(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】テガビビントおよび関連化合物の製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4545 20060101AFI20240909BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240909BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240909BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240909BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240909BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240909BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240909BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240909BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20240909BHJP
A61K 9/26 20060101ALI20240909BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240909BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240909BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240909BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240909BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240909BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240909BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240909BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
A61K31/4545
A61K9/14
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/32
A61K9/20
A61K9/48
A61K45/00
A61K9/72
A61K9/26
A61P1/16
A61P11/00
A61P13/12
A61P17/00
A61P17/02
A61P35/00
A61P35/04
A61P37/06
(21)【出願番号】P 2020566910
(86)(22)【出願日】2019-05-31
(86)【国際出願番号】 US2019034950
(87)【国際公開番号】W WO2019232404
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-30
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519427066
【氏名又は名称】イテリオン・セラピューティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダイクストラ,スティーブン・デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ハベル,ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】ホリガン,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ハリソン,ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ノースラップ,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ラスロ,セオドア
(72)【発明者】
【氏名】グウッズ,ゲイリー
【審査官】今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0029450(US,A1)
【文献】特表2016-512547(JP,A)
【文献】特表2013-513625(JP,A)
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,2015年,Vol.58,pp.5854-5862
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/CA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.25mg/mlのテガビビントまたはその薬学的に許容される塩、
b.0.625
重量%のポロキサマー188、
および
c.10
重量%のソルビトール
を含
む組成物であって、
前記組成物は、テガビビントまたはその薬学的に許容される塩の粒子を含むナノ懸濁液の形態であり、
および
前記粒子が、レーザー回折を使用して測定した場合、500nm以下の有効D50および1.0マイクロメートル(μm)以下のD90を有
する、組成物。
【請求項2】
組成物を調製する
方法であって、
a)テガビビントまたはその薬学的に許容される塩
を、ポロキサマー188および許容される担体と混合
すること、
b)ローラーミルによってまたは高エネルギーミルを使用してステップ(a)の
結果物を粉砕すること、
および
c)ステップ(b)の
結果物にソルビトールを加えて、25mg/mlのテガビビントまたはその薬学的に許容される塩と、0.625
重量%のポロキサマー188と、10
重量%のソルビトールを含む組成物を生成すること
を含み、
前記
組成物は、テガビビントまたはその薬学的に許容される塩の粒子を含むナノ懸濁液の形態であり、
前記粒子が、レーザー回折を使用して測定した場合、500nm以下の有効D50および1.0マイクロメートル(μm)以下のD90を有
する、
方法。
【請求項3】
前記組成物は長期安定性を示す、請求項2に記載の
方法。
【請求項4】
前記組成物が、
(a)錠剤およびカプセルからなる群から選択される剤形、
(b)制御放出製剤、速溶性製剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、拍動性放出製剤、および混合即時放出および制御放出製剤からなる群から選択される剤形、
(c)筋肉内、皮下、静脈内および皮内注射を含む、吸入もしくは非経口投与に適した剤形、または
(d)(a)、(b)、および(c)の任意の組み合わせ
に製剤化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
癌または腫瘍転移の予防、治療または改善を必要とする哺乳動物において、癌または腫瘍転移を予防、治療または改善するための医薬の製造のための、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項6】
癌を治療するための医薬の製造のための、請求項1に記載の組成物の使用であって、前記医薬が、
1)薬学的に有効な量の前記組成物、および
2)薬学的に有効な量の少なくとも1つの追加の抗癌剤、
の組み合わせを含む、使用。
【請求項7】
前記追加の抗癌剤が、抗有糸分裂剤、代謝拮抗剤、HDAC阻害剤、プロテオソーム阻害剤、免疫療法剤、FLT-3 EGFR、MEK、PI3Kおよび他のプロテインキナーゼ阻害剤、LSD1阻害剤、およびWNT経路阻害剤、アルキル化剤およびDNA修復経路阻害剤、抗ホルモン剤、抗癌抗体、ならびに他の細胞毒性化学療法剤からなる群から選択される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
線維性疾患の治療および/または予防を必要とする哺乳動物において、線維性疾患を治療および/または予防するための医薬の製造のための、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項9】
前記線維性疾患が、肺線維症、デュピュイトラン拘縮、強皮症、全身性硬化症、強皮症様障害、皮膚硬化のない強皮症、肝硬変、間質性肺線維症、ケロイド、慢性腎疾患、慢性移植片拒絶、および他の瘢痕/創傷治癒異常、術後癒着、反応性線維症からなる群から選択される、請求項8に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、テガビビントおよび関連化合物の製剤、そのような製剤を作製する方法、およびそのような製剤を利用して様々な状態を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、米国で2番目に多い死因である。それは、新しい治療法の開発に複雑な課題を提示する。癌は、腫瘍塊の増殖をもたらす一連の遺伝的変化を経た悪性細胞の異常な成長および転移特性を特徴とする。
【0003】
ベータカテニン(β-カテニン)は、接着結合(AJ)を構成するタンパク質の複合体の一部である。AJは、細胞成長および細胞間の接着を調節することにより、上皮細胞層の形成および維持に必要である。β-カテニンはまた、アクチン細胞骨格を固定し、上皮シートが完成したときに細胞分裂の停止を引き起こす接触抑制シグナルの伝達に関与している可能性がある。
【0004】
Wnt/β-カテニン経路は、癌において役割を果たすことが示されている。異常なβ-カテニンシグナル伝達は、腫瘍形成において重要な役割を果たす。特に、結腸直腸癌は、β-カテニン経路に80%を超える変異があり、無秩序な発癌性シグナル伝達をもたらすと推定されている。異常なβ-カテニンシグナル伝達は、限定されないが、メラノーマ、乳癌、肺癌、結腸癌、肝臓癌、胃癌、骨髄腫、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、T細胞非ホジキンリンパ腫、結腸直腸および急性骨髄性白血病(AML)の癌を含む様々な種類の癌に関与することが示されている。さらに、異常なWnt/β-カテニンシグナル伝達は、骨粗鬆症、骨関節炎、多嚢胞性腎臓病、糖尿病、統合失調症、血管疾患、心臓病、過剰増殖性障害、神経変性疾患、および線維性疾患(限定されないが、特発性肺線維症(IPF)、デュピュイトラン拘縮、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)等を含む)を含む他の多くの障害に見出されている。骨髄増殖性腫瘍(MPN)は、体の血球を産生する骨髄細胞が発達して異常に機能する、密接に関連した血液悪性腫瘍のグループである。3つの主要な骨髄増殖性腫瘍は、真性多血症(PV)、本態性血小板血症(ET)、および原発性骨髄線維症(PMF)である。JAK2の遺伝子変異は、ほとんどのPV患者と、ETおよびPMF患者の50%に見られる。ベータカテニン経路は、多くの場合MPNで活性化され、これらの細胞の生存に必要である。
【0005】
テガビビントおよび関連化合物は、例えば、米国特許第8,129,519号に記載されている。テガビビントは、以下の構造式を有する。
【化1】
【0006】
テガビビントの分子式はC28H36N4O6S2である。
【0007】
テガビビントの分子量は588.20763amuである。
【0008】
テガビビントおよび関連化合物の安定で、容易に生体利用可能な製剤を提供することが当技術分野で必要であり、製剤は、非経口および吸入を含むがこれらに限定されない異なる投与経路を介した投与を可能にし、テガビビントで治療可能な様々な疾患の臨床試験および治療に好適であるように安定である。
【発明の概要】
【0009】
安定した非毒性テガビビント製剤を開発することは非常に課題が多く、困難であった。多数の製剤が開発され、試験が行われた。しかしながら、それらはバイオアベイラビリティが低く、かつ/または保存時に不安定であることが証明され、かつ/または非常に毒性が高いことが判明した。これらの製剤には、マイクロエマルジョン、固体懸濁液、リポソームベースの製剤、様々な経口製剤、およびIV製剤が含まれる。
【0010】
本発明者らは、予想外にかつ驚くべきことに、テガビビントのナノ懸濁液が効果的であり、該ナノ懸濁液は界面活性剤を含み、レーザー回折を使用して測定した場合、テガビビントの粒子が500nm以下の有効D50および1.0マイクロメートル(μm)以下のD90を有することを発見した。テガビビントの特に好ましい濃度は10~25mg/ml、最も好ましくは25mg/mlであることも発見された。好ましい界面活性剤は、好ましくは0.625%の濃度のポロキサマー界面活性剤(好ましくはポロキサマー188)であり、ナノ懸濁液は、好ましくはポリオール、より好ましくはソルビトールを含むべきである。
【0011】
したがって、最も好ましい製剤は、25mg/mlのテガビビント、0.625%のポロキサマー188、および10%ソルビトールを含む組成物であって、テガビビントがテガビビントの粒子を含むナノ懸濁液の形態であり、レーザー回折を使用して測定した場合に、粒子が500nm以下の有効D50および1.0マイクロメートル(μm)以下のD90を有する組成物である。
【0012】
したがって、一実施形態では、本発明は、
a)式I
【化2】
(式中、R
Aは水素であり、R
7およびR
8は独立して、HおよびSO
2NR
3R
4から選択され、R
7およびR
8のうちの1つは水素であり、NR
1R
2およびNR
3R
4は独立して、環に1個の窒素を含む6~15員ヘテロシクロアルキルであるか、またはその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体もしくは幾何異性体である)の化合物の粒子と、
b)界面活性剤と、を含み、
レーザー回折を使用して測定した場合、粒子が500nm以下の有効D50および1.0マイクロメートル(μm)以下のD90を有する、組成物を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、化合物の有効平均粒径は、約4900nm、約4800nm、約4700nm、約4600nm、約4500nm、約4400nm、約4300mm、約4200nm、約4100nm、約4ミクロン、約3900nm、約3800nm、約3700nm、約3600nm、約3500nm、約3400mm、約3300nm、約3200nm、約3100nm、約3ミクロン、約2900mm、約2800nm、約2700nm、約2600nm、約2500nm、約2400nm、約2300nm、約2200nm、約2100nm、約2000nm、約1900nm、約1800nm、約1700nm、約1600nm、約1500nm、約1400nm、約1300nm、約1200nm、約1100nm、約1000nm、約900nm、約800nm、約700nm、約600nm、約500nm、約400nm、または約300nmである。
【0014】
さらに、いくつかの実施形態では、化合物の有効平均粒径は、900nm未満、より好ましくは500nm未満、さらにより好ましくは300nm未満である。
【0015】
好ましい実施形態では、界面活性剤はポロキサマー界面活性剤である。
【0016】
別の好ましい実施形態において、ポロキサマー界面活性剤はポロキサマー188である。
【0017】
好ましい実施形態では、粒子組成物は、安定剤をさらに含む。
【0018】
好ましい実施形態では、安定剤は、糖、ポリオール、ポリソルベート界面活性剤、およびポリビニルピロリドン(PVP)からなる群から選択される。
【0019】
別の好ましい実施形態において、糖は、スクロースおよび/またはトレハロースからなる群から選択される。
【0020】
好ましい実施形態では、ポリオールは、ソルビトールおよび/またはマンニトールを含む。
【0021】
一実施形態では、提供される組成物中の化合物の濃度は、約1mg/ml~約100mg/ml、より好ましくは約10mg/ml~約50mg/ml、より好ましくは約10mg/ml~約25mg/ml、さらにより好ましくは約25mg/mlである。
【0022】
一実施形態では、本発明の組成物は、粉砕によって調製される。
【0023】
別の実施形態では、本発明の組成物は、リヨセル技術によって調製される。米国特許第7,713,440号は、リヨセル技術について記載している。米国特許第7,713,440号の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0024】
別の実施形態では、本発明の組成物は、米国特許第8,808,751号に記載されるような乾式粉砕手法によって調製することができる。米国特許第8,808,751号の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。粉砕媒体および好適な研磨化合物を適切に選択することにより、従来の原薬粒子からナノ粒子組成物を生成し、乾式粉砕装置で生成される小さな粒子の凝集を防ぐことが可能である。
【0025】
さらに別の実施形態では、本発明の組成物は、米国特許第6,537,579号に記載されているプロセス等の、担体としてヒト血清アルブミンを利用するプロセスによって調製することができる。米国特許第6,537,579号の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。このプロセスは、水溶性が低い化合物のナノ粒子組成物を作製するのに特に適している可能性がある。そのようなプロセスによって作製された組成物は、水溶性が低い生物学的に活性な化合物の効果的な投与を可能にし得る。
【0026】
別の実施形態では、ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)等のポリマーを含むナノ粒子組成物は、水溶性が低い生物学的に活性な化合物を送達することができる。米国特許第5,543,158号に示されるように、これらの組成物は長時間作用型ビヒクルとして設計することができる。米国特許第5,543,158号の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0027】
別の実施形態において、本発明の組成物は、生物学的に活性な化合物の溶解度を改善することに成功したポリマーミセルとして調製することができる。この技術を使用した市販製品であるGenexol-PMには、抗癌剤パクリタキセルが組み込まれており、2007年に韓国で承認された。
【0028】
一実施形態では、本発明は、以下のステップ(a)~(c)を含む組成物を調製するプロセスを提供する。
a)式I
【化3】
(式中、R
Aは水素であり、R
7およびR
8は独立して、HおよびSO
2NR
3R
4から選択され、R
7およびR
8のうちの1つは水素であり、NR
1R
2およびNR
3R
4は独立して、環に1個の窒素を含む6~15員ヘテロシクロアルキルであるか、
またはその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体もしくは幾何異性体である)の化合物の粒子を、
界面活性剤および許容される担体と混合して懸濁液を生成するステップ、
b)ローラーミルまたは高エネルギーミルを使用してステップ(a)の懸濁液を粉砕するステップ、ならびに
c)ステップ(b)の粒子にポリオールを加えるステップ。
【0029】
一実施形態では、許容される担体は、液体担体(例えば、水)である。
【0030】
一実施形態では、懸濁液は水性懸濁液である。
【0031】
別の実施形態では、組成物を調製するプロセスは、以下のステップ(a)~(b)を含む。
a)式I
【化4】
(式中、R
Aは水素であり、R
7およびR
8は独立して、HおよびSO
2NR
3R
4から選択され、R
7およびR
8のうちの1つは水素であり、NR
1R
2およびNR
3R
4は独立して、環に1個の窒素を含む6~15員ヘテロシクロアルキルであるか、
またはその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体もしくは幾何異性体である)の化合物の粒子を、
界面活性剤、ポリオール、および許容される担体と混合して懸濁液を生成するステップ、ならびに
b)ローラーミルまたは高エネルギーミルを使用してステップ(a)の懸濁液を粉砕するステップ。
【0032】
一実施形態では、許容される担体は、液体担体(例えば、水)である。
【0033】
一実施形態では、懸濁液は水性懸濁液である。
【0034】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は長期安定性を示す。
【0035】
好ましい実施形態では、本発明の組成物はナノ粒子組成物である。
【0036】
好ましい実施形態では、本発明の組成物中の式Iの化合物は、
以下の構造を有する。
【化5】
、
またはその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体もしくは幾何異性体。
【0037】
上記の式を有する化合物は、テガビビント(BC2059)としても知られている。
【0038】
一実施形態では、本発明の組成物は、(a)錠剤およびカプセルからなる群から選択される剤形、(b)制御放出製剤、速溶性製剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、拍動性放出製剤、および混合即時放出および制御放出製剤からなる群から選択される剤形、(c)筋肉内、皮下、静脈内および皮内注射を含む、吸入または非経口投与に適した剤形、ならびに(d)(a)、(b)、および(c)の任意の組み合わせに製剤化され得る。
【0039】
本発明の組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体、またはそれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0040】
別の実施形態において、本発明は、有効量の本発明の組成物を前記哺乳動物に投与することを含む、それを必要とする哺乳動物における癌または腫瘍転移を予防、治療または改善する方法を提供する。
【0041】
投与の方法は、いずれか特定の投与経路に限定されず、限定されないが、静脈内、非経口、経口、吸入(エアロゾル化送達を含む)、頬側、鼻腔内、直腸、病巣内、腹腔内、皮内、経皮、皮下、動脈内、心臓内、脳室内、頭蓋内、気管内、髄腔内投与、筋肉内注射、硝子体内注射、および局所適用法を含む。
【0042】
別の実施形態において、それを必要とする哺乳動物における癌または腫瘍転移を予防、治療または改善する方法は、追加の抗癌剤および/または癌療法(例えば、癌ワクチン、抗癌養子細胞療法および放射線療法)を投与することを含み得る。
【0043】
一実施形態では、追加の抗癌剤は、抗有糸分裂剤、代謝拮抗剤、HDAC阻害剤、プロテオソーム阻害剤、免疫療法剤、FLT-3 EGFR、MEK、PI3Kおよび他のプロテインキナーゼ阻害剤、LSD1阻害剤、およびWNT経路阻害剤、アルキル化剤およびDNA修復経路阻害剤、抗ホルモン剤、抗癌抗体、ならびに他の細胞毒性化学療法剤からなる群から選択される。
【0044】
別の実施形態において、本発明は、有効量の本発明の組成物を前記哺乳動物に投与することを含む、それを必要とする哺乳動物における線維性疾患を治療および/または予防する方法を提供する。
【0045】
一実施形態では、線維性疾患は、肺線維症、デュピュイトラン拘縮、強皮症、全身性硬化症、強皮症様障害、皮膚硬化のない強皮症、肝硬変、間質性肺線維症、ケロイド、慢性腎疾患、慢性移植片拒絶、および他の瘢痕/創傷治癒異常、術後癒着、および反応性線維症からなる群から選択される。
【0046】
一実施形態では、それを必要とする哺乳動物における線維性疾患を治療および/または予防する方法は、追加の抗線維化剤を投与することを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の製剤の1つの粒径分布(PSD)のグラフである。
【
図2】本発明の製剤の別の1つのPSDのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
定義
本明細書で使用される用語は、一般に、当技術分野において、本発明の文脈内で、および各用語が使用される特定の文脈において、それらの通常の意味を有する。本発明を説明するために使用される特定の用語は、本発明の記載に関して実行者にさらなる指導を与えるために、以下または本明細書の他の場所に記載される。特定の用語の同義語が提供される。1つ以上の同義語の列挙は、他の同義語の使用を排除しない。本明細書で論じられる任意の用語の例を含む本明細書の任意の場所での例の使用は、例示のみであり、本発明または任意の例示された用語の範囲および意味を決して制限するものではない。本発明は、本明細書に記載されている様々な実施形態に限定されない。
【0049】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合は、定義を含む本明細書に従うものとする。
【0050】
「テガビビント」という用語は、以下の構造を有する化合物を指す。
【化6】
。
「BC2059」という用語は、「テガビビント」と互換的に使用される。
【0051】
「長期保存」または「長期安定性」という用語は、医薬組成物が3ヶ月以上、6ヶ月以上、好ましくは1年以上保存できることを意味すると理解される。長期保存とは、医薬組成物が2~8℃または室温15~25℃で保存されることも意味すると理解されたい。
【0052】
長期保存に関して「安定」または「安定化」という用語は、医薬組成物に含まれる有効成分が、保存開始時の組成物の活性と比較して、その活性の20%、より好ましくは15%、さらにより好ましくは10%、最も好ましくは5%超を失わないことを意味すると理解されたい。
【0053】
「哺乳動物」という用語には、ヒトが含まれるが、これに限定されない。
【0054】
「薬学的に許容される担体」という用語は、毒性のない固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料、製剤補助剤、または任意の従来のタイプの賦形剤を指す。薬学的に許容される担体は、使用される投与量および濃度でレシピエントに対して無毒であり、製剤の他の成分と適合性がある。
【0055】
「治療」という用語は、哺乳動物における疾患に対する治療薬の任意の投与または適用を指し、疾患の抑制、その発症の抑止、疾患の緩和(例えば、退行を引き起こすこと、または失われたか、欠けているか、もしくは欠損した機能を回復もしくは修復することによる)、または非効率的なプロセスを刺激することを含む。この用語は、哺乳動物において、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ること、ならびに病態または障害の任意の治療を網羅することを含む。効果は、障害もしくはその症状を完全にもしくは部分的に予防するという点で予防的であり得、かつ/または障害および/もしくは障害に起因する有害作用の部分的もしくは完全な治癒という点で治療的であり得る。これには、(1)障害の素因があり得るが、まだ症状がない対象における障害の発症または再発の予防、(2)発症の抑止等の障害の抑制、(3)宿主が障害またはその症状にもはや苦しまないように、障害または少なくともその関連する症状を止めるかまたは終結させること、例えば、失われたか、欠けているか、もしくは欠損した機能を回復もしくは修復すること、または非効率的なプロセスを刺激することによって、障害またはその症状の退行を引き起こすこと、あるいは(4)障害またはそれに関連する症状を軽減、緩和、または改善することが含まれ、この場合、改善は、炎症、疼痛、および/または腫瘍サイズ等のパラメータの大きさの少なくとも減少を指すために広義で使用される。
【0056】
「治療有効量」という用語は、生体に投与されたときに、該生体に対して所望の効果を達成する量を指す。例えば、生体への投与のための本発明の組成物の有効量は、Wnt/β-カテニン経路を介して媒介される疾患のいずれかを予防および/または治療する量である。正確な量は、治療の目的に依存し、既知の技術を使用して当業者によって確認可能である。当技術分野で知られているように、全身対局所送達、年齢、体重、総体的な健康、性別、食事、投与期間、薬物相互作用、および状態の重症度の調整が必要な場合があり、日常的な実験を用いて当業者により確認可能であろう。
【0057】
「組成物」または「製剤」という用語は、当技術分野で従来的であり、治療、診断、または予防目的で対象に投与するのに適した、薬学的に許容される担体または賦形剤等の担体を通常含む混合物を指す。例えば、経口投与用の組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性製剤、経口リンスまたは散剤を形成することができる。「組成物」、「医薬組成物」および「製剤」という用語は互換的に使用される。
【0058】
「ナノ粒子組成物」という用語は、全てまたはほとんど全ての粒子が1000nM未満である組成物を指す。
【0059】
本発明の組成物
一実施形態では、本発明は、
a)式I
【化7】
(式中、R
aは水素であり、R
7およびR
8は独立して、HおよびSO
2NR
3R
4から選択され、R
7およびR
8のうちの1つは水素であり、NR
1R
2およびNR
3R
4は独立して、環に1個の窒素を含む6~15員ヘテロシクロアルキルであるか、
またはその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体もしくは幾何異性体である)の化合物の粒子と、
b)界面活性剤と、を含み、
レーザー回折を使用して測定した場合、粒子が500nm以下の有効D50および1.0マイクロメートル(μm)以下のD90を有する、組成物を提供する。
【0060】
D50は、粒径分布のメジアン径としても知られる累積分布の50%における粒子径の値を指す。換言すると、D50値が500nm以下の場合、粒子の50%が直径500nm未満であることを意味する。
【0061】
D90は、報告された粒径に満たない粒子のパーセンテージを指す。換言すると、D90値が1.0μm以下の場合、粒子の90%が直径1.0μm未満であることを意味する。
【0062】
いくつかの実施形態では、化合物の有効平均粒径は、約4900nm、約4800nm、約4700nm、約4600nm、約4500nm、約4400nm、約4300mm、約4200nm、約4100nm、約4ミクロン、約3900nm、約3800nm、約3700nm、約3600nm、約3500nm、約3400mm、約3300nm、約3200nm、約3100nm、約3ミクロン、約2900mm、約2800nm、約2700nm、約2600nm、約2500nm、約2400nm、約2300nm、約2200nm、約2100nm、約2000nm、約1900nm、約1800nm、約1700nm、約1600nm、約1500nm、約1400nm、約1300nm、約1200nm、約1100nm、約1000nm、約900nm、約800nm、約700nm、約600nm、約500nm、約400nm、または約300nmである。
【0063】
さらに、いくつかの実施形態では、化合物の有効平均粒径は、900nm未満、より好ましくは500nm未満、さらにより好ましくは300nm未満である。
【0064】
好ましい実施形態では、界面活性剤はポロキサマー界面活性剤である。
【0065】
別の好ましい実施形態において、ポロキサマー界面活性剤はポロキサマー188である。
【0066】
好ましい実施形態では、組成物はさらに安定剤を含む。
【0067】
好ましい実施形態では、安定剤は、糖、ポリオール、ポリソルベート界面活性剤、およびポリビニルピロリドン(PVP)からなる群から選択される。
【0068】
別の好ましい実施形態において、糖は、スクロースおよび/またはトレハロースからなる群から選択される。
【0069】
好ましい実施形態では、ポリオールはソルビトールおよびマンニトールを含む。
【0070】
一実施形態では、提供される組成物中の化合物の濃度は、約1mg/ml~約100mg/ml、より好ましくは約10mg/ml~約50mg/ml、より好ましくは約10mg/ml~約25mg/ml、さらにより好ましくは約25mg/mlである。
【0071】
テガビビントの特に好ましい濃度は、10~25mg/ml、最も好ましくは25mg/mlであり、好ましい界面活性剤は、好ましくは0.625%の濃度のポロキサマー界面活性剤(好ましくはポロキサマー188)であり、ナノ懸濁液は、好ましくはポリオール、より好ましくはソルビトールを含む。
【0072】
したがって、最も好ましい製剤は、25mg/mlのテガビビント、0.625%のポロキサマー188、および10%ソルビトールを含むナノ懸濁液である。
【0073】
一実施形態では、本発明の組成物は、粉砕、好ましくは湿式粉砕によって調製される。
【0074】
一実施形態では、本発明は、以下のステップ(a)~(c)を含む組成物を調製するプロセスを提供する。
a)式I
【化8】
(式中、R
Aは水素であり、R
7およびR
8は独立して、HおよびSO
2NR
3R
4から選択され、R
7およびR
8のうちの1つは水素であり、NR
1R
2およびNR
3R
4は独立して、環に1個の窒素を含む6~15員ヘテロシクロアルキルであるか、
またはその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体もしくは幾何異性体である)の化合物の粒子を、
界面活性剤および許容される担体と混合して懸濁液を生成するステップ、
b)ローラーミルまたは高エネルギーミルを使用してステップ(a)の懸濁液を粉砕するステップ、ならびに
c)ステップ(b)の粒子にポリオールを加えるステップ。
【0075】
一実施形態では、許容される担体は、液体担体(例えば、水)である。
【0076】
一実施形態では、懸濁液は水性懸濁液である。
【0077】
別の実施形態では、組成物を調製するプロセスは、以下のステップ(a)~(b)を含む。
a)式I
【化9】
(式中、R
a は水素であり、R
7およびR
8は独立して、HおよびSO
2NR
3R
4から選択され、R
7およびR
8のうちの1つは水素であり、NR
1R
2およびNR
3R
4は独立して、環に1個の窒素を含む6~15員ヘテロシクロアルキルであるか、
またはその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体もしくは幾何異性体である)の化合物の粒子を、
界面活性剤、ポリオール、および許容される担体と混合して懸濁液を生成するステップ、ならびに
b)ローラーミルまたは高エネルギーミルを使用してステップ(a)の懸濁液を粉砕するステップ。
【0078】
一実施形態では、許容される担体は、液体担体(例えば、水)である。
【0079】
一実施形態では、懸濁液は水性懸濁液である。
【0080】
別の実施形態では、本発明の組成物は、リヨセル技術によって調製される。米国特許第7,713,440号は、リヨセル技術について記載している。米国特許第7,713,440号の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0081】
別の実施形態では、本発明の組成物は、米国特許第8,808,751号に記載されるような乾式粉砕手法によって調製することができる。米国特許第8,808,751号の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。粉砕媒体および好適な研磨化合物を適切に選択することにより、従来の原薬粒子からナノ粒子組成物を生成し、乾式粉砕装置で生成される小さな粒子の凝集を防ぐことが可能である。
【0082】
さらに別の実施形態では、本発明の組成物は、米国特許第6,537,579号に記載されているプロセス等の、担体としてヒト血清アルブミンを利用するプロセスによって調製することができる。米国特許第6,537,579号の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。このプロセスは、水溶性が低い化合物のナノ粒子組成物を作製するのに特に適している可能性がある。そのようなプロセスによって作製された組成物は、水溶性が低い生物学的に活性な化合物の効果的な投与を可能にし得る。
【0083】
別の実施形態では、ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)等のポリマーを含むナノ粒子組成物は、水溶性が低い生物学的に活性な化合物を送達することができる。米国特許第5,543,158号に示されるように、これらの組成物は長時間作用型ビヒクルとして設計することができる。米国特許第5,543,158号の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0084】
別の実施形態において、本発明の組成物は、生物学的に活性な化合物の溶解度を改善することに成功したポリマーミセルとして調製することができる。この技術を使用した市販製品であるGenexol-PMには、抗癌剤パクリタキセルが組み込まれており、2007年に韓国で承認された。
【0085】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は長期安定性を示す。
【0086】
一実施形態では、本発明の組成物はナノ粒子組成物である。
【0087】
好ましい実施形態では、本発明の組成物中の式Iの化合物は、以下の構造を有する。
【化10】
、
またはその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体もしくは幾何異性体。
【0088】
この化合物は、テガビビントとしても知られている。
【0089】
本発明は、テガビビントおよびその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体または幾何異性体を含む製剤を包含する。
【0090】
テガビビントの水への溶解度は、2~10のpH範囲にわたって測定され、該範囲にわたって<0.25mcg/mLであることが分かった。
【0091】
有機溶媒では、テガビビントは示されるような溶解度を有する:DMSO(334μg/mL)、エタノール(260μg/mL)、メタノール(299μg/mL)、アセトン(1mcg/mL)、ジクロロメタン:エタノール(1:4)(1mg/mL)。
【0092】
一実施形態では、本発明の組成物は、(a)錠剤およびカプセルからなる群から選択される剤形、(b)制御放出製剤、速溶性製剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、拍動性放出製剤、および混合即時放出および制御放出製剤からなる群から選択される剤形、(c)筋肉内、皮下、静脈内および皮内注射を含む、吸入または非経口投与に適した剤形、ならびに(d)(a)、(b)、および(c)の任意の組み合わせに製剤化され得る。
【0093】
本発明の組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体、またはそれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0094】
本発明の製剤において使用される薬学的に許容される賦形剤は、2つ以上の方法で作用できる。例えば、分散剤の役割は、主に個々の粒子を分離したままにすること、すなわち凝集を最小限に抑えることである。しかしながら、この成分はまた、例えば、製剤の表面張力に変化を与える可能性もあり、粘度を低下させるように作用する可能性がある。
【0095】
薬学的に許容される賦形剤は、例えば、分散媒体、分散乳化剤、分散促進剤、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0096】
推進剤の例として、HFA-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)、HFA-227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)、それらの組み合わせ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
分散媒体は、例えば、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、グリセリン、それらの組み合わせ等であり得る。
【0098】
分散乳化剤(促進剤)は、例えば、H2O、オレイン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコール1000、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム、モノオレイン酸グリセリル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、乳化ワックス、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ポロキサマー、それらの組み合わせ等であり得る。
【0099】
分散促進剤の例として、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒプロメロース、エチレングリコールステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、モノステアリン酸グリセリル、レシチン、メグルミン、ポロキサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシル35ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシグリセリド、ピロリドン、ソルビタンエステル、ステアリン酸、ビタミンEポリエチレングリコールスクシナート、ポリエチレングリコール1000、ポビドン、それらの組み合わせ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
本発明の組成物は、限定されないが、静脈内、非経口、経口、吸入(エアロゾル化送達を含む)、頬側、鼻腔内、直腸、病巣内、腹腔内、皮内、経皮、皮下、動脈内、心臓内、脳室内、頭蓋内、気管内、髄腔内投与、筋肉内注射、硝子体内注射、および局所適用法を含む、全ての投与経路に好適であり得る
【0101】
本発明による医薬組成物はまた、1つ以上の結合剤、充填剤、潤滑剤、懸濁剤、甘味料、香味剤、防腐剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、および他の賦形剤を含み得る。そのような賦形剤は当技術分野で知られている。
【0102】
充填剤の例は、ラクトース一水和物、無水ラクトース、および様々なデンプンであり、結合剤の例は、様々なセルロースおよび架橋ポリビニルピロリドン、Avicel(登録商標)PH101およびAvicel(登録商標)PH102等の微結晶性セルロース、微結晶性セルロース、およびケイ化微結晶性セルロース(ProSolvSMCC(商標))である。
【0103】
圧縮される粉末の流動性に作用する薬剤を含む適切な潤滑剤は、Aerosil(登録商標)200などのコロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびシリカゲルである。
【0104】
甘味料の例は、スクロース、キシリトール、サッカリンナトリウム、チクロ、アスパルテーム、およびアクスルファム等の任意の天然または人工甘味料である。香味剤の例は、Magnasweet(登録商標)(MAFCOの商標)、バブルガム香味料、フルーツ香味料等である。
【0105】
防腐剤の例は、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸およびその塩、ブチルパラベン等のパラヒドロキシ安息香酸の他のエステル、エチルまたはベンジルアルコール等のアルコール、フェノール等のフェノール化合物、または塩化ベンザルコニウム等の四級化合物である。
【0106】
好適な希釈剤には、薬学的に許容される不活性充填剤、例えば、微結晶性セルロース、ラクトース、第ニリン酸カルシウム、サッカリド、および/または前述のいずれかの混合物が含まれる。希釈剤の例として、微結晶性セルロース、例えば、Avicel(登録商標)PH101およびAvicel(登録商標)PH102;ラクトース、例えば、ラクトース一水和物、無水ラクトース、およびPharmatose(登録商標)DCL21;第ニリン酸カルシウム、例えば、Emcompress(登録商標);マンニトール;デンプン;ソルビトール;スクロース;ならびにグルコースが挙げられる。
【0107】
適切な崩壊剤には、軽度に架橋したポリビニルピロリドン、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、および改質デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、およびそれらの混合物が含まれる。
【0108】
発泡剤の例は、有機酸と炭酸塩または重炭酸塩などの発泡性のカップルである。好適な有機酸には、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、およびアルギン酸、ならびに無水物および酸性塩が含まれる。好適な炭酸塩および重炭酸塩には、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、グリシン炭酸ナトリウム、炭酸L-リジン、および炭酸アルギニンが含まれる。あるいは、発泡性カップルの重炭酸ナトリウム成分のみが存在し得る。
【0109】
好ましい実施形態では、式Iの化合物は、以下の構造、
【化11】
またはその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体もしくは幾何異性体を有する。
【0110】
別の実施形態において、本発明は、有効量の本発明の組成物を前記哺乳動物に投与することを含む、それを必要とする哺乳動物における癌または腫瘍転移を予防、治療または改善する方法を提供する。
【0111】
別の実施形態において、それを必要とする哺乳動物における癌または腫瘍転移を予防、治療または改善する方法は、追加の抗癌剤および/または癌療法(例えば、癌ワクチン、抗癌養子細胞療法および放射線療法)を投与することを含み得る。
【0112】
一実施形態では、追加の抗癌剤は、抗有糸分裂剤、代謝拮抗剤、HDAC阻害剤、プロテオソーム阻害剤、免疫療法剤、FLT-3 EGFR、MEK、PI3Kおよび他のプロテインキナーゼ阻害剤、LSD1阻害剤、およびWNT経路阻害剤、アルキル化剤およびDNA修復経路阻害剤、抗ホルモン剤、抗癌抗体、ならびに他の細胞毒性化学療法剤からなる群から選択される。
【0113】
別の実施形態において、本発明は、有効量の本発明のナノ粒子組成物を前記哺乳動物に投与することを含む、それを必要とする哺乳動物における線維性疾患を治療および/または予防する方法を提供する。
【0114】
一実施形態では、線維性疾患は、肺線維症、デュピュイトラン拘縮、強皮症、全身性硬化症、強皮症様障害、皮膚硬化のない強皮症、肝硬変、間質性肺線維症、ケロイド、慢性腎疾患、慢性移植片拒絶、および他の瘢痕/創傷治癒異常、術後癒着、反応性線維症からなる群から選択される。
【0115】
本発明は、その多くの修正例および変形例が当業者に明らかであるため、例示のみを意図する以下の実施例においてより具体的に説明される。以下の実施例では、様々な成分の重量パーセントがw/vパーセントとして表されることを理解されたい。
【実施例】
【0116】
効果のある、すなわち、安定で毒性のないテガビビントの製剤に到達することは非常に課題が多く、困難であった。
【0117】
効果のあった製剤は、テガビビントのナノ懸濁液であり、該ナノ懸濁液は界面活性剤を含み、レーザー回折を使用して測定した場合、テガビビントの粒子が500nm以下の有効D50および1.0マイクロメートル(μm)以下のD90を有することが明らかになった。テガビビントの特に好ましい濃度は10~25mg/ml、最も好ましくは25mg/mlであることも発見された。好ましい界面活性剤は、好ましくは0.625%の濃度のポロキサマー界面活性剤(好ましくはポロキサマー188)であり、ナノ懸濁液は、好ましくはポリオール、より好ましくはソルビトールを含むべきである。
【0118】
実施例の項では、最初に、様々な理由から最終的には失敗に終わった、テガビビントを製剤化するための複数の実験について記載する。次に、この項では、様々な分散剤とともに水溶液に懸濁した場合にテガビビントをローラー粉砕できることを実証した粉砕の実現可能性の実験について記載する。しかしながら、ローラー粉砕した場合でも、多くのテガビビントの製剤は依然として成功しなかった。
【0119】
最後に、特許請求されるテガビビントのナノ懸濁液を含む成功した実験について記載する。
【0120】
失敗した実験
実施例1
テガビビントのマイクロエマルジョン製剤は非常に毒性が高かった
テガビビントのマイクロエマルジョン製剤を開発した。製剤は、20mg/mlのBC2059、10%Tween(ポリソルベート80)、30%エタノール、50%プロピレングリコール(PG)および10%D-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸塩を含んでいた。
【0121】
製剤の良好な安定性が観察されたが、該製剤はげっ歯類に対して非常に毒性が高く、したがってそれ以上追求されなかった。
【0122】
実施例2
リポソームベースの製剤は不安定であった
予備試験に基づいて、BC2059の2つのリポソーム製剤が100mlでのスケールアップおよび安定性評価のためのリードとして選択された。
【0123】
1つ目は、脂質と薬物の比が15:1の100%ePC製剤であった。
【0124】
他方のリード製剤は、脂質と薬物の比が10:1の80:20%のePC:LysoPCリポソームを含んでいた。
【0125】
これらの製剤は両方とも、5℃で保存したときに不安定であることが証明された(沈殿が観察された)。さらに、製剤は凍結時にも不安定であった。
【0126】
実施例3
経口およびIV製剤は失敗であった
大豆レシチン、PEG200、PEG400、PG、およびTPGSを含むテガビビントの経口製剤が最初にリード経口製剤として選出された。しかしながら、このリード経口製剤は、イヌの試験で低いバイオアベイラビリティを示したため、追求されなかった。
【0127】
さらなるスクリーニングが行われ、IVベースの製剤が次のリードとして選出された。このIV製剤は、油相(植物油および可溶化剤としてのポリソルベート80(PS80))と乳化剤としての大豆レシチンで構成されていた。製剤は以下の成分を含んでいた(全ての数字は重量%である)。
【0128】
BC2059:1%、PS80:10%、Miglyol812:12%、大豆レシチン(LIPOID S-100):12%、プロピレングリコール(PG):50%、脱イオン水:適量まで。
【0129】
この製剤は、良好な物理的および化学的安定性を示すと同時に、損失を最小限に抑えながら0.2ミクロンで濾過できる可能性を示した。しかしながら、げっ歯類試験で高い毒性を示したため、この製剤はこれ以上追求されなかった。
【0130】
テガビビントのナノ懸濁液に関する実験
実施例4
粉砕の実現可能性
最初に、原則として粉砕が可能であるかどうかを判断した。実験により、可能であることが示された。
【0131】
粉砕の実現可能性の実験は、静脈内投与の適合性のために選択された、以下の分散剤とともに水溶液中に5%(50mg/mL)で懸濁したテガビビントの実験室規模のバッチをローラー粉砕することによって開始した。
・ポリソルベート20(0.5%)
・ポロキサマー188(0.5%)
・ポリビニルピロリドン、K17(1%)
・ポリビニルピロリドン、K17(1%)およびデオキシコール酸ナトリウム(0.25%)
・レシチン(1%)
【0132】
直径0.5mmのイットリア安定化ジルコニア(YTZ)粉砕媒体を約10mLの媒体負荷で用いて5mLの試験懸濁液をそれぞれ粉砕し、レーザー回折による粒径分布分析のために定期的にサンプリングした。12時間の粉砕後、ポロキサマーおよびポリビニルピロリドン懸濁液のみが均一なナノ粒子分散液の生成を示し、レシチン懸濁液は明らかなサイズ縮小を示さず、ポリソルベート懸濁液は粉砕容器内でBC2059の固化を示し、ポリビニルピロリドン/デオキシコール酸ナトリウム懸濁液は高アスペクト比の結晶を示した。非公式の粒径安定性のために、終了した試験懸濁液を、制御されていない周囲条件で4日間放置した。試験した全ての懸濁液は、ある程度の粒子成長を示し、粒子の伸びは、ポリビニルピロリドン/デオキシコール酸ナトリウム懸濁液で最初に見られたものと同様であった。
【0133】
結晶成長を防ぐために、ポロキサマーとポリビニルピロリドン(PVP)の両方を分散剤として使用し、スクロース、ソルビトール、およびトレハロースをそれぞれ10%で組み込んで、5%(50mg/mL)のテガビビントで調製物を作製した。粉砕および保存は、最初の実現可能性の実験と同様の条件下で行った。全ての調製物をナノ懸濁液に粉砕したが、いずれの添加剤も結晶成長の阻害に識別可能な効果を有するとは考えられなかった。さらなる実験のために、ポロキサマー188を一次分散剤として選択した。
【0134】
さらなる材料をポロキサマー188中に5%(50mg/mL)で粉砕した。規模の拡大を促進するために、ポロキサマー含有量を1%から1.5%に増加して均一なナノ懸濁液を確保した。粉砕されたナノ懸濁液を希釈して、第三者機関が行う初期薬物動態実験に使用するための2%(20mg/mL)BC2059/0.6%ポロキサマー/0.9%塩化ナトリウム製剤を生成した。残りの粉砕された濃縮材料は、見かけの結晶成長を防ぐ上での凍結乾燥の有効性を試験するために保存した。
【0135】
次いで、この製剤を、実施例5に記載の実験で試験した。
【0136】
実施例5
凍結乾燥の実現可能性
この実験は、原則として凍結乾燥が実現可能であるかどうかを判断するためのものであった。原則として、テガビビントは凍結乾燥できることが示された。
【0137】
5%(50mg/mL)テガビビントポロキサマー水性懸濁液を、可能性のある様々な凍結保護剤含有希釈剤で希釈して、2%(20mg/mL)テガビビント、0.6%ポロキサマー、および以下の最終濃度になるようにした。
・スクロース(10%)
・マンニトール(5%)
・スクロース(5%)およびマンニトール(2.5%)
・ソルビトール(10%)
・ソルビトール(5%)およびマンニトール(2.5%)
・トレハロース(10%)
・トレハロース(5%)およびマンニトール(2.5%)
【0138】
5mL血清バイアルに各調製物を2mLまで充填し、-40℃および100mTorrの圧力で凍結乾燥した。乾燥したバイアルを精製水に再懸濁し、粒径分布について分析した。試験した系のうち、10%ソルビトールと10%トレハロースの再懸濁物のみが、凍結乾燥前の懸濁液に匹敵する粒径分布に戻った。さらなるナノ懸濁液を粉砕し、成分濃度を10%(100mg/mL)BC2059および3%ポロキサマーに増加して、粉砕効率を高め、より大規模なバッチ製造を容易にした。
【0139】
以下の懸濁液は、低温示差走査熱量測定(DSC)分析のために粉砕された材料から調製した。
・2%(20mg/mL)BC2059と0.6%ポリソルベートおよび10%ソルビトール
・2%(20mg/mL)BC2059と0.6%ポリソルベートおよび10%トレハロース。
【0140】
25℃から-40℃まで行い、次いで1℃/分の速度で25℃まで戻したDSC分析により、以下の懸濁液のガラス転移値を得た。
・ソルビトール懸濁液:-18℃
・トレハロース懸濁液:-33℃
【0141】
懸濁液を凍結乾燥し、5mLバイアルに2mLを充填し、-30℃/150mTorrで一次乾燥し、-16℃/550mTorrで二次乾燥した。非公式には、凍結乾燥サンプルは、周囲実験室条件で最大1週間、再現性のある均一なサイズ分布を有し、物理的に安定していることが示された。後続実験のために、トレハロースではなくソルビトールが選択されたが、それは前者のガラス転移温度がより高く、過去の毒性データの利用可能性がより高いためであった。
【0142】
試験バッチを粉砕し、-24℃/250mTorrで一次乾燥し、-16℃/500mTorrで二次乾燥して凍結乾燥し、動物実験用の材料を提供した。粉砕は、より大きなバッチサイズを容易にし、粉砕効率を高めるために、5%のポロキサマー含有量で20%(200mg/mL)のテガビビントを用いて行われた。乾燥製剤には、カールフィッシャー法により約1%の水が測定され、精製水で再構成した場合、24時間後に適切な粒径の安定性を示した。
【0143】
次いで、これらの製剤を、実施例6に記載の実験で試験した。
【0144】
実施例6
非臨床毒性/薬物動態、バッチ生産
この実験の目的は、テガビビントの凍結乾燥製剤を試験することであった。
【0145】
それぞれが15gのテガビビントを代表する、4つの連続して調製した懸濁液のサブバッチを、負荷を増加させて粉砕し、製品収率を高めるために11.43%ソルビトール水溶液の希釈剤を使用して粉砕媒体から抽出し、2%(20mg/mL)テガビビント/0.5%ポロキサマー/10%ソルビトールの懸濁液を得た。
【0146】
5mLバイアルに2mLのサブバッチを充填し、以前に最適化された条件で凍結乾燥した。いくつかのバイアルは、おそらくはバッチスケール拡大のために、メルトバックの兆候を示したが、乾燥された材料は、均一なナノ懸濁液に容易に再懸濁した。バイアルの各サブバッチの中間アッセイ、PSD、および水の結果が許容できるバッチ間の一致を示したため、4セットのバイアルを組み合わせて、安定性試験および動物試験で使用するための単一バッチとして処理した。以下の表1を参照されたい。
【表1】
【0147】
粉砕中、安定して気泡が生成され、それによって、さらなる粉砕が妨げられ、永久的な粒子の凝集が生じたために、サブバッチの1つが失敗に終わった。それを廃棄して、置き換えるための別のバッチを作製した。失敗したバッチ生産では、粉砕中のPSDサンプリングを容易にするために、媒体ボトルの代わりに250mL血清ボトルを使用した。発泡は、ボトルの寸法の違いによるものであり、それが見かけ上は空気の巻き込みを可能にし、バッチの失敗をもたらす結果となった。全てのバッチの抽出中に、暗色の不溶性粒子を粉砕媒体から分離した。この材料を後にXRPDにより分析したところ、テガビビントの融合凝集体であることが分かった。
【0148】
1ヶ月の安定性の時点で、複合バッチは、API(原薬)の熟成または結晶成長ではなく、ポロキサマーの凝集に起因する有意な粒径の増加を示した。被験物質を再利用して使用することができる、実験に適した経路を決定する試みがなされた。サンプルを再構成し、再密封し、凝集体を減少させることなく最大3時間50℃に加熱した。再懸濁したバイアルを徐放性液体サイクルを使用して121℃で10分間オートクレーブ処理し、周囲条件まで冷却すると、許容可能な粒径分布に戻った。
【0149】
この種の処理は、その先に好適な経路を示さなかったので、生成物を再製剤化することが決定された。
【0150】
実施例7
組成物の再製剤化および凍結乾燥は最終的に失敗したが、ポロキサマーを含む液体懸濁液は有望であると考えられた
この実験では、テガビビントのさらなる再製剤化組成物を試験した。最終的に、凍結乾燥はうまく行かなかったが、液体懸濁液(ナノ懸濁液)は有望な結果を示した。
【0151】
最初に試験した分散剤のいくつかで実現可能な規模のバッチが作製されたが、20%に増加させた(200mg/mL)テガビビント濃度を使用した。この変更が5%(5mg/mL)では見込みのなかった分散剤を実現可能にした可能性がある。以下の分散剤を、5%ポロキサマー188対照とともに試験した。
・ポリソルベート20(2%)
・ポリビニルピロリドン(2%)
・ポリビニルピロリドン(2%)およびデオキシコール酸ナトリウム(1%)
・ポリビニルピロリドン(2%)およびポリソルベート20(2%)
・部分加水分解したポリビニルアルコール(5%)
【0152】
12時間の粉砕後、ポリソルベート調製物は、良好な均一性を有する対照よりも迅速な粉砕を示した。ポリビニルピロリドン調製物は、おそらくはポリビニルピロリドンの凝集体または残留物である非結晶性粒子の存在を示し、これは粒径分布測定に有意な影響を与えなかったが、光学顕微鏡で見ることができた。ポリビニルアルコール調製物は、おそらくは分散剤の粘度のために、有意なサイズ縮小をもたらさなかった。二成分ポリビニルピロリドン調製物はかなりの凝集体を示したが、ポリビニルピロリドン/デオキシコール酸ナトリウム調製物は、さらなる開発で有用であることが証明されるかもしれないと判断された。
【0153】
ポリビニルピロリドンおよびポリソルベート20調製物、ならびに修飾ポリビニルピロリドン(1%)およびデオキシコール酸ナトリウム(0.5%)懸濁液を、以下の凍結保護剤に関する凍結乾燥開発実験で使用した。
・ソルビトール(10%)
・スクロース(10%)
・トレハロース(10%)
・マンニトール(5%
・マンニトール(5%)
・ソルビトール(5%)およびマンニトール(2.5%)
・スクロース(5%)およびマンニトール(2.5%)
【0154】
凍結乾燥は、-15℃のアニーリングステップを用いて、-36℃/100mTorrおよび-15℃/500mTorrで行った。再懸濁すると、10%スクロース調製物のみが適切な粒径の回復を示した。追加の懸濁液は、1%ポリビニルピロリドン/0.5%デオキシコール酸ナトリウム調製物を使用して粉砕したが、pHを約7.0に維持するためにクエン酸緩衝液が含まれていた。粉砕した懸濁液調製物は、放置すると可逆的にゲル化し、それを以下の凍結保護剤と組み合わせた。
・スクロース(15%)
・25mg/mLのスクロース(10%)BC2059
・ソルビトール(10%)
・ラクトース(5%)
・スクロース(5%)およびソルビトール(5%)
【0155】
APIと比較して高濃度のスクロースは、最良の粒径保護を提供することが示され、製剤はメルトバックの影響を受けやすいように見えたが、25℃/60%RHおよび40℃/75RHで実施された加速安定性試験は、製剤が4週間にわたって良好な物理的安定性を有していたことを示した。
【0156】
しかしながら、希釈試験において、製剤は、投与に使用された生理食塩水希釈剤中で凝結することが見出され、ポリビニルピロリドン/デオキシコール酸ナトリウム製剤の薬物動態学的放出は、最初に試験したポロキサマー製剤のものよりも有意に低かった。
【0157】
ポロキサマー188を含むナノ懸濁液
200mg/mL(20%)BC2059をポロキサマー188中に粉砕し、凍結乾燥の最適化のために第三者機関に提出した。懸濁液は、凍結乾燥実験で使用した以下の表2に列挙される一連の凍結保護剤と組み合わせた。最初、2.5%デキストラン/2.5%ソルビトール調製物は、再構成した時に最も有望な粒径の保持を示したが、40℃/75%RHで1ヶ月後に、ナノ懸濁液を保持した唯一の調製物は未乾燥対照であった。
【0158】
したがって、これらの試験は、評価された条件下では凍結乾燥がうまく行かないことを示した。この知見はまた、驚くべきことに、液体懸濁液が以前に観察されたよりも安定であったことを示した。初期の粒子伸長は、即時的な限定された現象であり、分散剤の初期の過飽和が、粉砕の停止後にわずかな再沈殿を引き起こしたことから起こり得る結果であると判断された。以下の表2を参照されたい。
【表2】
【0159】
実施例8
照射の実現可能性
開発された製剤分散剤系(ポリビニルピロリドン/デオキシコール酸ナトリウムおよびポロキサマー)の両方を使用して、照射による最終滅菌の実現可能性を決定した。両方のサンプルは、両方の照射の実現可能性のために調製した。両方の製剤のサンプルが、実験動物における並行薬物動態(PK)試験のために提供され、そのために、薬物のバイオアベイラビリティがポロキサマーと関連しているかどうかを決定するために、ポリビニルピロリドン/デオキシコール酸ナトリウム製剤とともに使用されるポロキサマー188を含有する希釈剤も提供された。PK試験の結果は、バイオアベイラビリティがポロキサマー含有量と驚くほど相関していることを示した。
【0160】
両方の製剤の凍結バイアルが照射のために送られた。ガンマ線照射と電子ビーム照射の両方を、15kGyおよび25kGyの両方で試験した。バイアルは凍結条件下で処理されたが、照射中の潜在的な解凍をシミュレートするための最悪のシナリオとして5℃でも処理した。劣化は温度とは無関係であったが、放射線の種類に関係なく、線量と相関していると考えられた。
【0161】
しかしながら、その後の安定性データによって指示される最初の粒径試験では、広範な粒子の凝集が示された。以前に成功した凍結/解凍試験に基づくと、凝集は照射に起因していた。しかしながら、その後、別の懸濁液に対する凍結/解凍サイクルで同様の凝集が示された。
【0162】
凍結保存は予測不可能な凝集をもたらし、GLPバッチを進めるための選択肢ではないと判断された。バイアルは照射前に-20℃の冷凍庫に保存されており、棚の異なる場所にあるバイアル間で異なる凍結速度を示した可能性がある。
【0163】
実施例9
前臨床での生成
25mg/mLのテガビビントナノ懸濁液の生成は、最も清浄な条件を使用して行われた。すなわち、無菌性は保証されないが、微生物汚染を最小限に抑えるために様々な管理と予防措置が講じられた。
【0164】
微生物汚染だけでなく発熱性汚染も最小限に抑えるために、注射用滅菌水を使用して調製物を作製した。全ての賦形剤はUSP/NFグレードであった。全ての製品接触用品は、オートクレーブで滅菌するか、加熱に適さない場合は70%イソプロパノールで消毒した。全ての曝露調製は、無菌処理技術を使用して、ISO5品質の層流フード内で行われた。前臨床バッチの製造に使用されたAPIは、使用前に30kGyでガンマ線照射した。
【0165】
実施例10
ラット被験物質の調製
ラット毒性試験で投与するために、テガビビント懸濁液の1,600グラム(公称)バッチを調製した。
【0166】
生成は、濃縮(200mg/mL)BC2059ナノ懸濁液の200グラムバッチから開始した。10gのポロキサマー188を250mL血清ボトル内で150グラムの水に溶解した。200グラムのYTZ粉砕媒体を加え、ボトルに栓をして密封した。バッチサイズが小さいことを考慮して、アセンブリ全体およびポロキサマー溶液の調製物を121℃で15分間オートクレーブ処理して、バイオバーデンを最小限に抑えることができた。照射されたAPI(原薬)40グラムを加え、再びボトルに栓をして密封した。この調製物をローラーミル上で転がして、カスケードする媒体の破壊角度が視覚的に決定して約45度になるようにした。
【0167】
空気の巻き込みにより配合が失敗する傾向があるため、使用される粉砕媒体の量は、200グラムバッチの懸濁液を処理するために通常使用される量の約半分であることに留意した。使用したボトルも、ヘッドスペースを最小限に抑えるために通常よりも小さかった。週末にかけて粉砕を進行させ、隔壁を通した皮下注射針により懸濁液をサンプリングした。
【0168】
粒径分布のD90は0.23ミクロンであり、抽出に進むのに十分であると判断された。抽出は、1240グラムの水中の160グラムのソルビトールのオートクレーブ溶液と、60ミクロンの焼結ガラスフリットを含むガラス製圧力漏斗を使用して行った。抽出した懸濁液を混合し、5.00mLに設定した容積式ピペットを使用して、オートクレーブ処理した10mLガラスバイアルに充填した。295個のバイアルを充填し、栓をして密封し、92%の収率を示した。バッチは使用するまで5℃で保存した。
【0169】
ナノ懸濁液は、ラットに投与する準備ができていると考えられた。
【0170】
実施例11
ブタ被験物質の調製
ブタ毒性試験で投与するために、テガビビントの10,400グラム(公称)バッチを調製した。生成は、濃縮(200mg/mL)BC2059ナノ懸濁液の1,300グラムバッチから開始した。65gのポロキサマー188を2000mL媒体ボトル内で975グラムの水に溶解した。1000グラムのYTZ粉砕媒体をすすぎ、滅菌のために袋に入れた。媒体と溶液を別々にオートクレーブ処理し、媒体ボトル内で260グラムの滅菌APIと組み合わせた。この調製物をローラーミル上で転がして、カスケードする媒体の破壊角度が視覚的に決定して約45度になるようにした。粒径分布のD90が0.33であり、抽出に進むのに十分であると判断されるまで、合計約3日間、粉砕を進行させた。520gのソルビトールを4030gの水に溶解することによって作製されたソルビトール溶液の2つのアリコートをオートクレーブ処理し、ラット試験のバッチで行われたのと同様に、粉砕懸濁液を抽出するために使用した。
【0171】
明らかに粉砕されていない、またはより大きな粒径のAPIが60ミクロンのフィルターフリットを詰まらせ、媒体の除去およびフリットのすすぎを余儀なくされたため、抽出の難しさが指摘された。抽出した懸濁液を混合し、10.0mLに設定した容積式ピペットを使用して、オートクレーブ処理した10mLガラスバイアルに充填した。970個のバイアルを充填し、栓をして密封し、93%の収率を示した。バッチは使用するまで5℃で保存した。
【0172】
ナノ懸濁液は、ブタに投与する準備ができていると考えられた。
【0173】
実施例12
オートクレーブは劣化に有意な影響を与えなかった
前臨床試験用の被験物質の生成と併せて、テガビビント懸濁液の2つのバッチを調製した。1つのバッチはソルビトールを使用して作製し、もう1つはソルビトールを使用せずに作製した。5℃、25℃/60%RH、および40℃/75%RHで保存したこれらの懸濁液の安定性評価は、懸濁液が全ての条件で適度に安定であることを示した。
【0174】
ブタ試験バッチからのバイアルの一部を、液体サイクルとバッチ515-76およびFID5910と表される製剤を使用して、121℃で20分間オートクレーブ処理した。
【0175】
安定性データにより、オートクレーブ処理は劣化に有意な影響を与えなかったが、粒径を増大させると考えられたことが示された。
【0176】
実施例13
ナノ懸濁液の工学的試験
臨床用生産を見越してテガビビントのナノ懸濁液のエンジニアリングバッチをいくつか調製したが、コンプライアンスを維持し、損失と汚染を最小限に抑えるために、プロセスに対する特定の変更が必要であった。一部は安全上の理由から、また一部は抽出目的でより大きな表面積のフィルターを組み込むために、抽出に使用されていたガラス製圧力漏斗を、55μmのステンレス鋼フィルターエレメントが装着されたステンレス鋼インラインフィルターハウジング(Pall)に置き換えた。
【0177】
以前は窒素を使用していた抽出装置の加圧は、蠕動ポンプを使用して行った、希釈剤と分散剤の両方をオートクレーブ処理ではなく滅菌濾過するための手段として、このポンプがプロセスに組み込まれたためである。計量された蠕動ポンプユニットをバイアルの充填に用いた。オートクレーブにより製剤の粒径が増大する傾向を考慮して、最初のエンジニアリングバッチ(RD4050-5)がガンマ線照射のために提出された。
【0178】
安定性の結果は、以前のバッチと同様に最小限の劣化および安定性を示した。
【表3】
【0179】
予備的な粒子試験に基づくと、配合物は、処理されるといくつかのより大きな粒子を含み、それらはレーザー回折粒径測定に有意な影響を与えるほど密集しているようには見えなかったが、USP<788>試験に影響を与えるには十分に有意であった。微粒子を軽減するために、より大きな粒子を保持するのに十分小さいが、テガビビントアッセイに影響を与えるほど小さくはない多孔度を有する「研磨」フィルターが提案された。しかしながら、懸濁液を濾過するための以前の試みは、重大なアッセイの損失をもたらした。したがって、テガビビントナノ懸濁液の濾過適合性について、Pall Corporationのいくつかのメンブレンを評価する契約を同社と結んだ。
【0180】
フィルターの目詰まりおよび故障の前にどれだけの材料を処理できるかを決定するために使用される圧力フィードバックポンプシステムとともに、Pallから入手可能な様々な47mmメンブレンを使用して、最も清浄ではない懸濁液の一部を濾過した。以下のメンブレンタイプを使用し、濾液をPSDおよびアッセイについて試験した。
【表4】
【0181】
6ミクロンのHDCIIメンブレンが、ナノ懸濁液のアッセイ値または粒径分布のいずれにも識別可能な影響を示さなかったため、最良の候補として選択された。しかしながら、Pallフィルターの比較的長いリードタイムは、臨床材料のタイムリーな生産における制限要因であった。したがって、代替案が求められ、Sartorius 8ミクロンポリプロピレンフィルターが、滅菌検証の目的でバイオバーデンを決定する際に使用される2つのエンジニアリングバッチの製造に使用された。
【0182】
残念ながら、2つのバッチのアッセイ値は濾過によって悪影響を受けた(それぞれ80.9%LCおよび91.9%LC)。それらは最終的な臨床バッチプロファイルを表していなかったため、バッチを廃棄し、Pall HDCメンブレンフィルターを使用して別のエンジニアリングバッチを処理した。このバッチは90~110%LC内にあり、Pall HDCフィルターが、バイアルを充填する前の製造プロセスの最終ステップに組み込まれた。
【0183】
実施例14
雌Sprague-Dawleyラットへの緩徐な静脈内ボーラス投与後のテガビビントの薬物動態試験
この試験の目的は、雌のSprague-Dawleyラットにテガビビントを単回、静脈内に緩徐ボーラス投与した後のテガビビントの薬物動態を調べることであった。
【0184】
この試験は、表5に要約されるように、連続サンプリングによる並行群間デザイン(n=4/群)を用いて行われた。
【表5】
ソース:この試験に使用したSprague-Dawleyラットは、Advinus Therapeutics Ltd.(Bengaluru,India)の社内動物資源施設から入手した。動物は、投薬日に約10~11週齢であった。
【0185】
識別:各動物は、ケージカードに示された一意の識別番号と、動物の体に付けられたウコン溶液のマーキングにより識別した。ケージカードは、試験番号、識別番号、種および系統、用量および性別により各ケージを識別した。
【0186】
飼育および環境:投薬前の3日間、ラットを試験領域の条件に馴化させた。動物をポリプロピレンケージに収容し(ケージごとに1匹)、12時間の明期と12時間の暗期のサイクルで制御された環境条件に維持した。部屋の温度および湿度は、それぞれ22±3℃および40~70%に維持した。部屋には、1時間当たり10~15回の新鮮な空気の換気サイクルを行った。
【0187】
食餌および水:実験動物には、標準的なペレット状の餌(Teklad Certified(2014C)Global 14% Protein Rodent Maintenance Diet:Harlan Laboratories B.V(Maasheseweg 87c PO Box 553,5800,AN Venray,The Netherlands)が製造するげっ歯類用ペレットフード)を自由に与えた。
【0188】
用量の調製と投与:ストック製剤(25mg/mL)が提供された。正確には、600μLの投与製剤(ストック、25mg/mL)をラベルの付いたガラス容器に移した。これに、2.4mLの5%デキストロース溶液を加え、ボルテックス混合し、超音波処理して、5mg/mLの強度の均一な懸濁液を得た。動物は摂食条件下で投与された。2mL/kgの投与容量で、23G鈍針に誘導された1mL BD注射器を使用して、緩徐な静脈内ボーラス(1.5分以上)頸静脈カテーテルによって10mg/kgのテガビビントをラットに単回投与した。投薬に使用した注射器は、実際に投与された用量を計算するために、投与の前後に秤量した。
【0189】
サンプルの採取と処理:血液サンプルは、投与後0.083、0.25、0.5、1、2、4、6、8、12、および24時間に収集した。各時点に、カニューレを挿入したラットの頸静脈から約0.25mLの血液を採取し、200mM K2EDTA(血液1mLあたり20μL)を含むラベル付きマイクロチューブに移した。サンプリング後、等量のヘパリン化生理食塩水をカテーテル内に代わりに入れた。採血直後は常に湿った氷上に血液サンプルを維持し、5000gで5分間4±2℃で遠心分離することにより血漿を分離した。血漿サンプルは予定時間の1時間以内に分離し、バイオアナリシスまで-60℃未満で保存した。
【0190】
バイオアナリシス:ラット血漿サンプル中のBC2059の定量化のために、適合LC-MS/MS法を使用してバイオアナリシスを行った。この方法の較正曲線(CC)は、少なくとも6つの非ゼロ構成標準、ならびにブランクおよび0.050μg/mLの定量下限(LLOQ)を有する内部標準サンプルを含むブランクで構成されていた。試験サンプルは、3セットの品質管理サンプル(9つのQCサンプル:3通りの低、中、高QCサンプル)とともに分析した。
【0191】
薬物動態データ分析:テガビビントの薬物動態パラメータは、検証済みのPhoenix(登録商標)WinNonlin(登録商標)ソフトウェア(バージョン6.3)の非コンパートメント分析ツール(血管外)を使用して計算した。濃度時間曲線下の面積(AUCIastおよびAUCinf)は、線形台形法によって計算した。C0(時間ゼロの逆外挿された濃度)は、最初の2つの濃度値を逆外挿することにより、静脈内ボーラス用量の投与後に推定された。総血漿クリアランス(CL)および定常状態での分布容積(Vss)は推定値であった。消失速度定数値(k)は、相関係数>0.8の終末相で少なくとも3つの減少する濃度を使用して、濃度-時間プロファイルの対数線形終末相の線形回帰によって計算した。終末半減期値(T1/2)は、式0.693/kを使用して計算した。αおよびβ半減期を計算して報告した。
【0192】
実験結果
テガビビント(用量:10mg/kg)のラットへの単回の緩徐な静脈内ボーラス投与後、平均血漿クリアランス(CL)は9.92mL/分/kgであると推定されたが、これは正常なラット肝臓血流量である55mL/分/kgよりも約5.5倍少ない。定常状態での平均血漿分布容積(Vss)は、通常の体内水分である0.7L/kgよりもほぼ9.34倍多いことが分り、組織区画への広い分布を示唆している可能性がある。片対数血漿中濃度-時間プロットは、BC2059が0.546時間の急速な分布半減期(T1/2α)および13.8時間の長い終末血漿半減期(T1/2β)を伴う双指数関数的消失パターンを示したことを示している。
【表6】
【0193】
消失速度定数を計算するために、α相では0.5、1、2時間、終末β相では6、8、12、24時間の回帰点を選択した。
【0194】
実施例15
雄のビーグル犬におけるテガビビントの用量漸増静脈内注入試験
試験動物
2017年4月20日に、4匹のオスの非ナイーブビーグル犬が研究用にXenometricsからリリースされた。動物には、試験全体を通して、Harlan Teklad(登録商標)Global 25% Protein Certified Dog Diet 2025Cを自由に与えた(ただし、生存中の手順n間の短い期間を除く)。
投薬:
動物には、静脈内(IV)注入(頸静脈を介して)により4時間(h)¥[±5分(分)]投与した。
【表7】
【0195】
薬物動態(PK)採血:
血液サンプルは、注入開始前の最終投薬日(用量6;15mg/kg)と、注入開始後4、12、24、36、48、および72時間に採取した。全ての血液サンプルを目標時間から10分以内に収集し、プロトコルごとに処理した。バイオアナリシスの結果は、テガビビントが全ての血漿サンプルに存在することを示した。
【表8】
【0196】
薬物動態パラメータは、4時間にわたる薬物の最終的な15mg/kg注入後のBC-2059について決定した。平均値は上記の表8に提示される。データは、53.0時間の半減期と73480ng×時間/mLの全体的なAUC0-120hを示す。
【表9】
【0197】
実施例16
テガビビント製剤の噴霧送達
この実験の目的は、ナノ懸濁液の噴霧送達を試験することであった。この実験は、噴霧送達が成功したことを示した。
【0198】
25mg/mLの濃度でポロキサマー188/ソルビトール中に懸濁させたテガビビント粒子を使用した。
【0199】
これらの製剤をエアロゾルの形態で、全身曝露法によりマウスに適用した。マウスをプラスチックの箱の中に入れた。この箱を密封し、その側面の一方をネブライザーデバイスの排出口に接続し、他方の側面を密閉した水のシステムに接続した。動物の部屋のドラフト内で全手順を実行した。
【0200】
最初の実験について、SATER LABSのネブライザーキットを使用した。このデバイスは、噴射システムを使用する。5匹のマウスの各群につき、5mlの薬物、すなわち125mgのテガビビント(BC2059)をデバイスに充填し、次いで、噴霧のためにデバイスを電源に接続した。エネルギーは、5~7ポンドの圧力、および1分当たり6~8リットルの流量を可能にするDeVilbiss圧縮機モデル646によって供給された。第2の実験のために使用したデバイスは、超音波ネブライザーAlteraであった。
【0201】
2つの実験のために、10匹の雄のbcat-Ex3マウスを各セットに使用した。これらのマウスをそれぞれ5匹ずつの2つの群に分けた。第1の群には、5日間連続して毎日薬物を投与した。第2の群には、薬物を1回のみ(5日目)投与した。5日目に、全てのマウスを屠殺し、肺を採取し、各群からの5つのサンプルを各々入れた2つのラベル付きナイロン袋の中で、サンプルを-30度で保存した。
【表10】
【0202】
実施例17
テガビビントの液体製剤およびテガビビント液体懸濁液のナノ懸濁液を用いたブタの試験は、
ブタによる忍容性が低かった
一連の薬物動態試験においてテガビビントをミニブタに静脈内投与し、全身曝露と製剤への忍容性の両方の観点からGLP毒性試験に適した製剤を決定した。これらの試験は全てSinclair Research(Auxvasse,MO)で実施された。
【0203】
最初の試験では、薬物は、Tween 80、エタノール、ポリエチレングリコール(PEG)、およびビタミンE TGPS(d-αトコフェニルポリエチレングリコール1000コハク酸塩)からなる製剤で得られた。このストック製剤を、最終投与濃度になるまで20%Intralipid(登録商標)(リン脂質安定化大豆油)に希釈した。2匹のブタに1.7mg/kgを6時間かけて投与し、2匹のブタに2.2mg/kgを24時間かけて投与した。製剤は、良好な全身曝露を提供した。
【0204】
24時間の持続時間に対してより短い6時間の持続時間で用量正規化値を比較すると、総用量がより短い持続時間で与えられたため、注入終了時により高いピーク濃度(Cmax/用量)が得られた。しかしながら、経時的な全体的全身曝露(AUC/用量)は2つの注入時間の間で類似しており、すなわち、注入時間が長くなると、ピーク血漿濃度が高くなることを回避しながら、同様の全体的な全身曝露を得ることが可能であった。
【0205】
しかしながら、この製剤で良好な全身曝露が観察された一方で、顕著な注入反応が観察され、この製剤は、6時間または24時間のいずれの注入期間にわたってもミニブタによって忍容されなかった。テガビビント自体ではなく、Tween/エタノール/PEG/ビタミンE/脂質内溶媒ベースの賦形剤および可能性の高い薬物沈殿が、注入反応の原因であるという仮説が立てられた。実際、テガビビントは、ナノ粒子形態である場合も、DMSOに溶解している場合も、赤血球の溶血を引き起こさない。
【0206】
テガビビントの凍結乾燥ナノ懸濁液はより良好な忍容性を示したが、安定性の問題のために最終的には破棄された
【0207】
その後の試験では、テガビビントをナノ粒径に粉砕し、非溶媒製剤を使用した。この試験、試験B01-109では、凍結乾燥形態のテガビビントが得られ、水中で再構成して、テガビビント10mg/mL、2.5mg/mLポロキサマー188、および5mg/mLソルビトールの懸濁液からなるストック製剤が得られた。このストック溶液を生理食塩水で希釈して、静脈内投与に必要な最終濃度とした。2匹のブタに2.9mg/kgを注入し、2匹のブタに12.3mg/kgを4時間の注入時間をかけて注入した。12.1mg/kg投与群の1匹のブタは、非常に高い全身曝露を示した。たとえこのブタであっても、用量正規化AUC、およびより低い程度ではあるがCmaxは、同じ期間をかけて与えた2.8~12.1mg/kgの用量にわたって線形の用量であった。12.1mg/kg用量群の1匹のブタを除いて、この凍結乾燥形態のナノ粉砕テガビビントでは、用量正規化曝露は、試験B01-107で使用したTween/エタノール/PEG/ビタミンE/脂質内溶媒ベースの製剤と比較して低かった。
【0208】
それにもかかわらず、この製剤はミニブタによる忍容性が良好であり、試験B01-107で観察された注入反応はなかったため、凍結乾燥プロセスが将来の実験に向けてスケールアップされた。しかしながら、スケールアッププロセスでは、十分な安定性を示す凍結乾燥生成物を得ることができず、テガビビントの代替の凍結乾燥製剤が必要となった。
【0209】
TXPK-006-2059-24h試験では、粉砕されたテガビビントの凍結乾燥製剤を使用した。使用した凍結乾燥製剤を水中で再構成し、BC2059 25mg/mL、0.125%ポリビニルピロリドン(PVP)、0.0625%デオキシコール酸ナトリウム(NaDOC)、および10%スクロースの最終濃度とした。このバルク溶液を生理食塩水に希釈して、24時間の注入で12.3または49.2mg/kgで治療群当たり2匹のブタに投与するのに必要とされる濃度にした。注射器内で被験物質の凝結が観察されたため、24時間の注入期間を通して注射器を撹拌した。それにもかかわらず、全身曝露は試験B01-107およびB01-109と比較して非常に低かった。その後の製剤化実験で、この凍結乾燥製剤を含む生理食塩水が被験物質の凝集を引き起こし、イオン性(生理食塩水)希釈剤を使用できないことが示された。
【0210】
テガビビントの凍結液体ナノ懸濁液が効果を示した
この時点で、凍結乾燥を中止して、粉砕されたテガビビントの凍結液体製剤を検討した。試験TXPK-001-2059-pig 24h PKでは、3匹のミニブタが群当たり1匹ずつ、3つの群の1つに割り当てられ、製剤は24時間かけて投与された。2つの凍結粉砕懸濁液がParticle Sciencesから提供された。BC2059-1は、25mg/mL BC2059、0.125%PVP、0.0625%NaDOC、10%スクロース、懸濁液(バッチ番号515-10)であり、BC2059-2は、25mg/mL BC2059、0.625%ポロキサマー188、10%ソルビトール、懸濁液(バッチ番号515-13)であった。これらの製剤の両方とも、希釈剤はD5Wであった。3つ目の群は、全身曝露におけるポロキサマー188の考えられる役割を調べるための、ポロキサマー188/生理食塩水希釈剤を含むBC2059PVP/NaDOC/スクロース凍結製剤BC2059-1であった。
【0211】
これらの3つの凍結被験物質製剤のうち、25mg/mLテガビビント、0.625%ポロキサマー188、10%ソルビトール、D5Wで希釈されたナノ懸濁液が最も高い全身曝露を示した。この製剤の用量正規化AUCは、試験B01-107の24時間注入で観察された用量正規化曝露よりもいくらか少なかったが、著しく少ないというわけではなかった。用量正規化曝露は、試験B01-109の4匹中3匹のブタで観察されたものよりもかなり高く、この試験の生理食塩水希釈剤は、テガビビントのPVP/NaDOC製剤で観察されたよりもはるかに少ない程度ではあるが、BC2059の凍結乾燥ポロキサマー188製剤による全身曝露に影響を及ぼした可能性があることを示唆している。
【表11】
【0212】
a30%エタノール、50%PG、10%Tween 80、および10%D-αトコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネート(ロットP492-01)中20mg/mLのBC2059:2匹のミニブタについて報告された値
b10mg/mL BC2059、2.5mg/mLポロキサマー188および5mg/mLソルビトール(ロット番号BET 1213-001-29):2匹のミニブタについて報告された値
c25mg/mL BC2059、0.125%PVP、0.0625%NaDOCおよび10%スクロース(ロット番号BET 1213-001-49):2匹のミニブタについて報告された値
d25mg/mL BC2059、0.125%PVP、0.0625%NaDOC、10%スクロース、デキストロース5%で最終濃度2mg/mLに希釈されたナノ懸濁液(ロット515-10):1匹のミニブタ
e25mg/mL BC2059、0.625%ポロキサマー188、10%ソルビトール、デキストロース5%で最終濃度2mg/mLに希釈されたナノ懸濁液(ロット515-13):1匹のミニブタ
f25mg/mL BC2059、0.125%PVP、0.0625%NaDOC、10%スクロース、最終濃度0.05%のポロキサマーになるようにポロキサマー188/生理食塩水で最終濃度2mg/mLに希釈したナノ懸濁液(Lot 515-10):1匹のミニブタ
【0213】
ミニブタにおけるこれらの単回投与注入試験の結果に基づいて、反復2用量毒性試験のために選択された製剤は、0.625%ポロキサマー188、10%ソルビトール(ナノ懸濁液)を含み、D5Wで希釈された25mg/mLBC2059の凍結製剤であった。
【0214】
IND対応GLP毒性試験の用量選択を支持するための2用量非GLP試験の実施中に、Particle Sciencesバッチ番号515-33のスケールアッププロセスおよび生成において、製剤を凍結させることによりバイアル内でテガビビントが凝集したことが分かった。
【0215】
凍結によるこの凝集を考慮して、その後、2~4℃で保持した0.625%ポロキサマー188、10%ソルビトール製剤中の25mg/mLナノ粉砕BC2059を追求することを決定した。製剤が凍結されていない限り、粉砕BC2059懸濁液の複数ロットに凝集は観察されなかった。2~4℃で冷蔵されたポロキサマー/ソルビトール製剤は、IND対応GLP毒性試験および非GLPビーグル犬試験に使用した。
【0216】
実施例18
特発性肺線維症のマウスモデルにおける噴霧されたテガビビントの有効性
この実験の目的は、ブレオマイシン誘発性の特発性肺線維症(IPF)のマウスモデルにおけるテガビビントナノ懸濁液を調べることであった。被験物質は以下の通りである。
【0217】
0.625%ポロキサマー188および10%ソルビトール中のナノ粉砕懸濁液25mg/mL中のテガビビント(BC2059)。被験物質を約4℃で冷蔵した。
【0218】
噴霧機器は、Altera超音波ネブライザーeRapid機(モデル番号678G1002)であった。
【0219】
動物は、8~12週齢のC57BL/6雄マウス(Jackson Lab、Bar Harbor,ME)であった。
【0220】
【0221】
肺線維症のマウスモデルは、気管内(IT)注射したブレオマイシン(APP Pharmaceuticals、Schaumburg,IL)によって誘発した。50マイクロリットルの生理食塩水0.9%またはPBS中の0.025Uのブレオマイシンの1用量を、0日目に各動物に対照として投与した。
【0222】
テガビビントナノ懸濁液を、エアロゾルの形態で全身曝露法により群3に適用した。マウスをプラスチック箱の中に入れた。この箱を密封し、その側面の一方をネブライザーデバイスの排出口に接続し、他方の側面を密閉した水のシステムに接続した。動物の部屋のドラフト内で全手順を実行した。各処理セッションにおいて、チャンバー内の4~5匹のマウスの各群に、15分間かけて5mlの25mg/mlテガビビント(125mg)を噴霧した。エアロゾルへのマウスの曝露を高めるために、エアロゾルチャンバ内に沈殿したテガビビントをシリンジで回収し、2回目および3回目に再噴霧した。ブレオマイシンの投与後5日目~21日目の間、1日2回マウスに噴霧した。群1および群2には、同様の様式でビヒクル5mlを噴霧した。
【0223】
0、5、8、12、16、19、および21日目に動物の体重を記録した。
【0224】
Scireqによって確立されたプロトコルに従ってFlexiVentマウスベンチレーター(Scireq,Montreal,PQ,Canada)を使用して、以前に記載されたように(Morales-Nebreda Lら、AJRCMB 2015)、21日目に肺機能の測定を行った。気道抵抗、動的および準静的組織コンプライアンス、ならびにエラスタンスを計算するために使用した強制振動および準静的な圧力-容量曲線プロトコルの前に、合計3回の肺容量の操作により各マウスの標準換気履歴を得た。
【0225】
21日目に、全ての動物を屠殺し、肺を採取した。以前に記載されたように(Morales-Nebreda Lら、AJRCMB 2015)、ヒドロキシプロリンアッセイを使用して総肺コラーゲン含量を評価した。簡潔に述べると、マウスの肺を採取し、1mlの0.5M酢酸に懸濁し、次いで、最初に組織ホモジナイザー(氷上で60秒間)、次にDounceホモジナイザー(氷上)で15ストロークを用いて均質にした。得られたホモジネートを10分間回転させ(12,000×g)、上清を後続の分析に使用した。ラット尾コラーゲン(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を使用して0.5M酢酸中でコラーゲン標準を調製した。0.2gのシリウスレッドF3B(Sigma-Aldrich)を200mlの水と混合することによってピクロシリウスレッド染料を調製した。1mlのピクロシリウスレッド染料を100μlのコラーゲン標準または肺ホモジネートに添加し、次いで、軌道振盪機上で30分間連続して室温で混合した。次いで、沈殿したコラーゲンをペレット化し、0.5M酢酸で1回洗浄した(12,000×gで各15分間)。得られたペレットを1mlの0.5M NaOHに再懸濁し、比色プレートリーダー(Bio-Rad,Hercules,CA)を使用してシリウスレッド染色を分光光度的に定量化した(540nm)。
【0226】
結果
群2は、ブレオマイシン処理後に、IPF誘発の指標の1つである統計学的に有意な体重減少を示した。対照的に、群3の吸入テガビビント処置は、ブレオマイシン誘発性肺損傷によって引き起こされた体重減少を逆転させた。
【表13】
【0227】
さらに、ブレオマイシンは、群2において肺コンプライアンス低下を誘導したが、これは線維症の誘発を示すものである。群3におけるブレオマイシン損傷後の吸入テガビビント処置は、群1の偽処置対照のコンプライアンス値近くまでコンプライアンス値を逆転させた。
【表14】
【0228】
さらに、ヒドロキシプロリンアッセイによって測定された総肺コラーゲン含量は、群2において著しい増加を示し、ブレオマイシン損傷後の活発な線維症が示唆された。対照的に、群3におけるブレオマイシン損傷後の吸入テガビビント処置は、この変化を逆転させ、コラーゲンレベルは群1における偽処置対照に近い。
【表15】
【0229】
このように、この実験は、テガビビントがIPFを治療する大きな可能性を有することを示した。
【0230】
実施例19
エアロゾル化テガビビント製剤の評価
最も効率的なエアロゾル生成方法を決定するために、一連のBC-2059(テガビビント)製剤を、振動メッシュおよび圧縮空気ネブライザーを使用してエアロゾル化した。げっ歯類の鼻部曝露チャンバーで、エアロゾルをエアロゾル濃度および粒径分布について特徴づけた。各製剤は、エアロゾル性能に対する影響を評価するように調整された異なる変数を有していた。これらには、APIの粒径の減少、賦形剤プロファイル、および使用されるネブライザーが含まれていた。
【0231】
この試験の目的は、げっ歯類の吸入試験のために被験物質BC-2059をエアロゾル化できる方法を決定することであった。
【0232】
被験物質BC-2059を、精製水中の0.1%Tween80に15mg/mLの濃度で懸濁した。Covaris S220x Ultrasonicator(Covaris、Boston MA)を使用して懸濁液を超音波処理し、次いでボルテックスで1分間混合した。超音波処理とボルテックスによる混合を合計15回繰り返した。
【0233】
残りのバルクBC-2059粉末は、遊星ボールミル(Retsch、Germany)で、12mLのボールミルジャーおよび3つの金属ボールを使用して150RPMで10分間粉砕した。粉砕したBC-2059粉末を、精製水中の0.1%Tween80に15mg/mLの濃度で懸濁した。上で概説した手順を使用して、懸濁液を超音波処理した。
【0234】
残りのバルクBC-2059粉末は、遊星ボールミル(Retsch、ドイツ)で、12mLのボールミルジャーおよび3つの金属ボールを使用して300RPMで60分間粉砕した。粉砕したBC-2059粉末を、精製水中の0.1%Tween 80および精製水中の10%PEG400に15mg/mLの濃度で懸濁した。上で概説した手順を使用して、懸濁液を超音波処理した。精製水中の10%エタノールを使用して追加の15mg/mLBC-2059懸濁液を調製した。VWR超音波破砕機(VWR、Radnor PA)を使用して懸濁液を10分間超音波処理し、ボルテックスミキサーを使用して4分間混合した。
【0235】
追加の製剤(0.625%ポロキサマー188および10%ソルビトール中の25mg/mL BC-2059のナノ粉砕懸濁液)を、さらに変更することなく受け取ったまま使用した。
【0236】
4つの別々のネブライザー(Aeroneb Solo(Aerogen、Ireland)、Pari LC Plus(Pari Respiratory Equipment Inc.Midlothian VA)、Hospitak Up Mist、Hospitak Inc.Farmdale,NY)、およびHudson Micro-Mist(Teleflex Inc.Research Triangle Park,NC)で、一連の界面活性剤で調製された製剤からエアロゾルを生成し、2層のフローパスト型げっ歯類曝露システムに移した。
【0237】
曝露雰囲気中のエアロゾルの総濃度は、フィルターサンプルの分析により決定した(GF/A 47mmフィルター)。フィルターサンプルは、0.3L/分の公称流量で収集した。試験を通して収集されたフィルターサンプルを、総エアロゾル濃度を決定するために重量分析し、HPLC分析のために提出した。
【0238】
被験物質を含むフィルターを1:1アセトニトリル:メタノール中で抽出し、HPLC-UVアッセイにより分析した。
【0239】
被験物質の粒径分布(PSD)は、マーサースタイルカスケードインパクターIn Toxを使用して呼吸域で測定した。
【0240】
結果
エアロゾル濃度(重量濃度および化学的濃度)を以下の表16に示す。
【表16】
【0241】
試験雰囲気のための粒径は、超純水中の0.1%Tween 80で調製された懸濁液用のIn-Toxカスケードインパクターを使用して測定し、治験依頼者は、圧縮空気ネブライザーを使用してポロキサマー懸濁液を提供した。各製剤の空気力学的質量中央径および幾何標準偏差を以下の表17に示す。粒径分布は
図1および
図2に示す。
【表17】
【0242】
結論
BC-2059の製剤を噴霧し、鼻部吸入曝露チャンバーに導入した。曝露雰囲気は、重量分析およびHPLCアッセイを使用してエアロゾル濃度について特徴づけた。最も高い重量エアロゾル濃度は、ポロキサマー製剤で2.47mg/Lと測定され、これは、活性被験物質の0.48mg/Lに相当する。この製剤の粒径分布をカスケードインパクターによって測定し、MMADは2.46μm、幾何標準偏差は1.45μmであった。
【0243】
以前の結果に対してポロキサマー製剤の結果を検討すると、エアロゾル濃度0.484mg/LのBC2059は、30分で30グラムのマウスに1.5mg/kgの肺沈着用量(10%DF)をもたらす。標準的なマウスの肺重量に基づくと、これは肺組織で約0.2mg/gになる。以前の試験では、約0.02mg/g(分析濃度)が得られた。
【0244】
したがって、噴霧されたこのBC2059ナノ粉砕懸濁液は、他のBC2059製剤と比較してエアロゾルで最適な濃度を示した。