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特許7551431転倒判定装置、プログラムおよび転倒判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】転倒判定装置、プログラムおよび転倒判定方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/02 20060101AFI20240909BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
G08B21/02
G08B25/04 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020166474
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057952
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田山 修平
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-038430(JP,A)
【文献】特開2019-139342(JP,A)
【文献】特許第6091835(JP,B2)
【文献】特開2008-032521(JP,A)
【文献】特開平10-165395(JP,A)
【文献】特開平07-178073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/103
G08B 19/00-31/00
H04M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が装着するとともに前記人に対する向きが固定された加速度センサから今回取得した加速度と前記加速度センサから以前または過去に取得した加速度との差異が第1所定範囲より小さい場合、前記人の動作の停止を判定する第1判定部と、
前記加速度センサの加速度に基づいて、前記加速度センサの傾きの度合いを判定する第2判定部と、
前記第1判定部が前記人の動作の停止を判定しかつ前記第2判定部が前記加速度センサの傾き度合いが所定角度以上と判定した判定結果に基づいて、前記人が転倒していることを判定する第3判定部と、
を備えた転倒判定装置。
【請求項2】
所定時間継続して、前記第1判定部が前記人の動作の停止を判定しかつ前記第2判定部が前記加速度センサの傾き度合いが所定角度以上と判定した場合に、前記人が転倒していることを推定する推定部と、
前記推定部が前記人の転倒を推定した場合、前記加速度センサから今回取得した前記加速度と前記加速度センサから以前または過去に取得した加速度との差異が前記第1所定範囲より狭い第2所定範囲より小さいかを判定する第4判定部と、
をさらに備え、
前記第3判定部は、所定時間継続して、前記第4判定部が前記加速度センサから今回取得した前記加速度と前回取得した前記加速度との差異が前記第2所定範囲より小さいと判定した場合に、前記人が転倒していると判定したことを示す情報を出力する、
請求項に記載の転倒判定装置。
【請求項3】
前記加速度センサが検知する重力方向を対角線とした長方形の一辺を対象軸とし、前記人が立っている状態において前記対象軸の方向を重力方向と略一致させ、
前記第2判定部は、前記重力方向の加速度の大きさに対する当該対象軸の加速度の大きさが所定の割合以下である場合に、前記加速度センサの傾き度合いが所定角度以上であると判定する、
請求項1または2に記載の転倒判定装置。
【請求項4】
前記転倒判定装置は、前記加速度センサが向きが固定されて装着された無線タグである、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の転倒判定装置。
【請求項5】
転倒判定装置としてのコンピュータを、
人が装着するとともに前記人に対する向きが固定された加速度センサから今回取得した加速度と前記加速度センサから以前または過去に取得した加速度との差異が第1所定範囲より小さい場合、前記人の動作の停止を判定する第1判定部と、
前記加速度センサの加速度に基づいて、前記加速度センサの傾きの度合いを判定する第2判定部と、
前記第1判定部が前記人の動作の停止を判定しかつ前記第2判定部が前記加速度センサの傾き度合いが所定角度以上と判定した判定結果に基づいて、前記人が転倒していることを判定する第3判定部と、
として機能させるためのプログラム。
【請求項6】
転倒判定装置における転倒判定方法であって、
人が装着するとともに前記人に対する向きが固定された加速度センサから今回取得した加速度と前記加速度センサから以前または過去に取得した加速度との差異が第1所定範囲より小さい場合、前記人の動作の停止を判定する第1工程と、
前記加速度センサの加速度に基づいて、前記加速度センサの傾きの度合いを判定する第2工程と、
前記第1工程において前記人の動作の停止を判定しかつ前記第2工程において前記加速度センサの傾き度合いが所定角度以上と判定した判定結果に基づいて、前記人が転倒していることを判定する第3工程と、
を含む転倒判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転倒判定装置、プログラムおよび転倒判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば製造工場やオフィスにおいて、加速度センサを利用して働く人の位置を検出するシステムが使用されている。さらに近年は、職場における安全管理として、この加速度センサを使用して人の転倒を検知する管理が行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、加速度センサを人に取り付け、当該加速度センサが人の動きの有無を検知することで、加速度センサが、人が動いていないことを検知した場合に当該人が転倒していると判定する転倒判定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-229199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような転倒判定装置は、例えばデスクワーク等の動きが少ない仕事をしている人を動きがないと検知して、転倒していると誤判定することがあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高い精度で人の転倒を判定することが可能な転倒判定装置、プログラムおよび転倒判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る転倒判定装置は、人が装着するとともに前記人に対する向きが固定された加速度センサから今回取得した加速度と前記加速度センサから以前または過去に取得した加速度との差異が第1所定範囲より小さい場合、前記人の動作の停止を判定する第1判定部と、前記加速度センサの加速度に基づいて、前記加速度センサの傾きの度合いを判定する第2判定部と、前記第1判定部が前記人の動作の停止を判定しかつ前記第2判定部が前記加速度センサの傾き度合いが所定角度以上と判定した判定結果に基づいて、前記人が転倒していることを判定する第3判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い精度で人の転倒を判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る無線タグを含むシステムの説明図である。
図2図2は、加速度センサを示す図である。
図3図3は、加速度センサによる傾きの検知を説明する説明図である。
図4図4は、人が立っている状態における加速度センサの重力加速度の方向と対象軸の加速度の方向を示す図である。
図5図5は、人の転倒時における加速度センサの重力加速度の方向と対象軸の加速度の方向を示す図である。
図6図6は、無線タグのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図7図7は、範囲記憶部のメモリ構成を示すメモリマップである。
図8図8は、無線タグの機能構成を示す機能ブロック図である。
図9図9は、無線タグの制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10図10は、無線タグの制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図11図11は、第1所定範囲内で人の動作の停止を判定するための説明図である。
図12図12は、第2所定範囲内で人の動作の停止を判定するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。実施形態では、無線タグを転倒判定装置の一例として説明する。なお、以下に説明する実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
図1は、実施形態に係るシステム10を含むシステム図である。システム10は、例えば工事現場、製造工場、オフィス、店舗等において設置された、人の転倒を検知して、当該転倒情報を収集して報知するシステムである。
【0012】
システム10は、無線タグ1、中継器2、情報処理装置3を備える。無線タグ1は、例えば人が装着する装着物であるヘルメット、帽子、ピン止めされた名札等に固定的に装着される。実施形態では、無線タグ1はヘルメットに装着されていることとする。このような無線タグ1は、人が立っている状態では常に一方向を向くように人に対する向きが固定されており、人が傾いている場合には、傾きの程度に応じて一方向から傾く。しかしながら、例えば首から下げるストラップに取り付けられたネームプレートに取り付けられた無線タグ1は、自由に上下表裏反対を向き、人の傾斜とは無関係に自由に傾斜し、人の傾きの程度に応じて傾かない(人に対する向きが固定されていない)ため、本発明の無線タグ1の装着例としては適さない。
【0013】
無線タグ1は、タグ情報を無線通信回線Lを用いて無線で発信する。タグ情報は、無線タグ1を一意に特定するタグ番号、後述する人が立っているか転倒しているかを判定した回数、送信回数等の情報を含む。中継器2は、無線タグ1が発信したタグ情報を受信するアンテナである。情報処理装置3は、中継器2と接続され、中継器2が受信したタグ情報を受信して管理する。
【0014】
無線タグ1は、加速度センサ17を固定的に内蔵する。無線タグ1の向きが固定されると加速度センサ17の向きも固定される。無線タグ1が動けば加速度センサ17も同方向に動き、無線タグ1が同じ位置に留まれば、加速度センサ17も同位置に留まる。加速度センサ17は、取り付けられた物体が移動する加速度を検知して出力する。加速度センサ17は、図2に示すように、移動する加速度を、x軸、y軸、z軸の分力として出力する。すなわち、物体が移動すると、加速度センサ17は、移動する加速度(A)を、x軸方向成分の加速度(Ax)とy軸方向成分の加速度(Ay)とz軸方向成分の加速度(Az)として出力する。
【0015】
そして、加速度センサ17は、所定の時間毎に、当該時刻における加速度をx軸方向の加速度と、y軸方向の加速度とz軸方向の加速度として出力する。そのため、加速度センサ17は、ある時刻n-1(請求項における以前または過去に相当)におけるx軸方向の加速度Axn-1、y軸方向の加速度Ayn-1、z軸方向の加速度Azn-1を出力し、次の時刻n(請求項における今回)におけるx軸方向の加速度Axn、y軸方向の加速度Ayn、z軸方向の加速度Aznを出力する。加速度(Axn)と(Axn-1)の差分をdx(すなわち、加速度(Axn)-(Axn-1)=dx)、加速度(Ayn)と(Ayn-1)の差分をdy(すなわち、加速度(Ayn)-(Ayn-1)=dy)、加速度(Azn)と(Azn-1)の差分をdz(すなわち、加速度(Azn)-(Azn-1)=dz)とすると、dxが所定の範囲以上であるか(dx≧所定の範囲)、dyが所定の範囲以上であるか(dy≧所定の範囲)、dzが所定の範囲以上である(dz≧所定の範囲)場合には、加速度センサ17は移動していることを示す。逆に、dxが所定の範囲より小さい(0≦dx<所定の範囲)、かつdyが所定の範囲より小さい(0≦dy<所定の範囲)、かつdzが所定の範囲より小さい(0≦dz<所定の範囲)場合には、加速度センサ17は、動いていない(一か所の位置に留まっている)ことを示す。
【0016】
ここで、実施形態では、所定の範囲を2段階に設ける。第1所定範囲は、人が実質的に動いていない(多少の動きは許容する)範囲である。第2所定範囲は、第1所定範囲より狭い範囲であって、第1所定範囲よりもさらに人が厳密に動いていない範囲を設定する。
【0017】
このような加速度センサ17を装着した無線タグ1は、時刻nにおける加速度センサ17が出力する加速度(Ax、Ay、Az)が、ひとつ前の時刻n-1における加速度センサ17が出力する加速度(Ax-1、Ay-1、Az-1)と比較してどれだけ変化したかを算出(dx、dy、dzの大きさを算出)することで無線タグ1を装着された人の動作の停止を判定することができる。
【0018】
なお、物体が一方向に等速で移動している場合は、dx=dy=dz=0となるが、本実施形態において人が等速で移動するケースが考え難いため、0≦dx<所定の範囲であって0≦dy<所定の範囲であって0≦dz<所定の範囲の場合は、人の動作の停止を判定する。人の動作の停止とは、人が動いていない(静止している)状態をいう。
【0019】
また、加速度センサ17は、重力加速度の大きさG(=9.8m/S2)と方向を検知する。重力加速度の向きは常に地球の中心方向を向いている。上述のように、加速度センサ17を装着した人が立っている場合(通常の状態)に加速度センサ17が図2のような向きとなる場合は、重力加速度の方向は例えばy軸方向と一致する。すなわち、加速度センサ17は、重力加速度を検知してxyz軸のそれぞれの加速度として(Axg=0、Ayg=G、Azg=0)を出力する。また、人が完全に転倒している(立っている場合に対して90°傾いている)場合には、加速度(Axg=G、Ayg=0、Azg=0)または加速度(Axg=0、Ayg=0、Azg=G)を出力する。また、人が立っている場合に対して傾斜している場合には、Axg、Ayg、Azgは、重力加速度の方向に対して傾いている人の角度θに応じた大きさの分力の加速度を出力する。
【0020】
そのため、人が立っている状態において、例えば対象軸(y軸)を重力加速度Gの方向と同じ方向に設定することで、加速度センサ17(すなわち、加速度センサ17が固定的に取り付けられたヘルメットを装着した人)が傾いているか、あるいは人が転倒しているかを、重力加速度の大きさGに対する対象軸方向の加速度の大きさ(Ayg)に基づいて判断することができる。
【0021】
具体的には、図3において、重力加速度を対角線とした四角形Sにおいて、線分BGの長さが重力加速度の大きさがGである場合、線分BGと角度θを有する四角形Sの一つの辺である線分BCが対象軸(y軸)であって、線分BCの長さが加速度の大きさ(Ayg)である。
【0022】
そして、図4に示すように、人が立っている場合には、加速度センサ17のy軸方向が重力加速度方向とほぼ一致するため、重力加速度の方向と対象軸の方向はほぼ一致している(θ≒0)。また、重力加速度の大きさGと対象軸の大きさ(Ayg)はほぼ同じである。そのため、人の傾きの程度を表す式(Ayg/G×100(%))はほぼ100(%)となる。この式(Ayg/G×100)は、重力加速度の大きさGと対象軸方向の加速度の大きさ(Ayg)に係るcosθの値である。そして、例えばcosθ×100=50(すなわちθ=60°)以下の場合には、人が転倒している程度に傾いているとする。cosθ×100=50の場合、人が、立っているときに対して60°傾いていることを示す。加速度センサ17は、重力加速度の大きさGに対するy軸方向の加速度Aygを出力する。図4の場合、加速度センサ17は、重力加速度Gの大きさとほぼ等しい加速度Ayを出力する。
【0023】
これに対して、図5に示すように人が転倒していると、重力加速度方向に対する対象軸の角度θは90°近くになる。そして、対象軸方向の加速度の大きさAygは角度θ分傾いている分、重力加速度の大きさGより小さい値となる。そのため、式(Ayg/G×100)で算出された値は50より小さくなる。
【0024】
無線タグ1は、式(Ayg/G×100)で算出された値が所定の閾値(例えば「50」)以上の場合、人は立っている可能性が高いと判断し、式(Ayg/G×100)で算出された値が所定の閾値より小さい場合には人が転倒している可能性があると判断する。
【0025】
ここからは、無線タグ1のハードウェア構成について説明する。図6は、無線タグ1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図6に示すように、無線タグ1は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、メモリ部14等を備えている。CPU11は、制御主体となる。ROM12は、各種プログラムを記憶する。RAM13は、各種データを展開する。メモリ部14は、各種プログラムを記憶する。CPU11、ROM12、RAM13、メモリ部14は、互いにデータバス15を介して接続されている。CPU11とROM12とRAM13が、制御部100を構成する。すなわち、制御部100は、CPU11がROM12やメモリ部14に記憶されRAM13に展開された制御プログラムに従って動作することによって、後述する無線タグ1の制御処理を実行する。
【0026】
RAM13は、第1カウンタ131、第2カウンタ132、パスフラグ部133、加速度記憶部134を有する。第1カウンタ131は、人が第1所定範囲内の動きしかしていなくて(実質的に人の動作の停止である)、かつ所定角度以上傾斜している回数を記憶する。第2カウンタ132は、人が第2所定範囲内の動きしかしていない(完全に人の動作の停止である)回数をカウントする。パスフラグ部133は、人が転倒していることを推定したことを示すフラグを記憶する。加速度記憶部134は、加速度センサ17が出力した、人が移動することで生じる加速度(Ax、Ay、Az)と重力加速度に対する人の傾きを示す加速度(Ayg)加速度を毎回記憶する。
【0027】
メモリ部14は、制御プログラム部141、範囲記憶部342を有する。制御プログラム部141は、無線タグ1を制御処理するためのプログラムを記憶する。範囲記憶部342は、図7に示すように、第1所定範囲部1421、第2所定範囲部1422、閾値部1423を備える。第1所定範囲部1421は、第1所定範囲を記憶する。第2所定範囲部1422は、第2所定範囲を記憶する。閾値部1423は閾値を記憶する。
【0028】
また、制御部100は、データバス15およびコントローラ16を介して、加速度センサ17と接続する。コントローラ16は、加速度センサ17から、加速度センサ17が出力した加速度(Ax、Ay、Az)を入力する。制御部100は、コントローラ16が加速度センサ17から入力した加速度を取得する。
【0029】
また、制御部100は、データバス15を介して通信I/F18と接続する。通信I/F18は、無線通信回線Lを介して、中継器2と無線通信を行う。また、制御部100は、タイマ19と接続する。タイマ19は、時間を計時する。
【0030】
また、無線タグ1は、内部に電源20を備える。電源20は、無線タグ1に電力を供給する。加速度センサ17を含む無線タグ1の各部は、電源20から供給された電力で駆動する。
【0031】
ここからは、無線タグ1の機能構成について説明する。図8は、無線タグ1の機能構成を示す機能ブロック図である。図8に示すように、無線タグ1の制御部100は、ROM12やメモリ部14に記憶されRAM13に展開された制御プログラムに従うことで、第1判定部101、第2判定部102、第3判定部103、推定部104、第4判定部105として機能する。
【0032】
第1判定部101は、人が装着する無線タグ1に装着され、かつ向きが固定された加速度センサ17の加速度に基づいて、人の動作の停止を判定する。具体的には、第1判定部101は、無線タグ1に装着され、かつ向きが固定された加速度センサ17から取得した人の動きの有無を表す今回の加速度(Ax、Ay、Az)および前回(以前または過去の一例)の加速度(Ax-1、Ay-1、Az-1)に基づいて算出されたdx、dy、dzが、いずれも第1所定範囲に入っているかを判断する。第1判定部101は、dx、dy、dz、がいずれも第1所定範囲に含まれる(第1所定範囲の値より小さい)場合には、人の動作の停止を判定する。第1判定部101は、dx、dy、dz、の少なくともいずれか一つが第1所定範囲に含まれない(第1所定範囲の値以上)場合には、人の動作の停止と判定しない。
【0033】
第2判定部102は、加速度センサ17の加速度に基づいて、加速度センサ17の傾きの度合いを判定する。具体的には、第2判定部102は、加速度の大きさAygと重力加速度の大きさGに基づいて算出されたcosθの値が、閾値より小さいかに基づいて、人の傾き度合いが所定角度以上かを判断する。第2判定部102は、cosθの値が閾値より小さい場合には、人の傾き度合いが所定角度以上と判定する。第2判定部102は、cosθの値が閾値以上である場合には、人の傾き度合いが所定角度以上と判定しない。
【0034】
第3判定部103は、第1判定部101と判定結果と、第2判定部102の判定結果と、に基づいて、人が転倒していることを判定する。
【0035】
推定部104は、所定時間継続して、第1判定部101が人の動作の停止を判定しかつ第2判定部102が人の傾き度合いが所定角度以上と判定した場合に、当該人が転倒していることを推定する。具体的には、推定部104は、所定時間継続して、第1判定部101が人の動作の停止を判定しかつ第2判定部102が人の傾き度合いが所定角度以上と判定した場合に、当該人が転倒していることを推定したことを示すパスフラグを「1」に設定する。
【0036】
第4判定部105は、推定部104が人の転倒を推定した場合、今回加速度センサ17から取得した加速度と前回(1回前に)取得した加速度との差異が、第1所定範囲内より狭い第2所定範囲より小さいかを判定する。具体的には、第4判定部105は、加速度センサ17が検知する人の動きの有無を表す加速度(Ax、Ay、Az)および加速度(Ax-1、Ay-1、Az-1)に基づいて算出されたdx、dy、dzが、いずれも第1所定範囲よりも狭い第2所定範囲より小さいかを判定する。
【0037】
第3判定部103は、所定時間継続して第4判定部105が、dx、dy、dzが第2所定範囲より小さいことを判定した場合に、人が転倒していることを示す情報を出力する(すなわち、人が転倒していると判定する)。
【0038】
ここからは、無線タグ1の制御について説明する。図9図10は、無線タグ1の制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。図9に示すように、無線タグ1の制御部100は、スリープ状態から復帰する(S11)。次に制御部100(第1取得部)は、加速度センサ17が出力した、加速度(Ax、Ay、Az)を取得する(S12)。また、制御部100(第2取得部)は、加速度センサ17が出力した、重力加速度に対する人の傾きを示す加速度(Ayg)を取得する(S12)。次に制御部100は、S12で取得した加速度を加速度記憶部134に記憶する(S13)。
【0039】
次に制御部100は、今回取得した加速度(Ax、Ay、Az)と前回取得した加速度(Ax-1、Ay-1、Az-1)に基づいて、dx、dy、dzを算出する(S14)。そして制御部100は、取得したAygと重力加速度の大きさGとに基づいて、人の傾きの程度を表す式(Ayg/G×100)を用いて人の傾きの程度を算出する(S15)。
【0040】
次に制御部100は、パスフラグ部133にフラグ「1」が記憶されているかを判断する(S21)。パスフラグ部133にフラグ「1」が記憶されていない場合(S21のNo、すなわち、パスフラグ部133にフラグ「0」が記憶されている場合)、第1判定部101(第1工程)は、S14で算出したdx、dy、dzが、いずれも第1所定範囲部1421に記憶されている第1所定範囲より小さいかを判断する(S22)。dx、dy、dzのいずれかが第1所定範囲以上であると判断した場合には(S22のNo)、制御部100は、第1カウンタ131に記憶されている値を「0」とする(S24)。
【0041】
次に制御部100は、所定の継続番号(例えば無線タグ1からの電波の送信回数を示す1~100のいずれかの番号、この番号は、電波を送信する毎に+1される)を示す情報を含む電波を送信する(S28)。中継器2は、送信された情報を受信して、情報処理装置3に送信する。そして制御部100は、タイマ19を起動して無線タグ1を所定時間スリープ状態とする(S29)。そして制御部100は、所定時間が経過したかを判断する(S30)。所定時間が経過するまで待機し(S30のNo)、所定時間が経過したと判断した場合には(S30のYes)、制御部100は、S11に戻る。
【0042】
また、S22において、dx、dy、dzがいずれも第1所定範囲より小さいと判断した場合には(S22のYes)、第2判定部102(第2工程)は、人の傾きの程度を表す式(Ayg/G×100)の値が閾値より小さいか(すなわち、傾きの度合いが所定角度以上か)を判断する(S23)。式の値が閾値以上であると判断した場合には(S23のNo)、制御部100は、S24、S28~S30の処理と判断を実行してS11に戻る。
【0043】
また、式の値が閾値より小さいと判断した場合には(S23のYes)、制御部100は、第1カウンタ131に記憶されている値を+1する(S25)。そして制御部100は、第1カウンタ131の値が予め設定された第1所定回数に達したかを判断する(S26)。第1カウンタ131に記憶されている値が第1所定回数に達したと判断した場合には(S26のYes)、推定部104は、パスフラグ部133に記憶されているパスフラグを「1」に設定することで人が転倒していることを推定する(S27)。人が転倒していることを推定する、とは、人が転倒している可能性が高いと判断することである(まだ人が転倒していると判定してはしていない)。なお、S26における第1所定回数とは、S27において人が転倒していることを推定できる十分な時間になるよう設定する(例えば15回)。そして制御部100は、S28~S30の処理と判断を実行してS11に戻る。なお、第1カウンタ131の値が第1所定回数に達していないと判断した場合には(S26のNo)、制御部100は、S28~S30の処理と判断を実行してS11に戻る。
【0044】
図11に、dx、dy、dzが第1所定回数連続して第1所定範囲より小さい場合の状態を示す。図11に示すように、時刻tnの時に、第1判定部101がdx、dy、dzがいずれも第1所定範囲より小さいと判断し(第1カウンタ=1)、以降第1カウンタ131の値が第1所定回数に達するまで連続して第1判定部101がdx、dy、dzがいずれも第1所定範囲より小さいと判断した場合、人が転倒していることを推定できる十分な時間となり、かつ第2判定部102が第1所定回数に達するまで連続して閾値に達していないと判断した場合に、推定部104は人が転倒していることを推定する。
【0045】
なお、S29でタイマ19を起動するスリープ状態の時間は、例えば、S11の処理~S30でYesと判断してS11に戻るまでの時間が4秒程度となるよう設定される。このように、無線タグ1は、S29の処理によってある程度の時間スリープ状態となる。そのため、電源20から無線タグ1に供給される電力をセーブすることができるため、電源20の消費電力の節約となる。
【0046】
また、S21において、パスフラグ部133にフラグ「1」が記憶されていると判断した場合には(S21のYes)、図10に示すように、第4判定部105は、S14で算出したdx、dy、dzが、いずれも第2所定範囲部1422に記憶されている第2所定範囲より小さいかを判断する(S41)。dx、dy、dzのいずれかが第2所定範囲以上であると判断した場合には(S41のNo)、制御部100は、第1カウンタ131に記憶されている値を「0」とする(S42)。そして制御部100は、第2カウンタ132に記憶されている値を「0」とする(S43)。そして制御部100は、パスフラグ部133に記憶されているパスフラグを「0」に設定する(S44)。そして制御部100は、S28~S30の処理と判断を実行してS11に戻る。
【0047】
また、第4判定部105が、S14で算出したdx、dy、dzが、いずれも第2所定範囲部1422に記憶されている第2所定範囲より小さいと判断した場合には(S41のYes)、制御部100は、第2カウンタ132に記憶されている値を+1する(S45)。
【0048】
次に制御部100は、第2カウンタ132に記憶されている値が第2所定回数に達したかを判断する(S46)。第2カウンタ132に記憶されている値が第2所定回数に達していないと判断した場合には(S46のNo)、制御部100は、S28~S30の処理と判断を実行してS11に戻る。
【0049】
一方、第2カウンタ132に記憶されている値が第2所定回数に達していると判断した場合には(S46のYes)、第3判定部103(第3工程)は、人が転倒していることを判定して、人が転倒していることを示す情報を設定する(S51)。人が転倒していることを示す情報は、例えば無線タグ1からの電波の送信回数を示す1~100以外の数値(例えば「101」)である。
【0050】
図12に、dx、dy、dzが第2所定回数連続して第2所定範囲より小さい場合の状態を示す。図12に示すように、時刻tnの時に、第4判定部105がdx、dy、dzがいずれも第2所定範囲より小さいと判断し(第1カウンタ=1)、以降第2カウンタ132の値が第2所定回数に達するまで連続して第4判定部105がdx、dy、dzがいずれも第2所定範囲より小さいと判断した場合、人が転倒していると判定できる十分な時間となり、第3判定部103は人が転倒していると判定する。
【0051】
次に制御部100は、第1カウンタ131に記憶されている値を「0」とする(S52)。そして制御部100は、第2カウンタ132に記憶されている値を「0」とする(S53)。そして制御部100は、パスフラグ部133に記憶されているパスフラグを「0」に設定する(S54)。そして制御部100は、人が転倒していることを示す情報を含む電波を送信する(S55)。中継器2は、送信された情報を含む電波を受信して、情報処理装置3に送信する。情報処理装置3は、受信した人が転倒していることを示す情報に基づいて、必要な処理を実行する。例えば、情報処理装置3は、人が転倒していることを示すメッセージを、現場やオフィスを管理するマネージャー等が所持する携帯端末に通知する。
【0052】
次に制御部100は、無線タグ1について、加速度検出スリープの処理を実行する(S56)。加速度検出スリープとは、加速度センサ17が所定の加速度以上の加速度を検知するまで無線タグ1がスリープ状態を維持する処理である。すなわち、S56の処理でスリープ状態となった無線タグ1は、当該無線タグ1がその位置に留まっている間はスリープ状態である。そして制御部100は、加速度センサ17が所定の加速度以上の加速度を出力したことを検知したかを判断する(S57)。所定の加速度以上の加速度の出力を検知するまで待機し(S57のNo)、所定の加速度以上の加速度の出力を検知したと判断した場合には(S57のYes)、制御部100はS11に戻る。
【0053】
(実施形態の効果)
以上、本実施形態に係る無線タグ1について説明した。このような本実施形態に係る無線タグ1は、例えば次のような効果を奏する。
【0054】
本実施形態に係る無線タグ1は、人が装着するとともに当該人に対する向きが固定された加速度センサ17の加速度に基づいて、人の動作の停止を判定する第1判定部101と、加速度センサ17の加速度に基づいて、加速度センサ17の傾きの度合いを判定する第2判定部102と、第1判定部101の判定結果と、第2判定部102の判定結果と、に基づいて、人が転倒していることを判定する第3判定部103を備える。そのため、高い精度で人の転倒を検知することが可能となる。
【0055】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、種々の修正を行うことができる。
【0056】
例えば、実施形態では、加速度センサ17を装着した無線タグ1を転倒判定装置の一例として説明した。しかしながらこれに限らず、例えば、転倒判定装置は、加速度センサ17を装着しない無線タグ1であってもよい。この場合、無線タグ1は、外部に設けられた加速度センサ17が出力する情報(加速度(Ax、Ay、Az)、加速度(Ax-1、Ay-1、Az-1)、加速度(Ayg))を取得する。また、転倒判定装置は、情報処理装置3であってもよい。この場合、加速度センサ17を備えた無線タグ1は、加速度センサ17が出力する情報(加速度(Ax、Ay、Az)、加速度(Ax-1、Ay-1、Az-1)、加速度(Ayg))を電波で送信し、情報処理装置3は、中継器2を介して加速度の情報を取得する。そして情報処理装置3は、取得した情報に基づいて、第1判定部101、第2判定部102、第3判定部103、推定部104、第4判定部105の処理を実行する。
【0057】
また、実施形態では、第1判定部101の判定結果と第2判定部102の判定結果に基づいて推定部104が人の転倒を推定し、かつ第4判定部105が、加速度センサから今回取得した加速度と前回取得した加速度との差異が第2所定範囲より小さいと判定した場合に、第3判定部103は、人の転倒を判定するようにした。しかしながらこれに限らず、推定部104および第4判定部105は必ずしも必要ではなく、第3判定部103は、第1判定部101の判定結果と第2判定部102の判定結果のみに基づいて人の転倒を判定するようにしてもよい。
【0058】
また、実施形態では、推定部104は、所定時間継続して、第1判定部101が人の動作の停止を判定しかつ第2判定部102が人の傾き度合いが所定角度以上と判定した場合に、当該人が転倒していることを推定した。しかしながらこれに限らず、所定時間の継続を条件とせずに、推定部104は、第1判定部101が人の動作の停止を判定しかつ第2判定部102が人の傾き度合いが所定角度以上と判定した場合に、当該人が転倒していることを推定するようにしてもよい。また、実施形態では、第3判定部103は、所定時間継続して、第4判定部105が加速度センサ17から今回取得した加速度と前回取得した加速度との差異が第1所定範囲より狭い第2所定範囲より小さいと判定した場合に、当該人が転倒していると判定したことを示す情報を出力するようにした。しかしながらこれに限らず、所定時間の継続を条件とせずに、第3判定部103は、第4判定部105が加速度センサ17から今回取得した加速度と前回取得した加速度との差異が第1所定範囲より狭い第2所定範囲より小さいと判定した場合に、当該人が転倒していると判定したことを示す情報を出力するようにしてもよい。
【0059】
また、実施形態では、第4判定部105は、dx、dy、dzが第2所定範囲より小さいかを判断した。しかしながらこれに限らず、第4判定部105は、dx、dy、dzが第2所定範囲より小さいかの判断に加えて、再度第2判定部102の内容を判断するようにしてもよい。
【0060】
なお、実施形態の無線タグ1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0061】
また、実施形態の無線タグ1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、実施形態の無線タグ1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0062】
また、実施形態の無線タグ1で実行されるプログラムを、ROM12等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 無線タグ
3 情報処理装置
10 システム
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 メモリ部
17 加速度センサ
19 タイマ
20 電源
100 制御部
101 第1判定部
102 第2判定部
103 第3判定部
104 推定部
105 第4判定部
131 第1カウンタ
132 第2カウンタ
133 パスフラグ部
134 加速度記憶部
141 制御プログラム部
342 範囲記憶部
1421 第1所定範囲部
1422 第2所定範囲部
1423 閾値部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12