(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】プラント監視支援装置
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
G05B23/02 T
(21)【出願番号】P 2020160705
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 理
(72)【発明者】
【氏名】平岡 由紀夫
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-061853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周期で計測された対象プロセスのプロセスデータから2以上の変数値を収集し、前記変数値の時系列データを保存するデータ収集・保存部と、
前記データ収集・保存部から、一又は多変数の前記時系列データを抽出可能なデータ抽出部と、
前記データ抽出部によって抽出された一又は多変数の前記時系列データを用いて複数の類似度を算出する類似度算出部と、
前記複数の類似度を要素とする類似度行列を視覚化した類似度マップを表示するためのデータを生成する類似度マップ生成部と、を備え
、
前記類似度算出部は、多変数の前記時系列データに含まれる監視時点における複数の前記変数の情報から、前記複数の変数同士の変数類似度を算出する変数類似度算出部を含み、
前記類似度マップ生成部は、前記変数類似度算出部にて生成された複数の前記変数類似度を要素とする変数類似度行列を視覚化した変数類似度マップを表示するためのデータを生成する変数類似度マップ生成部を含み、
ユーザが前記変数類似度マップ上で前記変数を選択する操作情報に基づいて、同時に監視する複数の前記変数を選択するトレンド監視変数選択部と、
前記トレンド監視変数選択部により選択された複数の前記変数のトレンドグラフを表示するデータを生成するトレンドグラフ表示部と、を備える、プラント監視支援装置。
【請求項2】
前記変数類似度の算出に用いられる複数の前記変数の情報は、複数の前記変数の前記時系列データに含まれる前記変数値、複数の前記変数の名称、および、前記対象プロセスのアラーム情報の少なくともいずれかを含む、請求項
1記載のプラント監視支援装置。
【請求項3】
前記変数類似度マップ生成部は、任意の一つの前記変数と他の複数の前記変数との前記変数類似度の値に応じて複数の前記変数に対応する要素を配置した前記変数類似度行列を可視化した前記変数類似度マップのデータを生成し、
前記トレンド監視変数選択部は、任意の一つの前記変数に対して前記変数類似度の高い順に所定数の前記変数を更に選択する、請求項
1記載のプラント監視支援装置。
【請求項4】
前記変数類似度マップ生成部は、前記変数類似度の高い変数群によるクラスタを生成し、前記クラスタ毎に
前記変数が並ぶように前記要素を配置した前記変数類似度行列を可視化する前記変数類似度マップのデータを生成し
前記トレンド監視変数選択部は、前記クラスタに含まれる複数の前記変数を同時監視する変数を選択する、請求項
1記載のプラント監視支援装置。
【請求項5】
前記類似度算出部は、前記多変数の前記時系列データに含まれる任意の変数の前記時系列データを、時間方向における所定の周期で複数期間に分割した第2時系列データの、前記複数期間のそれぞれに対応する値同士の時間類似度を算出する時間類似度算出部を含み、
前記類似度マップ生成部は、前記時間類似度算出部にて生成された複数の前記時間類似度を要素とする時間類似度行列を視覚化した時間類似度マップを表示するためのデータを生成する時間類似度マップ生成部を含み、
ユーザが前記時間類似度マップ上で監視期間を選択する操作情報に基づいて、前記複数期間の少なくとも一つを選択するトレンド監視期間選択部と、
前記トレンド監視期間選択部により選択された前記期間を前記監視期間とするトレンドグラフを表示するデータを生成するトレンドグラフ表示部と、を更に備える請求項
1記載のプラント監視支援装置。
【請求項6】
前記時間類似度は、前記第2時系列データに基づく行列の正準角類似度、前記第2時系列データに基づく行列の代表値のベクトル間の相関係数による類似度、および、ミンコフスキー距離に基づく類似度、の少なくともいずれかを含む、請求項
5記載のプラント監視支援装置。
【請求項7】
前記トレンド監視期間選択部は、前記操作情報に基づいて、基準とする前記監視期間と、基準とする前記監視期間と比較監視を行う前記監視期間とを選択する、請求項
5記載のプラント監視支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラント監視支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理プロセス、汚泥消化プロセス、浄水プロセス、給配水プロセスなどの水処理/水運用プロセスや石油化学プロセス、鉄鋼プロセス、半導体製造プロセス、あるいは医薬品製造プロセス系のプラントでは、複数のプロセス状態を測定する複数のオンラインセンサが設置されている。
【0003】
プロセス監視装置(SCADA: Supervisory Control And Data Acquisition)は、通常プロセス系に設置されたセンサ群の計測により得られるプロセスデータ(流量、温度、圧力、水質、操作量など)を時系列データ(トレンドグラフ)に変換する。これをプラント管理者(マネージャー)や運転員(オペレータ)が監視することにより、プロセスの状態を把握し、プロセスの運転変更や制御を行っている。
【0004】
プラント監視は、一般に、プロセスのアウトプットの性能を良好に維持しながら、できる限り省エネルギーで、かつ、プラントのトラブルを回避しながら安全かつ効率的にプラントを運用することを目的に行われる。
【0005】
例えば、下水処理プロセスにおいては、アウトプットである放流水質を良好な状態に維持しながらできる限り省電力・省薬品コストで運用することが望まれる。同時に、プロセスの過程での何らかのトラブルにより、水処理ができない状況になることを回避する様に気を付けて運用が行われる。また、石油化学プロセスや鉄鋼の圧延プロセスなどでは、製品(石油精製製品や圧延された鉄材など)の品質を担保しながら、できる限り省エネ・省コストで効率的に生産することが望まれる。この際、プラントが何らかのトラブルなどで停止するダウンタイムを最小化しながら、良品質の製品の歩留まり(収率)を上げて生産することが省コスト運用にもつながる。
【0006】
このようなプラント監視における異常兆候の検出と対応は、プラントのトラブルを回避して安全に運用することを実現するだけでなく、上述した様にトラブル回避によりダウンタイムを最小化して省コスト運用することにも間接的につながる。
【0007】
プラント監視において、例えば各々のプロセスデータの時系列データには、管理限界等と呼ばれる上下限値が設定されており、この管理限界を超えた場合にアラームが発報される。プラントマネージャーやオペレータは、このアラームに基づいてプラント運用の確認・見直しを行う。上述の様なアラーム発報に基づく運転管理において、統計を用いて2σ、3σ(σは監視したいデータの標準偏差)などの基準で管理する方法は、しばしば統計的プロセス管理(SPC:Statistical Process Control)と呼ばれる。
【0008】
アラーム発報に基づく運転管理を行う場合には、設定した管理限界値に応じて、軽故障(軽警報)、重故障(重警報)などが発報されるが、管理限界値を厳しく設定した場合に頻繁に誤アラーム(False Alarm)が発生するいわゆる「アラームの洪水」の問題や、逆に管理限界値を緩く設定した場合に異常兆候の検出を見逃す未アラーム(Missed Alarm)による異常時の対応遅れやそれに伴う重大な故障やプラントの停止リスクの問題がある。
【0009】
このような状況に対応するための技術として、石油化学プロセスや鉄鋼プラントの分野で利用されてきた「多変量統計解析手法」を用いた多変量統計的プロセス監視(MSPC:Multi-Variate Statistical Process Control)と呼ばれる方法が知られている。MSPCでは、主成分分析(PCA:Principal Component Analysis)や潜在変数射影法/部分最小二乗法(PLS:Projection to Latent Structure/Partial Least Square)などの多変量解析を用いて、プラントの異常兆候の検出(Fault Detection)と、異常要因となるプロセス監視変数(データ)の推定(Fault Isolation)とを行うことを主な目的としている。
【0010】
実際のプラント運用の現場の多くでは、トレンドグラフによる時系列データ監視と、管理限界を用いたSPCにより異常検知が行われている。この状況において、新たにMSPCの様なアドバンストな多変量解析技術をプラント運用の現場に組み込んでいく際には、SPCをMSPCで完全に置き換えるという様な、プラント運転管理者にとって不連続な変化は、実際のユーザである運転員に不必要な混乱を与えることになる。
【0011】
そのため、従来のトレンドグラフによる時系列データ監視やSPCによるプラント監視と、MSPCとを連続的に(シームレス)につなげる仕組みとして、MSPCで検出した異常兆候をトレンド監視に結びつけるプラント監視方法が提案されている。具体的には、MSPCと従来から行っているトレンド監視とを関連づけ、異常兆候が検出されたときに、運転員に「今トレンド監視すべき変数は何か」という情報を付加したトレンド監視を実現することが提案されている。この様に、「異常兆候の検出」という情報をトリガーとして、運転管理者が見るべきデータをガイダンスするトレンド監視のナビゲーションシステムによれば、プラント監視をより効率的に行うことが出来るとともに、非熟練運転員に対して有用なナビゲーションを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【非特許文献】
【0013】
【文献】W.Hu et al、 An Application of Advanced Alarm Management Tools to an Oil Sand Extraction Plant、 Preprints of 9th International Symposium on Advanced Control of Chemical Process、 IFAC 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
一方、プラント監視は必ずしも異常時にだけ行われるだけでなく、通常運用時にも行われており、監視している大半の時間帯は異常ではない通常運用状態であるといってよい。このような通常運用時においても有用なトレンド監視のナビゲーションシステムがあると、プラント監視をより効率的に行うことが可能になると同時に、必ずしも監視対象のプラントの知識が豊富でない非熟練運転員にとっては、きわめて有用な情報となると考えられる。
【0015】
本発明の実施形態は上記事情を鑑みて成されたものであって、プロセスの監視を行う管理者に有用なナビゲーション情報を与えるプラント監視支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
実施形態によるプラント監視支援装置は、所定周期で計測された対象プロセスのプロセスデータから2以上の変数値を収集し、前記変数値の時系列データを保存するデータ収集・保存部と、前記データ収集・保存部から、一又は多変数の時系列データを抽出可能なデータ抽出部と、前記データ抽出部によって抽出された一又は多変数の前記時系列データを用いて複数の類似度を算出する類似度算出部と、前記複数の類似度を要素とする類似度行列を視覚化した類似度マップを表示するためのデータを生成する類似度マップ生成部と、を備え、前記類似度算出部は、多変数の前記時系列データに含まれる監視時点における複数の前記変数の情報から、前記複数の変数同士の変数類似度を算出する変数類似度算出部を含み、前記類似度マップ生成部は、前記変数類似度算出部にて生成された複数の前記変数類似度を要素とする変数類似度行列を視覚化した変数類似度マップを表示するためのデータを生成する変数類似度マップ生成部を含み、ユーザが前記変数類似度マップ上で前記変数を選択する操作情報に基づいて、同時に監視する複数の前記変数を選択するトレンド監視変数選択部と、前記トレンド監視変数選択部により選択された複数の前記変数のトレンドグラフを表示するデータを生成するトレンドグラフ表示部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、一実施形態のプラント監視支援装置の一構成例を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、監視画面上に表示された変数類似度マップの一例を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、監視画面上に表示された変数類似度マップの他の例を概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、監視画面上に表示された変数類似度マップの他の例を概略的に示す図である。
【
図5】
図5は、監視画面上に表示された変数類似度マップの他の例を概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す変数類似度マップにおいて、トレンド監視変数を選択する機能の一例を説明するための図である。
【
図7A】
図7Aは、
図2に示す変数類似度マップにおいて、トレンド監視変数を選択する機能の他の例を説明するための図である。
【
図7B】
図7Bは、
図2に示す変数類似度マップにおいて、トレンド監視変数を選択する機能の他の例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、トレンド監視変数選択部により選択された変数のトレンドグラフを監視画面上に表示した例を示す図である。
【
図9】
図9は、トレンド監視変数選択部により選択された変数のトレンドグラフを監視画面上に表示した例を示す図である。
【
図10】
図10は、ローディング部分行列の正準角について説明するための図である。
【
図11】
図11は、監視画面上に表示された時間類似度マップの一例を概略的に示す図である。
【
図12】
図12は、監視画面上に表示された時間類似度マップの一例を概略的に示す図である。
【
図13】
図13は、トレンド監視期間選択部の動作の一例について説明するための図である。
【
図14】
図14は、トレンド監視期間選択部の動作の他の例について説明するための図である。
【
図15】
図15は、現在の監視データと比較監視対象のデータとのトレンドグラフを監視画面上に表示した一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、複数の実施形態のプラント監視支援装置について図面を参照して詳細に説明する。以下で説明するプラント監視支援装置は、例えば、下水処理プロセス、排水処理プロセス、汚泥消化プロセス、浄水プロセス、給配水プロセス、化学プロセス、鉄鋼プロセスなどのプロセス系の監視装置に適用することが可能である。
【0019】
プラントの監視において、通常、運転管理者・運転員は、自身の判断で選択した「ある監視変数」のデータをトレンドグラフで監視している。その際、「選択した変数の過去のデータ」や「選択した変数と関連のあるデータ」を参照しながら、監視を行うことが多い。例えば、運転管理者・運転員は、選択した変数のトレンドグラフを監視しながら、「昨日の同時刻のデータ」、「先週の同時刻のデータ」もしくは「1年前の同日付近のデータ」などを参照しながら監視を行う場合がある。
【0020】
また、例えば浄水・配水処理において、運転管理者・運転員が「ポンプ吐出流量」を監視している場合に、そのポンプで汲み出す配水池、あるいはポンプで送水する先の配水池の「水位」を同時監視することがある。
【0021】
あるいは、運転管理者・運転員は、下水処理において、「ブロワの風量」と一緒に「ブロワ回転数」や「ブロワ電力」を同時に監視したり、「ブロワの風量」と同時に反応槽内に存在する「溶存酸素濃度」、さらには、溶存酸素濃度に影響を受ける各種の「水質濃度」を同時に監視したりすることがある。
【0022】
このように、同一変数の異なる時間帯のデータの同時監視や、ある変数と関連を持つ変数の同時監視は、プラントを適切に運用するうえで、きわめて重要な意味を持つ。この際、例えば「昨日」「一週間前」「一年前」といった規則的に時間をずらしたデータは検索もしやすく、これを同時に監視することは容易である。一方で、例えば、任意のプラント監視時点と同じような運用を行っていた過去のデータを検索することは必ずしも容易でない。
【0023】
また、何らかの関連を持つ変数を同時監視する場合、例えば、「流量」と「水位」、「ブロワ/ポンプの電力」と「回転数」と「流量」、など直接的に因果関係や相関関係を持つことが大多数の運転管理者・運転員にとって明らかなときには、これらを同時監視することは比較的容易である。一方で、例えば、「ブロワ風量」と「水質」、などの様に、対象プロセスに関するある程度の知識を持つ運転管理者・運転員でないと理解できない何らかの関係性を持つ変数の同時監視は、特に非熟練の運転管理者や運転員にとって容易ではない。
【0024】
そこで、以下に説明する実施形態では、このように、非熟練の運転管理者や運転員によってプラント監視が行われる様な状況で、「選択した変数の過去のデータ」や「選択した変数と関連のあるデータ」の参照が必ずしも容易でないようなときに、監視すべきトレンドデータのナビゲーション情報を運転管理者・運転員に提供し、ガイダンスする機能を備えたプラント監視支援装置について説明する。
【0025】
以下、実施形態のプラント監視支援装置について、図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態のプラント監視支援装置の一構成例を概略的に示す図である。
ここでは、実施形態のプラント監視支援装置を、窒素およびリン除去を目的とした下水高度処理プロセスを対象とする監視システムに適用した一例を示している。なお、本実施形態のプラント監視支援装置は、下水高度処理プロセスを対象とするものに限定されるものではなく、1種類又は2種類以上の計測項目の時系列データが存在する任意のプロセスを対象とすることができる。
【0026】
下水高度処理プロセス1は、最初沈澱池101、嫌気槽102、無酸素槽103、好気槽104及び最終沈澱池105を有する。処理対象の下水(以下「被処理水」という。)は、最初沈澱池101、嫌気槽102、無酸素槽103、好気槽104、最終沈澱池105の順に送水され処理される。
【0027】
最初沈澱池101は、下水高度処理プロセス1に送られてくる被処理水の貯水池である。最初沈澱池101では、沈澱により比重の重い固形物が被処理水から分離される。
嫌気槽102は、有機物を分解する微生物を被処理水に投入するための水槽である。嫌気槽102において、被処理水は空気が供給されない状態で攪拌される。これにより、微生物に体内のリンを吐き出させる。一般にこの処理をリン吐出という。
【0028】
無酸素槽103は、被処理水から窒素を除去するための水槽である。具体的には、無酸素槽103では、後段の好気槽104から戻された被処理水が嫌気槽102から送られてきた被処理水に混ぜられ、空気を供給されない状態で攪拌される。無酸素槽103では、微生物の働きにより被処理水中の硝酸が窒素に分解され、大気に放出される。一般にこの処理を脱窒という。
【0029】
好気槽104は、被処理水中の有機物の分解と、リンの除去及びアンモニアの硝化とを行うための水槽である。具体的には、被処理水に空気を供給して微生物を活性化させ、微生物に有機物を分解させるとともに、微生物に被処理水中のリンを吸収させる。嫌気状態でリンを吐出しその代りに有機物を蓄積した状態の微生物は、活性化されることにより吐き出した以上のリンを吸収するため、被処理水中のリンが除去される。また、好気槽104では、被処理水に空気が供給されることによりアンモニアが硝酸に分解される。一般にこの処理を硝化という。
【0030】
最終沈澱池105は、リンの除去及びアンモニアの硝化が行われた被処理水の貯水池である。最終沈澱池105では沈澱によって被処理水に残存する固形物が分離され、上澄みの清澄水が処理済みの水として放流される。
下水高度処理プロセス1は、最初沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ111、ブロワ112、循環ポンプ113、返送汚泥ポンプ114、及び、最終沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ115を備える。
【0031】
最初沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ111は、最初沈澱池101から沈澱した汚泥を引き抜いて除去するポンプである。最初沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ111は、引き抜いた汚泥の流量を計測する流量センサを有する。
ブロワ112は、好気槽104に酸素を供給する送風機である。ブロワ112は、供給した空気の流量を計測する流量センサを有する。
循環ポンプ113は、被処理水を好気槽104から無酸素槽103に返送するポンプである。循環ポンプ113は、返送した被処理水の流量を計測する流量センサを有する。
【0032】
返送汚泥ポンプ114は、最終沈澱池105から沈澱した汚泥の一部を引き抜いて嫌気槽102に返送するポンプである。返送汚泥ポンプ114は、返送した汚泥の流量を計測する流量センサを有する。
最終沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ115は、最終沈澱池105から沈澱した汚泥を引き抜いて除去するポンプである。最終沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ115は、引き抜いた汚泥の流量を計測する流量センサを有する。
【0033】
また、下水高度処理プロセス1は、雨量センサ121、下水流入量センサ122、流入TNセンサ123、流入TPセンサ124、流入有機物センサ125、ORPセンサ126、嫌気槽pHセンサ127、無酸素槽ORPセンサ128、無酸素槽pHセンサ129、リン酸センサ130、DOセンサ131、アンモニアセンサ132、MLSSセンサ133、水温センサ134、余剰汚泥SSセンサ135、放流SSセンサ136、汚泥界面センサ137、下水放流量センサ138、放流TNセンサ139、放流TPセンサ140、及び、放流有機物センサ141を備える。
【0034】
雨量センサ121は、下水高度処理プロセス1に流入する付近の雨量を計測するセンサである。下水流入量センサ122は、下水高度処理プロセス1に流入する下水(以下「流入下水」という。)の流量を計測するセンサである。流入TNセンサ123は、流入下水に含まれる全窒素量(TN)を計測するセンサである。流入TPセンサ124は、流入下水に含まれる全リン量(TP)を計測するセンサである。流入有機物センサ125は、流入下水に含まれる有機物量を計測するUV(吸光度)センサ又はCOD(化学的酸素要求量)センサである。
【0035】
ORPセンサ126は、嫌気槽102のORP(酸化-還元電位)を計測するセンサである。嫌気槽pHセンサ127は、嫌気槽102のpHを計測するセンサである。
無酸素槽ORPセンサ128は、無酸素槽103のORPを計測するセンサである。無酸素槽pHセンサ129は、無酸素槽103のpHを計測するセンサである。
リン酸センサ1210は、好気槽104のリン酸濃度を計測するセンサである。DOセンサ1211は、好気槽104の溶存酸素濃度(DO)を計測するセンサである。アンモニアセンサ1212は、好気槽104のアンモニア濃度を計測するセンサである。
【0036】
MLSSセンサ1213は、嫌気槽102、無酸素槽103又は好気槽104の少なくとも一箇所で活性汚泥濃度(MLSS)を計測するセンサである。
図1では、MLSSセンサ1213は嫌気槽102に設置された例を示している。
水温センサ1214は、無酸素槽103又は好気槽104の少なくとも一箇所で水温を計測するセンサである。
図1では、水温センサ1214は無酸素槽103に設置された例を示している。
【0037】
余剰汚泥SSセンサ1215は、最終沈澱池105から引き抜かれる汚泥の固形物(SS)濃度を計測するセンサである。放流SSセンサ1216は、最終沈澱池105から放流される水のSS濃度を計測するセンサである。汚泥界面センサ1217は、最終沈澱池105の汚泥界面レベルを計測するセンサである。
下水放流量センサ1218は、放流水の流量を計測するセンサである。放流TNセンサ1219は、放流水に含まれる全窒素量を計測するセンサである。放流TPセンサ1220は、放流水に含まれる全リン量を計測するセンサである。放流有機物センサ1221は、放流水に含まれる有機物量を計測するUVセンサ又はCODセンサである。
【0038】
なお、上記の最初沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ111、ブロワ112、循環ポンプ113、返送汚泥ポンプ114及び最終沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ115など機器のそれぞれは所定周期の制御で動作する。また、最初沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ111、ブロワ112、循環ポンプ113、返送汚泥ポンプ114及び最終沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ115の機器それぞれが有する流量センサを含む上記の各センサは、所定周期でセンシング対象を計測する。以下、最初沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ111、ブロワ112、循環ポンプ113、返送汚泥ポンプ114及び最終沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ115のそれぞれが有する流量センサを総称して操作量センサと称し、その他のセンサを総称してプロセスセンサと称する。
【0039】
下水高度処理プロセス1や他の多くのプラント(鉄鋼プラント、石油化学プラント、食品プラント、製薬プロセス、半導体製造プロセス、発電プラント、交通監視設備、空調監視設備、など)では、プロセスの状態を表す量や運転操作に関わる量など多数のセンサが設置され所定の周期で計測を行っているものが多い。各操作量センサ及び各プロセスセンサは、所定周期のセンシングによって得られた計測データをプロセスデータとしてデータ収集・保存部2に送信する。
【0040】
本実施形態のプラント監視支援装置は、データ収集・保存部2と、データ抽出部3と、変数類似度算出部4と、変数類似度マップ生成部5と、トレンド監視変数選択部6と、データ分割部7と、時間類似度算出部8と、時間類似度マップ生成部9と、トレンド監視期間選択部10と、トレンドグラフ表示部11と、を備えている。
【0041】
なお、本実施形態のプラント監視支援装置は、少なくとも1つのプロセッサと、プロセッサにより実行されるプログラムが記憶されたメモリと、を備え、ソフトウエアにより若しくはソフトウエアとハードウエアとの組み合わせにより、以下に説明する種々の機能を実現可能に構成されている。
【0042】
データ収集・保存部2は、下水高度処理プロセス1の各操作量センサ及び各プロセスセンサから、計測データ(プロセスデータ)を周期的に受信する。すなわち、データ収集・保存部2は、複数の変数値を周期的に受信する。なお、データ収集・保存部2は、各操作量センサ及び各プロセスセンサで計測されたプロセスデータを直接受信してもよく、各操作量センサ及び各プロセスセンサにより所定周期で計測されたプロセスデータが記録された記録媒体等を介して、複数の変数値を取得してもよい。
【0043】
データ抽出部3は、類似度計算用データ抽出部31と、プロセス監視用データ抽出部21と、を備えている。
類似度計算用データ抽出部31は、所定の周期で若しくは外部からの要求により、データ収集・保存部2から所定期間および所定変数(一又は多変数)のプロセスデータ(時系列データ)を抽出する。なお、類似度計算用データ抽出部31で抽出されたプロセスデータは、後述の変数類似度および時間類似度の算出に用いられる。
【0044】
プロセス監視用データ抽出部32は、所定の周期で若しくは外部からの要求により、データ収集・保存部2からトレンド監視用のプロセスデータ(時系列データ)を抽出する。なお、プロセス監視用データ抽出部32で抽出されたプロセスデータは、後述のトレンドグラフ表示部11により、トレンドグラフとして運転管理者・運転員に提示され得る。
【0045】
変数類似度算出部4は、類似度計算用データ抽出部31により抽出されたM(正の整数)個の変数のデータの中のM個以下の所定の数(例えばm(正の整数)とする)の変数のデータを用いて、後述する方法で変数間の類似度(変数類似度)を計算する。
【0046】
変数類似度マップ生成部5は、変数類似度算出部4において計算された変数類似度を可視化する機能を備える。変数類似度マップ生成部5は、例えば、変数類似度をm行m列の類似度行列として表現し、この類似度行列をm×mの等値線図などのマップとして可視化するデータを生成する。変数類似度マップ生成部5は、例えば、類似度行列の要素に対応する矩形状の領域を、行列の配列に対応するように格子状に並べたマップにおいて、それぞれの領域に対応する変数類似度の値に応じた色で表示するためのデータを生成する。
【0047】
トレンド監視変数選択部6は、変数類似度マップ生成部5で生成されたデータを受信し、変数類似度マップと同時に監視すべきトレンドグラフ複数の変数(変数郡)を選択する。トレンド監視変数選択部6は、選択した変数郡についての変数類似度マップを表示するデータを、トレンドグラフ表示部11へ送信する。トレンド監視変数選択部6は、例えば、ユーザの操作により入力された指令に基づいてプロセスデータから変数郡を選択してもよく、予め設定された複数の変数をプロセスデータから自動的に変数郡として選択してもよい。
【0048】
データ分割部7は、データ分割数指定部71と、データ分離部72と、を備えている。
データ分割数指定部71は、類似度計算用データ抽出部31により抽出されたプロセスデータの中から所定の数(=m)の変数のデータを、時間方向において分割する数(=k)を設定する。
データ分離部72は、m個の変数の時系列データを、時間方向における所定の周期で、データ分割数指定部71により設定されたkセットのm変数の時系列データ(第2時系列データ)に分離する。
【0049】
時間類似度算出部8は、データ分割部7で分割されたkセットのm変数の時系列データから、k個の時間方向の類似度(時間類似度)を算出する。なお、時間類似度の算出方法については、後に詳細に説明する。
時間類似度マップ生成部9は、時間類似度算出部8により算出された時間方向の類似度を、k×kの行列の類似度行列として表現し、これをk×kの等値線図などのマップとして表示可能なデータを生成する。時間類似度マップ生成部9は、例えば、類似度行列の要素に対応する矩形状の領域を、行列の配列に対応するように格子状に並べたマップにおいて、それぞれの領域に対応する時間類似度の値に応じた色で表示するためのデータを生成する。
【0050】
トレンド監視期間選択部10は、時間類似度マップ生成部9で生成されたデータを受信し、時間類似度マップ生成部9上でトレンド監視を行う期間を選択する。トレンド監視期間選択部10は、選択した期間について、時間類似度マップを表示するデータを、トレンドグラフ表示部11へ送信する。トレンド監視期間選択部10は、例えば、ユーザの操作により入力された指令に基づいてプロセスデータから期間を選択してもよく、予め設定された期間をプロセスデータから自動的に選択してもよい。
【0051】
トレンドグラフ表示部11は、トレンド監視変数選択部6から受信したデータを用いて、選択された変数郡の変数類似度マップを表示させることができる。また、トレンドグラフ表示部11は、トレンドグラフ監視期間選択部10から受信したデータを用いて、選択された期間の時間類似度マップ表示させることができる。なお、トレンドグラフ表示部11は、例えばプロセス監視用データ抽出部32から受信したデータを用いて、トレンドグラフを表示させることも可能である。トレンドグラフ表示部11は、表示手段を備えていてもよい。また、トレンドグラフ表示部11は、外部の表示手段に類似度マップやトレンドグラフを表示させてもよい。
【0052】
次に、上述のプラント監視支援装置の動作の一例について説明する。
なお、本実施形態のプラント監視支援装置では、下水高度処理プロセス1の操作量センサ111~115と各種プロセスセンサ121~1221とによって、所定の周期TH(例:TH=1分)でプロセスの情報が計測されているものとする。
データ収集・保存部2は、計測されたプロセス情報(計測情報)を周期的に取得し、予め決められたフォーマットに従って時系列データとして保存する。
【0053】
データ抽出部3の類似度計算用データ抽出部31は、操作量センサ111~115と各種プロセスセンサ121~1221とに対応する項目のデータと、その名称ラベル(「流入TN」「嫌気槽ORP」など)とを、別途指定する所定の期間T0~T1、もしくは、所定の周期TLの時系列データとして取得する。
【0054】
所定の期間(TH=1分として)の一例として、類似度計算用データ抽出部31は、T0=2019年1月1日0:00、T1=2019年12月31日23:59とした場合、2019年の1年間分の時系列データを指定することができる。また、類似度計算用データ抽出部31は、所定の周期TLを例えば30日(もしくは1か月)と指定すると、30日(もしくは1か月)毎のデータを定期的に抽出することができる。
【0055】
以下では、このようにして抽出されたデータセットをL×Mの行列としてX0、対応する変数の名称ラベルを1×MのベクトルとしてX0labelと記載することにする。また、後述する変数類似度や時間類似度の算出にアラーム類似度を用いる場合には、類似度計算用データ抽出部31は、行列X0に付随する情報として、行列X0と同時に各変数に対する警報(アラーム)のデジタル時系列情報としてL×Mの警報行列F0も同時に抽出しておく。
【0056】
ここで、Lは抽出した時系列データのデータ点数、Mは変数の数である。本実施形態のプラント監視支援装置では、Mは、最初沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ(引き抜き流量センサを含む)111~1221、放流下水に含まれる有機物量を計測する放流UVセンサあるいは放流CODセンサ、までの25変数に相当する数であり、M=25である。実際の中規模以上の下水処理施設では、複数の水処理系列(中規模以上の処理場では、水処理はプールのコース(レーン)の様に並列して行われる場合が多く、各コースに相当するものを「系」と呼び、例えば1系、2系、・・・と名付けている)から成っている事が多いため、例えば、大規模処理場で10系列あるとすると、プラント監視支援装置により監視可能な変数の数mは、250(=25×10)となる。
【0057】
また、下水処理以外の他のプラント(発電プラント、石油化学プラントなど)においても数百~数千変数になることはまれでない。本実施形態のプラント監視支援装置は、そのような「多変量」の監視を行う場合に、特にその効果を発揮することができる。
【0058】
また、データ点数Lについては、オンラインセンサの計測周期THが、例えば1分の場合で、1年間分のデータを選択した場合、行列X0の行数Lは、525,600(=60×24×365)となる。
【0059】
なお、以降の説明において、行列X0と変数ラベルX0labelとは以下の様に表すものとする。
【数1】
類似度計算用データ抽出部31は、上記のように類似度計算用の行列X0と変数ラベルX0labelとを抽出することができる。
【0060】
次に、変数類似度算出部4の動作の一例について説明する。
変数類似度算出部4は、行列X0と変数ラベルX0labelとの少なくとも一方を用いて変数類似度を算出することができる。変数類似度は、各変数(本実施形態では上記の25変数)のそれぞれが互いにどの程度類似しているかを表す指標であり、典型的には、2つの変数の時系列データに基づいて定義される。例えば、変数類似度算出部4は、2つの時系列データの「距離」あるいは「内積」に基づく変数類似度指標を、変数類似度として算出することが可能である。
【0061】
前者の「距離」に基づく変数類似度指標を算出する方法では、行列X0の中の2つの時系列データベクトルをx=xciとy=xcjとすると、例えば、この2つのベクトルのユークリッド距離(L2距離)、マンハッタン距離(L1距離)、チェビシェフ距離(L∞距離)、などを含むミンコフスキー距離(Lp(p=1、2、…、∞)距離)を|x-y|pとすることができる。ここで、|・|はベクトルのノルムを表すことにし、|・|pはpノルムを意味することとする。また、データ間の物理的な大きさのばらつきを考慮する場合には、各変数のデータを標準偏差で割って標準化した標準化ユークリッド距離、あるいは、変数間の相関を考慮して調整したマハラノビス距離を用いることも可能である。
【0062】
次に、後者の「内積」に基づく変数類似度指標を算出する方法について説明する。なお、以下の説明において、「xTy」によりxとyとの内積を表すものとする。データ間のばらつきを調整するために、例えば、各ベクトルのノルムで正規化した、xTy/(|x||y|)を内積値として用いることができる。これは、コサイン類似度と呼ばれる指標である。さらに、各データの平均をゼロにする様にしてコサイン類似度を計算したものは、いわゆる(ピアソンの)相関係数に相当し、この相関係数を変数類似度としてもよい。あるいは、相関係数の符号を無視して相関の強弱を類似度指標としたいときには、相関係数の絶対値もしくは相関係数の2乗で定義される決定係数などを、変数類似度の指標として用いることも可能である。さらに、必ずしも内積に基づく指標とはならないが、ピアソンの相関係数を、スピアマンの順位相関などのノンパラメトリック相関係数や、各種のロバスト相関係数、あるいは、それらの絶対値や2乗をとることで符号情報を消去した相関指標、などを変数類似度指標とすることもできる。
【0063】
また、変数類似度指標は、必ずしも時系列データ(行列X0)から算出する必要はなく、例えば、変数の名称の類似度として変数ラベルX0labelから編集距離(レーベンシュタイン距離)を算出して、これを変数類似度指標としてもよい。
【0064】
また、例えば非特許文献1などに記載されているような、各変数のアラームがどの程度同時に発報されていたかを示すアラーム類似度を、警報行列F0を用いて算出して、変数類似度の指標として用いることもできる。
【0065】
また、上記の各変数類似度指標は、採用する指標によりとりうる値の存在範囲が異なり。さらに、例えば「距離」と「相関係数」との様に、類似と非類似との方向性が逆である場合もある。すなわち、「距離」は0である場合が完全一致であり、「距離」の値が大きくなると非類似であるのに対し、「相関係数」は1であるときに完全一致であり、0であるときに完全不一致である。このため、何等かの方法で基準(指標の取りうる値の範囲と、類似と非類似との方向性)を揃えておく方が好ましい。
【0066】
以下の説明では、変数類似度指標は、0のときに完全不一致、1のときに完全一致となる様に正規化した指標として説明する。このような変換の例は、例えば、以下の様にすることができる。すなわち、距離の様に0で完全一致し正の値しかとらない指標の場合には、その指標値をdとすると、下記式(3)により、d=0の場合にd´=1、d=∞の場合にd’=0となる様に変換することができる。
d´=exp(-d/σ)…………………………………………………………………(3)
ここで、σは正の可調整パラメータである。
【0067】
また、相関係数の様に正負の符号を両方とる場合には、この指標をrとすると、下記式(4)により、とり得る値の範囲を0以上1以下となるように変換することができる。
r´=(max(r)-r)/(max(r)-min(r))
=(1-r)/2……………………………………………………………………(4)
【0068】
上記ように指標を正規化することにより、複数種類の指標を適切に組み合わせて、変数の類似度を定義することも可能となる。一例として、例えば、データの絶対値相関の近さとデータの名称の近さとを組み合わせて類似度を定義したい場合、各指標として、各々、相関係数絶対値をr、正規化した編集距離をlとすると、下記式(5a)および式(5b)により、複数種類の類似度指標を組み合わせた変数類似度指標bを生成することができる。
b=r×l………………………………………………………………………………(5a)
b=(α×r+(1-α)×l)(0<α<1、α=0.5で通常の平均)…(5b)
【0069】
なお、複数種類の類似度指標を組み合わせるのではなく、複数種類の変数類似度を各々定義して同時に(並列に)監視したい場合には、例えば後述する変数類似度マップの表示において、表示する変数類似度を切り替えられるようにしておくことが好ましい。
以上の様な操作により、変数類似度算出部4は、xとyとの類似度を定義することができ、これをM個の変数の全ての組み合わせ(=(M-1)×M/2)について計算することができる。
【0070】
次に、変数類似度マップ生成部5の動作の一例について説明する。
変数類似度マップ生成部5は、変数類似度算出部4で算出した(M-1)×M/2個の変数類似度を、対角線に対して対称になるように配置し、各変数自身の類似度(上記の正規化を行った場合には、必ず1となる)を対角に配置して、M×M(=(M-1)×M/2×2+M)の類似度行列として表す。
【0071】
類似度行列において、例えば、1行目の1列目には、第1変数と第M変数との変数類似度が配置され、1行目の2列目には、第1変数と第(M-1)変数との変数類似度が配置されるように、順次1行目の(M-1)列目まで変数類似度が並び、1行目のM列目には、第1変数と第1変数との類似度(=1)が配置される。2行目からM行目までの各行についても同様である。換言すると、類似度行列において、1行目とM列目とが同じ変数に対応し、2行目と(M-1)列目とが同じ変数に対応し、…、M行目と1列目とが同じ変数に対応するように、順次、変数類似度が配置される。
変数類似度マップ生成部5は、例えば上記のような類似度行列に対応する変数類似度マップを表示するためのデータを生成する。
【0072】
図2は、監視画面上に表示された変数類似度マップの一例を概略的に示す図である。
この例では、変数類似度マップは、M行M列の類似度行列を構成する変数類似度の各要素に対応する矩形状の領域を、それぞれの要素に対応する位置に格子状に並べたマップであり、対応する変数類似度の値に応じた色で矩形状の領域が色分けされている。
図2の例では、変数類似度の値が1である領域が赤色で表示され、変数類似度の値が0である領域が青色で表示されるように、変数類似度の値に応じて青色、緑色、黄色、赤色と徐々に変化するように各領域が色分けされている。
【0073】
このように、変数類似度の値に応じて、マップ上の対応する領域を色分けすることにより、運転管理者・運転員は、提示される監視画面上にて変数値同士がどの程度似ているか視覚的に把握でき、例えば、トレンドグラフからは気づくことが難しいような変数の挙動を確認することができる。
【0074】
図3は、監視画面上に表示された変数類似度マップの他の例を概略的に示す図である。
ここでは、ある程度類似度の高い変数間の関係を強調するために、類似度に所定の閾値を設け、その閾値以下の値は0として(又は0と同じ色となるように)変数類似度マップを表示した例を示している。例えば
図3では、類似度の閾値を0.5とし、0.5以下の値のものを0として(又は0と同じ色となるように)表示している。
【0075】
また、よりシンプルな表現にするために、例えば、類似度が0.5以上のものを1とし(又は1と同じ色となるように)、0.5未満のものを0として(又は0と同じ色となるように)、2色でマップを色分けして表示してもよい。このようにすると、変数間の類似性の情報量は低下するものの、運転管理者・運転員は類似性の強い変数を簡単に見つけることが可能になる。
【0076】
図2や
図3の様な表示形式では、類似性の高い変数と類似性の低い変数がこのマップ上に散在している。通常、各変数は、監視システム上に登録された順番などで選択されていると考えられ、この順序でマップを作成すると、
図2や
図3のようなマップになることが多いと考えられる。そこで、変数の順序を並べ替えて、関係性の高い変数群をまとめて表示することも好ましい。
【0077】
図4は、監視画面上に表示された変数類似度マップの他の例を概略的に示す図である。
ここでは、
図2に示した変数類似度マップにおいて、類似度の高い変数郡がまとめて表示されるように変数の順序を並び替えた変数類似度マップの一例を示している。
【0078】
図5は、監視画面上に表示された変数類似度マップの他の例を概略的に示す図である。
ここでは、
図3に示した変数類似度マップにおいて、類似度の高い変数郡がまとめて表示されるように変数の順序を並び替えた変数類似度マップの一例を示している。
【0079】
このように変数群の並べ替えは、例えば、スペクトルクラスタリング手法を使えば容易に行うことができる。具体的には、変数類似度マップ生成部5は、以下の様な手順で変数の並べ替えを行うことができる。
【0080】
まず、変数類似度マップ生成部5は、変数類似度マップに用いた類似度行列をスペクトルクラスタリングで用いる隣接行列Wと見なして、この隣接行列Wの各行の和を対角要素として持つ次数行列Dを作成する。そして、グラフラプラシアンLをL=D-Wで定義する。
【0081】
次に、変数類似度マップ生成部5は、必要に応じて、グラフラプラシアンLを対称化グラフラプラシアンLs(=D-1/2LD-1/2)、あるいはランダムウォークグラフラプラシアンLr(=D-1L)などの変換を行った上で、固有値分解を行い、グラフラプラシアンLあるいはLsあるいはランダムウォークグラフラプラシアンLrの固有ベクトルからなる行列Vを求める。
【0082】
そして、クラスタリングのクラス数Kを指定した上で、行列Vの全ての行について、1列目からK列目までを取り出した部分行列V(:、1:K)に対して、一般的に使われる適切なクラスタリング手法、例えば、K-meansクラスタリングなどを適用して、部分行列V(:、1:K)の各行をK個のクラスのいずれかに分類する。なお、上記部分行列の表記は、行列変数名(行開始位置:行終了位置、列開始位置:列終了位置)としたものである。
【0083】
部分行列V(:、1:K)の各行番号は、類似度行列の各変数に対応する(1行目は1番目の変数、2行目は2番目の変数、など)ので、同じクラスに分類された変数をまとめるように並べ替えると、
図4および
図5の様な表示が可能になる。
【0084】
上記のように変数を並び替えることで、関連性の高い(類似度の高い)変数群をまとめたマップとしてプラント監視画面上に表示することができる。また、類似度の高い変数郡をまとめて表示するマップとすることで、後述するようにトレンド監視変数選択部6における変数選択も容易になる。
【0085】
次に、トレンド監視変数選択部6の動作の一例について説明する。
トレンド監視変数選択部6は、変数類似度マップ生成部5で作成したマップのデータを用いて、例えば運転管理者・運転員に変数類似度マップを提示し、運転管理者・運転員の操作に基づいて、同時にトレンド監視すべき変数群を選択する。
この際、例えば
図4および
図5に示すように、関連のある(類似度の高い)変数がクラスタ化されている場合は、トレンド監視変数選択部6は、このクラスタ化された情報を利用して、同時にトレンド監視すべき変数を選択することが好ましい。
【0086】
図6は、
図5に示す変数類似度マップにおいて、トレンド監視変数を選択する機能の一例を説明するための図である。
なお
図6では、説明のため変数類似度マップの色分けを省略して表示している。変数類似度マップ上の枠AR1、AR2、AR3の各々で囲んだ箇所は、各クラスタを表している。このケースでは、変数を3つのクラスに分類している(上記のクラス数K=3に対応)。
【0087】
トレンド監視変数選択部6は、例えば、運転管理者・運転員が、監視画面上において図中の各枠AR1、AR2、AR3で囲んだ領域に対応する変数名称箇所の付近をマウスオーバー又は指で接触したときに、対応するクラスタの変数の名称を枠で囲んだブロックと、類似度マップ上の対応する枠AR1、AR2、AR3で囲んだブロックとが自動表示されるように表示を制御する。そこで、運転管理者・運転員がマウスをクリック又は指で画面をタップして選択すると、トレンド監視変数選択部6は、操作情報(クリック又はタップされた画面の位置情報を含む)を取得し、クリック又はタップされたクラスの変数群をトレンドグラフで同時監視する変数として一括して選択することができる。トレンド監視変数選択部6は、選択された変数郡のトレンドグラフを表示するための情報をトレンドグラフ表示部11へ送信する。
【0088】
この例において、例えば、運転管理者・運転員により枠AR1で囲んだ変数群が一括して選択されると、これらの相互に類似度の高い変数群が一括してトレンドグラフで表示される。従って、運転管理者・運転員は、類似度の高い変数を同時に監視することが可能になる。
【0089】
一方、
図6中の枠AR3で囲んだ部分の変数も一つのクラスとして分類されているが、
図5を参照すると、これらの変数間には互いに強い類似性は見られない。これは、クラス数K=3として分類したときに、強い類似性を持つ枠AR1と枠AR2とに囲まれた変数郡のクラスに入らなかった変数群が残りのクラスとして選択されたからであると考えられる。このような場合には、枠AR3により囲まれた変数群を同時に監視しても、特に強い関連性がみられないと思われる。
【0090】
また、
図5を参照すると、枠AR1、AR2、AR3のいずれにも囲まれなかった変数にも、ところどころ類似性の高い箇所が認められる。そこで、トレンド監視変数選択部6は、例えば枠AR1や枠AR2に囲まれた類似性の高い一つのブロック(以下単位ブロック)を一つが選択されたときに、この単位ブロックに対応する2つの変数のトレンドグラフを更に比較監視することができるように構成されてもよい。この場合には、トレンド監視変数選択部6は、選択された変数郡のトレンドグラフを表示するための情報と合わせて、選択された単位ブロックに対応する変数のトレンドグラフを表示するための情報をトレンドグラフ表示部11へ送信することができる。
【0091】
図7Aおよび
図7Bは、
図2に示す変数類似度マップにおいて、トレンド監視変数を選択する機能の他の例を説明するための図である。
運転管理者・運転員がある特定の監視変数に着目しているときには、運転管理者・運転員はその変数に関連する変数群のトレンドグラフを同時に監視することを要求すると考えられる。
【0092】
そこで、本実施形態のプラント監視支援装置では、運転管理者・運転員が類似度マップの横軸もしくは縦軸にある着目したい特定の変数名をマウス等でクリック(若しくは指でタップ)した操作情報を取得したときに、トレンド監視変数選択部6は、この変数が類似度マップの左下端(もしくは右上端)に配置するとともに、この変数に対して類似度の高い順に変数名称を並べ替え、類似度マップの配置を変更して表示させる。例えば
図7Aおよび
図7Bでは、運転管理者・運転員により「変数10」を選択する操作が行われた際の表示例を示している。
【0093】
図2に示す変数類似度マップにおいて、例えば
図7Aに示すように、運転管理者・運転員により「変数10」を選択する操作が行われると、トレンド監視変数選択部6は、
図7Bに示すように変数類似度マップの表示を更新する。
図7Bでは、変数10は、例えば変数類似度マップの横軸における左端であって縦軸における下端に配置されている。他の変数は、「変数10」との類似度の高い順に「変数10」の近くに配置されるように変数名称が並べ替えられる。
【0094】
更に、トレンド監視変数選択部6は、更新した変数類似度マップの左下端に、正方形の範囲指定枠ARを表示させる。範囲指定枠ARのサイズは操作により可変であり、運転管理者・運転員は、範囲指定枠ARの角や辺をマウス等でドラッグすることにより移動させて、選択した「変数10」と同時に表示する変数群を指定する操作を行うことができる。このようにして、運転管理者・運転員は、選択した変数と同時にトレンド監視する変数群を選択する操作を行うことができる。この場合、トレンド監視変数選択部6は、選択された変数および変数郡のトレンドグラフを表示するための情報をトレンドグラフ表示部11へ送信することができる。
【0095】
なお、この例では、
図2に示す変数類似度マップにおいて特定の変数を選択する動作を一例として説明したが、予めクラスタリングを行った
図4(もしくは
図5)に示す変数類似度マップにおいて特定の変数を選択する操作を可能としてもよい。
【0096】
また、トレンド監視変数選択部6は、様々な変数類似度マップを切り替えて表示可能に構成されていてもよい。例えば、
図6、
図7A、および、
図7Bでは、変数類似度マップの表示を切り替えるためのタブT1-T4を例示している。これらの例では、例えば、相関類似度と、ユークリッド類似度と、アラーム類似度と、名称類似度との中から、変数類似度マップとして表示させる類似度の種類を選択可能としている。トレンド監視変数選択部6は、運転管理者・運転員によりタブT1-T4が選択された操作情報を取得し、表示させる変数類似度マップを切り替えることができる。
【0097】
このようにすると、「相関係数の意味で相互に関連のあるもの」、「距離の意味で相互に関連のあるもの」、「アラームを同時に発報しやすいもの」、「変数の名称が近いもの」、など複数の異なる基準で定義された類似度を用いて、同時にトレンド監視を行った方が良い変数群の選択が容易になる。
【0098】
次に、トレンドグラフ表示部11の動作の一例について説明する。
トレンドグラフ表示部11は、選択された変数群のトレンドグラフが、プラントの運転管理者・運転員などが監視する監視画面上に一括して表示し得る。
【0099】
図8および
図9は、トレンド監視変数選択部により選択された変数のトレンドグラフを監視画面上に表示した例を示す図である。
図8では、トレンド監視変数選択部6により8つの変数が選択されたときの、トレンドグラフの表示例を示している。なお、
図8に示す例では、各監視変数のいわゆるトレンドグラフをリアルタイムで表示するととともに、その通常の変動幅も合わせて表示して監視時点のトレンドが通常時と比較してどのような状態であるかを一目でわかるようにしている。この様な表示方法がより好ましいが、通常の変動幅の表示は省略しても構わない。
【0100】
図9では、選択した変数が変数類似度マップ生成部5により算出された一つの単位ブロックである場合に、2つの変数を同時に監視画面に表示した例を示している。
なお、
図8および
図9に示す例では、トレンドグラフ表示部11は、「リアルタイム」モードと「ヒストリカル」モードとの表示モードにて、トレンドグラフを表示させることが可能である。「リアルタイム」モードは、実際の監視時におけるプラントの運用状況を監視するための表示モードである。「ヒストリカル」モードは、過去の特定の時点におけるプラントの状況を確認するための表示モードである。また、トレンドグラフ表示部11は、さらに、表示モードとして「リプレイ」モードでトレンドグラフを表示するよう構成されていてもよい。「リプレイ」モードは、過去のある期間のトレンドグラフの動きを、監視時点をずらしながら(通常は早送りで)監視するためのモードである。
【0101】
次に、任意の変数について時間方向の比較監視を行う際の、本実施形態のプラント監視支援装置の動作の一例について説明する。
時間方向の比較監視は、例えば、監視時点の一昨日の同時刻のデータとの比較監視、一週間前の同曜日同時刻のデータとの比較監視、一年前の同日の同時刻もしくはほぼ一年前の同時期の同曜日同時刻のデータとの比較監視などである。これらの比較監視は、例えば、現在の運用状態の良否や傾向を判断する上で有用な情報となり得る。そこで本実施形態のプラント監視支援装置では、例えば、現在の運用状況と似たような過去の状況における変数値との比較監視、あるいは、逆に似ていない過去の状況における変数値との比較監視、などを行いたい場合に、運転管理者・運転員に比較監視のための情報を提供することを可能としている。
【0102】
以下では、上記時間方向の比較監視のための情報を提示する仕組みについて、(1)式の類似度計算用データを用いる方法を一例として説明する。
まず、データ分割部7の動作の一例について説明する。データ分割部7は、(1)式のデータX0を時間方向に分割する。
【0103】
先に述べたように、例えば、1分単位の計測データを1年分集めたデータがX0であるとすると、データ分割数指定部71では、時間方向のデータの類似性を調べる時間単位を考慮してデータの分割数を指定する。具体的には、例えば、1日単位で類似性を調べたい場合には、データ分割数KをK=365と指定する。
【0104】
次に、データ分離部72では、データX0を、データ分割数指定部71により指定されたK(=365)セットのデータになる様に分割する。すなわち、下記(6)式に示す様に、データX0をX0_1~X0_365の365個の部分行列に分割する。
【数2】
ここで、X0_1~X0_365は、各々1分単位の1日分のデータから構成される1440×M(26)のサイズの部分行列である。これが、72データ分離機能の作用の例である。
【0105】
次に、時間類似度算出部8の動作の一例について説明する。時間類似度算出部8は、時間方向の類似度を計算する。
この方法としては、大きく分けて、以下の2つの方法がある。一つは、X0_1~X0_365の各行列の類似度を適宜定義して、行列同士の類似度を求める方法である。もう一つは、X0_1~X0_365から各日の代表値を算出して1×Mのベクトルにした上で、変数類似度の計算と同じ様にベクトルの類似度を算出する方法である。
【0106】
前者の場合、時間類似度算出部8は、例えば、以下の様に時間類似度を計算することができる。はじめに、X0_1~X0_365の各部分行列に対して主成分分析を適用し、ローディング行列と呼ばれる行列を各々求める。ローディング行列は、第1主成分~第M主成分までの主成分軸と呼ばれる方向を表すベクトルから構成される行列になっており、通常は、主成分分析を行うと、Mよりも小さい値のM’(<<M)個の主成分でデータの大半を説明することができる。時間類似度算出部8は、通常の主成分分析で一般的に行われている累積寄与率などの指標でM’を決定し、ローディング行列の第1主成分から第M’主成分方向の方向ベクトルから構成されるローディング行列の部分行列(ローディング部分行列)を求める。
【0107】
図10は、ローディング部分行列の正準角について説明するための図である。
このようにして求めた365個のローディング部分行列の類似度として、正準角を用いる方法が知られており、各々の正準角を求めることでこれを類似度とする。正準角は、第1~第M’主成分の各軸が構成する部分空間SPA、SPB同士の角度θを表す指標であって、ベクトルの類似度であるコサイン類似度を行列に拡張した様な指標であり、異常検出などの分野で用いられる。
【0108】
以上の方法により、時間類似度算出部8は、ある特定の日と別の日との部分行列同士の類似度を定義することができる。時間類似度算出部8は、上記方法によりすべての日の組み合わせ、すなわちK(K-1)/2個の組み合わせについて計算することで、時間類似度を算出することができる。
【0109】
このような部分行列を直接比較する方法とは別に、後者の様にベクトル同士の類似度として時間類似度を定義することもできる。この場合は、まず、はじめに、時間類似度算出部8は、日単位の代表データを生成する。X0_1~X0_365の部分行列は、各々変数(列)毎に、1日分の1440点のデータで構成されているので、時間類似度算出部8は、まず、変数毎に日単位の代表データを生成する。最も単純な方法は、各列の平均値で日単位の代表値を算出するものであるが、異常値などを含んでいる可能性があるため、時間類似度算出部8は、適宜一日の中央値や刈込平均(トリム平均)などの異常値に対してロバストな方法で代表値を求める方法を採用することができる。あるいは、時間類似度算出部8は、ロバスト統計の各手法を使って、よりロバスト性が高く効率の良い推定法、例えばホッジス・レーマン推定やブートストラップ推定などの方法を用いてもよい。また、時間類似度算出部8は、例えば60分毎に時間単位の代表値を中央値で求めたうえで、24点の各時間の平均を求めるなど、2段階(多段階)のステップを踏む推定を行ってもよい。
【0110】
どのような手法を用いる場合でも、X0_1~X0_365の1440×Mのサイズの部分行列は1×Mのサイズのベクトルに置き換えることができる。時間類似度算出部8は、算出した1×Mのサイズのベクトルを、下記(7)式の様にXdとして定義する。
【数3】
このベクトルXdは、各行が日単位の代表値ベクトルである行列であるので、時間類似度算出部8は、名称の類似度である編集類似度を除いて、変数類似度の定義と全く同様に、ベクトル毎の類似度を定義することができる。
【0111】
なお、アラーム類似度については、時間類似度算出部8は、時間方向を見ることで時間類似度を定義することも可能である。すなわち、対象のデータベクトルをx=xr_iとy=xr_jとすると、時間類似度算出部8は、この2つのベクトルのユークリッド距離(L2距離)、マンハッタン距離(L1距離)、チェビシェフ距離(L∞距離)、などを含むミンコフスキー距離(Lp距離)、などの距離に基づく類似度や、コサイン類似度、相関係数、相関係数の絶対値もしくは相関係数の2乗で定義される決定係数などの内積に基づく類似度、で時間方向の類似度を計算することができる。
【0112】
なお、時間方向の類似度を計算する場合は、上記(7)式におけるxriの各要素はM個の各変数の値であり、一般的には物理的な次元が互いに異なるため、変数毎に、標準偏差や平均などを用いて正規化しておくことが一般的には好ましい。また、このようにベクトルの類似度を計算する場合は、ベクトル毎に計算を行ってもよいが、例えば、相関係数の様に一括して相関係数行列を計算することも可能である。一括して計算する場合、時間類似度算出部8は、時間類似度の計算は、(7)式の行列の行と列を入れ替える転置操作を行った上で、(1)式と同じ計算を行うことで相関係数行列の計算を実行できる。
【0113】
上記では、時間類似度算出部8は、(6)式や(7)式はM個の全ての変数を含むベクトルの類似度を算出するものとして説明したが、M個の中から監視に用いる変数M’≦M個のみを選択して類似度を計算することも可能である。特に、変数選択を行ってトレンド監視を行う場合には、必ずしもM個全ての変数を含む時間類似度を計算するのではなく、
選択した変数に連動して時間類似度の計算を変化させる方が、より好ましい場合がある。
【0114】
次に、時間類似度マップ生成部9の動作の一例について説明する。
時間類似度マップ生成部9は、例えば、時間類似度算出部8で算出した(K-1)×K/2個の時間方向の類似度を、対角線に対して対称になるよう配置し、各日(又は時間)自身の類似度(上述の正規化を行った場合には、必ず1となる)を対角に配置して、K×K(=(K-1)×K/2×2+K)の類似度行列として表す。
【0115】
類似度行列において、例えば、1行目の1列目には、第1時間と第K時間との時間類似度が配置され、1行目の2列目には、第1時間と第(K-1)時間との時間類似度が配置されるように、順次1行目の(K-1)列目まで時間類似度が並び、1行目のK列目には、第1時間と第1時間との類似度(=1)が配置される。2行目からK行目までの各行についても同様である。換言すると、類似度行列において、1行目とK列目とが同じ時間に対応し、2行目と(K-1)列目とが同じ時間に対応し、…、K行目と1列目とが同じ時間に対応するように、順次、時間類似度が配置される。
【0116】
時間類似度マップ生成部9は、例えば上記のような類似度行列に対応する時間類似度マップを表示するためのデータを生成する。
図11および
図12は、監視画面上に表示された時間類似度マップの一例を概略的に示す図である。
図11および
図12では、K=55(55日)とした場合の時間類似度マップの一例を示している。
【0117】
この例では、時間類似度マップは、K行K列の類似度行列を構成する時間類似度の各要素に対応する矩形状の領域を、それぞれの要素に対応する位置に格子状に並べたマップであり、対応する時間類似度の値に応じた色で矩形状の領域が色分けされている。
図11および
図12の例では、例えば時間類似度の値が1である領域が赤色で表示され、変数類似度の値が0である領域が青色で表示されるように、変数類似度の値に応じて青色、緑色、黄色、赤色と徐々に変化するように各領域が色分けされている。
【0118】
このように、変数類似度の値に応じて、マップ上の対応する領域を色分けすることにより、運転管理者・運転員は、提示される監視画面上にて各時間における値同士がどの程度似ているか視覚的に把握でき、例えば、トレンドグラフからは気づくことが難しいような変数の挙動を確認することができる。
【0119】
例えば
図11の様な時間類似度マップは、プラントの運用状態が安定しているが、あるタイミングでプラントの運用を変更した場合や、プラント停止などのダウンタイムがあるような場合に見られる典型的な類似度マップであり、ある特定の日を境に状態が大きく変わっていることがわかる。
【0120】
一方、
図12の様な時間類似度マップは、類似度マップの左下から右上にかけての対角方向の付近だけの類似度だけが高くなっており、プラントの運用状態が日々少しずつ変化していく様な場合に典型的に見られる類似度マップである。
【0121】
このように、運転管理者・運転員は、時間類似度マップを見ることにより、プラントの運用状態がどのように変化してきているかの全体像を一見してとらえることができ、この時間類似度マップを監視するだけでも、日々の運用がどうなっているかの概要を把握することができる。
【0122】
なお、
図11や
図12では、K=55日とした例を示したが、例えば、K=365日として1年間の動きを全体でとらえられる様にしておくことや、K=1か月としておき1か月の動きを全体で把握できるようにしておくことなどができる。
【0123】
もちろん、変数類似度マップの場合と同様に、ある程度類似度の高い変数間の関係を強調するために、類似度に所定の閾値を設け、その閾値以下の値は0として表示することや、類似の有無の判定閾値を設けて2色(類似有と類似無とで色分けした2色)で表示することも可能である。しかしながら、時間類似度マップは、上述のように時間経過とともに、どのように類似度が変化していくかの全体像を把握する性格のものであるため、必ずしもこのような処理が時間類似度マップを見やすくするものではない。
【0124】
また、変数類似度の場合は、ある特定の変数について類似度の高い順にソーティングを行ったり、クラスタリングを行って類似度の高い変数群をまとめたりする処理を導入しているが、時間類似度マップの場合は、時間経過という一つの軸を持っているので、この情報を維持したそのままのマップにしておく方が一般的には適切であると考えられるが、必要に応じて、クラスタリング処理やソーティング処理を行ってマップを修正することを妨げるものではない。
【0125】
次に、トレンド監視期間選択部10の動作の一例について説明する。
トレンド監視期間選択部10は、時間類似度マップ生成部9で生成されたデータを利用して、トレンドの比較監視を行う期間の選択を行う。
【0126】
図13は、トレンド監視期間選択部の動作の一例について説明するための図である。
図13において、時間類似度マップ上において行方向(横軸)に沿って延びたバー206は、時間類似度マップの列方向(縦軸)上で現在トレンド監視を行っている時点に対応する位置に配置されている。例えば、トレンド監視でリアルタイム監視を行っている場合は、このバー206は常に「現在」の位置(マップの上端)に配置されている。
【0127】
なお、時間類似度マップは変数類似度マップとは異なり、時間の経過とともに、常に更新されていくことを前提としている。すなわち、時間類似度マップを1日単位の時間刻みで作成している場合には、1日単位でこの時間類似度マップは更新され、マップの上部と右部の端は常に「現在(=当日)」となっている。このため、リアルタイム監視の場合には、常に「現在」の箇所にバー206が表示されている。一方、ヒストリカル監視を行う場合や、リプレイ監視を行う場合には、管理者・運転員などのユーザは、指定した日時に対応する位置にバー206を移動させる。また、時間類似度マップは、トレンド監視機能と連動するので、管理者・運転員が時間類似度マップ上でバー206の位置をずらすことにより、リアルタイム監視とヒストリカル監視とのモードを切り替え可能としてもよい。
【0128】
さらに、管理者・運転員は、トレンド監視を行っている日を表すバー206上で、比較監視したい日時を、日時指定部207をスライドさせることで指定することができる。例えば、管理者・運転員がリアルタイム監視を行っているときに、例えば
図13に示す様な位置に日時指定部207を移動することで、現在と異なる状態であると考えられる日を指定することができる。あるいは、管理者・運転員がヒストリカル監視を行う様にバー206を「現在」の位置から下側に移動させた後に、日時指定部207の位置をバー206上で比較監視したい日時の位置にスライドさせることで、変化が起こったと考えられる箇所を比較監視の対象として選定することができる。
【0129】
トレンド監視期間選択部10は、管理者・運転員の操作情報に基づいて、バー206および日時指定部207の位置を特定し、トレンド監視(若しくはヒストリカル監視)を行う日時と比較監視を行う日時とを選択することができる。
【0130】
なお、
図13に示す様に、トレンド監視期間選択部10においても、複数の時間類似度マップを切り替えることができるような機能を設けることが好ましい。
例えば
図13では、時間類似度マップの表示を切り替えるためのタブT5-T9を例示している。例えばタブT1-T8は、正準角類似度と、L∞類似度と、L2類似度と、相関類似度とから、時間類似度マップとして表示させる類似度の種類を選択可能としている。トレンド監視期間選択部10は、運転管理者・運転員によりタブT5-T8のいずれかが選択された操作情報を取得し、表示させる変数類似度マップを切り替えることができる。このようにすると、複数の異なる基準で定義された類似度を用いて、同時にトレンド監視を行った方が良い日時の選択が容易になる。
【0131】
また、例えば、時間類似度マップを年間のマップとした場合には、年度を切り替えて過去の年度に遡ることができる機能を有していることが好ましく、時間類似度マップを月単位で表示する場合には、過去の月に遡ることができる機能を有していることが好ましい。
【0132】
そこで
図13では、トレンド監視で比較対象としたい年度を選択するためのタブT9を例示している。運転管理者・運転員は、タブT9に表示される年度を選択することにより、表示する時間類似度マップを切り替える。トレンド監視期間選択部10は、運転管理者・運転員によりタブT9で監視年度のいずれかが選択された操作情報を取得し、表示させる変数類似度マップを切り替えることができる。このような機能により、運転管理者・運転員がトレンド監視で比較対象としたい日を選択することがより容易になる。
【0133】
図14は、トレンド監視期間選択部の動作の他の例について説明するための図である。
トレンド監視期間選択部10は、
図14に示す様に、トレンド監視を行っている時点、すなわち、
図13のバー206に対応する時点で、時間類似度マップを折りたたんで、一行のマップとして表示してもよい。また、トレンド監視期間選択部10は、一行でのマップ表示と、
図13の様な格子状のマップ表示とを相互に切り替え可能な機能を有していてもよい。
図14の様に一行のマップを表示することにより、運転管理者・運転員は、日時指定部107を一行のマップ上で行方向にスライドさせることにより、比較監視を行いたい日をより容易に選択することが可能になる。
【0134】
また、先に述べた様に、時間類似度マップは、変数類似度マップと異なり、通常は、時間の経過とともに更新していくことを前提としているので、ヒストリカル表示の様に過去にさかのぼる場合には、
図13に示した様な監視時点を表すバー206を示すのではなく、ヒストリカル表示として指定した日を現在になるように、マップの形状を変えずに時間をシフトするような時間類似度マップとし、比較監視を行いたい日を指定できるようにしてもよい。
【0135】
さらに、上記の例では、比較監視の対象としたい日を指定するのは、一つの日時指定部207をスライドさせて選択した日を想定して記載したが、所定の上限値を設けて、複数日を比較対象の日として選定可能としておいてもよい。その場合には、トレンド監視期間選択部10は、例えばバー206上に複数の日時指定部207を配置して、それぞれをスライドさせて比較対象の日を選択可能とする。
【0136】
次に、トレンドグラフ表示部11の動作の一例について説明する。
なお、トレンドグラフ表示部11について、既に記載した説明と重複する動作については、以下では詳細な説明は省略する。トレンドグラフ表示部11において、比較対象として選定したデータと、現在トレンド監視をしているデータを同時に表示して、選択した変数のトレンドを比較監視するための表示データを生成する。
【0137】
図15は、現在の監視データと比較監視対象のデータとのトレンドグラフを監視画面上に表示した一例を概略的に示す図である。
ここで示した例は、2つの変数について、トレンド監視期間選択部10により類似度の高い日時を比較対象として選択したときの表示例であり、比較監視対象のデータのトレンドグラフG4と現在の監視データのトレンドグラフG3との動きが似ている場合である。トレンド監視期間選択部10において、類似度の低い日時のデータを選択した場合には、一般には、比較監視対象のデータと現在の監視データとの挙動は大きく異なるものとなる。なお、
図15では、トレンドデータの変動幅G1と典型的な変動パターンG2も同時に示しており、この様なデータも同時に表示してもよい。トレンドデータの変動幅G1と典型的な変動パターンG2は省略しても構わない。
【0138】
また、トレンド監視期間選択部10で示した作用の例では、比較対象のデータを「日」で選択したが、時刻については、「現在」の監視時刻と同期するようにしておくことがデフォルトであり、リアルタイム表示の場合は、「現在」がリアルタイムで変化していくため、これに同期して、比較データも変化していくように表示され得る。また、ヒストリカル表示の場合は、指定した時刻におけるトレンドグラフは時刻を止めたまま表示されるので、比較監視対象のデータも指定した時刻で止まったままで表示され得る。また、リプレイモードの場合には、指定した期間、監視時点のデータと比較監視対象のデータとのトレンドグラフは同期して変化するように表示され得る。
【0139】
また、
図15では、例えばトレンド監視変数選択部6で、一つの単位ブロックが選定されて2つの変数を比較監視する場合を想定した表示となっているが、必ずしも変数類似度マップに基づいて監視する変数が選択されている必要はなく、通常のトレンド監視で、ある特定の変数を監視している場合にでも、トレンド監視期間選択部10により、比較監視する期間のデータを指定することができる。
【0140】
上記のように、本実施形態のプラント監視支援装置によれば、プラント監視を行うプラント運転管理者・運転員に対して、同時に監視を行う方が良いと思われる変数群を可視化して提示して、比較監視を行う変数の選択を容易にすることが出来る。また、本実施形態のプラント監視支援装置によれば、プラント監視を行うプラント運転管理者・運転員に対して、比較して監視を行う方が良いと考えられる期間を可視化して提示して、比較監視を行う日時の選択を容易にすることができる。
【0141】
すなわち、本実施形態のプラント監視支援装置によれば、「プラントの監視変数」と「プラントの監視期間」に関する全体の情報を類似度マップで可視化して提示することで、運転管理者・運転員は、従来の微視的なトレンド監視では、把握することが難しかったプラントの運用状態の全体像を巨視的、俯瞰的にとらえることが可能になる。また、プラントの俯瞰情報とトレンド監視による詳細な情報を相互に行き来するプラント監視のフレームワークを提供することは、間接的に、プラントで異常が発生した場合の気づきを早める事ができたり、より効率的なプラント運用の方法を発見したりすることにつながり得る。したがって、上記の様な可視化情報を運転管理者に対して提示することで、プラント監視の効率が良くなるだけでなく、特に非熟練のプラント運転員でも、対象とするプラント監視を容易に行うことが可能になる。
【0142】
上記のように、本実施形態によれば、プロセスの監視を行う管理者に有用なナビゲーション情報を与えるプラント監視支援装置を提供することができる。
【0143】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
[付記1]
所定周期で計測された対象プロセスのプロセスデータから2以上の変数値を収集し、前記変数値の時系列データを保存するデータ収集・保存部と、
前記データ収集・保存部から、一又は多変数の前記時系列データを抽出可能なデータ抽出部と、
前記データ抽出部によって抽出された一又は多変数の前記時系列データを用いて複数の類似度を算出する類似度算出部と、
前記複数の類似度を要素とする類似度行列を視覚化した類似度マップを表示するためのデータを生成する類似度マップ生成部と、を備えたプラント監視支援装置。
[付記2]
前記類似度算出部は、多変数の前記時系列データに含まれる監視時点における複数の前記変数の情報から、前記複数の変数同士の変数類似度を算出する変数類似度算出部を含み、
前記類似度マップ生成部は、前記変数類似度算出部にて生成された複数の前記変数類似度を要素とする変数類似度行列を視覚化した変数類似度マップを表示するためのデータを生成する変数類似度マップ生成部を含み、
ユーザが前記変数類似度マップ上で前記変数を選択する操作情報に基づいて、同時に監視する複数の前記変数を選択するトレンド監視変数選択部と、
前記トレンド監視変数選択部により選択された複数の前記変数のトレンドグラフを表示するデータを生成するトレンドグラフ表示部と、を更に備える付記1記載のプラント監視支援装置。
[付記3]
前記変数類似度の算出に用いられる複数の前記変数の情報は、複数の前記変数の前記時系列データに含まれる前記変数値、複数の前記変数の名称、および、前記対象プロセスのアラーム情報の少なくともいずれかを含む、付記2記載のプラント監視支援装置。
[付記4]
前記変数類似度マップ生成部は、任意の一つの前記変数と他の複数の前記変数との前記変数類似度の値に応じて複数の前記変数に対応する要素を配置した前記変数類似度行列を可視化した前記変数類似度マップのデータを生成し、
前記トレンド監視変数選択部は、任意の一つの前記変数に対して前記変数類似度の高い順に所定数の前記変数を更に選択する、付記2記載のプラント監視支援装置。
[付記5]
前記変数類似度マップ生成部は、前記変数類似度の高い変数群によるクラスタを生成し、前記クラスタ毎に変数が並ぶように前記要素を配置した前記変数類似度行列を可視化する前記変数類似度マップのデータを生成し
前記トレンド監視変数選択部は、前記クラスタに含まれる複数の前記変数を同時監視する変数を選択する、付記2記載のプラント監視支援装置。
[付記6]
前記類似度算出部は、前記多変数の前記時系列データに含まれる任意の変数の前記時系列データを、時間方向における所定の周期で複数期間に分割した第2時系列データの、前記複数期間のそれぞれに対応する値同士の時間類似度を算出する時間類似度算出部を含み、
前記類似度マップ生成部は、前記時間類似度算出部にて生成された複数の前記時間類似度を要素とする時間類似度行列を視覚化した時間類似度マップを表示するためのデータを生成する時間類似度マップ生成部を含み、
ユーザが前記時間類似度マップ上で監視期間を選択する操作情報に基づいて、前記複数期間の少なくとも一つを選択するトレンド監視期間選択部と、
前記トレンド監視期間選択部により選択された前記期間を前記監視期間とするトレンドグラフを表示するデータを生成するトレンドグラフ表示部と、を更に備える付記1又は付記2記載のプラント監視支援装置。
[付記7]
前記時間類似度は、前記第2時系列データに基づく行列の正準角類似度、前記第2時系列データに基づく行列の代表値のベクトル間の相関係数による類似度、および、ミンコフスキー距離に基づく類似度、の少なくともいずれかを含む、付記6記載のプラント監視支援装置。
[付記8]
前記トレンド監視期間選択部は、前記操作情報に基づいて、基準とする前記監視期間と、基準とする前記監視期間と比較監視を行う前記監視期間とを選択する、付記6記載のプラント監視支援装置。
【符号の説明】
【0144】
1…下水高度処理プロセス、2…データ収集・保存部、3…データ抽出部、31…類似度計算用データ抽出部、32…プロセス監視用データ抽出部、4…変数類似度算出部、5…変数類似度マップ生成部、6…トレンド監視変数選択部、7…データ分割部、71…データ分割数指定部、72…データ分離部、8…時間類似度算出部、9…時間類似度マップ生成部、10…トレンド監視期間選択部、11…トレンドグラフ表示部、21…プロセス監視用データ抽出部、101…最初沈澱池、102…嫌気槽、103…無酸素槽、104…好気槽、105…最終沈澱池、111~115…操作量センサ、121~1221…プロセスセンサ、206…バー、207…日時指定部。