像と第2の医用画像が異なる日時に撮像した同一患者の画像であったときに、経時差分画像を生成する目的で両画像の変形位置合わせを行う際の処理として用いることができる。
【0065】
本実施例における、画像とは、表示部に表示された画像だけではなく、表示する前のデータも含むものとする。
【0066】
(変形例1-1)(輪郭抑制画像の生成方法)
ステップS212からステップS216において、輪郭抑制画像を生成する処理の具体的な一例について説明したが、輪郭抑制画像を生成する方法はこれに限らない。例えば、ステップS212で抽出した観察部位の領域の輪郭付近(輪郭を含む領域である輪郭部)を対象に移動平均フィルタ等を用いた平滑化処理を施し、輪郭付近の画素値の勾配を緩やかにすることで輪郭情報を抑制してもよい。あるいは、輪郭が有する空間周波数の成分を減弱するように空間周波数のフィルタ処理を行って輪郭情報を抑制してもよい。
【0067】
(変形例1-2)(輪郭抑制画像のみで位置合わせを行う)
ステップS222からステップS226において、変形情報を推定する処理の具体的な一例について説明したが、変形情報を推定する方法はこれに限らない。例えば、変形情報の推定時に元画像(第1の医用画像と第2の医用画像)を用いなくてもよい。すなわち、ステップS222において、低解像度化した輪郭抑制画像の間で初期位置合わせを行い、ステップS224の位置合わせ結果を最終的な第1の医用画像と第2の医用画像の間の観察部位の変形情報としてよい。あるいは、ステップS226において、輪郭抑制画像を用いて詳細な位置合わせを行ってもよい。これによると、観察部位の内部領域をより重点的に位置合わせすることで、第1の医用画像と第2の医用画像の間で観察部位の輪郭の変形情報の推定精度は低くなる可能性がある一方で、内部領域の変形情報をより高精度に推定できるという効果がある。また、ステップS224およびステップS226の処理を交互に複数回繰り返し実行するようにしても良い。
【0068】
(変形例1-3)(輪郭の抑制度合いが異なる複数の輪郭抑制画像を位置合わせに利用する)
ステップS212からステップS216において、第1の医用画像と第2の医用画像の夫々において1種類の輪郭抑制画像を生成したが、輪郭情報の抑制の度合いが異なる複数の第1の輪郭抑制画像と第2の輪郭抑制画像を生成してもよい。例えば、ステップS214において、前景画素の領域の収縮を行う際に、モルフォロジー変換で利用する構造要素のサイズを変えて複数のマスク画像を生成し、夫々のマスク画像を利用してマスク処理を施した複数の輪郭抑制画像を生成する。この場合、構造要素が大きいほどマスク画像の前景画素の領域が小さくなり、マスク処理後の輪郭抑制画像の輪郭情報の抑制の度合いが強くなる。そして、ステップS224において、輪郭抑制画像間の位置合わせは1段階ではなく、生成した輪郭抑制画像の数に応じて増やしてもよい。例えば、第1の輪郭抑制画像と第2の輪郭抑制画像を夫々、輪郭情報の抑制の度合いを変えて3種類生成した場合、輪郭抑制画像間の位置合わせを3段階とし、輪郭情報の抑制の度合いが弱い画像から順に位置合わせしてもよい。これによると、観察部位の輪郭付近の画像特徴が乏しい場合に、内部領域の中心に近い位置をから順に位置合わせを行うことができるため、初期位置のずれによる局所解への陥りを防ぐ効果がある。
【0069】
(変形例1-4)(輪郭抑制画像を生成しない)
ステップS216において、第1の輪郭抑制画像および第2の輪郭抑制画像を生成したが、輪郭抑制画像を生成、出力せずに変形情報を推定してもよい。この場合、輪郭抑制画像生成部120は、ステップS214で生成した第1のマスク画像と第2のマスク画像を変形情報推定部130へと出力する。そして、ステップS224において、第1の医用画像の画素と対応する第2の医用画像の画素の夫々の位置が、第1のマスク画像と第2のマスク画像の夫々の画像上で前景画素か否かに基づいて、第1の医用画像と第2の医用画像の画像類似度を算出する。すなわち、第1のマスク画像上で前景画素であった場合は、第1の医用画像の画素値を画像類似度の算出に利用し、背景画素であった場合は、第1の医用画像の代表値を画像類似度の算出に利用する。同様に、第2のマスク画像上で前景画素であった場合は、第2の医用画像の画素値を画像類似度の算出に利用し、背景画素であった場合は、第2の医用画像の代表値を画像類似度の算出に利用する。これにより、第1の輪郭抑制画像と第2の輪郭抑制画像を生成せずに本実施形態と同等の処理を行うことができる。あるいは、画像類似度を算出する際に輪郭からの距離に応じて重みづけすることで、内部領域の位置を重点的に合わせてもよい。具体的には、観察部位の輪郭から内側で距離が遠いほど、算出する画像類似度が高くなるように重みづけをすることで、内部領域の位置を重点的に合わせることができる。
【0070】
(変形例1-5)(輪郭に近い位置ほどぼかしの程度を強くする)
ステップS216において、輪郭部内の輪郭をぼかす処理は、必ずしも観察部位(対象物)の内部(肺野内)であって且つ輪郭部に含まれない領域(内部領域とも称する)とは独立して行わなくてもよい。例えば、輪郭に近い位置ほどぼかす度合い(例えば、平滑化のカーネルサイズ)を大きくし、輪郭部だけでなく対象物の内部もぼかしてもよい。これによると、対象物の内部よりも輪郭部の方が画素値の勾配が緩やかになる傾向にあるため、相対的に輪郭情報が抑制された輪郭抑制画像を生成することができる。
【0071】
(変形例1-6)(第1の輪郭情報に基づいて第2の輪郭をぼかす)
ステップS216において、第2のマスク画像を利用して第2の医用画像における観察部位の輪郭情報を抑制した第2の輪郭抑制画像を生成したが、第1のマスク画像を利用して第2の輪郭抑制画像を生成してもよい。例えば、第1の医用画像と第2の医用画像の間で観察部位の輪郭近傍の動きが小さい場合、第1のマスク画像と第2のマスク画像の差異も小さくなり、第1のマスク画像を利用して第2の医用画像における観察部位の輪郭情報を抑制しても上述の実施形態と同等の第2の輪郭抑制画像を生成できる。これによると、第2のマスク画像を生成せずに第2の輪郭抑制画像を生成できるため、処理を高速化できる。
【0072】
<その他の実施形態>
輪郭抑制画像の生成は、少なくとも、輪郭を含む領域である輪郭部に対して輪郭情報を抑制する処理(ぼかす処理)が行われていれば同様の効果を奏することができる。そのため、輪郭の内側および外側に所定の画素数のマージン幅を持つ領域のみに対して輪郭情報を抑制する処理を行って輪郭抑制画像の生成を行っても良い。
【0073】
また、輪郭抑制画像の生成における、輪郭情報を抑制する処理(ぼかす処理)には、輪郭を消去する処理も含む。
【0074】
また、本明細書に開示の技術は例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記録媒体(記憶媒体)等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インターフェイス機器、撮像装置、webアプリケーション等)から構成されるシステムに適用しても良いし、また、1つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0075】
また、本明細書に開示の技術の目的は、以下のようにすることによって達成されることはいうまでもない。すなわち、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコード(コンピュータプログラム)を記録した記録媒体(または記憶媒体)を、システムあるいは装置に供給する。係る記憶媒体は言うまでもなく、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。この場合、記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した記録媒体は本明細書に開示の技術を構成することになる。
【符号の説明】
【0076】
110 画像取得部
120 輪郭抑制画像生成部
130 変形情報推定部
140 動態情報算出部
150 表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5