(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】印刷システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
B41J2/01 103
B41J2/01 451
B41J2/01 401
(21)【出願番号】P 2021019105
(22)【出願日】2021-02-09
【審査請求日】2024-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 崇
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-007259(JP,A)
【文献】特開2018-083405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ジョブに基づいて、搬送される用紙に対して複数の第1印字ユニットのノズル列からインクを吐出することで印刷する第1印刷装置と、前記第1印刷装置により印刷された用紙に対して複数の第2印字ユニットのノズル列からインクを吐出することで印刷する第2印刷装置とを備えた印刷システムであって、
角度調整用の特定チャートに基づいて前記第1印刷装置および前記第2印刷装置により印刷された用紙をスキャンすることで得た特定チャート画像に基づいて、前記用紙の搬送方向に印刷された直線と前記ノズル列の方向に印刷されたと直線から、前記搬送方向に対する前記複数の第1印字ユニットおよび前記複数の第2印字ユニットそれぞれの設置角度を算出し、
前記算出した設置角度に基づいて、前記複数の第1印字ユニットの平均角度を第1平均角度として算出するとともに、前記複数の第2印字ユニットの平均角度を第2平均角度として算出し、
前記算出した前記第1平均角度に対する前記第2平均角度が、所定の範囲内に収まるような前記複数の第1印字ユニットまたは前記複数の第2印字ユニットの調整角度を算出する調整角度算出手段
を備えたことを特徴とする印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上流機と下流機の印字ずれを、許容範囲内の印字ずれとするタンデム式の印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙反転経路を含む循環搬送路を有し、給紙トレイから給紙された用紙の一方の面に印刷し、この一方の面に印刷された用紙を、用紙反転経路を搬送することで表裏反転し、他方の面に印刷を行うことにより両面印刷を実行する両面印刷装置がある。
【0003】
このような両面印刷装置では、給紙トレイから給紙される用紙と、用紙反転経路により表裏反転された用紙とが交互に搬送されるので、片面印刷する場合と比較して印刷時間が長くなっていた。
【0004】
そこで、特許文献1のように、同一の構成を有する上流機と下流機とを直列に配置し、上流機により用紙の一方の面に印刷し、下流機により他方の面に印刷を行うタンデム式の印刷システムに関する技術が開示されている。
【0005】
ここで、上流機と下流機それぞれについて、搬送される用紙の適切な場所に印刷されるように用紙の斜行補正が行われる。
【0006】
例えば、特許文献2には、印刷したテストパターンから、ヘッドの角度差を算出し、角度差を無くす方向に傾きを調整する印刷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-202907号公報
【文献】特開2011-126206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2の傾きを調整する技術を特許文献1に記載のタンデム式の印刷システムに適用したとしても、特許文献2の技術は、1つのプリンタ内で記録ヘッドの傾きの角度差の調整を行っているため、特許文献1に記載のタンデム式の印刷システムのように、複数台のプリンタを連結させ同一面に画像を形成する場合、複数台のプリンタの搬送方向と印字ユニットの傾きの同期ができず、適切に斜行補正できない場合がある。
【0009】
その結果、上流機と下流機の印字ずれが許容範囲を超え、印刷の仕上がり品質が劣化することがある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、上流機と下流機の印字ずれを、許容範囲内の印字ずれとするタンデム式の印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷システムの特徴は、
印刷ジョブに基づいて、搬送される用紙に対して複数の第1印字ユニットのノズル列からインクを吐出することで印刷する第1印刷装置と、前記第1印刷装置により印刷された用紙に対して複数の第2印字ユニットのノズル列からインクを吐出することで印刷する第2印刷装置とを備えた印刷システムであって、
角度調整用の特定チャートに基づいて前記第1印刷装置および前記第2印刷装置により印刷された用紙をスキャンすることで得た特定チャート画像に基づいて、前記用紙の搬送方向に印刷された直線と前記ノズル列の方向に印刷されたと直線から、前記搬送方向に対する前記複数の第1印字ユニットおよび前記複数の第2印字ユニットそれぞれの設置角度を算出し、
前記算出した設置角度に基づいて、前記複数の第1印字ユニットの平均角度を第1平均角度として算出するとともに、前記複数の第2印字ユニットの平均角度を第2平均角度として算出し、
前記算出した前記第1平均角度に対する前記第2平均角度が、所定の範囲内に収まるような前記複数の第1印字ユニットまたは前記複数の第2印字ユニットの調整角度を算出する調整角度算出手段
を備えたことにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る印刷システムの特徴によれば、上流機と下流機の印字ずれを、許容範囲内の印字ずれとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るタンデム方式の印刷システムの概略構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るタンデム方式の印刷システムの機能を示すブロック図である。
【
図3】(a)は、ジョブに含まれる角度調整用の特定チャートの第1画像データおよび第2画像データの一例を示した図である。(b)、(c)は、スキャナにより読み取られた特定チャート画像の一例を示した図である。
【
図4】スキャナにより読み取られた特定チャート画像の一例を示した図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るタンデム方式の印刷システムの処理内容を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一若しくは同等の部位や構成要素には、同一若しくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0015】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
[本実施形態の構成]
まず、本発明の第1実施形態に係るタンデム方式の印刷システム1の構成について説明する。タンデム方式の印刷システム1は、PCなどの端末装置から送信されたジョブを受信し、受信したジョブに基づいて、印刷媒体である用紙に画像を印刷する。
【0017】
また、本発明の第1実施形態に係るタンデム方式の印刷システム1は、2台の印刷装置を、用紙の搬送経路に沿って直列的に配置した構成の印刷システムである。
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態に係るタンデム方式の印刷システム1の概略構成図である。
図1に示すように、第1実施形態に係るタンデム方式の印刷システム1は、第1印刷装置10と、中間装置20と、第2印刷装置30と、排出反転装置40と、統括制御装置50と、スキャナ60とを備える。
【0019】
また、本実施形態において、第1印刷処理と第2印刷処理とは同一の印刷処理であり、第1印刷装置10が、用紙の一方の面にCMYKのカラーインクを用いて第1印刷処理を実行し、第2印刷装置30が、第1印刷装置10により印刷された用紙の同一の面に機能性インクを用いて第2印刷処理を実行する。なお、第1印刷装置10が、用紙の一方の面にCMYKのカラーインクを用いて第1印刷処理を実行し、第2印刷装置30が、第1印刷装置10により印刷された用紙の他方の面に機能性インクを用いて第2印刷処理を実行することもできる。
【0020】
また、
図1において、太線で示す経路が、用紙が搬送される搬送経路である。当該搬送経路は、第1印刷装置10における搬送経路R1と、中間装置20における搬送経路R2と、第2印刷装置30における搬送経路R3と、排出反転装置40における搬送経路R4とを含む。第1印刷装置10における搬送経路R1は、中間装置20を介して第2印刷装置30へ搬送する経路であり、第1印刷装置10のみで印刷する場合には、搬送経路R1’に切り替えられ、排紙部11Pへ排紙される。また、中間装置20における搬送経路R2は、用紙を反転させる反転経路であり、用紙の反転が不要な場合には、用紙を反転させずに搬送する直進搬送経路R2’に切り替えられる。さらに、排出反転装置40における搬送経路R4は、用紙を反転させる反転経路であり、用紙の反転が不要な場合には、用紙を反転させずに搬送する直進搬送経路R4’に切り替えられ、排紙台49に排紙される。
【0021】
図1に示すように、第1印刷装置10は、搬送部12と、印刷部13と、装置制御部15とを備える。
【0022】
搬送部12は、外部給紙ローラ12aと、レジストローラ12bとを備える。外部給紙ローラ12aは、給紙台10Pに積載される用紙Pを、レジストローラ12bに向けて搬送する。レジストローラ12bは、外部給紙ローラ12aから搬送されてきた用紙Pを一旦止めて斜行補正した後、印刷部13へと送り出す。
【0023】
印刷部13は、用紙Pを搬送しつつ、用紙Pに画像をカラー印刷する。印刷部13は、インクヘッド部13aと、ベルト搬送部13bと、排紙ローラ13cとを備える。
【0024】
インクヘッド部13aは、ベルト搬送部13bの上方に配置され、用紙Pの搬送方向と略直交する方向に複数のノズルが配列されたラインタイプの複数のインクジェットヘッドを有する。インクヘッド部13aは、ベルト搬送部13bにより搬送される用紙Pにインクジェットヘッドからインクを吐出して画像を印刷する。なお、本実施形態では、インクヘッド部13aは、K色インク(ブラック色インク)とC色インク(シアン色インク)とM色インク(マゼンタ色インク)とY色インク(イエロー色インク)とのそれぞれを吐出可能なインクジェットヘッドを備える。なお、K色インク(ブラック色インク)のみを用いてモノクロ印刷を行うことももちろん可能である。
【0025】
ベルト搬送部13bは、レジストローラ12bから搬送されてきた用紙Pをベルトに吸着保持して搬送する。ベルト搬送部13bは、レジストローラ12bの下流側で、インクヘッド部13aの下方に配置されている。
【0026】
排紙ローラ13cは、インクヘッド部13aによって印刷された用紙Pを中間装置20に排紙する。
【0027】
装置制御部15は、第1印刷装置10内の各種機能を制御する。装置制御部15は、搬送部12や印刷部13を制御して、用紙Pに画像を印刷する。
【0028】
中間装置20は、第1印刷装置10の搬送方向下流側に配置される。中間装置20は、第1印刷装置10から搬出された用紙Pを、第2印刷装置30に搬送する。中間装置20は、搬送部22と、装置制御部25とを備える。
【0029】
搬送部22は、搬送ローラ22a、22b、22cを備え、搬送ローラ22a、22b、22cによって、搬送経路R2又は直進搬送経路R2’に沿って、用紙Pを搬送する。
【0030】
装置制御部25は、中間装置20の各種機能を制御する。装置制御部25は、搬送部22を制御することで、搬送経路R2又は直進搬送経路R2’の何れに切り替えながら、用紙Pを搬送する。
【0031】
第2印刷装置30は、中間装置20の搬送方向下流側に配置される。第2印刷装置30は、搬送部32と、印刷部33と、装置制御部35とを備える。
【0032】
搬送部32は、搬送ローラ32aを備え、中間装置20から搬出された用紙Pを一旦止めて斜行補正した後、印刷部33に搬送する。また、搬送部32は、内部給紙ローラ32cを備え、内部給紙ローラ32cは、給紙トレイ32Pに積載される用紙Pを印刷部33に向けて搬送する。
【0033】
印刷部33は、用紙Pを搬送しつつ、用紙Pに画像を印刷する。印刷部33は、インクヘッド部33aと、ベルト搬送部33bと、排紙ローラ33cとを備える。
【0034】
インクヘッド部33aは、ベルト搬送部33bの上方に配置され、用紙Pの搬送方向と略直交する方向に複数のノズルが配列されたラインタイプの複数のインクジェットヘッドを有する。インクヘッド部33aは、ベルト搬送部33bにより搬送される用紙Pにインクジェットヘッドから機能性インクを吐出して画像を印刷する。なお、本実施形態では、インクヘッド部33aは、機能性インクとして、磁石の微粒子を含んだ磁気インクを吐出可能な複数のインクジェットヘッドを備える。
【0035】
なお、ベルト搬送部33bとの構成は、上述した第1印刷装置10のインクヘッド部13aとベルト搬送部13bとの構成と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0036】
排紙ローラ33cは、インクヘッド部33aによって印刷された用紙Pを排出反転装置40に排紙する。
【0037】
装置制御部35は、第2印刷装置30内の各種機能を制御する。装置制御部35は、搬送部32や印刷部33を制御して、用紙Pに画像を印刷する。
【0038】
排出反転装置40は、第2印刷装置30の搬送方向下流側に配置される。排出反転装置40は、第2印刷装置30から搬出された用紙Pを排紙台49に搬送する。排出反転装置40は、搬送部42と、装置制御部45とを備える。
【0039】
搬送部42は、搬送ローラ42a、42b、42cを備え、搬送ローラ42a、42b、42cによって、搬送経路R4又は直進搬送経路R4’に沿って、用紙Pを搬送する。
【0040】
装置制御部45は、排出反転装置40の各種機能を制御する。装置制御部45は、搬送部42を制御することで、搬送経路R4又は直進搬送経路R4’の何れに切り替えながら、用紙Pを搬送する。
【0041】
統括制御装置50は、タンデム方式の印刷システム1内の各種機能を制御する。また、統括制御装置50は、ジョブに基づく印刷処理を実行するように、第1印刷装置10と、中間装置20と、第2印刷装置30と、排出反転装置40とを統括して制御する。
【0042】
スキャナ60は、原稿上の画像データを光学的に読み取り、統括制御装置50へ送る。スキャナ60は、例えば、角度調整用の特定チャートに基づいて第1印刷装置10と第2印刷装置30により印刷された用紙をスキャンすることで特定チャート画像を得る。
【0043】
(統括制御装置50の構成)
次に、統括制御装置50の構成について、具体的に説明する。
図2は、タンデム方式の印刷システム1の機能を示すブロック図である。
【0044】
図2に示すように、統括制御装置50は、ジョブ受信部51と、受付部52と、調整角度算出部53と、記憶部56と、通信部57とを備える。
【0045】
ジョブ受信部51は、端末装置100との間で情報を送受信する。具体的に、ジョブ受信部51は、ユーザが使用する端末装置100からジョブを受信する。なお、ここでの通信は、例えば、イントラネット(企業内ネットワーク)や家庭内ネットワーク等を含むとともに、有線通信と無線通信との何れであってもよい。
【0046】
受信するジョブは、第1印刷装置10による第1印刷処理に用いられる第1画像データと、第2印刷装置30による第2印刷処理に用いられる第2画像データとを含んでいる。
【0047】
図3(a)は、ジョブに含まれる角度調整用の特定チャートの第1画像データおよび第2画像データの一例を示した図である。
【0048】
図3(a)に示すように、特定チャートは、インクヘッド部33aのインクジェットヘッドの角度を調整するための用いられる画像であり、第1画像データD1と第2画像データD2とが含まれている。
【0049】
第1画像データD1は、第1印刷装置10による第1印刷処理に用いられる画像データであり、ノズル列の方向に沿った直線D11と、用紙Pの搬送方向に沿った直線D12とを含んでいる。また、第2画像データD2は、第2印刷装置30による第2印刷処理に用いられる画像データであり、ノズル列の方向に沿った直線D21と、用紙Pの搬送方向に沿った直線D22とを含んでいる。
【0050】
受付部52は、スキャナ60により読み取られた特定チャート画像などの画像データを受け付ける。例えば、第1印刷装置10および第2印刷装置30により、特定チャート画像を含むジョブに基づいて、一方の面に特定チャート画像が印刷された用紙Pをスキャナ60が読み取ると、受付部52は、スキャナ60により読み取られた特定チャート画像など受け付ける。
【0051】
図3(b)、
図3(c)は、スキャナ60により読み取られた特定チャート画像の一例を示した図である。
【0052】
図3(b)に示すように、読み取られた特定チャート画像は、第1画像データD3と第2画像データD4とが含まれている。
【0053】
第1画像データD3は、第1印刷装置10による第1印刷処理で印刷され読み取られた画像データであり、ノズル列の方向に沿った直線D31と、用紙Pの搬送方向に沿った直線D32とを含んでいる。また、第2画像データD4は、第2印刷装置30による第2印刷処理により印刷され読み取られた画像データであり、ノズル列の方向に沿った直線D41と、用紙Pの搬送方向に沿った直線D42とを含んでいる。
【0054】
図3(b)に示すように、第1画像データD3および第2画像データD4は、ともに、紙面右上がりで印刷されていることがわかる。これは、インクヘッド部13aのインクジェットヘッドおよび、インクヘッド部33aのインクジェットヘッドが、ともに右側が搬送方向に傾いて設けられていると推測できる。インクヘッド部13aのインクジェットヘッドの設置角度がノズル方向に対して許容される角度範囲であるとする。また、インクヘッド部33aのインクジェットヘッドの設置角度もノズル方向に対して許容される角度範囲であるとする。
【0055】
このとき、第1画像データD3および第2画像データD4を用紙Pの一方の面に重ね合わせて印刷したとしても、設置角度の差が小さいので仕上がり品質に大きな問題とはならない。
【0056】
一方、
図3(c)に示す場合には、仕上がり品質が問題となる場合がある。
【0057】
図3(c)に示すように、読み取られた特定チャート画像は、第1画像データD5と第2画像データD6とが含まれている。
【0058】
第1画像データD5は、第1印刷装置10による第1印刷処理で印刷され読み取られた画像データであり、ノズル列の方向に沿った直線D51と、用紙Pの搬送方向に沿った直線D52とを含んでいる。また、第2画像データD6は、第2印刷装置30による第2印刷処理により印刷され読み取られた画像データであり、ノズル列の方向に沿った直線D61と、用紙Pの搬送方向に沿った直線D62とを含んでいる。
【0059】
図3(c)に示すように、第1画像データD5は紙面右上がりで印刷されていることがわかる。一方、第2画像データD6は紙面右下がりで印刷されていることがわかる。これは、インクヘッド部13aのインクジェットヘッドの右側が搬送方向に傾いて設けられており、インクヘッド部33aのインクジェットヘッドの左側が搬送方向に傾いて設けられているためと推測できる。
【0060】
インクヘッド部13aのインクジェットヘッドの設置角度がノズル方向に対して許容される角度範囲であるとする。また、インクヘッド部33aのインクジェットヘッドの設置角度もノズル方向に対して許容される角度範囲であるとする。
【0061】
このとき、第1画像データD5および第2画像データD5を用紙Pの一方の面に重ね合わせて印刷したとすると、これらの設置角度の差が大きく、仕上がり品質に問題となる場合がある。
【0062】
そこで、調整角度算出部53は、仕上がり品質が問題とならないように、インクヘッド部33aのインクジェットヘッドの調整角度を算出する。
【0063】
まず、調整角度算出部53は、受付部52が受け付けた特定チャート画像に基づいて、用紙Pの搬送方向に印刷された直線とノズル列の方向に印刷されたと直線から、搬送方向に対するインクヘッド部13aのインクジェットヘッド(複数の第1印字ユニット)およびインクヘッド部33aのインクジェットヘッド(複数の第2印字ユニット)それぞれの設置角度を算出する。
【0064】
図3(c)に示した例では、調整角度算出部53は、直線D51と直線D52とから搬送方向に対するインクヘッド部13aのインクジェットヘッド(複数の第1印字ユニット)のそれぞれの設置角度を算出する。また、調整角度算出部53は、直線D61と直線D62とから搬送方向に対するインクヘッド部33aのインクジェットヘッド(複数の第1印字ユニット)のそれぞれの設置角度を算出する。
【0065】
次に、調整角度算出部53は、算出したインクヘッド部13aのインクジェットヘッド(複数の第1印字ユニット)それぞれの設置角度の平均を、第1平均角度として算出する。また、調整角度算出部53は、算出したインクヘッド部33aのインクジェットヘッド(複数の第2印字ユニット)それぞれの設置角度の平均を、第2平均角度として算出する。
【0066】
図4は、スキャナ60により読み取られた特定チャート画像の一例を示した図である。
【0067】
図4に示すように、第1画像データE1~E6は、第1印刷装置10による第1印刷処理で印刷され読み取られた画像データであり、第2画像データF1~EFは、第1印刷装置10による第1印刷処理で印刷され読み取られた画像データである。
【0068】
調整角度算出部53は、第1画像データE1~E6それぞれに基づいて算出された設置角度の平均を、第1平均角度として算出する。また、調整角度算出部53は、第2画像データF1~F6それぞれに基づいて算出された設置角度の平均を、第2平均角度として算出する。
【0069】
そして、調整角度算出部53は、算出した第1平均角度に対する第2平均角度が、所定の範囲内に収まるようなインクヘッド部13aのインクジェットヘッド(複数の第1印字ユニット)またはインクヘッド部33aのインクジェットヘッド(複数の第2印字ユニット)の調整角度を算出する。すなわち、調整角度算出部53は、第1平均角度と第2平均角度との差が範囲内に収まるような調整角度を算出する。
【0070】
記憶部56は、受信したジョブを印刷処理が実行されるまで待機中ジョブとして記憶する。待機中ジョブが実行される際に、第1印刷装置10および第2印刷装置30それぞれ印刷される画像データ(第1画像データおよび第2画像データ)が抽出され、通信部57から、印刷装置(第1印刷装置10または第2印刷装置30)へ送信される。また、記憶部56は、調整角度算出部53により算出された調整角度を記憶する。
【0071】
図5は、本発明の第1実施形態に係るタンデム方式の印刷システム1の処理内容を示したフローチャートである。
【0072】
図5に示すように、ステップS101において、統括制御装置50は、第1印刷装置10と、中間装置20と、第2印刷装置30と、排出反転装置40とを制御して、特定チャートを含むジョブに基づいて、印刷処理を実行させる。
【0073】
ステップS103において、スキャナ60は、特定チャートに基づいて第1印刷装置10と第2印刷装置30により印刷された用紙Pをスキャンすることで特定チャート画像を得る。
【0074】
ステップS105において、調整角度算出部53は、受付部52が受け付けた特定チャート画像に基づいて、用紙Pの搬送方向に印刷された直線とノズル列の方向に印刷されたと直線から、搬送方向に対するインクヘッド部13aのインクジェットヘッド(複数の第1印字ユニット)およびインクヘッド部33aのインクジェットヘッド(複数の第2印字ユニット)それぞれの設置角度を算出する。
【0075】
ステップS107において、調整角度算出部53は、算出したインクヘッド部13aのインクジェットヘッド(複数の第1印字ユニット)それぞれの設置角度の平均を、第1平均角度として算出する。また、調整角度算出部53は、算出したインクヘッド部33aのインクジェットヘッド(複数の第2印字ユニット)それぞれの設置角度の平均を、第2平均角度として算出する。
【0076】
ステップS109において、調整角度算出部53は、算出した第1平均角度に対する第2平均角度が、所定の範囲内に収まるようなインクヘッド部13aのインクジェットヘッド(複数の第1印字ユニット)またはインクヘッド部33aのインクジェットヘッド(複数の第2印字ユニット)の調整角度を算出する。
【0077】
ステップS111において、調整角度算出部53は、算出した調整角度が予め定めた閾値以下であるか否かを判定する。
【0078】
ステップS111において調整角度が予め定めた閾値以下であると判定された場合(YES)、調整角度算出部53は、図示しない表示パネル上に、調整角度を表示させ(ステップS113)、ユーザが、インクヘッド部13aのインクジェットヘッド(複数の第1印字ユニット)またはインクヘッド部33aのインクジェットヘッド(複数の第2印字ユニット)の設置角度を調整する(ステップS115)。
【0079】
なお、本実施形態では、インクヘッド部33aは、機能性インクとして、磁石の微粒子を含んだ磁気インクを吐出可能なインクジェットヘッドを備える構成としたが、これに限らず、インクヘッド部13aと同様に、K色インクとC色インクとM色インクとY色インクそれぞれを吐出可能なインクジェットヘッドを備えるようにしてもよい。
【0080】
また、インクヘッド部33aは、グレー、金、赤などの特色インクそれぞれを吐出可能なインクジェットヘッドを備えるようにしてもよいし、UVインクを吐出可能なインクジェットヘッドを備えるようにしてもよい。
【0081】
なお、第1印刷装置10と第2印刷装置30とは、インクジェットヘッドを備えるインクジェット印刷装置として説明したが、印刷部としてはこれに限らず、たとえば孔版印刷装置や電子写真式印刷装置のような他のタイプの印刷装置であってもよい。電子写真式印刷装置の場合、例えば、一方の印刷装置がトナーで印刷できない状況のとき、他方の印刷装置でトナーで印刷して、一方の印刷装置がトナー印刷できるようになったら印刷するようにしてもよい。
【0082】
さらに、これらの組み合わせでもよい。例えば、第1印刷装置10はインクジェット印刷装置であり、第2印刷装置30は孔版印刷装置であってもよい。
【0083】
(付記)
本出願は、以下の発明を開示する。
【0084】
(付記1)
印刷ジョブに基づいて、搬送される用紙に対して複数の第1印字ユニットのノズル列からインクを吐出することで印刷する第1印刷装置と、前記第1印刷装置により印刷された用紙に対して複数の第2印字ユニットのノズル列からインクを吐出することで印刷する第2印刷装置とを備えた印刷システムであって、
角度調整用の特定チャートに基づいて前記第1印刷装置および前記第2印刷装置により印刷された用紙をスキャンすることで得た特定チャート画像に基づいて、前記用紙の搬送方向に印刷された直線と前記ノズル列の方向に印刷されたと直線から、前記搬送方向に対する前記複数の第1印字ユニットおよび前記複数の第2印字ユニットそれぞれの設置角度を算出し、
前記算出した設置角度に基づいて、前記複数の第1印字ユニットの平均角度を第1平均角度として算出するとともに、前記複数の第2印字ユニットの平均角度を第2平均角度として算出し、
前記算出した前記第1平均角度に対する前記第2平均角度が、所定の範囲内に収まるような前記複数の第1印字ユニットまたは前記複数の第2印字ユニットの調整角度を算出する調整角度算出手段
を備えたことを特徴とする印刷システム。
【0085】
これにより、タンデム式の印刷システムであっても、第1平均角度と第2平均角度との差が範囲内に収まるような調整角度を算出することができるので、例えば、第1印字ユニットと、第2印字ユニットとが反する方向に傾いて設置されているとしても、印刷の仕上がり品質が劣化しないよう適切な調整角度を算出することができるので、第1印刷装置(上流機)と第1印刷装置(下流機)の印字ずれを、許容範囲内の印字ずれとすることが可能となる。そのため、印刷の仕上がり品質の劣化を防止することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 印刷システム
10 第1印刷装置
13 印刷部
13a インクヘッド部
13b ベルト搬送部
13c 排紙ローラ
15 装置制御部
20 中間装置
22 搬送部
25 装置制御部
30 第2印刷装置
32 搬送部
33 印刷部
33a インクヘッド部
33b ベルト搬送部
35 装置制御部
40 排出反転装置
42 搬送部
45 装置制御部
50 統括制御装置
51 ジョブ受信部
52 受付部
53 調整角度算出部
56 記憶部
57 通信部
60 スキャナ
100 端末装置