(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】プリント基板の反り防止具
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20240909BHJP
B23K 1/08 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
H05K3/34 506H
B23K1/08 D
H05K3/34 509
(21)【出願番号】P 2020193045
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090310
【氏名又は名称】木村 正俊
(72)【発明者】
【氏名】矢野 信悟
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-188553(JP,A)
【文献】実開昭59-155763(JP,U)
【文献】特開平02-020687(JP,A)
【文献】実開昭60-192480(JP,U)
【文献】実開平04-010367(JP,U)
【文献】米国特許第05186377(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/32- 3/34
B23K 1/00- 3/08
B23K 31/02
B23K 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されながら部品がはんだ付けされるプリント基板において、前記プリント基板の搬送方向の両端に設けられた両端保持手段と、
前記プリント基板の左右方向内側位置で、前記両端の前記両端保持手段から上方に立ち上がる両端橋脚部を有し、前記プリント基板の搬送方向に沿う方向に形成され、前記両端橋脚部間を接続する支持体と、
前記支持体に配置されたフック保持手段と、
前記フック保持手段に一端に折り曲げ形成された係合部が係合し、他端に折り曲げ形成された吊り上げ部が前記プリント基板にある孔を通って前記プリント基板の下面に接触するフックとを、
有するプリント基板の反り防止具。
【請求項2】
請求項1記載のプリント基板の反り防止具において、前記支持体の前記
両端橋脚部は、前記両端保持手段上面に載置される載置部と、前記載置部から前記両端保持手段の内側下方に折れ曲がった転倒防止片を有するプリント基板の反り防止具。
【請求項3】
請求項2記載のプリント基板の反り防止具において、前記プリント基板が孔を有し、前記
転倒防止片が、前記孔を通過するプリント基板の反り防止具。
【請求項4】
請求項2または3記載のプリント基板の反り防止具において、
前記支持体は、前記プリント基板の前記搬送方向に直交する方向に沿って間隔をあけて1対設けられ、前記フック保持手段は、前記1対の支持体に跨がって設けられ、前記フック保持手段は、
前記1対の支持体の少なくとも一方側に設けられた位置決め手段を有し、前記位置決め手段は、前記支持体を挟んで前記フック保持手段から下方に伸びているプリント基板の反り防止具。
【請求項5】
請求項4記載のプリント基板の反り防止具において、前記位置決め手段は、前記フック保持手段
の下方に向けて突出する突出部からなるプリント基板の反り防止具。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか記載のプリント基板の反り防止具において、前記フックは、前記プリント基板上面付近で中途がくの字状に形成されているプリント基板の反り防止具。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか記載のプリント基板の反り防止具において、前記フックの前記係合部と前記吊り上げ部は、何れも前記プリント基板の
搬送方向の後側が開放された状態に折り曲げられているプリント基板の反り防止具。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれか記載のプリント基板の反り防止具において、
前記フック保持手段は前記プリント基板の搬送方向に沿って前後にそれぞれ配置され、前記フックは、前記前後のフック保持手段にそれぞれ前記係合部が係合しているプリント基板の反り防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送手段によってプリント基板が搬送しながら、プリント基板に部品をはんだ付けする際に、プリント基板の反りを防止するプリント基板の反り防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプリント基板の反りを防止する技術の一例が特許文献1に開示されている。この技術では、長方形状のプリント基板に部品をディップはんだ付けするプリント基板の反りを防止するためのもので、プリント基板の長辺に沿う方向にプリント基板を搬送するとき、プリント基板の両短辺の中央に位置するように、プリント基板の上方に角柱状の上吊り治具本体が配置されている。この治具本体の両端近傍が1対の脚部でプリント基板に固定されている。治具本体のほぼ中央に吊り上げ棒が垂直に配置され、その下端に形成した吊り部がプリント基板に形成した孔を通過してプリント基板の下面に接触している。吊り上げ棒は、治具本体の上方に突出しており、その突出端には、吊り上げ棒よりも径の大きい頭部が形成されている。この頭部と治具本体との間にある吊り上げ棒の周囲に圧縮コイルバネが配置されており、この圧縮コイルの付勢力によって吊り上げ棒が上方に押し上げられ、吊り上げ棒の吊り部が接触しているプリント基板の部分が上方に吊り上げられ、はんだ付けの際の加熱によって下方に凸に反りそうなプリント基板の反りを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術によれば、プリント基板の反りを防止することはできるが、吊り上げ棒を圧縮コイルバネで上方に押し上げる必要があり、反り防止具の構成が複雑になるだけでなく、その取付作業も面倒である。
【0005】
本発明は、構成が簡単で、かつ取付作業が容易なプリント基板の反り防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のプリント基板の反り防止具では、搬送されながら部品がはんだ付けされるプリント基板の搬送方向の両端に両端保持手段が設けられている。はんだ付けの方式としては、ディップはんだ付け等、種々のものを使用することができる。前記プリント基板の左右方向内側位置で、前記両端の前記両端保持手段から上方に立ち上がる両端橋脚部を接続する支持体が、前記プリント基板の搬送方向に沿う方向に形成されている。前記支持体にフック保持手段が配置されている。前記フック保持手段にフックの一端に折り曲げ形成された係合部が係合し、フックの他端に折り曲げ形成された吊り上げ部が前記プリント基板にある孔を通って前記プリント基板の下面に接触している。
【0007】
このように構成されたプリント基板の反り防止具では、フックの吊り上げ部がプリント基板の下面からプリント基板を上側に吊り上げるので、プリント基板がはんだ付け時の加熱によって下方に凸に反るのを防止できる。しかも、この反りの防止は、フック保持手段とプリント基板との間にフックを掛けた簡単な構成であるし、その取付作業もプリント基板とフック保持手段との間にフックを掛けるだけであるので、圧縮コイルバネの取付のような作業が不要であり、取付作業も簡単である。
【0008】
上記の反り防止具において、前記支持体の前記両端橋脚部は、前記両端保持手段上面に載置される載置部と、前記載置部から前記両端保持手段の内側下方に折れ曲がった転倒防止片を有するものとすることができる。このように構成すると、プリント基板の搬送中に前記橋脚部が傾いたとしても、前記転倒防止片の下端がプリント基板に当接してプリント基板の位置ずれを防止するとともに、前記橋脚部が転落することを防止することができる。
【0009】
更に、プリント基板に更に孔を形成し、前記孔を前記転倒防止片が通過するようにした場合には、前記転倒防止片が前記孔に当たることで、同様に前記プリント基板の位置ずれを確実に防止するとともに、前記両端橋脚部が落下することを防止できる。
【0010】
上記いずれか記載のプリント基板の反り防止具において、前記支持体は、前記プリント基板の前記搬送方向に直交する方向に沿って間隔をあけて1対設けられ、前記フック保持手段は、前記1対の支持体に跨がって設けられ、前記フック保持手段は、前記1対の支持体の少なくとも一方側に設けられた位置決め手段を有し、前記位置決め手段は、前記支持体を挟んで前記フック保持手段から下方に伸びているものとすることができる。このように位置決め手段を設けることによって、フック保持手段の位置、ひいてはフックの位置を決定することができるので、プリント基板の反りの生じやすい位置に適切にフックを固定することができる。
【0011】
さらに、前記位置決め手段は、前記フック保持手段の下方に向けて突出する突出部とすることができる。位置決め手段として突出部を使用すれば、単に下方に向けて突出する構成のものであれば使用でき、その構成を簡略化することができ、また、その設置も容易で或る。なお。突起部としては、例えばネジ止めされたネジとすることができる。ネジからなる突出部を位置決め手段として用いると、取付、取外しが容易で、支持体の幅がプリント基板に応じて変化する場合でも、支持体の幅に合わせて容易に左右に移動でき、また、プリント基板の反りやすい場所に合わせて、プリント基板の搬送方向に自由に移動させることができる。
【0012】
上記いずれか記載のプリント基板の反り防止具において、前記フックは、前記プリント基板上面付近で中途がくの字状に形成されているものとすることができる。フックがプリント基板の近くでくの字になっているので、プリント基板にフックの吊り上げ部を挿して、フックを引っ張って係合部をフック保持手段に引っ掛ける場合に、吊り上げ部が孔から抜けにくくなる。
【0013】
上記いずれか記載のプリント基板の反り防止具において、前記フックの前記係合部と前記吊り上げ部は、何れも前記プリント基板の搬送方向の後側が開放された状態に折り曲げられているものとすることができる。係合部と吊り上げ部が搬送方向の後側が開放するように曲がっているので、はんだが吊り上げ部を押したとき、係合部が係合する方向に傾き、外れ防止になる。また、はんだが開放された吊り上げ部とプリント基板との隙間に入り込むことがない。
【0014】
上記いずれか記載のプリント基板の反り防止具において、前記フック保持手段は前記プリント基板の搬送方向に沿って前後にそれぞれ配置され、前記フックは、前記前後のフック保持手段にそれぞれ前記係合部が係合しているものとすることができる。このように構成すると、プリント基板の反りが生じやすい場所の両側でプリント基板を吊り上げることができるので、確実にプリント基板の反りを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、簡単な構成で、かつ簡単な作業のみで、プリント基板の反りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施態様のプリント基板の反り防止具の縦断面図である。
【
図2】
図1のプリント基板の反り防止具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施態様のプリント基板の反り防止具は、
図1及び
図2に示すプリント基板2に使用される。このプリント基板2は、長方形状に形成され、図示していない多数のはんだ付けされる部品が配置され、
図1に矢印で示すようにその長手方向に反って
図1における右から左方向に、例えばはんだ槽内を搬送されて、はんだ付けされる。
【0018】
プリント基板2の搬送方向の両端、例えばプリント基板2の両短辺に、両端保持手段、例えばコ字状金具4が既に配置されている。このコ字状金具4は、その上下の水平部の間にプリント基板2の短辺をそれぞれ挟み込んだもので、プリント基板2の補強及び反りの防止用に設けられている。このコ字状金具4の両端は、プリント基板2の短辺の両端よりも内側に位置している。プリント基板2の短編の両端とコ字金具4の端との間にあるプリント基板2のスペースを図示しないベルトコンベヤのチャックが掴んで、プリント基板2を
図1の矢印方向に搬送させる。
【0019】
これらコ字状金具4の2つの上側水平部それぞれには、2つの両端橋脚部6が、プリント基板2の短辺方向に沿って互いに間隔を開けて配置されている。合計4つの両端橋脚部6は、プリント基板2の上面に描いた長方形の各対角線上に位置するように配置されている。各両端橋脚部6は、コ字状金具4の上側水平部状に配置された載置部8と、この載置部8から上方に、載置部8に対して垂直に上方に伸びた脚部10とを有している。載置部8は、コ字状金具4を超えてプリント基板2上まで伸延し、それらの先端にはプリント基板2に向けて折り曲げた転倒防止片12が形成されている。これら転落防止片12がプリント基板2に向けて形成されているので、プリント基板2がはんだ付けのために搬送されている最中に揺れたとして、両端橋脚部6がプリント基板2に当接し、プリント基板2の位置ずれが防止できると共に、両端橋脚部6が転落することはない。従って、両端橋脚部6は、コ字金具4に固定する必要は無い。また、はんだ付けされるプリント基板の大きさが異なるものに変更されて、両端橋脚部6の設置位置を変化させる必要が生じた場合でも、固定されていないので、その位置変更を容易に行える。なお、
図2に破線で示すようにプリント基板2に孔を形成しておき、転落防止片12が、このプリント基板2の孔に挿入されるようにすることもできる。その場合には、揺れた際に転落防止片12がプリント基板2の孔に当接し、両端橋脚部6の落下を防止できるとともに、プリント基板2が左右に大きくずれるのを防止できる。
【0020】
各両端橋脚部6のうち両短辺にあって互いに対応する位置にある2つの脚部10の上端間に、角柱状の支持体14が、プリント基板2の長辺方向に沿って配置されている。支持体14の両端は、図示していない固定具によって脚部10の上端にそれぞれ固定されている。支持体14は、合計2本あり、2本の支持体14は互いに平行に配置されている。
【0021】
これら2本の支持体14間にフック保持手段、例えば角柱状のフック保持材16が支持体14に直交するように配置されている。フック保持材16は、2つ設けられており、2つのフック保持材16は、プリント基板2の長辺方向に間隔をおいて配置されている。これらフック保持材16の両端は、2つの支持体14よりも外側、即ちプリント基板2の両長辺側に突出している。
【0022】
これらフック保持材16には、支持体14の幅方向の両側に位置するように位置決め部材、例えば突出部、具体的にはネジ18がそれぞれ取り付けられている。これらネジ18は、フック保持材16がプリント基板2の短辺に沿う方向に移動するのを阻止するもので、この実施形態では、支持体14に密着して配置されている。但し、ネジ18は、支持体14を挟んでいればよく、必ずしも密着させる必要は無い。フック保持材16がプリント基板2の短辺方向に反って揺れた場合に、フック保持材16が支持体14から外れない程度に支持体14に接近していればよい。また、プリント基板2の大きさが変化した場合に、2つの支持体14の間隔が変化した場合、その変化に対応してネジ18の設置位置は変化させられる。これに対応するように、フック保持材16には、その長さ方向に反って多数のネジ挿通孔を所定の間隔をおいて形成してもよい。なお、フック保持材16は、プリント基板2の反りやすい場所に応じて、その設置場所を支持体14の長さ方向に反って変化させるので、その変化に応じてネジ18の設置位置も変化する。
【0023】
各フック保持材16の例えば中央には、フック20がそれぞれ取り付けられている。フック20は、例えば金属製で、その一端がフック保持材16に係合するように折り曲げられて、係合部22とされている。また、フック20は、
図1に矢印で示すプリント基板2の搬送方向の前側から後ろ側に傾斜して配置され、プリント基板2の上面近傍でプリント基板2の搬送方向の前側に折り曲げられて、くの字状とされ、プリント基板2に形成された孔24に挿通されて、挿通された他端部がプリント基板2の下面に接触するように水平に折り曲げられて、吊り上げ部26とされている。係合部22及び吊り上げ部26は、
図1に矢印で示す搬送方向の後ろ側が開放されている。
【0024】
フック20は、プリント基板2の上面の近傍でくの字状とされているので、プリント基板2の孔24にフック20の吊り上げ部26を挿入して、フック20を上方に引っ張って係合部22をフック保持材16に係合しているので、吊り上げ部26は孔24から抜けにくい。また、係合部22と吊り上げ部26は、その搬送方向の後ろ側が開放するように曲げられているので、後述するようにプリント基板2がはんだ槽を搬送されているとき、はんだが吊り上げ部26の閉じた部分を後方に押したとき、フック20全体が後方に押され、係合部22がフック保持材16に強く係合する方向である後ろ側に移動するので、フック20の外れ防止になる。このように、フック20の吊り上げ部26が搬送方向の後ろ側に開放しているため、はんだがこの開放した部分から吊り上げ部26とプリント基板2との間に入り込まないため、フック20がプリント基板2から抜けるのを防止することができる。
【0025】
このプリント基板の反り防止具では、例えば、コ字状金具4にプリント基板2を取り付けた状態において、プリント基板2の反りが生じると予想される場所の近傍にフック20を配置可能とするように、各橋脚部6の設置位置が決定されて、かつ設置される。支持体14が橋脚部6の脚部10に取り付けられた後、支持体14上に、フック保持材16をプリント基板2の反りが生じると予想される場所に応じて立てる。次に、ネジ18によってフック保持材16の位置決めをする。各孔24にフック20を挿入し、各フック20を各フック保持材16におけるプリント基板2の搬送方向の後側に一端が位置するように引っ張って、係合部22をフック保持材16に係合する。これによって、フック20の吊り上げ部26が
図1に幾分誇張して示すように、プリント基板2をその上面側に凸に押すことになる。従って、プリント基板2がはんだ槽内を搬送される際に、加熱されて、プリント基板2の下方に凸に反ろうとしても、その反りを防止することができる。
【0026】
上記の実施形態では、転倒防止片12は、全ての橋脚部6に設けたが、対角線上に位置する2つの橋脚部6にだけ設けてもよい。上記の実施形態では、位置決め手段としてネジ18を使用したが、支持体14に接触可能でフック保持材16に取り付け可能なものであれば、フック保持材に固定可能な他のもの、例えば棒状体であってもよい。また、ネジ18は、各支持体14の両側にそれぞれ設けたが、フック保持材16の支持体14から突出している部分のみにネジ18を設けることもできる。また、上記の実施形態では、2つのフック20を設けたが、これに限ったものではなく、プリント基板2で予想される反りに応じて、1つだけ設けることもできるし、3つ以上設けることもできる。3つ以上設ける場合には、フック保持材16を新たにもう1つ追加する。また、フック20は、フック保持材16に対して1つだけ設けたが、プリント基板2の予想される反りに応じて、1つのフック保持材16に対して複数のフック20をフック保持材16の長さ方向に間隔をおいて配置することもできる。
【符号の説明】
【0027】
2 プリント基板
4 コ字状金具(両端保持手段)
6 両端橋脚部
14 支持体
16 フック保持材(フック保持手段)
18 ネジ(位置決め手段)
20 フック
22 係合部
24 孔
26 吊り上げ部