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特許7551434画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/205 20060101AFI20240909BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240909BHJP
   B41J 2/52 20060101ALI20240909BHJP
   H04N 1/405 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
B41J2/205
B41J2/01 201
B41J2/01 203
B41J2/01 451
B41J2/52
H04N1/405
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020168776
(22)【出願日】2020-10-05
(65)【公開番号】P2022060968
(43)【公開日】2022-04-15
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 秀康
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-042162(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0019214(US,A1)
【文献】特開2015-156635(JP,A)
【文献】特開2008-126453(JP,A)
【文献】米国特許第10321002(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
B41J 2/52
H04N 1/405
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像データを、インクを吐出する複数並んだノズルが記録可能なハーフトーン画像データに変換する画像処理装置であって、
前記ノズルの特性に応じて、前記入力画像データにおける各画素の画素値を補正する補正手段と、
前記補正された入力画像データの周波数成分のうち第1の周波数成分に第1のハーフトーン処理を行い第1のハーフトーン画像データを生成し、前記第1の周波数成分より低い第2の周波数成分に第2のハーフトーン処理を行い第2のハーフトーン画像データを生成する成手段と、
を有し、
前記第のハーフトーン画像データは、隣接するドットが重なるドットサイズである第のドットによって記録するために生成されるデータであり、
前記第1の周波数成分に対応する第のハーフトーン画像データは、前記第2のドットより小さい第のドットにより記録するために生成されるデータであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記入力画像データにおける、前記ノズルが並ぶ方向に対して平行な方向における画素位置ごとに画素値を補正することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第2の周波数成分は、第のフィルタにより前記入力画像データの画素値にフィルタ処理を行うことで得られ、
前記第のフィルタは、前記ノズルが並ぶ方向に対して平行な方向の1次元フィルタであることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記1次元フィルタは、ガウシアンフィルタであることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記補正された入力画像データにおける各画素の画素値を、前記第1のドットによって記録する第1の画素値と、前記2のドットによって記録する第2の画素値と、に分配する分配手段と、
前記第の画素値に対して第1のフィルタを用いてフィルタ処理を実行する第1のフィルタ処理手段と、
前記第の画素値に対して前記のフィルタを用いてフィルタ処理を実行する第のフィルタ処理手段と、
を更に有することを特徴とする請求項3又は4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第のフィルタ処理手段が前記第の画素値に対して前記第のフィルタを用いてフィルタ処理を実行した後の画素値と前記第の画素値との差分値を、前記第の画素値に加算する濃度補正手段を更に有することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記ハーフトーン処理は、ディザ処理であることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記補正手段は、前記入力画像データにおける、前記ノズルが並ぶ方向に対して垂直な方向における画素位置ごとに画素値を補正することを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記第のドットのドットサイズは、前記複数並んだノズルの間隔より大きいことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記第2のフィルタは、ローパスフィルタであることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項11】
コンピュータを請求項1乃至10の何れか1項に記載の画像処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項12】
入力画像データを、インクを吐出する複数並んだノズルが記録可能なハーフトーン画像データに変換する画像処理方法であって、
前記ノズルの特性に応じて、前記入力画像データにおける各画素の画素値を補正する補正ステップと、
前記補正された入力画像データの周波数成分のうち第1の周波数成分に第1のハーフトーン処理を行い第1のハーフトーン画像データを生成し、前記第1の周波数成分より低い第2の周波数成分に第2のハーフトーン処理を行い、第のハーフトーン画像データを生成する成ステップと、
を有し、
前記第のハーフトーン画像データは、隣接するドットが重なるドットサイズである第のドットによって記録するために生成されるデータであり、
前記第1の周波数成分に対応する第のハーフトーン画像データは、前記第のドットより小さい第のドットにより記録するために生成されるデータであることを特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を記録する記録装置が記録可能なハーフトーン画像を生成する画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録方式等により記録媒体に画像を記録する記録装置において、画像データに対してハーフトーン処理を実行することで、記録装置が記録可能なハーフトーン画像データに変換する技術が知られている。また、記録媒体の搬送量や記録部から吐出されるインクの吐出方向の変動に起因した着弾位置ずれ等による濃度ムラを低減する補正処理技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、各ノズルによる記録状態の情報に基づいて画像データに対する濃度ムラ補正処理を実行した後にハーフトーン処理を行うことで、記録媒体に記録される画像において、ノズル特性による濃度ムラを低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-83704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記補正処理後にハーフトーン処理を行って得られたハーフトーン画像に基づくドットサイズがノズル間隔より大きい場合、隣接ドットが結合し、高周波な濃淡を記録できないことがある。その結果、ハーフトーン処理とノズル特性による濃度ムラ補正後の画像における高周波成分とが干渉を起こし、本来の画像にはないモアレが発生してしまうという課題があった。
【0006】
そこで本開示の技術は、上記の課題に鑑み、記録媒体に記録されるドットサイズがノズル間隔よりも大きい場合でも、ノズル特性による濃度ムラを補正しつつ、ハーフトーン画像におけるモアレの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の技術の一実施形態は、入力画像データを、インクを吐出する複数並んだノズルが記録可能なハーフトーン画像データに変換する画像処理装置であって、前記ノズルの特性に応じて、前記入力画像データにおける各画素の画素値を補正する補正手段と、前記補正された入力画像データの周波数成分のうち第1の周波数成分に第1のハーフトーン処理を行い第1のハーフトーン画像データを生成し、前記第1の周波数成分より低い第2の周波数成分に第2のハーフトーン処理を行い、第のハーフトーン画像データを生成する生成手段と、を有し、前記第のハーフトーン画像データは、隣接するドットが重なるドットサイズである第のドットによって記録するために生成されるデータであり、前記第1の周波数成分に対応する第のハーフトーン画像データは、前記第2のドットより小さい第のドットにより記録するために生成されるデータであることを特徴とする画像処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、記録媒体に記録されるドットサイズがノズル間隔よりも大きい場合でも、ノズル特性による濃度ムラを抑制しつつ、ハーフトーン画像におけるモアレの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】入力画像データのイメージ図
図2】CZPチャートを大ドット又は小ドットによって記録した図
図3】画像処理装置のハードウェア構成を示すブロック図
図4】画像処理装置の機能構成を示すブロック図
図5】画像処理装置が実行する処理のフローチャート
図6】濃度補正部が実行する処理のフローチャート
図7】濃度補正テーブルの例を示す図
図8】補正係数の例を示す図
図9】スジムラ補正処理後の画像データのイメージ図
図10】フィルタ処理部が実行する処理のフローチャート
図11】CTFチャートのイメージ図及び周波数のコントラスト比を示す図
図12】フィルタ処理後の画像データのイメージ図
図13】出力画像を示す図
図14】画像処理装置の機能構成を示すブロック図
図15】画像処理装置が実行する処理のフローチャート
図16】画素値分配部が実行する処理のフローチャート
図17】分配テーブルの例及び分配テーブルをグラフにした図
図18】大ドットと小ドットとに分配された画素値が表す画像のイメージ図
図19】出力画像を示す図
図20】画像処理装置の機能構成を示すブロック図
図21】画像処理装置が実行する処理のフローチャート
図22】小ドット用濃度補正部が実行する処理のフローチャート
図23】y方向の各画素位置に対応する画素値I2のx方向平均値を示す図
図24】y方向の各画素位置に対応する差分値ΔI1のx方向平均値を示す図
図25】y方向の各画素位置に対応する補正画素値I2+Δのx方向平均値を示す図
図26】画像処理装置の機能構成を示すブロック図
図27】画像処理装置が実行する処理のフローチャート
図28】小ドット用フィルタ処理部が実行する処理のフローチャート
図29】HPFのフィルタ係数を示す図
図30】小ドットの画素値I2(p)を示す図
図31】小ドット用フィルタ処理部が出力する画像を示す図
図32】大ドット用フィルタ処理部が実行する処理のフローチャート
図33】y方向の各画素位置に対応する差分値ΔI2のx方向平均値を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。また、以下に記載されている構成要素の内容、相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
本実施形態では、ノズル特性による濃度ムラ(以下、スジムラとも称する)を補正した後の画像データの画素値に対し、ドットパターンの周波数特性に応じたローパスフィルタ(以下、LPFとも称する)を用いたフィルタ処理を実行する。これにより、記録媒体に記録されるハーフトーン画像におけるモアレの発生を抑制する。
【0012】
プリント画像記録装置311(図3参照)は、インクジェット方式を採用する画像記録装置である。プリント画像記録装置311のノズル列方向に対して平行な方向をy方向とする。また、記録媒体に画像を記録する際に、プリント画像記録装置311の記録部と記録媒体とが相対的に走査する方向に対して平行な方向をx方向とする。このx方向は、前述のy方向に垂直な方向となる。プリント画像記録装置311は、記録媒体のy方向における幅分の長さのノズル列を備えた記録部を有し、この記録部と記録媒体とをx方向に相対的に走査することにより記録媒体に画像を記録する、フルライン方式を採用している。本実施形態では、プリント画像記録装置311は、ノズル間隔より大きい単一サイズのドットによって記録媒体に画像を記録する。
【0013】
画像処理装置300(図3参照)は、入力画像データを、プリント画像記録装置311が記録媒体に記録可能なハーフトーン画像データに変換するハーフトーン処理として、ディザ処理を実行する。
【0014】
図1は、入力画像データのイメージ図である。図1に示すように、入力画像データは、各画素の画素値が同一のベタ画像データである。ベタ画像データの各画素には、画素値I0が対応づけられている。ベタ画像データは、y方向にY(pixel)×x方向にX(pixel)で表される。画像処理装置300は、図1に示す画素値I0のベタ画像データに対してディザ処理を実行してハーフトーン画像データを生成する。
【0015】
ここで、プリント画像記録装置311によって記録媒体に記録されるドットのサイズとハーフトーン画像の周波数特性との関係について説明する。図2(a)及び図2(b)は、CZPチャートを大ドットと小ドットの2種類のドットを用いて表現したハーフトーン画像をそれぞれ示している。ここで、CZPチャートとは、2次元空間における周波数特性を視覚化するチャートであり、左上から右下に向かって空間周波数が高くなるように同心円状にsin波を重畳したものである。
【0016】
図2(a)及び図2(b)に示すハーフトーン画像は、インクドットによる記録のON/OFFを示す2値のハーフトーン画像を、大ドット及び小ドットのサイズを含めてシミュレーションしたドットパターン画像となっている。そして、図2(a)に示す大ドットのハーフトーン画像では、ドットパターンの高周波成分において、隣接するドットが結合し、モアレが発生しているのが分かる。一方、図2(b)に示す小ドットのハーフトーン画像では、高周波成分において、隣接するドット間の干渉が目立たないのが分かる。
【0017】
<画像処理装置のハードウェア構成>
図3は、本実施形態における画像処理装置300のハードウェア構成を示すブロック図である。以下、本実施形態における画像処理装置300のハードウェア構成について、図3を用いて説明する。画像処理装置300は、入力部301、表示部302、記憶部303、CPU304、ROM305、RAM306、通信部307、プリント画像出力部308、及びシステムバス309を有する。CPU304は、RAM306をワークメモリとして、ROM305や記憶部303に記憶されたOSや各種プログラムを実行し、システムバス309を介して後述する各ハードウェアを制御する。
【0018】
入力部301は、USB等のシリアルバスインタフェイスであり、キーボードやマウス等の入力デバイス、メモリカードリーダ、ディジタルカメラやスキャナ等の画像入力デバイスが接続される。CPU304は、入力部301を介してユーザ指示や画像データ等を入力し、表示部302にグラフィックユーザインタフェイス(GUI)、画像、処理経過や結果等を表示する。
【0019】
記憶部303は、各種プログラム等の様々なデータが記憶されるハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)等の記録媒体である。記憶部303に記憶されるデータには、後述する処理を実現するためのプログラムが含まれる。
【0020】
通信部307は、ネットワーク310(Ethernet(登録商標)等の有線ネットワーク、又はBluetooth(登録商標)、Wi-Fi、P2P等の無線ネットワーク)と画像処理装置300とを接続するためのネットワークインタフェイスである。プリント画像出力部308は、USB等のシリアルバスインタフェイスである。プリント画像出力部308には、プリント画像記録装置311やメモリカードライタ等が接続される。CPU304は、プリント画像出力部308を介して画像データ等を出力する。
【0021】
CPU304は、通信部307を経由してネットワーク310に接続されているサーバ装置や他のコンピュータ機器等と通信を行う。また、CPU304は、ネットワーク310に接続されているサーバ装置や他のコンピュータ機器等から様々なプログラムやデータを受け取って処理を実行することができる。また、CPU304は、処理結果のデータをネットワーク310に接続されているサーバ装置や他のコンピュータ機器等に提供することができる。尚、CPU304が通信部307を介して通信できるコンピュータ機器には、プリント画像記録装置311も含まれる。そのため、CPU304は、通信部307を介してプリント画像記録装置311に画像データを送信することもできる。
【0022】
画像処理装置300として利用される情報処理装置は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォン等のコンピュータ機器である。情報処理装置は、後述する画像処理を実現するためのプログラムが供給されることで画像処理装置300としての機能を有する。画像処理装置300としてタブレットやスマートフォンが利用される場合、表示部302は、タッチスクリーン機能を有していてもよい。この場合、表示部302は、ユーザ指示を受け付ける入力部301としても機能する。
【0023】
<画像処理装置の機能構成>
図4は、本実施形態における画像処理装置300の詳細な機能構成を示すブロック図である。尚、図4に示す機能構成は、該機能構成やその機能を実現するためのプログラムを画像処理装置300のCPU304が実行することで実現される。
【0024】
画像データ入力部401は、入力部301を介してユーザが指定した入力画像データを画像処理装置300に入力する。具体的には、画像データ入力部401は、入力画像データを濃度補正部402に出力する。本実施形態では、入力画像データは、プリント画像記録装置311が有する何れかの記録材の色に対応するモノクロ画像データであり、画素ごとに0~255何れかの画素値を有する8ビットの画像データである。
【0025】
濃度補正部402は、濃度補正テーブル格納部403に予め記憶された濃度補正テーブルを参照して、入力画像データの各画素の画素値I0(以下、入力画素値I0とも称する)を補正することで、ノズル特性によるスジムラを抑制する。そして濃度補正部402は、補正処理後の画像データをフィルタ処理部404に出力する。
【0026】
フィルタ処理部404は、ドットパターンの周波数特性に応じて、スジムラ補正処理後の画像データの画素値に対し、ローパスフィルタ格納部405から取得したLPFを用いてフィルタ処理を実行する。このLPFは、ローパスフィルタ格納部405に予め記憶されている。そして、フィルタ処理部404は、フィルタ処理後の画像データをハーフトーン画像データ生成部406に出力する。
【0027】
ハーフトーン画像データ生成部406は、フィルタ処理後の画像データに対してディザ処理を実行し、ハーフトーン画像データを生成する。このディザ処理の実行に必要なディザマトリクスは、予め所定の記憶領域に記憶されている。そして、ハーフトーン画像データ生成部406は、生成したハーフトーン画像データを、プリント画像出力部308を介してプリント画像記録装置311へ出力する。
【0028】
<画像処理装置が実行する処理>
図5は、本実施形態における画像処理装置300が実行する処理のフローチャートである。図5に示すフローチャートは、画像処理装置300の記憶部303やROM305に記憶された制御プログラムがRAM306に読み出され、CPU304がこれを実行することによって実現される。あるいはまた、図5におけるステップの一部または全部の機能をASICや電子回路等のハードウェアで実現してもよい。尚、各処理の説明における記号「S」は、当該フローチャートにおけるステップであることを意味する。
【0029】
S501において、画像データ入力部401は、ユーザから指定された入力画像データを画像処理装置300に入力する。ここでは、入力画像データとして、図1に示すベタ画像データが指定されている。画像データ入力部401は、RAM306等の記憶領域に入力画像データを記憶する。
【0030】
S502において、濃度補正部402は、濃度補正テーブル格納部403に予め記憶された濃度補正テーブルを参照し、入力画素値I0を補正する。本ステップにおける補正処理の詳細は図6を用いて後述する。
【0031】
S503において、フィルタ処理部404は、S502で得られた補正処理後の画像データの画素値に対し、LPFを用いてフィルタ処理を実行する。本ステップにおけるフィルタ処理の詳細は図10を用いて後述する。
【0032】
S504において、ハーフトーン画像データ生成部406は、S503にて得られたフィルタ処理後画像データに対して、予め所定の記憶領域に記憶されたディザマトリクスを用いてディザ処理を実行し、ハーフトーン画像データを生成する。ここで生成されるハーフトーン画像データは、各画素の画素値が1又は0の何れかの値を取る2値画像データである。ハーフトーン画像データ生成部406は、生成したハーフトーン画像データを所定の記憶領域に記憶する。
【0033】
<濃度補正部が実行する処理>
図6は、濃度補正部402が実行する処理のフローチャートである。以下、S502における、入力画素値I0を補正する処理の詳細について、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0034】
S601において、濃度補正部402は、濃度補正テーブル格納部403に予め記憶された濃度補正テーブルを取得する。この濃度補正テーブルには、y方向における各画素位置の補正係数kが格納されており、プリント画像記録装置311のノズル特性、入力画素値I0、及びディザ処理に用いるディザマトリクスに基づいて、各画素位置に対応する補正係数kが決定される。
【0035】
図7は、本実施形態における濃度補正テーブルの例を示す図である。濃度補正部402は、濃度補正テーブルを参照し、入力画像データについて、各画素のy方向における画素位置と入力画素値I0とに応じた補正係数kを決定する。
【0036】
図8は、補正係数kの一例を示す図である。図8において、横軸は各画素のy方向における画素位置を示し、縦軸は各画素のy方向における画素位置に応じた補正係数k(I0)を示す。尚、本実施形態では、入力画像データは、図1に示すベタ画像データであるため、入力画素値I0は一定となる。そのため、入力画像データのy方向における画素位置が同一である画素では、x方向における画素位置が何れの場合においても、図8に示す補正係数k(I0)が選択される。
【0037】
S602において、濃度補正部402は、入力画素値I0の階調を反転する。これにより、処理対象の入力8ビット画像における画素値を濃度リニアにする。この階調反転処理により、入力画素値I0が0の画素領域ではドットが全く記録されず、入力画素値I0が255の画素領域では画素領域の全てにドットが記録されることになる。
【0038】
S603において、濃度補正部402は、S601において決定した各画素に対応する補正係数kを、階調反転後の画像における入力画素値I0に乗算し、各画素についての新たな画素値を得る。これにより、ノズル特性によるスジムラが抑制されるように画素値が補正された画像が得られる。図9は、濃度補正処理の後の画像データのイメージ図である。ノズル特性によるスジムラを相殺するように、スジムラとは逆の濃淡を有しているのが分かる。補正処理後の画像データは、所定の記憶領域に記憶される。
【0039】
<フィルタ処理部が実行する処理>
図10は、フィルタ処理部404が実行する処理のフローチャートである。以下、S503における、濃度補正処理の後の画像データに対するLPFを用いたフィルタ処理の詳細について、図10のフローチャートを用いて説明する。
【0040】
S1001において、フィルタ処理部404は、濃度補正処理の後の画像データに適用する、吐出ドットのドットパターンの周波数特性に応じて予め作成されたLPFをローパスフィルタ格納部405から取得する。ここでは、y方向に1次元である1次元フィルタ、具体的には、標準偏差σDの一次元ガウシアンフィルタを用いるものとする。この一次元ガウシアンフィルタは、以下のような手順で予め作成しておく。
【0041】
まず、図11(a)に示すような、様々な周波数の矩形波パターンから成るCTFチャート画像をプリント画像記録装置311で出力し、周波数fの矩形波パターンのコントラスト比CD(f)を以下の式(1)に従い、算出する。この周波数fは、大ドットによって画像を記録する場合に、ドットが想定外に結合することなく画像を記録可能な周波数である。
【0042】
【数1】
【0043】
上記式(1)において、Imax、Iminは、周波数fの矩形波パターンの紙白部及び黒線部の輝度である。この輝度は、予め、記録媒体に記録された画像をスキャンして得た画像データにおける画素値に基づいて決定されている。本実施形態の場合、図11(b)に示すように、周波数fDの矩形波パターンのコントラスト比CD(f)は0.5となる。これは、周波数fDより高い周波数成分が含まれる入力画像データが画像処理装置300に入力された場合、折り返し成分によってモアレが生じてしまう可能性があることを示している。そこで、標準偏差σDのガウシアンフィルタを、LPFとして予め作成しておく。標準偏差σDは、以下の式(2)によって求められる。
【0044】
【数2】
【0045】
上記式(2)において、fSはプリント画像記録装置311のサンプリング周波数である。本実施形態では、fDが300dpiの矩形波パターンにおいて、コントラスト比CD(fD)は0.5となる。また、プリント画像記録装置311は1200dpiの記録ヘッドを有するので、fSは1200dpiとなる。従って、ガウシアンフィルタの標準偏差σDは4(pixel)となる。
【0046】
S1002において、フィルタ処理部404は、補正処理後の画像データの画素値に対し、S1001で取得したLPFを用いてフィルタ処理を行う。このフィルタ処理によって、補正処理後の画像データにおける高周波成分が除去される。
【0047】
図12は、LPFを用いたフィルタ処理後の画像データを示している。LPFを用いたフィルタ処理を行うことにより、図9に示した補正処理後の画像と比べて、画素値変化が緩やかな画像が得られていることが分かる。高周波成分が除去されたフィルタ処理後の画像データは所定の記憶領域に記憶された後、ハーフトーン画像データ生成部406におけるディザ処理に供されてハーフトーン画像データが生成されることになる。
【0048】
以上が、本実施形態に係る、フィルタ処理部404が実行する処理の内容である。図13は、ハーフトーン画像データ生成部406が生成したハーフトーン画像データに基づいてプリント画像記録装置311によって記録媒体に記録された出力画像を示す図である。図13に示すように、入力画素値I0のベタ画像に対し、ノズル間隔より径が大きい大ドットによって記録された画像では、ノズル特性による低周波のスジムラを抑制しつつ、モアレの発生が抑制されているのが分かる。
【0049】
<本実施形態の効果>
以上の通り、本実施形態では、スジムラを抑制するための濃度補正処理の後の画像データの画素値に対してLPFを用いてフィルタ処理を行い、ドットパターンの周波数特性に応じて高周波成分を除去することで、モアレの発生を抑制できる。
【0050】
尚、図3には画像処理装置300とプリント画像記録装置311が別の装置である場合の例を示したが、画像処理装置300がプリント画像記録装置311に内蔵されていてもよい。その場合、図4に示す画像処理装置300の機能構成を1つ又は複数の回路により実現することもできる。また、本実施形態では、記録装置として、記録媒体のy方向における幅分の長さのノズル列を備えたフルライン方式のプリント画像記録装置311を用いたが、マルチパス方式の記録装置を用いてもよく、記録ヘッドの構成は限定されない。
【0051】
また、本実施形態では、階調を反転した入力画素値I0に補正係数kを、乗算する処理によってノズル特性によるスジムラを抑制するよう画素値を補正したが、補正方法はこれに限らない。例えば、ノズル位置に同期したガンマ補正テーブル用いてを補正してもよい。この場合、同一入力値に対するガンマテーブルの出力データ列に対し、LPFを用いてフィルタ処理を実行し、フィルタ処理後の値に基づいてガンマ補正テーブルを更新することで対応できる。
【0052】
また、本実施形態では、LPFとしてガウシアンフィルタを用いたが、LPFはガウシアンフィルタに限定されない。例えば移動平均フィルタを用いてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、ディザ処理によってハーフトーン画像を生成しているが、ハーフトーン画像を生成する際のハーフトーン処理はこれに限定されない。例えば、誤差拡散法を用いてハーフトーン画像が生成されてもよい。
【0054】
[変形例]
第1実施形態では、ノズル間隔より径が大きい単一サイズの大ドットによって画像記録を行う場合について説明した。ここでは、ノズル間隔より径が大きい大ドットとノズル間隔より径が小さい小ドットとによって画像記録を行う場合について、第1実施形態の変形例として説明する。
【0055】
2種類のドットサイズが混在する場合、単一の周波数特性のフィルタを用いてフィルタ処理を行っても、その後のハーフトーン処理にて得られるハーフトーン画像データにおいてモアレが発生する場合がある。
【0056】
そこで本変形例では、大ドットにより記録される画素値I1に対しては、大ドットのドットパターンの周波数特性に応じたLPFを用いてフィルタ処理を実行し、当該フィルタ処理後の画像データに基づいて大ドット用ハーフトーン画像データを生成する。一方、小ドットにより記録される画素値I2に対してはフィルタ処理を行わず、小ドットの画素値I2に基づいて小ドット用ハーフトーン画像データを生成する。これにより、本変形例では、ノズル特性によるスジムラを抑制しつつ、大ドットと小ドットとを混在させたハーフトーン画像におけるモアレの発生を抑制する。尚、第1実施形態と共通する内容については、説明を省略し、以下では差異点を中心に説明を行うこととする。
【0057】
<画像処理装置の機能構成>
図14は、本変形例における画像処理装置300の詳細な機能構成を示すブロック図である。尚、図14に示す機能構成は、該機能構成やその機能を実現するためのプログラムを画像処理装置300のCPU304が実行することで実現される。また、画像データ入力部401については、第1実施形態と同様のため、説明は省略する。
【0058】
濃度補正部402は、濃度補正テーブル格納部403に予め記憶された濃度補正テーブルを参照して、入力画素値I0を補正することで、ノズル特性によるスジムラを抑制する。そして、濃度補正部402は、補正処理後の画像データを画素値分配部1401に出力する。
【0059】
画素値分配部1401は、分配テーブル格納部1402に予め記憶された分配テーブルを参照して、補正処理後の画像データにおける各画素の画素値Iを、大ドットの画素値I1と小ドットの画素値I2とに分配する。そして、画素値分配部1401は、大ドットの画素値I1を大ドット用フィルタ処理部1403に出力する。また、画素値分配部1401は、小ドットの画素値I2を小ドット用ハーフトーン画像データ生成部1405に出力する。
【0060】
大ドット用フィルタ処理部1403は、大ドットの画素値I1に対し、ローパスフィルタ格納部405から取得したLPFを用いてフィルタ処理を実行する。そして、大ドット用フィルタ処理部1403は、フィルタ処理後の画像データを大ドット用ハーフトーン画像データ生成部1404に出力する。
【0061】
大ドット用ハーフトーン画像データ生成部1404は、フィルタ処理後の大ドットの画素値で構成される画像データに対してディザ処理を実行し、大ドット用ハーフトーン画像データを生成する。そして、大ドット用ハーフトーン画像データ生成部1405は、生成した大ドット用ハーフトーン画像データを、プリント画像出力部308を介してプリント画像記録装置311へ出力する。
【0062】
小ドット用ハーフトーン画像データ生成部1405は、小ドットの画素値I2で構成される画像データ対してディザ処理を実行し、小ドット用ハーフトーン画像データを生成する。そして、小ドット用ハーフトーン画像データ生成部1405は、生成した小ドット用ハーフトーン画像データを、プリント画像出力部308を介してプリント画像記録装置311へ出力する。
【0063】
<画像処理装置が実行する処理>
図15は、本変形例における画像処理装置300が実行する処理のフローチャートである。図15に示すフローチャートは、画像処理装置300の記憶部303やROM305に記憶された制御プログラムがRAM306に読み出され、CPU304がこれを実行することによって実現される。あるいはまた、図15におけるステップの一部または全部の機能をASICや電子回路等のハードウェアで実現してもよい。尚、本変形例における画像処理装置300が実行する処理において、S501及びS502は、図5を用いて説明した処理と同様のため、説明を省略する。また、各ステップは、S501、S502、S1501、S1502、S1503、S1504の順番で実行される。
【0064】
S1501において、画素値分配部1401は、分配テーブル格納部1402に予め記憶された分配テーブルを参照して、S502で得られた補正処理後の画像データにおける各画素の画素値Iを、大ドットの画素値I1と小ドットの画素値I2とに分配する。本ステップにおける画素値の分配処理の詳細は図16を用いて後述する。
【0065】
S1502において、大ドット用フィルタ処理部1403は、大ドットの画素値I1に対し、大ドットのドットパターンの周波数特性に応じて予め作成されたLPFを用いたフィルタ処理を実行する。
【0066】
S1503において、大ドット用ハーフトーン画像データ生成部1404は、S1502で得られたフィルタ処理後の画像データに対してディザ処理を実行し、2値の大ドット用ハーフトーン画像データを生成する。そして、大ドット用ハーフトーン画像データ生成部1404は、生成した大ドット用ハーフトーン画像データを所定の記憶領域に記憶する。
【0067】
S1504において、小ドット用ハーフトーン画像データ生成部1405は、小ドットの画素値I2で構成される画像データに対してディザ処理を実行し、2値の小ドット用ハーフトーン画像データを生成する。そして、小ドット用ハーフトーン画像データ生成部1405は、生成した小ドット用ハーフトーン画像データを所定の記憶領域に記憶する。
【0068】
<画素値分配部が実行する処理>
図16は、本変形例における画素値分配部1401が実行する処理を示すフローチャートである。以下、S1501における、補正処理後の画像データにおける各画素の画素値Iを、大ドットの画素値I1と小ドットの画素値I2とに分配する処理の詳細について、図16のフローチャートを用いて説明する。
【0069】
S1601において、画素値分配部1401は、分配テーブル格納部1402に予め記憶された分配テーブルを取得する。
【0070】
図17(a)は、分配テーブルの一例を示している。分配テーブルには、入力画素値I0が0~225である各場合において、大ドットの画素値I1に分配される画素値と小ドットの画素値I2に分配される画素値とが示されている。図17(b)は、図17(a)に示す分配テーブルをグラフにした図である。図17(b)において、実線1701は大ドットの画素値I1を示し、破線1702は小ドットの画素値I2を示す。入力画素値I0が0~64であるハイライト側は、入力画素値I0が全て小ドットの画素値I2に分配される。また、入力画素値I0が64~96である場合、入力画素値I0は大ドットの画素値I1と小ドットの画素値I2との両方に分配される。本変形例では、入力画素値I0は、64<I0<96を満たす。
【0071】
S1602において、画素値分配部1401は、S1601において取得した分配テーブルに基づいて、補正処理後の画像データにおける各画素の画素値Iを、大ドットの画素値I1と小ドットの画素値I2とに分配する。ここで、大ドットと小ドットとでは1ドット当たりの濃度が異なるため、I=I1+I2とはならない。仮に、使用する2種類のドットのサイズが等しい場合には、I=I1+I2となる。
【0072】
図18(a)は、大ドットの画素値I1で構成される画像データを示している。また、図18(b)は小ドットの画素値I2で構成される画像データを示している。
【0073】
以上が、本変形例に係る、画素値分配部1401が実行する処理の内容である。図19は、本変形例における大ドット用ハーフトーン画像データ及び小ドット用ハーフトーン画像データに基づきプリント画像記録装置311が記録媒体に記録した出力画像を示す図である。図1に示す入力画素値I0のベタ画像に対し、図19に示す出力画像では、図13に示す出力画像と同様、ノズル特性による低周波のスジムラを抑制しつつ、モアレの発生が抑制されているのが分かる。
【0074】
<本変形例の効果>
以上の通り、本変形例では、スジムラを抑制するための濃度補正処理の後の画像データの画素値を分配した後、大ドットの画素値I1に対してLPFを用いたフィルタ処理を行う。これにより、大ドットと小ドットとによって画像形成を行う場合においても、上述の実施形態と同様、ディザパターンとの干渉によるモアレの発生を抑制できる。
【0075】
尚、大ドットの画素値I1に加え、小ドットの画素値I2についてもフィルタ処理の対象としてもよい。この場合、小ドットの画素値I2に対しては小ドットのドットパターンの周波数特性に応じたLPFを用いればよい。
【0076】
また、本変形例では、プリント画像記録装置311として、異なるインク吐出量によって異なるサイズのドットを記録する画像記録装置を用いたが、濃度が異なる濃淡インクを吐出する画像記録装置を用いてもよい。また、各ディザパターンは、プリント画像記録装置311が吐出するインクの吐出量や濃度を限定するものではない。
【0077】
[第2実施形態]
第1実施形態では、大ドットのドットパターンの周波数特性に応じたLPFを用いてフィルタ処理を行い、ノズル特性によるスジムラを抑制しつつ、ハーフトーン画像におけるモアレを抑制する場合について説明した。但し、大ドットのドットパターンにおいてモアレが生じやすい高い周波数よりも更に高周波なスジムラが生じていると、第1実施形態におけるノズル列特性に応じた濃度補正処理によってスジムラを抑制できない場合がある。
【0078】
そこで本実施形態では、大ドットの画素値I1に対して大ドットのドットパターンの周波数特性に応じたLPFを用いてフィルタ処理を実行した後、このフィルタ処理によって除去された大ドットの画素値を小ドットの画素値に変換する。そして、変換後の小ドットの画素値ΔI1´と元々の小ドットの画素値I2とを加算した画素値で構成される画像データに基づいて生成される小ドット用ハーフトーン画像データを生成する。これにより、本実施形態では、大ドットで補正できない高周波成分におけるスジムラまでも抑制しつつ、ハーフトーン画像におけるモアレの発生を抑制することを可能にする。尚、第1実施形態と共通する内容については、説明を省略し、以下では差異点を中心に説明を行うこととする。
【0079】
<画像処理装置の機能構成>
図20は、本実施形態における画像処理装置300の詳細な機能構成を示すブロック図である。尚、図20に示す機能構成は、該機能構成やその機能を実現するためのプログラムを画像処理装置300のCPU304が実行することで実現される。また、画像データ入力部401、濃度補正部402、及び大ドット用ハーフトーン画像データ生成部1404については、第1実施形態の変形例と同様のため、説明は省略する。
【0080】
画素値分配部1401は、分配テーブル格納部1402に予め記憶された分配テーブルを参照して、スジムラ補正処理後の画像データにおける各画素の画素値Iを、大ドットの画素値I1と小ドットの画素値I2とに分配する。そして、画素値分配部1401は、大ドットの画素値I1を大ドット用フィルタ処理部1403と小ドット用濃度補正部2001とに出力する。また、画素値分配部1401は、小ドットの画素値I2を小ドット用濃度補正部2001に出力する。
【0081】
大ドット用フィルタ処理部1403は、大ドットの画素値I1に対し、ローパスフィルタ格納部405から取得したLPFを用いてフィルタ処理を実行する。これにより、フィルタ処理後の大ドットの画素値I1´が導出される。そして、大ドット用フィルタ処理部1403は、大ドットの画素値I1´を大ドット用ハーフトーン画像データ生成部1404と小ドット用濃度補正部2001とに出力する。
【0082】
小ドット用濃度補正部2001は、大ドットの画素値I1と大ドットの画素値I1´との差分値ΔI1を導出する。また、小ドット用濃度補正部2001は、大ドットの差分値ΔI1に濃度比率αを乗算し、小ドットによって記録可能な小ドットの補正差分値ΔI1´を導出する。この濃度比率αは、大ドットによって記録された黒ベタ出力画像と小ドットによって記録された黒ベタ出力画像との黒濃度の比率であり、予め導出されている。また、小ドット用濃度補正部2001は、小ドットの補正差分値ΔI1´と小ドットの画素値I2とを加算して小ドットの補正画素値I2+Δを導出する。そして、小ドット用濃度補正部2001は、小ドットの補正画素値I2+Δを小ドット用ハーフトーン画像データ生成部1405へ出力する。
【0083】
小ドット用ハーフトーン画像データ生成部1405は、小ドットの補正画素値I2+Δで構成される画像データに対してディザ処理を実行し、小ドット用ハーフトーン画像データを生成する。そして、小ドット用ハーフトーン画像データ生成部1405は、小ドット用ハーフトーン画像データを、プリント画像出力部308を介してプリント画像記録装置311へ出力する。
【0084】
<画像処理装置が実行する処理>
図21は、本実施形態における画像処理装置300が実行する処理のフローチャートである。図21に示すフローチャートは、画像処理装置300の記憶部303やROM305に記憶された制御プログラムがRAM306に読み出され、CPU304がこれを実行することによって実現される。あるいはまた、図21におけるステップの一部または全部の機能をASICや電子回路等のハードウェアで実現してもよい。尚、本実施形態における画像処理装置300が実行する処理において、S2101及びS2102以外のステップにおける処理は、図15を用いて説明した処理と同様のため、説明を省略する。また、各ステップは、S501、S502、S1501、S1502、S2101、S1503、S2102の順番で実行される。
【0085】
S2101において、小ドット用濃度補正部2001は、小ドットの補正画素値I2+Δを導出する。本ステップにおける導出処理の詳細については図22を用いて後述する。
【0086】
S2102において、小ドット用ハーフトーン画像データ生成部1405は、小ドットの補正画素値I2+Δで構成される画像データに対してディザ処理を実行し、小ドット用ハーフトーン画像データを生成する。そして、小ドット用ハーフトーン画像データ生成部1405は、小ドット用ハーフトーン画像データを所定の記憶領域に記憶する。
【0087】
<小ドット用濃度補正部が実行する処理>
図22は、本実施形態における小ドット用濃度補正部2001が実行する処理のフローチャートである。以下、S2101における、小ドットの補正画素値I2+Δを導出する処理の詳細について、図22のフローチャートを用いて説明する。
【0088】
図23は、図18(b)に示す小ドットの画素値I2で構成される画像データのy方向における各画素位置に対応する小ドットの画素値I2を、x方向で平均した値を示す図である。
【0089】
S2201において、小ドット用濃度補正部2001は、以下の式(3)に従い、大ドットの差分値ΔI1を導出する。
【0090】
【数3】
【0091】
図24は、y方向における各画素位置に対応する大ドットの差分値ΔI1を、x方向において平均した値を示す図である。本実施形態では、図24に示すように、大ドットでは補正できない、高周波成分におけるスジムラが大ドットの差分値ΔI1として導出されている。
【0092】
S2202において、小ドット用濃度補正部2001は、以下の式(4)に従い、大ドットの差分値ΔI1を小ドットの補正差分値ΔI1´に変換する。
【0093】
【数4】
【0094】
この小ドットの補正差分値ΔI1´は、大ドットでは補正できない高周波成分におけるスジムラを補正するための小ドットの画素値である。
【0095】
S2203において、小ドット用濃度補正部2001は、式(5)に従い、小ドットの補正画素値I2+Δを導出する。
【0096】
【数5】
【0097】
以上が、本実施形態に係る、小ドット用濃度補正部2001が実行する処理の内容である。図25は、y方向における各画素位置に対応する小ドットの補正画素値I2+Δを、x方向において平均した値を示す図である。本実施形態では、図25に示すように、小ドットの補正画素値I2+Δは、大ドットでは補正できない高周波成分を加算した値となっている。
【0098】
<本実施形態の効果>
以上の通り、本実施形態では、LPFを用いてフィルタ処理を行った後の大ドットの画素値と元々の大ドットの画素値との差分値を、小ドットの補正差分値ΔI1´に変換する。そして、変換した小ドットの補正差分値ΔI1´と元々の小ドットの画素値I2とを加算した補正画素値I2+Δを各画素の画素値として持つ画像データを得て、当該画像データに基づき小ドット用ハーフトーン画像データを生成する。これにより、大ドットで補正できない高周波成分におけるスジムラをも抑制しつつ、モアレの発生を抑制できる。
【0099】
[変形例]
第2実施形態では、大ドットで補正できない高周波成分におけるスジムラを小ドットで補正する場合について説明した。但し、導出された小ドットの補正差分値ΔI1´に対し、小ドットが記録可能な濃度が不足する場合がある。この場合、大ドットで補正できない高周波成分におけるスジムラを十分に補正できないことになる。
【0100】
そこで本変形例では、スジムラ補正処理後の画像データにおける画素値Iに対し、小ドットのドットパターンの周波数特性に応じたハイパスフィルタ(以下、HPFとも称する)を用いたフィルタ処理を実行する。その後、大ドットの画素値に対し、大ドットのドットパターンの周波数特性に応じたLPFを用いたフィルタ処理を実行する。そして、フィルタ処理後の小ドットの画素値で構成される画像データに対してディザ処理を実行して2値の小ドット用ハーフトーン画像データを生成する。また、フィルタ処理後の大ドットの画素値で構成される画像データに対してディザ処理を実行し、2値の大ドット用ハーフトーン画像データを生成する。この結果、大ドットで補正できない高周波成分におけるスジムラが小ドット用ハーフトーン画像データにより補正され、低周波成分におけるスジムラが大ドット用ハーフトーン画像データにより記録される。また、この大ドット用ハーフトーン画像データは、小ドットで記録できない高濃度の画像を記録する。これにより、本実施形態では、小ドットによって記録可能な濃度が不足する場合でも、大ドットで補正できない高周波成分におけるスジムラを含めたノズル特性によるスジムラを抑制しつつ、ハーフトーン画像におけるモアレの発生を抑制する。尚、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0101】
<画像処理装置の機能構成>
図26は、本変形例における画像処理装置300の詳細な機能構成を示すブロック図である。尚、図26に示す機能構成は、該機能構成やその機能を実現するためのプログラムを画像処理装置300のCPU304が実行することで実現される。また、画像データ入力部401については、第1実施形態及び第2実施形態と同様のため、説明は省略する。
【0102】
濃度補正部402は、スジムラ補正処理後の画像データを、大ドット用フィルタ処理部1403と小ドット用フィルタ処理部2601とに出力する。
【0103】
小ドット用フィルタ処理部2601は、小ドットのドットパターンの周波数特性に応じて、補正処理後の画像データの画素値Iに対し、ハイパスフィルタ格納部2602から取得したHPFを用いたフィルタ処理を行う。これにより、小ドット用フィルタ処理部2601は、フィルタ処理後の小ドットの画素値IHPFを導出する。そして、小ドット用フィルタ処理部2601は、フィルタ処理後の小ドットの画素値IHPFを大ドット用フィルタ処理部1403と小ドット用ハーフトーン画像データ生成部1405とに出力する。
【0104】
大ドット用フィルタ処理部1403は、補正処理後の画像データにおける各画素の画素値Iとフィルタ処理後の小ドットの画素値IHPFとの差分値ΔI2を導出する。また、大ドット用フィルタ処理部1403は、小ドットの差分値ΔI2に濃度比率αの逆数を乗算し、大ドットの補正差分値ΔI2´を導出する。また、大ドット用フィルタ処理部1403は、大ドットのドットパターンの周波数特性に応じて、大ドットの補正差分値ΔI2´に対し、ローパスフィルタ格納部405から取得したLPFを用いてフィルタ処理を実行する。これにより、大ドット用フィルタ処理部1403は、フィルタ処理後の大ドットの画素値ILPFを導出する。そして、大ドット用フィルタ処理部1403は、フィルタ処理後の大ドットの画素値ILPFで構成される画像データを大ドット用ハーフトーン画像データ生成部1404へ出力する。
【0105】
大ドット用ハーフトーン画像データ生成部1404は、フィルタ処理後の大ドットの画素値ILPFで構成される画像データに対してディザ処理を実行し、大ドット用ハーフトーン画像データを生成する。そして、大ドット用ハーフトーン画像データ生成部1404は、生成した大ドット用ハーフトーン画像データを、プリント画像出力部308を介してプリント画像記録装置311へ出力する。
【0106】
小ドット用ハーフトーン画像データ生成部1405は、フィルタ処理後の小ドットの画素値IHPFで構成される画像データに対してディザ処理を実行し、小ドット用ハーフトーン画像データを生成する。そして、小ドット用ハーフトーン画像データ生成部1405は、生成した小ドット用ハーフトーン画像データを、プリント画像出力部308を介してプリント画像記録装置311へ出力する。
【0107】
<画像処理装置が実行する処理>
図27は、本変形例における画像処理装置300が実行する処理のフローチャートである。図27に示すフローチャートは、画像処理装置300の記憶部303やROM305に記憶された制御プログラムがRAM306に読み出され、CPU304がこれを実行することによって実現される。あるいはまた、図27におけるステップの一部または全部の機能をASICや電子回路等のハードウェアで実現してもよい。尚、本変形例における画像処理装置300が実行する処理において、S501及びS502は、図21を用いて説明した処理と同様のため、説明を省略する。また、各ステップは、S501、S502、S2701、S2702、S2703、S2704の順番で実行される。
【0108】
S2701において、小ドット用フィルタ処理部2601は、補正処理後の画像データにおける各画素の画素値Iに対してHPFを用いたフィルタ処理を実行し、フィルタ処理後の小ドットの画素値IHPFを導出する。本ステップにおける導出処理の詳細については図28を用いて後述する。
【0109】
S2702において、大ドット用フィルタ処理部1403は、小ドットの差分値ΔI2及び濃度比率αに基づいて、フィルタ処理後の大ドットの画素値ILPFを導出する。本ステップにおける導出処理の詳細については図32を用いて後述する。
【0110】
S2703において、大ドット用ハーフトーン画像データ生成部1404はフィルタ処理後の大ドットの画素値ILPFで構成される画像データに対してディザ処理を実行し、2値の大ドット用ハーフトーン画像データを生成する。大ドット用ハーフトーン画像データ生成部1404は、生成した大ドット用ハーフトーン画像データを所定の記憶領域に記憶する。
【0111】
S2704において、小ドット用ハーフトーン画像データ生成部1405は、フィルタ処理後の小ドットの画素値IHPFで構成される画像データに対してディザ処理を実行し、2値の小ドット用ハーフトーン画像データを生成する。小ドット用ハーフトーン画像データ生成部1405は、生成した小ドット用ハーフトーン画像データを所定の記憶領域に記憶する。
【0112】
<小ドット用フィルタ処理部が実行する処理>
図28は、本変形例における小ドット用フィルタ処理部2601が実行する処理のフローチャートである。以下、S2701における、フィルタ処理後の小ドットの画素値IHPFを導出する処理の詳細について図28のフローチャートを用いて説明する。
【0113】
S2801において、小ドット用フィルタ処理部2601は、補正処理後の画像データにおける各画素の画素値Iに適用するHPFをハイパスフィルタ格納部2602から取得する。
【0114】
図29は、y方向に1次元のsobelフィルタを示す図である。ここでは、図29に示す、y方向に1次元のsobelフィルタがHPFとして用いられる。図29に示すフィルタ係数のsobelフィルタは、HPFとして予め作成され、小ドット用フィルタ処理部2601に記憶されている。
【0115】
S2802において、小ドット用フィルタ処理部2601は、補正処理後の画像データにおける各画素の画素値Iに対してHPFを用いたフィルタ処理を実行し、フィルタ処理後の小ドットの画素値IHPFを導出する。そして、小ドット用フィルタ処理部2601は、フィルタ処理後の小ドットの画素値IHPFを所定の記憶領域に記憶する。また、小ドット用フィルタ処理部2601は、以下の式(6)に従い、スジムラを補正する小ドットの画素値I2(p)を導出する。
【0116】
【数6】
【0117】
上記式(6)において、min(IHPF)は、フィルタ処理後の小ドットの画素値IHPFの最小値である。
【0118】
図30は、y方向における各画素位置に対応する小ドットの画素値I2(p)を、x方向において平均した値を示す図である。本変形例では、小ドットの画素値I2(p)は、フィルタ処理後の小ドットの画素値IHPFとその最小値であるmin(IHPF)との差分値であり、0以上の値となるようにオフセットされている。
【0119】
以上が本変形例に係る、小ドット用フィルタ処理部2601が実行する処理の内容である。図31は、HPFを用いたフィルタ処理後の画像を示す図であり、濃度ムラに伴う画素値変化が高周波なエッジ画像が示されている。
【0120】
<大ドット用フィルタ処理部が実行する処理>
図32は、本変形例における大ドット用フィルタ処理部1403が実行する処理のフローチャートである。以下、S2702における、フィルタ処理後の大ドットの画素値ILPFを導出する処理の詳細について図32のフローチャートを用いて説明する。
【0121】
S3201において、大ドット用フィルタ処理部1403は、以下の式(7)に従い小ドットの差分値ΔI2を導出する。
【0122】
【数7】
【0123】
図33は、y方向における各画素位置に対応する、x方向において平均した小ドットの差分値ΔI2を示す図である。図33には、小ドットでは記録できない高濃度の画像を、大ドットによって記録するための画素値が小ドットの差分値ΔI2として示されている。
【0124】
S3202において、大ドット用フィルタ処理部1403は、以下の式(8)に従い、小ドットの差分値ΔI2を大ドットの補正差分値ΔI2´に変換する。
【0125】
【数8】
【0126】
この大ドットの補正差分値ΔI2´は、低周波成分におけるスジムラを補正する大ドットの画素値である。また、この大ドットの補正差分値ΔI2´によって小ドットで記録できない高濃度の画像が大ドットによって記録される。
【0127】
S3203において、大ドット用フィルタ処理部1403は、以下の式(9)に従い、大ドットの補正差分値ΔI2´を大ドットの画素値I1´´に設定する。
【0128】
【数9】
【0129】
S3204において、大ドット用フィルタ処理部1403は、大ドットの画素値I1´´に適用するためのLPFをローパスフィルタ格納部405から取得する。
【0130】
S3205において、大ドット用フィルタ処理部1403は、大ドットの画素値I1´´に対してS3204で取得したLPFを用いてフィルタ処理を実行し、フィルタ処理後の大ドットの画素値ILPFを導出する。以上が、本実施形態に係る、大ドット用フィルタ処理部1403が実行する処理の内容である。
【0131】
<本変形例の効果>
以上の通り、本変形例では、フィルタ処理後の小ドットの画素値IHPFを導出した後、フィルタ処理後の大ドットの画素値ILPFを導出する。そして、大ドットで補正できない高周波成分におけるスジムラを小ドット用ハーフトーン画像データにより補正する。また、低周波成分におけるスジムラを大ドット用ハーフトーン画像データにより補正する。また、この大ドット用ハーフトーン画像データによって小ドットで記録できない高濃度の画像が記録される。これにより、本変形例では、小ドットで記録可能な濃度が不足する場合でも、大ドットで補正できない高周波成分におけるスジムラを含めたノズル特性によるスジムラを抑制しつつ、ハーフトーン画像におけるモアレの発生を抑制できる。
【0132】
また、前述したように、画素値I2(p)は0以上の値となるようにオフセットされている。そのため、ハイライト側の画素領域は粒状性が良い小ドットにより記録され、シャドウ側の画素領域は大ドットにより記録される。その結果、低周波成分におけるスジムラの抑制とシャドウ側の高濃度の記録とは大ドットが担い、高周波成分のスジムラの抑制とハイライト側の粒状性が良い記録とは小ドットが担う、機能分離の効果が副次的に表れる。
【0133】
尚、本変形例では、補正処理後の画像データの画素値Iに対し、小ドットのドットパターンの周波数特性に応じたHPFを用いたフィルタ処理を行うが、このフィルタ処理に用いるフィルタはHPFに限られない。例えば、小ドットのドットパターンでモアレが生じやすい周波数より更に高周波なスジムラが生じる場合、前述のHPFに加えて、小ドットのドットパターンの周波数特性に応じたLPFを更に掛けてもよい。また、小ドットのドットパターンの周波数特性に応じたHPFと小ドットのドットパターンの周波数特性に応じたLPFとを組み合わせたバンドパスフィルタを用いてもよい。
【0134】
[その他の実施形態]
本発明は、前述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0135】
311 プリント画像記録装置
401 画像データ入力部
402 濃度補正部
404 フィルタ処理部
406 大ドット用ハーフトーン画像データ生成部
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