(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】土留め構造の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/06 20060101AFI20240909BHJP
E02D 5/18 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
E02D5/06
E02D5/18 102
(21)【出願番号】P 2020184477
(22)【出願日】2020-11-04
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】井上 直史
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 洋介
(72)【発明者】
【氏名】重松 慶樹
(72)【発明者】
【氏名】坂梨 利男
(72)【発明者】
【氏名】平 陽兵
(72)【発明者】
【氏名】永谷 英基
(72)【発明者】
【氏名】大野 進太郎
(72)【発明者】
【氏名】那須 郁香
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-127822(JP,A)
【文献】特開昭60-223532(JP,A)
【文献】特開2000-045247(JP,A)
【文献】特開2012-026216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/06
E02D 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に開削側と地山側とを仕切るように打ち込まれた第1の壁体と、
前記第1の壁体より地山側の地盤に、前記第1の壁体に対し間隔をあけて打ち込まれた第2の壁体と、
前記第1の壁体における前記第2の壁体側の面である第1面と前記第2の壁体における前記第1の壁体側の面である第2面との少なくとも一方から、前記第1の壁体と前記第2の壁体との間の地盤である内部土に向けて突出する、突出部材と、
を備える、土留め構造の構築方法であって、
前記第1の壁体及び前記第2の壁体は、それぞれ、鋼矢板の列により形成されており、
前記構築方法は、
前記鋼矢板の地盤への打設に先立って、前記鋼矢板に鞘管を取り付けることと、
前記鋼矢板の地盤への打設に伴って、前記鞘管を前記内部土内に挿入することと、
前記鞘管を用いて、前記内部土内に薬液を注入することと、
を含む、土留め構造の構築方法。
【請求項2】
前記突出部材が鉄筋により形成されており、
前記突出部材が、前記第1面と前記第2面との少なくとも一方に溶接固定されている、請求項1に記載の土留め構造の構築方法。
【請求項3】
複数の前記突出部材が、前記第1面と前記第2面との少なくとも一方に分散配置されている、請求項2に記載の土留め構造の構築方法。
【請求項4】
略水平に延びる複数の前記突出部材により、前記第1面と前記第2面との少なくとも一方に洗濯板状の凹凸が形成されている、請求項2に記載の土留め構造の構築方法。
【請求項5】
地盤に開削側と地山側とを仕切るように打ち込まれた第1の壁体と、
前記第1の壁体より地山側の地盤に、前記第1の壁体に対し間隔をあけて打ち込まれた第2の壁体と、
前記第1の壁体と前記第2の壁体との間の地盤である内部土と、
を備える土留め構造の構築方法であって、
前記第1の壁体における前記第2の壁体側の面である第1面と前記第2の壁体における前記第1の壁体側の面である第2面との少なくとも一方が粗面を含み、
前記第1の壁体及び前記第2の壁体は、それぞれ、鋼矢板の列により形成されており、
前記構築方法は、
前記鋼矢板の地盤への打設に先立って、前記鋼矢板に鞘管を取り付けることと、
前記鋼矢板の地盤への打設に伴って、前記鞘管を前記内部土内に挿入することと、
前記鞘管を用いて、前記内部土内に薬液を注入することと、
を含
み、
前記薬液を注入することは、前記内部土のすべり線発生部分に前記薬液を注入することを含む、土留め構造の構築方法。
【請求項6】
前記粗面は、前記第1面と前記第2面との少なくとも一方に粉粒体を接着させることにより形成される、請求項5に記載の土留め構造の構築方法。
【請求項7】
前記薬液を注入することは、前記内部土のすべり線発生部分に前記薬液を注入することを含む、請求項1~
請求項4のいずれか1つに記載の土留め構造の構築方法。
【請求項8】
前記第1の壁体の頭部と前記第2の壁体の頭部とを頭部連結部により連結することを更に含む、請求項1~請求項7のいずれか1つに記載の土留め構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の開削工事に際し、開削側(開削予定領域)と地山側(非開削領域)とを仕切って、施工場所に対する土留め(及び止水)を行う、土留め構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の土留め構造は、地盤に開削側と地山側とを仕切るように打ち込まれた第1の壁体と、第1の壁体より地山側の地盤に、第1の壁体に対し間隔をあけて打ち込まれた第2の壁体と、第1の壁体の頭部と第2の壁体の頭部とを連結する頭部連結部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の土留め構造では、第1の壁体と第2の壁体とでその間の地盤を拘束することで、土留め構造の剛性・強度の向上を図っている。しかしながら、前述の土留め構造の剛性・強度の更なる向上が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような実状に鑑み、簡素な構成で、土留め構造の剛性・強度の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本発明の第1態様における土留め構造は、地盤に開削側と地山側とを仕切るように打ち込まれた第1の壁体と、第1の壁体より地山側の地盤に、第1の壁体に対し間隔をあけて打ち込まれた第2の壁体と、第1の壁体における第2の壁体側の面である第1面と第2の壁体における第1の壁体側の面である第2面との少なくとも一方から、第1の壁体と第2の壁体との間の地盤である内部土に向けて突出する、突出部材と、を備える。第1の壁体及び第2の壁体は、それぞれ、鋼矢板の列により形成されている。本発明の第1態様における土留め構造の構築方法は、鋼矢板の地盤への打設に先立って、鋼矢板に鞘管を取り付けることと、鋼矢板の地盤への打設に伴って、鞘管を内部土内に挿入することと、鞘管を用いて、内部土内に薬液を注入することと、を含む。
【0007】
本発明の第2態様における土留め構造は、地盤に開削側と地山側とを仕切るように打ち込まれた第1の壁体と、第1の壁体より地山側の地盤に、第1の壁体に対し間隔をあけて打ち込まれた第2の壁体と、第1の壁体と第2の壁体との間の地盤である内部土と、を備える。第1の壁体における第2の壁体側の面である第1面と第2の壁体における第1の壁体側の面である第2面との少なくとも一方が粗面を含む。第1の壁体及び第2の壁体は、それぞれ、鋼矢板の列により形成されている。本発明の第2態様における土留め構造の構築方法は、鋼矢板の地盤への打設に先立って、鋼矢板に鞘管を取り付けることと、鋼矢板の地盤への打設に伴って、鞘管を内部土内に挿入することと、鞘管を用いて、内部土内に薬液を注入することと、を含む。薬液を注入することは、内部土のすべり線発生部分に薬液を注入することを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1態様によれば、突出部材が、第1の壁体の第1面と第2の壁体の第2面との少なくとも一方に設けられている。ゆえに、第1面及び第2面によって挟まれる地盤と、それに接触する第1面及び第2面との間の摩擦抵抗が突出部材の設置箇所にて増大するので、その分、前述の拘束効果を高めることができる。従って、簡素な構成で、土留め構造の剛性・強度の向上を図ることができる。
【0009】
本発明の第2態様によれば、第1の壁体の第1面と第2の壁体の第2面との少なくとも一方が粗面を含む。ゆえに、第1面及び第2面によって挟まれる地盤と、それに接触する第1面及び第2面との間の摩擦抵抗が当該粗面にて増大するので、その分、前述の拘束効果を高めることができる。従って、簡素な構成で、土留め構造の剛性・強度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態における二重土留め壁を用いた開削工事の施工例を示す図である。
【
図4】本発明の第2実施形態における二重土留め壁を用いた開削工事の施工例を示す図である。
【
図5】本発明の第3実施形態における二重土留め壁の構築方法を示す図である。
【
図6】本発明の第4実施形態における二重土留め壁の構築方法を示す図である。
【
図7】前記第4実施形態における鋼矢板に取り付けられた鞘管の配置の一例を示す平面図である。
【
図8】本発明の第5実施形態における二重土留め壁の構築方法を示す図である。
【
図9】本発明の第6実施形態における二重土留め壁の構築方法の第1例を示す図である。
【
図10】前記第6実施形態における二重土留め壁の構築方法の第2例を示す図である。
【
図11】前記第6実施形態における二重土留め壁の構築方法の第3例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態における二重土留め壁を用いた開削工事の施工例を示す図である。
図2は
図1のA-A断面図である。
【0013】
本実施形態の土留め構造体10は、本発明の「土留め構造」に対応するものである。本実施形態の土留め構造体10は、第1の壁体11と、第2の壁体12との二重構造(二重土留め壁)である。本実施形態では、第1の壁体11及び第2の壁体12を構成する壁部材として、鋼矢板(シートパイル)20を使用する。
【0014】
鋼矢板20は、
図2に示すように、断面が台形形状に屈曲し、表裏の一方の面が凸面21、他方の面が凹面22をなし、両端に継手23を有している。従って、鋼矢板20を表と裏を逆にして互い違いに列設し、隣り合う鋼矢板20を継手23同士でつなげることで、鋼矢板20の列により土留め壁(壁体)を構築できる。
【0015】
第1の壁体11は、地盤(開削前の地盤G)に、開削側と地山側とを仕切るように打設される(打ち込まれる)。第2の壁体12は、第1の壁体11より地山側の地盤に、第1の壁体11に対し例えば1m程度の間隔をあけて平行に打設される(打ち込まれる)。尚、第1の壁体11の打設工程と第2の壁体12の打設工程とは、いずれが先でもよいし、同時に並行して行うようにしてもよい。ここにおいて、第1の壁体11の打設工程及び第2の壁体12の打設工程に先立って、鋼矢板20には突出部材30が設けられ得る。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の土留め構造体10は、更に、第1の壁体11の頭部(上端部)と第2の壁体12の頭部(上端部)とを連結固定する頭部連結部13を含む。
【0017】
本実施形態では、第1の壁体11及び第2の壁体12が地盤に打設された後に、第1の壁体11の頭部と第2の壁体12の頭部とを頭部連結部13により連結するが、第1の壁体11の頭部と第2の壁体12の頭部とを頭部連結部13により連結する時期は第1の壁体11及び第2の壁体12の地盤への打設後に限らない。例えば、第1の壁体11及び第2の壁体12が地盤に打設されるに先立って、地上で、第1の壁体11の頭部と第2の壁体12の頭部とを頭部連結部13により連結して一体化してもよい。
【0018】
ここにおいて、第1の壁体11及び第2の壁体12と頭部連結部13とは、剛接合して、ラーメン構造(門型ラーメン構造)をなすと共に、第1の壁体11と第2の壁体12との間の地盤を拘束する。この剛接合のための頭部連結部13として採用可能な様々な態様については特許文献1に開示されており、周知であるので、その説明を省略する。ここにおいて、第1の壁体11と第2の壁体12との間の地盤を「内部土(中詰め土)GI」と称して以下説明する。
【0019】
内部土GIは、第1の壁体11における第2の壁体12側の面である第1面15と、第2の壁体12における第1の壁体11側の面である第2面16とによって挟まれている。
【0020】
尚、二重土留め壁の深さ方向(鉛直方向)の長さは、設計上の観点、施工性の観点、経済性の観点等から現場の条件に応じて設定される。通常、内側に配置される第1の壁体11の鉛直方向の長さは、設計上の土留め壁の根入れの安定で長さが決まり、外側に配置される第2の壁体12の鉛直方向の長さは、壁体としての剪断抵抗力を確保することが必要な範囲で決まる。この点、
図1では第1の壁体11の鉛直方向の長さと第2の壁体12の鉛直方向の長さとが同じであるが、この他、第1の壁体11の鉛直方向の長さと第2の壁体12の鉛直方向の長さとが異なっていてもよい。
【0021】
図2に示す二重土留め壁の一例では、複数枚の鋼矢板20からなる第1の壁体11と複数枚の鋼矢板20からなる第2の壁体12とは、凸形状が反対方向となる逆位相に配置している。この点、当該凸形状が同じ方向となる同位相に配置してもよい。つまり、平面視での第1の壁体11と第2の壁体12との凸形状の位相関係は
図2に図示のものに限らない。
【0022】
図2に示すように、本実施形態では、鋼矢板20はU形鋼矢板である。鋼矢板20は、鉛直方向に延在するウェブ24と、ウェブ24の両端に連続して形成された一対のフランジ25,25と、これら一対のフランジ25,25の先端に形成された継手23,23とを有する。前述の凸面21は、ウェブ24の一方の面24aとフランジ25の一方の面25aとによって構成されている。前述の凹面22は、ウェブ24の他方の面24bとフランジ25の他方の面25bとによって構成されている。
【0023】
本実施形態では、第1の壁体11の第1面15と第2の壁体12の第2面16との双方に複数の突出部材30が分散配置されている。突出部材30は例えば金属性又は樹脂製の棒状体である。突出部材30は例えば鉄筋により形成される。第1の壁体11の第1面15に設けられた突出部材30は、第1の壁体11の第1面15から内部土GIに向けて突出している。第2の壁体12の第2面16に設けられた突出部材30は、第2の壁体12の第2面16から内部土GIに向けて突出している。
【0024】
尚、本実施形態では、第1の壁体11及び第2の壁体12を構成する鋼矢板20のウェブ24とフランジ25との双方に突出部材30を設けているが、この他、ウェブ24とフランジ25とのいずれか一方に突出部材30を設けてもよい。
【0025】
第1の壁体11及び第2の壁体12において突出部材30が設置される領域Z1の大きさ、形状、及び位置や、この領域Z1内に設置される突出部材30の個数及び相互間の間隔などについては、内部土GIと、それに接触する第1面15及び第2面16との間の摩擦抵抗をどの程度増大させるかなどを考慮して適宜設定され得る。
【0026】
本実施形態では、複数の突出部材30が、第1の壁体11の第1面15と第2の壁体12の第2面16とに、互いに面対称になるように設けられているが、この他、第1の壁体11の第1面15における突出部材30の配置分布と、第2の壁体12の第2面16における突出部材30の配置分布とを互いに異ならせてもよい。
【0027】
本実施形態では、第1の壁体11の第1面15と第2の壁体12の第2面16との双方に複数の突出部材30が設けられているが、この他、第1の壁体11の第1面15と第2の壁体12の第2面16とのいずれか一方に複数の突出部材30が設けられてもよい。
【0028】
本実施形態によれば、土留め構造体10(土留め構造)は、地盤に開削側と地山側とを仕切るように打ち込まれた第1の壁体11と、第1の壁体11より地山側の地盤に、第1の壁体11に対し間隔をあけて打ち込まれた第2の壁体12と、第1の壁体11における第2の壁体12側の面である第1面15と第2の壁体12における第1の壁体11側の面である第2面16との少なくとも一方から第1の壁体11と第2の壁体12との間の地盤(内部土GI)に向けて突出する突出部材30と、を備える。ゆえに、内部土GIと、それに接触する第1面15及び第2面16との間の摩擦抵抗を突出部材30の設置箇所にて増大させることができる。
【0029】
また本実施形態によれば、複数の突出部材30が、第1面15と第2面16との少なくとも一方に分散配置されている。ゆえに、簡素な構成で、土留め構造体10(土留め構造)の剛性・強度の向上を図ることができる。
【0030】
また本実施形態によれば、突出部材30は棒状体である。この点、仮に突出部材30が鉄筋により形成される場合には、鋼矢板20に溶接することで簡易に設置可能である。
【0031】
また本実施形態によれば、土留め構造体10(土留め構造)は、第1の壁体11の頭部と第2の壁体12の頭部とを連結する頭部連結部13を備える。ゆえに、第1の壁体11と第2の壁体12とが頭部連結部13によって互いに拘束されることで、内部土GIを拘束することができる。
【0032】
また本実施形態によれば、第1の壁体11及び第2の壁体12は、それぞれ、鋼矢板20の列により形成される。このような鋼矢板20からなる二重土留め壁において、その接地面に簡素な構成の突出部材30を適用することにより、当該接地面と地盤との摩擦抵抗を簡易に増大させることができる。
【0033】
本実施形態では、棒状体である突出部材30の各々が、第1の壁体11の第1面15及び/又は第2の壁体12の第2面16に対して交差する方向(例えば直交する方向)に延びているが、これに代えて、第1の壁体11の第1面15及び/又は第2の壁体12の第2面16に沿って例えば略水平に延びていてもよい。つまり、第1の壁体11の第1面15及び/又は第2の壁体12の第2面16を、例えば略水平に延びる複数の突出部材30を用いて、洗濯板状の凹凸を持たせるようにしてもよい。この態様は、
図3に、本実施形態の変形例として示されている。
【0034】
本実施形態では、第1の壁体11及び第2の壁体12を構成する鋼矢板の一例としてU形鋼矢板を挙げて説明したが、この他、ハット形鋼矢板などであってもよいことは言うまでもない。
【0035】
本実施形態では、第1の壁体11及び第2の壁体12を鋼矢板20の列により形成しているが、第1の壁体11及び第2の壁体12の構成はこれに限らない。
【0036】
本実施形態では、突出部材30を二重土留め壁に適用しているが、この他、三重土留め壁(例えば特許文献1参照)に適用してもよい。
【0037】
次に、本発明の第2実施形態について、
図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態における二重土留め壁を用いた開削工事の施工例を示す図である。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0038】
本実施形態では、第1の壁体11の第1面15と第2の壁体12の第2面16との双方が粗面RSを含んでいる。換言すれば、第1の壁体11の第1面15の少なくとも一部が粗面RSであり、また、第2の壁体12の第2面16の少なくとも一部が粗面RSである。第1の壁体11及び第2の壁体12を構成する鋼矢板20の凸面21及び凹面22のうち粗面RSである部分は、それ以外の部分よりも表面粗さが大きい。粗面RSは、鋼矢板20の凸面21及び/又は凹面22に例えば粉粒体(例えば砂)を接着剤で接着させることにより形成され得る。粗面RSは内部土GIに接触する。
【0039】
ここにおいて、前述の第1の壁体11の打設工程及び第2の壁体12の打設工程に先立って、鋼矢板20に前述の粗面RSが形成され得る。
【0040】
尚、本実施形態では、鋼矢板20のウェブ24とフランジ25との双方に粗面RSを形成しているが、この他、ウェブ24とフランジ25とのいずれか一方に粗面RSを形成してもよい。
【0041】
第1の壁体11の第1面15及び第2の壁体12の第2面16において粗面RSが形成される領域Z2の大きさ、形状、及び位置などについては、内部土GIと、それに接触する第1面15及び第2面16との間の摩擦抵抗をどの程度増大させるかなどを考慮して適宜設定され得る。
【0042】
本実施形態では、第1の壁体11の第1面15における粗面RSと第2の壁体12の第2面16における粗面RSとが、互いに面対称になるように形成されているが、この他、第1の壁体11の第1面15における粗面RSの形成領域と、第2の壁体12の第2面16における粗面RSの形成領域とを互いに異ならせてもよい。
【0043】
本実施形態では、第1の壁体11の第1面15と第2の壁体12の第2面16との双方が粗面RSを含んでいるが、この他、第1の壁体11の第1面15と第2の壁体12の第2面16とのいずれか一方が粗面RSを含んでもよい。
【0044】
特に本実施形態によれば、土留め構造体10(土留め構造)は、地盤に開削側と地山側とを仕切るように打ち込まれた第1の壁体11と、第1の壁体11より地山側の地盤に、第1の壁体11に対し間隔をあけて打ち込まれた第2の壁体12と、を備える。第1の壁体11における第2の壁体12側の面である第1面15と第2の壁体12における第1の壁体11側の面である第2面16との少なくとも一方が粗面RSを含む。ゆえに、内部土GIと、それに接触する第1面15及び第2面16との間の摩擦抵抗を粗面RSにて増大させることができる。
【0045】
また本実施形態によれば、粗面RSは、第1面15と第2面16との少なくとも一方に粉粒体(例えば砂)を接着させることにより形成される。これにより、粗面RSを簡易に形成することができる。
【0046】
尚、本実施形態において、第1面15及び第2面16の一方に粗面RSを形成し、他方に前述の突出部材30を設けてもよい。又は、第1面15及び第2面16のうち粗面RSが形成されている領域内に前述の突出部材30を設けてもよい。すなわち、本実施形態の粗面RSと前述の突出部材30とを任意に組み合わせた態様であってもよい。
【0047】
本実施形態では、粗面RSを二重土留め壁に適用しているが、この他、三重土留め壁(例えば特許文献1参照)に適用してもよい。
【0048】
次に、本発明の第3実施形態について、
図5を用いて説明する。
図5は、本実施形態における二重土留め壁の構築方法を示す図である。ここで、
図5では、頭部連結部13、突出部材30、及び粗面RSの図示を省略している。
前述の第1及び第2実施形態と異なる点について説明する。
【0049】
図5に示す吸引システム40は、前述の第1及び第2実施形態における土留め構造体10の構築に用いられ得るものである。吸引システム40は、内部土GIに負圧を作用させるためのものであり、吸引ポンプ41と、吸引ポンプ41の吐出側に接続された排出管42とを含む。吸引ポンプ41は内部土GI内に配置される。排出管42は内部土GI内の吸引ポンプ41から地上まで延びている。
【0050】
本実施形態では、内部土GIに負圧を作用させることで、開削側(掘削側)の大気圧で土留め構造体10(特に第1の壁体11)を押さえる。また、バイブロハンマなどでゆすりながら、内部土GIの水を抜いて、内部土GIを締め固める。
【0051】
次に、本発明の第4実施形態について、
図6を用いて説明する。
図6は、本実施形態における二重土留め壁の構築方法を示す図である。ここで、
図6では、頭部連結部13、突出部材30、及び粗面RSの図示を省略している。
前述の第1及び第2実施形態と異なる点について説明する。
【0052】
図6に示す鞘管45は、前述の第1及び第2実施形態における鋼矢板20に取り付けられるものである。すなわち、本実施形態では、鞘管45付き鋼矢板20を用いる。鞘管45は、例えば、鋼矢板20の地盤への打設に先立って鋼矢板20に取り付けられ、鋼矢板20の地盤への打設に伴って地盤内(特に内部土GI内)に挿入される。
【0053】
本実施形態では、例えばウォータージェット併用継ぎ鋼矢板圧入工法(特開平7-268871号公報参照)を用いて鋼矢板20を地盤に打設した後、内部土GIの水抜き及び密度増加のために前述の鞘管45を用いる。このため、鞘管45の上端部には、地上に配置された吸引ポンプ46を含む吸引システム47の配管が接続されている。
【0054】
ここで、
図7は、鋼矢板20に取り付けられた鞘管45の配置の一例を示す平面図である。しかしながら、鞘管45の配置は
図7に図示のものに限らない。
【0055】
次に、本発明の第5実施形態について、
図8を用いて説明する。
図8は、本実施形態における二重土留め壁の構築方法を示す図である。ここで、
図8では、頭部連結部13、突出部材30、及び粗面RSの図示を省略している。
前述の第4実施形態と異なる点について説明する。
【0056】
本実施形態では、内部土GIの強度寄与範囲49(すべり線発生部分)に薬液を注入するために前述の鞘管45を用いる。ここで、
図8に示す強度寄与範囲49が、薬液注入対象範囲となり得る。
【0057】
次に、本発明の第6実施形態について、
図9~
図11を用いて説明する。
図9~
図11は、本実施形態における二重土留め壁の構築方法の第1例~第3例を示す図である。ここで、
図9~
図11では、突出部材30及び粗面RSの図示を省略している。
前述の第1及び第2実施形態と異なる点について説明する。
【0058】
本実施形態では、
図9~
図11に示す第1例~第3例の構成を用いて、土留め構造体10全体の高剛性化を図る。
図9に示す本実施形態の第1例では、頭部連結部13を構成し得るコンクリート頂版51を地面上に打設することで、頭部をコンクリート(コンクリート頂版51)で蓋をし、密封することで、せん断力が作用した際の内部土GIのダイレイタンシーに伴う体積膨張を拘束し、土留め構造体10全体の剛性を上げることができる。
図10に示す本実施形態の第2例では、頭部連結部13を構成し得る頭部構造体52を下方に押し込むことで、内部土GIの密度を増加させている。ここで、頭部構造体52は例えばプレキャストコンクリート製である。
図11に示す本実施形態の第3例では、内部土GIにケーシング55を打ち込むことで、内部土GIの密度を増加させている。尚、ケーシング55の打ち込み時に振動を加えるようにしてもよい。
【0059】
以上の説明から明らかなように、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
尚、出願当初の請求項は以下の通りであった。
[請求項1]
地盤に開削側と地山側とを仕切るように打ち込まれた第1の壁体と、
前記第1の壁体より地山側の地盤に、前記第1の壁体に対し間隔をあけて打ち込まれた第2の壁体と、
前記第1の壁体における前記第2の壁体側の面である第1面と前記第2の壁体における前記第1の壁体側の面である第2面との少なくとも一方から前記第1の壁体と前記第2の壁体との間の地盤に向けて突出する突出部材と、
を備える、土留め構造。
[請求項2]
複数の前記突出部材が、前記第1面と前記第2面との少なくとも一方に分散配置されている、請求項1に記載の土留め構造。
[請求項3]
前記突出部材は棒状体である、請求項1又は請求項2に記載の土留め構造。
[請求項4]
地盤に開削側と地山側とを仕切るように打ち込まれた第1の壁体と、
前記第1の壁体より地山側の地盤に、前記第1の壁体に対し間隔をあけて打ち込まれた第2の壁体と、
を備える土留め構造であって、
前記第1の壁体における前記第2の壁体側の面である第1面と前記第2の壁体における前記第1の壁体側の面である第2面との少なくとも一方が粗面を含む、土留め構造。
[請求項5]
前記粗面は、前記第1面と前記第2面との少なくとも一方に粉粒体を接着させることにより形成される、請求項4に記載の土留め構造。
[請求項6]
前記第1の壁体の頭部と前記第2の壁体の頭部とを連結する頭部連結部を更に備える、請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の土留め構造。
[請求項7]
前記第1の壁体及び前記第2の壁体は、それぞれ、鋼矢板の列により形成される、請求項1~請求項6のいずれか1つに記載の土留め構造。
【符号の説明】
【0060】
10…土留め構造体、11…第1の壁体、12…第2の壁体、13…頭部連結部、15…第1面、16…第2面、20…鋼矢板、21…凸面、22…凹面、23…継手、24…ウェブ、24a…一方の面、24b…他方の面、25…フランジ、25a…一方の面、25b…他方の面、30…突出部材、40…吸引システム、41…吸引ポンプ、42…排出管、45…鞘管、46…吸引ポンプ、47…吸引システム、49…強度寄与範囲、51…コンクリート頂版、52…頭部構造体、55…ケーシング、G…地盤、GI…内部土、RS…粗面、Z1,Z2…領域