(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】振動型モータの制御装置及びそれを有する振動装置並びに振動型モータの制御方法、プログラム、記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H02N 2/06 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
H02N2/06
(21)【出願番号】P 2020158456
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2019180974
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】熱田 暁生
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-248276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気-機械エネルギー変換素子を有する振動体と、前記振動体と接触する接触体を有
し、前記電気-機械エネルギー変換素子にパルス信号に基づいて生成された交流電圧を印加することにより
生じた振動によって前記振動体と前記接触体とが相対移動する振動型モータの制御装置であって、
目標速度で前記振動体と前記接触体とが相対移動するように、前記パルス信号のパルス幅及び周波数を制御可能な制御手段を有し、
前記制御手段は、
相対移動を開始する前に、
相対移動の第1の定常速度が、前記目標速度を上回るように
、前記周波数を固定するとともに前記パルス幅
を上昇させる前記パルス信号を供給し、
相対移動を開始した後であって、
相対移動の実速度が前記目標速度を上回る前に、
相対移動の第2の定常速度が、前記第1の定常速度を下回るように、
前記周波数を固定するとともに前記パルス幅を変更し、
前記パルス幅を変更した後に、前記目標速度で前記振動体と前記接触体とが相対移動するように前記パルス幅を制御することを特徴とする振動型モータの制御装置。
【請求項2】
電気-機械エネルギー変換素子を有する振動体と、前記振動体と接触する接触体を有し、前記電気-機械エネルギー変換素子にパルス信号に基づいて生成された交流電圧を印加することにより生じた振動によって前記振動体と前記接触体とが相対移動する振動型モータの制御装置であって、
目標速度で前記振動体と前記接触体とが相対移動するように、前記パルス信号のパルス幅及び周波数を制御可能な制御手段を有し、
前記制御手段は、
相対移動を開始する前に、相対移動の第1の定常速度が、前記目標速度を上回るように、前記パルス幅を固定するとともに前記周波数を下降させる前記パルス信号を供給し、
相対移動を開始した後であって、相対移動の実速度が前記目標速度を上回る前に、相対移動の第2の定常速度が、前記第1の定常速度を下回るように、パルス幅を固定するとともに前記周波数を変更し、
前記周波数を変更した後に、前記目標速度で前記振動体と前記接触体とが相対移動するように前記周波数を制御することを特徴とする振動型モータの制御装置。
【請求項3】
前記実速度を検出する検出手段を有し、
前記制御手段は、
前記検出手段が、所定の前記実速度を検出した後であって、前記目標速度を上回る前記実速度を検出する前に、前記第2の定常速度が、前記第1の定常速度を下回るように、前記パルス幅及び前記周波数の少なくとも一方を変更する、ことを特徴とする請求項1
または2に記載の振動型モータの制御装置。
【請求項4】
前記制御手段により、前記第1の定常速度は、前記目標速度の90%以上110%以下である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の振動型モータの制御装置。
【請求項5】
前記制御手段により、前記第1の定常速度は、前記目標速度と略等しい、ことを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の振動型モータの制御装置。
【請求項6】
前記制御手段により、前記第1の定常速度は、前記目標速度の70%以上90%未満である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の振動型モータの制御装置。
【請求項7】
前記目標速度で相対移動するように前記パルス幅及び前記周波数の少なくとも一方を制御するときに用いられる前記目標速度、前記パルス幅及び前記周波数を記憶する記憶手段を有し、
前記制御手段は、
前記記憶手段に記憶された前記目標速度、前記パルス幅及び前記周波数に基づいて、前記パルス幅及び前記周波数を設定、変更及び制御する、ことを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の振動型モータの制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の振動型モータの制御装置と、
前記振動型モータの制御装置によって駆動される振動型モータと、を有することを特徴とする振動装置。
【請求項9】
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の振動型モータの制御装置と、
前記振動型モータの制御装置によって駆動される振動型モータと、
前記振動型モータによって駆動されるレンズと、
前記レンズの光軸上に設けられた撮像素子と、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の振動型モータの制御装置と、
前記振動型モータの制御装置によって駆動される振動型モータと、
前記振動型モータによって駆動される撮像素子と、
前記撮像素子が光軸上に設けられたレンズと、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項11】
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の振動型モータの制御装置と、
前記振動型モータの制御装置によって駆動される振動型モータと、
前記振動型モータを駆動することで駆動されるレンズと、を有することを特徴とするレンズ装置。
【請求項12】
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の振動型モータの制御装置と、
前記振動型モータの制御装置によって駆動される振動型モータと、
前記振動型モータによって駆動されるステージと、を有することを特徴とする自動ステージ。
【請求項13】
電気-機械エネルギー変換素子を有する振動体と、前記振動体と接触する接触体を有し、前記電気-機械エネルギー変換素子に、パルス信号に基づいて生成された交流電圧を印加することにより
生じた振動によって前記振動体と前記接触体とが相対移動する振動型モータの制御方法であって、
目標速度で相対移動するように、前記パルス信号のパルス幅及び周波数を制御可能な制御ステップを有し、
前記制御ステップは、
相対移動
を開始する前に、
相対移動の第1の定常速度が、前記目標速度を上回るように、
前記周波数を固定するとともに前記パルス幅
を上昇させる前記パルス信号を供給し、
相対移動
を開始した後であって、相対移動の実速度が前記目標速度を上回る前に、相対移動の第2の定常速度が、前記第1の定常速度を下回るように、
前記周波数を固定するとともに前記パルス幅を変更し、
前記パルス幅を変更した後に、前記目標速度で振動体と前記接触体とが相対移動するように前記パルスを制御するステップを備えることを特徴とする振動型モータの制御方法。
【請求項14】
電気-機械エネルギー変換素子を有する振動体と、前記振動体と接触する接触体を有し、前記電気-機械エネルギー変換素子に、パルス信号に基づいて生成された交流電圧を印加することにより生じた振動によって前記振動体と前記接触体とが相対移動する振動型モータの制御方法であって、
目標速度で相対移動するように、前記パルス信号のパルス幅及び周波数を制御可能な制御ステップを有し、
前記制御ステップは、
相対移動を開始する前に、相対移動の第1の定常速度が、前記目標速度を上回るように、前記パルス幅を固定するとともに前記周波数を下降させる前記パルス信号を供給し、
相対移動を開始した後であって、相対移動の実速度が前記目標速度を上回る前に、相対移動の第2の定常速度が、前記第1の定常速度を下回るように、パルス幅を固定するとともに前記周波数を変更し、
前記周波数を変更した後に、前記目標速度で振動体と前記接触体とが相対移動するように前記周波数を制御することを特徴とする振動型モータの制御方法。
【請求項15】
請求項
13または14に記載の振動型モータの制御方法をコンピュータにより実行させるためのプログラム。
【請求項16】
コンピュータが読み込み実行することで、請求項
13または14に記載の振動型モータの制御方法を実行可能なプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型モータの制御装置及びそれを有する振動装置並びに振動型モータの制御方法、プログラム、記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
非電磁駆動式モータとして、電気-機械エネルギー変換素子の一例である圧電素子を弾性体に接合してなる振動体に接触体を接触させた振動型モータ(以下、単に「モータ」ともいう)が知られている。振動型モータは、電気-機械エネルギー変換素子に、交流電圧を印加することによって振動体に発生させた振動エネルギーを、振動体と接触体との相対移動という機械運動として取り出すように構成されている。振動型モータをフォーカスレンズの自動駆動(AF駆動)やズームレンズの駆動(ズーム駆動)に用いる、カメラ装置やビデオ装置等の撮影装置(以下、単に「撮影装置」ともいう)が製品化されている。
【0003】
このような振動型モータの一例として、振動型モータの(組立て後の)斜視図を、
図15に示す(特許文献1参照)。
【0004】
図14において、200は、振動型モータである。201は、金属等の振動減衰損失の小さい材料で構成された弾性体、204は、ナット、203はフレキシブル基板である。弾性体201とナット204に圧電素子(不図示)が挟まれており、当該圧電素子にフレキシブル基板203から、生成された交流電圧を印加することにより、当該圧電素子に振動を発生させる。弾性体、ナット、圧電素子の集合体を総称して、振動体といい、上記圧電素子に発生させた振動により、振動体は振動する。
【0005】
振動型モータ200は、移動体207(接触体)と、外部に駆動力を伝達するギア209と、を有する。上記振動体の振動を受けて、接触体207は軸周りに回転し、接触体207の軸周りの回転を受けて、ギア209も軸周りに回転する。
【0006】
211は、固定部材である。ネジを用いて、固定部材211に設けられたネジ穴を所望の場所に固定することで、振動型モータ200を所望の場所に取り付けることができる。
【0007】
212は、固定部材211を振動型モータ200側に固定するためのナットである。
【0008】
撮影装置では、静止画撮影時には、フォーカスレンズやズームレンズ(を駆動する振動型モータ)をより速く駆動することが求められる一方、動画撮影時には、フォーカスレンズ等を低速で駆動することも求められる。目標とする焦点距離や画角における画像のみが記録(記憶)される静止画撮影時とは異なり、動画撮影時には、目標とする焦点距離等における画像のみならず、焦点距離等が目標とする焦点距離等に到達するまでに生成される画像も記録されるからである。
【0009】
上記撮影装置でのAF駆動やズーム駆動には、フォーカスレンズやズームレンズが目標とする速度(以下、「目標速度」ともいう)で駆動し続けるように制御(以下、「目標速度制御」ともいう)することが求められている。そこで、振動型モータを用いて目標速度制御を実現する技術として、駆動周波数(以下、単に「周波数」ともいう)を変更する方法や駆動パルス幅(以下、単に「パルス幅」ともいう)を変更する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2013-123335号公報
【文献】特開平09-294384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2に記載された技術では、周波数の制御のみでは速度の分解能が不足する。そのため、振動型モータの駆動開始(以下、「起動」ともいう)時にパルス幅及び周波数を所定値に設定した後にパルス幅を制御することで、速度の分解能を上げた目標速度制御を実現している(特許文献2の段落0039及び
図6参照)。
【0012】
当該従来技術においては、静止画撮影時には、起動時に設定されたパルス幅及び周波数(設定)による駆動により定常状態(速度が一定の状態、加速度がゼロの状態)に到達したときの速度(以下、「定常速度」ともいう)は目標速度を下回る。上記のように、静止画撮影時には、レンズの高速駆動が求められるので、起動時に設定されたパルス幅及び周波数による駆動が定常速度に到達する前までに、当該駆動速度がより目標速度に近づくように(より高速になるように)、設定が変更される。したがって、静止画撮影時には、駆動速度が目標速度を上回る、いわゆる速度のオーバーシュートは発生し難い。
【0013】
しかし、動画撮影時には、起動時に設定されたパルス幅及び周波数による定常速度は目標速度を上回ることがある。上記のように、動画撮影時には、フォーカスレンズ等を低速で駆動することも求められるからである。したがって、動画撮影時には、速度のオーバーシュートが発生し易い。
【0014】
【0015】
図16には、従来例における振動型モータの制御装置で振動型モータを制御したときの、周波数と速度及び電力の関係並びにパルス幅制御する領域S1及び周波数制御する領域S2を示した。以下、パルス幅制御する領域を「パルス幅制御領域」、周波数制御する領域を、「周波数制御領域」ともいう。
図17には、従来例における振動型モータの制御装置で振動型モータを制御したときの、時間と周波数、パルス幅及び速度の関係を示した。
図18には、従来例における振動型モータの制御装置で振動型モータを制御したときの、時間と周波数、パルス幅(大、小)、速度及び摩擦力の関係を示した。
【0016】
図17では、設定可能なパルス幅の最大値である最大パルス幅にパルス幅を固定した状態で、周波数を下げていく(駆動力を上げていく)。そして、周波数を下げていく途中で振動型モータ(振動体と接触体)は駆動(相対移動)を開始(起動)し、その後、目標速度で駆動する。目標速度での相対移動は、目標速度と実速度との差(以下、「偏差」ともいう)により動作パラメータ(パルス幅、周波数)を設定する速度制御によりなされる。
【0017】
ここで、起動時は、圧電素子に交流電圧を印加しても、振動体と接触体との摩擦力などの影響により、すぐには起動せず、圧電素子に交流電圧が印加されてから起動する(相対移動を開始する)までに要する時間(起動時間)が長時間化することがある。
【0018】
図17に示した従来例では、起動時間の長時間化を解決するために、起動するまで、周波数を下げていく(駆動力を上げていく)制御がなされている。このような制御では、起動時間は短時間化するものの、起動したときの動作パラメータによる定常速度は、目標速度を上回るため、速度のオーバーシュートが発生し易い。そのため、動画撮影時等の、レンズ等を低速で駆動する必要があるときに、一旦、高速になってしまい、急激に速度変化する違和感のある画像が記録されてしまうという問題がある。
【0019】
また、
図18は、パルス幅が相対的に大きいときと小さいときの起動特性を示したものである。当該
図18から解るように、(設定されたパルス幅及び周波数による定常速度が目標速度と同程度であり)パルス幅が相対的に小さいときは、パルス幅が相対的に大きいときと比べ、速度のオーバーシュートは抑制されている。しかし、起動時間が長時間化している。
【0020】
本発明は、これらの課題を解決するためになされたものであり、起動する前に設定されたパルス幅及び周波数による速度のオーバーシュートを抑制しつつ、起動時間の長時間化を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、本発明に係る振動型モータの制御装置は、電気-機械エネルギー変換素子を有する振動体と、前記振動体と接触する接触体を有し、前記電気-機械エネルギー変換素子にパルス信号に基づいて生成された交流電圧を印加することにより生じた振動によって前記振動体と前記接触体とが相対移動する振動型モータの制御装置であって、
目標速度で前記振動体と前記接触体とが相対移動するように、前記パルス信号のパルス幅及び周波数を制御可能な制御手段を有し、
前記制御手段は、
相対移動を開始する前に、相対移動の第1の定常速度が、前記目標速度を上回るように、前記周波数を固定するとともに前記パルス幅を上昇させる前記パルス信号を供給し、
相対移動を開始した後であって、相対移動の実速度が前記目標速度を上回る前に、相対移動の第2の定常速度が、前記第1の定常速度を下回るように、前記周波数を固定するとともに前記パルス幅を変更し、
前記パルス幅を変更した後に、前記目標速度で前記振動体と前記接触体とが相対移動するように前記パルス幅を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の振動型モータの制御装置等によれば、起動する前に設定されたパルス幅及び周波数による速度のオーバーシュートを抑制しつつ、起動時間の長時間化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の振動型モータの制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の振動型モータの制御装置で振動型モータを制御したときの、本発明の第1の実施形態における、周波数と速度及び電力の関係並びにパルス幅制御領域及び周波数制御領域を示す図である。
【
図3】本発明の振動型モータの制御装置で振動型モータを制御したときの、本発明の第1の実施形態における、時間と周波数、パルス幅及び速度の関係を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態におけるアルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図5】本発明の振動型モータの制御装置で振動型モータを制御したときの、本発明の第2の実施形態における、周波数と速度及び電力の関係並びにパルス幅制御領域及び周波数制御領域を示す図である。
【
図6】周波数が異なるときの、パルス幅と速度の関係を示す図である。
【
図7】本発明の振動型モータの制御装置で振動型モータを制御したときの、本発明の第2の実施形態における、時間と周波数、パルス幅及び速度の関係を示す図である。
【
図8】本発明の振動型モータの制御装置で振動型モータを制御したときの、本発明の第3の実施形態における、時間と周波数、パルス幅及び速度の関係を示す図である。
【
図9】本発明の振動型モータの制御装置で振動型モータを制御したときの、本発明の第4の実施形態における、周波数と速度及び電力の関係並びに周波数制御領域を示す図である。
【
図10】本発明の振動型モータの制御装置で振動型モータを制御したときの、本発明の第4の実施形態における、時間と周波数、パルス幅及び速度の関係を示す図である。
【
図11】本発明の第4の実施形態におけるアルゴリズムを表わすフローチャートである。
【
図12】本発明における振動型モータの制御装置を用いたカメラ装置である。
【
図13】本発明における振動型モータの制御装置を用いたレンズ駆動装置である。
【
図14】本発明の振動型モータの(組立て後の)斜視図である。
【
図15】本発明における振動型モータの制御装置を用いた自動ステージ及びそれを有する顕微鏡である。
【
図16】従来例における振動型モータの制御装置で振動型モータを制御したときの、周波数と速度及び電力の関係並びにパルス幅制御領域及び周波数制御領域を示す図である。
【
図17】従来例における振動型モータの制御装置で振動型モータを制御したときの、時間と周波数、パルス幅及び速度の関係を示す図である。
【
図18】従来例における振動型モータの制御装置で振動型モータを制御したときの、時間と周波数、パルス幅(大、小)、速度及び摩擦力の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
以下、振動型モータ(振動型アクチュエータ)の低速駆動に関する第1の実施形態を、
図1~
図4を用いて説明する。本実施形態は、起動する(振動体と接触体とが相対移動を開始する)前に設定されたパルス幅及び周波数による速度超過(速度のオーバーシュート)を抑制することができる。
【0026】
なお、「相対移動」とは、振動体と接触体とが相対的に移動するこという。振動体と接触体とが相対的に移動する場合には、振動体が固定され、接触体が駆動される場合と、接触体が固定され、振動体が駆動される場合がある。
【0027】
図1は、本発明の振動型モータの制御装置(制御回路)の構成を示すブロック図である。
図1において、200は、振動型モータであり、
図1に記載された構成のうち、振動型モータ200以外の構成が振動型モータの制御装置100の構成である。
【0028】
制御回路100は、制御部32、第1のスイッチング回路33、第2のスイッチング回路33’、発振器34、位置検出部35、電源部36、第1の差動増幅器37、第2の差動増幅器38及び位相差検出回路39を有する。
【0029】
図1において、制御部32(制御手段)は、振動型モータ200のコントロールを司る、マイクロプロセッサ(MPU)等のマイコン部(MCU)である。制御部32は、プログラムを格納するROM、プログラムの展開する領域及びパラメータや演算結果を記憶する領域を有するRAM、プログラムを実行するCPU等を有する。34は、制御部32からの指令値に応じて第1のモード(Aモード)と第2のモード(Bモード)の駆動信号(パルス信号A
0、B
0)を発生させる発振器である。発振器34は、AモードとBモードの駆動信号(パルス信号A
0、B
0)の位相差を、0~360°で変更可能(制御可能)である。第1のスイッチング回路33は、Aモードの駆動信号(パルス信号A
0)を電源電圧でスイッチングするスイッチング回路である。第1のスイッチング回路33は、インダクタンス41との組み合わせにてスイッチング回路のスイッチング電圧を昇圧効果により増幅する。
【0030】
図1において、第2のスイッチング回路33’は、Bモードの駆動信号(パルス信号B
0)を電源電圧でスイッチングするスイッチング回路である。第2のスイッチング回路33’は、インダクタンス42との組み合わせにてスイッチング回路のスイッチング電圧を昇圧効果により増幅する。36は、スイッチング回路33、33’の増幅回路に電圧を供給する電源部である。電源部36としては、電池等が用いられるがこれに限られない。電源部36としては、ACアダプタ等も用いることができる。第1の差動増幅器37は、圧電素子の駆動電極の一方に印加している駆動電圧A(交流電圧)と駆動電極の他方に印加している駆動電圧A’(交流電圧)の差動信号(差動電圧)を取り出す差動増幅器である。第2の差動増幅器38は、圧電素子に設けられた振動検出用の電極(不図示)から取り出される電圧S(圧電素子電圧)と上記駆動電圧A’の差動信号(差動電圧)を取り出す差動増幅器である。
【0031】
図1において、39は、上記差動増幅器37,38で得られた差動電圧の位相差を検出する位相差検出回路である。制御部32は、位相差検出回路39で検出された駆動電圧A-駆動電圧A’と圧電素子電圧S-駆動電圧A’の位相差値により振動型モータ200の共振状態を検出する。差動電圧の位相差が下がり、ある値よりも小さい値になるということは、振動型モータ200の振動状態が共振状態から外れることを意味する。そのため、制御部32は、位相差がある値よりも小さい値にならないようにするために、ある値に対応する周波数よりも周波数を下げないように、周波数を制御する。本実施形態でも、上記位相差がある値よりも小さくなると、それ以上周波数を下げないように駆動されている。
【0032】
図1において、35は、例えば、フォトインタラプタとスリット板からなる回転部の回転位置を検出する位置検出部(以下、単に「検出部」ともいう)である。位置検出部35としては、位置検出センサ等が用いられる。検出部35(検出手段)で得られた結果に基づいて、回転体の位置情報及び速度情報が制御部32に渡され、制御部32はそれに応じて振動型モータ200の回転速度をコントロールする。なお、速度情報は、位置検出部35で得られた位置情報から導出してもよいし、別途、速度検出部を設けて、当該速度検出部から直接得てもよい。
【0033】
また、上記発振器34は、制御部32からの指令に基づき、上記AモードとBモードの駆動信号位相差(以下、「AB位相差」ともいう)を変更することも可能としている。
【0034】
図2は、本発明の振動型モータの制御装置で振動型モータを制御したときの、本発明の第1の実施形態における、周波数と速度及び電力の関係並びにパルス幅制御領域及び周波数制御領域を示す図である。
図3は、本発明の振動型モータの制御装置で振動型モータを制御したときの、本発明の第1の実施形態における、時間と周波数、パルス幅及び速度の関係を示す図である。
図4は、本発明の第1の実施形態におけるアルゴリズムを示すフローチャートである。
【0035】
【0036】
本実施形態では、起動時には、周波数を固定し、パルス幅を変更することで速度制御する形態(以下、「パルス幅制御」ともいう)になっている。ここで、「起動周波数」とは、振動型モータを起動するとき(起動時)に設定する周波数のことである。また、「起動パルス幅」とは、振動型モータを起動するときに設定するパルス幅のことである。
【0037】
本実施形態では、起動時に、パルス幅を固定し、周波数を変更することで速度制御する形態(以下、「周波数制御」ともいう)で速度制御することもできる。しかし、
図2からも解るように、周波数が高い領域(
図2の右側の領域)では、消費される電力(消費電力)が大きい傾向がある。パルス幅制御では、起動時に周波数が高い領域を使用せずに済むため、消費電力の増加を抑制することができる。また、
図2の「目標速度 低速」の領域を周波数制御すると、周波数を上げるときと下げるときとで動作が異なるヒステリシス区間に入るため、動作が不安定化する。パルス幅制御では、
図2の「目標速度 低速」の領域を周波数で速度制御せずに済むため、動作の不安定化を抑制することができる。このような理由から、本実施形態では、起動時にパルス幅制御する形態を採っている。
【0038】
図2で、周波数制御領域では、パルス幅を最大値(例えば、50%)に固定している。よって、パルス幅制御領域では、パルス幅制御から周波数制御に切り替わるポイントが、パルス幅が最大値になるところであり、そこに至るまでにパルス幅が増加していく形態となっている。フローチャートに従い、起動時の動作を説明する。
【0039】
まず、起動する(相対移動を開始する)前に、振動型モータの制御装置100は、事前に得られたデータから、第1の設定(起動するまでの設定値)となる、起動周波数f1及び固定パルス幅(起動するまで固定されるパルス幅)を決定する。本実施形態では、起動周波数f1を50kHz、固定パルス幅を50%としている(F-11)。固定パルス幅50%及び起動周波数f1(50kHz)による定常速度(第1の定常速度)は、振動型モータ200の目標速度を上回るように決定した。
【0040】
次に、起動周波数f1、パルス幅0%に設定し、振動型モータ200の電源を入れる(電源オン)(F-12)。
【0041】
次に、パルス幅を、固定パルス幅になるまで、1ステップ(1%)ずつ上げていく。(F-13)。具体的には、振動型モータの制御装置100は、パルス幅を1ステップ(1%)上げ(F-13)、パルス幅が、固定パルス幅になったか否かを判定する(F-14)。そして、パルス幅が固定パルス幅(第1のパルス幅)になったと判定されると(F-14が「YES」になると)、固定パルス幅(第1のパルス幅)で維持する(F-15)。また、パルス幅が固定パルス幅にならないと、パルス幅が固定パルス幅になるまで、F-13及びF-14を繰り返す。
【0042】
図3の(1)における設定(以下、「第1の設定」という)が、F-11からF-15までの動作を表している。
【0043】
パルス幅を徐々に上げる動作(F-13、F-14)は、起動時の音や、回路への突入電流を低減するのに効果的な動作であるが、より高速に立ち上げる(起動する)必要があるときには省略しても良い。F-16において、振動型モータの制御装置100は、振動型モータ200の起動を検出する。ここで、振動型モータ200の起動を検出すると(F-16が「YES」になると)、動作パラメータ(第1のパルス幅)を変更し、第2の設定となる(F-17)。
【0044】
モータの起動検出は、何をもって起動と判定するのかによって異なるが、本実施形態では、振動型モータの制御装置100は、速度が1rpm以上になったときに起動と判定するようにしている。この状態における設定が、
図3の(2)における設定(以下、「第2の設定」という)である。第2の設定では、第1の設定のパルス幅から目標速度(例えば、10rpm)で動作するパルス幅にほぼ等しいパルス幅(第2のパルス幅)に設定が固定される。この状態で、検出速度がほぼ目標速度に達するまで動作する(F-17、F-18)。なお、このとき、起動する前に設定されたパルス幅及び周波数による速度のオーバーシュートを抑制するためには、第2のパルス幅及び起動周波数f1による定常速度(第2の定常速度)は、振動型モータ200の目標速度を下回るように変更されればよい。
【0045】
次に、検出速度が目標速度にほぼ達した状態になると(F-18が「YES」になると)、目標速度と検出速度の差(偏差)に応じてパルス幅を制御する第3の設定となる(F-19)。この状態が、
図3の(3)における設定(以下、「第3の設定」という)である。第3の設定は、いわゆる通常の速度制御であり、この状態で目標位置まで駆動する。F-20において、振動型モータの制御装置100は、振動型モータ200が目標位置に到達したかを判断する。目標位置に到達したことを検出すると(F-20が「YES」になると)、振動型モータ200をオフ(モーターオフ)し、停止させる(F-21)。
【0046】
このように、振動型モータ200の起動時の駆動信号の設定(パルス幅、周波数)を、上記第1の設定~第3の設定のように設定することで、以下の効果が得られる。起動する前に設定されたパルス幅及び周波数による速度のオーバーシュートを抑制しつつ、起動時間の長時間化を抑制することが可能となる。上記第1の設定~第3の設定をまとめると、以下のようになる。
【0047】
(1)振動型モータ200が起動する前に、パルス幅及び周波数による定常速度(第1の定常速度)が、目標速度を上回るように、パルス幅及び周波数を設定する設定(第1の設定)。
(2)振動型モータ200が起動した後であって、駆動するときの実速度が目標速度を上回る前に、駆動するときの定常速度(第2の定常速度)が、第1の定常速度を下回るように、パルス幅を変更する設定(第2の設定)。
(3)パルス幅を変更した後に、目標速度で駆動するように、パルス幅を制御する設定(第3の設定)。
【0048】
第1の実施形態における第2の設定による定常速度(第2の定常速度)は、目標速度の90%以上110%以下であることが好ましく、目標速度と略等しいことがより好ましい。より早く、第3の設定に移行することができるからである。
【0049】
(第2の実施形態)
以下、振動型モータの極低速駆動に関する第2の実施形態を、
図5~
図7を用いて説明する。本実施形態は、起動する前に設定されたパルス幅及び周波数による速度のオーバーシュートを抑制しつつ、起動時間の長時間化を抑制すると共に、振動型モータの個体差や温度変化による、速度のオーバーシュートや起動時間の変化に追従することができる。
【0050】
図5は、本発明の振動型モータの制御装置で振動型モータを制御したときの、本発明の第2の実施形態における、周波数と速度及び電力の関係並びにパルス幅制御領域及び周波数制御領域を示す図である。
図5では、周波数制御するときのパルス幅を50%としている。周波数制御領域の速度のカーブは、パルス幅50%の状態を示しており、周波数を下げることにより速度が上昇していることが解る。
【0051】
第1の実施形態では、起動周波数f1は50kHz、固定パルス幅は50%としていた。
【0052】
図6は、周波数が異なるときの、パルス幅と速度の関係を示す図である。起動周波数f2では、パルス幅と速度の関係は変化し、パルス幅50%では起動周波数f1のときよりも高速で動作する。よって、起動周波数f2で、起動周波数f1のときと同じ速度を出すためには、f1のときよりもパルス幅を小さくする必要があることが解る。
【0053】
オーバーシュートを起こさずに高速で振動型モータ200を起動することができる設定(1)であっても、パルス幅を小さくしなければオーバーシュートを抑えることができない。よって、起動周波数がモータ特性のどこの周波数に設定されているかを認識し、その周波数に応じたパルス幅の設定をすることで、起動周波数がどこにあってもオーバーシュート無しに高速で起動することが可能となる。
【0054】
図7は、本発明の振動型モータの制御装置で振動型モータを制御したときの、本発明の第2の実施形態における、時間と周波数、パルス幅及び速度の関係を示す図である。上記説明にあったように、起動周波数f1よりも周波数が低い起動周波数f2のときは、(1)のパルス幅、(2)のパルス幅を、起動周波数f1のときに比べて小さくすることで、オーバーシュートの少ない起動特性が得られる。
【0055】
本実施形態では、起動周波数がモータ特性のどこの周波数に設定されているかを認識する方法として、(3)の低速制御しているときのパルス幅がいくつになっているかで、知る方法を用いている。ただし、認識する方法としては、この方法のみではなく温度とモータの周波数特性の関係を把握しておきテーブル化しておき、温度センサで温度検出してどの周波数にいるかを認識する方法もある。
【0056】
本実施形態におけるフローチャートは、第1の実施形態におけるフローチャートである、
図4のフローチャートとほぼ同様である。第1の実施形態と異なるのは、F-11の「動作するまでの設定値」及びF-17の「第2の設定」である。
【0057】
このように、起動周波数がモータの周波数特性のどの周波数に設定されているかを知ることで環境変化、負荷変化等が発生してもオーバーシュート無しに高速で起動することが可能となる。
【0058】
(第3の実施形態)
以下、振動型モータの低速駆動に関する第3の実施形態を、
図8を用いて説明する。本実施形態は、起動する前に設定されたパルス幅及び周波数による速度のオーバーシュートを抑制することができる。
【0059】
図8は、本発明の振動型モータの制御装置で振動型モータを制御したときの、本発明の第3の実施形態における、時間と周波数、パルス幅及び速度の関係を示す図である。
図8と
図3とを比較すると、(2)(第2の設定)が大きく異なっている。
【0060】
本実施形態においては、振動型モータの制御装置100は、本発明の振動型モータの制御装置100による制御(
図3)に対して、(2)のオーバーシュートを小さく抑えるための設定を変更している。
図8において点線で囲った(2)の動作の部分である。第1の実施形態、第2の実施形態において、(2)のオーバーシュートを小さく抑えるための設定(第2の設定)は速度制御時の定常状態の動作パラメータに設定していた。しかし、本実施形態では定常状態よりも小さい駆動力を出す設定すなわちパルス幅をより小さい値に固定している。
【0061】
ここで、第2の設定は、モータが駆動することができる最小のパルス幅(例えば15%)よりは大きく目標速度で動作する定常状態のパルス幅(例えば25%)よりは小さな値となっている。図に具体的な数値は記載していないが本実施形態では18%に設定している。
【0062】
図4のフローチャートを用いて、本実施形態を説明する。
【0063】
第1の実施形態と異なるのはF-17の第2の設定で、第1の実施形態では実速度が目標速度と等しくなるパルス幅の設定であったのを、モータが駆動することができる最小のパルス幅よりは大きく実速度が目標速度よりは小さくなる設定にしたことである。
【0064】
検出速度が目標速度にほぼ達した状態になると目標速度と検出速度の差(偏差)に応じてパルス幅を制御する第3の設定となる制御は第1の実施形態、第2の実施形態と同様である。このような設定にすることで、オーバーシュートしようとする駆動力を最小限に抑えることが可能になる。また、オーバーシュートを抑える、もしくは、(1)のオーバーシュートなしに高速に起動することができる設定で、より高速で起動することができるように駆動力を与えることが可能になる。そして、本提案の目的であるオーバーシュート無しに高速で起動することが可能となる。
【0065】
(第4の実施形態)
以下、振動型モータの低速駆動に関する第4の実施形態を、
図9~
図11を用いて説明する。本実施形態は、起動する前に設定されたパルス幅及び周波数による速度のオーバーシュートを抑制することができる。
【0066】
図9は、本発明の振動型モータの制御装置で振動型モータを制御したときの、本発明の第4の実施形態における、周波数と速度及び電力の関係並びに周波数制御領域を示す図である。
図10は、本発明の振動型モータの制御装置で振動型モータを制御したときの、本発明の第4の実施形態における、時間と周波数、パルス幅及び速度の関係を示す図である(パルス幅は固定)。
図11は、本発明の第4の実施形態におけるアルゴリズムを表わすフローチャートである。
【0067】
【0068】
第1の実施形態にも記載したように、本実施形態のような周波数での制御を用いた場合、電力が高い周波数領域を使うことになり消費電力は増加傾向になるがパルス幅制御を用いる必要がなく制御が簡単になるメリットがある。
【0069】
まず、起動する前に、振動型モータの制御装置100は、事前に得られたデータから、第1の設定(起動するまで(起動検出まで)の設定値)となる、周波数f1及びパルス幅を決定する。本実施形態では、周波数f1を50kHz、パルス幅を50%としている(F-31)。パルス幅50%及び周波数f1(50kHz)による定常速度(第1の定常速度)は、振動型モータの目標速度を上回るように決定した。
【0070】
次に、起動周波数f0を55kHz、パルス幅50%に設定し、電源を入れる(F-32)。
【0071】
次に、周波数を、起動周波数f0から周波数f1になるまで、1ステップずつ下げていく(F-33)。本実施形態では、1ステップを100Hzとしている(F-33)。具体的には、振動型モータの制御装置100は、周波数を1ステップ(100Hz)下げ(F-33)、振動型モータの制御装置100は、周波数がf1(50kHz)になったか否かを判定する(F-34)。そして、周波数が周波数f1になったと判定されると(F-34が「YES」になると)、周波数f1を維持する(F-35)。
【0072】
図9の(1)が上記設定を表している。周波数を徐々に下げていく動作(F-33、F-34)は、振動振幅を徐々に上げていく動作と等価なので、起動時の音を低減するのに効果的な動作であるが、より高速に立ち上げる(起動する)必要があるときには省略しても良い。
【0073】
上記周波数f1は振動型モータがオーバーシュートなしに高速に起動することができる設定となっておりこの設定を第1の設定とする。
【0074】
F-36において、振動型モータの制御装置100は、振動型モータ200の起動を検出する。ここで、振動型モータ200の起動を検出すると(F-36が「YES」になると)、動作パラメータ(第1の周波数)を変更し、第2の設定となる(F-37)。第2の設定では、第1の設定の周波数f1から、目標速度で動作するパルス幅に略等しい周波数(目標速度の70%以上90%未満で動作する周波数)に設定固定される。この状態で検出速度がほぼ目標速度に達するまで動作する(F-37)。上記第2の設定は、オーバーシュートを最小限に抑えるための設定となっている。
【0075】
F-38において、振動型モータの制御装置100は、検出速度が目標速度にほぼ達したか否かを判定する。次に、検出速度が目標速度にほぼ達した状態になると(F-38が「YES」になると)、処理はF-39に移る。F-39において、振動型モータの制御装置100は、目標速度と検出速度の差(偏差)に応じて周波数を制御する第3の設定となる。第3の設定は、いわゆる通常の速度制御であり、振動型モータの制御装置100は、振動型モータ200をこの状態で目標位置まで移動する。
【0076】
F-40において、振動型モータの制御装置100は、振動型モータ200が目標位置に到達したか否かを検出する。もし振動型モータ200が目標位置に到達したことを検出すると(F-40が「YES」になると)、処理はF-41に移る。F-41において、振動型モータの制御装置100は、振動型モータ200をオフ(モーターオフ)し、振動型モータ200を停止させる。
【0077】
このように、振動型モータ200の起動時の駆動信号の設定(パルス幅、周波数)を、第1乃至第3の実施形態ではパルス幅を用いて実施していた。しかし、本実施形態のように、周波数を用いて、以下の(1)~(3)の設定にすることで、駆動する前に設定されたパルス幅及び周波数による速度のオーバーシュートを抑制しつつ、起動時間の長時間化を抑制することが可能となる。
【0078】
(1)振動型モータが起動する前に、パルス幅及び周波数による定常速度(第1の定常速度)が、目標速度を上回るように、パルス幅及び周波数を設定する設定(第1の設定)。
(2)振動型モータが起動した後であって、駆動するときの実速度が目標速度を上回る前に、駆動するときの定常速度(第2の定常速度)が、第1の定常速度を下回るように、周波数を変更する設定(第2の設定)。
(3)周波数を変更した後に、目標速度で駆動するように、周波数を制御する設定(第3の設定)。
【0079】
第2の設定による定常速度(第2の定常速度)は、目標速度の90%以上110%以下であることが好ましく、ほぼ等しいことがより好ましい。より早く、第3の設定に移行することができるからである。
【0080】
第1の実施形態~第3の実施形態では、第2の設定及び第3の設定で周波数を固定し、第4の実施形態では、第2の設定及び第3の設定でパルス幅を固定したが、本発明はこれらに限られない。たとえば、第2の設定ではパルス幅を固定し、第3の設定では、周波数を固定したり、第2の設定では周波数を固定し、第3の設定では、パルス幅を固定したりしてもよい。また、第2の設定及び第3の設定では、パルス幅及び周波数の両方を固定しなくてもよい。
【0081】
第1の実施形態~第4の実施形態では、目標速度で振動体と接触体とが相対移動するように、パルス幅及び周波数の少なくとも一方を制御(第3の設定)するときの目標速度、パルス幅及び周波数を記憶する記憶部(記憶手段)を有するのが好ましい。なぜならば、このとき、制御手段が、パルス幅及び周波数を設定(第1の設定)、変更(第2の設定)及び制御(第3の設定)するときに、記憶手段に記憶された目標速度、パルス幅及び周波数に基づいて設定、変更及び制御することができるからである。目標速度で駆動するためのパルス幅及び周波数は環境変化等により変化し得るので、記憶手段により記憶された直近の目標速度、パルス幅及び周波数に基づいて設定、変更及び制御することにより、より正確な設定、変更及び制御が可能になる。
【0082】
本発明における振動型モータの制御装置の制御対象としての振動型モータとしては、
図14に示された振動型モータ200が用いられるが、本発明における振動型モータの制御装置の制御対象としての振動型モータは、これに限られない。たとえば、
図13に示された振動型モータも、本発明における振動型モータの制御装置の制御対象としての振動型モータとなり得る。
【0083】
圧電素子に、複数のパルス信号に基づいて生成された複数の交流電圧を印加することにより振動体と接触体とが相対移動する点は、
図14の振動型モータ200も、
図13に示された振動型モータも同様である。
【0084】
(第5の実施形態)
図12は、本発明における振動型モータの制御装置100を用いたカメラ装置(撮像装置)である。
図12は、概略斜視図であり、一部を透過した状態で示している。第1乃至第4の実施形態と同様、第5の実施形態における制御装置のハードウェア構成は、
図1の制御装置と同じである。
【0085】
デジタルカメラ400(カメラ装置)の前面には、レンズ鏡筒410(レンズ装置)が取り付けられている。レンズ装置は、カメラ装置に固定されたもののみならず、カメラ装置に着脱可能な形態(交換レンズ)であっても良い。レンズ鏡筒410の内部には、フォーカスレンズ407を含む複数のレンズ(不図示)と、手ぶれ補正光学系403が配置されている。手ぶれ補正光学系403は、2軸のコアレスモータ404,405の回転が伝達されることによって、上下方向(Y方向)と左右方向(X方向)に補正動作可能となっている。
【0086】
デジタルカメラ400の本体側には、レンズの光軸上に撮像素子408が設けられており、撮像素子408に、レンズ鏡筒410を通過した光が、光学像として結像する。撮像素子408は、CMOSセンサ或いはCCDセンサ等の光電変換デバイスであり、光学像をアナログ電気信号に変換する。撮像素子408から出力されるアナログ電気信号は、不図示のA/D変換器によってデジタル信号に変換された後、不図示の画像処理回路による所定の画像処理を経て、画像データ(映像データ)として不図示の半導体メモリ等の記憶媒体に記憶される。
【0087】
また、デジタルカメラ400の本体側(カメラ装置側)には、内部装置として、上下方向(ピッチング)の手ぶれ量(振動)を検出するジャイロセンサ401と、左右方向(ヨーイング)の手ぶれ量(振動)を検出するジャイロセンサ402が配置されている。ジャイロセンサ401,402によって検出された振動の逆方向に、コアレスモータ404,405が駆動され、手ぶれ補正光学系403のZ方向に延びる光軸を振動させる。その結果、手ぶれによる光軸の振動が打ち消され、手ぶれが補正された良好な写真を撮影することができる。
【0088】
振動型モータ200は、第1乃至第4の実施形態で説明した制御方法によって制御され、不図示のギア列を介して、レンズ鏡筒410に配置されたフォーカスレンズ407を光軸方向(Z方向)に駆動する。但し、これに限定されず、振動型モータ200は、ズームレンズ(不図示)の駆動等、任意のレンズの駆動に用いることができる。デジタルカメラ400の本体側には、振動型モータ200を、第1乃至第4の実施形態で説明した駆動方法で駆動するための、
図1に示した振動型モータの制御装置100が、制御回路409として、組み込まれている。
【0089】
図13は、本発明における振動型モータの制御装置100を用いたレンズ駆動装置である。
図13で用いられている振動型モータは、いわゆるリニア型(直進駆動型)型である。振動型モータは、後述する、振動体901、第2のガイドバー904(接触体)、加圧磁石905(加圧部材)を有する。レンズ駆動装置(レンズ駆動機構部900)は、被駆動体であるレンズホルダ902、レンズホルダ902を駆動する振動体901、加圧磁石905、第1のガイドバー903、第2のガイドバー904(接触体)及び不図示の基体を備える。このように、振動体901とガイドバー904(接触体)を相対移動させる振動型モータであれば、本提案の駆動方法を利用することができる。
【0090】
図15は、本発明における振動型モータの制御装置100を用いた自動ステージ及びそれを有する顕微鏡である。
図15の顕微鏡は、撮像素子と光学系を内蔵する撮像部60と、基台上に設けられ、振動型駆動装置により移動されるステージ62を有する自動ステージ61と、を有する。被観察物をステージ62上に置いて、拡大画像を撮像部60で撮影する。観察範囲が広範囲に有る場合には、振動型駆動装置で、ステージ62を移動させることで被観察物を図中のX方向やY方向に移動させて、多数の撮影画像を取得する。
【0091】
不図示のコンピュータにて、撮影画像を結合し、観察範囲が広範囲で、かつ、高精細な1枚の画像を取得することができる。
【0092】
<その他の実施形態>
本発明は、記憶媒体に記憶された、コンピュータにより実行可能な命令を、読み出し実行することで上述した本発明の実施形態に記載した1以上の機能を行うシステムや装置のコンピュータによっても、実施することができる。本発明はまた、システムや装置のコンピュータによって行われる方法であって、例えばコンピュータにより実行可能な命令を記憶媒体から読み出し実行することで上述した本発明の実施形態に記載した1以上の機能が行われる、方法によっても実施することができる。
【0093】
コンピュータは、1以上のCPU、MPU、その他の回路により構成され、更に別個の複数のコンピュータや別個のコンピュータプロセッサのネットワークを含んでも良い。コンピュータにより実行可能な命令は、例えば、ネットワークや記憶媒体からコンピュータに提供されても良い。
【0094】
記憶媒体は、例えば、1以上の、ハードディスク、RAM、ROM、分散コンピューティングシステムの記憶装置、光学ディスク(例えばCD、DVD、BD(登録商標))、フラッシュメモリ、メモリカードを含んでも良い。
【0095】
実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は実施例の開示に限定されないものと解されるべきである。本発明は、実施例に対する本発明の範囲内のあらゆる変形や等価な構造や機能を包含するよう最も広く解釈されるべきものである。
【符号の説明】
【0096】
32 マイコン部(制御手段)
200 振動型モータ(振動型モータ)
201 弾性体(振動体)
204 下ナット(振動体)
207 移動体(接触体)