(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】減圧弁
(51)【国際特許分類】
G05D 16/06 20060101AFI20240909BHJP
F16K 17/30 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
G05D16/06 J
F16K17/30
(21)【出願番号】P 2021006913
(22)【出願日】2021-01-20
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】391060029
【氏名又は名称】株式会社ダンレイ
(74)【代理人】
【識別番号】100095245
【氏名又は名称】坂口 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】岩元 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】上村 高弘
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3018088(JP,U)
【文献】特開2019-101946(JP,A)
【文献】実開昭62-134979(JP,U)
【文献】特開2016-119267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/00 -16/20
F16K 17/18 -17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を二次側通路の内圧に応じて可変調整する止水機能を有する減圧弁機構と、減圧弁機構の開弁時には閉弁し減圧弁機構の閉弁時に二次側通路の内圧に応じて開閉する逃し弁機構とを備え、減圧弁機構と逃し弁機構とは中心軸線を共有するリフト弁機構である減圧弁であって、ボディと、ボディの一部を形成する接続部を介してボディに連結しボディの一部を形成するシリンダと、シリンダ内で往復摺動するピストンヘッドと、ピストンヘッドとシリンダ内周面との摺接部をシールするシール部材と、ピストンヘッドの一端部から延びてシリンダの一端部からシリンダ外の二次側通路へ突出するピストンロッドと、シリンダの前記一端部が形成する第1弁座と、ピストンロッドのシリンダ外へ突出した一端部に固定されて第1弁座と対峙する第1弁体と、シリンダ周壁のピストンロッドに対峙する部位に形成された開口と、ピストンヘッドを閉弁方向へ付勢する第1バネと、小径部と大径部とを有し小径部の一端部が大径部の一端部に接続すると共にピストンヘッドの他端部に対峙し周壁に切欠が形成された大径部がシリンダに摺動可能に外嵌合する筒体と、前記筒体の小径部に中心部が固定されたダイアフラムと、ボディの一部により形成されダイアフラムに対峙しダイアフラムとシリンダとピストンヘッドと協働して二次側通路に連通する感圧室を形成するダイアフラムケースと、ダイアフラムを感圧室側へ押圧する第2バネと、第2バネと前記筒体小径部の他端部とを収容すると共にダイアフラムケースと協働してダイアフラムの周縁部を挟持し更に外部環境との連通穴が形成されたバネケースと、前記筒体小径部の前記一端部に配設された第2弁座又は第2弁体と、ピストンヘッドの他端部に配設され前記筒体小径部の前記一端部に配設された第2弁座又は第2弁体に対峙する第2弁体又は第2弁座を備え、第1弁体と第1弁座とが減圧弁機構の弁体と弁座とを形成し、第2弁座と第2弁体とが逃し弁機構の弁座と弁体を形成し、更にボディの外部からピストンロッドを操作してピストンロッドを減圧弁機構の開弁方向へ強制移動させて逃し弁を強制開放する操作部を備え
、筒体大径部の他端部がシリンダ周囲のボディとの接続部に当接することにより減圧弁機構の最大開度が規定され、ピストンヘッドの他端部から径方向外方へ延びて筒体大径部に形成された切欠きに係合する爪がシリンダの他端部に当接することにより逃し弁強制開放時のピストンロッドの移動が規制され、筒体大径部の他端部がシリンダ周囲のボディとの接続部に当接した状態でピストンヘッドの爪とシリンダの他端部との間に隙間が形成されていることを特徴とする減圧弁。
【請求項2】
操作部は、ピストンロッドの前記一端部から延びる延長部と、一端部が前記延長部に係脱可能で他端部がボディ外へ延びる第2ロッドと、第2ロッドの長手軸線に直交する軸線回りに回転可能に第2ロッドの他端部に支持されると共にボディに係合した揺動レバーとを備えることを特徴とする請求項1に記載の減圧弁。
【請求項3】
操作部は、ピストンロッドの前記一端部から延びる延長部と、ボディに螺入すると共にピストンロッドの延長部と係脱可能な第2ロッドを備え、第2ロッドの外部環境に暴露された端部が操作工具に係合可能な形状を有することを特徴とする請求項1に記載の減圧弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を二次側通路の内圧に応じて可変調整する止水機能を有する減圧弁機構と、減圧弁機構の開弁時には閉弁し減圧弁機構の閉弁時に二次側通路の内圧に応じて開閉する逃し弁機構とを備え、減圧弁機構と逃し弁機構とは中心軸線を共有するリフト弁機構である減圧弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を二次側通路の内圧に応じて可変調整する止水機能を有する減圧弁機構と、減圧弁機構の開弁時には閉弁し減圧弁機構の閉弁時に二次側通路の内圧に応じて開閉する逃し弁機構とを備え、減圧弁機構と逃し弁機構とは中心軸線を共有するリフト弁機構である減圧弁であって、ボディと、ボディの一部を形成する接続部を介してボディに連結しボディの一部を形成するシリンダと、シリンダ内で往復摺動するピストンヘッドと、ピストンヘッドとシリンダ内周面との摺接部をシールするシール部材と、ピストンヘッドの一端部から延びてシリンダの一端部からシリンダ外の二次側通路へ突出するピストンロッドと、シリンダの前記一端部が形成する第1弁座と、ピストンロッドのシリンダ外へ突出した一端部に固定されて第1弁座と対峙する第1弁体と、シリンダ周壁のピストンロッドに対峙する部位に形成された開口と、ピストンヘッドを閉弁方向へ付勢する第1バネと、小径部と大径部とを有し小径部の一端部が大径部の一端部に接続すると共にピストンヘッドの他端部に対峙し周壁に切欠が形成された大径部がシリンダに摺動可能に外嵌合する筒体と、前記筒体の小径部に中心部が固定されたダイアフラムと、ボディの一部により形成されダイアフラムに対峙しダイアフラムとシリンダとピストンヘッドと協働して二次側通路に連通する感圧室を形成するダイアフラムケースと、ダイアフラムを感圧室側へ押圧する第2バネと、第2バネと前記筒体小径部の他端部とを収容すると共にダイアフラムケースと協働してダイアフラムの周縁部を挟持し更に外部環境との連通穴が形成されたバネケースと、前記筒体小径部の前記一端部に配設された第2弁座又は第2弁体と、ピストンヘッドの他端部に配設され前記筒体小径部の前記一端部に配設された第2弁座又は第2弁体に対峙する第2弁体又は第2弁座を備え、第1弁体と第1弁座とが減圧弁機構の弁体と弁座とを形成し、第2弁座と第2弁体とが逃し弁機構の弁座と弁体を形成した減圧弁が、特許文献1に開示されている。
特許文献1の減圧弁には、減圧弁機構と逃し弁機構とを一体化できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された減圧弁においては、減圧弁機構の開弁時には逃し弁機構は閉弁しており、減圧弁機構の閉弁時に二次側機器の故障や二次側機器で発生した水撃などにより二次側通路の内圧が所定値を超えて上昇すると、逃し弁機構が開弁し、二次側通路内の高圧流体を外部環境に放出して二次側機器や減圧弁の損傷を防止する。二次側通路の内圧が所定値以下に低減すると逃し弁機構は閉弁する。
逃し弁機構の開弁時に二次側機器から逆流した鉄粉などの異物が第2弁体及び/又は第2弁座に付着して逃し弁機構の閉弁を阻害し、逃し弁機構の閉弁後も二次側通路内の流体が外部環境に放出され続ける場合がある。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を二次側通路の内圧に応じて可変調整する止水機能を有する減圧弁機構と、減圧弁機構の閉弁時に二次側通路の内圧に応じて開閉する逃し弁機構とを備え、減圧弁機構と逃し弁機構とは中心軸線を共有するリフト弁機構である減圧弁であって、外部からの操作で、第2弁体及び/又は第2弁座に付着した異物を除去することができる減圧弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を二次側通路の内圧に応じて可変調整する止水機能を有する減圧弁機構と、減圧弁機構の開弁時には閉弁し減圧弁機構の閉弁時に二次側通路の内圧に応じて開閉する逃し弁機構とを備え、減圧弁機構と逃し弁機構とは中心軸線を共有するリフト弁機構である減圧弁であって、ボディと、ボディの一部を形成する接続部を介してボディに連結しボディの一部を形成するシリンダと、シリンダ内で往復摺動するピストンヘッドと、ピストンヘッドとシリンダ内周面との摺接部をシールするシール部材と、ピストンヘッドの一端部から延びてシリンダの一端部からシリンダ外の二次側通路へ突出するピストンロッドと、シリンダの前記一端部が形成する第1弁座と、ピストンロッドのシリンダ外へ突出した一端部に固定されて第1弁座と対峙する第1弁体と、シリンダ周壁のピストンロッドに対峙する部位に形成された開口と、ピストンヘッドを閉弁方向へ付勢する第1バネと、小径部と大径部とを有し小径部の一端部が大径部の一端部に接続すると共にピストンヘッドの他端部に対峙し周壁に切欠が形成された大径部がシリンダに摺動可能に外嵌合する筒体と、前記筒体の小径部に中心部が固定されたダイアフラムと、ボディの一部により形成されダイアフラムに対峙しダイアフラムとシリンダとピストンヘッドと協働して二次側通路に連通する感圧室を形成するダイアフラムケースと、ダイアフラムを感圧室側へ押圧する第2バネと、第2バネと前記筒体小径部の他端部とを収容すると共にダイアフラムケースと協働してダイアフラムの周縁部を挟持し更に外部環境との連通穴が形成されたバネケースと、前記筒体小径部の前記一端部に配設された第2弁座又は第2弁体と、ピストンヘッドの他端部に配設され前記筒体小径部の前記一端部に配設された第2弁座又は第2弁体に対峙する第2弁体又は第2弁座を備え、第1弁体と第1弁座とが減圧弁機構の弁体と弁座とを形成し、第2弁座と第2弁体とが逃し弁機構の弁座と弁体を形成し、更にボディの外部からピストンロッドを操作してピストンロッドを減圧弁機構の開弁方向へ強制移動させて逃し弁を強制開放する操作部を備え、筒体大径部の他端部がシリンダ周囲のボディとの接続部に当接することにより減圧弁機構の最大開度が規定され、ピストンヘッドの他端部から径方向外方へ延びて筒体大径部に形成された切欠きに係合する爪がシリンダの他端部に当接することにより逃し弁強制開放時のピストンロッドの移動が規制され、筒体大径部の他端部がシリンダ周囲のボディとの接続部に当接した状態でピストンヘッドの爪とシリンダの他端部との間に隙間が形成されていることを特徴とする減圧弁を提供する。
ボディの外部からピストンロッドを操作してピストンロッドを減圧弁機構の開弁方向へ強制移動させて逃し弁機構を強制開放することにより、第2弁体及び/又は第2弁座に付着した異物を、外部環境へ放出される流体を用いて洗い流し除去することができる。
シリンダの他端部から感圧室内に突出するピストンヘッドの他端部から径方向外方へ延びた爪とシリンダの他端部との間の距離は、減圧弁機構が閉弁した時に最大になり、減圧弁機構の開度が最大になった時に最小になる。上記態様によれば、減圧弁機構の開度が最大になって筒体大径部の他端部がシリンダ周囲のボディとの接続部に当接した時に、前記爪とシリンダ他端部との間に隙間があるので、減圧弁機構が閉弁した状態でも、減圧弁機構が開弁した状態でも、ピストンロッドを減圧弁機構開弁方向へ強制移動させて逃し弁機構を強制開放することができる。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、操作部は、ピストンロッドの前記一端部から延びる延長部と、一端部が前記延長部に係脱可能で他端部がボディ外へ延びる第2ロッドと、第2ロッドの長手軸線に直交する軸線回りに回転可能に第2ロッドの他端部に支持されると共にボディに係合した揺動レバーとを備える。
上記構成によれば、揺動レバーを操作して第2ロッドをピストンロッドの延長部に係合させ、ピストンロッドを減圧弁機構の開弁方向へ強制移動させて、逃し弁機構を強制開放することができる。
本発明の好ましい態様においては、操作部は、ピストンロッドの前記一端部から延びる延長部と、ボディに螺入すると共にピストンロッドの延長部と係脱可能な第2ロッドを備え、第2ロッドの外部環境に暴露された端部が操作工具に係合可能な形状を有する。
上記構成によれば、操作工具を用いて第2ロッドを回動操作し、第2ロッドをピストンロッドの延長部に係合させ、ピストンロッドを減圧弁機構の開弁方向へ強制移動させて、逃し弁機構を強制開放することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施例に係る減圧弁の、減圧弁機構が最大開度で開弁し逃し弁機構が閉弁している時の断面図である。
【
図2】本発明の実施例に係る減圧弁の、減圧弁機構が閉弁し逃し弁機構が閉弁している時の断面図である。
【
図3】本発明の実施例に係る減圧弁の、減圧弁機構が閉弁し逃し弁機構が開弁している時の断面図である。
【
図4】本発明の実施例に係る減圧弁の、開弁していた逃し弁機構が閉弁した時の断面図であり、
図2と同じ図である。
【
図5】本発明の実施例に係る減圧弁の、減圧弁機構が閉弁し逃し弁機構が閉弁した
図4の状態から逃し弁を強制開放した時の断面図である。
【
図6】本発明の実施例に係る減圧弁の、減圧弁機構が最大開度で開弁した状態から逃し弁を強制開放した時の断面図である。
【
図7】本発明の他の実施例に係る減圧弁の
図6に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施例に係る減圧弁を説明する。
図1に示すように、減圧弁1はボディ2を備えている。ボディ2は、一次側通路2aと二次側通路2bとが内部に形成されると共に、シリンダ2cとダイアフラムケース2dとを有している。シリンダ2cはボディ2の一部を形成する環状壁2eを介してボディ2に連結しボディ2の一部を形成している。ボディ2の内部に逃し弁強制開放機構格納部2fが形成されている。
減圧弁1は、シリンダ2c内で往復摺動するピストンヘッド3と、ピストンヘッド3とシリンダ2c内周面との摺接部をシールするOリング4と、ピストンヘッド3の一端部から延びてシリンダ2cの一端部からシリンダ2c外の二次側通路2bへ突出するピストンロッド5と、シリンダ2cの前記一端部が形成する第1弁座6と、ピストンロッド5のシリンダ2c外へ突出した一端部に固定されて第1弁座6と対峙する第1弁体7と、シリンダ2c周壁のピストンロッド5に対峙する部位に形成された開口8と、第1弁体7に係合してピストンヘッド3を閉弁方向へ付勢するコイルバネである第1バネ9を備えている。
【0009】
減圧弁1は、小径部10aと大径部10bとを有し、小径部10aの一端部が大径部10bの一端部に接続すると共にシリンダ2c外へ突出したピストンヘッド3の他端部に対峙し、周壁に切欠10cが形成された大径部10bがシリンダ2cに摺動可能に外嵌合する筒体10を備えている。シリンダ2cの他端部から後述する感圧室12内へ突出するピストンヘッド3の他端部から径方向外方へ延びる複数の爪3aが筒体大径部10bの複数の切欠10cに進入している。切欠10cは筒体大径部10bの他端から筒体軸線方向へ延びる第1部位と前記第1部位の終端から周方向へ延びる第2部位とを有しており、爪3aは切欠10cの第1部位を経由して第2部位に進入し、第2部位内に止まっている。
【0010】
減圧弁1は、前記筒体の小径部10aに中心部が固定されたダイアフラム11と、ボディ2の一部により形成されダイアフラム11に対峙しダイアフラム11とシリンダ2cとピストンヘッド3と環状壁2eと協働して二次側通路2bに連通する感圧室12を形成する前述のダイアフラムケース2dと、ダイアフラム11を感圧室12側へ押圧する第2バネ13と、第2バネ13と前記筒体小径部10aの他端部とを収容すると共にダイアフラムケース2dと協働してダイアフラム11の周縁部を挟持するバネケース14と、バネケース14の一部を形成すると共に外部環境へ延びる排水筒14aと、筒体小径部10aの前記一端部に配設された第2弁座15と、ピストンヘッド3の他端部に配設され前記筒体小径部10aの前記一端部に配設された第2弁座15に対峙する第2弁体16と、第2弁体16を閉弁方向へ付勢する第3バネ17を備えている。
【0011】
シリンダ2c、ピストンヘッド3、第1弁座6、第1弁体7、第1バネ9、ダイアフラム11、第2バネ13等によって減圧弁機構αが形成されている。
筒体10、第2弁座15、第2弁体16、第3バネ17、ピストンヘッド3、第1バネ9等により逃し弁機構βが形成されている。
減圧弁機構αと逃し弁機構βとは中心軸線Xを共有するリフト弁機構である
後述するように、減圧弁機構αが開弁している時は、逃し弁機構βは閉弁しており、ピストンヘッド3と筒体10は一体となって往復移動する。減圧弁機構αが閉弁した後、二次側通路2bの内圧が上昇して所定値を超えると、筒体10がピストンヘッド3から離間して逃し弁機構βが開弁する。
【0012】
減圧弁1は、ピストンロッド5の一端部に一端部が連結されたロッドから成るピストンロッド5の延長部5aと、延長部5aが挿通された第1バネ9用のバネ押さえ18と、一端部が前記延長部5aの他端部に係脱可能で他端部がボディ2外へ延びる第2ロッド19と、第2ロッド19のボディ2貫通部をシールするOリング20と、第2ロッド19の付勢バネ21と、第2ロッド19の長手軸線に直交する軸線回りに回転可能に第2ロッド19の他端部に支持されると共にボディ2に係合した揺動レバー22を備えている。後述する逃し弁機構βを強制開放する時以外は、揺動レバー22は
図1に示す退避位置にある。
【0013】
図1に示す減圧弁機構αが最大開度で開弁し、逃し弁機構βが閉弁した状態において、筒体大径部10bの他端部が、シリンダ2c回りの接続部2eに当接して、減圧弁機構αの最大開度を適正値に規定している。この状態において、ピストンヘッド3の他端部から径方向外方へ延びる爪3aとシリンダ2cの他端部との間には隙間Sが形成されている。減圧弁機構αが最大開度となった時に爪3aはシリンダ2cに最接近するので、隙間Sは爪3aとシリンダ2cの他端部との間の隙間の最小値となる。
他方、減圧弁機構αが閉弁した時に爪3aはシリンダ2cから最も離隔するので、
図2に示す減圧弁機構αが閉弁した状態での爪3aとシリンダ2cの他端部との隙間S’が爪3aとシリンダ2cの他端部との間の隙間の最大値となる。
【0014】
減圧弁1の作動を説明する。
二次側通路2bに図示しない配管を介して接続された図示しない吐水装置が閉鎖され、前記配管内の水流が停止している時は、
図2に示すように、第1弁体7が第1弁座6に当接して減圧弁機構αは閉弁している。逃し弁機構βも二次側通路2bの内圧(以下二次圧と呼ぶ)が開弁圧に達していないかぎり、第1バネ9の付勢力を受けた第2弁体16が第2弁座15に当接して閉弁している。
二次側通路2bと感圧室12とは連通しているので、二次圧がダイアフラム11に印加される。一次側通路2aの内圧である一次圧はオーリング4がピストンヘッド3とシリンダ2cとの摺接部をシールすることにより、感圧室12には伝達されず、ダイアフラム11には印加されない。
【0015】
前記吐水装置が開放されると、二次圧が低下し、ダイアフラム11に印加される二次圧による閉弁方向の付勢力が減少して、
図1に示すように、第1弁体7が第1弁座6から離れ、減圧弁機構αは開弁する。第1弁体7と第1弁座6との間に形成された環状隙間を水道水が流れる際に圧力損失が発生し、水道水は減圧される。
減圧弁機構αの作動時には、ピストンヘッド3の他端部に配設された第2弁体16とその周囲のピストンヘッド3他端部が、筒体10小径部10aの一端部に配設された第2弁座15とその周囲の筒体10小径部10aと大径部10bの接続部に、第1バネ9の付勢力で当接してピストンヘッド3と筒体10とが一体となって往復動する。
減圧弁機構αの作動中に、何らかの原因で二次圧が上昇すると、第2バネ13の付勢力に抗してダイアフラム11が第1弁座6から遠ざかる方向へ弾性変形し、ダイアフラム11に固定された筒体10がピストンヘッド3から遠ざかる方向へ移動し、第1バネ9の付勢力を受けたピストンヘッド3が、ひいては第1弁体7が筒体10に追随して移動し、第1弁体7が第1弁座6に接近する。この結果、第1弁座7と第1弁体6との間の環状隙間が狭まり、前記環状隙間を水道水が通過する際の圧力損失が増加する。この結果、二次圧が下降する。従って、減圧弁機構αにより、二次圧は所定の設定圧に維持される。
【0016】
減圧弁機構αの作動中に、二次圧が減圧弁機構αの閉弁圧まで上昇すると、第1弁体7が第1弁座6に当接して減圧弁機構αは
図2の閉弁状態になる。この時、第2弁体16とその周囲のピストンヘッド3他端部と、筒体10小径部10aの一端部に配設された第2弁座15とその周囲の筒体10小径部10aと大径部10bの接続部、との当接部には減圧弁機構α閉弁時の第1バネ9の付勢力から第1弁体7と第1弁座6の当接部に働く押圧力を差し引いた押圧力が作用している。
二次圧が減圧弁機構αの閉弁圧を超えて更に上昇すると、ダイアフラム11が第1弁座6から遠ざかる方向へ更に弾性変形し、筒体10がピストンヘッド3から更に遠ざかる方向へ移動する。筒体10がピストンヘッド3から更に遠ざかる方向へ移動すると、第2弁体16周囲のピストンヘッド3他端部と第2弁座15周囲の筒体10小径部10aと大径部10bの接続部との当接部に働いていた押圧力が零になる一方、第1バネ9の残存付勢力である第3バネ17の付勢力を受けた第2弁体16は、第2弁座15との間の押圧力を減少させつつ第2弁座15との当接状態を維持して筒体10の移動に追随し、逃し弁機構βの閉弁状態が維持される。その後、第2弁体16の逃し弁機構β閉弁方向への移動が図示しないストッパーによって阻止される。
【0017】
二次側機器の故障や水撃等によって二次圧が更に上昇して所定値を超えると、筒体10がピストンヘッド3から更に遠ざかる方向へ移動し、第1バネ9の残存付勢力である第3バネ17の付勢力が零になり、第2弁体16と第2弁座15との間の押圧力が零になり、
図3に示すように、第2弁座15が第2弁体16から離れ、逃し弁機構βが開弁する。感圧室12が、ひいては二次側通路2bが、筒状部材10の大径部10bに形成された切欠10cと、第2弁座15と第2弁体16の間の隙間と、筒状部材10の小径部10aと、バネケース14の内部空間と、排水筒14aと、を介して外部環境に連通する。この結果、感圧室12内、ひいては二次側通路2b内の流体がバネケース14の内部空間へ流入し、排水筒14aを介して外部環境に放出され、二次圧が低下して、二次側通路2bに接続された水回り機器と減圧弁1の損傷が防止される。
【0018】
二次圧が所定値まで低下すると逃し弁機構βが閉弁して、
図4に示す、
図2と同じ状態に復帰する。
図1~4から分かるように、上述の減圧弁機構αと逃し弁機構βの作動時には、揺動レバー22は退避位置にあり、第2ロッド19はピストンロッド延長部5aとは係合しない。
逃し弁機構βの開弁時に二次側機器から逆流した鉄粉などの異物が第2弁体16とその周囲のピストンヘッド3他端部と、筒体10小径部10aの一端部に配設された第2弁座15とその周囲の筒体10小径部10aと大径部10bの接続部等に付着して逃し弁機構βの閉弁を阻害し、逃し弁機構βの閉弁後も二次側通路2b内の流体が外部環境に放出され続ける場合がある。
係る場合、
図1~4に示す退避位置にあった揺動レバー22を手動で揺動させて、
図5に示すように付勢バネ21に抗して第2ロッド19をボディ2外へ引き出し、第2ロッド19の一端部をピストンロッド延長部5aの他端部に係合させ、ピストンロッド5ひいてはピストンヘッド3を減圧弁機構αの開弁方向へ付勢する。
図4に示すようにピストンヘッド3の爪3aとシリンダ2cの他端部との間には隙間S’が存在しているので、ピストンヘッド3を減圧弁機構αの開弁方向へ移動させ、第2弁体16を第2弁座15から離脱させ、
図5に示すように逃し弁機構βを強制開放することができる。
逃し弁機構βが強制開放されると、逃し弁機構βを通って外部環境へ放出される二次側通路2b内の流体によって、第2弁体16とその周囲のピストンヘッド3他端部と、筒体10小径部10aの一端部に配設された第2弁座15とその周囲の筒体10小径部10aと大径部10bの接続部等に付着した異物が洗い流されて除去される。
その後、揺動レバー22を退避位置に戻して逃し弁機構βを閉弁させる。減圧弁1は
図4に示す状態に戻る。
【0019】
図1に示すように、減圧弁機構αが最大開度で開弁している時に、ピストンヘッド3の爪3aとシリンダ2cの他端部との間に隙間Sが存在しているので、減圧弁機構αが最大開度で開弁している時でも
図6に示すように、揺動レバー22を揺動させてピストンヘッド3の爪3aがシリンダ2cの他端部に当接するまで、距離Sだけ、ピストンヘッド3を減圧弁αの開弁方向へ移動させて、逃し弁機構βを強制開弁させることができる。減圧弁機構αが開弁している時は、ピストンヘッド3の爪3aとシリンダ2cの他端部との間に隙間はS以上になるので、減圧弁機構αが開弁している時は何時でも逃し弁機構βを強制開放することができる。
減圧弁機構αの開閉に関わらず逃し弁機構βを強制開放できることにより、減圧弁1の使い勝手が向上する。
【0020】
第2ロッド19、バネ21、揺動レバー22に代えて、
図7に示すように、ボディ2に螺入すると共にピストンロッドの延長部5aと係脱可能な第2ロッド23を配設し、第2ロッド23の外部環境に暴露された端部に操作工具が係合可能な凹部23aを形成しても良い。
操作工具を凹部23aに係合させて第2ロッド23を回動操作し、第2ロッド23をピストンロッドの延長部5aに係合させ、ピストンロッド5ひいてはピストンヘッド3を減圧弁機構αの開弁方向へ強制移動させて、逃し弁機構βを強制開放することができる。
操作工具との係合部は凹部23aに限定されない。第2ロッド23の外部環境に暴露された端部が、操作工具が係合可能な形状を有していれば良い。
上述の実施例において、筒体小径部10aの一端部に第2弁体を配設し、ピストンヘッド3の他端部に第2弁座を配設しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、逃し弁機構を備える減圧弁に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 減圧弁
2 ボディ
2a 一次側通路
2b 二次側通路
2c シリンダ
2d ダイアフラムケース
2e 環状壁
3 ピストンヘッド
5 ピストンロッド
5a 延長部
6 第1弁座
7 第1弁体
9 第1バネ
10 筒体
10a 小径部
10b 大径部
10c 切欠き
11 ダイアフラム
12 感圧室
13 第2バネ
14 バネケース
15 第2弁座
16 第2弁体
17 第3バネ
19、23 第2ロッド
21 付勢バネ
22 揺動レバー
23a 凹部
α 減圧弁機構
β 逃し弁機構