(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240909BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240909BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20240909BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G21/00 370
G03G21/14
H05B3/00 335
H05B3/00 310C
H05B3/00 370
(21)【出願番号】P 2020203622
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2023-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2019225613
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】高野 弘光
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-055699(JP,A)
【文献】特開2000-162919(JP,A)
【文献】特開2013-235181(JP,A)
【文献】特開2006-004860(JP,A)
【文献】特開2018-017906(JP,A)
【文献】特開2013-041175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
G03G 21/14
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板に配置された複数の発熱体であって、第1の幅を有する第1の発熱体及び前記第1の幅よりも短い第2の幅を有する第2の発熱体を含む複数の発熱体と、を有するヒータを備え、用紙に形成された画像を前記ヒータの熱により前記用紙に定着する定着処理を行う定着手段と、
ユーザによって指定された用紙の幅に関する情報を受信する受信手段と、
搬送されている用紙の幅を検知する検知手段と、
指定された用紙の幅と前記検知手段により検知された用紙の幅とに基づいて、前記複数の発熱体の駆動を制御するとともに、複数の用紙における先行紙の後端と後続紙の先端との間隔である紙間を制御する制御手段と、
を備え、
前記検知手段は、
前記第1の発熱体の両端部よりも内側の領域、かつ、前記第2の発熱体の両端部よりも外側の領域に配置された第1の検知手段と、
前記第2の発熱体の両端部よりも内側の領域に配置された第2の検知手段と、
を含み、
前記制御手段は、
用紙端部が前記第1の検知手段と前記第2の検知手段との間の領域を通過するサイズの用紙に対して前記定着処理を行う場合において、
前記指定された用紙の幅が前記第2の幅より小さい場合には、前記第2の発熱体を主として駆動しながら所定の発熱比率で前記第1の発熱体及び前記第2の発熱体を駆動するとともに、前記紙間を第1の紙間に設定して前記定着処理を行い、
前記指定された用紙の幅が前記第2の幅より大きい場合には、前記第1の発熱体を駆動するとともに、前記紙間を第1の紙間より間隔を広げた第2の紙間に設定して前記定着処理を行うように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記複数の発熱体は
、前記第2の幅よりも短い第3の幅を有する第3の発熱
体を含み、
前記検知手段は
、前記第3の発熱体の両端部よりも内側の領域、かつ、前記第3の発熱体の両端部の近傍に配置され
た第3の検知手
段を含むことを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
用紙端部が前記第2の検知手段と前記第3の検知手段との間の領域を通過するサイズの用紙に対して前記定着処理を行う場合において、
前記指定された用紙の幅が前記第3の幅より小さい場合には、前記第3の発熱体を主として駆動しながら所定の発熱比率で前記第1の発熱体及び前記第3の発熱体を駆動するとともに、前記紙間を第1の紙間に設定して前記定着処理を行い、
前記指定された用紙の幅が前記第3の幅より大きい場合には、前記第1の発熱体を駆動するとともに、前記紙間を第1の紙間より間隔を広げた第3の紙間に設定して前記定着処理を行うように制御することを特徴とする請求項
2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
用紙端部が前記第1の検知手段より外側の領域
を通過するサイズの用紙に対して前記定着処理を行う場合には、前記第1の発熱体を駆動するとともに、前記紙間を前記第1の紙間に設定して前記定着処理を行うように制御することを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記
複数の発熱体は、2つの前記第1の発熱
体を備え、
一方の前記第1の発熱体は、前記基板の短手方向の一方の端部に配置され、他方の前記第1の発熱体は、前記基板の前記短手方向の他方の端部に配置され、
前記短手方向において、前記一方の第1の発熱体、前記第2の発熱体、前記第3の発熱体、前記他方の第1の発熱体の順に配置されていることを特徴とする請求項
2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記一方の第1の発熱体及び前記他方の第1の発熱体の一方の端部が電気的に接続された第1の接点と、
前記一方の第1の発熱体、前記他方の第1の発熱体及び前記第2の発熱体の他方の端部が電気的に接続された第2の接点と、
前記第2の発熱体及び前記第3の発熱体の一方の端部が電気的に接続された第3の接点と、
前記第3の発熱体の他方の端部が電気的に接続された第4の接点と、
を備えることを特徴とする請求項
5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記複数の発熱体は
、長手方向に分割された第1の分割体、第2の分割体、第3の分割体、第4の分割体、及び第5の分割体を含み、
前記第1の発熱体は、前記第1の分割体、前記第2の分割体、前記第3の分割体、前記第4の分割体、及び前記第5の分割体からなり、
前記第2の発熱体は、前記第2の分割体、前記第3の分割体、及び前記第4の分割体からなり、
前記第3の発熱体は、前記前記第3の分割体からなることを特徴とする請求項
2に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記複数の発熱体により加熱される第1の回転体と、
前記第1の回転体とともにニップ部を形成する第2の回転体と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第1の回転体は、フィルムであることを特徴とする請求項
8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記
ヒータは、前記フィルムの
内部空間に配置されており、
前記ニップ部は、
前記ヒータと前記第2の回転体の間に前記フィルムを挟み込むことによって、前記フィルムと前記第2の回転体の間に形成されていることを特徴とする請求項
9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記制御手段は、搬送されている
用紙の幅よりも、続いて搬送される予定の
用紙の指定された幅の方が大きい場合に、搬送されている
用紙の後端と続いて搬送される予定の
用紙の先端との間の
間隔、又は前記複数の発熱体の発熱比率を制御することを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記第3の検知手段が温度検知手段であることを特徴とする請求項
2に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記指定された
用紙の幅が前記第3の検知手段の幅よりも小さくてかつ、
用紙端部が前記第2の検知手段よりも内側
を通過するサイズの用紙に対して前記定着処理を行う場合において、
前記第3の検知手段が検知した温度が所定の温度以下になったら
、続いて搬送される予定の
用紙のプリントを開始することを特徴とする請求項
12に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に、電子写真プロセス等を利用したカラー画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真プロセスを用いた画像形成装置の場合について説明する。画像形成装置の熱定着装置は、電子写真プロセスなどの画像形成手段により転写紙上に形成された未定着の画像(トナー像)を転写紙上に定着させる。例えば、ハロゲンヒータを熱源とする熱ローラ式の熱定着装置やセラミック面発ヒータを熱源とするフィルム加熱方式の熱定着装置が用いられている。
【0003】
このような面発ヒータを熱源とする定着装置を有する画像形成装置においては、発熱領域かつ非通紙領域において、通紙域に比べて温度が高くなってしまう現象(以下、非通紙部昇温という)が発生する場合がある。これは、発熱体の長さよりも短い通紙幅の記録紙(以下、小サイズ紙という)を通紙した場合に発生する。ここで、発熱体は、最大通紙幅に対応した長さ、又は所定の紙種(例えばA4やB4といった定型の記録紙、以下、普通サイズ紙という)の幅に対応した適切な長さに設定されているものとする。この非通紙領域において、温度が高くなりすぎると、セラミック面発ヒータを支持する部材など、周囲の部材に影響を与えてしまう場合がある。従来、この影響を緩和するために、端部の温度を検知もしくは予測して、又は転写材の幅サイズに従って、転写材のスループットを低下させていた。
【0004】
このスループットの低下を抑えるために、異なる長さの発熱体を複数備え、電力を供給する発熱体を切り替えリレーにより排他的に切り替える構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、紙サイズに応じた長さの発熱体を選択的に用いる。紙サイズに応じた長さの発熱体を選択的に用いることにより、非通紙部昇温が生じないようになるとともに、非通紙部昇温を緩和するために実施していたスループットダウン制御も不要となり、小サイズ紙に関しても高い生産性を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、定着装置が全ての紙サイズに応じた長さの発熱体を備えているわけではないため、発熱体の長さに合わない転写紙に定着処理を行う場合には、転写紙よりも大きな発熱体を用いて定着処理を行う必要がある。そして、非通紙部昇温を抑制するために、スループットを抑制せざるを得ない。また、実際に搬送されている記録材の幅が、予め指定された記録材の幅と異なる場合には、スループットを抑制する制御が行われる場合もある。
【0007】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、記録材の幅の検知結果が指定された記録材の幅と異なる場合でも、例えば、定着性の低下や、スループットの低下や、均一化時間によるパフォーマンスの低下の少なくともひとつを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
【0009】
(1)基板と、前記基板に配置された複数の発熱体であって、第1の幅を有する第1の発熱体及び前記第1の幅よりも短い第2の幅を有する第2の発熱体を含む複数の発熱体と、を有するヒータを備え、用紙に形成された画像を前記ヒータの熱により前記用紙に定着する定着処理を行う定着手段と、ユーザによって指定された用紙の幅に関する情報を受信する受信手段と、搬送されている用紙の幅を検知する検知手段と、指定された用紙の幅と前記検知手段により検知された用紙の幅とに基づいて、前記複数の発熱体の駆動を制御するとともに、複数の用紙における先行紙の後端と後続紙の先端との間隔である紙間を制御する制御手段と、を備え、前記検知手段は、前記第1の発熱体の両端部よりも内側の領域、かつ、前記第2の発熱体の両端部よりも外側の領域に配置された第1の検知手段と、前記第2の発熱体の両端部よりも内側の領域に配置された第2の検知手段と、を含み、前記制御手段は、用紙端部が前記第1の検知手段と前記第2の検知手段との間の領域を通過するサイズの用紙に対して前記定着処理を行う場合において、前記指定された用紙の幅が前記第2の幅より小さい場合には、前記第2の発熱体を主として駆動しながら所定の発熱比率で前記第1の発熱体及び前記第2の発熱体を駆動するとともに、前記紙間を第1の紙間に設定して前記定着処理を行い、前記指定された用紙の幅が前記第2の幅より大きい場合には、前記第1の発熱体を駆動するとともに、前記紙間を第1の紙間より間隔を広げた第2の紙間に設定して前記定着処理を行うように制御することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、記録材の幅の検知結果が指定された記録材の幅と異なる場合でも、例えば、定着性の低下や、スループットの低下や、均一化時間によるパフォーマンスの低下の少なくともひとつを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1、2の画像形成装置の全体構成概略図
【
図2】実施例1、2の画像形成装置の制御ブロック図
【
図3】実施例1、2の定着装置の長手方向の中央部付近における断面模式図
【
図6】実施例1のヒータ/紙幅センサの配置とレンジを示す図
【
図8】実施例1の発熱体及びスループットの選択処理を示すフローチャート
【
図9】実施例2のヒータ/紙幅センサの配置とレンジを示す図
【
図10】実施例2の発熱体及びスループットの選択処理を示すフローチャート
【
図11】実施例1の均一化時間の選択処理を示すフローチャート
【
図12】実施例3のヒータ/紙幅センサ/温度検知センサの配置とレンジを示す図
【
図14】実施例3の均一化制御の終了判断を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。以下の実施例において、記録紙を定着ニップ部に通すことを、通紙するという。また、発熱体が発熱している領域で、記録紙が通紙していない領域を非通紙領域(又は非通紙部)といい、記録紙が通紙している領域を通紙領域(又は通紙部)という。更に、非通紙領域が通紙領域に比べて温度が高くなってしまう現象を、非通紙部昇温という。
【実施例1】
【0013】
[全体構成]
図1は実施例1の定着装置を搭載した一例の画像形成装置である、インライン方式のカラー画像形成装置を示す構成図である。
図1を用いて電子写真方式のカラー画像形成装置の動作を説明する。なお、第1ステーションをイエロー(Y)色のトナー画像形成用のステーション、第2ステーションをマゼンタ(M)色のトナー画像形成用のステーションとしている。また、第3ステーションをシアン(C)色のトナー画像形成用のステーション、第4ステーションをブラック(K)色のトナー画像形成用のステーションとしている。
【0014】
第1ステーションで、像担持体である感光ドラム1aは、OPC感光ドラムである。感光ドラム1aは金属円筒上に感光して電荷を生成するキャリア生成層、発生した電荷を輸送する電荷輸送層等からなる機能性有機材料が複数層積層されたものであり、最外層は電気的導電性が低くほぼ絶縁である。帯電手段である帯電ローラ2aが感光ドラム1aに当接され、感光ドラム1aの回転に伴い、従動回転しながら感光ドラム1a表面を均一に帯電する。帯電ローラ2aには直流電圧又は交流電圧を重畳した電圧が印加され、帯電ローラ2aと感光ドラム1a表面とのニップ部から、回転方向の上流側及び下流側の微小な空気ギャップにおいて放電が発生することにより感光ドラム1aが帯電される。クリーニングユニット3aは、後述する転写後に感光ドラム1a上に残ったトナーをクリーニングするユニットである。現像手段である現像ユニット8aは、現像ローラ4a、非磁性一成分トナー5a、現像剤塗布ブレード7aからなる。感光ドラム1a、帯電ローラ2a、クリーニングユニット3a、現像ユニット8aは、画像形成装置に対して着脱自在な一体型のプロセスカートリッジ9aとなっている。
【0015】
露光手段である露光装置11aは、レーザー光を多面鏡によって走査させるスキャナユニット又はLED(発光ダイオード)アレイから構成され、画像信号に基づいて変調された走査ビーム12aを感光ドラム1a上に照射する。また、帯電ローラ2aは、帯電ローラ2aへの電圧供給手段である帯電高電圧電源20aに接続されている。現像ローラ4aは、現像ローラ4aへの電圧供給手段である現像高電圧電源21aに接続されている。1次転写ローラ10aは、1次転写ローラ10aへの電圧供給手段である1次転写高電圧電源22aに接続されている。以上が第1ステーションの構成であり、第2、第3、第4ステーションも同様の構成をしている。他のステーションについて、第1ステーションと同一の機能を有する部品は同一の符号を付し、符号の添え字にステーションごとにb、c、dを付している。なお、以下の説明において、特定のステーションについて説明する場合を除き、添え字a、b、c、dを省略する。
【0016】
中間転写ベルト13は、その張架部材として2次転写対向ローラ15、テンションローラ14、補助ローラ19の3本のローラにより支持されている。テンションローラ14のみバネで中間転写ベルト13を張る方向の力が加えられており、中間転写ベルト13に適当なテンション力が維持されるようになっている。2次転写対向ローラ15はメインモータ(不図示)からの回転駆動を受けて回転し、外周に巻かれた中間転写ベルト13が回動する。中間転写ベルト13は感光ドラム1a~1d(例えば、
図1では反時計回り方向に回転)に対して順方向(例えば、
図1では時計回り方向)に略同速度で移動する。また、中間転写ベルト13は、矢印方向(時計回り方向)に回転し、1次転写ローラ10は中間転写ベルト13をはさんで感光ドラム1と反対側に配置されて、中間転写ベルト13の移動に伴い従動回転する。中間転写ベルト13をはさんで感光ドラム1と1次転写ローラ10とが当接している位置を1次転写位置という。補助ローラ19、テンションローラ14及び2次転写対向ローラ15は電気的に接地されている。なお、第2~第4ステーションも1次転写ローラ10b~10dは第1ステーションの1次転写ローラ10aと同様の構成としているので説明を省略する。
【0017】
次に実施例1の画像形成装置の画像形成動作を説明する。画像形成装置は待機状態時に印刷指令を受信すると、画像形成動作をスタートする。感光ドラム1や中間転写ベルト13等はメインモータ(不図示)によって所定のプロセススピードで矢印方向に回転を始める。感光ドラム1aは、帯電高電圧電源20aにより電圧が印加された帯電ローラ2aによって一様に帯電され、続いて露光装置11aから照射された走査ビーム12aによって画像情報(画像データともいう)に従った静電潜像が形成される。現像ユニット8a内のトナー5aは、現像剤塗布ブレード7aによって負極性に帯電されて現像ローラ4aに塗布される。そして、現像ローラ4aには、現像高電圧電源21aより所定の現像電圧が供給される。感光ドラム1aが回転して感光ドラム1a上に形成された静電潜像が現像ローラ4aに到達すると、静電潜像は負極性のトナーが付着することによって可視化され、感光ドラム1a上には第1色目(例えば、Y(イエロー))のトナー像が形成される。他の色M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各ステーション(プロセスカートリッジ9b~9d)も同様に動作する。各色の1次転写位置間の距離に応じて、一定のタイミングでコントローラ(不図示)からの書き出し信号を遅らせながら、露光による静電潜像が各感光ドラム1a~1d上に形成される。それぞれの1次転写ローラ10a~10dにはトナーと逆極性の直流高電圧が印加される。以上の工程により、順に中間転写ベルト13にトナー像が転写されていき(以下、1次転写という)、中間転写ベルト13上に多重トナー像が形成される。
【0018】
その後、トナー像の作像に合わせて、カセット16に積載されている記録材である用紙Pは、搬送経路Yに沿って搬送される。具体的には、用紙Pは給紙ソレノイド(不図示)によって回転駆動される給紙ローラ17により給送(ピックアップ)される。給送された用紙Pは搬送ローラによりレジストレーションローラ(以下、レジストローラという)18に搬送される。そして、用紙Pは、搬送方向に直交する方向の長さ(以下、幅という)を検知する検知手段である紙幅センサ102を通過する。レジストローラ18の下流側にはレジストレーションセンサ(以下、レジセンサという)103が配置されている。レジセンサ103は、用紙Pの先端が到着すると用紙Pの「有り」を検知し、用紙Pの後端が通過すると用紙Pの「無し」を検知する。
【0019】
用紙Pは、中間転写ベルト13上のトナー像に同期して、レジストローラ18によって中間転写ベルト13と2次転写ローラ25との当接部である転写ニップ部へ搬送される。2次転写ローラ25には2次転写高電圧電源26により、トナーと逆極性の電圧が印加され、中間転写ベルト13上に担持された4色の多重トナー像が一括して用紙P上(記録材上)に転写される(以下、2次転写という)。用紙P上に未定着のトナー像が形成されるまでに寄与した部材(例えば、感光ドラム1等)は画像形成手段として機能する。一方、2次転写を終えた後、中間転写ベルト13上に残留したトナーは、クリーニングユニット27によって清掃される。2次転写が終了した後の用紙Pは、定着手段である定着装置50へと搬送され、トナー像の定着を受けて画像形成物(プリント、コピー)として排出トレー30へと排出される。定着装置50のフィルム51、ニップ形成部材52、加圧ローラ53、ヒータ54については後述する。
【0020】
複数枚の用紙Pに連続して画像を印刷する印刷モードを、以下、連続印刷や連続ジョブという。連続印刷において、先行して印刷が行われる用紙P(以下、先行紙という)の後端と先行紙に続いて印刷が行われる後続の用紙P(以下、後続紙という)の先端との間を紙間という。実施例1の画像形成装置は、各部材と用紙Pとの搬送方向に直交する方向(後述する、長手方向)における中央の位置を一致させて印刷動作を行う中央基準の画像形成装置である。したがって、搬送方向に直交する方向の長さが大きい用紙Pの印刷動作であっても、搬送方向に直交する方向の長さが小さい用紙Pの印刷動作であっても、各用紙Pの中央位置は一致する。
【0021】
[画像形成装置のブロック図]
図2は画像形成装置の動作を説明するブロック図であり、この図を参照しながら画像形成装置の印刷動作について説明する。ホストコンピュータであるPC110は、画像形成装置の内部にあるビデオコントローラ91に対して印刷指令を出力し、印刷画像の画像データをビデオコントローラ91に転送する役割を担う。印刷指令中には、印刷される用紙Pの搬送方向に直交する方向の長さである幅に関する情報も含まれる場合がある。なお、用紙Pの幅の指定は、上述したようにPC110から指定されてもよいし、画像形成装置が備える操作パネル(不図示)からユーザの入力により指定されてもよい。
【0022】
ビデオコントローラ91はPC110から入力された画像データを露光データに変換し、エンジンコントローラ92内にある露光制御装置93に転送する。露光制御装置93はCPU94から制御され、露光データのオンオフ、露光装置11の制御を行う。露光データのサイズは画像サイズによって決定される。制御手段であるCPU94は印刷指令を受信すると画像形成シーケンスをスタートさせる。また、CPU94は、指定された用紙Pの幅に関する情報を受信する受信手段としても機能する。
【0023】
エンジンコントローラ92にはCPU94、メモリ95等が搭載されており、予めプログラムされた動作を行う。高電圧電源96は上述の帯電高電圧電源20、現像高電圧電源21、1次転写高電圧電源22、2次転写高電圧電源26から構成される。また、電力制御部97は双方向サイリスタ(以下、トライアックという)56を有している。電力制御部97は、電力を供給する電力供給経路を切り替えることによって後述する複数の発熱体54bを切り替える切替手段である発熱体切り替え器57等も有している。電力制御部97は、定着装置50において発熱する発熱体を選択し、供給する電力量を決定する。実施例1において、発熱体切り替え器57は、例えばリレーである。
【0024】
また、駆動装置98はメインモータ99、定着モータ100等から構成される。またセンサ101は定着装置50の温度を検知する定着温度センサ59、用紙Pの幅を検知する紙幅センサ102等からなり、センサ101の検知結果はCPU94に送信される。なお、レジセンサ103もセンサ101に含まれる。CPU94は画像形成装置内のセンサ101の検知結果を取得し、露光装置11、高電圧電源96、電力制御部97、駆動装置98を制御する。これにより、CPU94は、静電潜像の形成、現像されたトナー像の転写、用紙Pへのトナー像の定着等を行い、露光データがトナー像として用紙P上に印刷される画像形成工程の制御を行う。なお、本発明が適用される画像形成装置は、
図1で説明した構成の画像形成装置に限定されるものではなく、異なる幅の用紙Pを印刷することが可能で、後述するヒータ54を有する定着装置50を備える画像形成装置であればよい。
【0025】
[定着装置]
次に、実施例1における定着装置50の構成について
図3を用いて説明する。ここで、長手方向とは、後述する用紙Pの搬送方向と略直交する加圧ローラ53の回転軸方向のことである。また、搬送方向に略直交する方向(長手方向)の用紙Pの長さや発熱体の長さを幅という。
図3は、定着装置50の断面模式図である。また、
図4(a)はヒータ54の模式図、
図4(b)はヒータ54の断面模式図、
図5は定着装置50のヒータ54の電力制御部97の回路模式図である。また、
図4(b)は、発熱体54b1、54b2、54b3、54b4の長手方向の中心線であり、定着装置50に搬送される用紙Pの長手方向の中心線(
図4(a)中一点鎖線a)におけるヒータ54の断面を示す図である。以下、線aを基準線aという。
【0026】
図3左側から未定着のトナー像Tnを保持した用紙Pが、定着ニップ部Nにおいて図中左から右に向けて搬送されながら加熱されることにより、トナー像Tnが用紙Pに定着される。実施例1における定着装置50は、円筒状のフィルム51と、フィルム51を保持するニップ形成部材52と、フィルム51と共に定着ニップ部Nを形成する加圧ローラ53と、用紙Pを加熱するためのヒータ54とにより構成されている。
【0027】
第1の回転体であるフィルム51は加熱回転体としての定着フィルムである。実施例1では、基層として、例えばポリイミドを用いている。基層の上に、シリコーンゴムからなる弾性層、PFAからなる離型層を用いている。フィルム51の内径は例えば18mmであり、フィルム51の外周長はおよそ58mmである。フィルム51の回転によるニップ形成部材52及びヒータ54とフィルム51との間に生じる摩擦力を低減するために、フィルム51の内面には、グリスが塗布されている。
【0028】
ニップ形成部材52はフィルム51を内側からガイドするとともに、フィルム51を介して加圧ローラ53との間で定着ニップ部Nを形成する役割を果たす。ニップ形成部材52は剛性・耐熱性・断熱性を有する部材であり、液晶ポリマー等により形成されている。フィルム51はこのニップ形成部材52に対して外嵌されている。第2の回転体である加圧ローラ53は加圧回転体としてのローラである。加圧ローラ53は、芯金53a、弾性層53b、離型層53cからなる。加圧ローラ53は、両端を回転可能に保持されており、定着モータ100(
図2参照)によって回転駆動される。また、加圧ローラ53の回転により、フィルム51は従動回転する。加熱部材であるヒータ54は、ニップ形成部材52に保持され、フィルム51の内面と接している。基板54a、発熱体54b1、54b2、54b3、54b4、保護ガラス層54e、定着温度センサ59については後述する。
【0029】
(ヒータ)
ヒータ54について、
図4(a)を用いて詳しく説明する。ヒータ54は、基板54a、第1の発熱体である発熱体54b1、54b4、第2の発熱体である発熱体54b2、第3の発熱体である発熱体54b3、接点54d1~54d4、保護ガラス層54eからなる。以下、発熱体54b1、54b4、54b2、54b3を総称して発熱体54bということもある。基板54aは、セラミックであるアルミナ(Al
2O
3)を用いている。セラミック基板としてはアルミナ(Al
2O
3)、窒化アルミ(AlN)、ジルコニア(ZrO
2)、炭化ケイ素(SiC)等が広く知られている。中でも、アルミナ(Al
2O
3)は価格的にも安く工業的に入手容易である。また、基板54aには、強度面に優れる金属を用いてもよく、金属基板としては、ステンレス(SUS)が価格的にも強度的にも優れており好適に用いられる。基板54aとしてセラミック基板、金属基板のいずれを用いる場合においても、導電性を有する場合は絶縁層を設けて使用すればよい。基板54a上に、発熱体54b1、54b4、54b2、54b3、接点54d1~54d4が形成されている。そして、その上に発熱体54b1、54b4、54b2、54b3とフィルム51との絶縁を確保するために保護ガラス層54eが形成されている。
【0030】
発熱体54bは、長手方向の長さ(以下、サイズともいう)が異なっている。以下、長手方向の長さを単に長さという。発熱体54bは、最長の発熱体54b1、54b4、2番目の長さの発熱体54b2、3番目の長さの発熱体54b3を有している。それぞれの発熱体54bの寸法について説明する。発熱体54b1、54b4は、厚みt=10μm、幅W1=0.7mm、長さL1=222mmである。発熱体54b2は、厚みt=10μm、幅W2=0.7mm、長さL2=188mmである。発熱体54b3は、厚みt=10μm、幅W3=0.7mm、長さL3=154mmである。発熱体54b1、54b4の第1の幅である長さL1、発熱体54b2の第2の幅である長さL2、発熱体54b3の第3の幅である長さL3は、L1>L2>L3の関係になっている。なお、幅W1~W3は短手方向(搬送方向)の長さである。発熱体54b1、54b4はA4(210mm)の用紙Pの幅に対応する。発熱体54b2はB5(182mm)の用紙Pの幅に対応する。発熱体54b3はA5(148.5mm)の用紙Pの幅に対応する。異なる長さの発熱体54b毎に狙いの電気抵抗値に合わせて導電材を選定し、最長の発熱体54b1、54b4の電気抵抗値はいずれも20Ωとする。また、2番目の長さの発熱体54b2の電気抵抗値は20Ωとする。3番目の長さの発熱体54b3の電気抵抗値も20Ωとする。また、最長の発熱体54b1、54b4の一方の端部に共通の接点54d1、他方の端部に共通の接点54d2が電気的に接続され、接点54d1と接点54d2との間における最長の発熱体54b1、54b4の合成電気抵抗値は10Ωである。
【0031】
発熱体54b1は第1の接点である接点54d1、第2の接点である54d2に電気的に接続されており、発熱体54b2は接点54d2、第3の接点である54d3に電気的に接続されている。発熱体54b3は接点54d3、第4の接点である54d4に電気的に接続されている。ここで、発熱体54b1と発熱体54b4とは同じ長さであり、必ず略同時に使用される。発熱体54b1は、基板54aの短手方向の一方の端部に設けられ、発熱体54b4は、基板54aの短手方向の他方の端部に設けられる。発熱体54b2、54b3は、基板54aの短手方向において発熱体54b1と発熱体54b4との間に、短手方向中心に対して対称に設けられる。
【0032】
各発熱体54b間はいずれも0.7mmの間隔である。なお、実施例1では発熱体54bの幅W1~W4を全て0.7mmと同一幅としたが、定着装置50に要求される性能によっては、同一幅の発熱体54bを形成するためには導電材の選定が困難なケースがある。その場合は、定着装置50に要求される性能に応じて発熱体54bの幅W1~W4を異ならせても実施例1の効果を得ることができる。
【0033】
図3の定着温度センサ59は、サーミスタである。温度検知手段である定着温度センサ59は、基板54aに対して保護ガラス層54eと反対の面に位置し、かつ基板54aと接している。定着温度センサ59は、ヒータ54の温度に応じて出力値が変化する温度検知手段であり、CPU94に接続され、ヒータ54の温度を検知して検知結果をCPU94に出力する。
【0034】
(発熱体54bの構成の狙い)
最長の発熱体54b1、54b4が複数の発熱体54bの中で最大の電力供給能力を有し、定着装置50を短時間で通紙可能状態に加熱することが一般的であり、上述したように実施例1でもこの構成を採用している。一方で、電力供給能力が高いということは、装置の誤作動などによって、過剰な電力供給を受けやすいということを意味し、基板54aの変形のリスクが高い。実施例1では、高い電力供給能力と基板54aの変形リスクの低減とを両立するために、最長の発熱体を発熱体54b1と発熱体54b4の2本の構成とし、電力の分散、すなわち電力密度の低減をはかる。更に、一方の発熱体54b1を基板54aの短手方向の一方の端部に配置し、もう一方の発熱体54b4を基板54aの他方の端部(反対側の端部)に配置する。そして、2つの発熱体54b1、54b4を共通の接点54d1、54d2で電気的に接続し、2本の最長の発熱体54b1、54b4は必ず同時に電力が供給されるように構成する。これらによって、基板54aの短手方向の一方の端部(一部)のみが発熱することがなく、基板54aの温度分布を均一にすることができ、基板54aの変形リスクを低減できる。
【0035】
また、実施例1では、最長でない発熱体を発熱体54b2と発熱体54b3の2水準、それぞれ1本ずつ備える。これにより、発熱体54b1、54b4に対応した最大サイズの用紙Pよりも幅の狭い複数のサイズの用紙(幅狭紙、小サイズ紙)に印刷を行う際の生産性を高める。なお、最長でない発熱体54b2、54b3は最長の発熱体54b1、54b4に対して電力供給能力を低く設定し、基板54a上においては、2本の最長の発熱体54b1、54b4の間の短手方向における中央に配置する。これにより、基板54aの短手方向の一端に偏らせて配置する場合に比較して、比較的均一に基板54aを加熱することができ、基板54aの温度分布を緩やかにすることができるため、基板54aの変形リスクを低減できる。高い電力供給能力を必要とする最長の発熱体54b1、54b4を2本の構成とし、最長でない発熱体54b2、54b3は発熱体の長さ1水準につき最小の1本とする。これにより、基板54aの変形を抑え、複数の小サイズ紙に印刷する際の生産性を高めることを達成するとともに、基板54aの寸法の最小化を実現する。
【0036】
[電力供給回路]
図5に実施例1の電力供給回路を示し、以下に説明する。
図5の実施例1において、接点54d1~54d4は、電力供給経路を切り替えるための発熱体切り替え器57と接続されている。なお、発熱体切り替え器57によって電力供給経路を切り替えることによって発熱する発熱体54bが切り替わるため、電力供給経路を切り替えることを、発熱体54bを切り替えるとも表現する。実施例1では、発熱体切り替え器57は、具体的にはC接点構成の電磁リレー57a、57bである。
【0037】
電磁リレー57aは、トライアック56を介して交流電源55の第1の極に接続された接点57a1と、接点54d1に接続された接点57a2と、接点54d3に接続された接点57a3と、を有する。電磁リレー57aは、エンジンコントローラ92の制御によって、接点57a1と接点57a2とが接続された状態と、接点57a1と接点57a3とが接続された状態と、のいずれか一方の状態となる。電磁リレー57bは、交流電源55の第2の極に接続された接点57b1と、接点54d2に接続された接点57b2と、接点54d4に接続された接点57b3と、を有する。電磁リレー57bは、エンジンコントローラ92の制御によって、接点57b1と接点57b2とが接続された状態と、接点57b1と接点57b3とが接続された状態と、のいずれか一方の状態となる。接続手段であるトライアック56は、複数の発熱体54bのうち所定の発熱体54bに電流を供給し又は電流の供給を遮断する。
【0038】
図5は電磁リレー57a、57bの無動作時を示しており、電磁リレー57aは接点57a1と接点57a2とが接続され、電磁リレー57bは接点57b1と接点57b2とが接続されている。電磁リレー57a、57bの無動作時には、接点54d1と接点54d2との間に電力が供給されるので、最長の発熱体54b1、54b4が発熱する。CPU94は、定着ニップ部Nが所定の温度となるように、サーミスタ59から報知される温度情報を用いてPI制御を行い、トライアック56の導通/非導通の比率(以下、デューティーという)を算出し、これに基づきトライアック56を操作する。
【0039】
電磁リレー57a、57bを動作させた場合、電磁リレー57aは接点57a1と接点57a3とが接続され、電磁リレー57bは接点57b1と接点57b3とが接続される。電磁リレー57a、57bの動作時には、接点54d3と接点54d4との間に電力が供給されるので、発熱体54b3のみが発熱する。電磁リレー57aのみ動作させた場合、電磁リレー57aは接点57a1と接点57a3とが接続され、電磁リレー57bは接点57b1と接点57b2とが接続された状態となる。電磁リレー57aのみの動作時には、接点54d3と接点54d2と間に電力が供給されるので、発熱体54b2のみが発熱する。電磁リレー57a、57bは、a接点構成の電磁リレー、b接点構成の電磁リレーの有接点スイッチを用いても構わないし、ソリッドステートリレー(SSR)、フォトモスリレー、トライアック等の無接点スイッチを用いても構わない。
【0040】
[用紙のサイズと発熱体とスループット]
次に、
図6を用いて、印刷する用紙Pのサイズと、使用する発熱体54bとスループットとの関係を説明する。
図6は、
図4で説明したヒータ54の模式図と対比する形で、紙幅センサ102の搬送方向と直交する方向(以下、幅方向という)の位置関係を示す。紙幅センサ102は3対で6つあり、左右対称に設置される。なお、記録材Pが搬送経路Y上で搬送されるとき、用紙Pの幅方向の中心は、搬送経路Yの幅方向の中心にあうように搬送される。すなわち、搬送基準が中央基準となっている。紙幅センサ102は、外側(両端部側)から紙幅大センサ102a1、102a2、紙幅中センサ102b1、102b2、紙幅小センサ102c1、102c2が配置されている。例えば、紙幅大センサ102a1と紙幅大センサ102a2との距離SLaは198mmとする(SLa=198mm)。また、紙幅中センサ102b1と紙幅中センサ102b2との距離SLbは170mmとする(SLb=170mm)。また、紙幅小センサ102c1と紙幅小センサ102c2との距離SLcは142mmとする(SLc=142mm)。
【0041】
1対の第1の検知手段である紙幅大センサ102a1、102a2は、発熱体54b1、54b4の両端部よりも内側の領域、かつ、発熱体54b2の両端部よりも外側の領域に配置されている。1対の第2の検知手段である紙幅中センサ102b1、102b2は、発熱体54b2の両端部よりも内側の領域、かつ、発熱体54b3の両端部よりも外側の領域に配置されている。1対の第3の検知手段である紙幅小センサ102c1、102c2は、発熱体54b3の両端部よりも内側の領域、かつ、発熱体54b3の両端部の近傍に配置されている。以上のことから、発熱体54b1~54b4と、各紙幅センサ102とは、L1>SLa>L2>SLb>L3>SLcの関係が成り立つ。
【0042】
また
図6には、各発熱体54bの端部の位置と紙幅センサ102の位置とから定められる6つのレンジ(〔1〕~〔6〕)を示している。CPU94は、印刷する用紙Pの端部が、これらのレンジのどこにあるかによって使用する発熱体54bと、単位時間あたりの印刷枚数(以下、スループットという)とを制御する。例えばCPU94は、用紙Pの搬送速度や、紙間、発熱体54bの発熱比率等をそれぞれ制御することによって、単位時間あたりの印刷枚数であるスループットを制御する。以下に、レンジと使用する発熱体54b、スループットとの関係を説明する。なお、以下の説明で用いるフルスループットとは、実施例1の画像形成装置において実現可能な最も高い(単位時間あたりの印刷枚数が最も多い)スループットをいう。また、以下の説明において、CPU94が所定の発熱体54bを選択して用いる際には、CPU94が
図5で説明した電磁リレー57a、57bを制御して電力供給経路を切り替えるように制御するものとする。
【0043】
・レンジ〔1〕
用紙Pの端部がレンジ〔1〕に含まれる場合に関しては、発熱体54b2の長さL2よりも大きな用紙Pに定着処理を行うので、一番長い発熱体54bである発熱体54b1、54b4を用いて印刷を行う。この際、非通紙部は通紙部と比べ昇温する。しかし、紙幅大センサ102a1、102a2がオンで、非通紙部が少ないことから、第1のスループットであるフルスループットで印刷を行っても加圧ローラ53やフィルム51が溶融するほどの昇温はしない。そのため、フルスループットで印刷を行う。以上、CPU94は、用紙Pの端部がレンジ〔1〕に含まれる場合、発熱体54b1、54b4を用い、スループットをフルスループットとして印刷動作を制御する。
【0044】
・レンジ〔2〕
用紙Pの端部がレンジ〔2〕に含まれる場合に関しては、レンジ〔1〕の場合と同様に、発熱体54b2の長さL2よりも大きな用紙Pに定着処理を行うため、発熱体54b1、54b4を用いて印刷を行う。ただし、用紙Pの幅と発熱体54b1、54b4の長手方向の長さ(幅)との差がレンジ〔1〕に比べて大きく、非通紙部昇温も大きくなるため、加圧ローラ53やフィルム51が溶融する可能性がある。これを防ぐため、紙間を空けて非通紙部昇温を緩和しつつ印刷を行う必要がある。したがって、レンジ〔1〕の場合に比べて低いスループット(第2のスループット)で印刷を行う。以上、CPU94は、用紙Pの端部がレンジ〔2〕に含まれる場合、発熱体54b1、54b4を用い、スループットをフルスループットよりも低いスループットとして印刷動作を制御する。
【0045】
・レンジ〔3〕
用紙Pの端部がレンジ〔3〕に含まれる場合に関しては、用紙Pの幅が発熱体54b3の長さL3よりも大きく発熱体54b2の長さL2よりも小さな用紙Pに定着処理を行うので、発熱体54b2を用いて印刷を行う。ただし、発熱体54b2のみで印刷を継続すると、発熱体54b2よりも外側の領域に熱が供給されず温度が低下して、通紙部と比べて加圧ローラ53の膨張具合が小さくなる。そして、この状態で定着装置50を駆動し続けると、加圧ローラ53の長手方向の膨張具合の差より、長手方向の搬送距離にも差が生じ、フィルム51がねじれて破断する可能性がある。この現象を回避するために、発熱体54b2をメインで駆動しつつも、所定の比率で発熱体54b1、54b4も駆動し、通紙部と非通紙部との温度差をなくすようにする。
【0046】
また、レンジ〔3〕は、紙幅中センサ102b1、102b2がオンで、発熱体54b2よりも内側の領域に関しては、非通紙部が少ないことから、フルスループットで印刷を行っても加圧ローラ53やフィルム51が溶融するほどの昇温はしない。そのため、フルスループットで印刷を行う。以上、CPU94は、用紙Pの端部がレンジ〔3〕に含まれる場合、主に発熱体54b2を用い、スループットをフルスループットとして印刷動作を制御する。
【0047】
・レンジ〔4〕
用紙Pの端部がレンジ〔4〕に含まれる場合に関しては、レンジ〔3〕の場合と同様に、用紙Pの幅が発熱体54b3の長さL3よりも大きく発熱体54b2の長さL2よりも小さな用紙Pに定着処理を行う。このため、発熱体54b2をメインで駆動しつつ、所定の比率で発熱体54b1、54b4も駆動する。ただし、用紙Pの幅と発熱体54b2の幅との差がレンジ〔3〕に比べて大きく、非通紙部昇温も大きくなるため、加圧ローラ53やフィルム51が溶融する可能性がある。これを防ぐため、フルスループットで印刷を行うことはできず、紙間を空けて非通紙部昇温を緩和しつつ印刷を行う必要がある。以上、CPU94は、用紙Pの端部がレンジ〔4〕に含まれる場合、主に発熱体54b2を用い、スループットをフルスループットよりも低いスループットとして印刷動作を制御する。
【0048】
・レンジ〔5〕
用紙Pの端部がレンジ〔5〕に含まれる場合に関しては、用紙Pの幅が発熱体54b3の長さL3よりも小さな用紙Pに定着処理を行うので、発熱体54b3で印刷を行う。ただし、発熱体54b3のみで印刷を継続すると、発熱体54b3よりも外側の領域に熱が供給されず温度が低下して、通紙部と比べて加圧ローラ53の膨張具合が小さくなる。そして、この状態で定着装置50を駆動し続けると、加圧ローラ53の長手方向の膨張具合の差より、長手方向の搬送距離にも差が生じ、フィルム51がねじれて破断する可能性がある。この現象を回避するために、発熱体54b3をメインで駆動しつつも、所定の比率で発熱体54b1、54b4も駆動する。
【0049】
また、レンジ〔5〕は、紙幅小センサ102c1、102c2がオンで、発熱体54b3よりも内側の領域に関しては、非通紙部が少ないことから、フルスループットで印刷を行っても加圧ローラ53やフィルム51が溶融するほどの昇温はしない。そのため、フルスループットで印刷を行う。以上、CPU94は、用紙Pの端部がレンジ〔5〕に含まれる場合、主に発熱体54b3を用い、スループットをフルスループットとして印刷動作を制御する。
【0050】
・レンジ〔6〕
用紙Pの端部がレンジ〔6〕に含まれる場合に関しては、レンジ〔5〕と同様に、用紙Pの幅が発熱体54b3の長さL3よりも小さな用紙Pに定着処理を行う。このため、発熱体54b3をメインで駆動しつつ、所定の比率で発熱体54b1、54b4も駆動する。ただし、用紙Pの幅と発熱体54b3の幅との差がレンジ〔5〕に比べて大きく、非通紙部昇温も大きくなるため、加圧ローラ53やフィルム51が溶融する可能性がある。これを防ぐため、フルスループットで印刷を行うことはできず、紙間を空けて非通紙部昇温を緩和しつつ印刷を行う必要がある。以上、CPU94は、用紙Pの端部がレンジ〔6〕に含まれる場合、主に発熱体54b3を用い、スループットをフルスループットよりも低いスループットとして印刷動作を制御する。
【0051】
以下の表1に、上述した各レンジと、発熱体54bに対応する用紙Pのサイズ(LTR、B5、A5等)と、スループット(フル、ダウン等)を示す。なお、「フル」はフルスループットを表し、「ダウン」はフルスループットよりも低いスループットを表している。また、レンジ〔3〕~〔6〕において、所定の比率で駆動される発熱体54b1、54b4の記載は省略している。
【表1】
【0052】
ここまで、各レンジと使用する発熱体54b、スループットの関係を説明した。ただ、この関係は、予め画像形成装置に指定された(設定された)サイズの通りに用紙Pが搬送されて印刷された場合の関係である。例えば、予め画像形成装置に指定された用紙Pのサイズ(幅)とは異なるサイズ(幅)の用紙Pが搬送され、印刷された場合の関係は少し異なる。すなわち、表1は、画像形成装置に設定された用紙Pのサイズ(以下、サイズ指定という)と、実際に搬送される用紙Pのサイズとが、一致している場合の関係を示している。
【0053】
[従来の制御]
サイズ指定の通りではない用紙Pが搬送された場合、CPU94は、紙幅センサ102の検知結果に基づいておおよその用紙Pのサイズを把握することはできる。すなわち、CPU94は、紙幅小センサ102c1、102c2よりも大きいか小さいか、紙幅中センサ102b1、102b2よりも大きいか小さいか、紙幅大センサ102a1、102a2よりも大きいか小さいか、を判断することは可能である。しかし、CPU94は、搬送されている用紙Pが、上述した〔1〕~〔6〕のレンジのどのレンジに対応するかを全て判断することはできない。具体的には、CPU94は、紙幅センサ102の検知結果に差がない、レンジ〔2〕とレンジ〔3〕、又は、レンジ〔4〕とレンジ〔5〕、の判断は行えない。
【0054】
そのため、従来の制御では、レンジ〔2〕とレンジ〔3〕のサイズ指定でないにもかかわらず、紙幅中センサ102b1、102b2がオンで、紙幅大センサ102a1、102a2がオンでないといった場合には、CPU94は次のような制御を行っていた。すなわち、CPU94は、レンジ〔2〕、〔3〕の範囲で取りうる用紙Pの中で一番大きい用紙Pが搬送されたと仮定して、仮定した用紙Pに定着処理を行うことを想定して、レンジ〔2〕の制御を行っていた。具体的には、CPU94は、発熱体54b1、54b4を用い、スループットをフルスループットよりも低いスループットとして印刷動作を制御していた。
【0055】
同様に、レンジ〔4〕とレンジ〔5〕のサイズ指定でないにもかかわらず、紙幅小センサ102c1、102c2がオンで、紙幅中センサ102b1、102b2がオンでないといった場合には、CPU94は次のような制御を行っていた。すなわち、CPU94は、レンジ〔4〕、〔5〕の範囲で取りうる用紙Pの中で一番大きい用紙Pが搬送されたと仮定して、仮定した用紙Pに定着処理を行うことを想定して、レンジ〔4〕の制御を行っていた。具体的には、CPU94は、主に発熱体54b2を用い、スループットをフルスループットよりも低いスループットとして印刷動作を制御していた。つまり、従来の制御では、レンジ〔2〕よりレンジ〔3〕の方が、又はレンジ〔4〕よりレンジ〔5〕の方が、それぞれスループットを出せるにもかかわらず、パフォーマンスの高いスループットを採用していなかった。
【0056】
[実施例1の制御]
次に
図7を用いて、実施例1の画像形成装置の利点に関して説明する。実施例1の画像形成装置は、指定されたサイズとは異なるサイズの用紙Pが搬送された場合の制御に特徴を有する。具体的には、紙幅センサ102の検知結果のみに基づき上述したレンジを決定するのではなく、指定された用紙Pのサイズに関する情報(以下、サイズ指定の情報という)も用いる。これにより、レンジ〔2〕とレンジ〔3〕、又はレンジ〔4〕とレンジ〔5〕をそれぞれ切り分けることが可能となる。以下に、紙幅大センサ102a1、102a2がオフで紙幅中センサ102b1、102b2がオンの場合、すなわち、レンジとしてはレンジ〔2〕とレンジ〔3〕とが候補となる場合の具体例を用いて説明する。
図7(a)には指定された用紙Pの幅よりも実際に搬送された用紙Pの幅の方が小さかった場合を示し、
図7(b)には指定された用紙Pの幅よりも実際に搬送された用紙Pの幅の方が大きかった場合について説明する。以下の説明において、実際に搬送された用紙Pの幅をPLとする。
【0057】
(指定された用紙Pよりも実際に搬送された用紙Pの方が小さかった場合)
図7(a)では、指定された用紙Pの幅が210mm(紙幅大センサ102a1、102a2より大きい)、実際に搬送された用紙Pの幅PLが196mm(紙幅大センサ102aより小さい)の場合を例に説明する。形成されたトナー画像の画像サイズをI1、実際に搬送された用紙Pを用紙P1とする。この場合、画像サイズI1は指定された用紙Pと同じサイズである可能性があるため、搬送された用紙P1の幅いっぱいに画像が形成される可能性がある。そのためCPU94は、仮に用紙P1の幅方向の端部に画像が形成されたとしても、用紙P1の幅方向の端部上の画像に対しても適切に定着処理が施されるように、レンジ〔2〕と判断して印刷動作を実行する。具体的には、CPU94は、発熱体54b1、54b4を用い、スループットをフルスループットよりも低いスループットとして印刷動作を制御する。
【0058】
(指定された用紙Pよりも実際に搬送された用紙Pの方が大きかった場合)
図7(b)では、指定された用紙Pの幅が154mm(紙幅中センサ102bより小さい)、実際に搬送された用紙Pの幅PLが196mm(紙幅中センサ102bより大きい)の場合を例に説明する。画像サイズをI2、実際に搬送された用紙Pを用紙P2とする。この場合、画像サイズI2は発熱体54b2よりも小さいため、発熱体54b2を用いて画像に対して適切に定着処理が施される。このため、CPU94は、用紙P2の幅によらず、画像サイズI2に基づいてレンジ〔3〕と判断し、印刷動作を実行する。具体的には、CPU94は、主に発熱体54b2を用い、スループットをフルスループットとして印刷動作を制御する。以上のように、実施例1では、CPU94は、指定された用紙Pのサイズ、より詳細には、指定された用紙Pに転写されることとなる画像のサイズに応じて、どのレンジに設定するかを判断する。
【0059】
以上で述べたように、実施例1のCPU94は、サイズ指定の通りに用紙Pが搬送されず、異なるサイズの用紙Pが搬送された場合に、従来とは異なる制御を行う。すなわち、CPU94は、紙幅センサ102の検知結果のみでレンジを決定するのではなく、サイズ指定の情報も用いてレンジを決定する。これにより、トナーに対して適切に定着処理を施しつつも、高いスループットを発揮することができるケースをつくることができる。
【0060】
[発熱体及びスループットの選択処理]
図8を用いて、実施例1の画像形成装置の特徴的な制御である紙幅検知時に行う、使用する発熱体54bとスループットの判断について説明する。なお、
図6を用いて説明したように、発熱体54b2を使用する場合又は発熱体54b3を使用する場合には、所定の比率で、発熱体54b1、54b4も使用する。しかし、この点に関しては、そのように制御することを前提として、以下の説明からは割愛する。
【0061】
ステップ(以下、Sとする)801でCPU94は、紙幅大センサ102a1、102a2の検知結果を取得し、紙幅大センサ102a1、102a2(102aと図示)がオンであるか否かを判断する。S801でCPU94は、紙幅大センサ102a1、102a2がオンであると判断した場合、処理をS802に進める。この場合、CPU94は、レンジ〔1〕と判断している。S802でCPU94は、使用する発熱体54bを発熱体54b1、54b4とし、スループットはフルスループットとして印刷を実行し、処理を終了する。
【0062】
S801でCPU94は、紙幅大センサ102a1、102a2がオフであると判断した場合、処理をS803に進める。S803でCPU94は、紙幅中センサ102b1、102b2(102bと図示)の検知結果を取得し、紙幅中センサ102b1、102b2がオンであるか否かを判断する。S803でCPU94は、紙幅中センサ102b1、102b2がオンであると判断した場合、処理をS804に進める。このタイミングでは、CPU94は、レンジ〔2〕とレンジ〔3〕とを切り分けられない。S804でCPU94は、指定された用紙Pのサイズを取得し、指定された用紙Pの紙幅(以下、指定紙幅という)がL2(=188mm)以下か否かを判断する。S804でCPU94は、指定紙幅がL2以下である、すなわち、発熱体54b2の長さL2以下(第2の幅以下)であると判断した場合、処理をS805に進める。これは
図7(b)に該当し、CPU94は、レンジ〔3〕と判断している。S805でCPU94は、使用する発熱体54bを発熱体54b2とし、スループットはフルスループットとして印刷を実行し、処理を終了する。
【0063】
S804でCPU94は、指定紙幅がL2よりも大きいと判断した場合、処理をS806に進める。これは
図7(a)に該当し、CPU94は、レンジ〔2〕と判断している。S806でCPU94は、使用する発熱体54bを発熱体54b1、54b4とし、スループットダウンして印刷を実行し、処理を終了する。
【0064】
S803でCPU94は、紙幅中センサ102b1、102b2がオフであると判断した場合、処理をS807に進める。S807でCPU94は、紙幅小センサ102c1、102c2の検知結果を取得し、紙幅小センサ102c1、102c2(102cと図示)がオンであるか否かを判断する。S807でCPU94は、紙幅小センサ102c1、102c2がオンであると判断した場合、処理をS808に進める。このタイミングでは、CPU94は、レンジ〔4〕とレンジ〔5〕とを切り分けられない。S808でCPU94は、指定紙幅がL3(=154mm)以下か否かを判断する。S808でCPU94は、指定紙幅が長さL3以下(第3の幅以下)である、すなわち、発熱体54b3の長さL3以下であると判断した場合、処理をS809に進める。この場合、指定された用紙Pよりも実際に搬送された用紙Pの方が大きく、CPU94は、レンジ〔5〕と判断する。S809でCPU94は、使用する発熱体54bを発熱体54b3とし、スループットはフルスループットとして印刷を実行し、処理を終了する。
【0065】
S808でCPU94は、指定紙幅が154mmよりも大きいと判断した場合、処理をS810に進める。この場合、指定された用紙Pよりも実際に搬送された用紙Pの方が小さく、CPU94は、レンジ〔4〕と判断する。S810でCPU94は、使用する発熱体54bを発熱体54b2とし、スループットダウンして印刷を実行し、処理を終了する。
【0066】
S807でCPU94は、紙幅小センサ102c1、102c2がオフであると判断した場合、処理をS811に進める。この場合、CPU94は、レンジ〔6〕と判断している。S811でCPU94は、使用する発熱体54bを発熱体54b3とし、スループットダウンして印刷を実行し、処理を終了する。なお、実施例1では、搬送基準を中央基準としたが、端部基準等他の基準としてもよく、それらの場合には、発熱体の配置や紙幅センサ102の配置等を搬送基準に応じた配置とすればよい。また、実施例1では、長さの異なる3つの発熱体とそれぞれに対応して3つの紙幅センサとを有する構成としたが、これらに限定されない。例えば長さの異なる2つの発熱体とそれぞれに対応した2つの紙幅センサとを有し、レンジごとにスループットを制御してもよい。すなわち、複数の発熱体は、第1の幅を有する第1の発熱体と、第1の幅よりも短い第2の幅を有する第2の発熱体と、を含むように構成してもよい。検知手段は、第1の検知手段と第2の検知手段とを含むように構成してもよい。第1の検知手段は、第1の発熱体の両端部よりも内側の領域、かつ、第2の発熱体の両端部よりも外側の領域に配置された1対の検知手段である。また、第2の検知手段は、第2の発熱体の両端部よりも内側の領域、かつ、第2の発熱体の両端部の近傍に配置された1対の検知手段である。
【0067】
[均一化制御]
次に実施例1の画像形成装置が実施する均一化制御について説明する。均一化制御とは、幅の狭い用紙のプリントにより非通紙部昇温が生じた状態で、この用紙よりも幅の広い用紙をプリントした際に非通紙部昇温が発生した部分(以下、非通紙部昇温部という)に生じる、画像弊害を抑制する制御である。具体的には、非通紙部昇温による画像弊害が生じなるくなるまでプリントを開始しないようにする。以下、均一化制御を行った時間を均一化時間という。
【0068】
均一化制御においても、非通紙部昇温に起因していることから、ここまで説明してきた発熱体とスループットとの関係と同様に、印刷する用紙Pの端部が、6つのレンジのどこにあるのかによって、均一化時間を制御する。
【0069】
以下の表2に、各レンジと均一化時間の関係を示す。ここで、表2は表1に均一化時間を追加した表となる。例えば、レンジ〔2〕の場合は均一化時間は60秒となる。
【表2】
各レンジにおける非通紙部昇温に関する考え方は、ここまで説明してきた発熱体とスループットとの関係と同じなので、割愛する。
【0070】
レンジ〔1〕〔3〕〔5〕においては、発熱体54bの選択の仕方により、非通紙部昇温が少ないことから、大きな均一化時間を設ける必要がなく、実施例1の画像形成装置においては均一化制御を行わない、すなわち、均一化時間を例えば0秒とする。一方、レンジ〔2〕〔4〕〔6〕は、非通紙部昇温が大きいことから、大きな均一化時間を設ける必要があり、実施例1の画像形成装置においては例えば60秒の均一化時間で均一化制御を行う。
【0071】
そして、
図7を用いて説明したように、サイズ指定の通りに用紙Pが搬送されず、異なるサイズの用紙Pが搬送された場合に、レンジは、紙幅センサ102の検知結果のみで決定するのではなく、サイズ指定の情報も用いて決定する。つまり、均一化時間も紙幅センサ102の検知結果のみで決定するのではなく、サイズ指定の情報も用いて決定する。これにより、トナーに対して適切に定着処理を施しつつも、均一化時間を短くして高いパフォーマンスを発揮することができるケースをつくることができる。
【0072】
[均一化時間の判断処理]
図11を用いて、実施例1の画像形成装置のもう一つの特徴的な制御である紙幅検知時に行う、均一化時間の判断について説明する。ステップ(以下、Sとする)1101でCPU94は、紙幅大センサ102a1、102a2の検知結果を取得し、紙幅大センサ102a1、102a2(102aと図示)がオンであるか否かを判断する。S1101でCPU94は、紙幅大センサ102a1、102a2がオンであると判断した場合、処理をS1102に進める。この場合、CPU94は、レンジ〔1〕と判断している。S1102でCPU94は、表2から均一化時間0秒と判断し、処理を終了する。
【0073】
S1101でCPU94は、紙幅大センサ102a1、102a2がオフであると判断した場合、処理をS1103に進める。S1103でCPU94は、紙幅中センサ102b1、102b2(102bと図示)の検知結果を取得し、紙幅中センサ102b1、102b2がオンであるか否かを判断する。S1103でCPU94は、紙幅中センサ102b1、102b2がオンであると判断した場合、処理をS1104に進める。このタイミングでは、CPU94は、レンジ〔2〕とレンジ〔3〕とを切り分けられない。S1104でCPU94は、指定された用紙Pのサイズを取得し、指定された用紙Pの紙幅(以下、指定紙幅という)がL2(=188mm)以下か否かを判断する。S1104でCPU94は、指定紙幅がL2以下である、すなわち、発熱体54b2の長さL2以下(第2の幅以下)であると判断した場合、処理をS1105に進める。これは
図7(b)に該当し、CPU94は、レンジ〔3〕と判断している。S1105でCPU94は、表2から均一化時間0秒と判断し、処理を終了する。S1104でCPU94は、指定紙幅がL2よりも大きいと判断した場合、処理をS1106に進める。これは
図7(a)に該当し、CPU94は、レンジ〔2〕と判断している。S1106でCPU94は、均一化時間60秒と判断し、処理を終了する。
【0074】
S1103でCPU94は、紙幅中センサ102b1、102b2がオフであると判断した場合、処理をS1107に進める。S1107でCPU94は、紙幅小センサ102c1、102c2の検知結果を取得し、紙幅小センサ102c1、102c2(102cと図示)がオンであるか否かを判断する。S1107でCPU94は、紙幅小センサ102c1、102c2がオンであると判断した場合、処理をS1108に進める。このタイミングでは、CPU94は、レンジ〔4〕とレンジ〔5〕とを切り分けられない。S1108でCPU94は、指定紙幅がL3(=154mm)以下か否かを判断する。S1108でCPU94は、指定紙幅が長さL3以下(第3の幅以下)である、すなわち、発熱体54b3の長さL3以下であると判断した場合、処理をS1109に進める。この場合、指定された用紙Pよりも実際に搬送された用紙Pの方が大きく、CPU94は、レンジ〔5〕と判断する。S1109でCPU94は、均一化時間0秒と判断し、処理を終了する。
【0075】
S1108でCPU94は、指定紙幅が154mmよりも大きいと判断した場合、処理をS1110に進める。この場合、指定された用紙Pよりも実際に搬送された用紙Pの方が小さく、CPU94は、レンジ〔4〕と判断する。S1110でCPU94は、均一化時間60秒と判断し、処理を終了する。S1107でCPU94は、紙幅小センサ102c1、102c2がオフであると判断した場合、処理をS1111に進める。この場合、CPU94は、レンジ〔6〕と判断している。S1111でCPU94は、均一化時間60秒と判断し、処理を終了する。
【0076】
以上、実施例1によれば、記録材の幅の検知結果が指定された記録材の幅と異なる場合でも、例えば、定着性の低下や、スループットの低下や、均一化時間によるパフォーマンスの低下の少なくともひとつを抑制することができる。
【実施例2】
【0077】
実施例1は、長手方向に長さ(幅)の異なる複数の発熱体54b1~54b4を有する定着装置50において、次のような制御を実施した。すなわち、指定されたサイズの用紙Pとは異なるサイズの用紙Pが搬送され印刷された場合に、紙幅センサ102の結果だけではなく、サイズ指定の情報も用いて、定着制御を決定した。これにより、実施例1ではトナーを適切に定着しつつも、高いスループットを発揮する方法について説明した。実施例2では、長手方向に分割された発熱体154bを有する定着装置50において、定着性とスループットとを両立する方法を説明する。
【0078】
[ヒータ]
以下に実施例2の画像形成装置について説明する。ただし、実施例1で説明した点と同じ個所に関しては説明を行わない。また、ヒータ154に関しても、取り付け位置は実施例1と同じなので説明をせず、ヒータ154の平面の構成のみを説明する。
図9は、実施例2の画像形成装置のヒータ154の平面図である。
【0079】
ヒータ154は、Al2O3材の基板158と、発熱体160と、電力供給経路及び接点161(161_1~161_5)、162と、保護ガラス層(不図示)とからなる。ここで、発熱体160は、第1の分割体160a_1、160b_1、第2の分割体160a_2、160b_2、第3の分割体160a_3、160b_3、第4の分割体160a_4、160b_4、及び第5の分割体160a_5、160b_5を含む。発熱体160は、電力供給経路及び接点161、162との間に設けられており、接点161、162を介して供給される電力により発熱する。また、発熱体160は、ヒータ154の短手方向で左右対称に配置され、必ず略同時に電力が供給される。なお、発熱体160について、短手方向の一方の端部に配置された発熱体160を発熱体160aとし、他方の端部に配置された発熱体160を発熱体160bとする。これにより、基板158の短手方向の一端(一部)のみが発熱することがなく、均一に基板158を加熱することが可能となり、基板158の熱による変形リスクを低減することができる。
【0080】
さらに、発熱体160と電力供給経路及び接点161は、ヒータ154の長手方向に例えば5分割されている。上述したように、発熱体160について、5分割された各部分を、それぞれを発熱体160_1、160_2、160_3、160_4、160_5としている。また、電力供給経路及び接点161について、5分割された各部分を、それぞれを電力供給経路及び接点161_1、161_2、161_3、161_4,161_5としている。
【0081】
発熱体160は、発熱体160a_3、160b_3の長さがL3(=154mm)になっている。発熱体160は、発熱体160a_2、160b_2のそれぞれの外側の端部から発熱体160a_4、160b_4のそれぞれの外側の端部までの長さがL2(=188mm)になっている。発熱体160は、発熱体160a_1、160b_1のそれぞれの外側の端部から発熱体160a_5、160b_5のそれぞれの外側の端部までの長さがL1(=222mm)になっている。また、電力供給経路161_1は、短手方向において発熱体160a_1と発熱体160b_1との間に位置する。電力供給経路161_2は、短手方向において発熱体160a_2と発熱体160b_2との間に位置する。電力供給経路161_3は、短手方向において発熱体160a_3と発熱体160b_3との間に位置する。電力供給経路161_4は、短手方向において発熱体160a_4と発熱体160b_4との間に位置する。電力供給経路161_5は、短手方向において発熱体160a_5と発熱体160b_5との間に位置する。各発熱体160は、各発熱体160に合わせて用意されたトライアック(
図9には不図示)により、それぞれ独立して電力を供給することが可能となっている。
【0082】
これにより、実施例1の画像形成装置と同じ長手方向の発熱している領域(以下、発熱域という)を、実施例2においても実現することができ、レンジ〔1〕~〔6〕に合わせた制御を行うことができる。具体的には、発熱体160a_1~160a_5、160b_1~160b_5に電力が供給されると、ヒータ154の長手方向の発熱域を、実施例1の発熱体54b1、54b4に電力供給した際と同じ状態にすることができる。すなわち、発熱体160a_1~160a_5、160b_1~160b_5は、第1の発熱体として機能する。また、発熱体160a_2~160a_4、160b_2~160b_4に電力が供給されると、ヒータ154の長手方向の発熱域を、実施例1の発熱体54b2に電力供給した際と同じ状態にすることができる。すなわち、発熱体160a_2~160a_4、160b_2~160b_4は、第2の発熱体として機能する。また、発熱体160a_3、160b_3のみに電力が供給されると、ヒータ154の長手方向の発熱域を、実施例1の発熱体54b3に電力供給した際と同じ状態にすることができる。すなわち、発熱体160a_3、160b_3は、第3の発熱体として機能する。
【0083】
なお、実施例1と同様に、レンジ〔2〕、〔4〕、〔6〕に合わせた制御を行うときは、用紙Pの幅と発熱体154の長手方向の長さとの差が大きく、非通紙部昇温も大きくなる。このため、加圧ローラ53やフィルム51が溶融する可能性があり、これを防ぐため、紙間を空けて非通紙部昇温を緩和しつつ印刷を行う必要がある。したがって、CPU94は、用紙Pの端部がレンジ〔2〕、〔4〕、〔6〕に含まれる場合には、低いスループットで印刷を行う。従来は、紙幅センサ102の検知結果と指定紙幅とが異なる場合には、この低いスループットを採用していた。
【0084】
実施例2でも、実施例1の画像形成装置と同様に、指定されたサイズの用紙Pとは異なるサイズの用紙Pが搬送され印刷された場合に、紙幅センサ102の結果とサイズ指定の情報とに基づいてレンジを決定する。更に、レンジを決定した後、適切な発熱体160を選択することで、トナーを適切に定着しつつも、高いスループットを発揮するケースをつくることが可能となる。
【0085】
[発熱体及びスループット(上述したレンジ)の選択処理]
実施例2の使用する発熱体160の判断方法とスループットの判断方法に関して、
図10のフローチャートを用いて説明する。なお、実施例2の画像形成装置に関しても、発熱体160a_2~160a_4、160b_2~160b_4を使用する場合、又は発熱体160a_3、160b_3のみを使用する場合については、実施例1と同様の制御を行う。すなわち、所定の比率で、発熱体160a_1~160a_5、160b_1~160b_5の略同時使用を行う。これにより、フィルム51の破断を回避するが、この点に関しては、そのように制御することを前提として、以下の説明からは割愛する。また、
図10のS1001、S1003、S1004、S1007、S1008の処理は、
図8のS801、S803、S804、S807、S808の処理と同様であり、説明を省略する。
【0086】
S1002でCPU94は、使用する発熱体160を発熱体160a_1~160a_5、160b_1~160b_5とし、スループットはフルスループットとして印刷し、処理を終了する。すなわち、CPU94は、レンジ〔1〕を選択している。S1005でCPU94は、使用する発熱体160を発熱体160a_2~160a_4、160b_2~160b_4とし、スループットはフルスループットとして印刷し、処理を終了する。すなわち、CPU94は、レンジ〔3〕を選択している。S1006でCPU94は、使用する発熱体は発熱体160a_1~160a_5、160b_1~160b_5とし、スループットダウンして印刷し、処理を終了する。すなわち、CPU94は、レンジ〔2〕を選択している。
【0087】
S1009でCPU94は、使用する発熱体160を発熱体160a_3、160b_3とし、スループットはフルスループットとして印刷し、処理を終了する。すなわち、CPU94は、レンジ〔5〕を選択している。S1010でCPU94は、使用する発熱体160を発熱体160a_2~160a_4、160b_2~160b_4とし、スループットダウンして印刷し、処理を終了する。すなわち、CPU94は、レンジ〔4〕を選択している。S1011でCPU94は、使用する発熱体160を発熱体160a_3、160b_3とし、スループットダウンして印刷し、処理を終了する。すなわち、CPU94は、レンジ〔6〕を選択している。
また実施例2の画像形成装置も、実施例1の画像形成装置と同様に均一化制御を実施する。均一化制御の制御内容は、実施例1の画像形成装置と同じなので、説明は割愛する。
【0088】
以上、実施例2によれば、記録材の幅の検知結果が指定された記録材の幅と異なる場合でも、例えば、定着性の低下や、スループットの低下や、均一化時間によるパフォーマンスの低下の少なくともひとつを抑制することができる。
【実施例3】
【0089】
実施例1の画像形成装置は、長手方向に長さ(幅)の異なる複数の発熱体54b1~54b4を有する定着装置50において、次のような制御を実施した。すなわち、指定されたサイズの用紙Pとは異なるサイズの用紙Pが搬送され印刷された場合に、紙幅センサ102の結果だけではなく、サイズ指定の情報も用いて、定着制御を決定した。これにより、実施例1ではトナーを適切に定着しつつも、高いスループットと均一化時間の短縮による高いパフォーマンスを発揮する方法について説明した。実施例3では、定着温度センサ59を長手方向に複数有する定着装置50を有する画像形成装置において、実施例1と同じ定着性を保ちつつ、より均一化時間を最適にする方法を設けることで、高いパフォーマンスを発揮する方法を説明する。
【0090】
[紙幅センサと定着温度センサの配置]
図12は、
図6と同様に、
図4で説明したヒータ54の模式図と対比する形で、紙幅センサ102と定着温度センサ59の長手方向の位置関係を示した図である。紙幅センサ102は2対で4つあり、左右対称に設置される。外側(両端部側)から紙幅大センサ102a1、102a2、紙幅中センサ102b1、102b2が配置されている。例えば、紙幅大センサ102a1と紙幅大センサ102a2との距離SLaは198mmとする(SLa=198mm)。また、紙幅中センサ102b1と紙幅中センサ102b2との距離SLbは170mmとする(SLb=170mm)。
【0091】
一方、定着温度センサ59は3つあり、長手方向に中央に定着温度センサ59aが配置され、長手方向に左右対称に定着温度センサ59b1と定着温度センサ59b2とが配置される。定着温度センサ59aは、用紙Pが定着装置50を通過する際に、どのサイズの用紙であっても通過する位置に配置されていることからヒータ54の温度を制御するために用いられる。一方、定着温度センサ59b1と定着温度センサ59b2は、プリントする用紙Pのサイズによっては、用紙Pが通紙しない位置に配置されており、定着温度センサ59b1と定着温度センサ59b2から外側の非通紙部昇温の具合を判断し、制御するために用いられる。定着温度センサ59b1、59b2をサブサーミスタともいう。制御に関しては、後述する。例えば、定着温度センサ59b1と定着温度センサ59b2との距離SLtは142mmとする(SLt=142mm)。なお、用紙Pが搬送経路Y上で搬送されるとき、用紙Pの長手方向の中心は、搬送経路Yの長手方向の中心にあうように搬送される。すなわち、搬送基準が中央基準となっている。
【0092】
1対の第1の検知手段である紙幅大センサ102a1、102a2は、発熱体54b1、54b4の両端部よりも内側の領域、かつ、発熱体54b2の両端部よりも外側の領域に配置されている。1対の第2の検知手段である紙幅中センサ102b1、102b2は、発熱体54b2の両端部よりも内側の領域、かつ、発熱体54b3の両端部よりも外側の領域に配置されている。1対の第3の検知手段である定着温度センサ59b1、59b2は、発熱体54b3の両端部よりも内側の領域、かつ、発熱体54b3の両端部の近傍に配置されている。以上のことから、発熱体54b1~54b4と、各紙幅センサ102と定着温度センサ59b1、59b2とは、L1>SLa>L2>SLb>L3>SLtの関係が成り立つ。また
図12には、各発熱体54bの端部の位置と紙幅センサ102の位置とから定められる6つのレンジ(〔1〕~〔6〕)を示している。
【0093】
実施例3の画像形成装置も、実施例1の画像形成装置と同様に、CPU94は、印刷する用紙Pの端部が、これらのレンジのどこにあるかによって使用する発熱体54bと、スループットとを制御する。レンジと、使用する発熱体54bと、スループットと、設定する均一化時間の関係は、実施例1の画像形成装置と同じなので説明は割愛する。
【0094】
ただし、実施例3の画像形成装置は、レンジ〔5〕と〔6〕の境界にあるセンサが定着温度センサ59b1、59b2である。このため、レンジ〔5〕と〔6〕の区別を、実施例1の画像形成装置が紙幅センサ102cを用いて行ったように、一意に行うのではなく、レンジ〔5〕と〔6〕の区別を、指定された幅と、定着温度センサ59b1、59b2の検知温度とを用いて行う。
【0095】
指定された幅が、148mmよりも小さい場合にはレンジ〔6〕と判断し、148mm以上の場合にはレンジ〔5〕と判断する。ただし、指定された幅よりレンジ〔5〕と判断していた場合においても、定着温度センサ59b1と定着温度59b2のいずれかが定着温度センサ59aの温度よりも例えば10℃高い温度より大きい場合には、レンジ〔5〕で想定する用紙よりも小さい用紙がプリントされていると判断し、〔6〕と判断する。
【0096】
[実施例3の制御]
次に実施例3の特徴的な制御に関して説明する。実施例3の画像形成装置は、定着温度センサ59b1、59b2の検知温度よりプリントを再開してもホットオフセットが生じないと判断できる場合において、紙幅検知時に決定された均一化時間が経過していなくても、均一化制御を終了する。これにより、さらに均一化時間が短くなるので、より高いパフォーマンスを発揮することが可能となる。具体的には、レンジ〔6〕に該当するプリントを行った場合でかつ、サブサーミスタの検知温度が所定の温度以下となった場合が、プリントを再開してもホットオフセットが生じないと判断できるケースで、これに関して、
図13を用いて詳しく説明する。
【0097】
図13は、
図12にプリント終了後の定着装置50の長手方向の温度プロファイルを追記した図である。(a)がレンジ〔4〕に該当するプリントを行った場合の図で、(b)がレンジ〔6〕に該当するプリントを行った場合の図である。
【0098】
・(a)の場合
レンジ〔4〕に該当するプリントを行った場合、発熱体54b2をメインで駆動し、用紙P1の端部がレンジ〔4〕の領域にあることから、用紙P1が通過しない紙幅中センサ102b1、102b2の位置の温度が長手方向で一番高くなる。つまり、定着温度センサ59b1、59b2の位置の温度が一番高い温度とはならず、この温度に応じて均一化制御を終了すると、次のプリントで紙幅中センサ102b1、102b2の位置でホットオフセットが生じる可能性がある。そのため、このケースにおいては、均一化制御を終了することはできない。
【0099】
・(b)の場合
レンジ〔6〕に該当するプリントを行った場合、発熱体54b3をメインで駆動し、用紙P2の端部がレンジ〔6〕の領域にあることから、用紙P2が通過しない定着温度センサ59b1、59b2の位置の温度が一番高い温度になる。つまり、定着温度センサ59b1、59b2の位置の温度がホットオフセットの生じる可能性のない温度となっていれば、次のプリントでホットオフセットが生じることはないので、均一化制御を終了することができる。
【0100】
例えば、実施例3の画像形成装置においては、次のような判断となる。定着温度センサ59b1の検知温度と定着温度59aの検知温度との差と、定着温度センサ59b2の検知温度と定着温度59aの検知温度との差との両方が、例えば20℃度未満になったら、ホットオフセットの生じる可能性のないと判断する。そして、均一化制御を終了すると判断する。
以上のように、実施例3の画像形成装置は、定着温度センサ59b1、59b2の検知温度よりプリントを再開してもホットオフセットが生じないと判断できる場合において、紙幅検知時に決定された均一化時間が経過していなくても、均一化制御を終了する。これにより、さらに均一化時間が短くなるので、より高いパフォーマンスを発揮することが可能となる。
【0101】
[均一化制御の終了判断]
次に、
図14を用いて、プリント終了時に開始する均一化制御の終了判断について説明する。ステップ(以下、Sとする)1401でCPU94は、設定された均一化時間が経過したか否かを判断する。S1401でCPU94は、均一化時間が経過していると判断した場合、処理をS1404に進める。S1404でCPU94は、均一化制御を終了し、処理を終了する。
【0102】
S1401でCPU94は、均一化時間が経過していないと判断した場合、処理をS1402に進める。S1402でCPU94は、レンジ〔6〕に該当するプリントを行っていたか否かを判断する。S1402でCPU94は、レンジ〔6〕に該当するプリントを行っていないと判断した場合には、処理をS1401に戻し、再び均一化時間が経過したかを判断する。
【0103】
S1402でCPU94は、レンジ〔6〕に該当するプリントを行ったと判断した場合、処理をS1403に進める。S1403でCPU94は、定着温度センサ59b1、59b2の両方の温度が、定着温度センサ59aの温度よりも20℃高い温度より低い温度になったか否かを判断する。S1403でCPU94は、定着温度センサ59aの温度よりも20℃高い温度より低い温度になっていないと判断した場合には、処理をS1401に戻し、再び均一化時間が経過したかを判断する。S1403でCPU94は、定着温度センサ59aの温度よりも20℃高い温度より低い温度になったと判断した場合には、処理をS1404に進め、S1404で均一化制御を終了し、処理を終了する。
以上、実施例3によれば、記録材の幅の検知結果が指定された記録材の幅と異なる場合でも、例えば、定着性の低下や、スループットの低下や、均一化時間によるパフォーマンスの低下の少なくともひとつを抑制することができる。
【符号の説明】
【0104】
50 定着装置
54b 発熱体
94 CPU
102 紙幅センサ