(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】画像加熱装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240909BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G21/16 147
(21)【出願番号】P 2020187419
(22)【出願日】2020-11-10
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】茂木 佳祐
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-100479(JP,A)
【文献】特開2020-169673(JP,A)
【文献】特開2008-223969(JP,A)
【文献】特開2018-009654(JP,A)
【文献】特開2002-181147(JP,A)
【文献】特開2001-289311(JP,A)
【文献】実開昭60-034531(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に形成されたトナー像を加熱するために記録材を挟持搬送するニップ部を形成する第一回転体と第二回転体と、駆動源と、前記駆動源が正回転した場合には前記第一回転体を回転させる駆動力を伝達し、前記駆動源が逆回転した場合には前記第一回転体を回転させる駆動力を伝達しないワンウェイクラッチユニットと、前記駆動源が逆回転した場合に前記第一回転体と前記第二回転体との間の加圧力を変更する或いは前記第一回転体と前記第二回転体とを互いに離間させる切換機構と、を有し、前記ワンウェイクラッチユニットは、軸と、前記軸に支持され、前記駆動源の駆動力が入力される入力ギアと、前記軸に支持され、駆動力を出力する出力ギアと、前記軸に支持され、前記軸の軸方向に移動することで前記入力ギアから前記出力ギアへ駆動力の伝達と非伝達とを切換える駆動伝達部材と、を有する画像加熱装置において、
前記出力ギアは、内部に前記駆動伝達部材を前記軸方向に移動可能に収容する円筒状の収容部と、前記駆動源が正回転するときには前記駆動伝達部材に設けられた複数の凹凸からなる環状の第一歯面とかみ合い、前記駆動源が逆回転するときには前記第一歯面とかみ合わず前記駆動伝達部材を遠ざけるための複数の凹凸からなる環状の第二歯面と、を有し、
前記入力ギアは、軸受部と、前記軸受部から前記入力ギアの外周に向かってに延伸し、前記駆動伝達部材と係合して前記駆動伝達部材の回転を規制する規制部と、前記駆動伝達部材と突き当たる突き当て面と、前記収容部の前記軸方向における端面と対向する環状の対向面と、を有し、
前記駆動伝達部材は、前記規制部と係合して、前記入力ギアの回転力を前記駆動伝達部材を前記軸方向に移動させる力に変換するためのカム部を有し、
前記環状の対向面は、前記収容部の端面と当接する当接部と、前記外周に向かってに延伸した規制部と交差する箇所を含み前記当接部よりも前記軸方向に凹んでいる凹み部とを有することを特徴とする画像加熱装置。
【請求項2】
記録材に形成されたトナー像を加熱するために記録材を挟持搬送するニップ部を形成する第一回転体と第二回転体と、駆動源と、前記駆動源が正回転した場合には前記第一回転体を回転させる駆動力を伝達し、前記駆動源が逆回転した場合には前記第一回転体を回転させる駆動力を伝達しないワンウェイクラッチユニットと、前記駆動源が逆回転した場合に前記第一回転体と前記第二回転体との間の加圧力を変更する或いは前記第一回転体と前記第二回転体とを互いに離間させる切換機構と、を有し、前記ワンウェイクラッチユニットは、軸と、前記軸に支持され、前記駆動源の駆動力が入力される入力ギアと、前記軸に支持され、駆動力を出力する出力ギアと、前記軸に支持され、前記軸の軸方向に移動することで前記入力ギアから前記出力ギアへ駆動力の伝達と非伝達とを切換える駆動伝達部材と、を有する画像加熱装置において、
前記入力ギアは、内部に前記駆動伝達部材を前記軸方向に移動可能に収容する円筒状の収容部と、前記駆動源が正回転するときには前記駆動伝達部材に設けられた複数の凹凸からなる環状の第一歯面とかみ合い、前記駆動源が逆回転するときには前記第一歯面とかみ合わず前記駆動伝達部材を遠ざけるための複数の凹凸からなる環状の第二歯面と、を有し、
前記出力ギアは、軸受部と、前記軸受部から前記出力ギアの外周の向かってに延伸し、前記駆動伝達部材と係合して前記駆動伝達部材の回転を規制する規制部と、前記駆動伝達部材と突き当たる突き当て面と、前記収容部の前記軸方向における端面と対向する環状の対向面と、を有し、
前記駆動伝達部材は、前記規制部と係合して、前記入力ギアの回転力を前記駆動伝達部材を前記軸方向に移動させる力に変換するためのカム部を有し、
前記環状の対向面は、前記収容部の端面と当接する当接部と、前記外周に向かってに延伸した規制部と交差する箇所を含み前記当接部よりも前記軸方向に凹んでいる凹み部とを有することを特徴とする画像加熱装置。
【請求項3】
前記駆動伝達部材は、前記収容部の内面と当接して、前記軸に向けて付勢する付勢部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像加熱装置。
【請求項4】
前記凹み部は周方向において複数設けられ、前記凹み部と前記当接部は周方向に交互に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像加熱装置。
【請求項5】
前記軸方向において前記駆動伝達部材側の前記規制部の幅は、前記軸方向において前記駆動伝達部材から遠ざかる側の前記規制部の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像加熱装置。
【請求項6】
前記第二回転体はベルトであり、前記ベルトは前記第一回転体から駆動力を受けて回転することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像加熱装置。
【請求項7】
前記ベルトを加熱する面状のヒータを有し、前記第二回転体はベルトを介してヒータを加圧することを特徴とする請求項
6に記載の画像加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源から入力される駆動力を回転方向に応じて被駆動体への伝達と被駆動体への遮断するワンウェイクラッチユニットを用いた画像加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に用いられる画像加熱装置としての定着装置は、記録材に担持された未定着トナー像を加熱する加熱回転体と、加熱回転体を加熱するヒータと、加熱回転体と共にニップ部を形成する加圧回転体とを有する。そのニップ部で未定着トナー像を担持した記録材を搬送しながら加熱することによって、トナー像を記録材に定着させる。
【0003】
この定着装置においては、記録材の搬送時にジャムが発生した際のジャム処理性向上や、ニップ形成部での加熱回転体及び加圧回転体の圧縮歪み(塑性変形)を防止するため、ニップ部の圧を解除する圧解除機構が設けられている。
【0004】
この圧解除機構はレバーによる手動の圧解除や、モータによる自動の圧解除などが用いられているが、近年ではユーザ操作性やコストダウンの観点から、より少ないモータで複数の回転体を回転駆動させることが望まれている。
【0005】
上記観点から、1つのモータで複数の回転体を回転させ、圧解除を行う構成において、加圧回転体の回転と圧解除カムの回転を選択的に回転させることが望ましい。
【0006】
上記に対して、特許文献1には、モータから回転体に至る駆動伝達経路にワンウェイユニットを配置し、モータを正逆回転させて回転体を選択的に駆動する構成が考案されている。一般的なワンウェイユニットは複数のボールやニードルを周方向に配列するため、部品点数も多く、構造が複雑なため小型のものは高価になる。
【0007】
それを解決する構成として、従来、特許文献2には、
図2のような、部品点数が少なく、且つ、簡易的なワンウェイクラッチユニットが提案されている。
【0008】
図2に示すように、ワンウェイクラッチユニット100は、入力ギア101、駆動伝達部材102、出力ギア103が軸で支持されている。それぞれのギアは樹脂製で、それぞれ一体成型品である。
図3のように、入力ギア101の回転方向によって、駆動伝達部材102が付勢される方向が異なる。例えば、入力ギア101が
図3aの矢印C方向に回転した場合は、駆動伝達部材102が出力ギア103側(矢印H方向)に付勢され、出力ギア103と係合することで、駆動が伝達する。また、入力ギア101が
図3bの矢印D方向に回転した場合は、駆動伝達部材102が出力ギア103から離れる側(矢印I方向)に付勢され、駆動が解除される。駆動伝達部材102は、出力ギア103の内周面103aに当接する付勢形状102aを有しており、付勢形状102aによって生じる付勢力により、入力ギア101の回転方向に応じて、軸に沿って駆動伝達部材102の付勢方向の切り替えを可能にしている。また、入力ギア101は、駆動伝達部材102の切換を行うための係合部101bが入力ギアの中央から半径方向に延伸している。
【0009】
このようなワンウェイクラッチユニット101においても、通常のギアと同様、駆動音の静音化やギア歯面摩耗の抑制のためにギアにグリスを塗布することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平6-118784号公報
【文献】特開2019-100479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、入力ギア101d、出力ギア103cの歯面に粘性グリスGを塗布した場合、ギアの歯面を伝ってワンウェイクラッチユニット100の内部に粘性グリスGが侵入する。出力ギア103cと入力ギア103dとの当接面での出力ギア103cと入力ギア103dと摺擦が多くなると、この粘性グリスが入力ギア内部に向かいやすくなり、さらに、係合部を伝わって、入力ギア103dの面101cに粘性グリスGが付着する場合がある。入力ギア101が駆動解除方向(
図3b)に回転し、駆動伝達部材102が入力ギア101側(矢印I方向)に移動したときに、面101cと駆動カム102間に粘性グリスGが介在すると、駆動伝達部材102を入力ギア101に吸着させる場合がある。これにより、入力ギア101が駆動伝達方向(
図3a)に回転しても、駆動伝達部材102が出力ギア103と連結する方向(矢印H方向)に移動することができずに、駆動が解除されたままになってしまう問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、記録材に形成されたトナー像を加熱するために記録材を挟持搬送するニップ部を形成する第一回転体と第二回転体と、駆動源と、前記駆動源が正回転した場合には前記第一回転体を回転させる駆動力を伝達し、前記駆動源が逆回転した場合には前記第一回転体を回転させる駆動力を伝達しないワンウェイクラッチユニットと、前記駆動源が逆回転した場合に前記第一回転体と前記第二回転体との間の加圧力を変更する或いは前記第一回転体と前記第二回転体とを互いに離間させる切換機構と、を有し、前記ワンウェイクラッチユニットは、軸と、前記軸に支持され、前記駆動源の駆動力が入力される入力ギアと、前記軸に支持され、駆動力を出力する出力ギアと、前記軸に支持され、前記軸の軸方向に移動することで前記入力ギアから前記出力ギアへ駆動力の伝達と非伝達とを切換える駆動伝達部材と、を有する画像加熱装置において、前記出力ギアは、内部に前記駆動伝達部材を前記軸方向に移動可能に収容する円筒状の収容部と、前記駆動源が正回転するときには前記駆動伝達部材に設けられた複数の凹凸からなる環状の第一歯面とかみ合い、前記駆動源が逆回転するときには前記第一歯面とかみ合わず前記駆動伝達部材を遠ざけるための複数の凹凸からなる環状の第二歯面と、を有し、前記入力ギアは、軸受部と、前記軸受部から前記入力ギアの外周に向かってに延伸し、前記駆動伝達部材と係合して前記駆動伝達部材の回転を規制する規制部と、前記駆動伝達部材と突き当たる突き当て面と、前記収容部の前記軸方向における端面と対向する環状の対向面と、を有し、前記駆動伝達部材は、前記規制部と係合して、前記入力ギアの回転力を前記駆動伝達部材を前記軸方向に移動させる力に変換するためのカム部を有し、前記環状の対向面は、前記収容部の端面と当接する当接部と、前記外周に向かってに延伸した規制部と交差する箇所を含み前記当接部よりも前記軸方向に凹んでいる凹み部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、出力ギアと入力ギアとの当接面から係合部を伝わって入力ギアの軸近傍にグリスが伝達することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る一方向クラッチ100の斜視図
【
図3】従来例、及び、本実施形態に係る駆動が連結/連結解除状態を表す断面図
【
図4】従来例に係る粘性グリスGの侵入経路を示す断面図
【
図5】従来例、及び、本実施形態に係る駆動伝達部材102の斜視図
【
図6】本実施形態に係る入力ギア101の凹形状101gの効果を示す断面図
【
図7】本実施形態に係る画像形成装置500の断面図
【
図9】本実施形態に係る定着装置20の圧解除機構208の断面図
【
図10】本実施形態に係る定着装置20の駆動切替装置300側の側面の図
【
図11】本実施形態に係る駆動切替装置300の斜視図
【
図12】本実施形態に係る振り子ギア312の構成図
【
図13】本実施形態に係る振り子ギア312の動作図
【
図14】従来例、及び、本実施形態に係る入力ギア101の正面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【実施例】
【0016】
(画像形成装置500)
図7は本実施形態における画像形成装置500の断面図である。
【0017】
上下斜め方向に並設した4個のカートリッジ1Y、1M、1C、1Bkは、電子写真感光体としての感光体ドラム2と帯電ローラ3、クリーニング部材6、現像ユニット4を備える。
【0018】
感光体ドラム2は、駆動部材(不図示)によって、
図7の時計回りに回転駆動される。また、感光体ドラム2の周囲には、その回転方向の順に、クリーニング部材6、帯電ローラ3、現像ユニット4が配置される。
【0019】
クリーニング部材6は、感光体ドラム2上に形成されたトナー像を中間転写ベルト8上に転写した後、感光体ドラム2上に残留したトナー剤を除去するものである。
【0020】
また、帯電ローラ3は、感光体ドラム2表面を均一に帯電するものである。帯電ローラ3によって感光体ドラム2の表面が帯電された後、スキャナユニット(露光手段)7から感光体ドラム2表面にレーザ光が露光される。これにより、感光体ドラム2の表面に静電潜像が形成される。尚、本実施形態においては、スキャナユニット7は、カートリッジ1の下方に配置されている。
【0021】
また、現像ユニット4は、感光ドラム2の上に形成された静電潜像にトナー剤を供給して、静電潜像をトナー像として現像するためのものである。
【0022】
記録材Pに画像を形成する際は、まずスキャナユニット7によって感光体ドラム2の表面に形成された静電潜像がカートリッジ1によってトナー像として現像され、中間転写ベルト8に転写される。
【0023】
中間転写ベルト8は、二次転写対向ローラ9とテンションローラ10に張架され、
図7の矢印に示すように反時計回りに駆動する。また、各感光体ドラム2に対向して、中間転写ベルト8の内側に一次転写ローラ5が配設されており、不図示のバイアス印加手段により転写バイアスが印加される構成となっている。
【0024】
例えば、負極性に帯電したトナー剤を用いる場合は、一次転写ローラ5に正極性のバイアスを印加することにより、順次、中間転写ベルト8上にトナー像が一次転写される。そして、中間転写ベルト8に4色のトナー像が重なった状態で二次転写対向ローラ9と二次転写ローラ11でニップされた二次転写部に運ばれる。
【0025】
この際、記録材Pへの二次転写後に中間転写ベルト8上に残ったトナー剤は、転写ベルトクリーニング装置12によって除去され、除去されたトナー剤は、廃トナー搬送路(不図示)を通過し、廃トナー回収容器(不図示)で回収される。
【0026】
一方、上記で説明した画像形成動作と同期して、記録材Pを収納する給紙カセット13から給紙ローラ14やレジストローラ対16等からなる搬送機構によって記録材Pが二次転写部に搬送される。
【0027】
給送カセット13は、画像形成装置500から着脱自在に構成されている。ユーザは給紙カセット13を引き抜き、画像形成装置500から取り外した後、各給紙カセット13A、13B、13Cに大小各種幅サイズの記録材Pをセットし画像形成装置500へ挿入することで記録材Pの補給が完了する。
【0028】
給紙カセット13に収納された記録材Pのうち、選択された給紙カセット13の最上位に位置する記録材Pには、給紙ローラ14が圧接して駆動するので、記録材Pが1枚ずつ分離給紙される。また手差し給紙が選択されているときは、手差しトレイ17にセットされた記録材Pが給紙ローラ14によって1枚ずつ分離給紙される。
【0029】
そして、給紙カセット13あるいは手差しトレイ17から搬送された記録材Pは、搬送経路15を通り、レジストローラ対16によって二次転写部に搬送される。二次転写部においては、二次転写ローラ11に正極性のバイアスを印加することにより、搬送された記録材Pに、中間転写ベルト8上の4色のトナー像を二次転写することが可能である。
【0030】
そして、記録材Pは二次転写部から給紙され、搬送経路19を通って定着装置20へと搬送され、記録材Pに転写された画像に熱、圧力を加えて画像を記録材P上に定着させる。その後、トナー像が定着された記録材Pは、排紙ローラ対22によって排出トレイ23に排出される。
【0031】
両面印刷時は排紙ローラ対22によって排出トレイ23上に送られていき、後端部が排紙ローラ対22を通過する直前で排紙ローラ対の回転が逆回転され記録材Pはスイッチバックされて両面搬送経路24に導入される。そして、表裏反転状態になって再びレジストローラ対16まで搬送され、その後は前述したように二次転写部、定着装置20、排紙ローラ対22を通って排出トレイ23に排出される。
【0032】
(定着装置20)
次に定着装置20について、
図8の定着装置断面図と、
図9の圧解除機構断面図を用いて説明する。
【0033】
定着装置20は、フィルム加熱方式の加熱装置である。定着装置20は、第一回転体である加圧ローラ201と、定着フィルムユニット202とが協働してニップ部Nを形成し、記録材をニップ部Nで挟持搬送することにより、トナー像を加熱する。定着フィルムユニット202は面状のヒータであるセラミックヒータ203と、第二回転体として円筒状の定着フィルム204と、セラミックヒータ203を保持するヒータホルダ205と、定着フィルム204の端部を規制する定着フランジ206と、ヒータホルダ205の強度を確保するために定着フィルム204の内面側に配置される加圧ステイ207からなる。また、ニップ部Nは圧解除機構208により加圧解除可能となっている。
【0034】
定着装置20について、詳細を以下に説明する。
【0035】
セラミックヒータ203は細長薄板状のセラミック基板と、この基板面に具備させた通電発熱抵抗体層を基本構成とするもので、発熱抵抗体層に対する通電により全体に急峻な立ち上がり特性で昇温する、低熱容量のヒータである。セラミックヒータ203は、ヒータホルダ205の下面の長手に沿って具備された嵌め込み溝205a内に嵌め込まれ支持される。
【0036】
定着フィルム204は、記録材Pに熱を伝達する耐熱性の円筒状部材であり、ヒータホルダ205に外嵌させてある。定着フィルム204は、離形層、弾性層、基層、内面コート層の4層複合構造のフィルムである。離型層は厚さ100μm以下、好ましくは20~70μmのフッ素樹脂材料である。例えば、フッ素樹脂層としては、例えばPTFE、PFAなどが挙げられる。弾性層は、熱容量を小さくするために、厚さとしては1000μm以下、好ましくは500μm以下のゴム材料である。例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。基層は厚さとして100μm以下、好ましくは50μm以下20μm以上の耐熱性材料である。例えば、SUS、ニッケルなどの金属フィルムやポリイミドなどの樹脂材料である。内面コート層は、耐熱性を持つ樹脂層である。例えば、ポリイミド、ポリイミドアミド、PEEK、PTFE、FEP、PFAなどが挙げられる。
【0037】
加圧ステイ207は、ヒータホルダ205の裏面に押し当てることでヒータホルダ205に長手強度を持たせ、且つ、ヒータホルダ205を矯正させるための部材である。
【0038】
ヒータホルダ205は、定着フィルム204の内側に設けられている耐熱性・断熱性の部材であり、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、PFA樹脂、PTFE樹脂、LCP樹脂等の絶縁性及び耐熱性の良い材料が用いられる。セラミックヒータ203を支持出来るよう嵌め込み溝205aが設けられ、定着フィルム204を介して、加圧ローラ201と圧接することでニップ部Nを形成する。
【0039】
定着フランジ206は、加圧ステイ207の両端にはめ込まれ、定着フィルム204の回転を案内すると共に、定着フィルム204の抜け出しを阻止している。また、定着フランジ206は側板209に勘合保持される。
【0040】
加圧ローラ201は、芯金と、芯金周りに同心一体にローラ状に成形被覆させた、シリコーンゴム・フッ素ゴム・フッ素樹脂などの耐熱性・弾性材層とで構成されており、表層に離型層を設けてある。離型層は厚さ100μm以下、好ましくは20~70μmのフッ素樹脂材料である。フッ素樹脂層としては、例えばPTFE、PFAなどが挙げられる。芯金の両端部にPEEK、PPS、LCP等の耐熱性樹脂よりなる軸受部材210を装着し、側板209に回転自由に保持させて配設してある。
【0041】
また、本実施形態の場合、定着フィルム204を加圧部材211によって、加圧ローラ201に加圧することで、ニップ部Nを形成している。このような加圧部材211は、
図9に示すように、加圧弾性部材としてのバネ212を張架して、バネ212の弾性力により定着フランジ206を加圧ローラ201方向に加圧する(押し付ける)ものである。
【0042】
(圧解除機構208)
切換機構である圧解除機構208は、上述のような加圧部材211を移動させて、ニップ部Nを加圧状態と圧解除状態とに切り替えるものである。本実施例では、圧解除機構208は、加圧ローラ201を定着フィルム204に当接する動作と加圧ローラ201を定着フィルム204から離間させる構成であるが、加圧ローラ201と定着フィルム204との加圧力を変更する構成であってもいい。このような圧解除機構208は、カム213と、加圧部材211に形成されたカム213のカム面と接触するカム接触面211aとを備える。カム213は、画像形成装置500に設けられた後述する駆動源としてのモータ302により駆動切替装置300を介して駆動され、カム面を加圧部材211のカム接触面211aに接触、又は、離間させることで、ニップ部Nの加圧と圧解除とを行う。
【0043】
図9のように、ニップ部Nの加圧時において、カム213の位相は、加圧部材211のカム接触面211aと接触しないようにしている。これにより、加圧部材211がバネ212の弾性力により定着フランジ206を加圧して、ニップ部Nが加圧される。
【0044】
一方、加圧解除時は、カム213の位相が
図9の状態から略180°回転し、カム213が加圧部材211のカム接触面211aと接触して、加圧部材211をバネ212の弾性力に抗して押し上げる。これにより、ニップ部Nの圧が解除される。
【0045】
このように構成される定着装置20は、画像形成装置500に装着され、駆動切替装置300により駆動される。駆動切替装置300は、画像形成装置500に装着された定着装置20の近傍に備えられ、定着装置20の画像形成装置500への着脱に伴い、定着装置20に設けられた各駆動部としてのギアと接続又は分離する。
【0046】
定着装置20は、
図10の定着装置20の駆動切替装置300側の側面図に示すように、各駆動部としての加圧ローラギア214、カムギア215を備えている。加圧ローラギア214は、ニップ部Nで記録材を搬送する部材としての加圧ローラ201に駆動を伝達する搬送駆動部である。また、カムギア215は、圧解除機構208のカム213に駆動を伝達する圧解除駆動部である。これら各ギア214、215は、次述する駆動切替装置300の各駆動経路によって、それぞれ駆動伝達可能に接続され、駆動切替装置300の動作に応じてそれぞれ駆動が伝達される。
【0047】
(駆動切替装置300)
次に、駆動切替装置300について、
図11の駆動切替装置300の斜視図を用いて説明する。
図11aは、駆動切替装置300全体の斜視図である。
図11bは、駆動切替装置300の駆動列が分かりやすいように駆動カバー306を省略し、定着器20の加圧ローラギア214、及び、カムギア215とともに表している斜視図である。
【0048】
駆動切替装置300は、駆動源としてのモータ302、及び、モータギア302aが駆動支持フレーム307に取り付けられ、ワンウェイクラッチユニット100の入力ギア101に駆動が伝達されている。ワンウェイクラッチユニット100から加圧ローラギア214への伝達経路として、揺動ユニット308内に揺動中心ギア309と揺動ギア310を備える。ワンウェイクラッチユニット100からカムギア215への伝達経路として順にアイドラギア311、振り子ギア312、アイドラギア313、314、315を備える。駆動カバー306は配置された各ギアの軸方向の片側端を支持している。
【0049】
記録材を搬送する搬送動作は、長時間、高速で回転するため、駆動部から発生する稼働音を静音化する必要がある。そのため、ワンウェイクラッチユニット100の入力ギア101、出力ギア103を含め、モータギア302aから加圧ローラギア214に至る伝達経路の駆動ギアは、すべてはすば歯歯車で構成されている。
【0050】
モータ302は、正回転と逆回転とが可能なDCブラシレスモータであり、駆動支持フレーム307の背面側に対して位置決め固定されている。モータ302は、不図示の電源から給電されることで回転駆動する。なお、モータ302は、DCブラシレスモータに限らず、正逆回転できるものであれば、例えばステッピングモータなど他のモータであっても良い。
【0051】
駆動切替装置300は、後述する振り子ギア312とワンウェイクラッチユニット100により、モータ302の正逆回転によって加圧ローラ201の駆動と圧解除機構208の駆動を切り替えている。
【0052】
(振り子ギア312)
振り子ギア312について、
図12の振り子ギア構成図と
図13の振り子ギア312の動作図を用いて説明する。振り子ギア312は、
図12aに示すように、ギア部材318と、ホルダ部材319と、弾性部材320で構成されている。ギア部材318は、円筒状に形成され、外周面にギア歯が形成されており、
図13aに示されるようにアイドラギア311、313と噛み合う。
【0053】
ホルダ部材319は、円形のリブ319aがギア部材318の内周面318aに挿入されて内嵌され、ギア部材318を回転自在に支持する。
【0054】
弾性部材320は、
図12bに示すように、ホルダ部材319に固定すると共に、ギア部材318の大径部の内周面318bに弾性的に付勢させている(矢印L)。そして、ギア部材318を揺動させる際にギア部材318に回転負荷を与えることで、振り子ギア312に揺動力を発生させる。
【0055】
ホルダ部材319には、ギア部材318の軸方向に貫通し、この軸方向に直交する方向に長い長孔部319bが形成されている。そして、
図13に示すように、長孔部319bに支持フレーム307に突設された軸321を通すことで、ホルダ部材319が移動可能に保持されている。また、ホルダ部材319には、突起部319cが備えられていて、
図13bに示すように、駆動カバー306に形成された規制溝317に突起部319cが伸びるようにしている。この規制溝317は、突起部319cとの係合により振り子ギア312の揺動範囲を規制するものである。
【0056】
アイドラギア311が
図13aの矢印J方向に回転すると、このアイドラギア313と噛み合う振り子ギア312内のギア部材318に回転駆動力が伝達される。ギア部材318は、弾性部材320による回転負荷とギア部材318がアイドラギア311から受ける駆動力により、
図13cの位置に振り子ギア312があっても、長孔部319bと軸321との間で揺動可能なため、
図13aの位置になるように移動し、アイドラギア313と噛み合い、駆動を伝達する。
【0057】
また、
図13cに示すように、アイドラギア311が矢印K方向に回転した場合、振り子ギア312は
図13aで示す位置から
図13cで示す位置に揺動動作を行い、アイドラギア313と噛みあわなくなり、伝達を遮断する。
【0058】
(ワンウェイクラッチユニット100)
図1a、及び、
図1bはワンウェイクラッチユニット100の斜視図である。
図5a、及び、
図5bは駆動伝達部材102の斜視図である。
【0059】
図1a、
図1bに示すように、ワンウェイクラッチユニット100は、入力ギア101、駆動伝達部材102、出力ギア103を有している。入力ギア101と出力ギア103は軸104に嵌合にて挿通されており、駆動伝達部材102は軸104にクリアランスをもって挿通されている。すなわち、ワンウェイクラッチユニット100は、モータ302から入力ギア101に駆動力が付与され、入力ギア101から出力ギア103に駆動力の伝達と非伝達とを切換えるものである。
【0060】
入力ギア101は、環状リブにより凹形状が形成されており、環状リブの外周には歯面101dが形成されている。入力ギア101の環状リブに囲まれた空間SP1には、入力ギア101の外周に向かうように延伸した係合リブ101eが複数設けられており、後述する駆動伝達部材102の入力側正回転時係合部102bとの係合面となる。この係合リブ101eは、後述するように駆動伝達部材102と係合して駆動伝達部材102の回転を規制する規制部の役目を有する。
【0061】
出力ギア103も環状リブにより凹形状に形成されており、環状リブの外周には歯面103cが形成されている。また、出力ギア103は、駆動伝達部材102を収容する円筒状の収容部を有する。収容部には、駆動伝達部材102が取り付けられている。また、同じく環状リブの内周には後述する駆動伝達部材102の環状の第二歯面である出力側正回転時係合部102cと係合する環状の第一歯面である歯面103bが設けられている。第一歯面と第二歯面は、それぞれ凹凸形状である。
【0062】
図5aに示すように駆動伝達部材102の入力ギア101に対向する面には正回転時に係合する3つの入力側正回転時係合部102bと係合部へとなだらかにつながるカム部である入力側傾斜面102d、逆回転時に係合する入力側逆回転時係合部102eが設けられている。この入力側傾斜面102dは、入力ギアの回転力を軸方向への駆動伝達部材102の移動する力に変換するためのカム部の役割を有する。
【0063】
図5bに示すように駆動伝達部材102の出力ギア103に対向する面には正回転時に係合する出力側正回転時係合部102cと、逆回転時に駆動伝達部材102を入力ギア101方向に移動させる出力側傾斜面102fが設けられている。また駆動伝達部材102の外周には等間隔に設けられた付勢部102aが配置されており、出力ギア103の環状リブ内周面103aに当接する。
【0064】
正逆回転時のワンウェイクラッチユニット100の動作について、
図3を用いて詳細に説明する。
【0065】
図3aは連結解除から連結になる過程を説明する断面図である。
図3aに示すように、連結解除状態において入力ギア101がC方向に回転すると、入力ギア101に設けられた係合リブ101eが、駆動伝達部材102の入力面傾斜部102dを押し、駆動伝達部材102を出力ギア103の方向(矢印H方向)に付勢する。入力ギア101の係合リブ101eと駆動伝達部材102の入力側正回転時係合部102b(
図5aに記載)、出力ギア103の歯面(第二歯面)103bと駆動伝達部材102の出力側正回転時係合部(第一歯面)102cとがそれぞれ係合し、駆動連結が完了する。
【0066】
次に、駆動連結解除に関して説明する。
図3bは連結から連結解除になる過程を説明する断面図である。
図3bに示すように、連結の状態において入力ギア101がD方向に回転すると、入力ギア101に設けられた係合リブ101eが、駆動伝達部材102の逆回転時係合部102e(
図5bに記載)を押し、駆動伝達部材102をD方向に回転させる。D方向に回転した駆動伝達部材102は出力ギア103のカム面103bに形成された傾斜面と駆動伝達部材102に配置された出力側傾斜面102f(
図5bに記載)により、入力ギア101方向(矢印I方向)に移動し、駆動連結解除の動作が完了する。
【0067】
(駆動伝達部材への粘性グリス付着防止構成)
次に本発明の特徴となる、入力ギア101の形状と、その効果について述べる。
【0068】
図1、
図14(b)に示すように、入力ギア101には、駆動伝達部材102との当接面101c(3つの係合リブ101eの表面部と、穴101b部を形成する形状の表面部)と、出力ギア103との当接面101hと、2つの当接面101cと101hとの間に凹形状101gとが形成されている。駆動伝達部材102との当接面101c、出力ギア103との当接面101hは、入力ギア101の歯幅方向に対して同一平面上にある。すなわち、もし凹形状101gが存在しない場合、
図2のように駆動伝達部材102との当接面101cと、出力ギア103との当接面101hは同一平面で繋がった形状となる。凹形状101gは、駆動伝達部材と係合するリブ101eに対して、入力ギア101の回転方向にそれぞれ角度α、βだけ回転した位置まで凹形状が形成されている。本実施例ではα=β=40°であるが、2つの当接面101cと101hを分断していれば、形状に合わせて自由に選択できる。また、2つの当接面101c、101hからの、入力ギア101の歯幅方向の逃げ量(凹量)は1mmとした。本実施例では、孔101b部を形成する部分は軸受部である。そして、この軸受部の表面は、入力ギア101が逆回転をしている場合に、退避した駆動伝達部材102と突き当たって当接する突き当て部の役割を有する。
【0069】
本実施例の凹形状101gの効果について、
図6を用いて説明する。
【0070】
上述したように、搬送動作時の稼働音の静音化のために、ワンウェイクラッチユニット100の入力ギア101、出力ギア103のそれぞれの歯面101d、103cには、グリスGが塗布される。グリスGは耐久性を考慮すると粘性グリスが望ましいが、粘性グリスを塗布した場合、ギア同士のかみ合いによってギアの歯面の歯幅方向にグリスがあふれてくる。さらに、ギアの歯面同士の摺擦による発熱や画像形成装置内の本ユニット周囲の環境温度の影響により、粘性グリスの温度が上昇すると、グリスの粘性が低下し、離油も生じてくる。このような状態になったグリス、および分離したオイルは、グリス塗布された部材の表面を伝って移動しやすくなる。すると、それぞれの歯面101d、103cを伝って、入力ギア101と出力ギア103との当接面101hを経由して、ワンウェイクラッチユニット100の内部にグリスが侵入することになる。
図6(a)は、ワンウェイクラッチユニット100の内部に侵入したグリスGが駆動伝達部材102の当接面101cに達した様子を表している。
【0071】
図2、
図14(a)に示す従来の構成においては、
図6aに示すように入力ギア101の駆動伝達部材102が当接する面101cまで粘性グリスGが到達する。
【0072】
これにより、上述したように、入力ギア101が駆動解除方向(
図3b)に回転し、駆動伝達部材102が入力ギア101側(矢印I方向)に移動することで、駆動伝達部材102が、粘性グリスGによって入力ギア101に吸着してしまう。
【0073】
駆動を連結する方向に入力ギア101を回転した際に(
図3aの矢印C方向)、駆動伝達部材102の入力ギア101に対する吸着力が、入力ギア101の係合リブ101eが駆動伝達部材102の入力面傾斜部102dを押し上げる力よりも大きくなることで、駆動伝達部材102が出力ギア103側(
図3aの矢印H方向)に移動することができなくなり、ワンウェイクラッチユニット100の伝達切り替え動作ができなくなってしまう。
【0074】
一方、
図6bに示す本実施例の構成は、入力ギア101に凹形状101gを形成した構成である。そして、この凹形状101gは係合部101eと交差する箇所を有する構成となっている。この構成により、ワンウェイクラッチユニット100内部に侵入した粘性グリスGは、入力ギア101の出力ギア103との当接部101hまで到達するが、出力ギア103との当接面101h面から凹形状になった101g部で溜まり、101gから見て段差のある、駆動伝達部材との当接面101cへは到達しづらい。すなわち、出力ギア103の収容部の軸方向の先端と対向する入力ギア101の対向面(101gと101h)の構成を、凹形状101gと当接面101hとが交互に配置される構成とした。さらに、複数の係合部101eがそれぞれ凹形状101gと交差するように形成される。凹形状101では入力ギア101と出力ギア103との摺擦が発生しないため、グリスGを移動させる力が生じにくくなるため、グリスGが係合部101eを当接面101cに向かって移動しにくくなる。なお、本実施例では、駆動伝達部材102は、係合部101eの駆動伝達部材側の先端の幅が先細りしている形状である。この構成により、よりグリスGが当接面101cに移動しにくくすることができる。
【0075】
以上説明したように、駆動伝達部材102が当接する面101cまで粘性グリスGは至らないため、粘性グリスGが駆動伝達部材102に付着することがなく、駆動伝達部材102の動作を阻害することがない。そのため、ワンウェイクラッチユニット100の伝達切り替え動作を安定的に行うことができる。
【0076】
入力ギア101の凹形状101gの深さ、及び、外径とギア回転方向の円弧長で決まる空間SP2の容積は、入力ギア101および出力ギア103の歯面に塗布される粘性グリスGがすべて収まるようになっていることが望ましいが、その限りではない。
【0077】
このように、本実施例のようにすることで、ワンウェイクラッチユニットの伝達切り替え動作を安定的に行うとともに、ギア端面の摩耗を抑制することが可能になる。
【0078】
なお、本実施例では入力ギア101および出力ギア103のギアはハス歯ギアで記載したが、平歯ギアでもよい。
【0079】
また、入力ギアと出力ギアの関係を本実施例と逆の関係である構成であっても問題ない。すなわち、本実施例の出力ギアを入力ギアとし、本実施例の入力ギアを出力ギアとするギア列の構成であっても、本発明は有効である。
【符号の説明】
【0080】
20 定着装置
100 ワンウェイクラッチユニット
101 入力ギア
101c 入力ギアと駆動伝達部材の当接面
101g 凹形状
101h 入力ギアと出力ギアの当接面
102 駆動伝達部材
103 出力ギア
104 回動軸
300 駆動切替装置
G 粘性グリス