(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】バンカの設置方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/14 20060101AFI20240909BHJP
E04H 7/04 20060101ALI20240909BHJP
E04H 7/30 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
E04G21/14
E04H7/04
E04H7/30
(21)【出願番号】P 2020210521
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 祐毅
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-026169(JP,A)
【文献】特開2018-177348(JP,A)
【文献】特開2020-075799(JP,A)
【文献】実開昭51-059136(JP,U)
【文献】特開平05-179809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G21/14-21/22
E04H5/00-5/12
7/00-7/32
12/00-14/00
F27D1/00-1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間が形成され、前記空間に固体燃料を貯留するバンカの設置方法であって、
内部に前記空間の下部が形成される下部ブロックを設置する下部ブロック設置工程と、
内部に前記空間の上部が形成される上部ブロックを前記下部ブロックの上方に設置する上部ブロック設置工程と、
前記下部ブロックの内部に位置するように、作業床を吊下げる吊下げ工程と、
前記吊下げ工程で吊下げられた前記作業床の上の作業員が、前記下部ブロックの上端と前記上部ブロックの下端とを接続する接続工程と、
前記接続工程の後に、前記作業床を上昇させるとともに、前記上部ブロックに前記作業床を固定することで、前記作業床を前記空間の上方を規定する天井板とする作業床固定工程と、
を備え
、
前記上部ブロックには、固定部及び吊下げ部を有する支持部が設けられていて、
前記吊下げ工程は、前記吊下げ部に対して前記作業床を吊下げ、
前記作業床固定工程は、前記固定部に対して前記作業床を固定するバンカの設置方法。
【請求項2】
前記作業床には、上下方向に貫通する開口が形成されている請求項
1に記載のバンカの設置方法。
【請求項3】
前記接続工程は、閉鎖部によって前記開口を閉鎖した状態で前記下部ブロックと前記上部ブロックとを接続する請求項
2に記載のバンカの設置方法。
【請求項4】
前記作業床は、前記吊下げ工程で吊下げられた際に、前記下部ブロックを水平面で切断した際の断面の全域を覆っている請求項1から請求項
3のいずれかに記載のバンカの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バンカの設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭やバイオマス燃料等の固体燃料(炭素含有固体燃料)は、粉砕機(ミル)で所定粒径範囲内の微粉状に粉砕して、燃焼装置へ供給される。ミルは、粉砕テーブルへ投入された石炭やバイオマス燃料等の固体燃料を、粉砕テーブルと粉砕ローラの間に挟み込んで粉砕し、粉砕テーブルの外周から供給される搬送用ガス(一次空気)によって、粉砕されて微粉状となった固体燃料のうち、所定粒径範囲内の微粉燃料を分級機で選別し、ボイラへ搬送して燃焼装置で燃焼させている。火力発電プラントでは、ボイラで微粉燃料を燃焼して生成された燃焼ガスとの熱交換により蒸気を発生させ、該蒸気により蒸気タービンを回転駆動して、蒸気タービンに接続した発電機を回転駆動することで発電が行なわれる。
【0003】
ミルへ供給される固体燃料は、ミルの上方に設けられる筒状のバンカ内に一時的に貯留されている。バンカに貯留されている固体燃料が、給炭機等を介して、ミル内へ供給される。このようなバンカは、多量の固体燃料を貯留する必要があるため、サイズが大きい。このため、バンカは、予め組立てられた複数の筒状のブロックを上下方向に繋ぎ合わせることで設置される場合がある(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1には、高さ方向に三つにブロック化した上部、中部及び下部分割本体を組立て溶接する(一体化する)ことで、コールバンカ本体を設置する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、2つの筒状のブロック(上部ブロック及び下部ブロック)を繋ぎ合わせる方法として、以下のような方法が考えられる。まず、鉄骨架構を組立て、クレーン等を使用して下部ブロックを鉄骨架構に設置し、上部ブロックを鉄骨架構の内部に仮吊りする。その後に、上部ブロック及び下部ブロックのケーシング設定(上部ブロックの側壁面と下部ブロックの側壁面との位置合わせ)を行う。そして、上部ブロックの下端と下部ブロックの上端とを溶接で接合する。
この方法では、ケーシング設定及び溶接作業を行うために、下部ブロックの内部に仮設足場を架設することが考えられる。この場合には、下部ブロックの開口部より下部ブロックの内部へ仮設足場材を搬入し、下部ブロックの底部から石炭バンカの内周面に沿って、溶接箇所付近の高さまで架設足場を組立てる必要がある。
【0007】
しかしながら、この方法では、下部ブロックの底部から下部ブロックの上端近傍まで架設足場を組立てる必要がある。このため、仮設足場が比較的大きくなる。これにより、仮設足場を構成する材料の数が増大し、バンカの設置コストが増大するという問題が生じる可能性がある。また、仮設足場材の搬入や、仮設足場の架設及び解体に多大な時間がかかるので、バンカの設置にかかる期間が長期間化するという問題が生じる可能性がある。
【0008】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、設置コストを低減することができるバンカの設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示のバンカの設置方法は以下の手段を採用する。
本開示の一態様に係るバンカの設置方法は、内部に空間が形成され、前記空間に固体燃料を貯留するバンカの設置方法であって、内部に前記空間の下部が形成される下部ブロックを設置する下部ブロック設置工程と、内部に前記空間の上部が形成される上部ブロックを前記下部ブロックの上方に設置する上部ブロック設置工程と、前記下部ブロックの内部に位置するように、作業床を吊下げる吊下げ工程と、前記吊下げ工程で吊下げられた前記作業床の上の作業員が、前記下部ブロックの上端と前記上部ブロックの下端とを接続する接続工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、バンカの設置コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態に係るバンカの設置を示す図であって、下部ブロックを吊り下げている状態を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係るバンカの設置方法を示す図であって、上部ブロックを吊り下げている状態を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態に係るバンカを示す模式的な側面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る作業床を示す模式的な平面図である。
【
図5】本開示の実施形態に係るバンカを示す模式的な縦断面図であって、作業床を吊下げている状態を示す図である。
【
図6】本開示の実施形態に係るバンカを示す模式的な縦断面図であって、作業床を天井板に転用して固定している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係るバンカの設置方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態に係るバンカは、石炭やバイオマス燃料等の固体燃料を粉砕し、微粉燃料を生成してボイラ(図示省略)へ供給する固体燃料粉砕装置の一部を構成している。
【0013】
次に、バンカの構造について説明する。以下では、製品として完成した状態のバンカの構造を説明している。
【0014】
本実施形態に係るバンカ2は、
図1及び
図2に示すように、固体燃料を粉砕する粉砕機1の上方に設けられる。バンカ2と粉砕機1とは、給炭機(図示省略)及び燃料供給管(図示省略)等によって接続される。
【0015】
バンカ2は、内部に空間(以下、「内部空間」と称する。)が形成されている。バンカ2は、粉砕機1へ供給される固体燃料を内部空間に一時的に貯留する。バンカ2は、
図3に示すように、上部ブロック10と、上部ブロック10の下方に配置される下部ブロック20とを備えている。上部ブロック10の下端と下部ブロック20の上端とは溶接等で接続されている。
【0016】
上部ブロック10は、上端及び下端が開口する円筒状の本体部11と、本体部11の上端に形成される開口を閉鎖する天井板12(
図6参照)と、を有している。
本体部11は、
図3に示すように、円筒状の部材である。本体部11は、平面視した際の直径Dが略7mとされている。また、本体部11の中心軸線に沿う方向(本実施形態では、上下方向)の長さL1は、略4m程度とされている。なお、本体部11の直径D及び長さL1の数値は、一例であり、上記説明の数値に限定されない。本体部11の内側には、内部空間の上部が形成されている。
天井板12は、
図6に示すように、本体部11の内周面の上端部に固定されている。天井板12は、内部空間の上方を規定している。天井板12は、略円板形状を有している。天井板12の中心には上下方向に貫通する供給開口(図示省略)が形成されている。供給開口を介して、バンカ2の内部空間へ固体燃料が供給される。
【0017】
下部ブロック20は、
図3に示すように、上部ブロック10と接続する円筒部21と、円筒部21の下端から下方に延びる第1縮径部22と、第1縮径部22の下端から下方に延びる第2縮径部23と、を一体的に有している。下部ブロック20の上下方向の長さL2は、略15m程度とされている。なお、下部ブロック20の長さL2の数値は、一例であり、上記説明の数値に限定されない。
【0018】
円筒部21は、上端及び下端に開口が形成されている円筒状の部材である。円筒部21は、上端が上部ブロック10の下端に接続されている。円筒部21の直径は、上部ブロック10の本体部11の直径Dと略同一とされている。円筒部21の外周面には、周方向の全域に亘ってフランジ部24が設けられている。フランジ部24は、円環状の部材であって、内周面が円筒部21の外周面に固定されている。すなわち、フランジ部24は、円筒部21の外周面から突出するように設けられている。このフランジ部24を用いて後述する下部ブロック20の設置工程時に鉄骨架構4へ設置を行う。フランジ部24によって、下部ブロック20の荷重を鉄骨架構4へ預けている。
【0019】
第1縮径部22は、上端及び下端に開口が形成されている円筒状の部材である。第1縮径部22は、上端が円筒部21の下端に接続されている。第1縮径部22は、中心軸線と直交する面で切断した際の断面の面積が、下方に向かうにしたがって減少するように縮径している。すなわち、第1縮径部22は下方に向かうにしたがって細くなるテーパー形状とされている。
【0020】
第2縮径部23は、上端及び下端に開口が形成されている円筒状の部材である。第2縮径部23は、上端が第1縮径部22の下端に接続されている。第2縮径部23は、中心軸線と直交する面で切断した際の断面の面積が、下方に向かうにしたがって減少するように縮径している。すなわち、第2縮径部23は下方に向かうにしたがって細くなるテーパー形状とされている。第2縮径部23の下端に形成された開口は、バンカ2から固体燃料が排出される排出開口である。第2縮径部23の内周面及び外周面は、第1縮径部22の内周面及び外周面よりも、鉛直面に近い。第1縮径部22と第2縮径部23の縮径の度合は、バンカ2の内部に貯蔵される固体燃料の性状(流動し易さ)に応じてそれぞれ設定される。
【0021】
次に、バンカ2の設置に用いられる作業床30の構造について説明する。
【0022】
作業床30は、
図4に示すように、複数の鉄骨からなる鉄骨ブロック31と、鉄骨ブロック31の上面の中央領域に固定される第1板材32と、鉄骨ブロック31の上面の外周領域に取り付けられる複数の足場調整板33と、を有している。
【0023】
鉄骨ブロック31は、棒状の複数の鉄骨を組み合わせることで構成されている。鉄骨ブロック31は、水平面を構成する方向のうちの一方向(
図4では、紙面上下方向)に延在する複数(本実施形態では、一例として、2本)の第1鉄骨31aと、水平面を構成する方向であって一方向と直交する方向である交差方向(
図4では、紙面左右方向)に延在する複数(本実施形態では、一例として、4本)の第2鉄骨31bと、を有している。第1鉄骨31aと第2鉄骨31bとは直交するように配置され、交差部分でボルト接合等により固定されている。
【0024】
複数の第1鉄骨31aは、交差方向に並んで配置されている。各第1鉄骨31aは、上部ブロック10の本体部11及び下部ブロック20の円筒部21の直径Dよりも短く形成されている。各第1鉄骨31aは、作業床30が下部ブロック20に収容された状態において、両端が下部ブロック20の内周面近傍に位置する長さとされている。
【0025】
複数の第2鉄骨31bは、一方向に並んで配置されている。各第2鉄骨31bは、上部ブロック10の本体部11及び下部ブロック20の円筒部21の直径Dよりも短く形成されている。各第2鉄骨31bは、作業床30が下部ブロック20に収容された状態において、両端が下部ブロック20の内周面近傍に位置する長さとされている。また、各第2鉄骨31bの両端部の上面には、溶接等により吊りピース31cが固定されている。吊りピース31cは、後述する仕口部40とワイヤ43等によって接続される。
【0026】
第1板材32は、平板状の部材であり、例えば縞鋼板が使用される。第1板材32は、全ての第1鉄骨31a及び第2鉄骨31bに跨るように配置されている。すなわち、第1板材32は、全ての第1鉄骨31a及び第2鉄骨31bによって支持されている。第1板材32の中央には上下方向に貫通する矩形の開口部32aが形成されている。この開口部32aが、製品完成時には、天井板12に形成された供給開口となる。第1板材32は、下部ブロック20の内周面から離間するように配置されている。第1板材32と、第1鉄骨31a及び第2鉄骨31bとはボルト接合等で固定されている。
【0027】
複数の足場調整板33は、作業床30が下部ブロック20に収容された状態において、第1板材32と下部ブロック20の内周面との間に形成される隙間を埋めるように配置されている。
足場調整板33は、所定方向に延在する板状の部材である。足場調整板33は、複数の第1鉄骨31a又は複数の第2鉄骨31bを架橋するように配置されている。
【0028】
足場調整板33は、長手方向が第1板材32の各辺に沿うように配置される。本実施形態では、第1板材32の一つの辺に対して、3つの足場調整板33が短手方向に並んで配置されている。作業床30が下部ブロック20に収容された状態において、下部ブロック20の内周面側に配置される足場調整板33ほど、長手方向の長さが短く形成されている。また、足場調整板33は、下部ブロック20の内周面との間に、可及的に隙間が形成されないように配置されている。
【0029】
各足場調整板33と、鉄骨ブロック31とは、着脱可能に固定されている。具体的には、例えば、固縛用の針金によって、各足場調整板33と鉄骨ブロック31とを固定してもよい。
なお、足場調整板33と吊りピース31cとは干渉しないように構成される。したがって、例えば、足場調整板33には、吊りピース31cが挿通する貫通孔が形成されていてもよい。
【0030】
このように、作業床30は、下部ブロック20に収容された状態において、下部ブロック20を水平面で切断した際の断面の全域を覆っている。なお、「断面の全域を覆っている」とは、可及的に断面の全域を覆っていること意味している。したがって、「断面の全域を覆っている」には、作業床30と下部ブロック20の内周面との間に不可避的に隙間が形成されてしまう場合が含まれることはもちろんである。
【0031】
次に、バンカ2の設置に用いられる仕口部40の構造について説明する。
仕口部40は、
図5に示すように、上部ケーシングの本体部11の上端部に複数設けられている。複数の仕口部40は、周方向に所定の間隔で並んで配置されている。各仕口部40は、作業床30を仮吊りするワイヤ43の係合及び天井板12を構成する鉄骨の接続が可能に構成されている。具体的には、仕口部40は、シャックルを取付け可能な孔が形成されている。この孔にシャックルを取付け、シャックルにワイヤ43を掛けることで、仕口部40にワイヤ43を係合させることができる。また、仕口部40は、鉄骨を接続することで、天井板12を固定することができる。
【0032】
次に、本実施形態に係るバンカ2を設置する方法について説明する。なお、バンカ2を設置するにあたり、上述の作業床30を地上で組立てておく。
図1に示すように、粉砕機1及びバンカ2が収容される鉄骨架構4を地上に組立てる。
【0033】
次に、鉄骨架構4の内部に粉砕機1を収容する。このとき、粉砕機1は、地面に打設された基礎に載置される。なお、
図1では、一例として、4台の粉砕機1が鉄骨架構4の内部に収容される例を図示している。
【0034】
次に、上部ブロック10と下部ブロック20とを接続することで、バンカ2を設置する。具体的には、まず、下部ブロック20をクレーン3で吊上げる。下部ブロック20を吊上げると、次に、吊上げた下部ブロック20を安定して組立を行うことができる所定位置に配置する。具体的には、吊上げた下部ブロック20を、クレーン3で下降させ、鉄骨架構4の内部に上方から収容する。そして、粉砕機1の上方に位置するように、下部ブロック20のフランジ部24を鉄骨架構4に載せかけて取り付けて、クレーン3との接続を解除する(下部ブロック設置工程)。このとき、地面から下部ブロック20の上端までの高さhは、略30m程度とされている。
【0035】
次に、
図2に示すように、上部ブロック10をクレーン3で吊上げる。このとき、上部ブロック10には天井板12が設けられていない。上部ブロック10を吊上げると、次に、吊上げた上部ブロック10を安定して組立を行うことができる所定位置に配置する。具体的には、吊上げた上部ブロック10をクレーン3で下降させ、鉄骨架構4の内部に上方から収容する。そして、下部ブロック20の上方であって、下部ブロック20の上端と上部ブロック10の下端とを接続可能な位置に、上部ブロック10を仮設置して、クレーン3との接続を解除する(上部ブロック設置工程)。
【0036】
次に、作業床30をクレーン3で吊上げる。吊上げた作業床30を上部ブロック10の上端に形成された開口から上部ブロック10の内部に収容する。上部ブロック10の内部に収容された作業床30は、上部ブロック10に仮吊りされる(吊下げ工程)。このとき、作業床30の第1板材32に形成された開口部32aは、開口部32aを上方から覆う塞ぎ板(図示省略)によって閉鎖されている。閉鎖板には、例えば鉄板が使用される。
詳細には、まず、作業床30がクレーン3につられている状態で、作業床30に設けられた吊りピース31cと、上部ブロック10の内周面に取り付けられた仕口部40とを、ワイヤ43で接続する。次に、作業床30を下降させていき、作業床30を仮吊りする。このとき、作業床30が下部ブロック20の内部に位置するように仮吊りする。詳細には、作業床30の上面に立った作業員が上部ブロック10と下部ブロック20とを接続する溶接作業等を行える高さに、作業床30を仮吊りする。具体的には、例えば、
図5に示すように、作業床30の上面と、上部ブロック10と下部ブロック20との溶接箇所Wとの距離L3が1m程度となるように、作業床30を仮吊りする。なお、作業床30を仮吊りするのに使用するワイヤ43等の吊り具は、作業床30を仮吊りする前に準備して、作業床30上に載置しておく。
【0037】
次に、上部ブロック10の上部に形成された開口の近傍に位置する鉄骨架構4から作業員が垂直梯子等(図示省略)を使用して、作業床30上へ移動する。そして、作業床30上の作業員が、上部ブロック10と下部ブロック20との位置合わせ作業及び、上部ブロック10の下端と下部ブロック20の上端とを溶接する作業を行う(接続工程)。
【0038】
位置合わせ作業及び溶接作業が終了すると、クレーン3で作業床30を、上部ブロック10の上端付近まで吊上げる。詳細には、仕口部40の固定部と同じ高さ位置まで上部ブロック10を吊上げる。そして、作業床30の吊りピース31cと仕口部40とを接続するワイヤ43を取り外すとともに、作業床30を構成する鉄骨ブロック31と仕口部40をボルト等で接続する(作業床固定工程)。これにより、バンカ2と作業床30とが固定される。
バンカ2と作業床30が固定されると、天井板12とクレーン3の接続を解除する。
【0039】
次に、作業床30の足場調整板33と鉄骨ブロック31との接続を解除及び作業床30の吊りピース31cを取り外し、足場調整板33を作業床30から撤去する。そして、足場調整板33を撤去した領域において、鉄骨ブロック31上に第2板材(図示省略)を取り付ける。第2板材には、例えば縞鋼板が使用される。鉄骨ブロック31と第2板材とは溶接で固定される。第2板材は、上部ブロック10の内周面に沿って設けられる。これにより、第1板材32と上部ブロック10の内周面との間に形成された隙間が、第2板材によって閉鎖される。次に、第1板材32に形成された開口部32aを閉鎖する閉鎖板(閉鎖部)を取り外し、開口を露出させる。このようにして、作業床30をバンカ2の天井板12に転用する。天井板12は、固体燃料を搬送するコンベア(図示省略)などのバンカ2の上部に設置される機器のメンテナンス時等に作業員が移動する歩廊として利用される。
【0040】
このようにして、バンカ2が設置される。
1つのバンカ2の設置が完了すると、次のバンカ2の設置に取り掛かる。このようにして、全てのバンカ2(本実施形態では4つ)を設置する。
【0041】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、吊下げられた作業床30の上の作業員が、下部ブロック20の上端と上部ブロック10の下端とを接続する。すなわち、吊下げられた作業床30が、下部ブロック20と上部ブロック10とを接続する作業(以下、「接続作業」という。)を行う作業員の足場となる。これにより、下部ブロック20の底部から接続箇所近傍まで足場を組み上げることなく、接続作業を行う足場を設けることができる。これにより、下部ブロック20の底部から足場を架設する場合と比較して、接続作業を行う足場を構成する材料の数を減少させることができる。したがって、バンカ2の設置コストを低減することができる。
【0042】
また、接続作業を行う足場を構成する材料の数を減少させることができるので、当該材料の搬入や、足場の架設及び解体に要する時間を短くすることができる。したがって、バンカ2の設置に要する期間を短くすることができる。
【0043】
また、本実施形態では、接続作業後に、作業床30を上部ブロック10に固定することで天井板12に転用している。これにより、作業床30と天井板12とを別々の部材で構成する場合と比較して、バンカ2を設置する際に用いる部材の数を減少させることができる。したがって、バンカ2の設置コストを低減することができる。
【0044】
また、本実施形態では、作業床30に開口部32aが形成され、作業床30を天井板12として利用する際に、当該開口部32aをバンカ2内に固体燃料を供給するための供給口として利用している。このように、作業床30を製作する際に供給口を形成することで、例えば、天井板12を設けた後に、天井板12に対して供給口を形成する場合と比較して、安定した状態で供給口を形成することができる。これにより、供給口を形成する作業を容易化することができる。
【0045】
また、本実施形態では、閉鎖板によって作業床30に形成された開口部32aを閉鎖した状態で接続作業を行っている。これにより、接続工程等において、開口部32aを介して、作業床30から部品や材料等を落下し難くすることができる。したがって、部品等の落下による下部ブロック20の損傷等の発生を抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、作業床30の仮吊りと作業床30の固定との両方を、仕口部40によって行っている。これにより、作業床30を仮吊りする部品と作業床30を固定する部品とを別々の部品で行う場合と比較して、バンカ2の設置に要する部品の数を低減することができる。したがって、バンカ2の設置コストを低減することができる。
【0047】
本実施形態では、作業床30が下部ブロック20の断面の全域を覆っている。これにより、接続工程等において、作業床30から部品や材料等を落下し難くすることができる。したがって、部品等の落下による下部ブロック20の損傷等の発生を抑制することができる。
【0048】
また、例えば、下部ブロック20の底部から足場を組み上げる場合には、下部ブロック20の内周面に沿って足場を架設する必要があるが、下部ブロック20は、縮径部を備えているため、内周面が湾曲している。したがって、湾曲する内周面に沿うように仮設足場を架設するため、足場を架設する作業が不安定になり、作業員の安全性が低下するという問題が生じる可能性がある。
一方、本実施形態では、作業床30を吊り下げているので、湾曲する内周面に沿うように仮設足場を架設する必要がなく、作業員の安全性を向上させることができる。
【0049】
また、下部ブロック20の底部から足場を組み上げる場合には、足場の架設時、足場材などの材料が下部に落下し、バンカ2の内部の損傷させる事態が生じる可能性がある。
一方、本実施形態では、作業床30を地上で組み立てているので、作業床30の材料が落下してバンカ2の内部の損傷させる事態は起こらない。したがって、バンカ2の損傷の発生を抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態では、作業床30を天井板12に転用する際に、足場調整板33を取り外して、第2板材を取り付けている。このように、実際に天井板12をバンカ2に固定する際に、バンカ2の内周面近傍の部材を取り付けることで、天井板12とバンカ2の内周面との間に形成される隙間を確実になくすことができる。
【0051】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、上部ブロック10と下部ブロック20とを接続する作業を行う際に、上部ブロック10に取り付けられた仕口部40に作業床30を吊り下げる例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、作業床30を鉄骨架構4に吊下げてもよく、また、作業床30をクレーン3に吊下げてもよい。さらに、上記実施形態では、バンカ2の形状を中空の円筒と円錐を組み合わせた形状として説明したが、中空の四角柱と四角錐を組み合わせた形状であってもよい。
【0052】
以上説明した実施形態に記載のバンカの設置方法は、例えば以下のように把握される。
本開示の一態様に係るバンカの設置方法は、内部に空間が形成され、前記空間に固体燃料を貯留するバンカ(2)の設置方法であって、内部に前記空間の下部が形成される下部ブロック(20)を設置する下部ブロック設置工程と、内部に前記空間の上部が形成される上部ブロック(10)を前記下部ブロック(20)の上方に設置する上部ブロック設置工程と、前記下部ブロック(20)の内部に位置するように、作業床(30)を吊下げる吊下げ工程と、前記吊下げ工程で吊下げられた前記作業床(30)の上の作業員が、前記下部ブロック(20)の上端と前記上部ブロック(10)の下端とを接続する接続工程と、を備えている。
【0053】
上記構成では、吊下げられた作業床の上の作業員が、下部ブロックの上端と上部ブロックの下端とを接続する。すなわち、吊下げられた作業床が、下部ブロックと上部ブロックとを接続する作業(以下、「接続作業」という。)を行う作業員の足場となる。これにより、下部ブロックの底部から接続箇所近傍まで足場を組み上げることなく、接続作業を行う足場を設けることができる。これにより、下部ブロックの底部から足場を架設する場合と比較して、接続作業を行う足場を構成する材料の数を減少させることができる。したがって、バンカの設置コストを低減することができる。
また、接続作業を行う足場を構成する材料の数を減少させることができるので、当該材料の搬入や、足場の架設及び解体に要する時間を短くすることができる。したがって、バンカの設置に要する期間を短くすることができる。
【0054】
また、本開示の一態様に係るバンカの設置方法は、前記接続工程の後に、前記作業床(30)を上昇させるとともに、前記上部ブロック(10)に前記作業床(30)を固定することで、前記作業床(30)を前記空間の上方を規定する天井板(12)とする作業床固定工程を備えている。
【0055】
上記構成では、作業床を上部ブロックに固定することで天井板として利用している。これにより、作業床と天井板とを別々の部材で構成する場合と比較して、バンカを設置する際に用いる部材の数を減少させることができる。したがって、バンカの設置コストを低減することができる。
【0056】
また、本開示の一態様に係るバンカの設置方法は、前記作業床(30)には、上下方向に貫通する開口(32a)が形成されている。
【0057】
上記構成では、作業床に開口が形成されている。これにより、作業床を天井板として利用する際に、当該開口をバンカ内に固体燃料を供給するための供給口として利用することができる。このように、作業床を製作する際に供給口を形成することで、例えば、天井板を設けた後に、天井板に対して供給口を形成する場合と比較して、安定した状態で供給口を形成することができる。これにより、供給口を形成する作業を容易化することができる。
【0058】
また、本開示の一態様に係るバンカの設置方法は、前記接続工程は、閉鎖部によって前記開口(32a)を閉鎖した状態で前記下部ブロック(20)と前記上部ブロック(10)とを接続する。
【0059】
上記構成では、閉鎖部によって開口を閉鎖した状態で接続作業を行っている。これにより、接続工程等において、開口を介して、作業床から部品や材料等を落下し難くすることができる。したがって、部品等の落下による下部ブロックの損傷等の発生を抑制することができる。
【0060】
また、本開示の一態様に係るバンカの設置方法は、前記上部ブロック(10)には、固定部及び吊下げ部を有する支持部(40)が設けられていて、前記吊下げ工程は、前記吊下げ部に対して前記作業床(30)を吊下げ、前記作業床固定工程は、前記固定部に対して前記作業床(30)を固定する。
【0061】
上記構成では、作業床の仮吊りと作業床の固定とを、両方支持部によって行っている。これにより、作業床を仮吊りする部品と作業床を固定する部品とを別々の部品で行う場合と比較して、バンカの設置に要する部品の数を低減することができる。したがって、バンカの設置コストを低減することができる。
【0062】
また、本開示の一態様に係るバンカの設置方法は、前記作業床(30)は、前記吊下げ工程で吊下げられた際に、前記下部ブロック(20)を水平面で切断した際の断面の全域を覆っている。
【0063】
上記構成では、作業床が下部ブロックの断面の全域を覆っている。これにより、接続工程等において、作業床から部品や材料等を落下し難くすることができる。したがって、部品等の落下による下部ブロックの損傷等の発生を抑制することができる。
なお、「断面の全域を覆っている」とは、一般的に用いられる手法で作業床を形成した際に、可及的に断面の全域を覆っていること意味している。したがって、「断面の全域を覆っている」には、作業床と下部ブロックの内周面との間に不可避的に隙間が形成されてしまう場合が含まれることはもちろんである。
【符号の説明】
【0064】
1 :粉砕機
2 :バンカ
3 :クレーン
4 :鉄骨架構
10 :上部ブロック
11 :本体部
12 :天井板
20 :下部ブロック
21 :円筒部
22 :第1縮径部
23 :第2縮径部
24 :フランジ部
30 :作業床
31 :鉄骨ブロック
31a :第1鉄骨
31b :第2鉄骨
31c :吊りピース
32 :第1板材
32a :開口部
33 :足場調整板
40 :仕口部
43 :ワイヤ