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特許7551530自動取引装置、自動取引装置のリカバリ方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】自動取引装置、自動取引装置のリカバリ方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/26 20190101AFI20240909BHJP
   G07D 11/28 20190101ALI20240909BHJP
【FI】
G07D11/26
G07D11/28
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021024587
(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公開番号】P2022126483
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000237639
【氏名又は名称】富士通フロンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】埜本 彰弘
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-174962(JP,A)
【文献】特開2006-260157(JP,A)
【文献】特開2014-160375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00-13/00
G07D 1/00- 3/16
G07F 19/00
G06Q 20/18
G06Q 40/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引に関する情報を含むジャーナルデータを記憶する記憶部を備えた自動取引装置であって、
前記記憶部は、
前記ジャーナルデータと、システム情報と、店舗毎に設定される設定情報を記憶するメインディスクと、
少なくとも前記ジャーナルデータに同期する同期データと、前記システム情報と、前記設定情報を復旧するためのリカバリデータと、を記憶するバックアップディスクと、
前記バックアップディスクに接続可能な通信インターフェースと、を有し、
前記通信インターフェースを介して前記リカバリデータを更新し、
前記記憶部の読み込み、または、書き込みに異常が発生している場合、前記同期データ及び前記リカバリデータに基づいて前記メインディスクのリカバリを実施する、自動取引装置。
【請求項2】
前記バックアップディスクは、前記リカバリデータとして、コピー用のクローンツール、前記システム情報のシステムイメージ、及びPTF(Program Temporary Fix)の少なくともいずれかを記憶している、請求項に記載の自動取引装置。
【請求項3】
取引に関する情報を含むジャーナルデータを記憶する記憶部を備えた自動取引装置のリカバリ方法であって、
前記記憶部は、
前記ジャーナルデータと、システム情報と、店舗毎に設定される設定情報を記憶するメインディスクと、
少なくとも前記ジャーナルデータに同期する同期データと、前記システム情報と、前記設定情報を復旧するためのリカバリデータと、を記憶するバックアップディスクと、
前記バックアップディスクに接続可能な通信インターフェースと、を有し、
前記通信インターフェースを介して前記リカバリデータを更新するステップと、
前記記憶部の状態を監視するステップと、
前記記憶部の読み込み、または、書き込みに異常が発生している場合、前記同期データ及び前記リカバリデータに基づいて前記メインディスクのリカバリを実施するステップと、
を備える、自動取引装置のリカバリ方法。
【請求項4】
取引に関する情報を含むジャーナルデータを記憶する記憶部を備えた自動取引装置のプロセッサに実行させるためのプログラムであって、
前記記憶部は、
前記ジャーナルデータと、システム情報と、店舗毎に設定される設定情報を記憶するメインディスクと、
少なくとも前記ジャーナルデータに同期する同期データと、前記システム情報と、前記設定情報を復旧するためのリカバリデータと、を記憶するバックアップディスクと、
前記バックアップディスクに接続可能な通信インターフェースと、を有し、
前記通信インターフェースを介して前記リカバリデータを更新する処理と、
前記記憶部の状態を監視し、前記記憶部の読み込み、または、書き込みに異常が発生している場合、前記同期データ及び前記リカバリデータに基づいて前記メインディスクのリカバリを実施する処理と、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動取引装置、自動取引装置のリカバリ方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行等に広く普及して用いられているATM(Automatic Teller Machine)等の自動取引装置が知られている。自動取引装置では、各種取引の内容を含むジャーナルデータを所定の記憶装置に記憶するように構成されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、自動取引装置とジャーナル管理サーバが通信回線を介して接続されている。また、ジャーナル管理サーバには、所定の記憶装置(例えばMOやHD等)が接続されている。
【0004】
自動取引装置でジャーナルデータが発生すると、ジャーナルデータは、通信回線を介してジャーナル管理サーバに送信される。ジャーナル管理サーバは、受信したジャーナルデータを記憶装置に格納して一括管理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-36463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような自動取引装置では、アプリケーションやジャーナルデータ等の大切な情報を失わないため、冗長性のあるRAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)方式を使用していることが知られている。RAIDは、複数台の記憶媒体(例えばハードディスク)を組み合わせることで仮想的な1台の記憶媒体として運用し冗長性を向上させる技術である。
【0007】
RAIDでは、例えば、SSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)等の記憶媒体を2台以上使用し、一方の記憶媒体が故障しても、他方の記憶媒体で継続的な運用が可能である。
【0008】
自動取引装置で記憶装置をRAID運用する場合、例えばメインディスクを2台と、更にバックアップディスクを1台追加した合計3台の記憶媒体を必要とする。
【0009】
しかしながら、このようなRAID運用の場合、記憶媒体の数が増えることで部材費やメンテナンス費等に莫大なコストがかかるだけでなく、品質確保が難しいことが想定される。
【0010】
本発明は、上述課題に鑑み、安価な構成で冗長性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述目的を達成するために、本発明は、取引に関する情報を含むジャーナルデータを記憶する記憶部を備えた自動取引装置であって、前記記憶部は、前記ジャーナルデータと、システム情報と、店舗毎に設定される設定情報を記憶するメインディスクと、少なくとも前記ジャーナルデータに同期する同期データと、前記システム情報と、前記設定情報を復旧するためのリカバリデータと、を記憶するバックアップディスクと、前記バックアップディスクに接続可能な通信インターフェースと、を有し、前記通信インターフェースを介して前記リカバリデータを更新し、前記記憶部の読み込み、または、書き込みに異常が発生している場合、前記同期データ及び前記リカバリデータに基づいて前記メインディスクのリカバリを実施する。
【0012】
また、本発明は、取引に関する情報を含むジャーナルデータを記憶する記憶部を備えた自動取引装置のリカバリ方法であって、前記記憶部は、前記ジャーナルデータと、システム情報と、店舗毎に設定される設定情報を記憶するメインディスクと、少なくとも前記ジャーナルデータに同期する同期データと、前記システム情報と、前記設定情報を復旧するためのリカバリデータと、を記憶するバックアップディスクと、前記バックアップディスクに接続可能な通信インターフェースと、を有し、前記通信インターフェースを介して前記リカバリデータを更新するステップと、前記記憶部の状態を監視するステップと、前記記憶部の読み込み、または、書き込みに異常が発生している場合、前記同期データ及び前記リカバリデータに基づいて前記メインディスクのリカバリを実施するステップと、を備える。
【0013】
更に、本発明は、取引に関する情報を含むジャーナルデータを記憶する記憶部を備えた自動取引装置のプロセッサに実行させるためのプログラムであって、前記記憶部は、前記ジャーナルデータと、システム情報と、店舗毎に設定される設定情報を記憶するメインディスクと、少なくとも前記ジャーナルデータに同期する同期データと、前記システム情報と、前記設定情報を復旧するためのリカバリデータと、を記憶するバックアップディスクと、前記バックアップディスクに接続可能な通信インターフェースと、を有し、前記通信インターフェースを介して前記リカバリデータを更新する処理と、前記記憶部の状態を監視し、前記記憶部の読み込み、または、書き込みに異常が発生している場合、前記同期データ及び前記リカバリデータに基づいて前記メインディスクのリカバリを実施する処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、安価な構成で冗長性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る自動取引システム(バックアップシステム)の概略構成を示す模式図である。
図2】ATMのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】従来のATMの記憶部の一例を示すブロック図である。
図4】本実施の形態に係るATMの記憶部の一例を示す図である。
図5】ジャーナルデータ及び設定情報の例を示す図である。
図6】本実施の形態におけるリカバリ処理フローの一例を示す図である。
図7】本実施の形態におけるリカバリ処理フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る自動取引システム(バックアップシステム又はリカバリシステムと呼ばれてもよい)100の概略構成を示す模式図である。なお、以下に示す自動取引システム100はあくまで一例にすぎず、これに限定されることなく適宜変更が可能である。
【0017】
図1に示すように、自動取引システム100は、n台のATM(自動取引装置)1-1、1-2、・・・1-nと、ホストコンピュータ2を有する。これらの各部は専用線やVPN(Virtual Private Network)等の閉域網を介して、互いがネットワークNを介して通信可能に接続される。また、自動取引システム100は、図1に示していない他の装置やサーバを備えていてもよい。ATM1-1、1-2、・・・1-nは、店舗ごとに1台以上配置されている。ATM1-1、1-2、・・・1-nを特に区別して説明しないときは、以下「ATM1」と称する。
【0018】
ATM1は、預金通帳、キャッシュカードまたはクレジットカード等のカードを用いて、入金、出金、振込や残高照会等の各種取引を実行する装置である。このATM1は、現金自動預払機とも呼ばれる。なお、ATM1は自動取引装置の一例である。以下の説明においては、自動取引装置を代表してATMを用いて説明を行う。
【0019】
ATM1で使用されるカードは、一例として、顧客の銀行口座にかかる情報を磁気ストライプやICチップ等に記憶する銀行カードである。銀行カードが記憶する記録データには、銀行コード、店番、科目、口座番号等がある。
【0020】
ホストコンピュータ2は、ネットワークNを介してATM1と通信し、例えばATM1から送信された顧客の取引依頼について顧客データベース(不図示)を参照して取引の可否を判断する。そしてホストコンピュータ2は、その判断結果(取引可否の内容)をATM1へ通知し、更に取引内容に応じて顧客データベースを更新する。
【0021】
図2は、ATM1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。ATM1は、ATM制御部10、記憶部11、表示部12、入力部13、通帳処理部14、カード処理部15、紙幣処理部16、硬貨処理部17、レシート発行部18および通信部19を有する。また、ATM1は、図2に示していない他の回路構成を備えていてもよい。
【0022】
ATM制御部10は、ATM1全体を統括的に制御するもので、プログラムを読込んで制御処理を実行するCPU(Central Processing Unit)(不図示)を有する。記憶部11は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等を有する。記憶部11は、ATM制御部10が実行するプログラム、表示画面データ、その他各種データを記憶する。また、記憶部11は、ATM制御部10がプログラムを実行する際の作業領域を提供する。詳細は後述するが、記憶部11は、顧客の各種取引内容を含むジャーナルデータを記憶する、所定の記憶媒体を含んで構成されている。
【0023】
表示部12は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)であって、ATM制御部10の指示により、顧客に対して操作画面、表示画面、メニュー画面あるいは操作指示用のガイド画面等を表示する。入力部13は、前述のように表示部12と一体化したタッチパネルで、顧客により、取引の種類の選択、振込先、振込元、振込金額、暗証番号、入金・出金の金額等が入力され、入力された情報はATM制御部10に通知される。
【0024】
通帳処理部14は、ATM1の正面に設けられた通帳入出口に挿入された通帳を内部に搬送する通帳搬送路、通帳に取引内容を印刷する印字部、通帳に貼付された磁気ストライプのデータへの読取り書込みを行うMS記録再生部を有する。また、通帳処理部14は、通帳入出口に通帳を検知する通帳センサを有し、通帳処理部14は、通帳センサにより通帳の挿入や排出された通帳の取出しを検知してATM制御部10に通知する。
【0025】
カード処理部15は、ATM1の正面に設けられたカード入出口に挿入されたカードを内部に搬送したり逆にカードをカード入出口へ排出したりするカード搬送路、磁気カードに貼付された磁気ストライプのデータへの読取り書込みを行うMS記録再生部、およびICカードのメモリへの読取り書込みを行うメモリ記録再生部を有する。カード処理部15は、カード入出口にカードを検知するカードセンサを有し、カード処理部15は、カードセンサによりカードの挿入や排出されたカードの取出し検知してATM制御部10に通知する。
【0026】
紙幣処理部16は、紙幣を一時的に格納する一時保留部と、紙幣の真偽等を鑑別する紙幣鑑別部と、紙幣を種類別に格納する紙幣スタッカと、ATM1の正面に設けられた紙幣入出口のシャッタ解放後に取り忘れた紙幣を保管する紙幣取り忘れボックスと、紙幣入出口と一時保留部と紙幣鑑別部や紙幣スタッカおよび紙幣取り忘れボックス間で紙幣を搬送する搬送路等を有する。紙幣処理部16は、紙幣スタッカ内の紙幣の量を検知する紙幣量センサを有し、紙幣処理部16は、紙幣量センサにより紙幣スタッカ内の紙幣の量を検知してATM制御部10に通知する。
【0027】
硬貨処理部17は、硬貨の真偽等を鑑別する硬貨鑑別部と、硬貨を種類別に格納する硬貨スタッカと、ATM1の正面に設けられた硬貨入出口のシャッタ解放後に取り忘れた硬貨を保管する硬貨取り忘れボックスと、硬貨入出口と硬貨鑑別部や硬貨スタッカおよび硬貨取り忘れボックス間で硬貨を搬送する搬送路等を有する。硬貨処理部17は、硬貨スタッカ内の硬貨の量を検知する硬貨量センサを有し、硬貨処理部17は、硬貨量センサにより硬貨スタッカ内の硬貨の量を検知してATM制御部10に通知する。
【0028】
出金処理時には、紙幣処理部16および硬貨処理部17は、ATM制御部10からの指示により、必要な紙幣や硬貨を計数して紙幣スタッカや硬貨スタッカから取出し、紙幣入出口や硬貨入出口まで搬送し、搬送後に紙幣入出口や硬貨入出口のシャッタを開放する。
【0029】
レシート発行部18は、レシート印刷機構およびレシート搬送機構を備え、顧客が行った取引内容を印刷したレシート媒体をレシート放出口から放出して顧客に発行する機能を有している。通信部19は、ネットワークNを通じてATM1と監視装置2間のデータ(電文)の授受を行う。通信部19は、種々のネットワークインターフェース(通信インターフェース)によって構成される。
【0030】
光学ドライブ20は、外部の記憶媒体(光学ディスク等)を読み込み可能な通信インターフェースである。例えば光学ドライブは、USBインターフェースにより構成され、外部の記憶媒体を光学ドライブ20で読み込ませることで、ATM1のジャーナルデータやシステム情報等を更新することが可能である。
【0031】
ところで、ATM等の自動取引装置では、アプリケーションやジャーナルデータ等の大切な情報を失わないため、冗長性のあるRAID方式を使用していることが知られている。RAIDでは、例えば、SSDやHDD等の記憶媒体を2台以上使用し、一方の記憶媒体が故障しても、他方の記憶媒体で継続的な運用を可能が可能である。自動取引装置で記憶装置をRAID運用する場合、例えばメインディスクを2台と、更にバックアップディスクを1台追加した合計3台の記憶媒体を必要とする。
【0032】
ここで、図3を参照して従来例について説明する。図3は、従来のATM1の記憶部11の一例を示すブロック図である。
【0033】
例えば図3に示すように、ATM1の記憶部11は、所定の記憶媒体として、2台のディスク30、31と、バックアップディスク32と、を含んでいる。ディスク30、31は、RAID1を構成している。具体的にディスク30、31は、それぞれシステム情報、ジャーナルデータ、ログデータ等をミラーリングして記憶している。ディスク30、31の各データは、互いに同期されている。また、バックアップディスク32は、顧客の重要な取引情報であるジャーナルデータを記憶している。RAID1を構成するディスク30、31のジャーナルデータとバックアップディスク32のジャーナルデータは、同期されている。
【0034】
RAID1を構成するディスク30、31とバックアップディスク32でジャーナルデータをソフト的にミラーリングすることにより、いずれかのディスクが故障した場合でも、残る2本のディスクからジャーナルデータを復旧できるため(ジャーナルリカバリ)、冗長性が確保されている。したがって、装置休止や大切なジャーナルデータの喪失を防止することが可能である。
【0035】
このように、自動取引装置で記憶装置をRAID運用する場合、例えばメインディスクを2台と、更にバックアップディスクを1台追加した合計3台の記憶媒体を必要とする。
【0036】
しかしながら、このようなRAID運用の場合、記憶媒体の数が増えることで部材費やメンテナンス費等に莫大なコストがかかるだけでなく、品質確保が難しいことが問題視されている。
【0037】
また、RAID運用では、シャットダウンのタイミングやシステム構成の複雑化等によって故障が生じやすく、障害が散発していることも懸念されている。
【0038】
よって、コストの観点からRAID運用の廃止が望ましいが、顧客に対するジャーナルデータの冗長性の確保は必須である。このため、RAID方式を廃止し、1台のディスク(シングルディスク)と、1台のバックアップディスクで運用することも考えられる。
【0039】
しかしながら、この構成の運用では、シングルディスクが破損するとシステムが停止してしまい、復旧させるにはシステムの再インストールが必要である。この場合、ユーザー毎(ATM毎)に設定が違うため、個別設定の細かい再設定が必要となる。この結果、装置の長時間ダウンとなってしまい、クレームへと繋がってしまう問題が懸念される。
【0040】
そこで、本件発明者は、メインディスク破損時の早期復旧を実現するため、バックアップディスクからシステムイメージ等を用いたリカバリ対応可能な方式を提案した。
【0041】
図4は、本実施の形態に係るATMの記憶部の一例を示す図である。図5は、ジャーナルデータ及び設定情報の例を示す図である。図4に示すように、本実施の形態に係る記憶部11は、1台のディスク40(メインディスク)と、1台のバックアップディスク41と、を含んで構成される。
【0042】
ディスク40は、システム情報、ジャーナルデータ、ログデータ、及び設定情報を記憶している。システム情報は、ATM1の各種処理を実現するOS等に関する情報を含む。ジャーナルデータは、顧客の取引に関する情報を含む。具体的にジャーナルデータは、ATM1の取引履歴データを含み、例えば図5Aに示すように、取引日時、取引種別、取引金額、口座番号、及び装置番号を含む。なお、ジャーナルデータは、これらの情報に限らず、他の情報を含んでもよい。
【0043】
ログデータは、ATM1の内部動作に基づく履歴データを含む。ログデータには、例えば、ATM1で発生したエラー情報、OSのイベントログや動作ログ等が挙げられる。設定情報は、図5Bに示すように、ATM1が設置される店舗毎に設定が必要な情報を含み、例えば支店番号や電話番号(問合せ先番号)等が挙げられる。
【0044】
バックアップディスク41は、ディスク40と同じく、ジャーナルデータ、ログデータ、及び設定情報を記憶している。バックアップディスク41のこれらの情報は、ディスク41の対応するデータに同期されている。これらのジャーナルデータ、ログデータ、及び設定情報は、同期データと呼ばれてもよい。
【0045】
また、バックアップディスク41は、更にクローンツール、システムイメージ、及びPTF(Program Temporary Fix)を記憶している。クローンツールは、バックアップディスク41の指定ドライブやパーティションをコピーするためのツールである。
【0046】
システムイメージは、膨大な容量のシステム情報をイメージ化(圧縮)したデータである。ここで、イメージ化とは、システム情報の完全な内容と構造を1つのファイルに格納したデータに圧縮することをいう。
【0047】
PTFは、ATM1に対する機能の追加データや障害対策用の修正データを含む。これらのクローンツール、システムイメージ、及びPTFは、リカバリデータと呼ばれてもよい。
【0048】
このように、本実施の形態に係る記憶部11は、単にジャーナルデータだけでなく、ログデータや設定情報、その他に各種リカバリデータを記憶している。このため、ATM1は、例えばディスク40に異常が発生した場合、バックアップディスク41から同期データを復旧させると共に、リカバリデータを用いて容易にリカバリを実施することが可能である。
【0049】
従来では、バックアップディスク32にジャーナルデータしか記憶されていなかったため、システムの再インストールの際に非常に工数がかかっていた。これに対し、本実施の形態では、バックアップディスク41にリカバリデータを格納したことで容易にシステムの再インストールが可能となっている。
【0050】
また、従来では、設定情報が同期されていなかったため、ユーザー毎に設定情報が異なる場合、復旧時に自動的な同期ができなかった。これに対し、本実施の形態では、事前に設定情報をバックアップディスク41に同期させておくことで、システム復旧時に自動で再同期が可能となっている。
【0051】
また、従来では、複数のメインディスク(ディスク30、31)でRAIDを構成していたため、部材費に加え、メンテナンス費が高くついていた。これに対し、本実施の形態では複数のメインディスクでRAIDを構成することなく、単一のメインディスク(ディスク40)とバックアップディスク41でリカバリ構成を確立できる。よって、初期投資が抑えられ、部材費削減や保守効率化が見込め、かつ、ジャーナルの冗長性も確保できる。
【0052】
また、本実施の形態では、バックアップディスク41に接続可能な通信インターフェース(通信部19又は光学ドライブ20)を更に備えている。この場合、ATM1は、通信インターフェースを介してリカバリデータを更新可能である。より具体的に、上記したシステムイメージやPTFは、光学ドライブ20やネットワークNを介して、外部の記憶媒体やホストコンピュータ2に記憶された最新データに基づいて、常に最新版にアップデートすることが可能である。
【0053】
次に、図6及び図7を参照して本実施の形態にかかるリカバリ処理フローについて説明する。図6及び図7は、本実施の形態におけるリカバリ処理フローの一例を示す図である。以下に示すフローにおいては、特に明示がない限り、動作の主体はATM1とする。なお、以下に示すフローはあくまで一例を示すものであり、必要に応じて他の処理を追加してもよい。
【0054】
図6に示すように、リカバリ処理フローでは、先ずステップST101において、装置(ATM1)が起動される。
【0055】
そして、ステップST102において、ATM1は、記憶部11を構成するディスク40の状態を確認し、ディスク4を正常に読み込むことができるか否かを判断する。ディスク40を正常に読み込むことができる場合(ステップST102:YES)、ステップST103の処理に進む。ディスク40を正常に読み込むことができなかった場合(ステップST102:NO)、後述するステップST110に処理に進む。
【0056】
なお、図6に示すように、以下のステップST103からステップST109では、各処理が実施された後に、ディスク40を正常に読み込むことができるか否かを判定するものとする。
【0057】
ステップST103において、ATM1は、取引を開始する。そして、ATM1は、ディスク4を正常に読み込むことができるか否かを判断し、ディスク40が正常の場合、ステップST104の処理に進み、ディスク40が正常でない場合、ステップST10の処理に進む。
【0058】
ステップST104において、ATM1は、入力部13による暗証番号の入力を受け付ける。そして、ATM1は、ディスク4を正常に読み込むことができるか否かを判断し、ディスク40が正常の場合、ステップST105の処理に進み、ディスク40が正常でない場合、ステップST110の処理に進む。
【0059】
ステップST105において、ATM1は、入力部13による金額の入力を受け付ける。そして、ATM1は、ディスク4を正常に読み込むことができるか否かを判断し、ディスク40が正常の場合、ステップST106の処理に進み、ディスク40が正常でない場合、ステップST110の処理に進む。
【0060】
ステップST106において、ATM1は、ホストコンピュータ2との通信を開始する。そして、ATM1は、ディスク4を正常に読み込むことができるか否かを判断し、ディスク40が正常の場合、ステップST107の処理に進み、ディスク40が正常でない場合、ステップST110の処理に進む。
【0061】
ステップST107において、ATM1は、現金の計数を実施する。そして、ATM1は、ディスク4を正常に読み込むことができるか否かを判断し、ディスク40が正常の場合、ステップST108の処理に進み、ディスク40が正常でない場合、ステップST110の処理に進む。
【0062】
ステップST108において、ATM1は、入出金を実施する。そして、ATM1は、ディスク4を正常に読み込むことができるか否かを判断し、ディスク40が正常の場合、ステップST104の処理に進み、ディスク40が正常でない場合、ステップST110の処理に進む。
【0063】
ステップST109において、ATM1は、取引を終了する。そして、ディスク40が正常の場合、フローが終了し、ディスク40が正常でない場合、ステップST110の処理に進む。
【0064】
このように、ステップST102からステップST103の処理では、各処理でディスク40の状態が確認され、常にディスク状態が監視されている(ディスク監視状態)。
【0065】
ディスク監視状態で、ディスク40の読み込み、または、書き込みにエラーが発生すると、ステップST110において、一端、装置が休止状態となる。そして、図7のステップST111の処理に進む。
【0066】
図7に示すように、ステップST111において、ATM1は、ディスク40のリカバリが可能か否かを判断する。リカバリが可能な場合(ステップST111:YES)、ステップST112の処理に進む。リカバリが不可能な場合(ステップST111:NO)、後述するステップST114に進む。
【0067】
ステップST112において、ATM1は、バックアップディスク41を用いてディスク40のリカバリを実施する。そして、ステップST13の処理に進む。
【0068】
ステップST113において、ATM1は、ディスク40のリカバリが正常に完了したか否かを判断する。ディスク40のリカバリが正常に完了した場合(ステップST113:YES)、ステップST102の処理に戻る。ディスク40のリカバリが正常に完了しなかった場合(ステップST113:NO)、ディスク40に物理的な破損が生じているとして、ステップST114以降の処理に進む。
【0069】
ステップST114以降の処理は、顧客、銀行の行員、又はカスタマーエンジニア(CE)の動作に基づくものである。ステップST14では、顧客の端末操作による行員アラームで行員が呼び出され、ATM1の異常発生が報知される。更にステップST115において、行員によるCEコールによってカスタマーエンジニアが呼び出される。そして、ステップST116において、カスタマーエンジニアは、読み込み、または、書き込み不良となったディスク40を新たに正常なディスク40に交換する。そして、ATM1は、バックアップディスク41を用いて新たなディスク40にリカバリ処理を実施する。その後、正常にリカバリが実施されたことを確認してステップST102の処理に戻る。
【0070】
このように、本実施の形態において、ATM1は、取引に関する情報を含むジャーナルデータを記憶する記憶部11を備えている。記憶部11は、ジャーナルデータとシステム情報を記憶するディスク40(メインディスク)と、少なくともジャーナルデータに同期する同期データとシステム情報を復旧するためのリカバリデータとを記憶するバックアップディスク41と、を有している。ATM1は、記憶部11の読み込み、または、書き込みに異常が発生している場合、同期データ及びリカバリデータに基づいてディスク40のリカバリを実施する。この構成によれば、安価な構成で冗長性を確保することが可能である。
【0071】
また、本実施の形態又は変形例を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0072】
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。更には、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。従って、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。
【0073】
下記に、上記実施の形態における特徴点を整理する。
【0074】
上記実施の形態に記載の自動取引装置は、取引に関する情報を含むジャーナルデータを記憶する記憶部を備えた自動取引装置であって、前記記憶部は、前記ジャーナルデータと、システム情報を記憶するメインディスクと、少なくとも前記ジャーナルデータに同期する同期データと、前記システム情報を復旧するためのリカバリデータと、を記憶するバックアップディスクと、を有し、前記記憶部の読み込み、または、書き込みに異常が発生している場合、前記同期データ及び前記リカバリデータに基づいて前記メインディスクのリカバリを実施する。
【0075】
また、上記実施の形態に記載の自動取引装置において、前記メインディスクは、内部動作に基づく履歴データを含むログデータ及び/又は店舗毎に設定される設定情報を更に記憶し、前記バックアップディスクは、前記ログデータ及び/又は前記設定情報に同期する同期データを更に記憶している。
【0076】
また、上記実施の形態に記載の自動取引装置において、前記バックアップディスクは、前記リカバリデータとして、コピー用のクローンツール、前記システム情報のシステムイメージ、及びPTF(Program Temporary Fix)の少なくともいずれかを記憶している。
【0077】
また、上記実施の形態に記載の自動取引装置は、前記バックアップディスクに接続可能な通信インターフェースを更に備え、前記通信インターフェースを介して前記リカバリデータを更新する。
【0078】
また、上記実施の形態に記載の自動取引装置のリカバリ方法は、取引に関する情報を含むジャーナルデータを記憶する記憶部を備えた自動取引装置のリカバリ方法であって、前記記憶部は、前記ジャーナルデータと、システム情報を記憶するメインディスクと、少なくとも前記ジャーナルデータに同期する同期データと、前記システム情報を復旧するためのリカバリデータと、を記憶するバックアップディスクと、を有し、前記記憶部の状態を監視するステップと、前記記憶部の読み込み、または、書き込みに異常が発生している場合、前記同期データ及び前記リカバリデータに基づいて前記メインディスクのリカバリを実施するステップと、を備える。
【0079】
また、上記実施の形態に記載のプログラムは、取引に関する情報を含むジャーナルデータを記憶する記憶部を備えた自動取引装置のプロセッサに実行させるためのプログラムであって、前記記憶部は、前記ジャーナルデータと、システム情報を記憶するメインディスクと、少なくとも前記ジャーナルデータに同期する同期データと、前記システム情報を復旧するためのリカバリデータと、を記憶するバックアップディスクと、を有し、前記記憶部の状態を監視し、前記記憶部の読み込み、または、書き込みに異常が発生している場合、前記同期データ及び前記リカバリデータに基づいて前記メインディスクのリカバリを実施する処理を実行させる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、安価な構成で冗長性を確保することができるという効果を有し、特に、自動取引装置、自動取引装置のリカバリ方法及びプログラムに有用である。
【符号の説明】
【0081】
1 ATM(自動取引装置)
2 ホストコンピュータ
10 ATM制御部
11 記憶部
12 表示部
13 入力部
14 通帳処理部
15 カード処理部
16 紙幣処理部
17 硬貨処理部
18 レシート発行部
19 通信部(通信インターフェース)
20 光学ドライブ(通信インターフェース)
30 ディスク(メインディスク)
31 ディスク(メインディスク)
32 バックアップディスク
40 ディスク(メインディスク)
41 バックアップディスク
100 自動取引システム
図1
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図5
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図7