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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】雨水浸透促進施設
(51)【国際特許分類】
   E03F 1/00 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
E03F1/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021020245
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2022122776
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 紀子
(72)【発明者】
【氏名】北島 信行
(72)【発明者】
【氏名】菅原 玲子
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-094303(JP,A)
【文献】特開2015-008721(JP,A)
【文献】特開2001-173074(JP,A)
【文献】特開平10-317471(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0187031(US,A1)
【文献】特開2020-020213(JP,A)
【文献】特開2008-255664(JP,A)
【文献】特開2010-051175(JP,A)
【文献】特開2002-305959(JP,A)
【文献】特開昭48-013118(JP,A)
【文献】特開2003-102278(JP,A)
【文献】特開2005-076206(JP,A)
【文献】特開2013-034430(JP,A)
【文献】特開2006-204190(JP,A)
【文献】特開平08-322400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00-11/00
A01G 2/00-29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存の土の上方に配置された排水層と、
前記排水層の上に前記排水層に接して配置され、前記排水層を介して前記既存の土への排水を促進する促進層と、
前記促進層の上に前記促進層に接して配置された植栽土壌層と、
を含む多層構造部を備え、
前記促進層の透水性及び毛管圧は、前記植栽土壌層の透水性及び毛管圧よりも高く、
前記排水層の透水性は、前記促進層の透水性よりも高く、前記排水層の毛管圧は、前記促進層の毛管圧よりも低い、
雨水浸透促進施設。
【請求項2】
前記促進層は、前記植栽土壌層よりも粒径が均一である、
請求項に記載の雨水浸透促進施設。
【請求項3】
前記促進層の保水性は、前記植栽土壌層の保水性よりも低く、
前記排水層の保水性は、前記促進層の保水性よりも低い、
請求項または請求項に記載の雨水浸透促進施設。
【請求項4】
前記多層構造部を包囲する側壁としての浸透層をさらに備え、
前記浸透層の保水性は、前記既存の土および前記植栽土壌層の保水性よりも高く、
前記浸透層の毛管圧は、前記既存の土および前記植栽土壌層の毛管圧よりも高い、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の雨水浸透促進施設。
【請求項5】
前記浸透層は、透水性の部材に覆われている請求項に記載の雨水浸透促進施設。
【請求項6】
前記多層構造部は、複数の空隙を有し、前記排水を貯留しつつ時間経過に伴って前記既存の土に浸透させる貯留層を含む請求項1から請求項のいずれか一項に記載の雨水浸透促進施設。
【請求項7】
前記貯留層は、側面および底面が不透水性の部材に覆われている請求項に記載の雨水浸透促進施設。
【請求項8】
前記多層構造部のうち前記貯留層上に配置される層および外部配管に接続され、前記排水の一部を前記外部配管に送ると共に地中に浸透させる浸透排水管をさらに備える請求項または請求項に記載の雨水浸透促進施設。
【請求項9】
前記植栽土壌層の表面と周囲の既存の土の表面との境界近傍に設けられ、前記既存の土から前記植栽土壌層への混入物の流入を抑制する混入物流入抑制部をさらに備える請求項1から請求項のいずれか一項に記載の雨水浸透促進施設。
【請求項10】
前記植栽土壌層の粒径は、0.01mm以上50mm以下であり、
前記促進層の粒径は、0.01mm以上20mm以下であり、
前記排水層の粒径は、1mm以上100mm以下であり、
前記植栽土壌層において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、100L/m以上700L/m以下であり、
前記促進層において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、10L/m以上500L/m以下であり、
前記排水層において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、5L/m以上300L/m以下であり、
前記植栽土壌層の飽和透水係数は、1×10-4cm/s以上8×10-2cm/s以下であり、
前記促進層の飽和透水係数は、5×10-4cm/s以上9×10-1cm/s以下であり、
前記排水層の飽和透水係数は、1×10-3cm/s以上9×10-1cm/s以下であり
求項に記載の雨水浸透促進施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水浸透促進施設に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雨水が敷地外に流出することを抑制するための技術が知られている。例えば、特許文献1には、主としてクレイからなる表層と、表層の下に設けられた雨水貯留層とを有し、砕石を充填してなる透水部を介して雨水貯留層へと雨水を流入させる雨水貯留施設が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-70126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の都市では、コンクリート舗装化や多発する豪雨により、雨水が表面排水として敷地外へ流出して、河川又は下水道等の排水路の処理量を超過し、下水の河川流出による河川汚染や河川の氾濫や引き起こすことが懸念されている。そのため、雨水が表面排水として敷地外へと流出することをより効率的に抑制することが求められる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、雨水が表面排水として敷地外へと流出することをより効率的に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる雨水浸透促進施設は、既存の土の上側に配置された植栽土壌層と、前記植栽土壌層と前記既存の土との間に配置され、前記植栽土壌層から前記既存の土への排水を促進する促進層と、を含む多層構造部を備え、前記促進層の透水性は、前記植栽土壌層の透水性よりも高く、前記促進層の毛管圧は、前記植栽土壌層の毛管圧よりも高い。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる雨水浸透促進施設は、雨水が表面排水として敷地外へと流出することをより効率的に抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第一実施形態にかかる雨水浸透促進施設の一例を示す断面図である。
図2図2は、第二実施形態にかかる雨水浸透促進施設の一例を示す断面図である。
図3図3は、第二実施形態にかかる雨水浸透促進施設の配置構成の一例を示す断面図である。
図4図4は、第三実施形態にかかる雨水浸透促進施設の一例を示す断面図である。
図5図5は、第四実施形態にかかる雨水浸透促進施設の一例を示す断面図である。
図6図6は、第五実施形態にかかる雨水浸透促進施設の一例を示す断面図である。
図7図7は、第六実施形態にかかる雨水浸透促進施設の一例を示す断面図である。
図8図8は、雨水浸透促進施設の配置構成の他の例を示す断面図である。
図9図9は、雨水浸透促進施設の配置構成の他の例を示す断面図である。
図10図10は、雨水浸透促進施設の適用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0010】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態にかかる雨水浸透促進施設の一例を示す断面図である。雨水浸透促進施設1Aは、既存の土2に埋め込まれ、降雨により既存の土2の表面を流れる表面排水が敷地外へと流出することを抑制するために、雨水を地中へと浸透させる施設である。既存の土2は、雨水浸透促進施設1Aが設置される場所に、雨水浸透促進施設1Aが設置される前から存在する土である。既存の土2としては、例えば、マサ土、砂、鹿沼土、関東ローム等が挙げられる。
【0011】
マサ土のpFが1.8以上3.8以下の範囲における有効水分量は、50L/m程度である。マサ土の飽和透水係数は、1×10-5cm/s程度である。砂のpFが1.8以上3.8以下の範囲における有効水分量は、10L/m程度である。砂の飽和透水係数は、1×10-3cm/s以上1×10-2cm/s以下程度である。鹿沼土のpFが1.8以上3.8以下の範囲における有効水分量は、100L/m程度である。鹿沼土の飽和透水係数は、1×10-4cm/s程度である。関東ローム(赤土)のpFが1.8以上3.8以下の範囲における有効水分量は、200L/m程度である。関東ローム(赤土)の飽和透水係数は、1×10-4cm/s程度である。
【0012】
雨水浸透促進施設1Aは、図1に示すように、植栽土壌層10と、促進層20と、排水層30と、浸透層40とを備える。植栽土壌層10、促進層20および排水層30は、上下に積層して配置されることで多層構造部60を形成する。多層構造部60の各層が通路状に配置されている(図3参照)。
【0013】
植栽土壌層10は、多層構造部60の最上層であり、その表面が既存の土2の表面と連続している。植栽土壌層10は、その表面が大気に面する。植栽土壌層10には、植物3が植えられる。植栽土壌層10に植えられる植物3は、多様な生育環境下(湿地~乾燥地)で生息する植物種であれば特に限定されない。植物3は、根の量、形状、根の到達深度等を考慮し、例えば、地被植物、低木、中木、高木等を合わせて用いてもよい。植栽土壌層10の深さは、植えられる植物3によって調節される。植栽土壌層10は、植物3を生育する土壌環境を提供できるように、肥料成分を含んでもよい。
【0014】
植栽土壌層10は、既存の土2とは異なる材料で形成される。植栽土壌層10は、例えば黒土及びシルトを含む。植栽土壌層10は、例えば、主として黒土、赤玉土、鹿沼土、マサ土、腐葉土、堆肥、ピートモス、バーミキュライト、くん炭、パーライト、ココピート、ゼオライト、バーク、人工培養土、副産物資材、リサイクル資材等で形成されてもよい。本実施形態において、植栽土壌層10は、主たる土壌粒子の粒径が不均一な、いわゆる団粒構造となるように形成される。それにより、粒径が不均一な土壌粒子の塊が混ざり合うため、塊の間に複数の隙間が生じることになる。その結果、植栽土壌層10は、通気性、排水性が向上すると共に、微生物が繁殖しやすく、植物3を適切に生育することができる。植栽土壌層10は、20g/kg以上の腐植を含んでもよい。
【0015】
植栽土壌層10において、主たる土壌粒子の粒径は、(a)0.01mm以上50mm以下である。植栽土壌層10において、主たる土壌粒子の粒径は、(b)0.1mm以上30mm以下であることが、より好ましい。植栽土壌層10において、主たる土壌粒子の粒径は、(c)0.2mm以上20mm以下であることが、さらに好ましい。
【0016】
植栽土壌層10において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、100L/m以上700L/m以下である。植栽土壌層10において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、200L/m以上600L/m以下であることが、より好ましい。植栽土壌層10において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、300L/m以上600L/m以下であることが、さらに好ましい。pFは、土壌の水分が毛管力によって引き付けられている強さの程度を表す数値である。有効水分量は、土の保水性を示す指標である。また、有効水分量は、植物3によって利用できる水分量である。
【0017】
植栽土壌層10の飽和透水係数は、1×10-4cm/s以上8×10-2cm/s以下である。植栽土壌層10の飽和透水係数は、1×10-3cm/s以上4×10-2cm/s以下であることが、より好ましい。植栽土壌層10の飽和透水係数は、1×10-3cm/s以上1×10-2cm/s以下であることが、さらに好ましい。飽和透水係数は、飽和時における土の中の水の流速である。飽和透水係数は、土の透水性を示す指標である。
【0018】
促進層20は、植栽土壌層10と既存の土2との間に配置される。つまり、促進層20は、植栽土壌層10の下側、かつ、既存の土2の上側に配置される。促進層20は、植栽土壌層10から既存の土2への排水を促進するための層である。促進層20は、既存の土2および植栽土壌層10とは異なる材料で形成される。促進層20は、例えば、主として細砂で形成される。促進層20は、例えば、主として黒土、赤玉土、鹿沼土、マサ土、腐葉土、堆肥、ピートモス、バーミキュライト、くん炭、パーライト、ココピート、ゼオライト、バーク、人工培養土、副産物資材、リサイクル資材等で形成されてもよい。
【0019】
本実施形態において、促進層20は、少なくとも植栽土壌層10に比べて、主たる土壌粒子の粒径が均一に形成される。促進層20において、約90%(例えば、85%以上100%以下)の土壌粒子の粒径は、(d)0.01mm以上20mm以下である。促進層20において、約90%(例えば、85%以上100%以下)の土壌粒子の粒径は、(e)0.02mm以上10mm以下であることが、より好ましい。促進層20において、約90%(例えば、85%以上100%以下)の土壌粒子の粒径は、(f)0.05mm以上8mm以下であることが、さらに好ましい。
【0020】
促進層20において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、10L/m以上500L/m以下である。促進層20において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、50L/m以上400L/m以下であることが、より好ましい。促進層20において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、100L/m以上300L/m以下であることが、さらに好ましい。したがって、促進層20の保水性は、植栽土壌層10の保水性よりも低い。
【0021】
促進層20の飽和透水係数は、5×10-4cm/s以上9×10-1cm/s以下である。促進層20の飽和透水係数は、5×10-3cm/s以上8×10-2cm/s以下であることが、より好ましい。促進層20の飽和透水係数は、5×10-3cm/s以上5×10-2cm/s以下であることが、さらに好ましい。したがって、促進層20の透水性は、植栽土壌層10の透水性よりも高い。
【0022】
排水層30は、促進層20と既存の土2との間に配置される。つまり、排水層30は、促進層20の下側、かつ、既存の土2の上側に配置される。したがって、多層構造部60は、既存の土2の上に排水層30が積層され、排水層30の上に促進層20が積層され、促進層20の上に植栽土壌層10が積層される。排水層30は、植栽土壌層10および促進層20から既存の土2へと排水をさらに促進するための層である。排水層30は、既存の土2、植栽土壌層10および促進層20とは異なる材料で形成される。排水層30は、例えば、主として礫で形成される。排水層30は、例えば、主として砂、砂利、砕石、クリンカ、軽量気泡コンクリート、安定処理路盤材料、成型物、焼成物等で形成されてもよい。
【0023】
排水層30において、主たる土壌粒子の粒径は、1mm以上100mm以下である。排水層30において、主たる土壌粒子の粒径は、2mm以上50mm以下であることが、より好ましい。排水層30において、主たる土壌粒子の粒径は、2mm以上20mm以下であることが、さらに好ましい。したがって、排水層30は、植栽土壌層10および促進層20よりも粒径が大きい。
【0024】
排水層30において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、5L/m以上300L/m以下である。排水層30において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、10L/m以上200L/m以下であることが、より好ましい。排水層30において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、50L/m以上100L/m以下であることが、さらに好ましい。したがって、排水層30の保水性は、促進層20の保水性よりも低い。
【0025】
排水層30の飽和透水係数は、1×10-3cm/s以上9×10-1cm/s以下である。排水層30の飽和透水係数は、5×10-2cm/s以上6×10-1cm/s以下であることが、より好ましい。排水層30の飽和透水係数は、3×10-2cm/s以上3×10-1cm/s以下であることが、さらに好ましい。したがって、排水層30の透水性は、促進層20の透水性よりも高い。
【0026】
浸透層40は、多層構造部60を包囲する側壁を形成する。浸透層40は、図1に示すように、植栽土壌層10、促進層20および排水層30の側面を覆い、植栽土壌層10、促進層20および排水層30を側方から支持する。なお、浸透層40は、排水層30の底面を覆うものであってもよい。浸透層40は、例えば、主として細砂で形成される。浸透層40は、例えば、主として黒土、赤玉土、鹿沼土、マサ土、腐葉土、堆肥、ピートモス、バーミキュライト、くん炭、パーライト、ココピート、ゼオライト、バーク、高吸水性樹脂、人工培養土、副産物資材、リサイクル資材等で形成されてもよい。本実施形態において、浸透層40は、促進層20と同様に、少なくとも植栽土壌層10に比べて、主たる土壌粒子の粒径が均一に形成される。
【0027】
本実施形態において、浸透層40は、透水性の部材に覆われている。透水性の部材は、例えば、不織布といった透水シートである。浸透層40は、透水性の部材の内部に細砂といった土壌粒子を詰め込んだ土嚢を複数積層することにより形成されてもよい。それにより、浸透層40を容易に形成することができる。また、浸透層40の形状を安定的に維持し、ひいては、植栽土壌層10、促進層20および排水層30を安定的に支持することができる。
【0028】
浸透層40において、主たる土壌粒子の粒径は、0.01mm以上20mm以下である。浸透層40において、主たる土壌粒子の粒径は、0.02mm以上10mm以下であることが、より好ましい。浸透層40において、主たる土壌粒子の粒径は、0.05mm以上8mm以下であることが、さらに好ましい。
【0029】
浸透層40において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、300L/m以上2000L/m以下である。浸透層40において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、350L/m以上1000L/m以下であることが、より好ましい。浸透層40において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、400L/m以上700L/m以下であることが、さらに好ましい。したがって、浸透層40の保水性は、既存の土2および植栽土壌層10の保水性よりも高い。
【0030】
浸透層40の飽和透水係数は、5×10-4cm/s以上9×10-1cm/s以下である。浸透層40の飽和透水係数は、5×10-3cm/s以上8×10-2cm/s以下であることが、より好ましい。浸透層40の飽和透水係数は、5×10-3cm/s以上5×10-2cm/s以下であることが、さらに好ましい。
【0031】
以上の構成により、多層構造部60および浸透層40は、各層の毛管圧に関して、以下の関係を有している。(1)植栽土壌層10の毛管圧は、促進層20の毛管圧より低く、排水層30の毛管圧よりも高い。(2)促進層20の毛管圧は、植栽土壌層10および排水層30の毛管圧より高い。(3)排水層30の毛管圧は、植栽土壌層10および促進層20の毛管圧より低い。(4)浸透層40の毛管圧は、既存の土2および植栽土壌層10の毛管圧よりも高い。
【0032】
図1の白抜き矢印に示すように、降雨時において、植栽土壌層10には、大気中からの雨水が落下すると共に、周囲の既存の土2の表面を伝って雨水の表面排水が流入する。植栽土壌層10へ流入した雨水は、促進層20および排水層30を介して、地中、すなわち雨水浸透促進施設1Aの下方に位置する既存の土2へと浸透する。
【0033】
以上説明したように、第一実施形態にかかる雨水浸透促進施設1Aは、既存の土2の上側に配置された植栽土壌層10と、植栽土壌層10と既存の土2との間に配置され、植栽土壌層10から既存の土2への排水を促進する促進層20と、を含む多層構造部60を備え、促進層20の透水性は、植栽土壌層10の透水性よりも高く、促進層20の毛管圧は、植栽土壌層10の毛管圧よりも高い。
【0034】
この構成により、植栽土壌層10に比べて透水性および毛管圧が高い促進層20により、植栽土壌層10に流入した雨水を速やかに促進層20へと浸透させ、促進層20を介して既存の土2へと速やかに排水を行うことができる。したがって、第一実施形態にかかる雨水浸透促進施設1Aによれば、雨水が表面排水として敷地外へと流出することをより効率的に抑制することが可能となる。それにより、ひいては、周囲の河川、下水道管への雨水の排出量のピークを適切に調整することができる。
【0035】
また、植栽土壌層10は、保水性が比較的に高く、乾燥しづらいため、雨水が表面に落下する際の衝撃を緩和し、衝撃による表面の土壌粒子と水との混和および拡散を緩和することができる。さらに、植栽土壌層10は、透水性が比較的に高いため、流入する雨水を速やかに吸収し、浸透させる。その結果、植栽土壌層10のスレーキングが抑制されると共に、表面に水溜まりが発生することが抑制されるため、既存の土2から流れこむ表面排水に含まれる微細粒子の植栽土壌層10への流入および拡散が抑制される。したがって、植栽土壌層10の土壌粒子の隙間が閉塞されることを抑制することができる。その結果、植栽土壌層10の排水性が低下することを抑制することが可能となる。
【0036】
また、植栽土壌層10は、多様な生育環境下(湿地~乾燥地)で生育する植物種を同一の植栽基盤材にて栽培可能とされている。また、植栽土壌層10は、透水性および保水性が比較的に高いため、雨水を速やかに下層に浸透させることができる。さらに、降雨後には、植物3の健全な生育に必要な適度な水分を保持し、適切な土壌三相分布の割合を維持することができる。また、促進層20および排水層30は、比較的に気層率が高く、促進層20および排水層30に含まれる隙間から、植栽土壌層10の植物3の根へと適度に空気を供給して、根腐れ等を抑制することができる。その結果、植栽土壌層10に含まれる植物3の湿害の発生を抑制し、植物3の良好な生育を行うことができる。
【0037】
また、植栽土壌層10は、20g/kg以上の腐植を含んでもよい。それにより、植栽土壌層10において土壌動物や微生物が生息しやすくなるため、これらの生物の働きにより、植栽土壌層10の団粒構造の形成および保持がなされる。その結果、植栽土壌層10の透水性を良好に維持することができる。さらに、植物3の根により、土壌と根の境界線に空間ができることで、植栽土壌層10の透水性の向上を図ることができる。
【0038】
また、多層構造部60は、促進層20と既存の土2との間に配置された排水層30を含み、排水層30の透水性は、促進層20の透水性よりも高く、排水層30の毛管圧は、促進層20の毛管圧よりも低い。この構成により、促進層20よりも透水性が高い排水層30を介して、植栽土壌層10に流入した雨水を既存の土2へと速やかに排出することができる。
【0039】
また、促進層20は、植栽土壌層10よりも粒径が均一であり、排水層30は、植栽土壌層10および促進層20よりも粒径が大きい。この構成により、促進層20の粒径が比較的に均一であることから、土壌粒子の隙間に混入物が入り込むことが抑制され、混入物に起因した促進層20の浸透性の低下を抑制することができる。また、植栽土壌層10および促進層20よりも粒径が大きい排水層30を介して、雨水を速やかに既存の土2へと排水することができる。
【0040】
また、促進層20の保水性は、植栽土壌層10の保水性よりも低く、排水層30の保水性は、促進層20の保水性よりも低い。この構成により、植栽土壌層10よりも保水性が低い促進層20、促進層20よりもさらに保水性が低い排水層30により、雨水を速やかに既存の土2へと排水することができる。
【0041】
また、雨水浸透促進施設1Aは、多層構造部60を包囲する側壁としての浸透層40をさらに備え、浸透層40の保水性は、既存の土2および植栽土壌層10の保水性よりも高く、浸透層40の毛管圧は、既存の土2および植栽土壌層10の毛管圧よりも高い。この構成により、多層構造部60を浸透層40によって適切に形状維持することができる。また、浸透層40が植栽土壌層10に比べて保水性、毛管圧が高いため、図1の白抜き矢印に示すように、周囲の既存の土2に滞留している雨水を浸透層40で吸収し、浸透層40の水分が飽和すると、植栽土壌層10へと送ることが可能となる。その結果、降雨時に周囲の既存の土2に滞留している雨水を、雨水浸透促進施設1Aを介して地中深部へと浸透させることができる。さらに、植栽土壌層10が乾燥しているときには、周囲の既存の土2に滞留している雨水を、浸透層40を介して植栽土壌層10へと送り、植栽土壌層10に含まれる植物3に適切に水分を供給することができる。
【0042】
また、浸透層40は、透水性の部材に覆われている。この構成により、浸透層40を容易に形成することができ、また、浸透層40の形状を良好に維持することができる。
【0043】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態にかかる雨水浸透促進施設1Bについて説明する。図2は、第二実施形態にかかる雨水浸透促進施設の一例を示す断面図である。また、図3は、雨水浸透促進施設の配置構成の一例を示す断面図である。図3は、図2の側方から雨水浸透促進施設を見た断面図である。なお、図3では、浸透層40の記載を省略している。雨水浸透促進施設1Bは、第一実施形態にかかる雨水浸透促進施設1Aの構成に加えて、多層構造部60が貯留層50を含む。図3に示すように、雨水浸透促進施設1Bは、貯留層50が、一例として、多層構造部60の全長にわたって形成される。
【0044】
貯留層50は、多層構造部60の最下層として、排水層30と既存の土2との間に配置される。つまり、貯留層50は、排水層30の下側、かつ、既存の土2の上側に配置される。また、貯留層50は、少なくとも既存の土2の内部に存在する地下水の水位よりも上部に配置される。本実施形態において、貯留層50の側面および底面は、浸透層40により覆われている。なお、貯留層50の底面は、浸透層40に覆われることなく、既存の土2と接するものであってもよい。後述する第三実施形態から第六実施形態においても、同様である。
【0045】
貯留層50は、上部に設置される植栽土壌層10、促進層20および排水層30の重さによる荷重に耐えうるように素材が充填される。貯留層50に充填される素材は、例えば、多孔質素材、砕石、プラスティック架台等である。すなわち、貯留層50は、雨水を一時的に貯留できるように、複数の空隙を含む素材が充填されて形成される。貯留層50は、例えば、容量の40%以上の雨水を貯留可能に形成される。また、貯留層50に一時的に貯留された雨水は、貯留層50の下部から浸透層40を介して、既存の土2へと浸透される。
【0046】
雨水浸透促進施設1Bでは、植栽土壌層10に流入した雨水が促進層20および排水層30を介して貯留層50に流れ込み、既存の土2の透水係数に応じて地中浸透される。雨水の貯留層50への流入速度が地中浸透の透水係数を上回る場合、余剰な雨水は貯留層50にて一時的に貯留される。一方、貯留層50の容量以上の雨水の流入がある場合は、排水層30および浸透層40を介して周囲の既存の土2へと雨水が浸透により排水される。このとき、排水層30の毛管圧が促進層20の毛管圧よりも低く設定されていることから、貯留層50の容量以上の雨水が貯留されたとしても、排水層30から上層側、すなわち促進層20を介して植栽土壌層10へと上昇することを抑制することができる。
【0047】
以上説明したように、第二実施形態にかかる雨水浸透促進施設1Bにおいて、多層構造部60は、複数の空隙を有し、排水を貯留しつつ時間経過に伴って既存の土2に浸透させる貯留層50を含む。この構成により、雨水を貯留層50に一時的に貯留し、雨水が表面排水として敷地外へと流出することをより効率的に抑制することが可能となる。それにより、ひいては、周囲の河川、下水道管への雨水の排出量のピークを適切に調整することができる。
【0048】
また、図2に示すように、貯留層50は、浸透層40により包囲されている。それにより、降雨時、かつ、貯留層50が満水でない場合には、既存の土2に滞留している雨水を、浸透層40を介して貯留層50へと送りこみ、既存の土2に滞留している雨水を良好に排水することができる。貯留層50が満水である場合には、上述したように、排水層30および浸透層40を介して周囲の既存の土2へと雨水が均一に排水される。
【0049】
一方、土壌の乾燥時には、貯留層50に一時的に貯留された雨水が、図2に破線矢印で示すように、浸透層40を介して植栽土壌層10へと毛管現象により供給される。その結果、植栽土壌層10へと水分を供給することができるため、植栽土壌層10の植物3へと別に水分を供給する量を低減させることが可能となる。すなわち、植栽土壌層10への水道水等の散水頻度を削減することができる。
【0050】
また、貯留層50は、図2に破線で示すように、側面および底面が不透水性の部材に覆われていてもよい。不透水性の部材は、例えば、不透水性シートである。これにより、貯留層50に雨水をより確実に貯留することができる。その結果、土壌の乾燥時において、貯留層50に貯留された雨水を、排水層30および浸透層40を介して植栽土壌層10により適切に供給することが可能となる。なお、この場合において、降雨時に貯留層50が満水となったとしても、排水層30および浸透層40を介して周囲の既存の土2へと雨水を浸透させて排水することができる。
【0051】
[第三実施形態]
次に、第三実施形態にかかる雨水浸透促進施設1Cについて説明する。図4は、第三実施形態にかかる雨水浸透促進施設の一例を示す断面図である。雨水浸透促進施設1Cは、第二実施形態にかかる雨水浸透促進施設1Bの構成に加えて、混入物流入抑制部70を備えている。
【0052】
混入物流入抑制部70は、植栽土壌層10の表面と周囲の既存の土2の表面との境界近傍に設けられ、周囲の既存の土2から植栽土壌層10への混入物の流入を抑制する。本実施形態では、混入物流入抑制部70は、図4に示すように、既存の土2の表面に設けられた波形状部である。波形状部は、降雨時において、既存の土2に含まれる土壌粒子等の混入物が、表面排水によって既存の土2の表面を伝う際に、混入物を適切に捕捉できる程度の凹凸形状に形成される。混入物は、例えば、礫、粗砂、細砂、シルト、粘土等である。
【0053】
この構成により、降雨時に、表面排水に含まれる混入物が植栽土壌層10に流入し、植栽土壌層10や下層の促進層20、排水層30の隙間を閉塞してしまうことを抑制することができる。したがって、植栽土壌層10、促進層20および排水層30の浸透性の低下を抑制し、雨水浸透促進施設1Cによる排水性を良好に維持することが可能となる。
【0054】
なお、混入物流入抑制部70は、表面排水に含まれた混入物をせき止められるものであれば、図4に示すような波形状部に限らない。混入物流入抑制部70は、例えば、既存の土2に植え込まれた地被植物といった植物であってもよい。
【0055】
[第四実施形態]
次に、第四実施形態にかかる雨水浸透促進施設1Dについて説明する。図5は、第四実施形態にかかる雨水浸透促進施設の一例を示す断面図である。雨水浸透促進施設1Dは、第三実施形態にかかる雨水浸透促進施設1Cの構成に加えて、浸透層40が水分調整部45を備えている。
【0056】
水分調整部45は、図5に示すように、浸透層40の中途から、植栽土壌層10とは反対側に向けて水平方向に延出された二つの延出部を含む。なお、水分調整部45は、水平方向に限らず、斜めに延出されてもよい。また、水分調整部45は、二つの延出部に限らず、三つ以上の延出部を含んでもよい。水分調整部45は、浸透層40の他の部分と同様の材料で形成されている。水分調整部45は、透水性の部材に覆われていてもよい。
【0057】
この構成により、降雨時において、既存の土2に滞留している雨水を水分調整部45によって良好に捕捉することができる。水分調整部45により補足された雨水は、植栽土壌層10に送られるか、または、水分調整部45の下部から地中深部に向けて浸透される。その結果、周囲の既存の土2に滞留している雨水を良好に排水することが可能となる。
【0058】
[第五実施形態]
次に、第五実施形態にかかる雨水浸透促進施設1Eについて説明する。図6は、第五実施形態にかかる雨水浸透促進施設の一例を示す断面図である。雨水浸透促進施設1Eは、第四実施形態にかかる雨水浸透促進施設1Dの構成に加えて、浸透排水管80をさらに備えている。
【0059】
浸透排水管80は、図6に示すように、浸透層40を貫通し、排水層30の内部で開口する。すなわち、浸透排水管80は、排水層30に接続され、排水層30の内部を流れる水の一部を流入させるように開口する流入管81を有している。なお、流入管81は、排水層30からの水の流入を調整する制御弁としての機能を有するものであってもよい。または、流入管81は、外部配管90からの逆流を防ぐ逆流防止弁としての機能を有するものであってもよい。また、浸透排水管80は、排水層30での開口部とは反対側の端部が、例えば下水道や河川等に接続される外部配管90に接続されている。それにより、浸透排水管80は、雨水浸透促進施設1Eによる排水の一部を外部配管90へと送出する。さらに、浸透排水管80は、図6の白抜き矢印に示すように、少なくとも下部の一部から、内部を流れる排水の一部を地中浸透させることができるように形成されている。例えば、浸透排水管80の下部に複数の孔部を形成しておくことで、内部を流れる排水の一部を地中浸透させることができる。
【0060】
この構成により、降雨時において、貯留層50が満水となった場合に、貯留層50から排水層30に流入した雨水を浸透排水管80によって外部配管90および地中に供給することができる。その結果、降雨時に貯留層50が飽和したとしても、浸透排水管80を介して排水量を適切に調整することが可能となる。
【0061】
[第六実施形態]
次に、第六実施形態にかかる雨水浸透促進施設1Fについて説明する。図7は、第六実施形態にかかる雨水浸透促進施設の一例を示す断面図である。雨水浸透促進施設1Fは、第五実施形態にかかる雨水浸透促進施設1Eの促進層20および排水層30の構成に代えて、多層構造部60が排水促進層25を備えている。
【0062】
排水促進層25は、植栽土壌層10と貯留層50との間(植栽土壌層10と既存の土2との間)に配置される。つまり、排水促進層25は、植栽土壌層10の下側、かつ、貯留層50の上側(既存の土2の上側)に配置される。排水促進層25は、植栽土壌層10から貯留層50(既存の土2)への排水を促進するための層である。排水促進層25は、既存の土2および植栽土壌層10とは異なる材料で形成される。排水促進層25は、例えば、主として細砂で形成される。排水促進層25は、例えば、主として砂、砂利、砕石、クリンカ、軽量気泡コンクリート、安定処理路盤材料、成型物、焼成物、黒土、赤玉土、鹿沼土、マサ土、人工培養土、腐葉土、堆肥、ピートモス、バーミキュライト、くん炭、パーライト、ココピート、ゼオライト、バーク、副産物資材、リサイクル資材等で形成されてもよい。本実施形態において、排水促進層25は、少なくとも植栽土壌層10に比べて、主たる土壌粒子の粒径が均一に形成される。排水促進層25は、上記促進層20と同様の構成および機能を有する。すなわち、排水促進層25は、主たる土壌粒子の粒径、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量および飽和透水係数が、促進層20と同様の数値範囲内とされる。また、排水促進層25の毛管圧は、促進層20と同様である。言い換えると、雨水浸透促進施設1Fは、第五実施形態にかかる雨水浸透促進施設1Eから排水層30を省略したものであってもよい。なお、第六実施形態において、浸透排水管80は、排水促進層25に接続されている。
【0063】
以上説明したように、第六実施形態にかかる雨水浸透促進施設1Fは、植栽土壌層10と既存の土2との間に配置され、植栽土壌層10から既存の土2への排水を促進する排水促進層25を備える。排水促進層25は、植栽土壌層10よりも粒径が均一であり、排水促進層25の保水性は、植栽土壌層10の保水性よりも低く、排水促進層25の透水性は、植栽土壌層10の透水性よりも高く、排水促進層25の毛管圧は、植栽土壌層10の毛管圧よりも高い。
【0064】
この構成により、第六実施形態にかかる雨水浸透促進施設1Fは、第一実施形態と同様に、植栽土壌層10に比べて保水性が低く、透水性および毛管圧が高い排水促進層25により、植栽土壌層10に流入した雨水を速やかに既存の土2へ浸透させることができる。また、排水促進層25の粒径が比較的に均一であることから、土壌粒子の隙間に混入物が入り込むことが抑制され、混入物に起因した排水促進層25の浸透性の低下を抑制することができる。したがって、第六実施形態にかかる雨水浸透促進施設1Fによれば、雨水が表面排水として敷地外へと流出することをより効率的に抑制することが可能となる。それにより、ひいては、周囲の河川、下水道管への雨水の排出量のピークを適切に調整することができる。
【0065】
なお、上述したように、第六実施形態において、浸透排水管80は、排水促進層25に接続されている。それにより、降雨時に貯留層50が満水となった場合には、貯留層50から排水促進層25へと流入した雨水を浸透排水管80によって外部配管90または地中へと送ることができる。
【0066】
なお、雨水浸透促進施設1A、1B、1C、1Dの構成においても、促進層20と排水層30に代えて、排水促進層25を適用してもよい。
【0067】
また、第一実施形態から第六実施形態において、多層構造部60の各層間に、透水性の部材を配置してもよい。透水性の部材は、例えば透水シート、不織布等である。それにより、植栽土壌層10、促進層20、排水層30および貯留層50の各層を容易に形成することができると共に、形状を良好に維持することができる。
【0068】
図8および図9は、雨水浸透促進施設の配置構成の他の例を示す断面図である。図8および図9は、図2の雨水浸透促進施設1Bを側方からみた断面図である。なお、図8および図9では、浸透層40の記載を省略している。図8に示すように、貯留層50は、多層構造部60の全長にわたって形成されるものでなくてもよい。すなわち、貯留層50は、排水層30の下方において、排水層30の一部にのみ接続されるように、複数設けられても良い。第三実施形態から第六実施形態についても同様である。また、図9に示すように、多層構造部60は、通路状ではなく、複数並べて配置されてもよい。第一実施形態、第三実施形態から第六実施形態についても同様である。
【0069】
図10は、雨水浸透促進施設の適用例を示す説明図である。図10は、雨水浸透促進施設が適用される敷地を俯瞰的に上方から見た図である。なお、ここでは、第一実施形態にかかる雨水浸透促進施設1Aの適用例を説明するが、第二実施形態から第六実施形態の構成においても、同様に適用することができる。図10に示すように、雨水浸透促進施設1Aは、例えば、建物102に隣接した土壌における敷地100内に配置される。敷地100は、例えば側壁104により囲まれている。図10に示すように、敷地100内の一部が雨水浸透促進施設1Aとなる。言い換えると、敷地100内における既存の土2の一部が雨水浸透促進施設1Aに置き換えられる。これにより、図中に白抜き矢印で示すように、降雨時に、既存の土2からの表面排水を、雨水浸透促進施設1Aを介して排水することができる。したがって、例えば表面排水用の配管等を用いることなく、既存の土2からの表面排水を処理することが可能となる。なお、図10では、雨水浸透促進施設1Aを図中左右方向に延びるように配置したが、雨水浸透促進施設1Aの配置構成は、これに限られない。雨水浸透促進施設1Aは、敷地100内において、既存の土2からの表面排水が流れ込むように配置されるものであれば、いかなる方向に配置されてもよい。また、雨水浸透促進施設1Aは、敷地100内において、複数配置されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1A,1B,1C,1D,1E,1F 雨水浸透促進施設
2 既存の土
3 植物
10 植栽土壌層
20 促進層
25 排水促進層
30 排水層
40 浸透層
45 水分調整部
50 貯留層
60 多層構造部
70 混入物流入抑制部
80 浸透排水管
81 流入管
90 外部配管
100 敷地
102 建物
104 側壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10