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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20240909BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020189891
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078903
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永松 彰
(72)【発明者】
【氏名】市村 朋子
(72)【発明者】
【氏名】関戸 悠二
(72)【発明者】
【氏名】藤田 薫
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-106995(JP,U)
【文献】特開2005-218613(JP,A)
【文献】特開2013-063266(JP,A)
【文献】特開平08-299479(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0183605(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を封入する水袋を内部に収納した蒸気発生体と、
ユーザの顔に装着されるマスク本体であって、前記蒸気発生体を装備可能なマスク本体と、を含み、
前記水袋は、押圧力を受けることで開封して水を流出可能であり、
前記蒸気発生体は、通気性を有する外側のシートと、前記水袋から流出した水を含水可能である内側のメインシートとを積層して成り、
前記マスク本体は、通気性を有する2枚のシートの上縁を除く外周縁を相互に接合されて構成され、前記蒸気発生体を収容する収容部を備える
ことを特徴とするマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔に装着するマスクに関し、特に加湿機能を有するマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、花粉や黄砂などの微粉塵に対する防御対策として、また、ウイルスや細菌などの感染対策として、マスクが汎用されている。また最近では、マスクの機能が多様化し、様々なマスクが提案されている。
【0003】
例えば睡眠中は、飲食物や唾液などの嚥下がないため、口腔が乾燥しやすい。また、冬期は全般的に空気が乾燥しており、さらに冬期以外でもオフィス内は年中エアコンが稼働している。したがって、日中でも空気が乾燥しやすい環境が多く、口腔が乾燥しやすい。口腔の乾燥を防止するため、例えば特許文献1には、加湿機能を有するマスクが開示されている。特許文献1のマスクは、水を保持したフィルターを収容部に収容することで、呼吸をするたびにフィルターの水分が蒸気となって口腔に供給される。よって、口腔の乾燥を防止可能である。
【0004】
この特許文献1のマスクは、口腔を良好に加湿できるが、使用の際にユーザが濡れたフィルターを収容部に収容する必要があるため、手間がかかるうえ、フィルターは水だけでなく、保湿剤や防腐剤などの種々の薬剤が含まれていることから、ユーザが手で触ることで手が汚れるという課題がある。加えて、フィルターへの防腐剤の吸着が原因で、使用前の保管時にカビやすいという課題がある。
【0005】
特許文献2には、水を封入した水袋を収容したマスクが開示されている。特許文献2のマスクは、使用の際にマスクを押圧することで水袋が破れて開封し、水袋内の水がマスク全体を濡らすことで、濡れマスクとして使用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-205926号公報
【文献】実用新案登録第3178657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2のマスクは、水袋の開封によりマスク自体が水で濡れるように構成されている。そのため、ユーザがマスクを顔に装着した状態では、水に濡れたマスクが口元だけでなく顔の広範囲で肌に触れるので、ユーザに不快感を与える。
【0008】
本発明は、上記課題に着目してなされたものであり、使用の際に手が汚れるなどのおそれがなく、マスク全体が水に濡れて装着時にユーザに不快感を与えるおそれのないマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、加湿機能を有するマスクに関する。本発明のマスクは、水を封入する水袋を内部に収納した蒸気発生体と、ユーザの顔に装着されるマスク本体であって、前記蒸気発生体を装備可能なマスク本体と、を含み、前記水袋は、押圧力を受けることで開封して水を流出可能であり、前記蒸気発生体は、通気性を有するとともに前記水袋から流出した水を含水可能である、ことを特徴とする。
【0010】
本発明のマスクにおいて好ましくは、前記水の粘度が3000mPa・s以上7000mPa・s以下であることを特徴とする、ように構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のマスクによれば、使用の際に手が汚れるなどのおそれがなく、マスク全体が水に濡れて装着時にユーザに不快感を与えることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態のマスクの斜視図である。
図2】本実施形態のマスクの正面図である。
図3】本実施形態のマスクの平面図である。
図4】蒸気発生体の断面図である。
図5】本実施形態のマスクの使用方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のマスクの実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1図3は、本実施形態のマスク1の外観を示している。マスク1は、ユーザの顔に装着されるマスク本体2、及び蒸気を発し得る蒸気発生体3を含む。蒸気発生体3はマスク本体2に備えられる。さらにマスク1は、一対の耳掛けバンド4を含んでおり、一対の耳掛けバンド4はマスク本体2の左右の側部に取り付けられる。以下、一対の耳掛けバンド4を結ぶ方向(図2及び図3の左右方向)を幅方向と称し、幅方向に直交する方向(図1及び図2の上下方向)を上下方向と称する。
【0015】
マスク本体2は、通気性を有し、ユーザの顔の一部(目の下の領域、特に鼻及び口)を覆う。マスク本体2は、幅中央線H(図2に示す)を挟んで左右対称の形状を呈する。幅中央線Hは、幅中央線Hを折り目としてマスク本体2を二つ折りにしたときに、一対の耳掛けバンド4から離れる方向に向けて凸状に湾曲する形状を呈する。これにより、二つ折りのマスク本体2を広げて顔に装着したときに、マスク本体2は立体的な形状を呈し、マスク本体2の幅方向の中央部においては口や鼻孔とマスク本体2の間に空間が形成される。
【0016】
マスク本体2の上縁及び下縁は、幅方向の外側(左側や右側)に向けて上下の幅が徐々に狭くなるように、それぞれ斜め下方、斜め上方に傾斜する。マスク本体2の左右の側縁は、上下方向の中央部が凹状に湾曲した凹部20をなす形状を呈しており、一対の突部21が間に凹部20を挟むように設けられている。この一対の突部21を結ぶように耳掛けバンド4が取り付けられている。
【0017】
マスク本体2は、第1シート5と、第1シート5に重ね合わされる第2シート6により構成されており、第2シート6が顔側に配され、第1シート5が顔と反対側に配される。2枚のシート5,6について、上縁を除く外周縁を所定の幅で例えば熱融着、超音波溶着、縫製などの公知の方法を用いて接合するとともに、幅中央線Hに沿って所定の幅で上縁から下縁まで接合することで、マスク本体2が形成される。マスク本体2には、2枚のシート5,6を重ね合わせることで、2枚のシート5,6の間に蒸気発生体3を収容可能な収容部22が設けられる。本実施形態では、幅中央線Hを間に挟んで左右一対の収容部22がマスク本体2に設けられている。
【0018】
なお、マスク本体2は、左右対称形状の一対のマスク片を幅中央線Hにおいて接合することで形成してもよい。マスク片は第一シート5及び第二シート6の約半分の大きさの2枚のシートで構成され、2枚のシートの上縁を除く外周縁を所定の幅で接合することで形成される。
【0019】
マスク本体2の上縁には、2枚のシート5,6が接合されないことで開口23が形成されており、開口23を通して収容部22に対して蒸気発生体3の出し入れが可能である。本実施形態では、左右一対の収容部22に対応して、幅中央線Hを間に挟む左右一対の開口23がマスク本体2に形成されている。
【0020】
マスク本体2には、収容部22内の蒸気発生体3を所定位置に保持するための接合部24が形成されている。接合部24は、第1シート5及び第2シート6を例えば熱融着、超音波溶着、縫製などの公知の方法を用いて線状に接合することで形成される。接合部24は、蒸気発生体3の下縁に沿うよう左右方向に延びる略水平部分と、左右一方の側縁の一部に沿うよう上下方向に延びる垂直部分とで形成されており、この接合部24によって、収容部22内の蒸気発生体3が下方や左右へ移動するのが規制されている。
【0021】
第1シート5は通気性を有する素材を用いて形成されている。第2シート6は通気性かつ透湿性を有する素材を用いて形成されている。透湿性とは、蒸気(水分子)を通すことができる性質である。第2シート6が透湿性を有することにより、収容部22内の蒸気発生体3から発せられる蒸気が第2シート6を通過してユーザの顔側に供給される。第2シート6の透湿性は、蒸気発生体3から発せられる蒸気が通過することができれば、透湿度は特に限定されない。なお、通常、通気性を有するシートは透湿性も有している。
【0022】
第1シート5及び第2シート6には、例えば織布や不織布などのシート状繊維を用いることができ、その中でも不織布を好ましく用いることができる。織布及び不織布の繊維材料としては、紙、コットンなどの天然繊維;レーヨン、アセテートなどの半合成繊維;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)、ナイロンなどの合成繊維;これらの混合繊維などを例示することができる。その中でも、生産性の観点からはポリプロピレン、ポリエチレンを好ましく例示することができ、マスク本体2の保形性の観点からはポリプロピレンを好ましく例示することができ、マスク本体2のユーザに対する肌触りの観点からはナイロンを好ましく例示することができる。
【0023】
第1シート5及び第2シート6に不織布を用いる場合には、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、サーマルボンド不織布又はスパンレース不織布を用いることができる。その中でも、マスク本体2の保形性の観点からはスパンボンド不織布を好ましく用いることができ、マスク本体2の花粉・ウイルスなどに対するカット性能の観点からはメルトブロー不織布を好ましく用いることができる。第1シート5及び第2シート6は、単層構造又は2層以上の積層構造とすることができ、積層構造としては、例えばSS不織布(スパンボンド不織布/スパンボンド不織布の2層構造)、SMS不織布(スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の3層構造)などを例示することができる。
【0024】
例えば、顔側の第二シート6は良好な肌触りを有することが好ましいため、ポリプロピレンを素材としたスパンボンド不織布を好ましく用いることができ、顔と反対側の第一シート5は良好な保形性を有することが好ましいため、ポリプロピレンを素材としたエアスルー不織布を好ましく用いることができる。
【0025】
なお、本実施形態では、マスク本体2は2枚のシート5,6で構成されているが、例えば第1シート5の表側(顔と反対側)などに他のシートを重ね合わせて3層以上の積層構造としてもよい。
【0026】
蒸気発生体3は、図4に示すように、水袋7を内部に収納している。水袋7は、密閉された袋状を呈しており、内部に水を封入している。水袋7を形成する素材としては、封入した水が漏れ出さない、染み出さない素材であれば特に限定されず、従来公知の不透水性かつ非通気性(非透湿性)の袋を用いることができる。なお、不透水性とは、水を透し難い難透水性及び水を透さない非透水性を含む。
【0027】
水袋7内には水のみを封入してもよいが、水を主成分にして他の成分を添加することもできる。他の成分としてはポリオールを例示することができる。ポリオールとしては、特に限定されないが、好ましくはグリセリンやジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、1,2ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオールなどが例示され、より好ましくは安全性の点でグリセリンが例示される。これらの他にも、メチルパラベンやフェノキシエタノールなどの防腐剤、ヒアルロン酸塩やベタインなどの保湿剤、植物エキス、キサンタンガムやヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC),ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、寒天、グアーガム、カラギーナンなどの水溶性増粘剤、ユーカリやミントなどの香料、香料を可溶化する界面活性剤(ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤)などを他の成分として水に適宜添加することができる。
【0028】
水袋7内に封入される水の量は、特に限定されないが、睡眠時などの長時間にわたり十分な量の蒸気をユーザに供給できる量であることが好ましく、例えば2g以上であることが好ましく、4g以上であることがより好ましい。一方で、マスク1の装着時において水の重量によってマスク1の使用感が低下することを抑制するとの観点からは、水の量は、例えば7g以下であることが好ましく、5g以下であることがより好ましい。なお、水に他の成分が添加されている場合は、添加された他の成分を含めた水の量が上述した範囲内にあればよい。
【0029】
水袋7内に封入される水の粘度は、特に限定されないが、水の粘度が低すぎると、水袋7の開封時に水袋7から蒸気発生体3内に水が勢いよく流出するため、蒸気発生体3の後述する外周縁のシール部33のシール強度によってはシール部33が水の圧力により破損するおそれがある。一方で、水の粘度が高すぎると、水袋7の開封時に水袋7から蒸気発生体3内に水が流出し難くなるおそれがある。そのため、水の粘度は、25℃での粘度が3000mPa・s以上7000mPa・s以下であることが好ましく、4000mPa・s以上6000mPa・s以下であることがより好ましい。なお、水の粘度は、1000mPa・s未満の範囲を測定する場合、B型粘度計(TV-10型、東機産業株式会社製)でSPINDLE No.M2のローターを用いて、25℃にて30rpmの回転速度で測定される。1000mPa・s以上2500mPa・s未満の範囲を測定する場合、B型粘度計(TV-10型、東機産業株式会社製)でSPINDLE No.M2のローターを用いて、25℃にて12rpmの回転速度で測定される。2500mPa・s以上10000mPa・s未満の範囲を測定する場合、SPINDLE No.M3のローターを用いて、25℃にて12rpmの回転速度で測定される。10000mPa・s以上20000mPa・s未満の範囲を測定する場合、SPINDLE No.M4のローターを用いて、25℃にて12rpmの回転速度で測定される。
【0030】
水袋7は、押圧力を受けることで開封して、内部に封入する水を外部(蒸気発生体3内)に流出可能な構造とされている。ここで、押圧力とは、例えば水袋7を収納した蒸気発生体3をユーザが一方の手又は両方の手で挟んだ状態で蒸気発生体3に圧力を掛けられる程度の力をいう。上述の構造としては、例えば押圧力を受けたときに水袋7の少なくとも一部が破れるよう水袋7に易破断線を設ける、又は、押圧力を受けたときに水袋7の外周縁のシール部70(図4に示す)の少なくとも一部が水圧で破損するようシール部70にシール強度の弱い部分を設ける、などの従来公知の種々の構造を用いることができる。
【0031】
水袋7を収納する蒸気発生体3は、密閉された袋状を呈している。蒸気発生体3は、水袋7から流出した水を含水(吸収)することにより、蒸気発生体3において水を保持して水が蒸気発生体3から漏れ出すことを抑制し、かつ、ユーザの呼吸により蒸気を発生可能な構造とされている。
【0032】
具体的に、蒸気発生体3は、例えば繊維材料、吸水性樹脂材料、スポンジ状樹脂材料などをシート状に形成したメインシート30を用いて形成されている。メインシート30は、水袋7から流出した水を含水(吸収)する機能を有し、かつ、ユーザの呼吸による空気を通過させるとともにユーザの呼吸により蒸気発生体3が保持する水が蒸発することによって蒸気を発生させる機能を有するシートである。
【0033】
メインシート30に用いるシート状繊維としては、織布や不織布を挙げることができ、その中でも不織布を好ましく挙げることができる。織布及び不織布の繊維材料としては、例えば、パルプ、コットンなどの天然繊維;レーヨン、アセテートなどの半合成繊維;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)、アクリル、ナイロン、ポリ塩化ビニルなどの合成繊維;これらの混合繊維など、を例示することができる。
【0034】
その中でも、パルプを用いた不織布をメインシート30に好ましく用いることができ、その製法は、特に限定されないが、エアレイド法などにより製造することができ、生産性、加工性及び耐久性の観点から主成分たるパルプにポリエチレンなどの熱融着性繊維を所定の割合で混紡することが好ましい。本例におけるメインシート30は、水袋7から流出した水を保持するため、目付けが200g/m以上であることが好ましく、300g/m以上であることがより好ましく、500g/m以上であることがさらに好ましい。一方で、メインシート30の目付けが大きすぎると蒸気発生体3が硬くなって、マスク1の装着時にユーザが不快に感じるおそれがあるため、メインシート30の目付けは1500g/m以下であることが好ましく、1000g/m以下であることがより好ましく、600g/m以下であることがさらに好ましい。
【0035】
その他には、吸収性樹脂を含むシート状繊維、例えば高吸収性ポリマー(SAP;Super absorbent polymer)を含むSAPシートをメインシート30に好ましく用いることができる。SAPシートとは、SAPを担持分散させた不織布(例えばエアレイド不織布)である。
【0036】
蒸気発生体3は、メインシート30の単層又はメインシート30に他のシートを組み合わせた複数層構造とすることができ、耐久性及び保水性の観点から、通気性かつ透湿性を有する一対のシート31,32でメインシート30を挟んだ3層構造とすることが好ましい。一対のシート31,32には、例えば織布や不織布などのシート状繊維を用いることができ、その中でも不織布を好ましく用いることができる。一対のシート31,32は同素材としてもよく、異なる素材としてもよい。一対のシート31,32の素材としては、親水性の天然繊維、疎水性の合成繊維、又はこれらの混紡繊維を挙げることができ、天然繊維としては、レーヨン、コットンを好ましく挙げることができ、レーヨンをより好ましく挙げることができる。親水性にすると水分をメインシート30に吸収させやすくなり、製造が容易になるという利点がある。合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)を好ましく挙げることができ、ポリエチレン、ポリプロピレンを好ましく挙げることができる。疎水性にするとぬれやべたつきを防止できるという利点がある。したがって、メインシート30の外側(水袋7と反対側)のシート31を合成繊維で形成するとともに、内側(水袋7側)のシート32をレーヨンなどの天然繊維で形成することが好ましい。一対のシート31,32は、例えば目付けを20g/m以上50g/m以下にすることが好ましい。
【0037】
蒸気発生体3としては、例えば、従来品のマスクに用いられる水を保持したフィルターと同素材のもの、あるいは、おりもの、経血、汗、尿などの体液を吸収する体液吸収性物品に用いられる吸収体などと同素材のものを用いることができる。
【0038】
蒸気発生体3は、2枚の内側シート32、各内側シート32の外側に配置した2枚のメインシート30、及び各メインシート30の外側に配置した2枚の外側シート31の計6枚の同形状・同サイズのシートを重ね合わせ、外周縁を所定の幅で例えば熱融着、超音波溶着、縫製などの公知の方法を用いて接合することにより、袋状に形成される。なお、予め同形状・同サイズの内側シート32、メインシート30、及び外側シート31を一体化した積層シートを準備し、2枚の積層シートを重ね合わせ、外周縁を所定の幅で例えば熱融着、超音波溶着、縫製などの公知の方法を用いて接合することにより、蒸気発生体3を袋状に形成してもよい。
【0039】
蒸気発生体3の外周縁のシール部33のシール強度は、特に限定されないが、水袋7から水が流出するときの水の圧力によりシール部33が破損して水が蒸気発生体3の外部へ漏れ出さないようにシール強度が設定されていることが好ましい。
【0040】
一対の耳掛けバンド4は、マスク本体2をユーザの顔に保持するためのものであり、ユーザの左右の耳に引っ掛けることができる。耳掛けバンド4のマスク本体2への取り付け方法は、例えば熱融着、超音波溶着、縫製などの公知の方法を用いることができる。耳掛けバンド4の素材は、特に限定されないが、例えばポリエステルなどの伸縮性のある紐状又は帯状の素材を用いることが好ましい。なお、マスク本体2をユーザの顔に保持する手段としては、耳掛けバンド4以外の他の種々の手段を用いてもよく、例えば、マスク本体2の左右の側部に粘着剤層を設けて当該粘着剤層を介してマスク本体2の左右の側部をユーザの顔に貼り付けるように構成してもよいし、マスク本体2の左右の側部に耳が入る孔を形成して当該孔を介してマスク本体2の左右の側部をユーザの左右の耳に引っ掛けるように構成してもよい。
【0041】
以上、上述した本実施形態のマスク1は、図5に示すように、蒸気発生体3をマスク本体2の収容部22内に収容した状態で、ユーザが手を用いてマスク本体2の上から蒸気発生体3を押圧することで、蒸気発生体3内の水袋7を開封して水袋7から水を流出させて蒸気発生体3に水を含水(吸収)させる。そして、ユーザがマスク1を顔に装着して呼吸することで、蒸気発生体3を空気が通過し、このときに蒸気発生体3が保持する水が蒸発して蒸気が発生することで、蒸気がユーザの口腔に供給され、口腔を良好に加湿して口腔の乾燥を防止することができる。
【0042】
また本実施形態のマスク1によれば、蒸気発生体3は水を含水(吸収)して保持可能であるため、水袋7から流出した水が外部に漏れ出して、マスク本体2が濡れるのを抑制することができる。よって、ユーザがマスク1を顔に装着した状態でユーザに不快感を与えるおそれがない。
【0043】
また本実施形態のマスク1によれば、使用の際に、従来品のようにユーザは濡れたフィルターを収容部に収容する必要がなく、蒸気発生体3を押圧するだけでよいため、手間がかからないうえ、ユーザの手が水などで汚れるおそれがない。さらに、水は水袋7内に封入されているため、マスク1を使用する前の保管時に蒸気発生体3にカビが生じるのを防止することができる。
【0044】
また本実施形態のマスク1によれば、水袋7内の水の粘度が3000mPa・s以上7000mPa・s以下であるので、水袋7の開封時に水袋7から蒸気発生体3内に水が勢いよく流出せず、蒸気発生体3が破損するのを防止することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0046】
一変形例として、上記実施形態では、マスク本体2を少なくとも2枚のシート5,6を重ね合わせることで形成し、蒸気発生体3を当該2枚のシート5,6の間に収容することでマスク本体2に蒸気発生体3を装備可能としている。しかし、マスク本体2に蒸気発生体3を装備可能とさせる方法は特に限定されず、例えば蒸気発生体3を収納するポケットをマスク本体2に取り付け、蒸気発生体3をポケット内に収納する方法を採用してもよい。
【0047】
他の変形例として、上記実施形態では、マスク本体2は顔への装着時に鼻孔及び口との間に大きな空間を形成する立体構造のものである。しかし、マスク本体2の構造は特に限定されず、例えば使用前には平坦状をなしており、使用時には1つ又は複数のプリーツなどを広げることによって上下方向に伸長させてユーザの顔に装着させる構造(立体構造よりも顔の表面により密着する構造)のものであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 マスク
2 マスク本体
3 蒸気発生体
7 水袋
図1
図2
図3
図4
図5