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特許7551463検知システム、電子装置、および検知方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】検知システム、電子装置、および検知方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/66 20060101AFI20240909BHJP
   F04D 27/00 20060101ALI20240909BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20240909BHJP
   G10K 15/00 20060101ALI20240909BHJP
   H04R 29/00 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
F04D29/66 M
F04D27/00 H
H04R1/02 108
G10K15/00 L
H04R29/00 320
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020189445
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078629
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 宏行
(72)【発明者】
【氏名】川出 大佑
(72)【発明者】
【氏名】宮本 陽
(72)【発明者】
【氏名】小松 哲也
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-187971(JP,A)
【文献】特開平11-166858(JP,A)
【文献】特開2011-137560(JP,A)
【文献】特開2002-212417(JP,A)
【文献】特開2018-125756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/66
F04D 27/00
H04R 1/02
G10K 15/00
H04R 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1機器と電子装置とによって構成される検知システムであって、
前記第1機器の筐体内には、第1ファンが設置され、
前記第1ファンは、前記第1ファンの回転中心に位置するハブを有し、
前記電子装置は、
第1マイクから収集された音の第1信号を取得し、
前記第1信号を用いて、前記第1ファンに関する状態変化を検知するように構成され、
前記第1マイクは、前記第1ファンが動作したときに生じる空気の流れの方向にある第1位置であって、前記第1ファンの中心部から第1距離だけ離れた前記筐体外の第1位置に、前記第1マイクを把持し、前記筐体に対して固定して取り付けられる器具を用いて設置され、
前記第1マイクはさらに、前記第1マイクの長手方向に沿う前記第1マイクの中心線が、前記ハブの外径内を通過するように設置され、
前記器具は、前記筐体と接する面に開口部を有し、
前記開口部は、前記第1ファンの羽根よりも小さく、前記ハブよりも大きい、
検知システム。
【請求項2】
前記第1マイクは、前記第1ファンが動作したときに生じる空気の流れの方向を第1方向とした場合に、前記第1ファンが設置された第1面に対して前記第1方向にある前記第1位置であって、前記第1方向に前記第1ファンから前記第1距離だけ離れた前記筐体外の前記第1位置に、前記第1ファンの中心部に向けて設置される、請求項1記載の検知システム。
【請求項3】
前記第1マイクは、前記第1位置に、前記第1ファンが動作したときに生じる空気の流れの方向に沿って設置される、請求項1記載の検知システム。
【請求項4】
前記第1マイクは、前記器具を前記筐体の一部に沿ってスライドさせる操作により、前記第1位置に設置される、請求項記載の検知システム。
【請求項5】
前記器具は、前記器具の内部を、前記第1ファンが動作したときに生じる空気が通過する構造を有する、請求項または請求項に記載の検知システム。
【請求項6】
前記状態変化は、前記第1ファンの劣化、および前記第1ファンの異常を含む、請求項1記載の検知システム。
【請求項7】
前記電子装置は、さらに、前記状態変化を通知するように構成される、請求項1記載の検知システム。
【請求項8】
前記第1機器は、前記電子装置を備える、請求項1記載の検知システム。
【請求項9】
前記筐体内には、第2ファンがさらに設置され、
前記電子装置は、さらに、
第2マイクから収集された音の第2信号を取得し、
前記第1信号と前記第2信号とを用いて、前記第1ファンと前記第2ファンの少なくとも一方に関する状態変化を検知するように構成され、
前記第2マイクは、前記第2ファンが動作したときに生じる空気の流れの方向の位置であって、前記第2ファンから前記第1距離だけ離れた前記筐体外の位置に設置される、請求項1記載の検知システム。
【請求項10】
第1マイクから収集された音の第1信号を取得する取得手段と、
前記第1信号を用いて、第1機器の筐体内に設置された第1ファンの状態変化を検知する検知手段と、を具備し、
前記第1ファンは、前記第1ファンの回転中心に位置するハブを有し、
前記第1マイクは、前記第1ファンが動作したときに生じる空気の流れの方向にある第1位置であって、前記第1ファンの中心部から第1距離だけ離れた前記筐体外の第1位置に、前記第1マイクを把持し、前記筐体に対して固定して取り付けられる器具を用いて設置され、
前記第1マイクはさらに、前記第1マイクの長手方向に沿う前記第1マイクの中心線が、前記ハブの外径内を通過するように設置され、
前記器具は、前記筐体と接する面に開口部を有し、
前記開口部は、前記第1ファンの羽根よりも小さく、前記ハブよりも大きい、
電子装置。
【請求項11】
第1マイクから収集された音の第1信号を取得し、
前記第1信号を用いて、第1機器の筐体内に設置された第1ファンの状態変化を検知し、
前記第1ファンは、前記第1ファンの回転中心に位置するハブを有し、
前記第1マイクは、前記第1ファンが動作したときに生じる空気の流れの方向にある第1位置であって、前記第1ファンの中心部から第1距離だけ離れた前記筐体外の第1位置に、前記第1マイクを把持し、前記筐体に対して固定して取り付けられる器具を用いて設置され、
前記第1マイクはさらに、前記第1マイクの長手方向に沿う前記第1マイクの中心線が、前記ハブの外径内を通過するように設置され、
前記器具は、前記筐体と接する面に開口部を有し、
前記開口部は、前記第1ファンの羽根よりも小さく、前記ハブよりも大きい、
検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検知システム、電子装置、および検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機器では、安全性の維持のために定期検査が行われる。また、運転中の異常を速やかに検知し事故を未然に防ぐことを目的として、機器の状態を加速度センサや温度センサで監視する技術が実用化されている。
【0003】
機器の異常は音として表れることが多い。そのため、機器の動作音を利用した状態監視として、音データに対して解析を行って、機器の故障を検出する技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-036142号公報
【文献】特開2018-125756号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】トン ユル オー(Dong Yul Oh)、外1名、「SMDマシン音におけるオートエンコーダを用いた残差に基づく異常検知(Residual Error Based Anomaly Detection Using Auto-Encoder in SMD Machine Sound)”、「センサーズ(Sensors)」、2018年、第18巻、第5号、 No.1308
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
監視対象の機器は、ファンのような風を発生する部品を有する場合がある。その場合、風がマイクに当たることにより、マイクを用いて収集される音の信号に、ノイズである風切り音の信号が混入し得る。そのため、風切り音によるノイズの影響を軽減して、監視対象機器の状態変化をより正確に検知できる新たな技術の実現が要求される。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、監視対象機器の状態変化をより正確に検知できる検知システム、電子装置、および検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、検知システムは、第1機器と電子装置とによって構成される。前記第1機器の筐体内には、第1ファンが設置される。前記第1ファンは、前記第1ファンの回転中心に位置するハブを有する。前記電子装置は、第1マイクから収集された音の第1信号を取得し、前記第1信号を用いて、前記第1ファンに関する状態変化を検知するように構成される。前記第1マイクは、前記第1ファンが動作したときに生じる空気の流れの方向にある第1位置であって、前記第1ファンから第1距離だけ離れた前記筐体外の第1位置に、前記第1マイクを把持し、前記筐体に対して固定して取り付けられる器具を用いて設置される。前記第1マイクはさらに、前記第1マイクの長手方向に沿う前記第1マイクの中心線が、前記ハブの外径内を通過するように設置される。前記器具は、前記筐体と接する面に開口部を有する。前記開口部は、前記第1ファンの羽根よりも小さく、前記ハブよりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る検知システムの構成例を示すブロック図。
図2】第1実施形態の検知システム内の検知装置のシステム構成例を示すブロック図。
図3】第1実施形態の検知システム内のサーバのシステム構成例を示すブロック図。
図4】第1実施形態の検知システム内の、1つのファンを備える監視対象機器の外観の例を示す斜視図。
図5】マイクが設置された監視対象機器の構造の例を示す断面図。
図6】監視対象機器に対してマイクを設置するための設置器具の構造の例を示す斜視図。
図7図6の設置器具を用いて監視対象機器に対してマイクを設置する操作の例を示す斜視図。
図8図6の設置器具を構成するマイク固定器具の構造の例を示す斜視図。
図9図7のマイク固定器具において、マイクが固定される高さ方向の位置を決定するための高さ決め器具の構造の例を示す斜視図。
図10図6の設置器具を構成する位置決め器具の構造の例を示す斜視図。
図11】マイクが設置された監視対象機器の構造の別の例を示す断面図。
図12図11の監視対象機器に対してマイクを設置する操作の例を説明するための正面図。
図13】監視対象機器の動作音を取得するマイクの設置位置の例を示す図。
図14図13で取得した動作音の、設置位置に応じた差異の例を示す図。
図15図2の検知装置において実行される検知処理の手順の例を示すフローチャート。
図16図2の検知装置において実行される検知プログラムの機能構成の例を示すブロック図。
図17図2の検知装置において実行される学習プログラムの機能構成の例を示すブロック図。
図18図2の検知装置において実行される検知プログラムの機能構成の別の例を示すブロック図。
図19】第2実施形態に係る検知システム内の、2つのファンを備える監視対象機器の外観の例を示す斜視図。
図20】マイクが設置された監視対象機器の構造の例を示す断面図。
図21図19の監視対象機器において、一方のファンの補正前の異常度と、当該ファンの異常度が他方のファンの異常度に与える影響量との関係の例を示す図。
図22】第2実施形態の検知システム内の検知装置において実行される検知プログラムの機能構成の例を示すブロック図。
図23】第2実施形態の検知システム内の検知装置において実行される検知処理の手順の別の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、第1実施形態に係る検知システムの構成を説明する。検知システム1は、N個の監視対象機器4-1,4-2,……,4-Nの各々の状態変化を検知するためのシステムである。検知システム1は、例えば、N個の検知装置2-1,2-2,……,2-N、N個のマイク3-1,3-2,……,3-N、N個の監視対象機器4-1,4-2,……,4-N、およびサーバ5によって構成される。Nは1以上の整数である。
【0012】
N個の検知装置2-1,2-2,……,2-Nの各々は、コンピュータのような各種の電子装置として実現され得る。検知装置2-1,2-2,……,2-Nは、マイク3-1,3-2,……,3-Nを用いて収集された音の信号(音データ)を取得する。検知装置2-1,2-2,……,2-Nは、有線または無線による通信を介して、マイク3-1,3-2,……,3-Nから音の信号を受信し得る。あるいは、検知装置2-1,2-2,……,2-Nは、マイク3-1,3-2,……,3-Nを用いて収集された音の信号を記録した可搬性の記憶媒体(例えばフラッシュメモリ)を介して、音の信号を取得してもよい。
【0013】
各マイク3-1,3-2,……,3-Nは、N個の監視対象機器4-1,4-2,……,4-Nのいずれかに対して設置される。マイク3-1,3-2,……,3-Nは、設置されている監視対象機器4-1,4-2,……,4-Nの動作によって生じる音を収集して、信号を生成する。なお、マイク3-1,3-2,……,3-Nは、検知装置2-1,2-2,……,2-Nに内蔵されていてもよい。その場合、マイク3-1,3-2,……,3-Nを内蔵する検知装置2-1,2-2,……,2-Nが、監視対象機器4-1,4-2,……,4-Nに対して設置される。
【0014】
N個の監視対象機器4-1,4-2,……,4-Nの各々は、筐体内で空気の流れ(気流)を発生させる構成を有する。以下では、監視対象機器4-1,4-2,……,4-Nの筐体内で空気の流れを発生させる構成がファンである場合を主に例示する。監視対象機器4-1,4-2,……,4-Nは、産業用の無停電電源装置(UPS)、パーソナルコンピュータ(PC)用のUPS、サーバコンピュータ、スイッチングハブ、電動機、冷却ファン、家庭用エアコンの室外機、または業務用エアコンの空冷ヒートポンプチラー、等である。なお、監視対象機器4-1,4-2,……,4-Nは、検知装置2-1,2-2,……,2-Nを備えていてもよい。つまり、監視対象機器4-1,4-2,……,4-Nの1つと、検知装置2-1,2-2,……,2-Nの1つとが一体化されていてもよい。
【0015】
検知装置2-1,2-2,……,2-Nは、取得した音の信号を用いて監視対象機器4-1,4-2,……,4-Nのファンに関する状態変化を検知する。検知装置2-1,2-2,……,2-Nは、ファンに関する異常検知、劣化検知、故障検知、故障診断(例えば故障の種類を識別)、等を行い得る。より詳しくは、ファンに関する状態変化には、ファンの軸受けの劣化または異常、ファンの羽根の劣化または異常、等が含まれる。検知装置2-1,2-2,……,2-Nは、有線または無線による通信を介して、ファンに関する状態変化を示す検知結果をサーバ5に通知(送信)してもよい。
【0016】
より具体的には、例えば、検知装置2-1は、マイク3-1を用いて収集された監視対象機器4-1の動作音の信号を取得する。検知装置2-1は、取得した音の信号を用いて、監視対象機器4-1のファンに関する状態変化を検知する。検知装置2-1は検知結果をサーバ5に送信する。
【0017】
検知装置2-2は、マイク3-2を用いて収集された監視対象機器4-2の動作音の信号を取得する。検知装置2-2は、取得した音の信号を用いて、監視対象機器4-2のファンに関する状態変化を検知する。検知装置2-2は検知結果をサーバ5に送信する。
【0018】
検知装置2-Nは、マイク3-Nを用いて収集された監視対象機器4-Nの動作音の信号を取得する。検知装置2-Nは、取得した音の信号を用いて、監視対象機器4-Nのファンに関する状態変化を検知する。検知装置2-Nは検知結果をサーバ5に送信する。
【0019】
サーバ5は、検知装置2-1,2-2,……,2-Nから、監視対象機器4-1,4-2,……,4-Nのファンに関する状態変化を示す検知結果を受信する。サーバ5は、受信した検知結果を解析するサーバコンピュータである。サーバ5は、例えば、複数の監視対象機器4-1,4-2,……,4-Nに関する検知結果を用いて、ファンが劣化しやすい環境を検出する。サーバ5は、各監視対象機器4-1,4-2,……,4-Nが設置されている環境に関する情報(例えば、温度、湿度等)を取得し得る。また、サーバ5は、例えば、監視対象機器4-1,4-2,……,4-Nのいずれか1つに関する検知結果を用いて、その監視対象機器のファンの劣化または異常の将来予測(例えば、故障予知、余寿命予測)を行ってもよい。
【0020】
サーバ5は、検知装置2-1,2-2,……,2-Nから受信した検知結果をストレージデバイス53(以下、ストレージ53とも称する)に格納し得る。また、サーバ5は、検知結果を解析した結果をストレージ53に格納してもよい。ストレージ53は、サーバ5に内蔵されていてもよいし、ケーブルやネットワークを介してサーバ5に接続されていてもよい。
【0021】
サーバ5は、監視対象機器4-1,4-2,……,4-Nのファンに関する状態変化を示す検知結果を、管理者(ユーザ)に通知してもよい。あるいは、サーバ5は、検知結果を解析した結果を、管理者に通知してもよい。通知には、例えばディスプレイ55が用いられる。ディスプレイ55は、サーバ5に直接接続されているものであってもよいし、ネットワークを介して接続された、管理者が使用する端末のディスプレイであってもよい。ディスプレイ55の画面には、例えば異常や故障を通知するためのメッセージが表示される。なお、この通知は、画面上の表示に限らず、スピーカからのアラート音、LEDの点灯や点滅等によって実現されてもよい。
【0022】
以下では、検知装置2-1,2-2,……,2-Nのいずれか1つを、検知装置2とも称する。検知装置2が、音の信号の取得に用いるマイク3-1,3-2,……,3-Nのいずれか1つを、マイク3とも称する。また、マイク3が設置されている監視対象機器4-1,4-2,……,4-Nのいずれか1つを、監視対象機器4とも称する。
【0023】
図2は検知装置2のシステム構成例を示す。検知装置2は、例えば、CPU21、RAM22、不揮発性メモリ23、オーディオインターフェース(I/F)24、および通信デバイス25を備える。
【0024】
CPU21は、検知装置2内の様々なコンポーネントの動作を制御するプロセッサである。CPU21は、不揮発性メモリ23からRAM22にロードされた様々なプログラムを実行する。プログラムには、オペレーティングシステム(OS)および様々なアプリケーションプログラムが含まれる。アプリケーションプログラムには、検知プログラム22Aが含まれる。検知プログラム22Aは、監視対象機器4のファンに関する状態変化を検知するためのプログラムである。
【0025】
CPU21はオーディオI/F24を介して、マイク3によって収集された音の信号を受信する。オーディオI/F24は、検知装置2とマイク3との間の通信を行うためのハードウェアI/F(すなわち回路)である。CPU21は、受信した音の信号を、RAM22や不揮発性メモリ23に保存してもよい。
【0026】
通信デバイス25は、有線または無線による通信を実行するように構成されたデバイスである。通信デバイス25は、信号を送信する送信部と信号を受信する受信部とを含む。
【0027】
CPU21は通信デバイス25を介して、サーバ5にデータ(例えば検知結果)を送信する。また、CPU21は通信デバイス25を介して、サーバ5からデータを受信してもよい。
【0028】
なお、CPU21は、マイク3によって収集された音の信号を、オーディオI/F24ではなく、通信デバイス25を介して取得してもよい。
【0029】
図3はサーバ5のシステム構成例を示す。サーバ5は、例えば、CPU51、RAM52、不揮発性メモリ(ストレージ)53、通信デバイス54、ディスプレイ55、およびスピーカ56を備える。
【0030】
CPU51は、サーバ5内の様々なコンポーネントの動作を制御するプロセッサである。CPU51は、不揮発性メモリ53からRAM52にロードされる様々なプログラムを実行する。プログラムには、OSおよび様々なアプリケーションプログラムが含まれている。アプリケーションプログラムには、解析プログラム52Aが含まれている。解析プログラム52Aは、検知装置2による検知結果を解析するためのプログラムである。
【0031】
通信デバイス54は、有線または無線による通信を実行するように構成されたデバイスである。通信デバイス54は、信号を送信する送信部と信号を受信する受信部とを含む。通信デバイス54の受信部は、例えば、検知装置2から、監視対象機器4のファンに関する状態変化を示す検知結果を受信する。
【0032】
ディスプレイ55は、CPU51によって生成される表示信号に基づいて画面イメージを表示する。スピーカ56は、CPU51によって生成される音信号に基づいて音を出力する。
【0033】
サーバ5では、ディスプレイ55やスピーカ56のような様々な通知手段を用いて、監視対象機器4のファンに関する状態変化が通知され得る。通知手段は、監視対象機器4のファンに関する状態変化を管理者が識別可能な態様で通知するいずれの構成であってもよい。
【0034】
図4は監視対象機器4の外観の例を示す斜視図である。
監視対象機器4は筐体41を有する。筐体41の、例えば上面には、開口部42が設けられている。開口部42は、網状のフェンス(例えば金網)で覆われていてもよい。
【0035】
筐体41内には、開口部42の下部に、ファン43が設けられている。ファン43は、排気口である開口部42から、筐体41内の空気を筐体41外に排出するように動作する。これにより、監視対象機器4の排熱が行われる。
【0036】
監視対象機器4には、その動作音を収集するために、マイク3が設置される。
【0037】
図5は、マイク3が設置された監視対象機器4の構造の例を示す断面図である。
筐体41の上面に設けられた開口部42は、網状のフェンス42Aで覆われている。つまり、筐体41は、その開口部42にフェンス42Aを備えている。筐体41内の、フェンス42Aの下側には、ファン43が設置されている。フェンス42Aは、例えばファン43のカバーとして機能する。このフェンス42Aには厚さ方向に沿って貫通する複数の孔42A1が形成されており、この孔42A1は、ファン43の後述するハブ432より小さくかつマイク3の対向面に比べて小さく形成されマイク3の落下防止としての機能と後述する風切り音低減手段としても機能している。
【0038】
ファン43は複数の羽根431とハブ432とで構成される。ハブ432は、例えば円筒形の形状を有する。ハブ432はファン43の回転中心に位置する。ハブ432は複数の羽根431を軸44に接続する。
【0039】
軸44はモータ45および軸受け46に接続されている。モータ45は回転のための動力を発生させる。軸44は、モータ45による動力を伝達してファン43と共に回転する。つまり、軸44は、ファン43の回転の中心の役を果たす部品である。軸受け46は、回転するファン43の軸44に接して荷重を受け、軸44を支持する部品である。
【0040】
点線で図示した矢印81は、ファン43の回転によって発生する空気の流れの方向(排出方向)を模式的に表している。矢印81は、ファン43の回転によって、筐体41内で発生した垂直方向の上向きの空気の流れが、筐体41外で拡散していくことを示している。以下では、矢印81で示されている方向を、排出方向81とも称する。
【0041】
マイク3は、筐体41外であって、ファン43が動作(回転)したときに生じる空気の流れの影響が少ない位置に設置される。マイク3は、例えば、ファン43が動作したときに生じる空気の流れの方向にある位置であって、ファン43の中心部から第1距離だけ離れた筐体41外の位置に設置される。図5に示す例では、マイク3は、筐体41外の、ファン43の中心部(例えばハブ432)の真上に設置されている。
【0042】
より具体的には、マイク3は、例えば、筐体41外であって、ファン43の回転中心43Cを示す直線上に位置している。マイク3の長手方向は、ファン43が設置された面と直交または略直交する。また、マイク3は、ハブ432に対向する範囲内に位置し得る。ハブ432は、ファン43を構成する部品の内、ファン43の回転時にも空気の流れを生じさせにくい部品である。つまり、マイク3は、ファン43が設置された面に対して排出方向81の下流側にある位置に、ファン43の中心部を通る排出方向81に沿って設置されている。ファン43の中心部を通る排出方向81の下流は、ファン43の回転によって発生する空気の流れの影響を受けにくい。したがって、設置されたマイク3により収集される音の信号では、ファン43の動作によって発生する風がマイク3に当たることによって発生するノイズが低減できる。
【0043】
図5では、ファン43の回転中心43Cを示す直線と、長手方向に沿うマイク3の中心線3Cとが一致している例を示している。この場合、マイク3の中心線3Cは、例えば、ハブ432の中心を通っている。なお、マイク3は、マイク3の中心線3Cがハブ432の外径内を通る任意の位置(すなわちハブ432に対向する範囲内)に配置され得る。
【0044】
マイク3は、監視対象機器4により近い一端に、集音部31を備える。集音部31の先端は、ファン43の中心部に向けられている。集音部31の先端は、ファン43の中心部から、あるいはフェンス42A(開口部42)から、第1距離だけ離れている。つまり、集音部31の先端は、フェンス42Aや筐体41の振動の影響を受けにくいように、フェンス42A及び筐体41に接していない。
【0045】
マイク3は、設置器具6Aを用いて、監視対象機器4に対して設置される。設置器具6Aは、マイク3を把持する構成を有する。マイク3を把持した設置器具6Aは、筐体41(例えばフェンス42A)に固定して取り付けられる。これにより、マイク3が監視対象機器4に対して設置(すなわち固定)される。
【0046】
図6から図10を参照して、設置器具6Aの構造の一例を説明する。
【0047】
図6は設置器具6Aの構造の例を示す斜視図である。図6に示す例では、設置器具6Aを用いて、監視対象機器4の筐体41に対してマイク3が設置されている。設置器具6Aは、ファン43の回転によって発生する空気の流れを妨げにくい構造を有している。この構造は、例えば、設置器具6Aの内部を、ファン43の回転によって発生する空気が通過する構造である。
【0048】
設置器具6Aは、マイク固定器具61と位置決め器具62とを備える。マイク固定器具61は、マイク3を把持するための構造を有する。また、マイク固定器具61と位置決め器具62とは、マイク3を、監視対象機器4の筐体41に対する特定の位置に設置するための構造を有する。この特定の位置は、例えば、筐体41外であって、ファン43の中心部の真上の位置である。
【0049】
図7に示すように、ユーザは、位置決め器具62を筐体41の少なくとも一部に沿ってスライドさせる操作を行う。この筐体41の少なくとも一部には、フェンス42Aが含まれていてもよい。この操作により、筐体41に対して、特定の位置にマイク3を設置できる。なお、設置器具6を筐体41にネジ等で固定する必要はない。したがって、設置器具6を用いることで、ユーザはスライド操作を行うのみで、筐体41に対してマイク3を容易に設置できる。
【0050】
図8はマイク固定器具61の構造の例を示す斜視図である。マイク固定器具61は枠部611、連結部612、およびクランプ613で構成される。
【0051】
枠部611は格子状の構造を有する。枠部611は、例えば格子状の直方体である。格子状の構造によって、枠部611は、ファン43の回転によって発生する空気の流れを妨げにくい特性を有している。
【0052】
この枠部611のフェンス42Aへの載置面にはフェンス42Aに対向して開口部611aが設けられている。この開口部611aはファン43の投影面上に対向できるように設けられており、ファン43の羽根431よりも小さく、ハブ432より大きくハブ432を覆うように配置されるもので、監視対象機器4内部の動作音が遮られないようして、ファン43の動作音が収集しやすい構成としている。そのため開口部611aからはファン43の風がマイク3に届く構成となるが、フェンス42Aに設けられた複数孔42A1がファン43からの風を一部遮ることで風速および風量を低減させマイク3に直接風が当たらない構成とすることで風切り音を低減させる手段として機能している。
【0053】
またこの風切り音の低減手段としては、固定器具61にマイク3と対向して一定距離の位置にマイク61を下方から覆う覆い部を設け、収音可能でありながら風が当たらないようにする防風手段を設けてもよい。
【0054】
なお枠部611は、ファン43の回転によって発生する空気の流れを妨げにくい別の構造を有していてもよい。
【0055】
連結部612は、枠部611の、例えば下部に、連結されている。連結部612は、マイク固定器具61を位置決め器具62に連結するための部材である。
【0056】
クランプ613はマイク3を把持する。クランプ613は、枠部611の、例えば上部に、連結されている。マイク3がクランプ613で把持される上下方向の位置(すなわち、マイク3の長手方向の位置)は、高さ決め器具をさらに用いて調整され得る。
【0057】
図9は高さ決め器具63の構造の例を示す斜視図である。高さ決め器具63は、マイク固定器具61の枠部611内に配置可能な構造を有している。高さ決め器具63は、例えば、上面631と、上面631にそれぞれ連結する2つの側面632とを備える。上面631は、側面632に連結されることにより、特定の高さに位置している。この特定の高さは、マイク3を、ファン43の中心部から、あるいはフェンス42A(開口部42)から、離間させる第1距離に相当する。
【0058】
ユーザは高さ決め器具63をマイク固定器具61内に設置する。そして、ユーザは、マイク3が高さ決め器具63の上面631に接するように調整した後、マイク3をクランプ613で把持(固定)するように操作する。つまり、ユーザは、マイク3がクランプ613で把持される上下方向の位置を、高さ決め器具63を用いて調整する。これにより、マイク3を、ファン43の中心部から、あるいはフェンス42A(開口部42)から、第1距離だけ離間できる。
【0059】
図10は位置決め器具62の構造の例を示す斜視図である。位置決め器具62は連結部621と装着部622とで構成される。連結部621は、位置決め器具62をマイク固定器具61の連結部612と連結するための部材である。連結部621の、例えば中央部分623は、マイク固定器具61の連結部612と連結される。また、連結部621の両端は、装着部622と連結されている。装着部622は、筐体41の一部を、その形状に沿って覆うことができる形状を有する。
【0060】
ユーザは、装着部622を筐体41に沿ってスライドさせる操作を行う。ユーザは、例えば装着部622の全体が筐体41と接触するまで、装着部622をスライドさせる。スライド操作により装着部622の全体が筐体41と接触したならば、設置器具6A(より詳しくはマイク固定器具61のクランプ613)で把持されたマイク3は、筐体41に対する特定の位置に設置される。
【0061】
なお、マイク固定器具61、位置決め器具62、および高さ決め器具63の各部の形状およびサイズは、筐体41に対してマイク3を設置したい位置に応じて決定される。また、例えば、1つの機種の監視対象機器4に対して1つの設置器具6Aを製作(設計)することで、同一機種の複数の監視対象機器4の筐体41のいずれに対しても、特定の位置にマイク3を設置できる。つまり、1つの設置器具6Aで、同一機種の複数の監視対象機器4の筐体41のいずれに対しても、マイク3の設置位置を再現できる。
【0062】
設置されたマイク3は、監視対象機器4の動作音を収集して、信号を生成する。検知装置2は、生成された動作音の信号を用いて、監視対象機器4のファン43に関する状態変化を検知できる。
【0063】
また、マイク3は筐体41外に設置されるので、監視対象機器4が動作中であっても、その動作を停止することなく、監視対象機器4に対してマイク3を設置できる。そのため、例えば、マイク3や聴診棒の先端を筐体41内に入れて動作音を収集する場合と比較して、マイク3を容易に設置できる。したがって、本実施形態の検知システム1では、監視対象機器4の動作音を容易に計測できる。
【0064】
次いで、図11を参照して、マイク3が設置された監視対象機器4の構造の別の例を説明する。ここでは、監視対象機器4の筐体の1つの側面(図11では右側面)に開口部42が設けられる場合を例示する。なお、図5を参照して前述した監視対象機器4の構造と共通する構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0065】
筐体41の右側面に設けられた開口部42は、網状のフェンス42Aで覆われている。筐体41内の、フェンス42Aの左側には、ファン43が設置される。また、フェンス42Aには、マイク3を把持した設置器具6Bが固定して取り付けられる。これにより、マイク3が監視対象機器4に対して設置(すなわち固定)される。
【0066】
矢印(排出方向)81は、ファン43の回転によって、筐体41内で発生した水平方向の右向きの空気の流れが、筐体41外で拡散していくことを示している。
【0067】
マイク3は、筐体41外であって、ファン43が動作(回転)したときに生じる空気の流れの影響が少ない位置に設置される。マイク3は、例えば、ファン43が動作したときに生じる空気の流れの方向にある位置であって、ファン43の中心部から第1距離だけ離れた筐体41外の位置に設置される。図11に示す例では、マイク3は、筐体41外であって、ファン43の中心部(例えばハブ432)に対向する右側に設置されている。
【0068】
より具体的には、マイク3は、例えば、筐体41外であって、ファン43の回転中心43Cを示す直線上に位置している。マイク3の長手方向は、ファン43が設置された面と直交または略直交する。また、マイク3は、ハブ432に対向する範囲内に位置し得る。つまり、マイク3は、ファン43が設置された面に対して排出方向81の下流側にある位置に、ファン43の中心部を通る排出方向81に沿って設置されている。ファン43の中心部を通る排出方向81の下流は、ファン43の回転によって発生する空気の流れの影響を受けにくい。したがって、設置されたマイク3により収集される音の信号では、ファン43の動作によって発生する風がマイク3に当たることによって発生するノイズが低減できる。
【0069】
図11では、ファン43の回転中心43Cを示す直線と、長手方向に沿うマイク3の中心線3Cとが一致している例を示している。この場合、マイク3の中心線3Cは、例えば、ハブ432の中心を通っている。なお、マイク3は、マイク3の中心線3Cがハブ432の外径内を通る任意の位置に配置され得る。
【0070】
マイク3は、設置器具6Bを用いて、監視対象機器4に対して設置される。設置器具6Bは、アダプタ65とマイク固定器具66とで構成される。
【0071】
アダプタ65は、例えば、監視対象機器4の出荷時、監視対象機器4の設置時等に予めフェンス42Aに取り付けられ得る。アダプタ65は装着部651とレール部652とで構成される。
【0072】
装着部651は、アダプタ65をフェンス42Aの特定の位置に取り付けるための部材である。装着部651は、例えば、フェンス42Aの網目部分に噛む爪状の部材を備えている。
【0073】
レール部652は、アダプタ65にマイク固定器具66を接続(固定)するための部材である。レール部652にマイク固定器具66の一部を挿入することにより、マイク固定器具66がアダプタ65に接続される。
【0074】
マイク固定器具66は、枠部661、クランプ662、および挿入部663で構成される。
枠部661は格子状の構造を有する。枠部661は、例えば格子状の直方体である。格子状の構造によって、枠部661は、ファン43の回転によって発生する空気の流れを妨げにくい特性を有している。枠部661は、ファン43の回転によって発生する空気の流れを妨げにくい別の構造を有していてもよい。
【0075】
クランプ662はマイク3を把持する。クランプ662は枠部611に連結されている。クランプ662で把持されるマイク3の長手方向の位置は、前述した高さ決め器具63のような別の器具をさらに用いて調整されてもよい。
【0076】
挿入部663は、マイク固定器具66をアダプタ65に取り付けるための部材である。挿入部663を、アダプタ65のレール部652に沿ってスライドさせる操作により、マイク固定器具66がアダプタ65に接続される。
【0077】
図12を参照して、マイク固定器具66の挿入部663をアダプタ65のレール部652に沿ってスライドさせる操作の例を説明する。図12は、図11に示した筐体41の右側面を正面とした場合の、マイク固定器具66およびレール部652の正面図を示している。
【0078】
図12(A)に示すように、ユーザは、マイク固定器具66の挿入部663を、レール部652に沿ってスライドさせる。そして、ユーザは、図12(B)に示すように、挿入部663をレール部652の終端652Eまでスライドさせる。このような操作により、設置器具6B(より詳しくはマイク固定器具66のクランプ662)で把持されたマイク3は、筐体41に対する特定の位置に設置される。
【0079】
なお、アダプタ65およびマイク固定器具66の各部の形状およびサイズは、筐体41に対してマイク3を設置したい位置に応じて決定される。また、例えば、1つの種類の機器に対して1つの設置器具6Bを製作(設計)することで、その1つの種類の複数の機器の筐体のいずれに対しても、特定の位置にマイク3を設置できる。
【0080】
前述したように、アダプタ65は、監視対象機器4の出荷時、監視対象機器4の設置時等に予めフェンス42Aに取り付けられていてもよい。その場合、ユーザ(例えば監視対象機器4の保守員)は、監視対象機器4に既に取り付けられたアダプタ65に対して、マイク3を把持したマイク固定器具66を設置すればよい。ユーザは、例えば監視対象機器4の保守点検の度に、アダプタ65にマイク固定器具66を設置する。このような保守点検の用途では、マイク3を把持した1つのマイク固定器具66を、同一機種の複数の監視対象機器4に対してそれぞれ利用することもできる。つまり、複数の監視対象機器4に対して、マイク3を把持したマイク固定器具66を1つ用意すればよいので、保守点検に要するコストを低減できる。
【0081】
設置されたマイク3は、監視対象機器4の動作音を収集して、信号を生成する。検知装置2は、生成された動作音の信号を用いて、監視対象機器4のファン43に関する状態変化を検知できる。
【0082】
図13および図14を参照して、マイク3の設置位置に応じた監視対象機器4の動作音の差異について説明する。ここでは、図13に示すように、位置A、位置B、および位置Cに設置されたマイク3で、監視対象機器4の動作音を収集することを想定する。また、監視対象機器4は動作中であって、ファン43が回転することによる空気の流れが発生している。
【0083】
位置Aは、筐体41外であって、ファン43の中心部(例えばハブ432)に対向する位置である。本実施形態の検知システム1では、マイク3は位置Aに設置され得る。位置Bは、位置Aと位置Cの間の位置である。位置Cは、筐体41外であって、ファン43の羽根431の先端に対向する位置である。
【0084】
なお、マイク3の集音部31を備える一端は、フェンス42Aから(あるいはファン43の中心部から)第1距離だけ離れている。また、位置A、位置B、および位置Cのいずれに設置される場合にも、マイク3の集音部31は監視対象機器4に向けられている。
【0085】
図14は、位置A、位置B、位置Cの順に移動する間に取得した時系列の動作音の振幅71を示している。図14において、水平方向の軸は時間を示し、垂直方向の軸は動作音の振幅を示す。
【0086】
各位置で取得した動作音の振幅の内、位置Aで取得した動作音の振幅71Aは最も小さい。位置Bで取得した動作音の振幅71Bは、位置Aで取得した動作音の振幅71Aよりも大きい。位置Cで取得した動作音の振幅71Cは、位置Bで取得した動作音の振幅71Bよりも大きい。
【0087】
これは、マイク3で収集される音が、ファン43の中心部に近い位置ほど、ファン43の回転による空気の流れの影響を受けにくいためである。つまり、ファン43の中心部に近い位置ほど、取得される音に風切り音が混入する可能性が低い。
【0088】
換言すると、マイク3で収集される音は、ファン43の中心部から離れた位置ほど、ファン43の回転による空気の流れの影響を受けやすい。つまり、ファン43の中心部から離れた位置ほど、取得される音に風切り音が混入する可能性が高い。
【0089】
ファン43の中心部にあるハブ432は、ファン43を構成する部品の内、ファン43の回転時にも空気の流れを生じさせにくい部品である。そのため、ハブ432の外径内に対向する位置は、ファン43の回転による空気の流れの影響を受けにくい。したがって、マイク3は、マイク3の中心線3Cがハブ432の外径内を通る任意の位置(例えば位置A)に配置されることが望ましい。
【0090】
一方で、ファン43の中心部にマイク3が接触する程度に近づけると、マイク3が振動を拾ってしまうため、監視対象機器4の動作音を正確に収集できない。そのため、前述したように、マイク3の先端は、ファン43の中心部から、あるいはフェンス42A(開口部42)から、第1距離だけ離して配置される。
【0091】
一般に、音のSN比は、空気抵抗により、風速の6乗に従って悪化する。そのため、例えば、位置Bおよび位置Cでは、ファン43の回転による空気の流れ(風速)の影響を受けて、動作音だけでなくノイズである風切り音も含む音が収集される。
【0092】
したがって、風切り音によるノイズの影響を軽減して、監視対象機器4のファン43に関する状態変化をより正確に検知するために、マイク3は、ファン43の中心部(例えばハブ432)に対向する位置Aに設置することが望ましいと云える。本実施形態の検知システム1では、マイク3を位置Aに設置することにより、ファン43の動作によって発生する風がマイク3に当たることによって発生するノイズが、動作音の信号に含まれることを低減できる。これにより、動作音の信号を用いたファン43に関する状態変化をより正確に検知できる。また、位置Aは筐体41の外部であるので、ユーザは、動作中の監視対象機器4にもマイク3を容易に設置できる。
【0093】
図15のフローチャートは、検知装置2において実行される検知処理の手順の例を示す。検知処理は、監視対象機器4のファン43に関する状態変化を検知するための処理である。検知装置2のCPU21は、例えば、検知プログラム22Aに含まれる命令群を実行することにより、検知処理を実現する。
【0094】
CPU21は、マイク3により収集された音に基づく信号を取得する(ステップS11)。マイク3は、監視対象機器4の筐体41に対して特定の位置に設置され、監視対象機器4の動作音を収集する。CPU21は、例えば、オーディオI/F24、通信デバイス25、または可搬性の記録媒体を用いて、マイク3から音の信号を取得する。
【0095】
CPU21は、取得した音の信号を用いて、ファン43の異常度を算出する(ステップS12)。具体的には、CPU21は音の信号に対して周波数変換(例えばフーリエ変換)を行って、特徴量(あるいは特徴ベクトル、パワースペクトル)を算出する。CPU21は、算出した特徴量を用いて、ファン43の異常度を算出する。より詳しくは、CPU21は、第1期間における、例えば、特徴量の変化量、パワースペクトルの変化量、特定の周波数帯域の変化量等に基づいて、ファン43の異常度を算出し得る。異常度は、ファン43の状態を示す数値である。異常度が低いほど、ファン43は正常に動作している可能性が高い。また、異常度が高いほど、ファン43は劣化が進行し、故障する可能性が高い。
【0096】
次いで、CPU21は、算出した異常度が閾値を超えているか否かを判定する(ステップS13)。CPU21は、異常度が、管理者に通知すべき数値に達しているか否かを判定する。
【0097】
異常度が閾値を超えている場合(ステップS13のYES)、CPU21は、ファン43の異常(状態変化)を通知する(ステップS14)。CPU21はファン43の異常を、例えばサーバ5に通知する。サーバ5は、ディスプレイ55のような様々な通知手段を用いて、管理者にファン43の異常を通知する。あるいは、CPU21はファン43の異常を、管理者が有する端末に通知してもよい。これにより、管理者はファン43の異常を認識できる。CPU21はファン43の異常を通知した後、検知処理を終了する。
【0098】
一方、異常度が閾値以下である場合(ステップS13のNO)、CPU21は検知処理を終了する。
【0099】
以上の検知処理により、CPU21は、マイク3で取得された音の信号を用いて、管理者に通知すべきファン43の異常を検知できる。なお、CPU21はステップS13で複数の閾値を用いた判定を行ってもよい。複数の閾値は、例えば、ファン43の劣化の深刻さに応じて設定される。これにより、CPU21は多段階のファン43の異常を検知できる。
【0100】
図16から図18を参照して、異常度の算出と異常度に基づく判定を実現する2つの具体例を説明する。
【0101】
(異常度の算出と異常度に基づく判定に関する第1の例)
図16は、検知装置2において実行される検知プログラム22Aの機能構成例を示す。検知プログラム22Aは、例えば、学習済みモデル201、オートエンコーダ202、異常度算出部203、状態判定部204、および状態通知部205を備える。
【0102】
学習済みモデル201は、監視対象機器4の正常な動作音の信号を用いた教師なし学習により得られたモデルである。学習済みモデル201は、例えば数理モデルまたは物理モデルであり、より具体的にはニューラルネットワークである。学習済みモデル201は、入力層と出力層が同じとなるように学習されている。また、正常な動作音の信号とは、例えば、監視対象機器4の稼働開始時(監視対象機器4が納品されて最初に稼働する時)、監視対象機器4に対するメンテナンスが行われた直後等に取得された動作音の信号である。なお、学習済みモデル201は、検知装置2で生成されてもよいし、サーバ5等の別の機器で生成されてもよい。
【0103】
オートエンコーダ202は学習済みモデル201を用いて、入力信号(入力データ)を再構成した出力信号(出力データ)を生成する。入力信号は、マイク3によって収集された監視対象機器4の動作音の信号である。また、出力信号は、再構成信号とも称される。オートエンコーダ202は、例えば入力信号に対して高速フーリエ変換(FFT)を行って得られたパワースペクトルを用いて、再構成信号を生成する。
【0104】
学習済みモデル201を用いた場合、オートエンコーダ202は、監視対象機器4のファン43の動作状態が正常であれば、入力信号と同一または類似する再構成信号を生成す。つまり、オートエンコーダ202は学習済みモデル201を用いて、正常な動作音を含む入力信号から、その入力信号を再現した再構成信号を生成できる。
【0105】
一方、監視対象機器4のファン43の動作状態が異常であれば、オートエンコーダ202は、入力信号と類似しない再構成信号を出力する。つまり、オートエンコーダ202は学習済みモデル201を用いて、異常な動作音を含む入力信号から、その入力信号を再現した再構成信号を生成できない(すなわち、入力信号が再現されていない再構成信号を生成する)。
【0106】
具体的には、例えば入力信号としてXt1,Xt2,…,Xtnが入力された場合、オートエンコーダ202は再構成信号としてYt1,Yt2,…,Ytnを出力する。なお、Xti(i=1,2,…,n)は入力信号に含まれる時刻tiにおける信号値である。また、Yti(i=1,2,…,n)は、Xtiをオートエンコーダ202に入力した際に出力される信号値(再構成信号)である。この場合におけるnは1以上の整数である。
【0107】
次いで、異常度算出部203は、入力信号と再構成信号との誤差(再構成誤差)に基づいて監視対象機器4のファン43の異常度を算出する。異常度として、例えば入力信号と再構成信号との平均二乗誤差(MSE)が用いられる。異常度は、学習済みモデル201の生成時と比較して現在のファン43の動作状態が変化している(劣化している)ほど大きな値となる。
【0108】
状態判定部204は、算出された異常度を用いて、ファン43の動作状態が正常であるか、それとも異常であるかを判定する。具体的には、状態判定部204は、異常度が閾値を超えている場合、ファン43の動作状態が異常であると判断する。一方、状態判定部204は、異常度が閾値以下である場合、ファン43の動作状態が正常であると判断する。
【0109】
状態通知部205は、状態判定部204による判定結果を通知する。状態通知部205は、判定結果を、通信デバイス25を介してサーバ5に送信してもよいし、管理者が使用する端末に送信してもよい。
【0110】
図16に示す検知プログラム22Aの構成によれば、検知装置2は、学習済みモデル201を用いて、監視対象機器4のファン43の異常度を算出し、異常度に基づく判定を行うことができる。なお、学習済みモデル201として、Gated Recurrent Unit(GRU)やLong Short-Term Memory(LSTM)構造を有する再帰型ニューラルネットワークが用いられてもよい。
【0111】
(異常度の算出と異常度に基づく判定に関する第2の例)
図17は、検知装置2において実行される学習プログラム22Bの機能構成例を示す。学習プログラム22Bは、特徴ベクトル変換関数を学習するためのプログラムである。
【0112】
特徴ベクトル変換関数は、入力信号を特徴ベクトルに変換する関数である。特徴ベクトル変換関数として、例えば、変分オートエンコーダ(Variational Autoencoder:VAE)のようなニューラルネットワークが用いられる。VAEは、入力Xを潜在変数zに変換する符号化器と、潜在変数zから入力Xを再構成する復号器とからなる。つまり、VAEの符号化器が、入力信号を特徴ベクトルに変換する関数として機能する。
【0113】
一般に、VAEの符号化器は、潜在変数zを直接出力するのではなく、潜在変数が従う等方ガウス分布の平均ベクトルμと分散ベクトルσ とを出力する。VAEを異常検知や劣化度推定に用いる場合、異常度(劣化度)として、再構成確率や、再構成確率の負の対数尤度が用いられる。ここでは、正常状態のデータ(正常データ)の潜在変数空間モデルが平均ベクトルμおよび分散共分散行列Σで規定される多変量ガウス分布であって、符号化器が出力する平均ベクトルμの再構成確率の負の対数尤度を異常度として用いる場合を例示する。この場合、異常度は下記の式(1)で表される。
【0114】
【数1】
【0115】
通常の損失関数による学習で得られたVAEでは、潜在変数が学習データの本質的な特徴量(=特徴ベクトル)を表す。このため、正常データに対する潜在変数と、正常データからわずかに変化しただけの劣化状態のデータ(劣化データ)に対する潜在変数との間に差が生じないことがある。つまり、通常の損失関数は、微小な変化に対して適切に反応しない。
【0116】
そのため、正常データと微小な変化を含む劣化データとで、潜在変数が適切に変化するように、損失関数を工夫する必要がある。具体的には、検知したい正常音でない音(すなわち劣化傾向音)を正常音から離すように、VAEを学習させる。この学習により、VAEは、入力された劣化傾向音に対して、変化した潜在変数を出力する。
【0117】
正常状態の損失関数Loss1は、式(2)で表される。損失関数Loss1には、通常のVAEの損失関数が用いられる。
【0118】
【数2】
【0119】
式(2)において、Xは入力、X’はVAEによる再構成、Dは入力の次元数を表す。DKLはカルバック・ライブラー・ダイバージェンス(KLダイバージェンス)を表す。Cは正則化項の大きさを調整する定数である。
【0120】
式(2)の第1項はオートエンコーダの再構成誤差に相当する。第2項のKLダイバージェンスは正則化項に相当し、潜在変数を理想の分布N(0,I)に近づける効果を持つ。
【0121】
ここで、劣化状態(第2状態)の損失関数Loss2を、式(3)に示すように設計する。
【0122】
【数3】
【0123】
式(3)において、C’は中心0(正常音の理想平均)から離す項の大きさを調整する定数である。d(x)は多変量ガウス分布確率密度を最大値1に正規化したもので表される(式(4))。
【0124】
【数4】
【0125】
式(3)の第1項は正常状態時と同じく再構成誤差に相当する。第2項は正常状態時と異なり、潜在変数を中心0から離す効果を持つ。つまり、第2項のd(μ)が1に近づくほど大きくなり、損失を小さくするよう更新するため、中心0から離れていく。
【0126】
このような損失関数Loss2を劣化データに適用し、損失関数Loss1を正常データに適用して、特徴ベクトル変換関数を学習する。これにより、正常データから僅かに変化しただけの劣化データに対しても、特徴ベクトル変換関数の潜在変数に変化が生じるようになる。したがって、監視対象機器4のファン43に関する状態を、単なる異常の有無ではなく、劣化度として高精度に検知することが可能になる。
【0127】
なお、劣化データは、実際に取得されたデータ(実データ)でなくてもよい。例えば、劣化の傾向が既知である場合、シミュレーションで作成した劣化データが用いられてもよい。また、劣化データとして、劣化しているかどうか判別がつかないが、新品状態からある程度時間が経過し、何らかの状態変化が生じた可能性のある監視対象機器4から取得した実データが用いられてもよい。
【0128】
次いで、前述した特徴ベクトル変換関数を学習するための学習プログラム22Bの具体的な構成について説明する。学習プログラム22Bは、変換関数部251、第1状態損失関数部252-1、第2状態損失関数部252-2、および変換関数更新部253を備える。
【0129】
変換関数部251には、第1状態を表す信号(第1状態信号)と、第1状態とは異なる第2状態を表す信号(第2状態信号)とが入力される。第1状態信号は、監視対象機器4機器が正常な状態にあるときに得られた動作音の信号である。第1状態信号は、例えば新品の監視対象機器4から採取されたものである。
【0130】
第2状態信号は、同じ種類の監視対象機器4が劣化状態にあるときに得られた動作音の信号である。第2状態信号は、例えば劣化状態にある監視対象機器4から採取されたか、あるいは何度かの実験等によるシミュレーションで模擬的に生成されたものである。
【0131】
変換関数部251は第1状態信号を周波数変換(フーリエ変換)した後に、特徴ベクトル変換関数を用いて第1状態信号の特徴量(または特徴ベクトル)を算出する。変換関数部251は第2状態信号を周波数変換した後に、特徴ベクトル変換関数を用いて第2状態信号の特徴量を算出する。
【0132】
第1状態損失関数部252-1は、第1状態信号の特徴量を入力値とし、上記式(2)に示した損失関数Loss1を用いて当該入力値と出力値との誤差を算出する。第2状態損失関数部252-2は、第2状態信号(劣化状態信号)の特徴量を入力値とし、上記式(3)に示した損失関数Loss2を用いて当該入力値と出力値との誤差を算出する。
【0133】
前述したように、損失関数Loss1は、正規化項を有し、入力値を理想的な値に近づけるように設計されている。これに対し、損失関数Loss2は、中心0から離す項を有し、第2状態を第1状態から離すように設計されている。
【0134】
変換関数更新部253は、第1状態損失関数部252-1によって算出された誤差と第2状態損失関数部252-2によって算出された誤差とに基づいて、第1状態信号と第2状態信号に関する特徴ベクトル変換関数の変数を更新する。より詳しくは、変換関数更新部253は、第1状態信号に関しては理想的な値に近づけるように特徴ベクトル変換関数の変数を更新し、第2状態信号に関しては理想的な値から離すように特徴ベクトル変換関数の変数を更新する。
【0135】
このようにして、第1状態を表す信号と、第1状態とは異なる第2状態を表す状態を表す信号を用いて、第2状態が第1状態から離れるように特徴ベクトル変換関数の変数を繰り返し更新する。これにより、第1状態からの僅かな変化に対しても適切に反応する特徴ベクトル変換関数を得ることができ、その特徴ベクトル変換関数を用いて監視対象機器4のファン43に関する劣化状態を早期に検知することが可能となる。
【0136】
次いで、図18を参照して、学習プログラム22Bによって学習された特徴ベクトル変換関数を実装した検知プログラム22Aの構成について説明する。検知プログラム22Aは、変換関数部211、異常度算出部212、状態判定部213、および状態通知部214を備える。
【0137】
変換関数部211は、図17に示した変換関数部251に対応する。変換関数部211は、学習プログラム22Bによって最適化された特徴ベクトル変換関数を有する。変換関数部211には、マイク3で収集された監視対象機器4の動作音の信号が入力される。変換関数部211は、例えば、動作音の信号を周波数変換(フーリエ変換)した後、特徴ベクトル変換関数を用いて動作音の特徴量(特徴ベクトル)を算出する。
【0138】
異常度算出部212は、算出された特徴量に基づいて、監視対象機器4の状態を示す数値を算出する。算出した数値は、監視対象機器4の異常度(劣化度)を示す。異常度算出部212は、算出した異常度を外部(ディスプレイ等)に出力してもよい。
【0139】
状態判定部213は、算出された異常度に基づいて監視対象機器4のファン43の状態を判定する。状態判定部213は複数の閾値を用いて、ファン43の状態を多段階で判定し得る。具体的には、状態判定部213はファン43の状態を、例えば「正常」、「やや劣化」、「劣化」の3段階に分けて判定する。
【0140】
状態通知部214は、状態判定部213による判定結果を通知する。状態通知部214は、判定結果が「劣化」を示す場合のみ通知してもよい。あるいは、状態通知部214は、「やや劣化」を示す判定結果と「劣化」を示す判定結果とを段階的に通知してもよい。状態通知部214は、判定結果を、通信デバイス25を介してサーバ5に送信してもよいし、管理者が使用する端末に送信してもよい。
【0141】
このように、検知プログラム22Aが、学習プログラム22Bによって最適化された特徴ベクトル変換関数を用いることで、動作音の信号から監視対象機器4のファン43に関する異常を検知する際に、動作音の僅かな変化を正確に数値化して、異常度として出力できる。
【0142】
特徴ベクトル変換関数は、監視対象機器4の正常な状態のときの音の信号と劣化した状態のときの音の信号とを用いて学習されている。そのため、一時的なノイズの影響を受けることなく、監視対象機器4の現在の異常度を正確に算出できる。これに対して、正常な状態のときの音の信号のみを用いて学習されたオートエンコーダでは、ノイズの影響を受けて、異常度を正確に算出できない可能性がある。したがって、学習プログラム22Bによって得られた特徴ベクトル変換関数を用いることで、算出される監視対象機器4の異常度の精度を向上できる。
【0143】
通常、機器や部品の交換時期は予め定められており、交換時期になると、使用中の機器や部品を新品に交換することが一般的である。これに対し、図17に示す学習プログラム22Bと図18に示す検知プログラム22Aとを用いれば、監視対象機器4のファン43の現在の異常度を正確に把握できる。そのため、例えば、ファン43の異常度が予め設定された標準値以上であれば、交換時期前でも新品に交換する等の対処を早期に行うことができる。逆に、異常度が予め設定された標準値よりも低ければ、交換時期が来ても現在のファン43(あるいは監視対象機器4)を続けて使用できるので、使用期間を延ばすことができる。
【0144】
以上の構成により、検知システム1では、監視対象機器4のファン43の状態変化をより正確に検知できる。
【0145】
(第2実施形態)
第1実施形態では、監視対象機器4の筐体41内に1つのファン43が設けられる。これに対して、第2実施形態では、監視対象機器4の筐体41内に複数のファン43が設けられる。
【0146】
第2実施形態に係る検知システム1の構成は第1実施形態の検知システム1と同様であり、第2実施形態と第1実施形態とでは、複数のファン43が互いに与える影響を考慮して、複数のファン43の各々の状態変化を検知する処理の手順のみが異なる。以下、第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0147】
図19は監視対象機器4の外観の例を示す斜視図である。
監視対象機器4は筐体41を有する。筐体41の、例えば上面には、複数の開口部42-L,42-Rが設けられている。複数の開口部42-L,42-Rの各々は、網状のフェンスで覆われていてもよい。以下では、一方の開口部42-Lを第1開口部42-Lと称し、他方の開口部42-Rを第2開口部42-Rと称する。また、図19では、2つの開口部42-L,42-Rが左右に並ぶ一例を示しているが、開口部42-L,42-Rの配置は任意に決定できる。
【0148】
筐体41内では、第1開口部42-Lの下部に第1ファン43-Lが設けられ、第2開口部42-Rの下部に第2ファン43-Rが設けられている。第1ファン43-Lは、排気口である第1開口部42-Lから、筐体41内の空気を筐体41外に排出するように動作する。第2ファン43-Rは、排気口である第2開口部42-Rから、筐体41内の空気を筐体41外に排出するように動作する。つまり、第1ファン43-Lおよび第2ファン43-Rの動作により、監視対象機器4の排熱が行われる。
【0149】
図20は、複数のマイク3-L,3-Rが設置された監視対象機器4の構造の例を示す断面図である。
【0150】
筐体41の上面に設けられた第1開口部42-Lは、網状のフェンス42A-Lで覆われている。筐体41内の、フェンス42A-Lの下側には、第1ファン43-Lが設置されている。第1ファン43-Lの構成は、図5を参照して前述したファン43と同様である。
【0151】
点線で図示した矢印81-Lは、第1ファン43-Lの回転によって発生する空気の流れの方向(排出方向)を模式的に表している。矢印81-Lは、第1ファン43-Lの回転によって、筐体41内で発生した垂直方向の上向きの空気の流れが、筐体41外で拡散していくことを示している。
【0152】
第1マイク3-Lは、筐体41外であって、第1ファン43-Lが動作(回転)したときに生じる空気の流れの影響が少ない位置に設置される。第1マイク3-Lは、例えば、第1ファン43-Lが動作したときに生じる空気の流れの方向にある位置であって、第1ファン43-Lの中心部から第1距離だけ離れた筐体41外の位置に設置される。図20に示す例では、第1マイク3-Lは、筐体41外の、第1ファン43-Lの中心部の真上に設置されている。
【0153】
より具体的には、第1マイク3-Lは、例えば、筐体41外であって、第1ファン43-Lの回転中心43C-Lを示す直線上に位置している。また、第1マイク3-Lは、ハブ432-Lに対向する範囲内に位置し得る。つまり、第1マイク3-Lは、第1ファン43-Lが設置された面に対して排出方向81-Lの下流側にある位置に、第1ファン43-Lの中心部を通る排出方向81-Lに沿って設置されている。
【0154】
図20では、第1ファン43-Lの回転中心43C-Lを示す直線と、長手方向に沿う第1マイク3-Lの中心線3C-Lとが一致している例を示している。この場合、第1マイク3-Lの中心線3C-Lは、例えば、ハブ432-Lの中心を通っている。なお、第1マイク3-Lは、第1マイク3-Lの中心線3C-Lがハブ432-Lの外径内を通る任意の位置に配置され得る。
【0155】
第1マイク3-Lは、監視対象機器4により近い一端に、集音部31-Lを備える。集音部31-Lの先端は、第1ファン43-Lの中心(例えばハブ432-L)に向けられている。集音部31-Lの先端は、第1ファン43-Lの中心部から、あるいはフェンス42A-L(開口部42-L)から、第1距離だけ離れている。つまり、集音部31-Lの先端は、フェンス42A-Lや筐体41-Lの振動の影響を受けにくいように、フェンス42A-L及び筐体41-Lに接していない。
【0156】
第1マイク3-Lは、設置器具6A-Lを用いて、監視対象機器4に対して設置される。設置器具6A-Lは、マイク3-Lを把持する構成を有する。マイク3-Lを把持した設置器具6A-Lは、筐体41に固定して取り付けられる。これにより、マイク3-Lが監視対象機器4に対して設置(すなわち固定)される。設置器具6A-Lの構成は、図6から図10を参照して前述した設置器具6Aと同様である。
【0157】
また、筐体41の上面に設けられた第2開口部42-Rは、網状のフェンス42A-Rで覆われている。筐体41内の、フェンス42A-Rの下側には、第2ファン43-Rが設置されている。第2ファン43-Rの構成は、図5を参照して前述したファン43と同様である。
【0158】
点線で図示した矢印81-Rは、第2ファン43-Rの回転によって発生する空気の流れの方向(排出方向)を模式的に表している。矢印81-Rは、第2ファン43-Rの回転によって、筐体41内で発生した垂直方向の上向きの空気の流れが、筐体41外で拡散していくことを示している。
【0159】
第2マイク3-Rは、筐体41外であって、第2ファン43-Rが動作(回転)したときに生じる空気の流れの影響が少ない位置に設置される。第2マイク3-Rは、例えば、第2ファン43-Rが動作したときに生じる空気の流れの方向にある位置であって第2ファン43-Rの中心部から第1距離だけ離れた筐体41外の位置に設置される。図20に示す例では、第2マイク3-Rは、筐体41外の、第2ファン43-Rの中心部の真上に設置されている。
【0160】
より具体的には、第2マイク3-Rは、例えば、筐体41外であって、第2ファン43-Rの回転中心43C-Rを示す直線上に位置している。また、第2マイク3-Rは、ハブ432-Rに対向する範囲内に位置し得る。つまり、第2マイク3-Rは、第2ファン43-Rが設置された面に対して排出方向81-Rの下流側にある位置に、第2ファン43-Rの中心部を通る排出方向81-Rに沿って設置されている。
【0161】
図20では、第2ファン43-Rの回転中心43C-Rを示す直線と、長手方向に沿う第2マイク3-Rの中心線3C-Rとが一致している例を示している。この場合、第2マイク3-Rの中心線3C-Rは、例えば、ハブ432-Rの中心を通っている。なお、第2マイク3-Rは、第2マイク3-Rの中心線3C-Rがハブ432-Rの外径内を通る任意の位置に配置され得る。
【0162】
第2マイク3-Rは、監視対象機器4により近い一端に、集音部31-Rを備える。集音部31-Rの先端は、第2ファン43-Rの中心(例えばハブ432-R)に向けられている。集音部31-Rの先端は、第2ファン43-Rの中心部から、あるいはフェンス42A-R(開口部42-R)から、第1距離だけ離れている。つまり、集音部31-Rの先端は、フェンス42A-Rや筐体41-Rの振動の影響を受けにくいように、フェンス42A-R及び筐体41-Rに接していない。
【0163】
第2マイク3-Rは、設置器具6A-Rを用いて、監視対象機器4に対して設置される。設置器具6A-Rは、マイク3-Rを把持する構成を有する。マイク3-Rを把持した設置器具6A-Rは、筐体41に固定して取り付けられる。これにより、マイク3-Rが監視対象機器4に対して設置(すなわち固定)される。設置器具6A-Rの構成は、図6から図10を参照して前述した設置器具6Aと同様である。
【0164】
なお、図19および図20では、2つの開口部42-L,42-Rと2つのファン43-L,43-Rとが設けられる例を示したが、筐体41には、3つ以上の開口部と3つ以上のファンとが設けられてもよい。
【0165】
設置された第1マイク3-Lは、監視対象機器4の動作音を収集して、第1信号を生成する。設置された第2マイク3-Rは、監視対象機器4の動作音を収集して、第2信号を生成する。
【0166】
検知装置2は、第1マイク3-Lから第1信号を取得し、第2マイク3-Rから第2信号を取得する。そして、検知装置2は、第1信号と第2信号を用いて、監視対象機器4の第1ファン43-Lと第2ファン43-Rの少なくとも一方に関する状態変化を検知する。
【0167】
このように、筐体41内の複数のファン43-L,43-Rに対して、複数のマイク3-L,3-Rがそれぞれ設置される。つまり、1つのマイクが1つのファンに対応する。
【0168】
しかし、例えば第2ファン43-Rに異常がある場合に、第1マイク3-Lは、対応する第1ファン43-Lの動作音だけでなく、第2ファン43-Rの異常な動作音も収集し得る。また、例えば第1ファン43-Lに異常がある場合に、第2マイク3-Rは、対応する第2ファン43-Rの動作音だけでなく、第1ファン43-Lの異常な動作音も収集し得る。つまり、各マイク3-L,3-Rによって収集される音には、対応していないファンの異常により生じた音が混入し得る。これは、ファン43-L,43-Rの異常(状態変化)に関する誤判定を引き起こす要因となり得る。
【0169】
誤判定を抑制する方法の1つとして、一方のファンの補正前の異常度と、当該ファンの補正前の異常度が他方のファンの補正前の異常度に与えている影響量との関係を予め取得しておくことが考えられる。
【0170】
図21は、一方のファンの補正前の異常度と、当該ファンの補正前の異常度が他方のファンの補正前の異常度に与えている影響量との関係の例を示す。ここでは、説明を分かりやすくするために、第2ファン43-Rの補正前の異常度と、第2ファン43-Rの補正前の異常度が第1ファン43-Lの補正前の異常度に与えている影響量との関係が示されているものとする。
【0171】
図21において、水平方向の軸(X軸)は、第2ファン43-Rの補正前の異常度を示す。垂直方向の軸(Y軸)は、第2ファン43-Rの補正前の異常度が第1ファン43-Lの補正前の異常度に与えている影響量を示す。
【0172】
X軸とY軸とで示されるX-Y平面上には、複数の点76がプロットされている。複数の点76の各々は、事前に取得した第2ファン43-Rの補正前の異常度と、第2ファン43-Rの補正前の異常度が第1ファン43-Lの補正前の異常度に与えている影響量との対応を示すデータに基づく。各点76のデータは、例えば劣化したファンを備える監視対象機器4の動作音の信号か、あるいは実験等によるシミュレーションで模擬的に生成した動作音の信号を解析することにより得られる。
【0173】
複数の点76を用いたカーブフィッティングにより、第2ファン43-Rの補正前の異常度が第1ファン43-Lの補正前の異常度に与えている影響量を示す影響量曲線75が算出される。フィッティング(近似)させる曲線は、例えばy=axで表される一次関数である。つまり、影響量曲線75は直線で示される。したがって、影響量曲線75は、第2ファン43-Rの補正前の異常度の内、aで示される割合が、第1ファン43-Lの補正前の異常度に影響することを示している。
【0174】
この影響量曲線75を用いることにより、第2ファン43-Rの補正前の異常度が、第1ファン43-Lの補正前の異常度に与えている影響の量を決定できる。決定した影響量を用いて、第1ファン43-Lの補正前の異常度を補正することにより、第2ファン43-Rの補正前の異常度に応じた影響を排除した第1ファン43-Lの異常度(すなわち補正後の異常度)を算出できる。
【0175】
同様にして、第1ファン43-Lの補正前の異常度が第2ファン43-Rの補正前の異常度に与えている影響量を示す影響量曲線75も算出される。この影響量曲線75を用いることにより、第1ファン43-Lの補正前の異常度が、第2ファン43-Rの補正前の異常度に与えている影響の量を決定できる。決定した影響量を用いて、第2ファン43-Rの補正前の異常度を補正することにより、第1ファン43-Lの補正前の異常度に応じた影響を排除した第2ファン43-Rの異常度を算出できる。
【0176】
なお、以下では、影響量曲線75を、異常度-影響量関数75とも称する。
【0177】
図22は、検知装置2によって実行される検知プログラム22Aの機能構成例を示す。図22に示す検知プログラム22Aは、図16に示した検知プログラム22Aの構成に加えて、影響量を用いて異常度を補正するための構成をさらに有している。なお、影響量を用いて異常度を補正するための構成は、図18に示した検知プログラム22Aの構成に適用することもできる。
【0178】
図22に示す検知プログラム22Aには、第1マイク3-Lを用いて収集された音の第1信号と、第2マイク3-Rを用いて収集された音の第2信号とが入力される。検知プログラム22Aは、例えば、学習済みモデル201、オートエンコーダ202、異常度算出部203、状態判定部204、状態通知部205、および影響量算出部206を備える。
【0179】
学習済みモデル201は、第1信号のための学習済みモデル201Aと、第2信号のための学習済みモデル201Bとを含む。第1信号のための学習済みモデル201Aは、第1ファン43-Lに対応する第1マイク3-Lで得られた監視対象機器4の正常な動作音の信号を用いた教師なし学習により得られたモデルである。第2信号のための学習済みモデル201Bは、第2ファン43-Rに対応する第2マイク3-Rで得られた監視対象機器4の正常な動作音の信号を用いた教師なし学習により得られたモデルである。
【0180】
オートエンコーダ202、状態判定部204、および状態通知部205は、第1信号と第2信号の各々に対して、図16を参照して前述した対応する各部と同様に動作する。
【0181】
より具体的には、オートエンコーダ202は、第1信号のための学習済みモデル201Aを用いて、第1信号を再構成した第1再構成信号を生成する。オートエンコーダ202は、第2信号のための学習済みモデル201Bを用いて、第2信号を再構成した第2再構成信号を生成する。
【0182】
異常度算出部203は、第1信号と第1再構成信号との誤差(再構成誤差)に基づいて第1ファン43-Lの異常度を算出する。異常度算出部203は、第2信号と第2再構成信号との誤差に基づいて第2ファン43-Rの異常度を算出する。再構成誤差に基づく異常度は、補正前の異常度である。
【0183】
影響量算出部206は、異常度-影響量関数75を用いて、一方のファンの補正前の異常度が他方のファンに異常度に与える影響量を算出する。影響量算出部206は、第1ファン43-Lの補正前の異常度が第2ファン43-Rの補正前の異常度に与えている影響量を示す第1異常度-影響量関数75Aと、第2ファン43-Rの補正前の異常度が第1ファン43-Lの補正前の異常度に与えている影響量を示す第2異常度-影響量関数75Bとを有している。
【0184】
具体的には、影響量算出部206は、第2異常度-影響量関数75Bを用いて、算出された第2ファン43-Rの補正前の異常度に対応する、第1ファン43-Lの補正前の異常度への影響量(第1影響量)を算出する。また、影響量算出部206は、第1異常度-影響量関数75Aを用いて、算出された第1ファン43-Lの補正前の異常度に対応する、第2ファン43-Rの補正前の異常度への影響量(第2影響量)を算出する。
【0185】
次いで、異常度算出部203は、第1ファン43-Lの補正前の異常度から第1影響量を減算して、補正した第1ファン43-Lの異常度を取得する。また、異常度算出部203は、第2ファン43-Rの補正前の異常度から第2影響量を減算して、補正した第2ファン43-Rの異常度を取得する。なお、補正した異常度が新品の監視対象機器4における異常度を下回る場合、異常度算出部203は、補正した異常度を新品の監視対象機器4における異常度に修正してもよい。例えば新品の監視対象機器4における異常度が0である場合に、補正した異常度が0未満であるならば、異常度算出部203は、補正した異常度を0に修正する。
【0186】
状態判定部204は、第1ファン43-Lの補正した異常度を用いて、第1ファン43-Lの動作状態が正常であるか、それとも異常であるかを判定する。状態判定部204は、第2ファン43-Rの補正した異常度を用いて、第2ファン43-Rの動作状態が正常であるか、それとも異常であるかを判定する。
【0187】
状態通知部205は、状態判定部204による判定結果を通知する。
【0188】
図22に示す検知プログラム22Aの構成によれば、検知装置2は、複数のファン43-L,43-Rが互いに与える影響を考慮して、監視対象機器4の43-L,43-Rの異常度を算出し、異常度に基づく判定を行うことができる。
【0189】
図23のフローチャートは、検知装置2において実行される検知処理の手順の例を示す。検知処理は、監視対象機器4のファン43-L,43-Rの状態変化を検知するための処理である。検知装置2のCPU21は、例えば、検知プログラム22Aに含まれる命令群を実行することにより、検知処理を実現する。
【0190】
CPU21は、第1マイク3-Lにより収集された音に基づく第1信号を取得する(ステップS201)。第1マイク3-Lは、監視対象機器4の筐体41に対して第1の位置に設置され、監視対象機器4の動作音を収集する。第1の位置は、例えば、筐体41外であって、第1ファン43-Lの中心部の真上の位置である。
【0191】
CPU21は、第2マイク3-Rにより収集された音に基づく第2信号を取得する(ステップS202)。第2マイク3-Rは、監視対象機器4の筐体41に対して第2の位置に設置され、監視対象機器4の動作音を収集する。第2の位置は、例えば、筐体41外であって、第2ファン43-Rの中心部の真上の位置である。
【0192】
次いで、CPU21は第1信号を用いて、第1ファン43-Lの異常度を算出する(ステップS203)。CPU21は第2信号を用いて、第2ファン43-Rの異常度を算出する(ステップS204)。算出した第1ファン43-Lの異常度には、第2ファン43-Rの異常度に応じた影響が含まれ得る。同様に、算出した第2ファン43-Rの異常度には、第1ファン43-Lの異常度に応じた影響が含まれ得る。
【0193】
CPU21は、第2異常度-影響量関数75Bを用いて、算出した第2ファン43-Rの異常度が第1ファン43-Lの異常度に与える影響の量(第1影響量)を算出する(ステップS205)。そして、CPU21は、算出した第1ファン43-Lの異常度から第1影響量を減算することによって、第2ファン43-Rの異常度に応じた影響を補正した第1ファン43-Lの異常度を算出する(ステップS206)。
【0194】
CPU21は、補正した第1ファン43-Lの異常度が閾値を超えているか否かを判定する(ステップS207)。CPU21は、補正した第1ファン43-Lの異常度が、管理者に通知すべき数値に達しているか否かを判定する。
【0195】
補正した第1ファン43-Lの異常度が閾値を超えている場合(ステップS207のYES)、CPU21は、第1ファン43-Lの異常(状態変化)を通知し(ステップS208)、ステップS209に進む。一方、補正した第1ファン43-Lの異常度が閾値以下である場合(ステップS207のNO)、CPU21はステップS209に進む。
【0196】
次いで、CPU21は、第1異常度-影響量関数75Aを用いて、ステップS230で算出した第1ファン43-Lの異常度(すなわち補正前の第1ファン43-Lの異常度)が第2ファン43-Rの異常度に与える影響の量(第2影響量)を算出する(ステップS209)。そして、CPU21は、算出した第2ファン43-Rの異常度から第2影響量を減算することによって、第1ファン43-Lの異常度に応じた影響を補正した第2ファン43-Rの異常度を算出する(ステップS210)。
【0197】
CPU21は、補正した第2ファン43-Rの異常度が閾値を超えているか否かを判定する(ステップS211)。CPU21は、補正した第2ファン43-Rの異常度が、管理者に通知すべき数値に達しているか否かを判定する。
【0198】
補正した第2ファン43-Rの異常度が閾値を超えている場合(ステップS211のYES)、CPU21は、第2ファン43-Rの異常を通知し(ステップS211)、検知処理を終了する。一方、補正した第2ファン43-Rの異常度が閾値以下である場合(ステップS211のNO)、CPU21は検知処理を終了する。
【0199】
図23に示した検知処理により、CPU21は、マイク3-L,3-Rで取得された音の信号を用いて、管理者に通知すべきファン43-L,43-Rの異常を検知できる。なお、CPU21はステップS207,S211で複数の閾値を用いた判定を行ってもよい。複数の閾値は、例えば、ファン43-L,43-Rの劣化の深刻さに応じて設定される。これにより、CPU21は多段階のファン43-L,43-Rの異常を検知できる。
【0200】
以上説明したように、第1および第2実施形態によれば、監視対象機器4の状態変化をより正確に検知できる。監視対象機器4の筐体41内には、ファン43が設置される。検知装置2は、マイク3から収集された音の第1信号を取得する。検知装置2は、第1信号を用いて、ファン43に関する状態変化を検知する。マイク3は、ファン43が動作したときに生じる空気の流れの方向にある第1位置であって、ファン43から第1距離だけ離れた筐体41外の第1位置に設置される。
【0201】
これにより、マイク3により収集される動作音の信号では、ファン43が動作したときに生じる空気の流れの影響が軽減される。したがって、検知装置2は第1信号を用いて、監視対象機器4の状態変化をより正確に検知できる。
【0202】
第1および第2実施形態に記載された様々な機能の各々は、回路(処理回路)によって実現されてもよい。処理回路の例には、中央処理装置(CPU)のような、プログラムされたプロセッサが含まれる。このプロセッサは、メモリに格納されたコンピュータプログラム(命令群)を実行することによって、記載された機能それぞれを実行する。このプロセッサは、電気回路を含むマイクロプロセッサであってもよい。処理回路の例には、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロコントローラ、コントローラ、他の電気回路部品も含まれる。これら実施形態に記載されたCPU以外の他のコンポーネントの各々もまた処理回路によって実現されてもよい。
【0203】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0204】
1…検知システム、2,2-1,2-2,2-N…検知装置、3,3-1,3-2,3-N…マイク、4,4-1,4-2,4-N…監視対象機器、5…サーバ、21…CPU、22…RAM、23…不揮発性メモリ、24…オーディオI/F、25…通信デバイス、22A…検知プログラム、201…学習済みモデル、202…オートエンコーダ、203…異常度算出部、204…状態判定部、205…状態通知部、41…筐体、42…開口部、42A…フェンス、43…ファン、431…羽根、432…ハブ、43C…回転中心、44…軸、45…モータ、46…軸受け、51…CPU、52…RAM、53…不揮発性メモリ、54…通信デバイス、55…ディスプレイ、56…スピーカ、52A…解析プログラム、6…設置器具、61…マイク固定器具、62…位置決め器具、63…高さ決め器具、81…排出方向。
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