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特許7551512トランスポゼース活性測定用ベクターセット、キット、トランスポゼース活性測定方法及び細胞分離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】トランスポゼース活性測定用ベクターセット、キット、トランスポゼース活性測定方法及び細胞分離方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20240909BHJP
   C12Q 1/6897 20180101ALI20240909BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
C12Q1/6897 Z
C12Q1/02
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2021003669
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2022108587
(43)【公開日】2022-07-26
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野崎 絵美
(72)【発明者】
【氏名】赤星 英一
(72)【発明者】
【氏名】石原 美津子
【審査官】鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-146014(JP,A)
【文献】国際公開第2019/219947(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/143698(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0121509(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00-1/70
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスポゼース標的配列、前記トランスポゼース標的配列の下流に連結された第1プロモーター配列、及び前記第1プロモーター配列の下流に連結された第1レポーター遺伝子を含む第1ベクターと、
5’側トランスポゼース認識配列と、3’側トランスポゼース認識配列と、その間に配置された、第1エンハンサー配列とを含む第2ベクターと
を含む、ベクターセット。
【請求項2】
前記トランスポゼース標的配列は、配列番号1の塩基配列を含む請求項1に記載のベクターセット。
【請求項3】
前記第1エンハンサー配列は、配列番号11の塩基配列を含む請求項1又は2に記載のベクターセット。
【請求項4】
前記第1プロモーター配列は、配列番号3の塩基配列を含む請求項1~3の何れか1項に記載のベクターセット。
【請求項5】
前記第1レポーター遺伝子は、配列番号5の塩基配列を含む、請求項1~4の何れか1項に記載のベクターセット。
【請求項6】
5’側トランスポゼース認識配列及び3’側トランスポゼース認識配列は、配列番号8及び配列番号9の塩基配列をそれぞれ含む、請求項1~5の何れか1項に記載のベクターセット。
【請求項7】
前記第2ベクターは、第2プロモーター配列と、前記第2プロモーター配列の下流に連結された、第2レポーター遺伝子5’側断片及び第2レポーター遺伝子3’側断片とを更に含み、
前記第2レポーター遺伝子5’側断片及び前記第2レポーター遺伝子3’側断片は、第2レポーター遺伝子が二分割された5’側の配列と3’側の配列とをそれぞれ含み、
前記5’側トランスポゼース認識配列と、前記3’側トランスポゼース認識配列と、その間に配置された、前記第1エンハンサー配列とは、前記第2レポーター遺伝子5’側断片及び前記第2レポーター遺伝子3’側断片の間に配置されている、
請求項1~6の何れか1項に記載のベクターセット。
【請求項8】
前記第2レポーター遺伝子は、二分割されていることによって不活性化された状態である、請求項7に記載のベクターセット。
【請求項9】
前記第1レポーター遺伝子及び前記第2レポーター遺伝子は互いに異なる、請求項7又は8に記載のベクターセット。
【請求項10】
前記第2ベクターは、前記第2プロモーター配列の上流に第2エンハンサー配列が連結されている請求項7~9の何れか1項に記載のベクターセット。
【請求項11】
前記第2プロモーター配列は、配列番号2の塩基配列を含む、請求項7~10の何れか1項に記載のベクターセット。
【請求項12】
前記第2レポーター遺伝子5’側断片は配列番号12の塩基配列を含み、前記第2レポーター遺伝子3’側断片は配列番号13の塩基配列を含む、請求項7~11の何れか1項に記載のベクターセット。
【請求項13】
第1エンハンサー配列、前記第1エンハンサー配列の下流に連結された第1プロモーター配列、及び前記第1プロモーター配列の下流に連結された第1レポーター遺伝子を含む遺伝子発現ユニットのうち、
前記第1プロモーター配列、前記第1レポーター遺伝子の全配列、又は、前記第1レポーター遺伝子を二分割した5’側の配列の何れか一つの配列がトランスポゼース標的配列に置換されている配列を含む第1ベクターと、
5’側トランスポゼース認識配列と、3’側トランスポゼース認識配列と、その間に配置された、前記第1ベクターにおいて前記トランスポゼース標的配列で置換された前記第1プロモーター配列、前記第1レポーター遺伝子の全配列、又は、前記第1レポーター遺伝子を二分割した5’側の配列を含む第2ベクターと
を含む、ベクターセット。
【請求項14】
前記第2ベクターは、第2プロモーター配列と、前記第2プロモーター配列の下流に連結された、第2レポーター遺伝子5’側断片及び第2レポーター遺伝子3’側断片とを更に含み、
前記第2レポーター遺伝子5’側断片及び前記第2レポーター遺伝子3’側断片は、第2レポーター遺伝子を二分割した5’側の配列と3’側の配列とをそれぞれ含み、
前記5’側トランスポゼース認識配列と、3’側トランスポゼース認識配列と、その間に配置され、前記第1ベクターにおいて前記トランスポゼース標的配列で置換された前記第1プロモーター配列、前記第1レポーター遺伝子の全配列、又は、前記第1レポーター遺伝子を二分割した5’側の配列は、前記第2レポーター遺伝子5’側断片及び前記第2レポーター遺伝子3’側断片の間に配置されている、請求項13に記載のベクターセット。
【請求項15】
前記第2ベクターは、前記第2プロモーター配列の上流に第2エンハンサー配列が連結されている請求項14に記載のベクターセット。
【請求項16】
請求項1~15の何れか1項に記載のベクターセットと、
前記第1レポーター遺伝子から発現する第1レポータータンパク質を検出するための試薬と
を含むトランスポゼースの活性を測定するためのキット。
【請求項17】
前記ベクターセットは請求項7~12の何れか1項のベクターセットであり、
前記第2レポーター遺伝子から発現する第2レポータータンパク質を検出するための試薬を更に含む請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記ベクターセットは、脂質粒子に内包されている、請求項16又は17に記載のキット。
【請求項19】
ベクターセットを用いた細胞内のトランスポゼースの活性を生体外で測定する方法であって、
前記ベクターセットは、請求項1~15の何れか1項に記載のベクターセットであり、当該方法は、
前記細胞に前記第1ベクター及び前記第2ベクターを導入することと、
前記第1レポーター遺伝子から発現する第1レポータータンパク質を検出することと、
前記第1レポータータンパク質の検出の結果から前記トランスポゼースの活性を評価すること
を含むトランスポゼース活性測定方法。
【請求項20】
前記活性の評価において前記第1レポータータンパク質が発現している場合、トランスポゼースの組込み活性があると評価する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記導入は前記第1ベクター及び前記第2ベクターを内包した脂質粒子を前記細胞に接触させることにより行われる、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記トランスポゼースは、それをコードする核酸の形態で前記検出の前に前記細胞に導入される、請求項19~21の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記ベクターセットが請求項7~12の何れか1項に記載のベクターセットであり、前記トランスポゼースの活性の評価は、前記第2レポーター遺伝子から発現する第2レポータータンパク質の検出の結果を更に用いて行われる、
請求項19~22に記載の方法。
【請求項24】
前記活性の評価において前記第2レポータータンパク質の発現がある場合、トランスポゼースの切り出し活性があると評価する、請求項23の何れか1項に記載の方法。
【請求項25】
ベクターセットを用いて細胞内のトランスポゼースの活性に基づいて細胞を分離する方法であって、
前記ベクターセットは、請求項1~15の何れか1項に記載のベクターセットであり、当該方法は、
生体外で前記細胞に前記第1ベクター及び前記第2ベクターを導入することと、
前記第1レポーター遺伝子から発現する第1レポータータンパク質を検出することと、
前記第1レポータータンパク質の検出の結果に基づいて細胞を分離することと
を含む細胞分離方法。
【請求項26】
前記ベクターセットが請求項7~12の何れか1項に記載のベクターセットであり、前記分離は、前記第2レポーター遺伝子から発現する第2レポータータンパク質の検出の結果に更に基づいて行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記分離において、前記第1レポータータンパク質と前記第2レポータータンパク質とが両方発現する細胞を分離する、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、トランスポゼース活性測定用ベクターセット、キット、トランスポゼース活性測定方法及び細胞分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸を細胞のゲノムに組込む技術において、トランスポゼースが用いられている。トランスポゼースは、トランスポゼース認識配列が両端に配置されたDNA配列を切り出す活性、及び切り出したDNA配列をゲノム上のトランスポゼース標的配列に挿入する活性を有する酵素である。
【0003】
このような酵素を利用又は製造する際、その酵素が適切に働くか否か、即ち、酵素の活性を要所で確認することが重要である。そのためより簡便にトランスポゼースの活性を確認する方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-146014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、生きた細胞でより簡単かつ正確にトランスポゼースの活性を測定することができるトランスポゼース活性測定用ベクターセット、キット、トランスポゼース活性測定方法及び細胞分離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るベクターセットは第1ベクター及び第2ベクターを含む。第1ベクターは、トランスポゼース標的配列、第1プロモーター配列及び第1レポーター遺伝子を含む。第2ベクターは、5’側トランスポゼース認識配列と、3’側トランスポゼース認識配列と、その間に配置された、第1エンハンサー配列とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態の第1ベクター及び第2ベクターの一例を示す図である。
図2図2は、第1実施形態のトランスポゼース活性測定方法の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、第1実施形態の導入工程後の各ベクターの挙動の一例を示す図である。
図4図4は、第1実施形態の細胞分離方法の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、第1実施形態の脂質粒子の一例を示す断面図である。
図6図6は、第2実施形態の第2ベクターの一例を示す図である。
図7図7は、第2実施形態のトランスポゼース活性測定方法の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、第2実施形態の導入工程後の各ベクターの挙動の一例を示す図である。
図9図9は、第2実施形態の細胞分離方法の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、第3実施形態の第1ベクター及び第2ベクターの一例を示す図である。
図11図11は、例1で作製したpCMV-LuEuCの構成を示す図である。
図12図12は、例2で作製したpTTAA×5-EF1α-Lucの構成を示す図である。
図13図13は、例5の実験結果を示すグラフである。
図14図14は、例5の実験結果を示すグラフである。
図15図15は、例6の実験結果を示すグラフである。
図16図16は、例6の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、添付の図面を参照して説明する。なお、各実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、その説明を一部省略する場合がある。図面は模式的なものであり、各部の厚さと平面寸法との関係、各部の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。
【0009】
実施形態によれば、トランスポゼースの活性を測定するためのベクターが提供される。活性測定の対象となるトランスポゼースは、例えば、DNA型トランスポゼースである。DNA型トランスポゼースは、例えば、PiggyBac、SleepingBeauty、Frog Prince、Hsma、Minos、Tol1、Tol2、Passport、hAT、Ac/Ds、PIF、Harbinger、Harbinger3-DR、Himar1、Hermes、Tc3又はMos1等であるが、これらに限定されるものではない。トランスポゼースは、上記のトランスポゼースを改変したものであってもよい。
【0010】
本明細書においてトランスポゼースの活性とは、核酸配列からトランスポゼース認識配列を両端に持つ配列を切り出すための「切り出し活性」、及び切り出した配列をゲノム上のトランスポゼース標的配列に組込むための「組込み活性」を意味する。
【0011】
(第1実施形態)
・トランスポゼース組込み活性測定用ベクター
以下、実施形態に係るトランスポゼース組込み活性測定用ベクター(以下、「第1ベクター」とも称する)について説明する。図1の(a)に示すように、第1実施形態に係る第1ベクター1は、トランスポゼース標的配列2(図中、「TP標的配列」)と、トランスポゼース標的配列2の下流に連結された第1プロモーター配列P1と、第1プロモーター配列P1の下流に連結された第1レポーター遺伝子R1と、第1レポーター遺伝子R1の下流に連結された第1転写終結配列T1とを含む。
【0012】
トランスポゼース標的配列2は、トランスポゼースによるDNA配列の組込みの標的となる配列である。言い換えればトランスポゼースはトランスポゼース標的配列2に切り出したDNA配列を組込む。トランスポゼース標的配列2は、例えばTTAA(T:チミン、A:アデニン)を複数含む配列であり、例えばこれを5回含む配列であることが好ましい。又はTAを複数含む配列も使用することができる。
【0013】
例えば、トランスポゼース標的配列2は以下の表1に示す塩基配列であることが好ましいい。
【0014】
【表1】
【0015】
詳しくは後述するが、第1実施形態においては第1ベクター1の使用時、トランスポゼース標的配列2には第1エンハンサー配列E1が組込まれ得る。
【0016】
第1プロモーター配列P1は、トランスポゼース標的配列2に第1エンハンサー配列E1が組込まれた場合に第1プロモーター配列P1の下流の遺伝子活性化が促進されるよう、トランスポゼース標的配列2の下流に作動可能に連結されている。
【0017】
本明細書において連結されているとは、2つの配列の間に他の配列を含むことなく連結されている場合、及び2つの配列の間に任意の配列が含まれる場合を含む。任意の配列は例えばスペーサー配列である。スペーサー配列は、トランスポゼース標的配列2、第1プロモーター配列P1、第1レポーター遺伝子R1、第1転写終結配列T1及びそれらの相補配列の配列とは異なり、かつこれらの配列の活性に悪影響を与えない核酸配列である。
【0018】
第1プロモーター配列P1は、その活性により、下流に連結された遺伝子の転写を開始できる公知のプロモーターの塩基配列であればよい。第1プロモーター配列P1は、エンハンサーの存在によって遺伝子を発現できるプロモーターであってもよい。又は、第1プロモーター配列P1は単体では遺伝子発現レベルが低いが、エンハンサーの存在によって遺伝子発現レベルが高くなるプロモーターであってもよい。
【0019】
第1プロモーター配列P1は、例えばサイトメガロウィルス(CMV)プロモーター、シミアンウィルス40(SV40)プロモーター、チミジンキナーゼ(TK)プロモーター、ユビキチン(UbC)プロモーター、ヒトポリペプチド鎖伸長因子(EF1α)プロモーター又はサイトメガロウィルスエンハンサーとチキンβ-アクチンプロモーターのハイブリッド(CAG)プロモーター、マウス幹細胞ウィルス(MSCV)プロモーター又はラウス肉腫ウィルス(RSV)プロモーター等であることが好ましい。しかしながら第1プロモーター配列P1は、プロモーターの機能を有する限りにおいて、上で列挙したものに限定されるものではなくともよく、また上記プロモーターの塩基配列のうち任意の塩基を置換、或いは欠失させたものであってもよい。
【0020】
第1プロモーター配列P1は、表2に示す塩基配列を有するCMVプロモーター(配列番号2)又は表3に示すヒトポリペプチド鎖伸長因子遺伝子(EF1α)のプロモーター配列(配列番号3)であることが好ましい。
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
第1レポーター遺伝子R1は、第1プロモーター配列P1の活性によりその遺伝子発現が調節されるように第1プロモーター配列P1の下流に作動可能に連結されている。
【0024】
第1レポーター遺伝子R1は、公知のレポータータンパク質をコードする遺伝子の塩基配列であればよい。第1レポーター遺伝子R1は、例えば、青色蛍光タンパク質遺伝子、緑色蛍光タンパク質遺伝子又は赤色蛍光タンパク質遺伝子等の蛍光タンパク質の遺伝子;ホタルルシフェラーゼ遺伝子、ウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子又はNanoLuc(登録商標)ルシフェラーゼ遺伝子等の発光酵素タンパク質の遺伝子;キサンチンオキシダーゼ遺伝子又は一酸化窒素合成酵素遺伝子等の活性酸素生成酵素の遺伝子;或いはβ-ガラクトシダーゼ遺伝子又はクロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ遺伝子等の発色酵素タンパク質の遺伝子等である。しかしながら第1レポーター遺伝子R1は、レポーターとしての機能を失わない限りにおいては、上で列挙したレポーター遺伝子に限定されるものではなく、また上記のレポーター遺伝子の塩基配列の任意の塩基を置換、或いは欠失させたものであってもよい。
【0025】
例えば、第1レポーター遺伝子R1として表4に示すホタルルシフェラーゼ遺伝子、又は表5に示すトゲオキヒオドシエビ(Oplophorus gracilirostris)由来のルシフェラーゼ遺伝子等を用いることができる。
【0026】
【表4】
【0027】
【表5】
【0028】
第1転写終結配列T1は、第1レポーター遺伝子R1の転写を終結するように第1レポーター遺伝子R1の下流に作動可能に連結されている。第1転写終結配列T1は、例えば、シミアンウィルス40(SV40)のポリ(A)付加シグナル配列、ウシ成長ホルモン遺伝子のポリ(A)付加シグナル配列又は人工的に合成されたポリ(A)付加シグナル配列等である。ただし、第1転写終結配列T1はこれらに限定されるものではなく、転写終結配列としての機能を有する限りにおいては、他の配列、又は上記した転写終結配列の塩基配列を改変したもの等を用いてもよい。
【0029】
表6及び表7に示す塩基配列のウシ成長ホルモン転写終結配列又はSV40転写終結配列の塩基配列を用いることが好ましい。
【0030】
【表6】
【0031】
【表7】
【0032】
第1ベクター1は、例えば環状の二本鎖DNA分子である。第1ベクター1は、例えばプラスミドベクターである。
【0033】
第1ベクター1は、上記の配列の他にも任意の塩基配列を含んでもよい。このような塩基配列は、例えば特定の機能を有する塩基配列であってもよいし、機能を持たない配列であってもよい。機能を有する塩基配列は、例えば、更なるレポーター遺伝子発現ユニット、薬剤耐性遺伝子、複製開始タンパク質発現ユニット及び/又は複製開始配列等である。
【0034】
薬剤耐性遺伝子は、例えば当該ベクターが導入された細胞のスクリーニングに使用することができる。薬剤耐性遺伝子として、例えば、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、ストレプトマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子等を用いることができる。
【0035】
複製開始配列は、複製開始タンパク質が結合し、第1ベクター1の複製を開始させるための配列である。第1ベクター1が複製されると第1レポーター遺伝子R1から発現するレポータータンパク質量が増大し、より感度よくトランスポゼースの活性を測定することができる。複製開始配列として、例えば、シミアンウィルス40、エプスタイン・バー・ウィルス、マウス・ポリオーマ・ウィルス、ColE1等に由来する複製開始配列を用いることができる。
【0036】
複製開始タンパク質は、第1ベクター1が導入される細胞内にもともと存在するものであってもよいし、或いは当該細胞内に第1ベクター1とは別の複製開始タンパク質発現ユニットを含むベクターによって導入されたものであってもよい。複製開始タンパク質は、第1ベクター1内に複製開始タンパク質発現ユニットを設け、そこから発現させてもよい。
【0037】
・第2ベクター
第1ベクター1を用いて行われるトランスポゼース活性測定方法は、上記の何れかの第1ベクター1と、第2ベクターとを含むベクターセットを用いて行われる。第2ベクターについて以下、説明する。
【0038】
図1の(b)に一例を示すように、第2ベクター3はトランスポゼースにより切り出され得る切り出し用配列4を少なくとも含む。切り出し用配列4は、5’側トランスポゼース認識配列(図中、「5’-IR」)4aと、3’側トランスポゼース認識配列(図中、「3’-IR」)4bと、これら2つの認識配列の間に配置された第1エンハンサー配列E1とを含む。
【0039】
これら2つの認識配列は、トランスポゼースが認識して、そこに結合し、切り出し用配列4を切り出すための配列である。5’側トランスポゼース認識配列4a及び3’側トランスポゼース認識配列4bは、例えば互いに逆向きの同じ配列を含む、逆向き反復配列(Inverted Repeat Sequences:IR)である。認識配列の塩基配列は、活性測定対象のトランスポゼースの種類に従って選択される。トランスポゼースがPiggyBacである場合の5’側トランスポゼース認識配列4a及び3’側トランスポゼース認識配列4bの一例を以下の表8、表9にそれぞれ示す。
【0040】
【表8】
【0041】
【表9】
【0042】
トランスポゼースがSleepingBeautyである場合の5’側トランスポゼース認識配列4a及び3’側トランスポゼース認識配列4bのうち一方の塩基配列の一例を以下の表10に示す。他方は、例えば、下記配列の逆向き反復配列を含み得る。
【0043】
【表10】
【0044】
第1エンハンサー配列E1は、第1プロモーター配列P1の活性化を促進し、その下流に連結された遺伝子の発現を促進することができる公知のエンハンサーであればよい。第1エンハンサー配列E1は、例えば第1プロモーター配列P1の種類に従って選択され得る。第1エンハンサー配列E1として、例えばCMVエンハンサー、SV40エンハンサー、RSVエンハンサー、マウスレトロウイルスロングターミナルリピート(MLV LTR)エンハンサー等を用いることが好ましい。しかしながら第1エンハンサー配列E1は、エンハンサーとしての機能を失わない限りにおいては、上で列挙したエンハンサー配列に限定されるものではなく、また上記のエンハンサー配列の任意の塩基を置換、或いは欠失させたものであってもよい。
【0045】
表11は第1プロモーター配列P1がCMVプロモーターである場合のエンハンサー配列の塩基配列の一例を示す。
【0046】
【表11】
【0047】
第2ベクター3は、上記の配列の他にも任意の塩基配列を含んでもよい。このような塩基配列は、例えば特定の機能を有する塩基配列であってもよいし、機能を持たない配列であってもよい。機能を有する塩基配列は、例えば、レポーター遺伝子発現ユニット、薬剤耐性遺伝子、複製開始タンパク質発現ユニット及び/又は複製開始配列等である。
【0048】
第2ベクター3は、例えば環状の二本鎖DNA分子である。第2ベクター3は、例えばプラスミドベクターである。
【0049】
・トランスポゼース活性測定方法
以下、第1ベクター1及び第2ベクター3を用いて行われるトランスポゼース活性測定方法について説明する。トランスポゼース活性測定方法は、例えば図2に示す次の工程を含む。
【0050】
(S1)細胞に第1ベクター及び第2ベクターを導入する導入工程、
(S2)第1レポーター遺伝子から発現する第1レポータータンパク質を検出する第1検出工程、及び
(S3)第1レポータータンパク質の検出の結果からトランスポゼースの活性を評価する第1評価工程。
【0051】
以下、実施形態の方法の例について詳細に説明する。
【0052】
まず、細胞を用意する。細胞は例えば、ヒト、動物又は植物由来のもの、或いは細菌又は菌類等の微生物由来の細胞であり得る。細胞は、好ましくは動物細胞であり、より好ましくは哺乳類細胞であり、最も好ましくはヒト細胞である。細胞は、生体外に取り出された細胞であってもよく、例えば、血液等の体液、組織又はバイオプシー等から分離された細胞であってもよい。細胞は、例えば、単離細胞、培養細胞又は株化された細胞であってもよい。或いは、細胞は、生体内の細胞であってもよい。
【0053】
細胞内には活性を測定する対象となるトランスポゼースが存在し得る。トランスポゼースは、例えばそれをコードする核酸、例えばDNA若しくはRNAの形態で細胞内に導入され転写翻訳され発現したものであってもよい。又はタンパク質若しくはペプチドの形態で細胞内に導入されたものであってもよい。或いは、予め細胞のゲノム上に組込まれ、発現しているものであってもよい。
【0054】
次に、細胞に第1ベクター1及び第2ベクター3を細胞に導入する(導入工程S1)。導入工程S1は、例えば細胞が生体外に取り出された状態の細胞である場合、リポソーム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム共沈殿法、カチオン性ポリマー法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法又はソノポレーション法等の公知の方法で行うことができる。
【0055】
特にリポソーム法を用いることが好ましい。リポソーム法は、第1ベクター1及び第2ベクター3をリポソーム(脂質粒子)に内包し、それを含む組成物等を細胞と接触させることで、例えば脂質粒子はエンドサイトーシスにより細胞に取り込まれ、内包物を細胞内に放出する。脂質粒子の詳細については、後のキットの実施形態において説明する。
【0056】
細胞が生体内の細胞である場合、導入は、第1ベクター1及び第2ベクター3を含む組成物を生体へ注射又は点滴すること等によって行うことができる。組成物は、例えば第1ベクター1及び第2ベクター3を内包する上記脂質粒子を含んでもよい。
【0057】
トランスポゼースを細胞に導入する場合、第1ベクター1及び第2ベクター3の導入と同時に行ってもよいし、どちらかを先に行ってもよい。
【0058】
導入工程S1の後、例えば図3に示すように、活性を有するトランスポゼースTPが第2ベクター3から切り出し用配列4を切り出す(図3の(a)部)。次いで、第1ベクター1のトランスポゼース標的配列2に切り出し用配列4を導入する(図3の(b)部)。つまり切り出し用配列4の移転が行われる。その結果、第1エンハンサー配列E1が第1ベクター1に組込まれ、第1ベクター1に、第1エンハンサー配列E1と、第1プロモーター配列P1と、第1レポーター遺伝子R1とを含む第1遺伝子発現ユニットU1が形成される(図3の(c)部)。第1エンハンサー配列E1は第1レポーター遺伝子R1の発現を促進する(図3の(d)部)。その結果、第1レポータータンパク質5の発現量が増加する(図3の(e)部)。第1レポータータンパク質5は第1信号6を生じる。
【0059】
第1信号6は、第1レポータータンパク質5の種類に応じて得られる検出可能な信号であり、例えば蛍光、化学発光、生物発光、生物化学発光及び呈色等、或いはタンパク質等の分子の呈示である。
【0060】
第1信号6は、第1レポータータンパク質5自身から発せられるものであるか、又は第1レポータータンパク質5と特定の物質(以下、「第1物質」と記載する)との反応、例えば、酵素反応又は結合等により生じるものである。第1物質は、例えば、第1レポータータンパク質5が酵素である場合、その基質である。例えば、第1レポータータンパク質5がルシフェラーゼである場合、第1物質は、ルシフェリンである。
【0061】
或いは、第1信号6は、第1レポータータンパク質5と特定の物質との反応により生じる物質の存在を検出するための更なる検出試薬(以下、「第2物質」と記載する)に由来する信号であってもよい。
【0062】
次に第1レポータータンパク質5を検出する(第1検出工程S2)。第1レポータータンパク質5の検出は、例えば第1信号6を検出することにより行われ得る。検出は第1レポータータンパク質5又は第1信号6の種類に応じて選択された何れかの公知の方法を用いて行えばよい。
【0063】
検出は、例えば、生きたままの細胞において行うことができる。しかしながら、細胞から第1レポータータンパク質5を抽出して得られた抽出液において行ってもよい。
【0064】
例えば、上記第1物質及び/又は第2物質を用いる場合、これらの物質は第1検出工程S2のはじめに細胞に添加され得る。これらの物質は、細胞の培養培地に添加してもよいし、細胞に導入してもよい。或いは、細胞から得られたレポータータンパク質抽出液に添加してもよい。
【0065】
第1レポータータンパク質5が蛍光タンパク質である場合、細胞に励起光を照射することにより蛍光タンパク質から発生する蛍光として第1信号6が得られる。蛍光(第1信号6)は、目視、顕微鏡、フローサイトメーター、イメージ解析ソフト、又はフルオロメーター等により検出することができる。
【0066】
第1レポータータンパク質5がルシフェラーゼである場合、ルシフェリンを添加することにより化学発光として第1信号6が得られる。化学発光(第1信号6)は、目視、顕微鏡、フローサイトメーター、イメージ解析ソフト、又はルミノメーター等により検出することができる。
【0067】
第1レポータータンパク質5がβ-ガラクトシダーゼである場合、5-ブルモー4-クロロー3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド(X-Gal)又はo-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシド(ONPG)等の基質を添加することにより、細胞溶液又は抽出液の吸光度として第1信号6が得られる。吸光度(第1信号6)は、吸光度計、分光光度計又は濁度計等で検出することができる。
【0068】
第1レポータータンパク質5が一酸化窒素合成酵素又はキサンチンオキシダーゼである場合、基質を添加し、発生する活性酸素が第1信号6として得られる。活性酸素(第1信号6)は電子スピン共鳴装置(ESR装置)等で検出することができる。
【0069】
第1レポータータンパク質5が重金属結合タンパク質である場合、測定可能な重金属を添加し、レポータータンパク質に結合した重金属が第1信号6として得られる。重金属(第1信号6)は、磁気共鳴イメージング装置、核医学診断装置、MRI撮像装置、又はX線コンピュータ断層撮影装置により検出することができる。
【0070】
例えば第1信号6の強度は第1レポータータンパク質5の発現量と相関するので、第1信号6の強度の強弱から、第1レポータータンパク質5が発現の強弱を決定することができる。或いは第1レポータータンパク質5を直接定量してもよい。
【0071】
次に、第1レポータータンパク質5の検出の結果からトランスポゼースの活性を評価する(第1評価工程S3)。
【0072】
例えば、第1レポータータンパク質5が高発現している場合、トランスポゼースTPの少なくとも組込み活性が良好であると評価することができる。
【0073】
ここで、「第1レポータータンパク質5が高発現している」は、第1レポータータンパク質5(第1信号6)が検出された場合若しくは閾値以上得られた場合、又は第1レポータータンパク質5の発現量(第1信号6の強度)が増加した場合若しくは増加量が閾値以上であった場合等を含む。「組込み活性が良好である」は、組込み活性を有すること、及び組込み活性が高いことを含む。
【0074】
第1レポータータンパク質5の発現量(第1信号6の強度)の「増加」は、例えば、第1エンハンサー配列E1が第1ベクター1に組込まれる前の第1レポータータンパク質5の発現量(第1信号6の強度)の値と比較して増加したことをいう。第1エンハンサー配列E1の組込み前の第1レポータータンパク質5の発現量(第1信号6の強度)の値は、例えばプロモーターの種類によっては0であるか、又は第1エンハンサー配列E1の組込み後よりも小さな値であり得る。第1エンハンサー配列E1の組込み前の値は、例えば第1ベクター1を先に細胞に導入し、第2ベクター3及び/又はトランスポゼースTPを導入する前に検出を行うことで得ることができる。又は第1ベクター1及び第2ベクター3(必要に応じてトランスポゼースTP)を導入した直後、即ち、トランスポゼースTPによる切り出し及び組込みが行われる前に検出して得られた値でもよい。或いは、第1ベクター1が導入され、第2ベクター3及び/又はトランスポゼースTPが含まれない細胞において予め第1信号6の強度を測定しておき、その値を比較に用いてもよい。
【0075】
閾値は、例えば、組込み活性を有することが既知であるトランスポゼースTPを用いて実施形態の測定方法を実施した際に得られた第1レポータータンパク質5の発現量(第1信号6の強度)の値又はその増加量とすることができる。
【0076】
ある実施形態においては、第1レポータータンパク質5の発現量(第1信号6の強度)からトランスポゼースTPの組込み活性の度合いを評価してもよい。組込み活性の度合いとは、検査対象のトランスポゼースTP全体のうち組込み活性を有するものの割合、或いは細胞内で発現した又は細胞内に存在する組込み活性を有するトランスポゼースTPの量である。例えば、第1レポータータンパク質5の発現量(第1信号6の強度)が高い程、組込み活性を有するトランスポゼースTPの割合又は量が多いと評価することも可能である。
【0077】
反対に、例えば第1レポータータンパク質5が低発現である場合、トランスポゼースTPの切り出し活性又は組込み活性の少なくとも一方が不良であると評価することができる。
【0078】
ここで、「第1レポータータンパク質5が低発現である」とは、第1レポータータンパク質5(第1信号6)が検出されない場合若しくは閾値未満であった場合、又は第1レポータータンパク質5の発現量(第1信号6の強度)が増加しなかった場合、増加量が閾値未満であった場合若しくは減少した場合を含む。
【0079】
「活性が不良である」とは、活性が無いこと及び活性が低いことを含む。
【0080】
以上に説明したように、第1評価工程S3により、トランスポゼースTPの活性を評価することができる。少なくとも組込み活性のあるトランスポゼースTPを見出すことが可能である。
【0081】
トランスポゼース活性測定方法は、一つの装置を用いて行われてもよい。装置は、例えば、細胞を収容する試料収容部と、試料収容部に収容された細胞に第1ベクター1及び第2ベクター3を含む組成物、必要に応じてトランスポゼースTP、第1検出工程S2に用いる第1物質及び/又は第2物質等を添加する送液部と、細胞から第1信号6を検出する検出部と、検出部から送られた第1信号6の有無又は強度の情報からトランスポゼースTPの組込み活性の有無又は程度を算出するプログラムを備える情報処理部と、情報処理部で算出された結果を出力する出力部とを備える。
【0082】
本方法によれば、核酸及び/又はレポータータンパク質の抽出等を行う必要がないので、簡単な操作で迅速にトランスポゼースTPの活性を測定することができる。また、核酸及び/又はレポータータンパク質の抽出等、細胞を壊したり細胞内のタンパク質が変性又は分解されたりするおそれのある工程を行うことなく、生きた細胞でトランスポゼースTPの活性を測定することができる。そのため、活性が測定されたトランスポゼースTP及び細胞をインタクトな状態で更なる工程に利用することも可能である。
【0083】
本方法は、例えば、活性の有無又は度合いが不明のトランスポゼースを対象として行われる。例えば、本方法は、例えば自ら合成したトランスポゼース、新規に発見若しくは開発されたトランスポゼース、既存のトランスポゼース、若しくはDNAやRNAの形態のトランスポゼース等を細胞に導入した場合及び/又は細胞で発現させた場合等にそのトランスポゼースの活性を測定するときに用いることができる。例えば、商業的に入手したトランスポゼースの活性の測定、特定のプロセスにおけるトランスポゼースの活性の測定、新規のプロセスにおけるトランスポゼースの活性の測定、又はトランスポゼースを含む製品の品質管理等の用途にも用いることができる。或いは、実験等の一連の工程の一部としてトランスポゼースを用いた導入工程を行う場合に、更に次の工程に進むためにこれらの工程が適切に行われたか否かを確認したい場合にも用いることができる。しかしながら、用途はこれらに限定されるものではない。
・細胞分離方法
更なる実施形態によれば、第1ベクター1を用いる細胞分離方法が提供される。細胞分離方法は、トランスポゼースの活性に基づいて細胞を分離する方法である。
【0084】
細胞分離方法は、図4に示すように、例えば次の工程を含む。
【0085】
(S11)第1ベクター及び第2ベクターを細胞に導入する導入工程、
(S12)第1レポーター遺伝子から発現する第1レポータータンパク質を検出する第1検出工程、及び
(S13)第1レポータータンパク質の検出の結果に基づいて細胞を分離する分離工程。
【0086】
導入工程S11及び第1検出工程S12は前記トランスポゼース活性測定方法の導入工程S1及び第1検出工程S2と同様に行うことができる。
【0087】
細胞分離方法に用いられる第1ベクター1の第1レポーター遺伝子R1は、細胞毒性が低く、かつ生細胞におけるレポータータンパク質の検出が可能な遺伝子であることが好ましい。
【0088】
分離工程S13では、例えば第1検出工程S12で第1レポータータンパク質5が高発現している細胞を少なくとも組込み活性が良好なトランスポゼースTPを含む細胞として、その他の細胞と分離する。或いは、検出結果から組込み活性の度合いを評価して、組込み活性が特に高い細胞を分離することもまた好ましい。
【0089】
分離は、公知の何れかの手段により行われればよい。例えば、セルソーター等のフローサイトメトリーの技術を用いることができる。或いは、細胞を顕微鏡で観察しながら所望の細胞を手作業で分離してもよい。その場合、細胞を吸引及び吐出できる微細なプローブ等を用いることができる。
【0090】
分離工程S13の結果、少なくとも組込み活性が良好なトランスポゼースTPを含む細胞を正確且つ容易に分離することができる。また、細胞を生きたままの状態で分離することができるため、分離された細胞を更なる分析等の工程に用いることが可能である。
【0091】
・キット
更なる実施形態によれば、上記トランスポゼース活性測定方法及び細胞分離方法に用いることができるキットも提供される。当該キットは、第1ベクター1及び第2ベクター3を含むベクターセットを少なくとも含む。
【0092】
ベクターセットは、例えば、溶媒に含まれた組成物として提供される。溶媒は、例えば、エンドトキシンフリー水、PBS、TEバッファー又はHEPESバッファー等を用いることができる。組成物は、更に賦形剤、安定剤、希釈剤及び/又は補助剤等を含んでもよい。
【0093】
ベクターセットは、脂質粒子に内包された状態でキットに含まれていてもよい。脂質粒子について図5を用いて説明する。図5に示すように、脂質粒子7は中空の球状の脂質膜である。例えば、図5の(a)に示すように第1ベクター1と第2ベクター3とは一緒に脂質粒子7に内包されている。又は図5の(b)に示すように第1ベクター1と第2ベクター3とは別々に脂質粒子7に内包されている。
【0094】
脂質粒子7を構成する脂質膜の材料は、例えば、リン脂質又はスフィンゴ脂質、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、ケファリン又はセレブロシド、或いはこれらの組み合わせ等を含む。特に、脂質粒子7の酸解離定数を調節する1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)及び/又は1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含むことが好ましい。
【0095】
更に、脂質粒子7の材料は生分解性の脂質(例えば下記式(1-01)、式(1-02)及び/又は式(2-01)の化合物等)、脂質粒子7の凝集を防止する脂質(例えばポリエチレングリコール(PEG)ジミリストイルグリセロール(DMG-PEG)等)、内包物の脂質粒子7からの漏出を防止する成分(例えばコレステロール等)、脂質粒子7の粒径を制御するための成分、脂質粒子7を細胞と融合しやすくするための成分及び/又は内包物を細胞に導入しやすくする成分等を含んでもよい。
【0096】
【化1】
【0097】
脂質粒子7は、単分子膜又は二重膜、三重膜等であってもよい。また、脂質粒子7は、一層の膜からなっていてもよいし、多重層の膜からなっていてもよい。
【0098】
脂質粒子7には、第1ベクター1及び第2ベクター3の他に、必要に応じて更なる成分が内包されていてもよい。更なる成分は、例えば、pH調整剤及び/又は浸透圧調整剤等である。pH調整剤は、例えば、クエン酸などの有機酸及びその塩等である。浸透圧調整剤は、糖又はアミノ酸等である。
【0099】
脂質粒子7は、小分子を脂質粒子7に封入する際に用いられる公知の方法、例えば、バンガム法、有機溶媒抽出法、界面活性剤除去法又は凍結融解法等を用いて製造することができる。例えば、脂質粒子7の材料を所望の比率でアルコール等の有機溶媒に含ませて得られた脂質混合物と、ベクター等の内包するべき成分を含む水性緩衝液を用意し、脂質混合物に水性緩衝液を添加する。得られた混合物を撹拌して懸濁することによりベクター等を内包した脂質粒子7が形成される。
【0100】
また、キットは、第1レポータータンパク質5を検出するための試薬を更に含んでもよい。試薬は、例えば、第1検出工程S2において説明した第1物質及び/又は第2物質である。
【0101】
ベクターセット及び試薬は、個別に又は何れかの成分が組み合わされて容器に含まれて提供される。
【0102】
以上に説明した第1実施形態では、第1レポータータンパク質5(第1信号6)が高発現した場合には、それは切り出し用配列4が第2ベクター3から正常に切り出されたことも意味し得る。したがって、トランスポゼースTPが少なくとも組込み活性が良好と評価される場合には、トランスポゼースTPが切り出し活性も更に有すると予想することもまた可能である。下記第2実施形態では、組込み活性と同時に切り出し活性を更に正確に測定する方法について説明する。
【0103】
(第2実施形態)
・トランスポゼース切り出し活性測定用ベクターである第2ベクター
第2実施形態において、第2ベクターはトランスポゼースの切り出し活性を測定することができる構成を更に有する。第2実施形態に従う第2ベクター8は、図6の(a)に示す通り、第2プロモーター配列P2と、第2プロモーター配列P2の下流に連結された、第2レポーター遺伝子5’側断片R2a及び第2レポーター遺伝子3’側断片R2bと、第2レポーター遺伝子5’側断片R2a及び第2レポーター遺伝子3’側断片R2bの間に配置された切り出し用配列4と、第2レポーター遺伝子3’側断片R2bの下流に連結された第2転写終結配列T2とを含む。第2ベクター8は第1実施形態と同様に第1ベクター1と併用され得る。
【0104】
以下、各配列について説明する。
【0105】
第2プロモーター配列P2は、その活性により、下流に連結された遺伝子の転写を開始できるように設けられている。第2プロモーター配列P2として、第1プロモーター配列P1の説明で挙げられた何れかのプロモーター配列を用いることができる。第2プロモーター配列P2は、第1プロモーター配列P1と同じ配列であってもよいし、異なる配列であってもよい。
【0106】
第2レポーター遺伝子5’側断片R2a及び第2レポーター遺伝子3’側断片R2bは、一つのレポーター遺伝子(第2レポーター遺伝子R2、図示せず)をコードする塩基配列を二分割した5’側の配列及び3’側の配列をそれぞれ含む。
【0107】
第2レポーター遺伝子R2は、二分割されていることによってそのレポーター活性が不活性化された状態である。第2レポーター遺伝子5’側断片R2a及び第2レポーター遺伝子3’側断片R2bの塩基配列の長さ、即ち、分割位置は、第2レポーター遺伝子R2の活性が不活性化されるように選択される限り限定されるものではく、2つの配列の長さは、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0108】
第2レポーター遺伝子R2として、第1レポーター遺伝子R1の説明で挙げられた何れかのレポーター遺伝子を用いることができる。第2レポーター遺伝子R2は、第1レポーター遺伝子R1と異なるものを選択することが好ましい。例えば、第1レポーター遺伝子R1と第2レポーター遺伝子R2とは、基質の発光色が互に異なるルシフェラーゼ遺伝子、又は蛍光色が互いに異なる蛍光タンパク質遺伝子等で有り得る。
【0109】
第2レポーター遺伝子R2がホタルルシフェラーゼ遺伝子(表4)である場合の第2レポーター遺伝子5’側断片R2a及び第2レポーター遺伝子3’側断片R2bの塩基配列の一例を以下の表12、13にそれぞれ示す。
【0110】
【表12】
【0111】
【表13】
【0112】
切り出し用配列4は、第1実施形態で説明したものと同様であり、5’側トランスポゼース認識配列4aと、3’側トランスポゼース認識配列4bと、これら2つの認識配列の間に配置された第1エンハンサー配列E1とを含む。
【0113】
切り出し用配列4が切り出されて第2レポーター遺伝子5’側断片R2a及び第2レポーター遺伝子3’側断片R2bが連結されて形成される第2レポーター遺伝子R2配列は、レポーターとしての機能を失わない限りにおいてレポーター遺伝子由来の配列以外の他の配列を含んでもよい。他の配列は、例えば3の倍数の数のヌクレオチドからなる配列であり、且つ0~20個のアミノ酸をコードする配列であることが好ましい。例えば第2レポーター遺伝子5’側断片R2a及び第2レポーター遺伝子3’側断片R2bの間に、切り出しにより残留した痕跡配列が存在してもよい。痕跡配列はアミノ酸をコードしてもよいが、必ずしもその必要はない。
【0114】
第2転写終結配列T2は、第2レポーター遺伝子R2の転写を終結するように第2レポーター遺伝子3’側断片R2bの下流に機能可能に連結されている。第2転写終結配列T2として、上記第1転写終結配列T1の説明で挙げられた何れかの転写終結配列を用いることができる。第2転写終結配列T2は、第1転写終結配列T1と同じ配列であってもよいし、異なる配列であってもよい。
【0115】
第2ベクター8は、第1実施形態の第2ベクター3と同様に任意の他の塩基配列を含んでもよい。このような塩基配列は、例えば特定の機能を有するレポーター遺伝子発現ユニット、薬剤耐性遺伝子、複製開始タンパク質発現ユニット及び/又は複製開始配列等の塩基配列であってもよいし、機能を持たない配列であってもよい。
【0116】
更なる実施形態において、図6の(b)に示すように、第2ベクター8bは第2エンハンサー配列E2を更に備えてもよい。第2エンハンサー配列E2は、第2プロモーター配列P2の活性化を促進し、その下流に連結された遺伝子の発現を促進することができるように、第2プロモーター配列P2の上流に作動可能に連結されている。第2エンハンサー配列E2として、第1エンハンサー配列E1の説明において列挙した何れかのエンハンサーを用いることができる。第2エンハンサー配列E2は、例えば第2プロモーター配列P2の種類に従って選択され得る。第2エンハンサー配列E2は、第1エンハンサー配列E1と同じ配列であってもよいし、異なる配列であってもよい。
【0117】
例えば、第2プロモーター配列P2がエンハンサーによって下流に連結された遺伝子の発現を可能にするものである場合、第2エンハンサー配列E2を用いることが好ましい。しかしながら第2プロモーター配列P2が、エンハンサーが無くともその下流に連結された遺伝子の発現を可能にする種類のものである場合、第2エンハンサー配列E2を設ける必要はない。
【0118】
・トランスポゼース活性測定方法
第2実施形態によれば、第1の実施形態に記載した第1ベクター1と第2ベクター8とを含むベクターセットを用いて細胞内のトランスポゼースの活性を測定するための方法が提供される。
【0119】
トランスポゼース活性測定方法は、例えば図7に示す次の工程を含む。
【0120】
(S21)細胞に第1ベクター及び第2ベクターを導入する導入工程、
(S22)第1レポーター遺伝子から発現する第1レポータータンパク質を検出する第1検出工程、
(S23)第2レポーター遺伝子から発現する第2レポータータンパク質を検出する第2検出工程、及び
(S24)第1レポータータンパク質の検出の結果及び第2レポータータンパク質の検出の結果からトランスポゼースの活性を評価する第2評価工程。
【0121】
導入工程S21は、第2ベクター3の代わりに第2ベクター8を用いることを除いて第1実施形態の導入工程S1と同様に行うことができる。
【0122】
図8を用いて導入工程S21の後の各ベクターの挙動を説明する。まず、活性を有するトランスポゼースTPにより第2ベクター8から切り出し用配列4が切り出される(図8の(a)部)。次いで、第1ベクター1のトランスポゼース標的配列2に切り出し用配列4が組込まれる(図8の(b)部)。つまり切り出し用配列4の移転が行われる。
【0123】
その後、第2ベクター8においては第2レポーター遺伝子5’側断片R2a及び第2レポーター遺伝子3’側断片R2bが連結されて第2レポーター遺伝子R2が形成される(図8の(c)部)。その結果、第2ベクター8に、第2プロモーター配列P2と、第2レポーター遺伝子R2と、必要に応じて第2エンハンサー配列E2とを含む第2遺伝子発現ユニットU2が形成される。それにより、第2レポーター遺伝子R2から第2レポータータンパク質9が発現する(図8の(d)部)。第2レポータータンパク質9は第2信号10を生ずる(図8の(e)部)。
【0124】
一方、第1ベクター1においては第1実施形態と同様に第1エンハンサー配列E1が組込まれて第1遺伝子発現ユニットU1が形成され(図8の(f)部)、第1レポーター遺伝子R1の発現が促進される(図8の(g)部)。それによって、第1レポータータンパク質5の発現量が増加する。第1レポータータンパク質5は第1信号6を生じる(図8の(h)部)。
【0125】
したがって、トランスポゼースTPが切り出し活性及び組込み活性の両方を有する場合、切り出し用配列4に含まれる第1エンハンサー配列E1が第2ベクター8から第1ベクター1に移転されることで、第2ベクター8からの第2信号10と、第1ベクター1からの第1信号6が得られる。
【0126】
一方で、トランスポゼースTPの切り出し活性が不良の場合、切り出し用配列4が切り出されず、第2レポーター遺伝子R2が不活性化したままである。そのため、第2レポータータンパク質9は低発現となる。この場合、切り出し用配列4が切り出されないので、トランスポゼースTPの組込み活性が良好であるか否かに関わらず、第1レポータータンパク質5は低発現となり得る。
【0127】
また、切り出し活性が良好で、組込み活性が不良なトランスポゼースTPでは、第2レポータータンパク質9は高発現するが、第1レポータータンパク質5は低発現となり得る。
【0128】
次に、第1検出工程S22を行う。第1検出工程S22は、第1実施形態の第1検出工程S2と同様に行うことができる。
【0129】
次いで、第2レポータータンパク質9を検出する(第2検出工程S23)。第2レポータータンパク質9の検出は、例えば第2信号10を検出することにより行われ得る。検出は第2レポータータンパク質9の種類に応じて選択される、第1検出工程S2で説明した方法を用いて行えばよい。
【0130】
第1検出工程S22及び第2検出工程S23は、どちらかを先に行ってもよいし、同時に行ってもよい。同時に行う場合には、第2レポーター遺伝子R2の発現量が第1レポーター遺伝子R1の発現量よりも多くなるように第1プロモーター配列P1及び第2プロモーター配列P2(必要であれば第1エンハンサー配列E1及び第2エンハンサー配列E2)を選択することが好ましい。第2信号10が第1信号6に埋もれて検出困難になるのを防ぐためである。
【0131】
次に、第1検出工程S22及び第2検出工程S23の結果からトランスポゼースの切り出し活性及び組込み活性を評価する(第2評価工程S24)。
【0132】
組込み活性については、例えば第1評価工程S3で説明した方法と同様に第1レポータータンパク質5の発現(第1信号6)から決定することができる。
【0133】
一方、第2レポータータンパク質9が高発現している(第2信号10の強度が高い)場合、トランスポゼースTPの切り出し活性が良好であると判断することができる。反対に第2レポータータンパク質9の発現量(第2信号10の強度)が低い場合は正常な切り出しが行われていないことを示すので切り出し活性が不良であると判断することができる。
【0134】
以上のことから、第1レポータータンパク質5の発現量が高く組込み活性が良好なとき、同時に第2レポータータンパク質9の発現量が高い場合、トランスポゼースTPの切り出し活性もまた良好であると判断することができる。このように両活性が良好な場合、分析対象であるトランスポゼースTPはゲノムへの核酸の組込み効率が高く、ゲノム編集等の用途に用いるのに好適で有り得る。
【0135】
第1レポータータンパク質5が低発現であり組込み活性が不良なときは、第2レポータータンパク質9の発現量が高ければ切り出し活性は良好であると判断することができる。反対に第2レポータータンパク質9の発現量が低ければ切り出し活性もまた不良であると判断することができる。
【0136】
以上のように、第2ベクター8を用いることによって同じ細胞におけるトランスポゼースTPの切り出し活性及び組込み活性について同時に評価することができる。本方法によれば、切り出し活性の測定で切り出された配列を用いて組込み活性を測定する。これは遺伝子組込みにおけるトランスポゼースの作用機序に即している。したがって本方法によれば、切り出し活性及び組込み活性を別々に測定するよりも正確なトランスポゼースの活性の測定が可能である。
【0137】
・細胞分離方法
第2実施形態の第1ベクター1及び第2ベクター8は、細胞分離方法にも用いることができる。細胞分離方法は、例えば図9に示すように次の工程を含む。
【0138】
(S31)第1ベクター1及び第2ベクターを細胞に導入する導入工程、
(S32)第1レポーター遺伝子から発現する第1レポータータンパク質を検出する第1検出工程、
(S32)第2レポーター遺伝子から発現する第2レポータータンパク質を検出する第2検出工程、及び
(S34)第1レポータータンパク質の検出の結果及び第2レポータータンパク質の検出の結果に基づいて細胞を分離する分離工程。
【0139】
導入工程S31、第1検出工程S32及び第2検出工程S33は前記トランスポゼース活性測定方法の導入工程S21、第1検出工程S22及び第2検出工程S23と同様に行うことができる。
【0140】
分離工程S34では、例えば第1レポータータンパク質5の発現量及び/又は第2レポータータンパク質9の発現量を基準に所望の細胞を分離する。特に第1レポータータンパク質5及び第2レポータータンパク質9の両方が高発現している細胞を他の細胞と分離することが好ましい。その結果、切り出し活性及び組込み活性が良好なトランスポゼースTPを含む細胞が得られる。或いは、検出結果から各活性の度合いを評価して、両活性が特に高い細胞を分離することもまた好ましい。
【0141】
この方法によれば、両活性が良好なトランスポゼースTPを含む細胞が容易に得られる。そのため、例えばこの細胞を使用したゲノム編集細胞の製造効率が向上し得る。
【0142】
第2実施形態の第1ベクター1及び第2ベクター8は、第1実施形態と同様のキットとしても提供され得る。このキットは、第2レポーター遺伝子R2から発現する第2レポータータンパク質9を検出するための試薬を更に含んでもよい。
【0143】
(第3実施形態)
第1実施形態及び第2実施形態においては、トランスポゼースTPにより第1エンハンサー配列E1を第2ベクター3,8の切り出し用配列4から第1ベクター1へと移転させる例を示した。しかしながら、移転させる配列は第1エンハンサー配列E1に限定されるものではない。例えば、移転の前後で第1レポータータンパク質5の発現量(第1信号6の強度)が変化すれば、いずれの配列を移転させてもトランスポゼースTPの活性の評価が可能である。第3実施形態においては、第1実施形態のベクターセットにおいて、移転させる配列が第1エンハンサー配列E1以外からも選択される例について説明する。
【0144】
移転させる配列は、第1実施形態で説明した第1ベクター1の塩基配列の中から選択される、第1レポーター遺伝子R1の発現に関与する配列である。第1レポーター遺伝子R1の発現に関与する配列は、例えば第1遺伝子発現ユニットU1に含まれる配列の中から選択され、例えば第1エンハンサー配列E1、第1プロモーター配列P1又は第1レポーター遺伝子R1の全配列又はその一部の配列である。
【0145】
第1レポーター遺伝子R1の発現に関与する配列は、約50~約9000塩基の長さを有する塩基配列とすることが好ましく、約50~約2000塩基の長さを有する塩基配列であることがより好ましい。
【0146】
第3実施形態に係る第1ベクター1は、第1レポーター遺伝子R1の発現に関与する配列として選択された配列(例えば第1遺伝子発現ユニットU1を構成するE1、P1、R1のいずれかもしくはそれらの一部)が、トランスポゼース標的配列2に置換されている配列を含む。言い換えれば第1レポーター遺伝子R1の発現に関与する配列に代えてトランスポゼース標的配列2が配置されている構成を有する。また、第3実施形態に係る第2ベクター3は、切り出し用配列4の5’側トランスポゼース認識配列4aと3’側トランスポゼース認識配列4bとの間に第1レポーター遺伝子R1の発現に関与する配列として選択された配列(例えば第1遺伝子発現ユニットU1を構成するE1、第1プロモーター配列P1、第1レポーター遺伝子R1のいずれか又はそれらの一部)が配置された構成を有する。
【0147】
第3実施形態に係るベクターセットの一例を図10に示す。
図10の(a)は、第1レポーター遺伝子R1の発現に関与する配列として選択した配列が第1プロモーター配列P1である例を示す。この場合、第1ベクター1bは、移転後に形成される第1遺伝子発現ユニットU1において第1プロモーター配列P1が配置されるべき領域にトランスポゼース標的配列2を備える。第2ベクター3bは切り出し用配列4の5’側トランスポゼース認識配列4aと3’側トランスポゼース認識配列4bとの間に第1プロモーター配列P1を備える。
【0148】
図10の(b)は、第1レポーター遺伝子R1の発現に関与する配列として選択した配列が第1レポーター遺伝子R1の一部の配列である例を示す。この場合、第1ベクター1cは移転後に形成される第1遺伝子発現ユニットU1において第1レポーター遺伝子R1が配置されるべき領域の一部にトランスポゼース標的配列2を備える。第2ベクター3cは切り出し用配列4の5’側トランスポゼース認識配列4aと3’側トランスポゼース認識配列4bとの間に第1レポーター遺伝子R1の一部を備える。
【0149】
第3実施形態に係る第2ベクターは、第2実施形態に係る第2ベクター8と同様の構成を有してもよい。そのような第2ベクターは、例えば図6の(a)又は図6の(b)に示す第2ベクター8又は8bの第1エンハンサー配列E1に代えて、第1レポーター遺伝子R1の発現に関与する配列として選択された配列を含む。
【0150】
以上に移転させる配列として第1エンハンサー配列E1以外の配列を選択する例を示したが、好ましくは移転させる配列は第1エンハンサー配列E1である。例えば第1プロモーター配列P1又は第1レポーター遺伝子R1を選択した際には、移転前には基本的に第1ベクター1から第1レポータータンパク質5は発現しない。しかしながら第1エンハンサー配列E1を用いる場合、移転前であっても第1レポータータンパク質5が発現し得、それを検出することで第1ベクター1の細胞内への導入を分析前に確認することができる。そのため、第1エンハンサー配列E1を用いる第1実施形態及び第2実施形態が、第3実施形態よりも好ましい場合もある。
【0151】
第3実施形態のベクターセットは、第1実施形態及び第2実施形態と同様のキット、トランスポゼース活性測定方法及び細胞分離方法に用いることができる。
【0152】
[例]
以下に、実施形態のベクターセットを製造し使用した例について記載する。
【0153】
例1 トランスポゼース切り出し活性測定用ベクターの作製
まず、piggyBacの認識配列である5’IR(配列番号8)と3’IR(配列番号9)との間にマルチクローニング配列を配置した、表14に示す人工DNA(配列番号14)を合成した(BEX製)。
【0154】
【表14】
【0155】
次にサイトメガロウイルス(CMV)のプロモーター配列(配列番号2)とホタル由来のホタルルシフェラーゼ遺伝子(配列番号4)とウシ成長ホルモン転写終結配列(配列番号6)とを含むホタルルシフェラーゼ発現ユニットが組込まれたベクター(pCMV-Luc)を用意し、ホタルルシフェラーゼ遺伝子が2領域に分割されるよう、間に上記人工DNA(配列番号14)を組込んだ。ホタルルシフェラーゼ遺伝子は5’側領域(配列番号12)と3’側領域(配列番号13)とに分割した。それによって、下記表15に示すベクター:pCMV-LuIRuC(配列番号15)を得た。
【表15-1】

【表15-2】

【表15-3】
【0156】
次に、pCMV-LuIRuCに挿入した人工DNAのマルチクローニング配列内に、エンハンサー配列(配列番号11)を組込んだ。このエンハンサー配列は、例2で説明するトランスポゼース組込み活性用ベクターのルシフェラーゼ遺伝子の転写量を増大させる働きがある。その結果、図11に示すトランスポゼース切り出し活性測定用ベクター:pCMV-LuEuC(表16,配列番号16)を得た。
【表16-1】

【表16-2】

【表16-3】
【0157】
例2 トランスポゼース組込み活性測定用ベクターの作製
まず、ヒトポリペプチド鎖伸長因子遺伝子(EF1α)のプロモーター配列(配列番号3)とトゲオキヒオドシエビ(Oplophorus gracilirostris)由来のルシフェラーゼ(以下、「OGルシフェラーゼ」と称する)の遺伝子(配列番号5)とウシ成長ホルモン転写終結配列(配列番号6)とを含むルシフェラーゼ発現ユニットが組込まれたベクター(pEF1α-Luc)を用意した。pEF1α-LucのEF1αプロモーター上流領域に、piggyBacのターゲット配列であるTTAAを5回繰り返した人工DNA(配列番号14)を組込んだ。その結果、図12に示すトランスポゼース組込み活性測定用ベクター:pTTAA×5-EF1α-Luc(表17,配列番号17)が得られた。
【表17-1】

【表17-2】
【0158】
例3 piggyBacmRNAの作製
piggyBacmRNAは、pGEM-GL-PB4(BEX社製)を鋳型として合成した。合成にはCUGA(登録商標)7 in vitro transcription kit(ニッポンジーン)を用いた。これを精製して得られたRNA(表18,配列番号18)の5’非翻訳領域(untranslated region:UTR)と3’-UTRに、それぞれCap構造とpoly(A)構造を付加してmRNA化した。
【0159】
【表18】
【0160】
Cap構造とpoly(A)構造の付加は、mScriptTM mRNA Production System(CellScript)で行った。上記実験の操作は、それぞれのキットのプロトコルに従った。
【0161】
例4 HyperpiggyBacmRNAの作製
HyperpiggyBacmRNAは、pGEM-GL-TS-HyPB(BEX社製)を鋳型として合成した。合成にはCUGA(登録商標)7 in vitro transcription kit(ニッポンジーン)を用いた。これを精製して得られたRNA(表19,配列番号19)の5’非翻訳領域(untranslated region:UTR)と3’-UTRに、それぞれCap構造とpoly(A)構造を付加してmRNA化した。
【0162】
【表19】
【0163】
Cap構造とpoly(A)構造の付加は、mScriptTM mRNA Production System(CellScript)で行った。上記実験の操作は、それぞれのキットのプロトコルに従った。
【0164】
例5 pCMV-LuEuCとpTTAA×5-EF1α-LucによるpiggyBac活性の測定
TexMACS培地(ミルテニーバイオテク製)で培養したヒトT細胞性白血病細胞(Jurkat、ATCC(登録商標)製)を遠心で回収した後、96ウェルプレートに5.0×10細胞/ウェルになるように播種した。例1で作製したトランスポゼース切り出し活性測定用ベクター(pCMV-LuEuC)と例2で作製したトランスポゼース組込み活性測定用ベクター(pTTAA×5-EF1α-Luc)と例3で作製したpiggyBacmRNAとをカチオン性脂質を含む脂質ナノ粒子に内包し、各ベクター及びmRNAが表20に示す添加量となるように脂質ナノ粒子をウェルに添加した。その後、培養プレートをインキュベーターに収容し、細胞を37℃、5%CO雰囲気で培養した。
【0165】
【表20】
【0166】
脂質ナノ粒子の添加から48時間後、培養プレートをインキュベーターから取り出し、培養液50μLを96ウェルプレートに回収して、ONE-GloTM Luciferase Assay System(プロメガ製)およびNano-Glo(登録商標)Luciferase Assay System(プロメガ製)を用いて、ホタルルシフェラーゼ遺伝子から発現するホタルルシフェラーゼ及びOGルシフェラーゼ遺伝子から発現するOGルシフェラーゼの発光強度をルミノメーター(Infinite(登録商標)F200PRO、テカン製)で測定した。測定は、キット及びルミノメーターに添付のマニュアルに従って行った。
【0167】
図13にホタルルシフェラーゼの発光測定の結果を示す。piggyBacmRNAを導入しなかったJurkatでは10RLUの強度が得られたのに対して、piggyBacmRNAとpCMV-LuEuCとを共導入したJurkatでは270RLUと27倍の高い発光強度が測定された。
【0168】
図14にOGルシフェラーゼの発行測定の結果を示す。piggyBacmRNAを導入しなかったJurkatでは220RLUの強度が得られたのに対して、piggyBacmRNAとpTTAA×5-EF1α-Lucを共導入したJurkatでは608RLUと2.8倍の高い発光強度が測定された。
【0169】
図13の結果から、piggyBacmRNAから発現されたpiggyBacが、pCMV-LuEuCの5’IRおよび3’IRに挟まれた領域を切り出し、ホタルルシフェラーゼ遺伝子が形成されてホタルルシフェラーゼが発現したことが示された。また、図14の結果から、piggyBacによってpCMV-LuEuCから切り出された領域が、pTTAA×5-EF1α-Lucのプロモーター配列の上流領域にあるTTAAを5回繰り返した配列内に組込まれて、エンハンサーがEF1αプロモーターを活性化してOGルシフェラーゼの発現強度が増大したことが示された。したがって、pCMV-LuEuCとpTTAA×5-EF1α-Lucとが、トランスポゼースpiggyBacの切り出し活性及び組込み活性をそれぞれ測定するためのベクターとして有効に機能することが明らかとなった。
【0170】
例6 pCMV-LuEuCとpTTAA×5-EF1α-LucによるpiggyBac活性およびHyperpiggyBac活性の測定
TexMACS培地(ミルテニーバイオテク製)で培養したヒトT細胞性白血病細胞(Jurkat、ATCC(登録商標)製)を遠心で回収した後、96ウェルプレートに2.0×10細胞/ウェルになるように播種した。例1で作製したトランスポゼース切り出し活性測定用ベクター(pCMV-LuEuC)と例2で作製したトランスポゼース組込み活性測定用ベクター(pTTAA×5-EF1α-Luc)と例3で作製したpiggyBacmRNAと例4で作製したHyperpiggyBacmRNAとをカチオン性脂質を含む脂質ナノ粒子に内包し、各ベクター及びmRNAが表21に示す添加量となるように脂質ナノ粒子をウェルに添加した。その後、培養プレートをインキュベーターに収容し、細胞を37℃、5%CO雰囲気で培養した。
【0171】
【表21】
【0172】
脂質ナノ粒子の添加から48時間後、培養プレートをインキュベーターから取り出し、培養液50μLを96ウェルプレートに回収して、ONE-GloTM Luciferase Assay System(プロメガ製)およびNano-Glo(登録商標)Luciferase Assay System(プロメガ製)を用いて、ホタルルシフェラーゼ遺伝子から発現するホタルルシフェラーゼ及びOGルシフェラーゼ遺伝子から発現するOGルシフェラーゼの発光強度をルミノメーター(Infinite(登録商標)F200PRO、テカン製)で測定した。測定は、キット及びルミノメーターに添付のマニュアルに従って行った。
【0173】
図15にホタルルシフェラーゼの発光測定の結果を示す。piggyBacmRNAとpCMV-LuEuCとを共導入したJurkatでは20RLUの強度が得られたのに対して、HyperpiggyBacとpCMV-LuEuCとを共導入したJurkatでは111RLUと5倍の高い発光強度が測定された。
【0174】
図16にOGルシフェラーゼの発行測定の結果を示す。piggyBacmRNAとpTTAA×5-EF1α-Lucとを共導入したJurkatでは349RLUの強度が得られたのに対して、HyperpiggyBacとpTTAA×5-EF1α-Lucとを共導入したJurkatでは914RLUと3倍の高い発光強度が測定された。
【0175】
図15の結果から、piggyBacmRNAから発現されたpiggyBacと比べて、HyperpiggyBacmRNAから発現されたHyperpiggyBacを共導入したJurkatで、より多くのホタルルシフェラーゼが発現したことが示された。また、図16の結果から、piggyBacmRNAから発現されたpiggyBacと比べて、HyperpiggyBacmRNAから発現されたHyperpiggyBacを共導入したJurkatで、OGルシフェラーゼの発現強度の増大がより大きくなったことが示された。したがって、pCMV-LuEuCとpTTAA×5-EF1α-Lucとが、トランスポゼースpiggyBacの切り出し活性及び組込み活性をそれぞれ測定するためのベクターとして有効に機能することが明らかとなった。
【0176】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
トランスポゼース標的配列、前記トランスポゼース標的配列の下流に連結された第1プロモーター配列、及び前記第1プロモーター配列の下流に連結された第1レポーター遺伝子を含む第1ベクターと、
5’側トランスポゼース認識配列と、3’側トランスポゼース認識配列と、その間に配置された、第1エンハンサー配列とを含む第2ベクターと
を含む、ベクターセット。
[2]
前記トランスポゼース標的配列は、配列番号1の塩基配列を含む[1]のベクターセット。
[3]
前記第1エンハンサー配列は、配列番号11の塩基配列を含む[1]又は[2]のベクターセット。
[4]
前記第1プロモーター配列は、配列番号3の塩基配列を含む[1]~[3]の何れか1つのベクターセット。
[5]
前記第1レポーター遺伝子は、配列番号5の塩基配列を含む、[1]~[4]の何れか1つのベクターセット。
[6]
5’側トランスポゼース認識配列及び3’側トランスポゼース認識配列は、配列番号8及び配列番号9の塩基配列をそれぞれ含む、[1]~[5]の何れか1つのベクターセット。
[7]
前記第2ベクターは、第2プロモーター配列と、前記第2プロモーター配列の下流に連結された、第2レポーター遺伝子5’側断片及び第2レポーター遺伝子3’側断片とを更に含み、
前記第2レポーター遺伝子5’側断片及び前記第2レポーター遺伝子3’側断片は、第2レポーター遺伝子が二分割された5’側の配列と3’側の配列とをそれぞれ含み、
前記5’側トランスポゼース認識配列と、前記3’側トランスポゼース認識配列と、その間に配置された、前記第1エンハンサー配列とは、前記第2レポーター遺伝子5’側断片及び前記第2レポーター遺伝子3’側断片の間に配置されている、
[1]~[6]の何れか1つのベクターセット。
[8]
前記第2レポーター遺伝子は、二分割されていることによって不活性化された状態である、[7]のベクターセット。
[9]
前記第1レポーター遺伝子及び前記第2レポーター遺伝子は互いに異なる、[7]又は[8]のベクターセット。
[10]
前記第2ベクターは、前記第2プロモーター配列の上流に第2エンハンサー配列が連結されている[7]~[9]の何れか1つのベクターセット。
[11]
前記第2プロモーター配列は、配列番号2の塩基配列を含む、[7]~[10]の何れか1つのベクターセット。
[12]
前記第2レポーター遺伝子5’側断片は配列番号12の塩基配列を含み、前記第2レポーター遺伝子3’側断片は配列番号13の塩基配列を含む、[7]~[11]の何れか1つのベクターセット。
[13]
第1エンハンサー配列、前記第1エンハンサー配列の下流に連結された第1プロモーター配列、及び前記第1プロモーター配列の下流に連結された第1レポーター遺伝子を含む遺伝子発現ユニットのうち、前記第1レポーター遺伝子の発現に関与する配列がトランスポゼース標的配列に置換されている配列を含む第1ベクターと、
5’側トランスポゼース認識配列と、3’側トランスポゼース認識配列と、その間に配置された、前記第1レポーター遺伝子の発現に関与する前記配列を含む第2ベクターと
を含む、ベクターセット。
[14]
前記第2ベクターは、第2プロモーター配列と、前記第2プロモーター配列の下流に連結された、第2レポーター遺伝子5’側断片及び第2レポーター遺伝子3’側断片とを更に含み、
前記第2レポーター遺伝子5’側断片及び前記第2レポーター遺伝子3’側断片は、第2レポーター遺伝子を二分割した5’側の配列と3’側の配列とをそれぞれ含み、
前記5’側トランスポゼース認識配列と、3’側トランスポゼース認識配列と、その間に配置された、前記第1レポーター遺伝子の発現に関与する前記配列は、前記第2レポーター遺伝子5’側断片及び前記第2レポーター遺伝子3’側断片の間に配置されている、[13]のベクターセット。
[15]
前記第2ベクターは、前記第2プロモーター配列の上流に第2エンハンサー配列が連結されている[14]のベクターセット。
[16]
[1]~[15]の何れか1つのベクターセットと、
前記第1レポーター遺伝子から発現する第1レポータータンパク質を検出するための試薬と
を含むトランスポゼースの活性を測定するためのキット。
[17]
前記ベクターセットは[7]~[12]の何れか1つのベクターセットであり、
前記第2レポーター遺伝子から発現する第2レポータータンパク質を検出するための試薬を更に含む[16]のキット。
[18]
前記ベクターセットは、脂質粒子に内包されている、[16]又は[17]のキット。
[19]
ベクターセットを用いた細胞内のトランスポゼースの活性の測定方法であって、
前記ベクターセットは、[1]~[15]の何れか1つのベクターセットであり、
当該方法は、
前記細胞に前記第1ベクター及び前記第2ベクターを導入することと、
前記第1レポーター遺伝子から発現する第1レポータータンパク質を検出することと、
前記第1レポータータンパク質の検出の結果から前記トランスポゼースの活性を評価すること
を含むトランスポゼース活性測定方法。
[20]
前記活性の評価において前記第1レポータータンパク質が発現している場合、トランスポゼースの組込み活性があると評価する、[19]の方法。
[21]
前記導入は前記第1ベクター及び前記第2ベクターを内包した脂質粒子を前記細胞に接触させることにより行われる、[19]又は[20]の方法。
[22]
前記トランスポゼースは、それをコードする核酸の形態で前記検出の前に前記細胞に導入される、[19]~[21]の何れか1つの方法。
[23]
前記ベクターセットが[7]~[12]の何れか1つのベクターセットであり、前記トランスポゼースの活性の評価は、前記第2レポーター遺伝子から発現する第2レポータータンパク質の検出の結果を更に用いて行われる、
[19]~[22]の方法。
[24]
前記活性の評価において前記第2レポータータンパク質の発現がある場合、トランスポゼースの切り出し活性があると評価する、[19]~[23]の何れか1つの方法。
[25]
ベクターセットを用いて細胞内のトランスポゼースの活性に基づいて細胞を分離する方法であって、
前記ベクターセットは、[1]~[15]の何れか1つのベクターセットであり、
当該方法は、
前記細胞に前記第1ベクター及び前記第2ベクターを導入することと、
前記第1レポーター遺伝子から発現する第1レポータータンパク質を検出することと、
前記第1レポータータンパク質の検出の結果に基づいて細胞を分離することと
を含む細胞分離方法。
[26]
前記ベクターセットが[7]~[12]の何れか1つのベクターセットであり、前記分離は、前記第2レポーター遺伝子から発現する第2レポータータンパク質の検出の結果に更に基づいて行われる、[25]の方法。
[27]
前記分離において、前記第1レポータータンパク質と前記第2レポータータンパク質とが両方発現する細胞を分離する、[26]の方法。
【符号の説明】
【0177】
1、1b、1c…第1ベクター、2…トランスポゼース標的配列、
3、3b、3c、8、8b…第2ベクター、4…切り出し用配列、
4a…5’側トランスポゼース認識配列、
4b…3’側トランスポゼース認識配列、
5…第1レポータータンパク質、6…第1信号、7…脂質粒子、
9…第2レポータータンパク質、10…第2信号、
E1…第1エンハンサー配列、E2…第2エンハンサー配列、
P1…第1プロモーター配列、P2…第2プロモーター配列、
R1…第1レポーター遺伝子、R2…第2レポーター遺伝子、
R2a…第2レポーター遺伝子5’側断片、
R2b…第2レポーター遺伝子3’側断片、TP…トランスポゼース、
T1…第1転写終結配列、T2…第2転写終結配列、
U1…第1遺伝子発現ユニット、U2…第2遺伝子発現ユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
図11
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図16
【配列表】
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