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特許7551471導電体に絶縁体スリーブを取り付けるための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】導電体に絶縁体スリーブを取り付けるための装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/58 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
H01R4/58 C
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020194108
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2021086833
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-08-23
(31)【優先権主張番号】20 2019 106 641.5
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,ビヨルン
(72)【発明者】
【氏名】ケーニー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー,アレクサンダー
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-009115(JP,A)
【文献】特開2019-033068(JP,A)
【文献】特開2013-062103(JP,A)
【文献】特開2020-109741(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0248306(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0237199(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体(6)を収容する絶縁体スリーブ(4)を前記導電体(6)に取り付けるための装置(1)であって、
前記装置(1)は、
- 前記絶縁体スリーブ(4)と、
- 装着シースと(2)と、
- 前記絶縁体スリーブ(4)を貫通し、前記装着シース(2)を前記絶縁体スリーブ(4)上に固定する少なくとも1つの保持ピン(7)と、を備え、
前記絶縁体スリーブ(4)の端部部片(8)は前記装着シース(2)のレセプタクル開口部(12)内に受け入れ可能であり、
前記少なくとも1つの保持ピン(7)は、前記装着シース(2)を前記絶縁体スリーブ(4)の長さ方向(18)において変位不能に前記絶縁体スリーブ(4)上に固定する、
装置(1)。
【請求項2】
前記絶縁体スリーブ(4)は、前記少なくとも1つの保持ピン(7)を挿入するための少なくとも1つの貫通開口部(68)を有する、
請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記装着シース(2)は、2つの部品から成る、
請求項1または2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの保持ピン(7)は、前記装着シース(2)の一部である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの保持ピン(7)は、前記装着シース(2)を形成している第1のシェル(14)の一部であり、
前記第1のシェル(14)とは反対側を向くそれぞれの前記保持ピン(7)のピン端部(56)は、前記装着シース(2)を形成している第2のシェル(16)を貫通する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記装着シース(2)の前記レセプタクル開口部(12)の外側に、2つの前記シェル(14、16)を係止するための少なくとも1つのラッチングデバイス(22)が配設されている、
請求項5に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記装着シース(2)の前記レセプタクル開口部(12)は矩形の断面を有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記装着シース(2)は、前記導電体(6)に取り付けられたコンタクト要素(34)用のハウジング部(36)を備える、
請求項1から7のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記装置(1)は導電体(6)を更に備え、
前記絶縁体スリーブ(4)は前記導電体(6)を取り囲んでおり、前記導電体(6)の前記長さ方向に作用するポジティブロック接続が、前記導電体(6)と前記装着シース(2)の間に存在する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記導電体(6)はコンタクト要素(34)を有し、前記ポジティブロック接続は前記装着シース(2)と前記コンタクト要素(34)の間で行われる、
請求項9に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記絶縁体スリーブ(4)は前記装着シース(2)と共に前記導電体(6)用の接触保護部(76)を形成している、
請求項1から10のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの保持ピン(7)が、前記導電体(6)を貫通している、
請求項1から11のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項13】
前記レセプタクル開口部(12)内には少なくとも2つの保持ピン(7a、7b)が設けられており、前記導電体(6)は所定の断面形状を有し、前記導電体(6)は前記レセプタクル開口部(12)内の前記少なくとも2つの保持ピン(7a、7b)の間に収容可能である、
請求項1から11のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項14】
前記装置(1)は、
- 少なくとも1つの更なる絶縁体スリーブ(4’)と、
- 前記少なくとも1つの更なる絶縁体スリーブ(4’)を少なくとも1つの更なる導電体(6’)に取り付けるための、更なる装着シース(2’)と、を備え、
前記装着シース(2、2’)は互いに一体に接続されている、
請求項1から13のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項15】
前記装着シース(2、2’)は、前記装着シース(2、2’)を形成する第1の複数のシェル(82’)と、前記装着シース(2、2’)を形成する第2の複数のシェル(84’)と、を備える、
請求項14に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体に電気絶縁体スリーブを取り付けるための装置に関する。更に、本発明はまた、例えば電圧の範囲が400から800VDC内の自動車用途で使用するための、そのような取り付けられた絶縁体スリーブを有する扁平な導電体および/またはバスバーにも関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジニアリングにおいておよび電力エンジニアリングにおいて、電流を送るための特に可撓性の導電体を介して、バッテリモジュールなどの電気モジュールが接続される。電気に関する安全上の理由から、これらの導電体は多くの場合、導電体を取り囲む絶縁体または絶縁体スリーブを備えている。絶縁体は通常は可撓性でもあり、特定の用途ではまた、外部の機械的、熱的、および/または化学的な影響から導電体を保護する役割も果たす。
【0003】
組み付けの過程で接続されることになる電気モジュールの空間条件に導電体を適合させる必要のある場合、絶縁体スリーブの内面と導電体の外面の間の連続的な接着は欠点となる。例えば、電気モジュールの個々の接続箇所同士の間の高さの差は、導電体を絶縁体スリーブと一緒に曲げることによって橋渡しされる。特に曲げ半径が狭い場合、絶縁体スリーブおよび導体が互いに接着していると材料応力が生じる可能性があり、このことによりその導体および/または絶縁体スリーブが損傷する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明は、上述した装置の機能性および動作上の安全性を改善するという目的に立脚している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、導電体に、導電体を収容する絶縁体スリーブを取り付けるための装置であって、絶縁体スリーブと、装着シースと、絶縁体スリーブを貫通し装着シースを絶縁体スリーブ上に固定する少なくとも1つの保持ピンと、を備える装置によって解決される。絶縁体スリーブの端部部片は、装着シースのレセプタクル開口部内に受け入れ可能である。少なくとも1つの保持ピンは、装着シースを絶縁体スリーブの長さ方向において変位不能に絶縁体スリーブ上に固定する。
【0006】
上記の装置によって達成される利点は、絶縁体スリーブと装着シースの間にポジティブロック式の、好ましくは解放可能な接続が作り出され、この結果、非接着性の絶縁体スリーブを導電体に容易に取り付けできることである。特に、少なくとも1つの保持ピンが、絶縁体スリーブと装着シースの間に、このポジティブロック式の好ましくは解放可能な接続を作り出す役割を果たす。
【0007】
各々がそれ自体有利でありかつ互いに任意に組合せ可能な、以下の実施形態によって、本発明を更に改善することができる。
【0008】
絶縁体スリーブは好ましくは、所定のサイズまたは断面形状(cross-sectional geometry)の導電体に合わせて構成されている。この構成の絶縁体スリーブと一緒に、サイズまたは断面形状の異なる導電体を使用すべきではない。
【0009】
導電体と装着シースの間にポジティブロック式の好ましくは解放可能な接続を作り出すために、少なくとも1つの保持ピンは、絶縁体スリーブ、更には導電体を貫通することができる。この構成では、少なくとも1つの保持ピンが、絶縁体スリーブ内の、所定のサイズまたは断面形状の導電体が配設される場所に、配設される。別法として、導電体を、保持ピンが貫通せずに絶縁体スリーブ内で変位できるように取り付けることもできる。
【0010】
所定のサイズまたは断面形状の導電体用の絶縁体スリーブの構成によって、少なくとも2つの好ましくは平行な保持ピンを、長さ方向に対して垂直に距離を置いて設けることができる。この距離は所定のサイズまたは断面形状に対応する導電体の幅よりも大きく、導電体が、保持ピンが貫通せずに保持ピンの間を通過できるようになっている。必要であれば、この実施形態では、以下で説明するように、他の手段によって、導電体と装着シースの間のポジティブロック式の好ましくは解放可能な接続を作り出すことができる。
【0011】
本発明の実施形態によれば、絶縁体スリーブは、少なくとも1つの保持ピンの挿入または通過のための、長さ方向に対して垂直に延在する少なくとも1つの貫通開口部を有し得る。少なくとも1つの貫通開口部の内径および/または内側輪郭は、少なくとも1つの保持ピンの外径および/または外側輪郭に対応している。
【0012】
好ましくは絶縁体スリーブは管状の絶縁ジャケットとして構成されており、長さ方向に対して垂直に延在する位置合わせされた貫通開口部の少なくとも1つの対を有する。対の貫通開口部は、絶縁ジャケットの外面上に、絶縁ジャケットとして構成されている絶縁体スリーブの長さ方向に関して互いに対向して配置されている。
【0013】
任意選択で、絶縁体スリーブは、絶縁体スリーブの長さ方向に対して垂直な挿入方向に重なり合う対として配置されている、複数の貫通開口部を有し得る。この場合、対応する数の保持ピンを設けることができる。
【0014】
少なくとも1つの貫通開口部により、装着シースに対する絶縁体スリーブの明確に規定された繰り返し可能な配置が可能になる。このことにより絶縁体スリーブと装着シースの組み付けが簡単になる。
【0015】
更なる実施形態では、装着シースをいくつかの部品で、好ましくは2つの部品で構成することができる。このことに関して、装着シースは、第1のシェルと、第1のシェルと長さ方向に対して垂直な差し込み方向に1つに差し込み接続できる、第2のシェルと、から成ることができる。シェルは任意選択で、1つになるように構成することができ、組み付けられると、連携してレセプタクル開口部を作り出す。
【0016】
2部品の実施形態により、第1の組み付けステップにおいて第1のシェル内に差し込み方向に沿って絶縁体スリーブおよび/または導電体を提供すること、および続いて、第2の組み付けステップにおいて第2のシェルを差し込み方向に第1のシェル上へと押し付けることが可能になる。こうして、組み付けステップを、例えばピックアンドプレース工程(pick-and-place process)で、自動的に実行することができる。
【0017】
別の実施形態によれば、少なくとも1つの保持ピンを装着シースの一部として、このことにより個々の構成要素の必要数を減らすことができる。特に、保持ピンは、内向きに面した装着シースの表面から挿入方向へと突出しており、レセプタクル開口部内へと突き出る。少なくとも1つの保持ピンを、直線的な、特に円筒形の、ドーム形状の、マンドレル形状の、直方体または角柱形状の突出部として、構成することができる。
【0018】
この実施形態では、少なくとも1つの保持ピンは、例えば、位置合わせされた絶縁体スリーブの貫通開口部の対を貫通して、絶縁体スリーブと装着シースの間にポジティブロック接続を作り出すことができる。好ましくは、絶縁体スリーブはシリコーン絶縁チューブなどの柔軟な構成要素として製作され、装着シースは、機械的応力下で柔軟な構成要素の引っ張り強度よりも高い降伏限界を有する材料で製作される。この結果、装着シースの少なくとも1つの保持ピンが大きく変形する前に絶縁体スリーブの材料が裂けるので、絶縁体スリーブと装着シースの間のポジティブロック接続の耐荷重が明確に規定される。
【0019】
装着シースの2部品の実施形態では、少なくとも1つの保持ピンは第1のシェルの一部であり得、したがって少なくとも1つの保持ピンが絶縁体スリーブの少なくとも1つの貫通開口部が配されることになる位置を決定する限りは、配置補助部(positioning aid)として機能し得る。
【0020】
第1のシェル上に複数の保持ピンが設けられている場合、幾何形状によるコード化を実現するためにそれらはその形状が互いに異なっていてもよく、それにより絶縁体スリーブの不適正な位置付けが更に防止される。
【0021】
任意選択で、少なくとも1つの保持ピンは第1のシェルの一部とすることができ、それぞれの保持ピンの第1のシェルとは反対側を向くピン端部は、目に見えるかたちで第2のシェルを貫通することができる。特に、少なくとも1つの保持ピンは第1のシェルから第2のシェルの方向に突出していてもよく、この場合、組み付けられた状態ではそれぞれのピン端部が第2のシェルの検査開口部を貫通し、それによってピン端部はシースの外面上に見えている。好ましくは、第2のシェルの検査開口部は、絶縁体スリーブの少なくとも1つの貫通開口部と位置合わせされている。
【0022】
このことにより、組み付け中および/または組み付け後に、組み付け中に絶縁体スリーブが適切に位置付けられたかどうかをチェックするための視認検査を実行できるようになる。位置付けが誤っている場合、少なくとも1つの保持ピンは絶縁体スリーブの貫通開口部を貫通することができず、その結果少なくとも1つの保持ピンのピン端部が絶縁体スリーブに覆われて見えなくなる。
【0023】
第1のシェル上に複数の保持ピンが設けられる場合、第2のシェル上に、それぞれの保持ピンが貫通することになる対応する数の検査開口部を設けることができる。保持ピンおよび検査開口部はまた、第1のシェル上および第2のシェル上に、交互に設けることもできる。また更に、保持ピンはその形状が互いに異なっていて、関連する検査開口部と共に幾何形状によるコード化を生み出してもよく、これによりシェルの不適正な位置付けが更に防止される。
【0024】
例えば、第1のシェルと関連する第2のシェルとの組は、例えば、鍵-錠の原理(key-lock principle)に従って、関連するシェルの別の組とは数、位置、および形状の異なる複数の保持ピンおよび検査孔を有し得る。このようにして、鍵-錠の原理が実現でき、このことにより、1つのまとまりではないシェルが1つに差し込み接続されて設置されることが防止される。
【0025】
別法として、少なくとも1つの保持ピンは、装着シースおよび/または絶縁体スリーブを貫通する別個の構成要素とすることができる。少なくとも1つの保持ピンは例えば、装着シース、第1のシェル、および/または第2のシェルのねじ孔に螺入されその結果、絶縁体スリーブの少なくとも1つの貫通開口部を貫通するねじ、好ましくはつまみねじとして構成することができる。
【0026】
別の実施形態では、2つのシェルを係止するための少なくとも1つのラッチングデバイスを、装着シースのレセプタクル開口部の外側におよび絶縁体スリーブの外側に配設することができる。この結果、少なくとも1つのラッチングデバイスは容易にアクセス可能となり、絶縁体スリーブと装着シースの間のポジティブロック接続の分解の単純化に寄与する。加えてまたは別法として、少なくとも1つのラッチング要素を、対応する検査開口部の内縁部と係合できる、少なくとも1つの保持ピンの外縁部に配設することができる。
【0027】
別の代替の実施形態では、第1のシェルおよび第2のシェルを、ねじ接続、接着剤接続、溶接接続、および/またははんだ付け接続を含む接続によって、1つに接合することができる。
【0028】
別の構成によれば、装着シースのレセプタクル開口部は長さ方向に延在し、長さ方向に対して垂直な平面において矩形の断面を有し得る。この場合、装着シースは、2つの扁平な面とこれら扁平な面同士を接続している2つの長い面がレセプタクル開口部を取り囲んでいる、直方体状のケーシングから成ることができる。この場合、結果としてのレセプタクル開口部の内周は、導電体を取り囲む絶縁体スリーブを完全にフィットして包囲できるように構成されている。この実施形態は、扁平な導体が使用される用途にとって有利であり、バッテリモジュール用のセルコネクタ内での使用に特に適している。
【0029】
別法として、装着シースのレセプタクル開口部は、長さ方向に対して垂直な平面において正方形の、多角形の、円形の、または卵形の断面を有することができ、好適な形状の絶縁体スリーブおよび導電体へと適合され得る。
【0030】
任意選択で、装着シースは、導電体に取り付けられた、例えば導電体の端部部片上に溶接されたコンタクト要素用の、少なくとも1つのハウジング部を含み得る。特に、ハウジング部は、コンタクト要素の導電体とは反対側を向く遠位端を取り囲んで、長手方向に固定することができる。このことに関して、ハウジング部は長さ方向へと遠位端を越えて延在して、コンタクト要素の長さ方向に面した少なくとも1つの表面上に、およびコンタクト要素の長さ方向の反対方向に面した少なくとも1つの表面上に、定置され得る。
【0031】
本発明に係る装置は導電体を更に備えてもよく、絶縁体スリーブは好ましくは導電体の全長に沿って導電体を取り囲んでおり、装着シースとレセプタクル開口部内に受け入れられる導電体の端部部片との間に、導電体の長さ方向に作用するポジティブロック式の好ましくは解放可能な接続が存在する。このことに関して、導電体は任意選択で、少なくとも1つの保持ピンと相補の関係になるように適合されており、かつ、中に少なくとも1つの保持ピンが少なくとも部分的に突き出る、少なくとも1つの凹部を有することができる。装着シースはこの結果、導電体の長さ方向に作用する引っ張り力に抗して導電体に固定される。
【0032】
このようにして、絶縁体スリーブを装着シースによって導電体に固定することができ、同時に、例えば機械的応力均等化の動きの範囲内での、絶縁体スリーブと導電体の間の局所に限定された相対移動を、制約を受けずに実行できる。
【0033】
任意選択で、レセプタクル開口部内に収容される導電体の端部部片は、コンタクト要素を有し得る。コンタクト要素は例えば、溶接、はんだ付け、または螺着で取り付けることができる。この実施形態では、装着シースとコンタクト要素の間でポジティブロック接続を行うことができる。例えば、コンタクト要素と装着シースのハウジング部との間に上記した長手固定部を設けることができ、これによって装着シースが、導電体に変位することなくその長さ方向において固定される。特に、このようにして、少なくとも1つの保持ピンによって導電体を貫通することなく、ポジティブロック接続を作り出すことができる。
【0034】
別の実施形態では、絶縁体スリーブは装着シースと共に、導電体およびコンタクト要素のための接触に対する保護部を、好ましくはIPXXDまたは他の対応する規格に準拠した接触に対する保護部を、形成し得る。このことに関して、絶縁体スリーブの外面および装着シースは、存在する全ての間隙、例えば検査開口部の内縁部と少なくとも1つの保持ピンのピン端部の外縁部との間の距離が、Xmmよりも小さくなるように構成されている。この結果、Xmmよりも大きい直径を有するワイヤの挿入に対する保護が実現される。ここでXは、接触に対する保護に関する関連規格が要求する値である。
【0035】
別の実施形態によれば、装置は、少なくとも1つの更なる絶縁体スリーブと、少なくとも1つの更なる絶縁体スリーブを少なくとも1つの更なる導電体に取り付けるための、1つの更なる装着シースと、を有し得る。特に、少なくとも1つの更なる装着シースは、少なくとも1つの更なる絶縁体スリーブの端部部片をおよび/または少なくとも1つの更なる導電体の端部部片をポジティブロック式に受け入れるための、少なくとも1つの保持ピンを有するレセプタクル開口部を有することができる。この結果、少なくとも1つの更なる装着シースを、少なくとも1つの更なる絶縁体スリーブの長さ方向において変位不能に、少なくとも1つの更なる絶縁体スリーブ上に固定することができる。このことは、複数の導電体を電気モジュールに接続しなければならない用途にとって、例えばバッテリモジュールの相互接続の文脈において、有利である。
【0036】
オプションとして、この実施形態では、装着シースを互いに一体に接続して、個々の構成要素の必要数を減らすことができる。それぞれの装着シースは、既に説明した有利な実施形態に従って構成することができる。
【0037】
特に有利な実施形態では、装着シースは、装着シースを形成する第1の複数のシェルと、装着シースを形成する第2の複数のシェルとから成ることができる。好ましくは、第1の複数のシェルを差し込み方向において第2の複数のシェルと1つに係止することができる。この実施形態により、第1の組み付けステップにおいて第1の複数のシェル内に差し込み方向に沿って全ての絶縁体スリーブおよび/または導電体を設置すること、および続いて、第2の組み付けステップにおいて第2の複数のシェルを差し込み方向に第1の複数のシェル上へと差し込むことが可能になる。こうして、これらの組み付けステップをまた、例えばピックアンドプレース工程で、自動的に実行することもできる。
【0038】
以下では、複数の実施形態に基づいて図面を参照して本発明をより詳細に説明する。本発明の様々な特徴は上記の見解に従って、互いに任意に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】第1の実施形態による本発明に係る装置の概略斜視分解図である。
図2図1による装置の概略斜視図である。
図3】側面視した図2による装置の概略断面図である。
図4】斜視した図2による装置の別の概略断面図である。
図5】本発明に係る絶縁体スリーブおよびコンタクト要素を有する導電体の概略斜視図である。
図6】本発明に係る第1のシェル内に設けられた図5による装置の概略斜視図である。
図7】本発明に係る第2のシェルと1つに差し込み接続された図6による装置の概略斜視図である。
図8】第2の実施形態による本発明に係る装置の概略断面図である。
図9】更なる実施形態による本発明に係る装置の概略斜視分解図である。
図10図9による装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
まず、本発明に係る装置1の概略的な構造が、図1から図8を参照して、第1の可能な実施形態に従って示されている。次に、本発明に係る装置1の概略的な構造が、図9および図10を参照して、更なる可能な実施形態に従って記載されている。
【0041】
本発明に係る装置1は、第1の可能な実施形態では、装着シース2と絶縁体スリーブ4とを備え得る。絶縁体スリーブ4は導電体6を収容するかまたは取り囲むことができ、この場合、装置1もまた導電体6を含むことができる。任意選択で、絶縁体スリーブ4は、導電体6を導電体6の全長に沿って取り囲むことができる。
【0042】
図1に示すように、装置1を使用して、装着シース2によって導電体6に絶縁体スリーブ4を取り付けることができる。特に、絶縁体スリーブ4の端部部片8および/または導電体6の端部部片10を、装着シース2のレセプタクル開口部12内に収容し、絶縁体スリーブの長さ方向18において変位不能に固定することができる。
【0043】
示されている実施形態によれば、装着シース2は2つの部品で構成されている。このことに関して、装着シース2は、第1のシェル14と、第1のシェル14と長さ方向に対して垂直な差し込み方向に1つに差し込み接続できる、第2のシェル16と、から成ることができる。
【0044】
シェル14、16は、組み付けたとき互いに係止されるように適合させることができ、一緒にレセプタクル開口部12を作り出すことができる。特に、2つのシェル14、16を装着シース2のレセプタクル開口部12の外側でおよび絶縁体スリーブ4の外側で係止するための、少なくとも1つのラッチングデバイス22が存在し得る。別法として、第1のシェル14および第2のシェル16を、ねじ接続、接着剤接続、溶接接続、および/またははんだ付け接続を含む接続によって、互いに接続することができる。
【0045】
図1および図5に示す例示的な表示では、導電体6は、バッテリモジュール(図示せず)用のセルコネクタ26の扁平な可撓性導体24として構成されている。ただし、導電体6は、絶縁体スリーブ4の形状およびレセプタクル開口部12の形状が適合される、好ましくは事前決定された、任意の望まれる形状を有し得る。この場合、装着シース2のレセプタクル開口部12は長さ方向18へと真っ直ぐに延在し、長さ方向18に対して垂直な平面において矩形の断面を有し得る。別法として、装着シース2のレセプタクル開口部12は、長さ方向18に対して垂直な平面において正方形の、多角形の、円形の、または卵形の断面を有することができ、対応する形状の絶縁体スリーブ4および導電体6に合わせて構成され得る。
【0046】
図3および図4の断面図に示すように、矩形の断面を作り出すための装着シース2は、2つの扁平な面30a、30bとこれら扁平な面30a、30bを接続している2つの長い面32a、32bとがレセプタクル開口部12を取り囲んでいる、直方体状のケーシング28から成ることができる。結果としてレセプタクル開口部12の内周は、導電体6を取り囲む絶縁体スリーブ4を完全にフィットして包囲できるように構成することができる。
【0047】
図5に示すように、導電体6は、レセプタクル開口部12内に受け入れられる端部部片10において、コンタクト要素34を有し得る。コンタクト要素34は例えば、溶接、はんだ付け、または螺着によって取り付けることができ、装着シース2のハウジング部36内に収容することができる。特に、ハウジング部36は、コンタクト要素34の導電体6とは反対側を向く遠位端38を取り囲み、長手固定部40を作り出すことができる。このことに関して、ハウジング部36は長さ方向18へと遠位端38を越えて延在して、コンタクト要素34の長さ方向18に面した少なくとも1つの表面42上に、および長さ方向18の反対方向に面した少なくとも1つの表面44上に、定置され得る。この結果、導電体6と装着シース2の間に、ポジティブロック式の好ましくは解放可能な接続が得られる。このことを図6に示す。
【0048】
図1および図2に示すように、レセプタクル開口部12内には、絶縁体スリーブ4を貫通する少なくとも1つの保持ピン7が設けられている。少なくとも1つの保持ピン7は、装着シース2を長さ方向18において変位不能に絶縁体スリーブ4上に固定する。用途に応じて、少なくとも1つの保持ピン7が絶縁体スリーブ4と装着シース2の間でポジティブロック式の好ましくは解放可能な接続を作り出す限りは、1つの保持ピン7で十分であり得る。
【0049】
既に説明した長手固定部40の代替としてまたはこれに加えて、少なくとも1つの保持ピン7はまた、導電体6を貫通して、導電体6と装着シース2の間に、ポジティブロック式の好ましくは解放可能な接続を作り出すことができる。このことに関して、導電体6は、少なくとも1つの保持ピン7と相補の関係にありかつ中に少なくとも1つの保持ピン7が少なくとも部分的に突き出る、少なくとも1つの凹部46を有し得る。このことが図9および図10に例として示されている。
【0050】
図1および図2に示されている例示的な実施形態では、特に2つの平行な保持ピン7a、7bは、互いから長さ方向18に対して垂直に距離を置いて配置されており、2つの保持ピン7a、7bの間の距離48は導電体6の幅50よりも大きく、この結果、導電体6が、2つの保持ピン7a、7bが貫通することなく、2つの保持ピン7a、7bの間を通過できるようになっている。このことが図3の断面図に示されている。
【0051】
図3に更に示されているように、少なくとも1つの保持ピン7は、内向きに面した装着シース2の表面52から装着シース2の一部としてレセプタクル開口部12に向かって突出していてもよく、レセプタクル開口部12内へと突き出ることができる。示されている例示的な実施形態では、保持ピン7a、7bは、第1のシェル14からレセプタクル開口部12内へと突出している、直線的な円筒形の突出部54a、54bとして構成されており、この場合、第1のシェル14とは反対側を向くそれぞれの保持ピン7a、7bのピン端部56a、56bが、第2のシェル16の対応する検査開口部58a、58bを貫通する。好ましくは、それぞれのピン端部56a、56bは、シェル14、16が組み付けられた状態において、装着シース2の外面60上に見えている。
【0052】
少なくとも1つのラッチングデバイス22に加えてまたはその代替として、少なくとも1つのラッチング要素64を、検査開口部58の内縁部66と係合できる、少なくとも1つの保持ピン7のピン端部56の外縁部62上に配設してもよい。
【0053】
図示しない代替の実施形態では、少なくとも1つの保持ピンはまた、ドーム形状の、マンドレル形状の、直方体または角柱形状の突出部として構成されてもよい。複数の保持ピンが設けられる場合、保持ピンはそれらの間でその形状を異ならせることができ、このことにより幾何形状によるコード化が得られる。更に、第1のシェル14と関連する第2のシェル16との組は、例えば、鍵-錠の原理に従って、関連するシェルの別の組とは数、位置、および形状の異なる、複数の保持ピン7および検査開口部58を有し得る。
【0054】
図5に示すように、絶縁体スリーブ4は、少なくとも1つの保持ピン7を挿入するまたは通過させるための、少なくとも1つの貫通開口部68を有し得る。好ましくは、少なくとも1つの貫通開口部68の内径および/または内側輪郭は、少なくとも1つの保持ピン7の外径および/または外側輪郭に対応している。
【0055】
示されている例示的な実施形態では、絶縁体スリーブ4は管状の絶縁ジャケット70として構成されており、レセプタクル開口部12内に受け入れられる端部部片8において、位置合わせされた貫通開口部68の2つの対72a、72bを有し、それぞれの対72a、72bの貫通開口部68は、絶縁ジャケット70の外面74上に、長さ方向18に関して互いに対向して配置されている。絶縁体スリーブは当然ながら、絶縁体スリーブ4の長さ方向に対して垂直な挿入方向21に重なり合って配置された対として配置されている、複数の貫通開口部68を有し得る。したがって、貫通開口部68の各対に対して保持ピン7が提供され得る。
【0056】
図7に示すように、絶縁体スリーブ4は装着シース2と共に、導電体6およびコンタクト要素34のために、接触保護部76、特にXmmよりも大きい直径を有するワイヤ(図示せず)の挿入に対する保護部を形成することができる。このことに関して、絶縁体スリーブ4の外面60、74および装着シース2は、存在する全ての間隙80、例えば検査開口部58の内縁部66と少なくとも1つの保持ピン7のピン端部56の外縁部62との間の距離が、Xmmよりも小さくなるようにして構成することができる。ここでXは、規範的に要求される値に対応している。
【0057】
図9および図10は、少なくとも1つの更なる絶縁体スリーブ4’と、少なくとも1つの更なる絶縁体スリーブ4’を少なくとも1つの更なる導電体6’に取り付けるための、更なる装着シース2’と、を有する、本発明に係る装置1の更なる実施形態を示す。特に、少なくとも1つの更なる装着シース2’は、少なくとも1つの更なる絶縁体スリーブ4’の端部部片8’をおよび/または少なくとも1つの更なる導電体6’の端部部片10’をポジティブロック式に受け入れるための、少なくとも1つの保持ピン7’を有するレセプタクル開口部12’を有し得る。
【0058】
図9および図10に更に示すように、装着シース2、2’は、装着シース2、2’を形成する第1の複数のシェル82’と、装着シース2、2’を形成する第2の複数のシェル82’と、から成ることができる。好ましくは、第1の複数のシェル82’を差し込み方向20において第2の複数のシェル84’と1つに係止することができる。任意選択で、複数のシェル82’、84’を、レセプタクル開口部12、12’が同一平面上に配置されるようにして構成することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 装置
2、2’ 装着シース
4、4’ 絶縁体スリーブ
6、6’ 導電体
7、7’、7a、7b 保持ピン
8、8’ (絶縁体スリーブの)端部部片
10、10’ (導電体の)端部部片
12、12’ レセプタクル開口部
14 第1のシェル
16 第2のシェル
18 長さ方向
20 差し込み方向
21 挿入方向
22 ラッチングデバイス
24 扁平な可撓性導体
26 セルコネクタ
28 直方体状のケーシング
30a、30b 扁平な面
32a、32b 長い面
34 コンタクト要素
36 ハウジング部
38 遠位端
40 長手固定部
42 (コンタクト要素の)表面
44 (コンタクト要素の)表面
46 凹部
48 距離
50 幅
52 (内側に面する)表面
54a、54b 突出部
56、56a、56b ピン端部
58、58a、58b 検査開口部
60 (装着シースの)外面
62 外縁部
64 ラッチング要素
66 内縁部
68 貫通開口部
70 絶縁ジャケット
72a、72b 対
74 (絶縁ジャケットの)外面
76 接触保護部
80 間隙
82’ 第1の複数のシェル
84’ 第2の複数のシェル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10