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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20240909BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
G03G9/097 374
G03G9/087 331
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020169459
(22)【出願日】2020-10-06
(65)【公開番号】P2022061440
(43)【公開日】2022-04-18
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】西村 悠
(72)【発明者】
【氏名】菅原 庸好
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】細井 一人
(72)【発明者】
【氏名】北村 伸
(72)【発明者】
【氏名】大山 一成
(72)【発明者】
【氏名】辻本 大祐
(72)【発明者】
【氏名】佐野 仁思
(72)【発明者】
【氏名】石上 恒
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-062316(JP,A)
【文献】特開2020-181051(JP,A)
【文献】特開2019-168540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/097
G03G 9/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂を含有するトナー粒子と、
外添剤として、ニオブ原子の含有量が酸化物換算で500ppm以上5000ppm以下であるチタン酸化合物粒子と
を有し、
該チタン酸化合物粒子が鉄原子をさらに含有し、該チタン酸化合物粒子に対する鉄原子の含有量が酸化物換算で100ppm以上3000ppm以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
ポリエステル樹脂を含有するトナー粒子と、
外添剤として、ニオブ原子の含有量が酸化物換算で500ppm以上5000ppm以下であるチタン酸化合物粒子と、
を有し、
該ポリエステル樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂を含有し、
該チタン酸化合物粒子がチタン酸カルシウム粒子またはチタン酸ストロンチウム粒子であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記チタン酸化合物粒子による前記トナー粒子の被覆率が5~50%である請求項1又は1又は2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記静電荷像現像用トナー中の前記チタン酸化合物粒子の質量割合(質量%)をWTiとしたとき該WTiが、
0.5≦WTi≦50
を満たす請求項1から3のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂を含有する請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記トナー粒子の重量平均粒径(μm)をRtonerとしたとき、該Rtoner
3.0≦Rtoner ≦7.0
を満たす請求項1から5のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
前記チタン酸化合物粒子がチタン酸カルシウム粒子またはチタン酸ストロンチウム粒子である請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
前記チタン酸カルシウム粒子は、比表面積が10~40m/gであり、長辺長Aが0.05~0.35μm、短辺長Bが0.04~0.20μm、軸比A/Bが1.2~3.0の直方体状粒子を含むチタン酸カルシウム粒子である請求項2又は7に記載の静電荷像現像用トナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、及び静電記録法などに用いられる静電荷像を現像するためのトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法において、静電潜像を現像する工程は、静電潜像の静電力を利用して、摩擦帯電させたトナーを静電潜像上に付着させ、トナー画像を形成するものである。静電潜像を現像するためのトナーとしては、磁性体を含有しない非磁性トナーと、磁性体を樹脂中に含有する磁性トナーとがある。また、非磁性トナーを用いる現像剤には、非磁性トナーを磁性キャリアと混合せずに用いる一成分系現像剤と、非磁性トナーを磁性キャリアと混合して用いる二成分系現像剤とがある。一成分系現像剤を用いた現像方式では、非磁性トナーはそのまま現像剤担持体上に担持され、摩擦帯電したものが静電潜像を現像する。二成分系現像剤を用いた現像方式では、磁性キャリアによって構成され現像剤担持体上に形成された磁気ブラシに担持された非磁性トナーが静電潜像を現像する。特に高画質を要求されるフルカラー複写機又はフルカラープリンタのようなフルカラー画像形成装置には後者が好適に用いられている。
以下では、磁性キャリアを使用する二成分系現像剤について述べる。
【0003】
近年の高画質化・省エネルギー化・高速印刷化に対応して小粒径かつ低温定着性とシャープメルト性を有するトナーを使用することが必要になっている。すなわち、省エネルギー対応策としてガラス転移点や軟化点の低い結着樹脂を用いることで定着工程での消費電力を低下させる。さらに高速印刷化に対応してシャープメルト性を有する結着樹脂を用いることで素早く溶融させる。また小粒径にすることで画像におけるドットのばらつきを抑えることで画質を向上させる、といった技術が用いられる。
【0004】
しかし、このような技術を用いた場合、現像性を満足させることが困難になってくる。例えば、現像に寄与しなかったトナーが現像スリーブ(現像剤担持体)の表面上に残留・付着して磁性キャリアの穂立ち形成(磁気ブラシの形成)を阻害するという課題が生ずることがある。
磁性キャリアの穂立ち形成を阻害するメカニズムとしては以下のように考えられる。
トナーの小粒径化により非静電付着力を増加させ、トナーに定着助剤としてガラス転移点(Tg)が低い成分を含有させることによってトナーの流動性が低下しやすい。流動性が低下することで、現像スリーブ上のトナー層の最下層のトナーは摩擦量が多くなる。その結果、チャージアップによって単位質量当たりの摩擦帯電量が高くなり現像スリーブ上へ静電的に付着し、磁性キャリアの穂立ち形成を阻害すると考えられる。
【0005】
そして、穂立ち形成が阻害されることで、トナーの帯電量が不足し、画像不良をひきおこす。特に、同じパターン(第1のパターン)の画像を多量に印刷した場合、現像スリーブ上において画像部のトナーの流動性と非画像部のトナーの流動性とが不均一となりやすい。そして、流動性が不均一な状態のまま、異なるパターン(第2のパターン)の画像を連続で印刷すると、第1のパターンの画像の履歴が、第2のパターンの画像濃度の濃淡差となって印刷される弊害(以下、スリーブゴーストともいう)が発生する場合がある。また、トナー粒子内で帯電が不均一な場合、局所的な静電付着力の増加が起きて電界への追従性が低下するため現像スリーブの表面上に残留するトナーが増加し、スリーブゴーストがより発生しやすくなる。
【0006】
こうした課題に対処するために、これまで以上の流動性を有するトナーが要求されている。こうした課題を解決するために特許文献1ではチタン酸ストロンチウムを外添することでトナーに流動性を付与する手法が提案されている。
しかしながら、トナーに流動性を付与するために外添剤としてチタン酸化合物粒子を含むトナーは、常温低湿環境下(例えば温度23℃、相対湿度15%)において次のような画像ムラが生じてしまう場合がある。すなわち、画像部及び非画像部が明確に分かれた画像を連続で出力し、その後にハーフトーン画像を出力した場合、画像ムラ(以下、外添剤連れ周りゴーストともいう)が生じてしまう場合がある。
この外添剤連れ周りゴーストが生じるメカニズムが定かではないが、以下に示すように、推測される。
【0007】
常温低湿環境下において、画像部及び非画像部が明確に分かれた画像を連続で出力した場合、画像部では、画像部へ供給されたトナーから、トナー粒子への固着が不十分なチタン酸化合物粒子が外れて、像保持体の表面に移行して付着する。そして、付着したチタン酸化合物粒子がクリーニングブレードにより除去されずに付着したままとなり、像保持体の表面に残留してしまうことが外添剤連れ周りゴーストの原因と考えられる。
チタン酸化合物粒子は、誘電体的な特性をもつため、電界により誘電分極し、局所的にマイナス電荷部位とプラス電荷部位ができる。誘電緩和が遅い場合には、電界印加をやめた後も誘電分極が残り、像保持体の電荷とチタン酸化合物粒子における像保持体と逆極性の電荷部位との間に静電的付着力が発生する。
そして、像保持体上に静電的に付着したチタン酸化合物粒子は、クリーニングブレードによって除去されにくく、次の帯電工程で像保持体の帯電を不均一にすると考えられる。
【0008】
一方、非画像部には、像保持体上にトナーが供給されないため、トナーから外れるチタン酸化合物粒子の量が画像部より少ない。このため、像保持体上に付着するチタン酸化合物粒子の量も少なく、画像部と比較して帯電が不均一になりにくい。
このように、画像部と非画像部とでチタン酸化合物粒子の付着量が異なることが、外添剤連れ周りゴーストが発生する原因と考えられる。
そして、こうした課題に対処するために、特許文献2では、鉄の含有量が1200ppmを超え6000ppm以下のチタン酸化合物粒子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-169150号公報
【文献】特開2014-186050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら特許文献1のトナーは、初期においては流動性が良好であるが、長期間の使用における流動性の低下の抑制という点に関しては不十分であった。それゆえ長時間の使用におけるスリーブゴーストの発生の抑制という点に関しては不十分であった。
また、特許文献2のトナーでは、鉄の含有量によっては帯電能が下がり過ぎてしまい、非画像部(白地部)においてトナーがわずかに現像され地汚れのように現れる画像不良(以下、カブリともいう)が発生する場合があった。さらに、鉄の含有だけではチタン酸化合物の結晶性や配向性が悪く、誘電緩和が不十分で外添剤の量によっては外添剤連れ周りゴーストが発生する場合があった。
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、長時間の使用におけるスリーブゴースト発生、および外添剤連れ周りゴーストの発生を抑制しながらカブリを抑制し、安定した高画質化を実現するトナーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、
ポリエステル樹脂を含有するトナー粒子と、
外添剤として、ニオブ原子の含有量が酸化物換算で500ppm以上5000ppm以下であるチタン酸化合物粒子とを有する静電荷像現像用トナーが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、長時間の使用におけるスリーブゴーストの発生、外添剤連れ周りゴーストの発生およびカブリの発生が抑制され、低温定着性に優れるトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】熱風によりトナーの表面処理を行う表面処理装置の一例を示す模式図
図2】スリーブゴースト評価用の黒帯部(ベタ黒部)とベタ白部とからなるテストチャートを示す模式図
図3】スリーブゴースト評価用の全面ハーフトーン画像部からなるテストチャートを示す模式図
図4】外添剤連れ周りゴースト評価用パターンを示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して、本発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、本発明の範囲を以下の実施の形態に限定するものではない。
下記の説明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
本発明に係るトナーは、ポリエステル樹脂を含有するトナー粒子と、外添剤として、ニオブ原子の含有量が酸化物換算で500ppm以上5000ppm以下であるチタン酸化合物粒子とを有する静電荷像現像用トナーである。
ニオブ原子の含有量が酸化物換算で500ppm以上5000ppm以下のチタン酸化合物は、チタン酸化合物の層間が補完され、トポケミカル反応により配向した多結晶が生成されて誘電率および誘電緩和が変化し、誘電分極の残留を効果的に抑制する。
【0015】
前記チタン酸化合物粒子が鉄原子をさらに含有し、
前記チタン酸化合物粒子に対する前記鉄原子の含有量が酸化物換算で100ppm以上3000ppm以下であることが好ましい。
鉄原子の含有量が酸化物換算で100ppm以上3000ppm以下のチタン酸化合物は、ぺロブスカイト結晶構造が適度に乱される。特に、ニオブ原子の含有によりトポケミカル反応で配向した多結晶では、より少量の鉄原子で効果的に誘電分極の残留を抑制できる。
この理由は明らかではないが、以下のように考えている。まず、鉄原子による誘電分極の残留を抑制する効果は、ぺロブスカイト結晶構造の適度な乱れによって結晶構造的な接触を設けることで誘電緩和を促進することと、鉄原子の導電性により分極状態を解消しているものと考えられる。
【0016】
そして、本発明のニオブ原子を含有するチタン酸化合物では、チタン酸化合物の層間が補完され、トポケミカル反応により配向することで、ぺロブスカイト結晶構造の適度な乱れにより、効率的に誘電緩和できていると考えている。さらに、少量の鉄原子を含有することでぺロブスカイト結晶構造の適度な乱れと導電性がより効果的に誘電緩和していると考えている。
そして、これらの効果により非画像部に付着したチタン酸化合物粒子は除去されやすくなり、外添剤連れ周りゴーストの発生が抑制されると考えている。
【0017】
また、ニオブ原子を含有しトポケミカル反応によって配向した多結晶の導電性により、トナーの帯電均一性が向上し電界への追従性が良くなるため、現像スリーブ上に残留するトナーが減少しスリーブゴーストが抑制されると考えている。
さらに、ニオブ原子により配向した多結晶のチタン酸化合物粒子は、少量の鉄原子で誘電緩和の効果が得られるので、鉄原子による帯電低下によって起きるカブリの悪化を抑えられていると考えている。
【0018】
そして、本発明に係る静電荷像現像用トナーにおけるチタン酸化合物粒子による被覆率は5~50%以下であることが好ましい。被覆率が50%より大きいと、外添剤同士がトナー表面上で重なりやすくなる。そのために移行しやすくなり、長時間使用に際して流動性の低下をひきおこす。そのため、50%以下にすることで、外添剤の固着を高め、長時間の使用による高い流動性の維持が可能となる。さらに、帯電の均一性が向上し、電界に対する追従性も良化する。また、被覆率が5%以上であると帯電の均一性の効果がより得られる。
【0019】
また本発明に係る静電荷像現像用トナー中のチタン酸化合物粒子の質量割合(質量%)をWTiとしたとき該WTiが、
0.5≦WTi≦50
であることが好ましい。
チタン酸化合物粒子のトナー中の質量割合(質量%)が0.5%以上であるとトナー粒子の帯電の均一性が向上する。
チタン酸化合物粒子のトナー中の質量割合(質量%)が50%以下であると帯電維持性
が良好である。
【0020】
本発明に係る静電荷像現像用トナーにおける、トナー粒子の重量平均粒径(μm)をRtonerとしたとき、該Rtoner
3.0≦Rtoner ≦7.0
であることが好ましい。
トナー粒子の重量平均粒径(μm)が3.0μm以上であると電界追従性が良好である。トナー粒子の重量平均粒径(μm)が7.0μm以下であると、ドット再現性が向上する。
【0021】
本発明に係るトナーにおけるトナー中には、ポリエステル樹脂が含有されている。
トナー粒子にポリエステル樹脂を含有させることで、良好な低温定着性を維持することができ、かつ流動性を高めることができる。
そして、本発明のトナーは、円形度が0.960以上0.975以下であることが好ましい。円形度とは粒子投影像の周長に対する、粒子投影面積と同じ面積の円の周長の比である。一般的に、二成分現像剤におけるトナー粒子の平均円形度をより高めることは、接触面積を減らすことから、二成分現像剤の流動性を高める観点から有効であり、この円形度が0.960以上であることによって、流動性を有することができる。他方、平均円形度が0.975より高いと、定着圧に対する感度として、低圧力によるトナー変形が生じにくくなる傾向にあり、低温定着性が得られにくくなる場合がある。したがって、円形度が0.960以上0.975以下の範囲であることによって、良好な流動性と低温定着性を有することができる。
【0022】
また本発明のトナーに用いられるチタン酸化合物粒子は、チタン酸カルシウム粒子またはチタン酸ストロンチウム粒子であることが好ましい。チタン酸カルシウム粒子またはチタン酸ストロンチウム粒子が、トポケミカル反応により配向した多結晶を得やすく、誘電緩和も良好である。
【0023】
さらに本発明のトナーに用いられるチタン酸カルシウム粒子は、
比表面積が、10~40m/gであり、長辺長Aが0.05~0.35μm、短辺長Bが0.04~0.20μm、軸比A/Bが1.2~3.0の直方体状粒子を含むチタン酸カルシウム粒子であることが好ましい。
比表面積が、10~40m/gであることで、他の外添剤よりも小さくなり、チタン酸カルシウム粒子は、使用におけるトナー同士およびキャリアとの衝突に際し直接の外力を付与されにくく、トナー表面から移行したり埋め込まれたりしにくくなる。それによって長時間の使用に際しチタン酸カルシウム粒子によるトナー粒子の被覆量を維持することができ、したがって流動性を維持することができ、ひいてはスリーブゴーストの発生を抑止しつづけることができる。
また、長辺長Aが0.05~0.35μm、短辺長Bが0.04~0.20μm、軸比A/Bが1.2~3.0の直方体状粒子を含むことで、固着率が上がり流動性が維持しやすくなり、かつ研磨剤としての効果が高くなる。
【0024】
次に、好ましい態様などを記載する。
以下には、チタン酸化合物粒子の製造方法として、チタン酸カルシウム粒子の製造方法を具体的に示すが、これに限定されるわけではない。チタン酸ストロンチウム粒子も同様の方法によって製造することができる。
【0025】
(チタン酸カルシウム粒子の製造方法)
本発明において用いられるチタン酸カルシウム粒子は、
代表的には常圧により、または、オートクレーブを用いた加圧加熱反応法により、
ペロブスカイト型チタン酸化合物を製造する方法において、
チタン源としてチタン化合物の加水分解物の鉱酸解膠品を、カルシウム源として水酸化カルシウムを用い、その混合液にアルカリ水溶液を添加し、所定のpHに調整後加熱し反応させた後、必要に応じて疎水化処理することで得られる。
【0026】
酸化チタン源としてはチタン化合物の加水分解物の一塩基酸の解膠品を用いる。好ましい一塩基酸は、塩酸、硝酸、過塩素酸等である。具体例を挙げると硫酸法で得られた、SO含有量が1.0wt%以下、好ましくは0.5wt%以下のメタチタン酸を塩酸でpHを0.8~1.5に調整して解膠したものを、中和、洗浄、再スラリー化したスラリーを用いる。メタチタン酸の粒径は、0.07μm以下が好ましく、0.03μm以下が特に好ましい。
【0027】
ニオブ原子の含有量は、メタチタン酸を塩酸で解膠したものに五塩化ニオブ等のニオブ化合物を添加することでニオブ含有量を調整することができる。
同様に鉄原子の含有量も、塩化鉄等の鉄化合物を添加することで鉄原子の含有量を調整することができる。
アルカリ水溶液としては、苛性アルカリを用いることができるが、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0028】
反応時の酸化チタン源の濃度としては、TiOとして0.05~1.1mol/Lが好ましく、0.1~0.8mol/Lが特に好ましい。
反応時における酸化チタン源とカルシウム源の混合割合は、CaO/TiOのモル比で、0.9~1.4が好ましく、0.95~1.15が特に好ましい。
反応系の雰囲気は、炭酸カルシウムの生成を防ぐために窒素ガス雰囲気下で反応する等により炭酸ガスの混入を防ぐことが好ましい。
【0029】
比表面積が10~40m/gで、長辺長が0.35μm以下、軸比が1.2~5.0のチタン酸カルシウム粒子を得るには、pHを12.0~13.0範囲に調整し、90~180℃で反応させる。
反応時の温度は60℃以上であれば、チタン酸カルシウム粒子が得られるが、60℃から90℃未満では反応速度が小さく、反応に長時間を要し、得られたチタン酸カルシウムの比表面積は小さく、一次粒子の個数平均粒径が大きな粒子となるため好ましくない。100℃以上の反応には、例えば、オートクレーブを用いる。
【0030】
反応時のpHは12.0以上であればチタン酸カルシウム粒子が得られるが、pH13.0を超えると比表面積が10~40m/gのチタン酸カルシウム粒子は得られにくくなるので好ましくない。
これらの反応条件に加えて、メタチタン酸スラリーと水酸化カルシウムを混合したスラリーに、TiとCaとの総モル数に対し0.1~3.0mol%のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、オキシマロン酸等のオキシカルボン酸を添加する。そして、90~180℃の温度範囲で反応することで、比表面積が20~40m/gで、長辺長Aが0.05~0.35μm、短辺長Bが0.04~0.20μm、軸比A/Bが1.2~5.0のチタン酸カルシウム粒子を得ることができる。クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、オキシマロン酸等のオキシカルボン酸添加量は0.1mol%未満では微粒化の効果が小さく、また、3.0mol%を超えると直方体状粒子のエッジがなくなり、研摩効果が低下するので好ましくない。
【0031】
本発明において用いられるチタン酸化合物は、表面処理をしたものでもよく、表面処理剤は特に限定はされないが、ジシリルアミン化合物、ハロゲン化シラン化合物、シリコーン化合物又はシランカップリング剤が挙げられる。
ジシリルアミン化合物は、ジシリルアミン(Si-N-Si)部位を有する化合物である。ジシリルアミン化合物の例としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、N-メチル-ヘキサメチルジシラザン又はヘキサメチル-N-プロピルジシラザンが挙げられる。ハロゲン化シラン化合物の例としては、ジメチルジクロロシランが挙げられる。
【0032】
シリコーン化合物の例としては、シリコーンオイル又はシリコーン樹脂(ワニス)が挙げられる。シリコーンオイルの例としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α-メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル又はフッ素変性シリコーンオイルが挙げられる。シリコーン樹脂(ワニス)としては、メチルシリコーンワニス、フェニルメチルシリコーンワニスが挙げられる。
【0033】
シランカップリング剤の例としては、アルキル基とアルコキシ基とを有するシランカップリング剤、又はアミノ基とアルコキシ基とを有するシランカップリング剤、又は含フッ素シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としてより具体的には、以下のものが挙げられる。ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルジエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルジメトキメチルシラン又はγ-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルジメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルジエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、1,1.1-トリフルオロヘキシルジエトキシシランなど。
特にトリフルオロプロピルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシランなどのフッ素系のシランカップリング剤で処理されていることが好ましい。
【0034】
また、チタン酸ストロンチウム粒子100質量部に対し、0.5~20.0質量部の量の処理剤によって処理されていることが好ましい。
上述の表面処理剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
<結着樹脂>
本発明におけるトナーには、結着樹脂として、ポリエステル樹脂を含有していることが、低温定着性の観点から必要である。
また、ポリエステル樹脂とビニル系樹脂が混合、または両者が一部反応したハイブリッド樹脂であってもよい。
【0036】
ポリエステル樹脂のポリエステルユニットに用いられるモノマーとしては、多価アルコール(2価もしくは3価以上のアルコール)と、多価カルボン酸(2価もしくは3価以上のカルボン酸)、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとが用いられる。ここで、「歪み硬化性」を発現させるため、分岐ポリマーを作製するためには、非晶性樹脂の分子内において部分架橋することが有効であり、そのためには、3価以上の多官能化合物を使用することが好ましい。従って、ポリエステルユニットの原料モノマーとして、3価以上のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステル、及び/又は3価以上のアルコールを含むことが好ましい。
【0037】
ポリエステル樹脂のポリエステルユニットに用いられる多価アルコールモノマーとしては、以下の多価アルコールモノマーを使用することができる。
2価のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また下記式(A)で示されるビスフェノール及びその誘導体;
【0038】
【化1】
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x及びyはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0以上10以下である。)
下記式(B)で示されるジオール類;
【0039】
【化2】
【0040】
3価以上のアルコール成分としては、例えば、以下のものが挙げられる。ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン。これらのうち、好ましくはグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが用いられる。これらの2価のアルコール及び3価以上のアルコールは、単独であるいは複数を併用して用いることができる。
【0041】
ポリエステル樹脂のポリエステルユニットに用いられる多価カルボン酸モノマーとしては、以下の多価カルボン酸モノマーを使用することができる。
2価のカルボン酸成分としては、例えば、以下のものが挙げられる。マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、これらの酸の無水物及びこれらの低級アルキルエステル。これらのうち、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、n-ドデセニルコハク酸が好ましく用いられる。
【0042】
3価以上のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとしては、例えば、以下のものが挙げられる。1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、これらの酸無水物又はこれらの低級アルキルエステル。これらのうち、特に1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、すなわちトリメリット酸又はその誘導体が安価で、反応制御が容易であるため、好ましく用いられる。これらの2価のカルボン酸等及び3価以上のカルボン酸は、単独であるいは複数を併用して用いることができる。
【0043】
本発明のポリエステルユニットの製造方法については、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、前述のアルコールモノマー及びカルボン酸モノマーを同時に仕込み、エステル化反応またはエステル交換反応、及び縮合反応を経て重合し、ポリエステル樹脂を製造する。また、重合温度は、特に制限されないが、180℃以上290℃以下の範囲が好ましい。ポリエステルユニットの重合に際しては、例えば、チタン系触媒、スズ系触媒、酢酸亜鉛、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム等の重合触媒を用いることができる。特に、本発明の結着樹脂は、スズ系触媒を使用して重合されたポリエステルユニットがより好ましい。
【0044】
また、ポリエステル樹脂の酸価は5mgKOH/g以上20mgKOH/g以下である。そして水酸基価は20mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における水分吸着量が抑え、非静電付着力を低く抑えることができる。そのためカブリ性の観点から好ましい。
また、結着樹脂には、ポリエステル樹脂を主成分として、下記のものを含有していてもよい。
例えば、ポリスチレン、ポリ-p-クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;スチレン系共重合樹脂、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂など。
【0045】
また、結着樹脂は、低分子量の樹脂と高分子量の樹脂とを混ぜ合わせて使用しても良い。高分子量の樹脂と低分子量の樹脂との含有比率(高分子量の樹脂/低分子量の樹脂)は質量基準で40/60以上85/15以下であることが、優れた低温定着性と耐ホットオフセット性とが得られるという観点から好ましい。なお「ホットオフセット」は、加熱ローラの温度が高すぎるために、トナー画像の一部が定着器の部材表面に付着し、更に、次周回で記録材上に定着する現象を意味する。
【0046】
<着色剤>
本発明におけるトナーには、着色剤を含有していてもよい。着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
【0047】
マゼンタトナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
【0048】
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1のような油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28のような塩基性染料。
【0049】
シアントナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1~5個置換した銅フタロシアニン顔料。
シアントナー用染料としては、C.I.ソルベントブルー70が挙げられる。
【0050】
イエロートナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
イエロートナー用染料としては、C.I.ソルベントイエロー162が挙げられる。
【0051】
これらの着色剤は、単独または混合して、さらには固溶体の状態で用いることができる。着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、及びトナーへの分散性の点から選択される。
着色剤の含有量は、樹脂成分の総量に対して0.1質量部以上30.0質量部以下であることが好ましい。
【0052】
<ワックス>
トナー粒子にはワックスを用いてもよい。ワックスとしては、例えば以下のものが挙げられる。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。
【0053】
さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸などの脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどのアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般的に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
【0054】
これらのワックスの中でも、低温定着性、耐ホットオフセット性を向上させるという観点で、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックス、又はカルナバワックスなどの脂肪酸エステル系ワックスが好ましい。
ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上15質量部以下が好ましい。ワックスの含有量がこの範囲にあるとき、耐ホットオフセット性が良好になる。
【0055】
また、ワックスの示差走査熱量分析装置(DSC)による測定において、昇温時の吸熱曲線を得たとき、温度30℃以上200℃以下の範囲に存在する最大吸熱ピークのピーク温度が、50℃以上110℃以下であることが好ましい。前記ピーク温度が、前記範囲であると、トナーの保存性と耐ホットオフセット性とを両立させることができるからである。
【0056】
<ワックス分散剤>
ワックスの結着樹脂への分散性を向上させるために、ワックス成分に近い極性部位と樹脂極性に近い部位とを併せ持つ樹脂をワックス分散剤として添加してもよい。具体的には、炭化水素化合物でグラフト変性されたスチレン-アクリル系樹脂が好ましい。
ワックス分散剤はその樹脂部分に、環式炭化水素基又は芳香環を導入すると、トナーの帯電維持性が向上する。これによりトナー粒子による本発明のチタン酸ストロンチウム粒子の帯電補助特性を減じることが抑制されるので好ましい。
【0057】
<荷電制御剤>
トナー粒子には、必要に応じて荷電制御剤を含有させることもできる。トナーに含有される荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速くかつ一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
【0058】
ネガ系荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物。スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩又はスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩又はカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物。ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン。
ポジ系荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、前記四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
荷電制御剤はトナー粒子に対して内添してもよいし外添してもよい。荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し0.2質量部以上10質量部以下が好ましい。
【0059】
<無機微粒子>
本発明のトナーには、必要に応じて他の無機微粉末を含有させることもできる。無機微粉末は、トナー粒子に内添しても良いし外添剤としてトナー粒子と混合してもよい。外添剤としては、シリカ、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化アルミニウムのような無機微粉末が好ましい。無機微粉末は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物のような疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
外添剤は、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下使用されることが好ましい。トナー粒子と外添剤との混合は、ヘンシェルミキサーのような公知の混合機を用いることができる。
【0060】
<現像剤>
本発明におけるトナーは、一成分系現像剤としても使用できるが、トナー表面の電荷局在化を抑制するために、磁性キャリアと混合して、二成分系現像剤として用いることもできる。
該磁性キャリアとしては、例えば、以下のものが挙げられる。酸化鉄;鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、及び希土類のような金属粒子、それらの合金粒子、それらの酸化物粒子。フェライトなどの磁性体;磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持する結着樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア);など。
【0061】
トナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、磁性キャリアの混合比率は、二成分系現像剤中のトナー濃度として、2質量%以上15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは4.0質量%以上13.0質量%以下である。
【0062】
<トナーの製造方法>
トナー粒子を製造する方法としては、特に限定されないが、顔料などのトナー材料の分散の観点から粉砕法が好ましい。
以下、粉砕法でのトナー製造手順について説明する。
【0063】
原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、例えば、結着樹脂、離型剤(ワックス)、着色剤、必要に応じて荷電制御剤等の他の成分を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業(株)製)などが挙げられる。
【0064】
次に、混合した材料を溶融混練して、結着樹脂中に顔料などを分散させる。その溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーの如きバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機((株)神戸製鋼所製)、TEM型2軸押出機(東芝機械(株)製)、PCM混練機((株)池貝製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業(株)製)などが挙げられる。更に、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロール等で圧延し、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
【0065】
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルの如き粉砕機で粗粉砕する。
更に、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業(株)製)、スーパーローター(日清エンジニアリング(株)製)、ターボ・ミル(ターボ工業(株)製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕する。
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット、遠心力分級方式のターボプレックス、TSPセパレータ、ファカルティの如き分級機や篩分機を用いて分級する。エルボージェットとしては日鉄鉱業(株)製のものがあり、ターボプレックス、TSPセパレータ、ファカルティとしてはホソカワミクロン(株)製のものがある。その後、加熱によるトナー粒子の表面処理を行い、トナー粒子に外添剤を固着させる。
【0066】
例えば、図1に示される表面処理装置を用いて、熱風により表面処理を行うこともできる。原料定量供給手段1により定量供給された混合物は、圧縮気体調整手段2により調整された圧縮気体によって、原料供給手段の鉛直線上に設置された導入管3に導かれる。導入管3を通過した混合物は、原料供給手段の中央部に設けられた円錐状の突起状部材4により均一に分散され、放射状に広がる8方向の供給管5に導かれ熱処理が行われる処理室6に導かれる。このとき、処理室6に供給された混合物は、処理室6内に設けられた混合物の流れを規制するための規制手段9によって、その流れが規制される。このため処理室6に供給された混合物は、処理室6内を旋回しながら熱処理された後、冷却される。
【0067】
供給された混合物を熱処理するための熱風は、熱風供給手段7から供給され、熱風を旋回させるための旋回部材13により、処理室6内に熱風を螺旋状に旋回させて導入される。その構成としては、熱風を旋回させるための旋回部材13が、複数のブレードを有しており、その枚数や角度により、熱風の旋回を制御することができる。処理室6内に供給される熱風は、熱風供給手段7の出口部における温度が100℃乃至300℃であることが好ましい。熱風供給手段7の出口部における温度が上記の範囲内であれば、混合物を加熱しすぎることによるトナー粒子の融着や合一を抑制しつつ、トナー粒子を均一に球形化処理することが可能となる。
【0068】
更に熱処理された熱処理トナー粒子は冷風供給手段8から供給される冷風によって冷却される。冷風供給手段8から供給される冷風の温度は-20℃乃至30℃であることが好ましい。冷風の温度が上記の範囲内であれば、熱処理トナー粒子を効率的に冷却することができ、混合物の均一な球形化処理を阻害することなく、熱処理トナー粒子の融着や合一を抑制することができる。冷風の絶対水分量は、0.5g/m以上15.0g/m以下であることが好ましい。
【0069】
次に、冷却された熱処理トナー粒子は、処理室6の下端にある回収手段10によって回収される。なお、回収手段10の先にはブロワー(不図示)が設けられ、それにより吸引搬送される構成となっている。
また、粉体粒子供給口14は、供給された混合物の旋回方向と熱風の旋回方向が同方向になるように設けられており、表面処理装置の回収手段10は、旋回された粉体粒子の旋回方向を維持するように、処理室6の外周部に設けられている。さらに、冷風供給手段8から供給される冷風は、装置外周部から処理室6の内周面に、水平かつ接線方向から供給されるよう構成されている。粉体粒子供給口14から供給されるトナーの旋回方向、冷風供給手段8から供給された冷風の旋回方向、熱風供給手段7から供給された熱風の旋回方向がすべて同方向である。そのため、処理室6内で乱流が起こらず、装置内の旋回流が強化され、トナーに強力な遠心力がかかり、トナーの分散性が更に向上するため、合一粒子の少ない、形状の揃った熱処理トナー粒子を得ることができる。
【0070】
その後、熱処理トナー粒子を微粉と粗粉とに二分する。例えば、慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業(株)製)を用いて二分する。二分された熱処理トナー粒子それぞれの表面に、所望量の外添剤を外添処理する。外添処理する方法としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、等の混合装置を外添機として用いて、撹拌・混合する。あるいはメカノハイブリッド(日本コークス工業(株)製)、ノビルタ(ホソカワミクロン(株)製)等の混合装置を外添機として用いて、撹拌・混合するといった方法が挙げられる。その際、必要に応じて、さらに流動化剤等の外添剤を外添処理しても良い。
トナー及び原材料の各種物性の測定法について以下に説明する。
【0071】
<蛍光X線測定>
チタン酸化合物粒子又は無機微粒子の蛍光X線測定は、シランカップリング剤などで表面処理を行う場合は、表面処理前に測定を行う。
波長分散型蛍光X線分析装置Axios advanced(スペクトリス社製)を用いてHe雰囲気下、無機微粒子におけるNaからUまでの元素を直接測定する。装置付属の液体試料用カップを使用し、PP(ポリプロピレン)フィルムを底面に張り、十分な量の試料を入れ、底面に厚みが均一な層を形成させて、ふたをする。出力が2.4kWの条件で測定する。解析には、FP(ファンダメンタルパラメーター)法を用いる。その際、検出された元素全てが酸化物であると仮定し、それらの総質量を100質量%とする。
【0072】
ソフトウエアUniQuant5(ver.5.49)(スペクトリス社製)にて総質量に対する酸カルシウム(CaO)及び酸化チタン(TiO)の含有量(質量%)、酸化ストロンチウム(SrO)及び酸化チタン(TiO)の含有量(質量%)を酸化物換算値として求める。
【0073】
<チタン酸カルシウム粒子またはチタン酸ストロンチウム粒子の被覆率>
日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影されたトナー表面画像を20個無作為にサンプリングする。
その画像情報を、画像解析ソフトImage-Pro Plus ver.5.0((株)日本ローパー)によって、トナー粒子表面部分と外添剤部分との明度が異なることを利用して、2値化する。この2値化によって、外添剤部分の面積とトナー粒子部分の面積(外添剤部分の面積も含む)STonerとに分ける。
【0074】
外添剤が、シリカ粒子とチタン酸カルシウム粒子とからなる場合、シリカ粒子とチタン酸カルシウム粒子とは、以下のように粒子の形状によって区別することができる。
すなわちシリカ粒子の形状は、不定形や球状であるのに対し、チタン酸カルシウム粒子は、角がとれた直方体や立方体形状である。
この形状による区別によって、外添剤部分の面積のうち、チタン酸カルシウム粒子の占める面積SCaTiOを割り出す。
そしてチタン酸カルシウム粒子(CaTiO粒子)によるトナー粒子の被覆率(%)σCaTiOは、下式によって算出される。
σCaTiO(%)=SCaTiO/SToner×100
また、外添剤が、シリカ粒子とチタン酸ストロンチウム粒子からなる場合も同様にしてチタン酸ストロンチウム粒子によるトナー粒子の被覆率(%)を算出する。
【0075】
<チタン酸化合物粒子の一次粒子の個数平均粒径の測定方法>
チタン酸化合物粒子の一次粒子の個数平均粒径は、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影されるトナー粒子の表面のシリカ微粒子及び第2族元素のチタン酸塩の微粒子画像から算出される。S-4800の画像撮影条件は以下のとおりである。
S-4800観察条件設定は、チタン酸化合物粒子の一次粒子の個数平均粒径の算出はS-4800の反射電子像観察により得られた画像を用いて行う。反射電子像は二次電子像と比べて粒子のチャージアップが少ないため、粒径を精度良く測定することができる。
トナー粒子の表面上の少なくとも300個のチタン酸化合物粒子について粒径を測定して、平均粒径を求める。ここで、チタン酸化合物粒子は凝集塊として存在するものもあるため、一次粒子と確認できるものの最大径を求め、得られた最大径を算術平均することによって、チタン酸化合物粒子の一次粒子の個数平均粒径を得る。
【0076】
<平均円形度の測定方法>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス(株)製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下のとおりである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2mL加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(「VS-150」((株)ヴェルヴォクリーア製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
【0077】
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス(株)製)を使用した。前記手順に従い調製した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3,000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
【0078】
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。標準ラテックス粒子としてはDuke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈したものを用いる。
なお、下記の実施例では、シスメックス(株)による校正作業が行われた、シスメックス(株)が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けたときと同じ測定及び解析条件で測定を行った。
【0079】
<樹脂の軟化点の測定方法>
樹脂の軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメーター「流動特性評価装置フローテスターCFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
【0080】
本発明においては、「流動特性評価装置フローテスターCFT-500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。なお、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax-Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとなるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である。
【0081】
測定試料は、約1.0gの樹脂を、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT-100H、エヌピーエーシステム(株)製)を用い、約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
CFT-500Dの測定条件は、以下のとおりである。
試験モード:昇温法
開始温度:40℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/分
ピストン断面積:1.000cm
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
【0082】
(トナー粒子の重量平均粒径(D4))
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、下記の測定装置と、下記の専用ソフトを用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定装置:100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)
専用ソフト:測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer3 Version3.51」(ベックマン・コールター(株)製)
【0083】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター(株)製)を用いることができる。なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
【0084】
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れ、この中に分散剤として前記コンタミノンNをイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。
【0085】
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの下記の超音波分散器の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
超音波分散器:Ultrasonic Dispension System Tetora150(日科機バイオス(株)製)
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
【0086】
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【実施例
【0087】
以下、本発明を実施例と比較例を用いて更に詳細に説明するが、本発明の態様はこれらに限定されない。なお、実施例及び比較例の部数及び%は特に断りが無い場合、すべて質量基準である。
【0088】
<チタン酸カルシウム粒子の製造例1>
硫酸法で得られた0.03μmのメタチタン酸を脱鉄漂白処理した後、4mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9.0とし、脱硫処理を行い、その後、6mol/Lの塩酸によりpH5.5まで中和し、ろ過水洗を行った。
洗浄済みケーキに水を加えTiOとして1.25mol/Lのスラリーとした後、6mol/Lの塩酸を加えてpH1.2とし解膠処理を行った。この解膠スラリーを5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH6.5まで中和し、ろ過水洗を行った。
【0089】
TiOとして0.726molの洗浄済みケーキに水を加えてスラリーとした後、2Lの反応容器に投入した。この解膠・中和メタチタン酸スラリーにCaO/TiOモル比で1.03になるようにカルシウム源の水酸化カルシウム粉末を投入した。そして、塩化第二鉄をTiOモル比で0.004、五塩化ニオブをTiOモル比で0.018混合になるように投入して混合した。
【0090】
その後、TiO濃度0.752mol/Lに調整した。10mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を添加してスラリーのpHを12.5に調整した後、窒素ガスを吹き込み20分間静置して反応容器内を窒素ガスで置換した。次に、この反応容器に窒素を流しながら、さらに撹拌混合しつつメタチタン酸と水酸化カルシウムの混合溶液を98℃に加温し、6.5時間撹拌保持した。
【0091】
なお、該反応物を透過型電子顕微鏡で観察すると、直方体状粒子の粒子であり、側面からみた長辺長の平均は0.32μm、短辺長の平均は0.21μm、軸比は1.5であった。反応終了後にスラリーをろ過、洗浄、乾燥した後、ハンマーミルを用いて粉砕したものの比表面積は10.2m/gであった。また、X線回折による同定ではチタン酸カルシウム単一相であった。
【0092】
<チタン酸化合物粒子2~23の製造例>
チタン酸化合物粒子1の製造例において、ニオブ原子および鉄原子の含有量、比表面積および長辺長と短辺長を変化させることで、チタン酸化合物粒子としてチタン酸化合物粒子2~23を得た。チタン酸化合物粒子のニオブ原子および鉄原子の含有量と比表面積および軸比を表1に示した。
【0093】
【表1】
【0094】
<非晶性ポリエステル樹脂の製造例>
・ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:73.3質量部(0.20モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸:22.4質量部(0.13モル;多価カルボン酸総モル数に対して82.0mol%)
・アジピン酸:4.3質量部(0.03モル;多価カルボン酸総モル数に対して18.0mol%)
・チタンテトラブトキシド(エステル化触媒):0.5質量部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次に反応槽内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応させ、結着樹脂A(非晶性ポリエステル樹脂)を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂の軟化点は90℃であった。
【0095】
<結晶性ポリエステル樹脂の合成例>
・ドデカンジオール:34.5質量部(0.29モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・セバシン酸:65.5質量部(0.28モル;多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次に反応槽内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
・2-エチルヘキサン酸錫(II):0.5質量部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度200℃に維持したまま、4時間反応させた後、反応槽内の圧力を序々に開放して常圧へ戻し、結晶性ポリエステル樹脂を得た。軟化点は82℃だった。
【0096】
(トナー1の製造例)
<トナー粒子1の製造例>
・非晶性ポリエステル樹脂 100部
・結晶性ポリエステル樹脂 6部
・フィッシャートロプシュワックス(融点:90℃) 5部
・C.I.ピグメントブルー 15:3 5部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)で予備混合した後、二軸混練押し出し機(PCM-30型、(株)池貝製)によって、160℃で溶融混練した。
【0097】
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで1mm以下に粗粉砕した後、機械式粉砕機(T-250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。
得られた微粉砕物を、ファカルティ(F-300、ホソカワミクロン(株)製)を用いて分級した。運転条件は、分級ローター回転数を11,000rpm、分散ローター回転数を7,200rpmとした。
こうしてトナー粒子1を得た。
【0098】
・トナー粒子1 100部
・シリカ粒子1 12.0部
・チタン酸化合物粒子1 5.0部
上記処方で示した原材料をヘンシェルミキサー(FM-10C型、日本コークス工業(株)製)を用いて、回転数67s-1(4000rpm)、回転時間2minで混合した後、目開き54μmの超音波振動篩を通過させ、重量平均粒径4.9μmのトナー粒子1を得た。
【0099】
<トナー2~33の製造例>
トナー1の製造例において、結着樹脂の種類、結晶性ポリエステル樹脂の添加の有無、チタン酸化合物粒子の種類とトナー中の質量割合を、表2に示すように変更した以外はトナー1の製造例と同様の操作を行い、トナー2~31を得た。外添剤のシリカ粒子の添加量はトナー1と同様にした。
<トナー34~35の製造例>
トナー1の製造例におけるファカルティ(F-300、ホソカワミクロン(株)製)の運転条件のみ変更し、重量平均粒径5.7μmのトナー34、重量平均粒径6.6μmのトナー35を得た。
また、トナー1~35におけるチタン酸化合物粒子の被覆率も表2に記す。
【0100】
【表2】
【0101】
<磁性コア粒子の製造例>
・工程1(秤量・混合工程):
Fe 62.5部
MnCO 29.5部
Mg(OH) 6.8部
SrCO 1.5部
上記材料を上記組成比となるようにフェライト原材料を秤量した。その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕・混合した。
【0102】
・工程2(仮焼成工程):
得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)で、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記の通りである。
(MnO)a(MgO)b(SrO)c(Fe)d
上記式において、a=0.252、b=0.117、c=0.007、d=0.398
【0103】
・工程3(粉砕工程):
得られた仮焼フェライトをクラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100部に対し、水を30部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。得られたスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
【0104】
・工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、仮焼フェライト100部に対して分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム1.0部、バインダーとしてポリビニルアルコール2.0部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機(株))で、球状粒子に造粒した。得られた粒子を粒度調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
【0105】
・工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
【0106】
・工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)35.0μmの磁性コア粒子を得た。
【0107】
<被覆樹脂の調製>
シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量%
メチルメタクリレートモノマー 0.2質量%
メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量%
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
トルエン 31.3質量%
メチルエチルケトン 31.3質量%
アゾビスイソブチロニトリル 2.0質量%
【0108】
上記材料のうち、シクロヘキシルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、メチルエチルケトンを下記装置にいれる。すなわち還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに入れる。そして窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした。その後、80℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合させた。得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、減圧乾燥して被覆樹脂1を得た。
次いで、30部の被覆樹脂1を、トルエン40部及びメチルエチルケトン30部に溶解させて、重合体溶液(固形分30質量%)を得た。
【0109】
<被覆樹脂溶液の調製>
重合体溶液(樹脂固形分濃度30%) 33.3質量%
トルエン 66.4質量%
カーボンブラックRegal330(キャボット製) 0.3質量%
(一次粒子の粒径25nm、窒素吸着比表面積94m/g、DBP吸油量75mL/100g)
を、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで1時間分散を行った。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過をおこない、被覆樹脂溶液を得た。
【0110】
<磁性キャリアの製造例>
(樹脂被覆工程):
常温で維持されている減圧脱気型ニーダーに、磁性コア粒子及び被覆樹脂溶液を投入した(被覆樹脂溶液の投入量は、100部の磁性コア粒子に対して樹脂成分として2.5部になる量)。投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80質量%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後冷却した。得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)38.2μmの磁性キャリアを得た。
【0111】
<現像剤1の製造例>
93.0部の磁性キャリアと7.0部のトナー1とをV型混合機(V-20、(株)セイシン企業製)を用いて混合し、現像剤1を得た。
【0112】
<現像剤2~35の製造例>
現像剤1の製造例において、混合したトナーを表3に示すように変更する以外は同様の操作を行い、現像剤2~35を得た。
【0113】
【表3】
【0114】
<実施例1>
キヤノン(株)製フルカラー複写機imagePRESS C850又はその改造機を用い、以下の評価を実施した。
該画像形成装置は、像坦持体として静電潜像を形成させる感光体を有し、感光体の静電潜像を二成分現像剤によりトナー像として現像する現像工程を有する。
さらに、現像されたトナー像を中間転写体に転写し、その後に中間転写体に転写されたトナー像を紙に転写する転写工程を有し、紙上のトナー像を熱により定着する定着工程を有する。
この画像形成装置のシアンステーションの現像器に、現像剤1を投入し、下記評価を行った。
また、現像剤2~35も現像剤1と同様に評価した。
【0115】
<スリーブゴーストの評価>
以下のようにスリーブゴーストの評価を行った。
上記画像形成装置の改造機を用いた。改造点は、現像器内部で過剰になった磁性キャリアを現像器から排出する機構を取り外したことである。
FFH画像(ベタ黒画像)におけるトナーの紙上への載り量が0.45mg/cmとなるように、調整した。FFHとは、256階調を16進数で表示した値であり、00Hが256階調の1階調目(白地部)であり、FFHが256階調の256階調目(ベタ黒部)である。
【0116】
該評価では、画像比率1%で、1万枚の耐久画像出力試験を行った。試験環境は、常温低湿(NL)環境下(温度23℃、相対湿度5%)とした。
1万枚の連続通紙中は、1枚目と同じ現像条件、転写条件(キャリブレーション無し)で通紙を行うこととした。評価紙は、コピー普通紙GF-C081(A4、坪量81.4g/m、キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)を用いた。
【0117】
ついで、1万枚の連続通紙(画像出力)後に、
図2に示すようなベタ黒(トナー量が0.45mg/cm)の縦帯と、縦帯以外はベタ白(白地のまま)であるテストチャートを999枚連続で通紙(出力)した。
前記テストチャートを999枚連続で通紙した後に、1000枚目として同じジョブ内で、図3に示す全面ハーフトーン画像(1200dpi、1ラインを2ドット2スペースで形成するパターン)を出力した。
図3に示す領域(a)は、図2に示すベタ黒の縦帯に対応する領域であり、領域(b)は、図2に示すベタ白の領域に対応する領域である。
図3に示す領域(a)の画像濃度と領域(b)の画像濃度とを測定し、その濃淡差によりスリーブゴーストを評価した。なお、領域(a)と領域(b)は現像スリーブの1周目の範囲である。つまり、図3に示す領域(a)と領域(b)の横幅は現像スリーブの周長6.3mmに略等しい。
【0118】
画像濃度は、X-Riteカラー反射濃度計(X-rite社製、X-rite 500Series)を用いて測定した。
測定は、常温低湿(NL)環境下(温度23℃、相対湿度5%)で行った。濃度差を、以下の評価基準によってランク付けした。評価結果を表4に示す。

A:領域(a)と領域(b)の濃度差が0.02未満
B:領域(a)と領域(b)の濃度差が0.02以上0.04未満
C:領域(a)と領域(b)の濃度差が0.04以上0.06未満
D:領域(a)と領域(b)の濃度差が0.06以上0.10未満
【0119】
<外添剤連れ周りゴースト評価>
外添剤連れ周りゴーストをスリーブゴーストと切り分けるために、感光体への外添剤付着として以下のように評価した。
各例で得られた現像剤を、キヤノン(株)製フルカラー複写機imagePRESS C850又はその改造機から定着装置を除去して、現像工程までは通常と同じように動作するように改造したものに用いた。そして、感光体上の黒帯部のトナー量が0.5mg/cmになるように調整し、温度23℃/相対湿度5%という環境下において静電潜像を感光体の表面に形成した。
図4に示す外添剤連れ周りゴースト評価用パターン(3本の細い帯と1つの太い帯で構成される画像)をハーフトーン画像(1200dpi、1ラインを2ドット4スペースで形成するパターン)で、対応する静電潜像を感光体の表面に形成した。
次に現像工程において、現像スリーブより感光体にトナーが飛翔し黒帯部のトナーが感光体上に載った時点で感光体の回転を止めた。ゴースト評価用パターンは、図4の左側の現像開始側から右側の現像終了側の方向に現像した。
【0120】
そして、感光体を外して黒帯部のトナーを除去し、トナーから外れて感光体上の「黒帯部に付着した外添剤の量」と「ベタ白部に付着した外添剤の量」とを測定し、下記の式を用いて黒帯部とベタ白部の差分を求めて、下記の評価基準に従ってランク付けした。
S:現像スリーブ上のトナーの外添剤量
Sb:黒帯部に付着した外添剤量
Sw:ベタ白部に付着した外添剤量
黒帯部とベタ白部の差分:((Sb/S)-(Sw/S))×100
【0121】
黒帯部とベタ白部に付着した外添剤量は、感光体から観察用サンプルを切り出し、下記の電子顕微鏡を用いて感光体表面の外添剤を観察し、画像処理によって外添剤と外添剤以外とを2値化して単位面積当たりの付着した外添剤量とした。
電子顕微鏡:日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)
評価結果を表4に示す。
評価基準は以下の通りである。
【0122】
A:黒帯部とベタ白部の差分が0.03%未満
B:黒帯部とベタ白部の差分が0.03%以上0.07%未満
C:黒帯部とベタ白部の差分が0.07%以上0.15%未満
D:黒帯部とベタ白部の差分が0.15%以上
【0123】
<カブリの測定>
以下のようにカブリの評価を行った。
高温高湿(HH)環境下(温度30℃、相対湿度80%)において、初期にトナーの紙上への載り量が0.35mg/cmとなるように現像条件を適宜調整し、印字率1%で10,000枚印刷した。印刷前の評価紙と初期の画像部の白地部と10,000枚目の白地部の評価紙の平均反射率(下記のDr(%)及びDs)をリフレクトメータ((有)東京電色製の「REFLECTOMETER MODEL TC-6DS」)によって測定した。
評価紙は、コピー普通紙GF-C081(A4、坪量81.4g/m、キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)を用いた。
Ds(%):(印刷前の評価紙の反射率)―(初期(1枚目)の白地部の反射率)
Dr(%):(印刷前の評価紙の反射率)―(10,000枚目の白地部の反射率)
得られたDr及びDsより、下記式を用いてカブリ(%)を算出した。得られたカブリの値から、下記の評価基準に従ってランク付けした。評価結果を表4に示す。
カブリ(%)=Dr(%)-Ds(%)。
評価基準は以下の通りである。
【0124】
A:0.5%未満
B:0.5%以上、1.0%未満
C:1.0%以上、2.0%未満
D:2.0%以上
【0125】
<低温定着性(定着可能下限温度)>
キヤノン(株)製フルカラー複写機imagePRESS C850改造機のシアンステーションに二成分系現像剤を入れた現像器を搭載し、定着器を取り外した状態で画像形成できるように改造を行った。そして評価紙上に定着されていないトナー像(以下、未定着画像)を形成した。評価紙としては、カラー複写機・プリンター用普通紙 GF-C157(A4、157g/cm)(キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)を用いた。
【0126】
実際には、FFH画像(以下、ベタ黒部)のトナーの紙上への載り量が1.2mg/cmとなるように現像条件を適宜調整し、A4縦の評価紙の先端から3cm離れた位置であって、評価紙の中心線上の位置に2cm×10cmの未定着画像を形成した。評価紙の中心線とは、A4の評価紙の2つの短辺のうちの、一方の短辺の中点と他方の短辺の中点を結んだ線を意味する。未定着画像は低湿低温環境下(温度15℃/相対湿度10%)において24時間調湿した。
続いて、キヤノン(株)製フルカラー複写機imagePRESS C800から定着器を取り出し、プロセススピード、上下の定着部材温度を独立に制御できるよう定着試験用治具を準備した。定着性評価は、低温低湿環境下(温度15℃/相対湿度10%)で実施し、プロセススピードを400mm/secとなるように調整した前記定着試験用治具を用いた。
【0127】
実際の評価では、前記定着試験用治具の上ベルトの設定温度を100℃乃至200℃の範囲で5℃おきに調整しながら未定着画像を通紙し、その間、下ベルト温度は100℃に固定した状態で評価を行った。
定着器を通過させた定着画像を4.9kPaの荷重をかけたレンズクリーニングワイパー(ダスパー 小津産業(株)製)で5往復摺擦し、下記の計算式により算出される摺擦前後の画像濃度の濃度低下率が10%以下になる点を定着温度とした。
濃度低下率=(摺擦前の画像濃度-摺擦後の画像濃度)/摺擦前の画像濃度×100

濃度低下率が10%を超えているときは定着できていないという判定基準のもと、上ベルトの設定温度を5℃ずつ上げて濃度低下率の算出を繰り返し、画像濃度低下率が初めて10%以下になったときの上ベルトの設定温度を低温定着温度とした。そして、その低温定着温度を下記の評価基準に従って評価しランク付けした。評価結果を表4に示す。
【0128】
A:130℃未満
B:130℃以上150℃未満
C:150℃以上160℃未満
D:160℃以上
現像剤1~35の評価結果を表4に示す。
【0129】
【表4】
【0130】
以上の結果から、トナーにニオブ原子またはニオブ原子及び鉄原子を含有するチタン酸化合物粒子を外添することで、長時間使用後のスリーブゴースト、連れ周りゴースト、カブリの発生を抑制し、かつ低温定着性を維持することができる。したがって、長時間使用における画質安定性を得ることができる。
【符号の説明】
【0131】
1.原料定量供給手段
2.圧縮気体流量調整手段
3.導入管
4.突起状部材
5.供給管
6.処理室
7.熱風供給手段
8.冷風供給手段
9.規制手段
10.回収手段
11.熱風供給手段出口
12.分配部材
13.旋回部材
14.粉体粒子供給口

図1
図2
図3
図4