(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/02 20060101AFI20240909BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
B25F5/02
B25F5/00 H
(21)【出願番号】P 2020209550
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】神谷 剛
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-168720(JP,A)
【文献】特開2020-179475(JP,A)
【文献】特開2017-135807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F1/00-5/02
B25B15/00-15/06
B25B19/00
B25B21/00-21/02
B23B35/00-49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、回転軸を備えて前記ステータに対して回転可能なロータと、前記回転軸に固定されるファンと、を有するブラシレスモータと、
一端が開口し、他端の底部側に前記ファンが位置する向きで前記ブラシレスモータを収容する一体筒形のモータハウジングと、
前記ブラシレスモータから回転が伝達されるギヤと、
前記ギヤから回転が伝達される出力軸と、を有
し、
前記回転軸における前記ファンの固定側の端部には、軸受が取り付けられ、
前記モータハウジングの底部には、前記軸受が保持される軸受保持部が設けられて、
前記モータハウジングの内周面には、前記開口から挿入した前記軸受を前記軸受保持部に保持させる際に前記ファンの外周と接触して前記ファンを前記モータハウジングとの同軸位置に案内するガイド部が設けられている電動工具。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記モータハウジングの周方向へ所定間隔をおいて突設される複数のガイド突起であり、各前記ガイド突起は、前記開口側から前記底部側へ向かうに従って前記モータハウジングの軸心側へ突出し、当該突出側の各頂点を通る同心円が前記ファンの外周より僅かに大径となる傾斜面を有する請求項
1に記載の電動工具。
【請求項3】
各前記ガイド突起は、前記頂点から前記底部側へ向かうに従って前記モータハウジングの径方向外側へ移動する傾斜面を有する請求項
2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記軸受及び前記軸受保持部は、前記モータハウジングの径方向で前記ファンとオーバーラップしている請求項
1乃至3の何れかに記載の電動工具。
【請求項5】
前記モータハウジングの内周面には、前記ステータを同軸で支持する支持部が形成されている請求項1乃至
4の何れかに記載の電動工具。
【請求項6】
前記支持部は、前記モータハウジングの軸線と平行に形成され、前記モータハウジングの周方向へ所定間隔で突設された支持リブである請求項
5に記載の電動工具。
【請求項7】
前記モータハウジングの内周面には、前記ステータに当接して前記ステータの前記底部側への位置決めを行う位置決め部が形成されている請求項1乃至
6の何れかに記載の電動工具。
【請求項8】
前記位置決め部は、前記モータハウジングの軸線と平行に形成され、前記モータハウジングの周方向へ所定間隔で形成された位置決めリブである請求項
7に記載の電動工具。
【請求項9】
前記ギヤは、筒状のギヤケース内に収容され、前記ギヤケースは、2分割されて前記モータハウジングに連結されるギヤケースハウジングに保持されて、
前記ステータは、前記ギヤケースハウジングに挟持されて回り止めされる請求項1乃至
8の何れかに記載の電動工具。
【請求項10】
前記ステータにおいて、前記ギヤケースハウジングに挟持される部分は、前記ステータに設けられたインシュレータである請求項
9に記載の電動工具。
【請求項11】
前記ギヤケースハウジングは、前記モータハウジングの前記開口に内側から嵌合する筒部を備えている請求項
9又は10に記載の電動工具。
【請求項12】
前記モータハウジングと前記ギヤケースハウジングとは、前記モータハウジングの軸線と平行なネジによって固定されている請求項
9乃至11の何れかに記載の電動工具。
【請求項13】
前記モータハウジングに、吸気孔と排気孔とが形成されている請求項1乃至
12の何れかに記載の電動工具。
【請求項14】
ステータと、回転軸を備えて前記ステータに対して回転可能なロータと、前記回転軸に固定されるファンと、を有するブラシレスモータと、
前端が開口し、後端の底部側に前記ファンが位置する向きで前記ブラシレスモータを収容する一体筒形のモータハウジングと、
前記ブラシレスモータから回転が伝達されるギヤと、
前記ギヤから回転が伝達される出力軸と、を有し、
前記ギヤは、前記モータハウジングの前側で筒状のギヤケース内に収容され、前記ギヤケースは、左右に2分割されて前記モータハウジングに連結されるギヤケースハウジングに保持されて、
前記ギヤケースハウジングは、左右に2分割されて下方へ延びるハンドルを一体に有している電動工具。
【請求項15】
前記ハンドルの下端に、左右に2分割され、バッテリパックを装着可能なバッテリ装着部が形成されている請求項14に記載の電動工具。
【請求項16】
筒状部と、前記筒状部の
後端に接続される板状部と、前記筒状部の
前端に配置される開口と、を有する一体のモータハウジングと、
前記モータハウジング
の前側に接続される
ギヤケースと、
前記
ギヤケースに保持される出力部と、
前記モータハウジングに収容されるブラシレスモータと、
前記モータハウジングに接続され
て前記ギヤケースを保持し、左右に2分割されるギヤケースハウジングと、
前記ギヤケースハウジングから下方に延びて左右に2分割され、スイッチが収容されるグリップハウジングと、
前記グリップハウジングに接続され、バッテリパックを保持可能なバッテリ保持ハウジングと、を有し、
前記ブラシレスモータは、前記筒状部に外周が対向するステータと、前記ステータの内方に配置されるロータと、前記板状部に隣接し前記ロータと一体回転するファンと、前記ロータの回転を検出し前記開口に隣接するセンサ回路基板と、を有する電動工具。
【請求項17】
前記ブラシレスモータを回転制御するためのコントローラを有し、
前記センサ回路基板と前記コントローラとをリード線で接続し、
前記リード線は、前記筒状部又は前記板状部を通過しない請求項
16記載の電動工具。
【請求項18】
筒状部と、前記筒状部の
後端に接続される板状部と、前記筒状部の
前端に配置される開口と、を有する一体のモータハウジングと、
前記モータハウジング
の前側に接続される
ギヤケースと、
前記
ギヤケースに保持される出力部と、
前記モータハウジングに収容されるブラシレスモータと、
前記モータハウジングに接続され
て前記ギヤケースを保持し、左右に2分割されるギヤケースハウジングと、
前記ギヤケースハウジングから下方に延びて左右に2分割され、スイッチが収容されるグリップハウジングと、
前記グリップハウジングに接続され、バッテリパックを保持可能なバッテリ保持ハウジングと、を有し、
前記ブラシレスモータは、前記筒状部に外周が対向しコイルを有するステータと、前記ステータの内方に配置されるロータと、前記板状部に近接し前記ロータと一体回転するファンと、前記コイルに接続され前記開口に隣接する接続端子と、を有する電動工具。
【請求項19】
前記ブラシレスモータに通電するためのスイッチング素子基板を有し、
前記接続端子と前記スイッチング素子基板とをリード線で接続し、
前記リード線は、前記筒状部又は前記板状部を通過しない請求項
18に記載の電動工具。
【請求項20】
前記バッテリ保持ハウジングは、前記グリップハウジングの下端に接続されて左右に2分割されている請求項16乃至19の何れかに記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータを有する電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
電動工具には、ブラシレスモータを有するものが知られている。例えば特許文献1には、前後方向に延びる本体の後部にモータを配置し、その前方に、減速部及び出力部を有するギヤアッセンブリを配置している。出力部は、減速機構を含み、前方へ突出するスピンドルを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電動工具では、部品点数及び組み付けの手間を削減できる構造が望まれている。また、この場合、ブラシレスモータへの配線が効率的に行えることも望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、部品点数及び組み付けの手間を削減可能となる電動工具を提供することを目的としたものである。
また、ブラシレスモータへの配線が効率的に行える電動工具を提供することも別の目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち、第1の発明は、電動工具であって、ステータと、回転軸を備えて前記ステータに対して回転可能なロータと、前記回転軸に固定されるファンと、を有するブラシレスモータと、
一端が開口し、他端の底部側に前記ファンが位置する向きで前記ブラシレスモータを収容する一体筒形のモータハウジングと、
前記ブラシレスモータから回転が伝達されるギヤと、
前記ギヤから回転が伝達される出力軸と、を有し、
前記回転軸における前記ファンの固定側の端部には、軸受が取り付けられ、
前記モータハウジングの底部には、前記軸受が保持される軸受保持部が設けられて、
前記モータハウジングの内周面には、前記開口から挿入した前記軸受を前記軸受保持部に保持させる際に前記ファンの外周と接触して前記ファンを前記モータハウジングとの同軸位置に案内するガイド部が設けられていることを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明のうち、第2の発明は、電動工具であって、ステータと、回転軸を備えて前記ステータに対して回転可能なロータと、前記回転軸に固定されるファンと、を有するブラシレスモータと、
前端が開口し、後端の底部側に前記ファンが位置する向きで前記ブラシレスモータを収容する一体筒形のモータハウジングと、
前記ブラシレスモータから回転が伝達されるギヤと、
前記ギヤから回転が伝達される出力軸と、を有し、
前記ギヤは、前記モータハウジングの前側で筒状のギヤケース内に収容され、前記ギヤケースは、左右に2分割されて前記モータハウジングに連結されるギヤケースハウジングに保持されて、
前記ギヤケースハウジングは、左右に2分割されて下方へ延びるハンドルを一体に有していることを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明のうち、第3の発明は、電動工具であって、筒状部と、前記筒状部の後端に接続される板状部と、前記筒状部の前端に配置される開口と、を有する一体のモータハウジングと、
前記モータハウジングの前側に接続されるギヤケースと、
前記ギヤケースに保持される出力部と、
前記モータハウジングに収容されるブラシレスモータと、
前記モータハウジングに接続されて前記ギヤケースを保持し、左右に2分割されるギヤケースハウジングと、
前記ギヤケースハウジングから下方に延びて左右に2分割され、スイッチが収容されるグリップハウジングと、
前記グリップハウジングに接続され、バッテリパックを保持可能なバッテリ保持ハウジングと、を有し、
前記ブラシレスモータは、前記筒状部に外周が対向するステータと、前記ステータの内方に配置されるロータと、前記板状部に隣接し前記ロータと一体回転するファンと、前記ロータの回転を検出し前記開口に隣接するセンサ回路基板と、を有することを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明のうち、第4の発明は、電動工具であって、筒状部と、前記筒状部の後端に接続される板状部と、前記筒状部の前端に配置される開口と、を有する一体のモータハウジングと、
前記モータハウジングの前側に接続されるギヤケースと、
前記ギヤケースに保持される出力部と、
前記モータハウジングに収容されるブラシレスモータと、
前記モータハウジングに接続されて前記ギヤケースを保持し、左右に2分割されるギヤケースハウジングと、
前記ギヤケースハウジングから下方に延びて左右に2分割され、スイッチが収容されるグリップハウジングと、
前記グリップハウジングに接続され、バッテリパックを保持可能なバッテリ保持ハウジングと、を有し、
前記ブラシレスモータは、前記筒状部に外周が対向しコイルを有するステータと、前記ステータの内方に配置されるロータと、前記板状部に近接し前記ロータと一体回転するファンと、前記コイルに接続され前記開口に隣接する接続端子と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リヤカバーを用いないので、部品点数及び組み付けの手間が削減可能となる。また、ブラシレスモータへの配線が効率的に行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図15】筒形ハウジングにブラシレスモータを挿入する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(震動ドライバドリルの説明)
図1は、電動回転工具の一例を示す震動ドライバドリルの斜視図、
図2は正面図、
図3は背面図、
図4は側面図、
図5は、
図2のA-A線断面図である。
震動ドライバドリル1は、本体2とハンドル3とを備える。本体2は、前後方向に延びる。ハンドル3は、本体2の下側から突出する。本体2とハンドル3とは、側面視がT字状である。ハンドル3の下端には、バッテリ装着部4が形成されている。
本体2には、ブラシレスモータ5とギヤアッセンブリ6とが設けられている。ブラシレスモータ5は、本体2の後部に配置され、ギヤアッセンブリ6は、ブラシレスモータ5の前側に配置されている。ギヤアッセンブリ6は、減速部7と、その前方の出力部8とを備えている。出力部8は、前方へ突出するスピンドル9を備えている。スピンドル9の先端には、ドリルチャック10が取り付けられている。ドリルチャック10は、図示しないビットを把持可能である。
【0010】
震動ドライバドリル1のハウジングは、筒形ハウジング11と分割ハウジング12とを含む。
筒形ハウジング11は、本体2の後部に配置されてブラシレスモータ5を収容する。筒形ハウジング11は、前方を開口し、後方を閉塞する有底筒状である。
図6及び
図7に示すように、筒形ハウジング11は、筒状部11aと、板状部11bと、開口11cとを有する。筒状部11aは、前後方向に延びる。板状部11bは、筒状部11aの後端に接続されて筒状部11aを閉塞する。開口11cは、筒状部11aの前方を開口する。筒状部11aの前端には、拡径部13が形成されている。拡径部13は、内径が筒状部11aの後部側よりも大きくなっている。
筒形ハウジング11の前部上側には、突部14が形成されている。突部14は、筒状部11aの外周面よりも上方に突出して左右方向に延びている。突部14の左右両端には、前方へ向けた2つの上ネジボス15,15が形成されている。上ネジボス15,15の間で突部14の後端には、横リブ16が突設されている。横リブ16は、左右方向へ延びて上ネジボス15,15よりも上方へ突出している。
筒形ハウジング11の前部下側には、左右両側へ張り出す2つの下ネジボス17,17が前向きに形成されている。下ネジボス17,17の間には、枠部18が形成されている。枠部18は、前方及び下方を開放した底面視U字状となっている。枠部18には、左右両側縁及び後縁で内側に張り出す張出部19が連続形成されている。枠部18の後部下面には、突起20が形成されている。
【0011】
拡径部13を含む筒形ハウジング11の内周面には、
図8及び
図9にも示すように、複数の支持リブ21,21・・が形成されている。各支持リブ21は、筒形ハウジング11の軸線方向と平行に形成されている。各支持リブ21は、周方向に所定間隔をおいて形成されている。
筒形ハウジング11の後部内周面には、全周に亘って縮径部22が形成されている。縮径部22は、内径が前部側よりも小さくなっている。筒形ハウジング11の径方向での縮径部22の内周面は、当該径方向での支持リブ21の内面よりも径方向外側に位置している。
縮径部22の内周面で上下左右には、位置決めリブ23,23・・が複数ずつ形成されている。各位置決めリブ23は、筒形ハウジング11の軸線方向と平行に形成されている。筒形ハウジング11の径方向内側の位置決めリブ23の端面は、当該径方向内側の支持リブ21の端面よりも筒形ハウジング11の軸心側に位置している。
【0012】
縮径部22には、3つのガイド突起24,24・・が径方向内側に突設されている。各ガイド突起24は、前傾斜面25と後傾斜面26とを備える。前傾斜面25は、後方へ向かうに従って筒形ハウジング11の軸線側へ突出する。後傾斜面26は、前方へ向かうに従って筒形ハウジング11の軸線側へ突出する。各ガイド突起24は、前傾斜面25と後傾斜面26との間が最も筒形ハウジング11の軸線側へ突出する側面視三角形状となっている。3つのガイド突起24のうち、上側と右側のガイド突起24,24は、位置決めリブ23から突設されている。左下側のガイド突起24は、縮径部22の内周面から突設されている。各ガイド突起24の頂点は、筒形ハウジング11の軸線を中心とする同心円C(
図8)上に位置している。この同心円Cは、後述するファン67の外径よりも僅かに大きくなっている。
筒形ハウジング11の前部の左右には、複数の吸気孔27,27・・が形成されている。各吸気孔27は、スリット状で、
図12に示すように、支持リブ21,21の間に配置されている。筒形ハウジング11の縮径部22には、複数の排気孔28,28・・が形成されている。各排気孔28は、筒形ハウジング11の周方向に延びるスリット状である。
【0013】
分割ハウジング12には、筒形ハウジング11の前方に位置する中間筒30とハンドル3とが連設される。分割ハウジング12は、左右の半割ハウジング12a,12bを有する。この半割ハウジング12a,12bは、ハンドル3の部分では右側から複数のネジ31,31・・・・を用いて固定される。
中間筒30の外周には、4つの筒部32,32・・が形成されている。各筒部32は、筒形ハウジング11の上下ネジボス15,17の前方同軸上に位置して前後方向に延びる。上側に位置する左右の筒部32,32の間には、後述する速度切替レバー85を露出させる窓33が形成されている。筒形ハウジング11の突部14には、速度切替レバー85が挿入される穴部14a(
図6)が形成されている。
中間筒30の後端には、周方向に延びる壁リブ34,34・・が、周方向に所定間隔をおいて複数形成されている。壁リブ34は、筒形ハウジング11の拡径部13の内側に嵌合する。各支持リブ21は、壁リブ34,34の間にそれぞれ配置されている。
【0014】
ハンドル3の上部後端には、嵌合部35が形成されている。嵌合部35は、左右の半割ハウジング12a,12bにそれぞれ形成された半幅部35a,35b同士を合わせることで形成される。嵌合部35は、後方へ延びて筒形ハウジング11の枠部18に嵌合する。嵌合部35の外周には、張出部19に上方から係止する係止部36が形成されている。嵌合部35の下方には、左右一対の挟持突起37,37が後ろ向きに突設されている。挟持突起37,37は、張出部19の突起20を挟んで左右に位置する。
よって、ハンドル3の嵌合部35を枠部18へ前方から嵌合させると、
図12に示すように、係止部36が張出部19の上側に係止する。同時に挟持突起37,37が突起20の左右に配置される(
図3,
図13)。この枠部18と嵌合部35との嵌合により、筒形ハウジング11と分割ハウジング12とが互いに左右方向に位置決めされる。
【0015】
ハンドル3の上部には、スイッチ40(
図5)が収容されている。スイッチ40の前方側には、トリガ41が接続されている。スイッチ40の上方には、ブラシレスモータ5の回転方向を切り替える正逆切替ボタン42が設けられる。正逆切替ボタン42の前方には、左右一対のライト43,43が設けられている。ライト43,43は、ドリルチャック10の前方を照射する。
バッテリ装着部4には、バッテリパック44が前方からスライド装着される。バッテリ装着部4の下部には、端子台45が設けられる。この端子台45には、バッテリパック44が電気的に接続される。バッテリ装着部4の内部で端子台45の上方には、コントローラ46が収容されている。コントローラ46は、制御回路基板47を備える。制御回路基板47には、ブラシレスモータ5の制御用のマイコンやスイッチング素子等が搭載される。
【0016】
ブラシレスモータ5は、
図9及び
図10にも示すように、ステータ50と、ステータ50の内側に配置されるロータ51とを有したインナロータ型である。ステータ50は、ステータコア52と、前後のインシュレータ53A,53Bと、複数のコイル54,54・・とを有している。ステータコア52は、複数の積層鋼板を積層してなる。インシュレータ53A,53Bは、ステータコア52の前後に設けられる。各コイル54は、インシュレータ53A,53Bを介してステータコア52に巻回される。前側のインシュレータ53Aには、複数の接続端子55aが設けられている。各接続端子55aは、筒形ハウジング11の開口11cに隣接し、コイル54から引き出されるワイヤをヒュージングする。各接続端子55aには、結線部材55が接続されている。接続端子55aと結線部材55とにより三相結線が形成される。
前側のインシュレータ53Aの下部で左右方向の中央には、
図11にも示すように、回り止め片56が形成されている。回り止め片56は、左右方向に延びる帯状で、ステータコア52よりも下方に突出している。中間筒30を形成する左側の半割ハウジング12aには、左受け部57が右向きに形成されている。左受け部57は、回り止め片56が係止する係止凹部58を備えている。中間筒30を形成する右側の半割ハウジング12bには、右受け部59が形成されている。右受け部59は、左受け部57の右側に当接して係止凹部58の右側を閉塞する。
【0017】
前側のインシュレータ53Aと結線部材55との間には、センサ回路基板60が取り付けられている。センサ回路基板60には、回転検出素子が搭載されている。回転検出素子は、後述する永久磁石63の磁界を検出可能である。センサ回路基板60は、筒形ハウジング11の開口11cに隣接している。
結線部材55とセンサ回路基板60とは、ステータ50の前側に配置されている。よって、筒形ハウジング11が一体筒形であっても、結線部材55に接続される三相の電源線55bと、センサ回路基板60に接続される信号線60aとは、筒形ハウジング11の開口11cからハンドル3内のコントローラ46へ容易に配線できる。電源線55b及び信号線60aも短くなる。
【0018】
後側のインシュレータ53Bの上下左右には、
図6,7及び
図13にも示すように、4つの切欠部61,61・・が形成されている。各切欠部61は、筒形ハウジング11の位置決めリブ23の前方に対応した位置に形成されている。
ロータ51は、ロータコア62と、複数の永久磁石63,63・・とを有する。ロータコア62の軸心には、回転軸64が固定されている。永久磁石63,63・・は、ロータコア62の貫通穴に埋め込まれている。回転軸64の後端は、軸受65で軸支される。この軸受65は、筒形ハウジング11の後部内底面に突設した軸受保持部66に保持される。軸受65とロータコア62との間で回転軸64には、ファン67が固定されている。排気孔28は、ファン67の径方向外側に位置している。ファン67の後面中央は、前側へ凹んでおり、軸受保持部66が突出している。よって、軸受65及び軸受保持部66とファン67とは、筒形ハウジング11の径方向にオーバーラップしている。
【0019】
ブラシレスモータ5には、予めギヤアッセンブリ6及び分割ハウジング12を組み付ける。このとき分割ハウジング12に対しては、
図11のように、前側のインシュレータ53Aの回り止め片56を下にして、中間筒30の左受け部57の係止凹部58に嵌合させる。すると、ステータ50は、インシュレータ53Aを介して回り止めされた状態で中間筒30に把持される。
その後、筒形ハウジング11にブラシレスモータ5が組み付けられる。このとき、ロータ51を、軸受65を先にして筒形ハウジング11の開口11cから挿入する。そして、軸受65を軸受保持部66に前方から嵌合させる。すると、軸受65と共に筒形ハウジング11内を後退するファン67は、縮径部22内を通過する際、
図15に二点鎖線で示すように、外周が3つのガイド突起24の何れかに当接する。このためファン67は、ロータ51の磁力の影響を受けることなく、ガイド突起24の前傾斜面25に沿って実線で示すように中心側へ案内される。よって、ファン67及び軸受65は、軸心が筒形ハウジング11の軸心と一致した状態で後退する。この調心により、軸受65はスムーズに軸受保持部66へ嵌合される。軸受65が嵌合すると、ファン67は、ガイド突起24の後方に位置して板状部11bに近接する。ガイド突起24の後方は後傾斜面26が形成されているので、ファン67との間のクリアランスは確保できる。
【0020】
その後、ステータ50を筒形ハウジング11の開口11cから挿入する。すると、
図9,10及び
図13に示すように、インシュレータ53Bの切欠部61によって露出するステータコア52の上下左右の後端面に、それぞれ位置決めリブ23が当接する。よって、ステータ50は、後方への移動が規制され、支持リブ21によって筒形ハウジング11内に同軸で保持される。切欠部61には支持リブ21が位置しているので、ある程度の周方向位置も定まる。
その後、中間筒30の各壁リブ34を、
図14に示すように、筒形ハウジング11の支持リブ21を壁リブ34,34の間に位置させて、筒形ハウジング11の拡径部13に嵌合させる。これと共に嵌合部35を、筒形ハウジング11の下面の枠部18に前方から嵌合させる。すると、筒形ハウジング11は、分割ハウジング12に回転規制された状態で組み付けられる。このときピニオン80は遊星ギヤ82に噛合する。
ギヤアッセンブリ6は、後述する第2ギヤケース71の大径筒部73の後端に、4つのネジ止め部68,68・・を備えている。各ネジ止め部68は、中間筒30の外周に設けた各筒部32の前方に位置している。
よって、各ネジ止め部68を前方から貫通させたネジ69,69・・を、中間筒30の各筒部32に貫通させる。そして、各ネジ69を、筒形ハウジング11に設けた各上下ネジボス15,17にねじこむ。すると、
図1~4に示すように、筒形ハウジング11と分割ハウジング12とギヤアッセンブリ6とがネジ69によって一体に結合される。
【0021】
ギヤアッセンブリ6は、筒状の第1ギヤケース70と、筒状の第2ギヤケース71と、モード切替リング72とを備えている。第2ギヤケース71は、第1ギヤケース70の前側に組み付けられる。モード切替リング72は、第2ギヤケース71の前側に組み付けられる。モード切替リング72と第1ギヤケース70とは、樹脂製である。第2ギヤケース71は、アルミニウム製である。第2ギヤケース71は、
図9及び
図10にも示すように、外側に大径筒部73、内側に大径筒部73よりも前方へ延びる小径筒部74を同心円上に備えた二重筒形状を有する。大径筒部73と小径筒部74とは、小径筒部74の根元で連結部75によって繋がっている。
第1ギヤケース70は、大径筒部73に、後方から複数のネジ76(
図6,7)によって結合される。また、第1ギヤケース70の後端は、ネジ76によって共に固定されるブラケット板77に閉塞されている。大径筒部73内には、結合ギヤ78が保持される。
【0022】
回転軸64の前端は、ブラケット板77を貫通する。ブラケット板77は、軸受79を保持する。回転軸64の前部は、軸受79により回転可能に支持される。第1ギヤケース0内で回転軸64の前端には、ピニオン80が固定されている。
減速部7は、3つの遊星ギヤ82,82・・をそれぞれ支持するキャリア81A~81Cを軸方向に三段並設してなる。各段の遊星ギヤ82は、それぞれインターナルギヤ83A~83C内で公転運動可能である。
このうち二段目のインターナルギヤ83Bは、第1ギヤケース70内で前後方向へ移動可能となっている。インターナルギヤ83Bは、前進位置で結合ギヤ78と噛合して回転規制される。後退位置では、一段目のキャリア81Aと二段目の遊星ギヤ82と同時に噛合する。
【0023】
インターナルギヤ83Bには、速度切替リング84が、前後方向へ一体に移動可能に結合されている。速度切替リング84は、中間筒30の窓33内に設けられた速度切替レバー85に、前後のコイルバネ86,86を介して連結される。
速度切替レバー85を後方へスライドさせると、速度切替リング84が後退する。すると、インターナルギヤ83Bが、二段目の遊星ギヤ82との噛合を保ったまま一段目のキャリア81Aに噛合する。よって、二段目の減速がキャンセルされる高速モード(2速)となる。
逆に速度切替レバー85を前方へスライドさせると、速度切替リング84が前方に移動する。すると、インターナルギヤ83Bは、前方に移動して一段目のキャリア81Aから離れ、二段目の遊星ギヤ82との噛合を保ったまま結合ギヤ78に噛合して回転規制される。よって、2段目の減速が機能する低速モード(1速)となる。
【0024】
モード切替リング72は、第2ギヤケース71の小径筒部74へ回転可能に装着される。出力部8では、モード切替リング72の回転操作により、震動ドリルモード、ドリルモード、クラッチモード(ドライバモード)がそれぞれ選択可能となっている。震動ドリルモードでは、スピンドル9が回転しながら軸方向に震動する。ドリルモードでは、スピンドル9が回転のみ行う。クラッチモード(ドライバモード)では、モード切替リング72で設定したクラッチ作動トルクに達したら、減速部7からスピンドル9への回転伝達を遮断する。
スピンドル9は、小径筒部74内で前後の軸受90A,90Bによって軸支される。スピンドル9は、軸方向へ前後移動可能である。スピンドル9の前部には、フランジ91が形成される。フランジ91と前側の軸受90Aとの間には、コイルバネ92が配置されている。軸受90Aの後側でスピンドル9には、止め輪93が固定されている。スピンドル9は、止め輪93が軸受90Aに当接する前進位置に付勢される。
スピンドル9の後端は、ロックカム94にスプライン結合されている。ロックカム94は、三段目のキャリア81Cと回転方向で一体に係合している。
【0025】
小径筒部74内には、リング状の第1カム95と第2カム96とが配置されている。第1カム95は、止め輪93の後方でスピンドル9に固着されている。第2カム96は、第1カム95の後方で前後移動を規制された状態で、スピンドル9に対して別体回転可能に外装されている。第1カム95の後面と第2カム96の前面とには、回転方向で互いに係合するカム面が形成されている。
小径筒部74の外側でモード切替リング72の内側には、震動切替リング97及びカムリング98が設けられている。震動切替リング97は、モード切替リング72の回転操作により、カムリング98を介して前後移動して第2カム96に対して係脱動作する。震動切替リング97の前進位置では、第2カム96の回転が規制され、震動切替リング97の後退位置では、第2カム96の回転規制は解除される。
【0026】
モード切替リング72の内周には、雌ねじ部100が設けられている。雌ねじ部100には、ねじ送りリング101が螺合している。ねじ送りリング101は、小径筒部74の外側で回転規制され、前後方向にのみ移動可能である。ねじ送りリング101の後部には、周方向に複数の押圧ボス102,102・・が後ろ向きに突設されている。各押圧ボス102には、コイルバネ103の前端が外装されている。各コイルバネ103の後方には、押圧リング104が配置されている。押圧リング104は、小径筒部74の外周に沿って前後移動可能で、回転が規制されている。各コイルバネ103の後端は、押圧リング104に当接している。押圧リング104の後側で第2ギヤケース71の連結部75には、複数の押圧部材105,105・・が前後移動可能に保持されている。各押圧部材105は、三段目のインターナルギヤ83Cの前面に係合している。インターナルギヤ83Cは、回転可能に設けられて、押圧部材105を介したコイルバネ103の付勢力によって回転規制される。
【0027】
(震動ドライバドリルの動作の説明)
以上の如く構成された震動ドライバドリル1において、作業者がトリガ41を押し込み操作してスイッチ40をONさせる。スイッチ40がONすると、コントローラ46のマイコンが、ステータ50の各コイル54へ三相電流を供給し、ロータ51を回転させる。センサ回路基板60の回転検出素子は、永久磁石63の位置を示す回転検出信号を出力する。コントローラ46のマイコンは、回転検出信号に基づくロータ51の回転状態に応じて各スイッチング素子のON/OFFを制御する。このスイッチング素子のON/OFFにより、ステータ50の各相のコイル54に対し順番に電流が流れる。これにより、ロータ51は回転を続け、ロータ51の回転により回転軸64が回転する。回転軸64の回転によりピニオン80が回転し、ピニオン80の回転は、減速部7を介してスピンドル9を回転させる。よって、ドリルチャック10に把持したビットにより、選択した動作モードでの使用が可能となる。
【0028】
以下、各動作モードについて説明する。
まず、モード切替リング72を正面視で最も左回転させた回転位置とする。この回転位置では、震動切替リング97は前進している。このため、震動切替リング97は、第2カム96の回転を規制する。一方、ねじ送りリング101は、最後退位置にあって押圧ボス102を押圧リング104に押圧させている。よって、押圧部材105の前方への移動は規制され、インターナルギヤ83Cの回転はロックされる。
この状態で、ドリルチャック10に取り付けたビットを、作業者が被加工材に押し付ける。すると、ドリルチャック10と共にスピンドル9が後方へ移動する。よって、スピンドル9と共に第1カム95が後退する。第1カム95が後方に移動すると、回転規制される第2カム96と接触した状態となる。よって、第1カム95と第2カム96とが係合し合い、スピンドル9は、ドリルチャック10及びビットと共に回転しつつ、前後に震動する。すなわち、震動ドリルモードとなる。
【0029】
次に、震動ドリルモードからモード切替リング72を正面から見て約10度、反時計回りに回転させた回転位置とする。この回転位置では、震動切替リング97は後退し、第2カム96の回転規制を解除する。一方、ねじ送りリング101は、最後退位置よりやや前方へ移動し、押圧ボス102による押圧リング104の押圧は解除される。しかし、押圧リング104の前方への移動は微小であるため、押圧部材105とインターナルギヤ83Cとの係合は維持されている。よって、インターナルギヤ83Cの回転はロックされたままとなる。
この状態で、ドリルチャック10に取り付けたビットを、作業者が被加工材に押し付ける。すると、ドリルチャック10と共にスピンドル9が後方へ移動する。よって、スピンドル9と共に第1カム95が後退し、第2カム96と接触する。しかし、第2カム96の回転規制は解除されているので、第2カム96は第1カム95と共に回転する。よって、スピンドル9に振動は生じず、ドリルチャック10及びビットと共に回転するドリルモードとなる。
【0030】
次に、ドリルモードからモード切替リング72を正面から見て約30度反時計回りに回転させた回転位置とする。この回転位置では、震動切替リング97は後退し、第2カム96の回転規制を解除する。一方、ねじ送りリング101は、さらに前方へ移動する。このため、押圧部材105は、インターナルギヤ83Cとの係合を解除するまでコイルバネ103の付勢に抗して前進可能となる。
この状態で、ドリルチャック10に取り付けたビットを、作業者が被加工材に押し付ける。すると、ドリルチャック10と共にスピンドル9が後方へ移動する。よって、スピンドル9と共に第1カム95が後退し、第2カム96と接触する。しかし、第2カム96の回転規制は解除されているので、第2カム96は第1カム95と共に回転する。よって、スピンドル9に振動は生じず、ドリルチャック10及びビットと共に回転する。
但し、スピンドル9のトルクが、インターナルギヤ83Cと押圧部材105との係合を維持するコイルバネ103の押圧力を越えると、インターナルギヤ83Cが押圧部材105を相対的に乗り越えさせて空転する。すなわち、所定トルクでスピンドル9への回転伝達が遮断されるクラッチモードとなる。モード切替リング72の反時計回りの回転を続けると、ねじ送りリング101が前方へねじ送りされてコイルバネ103の圧縮量を変更する。よって、回転伝達が遮断されるトルクが調整できる。
【0031】
ここでは、筒形ハウジング11を採用し、分割ハウジング12の左右の半割ハウジング12a,12bを筒形ハウジング11に対してネジ止めしている。このため、筒形ハウジング11と分割ハウジング12との一体性が高まる。よって、ステータ50とロータ51との同軸精度が確保されると共に、ステータ50を把持する筒形ハウジング11の剛性も高くなる。これにより、ロータ51の磁力による部品のたわみが発生しにくくなり、ロータ51とステータ50との接触が防止される。
一方、回転軸64の回転と共にファン67が回転する。すると、吸気孔27からそれぞれ外気が筒形ハウジング11内に吸い込まれる。吸い込まれた空気は、支持リブ21,21の間で筒形ハウジング11とステータ50との間を通って後方へ流れる。よって、ブラシレスモータ5が冷却される。ブラシレスモータ5を冷却した空気は、ファン67の径方向外側へ送られて排気孔28から外部へ排出される。
【0032】
(一体筒形の筒形ハウジング及び左右2分割の分割ハウジングの発明の効果)
上記形態の震動ドライバドリル1は、ステータ50と、ステータ50に対して回転可能なロータ51とを有するブラシレスモータ5(モータ)を含む。また、震動ドライバドリル1は、ブラシレスモータ5の前方に配置される第1ギヤケース70(ギヤケース)と、第1ギヤケース70の内部に配置され、ロータ51の回転が伝達される遊星ギヤ82(ギヤ)と、第1ギヤケース70から前方に突出し、遊星ギヤ82から回転が伝達されるスピンドル9(出力軸)とを含む。そして、震動ドライバドリル1は、ブラシレスモータ5を収容し、前方が開口して後部が閉塞された一体筒形の筒形ハウジング11と、筒形ハウジング11の前方に連結され、第1ギヤケース70を保持して左右に2分割される分割ハウジング12(ギヤケースハウジング)と、分割ハウジング12から下方に延びるハンドル3(グリップハウジング)とを有する。
この構成により、ステータ50とロータ51との同軸が出しやすくなる。また、ステータ50を把持する筒形ハウジング11の剛性を向上させることができる。よって、ロータ51とステータ50との接触を効果的に防止することができる。
【0033】
(一体筒形の筒形ハウジングとその底部側にファンを配置した発明の効果)
上記形態の震動ドライバドリル1は、ステータ50と、回転軸64を備えてステータ50に対して回転可能なロータ51と、回転軸64に固定されるファン67と、を有するブラシレスモータ5を含む。そして、震動ドライバドリル1は、一端が開口し、他端の底部側にファン67が位置する向きでブラシレスモータ5を収容する一体筒形の筒形ハウジング11と、ブラシレスモータ5から回転が伝達される遊星ギヤ82(ギヤ)と、遊星ギヤ82から回転が伝達されるスピンドル9(出力軸)と、を有する。
この構成により、筒形ハウジング11の後部のデッドスペースを削減できる。よって、筒形ハウジング11をコンパクト化することができる。また、リヤカバーを用いないので、部品点数及び組み付けの手間も削減可能となる。
【0034】
分割ハウジング12は、筒形ハウジング11の開口に内側から嵌合する中間筒30(筒部)を備えている。よって、2分割した分割ハウジング12を筒形ハウジング11へ精度良く結合することができる。
筒形ハウジング11と分割ハウジング12とは、前後方向のネジ69によって固定されている。よって、筒形ハウジング11と分割ハウジング12とを強固に一体化できる。
筒形ハウジング11の内周面には、ステータ50を同軸で支持する支持リブ21(支持部)が形成されている。よって、筒形ハウジング11にステータ50を同軸で容易に組み付け可能となる。
支持部は、筒形ハウジング11の軸線と平行に形成され、筒形ハウジング11の周方向へ所定間隔で突設された支持リブ21となっている。よって、支持部を簡単に形成可能となる。また、支持リブ21の間にブラシレスモータ5の冷却風路を確保できる。
【0035】
筒形ハウジング11の後部内周面には、ステータ50に当接してステータ50の後方への位置決めを行う位置決めリブ23(位置決め部)が形成されている。よって、ステータ50の後方への位置決めが容易に行える。
位置決め部は、筒形ハウジング11の軸線と平行に形成され、筒形ハウジング11の周方向へ所定間隔で形成された位置決めリブ23となっている。よって、位置決め部を簡単に形成可能となる。
ステータ50は、分割ハウジング12に挟持されて回り止めされる。よって、分割ハウジング12を利用してステータ50の回り止めが行える。
ステータ50において、分割ハウジング12に挟持される部分は、ステータ50に設けられたインシュレータ53Aである。よって、インシュレータ53Aを利用してステータ50の回り止めが行える。
【0036】
ロータ51は、前後方向に延びる回転軸64を有し、回転軸64の後部にファン67が固定されて、筒形ハウジング11に、吸気孔27と排気孔28とが形成されている。よって、筒形ハウジング11内にブラシレスモータ5の冷却風路を簡単に形成できる。
ファン67の後方で回転軸64の後端に軸受65が取り付けられ、軸受65が、筒形ハウジング11の内底面に形成された軸受保持部66に保持されている。よって、筒形ハウジング11を利用して回転軸64の同軸支持が容易に行える。
軸受65及び軸受保持部66は、筒形ハウジング11の径方向でファン67とオーバーラップしている。よって、ファン67の後方にデッドスペースが生じなくなり、筒形ハウジング11を軸方向にコンパクト化できる。
【0037】
筒形ハウジング11の内周面には、軸受65を軸受保持部66に保持させる際にファン67の外周と接触してファン67を筒形ハウジング11との同軸位置に案内するガイド突起24(ガイド部)が設けられている。
よって、軸受65が軸受保持部66に挿入する際にファン67がガイド突起24によって調心され、ロータ51の磁力に影響されることなくロータ51の組み付けが可能となる。
ガイド部を、筒形ハウジング11の周方向へ所定間隔をおいて突設される複数のガイド突起24とし、各ガイド突起24を、前方から後方へ向かうに従って筒形ハウジング11の軸心側へ突出し、当該突出側の頂点を通る同心円Cがファン67の外周より僅かに大径となる前傾斜面25(傾斜面)を前側に有する構成としている。よって、ファン67は前傾斜面25によってスムーズに調心される。
各ガイド突起24は、頂点から後方へ向かうに従って筒形ハウジング11の径方向外側へ移動する後傾斜面26(傾斜面)を後側に有する構成としている。よって、軸受65が軸受保持部66に保持されると、ファン67がガイド突起24から離れ、ファン67とガイド突起24とのクリアランスが確保できる。
【0038】
筒形ハウジング11の外周面に、分割ハウジング12に設けた嵌合部35が前方から嵌合する枠部18(被嵌合部)が設けられている。よって、筒形ハウジング11と分割ハウジング12との一体性が高まる。
嵌合部35は、左右に2分割されて、分割ハウジング12の左右の半割ハウジング12a,12bにそれぞれ半分ずつ設けられている。よって、枠部18によって半割ハウジング12a,12bの一体性も高めることができる。
【0039】
(2つの一体筒形ハウジングと左右分割ハウジングとのネジ止めに係る発明の効果)
上記形態の震動ドライバドリル1は、筒形ハウジング11(第1の一体筒形ハウジング)と、筒形ハウジング11の前方側に配置される分割ハウジング12(左右分割ハウジング)と、分割ハウジング12の前方側に配置される第2ギヤケース71(第2の一体筒形ハウジング)と、を有する外郭をなすハウジングを有する。また、震動ドライバドリル1は、筒形ハウジング11に収容されるブラシレスモータ5と、分割ハウジング12に収容されるスイッチ40及びコントローラ46と、第2ギヤケース71に収容され、ブラシレスモータ5により駆動される出力部8(動力伝達部)と、第2ギヤケース71の前方側に配置され、出力部8により回転されるドリルチャック10(先端工具保持部)と、を有する。また、ブラシレスモータ5は、筒形ハウジング11に、その外周が直接保持されるステータ50と、ステータ50の内周側に配置され、筒形ハウジング11に、その回転軸64(ロータ軸)の後部が軸受65を介して直接保持されるロータ51と、を有する。そして、震動ドライバドリル1は、筒形ハウジング11と、分割ハウジング12と、第2ギヤケース71とを固定するための前後方向に延びる複数のネジ69を有する。
この構成により、前後の筒形ハウジング11と第2ギヤケース71とで分割ハウジング12を挟んだ格好でネジ止めするので、ハウジングの剛性を向上させることができる。
【0040】
ロータ51にはファン67が固定されており、筒形ハウジング11の左右側面には、ファン67による風を筒形ハウジング11の内部に流入させるための吸気孔27、及び、ファン67による風を筒形ハウジング11の外部に流出させるための排気孔28が形成されている。よって、ブラシレスモータ5の冷却風路を筒形ハウジング11のみで形成可能となる。
筒形ハウジング11の前部と、分割ハウジング12の後部とは嵌合している。よって、ハウジング同士の一体性が高まる。
【0041】
(センサ回路基板を筒形ハウジングの開口に隣接して配置した発明に係る効果)
上記形態の震動ドライバドリル1は、筒状部11aと、筒状部11aの一端に接続される板状部11bと、筒状部11aの他端に配置される開口11cと、を有する一体の筒形ハウジング11(モータハウジング)を有する。また、震動ドライバドリル1は、筒形ハウジング11に接続される第1、第2ギヤケース70,71(ギヤハウジング)と、第1、第2ギヤケース70,71に保持される出力部8と、筒形ハウジング11に収容されるブラシレスモータ5と、筒形ハウジング11に接続され、スイッチ40が収容されるハンドル3と、ハンドル3に接続され、バッテリパック44を保持可能なバッテリ装着部4(バッテリ保持ハウジング)と、を有する。そして、ブラシレスモータ5は、筒状部11aに外周が対向するステータ50と、ステータ50の内方に配置されるロータ51と、板状部11bに隣接しロータ51と一体回転するファン67と、ロータ51の回転を検出し開口11cに隣接するセンサ回路基板60とを有する。
よって、ブラシレスモータ5への信号線60aの配線が効率的に行える。
【0042】
ブラシレスモータ5を回転制御するためのコントローラ46を有し、センサ回路基板60とコントローラ46とを信号線60a(リード線)で接続し、信号線60aは、筒状部11a及び板状部11bを通過しない構成となっている。よって、信号線60aの配線が開口11cのみを通して楽に行える。
【0043】
(接続端子を筒形ハウジングの開口に隣接して配置した発明に係る効果)
上記形態の震動ドライバドリル1は、筒状部11aと、筒状部11aの一端に接続される板状部11bと、筒状部11aの他端に配置される開口11cと、を有する一体の筒形ハウジング11(モータハウジング)を有する。また、震動ドライバドリル1は、筒形ハウジング11に接続される第1、第2ギヤケース70,71(ギヤハウジング)と、第1、第2ギヤケース70,71に保持される出力部8と、筒形ハウジング11に収容されるブラシレスモータ5と、筒形ハウジング11に接続され、スイッチ40が収容されるハンドル3と、ハンドル3に接続され、バッテリパック44を保持可能なバッテリ装着部4(バッテリ保持ハウジング)と、を有する。そして、ブラシレスモータ5は、筒状部11aに外周が対向しコイル54を有するステータ50と、ステータ50の内方に配置されるロータ51と、板状部11bに近接しロータ51と一体回転するファン67と、コイル54に接続され開口11cに隣接する接続端子55aとを有する。
よって、ブラシレスモータ5への電源線55bの配線が効率的に行える。
【0044】
ブラシレスモータ5に通電するための制御回路基板47(スイッチング素子基板)を有し、接続端子55aと制御回路基板47とを電源線55b(リード線)で接続し、電源線55bは、筒状部11a及び板状部11bを通過しない構成となっている。よって、電源線55bの配線が開口11cのみを通して楽に行える。
【0045】
(変更例の説明)
各発明において、筒形ハウジングの内周面に設ける支持リブ及び位置決めリブの数や位置は適宜変更可能である。支持部としてリブ形状以外の突起も採用できる。位置決め部も同様でリブ形状に限らない。筒形ハウジングと分割ハウジングとは、上記形態と逆に、筒形ハウジングの前端を分割ハウジングの後端に嵌合させてもよい。
ステータの回り止めは、インシュレータに設けた回り止め片を分割ハウジングで挟持する構造に限らない。筒形ハウジングの内周面に形成した突起等をステータに係合させることで回り止めを行ってもよい。
ファンのガイド突起は、前側にのみ傾斜面を設けて後側には傾斜面を設けなくてもよい。ガイド突起の数や位置も適宜変更可能である。ガイド部としては突起以外の形状も採用できる。
筒形ハウジングには、排気孔のみを設けて、吸気孔は分割ハウジングに設けてもよい。
筒形ハウジングは、二層以上の材料からなる構造であってもよい。
電源としてバッテリパックでなく交流電源を用いるAC工具であってもよい。
【0046】
一体筒形の筒形ハウジング及び左右2分割の分割ハウジングの発明及び、2つの一体筒形ハウジングと左右分割ハウジングとのネジ止めに係る発明において、モータはブラシレスに限らない。ハウジング同士を前後方向でネジ止めするネジの数や位置も変更できる。
一体筒形のモータハウジングは、必ずしもロータ軸の後部を保持する必要が無い。従来、左右分割ハウジングでステータをしっかり保持できていなかった点が改善されるためである。
左右分割ハウジングのいずれかが、ロータ軸の後部を保持するようにしてもよい。この場合は、左右分割ハウジングの何れかに支持されているステータと、ロータ軸とは、同軸が出やすくなっている。従来、左右分割ハウジングと別のリアカバーで保持されており、同軸が出にくかったが、この点が改善されている。
電動回転工具としては、震動機構を有しないドライバドリルであってもよい。機械式クラッチでなく電子クラッチを用いたものであってもよい。電動ドライバや電動ドリルであってもよい。
バッテリパックでなく交流電源を用いるAC工具であってもよい。
【0047】
一体筒形の筒形ハウジングとその底部側にファンを配置した発明において、電動回転工具としては、震動機構を有しないドライバドリルであってもよい。機械式クラッチでなく電子クラッチを用いたものであってもよい。電動ドライバや電動ドリルであってもよい。
但し、電動回転工具は、前後方向の本体と上下方向のハンドルとからなるT字形状に限らない。レシプロソーやマルノコ等の他の電動回転工具にも当該発明は採用できる。よって、分割ハウジングは2分割でなくてもよい。
モータハウジングの開口に隣接してセンサ回路基板又は接続端子を配置した発明において、センサ回路基板はなくてもよい。この場合でも接続端子からのリード線の配線が楽になる。
制御回路基板でなくセンサ回路基板上にスイッチング素子が搭載されていてもよい。この場合、センサ回路基板から3本の電源線が延びる。
センサ回路基板・接続端子は、上記形態では、開口から(前方に)飛び出している。これに限らず、モータハウジングの内部(開口よりも後ろ側)に、センサ回路基板・接続端子が配置されていてもよい。この場合でも、配線は楽になる。
【符号の説明】
【0048】
1・・震動ドライバドリル、2・・本体、3・・ハンドル、5・・ブラシレスモータ、6・・ギヤアッセンブリ、7・・減速部、8・・出力部、9・・スピンドル、10・・ドリルチャック、11・・筒形ハウジング、12・・分割ハウジング、15・・上ネジボス、17・・下ネジボス、18・・枠部、21・・支持リブ、23・・位置決めリブ、24・・ガイド突起、25・・前傾斜面、26・・後傾斜面、27・・吸気孔、28・・排気孔、30・・中間筒、35・・嵌合部、50・・ステータ、51・・ロータ、56・・回り止め片、57・・左受け部、58・・係止凹部、59・・右受け部、64・・回転軸、65・・軸受、66・・軸受保持部、67・・ファン、68・・ネジ止め部、69・・ネジ、70・・第1ギヤケース、71・・第2ギヤケース、72・・モード切替リング。