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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】連結金具
(51)【国際特許分類】
   E21D 5/10 20060101AFI20240909BHJP
   F16B 2/24 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
E21D5/10
F16B2/24 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021003129
(22)【出願日】2021-01-12
(65)【公開番号】P2022108218
(43)【公開日】2022-07-25
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】大高 範寛
(72)【発明者】
【氏名】原田 剛男
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸夫
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-068287(JP,A)
【文献】特開2020-002634(JP,A)
【文献】特開2020-002635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00 - 9/14
E21D 11/00 - 19/06
E21D 23/00 - 23/26
E02D 17/00 - 17/20
E02D 29/00
E02D 29/045- 37/00
F16B 2/00 - 2/26
F16B 5/00 - 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の孔が穿設されたフランジを上下端並びに左右端に有するライナープレート同士を連結する際に、上記ライナープレートの上記フランジ同士を連結するための連結金具であって、
平板状の本体部と、上記本体部の一端側において上記本体部の平板面に対する面外方向の下方に湾曲して折り返されて上記本体部から離間して対向する返し片を有するとともに上記本体部と上記返し片との対向空間で上記本体部の他端側に向かって開口した第1開口部が形成され、上記本体部よりも狭く上記孔に挿入可能な幅を有する差し込み部と、上記他端側において上記面外方向の下方に湾曲して折り返されて上記本体部から離間して対向する把持部を有するとともに上記本体部と上記把持部との対向空間で上記一端側に向かって開口して上記第1開口部と対向する第2開口部が形成された挟持部とを備えること
を特徴とする連結金具。
【請求項2】
上記挟持部は、折り返しが形成された第1折り曲げ部と、上記第1折り曲げ部に連続して設けられるとともに上記本体部から遠ざかる方向に湾曲した第2折り曲げ部を有し、上記第2折り曲げ部に上記フランジを把持する把持部を設けたこと
を特徴とする請求項1記載の連結金具。
【請求項3】
上記差し込み部は、2回折り曲げられて断面略コ字状に形成されること
を特徴とする請求項1又は2記載の連結金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔が穿設されたフランジを上下端並びに左右端に有するライナープレート同士を連結するための連結金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、山間部、あるいは、施工条件により重機が使用できない場所に、橋脚・橋台や鉄塔の基礎、地すべり抑止杭、集水井、推進工法用の立坑などを構築する際、軽量で人力運搬可能なライナープレートが用いられてきた。ライナープレートは、薄肉鋼板に波付け加工を施し、その四辺にフランジを設けた構造部材であり、軽量であるほか、内側から組み立てができるため、施工性が良いという利点も有する。
【0003】
ライナープレートの組み立ては、軸方向フランジのボルト孔同士を合わせる形で隣接するライナープレートをセットし、軸方向フランジのボルト孔にボルトを挿入後、ナットを締結することによりリングを形成する。次に、周方向フランジのボルト孔同士を合わせて隣接するライナープレートをセットし、ボルト・ナットにより各リングが軸方向に連結され、地盤内に空間が形成されていく。
【0004】
ところで、軸方向フランジ及び周方向フランジには複数のボルト孔が形成されているため、これら全てのボルト孔をナットで締結することとなると、ライナープレートの組み立てに相当な時間がかかってしまう。そこで、ライナープレート同士を簡易に連結することを目的として、特許文献1あるいは特許文献2に開示された技術が提案されている。
【0005】
特許文献1に開示されたライナープレートの連結金具は、板状の連結金具本体と、連結金具本体の一端を連結金具本体の一方面側にL字状に折り曲げることにより形成された差込み部と、連結金具本体の他端を、一方面側にU字状に折り曲げることにより形成された挟持部とを備え、挟持部の折曲げ部は、連結金具本体の長手方向に対して斜めに形成されている。このような連結金具を用いてライナープレートを連結することにより、連結金具本体の差込み部を、重なったフランジに形成された孔に差し込んだ後、連結金具本体を回動させるのみで、土留部材等を相互に連結することができるので、ボルト・ナットに比べて、土留部材等の相互の連結が容易かつ短時間に行うことができる。
【0006】
また、特許文献2に開示されたライナープレートの連結金具は、板状の連結金具本体と、連結金具本体の一端に形成された差込み部と、連結金具本体の他端をU字状に折り曲げることにより形成された挟持部とを備え、挟持部の折曲げ部は、連結金具本体の、重なったフランジに形成された孔への差込み方向に対して直角に形成されている。このような連結金具を用いてライナープレートを連結することにより、連結金具本体の差込み部を、重なったフランジに形成された孔に差し込むのみで、土留部材等を相互に連結することができるので、ボルト・ナットに比べて、土留部材等の相互の連結が容易かつ短時間に行うことができる。
【0007】
特許文献1、2に開示された連結金具は、2枚の板(土留材等に用いるライナープレート等)を相互に連結するための金具であり、従来ボルト等で止めていた作業に代えて、連結金具をボルト穴に差し込んでワンタッチで止めるというものである。どちらの金具もフランジに形成された孔に挿入する差し込み部と、当接させた2枚のフランジを挟む挟持部からなる。このような連結金具を用いてライナープレートを連結することにより、煩雑なボルト締め作業の時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2020-2634号公報
【文献】特開2020-2635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された連結金具140では、差込み部102がL字状のため、図11(a)に示すように周方向フランジにおいてライナープレートの上下のフランジ122U、122L間にずれが生じていない状態から、図11(b)に示すように下側フランジ122Lが上側フランジ122Uに対して相対的に径方向内側(図中左側)にずれた場合、特許文献1に開示された連結金具140の差込み部102が斜めに変形して、連結金具140が外れるという問題点があった。また、特許文献2に開示された連結金具140は、そもそも差込み部102が傾斜しているため、同様に連結金具140が外れるという問題点があった。このとき、特許文献1、2に開示された連結金具140を上下反転させてフランジに装着させれば外れにくくなるが、下側フランジ122Lが上側フランジ122Uに対して相対的に径方向内側(図中左側)に必ずずれるとは限らず、壁体1に作用する土圧等の状況により、径方向外側(図中の矢印とは逆方向)にずれる場合もある。この場合には、連結金具140を上下反転させても外れる方向に装着することになり、この問題点を解決できない。
【0010】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、連結されたライナープレートのフランジ間にせん断力等が作用した場合でも、いかなるずれ方向にも外れることが無く、フランジ同士のずれを抑える連結金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上述した問題点を解決するために、平板状の本体部と、本体部の一端側において面外方向の下方に湾曲するとともに第1開口部が形成された差し込み部と、本体部の他端側において面外方向の下方に湾曲するとともに第1開口部と対向する第2開口部が形成された挟持部とを備える連結金具を発明した。
【0012】
第1発明に係る連結金具は、複数の孔が穿設されたフランジを上下端並びに左右端に有するライナープレート同士を連結する際に、上記ライナープレートの上記フランジ同士を連結するための連結金具であって、平板状の本体部と、上記本体部の一端側において上記本体部の平板面に対する面外方向の下方に湾曲して折り返されて上記本体部から離間して対向する返し片を有するとともに上記本体部と上記返し片との対向空間で上記本体部の他端側に向かって開口した第1開口部が形成され、上記本体部よりも狭く上記孔に挿入可能な幅を有する差し込み部と、上記他端側において上記面外方向の下方に湾曲して折り返されて上記本体部から離間して対向する把持部を有するとともに上記本体部と上記把持部との対向空間で上記一端側に向かって開口して上記第1開口部と対向する第2開口部が形成された挟持部とを備えることを特徴とする。
【0013】
第2発明に係る連結金具は、第1発明において、上記挟持部は、折り返しが形成された第1折り曲げ部と、上記第1折り曲げ部に連続して設けられるとともに上記本体部から遠ざかる方向に湾曲した第2折り曲げ部を有し、上記第2折り曲げ部に上記フランジを把持する把持部を設けたことを特徴とする。
【0014】
第3発明に係る連結金具は、第1発明又は第2発明において、上記差し込み部は、2回折り曲げられて断面略コ字状に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上述した構成からなる本発明によれば、平板状の本体部と、本体部の一端側において面外方向の下方に湾曲するとともに第1開口部が形成された差し込み部と、本体部の他端側において面外方向の下方に湾曲するとともに第1開口部と対向する第2開口部が形成された挟持部とを備える連結金具を複数の孔の少なくとも一部の孔に差し込み部を挿入し、差し込み部を中心に挟持部を回転させることでライナープレートを連結する。これにより、フランジ間にせん断力や離間力が生じても、係止部によりフランジの径方向並びに離間方向における移動が抑制されるため、2枚のフランジ間のずれや開きを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明を適用した連結金具を用いてライナープレート同士を連結して構築された壁体を示す斜視図である。
図2図2(a)は、ライナープレートの連結方法で用いられるライナープレートを示す斜視図であり、図2(b)は、その平面図である。
図3図3(a)は、ライナープレートの連結方法で用いられるライナープレートの第1変形例を示す斜視図であり、図3(b)は、その平面図である。
図4図4(a)は、ライナープレートの連結方法で用いられるライナープレートの第2変形例を示す斜視図であり、図4(b)は、その平面図である。
図5図5(a)は、ライナープレートの連結方法で用いられる可動部を有する仮止め具を示す側面図であり、図5(b)は、その平面図である。
図6図6(a)は、実施形態における連結金具の斜視図であり、図6(b)は、その平面図であり、図6(c)はその側面図である。
図7図7は、仮止め具で各々のライナープレートの位置を保持した状態を示す正面図である。
図8図8は、連結金具で各々のライナープレートの位置を保持した状態を示す図である。
図9図9(a)、(b)は、実施形態における連結金具がライナープレートに装着された状態を示す模式図である。
図10図10(a)、(b)は、実施形態においてライナープレートの周方向フランジ間に径方向のせん断力が作用した場合の状態を示す図である。
図11図11(a)、(b)は、従来においてライナープレートの周方向フランジ間に径方向のせん断力が作用した場合の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した連結金具を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、連結金具40を用いてライナープレートのフランジ同士を連結して構築された壁体1を示す図である。連結金具40は、地盤を掘削して掘削面からの土圧に抵抗するための壁体1を構築する際に用いられる。
【0019】
本発明を適用した連結金具40を用いてフランジに形成された孔22a、23aとフランジ端部を連結して、複数のライナープレート20を上下方向及び周方向で連結することで、筒状の壁体1からなる立坑100が構築される。壁体1は、地下に形成された孔等に設けられ、深礎杭、集水井、橋脚等を構築する際の土留め等として用いられる。
【0020】
ライナープレート20は例えば鋼製のプレートであり、図2に示すように上下方向に波形に形成される波形鋼板21と、波形鋼板21の上端、下端及び左右端にそれぞれフランジを有する。ライナープレート20は、波形鋼板21の上端及び下端のフランジを周方向フランジ22とし、波形鋼板21の左右端のフランジを軸方向フランジ23とする。なお、ライナープレート20は、鋼製に限定されず、地盤の掘削面からの土圧に抵抗できる強度を有するのであれば如何なる材料により構成されてもよい。
【0021】
周方向フランジ22は、径d1(例えば21mm)で複数の孔22aが穿設される。周方向フランジ22は、図1に示すように、孔22aに連結金具40が挿入される。軸方向フランジ23は、矩形状の鋼板が用いられ、円形状の孔23aが複数穿設され、孔23aに連結金具40が挿入される。
【0022】
周方向に平面視円弧状に連結するためのライナープレート20は、図2(a)及び図2(b)に示すように、平面視扇形状に形成される。このとき、周方向フランジ22は、所定の土圧に抗することができる程度の厚みを有する平面視扇形状の鋼板が用いられる。
【0023】
周方向フランジ22は、短手方向である幅方向(径方向)の中心軸Wが円弧状に延びており、例えば、中心軸W上又は内端側に寄った位置に複数の孔22aが穿設される。
【0024】
周方向フランジ22は、孔22aの中心軸Mとし、隣り合う孔22a、22aの中心軸M、M間距離を離間距離P1としたとき、離間距離P1がそれぞれ略等しくなる。すなわち、複数の孔22aは、周方向フランジ22に等間隔で配置される。
【0025】
ライナープレート20は、図3(a)及び図3(b)に示すように、平面視矩形状に形成されてもよい。このとき、周方向フランジ22は、所定の土圧に抗することができる程度の厚みを有する平面視矩形状の鋼板が用いられ、土側(外側)と立坑側(内側)を隔てるように配置される。周方向フランジ22は、幅方向の中心軸Wが直線状に延びており、中心軸W上又は内端側に寄った位置に複数の孔22aが等間隔に配置される。
【0026】
ライナープレート20は、図4(a)及び図4(b)に示すように、平面視矩形状のライナープレートが山形鋼等の連結材29を介して互いに連結されることで、平面視L字状に形成されてもよい。このとき、周方向フランジ22は、幅方向の中心軸Wがそれぞれ直線状に延びており、それぞれの中心軸W上又は内端側に寄った位置に複数の孔22aが等間隔に配置される。
【0027】
壁体1は、側方で隣り合うライナープレート20、20の軸方向フランジ23、23同士を互いに連結金具40を介して連結することで、環状のライナープレート連結体2が形成され、ライナープレート連結体2が上下方向に複数段設けられることで構築される。なお、壁体1は、上段に設けられるライナープレート連結体2におけるライナープレート20の軸方向フランジ23の位置と、下段に設けられるライナープレート連結体2におけるライナープレート20の軸方向フランジ23の位置とが周方向に互いにずれるように配置されて、構築される。
【0028】
なお、壁体1は、図1において平面視で円形状に形成されるものを図示しているが、これに限らず、平面視小判形状や、平面視矩形状等に形成されるものであってもよい。
【0029】
ライナープレートの連結方法では、仮止め具(仮止め部材)3が用いられて周方向フランジ22同士が仮止めされた後、連結金具40により本締めされる。すなわち、連結金具40により周方向フランジ22同士を本締めする工程(本締め工程)の前に、一のライナープレート20及び他のライナープレート20の周方向フランジ22にそれぞれ穿設された複数の孔22aのうちの一部の孔22aに仮止め具3を挿入することにより周方向フランジ22同士を仮止めする工程(仮止め工程)を有する。そこで、先ずは仮止め具3について説明する。図5(a)は、仮止め具3の側面図を示し、図5(b)は、その平面図を示す。
【0030】
仮止め具3は、図5(a)に示すように、板状の基部31と、基部31から略垂直に延びて形成される挿入部32と、挿入部32に設けられる保持機構30とを有する。この保持機構30は、係合部33を有し、係合部33は、可動部33aを有する。なお、図示の形態における仮止め具3は、挿入部32に保持機構30が設けられるが、本発明に用いられる仮止め具3は、基部31及び挿入部32の何れか一方又は両方に保持機構30が設けられていればよい。
【0031】
基部31は、図5(b)に示すように、例えば、外径が平面視円形状の金属製の板材が用いられる。基部31は、中心に孔31dが形成され、環状となって形成される。なお、基部31は、外形が平面視円形状に限らず、平面視角形状等に形成されてもよい。
【0032】
挿入部32は、図5(a)に示すように、例えば、金属製のものが用いられ、外径D1(例えば16mm)で円筒状に形成される。挿入部32は、端部が基部31の孔31dに挿入されて基部31の裏面31b側で溶接されて固定される。なお、図示は省略するが、仮止め具3は、基部31の孔31dが省略されてもよく、このとき、挿入部32の端部が基部31の表面31aに溶接等で固定されてもよい。
【0033】
挿入部32は、先端側に側方に向けて突出される係合部33が一体となって設けられる。挿入部32は、先端側の側方に形成されたスリット32bに金属板状の可動部33aが配置される。
【0034】
可動部33aは、挿入部32の先端側に配置された軸32aを介して挿入部32に接続される。可動部33aは、基部31から離間して挿入部32に設けられる。可動部33aは、挿入部32から側方に向けて突出されて、挿入部32の先端側から基部31側に向かうにつれて、挿入部32からの突出長K1が大きくなるように傾斜して、挿入部32に設けられる。可動部33aは、軸32aを中心として図中矢印Q方向に向けて挿入部32から突出自在とされる。つまり、可動部33aは、外力が作用していない状態では挿入部32から突出されており、外力の作用を受けることで、可動部33aの一部又は全部が挿入部32の内側に収容されるように、挿入部32の内側に可動することができる。
【0035】
次に、ライナープレート20の連結に用いられる連結金具40について説明する。図6(a)~(c)に、実施形態における連結金具40を示す。図6(a)は、連結金具40の斜視図であり、図6(b)は、その平面図であり、図6(c)はその側面図である。
【0036】
連結金具40は、例えば、1枚の鋼板等の板状部材を折り曲げることにより形成される。連結金具40は、平板状の本体部50と、本体部50の一端側に設けられる差し込み部60と、本体部50の他端側に設けられる挟持部70とを有する。連結金具40は、例えば、作業者が片手で保持できる程度の大きさに構成される。連結金具40は、鋼板に限られず、周方向フランジ22又は軸方向フランジ23(以下、単に「フランジ22」ともいう)間に生じるせん断力並びに離間力に耐えうる強度及び耐久性を有する材料により弾性変形可能に構成されていればよい。また、連結金具40は、別体として形成された本体部50、差し込み部60、挟持部70を、例えば溶接にて接合することにより一体化してもよい。
【0037】
差し込み部60は、2回折り曲げられて断面略コ字状に形成される。具体的には、差し込み部60は、本体部50の一端側において面外方向の下方D側に180度湾曲して折り返されることにより、第1開口部60aが形成される。図6(a)に示すように、差し込み部60は挿入方向における前方側に設けられ、挿入方向における後方側に開口した第1開口部60aが形成されている。図6(b)に示すように、差し込み部60は、本体部50よりも狭い幅を有し、孔22aに挿入することが可能な程度の大きさとされる。
【0038】
図6(a)、(c)に示すように、差し込み部60は、挿入方向における前方側が返し片61とされる。返し片61は、フランジ22を把持するように挿入方向と反対側に延出する。返し片61が設けられていることにより、差し込み部60がフランジ22に設けられた孔22aから外れることを抑制することができる。なお、差し込み部60は、孔22a側においてフランジ22を挟み込むような形状であれば、断面略コ字状に限定されることなく、U字状あるいは、C字状等如何なる形状であってもよい。
【0039】
挟持部70は、本体部50の他端側において面外方向の下方D側に湾曲するとともに、第1開口部60aと対向する第2開口部70aが形成される。具体的には、図6(a)に示すように、挟持部70は挿入方向における後方側に設けられ、挿入方向における前方側に開口した第2開口部70aが形成される。挟持部70は、フランジ22を挟み込むような形状であれば、断面略コ字状、U字状あるいは、C字状等如何なる形状であってもよい。但し、後述のように、本体部50から遠ざかる方向に湾曲した第2折り曲げ部72が形成されていることが好ましい。
【0040】
図6(a)、(c)に示すように、挟持部70は、折り返しが形成された第1折り曲げ部71と、第1折り曲げ部71に連続して設けられるとともに、本体部50から遠ざかる方向に湾曲した第2折り曲げ部72を有する。第2折り曲げ部72には、フランジ22を把持する把持部72aが設けられている。把持部72aは、本体部50側に凸となる形状に形成され、面外方向の下方D側から面外方向の上方E側向けて押圧力を付与することにより周方向フランジ22の端部側を把持する。従って、フランジ22間にせん断力が作用しても、2枚のフランジ22間のずれを拘束することができる。なお、第2折り曲げ部72は、第1折り曲げ部71から離間するにつれて下方側に広がるように形成されていてもよい。
【0041】
また、少なくとも挟持部70にはバネ鋼を用いることが好ましい。挟持部70にバネ鋼を用いた場合、連結金具40によるフランジ22を把持する把持力を向上させるとともに、ライナープレート連結体2を使用する際の安全性を確保することができる。また、連結金具40がバネ性を有していることから、変形したとしても元の形状に戻すことができるため、連結金具40を繰り返し使用することができる。なお、バネ鋼は、例えば、SWRS材、SUP材を用いることができる。
<仮止め工程>
【0042】
次に、連結金具40を用いてライナープレート20同士を上下方向並びに周方向で連結するライナープレート20の連結方法について説明する。ライナープレート20の連結に際しては、先ず、図7に示すように、予め軸方向フランジ23同士が連結金具40により連結された状態で、ライナープレート20の周方向フランジ22に仮止め具3を取り付けることにより周方向フランジ22同士を仮止めする。具体的には、図7に示すように、仮止め具3の挿入部32が周方向フランジ22の孔22aに挿入され、挿入部32から側方に突出された係合部33の可動部33aが周方向フランジ22の孔22aに接触するように構成されている。なお、軸方向フランジ23同士が連結金具40により連結されていない状態で、周方向フランジ22に仮止め具3を取り付けることにより周方向フランジ22同士を仮止めすることもできる。
【0043】
図7に示すように、各々の孔22a、22aに挿入部32を挿入することで、当該孔22a、22a以外の各々の孔22a、22aも位置合わせされた状態となる。換言すれば、各々の孔22a、22aに挿入部32を挿入することで、挿入部32が挿入されていない各々の孔22a、22aにおける中心軸M、M同士を一致させることができる。
<立坑調整工程>
【0044】
仮止め工程において周方向フランジ22にそれぞれ穿設された孔22a、22aの位置合わせが終了したら、仮止めされた周方向フランジ22同士により形成された立坑100の形状を調整する。ライナープレート20同士を連結する際、周方向フランジ22の孔22aに対して、寸法の小さい仮止め具3を使用するため、仮止め具3を挿入した周方向フランジ22間でずれが生じ得る。周方向フランジ22間でずれが生じた場合には、予定している立坑100の寸法が得られないため、孔22a、22aの位置合わせの後、立坑100の形状を調整する。
<仮締め工程>
【0045】
立坑調整工程において立坑100の形状を調整した後、周方向フランジ22同士を本締めする前に、仮止め具3により仮止めした周方向フランジ22同士を、例えばボルト接合により近接させて(図7中矢印方向)仮締めする。仮締め工程を経ることで、周方向フランジ22間の隙間を小さくして、あるいは隙間をなくして本締めを容易に開始することができる。
【0046】
このように、仮止め具3を使用した仮止め工程、立坑調整工程、仮締め工程の三工程を経ることで、予めライナープレート20が位置決めされ、ライナープレート20同士が倒れないように仮固定されるため、作業者がライナープレート20を支持しない状態でも安全に、また正確に本締め作業を開始することができる。
【0047】
なお、仮止め工程、立坑調整工程、仮締め工程では、仮止め具3を使用しなくてもよい。具体的には、周方向フランジ22同士の仮止め、立坑100の調整、周方向フランジ22同士の仮締めは、仮止め具3を使用することなしに作業者が手作業でも行うことができる。従って、例えば人手によりライナープレート20同士を安全に連結することができるのであれば、仮止め具3を使用せずに仮止め工程、立坑調整工程、仮締め工程の各工程を行ってもよい。
<本締め工程>
【0048】
次に、周方向フランジ22同士を本締めする。本締め工程では、周方向フランジ22における複数の孔22aのうち、仮止め具3が挿入されていない孔22aに連結金具40を挿入し回転させることにより隙間を有する周方向フランジ22同士を連結する。なお、全ての孔22aに連結金具40を挿入・回転してもよく、一部の孔22aにボルトを挿入することによりライナープレート20同士を連結してもよい。連結金具40とボルトを併用することにより、連結金具40のみを使用した場合と比較してより強固にライナープレート20同士を連結することができる。
【0049】
図8は、連結金具40によりライナープレート20同士を保持した状態を示す図である。図8に示すように、本締め工程が終了した状態では、ライナープレート20同士は連結金具40により連結されている。図8には、全ての孔22aに連結金具40が挿入されている例を示しているが、全ての孔22aに連結金具40が挿入される必要はなく、一部の孔22aに連結金具40が連結されていればよい。孔22aの全個数に対して挿入される連結金具40の割合(連結金具40が挿入される孔22aの割合)が増加すれば、孔22aに何も設置していない場合と比較して、それだけライナープレート20同士の連結の強度を高めることができる。
【0050】
図9(a)、(b)は、連結金具40がライナープレート20に装着された状態を示す図である。連結金具40は、周方向フランジ22の孔22aと径方向の内側端部22b間に跨って装着される。周方向フランジ22の孔22aと径方向の内側端部22b間の径方向距離Fは、連結金具40がライナープレート20に装着された場合に側方から視た場合の長さ(連結時の径方向の長さ)L1よりも小さく、返し片61と第2折り曲げ部72との径方向の離間距離L2よりも大きい。即ち、図9(a)に示すように、周方向フランジ22の孔22aと径方向の内側端部22bとの間の部分は連結金具40に覆われる。ライナープレート20同士を連結させるには、孔22aに差し込み部60が挿入された状態の連結金具40を、ハンマー等の打撃工具で打撃して、図中の矢印方向に回転させる。なお、図中のLmaxは、連結金具40の最大長を示す。
【0051】
図9(b)に示すように、周方向フランジ22の孔22aと径方向の内側端部22bとの間の部分は、第1開口部60aと第2開口部70aに収容された状態で差し込み部60に把持されるとともに把持部72aにより把持される。連結金具40が弾性変形可能に形成されていることにより、把持部72aがライナープレート20に対して本体部50側への押圧力を付与し、連結金具40がライナープレート20に固定される。なお、図9(b)において、連結金具40を上下反転させてライナープレート20に装着させてもよく、連結金具40の装着方向は限定しない。
【0052】
図10(a)、(b)は、周方向フランジ22にせん断力が生じた場合における周方向フランジ22と連結金具40との関係性を示す図である。周方向フランジ22にせん断力が生じた場合には、下側の周方向フランジ(下側フランジ)22Lは、上側の周方向フランジ(上側フランジ)22Uに対して、径方向において相対的に内側又は外側にずれた状態となる。図10(a)に示すように、下側フランジ22Lに対して径方向内側(横方向)へのせん断力が作用して径方向内側(図中左側)にずれた場合には、下側フランジ22Lが差し込み部60に把持されることにより、連結金具40が周方向フランジ22から外れることが防止される。また、図10(b)に示すように、下側フランジ22Lに対して径方向外側(横方向)へのせん断力が作用して径方向外側(図中右側)にずれた場合には、下側フランジ22Lが挟持部70に把持されることにより、連結金具40が周方向フランジ22から外れることが防止される。下側フランジ22Lが上側フランジ22Uに対して径方向の内側又は外側にずれた場合であっても、連結金具40により上側フランジ22U又は下側フランジ22Lの移動が抑制されるため、大幅なずれが発生することを抑制することができる。
【0053】
このように、ライナープレート20を組み上げたライナープレート連結体2に偏圧等が作用し、フランジ22間にせん断力が作用しても、断面略コの字状に折り返しが形成された差し込み部60と挟持部70により、2枚のフランジ22間のずれを拘束するため、連結金具40がライナープレート20から外れることを防止することができる。特に、2枚のフランジ22間のずれ方が異なっても、差し込み部60と挟持部70の双方に断面略コの字状の折り返しが形成されているため連結金具40がライナープレート20から外れにくい。また、孔22aの縁部に差し込み部60の返し片61を係合し、差し込み部60を中心に挟持部70を回転させるだけで連結作業が完了するので、ハンマー等の打撃により容易に施工でき、工期短縮を図ることができる。さらに、板部材を平面的に折り曲げるだけで連結金具40を成形することができるため、製造コストを抑制することができる。
【0054】
本実施形態によれば、複数の孔22a、23aが穿設されたフランジ22、23を上下端並びに左右端に有するライナープレート20同士を連結する際に、ライナープレート20のフランジ22同士を連結するための連結金具40が、平板状の本体部50と、本体部50の一端側において面外方向の下方D側に湾曲するとともに第1開口部60aが形成された差し込み部60と、本体部50の他端側において面外方向の下方D側に湾曲するとともに第1開口部60aと対向する第2開口部70aが形成された挟持部70とを備える。このような構成を有する連結金具40の差し込み部60を、複数の孔22aの少なくとも一部の孔22aに差し込み、差し込み部60を中心に挟持部70を回転させることでライナープレート20同士を連結する。これにより、ライナープレート20を組み上げたライナープレート連結体2に偏圧等が作用し、フランジ22間にせん断力が作用しても、断面略コの字状に折り返しが形成された差し込み部60と挟持部70により、2枚のフランジ22間のずれを拘束する。従って、連結金具40がライナープレート20から外れることを防止することができ、作業者の安全性を確保することができる。
【0055】
また、孔22aに差し込み部60の返し片61を係合し、差し込み部60を中心に挟持部70を回転させるだけで連結作業が完了するので、ハンマー等の打撃により容易に施工でき、工期短縮を図ることができる。さらに、一枚の平板状の部材を折り曲げることにより連結金具40を形成することができるため、低コスト且つ少ない加工回数により連結金具40を製造することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、挟持部70は、折り返しが形成された第1折り曲げ部71と、第1折り曲げ部71に連続して設けられるとともに本体部50から遠ざかる方向に湾曲した第2折り曲げ部72を有し、第2折り曲げ部72にフランジを把持する把持部72aを設けた。把持部72aがフランジ22を強く把持することで、フランジ22間の締結力を増大させライナープレート連結体2全体の変形を抑制することができる。また、フランジ22に挿入された連結金具40がずれにくくなるとともに、差し込み部60を中心に連結金具40が逆回転してフランジ22から外れることが抑制され、ライナープレート連結体2を使用する際の安全性を確保することができる。更に、第2折り曲げ部72が、第1折り曲げ部71から離間するにつれて下方側に広がるように形成されているため、締結前のフランジ22間に隙間があっても、連結金具40が連結し易く、施工性を向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、差し込み部60は、2回折り曲げられて断面略コ字状に形成される。このとき、図示していないが、返し片61に、挟持部70の第2折り曲げ部72のような折り曲げを設けることで、差し込み部60がフランジ22を強く把持することが可能となり、フランジ22間の締結力を増大させライナープレート連結体2全体の変形を抑制することができる。また、フランジ22に挿入された連結金具40がずれにくくなるとともに、差し込み部60を中心に連結金具40が逆回転してフランジ22から外れることが抑制され、ライナープレート連結体2を使用する際の安全性を確保することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態における連結金具40について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、前述の実施形態により本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【符号の説明】
【0059】
1 壁体
2 ライナープレート連結体
20 ライナープレート
21 波形鋼板
22 周方向フランジ
22a 孔
22b 内側端部
22L 下側フランジ
22U 上側フランジ
23 軸方向フランジ
23a 孔
29 連結材
3 仮止め具
30 保持機構
31 基部
31a 表面
31b 裏面
31d 孔
32 挿入部
32a 軸
32b スリット
33 係合部
33a 可動部
40 連結金具
50 本体部
60 差し込み部
60a 第1開口部
61 返し片
70 挟持部
70a 第2開口部
71 第1折り曲げ部
72 第2折り曲げ部
72a 把持部
100 立坑
102 差込み部
122L 下側フランジ
122U 上側フランジ
140 連結金具
D 面外方向下方
D1 外径
d1 径
E 面外方向の上方
F 径方向距離
L1 全長
L2 離間距離
M 中心軸
P1 離間距離
W 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11