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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】螺旋管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21C 37/15 20060101AFI20240909BHJP
   F28D 7/10 20060101ALI20240909BHJP
   F28F 1/42 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
B21C37/15 B
F28D7/10 A
F28F1/42 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020188036
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077262
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(73)【特許権者】
【識別番号】510132510
【氏名又は名称】株式会社UACJ押出加工
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秦 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓郎
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特許第5450372(JP,B2)
【文献】特公平06-085944(JP,B2)
【文献】特許第4966700(JP,B2)
【文献】特開平06-270009(JP,A)
【文献】特開昭61-125592(JP,A)
【文献】特許第4897266(JP,B2)
【文献】特開昭55-126328(JP,A)
【文献】特許第5450373(JP,B2)
【文献】特開昭47-010809(JP,A)
【文献】特開昭53-042168(JP,A)
【文献】特公昭54-037100(JP,B2)
【文献】特公昭62-046250(JP,B2)
【文献】特開2002-318015(JP,A)
【文献】特開2006-162241(JP,A)
【文献】特許第4628858(JP,B2)
【文献】特開平09-267134(JP,A)
【文献】特開2003-062632(JP,A)
【文献】特開2008-023572(JP,A)
【文献】特開2000-343162(JP,A)
【文献】特開平04-012836(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0121361(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0046721(KR,A)
【文献】実開昭61-158330(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 37/15
F28D 7/10
F28F 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸形状が長手方向において螺旋状に変位する螺旋凹凸部を有する螺旋管を製造する方法であって、
円環状断面を有する素管を連続的に供給し、押圧部を前記素管の外周面に押圧しながら当該押圧部を前記素管の周りで周方向に回転させることにより前記素管に前記螺旋凹凸部を形成する工程を、前記素管の長手方向に対して間欠的に行うことにより長手方向において前記螺旋凹凸部と断面円形状の円管部とを交互に設け、
前記円管部の位置で前記素管を切断するものとされ、
前記素管をその長手方向に沿って搬送装置により搬送し、前記搬送装置は、前記押圧部の搬送方向の上流側に配された上流側搬送装置と、前記押圧部の搬送方向の下流側に配された下流側搬送装置とを含むものであり、
前記螺旋凹凸部を形成する工程では、前記素管をその長手方向に沿って前記搬送装置により上流側から下流側へ向けて搬送しつつ前記押圧部を前記素管の周りで周方向に回転させることにより前記素管に前記螺旋凹凸部を形成
その後、前記素管の長手方向について前記下流側搬送装置よりも前記下流側に配される測定装置によって前記素管における前記螺旋凹凸部及び前記円管部を含む部分の長さを測定し、前記円管部のうち前記測定装置による測定結果に基づく位置で前記素管を切断する螺旋管の製造方法。
【請求項2】
前記測定装置は、前記素管を切断する装置の下流において、搬送方向に沿って複数あり、上流側の前記測定装置による測定結果に基づいて切断することで相対的に短い螺旋管を、下流側の前記測定装置による測定結果に基づいて切断することで相対的に長い螺旋管を、製造する請求項1に記載の螺旋管の製造方法。
【請求項3】
前記素管にn番目の前記螺旋凹凸部を形成した後、(n+1)番目の前記螺旋凹凸部を形成し始めてからn番目の前記螺旋凹凸部と(n+1)番目の前記螺旋凹凸部との間に介在する前記円管部で前記素管を切断する請求項1または請求項2に記載の螺旋管の製造方法。
【請求項4】
供給途上の前記素管の一端部から間隔を空けた位置にて前記押圧部を前記素管の外周面に押圧しながら当該押圧部を前記素管の周りで周方向に回転させることにより前記素管に凹凸形状が長手方向において螺旋状に変位するダミー螺旋凹凸部を形成する工程を行い、
その後、前記素管のうち前記ダミー螺旋凹凸部に対して前記一端部側とは反対側に間隔を空けた位置にて前記螺旋凹凸部を形成する工程を開始する設定とすることで前記ダミー螺旋凹凸部に対して前記一端部側とは反対側に前記円管部を設け、当該円管部の位置で前記素管を切断して前記ダミー螺旋凹凸部を有するダミー螺旋管を取り出す請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の螺旋管の製造方法。
【請求項5】
前記素管に前記ダミー螺旋凹凸部を形成する工程では、前記螺旋凹凸部よりも短い前記ダミー螺旋凹凸部を形成する請求項4記載の螺旋管の製造方法。
【請求項6】
前記素管に前記螺旋凹凸部を形成する工程では、前記押圧部を前記素管の外周面に押圧させ始めるとともに、前記素管と前記押圧部とを前記素管の長手方向に沿う第1の向きに相対変位させるとともに前記押圧部を前記素管の周方向に沿う第1回転方向に回転させることにより前記素管に前記螺旋凹凸部の一部を形成し、
その後、前記素管と前記押圧部とを前記第1の向きとは反対側の第2の向きに相対変位させるとともに前記押圧部を前記第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転させることにより前記押圧部を前記螺旋凹凸部の一部になぞらせた後、
前記素管と前記押圧部とを引き続き前記第2の向きに相対変位させるとともに前記押圧部を引き続き前記第2回転方向に回転させることにより前記素管に前記螺旋凹凸部の残りの部分を形成する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の螺旋管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、螺旋管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置などの熱交換サイクル(冷凍サイクルともいう)は、凝縮器、蒸発器、圧縮機及び膨張弁を備え、これらを連結する循環経路に、フロン、CO2、アンモニア循環経路中に二重管を配置し、当該二重管によって構成される二層の空間に、凝縮器から出てくる高温冷媒と、蒸発器から出てくる低温冷媒とを対向して流して熱交換することにより、熱交換性能を向上させることが提案されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
このような二重管は、凹凸形状が長手方向において螺旋状に変位する螺旋凹凸部を有する螺旋管を内管とし、その外周側に断面円形状の外管を装着して構成される。内管は断面円形状の円管に対して螺旋凹凸部を付与する成形加工を施す必要がある。螺旋凹凸部を有する螺旋管の従来の成形加工方法については、例えば、特許文献3に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-318015号公報
【文献】特開2006-162241号公報
【文献】特許第4628858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3に記載の方法は、短尺に切断されたまっすぐな直管を素管として用い、両端を把持した状態で中央部分に螺旋凹凸部の加工を施す方法である。この方法においては、加工可能な管の長さに制限があるだけではなく、装置への素管のセットを1本ずつ行わなければならないことから製造効率に改善の余地があった。
【0006】
本願明細書に記載の技術は、かかる背景に鑑みてなされたものであって、製造効率が向上した螺旋管の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本明細書が開示する技術に係る螺旋管の製造方法は、凹凸形状が長手方向において螺旋状に変位する螺旋凹凸部を有する螺旋管を製造する方法であって、円環状断面を有する素管を連続的に供給し、押圧部を前記素管の外周面に押圧しながら当該押圧部を前記素管の周りで周方向に回転させることにより前記素管に前記螺旋凹凸部を形成する工程を、前記素管の長手方向に対して間欠的に行うことにより長手方向において前記螺旋凹凸部と断面円形状の円管部とを交互に設け、前記円管部の位置で前記素管を切断する。
【0008】
(2)また、上記螺旋管の製造方法は、上記(1)に加え、供給途上の前記素管の一端部から間隔を空けた位置にて前記押圧部を前記素管の外周面に押圧しながら当該押圧部を前記素管の周りで周方向に回転させることにより前記素管に凹凸形状が長手方向において螺旋状に変位するダミー螺旋凹凸部を形成する工程を行い、その後、前記素管のうち前記ダミー螺旋凹凸部に対して前記一端部側とは反対側に間隔を空けた位置にて前記螺旋凹凸部を形成する工程を開始する設定とすることで前記ダミー螺旋凹凸部に対して前記一端部側とは反対側に前記円管部を設け、当該円管部の位置で前記素管を切断して前記ダミー螺旋凹凸部を有するダミー螺旋管を取り出す。
【0009】
(3)また、上記螺旋管の製造方法は、上記(2)に加え、前記素管に前記ダミー螺旋凹凸部を形成する工程では、前記螺旋凹凸部よりも短い前記ダミー螺旋凹凸部を形成する。
【0010】
(4)また、上記螺旋管の製造方法は、上記(1)から上記(3)のいずれかに加え、前記素管に前記螺旋凹凸部を形成する工程では、前記押圧部を前記素管の外周面に押圧させ始めるとともに、前記素管と前記押圧部とを前記素管の長手方向に沿う第1の向きに相対変位させるとともに前記押圧部を前記素管の周方向に沿う第1回転方向に回転させることにより前記素管に前記螺旋凹凸部の一部を形成し、その後、前記素管と前記押圧部とを前記第1の向きとは反対側の第2の向きに相対変位させるとともに前記押圧部を前記第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転させることにより前記押圧部を前記螺旋凹凸部の一部になぞらせた後、前記素管と前記押圧部とを引き続き前記第2の向きに相対変位させるとともに前記押圧部を引き続き前記第2回転方向に回転させることにより前記素管に前記螺旋凹凸部の残りの部分を形成する。
【0011】
(5)また、上記螺旋管の製造方法は、上記(1)から上記(4)のいずれかに加え、前記素管をその長手方向に沿って搬送装置により上流側から下流側へ向けて搬送しつつ前記押圧部を前記素管の周りで周方向に回転させることにより前記素管に前記螺旋凹凸部を形成する工程を行い、その後、前記素管の長手方向について前記搬送装置よりも前記下流側に配される測定装置によって前記素管における前記螺旋凹凸部及び前記円管部を含む部分の長さを測定し、前記円管部のうち前記測定装置による測定結果に基づく位置で前記素管を切断する。
【0012】
(6)また、上記螺旋管の製造方法は、上記(1)から上記(5)のいずれかに加え、前記素管にn番目の前記螺旋凹凸部を形成した後、(n+1)番目の前記螺旋凹凸部を形成し始めてからn番目の前記螺旋凹凸部と(n+1)番目の前記螺旋凹凸部との間に介在する前記円管部で前記素管を切断する。
【発明の効果】
【0013】
本願明細書に記載の技術によれば、製造効率が向上した螺旋管の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1に係るアルミニウム合金螺旋管の側面図
図2】実施形態1に係る製造装置の構成を概略的に示す側面図
図3】実施形態1に係る製造装置の構成を示す側面図であって、素管に成形加工を施す前の状態を示す側面図
図4】実施形態1に係る成形装置の正面図
図5】実施形態1に係る製造装置を用いて素管にダミー螺旋凹凸部を形成する途中の状態を示す側面図
図6】実施形態1に係る製造装置を用いて素管を切断してダミー螺旋管を取り出す作業を示す側面図
図7】実施形態1に係る製造装置を用いて素管に1番目の螺旋凹凸部が形成される途中の状態を示す側面図
図8】実施形態1に係る製造装置を用いて素管に1番目の螺旋凹凸部が形成されてから2番目の螺旋凹凸部が形成され始めた状態を示す側面図
図9】実施形態1に係る製造装置を用いて素管を切断して1番目の螺旋凹凸部が形成されたアルミニウム合金螺旋管を取り出す作業を示す側面図
図10】実施形態2に係る製造装置を用いて素管に1番目の螺旋凹凸部が形成され始めた状態を示す側面図
図11】実施形態2に係る製造装置を用いて素管に1番目の螺旋凹凸部の一部が形成されてから素管の搬送方向と押圧部の回転方向とをそれぞれ逆転させ始めた状態を示す側面図
図12】実施形態2に係る製造装置を用いて1番目の螺旋凹凸部の一部が押圧部によりなぞられた状態を示す側面図
図13】実施形態2に係る製造装置を用いて素管を切断して1番目の螺旋凹凸部が形成されたアルミニウム合金螺旋管を取り出す作業を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
実施形態1を図1から図9によって説明する。この実施形態1では、アルミニウム合金螺旋管(螺旋管)20を製造する方法について示す。
【0016】
図1は、アルミニウム合金螺旋管20の側面図である。アルミニウム合金螺旋管20は、自身の長手方向(軸線方向)において凹凸形状が螺旋状に変位する螺旋凹凸部21を有する。螺旋凹凸部21は、アルミニウム合金螺旋管20の外周面においてその周方向について交互に並ぶ凹部21A及び凸部21Bを有しており、これら凹部21A及び凸部21Bが共にアルミニウム合金螺旋管20の軸線周りに回転しながら長手方向に変位するような構成とされている。螺旋凹凸部21には、上記のような凹部21A及び凸部21Bが複数(例えば3~10対程度)ずつ含まれており、図1では3対の場合を例示している。螺旋凹凸部21は、アルミニウム合金螺旋管20における長手方向についての中央側部分に設けられている。アルミニウム合金螺旋管20における長手方向についての両端側部分には、それぞれ断面円形状の円管部22が設けられている。このような構成のアルミニウム合金螺旋管20は、例えば伝熱二重管の内管として用いることが可能である。
【0017】
図2は、上記のような構成のアルミニウム合金螺旋管20を製造するのに用いられる製造装置30の構成を概略的に示す側面図である。図2に示される製造装置30を用いてアルミニウム合金螺旋管20を製造する際には、長尺の素管10を用いている。素管10は、長手方向に沿ってほぼ真っ直ぐに延在する断面円形状の管材であり、その材質としては、例えば、1000系、3000系、5000系等のアルミニウム合金を用いることができる。また、素管10の状態としては、コスト面から考えれば、抽伸加工を施していない押出材を適用することが好ましい。素管10のサイズとしては、例えば、外径が10~30mmφ、肉厚が0.5~2.0mmのものを用いることができる。なお、素管10のサイズは、上記した各数値範囲外であっても構わない。
【0018】
上記のような素管10は、図2に示される製造装置30に対して連続的に供給されるようになっている。素管10の供給に際しては、例えば押出機から押し出された素管10をそのまま連続的に供給する方法を採ることもできるが、コイル状に巻回してなるコイル材を用いる方法を採ることも可能である。前者は、例えば押出機の出側に直結された製造ラインの構成を採ることによって、最も効率的な製造が可能となる。一方、後者は、例えばアンコイラーにセットしたレベルワウンドコイルから素管10を巻き出す構成を採ることによって、安定した連続巻き出しを行うことが容易となる。
【0019】
製造装置30は、図2に示すように、素管10を搬送する搬送装置31,32と、搬送される素管10を成形する成形装置33と、成形された素管10を切断する切断装置34と、を少なくとも備える。搬送装置31,32は、素管10をその長手方向(図2の左右方向)に沿って搬送するものであり、本実施形態では上流側(図2の右側)から下流側(図2の左側)に向けて連続的に搬送することができる。搬送装置31,32は、素管10の長手方向について成形装置33を上流側と下流側とから挟むようそれぞれ配されており、成形装置33に対して上流側に位置するものが上流側搬送装置31とされ、成形装置33に対して下流側に位置するものが下流側搬送装置32とされる。成形装置33は、素管10の長手方向について上流側搬送装置31と下流側搬送装置32との間に介在しており、素管10のうち上流側搬送装置31と下流側搬送装置32との間に挟まれた部分に対して螺旋凹凸部21を成形加工するものである。切断装置34は、素管10の長手方向について下流側搬送装置32よりも下流側に配されており、素管10のうち、成形装置33を通過した部分であって下流側搬送装置32よりも下流側に配される部分を切断するものとされる。
【0020】
図3は、製造装置30の構成を示す側面図であって、素管10に成形加工を施す前の状態を示す側面図である。搬送装置31,32は、図3に示すように、それぞれ上下一対ずつのキャタピラ31A,32Aを備える。上下のキャタピラ31A,32Aの間には、素管10が挟み込まれるようになっており、上下のキャタピラ31A,32Aの回転に伴って素管10が上流側から下流側に搬送されるようになっている。詳しくは、各キャタピラ31A,32Aは、例えば、自転可能な一対のローラと、一対のローラに架け渡されたベルトと、を有する。各キャタピラ31A,32Aに備わる各ローラが軸周りに回転されるのに伴ってベルトが回転され、回転されるベルトに接する素管10が自身の長手方向に沿って上流側から下流側に搬送される。搬送装置31,32は、素管10に、適度な張力を付与しながら成形装置33の内部を軸線方向に移動させる機能と共に、後述する成形装置33の押圧部33Aによる押圧時に素管10の軸線方向に作用するねじりモーメントに抗する保持力を有し、成形前後の素管10の偏平を抑制する機能も備えている。下流側搬送装置32は、省略されてもよいし、従動ローラによって構成されてもよい。
【0021】
成形装置33は、図3に示すように、素管10の外周面を押圧することで成形加工を施して螺旋凹凸部21を形成することが可能な押圧部33Aを備える。押圧部33Aについて図4を参照して説明する。図4は、成形装置33の正面図である。成形装置33は、図4に示すように、複数の押圧部33Aを素管10の外周面に押圧しながら当該押圧部33Aを素管10の周りで周方向に回転させることができるように構成されている。より具体的には、成形装置33は、素管10の外周面に対向して周方向に間隙をあけて配置される複数の押圧部33Aと、複数の押圧部33Aが取り付けられるブロック33Bと、を有している。押圧部33Aは、ボルトにより構成されており、その軸部の先端部に押圧面33A1を有する。ブロック33Bは、円盤状をなしており、その中心位置に素管10が挿通される素管挿通孔33B1が形成されている。素管挿通孔33B1は、素管10の中心軸Cと同軸をなす。ブロック33Bには、素管挿通孔33B1から放射状に延びて内外に貫通する複数の押圧部取付孔33B2が設けられている。複数の押圧部取付孔33B2には、外側から複数の押圧部33Aが締め付けられることで取り付けられる。押圧部取付孔33B2に取り付けられる押圧部33Aは、その先端部が素管挿通孔33B1内に進出することが可能とされる。素管挿通孔33B1内に進出した押圧部33Aの押圧面33A1によって素管10の外周面が押圧されるようになっている。
【0022】
そして、押圧部33Aは、ブロック33Bと共に駆動装置の駆動力によってブロック33B及び素管10の周方向(中心軸C周り)に回動可能に構成されている。押圧部33Aの数としては、所望の螺旋凹凸部の形状に合わせて選択可能であるが、通常は、3~10個程度の範囲から選択される。本実施形態では、押圧部33Aが3つの場合を代表して図示している。また、複数の押圧部33Aは、ブロック33Bの各押圧部取付孔33B2に対する締め付け量に応じて放射状に進退されるとともに、素管挿通孔33B1に対する軸部の先端部の進出量、つまり素管10に対する押圧量(押し込み深さ)が調整されるようになっている。具体的には、各押圧部33Aが素管10の径方向について素管10の中心に近づくよう進出すると、素管10に対する押圧量が増加するのに対し、各押圧部33Aが素管10の径方向について素管10の中心から離れるよう退避すると、素管10に対する押圧量が減少する。なお、各押圧部33Aの締め付け量の調整は、自動化することも可能であるが、手動であってもよい。
【0023】
切断装置34は、図3に示すように、素管10のうち下流側搬送装置32よりも下流側に位置する部分を切断するものとされる。素管10のうち下流側搬送装置32よりも下流側に位置する部分は、成形装置33によって成形加工が施された部分(成形部分)と、成形装置33による成形加工が施されない部分(非成形部分)と、を含んでいるが、切断装置34による素管10の切断位置は、成形部分よりも上流側の非成形部分であり、円管部22となっている。つまり、円管部22は、素管10のうちの非成形部分により構成されている。このように素管10のうちの非成形部分が切断装置34により切断されると、円管部22と、成形装置33によって成形加工された螺旋凹凸部21(成形部分)と、を含むアルミニウム合金螺旋管20が取り出されるようになっている。切断装置34としては例えばロータリーカッターなどを用いることができる。
【0024】
製造装置30は、上記した搬送装置31,32、成形装置33及び切断装置34に加えて、素管10の長さを測定する搬送用測定装置35を備える。搬送用測定装置35は、図3に示すように、素管10の長手方向について上流側搬送装置31よりも下流側で且つ成形装置33よりも上流側となる位置(上流側搬送装置31と成形装置33との間に介在する位置)に配されている。搬送用測定装置35は、上流側搬送装置31を通過した素管10の長さを測定することができる。この搬送用測定装置35による測定結果は、各搬送装置31,32による素管10の搬送制御にフィードバックされるようになっている。搬送用測定装置35としては例えばメジャーリングロールなどを用いることができる。さらには、製造装置30は、切断装置34を通過した素管10の長さを測定する切断用測定装置36~38を備える。切断用測定装置36~38は、いずれも素管10の長手方向について切断装置34よりも下流側に配されており、素管10における下流側の端部の位置を検出することで、素管10における下流側の端部から切断装置34までの素管10の長さを測定することができる。切断用測定装置36~38には、素管10の長手方向について最も下流側に位置する下流側切断用測定装置(量産切断用測定装置)36と、素管10の長手方向について最も上流側に位置する上流側切断用測定装置(円管部調整切断用測定装置)37と、素管10の長手方向について下流側切断用測定装置36と上流側切断用測定装置37との中間に位置する中間切断用測定装置(ダミー切断用測定装置)38と、が含まれる。従って、切断装置34から下流側切断用測定装置36までの距離が最も長く、切断装置34から上流側切断用測定装置37までの距離が最も短く、切断装置34から中間切断用測定装置38までの距離が中間程度とされる。これら切断用測定装置36~38による測定結果(検出結果)は、それぞれ切断装置34にフィードバックされるようになっている。すなわち、切断装置34により素管10の切断されるタイミングは、切断用測定装置36~38により素管10における下流側の端部の位置が検出されるタイミングに同期するよう設定されているので、素管10の切断に伴って取り出される管の長さを3通りとすることができる。具体的には、下流側切断用測定装置36による検出に基づいて切断装置34によって素管10が切断された場合に取り出される管(アルミニウム合金螺旋管20)の長さが最も大きい。上流側切断用測定装置37による検出に基づいて切断装置34によって素管10が切断された場合に取り出される管の長さが最も小さい。中間切断用測定装置38による検出に基づいて切断装置34によって素管10が切断された場合に取り出される管(後述するダミー螺旋管20D)の長さが中間程度とされる。切断用測定装置36~38としては例えばフォトセンサなどを用いることができる。
【0025】
本実施形態に係るアルミニウム合金螺旋管20及び製造装置30は、以上のような構造であり、続いてアルミニウム合金螺旋管20の製造方法について図3図5から図9を用いて説明する。本実施形態に係るアルミニウム合金螺旋管20の製造方法では、連続的に供給される素管10に対して連続的に成形加工を施して螺旋凹凸部21を形成し、螺旋凹凸部21が形成された素管10の長さを連続的に測定したら、螺旋凹凸部21が形成された素管10を連続的に切断することで、アルミニウム合金螺旋管20を次々に製造するようにしている。その上で、本実施形態に係るアルミニウム合金螺旋管20の製造方法では、上記のようにアルミニウム合金螺旋管20を連続的に製造するに先立ってダミー螺旋管20Dを製造しており、製造されたダミー螺旋管20Dの状態を確認することで、アルミニウム合金螺旋管20の製造に際しての諸条件を最適化することが可能とされる。以下、アルミニウム合金螺旋管20の製造方法について詳しく説明する。
【0026】
まず、ダミー螺旋管20Dの製造に関して説明する。図3に示すように、供給される素管10の一端部10Aが上流側搬送装置31及び成形装置33を超えて下流側搬送装置32に到達したら、成形装置33に備わる複数の押圧部33Aを素管10の径方向について素管10の中心に近づくよう進出させるとともに、素管10のうち一端部10Aから間隔を空けた位置における外周面に対して複数の押圧部33Aを当接させる。そして、搬送装置31,32によって素管10をその長手方向に沿って下流側に搬送して素管10を成形装置33に対して相対変位させるとともに、複数の押圧部33Aを素管10の外周面に押圧しながら複数の押圧部33Aを素管10の周りで周方向に回転させることで、図5に示すように、素管10にダミー螺旋凹凸部21Dが形成される(ダミー成形工程)。図5は、素管10にダミー螺旋凹凸部21Dを形成する途中の状態を示す側面図である。ダミー螺旋凹凸部21Dは、螺旋凹凸部21と同様に、素管10の長手方向において凹凸形状が螺旋状に変位するものである。複数の押圧部33Aは、所定のタイミングで素管10の径方向について素管10の中心から離れるよう退避させられて素管10の外周面から離されることで、ダミー螺旋凹凸部21Dの形成が停止される。このダミー螺旋凹凸部21Dの形成を停止するタイミングについては、ダミー螺旋凹凸部21Dが螺旋凹凸部21よりも短くなるよう、例えばダミー螺旋凹凸部21Dの形成開始時からの経過時間などに基づいて設定される。
【0027】
そして、素管10における一端部10A(下流側の端部)が中間切断用測定装置38に到達すると、図6に示すように、中間切断用測定装置38により検出され、素管10における一端部10Aから切断装置34までの長さが測定される。この中間切断用測定装置38による測定結果に基づいて、切断装置34によって素管10が切断される(ダミー切断工程)。図6は、素管10を切断してダミー螺旋管20Dを取り出す作業を示す側面図である。切断装置34による素管10の切断位置は、形成済みのダミー螺旋凹凸部21Dに対して上流側に隣り合う円管部22とされる。切断に伴ってダミー螺旋凹凸部21Dが形成されたダミー螺旋管20Dが取り出される。ダミー螺旋管20Dは、全体の長さがアルミニウム合金螺旋管20よりも短くされていて、長手方向についての中央側部分に螺旋凹凸部21よりも短いダミー螺旋凹凸部21Dが設けられるとともに、長手方向についての両端側部分にそれぞれ円管部22が設けられてなる。取り出されたダミー螺旋管20Dにおけるダミー螺旋凹凸部21Dの状態(例えば凹部21A及び凸部21Bの形状や凹部21Aの深さなど)を確認して各種情報を抽出する。この抽出された情報を利用することで、アルミニウム合金螺旋管20の製造に際しての諸条件(例えば素管10の外周面に対する押圧部33Aの押圧量など)を調整して最適化を図ることができる。
【0028】
アルミニウム合金螺旋管20の製造に際しての諸条件が調整されてから、アルミニウム合金螺旋管20の製造が開始される。成形装置33に備わる複数の押圧部33Aを素管10の径方向について素管10の中心に近づくよう進出させるとともに、素管10のうち上流側搬送装置31と下流側搬送装置32とにより挟まれた部分における外周面に対して複数の押圧部33Aを当接させる。そして、搬送装置31,32によって素管10をその長手方向に沿って下流側に搬送して素管10を成形装置33に対して相対変位させるとともに、複数の押圧部33Aを素管10の外周面に押圧しながら複数の押圧部33Aを素管10の周りで周方向に回転させることで、図7に示すように、素管10に螺旋凹凸部21が形成される(成形工程)。図7は、素管10に1番目の螺旋凹凸部21が形成される途中の状態を示す側面図である。この成形工程は、事前にダミー螺旋管20Dに基づいて諸条件が最適化された状態で行われているから、形成される螺旋凹凸部21における凹部21A及び凸部21Bの形状や凹部21Aの深さなどが良好なものとなるので、製造されるアルミニウム合金螺旋管20に係る良品率の向上が図られている。そして、素管10における下流側の端部が上流側切断用測定装置37に到達すると、上流側切断用測定装置37により検出され、素管10における下流側の端部から切断装置34までの長さが測定される。この上流側切断用測定装置37による測定結果に基づいて、切断装置34によって素管10が切断される。このときの切断装置34による素管10の切断位置は、形成途中の1番目の螺旋凹凸部21に対して下流側に隣り合う円管部22とされる。切断に伴って取り出される管は、成形装置33による成形が施されていない非成形部分(円管部22)のみにより構成される。これにより、1番目の螺旋凹凸部21に対して下流側に隣り合う円管部22の長さが適切なものに調整される。その後、1番目の螺旋凹凸部21の成形を継続して行う。それから、複数の押圧部33Aは、図8に示すように、所定のタイミングで素管10の径方向について素管10の中心から離れるよう退避させられて素管10の外周面から離されることで、螺旋凹凸部21の形成が停止される。この螺旋凹凸部21の形成を停止するタイミングについては、螺旋凹凸部21が設定された長さとなるよう、例えば螺旋凹凸部21の形成開始時からの経過時間などに基づいて設定される。その結果、螺旋凹凸部21は、ダミー螺旋凹凸部21Dよりも長くなっている。図8は、素管10に1番目の螺旋凹凸部21が形成されてから2番目の螺旋凹凸部21が形成され始めた状態を示す側面図である。
【0029】
上記のように1番目の螺旋凹凸部21が形成された素管10における下流側の端部が下流側切断用測定装置36に到達すると、図9に示すように、下流側切断用測定装置36により検出され、素管10における下流側の端部から切断装置34までの長さが測定される。この下流側切断用測定装置36による測定結果に基づいて、切断装置34によって素管10が切断される。図9は、素管10を切断して1番目の螺旋凹凸部21が形成されたアルミニウム合金螺旋管20を取り出す作業を示す側面図である。ここで、素管10のうち、上流側搬送装置31と下流側搬送装置32との間に介在する部分と、下流側搬送装置32よりも下流側に位置する部分と、を比べると、前者は、搬送に伴う応力が作用することで歪みが生じている可能性があるのに対し、後者は、そのような応力が殆ど作用せずに歪みが開放された状態となっている。従って、上記のように下流側切断用測定装置36によって下流側搬送装置32から下流側に位置していて歪みが開放された状態の素管10の長さを測定することで、歪みの影響が除かれた正確性の高い測定値を得ることが可能とされる。本実施形態では、切断されたアルミニウム合金螺旋管20がダミー螺旋管20Dよりも長くなっている(切断工程)。切断装置34による素管10の切断位置は、形成済みの螺旋凹凸部21に対して上流側に隣り合う円管部22とされる。切断に伴って螺旋凹凸部21が形成されたアルミニウム合金螺旋管20が取り出される。取り出されたアルミニウム合金螺旋管20は、長さに係る寸法精度が優れたものとなっている。
【0030】
上記のように素管10が切断されて製造されたアルミニウム合金螺旋管20が取り出されるタイミングでは、図9に示すように、次に製造されるアルミニウム合金螺旋管20の螺旋凹凸部21が途中まで形成された状態となっている。つまり、素管10が切断されるタイミングよりも前に複数の押圧部33Aにより素管10の外周面が押圧されていて次に製造されるアルミニウム合金螺旋管20の螺旋凹凸部21が形成され始めている(図8を参照)。従って、素管10の切断位置は、先に形成された螺旋凹凸部21と、次に形成される途中の螺旋凹凸部21と、の間に介在する円管部22となっている。このことは以下のように一般化することができる。すなわち、素管10に連続的に形成される螺旋凹凸部21の形成順を自然数の「n」としたとき、素管10にn番目の螺旋凹凸部21を形成した後、(n+1)番目の螺旋凹凸部21を形成し始めてからn番目の螺旋凹凸部21と(n+1)番目の螺旋凹凸部21との間に介在する円管部22で素管10を切断するようにしている。これにより、仮に素管を円管部で切断してn番目の螺旋凹凸部が形成された螺旋管を製造した後に(n+1)番目の螺旋凹凸部の形成を開始した場合に比べると、製造効率を向上させることができる。
【0031】
そして、本実施形態に係るアルミニウム合金螺旋管20の製造方法では、上記した成形工程が連続的に供給される素管10の長手方向に対して間欠的に行われることで、素管10には、長手方向について螺旋凹凸部21と円管部22とが交互に設けられる。交互に並ぶ螺旋凹凸部21と円管部22とのうちの円管部22の位置で素管10が切断されることで、所定長さのアルミニウム合金螺旋管20が次々に製造される。以上により、仮に予め切断された短尺の素管を用いた場合に比べると、製造効率を大幅に向上させることができるのである。
【0032】
なお、製造装置30には、上記した搬送装置31,32、成形装置33、切断装置34及び各測定装置35~38の他に、素管10を洗浄する洗浄装置などを必要に応じて組み込むことが可能である。
【0033】
以上説明したように本実施形態のアルミニウム合金螺旋管(螺旋管)20の製造方法は、凹凸形状が長手方向において螺旋状に変位する螺旋凹凸部21を有するアルミニウム合金螺旋管20を製造する方法であって、円環状断面を有する素管10を連続的に供給し、押圧部33Aを素管10の外周面に押圧しながら当該押圧部33Aを素管10の周りで周方向に回転させることにより素管10に螺旋凹凸部21を形成する工程を、素管10の長手方向に対して間欠的に行うことにより長手方向において螺旋凹凸部21と断面円形状の円管部22とを交互に設け、円管部22の位置で素管10を切断する。
【0034】
このようなアルミニウム合金螺旋管20の製造方法においては、連続的に供給される円環状断面を有する素管10は、その外周側から押圧部33Aにより押圧されるとともにその押圧部33Aが素管10の周りで周方向に回転されることで、凹凸形状が長手方向において螺旋状に変位する螺旋凹凸部21が形成される。この螺旋凹凸部21を形成する工程が、素管10の長手方向に対して間欠的に行われることで、素管10には、長手方向において螺旋凹凸部21と円管部22とが交互に設けられる。そして、交互に並ぶ螺旋凹凸部21と円管部22とのうちの円管部22の位置で素管10が切断されることで、所定長さのアルミニウム合金螺旋管20が次々に製造される。以上により、仮に予め切断された短尺の素管を用いた場合に比べると、製造効率を大幅に向上させることができる。
【0035】
また、供給途上の素管10の一端部10Aから間隔を空けた位置にて押圧部33Aを素管10の外周面に押圧しながら当該押圧部33Aを素管10の周りで周方向に回転させることにより素管10に凹凸形状が長手方向において螺旋状に変位するダミー螺旋凹凸部21Dを形成する工程を行い、その後、素管10のうちダミー螺旋凹凸部21Dに対して一端部10A側とは反対側に間隔を空けた位置にて螺旋凹凸部21を形成する工程を開始する設定とすることでダミー螺旋凹凸部21Dに対して一端部10A側とは反対側に円管部22を設け、当該円管部22の位置で素管10を切断してダミー螺旋凹凸部21Dを有するダミー螺旋管20Dを取り出す。このようなアルミニウム合金螺旋管20の製造方法においては、螺旋凹凸部21の形成に先行して素管10の一端部10Aから間隔を空けた位置にダミー螺旋凹凸部21Dを形成しており、素管10のうちダミー螺旋凹凸部21Dに対して一端部10A側とは反対側に間隔を空けた位置にて螺旋凹凸部21を形成する工程が開始される設定となっている。これに伴い、素管10のうちダミー螺旋凹凸部21Dに対して一端部10A側とは反対側に円管部22が設けられるので、この円管部22の位置で素管10を切断することで、ダミー螺旋管20Dが取り出される。この取り出されたダミー螺旋管20Dに形成されたダミー螺旋凹凸部21Dの状態を確認することで、螺旋凹凸部21を形成する工程での素管10の外周面に対する押圧部33Aの押圧深さなどの諸条件を調整するのに必要な情報を得ることができる。これにより、素管10に良好な螺旋凹凸部21を形成することができ、アルミニウム合金螺旋管20に係る良品率の向上を図ることができる。
【0036】
また、素管10にダミー螺旋凹凸部21Dを形成する工程では、螺旋凹凸部21よりも短いダミー螺旋凹凸部21Dを形成する。このようなアルミニウム合金螺旋管20の製造方法においては、ダミー螺旋管20Dに要するコストを削減することができる。
【0037】
また、素管10をその長手方向に沿って搬送装置31,32により上流側から下流側へ向けて搬送しつつ押圧部33Aを素管10の周りで周方向に回転させることにより素管10に螺旋凹凸部21を形成する工程を行い、その後、素管10の長手方向について搬送装置31,32よりも下流側に配される下流側切断用測定装置(測定装置)36によって素管10における螺旋凹凸部21及び円管部22を含む部分の長さを測定し、円管部22のうち下流側切断用測定装置36による測定結果に基づく位置で素管10を切断する。このようなアルミニウム合金螺旋管20の製造方法においては、素管10は、その長手方向について搬送装置31,32を構成する下流側搬送装置32よりも上流側では搬送に伴う応力が作用することで歪みが生じる可能性があるのに対し、長手方向について搬送装置31,32よりも下流側では上記のような歪みが開放されている。従って、素管10の長手方向について搬送装置31,32よりも下流側に配される下流側切断用測定装置36により素管10の長さを測定して得られる測定結果は、歪みの影響が除かれた正確性の高いものとなる。そして、円管部22のうち下流側切断用測定装置36による測定結果に基づく位置で素管10を切断してアルミニウム合金螺旋管20を製造しているので、アルミニウム合金螺旋管20の長さに係る寸法精度が優れたものとなる。
【0038】
また、素管10にn番目の螺旋凹凸部21を形成した後、(n+1)番目の螺旋凹凸部21を形成し始めてからn番目の螺旋凹凸部21と(n+1)番目の螺旋凹凸部21との間に介在する円管部22で素管10を切断する。このようなアルミニウム合金螺旋管20の製造方法においては、素管10に(n+1)番目の螺旋凹凸部21を形成し始めた後に、n番目の螺旋凹凸部21が形成されたアルミニウム合金螺旋管20が製造されることになる。従って、仮に素管を円管部で切断してn番目の螺旋凹凸部が形成されたアルミニウム合金螺旋管を製造した後に(n+1)番目の螺旋凹凸部の形成を開始した場合に比べると、製造効率をより向上させることができる。なお、上記した「n」は、自然数であり、「n番目」及び「(n+1)番目」は、素管10に連続的に形成される螺旋凹凸部21の形成順を示す。
【0039】
<実施形態2>
実施形態2を図10から図13によって説明する。この実施形態2では、アルミニウム合金螺旋管120の製造方法に含まれる成形工程を変更したものを示す。なお、上記した実施形態1と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。また、本実施形態の説明で登場する上記した実施形態1と同じ名称の構成要素には、同じ符号を用いるとともにその先頭に添え字「1」を付す。
【0040】
本実施形態に係るアルミニウム合金螺旋管120の製造方法においては、成形工程において素管110の搬送方向と押圧部133Aの回転方向とを途中でそれぞれ逆転させるようにしている。なお、本実施形態では、上記した実施形態1のようにアルミニウム合金螺旋管20の製造に先立ってダミー螺旋管20Dを製造することがない場合を例示しているが、実施形態1と同様に先立ってダミー螺旋管20Dを製造するようにしても構わない。また、本実施形態では、上記した実施形態1に記載した下流側切断用測定装置36に代えて切断用測定装置(測定装置)39が切断装置134よりも下流側に配されている(図13を参照)。なお、本実施形態では、上記した実施形態1に記載した上流側切断用測定装置37及び中間切断用測定装置38が省略されている。
【0041】
詳しくは、アルミニウム合金螺旋管120の製造が開始され、図10に示すように、供給される素管110の一端部110Aが上流側搬送装置131及び成形装置133を超えて下流側搬送装置132に到達したら、成形装置133に備わる複数の押圧部133Aを素管110の径方向について進出させるとともに、素管110のうち一端部110Aから間隔を空けた位置における外周面に対して複数の押圧部133Aを当接させる。図10は、素管110に1番目の螺旋凹凸部121が形成され始めた状態を示す側面図である。このときの素管110の一端部110Aの位置は、実施形態1でのダミー螺旋管20Dの製造時における素管10の一端部10Aの位置(図3を参照)よりも下流側に設定されている。そして、この状態から搬送装置131,132によって素管110をその長手方向に沿って図10に示す右側、つまり上流側(第1の向き)に搬送して素管110を成形装置133に対して相対変位させるとともに、複数の押圧部133Aを素管110の外周面に押圧しながら複数の押圧部133Aを素管110の周りで周方向に沿う第1回転方向に回転させることで、図11に示すように、素管110に螺旋凹凸部121の一部が形成される。このとき、素管110が移動される向きは、上記した実施形態1での素管10が移動される向き(図5を参照)とは逆であり、同様に、押圧部133Aが素管110の周方向に沿って回転される方向である第1回転方向は、上記した実施形態1での押圧部33Aが回転される方向(図5を参照)とは逆となっている。また、このときに素管110に形成される螺旋凹凸部121の一部は、素管110の一端部110Aを含む円管部122に対して長手方向について上流側に隣り合う部分とされる。図11は、素管110に1番目の螺旋凹凸部121の一部が形成されてから素管110の搬送方向と押圧部133Aの回転方向とをそれぞれ逆転させ始めた状態を示す側面図である。
【0042】
図11に示すように、素管110に螺旋凹凸部121の一部が形成されたら、今度は、素管110の搬送方向と押圧部133Aの回転方向とをそれぞれ逆転させる。すなわち、搬送装置131,132によって素管110をその長手方向に沿って図11に示す左側、つまり下流側(第2の向き)に搬送して素管110を成形装置133に対して相対変位させるとともに、複数の押圧部133Aを素管110の外周面に押圧しながら複数の押圧部133Aを素管110の周りで周方向に沿う第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転させる。すると、図12に示すように、先に形成された螺旋凹凸部121の一部(下流端側部分)が複数の押圧部133Aによってなぞられることになる。これにより、螺旋凹凸部121の一部(下流端側部分)における形状が明確化される。図12は、1番目の螺旋凹凸部121の一部が押圧部133Aによりなぞられた状態を示す側面図である。その後も引き続いて搬送装置131,132によって素管110をその長手方向に沿って下流側に搬送するとともに、複数の押圧部133Aを素管110の外周面に押圧しながら複数の押圧部133Aを素管110の周りで周方向に沿う第2回転方向に回転させることで、図13に示すように、素管110に螺旋凹凸部121の残りの部分が形成される。図13は、素管110を切断して1番目の螺旋凹凸部121が形成されたアルミニウム合金螺旋管120を取り出す作業を示す側面図である。そして、螺旋凹凸部121の形成開始時からの経過時間などに基づいて螺旋凹凸部121が設定された長さになったと判定されると、再び素管110の搬送方向と押圧部133Aの回転方向とをそれぞれ逆転させる。すなわち、搬送装置131,132によって素管110をその長手方向に沿って上流側(第1の向き)に搬送して素管110を成形装置133に対して相対変位させるとともに、複数の押圧部133Aを素管110の外周面に押圧しながら複数の押圧部133Aを素管110の周りで周方向に沿う第1回転方向に回転させる。すると、先に形成された螺旋凹凸部121の一部(上流端側部分)が複数の押圧部133Aによってなぞられることになる。これにより、螺旋凹凸部121の一部(上流端側部分)における形状が明確化される。以上のように、アルミニウム合金螺旋管120は、螺旋凹凸部121における長手方向についての両端側部分の形状がいずれも明確化されている。ここで、例えばアルミニウム合金螺旋管120を熱交換器の伝熱管として用いた場合には、アルミニウム合金螺旋管120の両端部が一対のヘッダ管に差し込まれるとともにアルミニウム合金螺旋管120の内部に冷媒が流通されることになるが、このとき、螺旋凹凸部121における長手方向についての両端側部分の形状が共に明確化されていることで、冷媒の圧力損失が抑制される、という効果を得ることができる。
【0043】
このようにして螺旋凹凸部121が形成された素管110における下流側の端部が切断用測定装置39に到達すると、切断用測定装置39により検出され、素管110における下流側の端部から切断装置134までの長さが測定される。この切断用測定装置39による測定結果に基づいて切断装置134によって素管110を円管部122で切断する。これにより、螺旋凹凸部121の両端側部分が押圧部133Aによって2回ずつ押圧されることで形成されたアルミニウム合金螺旋管120が取り出される。なお、2番目以降のアルミニウム合金螺旋管120の製造に際し、上記した1番目のアルミニウム合金螺旋管120と同様に、螺旋凹凸部121の両端側部分を押圧部133Aによって2回ずつ押圧して形成することも可能であるが、上記した実施形態1と同様にして形成することも可能である。
【0044】
以上説明したように本実施形態によれば、素管110に螺旋凹凸部121を形成する工程では、押圧部133Aを素管110の外周面に押圧させ始めるとともに、素管110と押圧部133Aとを素管110の長手方向に沿う第1の向きに相対変位させるとともに押圧部133Aを素管110の周方向に沿う第1回転方向に回転させることにより素管110に螺旋凹凸部121の一部を形成し、その後、素管110と押圧部133Aとを第1の向きとは反対側の第2の向きに相対変位させるとともに押圧部133Aを第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転させることにより押圧部133Aを螺旋凹凸部121の一部になぞらせた後、素管110と押圧部133Aとを引き続き第2の向きに相対変位させるとともに押圧部133Aを引き続き第2回転方向に回転させることにより素管110に螺旋凹凸部121の残りの部分を形成する。
【0045】
このようなアルミニウム合金螺旋管120の製造方法においては、素管110と押圧部133Aとを第1の向きに相対変位させるとともに、押圧部133Aを第1回転方向に回転させることで、素管110に螺旋凹凸部121の一部が先行して形成される。その後、素管110と押圧部133Aとを第1の向きとは反対側の第2の向きに相対変位させるとともに、押圧部133Aを第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転させることで、先行して形成された螺旋凹凸部121の一部に押圧部133Aをなぞらせる。これにより、螺旋凹凸部121の一部における形状が明確化される。それから、素管110と押圧部133Aとを引き続き第2の向きに相対変位させるとともに、押圧部133Aを引き続き第2回転方向に回転させることで、素管110に螺旋凹凸部121の残りの部分が形成される。
【0046】
<他の実施形態>
本明細書が開示する技術は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0047】
(1)成形工程において、複数の押圧部33A,133Aを素管10,110に対してその長手方向に移動させるとともに、複数の押圧部33A,133Aを素管10,110の周りで周方向に回転させることで、螺旋凹凸部21,121を形成するようにしても構わない。
【0048】
(2)切断工程において、n番目の螺旋凹凸部21,121が形成されたアルミニウム合金螺旋管20,120を取り出すべく素管10,110を切断するタイミングは、(n+1)番目の螺旋凹凸部21,121が形成され始める前であっても構わない。それ以外にも、アルミニウム合金螺旋管20,120を取り出すべく素管10,110を切断する具体的なタイミングは、適宜に変更可能である。
【0049】
(3)実施形態1において、素管10にダミー螺旋凹凸部21Dを形成する工程では、螺旋凹凸部21よりも長いダミー螺旋凹凸部21Dを形成するようにしてもよい。また、素管10にダミー螺旋凹凸部21Dを形成する工程では、螺旋凹凸部21とほぼ同じ長さのダミー螺旋凹凸部21Dを形成するようにしてもよい。
【0050】
(4)実施形態1において、ダミー螺旋凹凸部21Dが形成されたダミー螺旋管20Dを取り出すべく素管10を切断するタイミングは、1番目の螺旋凹凸部21が形成され始めた後であっても構わない。それ以外にも、ダミー螺旋管20Dを取り出すべく素管10を切断する具体的なタイミングは、適宜に変更可能である。
【0051】
(5)実施形態1において、ダミー螺旋凹凸部21Dを形成する際に、実施形態2と同様に、ダミー螺旋凹凸部21Dの一部を押圧部33Aによって2回押圧して形成することも可能である。
【0052】
(6)搬送装置31,32,131,132に関する具体的な構成は、各図面での図示以外にも適宜に変更可能である。
【0053】
(7)成形装置33に関する具体的な構成は、各図面での図示以外にも適宜に変更可能である。
【0054】
(8)切断装置34,134に関する具体的な構成は、各図面での図示以外にも適宜に変更可能である。
【0055】
(9)各測定装置35~39に関する具体的な構成は、各図面での図示以外にも適宜に変更可能である。例えば、搬送用測定装置35は、フォトセンサにより構成されていても構わない。また、各切断用測定装置36~39は、メジャーリングロールにより構成されていても構わない。
【0056】
(10)アルミニウム合金以外の材料を用いた螺旋管の製造方法であっても構わない。
【0057】
(11)搬送用測定装置35の配置は変更可能である。その場合でも、搬送用測定装置35は、切断装置34,134よりも上流側であるのが好ましく、成形装置33,133と切断装置34,134との間の配置とすることが可能である。
【0058】
(12)上記した実施形態1において、中間切断用測定装置38を省略することも可能である。その場合、ダミー螺旋管20Dやダミー螺旋凹凸部21Dの各長さを調整しておき、製造に際しては上流側切断用測定装置37による測定結果に基づいて素管10を切断することでダミー螺旋管20Dを取り出すようにすればよい。
【0059】
(13)実施形態2において、螺旋凹凸部121における長手方向についての一方の端側部分のみを、押圧部133Aによって2回押圧して形成することも可能である。
【0060】
(14)搬送装置31,32,131,132のうち、下流側搬送装置32,132を省略することも可能である。
【0061】
(15)押圧部33A,133Aは、ボルト以外の部材によって構成されていても構わない。その場合は、成形装置33,133に備わる押圧部33A,133A以外の構成を適宜に変更すればよい。
【符号の説明】
【0062】
10,110…素管、10A,110A…一端部、20,120…アルミニウム合金螺旋管(螺旋管)、20D…ダミー螺旋管、21,121…螺旋凹凸部、21D…ダミー螺旋凹凸部、22,122…円管部、31,131…上流側搬送装置(搬送装置)、32,132…下流側搬送装置(搬送装置)、33A,133A…押圧部、36…下流側切断用測定装置(測定装置)、39…切断用測定装置(測定装置)
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