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特許7551481樹脂製容器の製造方法および樹脂製容器の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】樹脂製容器の製造方法および樹脂製容器の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20240909BHJP
   B29C 49/42 20060101ALI20240909BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C49/42
B29C49/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020204262
(22)【出願日】2020-12-09
(62)【分割の表示】P 2020173560の分割
【原出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021049783
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2019071910
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019071911
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 保夫
(72)【発明者】
【氏名】土屋 要一
(72)【発明者】
【氏名】大池 俊輝
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-147249(JP,A)
【文献】特開昭63-141719(JP,A)
【文献】国際公開第2019/022231(WO,A1)
【文献】特開2007-001187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/26
B29C 49/42
B29C 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂材料からなる樹脂製かつ有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を少なくとも有する樹脂製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程は、少なくとも射出コア型および射出キャビティ型によって形成されるキャビティ内に溶融樹脂を充填して前記プリフォームを形成する充填工程を含み、
前記射出コア型は、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記胴部規定部の表面に、前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝である第1の溝が形成されており、
前記射出コア型の前記胴部規定部の表面のうち、前記第1の溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下であり、
前記射出成形工程において前記射出コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型させることで、後工程に向かうにつれて前記プリフォームの内面に転写した前記第1の溝の転写痕が緩和する、
樹脂製容器の製造方法。
【請求項2】
前記射出キャビティ型は、
前記プリフォームの底部の外形を規定する内底部と、
前記プリフォームの胴部の外形を規定する内壁部と、
前記内壁部を挟んで前記内底部の反対側に位置する開口部と、を有し、
前記内壁部の表面に、前記内底部から前記開口部へ延びる溝である第2の溝が形成されている、
請求項1に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項3】
前記第1の溝の幅は前記第1の溝の深さより大きく設定されており、
前記第2の溝の幅は前記第2の溝の深さより大きく設定されている、
請求項2に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項4】
前記合成樹脂材料はポリエステルである、
請求項2に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項5】
前記射出成形工程と前記ブロー成形工程の間に、前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調工程を更に有している、
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項6】
合成樹脂材料からなる樹脂製かつ有底のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調部と、
前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形部と、を備える樹脂製容器の製造装置であって、
前記射出成形部が、
前記プリフォームを射出成形するための射出コア型であって、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記胴部規定部の表面に前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝である第1の溝が形成されており、
前記胴部規定部の表面のうち、前記第1の溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下である、射出コア型を含み、
前記射出成形部は、前記射出コア型から前記プリフォームを高温状態で離型させることで、前記射出成形部の後工程において、前記プリフォームの内面に転写した前記第1の溝の転写痕が緩和するように構成されている
樹脂製容器の製造装置。
【請求項7】
前記射出成形部が、
前記プリフォームの底部の外形を規定する内底部と、
前記プリフォームの胴部の外形を規定する内壁部と、
前記内壁部を挟んで前記内底部の反対側に位置する開口部と、を有し、
前記内壁部の表面に、前記内底部から前記開口部へ延びる溝である第2の溝が形成されている、
射出キャビティ型を含む、
請求項6に記載の樹脂製容器の製造装置。
【請求項8】
前記第1の溝の幅は前記第1の溝の深さより大きく設定されており、
前記第2の溝の幅は前記第2の溝の深さより大きく設定されている、
請求項7に記載の樹脂製容器の製造装置。
【請求項9】
前記合成樹脂材料はポリエステルである、
請求項6に記載の樹脂製容器の製造装置。
【請求項10】
前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調部を更に有している、
請求項6から請求項9の何れか一項に記載の樹脂製容器の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製容器の製造方法、射出コア型、射出成形用金型および樹脂製容器の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、溶融樹脂を射出キャビティに射出充填してプリフォームを形成し、その溶融状態のプリフォームに二次圧を加えて保圧を行う際に、プリフォームと射出コアとの境に所要圧力の気体を圧入する方法が開示されている。当該方法において、当該気体の圧力によりプリフォーム内表面とコア表面とを縁切りして隔離するとともに、プリフォームをキャビティ表面に押圧して保圧冷却を行っている。
【0003】
特許文献2には、プリフォームの内面側に位置させるコア側成形金型において、口元の先端近傍のプリフォーム内面に対応する部位の表面と、突起に対向するプリフォーム内面に対応する部位の表面とが鏡面加工面であり、それ以外の表面がシボ加工面である、プリフォーム成形金型が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特許第3573374号公報
【文献】日本国特許第6326790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
射出成形部におけるプリフォーム成形時間、特に冷却時間、を著しく短くして成形サイクル時間を短縮化すると、射出成形部においてプリフォームを高温状態で金型から離型することとなる。高温状態のプリフォームは、硬化状態のスキン層が薄く軟化状態のコア層が厚いため、金型からの離型時に変形しやすい。
【0006】
特許文献1には、離型時に射出コア型とプリフォームとの間に気体を導入し、離型不良を解消する手段が開示されているが、この手段は、金型・機械構造が複雑化して部品点数も多くなり、コストアップにつながるおそれがある。特許文献2の金型では、射出成形工程において冷却されたプリフォームからコア型を抜きやすくするようにコア型にシボ加工が施されているが、高温状態のプリフォームからのコア型の引き抜きにおける課題については言及されていない。
【0007】
本発明は、短い成形サイクル時間であってもプリフォームを適切に離型することができ、良質の樹脂製容器を製造できる、樹脂製容器の製造方法、射出コア型、射出成形用金型および樹脂製容器の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することのできる本開示の樹脂製容器の製造方法は、
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を有する樹脂製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程は、少なくとも射出コア型および射出キャビティ型によって形成されるキャビティ内に溶融樹脂を充填してプリフォームを形成する充填工程を含み、
前記射出コア型は、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記胴部規定部の表面に、前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されている、樹脂製容器の製造方法である。
【0009】
また、上記課題を解決することのできる本開示の射出コア型は、
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形するための射出コア型であって、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記胴部規定部の表面に前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されている、射出コア型である。
【0010】
また、上記課題を解決することのできる本開示の射出成形用金型は、
上記射出コア型と、樹脂製の有底のプリフォームを射出成形するための射出キャビティ型と、を含み、
前記射出キャビティ型は、
前記プリフォームの底部の外形を規定する内底部と、
前記プリフォームの胴部の外形を規定する内壁部と、
前記内壁部を挟んで前記内底部の反対側に位置する開口部と、を有し、
前記内壁部の表面に、前記内底部から前記開口部へ延びる溝が形成されている、
射出成形用金型である。
【0011】
また、上記課題を解決することのできる本開示の樹脂製容器の製造装置は、
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形部と、を備える樹脂製容器の製造装置であって、
前記射出成形部が、上記射出コア型を含む、樹脂製容器の製造装置である。
【0012】
また、上記課題を解決することのできる本開示の樹脂製容器の製造方法は、
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調工程と、
温調された前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を有する樹脂製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程は、少なくとも射出コア型および射出キャビティ型によって形成されるキャビティ内に溶融樹脂を充填して前記プリフォームを形成する充填工程を含み、
前記射出コア型は、前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部を有し、
前記温調工程は、前記プリフォームを温調キャビティ型と温調コア型とにより挟み込む挟込工程を含み、
前記温調コア型は、前記挟込工程において前記プリフォームの胴部に接触する胴部接触部を有し、
前記射出コア型の前記胴部規定部の表面の周方向の中心線平均粗さRa1が、前記温調コア型の前記胴部接触部の表面の周方向の中心線平均粗さRa2よりも大きい、樹脂製容器の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、短い成形サイクル時間であってもプリフォームを適切に離型することができ、良質の樹脂製容器を製造できる、樹脂製容器の製造方法、射出コア型、射出成形用金型および樹脂製容器の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】樹脂製容器の製造装置の機能ブロック図である。
図2】射出成形部の構成を示す図である。
図3】射出コア型の胴部規定部の表面の顕微鏡写真である。
図4】温調部の構成を示す図である。
図5】樹脂製容器の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0016】
まず、図1を参照して、樹脂製容器を製造するための製造装置10について説明する。図1は製造装置10の機能ブロック図である。
【0017】
図1に示すように、製造装置10は、プリフォームを製造するための射出成形部11と、製造されたプリフォームの温度を調整するための温調部12とを備えている。射出成形部11には、原材料である樹脂材料を供給する射出装置15が接続されている。また、製造装置10は、プリフォームをブローして容器を製造するためのブロー成形部(ブロー装置の一例)13と、製造された容器を取り出すための取出部14とを備えている。
【0018】
射出成形部11と温調部12とブロー成形部13と取出部14とは、搬送手段16を中心として所定角度(本実施形態では90度)ずつ回転した位置に設けられている。搬送手段16は回転板等で構成されており、後述する図2および図4に示すように、回転板に取付けられているネック型17によりネック部330が支持された状態のプリフォーム300又は容器が、回転板の回転に伴って各部に搬送されるように構成されている。
【0019】
ここで図2を参照して、射出成形部11を説明する。図2は射出成形部11の態様を表す断面模式図である。射出成形部11は、射出コア型102および射出キャビティ型104を含む射出成型用金型を備えている。射出成形部11は、射出コア型102、射出キャビティ型104およびネック型17が型締めされることで形成されるキャビティ内にポリエステル系樹脂(例えばPET:ポリエチレンテレフタレート)等の合成樹脂材料を流し込むことにより(溶融樹脂を充填することにより)、プリフォーム300を形成するように構成されている。プリフォーム300は容器に応じ最適な肉厚分布(形状)を有している。
【0020】
射出コア型102は、プリフォーム300の底部310の形状を規定する底部規定部112と、プリフォーム300の胴部320の形状を規定する胴部規定部122と、プリフォーム300のネック部330の形状を規定するネック部規定部132と、を有している。底部規定部112と胴部規定部122とが連続し、胴部規定部122とネック部規定部132とが連続している。底部規定部112と、胴部規定部122と、ネック部規定部132と、を含む射出コア型102の部分には、テーパーがつけられている。射出コア型102は、図2における上下方向D1に昇降可能に構成されている。
【0021】
ここで図3を参照して、胴部規定部122の態様を説明する。図3は射出コア型102の胴部規定部122の表面を撮影した顕微鏡写真である。図3に示されるように、胴部規定部122の表面には、底部規定部112からネック部規定部132へ延びる(図2および図3における上下方向D1に沿って延びる)第1の溝144が形成されている。換言すると、第1の溝144は図2及び図3における胴部規定部122の周方向D2と交差する方向に延在している。なお、ここで言う「交差する」とは、第1の溝144の延在方向が周方向D2と厳密に直交することを意図するものではなく、斜めに(例えば交差角度が30°~150°程度に)交差する態様を含む意図で使用される。ただし、第1の溝144の延在方向が、周方向D2と交差角度75~105°で略直角に交差すると射出成形後の離型性の観点で好ましい。第1の溝144の幅は10μm~50μmとすることができ、第1の溝144の深さは0.2μm~25μmとすることができる。特に、第1の溝144の幅は20μm~40μm、第1の溝144の深さは4μm~14μmの範囲で設定されるとより望ましい。
【0022】
胴部規定部122の表面のうち、第1の溝144が形成されている部分の周方向D2の中心線平均粗さRa1は、0.2μm以上15μm以下とされていると好ましい。「中心線平均粗さ」は、JIS B 0601:2013で規定される指標である。目視で胴部規定部122を見た際に、第1の溝144を縦縞模様として観察できる程度に、胴部規定部122の表面が粗面化処理されたものを採用しても良い。また離型性の観点から、中心線平均粗さRa1の下限が0.4μmであると更に好ましく、中心線平均粗さRa1の上限が12.5μmであると更に好ましい。
【0023】
図2に戻り、射出キャビティ型104を説明する。射出キャビティ型104は、プリフォーム300の底部310の外形を規定する内底部114と、プリフォーム300の胴部320の外形を規定する内壁部124と、内壁部124を挟んで内底部114の反対側に位置する開口部134と、を有している。射出キャビティ型104の下部にはホットランナー400が接続されて、ホットランナー400から溶融樹脂が充填されるように構成されている。
【0024】
射出キャビティ型104の内壁部124の表面には、内底部114から開口部134へ延びる(図2における上下方向D1に沿って延びる)第2の溝が形成されている。換言すると、第2の溝は内壁部124の周方向D3と交差する方向に延在している。第2の溝の幅および深さは、第1の溝144において説明した範囲と同じ範囲とすることができる。第2の溝が形成されている部分の周方向D3の中心線平均粗さRa3も、射出コア型102において説明した中心線平均粗さRa1の範囲と同じ範囲とすることができる。第2の溝は、図3で示した第1の溝144と同様の態様として観測できる。
【0025】
続いて図4を参照して、温調部12を説明する。図4は温調部の態様を表す断面模式図である。温調部12は、温調コア型202と、温調キャビティ型204と、を備えている。温調コア型202および温調キャビティ型204の内部には水等の温調媒体が流れている。温調部12は、射出成形部11で成形されたプリフォーム300を、温調コア型202および温調キャビティ型204で挟み込んで、プリフォーム300の温度を最終ブローするための適した温度に冷却しつつ調整するように構成されている。なお、図4において1段の構成の温調キャビティ型204を示しているが、多段の構成として各段によって温度を変えても良い。
【0026】
温調コア型202は、プリフォーム300を冷却しつつ温調する際にプリフォーム300の胴部320に接触する胴部接触部222と、プリフォーム300の底部310に接触する底部接触部212と、を有している。胴部接触部222と、底部接触部212と、を含む温調コア型202の部分には、テーパーがつけられている。温調コア型202は図4における上下方向D4に昇降可能に構成されている。
【0027】
温調コア型202の胴部接触部222の表面の周方向D5の中心線平均粗さRa2は、射出コア型102の胴部規定部122の表面の周方向D2の中心線平均粗さRa1よりも小さくされている。すなわち、中心線平均粗さRa1は、中心線平均粗さRa2よりも大きい。中心線平均粗さRa2は、従来の温調コア型において採用されていたものと同程度かそれよりも高く(粗く)してもよいが、0.1μm以上0.4μm以下とされていると好ましい。
【0028】
図1に戻り、ブロー成形部を説明する。ブロー成形部13は、図示を省略する延伸ロッド、ブローコア型、ブローキャビティ型等を備えている。温調部12で温調されたプリフォーム300を例えば延伸ロッドで延伸しつつ、ブローコア型からエアを導入してプリフォーム300をブローキャビティ型の形状に膨らませて、容器を成形可能に構成されている。
【0029】
続いて、本実施形態に係る容器の製造方法について説明する。図5は、樹脂製容器の製造方法のフローチャートを示す図である。本実施形態の容器は、プリフォーム300を射出成形する射出成形工程S1と、プリフォーム300を冷却しつつ温調する温調工程S2と、温調されたプリフォーム300をブロー成形して容器を製造するブロー成形工程S3と、を経て製造され、ネック部330をネック型17から開放することで容器が取り出される。
【0030】
まず、図2を参照して射出成形工程S1を説明する。射出成形工程S1において、まず、射出コア型102、射出キャビティ型104およびネック型17を型締めする。次に、射出コア型102、射出キャビティ型104およびネック型17により形成されたキャビティ内に溶融樹脂を充填してプリフォーム300を形成する(充填工程)。充填が終了してから一定時間(最小限)の冷却工程後に、射出コア型102を上昇させてプリフォーム300を射出コア型102から離型し、次いでもしくは並行してネック型17を上昇させてプリフォーム300を射出キャビティ型104から離型する。射出成形工程S1の後に、射出成形部11から温調部12へとプリフォーム300を移動させる。
【0031】
続いて、図4を参照して温調工程S2を説明する。まず、温調部12へと移動されたプリフォーム300を、ネック型17を降下させることにより温調キャビティ型204に収容する。続いて、プリフォーム300の内面に温調コア型202を当接させる。温調コア型202の当接は、温調コア型202を降下させることにより実施される。なお、温調キャビティ型204への収容と、温調コア型202の当接とは、順番が逆となってもよく、同時に実施されてもよい。プリフォーム300を温調キャビティ型204と温調コア型202とにより挟み込む(挟込工程)ことにより、プリフォーム300を冷却しつつブロー成形に適した温度まで温調する。その後、温調コア型202を上昇させることでプリフォーム300を温調コア型202から離型させ、ネック型17を上昇させることでプリフォーム300を温調キャビティ型204から離型させる。温調工程S2の後に、温調部12からブロー成形部13へとプリフォーム300を移動させる。
【0032】
次に、ブロー成形工程S3について説明する。ブロー成形工程S3において、ブローキャビティ型にプリフォーム300を収容する。続いて、任意選択的にプリフォーム300を延伸ロッドによって延伸させつつ、ブローコア型からブローエアを導入することでプリフォーム300を容器の形状まで膨らませ、容器を製造する。その後、ブロー成形部13の金型から容器を開放して、取出部14へ容器を搬送して容器を取り出す。以上の手順によって、容器が製造される。
【0033】
ところで、射出成形部におけるプリフォーム成形時間、特に冷却時間、を著しく短くして成形サイクル時間を短縮化して、プリフォームや容器を製造する新成形法が開発された。新成形法では、プリフォームを射出成形部において高温状態で離型し、温調部等で後冷却し、ブロー成形部に搬送する。高温状態のプリフォームは、硬化状態のスキン層が薄く軟化状態のコア層が厚いため、射出離型時に変形しやすい。具体的には、ネック型で支持されたプリフォームから射出コア型を上昇させて離脱させる際、胴部や底部が射出コア型に巻きついて連れ上がってしまい、不規則な変形が生じやすい。高温状態のプリフォームは軟性が非常に高く、抜き勾配を大きくした形状でも上記現象は発生し得る。すなわち、新成形法で最適な、肉厚で短く延伸倍率を稼げる形状のプリフォームを、変形なく高温状態で離型する手法が求められていた。
【0034】
特許文献1では、離型時に射出コア型とプリフォームとの間に気体を導入し、離型不良を解消しているが、この手段は、金型・機械構造が複雑化し部品点数も多くなり、コストアップにつながるおそれがある。複雑な金型・機械構造を必要とせず、比較的シンプルな構造で離型不良を改善でき、容器を品質良好にブロー成形できる方法を考案する必要性があった。
【0035】
特許文献2の金型では、射出成形工程において冷却されたプリフォームからコア型を抜きやすくするようにコア型にシボ加工が施されているが、上述のように高温状態のプリフォームは軟性が非常に高く、従来の粗面化処理ではプリフォームを高温離型した際の変形を十分抑制することが難しかった。
【0036】
本実施形態の樹脂製容器の製造方法で用いられる射出コア型102では、胴部規定部122の表面に、底部規定部112からネック部規定部132へ延びる第1の溝144が形成されている。換言すると、胴部規定部122の表面には、射出コア型102の抜き方向に延在する第1の溝144が形成されている。射出コア型102を抜く際に第1の溝144が空気の流通路として機能することで、従来の不規則な加工が施された射出コア型よりも高温状態のプリフォーム300の射出コア型102への密着を好適に抑制することができる。これにより、プリフォーム300の変形を好適に抑制することができる。また、射出コア型の表面に加工を施すとその加工面の形状がプリフォームにある程度転写される。従来の射出成形工程においてプリフォームを冷却する手法では、プリフォームに転写された形状が最終成形品にも表れるおそれがあったため、射出コア型の加工面の形状に制限があった。しかしながら本実施形態の樹脂製容器の製造方法では、離型時にプリフォーム300が高温状態にあり軟性が非常に高いことから、後工程に向かうにつれてプリフォーム300の内面への転写が自然に緩和されて目立たなくなる。これにより、短い成形サイクル時間で高温状態でプリフォーム300を離型しても良質の樹脂製容器を製造できる。
【0037】
また上記の実施形態の製造方法によれば、中心線平均粗さRa1が0.2μm以上となるように、射出コア型102の胴部規定部122の表面に底部規定部112からネック部規定部132へ延びる第1の溝144を形成することで、射出成形時に微小な空気を射出コア型102とプリフォーム300との間に好適に滞在させて密着力を小さくできる。また、中心線平均粗さRa1が15μm以下となるように、射出コア型102の胴部規定部122の表面に底部規定部112からネック部規定部132へ延びる第1の溝144を形成することで、高温状態の溶融樹脂が第1の溝144に入り込むことを好適に抑制することができる。これにより、プリフォーム300の離型性を向上できる。
【0038】
また、上記の実施形態の製造方法では、射出キャビティ型104の内壁部124の表面に、内底部114から開口部134へ延びる第2の溝が形成されている。換言すると、内壁部124の表面には、射出コア型102の抜き方向に延在する第2の溝が形成されている。射出コア型102を抜く際に、射出キャビティ型104の内壁部124の第2の溝が空気の流通路として機能することで、高温状態のプリフォーム300の射出キャビティ型104への密着も好適に抑制することができる。これにより、プリフォーム300の変形をより好適に抑制することができる。また、本実施形態の樹脂製容器の製造方法では、離型時にプリフォーム300が高温状態にあり軟性が非常に高いことから、後工程に向かうにつれてプリフォーム300の外面への転写が自然に緩和されて目立たなくなる。これにより、短い成形サイクル時間で高温状態でプリフォーム300を離型してもより良質の樹脂製容器を製造できる。
【0039】
また、本実施形態の樹脂製容器の製造方法では、射出コア型102の胴部規定部122の表面の周方向D2の中心線平均粗さRa1が、温調コア型202の胴部接触部222の表面の周方向D5の中心線平均粗さRa2よりも大きい。射出コア型102の中心線平均粗さRa1が大きいことで、射出成形時も微小な空気が射出コア型102とプリフォーム300と間に滞在して密着力が小さくなるため、離型性を向上できる。温調コア型202の中心線平均粗さRa2が小さいことで、射出成形工程S1を経て搬送されたプリフォーム300の内側の、射出コア型102の粗面部が転写された部分に温調コア型202が接触して表面粗さを矯正することができる。併せて挟込工程で後冷却と、変形の矯正と、を行うことができ、短い成形サイクル時間で高温状態でプリフォーム300を離型しても良質の樹脂製容器を製造できる。
【0040】
また上記の実施形態の製造方法によれば、中心線平均粗さRa2を0.1μm以上0.4μm以下とすることで、射出成形工程S1を経て搬送されたプリフォーム300の内側の、射出コア型102の粗面部が転写された部分の表面粗さを好適に矯正することができ、成形される容器に転写痕を残存し難くできる。これにより、短い成形サイクル時間で高温状態でプリフォーム300を離型してもさらに良質の樹脂製容器を製造できる。
【0041】
また、本実施形態の樹脂製容器の製造方法では、射出コア型102の胴部規定部122の表面に形成された第1の溝144に由来するプリフォーム300の内面への転写が、特に挟込工程において良好に矯正される。これにより、短い成形サイクル時間で高温状態でプリフォーム300を離型してもさらに一層良質の樹脂製容器を製造できる。
【0042】
従来の射出成形用金型において粗面化処理をする場合、完成品にさらに鏡面加工を施し、その後ブラスト加工などにより表面を粗面化していた。本実施形態の射出コア型102においては、鏡面加工処理をせずに粗面化処理をすることで所望の射出コア型102とすることができ、従来の研磨工程が不要であり加工コストを低減できる。
【0043】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0044】
以下、上述した実施形態およびその変形から抽出される態様を列記する。
[1]
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を有する樹脂製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程は、少なくとも射出コア型および射出キャビティ型によって形成されるキャビティ内に溶融樹脂を充填してプリフォームを形成する充填工程を含み、
前記射出コア型は、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記胴部規定部の表面に、前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されている、樹脂製容器の製造方法。
[2]
前記射出コア型の前記胴部規定部の表面のうち、前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下である、[1]に記載の樹脂製容器の製造方法。
[3]
前記射出キャビティ型は、
プリフォームの底部の外形を規定する内底部と、
プリフォームの胴部の外形を規定する内壁部と、
前記内壁部を挟んで前記内底部の反対側に位置する開口部と、を有し、
前記内壁部の表面に、前記内底部から前記開口部へ延びる溝が形成されている、
[1]または[2]に記載の樹脂製容器の製造方法。
[4]
射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調工程をさらに有する[1]~[3]のいずれか一つに記載の樹脂製容器の製造方法。
[5]
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形するための射出コア型であって、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記胴部規定部の表面に前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されている、射出コア型。
[6]
前記胴部規定部の表面のうち、前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下である、[5]に記載の射出コア型。
[7]
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形するための射出キャビティ型であって、
前記プリフォームの底部の外形を規定する内底部と、
前記プリフォームの胴部の外形を規定する内壁部と、
前記内壁部を挟んで前記内底部の反対側に位置する開口部と、を有し、
前記内壁部の表面に、前記内底部から前記開口部へ延びる溝が形成されている、
射出キャビティ型。
[8]
[5]に記載の射出コア型と、[7]に記載の射出キャビティ型と、を含む射出成形用金型。
[9]
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形部と、を備える樹脂製容器の製造装置であって、
前記射出成形部が、[5]に記載の射出コア型、[7]に記載の射出キャビティ型、または[8]に記載の射出成形用金型を含む、樹脂製容器の製造装置。
[10]
射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調部をさらに備える[9]に記載の樹脂製容器の製造装置。
[11]
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調工程と、
温調された前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を有する樹脂製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程は、少なくとも射出コア型および射出キャビティ型によって形成されるキャビティ内に溶融樹脂を充填して前記プリフォームを形成する充填工程を含み、
前記射出コア型は、前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部を有し、
前記温調工程は、前記プリフォームを温調キャビティ型と温調コア型とにより挟み込む挟込工程を含み、
前記温調コア型は、前記挟込工程において前記プリフォームの胴部に接触する胴部接触部を有し、
前記射出コア型の前記胴部規定部の表面の周方向の中心線平均粗さRa1が、前記温調コア型の前記胴部接触部の表面の周方向の中心線平均粗さRa2よりも大きい、樹脂製容器の製造方法。
[12]
前記射出コア型の前記胴部規定部の表面の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下である、[11]に記載の樹脂製容器の製造方法。
[13]
前記温調コア型の前記胴部接触部の表面の周方向の中心線平均粗さRa2が、0.1μm以上0.4μm以下である、[11]または[12]に記載の樹脂製容器の製造方法。
[14]
前記射出コア型は、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、をさらに有し、
前記胴部規定部の表面に、前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されている、[11]~[13]のいずれか一つに記載の樹脂製容器の製造方法。
[15]
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形するための射出コア型と、射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調するための温調コア型と、を含む金型ユニットであって、
前記射出コア型は、前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部を有し、
前記温調コア型は、前記プリフォームを冷却しつつ温調する際に前記プリフォームの胴部に接触する胴部接触部を有し、
前記射出コア型の前記胴部規定部の表面の周方向の中心線平均粗さRa1が、前記温調コア型の前記胴部接触部の表面の周方向の中心線平均粗さRa2よりも大きい、金型ユニット。
[16]
前記射出コア型の前記胴部規定部の表面の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下である、[15]に記載の金型ユニット。
[17]
前記温調コア型の前記胴部接触部の表面の周方向の中心線平均粗さRa2が、0.1μm以上0.4μm以下である、[15]または[16]に記載の金型ユニット。
[18]
前記射出コア型は、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、をさらに有し、
前記胴部規定部の表面に、前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されている、[15]~[17]のいずれか一つに記載の金型ユニット。
[19]
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調部と、
温調された前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形部と、を備える樹脂製容器の製造装置であって、
[15]~[18]のいずれか一つに記載の金型ユニットを含む、
樹脂製容器の製造装置。
【0045】
なお、本願は、2019年4月4日付で出願された日本国特許出願(特願2019-071910及び特願2019-071911)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【符号の説明】
【0046】
10:製造装置、11:射出成形部、12:温調部、13:ブロー成形部、14:取出部、15:射出装置、16:搬送手段、17:ネック型、102:射出コア型、104:射出キャビティ型、112:底部規定部、114:内底部、122:胴部規定部、124:内壁部、132:ネック部規定部、134:開口部、144:第1の溝、202:温調コア型、204:温調キャビティ型、212:底部接触部、214:胴部接触部、300:プリフォーム、310:底部、320:胴部、330:ネック部、S1:射出成形工程、S2:温調工程、S3:ブロー成形工程
図1
図2
図3
図4
図5