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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】印刷機
(51)【国際特許分類】
   B41F 33/00 20060101AFI20240909BHJP
   B41F 13/12 20060101ALI20240909BHJP
   B41F 7/02 20060101ALN20240909BHJP
【FI】
B41F33/00 290
B41F13/12
B41F7/02 414
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021019196
(22)【出願日】2021-02-09
(65)【公開番号】P2022122105
(43)【公開日】2022-08-22
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】714000460
【氏名又は名称】リョービMHIグラフィックテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴彦
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-025616(JP,A)
【文献】特開平08-052862(JP,A)
【文献】特開2017-052257(JP,A)
【文献】特開2007-106042(JP,A)
【文献】特開2000-318132(JP,A)
【文献】特許第6030732(JP,B1)
【文献】特開2016-198915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 33/00
B41F 13/12
B41F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準色を含む色で印刷柄と見当測定用の見当マークを印刷対象物に印刷する印刷部を備える印刷機であって、
前記見当マークを含むように前記印刷部で印刷した印刷対象物を、該印刷対象物の搬送基準に関連付けて撮像する撮像手段と、
該撮像手段により撮像された画像から前記見当マークを含む所定エリアを取得する所定エリア取得手段と、
該所定エリア取得手段により取得した所定エリアの搬送方向の設定位置に基づいて前記見当マークのうちの少なくとも前記基準色の見当マークの搬送方向の位置を割り出す割出手段と、を備え、
前記所定エリアは、印刷において前記印刷対象物を搬送する時の前記搬送基準を基準にして搬送方向の位置が設定され、
前記所定エリアは、前記印刷対象物の幅方向両端部のそれぞれにあり、一端部の所定エリアと他端部の所定エリアとが前記印刷対象物の搬送方向において同一位置にあることを特徴とする印刷機。
【請求項2】
基準色を含む色で印刷柄と見当測定用の見当マークを印刷対象物に印刷する印刷部を備える印刷機であって、
前記見当マークを含むように前記印刷部で印刷した印刷対象物を、該印刷対象物の搬送基準に関連付けて撮像する撮像手段と、
該撮像手段により撮像された画像から前記見当マークを含む所定エリアを取得する所定エリア取得手段と、
該所定エリア取得手段により取得した所定エリアの搬送方向の設定位置に基づいて前記見当マークのうちの少なくとも前記基準色の見当マークの搬送方向の位置を割り出す割出手段と、を備え、
前記所定エリアは、印刷において前記印刷対象物を搬送する時の前記搬送基準を基準にして搬送方向の位置が設定され、
搬送される前記印刷対象物の搬送方向及び幅方向の姿勢を検出する検出手段と、該検出手段により検出した前記印刷対象物の姿勢が設定された姿勢に対して許容範囲を超えているかどうかを判断する判断手段と、を備え、該判断手段が許容範囲を超えていると判断した前記印刷対象物においては、前記割出手段による割り出しを行わないように構成されていることを特徴とする印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷柄と該印刷柄と同色の見当測定用の見当マークとを印刷対象物に印刷する印刷部を備える印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かかる印刷機においては、印刷対象物である印刷用紙の幅方向両端部の余白部に使用する印刷ユニットの台数と同じ数の見当測定用の見当マークが印刷される。例えば下記特許文献1では、各見当マークは、第1の見当マーク群と第2の見当マーク群とから構成されている。第1の見当マーク群は、基準色(スミ)を含む各色の見当マーク(図3Aでは4個)からなる。第2の見当マーク群は、第1の見当マーク群と同数でかつ全て基準色(スミ)の見当マーク(図3Aでは4個)からなる。また、前記第2の見当マーク群は、第1の見当マーク群の配列方向(天地方向)と直交する方向(左右方向)に予め定められた距離だけ平行にずらした位置に、第1の見当マーク群の配列方向(天地方向)と同方向(天地方向)に第1の見当マークの間隔と同じ間隔に設定されている。
【0003】
インラインカメラによって搬送中の印刷用紙を撮像し、得られた撮像画像から第1の見当マーク群の4色の見当マーク及び第2の見当マーク群の同色(スミ)の4個の見当マークの位置をそれぞれ取得する。取得した位置に基づいて、第1の見当マーク群の基準色の見当マークとその他の3色の見当マークとのマーク間距離及び第2の見当マーク群の基準色の見当マークとその他の基準色の見当マークとのマーク間距離をそれぞれ算出する。また、左右方向で隣り合う第1の見当マーク群の4個の見当マークと第2の見当マーク群の4個の見当マークとの左右方向のマーク間距離をそれぞれ算出する。そして、算出した天地方向及び左右方向のマーク間距離のそれぞれが、予め定められている値になるように印刷ユニットの見当調整装置を制御することで、各色の画像の見当を自動的に合わせる見当合わせ方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6030732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、版胴へ基準色(スミ)の版を取り付ける際に版胴への版の取付位置が不適になる(正規の位置からずれる)ことがある。この場合、印刷用紙に印刷される基準色の印刷柄及び基準色の見当マークが印刷用紙に対して正規の位置からずれてしまう。この状態で特許文献1のように基準色の見当マークを基準にして他の色の見当マークのマーク間距離を算出して見当を合わせると、印刷柄が印刷用紙に対する正規の位置からずれた位置に印刷されてしまう。そうすると、例えば印刷用紙の4辺とも紙端から等しい寸法で裁断するように印刷柄の印刷用紙に対する位置が設定されていた場合に、前記のように印刷柄が印刷用紙に対して正規の位置からずれてしまうと、各辺で裁断寸法が異なってしまうことになる。その結果、裁断機のセッティングを各辺毎に変更しなければならず、作業性が低下してしまうという不都合が発生していた。また、両面印刷において、一方の面で印刷用紙に対する印刷柄の位置が正規の位置からずれていると、表裏の見当が合わないという不都合もある。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、印刷対象物に対して正規の位置に印刷柄を印刷することができる印刷機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷機は、基準色を含む色で印刷柄と見当測定用の見当マークを印刷対象物に印刷する印刷部を備える印刷機であって、前記見当マークを含むように前記印刷部で印刷した印刷対象物を、該印刷対象物の搬送基準に関連付けて撮像する撮像手段と、該撮像手段により撮像された画像から前記見当マークを含む所定エリアを取得する所定エリア取得手段と、該所定エリア取得手段により取得した所定エリアの搬送方向の設定位置に基づいて前記見当マークのうちの少なくとも前記基準色の見当マークの搬送方向の位置を割り出す割出手段と、を備え、前記所定エリアは、印刷において前記印刷対象物を搬送する時の前記搬送基準を基準にして搬送方向の位置が設定されていることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、見当マークの搬送方向の位置を、印刷において印刷対象物を搬送する時の搬送基準を基準にして搬送方向の位置が設定された所定エリアの位置に基づいて割り出すので、印刷柄を印刷対象物に対して正規の位置に印刷することができる。
【0009】
また、本発明に係る印刷機は、前記所定エリアが、前記印刷対象物の幅方向両端部のそれぞれにあり、一端部の所定エリアと他端部の所定エリアとが前記印刷対象物の搬送方向において同一位置にあってもよい。
【0010】
上記のように、所定エリアが、印刷対象物の幅方向両端部のそれぞれにあり、一端部の所定エリアと他端部の所定エリアとが印刷対象物の搬送方向において同一位置にあることによって、印刷対象物に対して印刷柄が傾いて印刷されている(所謂斜像になっている)ことがわかる。
【0011】
また、本発明に係る印刷機は、搬送される前記印刷対象物の搬送方向及び幅方向の姿勢を検出する検出手段と、該検出手段により検出した前記印刷対象物の姿勢が設定された姿勢に対して許容範囲を超えているかどうかを判断する判断手段と、を備え、該判断手段が許容範囲を超えていると判断した前記印刷対象物においては、前記割出手段による割り出しを行わないように構成されていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、判断手段が印刷対象物の姿勢が設定された姿勢に対して許容範囲を超えていると判断した場合に、割出手段による見当マークの位置の割り出しを行わないように構成されているので、印刷柄が印刷対象物に対する正規の位置からずれて印刷されることを防止できる。
【0013】
また、本発明に係る印刷機は、前記印刷部が、前記印刷対象物の表面を印刷する表側印刷部と前記印刷対象物の裏面を印刷する裏側印刷部とを備え、前記撮像手段は、前記印刷対象物の表面を撮像する表側撮像手段と前記印刷対象物の裏面を撮像する裏側撮像手段とを備え、前記所定エリア取得手段は、前記表側撮像手段により撮像された表面の画像と前記裏側撮像手段により撮像された裏面の画像のそれぞれから前記見当マークを含む所定エリアを取得するように構成されていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、印刷対象物の表側の所定エリア及び裏側の所定エリアを取得することによって、表面の見当合わせ、裏面の見当合わせができる他、表面と裏面の相対位置の見当合わせができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、搬送基準を基準にして搬送方向の位置が設定された所定エリアの位置に基づいて見当マークの搬送方向の位置を割り出すので、印刷対象物に対して正規の位置に印刷柄を印刷することができる印刷機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】印刷機の側面図である。
図2】印刷機における見当合わせを行う制御構成を示すブロック図である。
図3】撮像画像を説明する図である。
図4】所定エリアを説明する図である。
図5】見当合わせを行うためのフローチャートである。
図6図5の面内見当ずれ計算を行うためのサブフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態にかかる見当合わせを行う印刷機について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
印刷機は、紙積み台1と、紙積み台1からフィーダ装置2により一枚ずつ印刷対象物である印刷用紙を送り出すための給紙部3と、この給紙部3から送り出された印刷用紙に4色の印刷を行うための先刷り用の印刷部(表側印刷部)4と、先刷り用の印刷部4で印刷された印刷用紙(印刷物)を反転可能な反転装置5と、反転装置5で反転された印刷用紙の裏面又は反転させずに印刷用紙の表面に4色の印刷を行うための後刷り用の印刷部(裏側印刷部)6と、印刷後の印刷用紙を搬送して排紙するための排紙部17と、を備えている。以下は、反転装置5で印刷用紙を反転する場合について説明する。印刷機は、更に先刷り用の印刷部4で印刷された印刷用紙の表面を撮像する第1インラインカメラ(CCDイメージセンサ、RGBカメラ等)11と、後刷り用の印刷部6で印刷された印刷用紙の裏面を撮像する第2インラインカメラ(CCDイメージセンサ、RGBカメラ等)16と、を備えている。第1インラインカメラ11は、表側撮像手段であり、第2インラインカメラ16は、裏側撮像手段である。これら表側撮像手段と裏側撮像手段とで撮像手段を構成している。また、図1において、紙積み台1側を前側とし、排紙部17側を後側とし、印刷用紙の搬送方向と直交する方向(紙面を横切る方向)を左右方向(又は幅方向)として、以下説明する。
【0019】
給紙部3には、印刷用紙の搬送方向始端(前端)が当接して印刷用紙の搬送を一時的に阻止することで該印刷用紙の搬送方向始端(前端)を揃えるための前当て機構(図示せず)と、印刷用紙を横方向一端に移動させて印刷用紙の左右方向(幅方向)端の位置を揃える針(横針)機構(図示せず)と、を備えている。また、給紙部3には、前当て機構で揃えられた印刷用紙の搬送方向始端(前端)の位置を検出する前当て検出手段(検出センサ、図示せず)、及び針(横針)機構で揃えられた印刷用紙の左右方向端の位置を検出する針検出手段(検出センサ、図示せず)を備えている。両検知手段の検出結果により、揃えられた印刷用紙の搬送方向及び幅方向における姿勢が正常かどうか(許容範囲内かどうか)を判断することができる。給紙部3において正常位置に揃えられた印刷用紙は、後述する搬送胴において正規の位置に保持されて印刷部4へ搬送される。また、前記両検出手段によって正常位置にないことが検出された印刷用紙は、後述する搬送胴において、搬送胴上の正規の位置からずれた位置に保持されて印刷部4へ搬送される。
【0020】
先刷り用の印刷部4は、以外の色(金色、銀色、蛍光色等を含む)である特色を印刷するプロセス4色であるK(ブラック、スミともいう)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)で印刷柄及び見当測定用の見当マーク7,8,9,10を印刷する4台の印刷ユニット4A,4B,4C,4Dを備えている。後刷り用の印刷部6は、先刷り用の印刷部4と同様に、プロセス4色であるK(ブラック、スミともいう)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)で印刷柄及び見当測定用の見当マーク12,13,14,15を印刷する4台の印刷ユニット6A,6B,6C,6Dを備えている。尚、反転しない場合、後刷りでは、先刷り用の印刷部4とは異なる色、プロセス4色以外の色(金色、銀色、蛍光色等を含む)である特色を印刷するようにしてもよい。
【0021】
各印刷ユニット4A…は、版が巻き付けられる版胴(図示せず)と、版胴からのインキが転写されるゴム胴(図示せず、ブランケット胴ともいう)と、ゴム胴とで印刷用紙を圧接してゴム胴上のインキを印刷用紙に転写する圧胴(図示せず)と、印刷ユニット4Aの圧胴に印刷用紙を受け渡すために搬送方向前端側に配置される給紙胴(図示せず)と、前の印刷ユニットの圧胴から次の印刷ユニットの圧胴へ印刷用紙を受け渡すために圧胴間に配置される渡し胴(図示せず)と、を備えている。給紙胴、圧胴及び渡し胴は、総じて搬送胴という。搬送胴は、印刷用紙を保持するために、印刷用紙の前端部を挟持する爪と爪台を備えている。
【0022】
また、各印刷ユニット4A…には、見当合わせ装置を備えており、図2に示すように、制御部18からの信号に基づいて見当がずれている色の印刷ユニットの見当合わせ装置19を駆動することにより見当を正しく合わせることができる。見当がずれる原因としては、版が版胴の正規の位置に取り付けられていない場合等が考えられる。
【0023】
図3に示すように、第1インラインカメラ11及び第2インラインカメラ16で撮像される撮像画像32は、前端31A、後端31B、左端31C、右端31Dを有する矩形の印刷用紙31を内部に含む範囲で取得される。印刷用紙31の表面(先刷り面)に印刷される見当マーク7,8,9,10は、図4に示すように、正方形であって、天地方向に間隔を置いて天地方向天側(搬送方向前側)からK(ブラック、スミともいう)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の順に並んで印刷される。4色の見当マーク7,8,9,10のうちの天地方向天側から2番目に位置する見当マーク8から4番目に位置する見当マーク10までの3個の見当マーク8,9,10の左右方向左側に、同一形状で同一の大きさのK(ブラック、スミともいう)の3個の正方形状のマーク20,21,22が印刷されている。これら3個のマーク20,21,22は、印刷された印刷用紙の天地方向を確認するために印刷されるものであり、省略してもよい。
【0024】
図1に示すように、第1インラインカメラ11は、先刷り用の印刷部4の4番目の印刷ユニット4Dの圧胴上において印刷直後の印刷用紙を斜め上方から撮像するために、後刷り用の印刷部6の1番目の印刷ユニット6Aの前面上部に配置されたボックス23に取り付けられている。また、第2インラインカメラ16は、後刷り用の印刷部6の4番目の印刷ユニット6Dの圧胴上において印刷直後の印刷用紙を斜め上方から撮像するために排紙部17の前端側上部に配置されたボックス24の前側上部に取り付けられている。
【0025】
図2に、印刷機における見当合わせを行うための制御ブロック図が示されている。制御部18は、第1インラインカメラ11及び第2インラインカメラ16により撮像された撮像画像32の中から見当マーク7,8,9,10を含む所定エリア25,25を取得する所定エリア取得手段27と、所定エリア取得手段27で取得した各所定エリア25から複数の見当マーク7,8,9,10の位置をそれぞれ割り出す割出手段28と、搬送される印刷用紙の搬送方向及び左右方向(幅方向)の姿勢を検出する検出手段29により検出した印刷用紙の姿勢が設定された姿勢に対して許容範囲を超えているかどうかを判断する判断手段30と、を備えている。撮像画像32の範囲は、図3に示すように、印刷用紙31を越えた圧胴35上に設定された左右一対の辺32A,32Bと、搬送方向始端と後端に設定された前後一対の辺32C,32Dとから画定されている。
【0026】
撮像画像32は、圧胴(他の搬送胴でもよい)の回転を検出するエンコーダのパルス数と関連付けられて取得される。具体的には、撮像画像32の搬送方向位置が、圧胴が有する爪台の搬送方向中心位置を搬送基準(原点)としてエンコーダによって検出されるパルス数と関連付けられて制御部18に記憶される。図3において撮像画像32における前記搬送基準に対応する位置をHで示す。
【0027】
所定エリア取得手段27は、撮像画像32内において見当マーク群と印刷用紙31の左右端(左端31C、右端31D)の一方を含む矩形領域として所定エリア25,25を取得する。所定エリア25,25の搬送方向範囲を画定する搬送方向始端の辺(前辺25C)及び搬送方向後端の辺(後辺25D)の位置は、搬送基準Hからのパルス数として見当マーク群を含むように予め設定しておく。図3において、搬送基準Hから前辺25Cまでのパルス数に対応する搬送方向距離をLで示している。また、所定エリア25,25の左右方向範囲を画定する辺(左辺25A、右辺25B)の位置は、印刷用紙31のサイズ情報に関連付けて、見当マーク群と印刷用紙31の左右端(左端31C,右端31D)の一方を含むように予め設定しておく。尚、図4は、図3における右側の所定エリア25を示している。また、図4の斜線部分は、印刷用紙31の右端(端31D)から右側に突出している圧胴35の外周面の撮像画像を示している。
【0028】
割出手段28は、取得された所定エリア25,25の画像から基準色の見当マーク7を識別して該基準色の見当マーク7の重心7Gを特定し、さらに重心7Gの前辺25Cからの搬送方向の距離L1、及び重心7Gの印刷用紙31の左右端(左端31C又は右端31D)からの左右方向の距離W1を割り出す(計測する)。また、割出手段28は、他の色の見当マーク8,9,10のそれぞれについて重心8G,9G,10Gを特定し、重心8G,9G,10Gの基準色の見当マーク7の重心7Gに対する各相対距離を割り出す(計測する)。制御部18は、割り出した両距離(距離L1、距離W1)と各相対距離が許容範囲内にあるか判断し、許容範囲から外れていると判断した場合は、許容範囲内になるべく、見当合わせ装置19を制御する。これにより、印刷柄を印刷用紙の正規の位置に印刷することができる。尚、距離L1は、後辺25Dからの距離として割り出してもよい。
【0029】
所定エリア25は、図3に示すように、印刷用紙31の幅方向両端部のそれぞれにあり、一端部(左端部)の所定エリア25と他端部(右端部)の所定エリア25とが印刷用紙の搬送方向において同一位置に配置されている。制御部18は、割出手段28が各所定エリア25のそれぞれにおいて割り出した距離L1と重心8G,9G,10Gの重心7Gに対する搬送方向の各相対距離とを比較し、印刷柄の印刷用紙31に対する傾斜(所謂斜像)の有無を把握する。斜像がある場合は、該斜像を解消すべく見当合わせ装置19を制御する。このように、印刷用紙31の幅方向両端部のそれぞれに所定エリア25,25を配置することで、斜像がある場合においても、印刷柄を印刷用紙の正規の位置に印刷することができる。
【0030】
また、制御部18は、給紙部3において搬送される印刷用紙の搬送方向及び左右方向(幅方向)の姿勢を検出する検出手段29により検出した印刷用紙31の姿勢が、設定された姿勢に対して許容範囲を超えているかどうかを判断する判断手段30を備えている。尚、検出手段29には前述の前当て検出手段及び針検出手段が含まれる。そして制御部18は、判断手段30が許容範囲を超えていると判断した印刷用紙31については、見当合わせのために所定エリア25を取得して見当マークの位置(前記距離L1,W1及び前記各相対距離)を割り出す対象から除外する。すなわち、圧胴上の正規の位置に保持されていない状態で印刷された印刷用紙31の撮像画像32を用いて見当合わせを行うことを回避することができる。したがって、見当合わせによって印刷用紙の正規の位置からずれた位置に印刷柄が印刷されてしまうことを未然に防止することができる。
【0031】
次に、上記構成の印刷機における見当合わせについて図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0032】
まず、印刷機の各種操作や設定が可能なタッチパネル式のGUI(Grafical User Interface、図示せず)を用いて印刷用紙に対する印刷柄の位置を設定する(ステップS1)。すなわち、印刷用紙に対する印刷柄の正規の位置を設定する。具体的には、例えば、印刷用紙31の左右方向及び搬送方向(天地方向)の中心に印刷柄の中心を合わせる。
【0033】
次に、前記GUIを用いて、所定エリア取得手段27が取得する所定エリア(所定エリア25,25)の位置を設定する(ステップS2)。
【0034】
設定が完了すると、印刷を開始し(ステップS3)、検知手段29によって印刷用紙を検知する(ステップS4)。次に、先刷りの表面において面内見当ずれ計算を行う(ステップS5)。また、後刷りの裏面印刷がある場合は、裏面において面内見当ずれ計算を行う(ステップS6)。
【0035】
面内見当ずれ計算(ステップS5,S6)について、図6に示すフローチャートにて説明する。まず、印刷用紙31の撮像画像32から所定エリア設定手段27によって所定エリア25を取得する(ステップS20)。次に、割出手段28によって所定エリア25の画像から見当マーク7,8,9,10の位置(前記距離L1,W1及び前記各相対距離)を計測する(ステップS21)。このときの印刷用紙31の枚数をカウントする(ステップS22)。次に、判断手段30が、検出手段29により検出した印刷用紙31の姿勢が設定された姿勢に対して許容範囲を超えているかどうかを判断する(ステップS23)。そして、許容範囲を超えていない印刷用紙31の計測結果については見当ずれの計算に使用する対象とし(ステップS24)、許容範囲を超えている印刷用紙31の計測結果については見当ずれの計算に使用する対象から外す(ステップS25)。
【0036】
計算対象に入れた計測結果の数が予め設定されている数に到達すると(ステップS26)、それらの計測結果を取得すると共にそれらの計測データの平均化を行う(ステップS27)。続いて、基準見当マーク、つまり基準色の見当マーク7の印刷用紙に対するずれ計算を行うとともに(ステップS28)、他の色の見当マーク8,9,10の基準色の見当マーク7に対するずれ計算を行う(ステップS29)。これらのずれ計算では、ステップS27で計算した平均値を用い、基準色の見当マーク7の位置の許容範囲の中心値からのずれと、他の色の見当マーク8,9,10の基準色の見当マーク7に対する各相対位置の許容範囲の中心値からのずれを計算する。
【0037】
次に、ステップ5,6で計算した見当ずれに基づいて、見当を合わせるべく見当合わせ装置19を駆動する(ステップ7)。そして、表面と裏面(裏面印刷がある場合)の面内見当が所定の許容範囲に入ったか確認する(ステップS8)。所定の許容範囲に入った場合は、見当合わせを終了する。所定の許容範囲に入らなかった場合は、ステップS4の前に戻り再度見当合わせを行うこととなるが、ここで、見当合わせに使った印刷用紙31の合計枚数が予め設定されている枚数に到達しているかを確認する(ステップS9)。そして、到達していない場合は、上述のとおり再度見当合わせを行う。一方、到達している場合は、見当合わせが正常に行われていない可能性があると考えられることから、エラー処理を行い(ステップS10)、見当合わせを終了する。エラー処理では、ブザーや警告灯によるオペレータへの報知、又は給紙停止、印刷機停止等が行われる
【0038】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0039】
前記実施形態では、8つの印刷ユニットを備える印刷機を示したが、1つ以上の任意の個数のユニットを備える印刷機であってもよい。また、両面印刷が行える印刷機を示したが、片面印刷しかできない印刷機であってもよい。片面印刷機の場合、印刷用紙の片面を印刷後に、印刷された面を下面にして再度片面印刷機で印刷されていない上面を印刷するようにしてもよい。
【0040】
また、前記実施形態では、基準色の見当マーク7以外の他の色の見当マーク8,9,10については、基準色の見当マーク7に対する相対距離をそれぞれ割り出すようにしたが、基準色の見当マーク7と同様に、所定エリア25の前辺25C(又は後辺25D)からの搬送方向の距離を割り出すと共に、印刷用紙31の左右端(左端31C又は右端31D)からの左右方向の距離を割り出してずれ計算に用いてもよい。
【0041】
また、前記実施形態では、K(ブラック、スミともいう)を基準色としていたが、K(ブラック、スミともいう)以外の色を基準色とすることもできる。
【0042】
また、前記実施形態では、4色で印刷が行われていたが、色数は4色に限定されない。例えば、色数は5色でもよい。あるいは色数は1色でもよい。尚、色数が1色の場合は、その色を基準色として割出手段28が基準色の見当マークの距離L1と距離W1を割り出し、制御部18は、割り出した両距離(距離L1、距離W1)が許容範囲内にあるか判断し、許容範囲から外れていると判断した場合は、許容範囲内になるべく、見当合わせ装置19を制御する。これにより、1色からなる印刷柄を印刷用紙の正規の位置に印刷することができる。
【0043】
また、前記実施形態では、印刷用紙の姿勢が設定された姿勢に対して許容範囲を超えていると判断手段30が判断した場合は、割出手段28による割り出しを行わないように構成したが、所定エリア取得手段27による所定エリアの取得をそもそも行わないようにしてもよい。
【0044】
また、前記実施形態では、圧胴が有する爪台の搬送方向の中心位置を搬送基準としたが、搬送基準はこの位置に限定されない。搬送胴の任意の位置を搬送基準として設定することができる。
【0045】
また、前記実施形態では、検出手段29は、給紙部3の前当て検出手段及び針検出手段としたが、これに限定されない。例えば、搬送胴上の印刷用紙の姿勢を撮像によって検出するように構成された検出手段でもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…紙積み台、2…フィーダ装置、3…給紙部、4…印刷部、以外の色(金色、銀色、蛍光色等を含む)である特色を印刷する4A,4B,4C,4D…印刷ユニット、5…反転装置、6…印刷部、6A,6B,6C,6D…印刷ユニット、7,8,9,10…見当マーク、7G,8G,9G,10G…重心、11…第1インラインカメラ(撮像手段)、16…第2インラインカメラ、17…排紙部、18…制御部、19…見当合わせ装置、20,21,22…マーク、25…所定エリア、25A…左辺、25B…右辺、25C…前辺、25D…後辺、27…所定エリア取得手段、28…割出手段、29…検出手段、30…判断手段、31…印刷用紙、31A…前端、31B…後端、32…撮像画像、32A,32B…辺、32C,32D…辺、33…富士山、34…雲、34…印刷柄、35…圧胴、H…搬送基準、L,L1…距離、W1…距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6