(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 10/658 20140101AFI20240909BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240909BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20240909BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20240909BHJP
H01M 10/6555 20140101ALI20240909BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240909BHJP
H01M 50/242 20210101ALI20240909BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20240909BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20240909BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/651
H01M10/6555
H01M50/204 401H
H01M50/242
H01M50/289
H01M50/291
(21)【出願番号】P 2021002337
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】バットウラ ロケッシュ ヤダウ
(72)【発明者】
【氏名】坂本 涼
(72)【発明者】
【氏名】中井 昌之
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-163538(JP,A)
【文献】特開2010-218716(JP,A)
【文献】特開2012-248374(JP,A)
【文献】特開2020-140804(JP,A)
【文献】特開2015-211013(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0159340(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/52-10/667
H01M50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルと、
前記複数の電池セルを収容する収容部と、
隣り合う前記電池セルの一方の電池セルに接触した状態で前記隣り合う電池セルの間に位置し、1.0W/m・K未満の熱伝導率を有する第1要素と、
前記隣り合う電池セルの他方の電池セルに接触した状態で前記第1要素と前記
他方の電池セルとの間に位置し、10W/m・K以上の熱伝導率を有する第2要素と、
を備え、
前記第2要素は、前記収容部のうち各電池セルの一部分を覆う第1部分に熱結合されており、
各電池セルの前記一部分は、前記第1部分から断熱されている、電池モジュール。
【請求項2】
前記第1部分と、各電池セルの前記一部分と、の間に隙間が設けられている、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記第2要素と、前記収容部のうち各電池セルの他の一部分を覆う第2部分と、に熱結合し、前記第1部分の熱伝導率より高い熱伝導率を有する第3要素をさらに備える、請求項1又は2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記複数の電池セルの一端側に位置する第1緩衝材と、
前記複数の電池セルの他端側に位置する第2緩衝材と、
をさらに備え、
前記複数の電池セルが前記第1緩衝材及び前記第2緩衝材を介して前記収容部によって挟持されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記第2要素が、前記隣り合う電池セルの間で延伸する第1延伸部と、各電池セルの前記一部分と前記第1部分との間で前記第1延伸部に交差する方向に延伸する第2延伸部と、を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【請求項6】
複数の電池セルと、
前記複数の電池セルを収容する収容部と、
隣り合う前記電池セルの間に位置し、1.0W/m・K未満の熱伝導率を有する第1要素と、
前記第1要素と前記電池セルとの間に位置し、10W/m・K以上の熱伝導率を有する第2要素と、
を備え、
前記第2要素は、前記収容部のうち各電池セルの一部分を覆う第1部分に熱結合されており、
前記第2要素が、前記隣り合う電池セルの間で延伸する第1延伸部と、各電池セルの前記一部分と前記第1部分との間で前記第1延伸部に交差する方向に延伸する第2延伸部と、を有し、
各電池セルの前記一部分は、前記第1部分から断熱されている、電池モジュール。
【請求項7】
複数の電池セルと、
前記複数の電池セルを収容する収容部と、
隣り合う前記電池セルの
互いに対向する面の間に位置
する1.0W/m・K未満の熱伝導率を有する第1要素
及び10W/m・K以上の熱伝導率を有する第2要素と、
を備え、
前記第2要素と、前記隣り合う電池セルの一方の電池セルの前記面と、の間に前記第1要素が位置し、
前記第1要素と、前記隣り合う電池セルの他方の電池セルの前記面と、の間に前記第2要素が位置し、
前記第2要素は、前記収容部のうち各電池セルの一部分を覆う第1部分に熱結合されており、
前記一方の電池セルの前記面は、前記第1部分から断熱されており、
各電池セルの前記一部分は、前記第1部分から断熱されている、電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の電池セルと、複数の電池セルを収容するカバーと、を備える様々な電池モジュールが開発されている。各電池セルは、内部短絡や過充電等、様々な要因によって熱暴走するおそれがある。したがって、熱暴走した電池セルから他の電池セルへの熱伝導を抑制する必要がある。
【0003】
特許文献1には、熱暴走した電池セルから他の電池セルへの熱伝導を抑制するための電池モジュールの一例について記載されている。この電池モジュールでは、各電池セルが冷却プレートに熱結合されている。隣り合う電池セルの間には、耐熱材及び吸熱プレートが設けられている。また、吸熱プレートは冷却プレートに熱結合されている。
【0004】
特許文献2には、熱暴走した電池セルから他の電池セルへの熱伝導を抑制するための電池モジュールの一例について記載されている。この電池モジュールでは、隣り合う電池セルの間に耐熱材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2020/013120号
【文献】米国特許出願公開第2018/0048036号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば特許文献1又は2に記載されているように隣り合う電池セルの間に耐熱材を設けたとしても、熱暴走した電池セルから他の電池セルへの熱伝導が十分に抑制されないことがある。また、例えば特許文献1に記載されているように熱暴走した電池セルから発生した熱を、吸熱プレートを介して冷却プレートに逃がしたとしても、冷却プレートから他の電池セルへ熱が伝導する可能性がある。
【0007】
本発明の目的の一例は、電池セルが熱暴走した場合でも、当該熱暴走した電池セルから他の電池セルへの熱伝導を十分に抑制することにある。本発明の他の目的は、本明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
複数の電池セルと、
前記複数の電池セルを収容する収容部と、
隣り合う前記電池セルの間に位置し、1.0W/m・K未満の熱伝導率を有する第1要素と、
前記第1要素と前記電池セルとの間に位置し、10W/m・K以上の熱伝導率を有する第2要素と、
を備え、
前記第2要素は、前記収容部のうち各電池セルの一部分を覆う第1部分に熱結合されており、
各電池セルの前記一部分は、前記第1部分から断熱されている、電池モジュールである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記態様によれば、電池セルが熱暴走した場合でも、当該熱暴走した電池セルから他の電池セルへの熱伝導を十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る電池モジュールの分解斜視図である。
【
図2】トップカバーが取り除かれた電池モジュールの上面図である。
【
図6】複数の電池セルの各々における電圧の時間推移の一例を示すグラフである。
【
図7】複数の電池セルの各々における温度の時間推移の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態及び変形例について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
本明細書において、「第1」、「第2」、「第3」等の序数詞は、特に断りのない限り、同様の名称が付された構成を単に区別するために付されたものであり、構成の特定の特徴(例えば、順番又は重要度)を意味するものではない。
【0013】
以下、AがBに熱結合されているとは、例えば、AがBに直接接触していることや、Aが、例えば熱伝導接着剤等、10W/m・K以上、例えば100W/m・K以上の熱伝導率を有する要素を介して、Bに接合していること等を意味する。
【0014】
また、AがBから断熱されているとは、例えば、AとBとの間に、例えば空気等、0.50W/m・K未満、例えば0.10W/m・K未満の熱伝導率を有する要素が存在していることを意味する。
【0015】
図1は、実施形態に係る電池モジュール10の分解斜視図である。
図2は、トップカバー312が取り除かれた電池モジュール10の上面図である。
図3は、
図1のA-A´断面図である。
図4は、
図1のB-B´断面図である。
図5は、
図1のC-C´断面図である。
【0016】
図1~
図5において、X方向、Y方向又はZ方向を示す矢印は、当該矢印の基端から先端に向かう方向が当該矢印によって示される方向の正方向であり、当該矢印の先端から基端に向かう方向が当該矢印によって示される方向の負方向であることを示している。また、X方向、Y方向又はZ方向を示す黒点付き白丸は、紙面の奥から手前に向かう方向が当該矢印によって示される方向の正方向であり、紙面の手前から奥に向かう方向が当該矢印によって示される方向の負方向であることを示している。また、X方向、Y方向又はZ方向を示すX付き白丸は、紙面の手前から奥に向かう方向が当該矢印によって示される方向の正方向であり、紙面の奥から手前に向かう方向が当該矢印によって示される方向の負方向であることを示している。
【0017】
図1~
図5において、X方向は、鉛直方向に直交する水平方向に平行な一方向である。X方向の正方向は、電池モジュール10の後方から前方に向かう方向である。X方向の負方向は、電池モジュール10の前方から後方に向かう方向である。Y方向は、水平方向に平行な一方向であり、X方向に直交している。Y方向の正方向は、電池モジュール10の前方から見て左から右に向かう方向である。Y方向の負方向は、電池モジュール10の前方から見て右から左に向かう方向である。Z方向は、鉛直方向に平行な一方向である。Z方向の正方向は、下方から上方に向かう方向である。Z方向の負方向は、上方から下方に向かう方向である。なお、鉛直方向又は水平方向と、電池モジュール10のX方向、Y方向又はZ方向と、の関係は、上で説明した例に限定されない。鉛直方向又は水平方向と、電池モジュール10のX方向、Y方向又はZ方向と、の関係は、電池モジュール10の配置に応じて、上で説明した例と異なる。例えば、X方向が鉛直方向に平行となり、Y方向及びZ方向が水平方向に平行になっていてもよい。
【0018】
電池モジュール10は、複数の電池セル100、複数の第1要素210、複数の第2要素220、第3要素230及び収容部300を備えている。
【0019】
各電池セル100は、X方向に厚みを有しており、Y方向に長手方向を有しており、Z方向に短手方向を有している。複数の電池セル100は、X方向に並んでいる。
【0020】
各電池セル100のY方向の正方向側の端部には、第1リード110が設けられている。各電池セル100のY方向の負方向側の端部には、第2リード120が設けられている。第1リード110の極性は、正極又は負極である。第2リード120の極性は、第1リード110の極性と異なっている。なお、第1リード110及び第2リード120の双方が電池セル100のY方向の正方向側又はY方向の負方向側に位置していてもよい。
【0021】
収容部300は、トップカバー312、ボトムカバー314、第1エンドカバー322、第2エンドカバー324、第1サイドカバー332及び第2サイドカバー334を有している。トップカバー312、ボトムカバー314、第1エンドカバー322、第2エンドカバー324、第1サイドカバー332及び第2サイドカバー334は、金属等の熱導電材からなっている。
【0022】
図1、
図3及び
図5に示すように、トップカバー312は、各電池セル100のうちZ方向の正方向側の端部を覆っている。また、ボトムカバー314は、各電池セル100のうちZ方向の負方向側の端部を覆っている。
図1、
図2、
図4及び
図5に示すように、第1エンドカバー322は、各電池セル100のうちY方向の正方向側の端部を覆っている。また、第2エンドカバー324は、各電池セル100のうちY方向の負方向側の端部を覆っている。
図1、
図2、
図3及び
図4に示すように、第1サイドカバー332は、複数の電池セル100のうちX方向の正方向側の端部を覆っている。また、第2サイドカバー334は、複数の電池セル100のうちX方向の負方向側の端部を覆っている。
【0023】
図1、
図3及び
図4に示すように、複数の第1要素210の各々は、複数の電池セル100のX方向の正方向側の一端側に位置する第1要素210である第4要素210aと、複数の電池セル100のX方向の負方向側の他端側に位置する第1要素210である第5要素210bと、を除いて、隣り合う電池セル100の間に位置している。第1要素210は、例えば、マイカ、ウレタン等の低熱伝導率材又は耐熱材である。第1要素210の熱伝導率は、比較的低く、例えば、1.0W/m・K未満、例えば0.10W/m・K未満である。隣り合う電池セル100の間に第1要素210が位置する場合、隣り合う電池セル100の間に第1要素210が位置しない場合と比較して、隣り合う電池セル100の間での熱伝導を抑制することができる。
【0024】
図1、
図3及び
図4に示すように、複数の第2要素220の各々は、電池セル100と第1要素210との間に位置している。第2要素220は、第1要素210の熱伝導率より高い熱伝導率を有している。第2要素220は、例えば、アルミニウム、銅等の金属等の熱伝導材である。第2要素220の熱伝導率は、比較的高く、例えば、10W/m・K以上、例えば100W/m・K以上である。
【0025】
図1、
図3及び
図5に示すように、第3要素230は、ボトムカバー314と、複数の電池セル100のうちZ方向の負方向側の端部と、の間に位置している。第3要素230は、ボトムカバー314と、第2要素220と、に熱結合されている。第3要素230は、例えば、熱伝導接着剤である。第3要素230の熱伝導率は、比較的高く、例えば、10W/m・K以上、例えば100W/m・K以上である。
【0026】
図3及び
図5に示すように、第2要素220は、第1延伸部222、第2延伸部224及び第3延伸部226を含んでいる。
【0027】
図3及び
図5に示すように、第1延伸部222は、隣り合う電池セル100の間でZX平面に沿って延伸している。
【0028】
図3に示すように、第2延伸部224は、トップカバー312と各電池セル100のZ方向の正方向側の端部との間で第1延伸部222に交差する方向に延伸している。具体的には、第2延伸部224は、第1延伸部222のZ方向の正方向側の端部からX方向の負方向に向けて延伸している。第2延伸部224のZ方向の正方向側の面は、トップカバー312に直接接触している。これによって、第2延伸部224は、トップカバー312に熱結合している。なお、第2延伸部224のZ方向の正方向側の面は、例えば、熱伝導接着剤を介してトップカバー312に接合されていてもよい。第2要素220が第2延伸部224を有する場合、第2要素220が第2延伸部224を有さずに第1延伸部222のZ方向の正方向側の端部がトップカバー312に接触している場合と比較して、第2要素220とトップカバー312との接触面積を大きくすることができ、第2要素220からトップカバー312へ熱を伝導させやすくすることができる。なお、第2要素220は、第3延伸部226を有している状態で第2延伸部224を有さなくてもよい。すなわち、第1延伸部222のZ方向の正方向側の端部がトップカバー312に接触していてもよい。
【0029】
図3に示すように、第3延伸部226は、第3要素230と各電池セル100のZ方向の負方向側の端部との間で第1延伸部222に交差する方向に延伸している。具体的には、第3延伸部226は、第1延伸部222のZ方向の負方向側の端部からX方向の負方向に向けて延伸している。第3延伸部226のZ方向の負方向側の面は、第3要素230を介してボトムカバー314に接合されている。これによって、第3延伸部226は、第3要素230及びボトムカバー314に熱結合している。なお、第3延伸部226のZ方向の負方向側の面は、第3要素230を介さずにボトムカバー314に直接接触していてもよい。第2要素220が第3延伸部226を有する場合、第2要素220が第3延伸部226を有さずに第1延伸部222のZ方向の負方向側の端部がボトムカバー314に熱結合している場合と比較して、第2要素220と第3要素230との接触面積を大きくすることができ、第2要素220からボトムカバー314へ熱を伝導させやすくすることができる。なお、第2要素220は、第2延伸部224を有している状態で第3延伸部226を有さなくてもよい。すなわち、第1延伸部222のZ方向の負方向側の端部が第3要素230に接触していてもよい。
【0030】
なお、第1要素210のX方向の厚さ、第1延伸部222のX方向の厚さ、第2延伸部224のZ方向の厚さ、第3延伸部226のZ方向の厚さ及び第3要素230のZ方向の厚さは、特に限定されないが、種々の条件、例えば、電池セル100の発熱量、収容部300の熱容量等に応じて適宜決定することができる。
【0031】
図3及び
図5に示すように、トップカバー312と、各電池セル100のうちZ方向の正方向側の端部と、の間には隙間が設けられている。すなわち、トップカバー312と、各電池セル100のうちZ方向の正方向側の端部と、は直接接触していない。したがって、トップカバー312と、各電池セル100のうちZ方向の正方向側の端部と、の間に低熱伝導率材又は耐熱材を設ける場合よりも、各電池セル100のうちZ方向の正方向側の端部をトップカバー312から簡易に断熱することができる。また、第3要素230と、各電池セル100のうちZ方向の負方向側の端部と、の間には隙間が設けられている。すなわち、第3要素230と、各電池セル100のうちZ方向の負方向側の端部と、は直接接触していない。したがって、第3要素230と、各電池セル100のうちZ方向の負方向側の端部と、の間に低熱伝導率材又は耐熱材を設ける場合よりも、各電池セル100のうちZ方向の負方向側の端部を第3要素230から簡易に断熱することができる。なお、トップカバー312と各電池セル100のうちZ方向の正方向側の端部との間の隙間と、ボトムカバー314と各電池セル100のうちZ方向の負方向側の端部との間の隙間と、には、第1要素210の一部が入り込んでいてもよい。
【0032】
図4及び
図5に示すように、第1エンドカバー322と、各電池セル100のうちY方向の正方向側の端部と、の間には隙間が設けられている。また、第2エンドカバー324と、各電池セル100のうちY方向の負方向側の端部と、の間には隙間が設けられている。これらの隙間が設けられている場合、第1エンドカバー322と各電池セル100のうちY方向の正方向側の端部とが互いに接触し、かつ第2エンドカバー324と各電池セル100のうちY方向の負方向側の端部とが互いに接触している場合と比較して、次のようにして、隣接する電池セル100間で熱暴走が繰り返されることを抑制することができる。すなわち、複数の電池セル100のうち最もX方向の正方向側の電池セル100の熱は、第1サイドカバー332を経由して第1エンドカバー322及び第2エンドカバー324へ伝導し得る。また、複数の電池セル100のうち最もX方向の負方向側の電池セル100の熱は、第2サイドカバー334を経由して第1エンドカバー322及び第2エンドカバー324へ伝導し得る。しかしながら、上述した隙間が設けられている場合、第1エンドカバー322と各電池セル100のうちY方向の正方向側の端部とが互いに接触し、かつ第2エンドカバー324と各電池セル100のうちY方向の負方向側の端部とが互いに接触している場合と比較して、第1エンドカバー322又は第2エンドカバー324から電池セル100へ熱を伝わりにくくすることができる。
【0033】
図3及び
図4に示すように、第1サイドカバー332と、複数の電池セル100のうちX方向の正方向側の一端と、の間には第4要素210aが位置している。第4要素210aは、振動や衝撃等の物理的力を緩衝するための第1緩衝材として機能させることができる。また、第2サイドカバー334と、複数の電池セル100のうちX方向の負方向側の他端と、の間には第5要素210bが位置している。第5要素210bは、振動や衝撃等の物理的力を緩衝するための第2緩衝材として機能させることができる。なお、第1サイドカバー332と、複数の電池セル100のうちX方向の正方向側の一端と、の間には、第4要素210a等の低熱伝導率材又は耐熱材に代えて、第1緩衝材として機能可能な他の部材が設けられていてもよい。また、第2サイドカバー334と、複数の電池セル100のうちX方向の負方向側の他端と、の間には、第5要素210b等の低熱伝導率材又は耐熱材に代えて、第2緩衝材として機能可能な他の部材が設けられていてもよい。
【0034】
図3及び
図4に示すように、複数の電池セル100は、第1サイドカバー332によって第4要素210aを介してX方向の負方向に向けて押圧されている。また、複数の電池セル100は、第2サイドカバー334によって第5要素210bを介してX方向の正方向に向けて押圧されている。このようにして、複数の電池セル100は、第4要素210a及び第5要素210bを介して収容部300によって挟持されている。したがって、複数の電池セル100を第3要素230から浮かせて支持することができる。
【0035】
図3に示すように、第2延伸部224は、収容部300のうち各電池セル100の一部分を覆う第1部分、具体的にはトップカバー312に熱結合されている。各電池セル100の上記一部分、具体的には、各電池セル100のうちZ方向の正方向側の端部は、トップカバー312から断熱されている。また、第3延伸部226は、収容部300のうち各電池セル100の他の一部分を覆う第2部分、具体的にはボトムカバー314に第3要素230を介して熱結合されている。各電池セル100の上記他の一部分、具体的には、各電池セル100のうちZ方向の負方向側の端部は、ボトムカバー314から断熱されている。
【0036】
本実施形態においては、各電池セル100のZ方向の正方向側の端部がトップカバー312に熱結合されている場合及び各電池セル100のZ方向の負方向側の端部がボトムカバー314に熱結合されている場合と比較して、熱暴走した電池セル100から他の電池セル100への熱伝導を十分に抑制することができる。具体的には、熱暴走した電池セル100から発生した熱は、熱暴走した電池セル100に隣接する第2要素220を経由してトップカバー312又はボトムカバー314へ伝導する。さらに、トップカバー312又はボトムカバー314へ伝導した熱は、熱暴走した電池セル100に隣接する第2要素220と異なる他の第2要素220へ伝導する。本実施形態においては、各電池セル100のZ方向の正方向側の端部がトップカバー312に熱結合されている場合及び各電池セル100のZ方向の負方向側の端部がボトムカバー314に熱結合されている場合と比較して、トップカバー312又はボトムカバー314へ伝導した熱が電池セル100へ向けて伝導することを抑制することができる。したがって、各電池セル100のZ方向の正方向側の端部がトップカバー312に熱結合されている場合及び各電池セル100のZ方向の負方向側の端部がボトムカバー314に熱結合されている場合と比較して、熱暴走した電池セル100から他の電池セル100への熱伝導を抑制しつつ、電池モジュール10の全体に亘って熱を分散させることができる。
【0037】
図6は、複数の電池セル100の各々における電圧の時間推移の一例を示すグラフである。
【0038】
図6のグラフにおいて、横軸は、時間(単位:分)を示している。縦軸は、電池セル100の電圧(単位:V)を示している。
【0039】
図6のグラフは、隣接する6つの電池セル100の電圧の時間推移を示している。当該電圧の時間推移は、次の条件で測定した。
【0040】
図3に示した例と同様にして、トップカバー312と、各電池セル100のうちトップカバー312によって覆われている端部と、の間には隙間を設けた。また、ボトムカバー314と、各電池セル100のうちボトムカバー314によって覆われている端部と、の間には隙間を設けた。
【0041】
第1要素210として、厚さ1mmのマイカを用いた。
【0042】
第2要素220として、厚さ1mmのアルミニウムを用いた。第2要素220は、
図3に示した例と同様にして、第1延伸部222、第2延伸部224及び第3延伸部226を有している。
【0043】
6つの電池セル100の一端から1番目の電池セル100のうち上記一端から2番目の電池セル100が位置する側の反対側にヒータを設けた。ヒータの加熱によって、上記一端から1番目の電池セル100を熱暴走させた。
【0044】
上記一端から1番目及び2番目の電池セル100の各々のSOC(State Of Charge)は100%とした。上記一端から3番目~6番目の電池セル100の各々のSOCは5%とした。
【0045】
図6のグラフにおいて、「C1」~「C6」は、上記一端から1番目~6番目の電池セル100の電圧の時間推移をそれぞれ示している。
【0046】
図6のグラフに示すように、上記一端から1番目の電池セル100では、時刻約1分付近において、熱暴走によって電圧が約4.2Vから0Vへ降下している。これに対して、上記一端から2番目~6番目の電池セル100では、上記熱暴走後、電圧降下が発生していない。
【0047】
図6に示す結果は、トップカバー312と、各電池セル100のうちトップカバー312によって覆われている端部と、の間に設けられた隙間と、ボトムカバー314と、各電池セル100のうちボトムカバー314によって覆われている端部と、の間に設けられた隙間と、によって、熱暴走した電池セル100から他の電池セル100への熱伝導が十分に抑制されていることを示唆する。
【0048】
図7は、複数の電池セル100の各々における温度の時間推移の一例を示すグラフである。
【0049】
図7のグラフにおいて、横軸は、時間(単位:秒)を示している。縦軸は、電池セル100の温度(単位:℃)を示している。
【0050】
図7のグラフは、隣接する6つの電池セル100のうちの後述する8箇所における温度の時間推移を示している。当該温度の時間推移は、
図6を用いて説明した電圧の時間推移を測定する条件と同じ条件で測定した。
【0051】
図7のグラフにおいて、「C1(1)」は、6つの電池セル100の一端から1番目の電池セル100のうち上記一端から2番目の電池セル100が位置する側の反対側の温度推移を示している。「C1(2)」は、上記一端から1番目の電池セル100のうち上記一端から2番目の電池セル100が位置する側の温度推移を示している。「C2(1)」は、上記一端から2番目の電池セル100のうち上記一端から1番目の電池セル100が位置する側の温度推移を示している。「C2(2)」は、上記一端から2番目の電池セル100のうち上記一端から3番目の電池セル100が位置する側の温度推移を示している。「C3」は、上記一端から3番目の電池セル100のうち上記一端から2番目の電池セル100が位置する側の温度推移を示している。「C4」は、上記一端から4番目の電池セル100のうち上記一端から3番目の電池セル100が位置する側の温度推移を示している。「C5」は、上記一端から5番目の電池セル100のうち上記一端から4番目の電池セル100が位置する側の温度推移を示している。「C6」は、上記一端から6番目の電池セル100のうち上記一端から5番目の電池セル100が位置する側の温度推移を示している。
【0052】
上記一端から1番目の電池セル100のうち上記一端から2番目の電池セル100が位置する側の反対側の温度は、時刻約60秒付近で急激に上昇し、時刻約75秒付近で約1000℃まで達している。上記一端から1番目の電池セル100のうち上記一端から2番目の電池セル100が位置する側の温度は、時刻約75秒付近から上昇し、時刻約100秒で300℃に達している。これに対して、上記一端から2番目~6番目の電池セル100の温度は、いずれの時刻においても、約100℃以下に抑えられている。
【0053】
図7に示す結果は、トップカバー312と、各電池セル100のうちトップカバー312によって覆われている端部と、の間に設けられた隙間と、ボトムカバー314と、各電池セル100のうちボトムカバー314によって覆われている端部と、の間に設けられた隙間と、によって、熱暴走した電池セル100から他の電池セル100への熱伝導が十分に抑制されていることを示唆する。
【0054】
図8は、
図3の変形例を示す図である。本変形例に係る電池モジュール10Aは、以下の点を除いて、実施形態に係る電池モジュール10と同様である。
【0055】
電池モジュール10Aは、第2要素220Aを備えている。第2要素220Aは、第1延伸部222、第2延伸部224A及び第3延伸部226Aを有している。
【0056】
第2延伸部224Aは、第1延伸部222のZ方向の正方向側の端部からX方向の正方向及びX方向の負方向の双方に向けて延伸している。なお、第2要素220Aは、第3延伸部226Aを有している状態で第2延伸部224Aを有さなくてもよい。すなわち、第1延伸部222のZ方向の正方向側の端部がトップカバー312に接触していてもよい。
【0057】
第3延伸部226Aは、第1延伸部222のZ方向の負方向側の端部からX方向の正方向及びX方向の負方向の双方に向けて延伸している。なお、第2要素220Aは、第2延伸部224Aを有している状態で第3延伸部226Aを有さなくてもよい。すなわち、第1延伸部222のZ方向の負方向側の端部が第3要素230に接触していてもよい。
【0058】
以上、図面を参照して本発明の実施形態及び変形例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0059】
例えば、本実施形態では、トップカバー312と、各電池セル100のZ方向の正方向側の端部と、の間に隙間が設けられている。しかしながら、トップカバー312と、各電池セル100のZ方向の正方向側の端部と、の間には、低熱伝導率材又は耐熱材が位置していてもよい。この低熱伝導率材又は耐熱材によって、各電池セル100のZ方向の正方向側の端部をトップカバー312から断熱することができる。ボトムカバー314と、各電池セル100のZ方向の負方向側の端部と、の間にも低熱伝導率材又は耐熱材が位置していてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、第2要素220は、トップカバー312及びボトムカバー314の双方に熱結合している。しかしながら、第2要素220は、トップカバー312及びボトムカバー314の一方のみに熱結合していてもよい。例えば、第2要素220のZ方向の正方向側の端部がトップカバー312から離間していてもよい。この例においては、第2要素220のZ方向の正方向の端部から熱を空気中に放出することができる。また、第2要素220のZ方向の負方向側の端部がボトムカバー314から離間していてもよい。この例においては、第2要素220のZ方向の負方向側の端部から熱を空気中に放出することができる。
【0061】
また、本実施形態では、第1要素210は、低熱伝導率材又は耐熱材等の特定の材料となっている。しかしながら、第1要素210は、材料でなく、空気等の隙間であってもよい。
【0062】
また、第2要素の形状は、本実施形態又は変形例に係る形状に限定されない。例えば、第2延伸部及び第3延伸部の一方が、実施形態の第2延伸部224又は第3延伸部226と同様にして、第1延伸部のZ方向の端部からX方向の負方向に向けて延伸しており、第2延伸部及び第3延伸部の他方が、変形例の第2延伸部224A又は第3延伸部226Aと同様にして、第1延伸部のZ方向の端部からX方向の正方向及びX方向の負方向の双方に向けて延伸していてもよい。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 複数の電池セルと、
前記複数の電池セルを収容する収容部と、
隣り合う前記電池セルの間に位置し、1.0W/m・K未満の熱伝導率を有する第1要素と、
前記第1要素と前記電池セルとの間に位置し、10W/m・K以上の熱伝導率を有する第2要素と、
を備え、
前記第2要素は、前記収容部のうち各電池セルの一部分を覆う第1部分に熱結合されており、
各電池セルの前記一部分は、前記第1部分から断熱されている、電池モジュール。
2. 前記第1部分と、各電池セルの前記一部分と、の間に隙間が設けられている、1.に記載の電池モジュール。
3. 前記第2要素と、前記収容部のうち各電池セルの他の一部分を覆う第2部分と、に熱結合し、前記第1部分の熱伝導率より高い熱伝導率を有する第3要素をさらに備える、1.又は2.に記載の電池モジュール。
4. 前記複数の電池セルの一端側に位置する第1緩衝材と、
前記複数の電池セルの他端側に位置する第2緩衝材と、
をさらに備え、
前記複数の電池セルが前記第1緩衝材及び前記第2緩衝材を介して前記収容部によって挟持されている、1.~3.のいずれか一つに記載の電池モジュール。
5. 前記第2要素が、前記隣り合う電池セルの間で延伸する第1延伸部と、各電池セルの前記一部分と前記第1部分との間で前記第1延伸部に交差する方向に延伸する第2延伸部と、を有する、1.~4.のいずれか一つに記載の電池モジュール。
【符号の説明】
【0063】
10 電池モジュール
10A 電池モジュール
100 電池セル
110 第1リード
120 第2リード
210 第1要素
210a 第4要素
210b 第5要素
220 第2要素
220A 第2要素
222 第1延伸部
224 第2延伸部
224A 第2延伸部
226 第3延伸部
226A 第3延伸部
230 第3要素
300 収容部
312 トップカバー
314 ボトムカバー
322 第1エンドカバー
324 第2エンドカバー
332 第1サイドカバー
334 第2サイドカバー