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特許7551531ハンド及びこのハンドを用いて容器をピックアップする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】ハンド及びこのハンドを用いて容器をピックアップする方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
B25J15/08 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021025053
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2022127104
(43)【公開日】2022-08-31
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】本田 敦
(72)【発明者】
【氏名】吉浦 竜一
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-240770(JP,A)
【文献】実開昭50-101282(JP,U)
【文献】特開平02-274489(JP,A)
【文献】実開平03-118991(JP,U)
【文献】特開平05-016090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方側が開口した周壁を有する物体を、当該周壁の内面に対する静摩擦力を用いて保持するハンドであって、
周方向に離散的に配置された、3本以上の複数のフィンガと、
前記複数のフィンガに接続され、当該複数のフィンガを、径方向外方へと互いから遠ざかるように拡開移動させ、且つ、径方向内方へと互いに近づくように戻り移動させるように構成されたアクチュエータと、
前記複数のフィンガに対して所定の相対的な高さ位置に設けられ、保持対象の物体の周壁の上方端に突き当たることで、当該物体と前記複数のフィンガとの間の相対的な高さ関係を規定するガイド部材と、
前記アクチュエータ及びロボットアームを制御する制御装置と、
を備え、
前記複数のフィンガの各々は、少なくとも径方向外方側の面において、保持対象の前記物体の前記周壁の内面に対して静摩擦力を作用させる摩擦体を有しており、
前記制御装置は、
保持対象の物体の上方側から、前記ハンドを当該物体に近づけていき、当該物体の周壁の上方端に前記ガイド部材を突き当てる工程と、
前記周壁の前記上方端に前記ガイド部材が突き当てられている状態で、前記複数のフィンガを、径方向外方へと互いから遠ざかるように拡開移動させ、前記周壁の内面に接触させ更に前記周壁を径方向に変形させ、当該変形によって当該物体の当該周壁と当該物体の下方に積層されていた物体の周壁との間に隙間を生成させる工程と、
前記複数のフィンガが前記物体の前記周壁を径方向に変形させている状態で、前記ハンドを上方側に退避させることによって、前記物体を当該物体の下方に積層されていた物体から離間させてピックアップする工程と、
を実行するように制御する
ことを特徴とするハンド。
【請求項2】
前記摩擦体は、各フィンガの周面全体を覆うように形成されると共に粘弾性素材により形成された筒状部材である
ことを特徴とする請求項1に記載にハンド。
【請求項3】
前記ガイド部材は、保持対象の前記物体の前記周壁の前記上方端に複数個所で突き当たる複数の当接要素を有している
ことを特徴とする請求項1または2に記載にハンド。
【請求項4】
前記複数の当接要素の各々は、径方向に見て、前記複数のフィンガの各々と重ならない位置に配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載にハンド。
【請求項5】
前記複数のフィンガは、周方向に等間隔に、回転対称性を有するように配置されており、
前記アクチュエータは、前記複数のフィンガを、当該複数のフィンガの回転対称性を維持したまま、径方向に移動させるように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載にハンド。
【請求項6】
上方側が開口した周壁を有する柔軟な容器が複数個積層された状態から、当該周壁の内面に対する静摩擦力を用いて当該容器を1個ずつピックアップする方法であって、
周方向に離散的に配置された、3本以上の複数のフィンガと、
前記複数のフィンガに接続され、当該複数のフィンガを、径方向外方へと互いから遠ざかるように拡開移動させ、且つ、径方向内方へと互いに近づくように戻り移動させるように構成されたアクチュエータと、
前記複数のフィンガに対して所定の相対的な高さ位置に設けられ、保持対象の容器の周壁の上方端に突き当たることで、当該容器と前記複数のフィンガとの間の相対的な高さ関係を規定するガイド部材と、
を備え、
前記複数のフィンガの各々は、少なくとも径方向外方側の面において、保持対象の前記容器の前記周壁の内面に対して静摩擦力を作用させる摩擦体を有している
ことを特徴とするハンド
を使用して、
保持対象の容器の上方側から、前記ハンドを当該容器に近づけていき、当該容器の周壁の上方端に前記ガイド部材を突き当てる工程と、
前記周壁の前記上方端に前記ガイド部材が突き当てられている状態で、前記複数のフィンガを、径方向外方へと互いから遠ざかるように拡開移動させ、前記周壁の内面に接触させ更に前記周壁を径方向に変形させ、当該変形によって当該容器の当該周壁と当該容器の下方に積層されていた容器の周壁との間に隙間を生成させる工程と、
前記複数のフィンガが前記容器の前記周壁を径方向に変形させている状態で、前記ハンドを上方側に退避させることによって、前記容器を当該容器の下方に積層されていた容器から離間させてピックアップする工程と、
を備えたことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば上方側が開口した周壁を有する物体を、当該周壁の内面に対する静摩擦力を用いて保持するハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スーパーやコンビニ等において、弁当容器等の配置対象物の中に、つゆ容器等の上方側が開口した周壁を有する物体が配置されたものが販売されている。このようなつゆ容器は、例えば麺類をつけるつけつゆを入れる容器である。
【0003】
例えば弁当の製造工程において、このようなつゆ容器等の物体は、複数個の物体が互いに重ねられて配置されている物体の複数個の積層状態から、1つずつ取り出され、各配置対象物の中に1つずつ配置される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、つゆ容器等の物体を、各配置対象物の中に1つずつ配置しようとする場合、従来は作業者が物体を配置する作業を行う必要があり、作業者の手間やコストが生じるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の発明者らは、つゆ容器等の物体を各配置対象物の中に1つずつ配置するハンドの鋭意研究をおこなった。本発明の発明者らは、例えば、吸盤を備えたハンドにより物体を吸着して取り出すことを検討した。しかしながら、つゆ容器等の物体を、複数個積層された状態から、1つずつピックアップしようとする場合に、1番目に取り出そうとする物体と、1番目の物体と隣接する2番目の物体との間に、負圧が発生し、1番目の物体と共に2番目の物体も取り出されてしまうという問題があった。
【0006】
また、本発明の発明者らは、例えば、ハンドにより前記物体の外周を掴むことにより前記物体を取り出すことを検討した。しかしながら、前記物体の複数個積層された状態では、高さ方向に多数の前記物体が積層されているため、少しの力の作用により上端の前記物体が傾いたり、位置や高さが微妙に変化することがあった。よって、前記物体を、複数の前記物体が複数個積層された状態から、1つずつ掴んで取り出すことが困難であり、ハンドが前記物体を取り損ねたり、落としたりするという問題があった。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑みて創案されたものである。本発明の目的は、上方側が開口した周壁を有する物体を保持できるハンドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の一実施形態は、 上方側が開口した周壁を有する物体を、当該周壁の内面に対する静摩擦力を用いて保持するハンドであって、
周方向に離散的に配置された、3本以上の複数のフィンガと、前記複数のフィンガに接続され、当該複数のフィンガを、径方向外方へと互いから遠ざかるように拡開移動させ、且つ、径方向内方へと互いに近づくように戻り移動させるように構成されたアクチュエータと、前記複数のフィンガに対して所定の相対的な高さ位置に設けられ、保持対象の物体の周壁の上方端に突き当たることで、当該物体と前記複数のフィンガとの間の相対的な高さ関係を規定するガイド部材と、を備え、前記複数のフィンガの各々は、少なくとも径方向外方側の面において、保持対象の前記物体の前記周壁の内面に対して静摩擦力を作用させる摩擦体を有している。
このように構成された本発明の一実施形態においては、ガイド部材が物体と前記複数のフィンガとの間の相対的な高さ関係を規定することができ、摩擦体が物体の周壁の内面に作用する位置を比較的安定して規定でき、アクチュエータが当該複数のフィンガを、径方向外方へと互いから遠ざかるように拡開移動させることにより、前記複数のフィンガの各々が有する摩擦体が保持対象の前記物体の前記周壁の内面に対して静摩擦力を作用させ、上方側が開口した周壁を有する物体を保持できる。また、本実施形態の構成によれば、例えば、複数の上方側が開口した周壁を有する物体が例えば互いに重ねられて配置されている状態から、上方側が開口した周壁を有する物体を1つずつピックアップして保持できる。
【0009】
本発明の一実施形態において、好ましくは、前記摩擦体は、各フィンガの周面全体を覆うように形成されると共に粘弾性素材により形成された筒状部材である。
このように構成された本発明の一実施形態においては、摩擦体は、各フィンガの周面全体を覆うように形成されると共に粘弾性素材により形成された筒状部材であるので、摩擦体の保持対象の物体に作用する位置が保持対象の物体のわずかな移動により変化される場合や摩擦体の保持対象の物体に作用する位置が保持対象の物体自体の形状や大きさの変更により変化される場合にも、複数のフィンガの各々が有する摩擦体が保持対象の前記物体の前記周壁の内面に対して静摩擦力を作用させやすくでき、上方側が開口した周壁を有する物体をより確実に保持できる。また、摩擦体が、例えば、物体の製造誤差による形状の違いや、物体の形状のバリエーション等の形状の違いにも対応して物体を保持しやすくできる。
【0010】
本発明の一実施形態において、好ましくは、前記ガイド部材は、保持対象の前記物体の前記周壁の前記上方端に複数個所で突き当たる複数の当接要素を有している。
このように構成された本発明の一実施形態においては、ガイド部材は、保持対象の前記物体の前記周壁の前記上方端に複数個所で突き当たる複数の当接要素を有しているので、当接要素が複数個所で物体とフィンガとの相対的な高さ関係を調整して、ガイド部材が物体と前記複数のフィンガとの間の相対的な高さ関係をより安定して規定することができ、摩擦体が物体の周壁に接触する位置をより安定して規定できる。
【0011】
本発明の一実施形態において、好ましくは、前記複数の当接要素の各々は、径方向に見て、前記複数のフィンガの各々と重ならない位置に配置されている。
このように構成された本発明の一実施形態においては、前記複数の当接要素の各々は、径方向に見て、前記複数のフィンガの各々と重ならない位置に配置されているので、ガイド部材とフィンガに取付けられた摩擦体とが干渉しにくく、ガイド部材が物体と前記複数のフィンガとの間の相対的な高さ関係を安定して規定しながらも、前記複数のフィンガの各々が有する摩擦体が保持対象の前記物体の前記周壁の内面に対して静摩擦力を作用させ、上方側が開口した周壁を有する物体をより確実に保持できる。
【0012】
本発明の一実施形態において、好ましくは、前記複数のフィンガは、周方向に等間隔に、回転対称性を有するように配置されており、前記アクチュエータは、前記複数のフィンガを、当該複数のフィンガの回転対称性を維持したまま、径方向に移動させるように構成されている。
このように構成された本発明の一実施形態においては、前記アクチュエータは、前記複数のフィンガを、当該複数のフィンガの回転対称性を維持したまま、径方向に移動させるように構成されている。これにより、前記複数のフィンガの各々が有する摩擦体が、回転対称性を維持したまま、径方向に移動され、前記物体の例えば環状の周壁の内面に対して回転対称性を有する位置で静摩擦力を作用させ、物体をバランスよく保持しやすくでき、また例えば環状の周壁を有する物体をより保持しやすくできる。
【0013】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上方側が開口した周壁を有する柔軟な容器が複数個積層された状態から、当該周壁の内面に対する静摩擦力を用いて当該容器を1個ずつピックアップする方法であって、周方向に離散的に配置された、3本以上の複数のフィンガと、前記複数のフィンガに接続され、当該複数のフィンガを、径方向外方へと互いから遠ざかるように拡開移動させ、且つ、径方向内方へと互いに近づくように戻り移動させるように構成されたアクチュエータと、複数のフィンガに対して所定の相対的な高さ位置に設けられ、保持対象の容器の周壁の上方端に突き当たることで、当該容器と前記複数のフィンガとの間の相対的な高さ関係を規定するガイド部材と、を備え、複数のフィンガの各々は、少なくとも径方向外方側の面において、保持対象の前記容器の前記周壁の内面に対して静摩擦力を作用させる摩擦体を有していることを特徴とするハンドを使用して、保持対象の容器の上方側から、前記ハンドを当該容器に近づけていき、当該容器の周壁の上方端に前記ガイド部材を突き当てる工程と、前記周壁の前記上方端に前記ガイド部材が突き当てられている状態で、前記複数のフィンガを、径方向外方へと互いから遠ざかるように拡開移動させ、前記周壁の内面に接触させ更に前記周壁を径方向に変形させ、当該変形によって当該容器の当該周壁と当該容器の下方に積層されていた容器の周壁との間に隙間を生成させる工程と、前記複数のフィンガが前記容器の前記周壁を径方向に変形させている状態で、前記ハンドを上方側に退避させることによって、前記容器を当該容器の下方に積層されていた容器から離間させてピックアップする工程と、を備えたことを特徴とする。
このように構成された本発明の一実施形態においては、隙間を生成させる工程により、前記周壁の前記上方端に前記ガイド部材が突き当てられている状態で、前記複数のフィンガを、径方向外方へと互いから遠ざかるように拡開移動させ、前記周壁の内面に接触させ更に前記周壁を径方向に変形させ、当該変形によって当該容器の当該周壁と当該容器の下方に積層されていた容器の周壁との間に隙間を生成させ、ピックアップする工程により、前記複数のフィンガが前記容器の前記周壁を径方向に変形させている状態で、前記ハンドを上方側に退避させることによって、前記容器を当該容器の下方に積層されていた容器から離間させてピックアップする。これにより、上方側が開口した周壁を有する柔軟な容器が複数個積層された状態から、当該周壁の内面に対する静摩擦力を用いて当該容器を1個ずつピックアップすることができる。
【0014】
本発明によれば、上方側が開口した周壁を有する物体を保持できるハンドを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態によるハンドが設けられた保持システムの正面図である。
図2図1のハンドの上面図である。
図3図1のハンドが複数個積層された状態の物体の上に下降され、ハンドのガイド部材が物体の上方端に突き当たるとき、フィンガは閉状態であると共に摩擦体が物体の内側の位置に位置決めされる状態を示す斜視図である。
図4図1のハンドが複数個積層された状態の物体の上に下降され、ハンドのガイド部材が物体の上方端に突き当たるとき、フィンガが閉状態であると共に摩擦体が物体の内側の位置に位置決めされる状態を、図2のIV-IV線に沿って見た断面図である。
図5図4のハンドのフィンガが閉状態から開状態となり、摩擦体が物体を内側から支持する状態を示す上面図である。
図6図4のハンドのフィンガが閉状態から開状態となり、摩擦体が物体を内側から支持する状態を、図2のIV-IV線に沿って見た断面図である。
図7】本発明の第2実施形態によるハンドの上面図である。
図8図7のハンドのガイド部材の2つに分かれるアーム部を側方側から見た側面図である。
図9図7のハンドのガイド部材の2つに分かれるアーム部を正面側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面により、本発明の第1実施形態によるハンドについて説明する。
まず、図1及び図2により、本発明の第1実施形態によるハンドについて説明する。図1は、本発明の第1実施形態によるハンドが設けられた保持システムの正面図である。図2は、図1のハンドの上面図である。図2においてはハンドのフィンガは閉状態となっている。
【0017】
本実施形態のハンド1は、保持対象となる物体2を保持する。本実施形態のハンド1は、物体2を保持する保持システム4に設けられる。物体2は、上方側が開口した周壁2aを有する物体、例えば上方側が開口した周壁2aを有する容器であり、例えば、麺類のつけつゆを入れるつゆ容器である。保持システム4は、物体2を保持し、物体2を保持した状態で移動させ、物体2を目的位置に配置する。保持システム4は、コンベヤベルト8に沿って設けられる。保持システム4は、コンベヤベルト8上を搬送される配置対象物10に物体2を配置する。
【0018】
物体2には、つゆ容器の他、カップ容器、小型容器、トレー、皿、ケース等の比較的小型且つ上方に向けて開口する容器が含まれる。物体2は、樹脂、紙等の素材により形成される。物体2は、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂製の容器であり、塑性変形にまではいたらない程度のある程度の変形を許容する柔軟性を有すると共に、容器をハンド1で保持できる程度の剛性を有している。
【0019】
物体2は、上面視で円形の器状に形成され、上面視で周壁2aの上端部が円形の縁を形成し、また、周壁2aの下端部(底部の外周部)が円形に形成されている。なお、物体2は、上面視で、四角形の器状、楕円形の器状、概ね円形でありつつも周壁にひだが形成されているひだ付き器状等に形成されていてもよい。物体2は、有底の器状に形成され、その深さは変更可能である。物体2は、底が無く形成される枠状体又は底に穴が形成される底開口部材等、液体を収容できる容器に限られず、容器以外の上方側が開口した周壁を有する構造体であってもよい。なお、物体2は、複数個積層された状態でコンベヤベルト8の側方の待機位置に配置されている。複数個積層された状態の物体2は、複数個積層された状態の物体群を倒れにくくするための3本の支持棒9の内側に配置されている。
【0020】
保持システム4は、アームの位置及び高さ等を自由に調節できるロボットアーム12を備え、ハンド1はロボットアーム12に取付けられている。よって、ハンド1の水平方向の位置及び上下方向の位置は、ロボットアーム12により自在に変更可能である。なお、ハンド1はロボットアーム12を含み、自身の位置を調節できる機能を有していてもよい。
【0021】
コンベヤベルト8は、配置対象物10を載置した状態で配置対象物10を矢印Aで示す進行方向に搬送するようになっている。配置対象物10は、物体2が配置される対象となる物体であり、例えば、弁当の具材を収容する弁当容器である。配置対象物10は、物体2が配置される対象となる物体であればよいので、弁当容器に限られず、食品容器、物体2が内部に配置できる容器、トレー、皿、ケース等が含まれる。
【0022】
次に、図1乃至図6を参照して、ハンドについてより詳細に説明する。
図3は、図1のハンドが複数個積層された状態の物体の上に下降され、ハンドのガイド部材が物体の上方端に突き当たるとき、フィンガは閉状態であると共に摩擦体が物体の内側の位置に位置決めされる状態を示す斜視図であり、図4図1のハンドが複数個積層された状態の物体の上に下降され、ハンドのガイド部材が物体の上方端に突き当たるとき、フィンガが閉状態であると共に摩擦体が物体の内側の位置に位置決めされる状態を、図2のIV-IV線に沿って見た断面図であり、図5図4のハンドのフィンガが閉状態から開状態となり、摩擦体が物体を内側から支持する状態を示す上面図であり、図6図4のハンドのフィンガが閉状態から開状態となり、摩擦体が物体を内側から支持する状態を、図2のIV-IV線に沿って見た断面図である。
ハンド1は、物体2を、当該周壁2aの内面に対する静摩擦力を用いて保持する。ハンド1は、物体2を、物体2が複数個積層された状態から物体2を1個ずつピックアップして保持し且つコンベヤベルト8上の配置対象物10上の特定の位置まで搬送する。
【0023】
ハンド1は、周方向に離散的に配置された、3本以上の複数のフィンガ14と、複数のフィンガ14に接続されるアクチュエータ16と、複数のフィンガ14に対して所定の相対的な高さ位置に設けられ、保持対象の物体2の周壁2aの上方端に突き当たることで、当該物体2と複数のフィンガ14との間の相対的な高さ関係を規定するガイド部材18と、アクチュエータ16を制御する制御装置20と、を備えている。
【0024】
フィンガ14は、アクチュエータ16の側方から半径方向外側に向けて延びる。フィンガ14は、外方側の下部から下方に向けて延びる取付部14aを備え、この取付部14aが摩擦体30の内部に取付けられている。複数のフィンガ14は、周方向に等間隔に、回転対称性を有するように配置されている。フィンガ14は、アクチュエータ16により駆動されるように構成され、フィンガ14は、アクチュエータ16に対して、半径方向外側及び半径方向内側に向けて摺動可能に構成されている。このように、アクチュエータ16は、複数のフィンガ14を、複数のフィンガ14の回転対称性を維持したまま、径方向に移動させるように構成されている。より具体的には、フィンガ14は、フィンガ14の外側端がアクチュエータ16に比較的近い位置となる閉状態と、フィンガ14の外側端が閉状態の位置よりも外側に位置する開状態との間で摺動される。フィンガ14は例えば、4本、5本、6本等に変更可能である。フィンガ14の閉状態では摩擦体30が物体2の内壁に十分に押し付けられた状態となっておらず、一方、フィンガ14の開状態では摩擦体30が物体2の内壁に十分に押し付けられた状態となっており、摩擦体30が内側から突っ張るようにして物体2を支持できる。
【0025】
アクチュエータ16は、複数のフィンガ14を、水平方向においてアクチュエータ16から外方に進ませるように前進させ及びアクチュエータ16の内方に戻るように後退させるように移動できる。アクチュエータ16は、複数のフィンガ14を、径方向外方へと互いから遠ざかるように拡開移動させ、且つ、径方向内方へと互いに近づくように戻り移動させるように構成されている。
【0026】
アクチュエータ16は、フィンガ14を、空気圧により閉状態と開状態との間で移動させる空圧式フィンガとして構成されている。アクチュエータ16は、2つの圧力チャンバである第1圧力チャンバ(図示せず)と、第2圧力チャンバ(図示せず)とを有しているいわゆる複動式アクチュエータにより形成される。アクチュエータ16は、第2圧力チャンバの内部に作用する空気圧と比して高い空気圧が第1圧力チャンバの内部に作用する場合フィンガ14が開状態となり、第1圧力チャンバの内部に作用する空気圧と比して高い空気圧が第2圧力チャンバの内部に作用する場合フィンガ14が閉状態となるように形成されている。アクチュエータ16の第1圧力チャンバ及び第2圧力チャンバのそれぞれには、空気配管22が接続されている。空気配管22の他端はコンプレッサー24に接続されている。コンプレッサー24は空気を圧縮して第1圧力チャンバ及び第2圧力チャンバのそれぞれに向けて送出するように構成されている。なお、アクチュエータ16は、1つの圧力チャンバを有しているいわゆる単動式アクチュエータにより形成されていてもよい。もっとも、アクチュエータ16は、フィンガ14を、モーター及び動力伝達機構等の機械式動力伝達構造により閉状態と開状態との間で姿勢変更させる機械式フィンガとして構成されていてもよい。
【0027】
ガイド部材18は、アクチュエータ16の側方から半径方向外側に向けてほぼ水平に延びた後、水平部分の外側の端部から下方に向けて垂下するアーム部26と、このアーム部26の先端に設けられ、保持対象の物体2の周壁2aの上方端2bに複数個所で突き当たる複数の当接要素28を有している。ガイド部材18は、ピックアップしようとする物体2の姿勢を安定させようとする機能を有すると共に、後述するように摩擦体30を物体2の上端にかかる位置に位置決めする機能を有する。ガイド部材18は、物体2に対するアクチュエータ16及びフィンガ14側の姿勢や相対的な位置関係をガイドすると共に安定させるという機能をも有していてもよい。また、ガイド部材18は、積層した物体2の上から2番目以降の物体2の傾きや浮き上がりを修正して積層した物体2を鉛直方向に延びる積層した状態に修正することができる。
【0028】
複数のアーム部26の各々、及び複数の当接要素28の各々は、径方向に見て、複数のフィンガ14の各々と重ならない位置に配置されている。また、複数のアーム部26の各々、及び複数の当接要素28の各々は、上面視で、周方向にフィンガ14の各々の間に設けられている。アーム部26及び当接要素28は、周方向に等間隔に、回転対称性を有するように配置されている。
【0029】
当接要素28は、周方向に等間隔の3か所に配置されている。これにより、当接要素28が上方端2bと回転対称性のある位置の近傍で接することができ、物体2の位置、向き及び/又は傾きを安定させ調整しやすくできる。当接要素28は、幅細の板状に形成され、物体2の上方端2bの円弧に沿うような弧状に延びている。当接要素28の下面は平坦な板状であるため、当接要素28が上方端2bと接することにより物体2の位置、向き及び/又は傾きを安定させ調整しやすくできる。当接要素28の下面は、幅細の板状に形成されるが、円形の当接面等により形成されてもよい。
【0030】
図1に示すように、制御装置20は、アクチュエータ16、ロボットアーム12と電気的に接続されている。制御装置20は、アクチュエータ16及びロボットアーム12の制御を行うためのCPU、メモリ等を内蔵している。制御装置20は、CPU上で実行される制御プログラムに基づいて、これらの装置等に作動信号を送り、各装置等を制御する。
【0031】
制御装置20は、保持対象の物体2の上方側から、ハンド1を当該物体2に近づけていき、当該物体2の周壁2aの上方端にガイド部材18を突き当てる工程と、前記周壁2aの上方端にガイド部材18が突き当てられている状態で、前記複数のフィンガ14を、径方向外方へと互いから遠ざかるように拡開移動させ、前記周壁2aの内面に接触させ更に前記周壁2aを径方向に変形させ、当該変形によって当該物体2の当該周壁2aと当該物体2の下方に積層されていた物体2の周壁2aとの間に隙間を生成させる工程と、複数のフィンガ14が物体2の周壁2aを径方向に変形させている状態で、ハンド1を上方側に退避させることによって、前記物体2を当該物体2の下方に積層されていた物体2から離間させてピックアップする工程と、のそれぞれの工程を実行できるようなプログラムを備えている。また、制御装置20は、ハンド1の動作を実行するために必要なプログラムを備えている。
【0032】
次に、図1図6を参照して、摩擦体を説明する。
図1に示すように、ハンド1は、ロボットアーム12等の構造体に取付けられる。複数のフィンガ14の各々は、少なくとも径方向外方側の面において、保持対象の物体2の周壁2aの内面に対して静摩擦力を作用させる摩擦体30を有している。摩擦体30は、各フィンガ14の取付部14aの周面全体を覆うように形成されると共に粘弾性素材により形成された筒状部材である。摩擦体30は、樹脂系の粘弾性素材により形成された樹脂製の筒状部材となっている。
【0033】
摩擦体30は、筒状のシリコンボールにより形成される。シリコンボールの側部の球面が周壁2aの内面に接し、比較的大きな静摩擦力を作用させる。摩擦体30は、中空に形成され表面部分が柔軟性を有し、内側に潰れることができるため、物体2の周壁2aに沿って密着しやすく形成されている。摩擦体30は、筒状に限られず、球形状、外向きのパッド状、外向きの板状等であってもよい。図5に示すように、フィンガ14が閉状態であるとき、ガイド部材18が物体2に当接した状態で、摩擦体30の径方向外方側の面が、物体2の周壁2aより内側に位置している。また、3つの摩擦体30の径方向外方側の面を通る仮想線により示す仮想円弧Bは、上面視で当接要素28よりも内側に位置している。フィンガ14が開状態であるとき、摩擦体30の径方向外方側の面が、物体2の周壁2aに接する位置に位置している。また、3つの摩擦体30の径方向外方側の面に接する周壁2aは、上面視で当接要素28の下方に位置している。なお、摩擦体30が3つ又は4つである場合には、複数の摩擦体30が拡開するときに物体2の中心位置を一定程度修正できる。また、摩擦体30が3つ又は4つである場合には、複数の摩擦体30が拡開するときに摩擦体30が物体2に当たっていない部分の間隔が比較的広いため、1番上の1番目の物体2の変形により2番目の物体2との間の隙間を比較的形成しやすくできる。なお、摩擦体30は、例えばゴム系の粘弾性素材により形成されたゴム製の筒状部材であってもよい。さらに、摩擦体30は、他の粘弾性素材により形成された筒状部材であってもよい。
【0034】
摩擦体30の頂部は、ガイド部材18の当接要素28よりも上方に位置し、摩擦体30の下部は、ガイド部材18の当接要素28よりも下方に位置する。よって、ガイド部材18が上方端2bに突き当たるとき、摩擦体30は物体2の上端にかかる位置(側面視で摩擦体30の上端から下端までの間に上方端2bがある位置)に位置決めされる。なお、ガイド部材18が上方端2bに突き当たるとき、側面視で摩擦体30は物体2の上方端2bから周壁2aの高さの中央近傍までにかかるような位置及び大きさに形成される。
【0035】
次に、図1乃至図6により、上述した本発明の実施形態によるハンドの動作(作用)を説明する。
図1に示すように、例えば弁当容器である配置対象物10は上流側の盛り付け工程(図示せず)において配置対象物10内に麺類等の具材が盛り付けられた後(配置対象物10内に具材が盛り付けられていなくともよい)、コンベヤベルト8により保持システム4のハンド1の作業領域まで搬送される。制御装置20は、図示されていないカメラ等による画像等から配置対象物10の位置情報を取得及び認識する。
【0036】
制御装置20は、物体2、例えば上方側が開口した周壁を有する柔軟な容器、が複数個積層された状態から、当該物体2を1個ずつピックアップするため、ハンド1を複数個積層された状態の物体2の上に移動させる。制御装置20は、ハンド1を物体2に対して鉛直方向下方に降下させ、保持対象の物体2の上方側から、ハンド1を物体2に近づけていき、当該物体2の周壁2aの上方端2bにガイド部材18を突き当てる工程を実行する。このとき、フィンガ14は閉状態とされ、摩擦体30も閉状態とされている。制御装置20は、ハンド1を所定の高さ位置にある物体2の高さまで降下させる制御を行う。一方、物体2は、物体2の物体供給装置(図示せず)により所定の高さ位置に供給されるようになっている。物体供給装置は例えば透過式センサ(透過型センサ)等を利用して物体2を所定の高さ位置まで供給させる。よって、所定の高さまで降下したハンド1が、所定の高さ位置にある物体2に安定して突き当てられた状態とできる。
【0037】
よって、図3及び図4に示すように、ガイド部材18が物体2の周壁2aの上方端2bに突き当てられた状態で、ハンド1の下降が停止され、複数個積層された状態の物体2の少なくとも上から1番目や2番目の物体2の傾きや位置のずれ等が修正される。そして、ガイド部材18が物体2の周壁2aの上方端2bに当接した状態で、周壁2aの上方端2bから予め決められた高さまで摩擦体30が挿入された状態となる。このとき、摩擦体30は、周壁2aから離間された状態である。なお、いずれかの摩擦体30が周壁2aに接していてもよいが、少なくとも1つの摩擦体30は、周壁2aから離間された状態となっており、摩擦体30が物体2を持ち上げられる程度まで物体2を保持していない状態となっている。なお、ガイド部材18により、毎回安定して摩擦体30が物体2内の決められた高さに挿入でき、比較的安定して保持を行うことができる。
【0038】
制御装置20は、周壁2aの上方端2bにガイド部材18が突き当てられている状態で、複数のフィンガ14を、径方向外方へと互いから遠ざかるように拡開移動させる工程を実行する。例えば、複数の摩擦体30の外側面に沿う仮想の円弧が物体2の周壁2aよりも大きな径となるように複数のフィンガ14が拡開移動される。すると、図5及び図6等に示すように、摩擦体30が周壁2aの内面に接触させられる。3つの摩擦体30が周壁2aの内面に接触することにより、物体2は摩擦体30によって内側から保持される。より具体的には、複数のフィンガ14の拡開移動により、摩擦体30が周壁2aの内面に押し付けられ、この摩擦体30の押し付けられた力に対し摩擦体30と物体2との間に静摩擦力が生じ、この静摩擦力が物体2の自重よりも大きいため物体2が落下せずに空中で支持される。またこの状態では、摩擦体30が内側から突っ張るようにして物体2を支持できる。
【0039】
これにより、複数の摩擦体30が周壁2aを径方向に広げるように内側から外側に向けて作用し、摩擦体30が周壁2aを作用した部分を中心として径方向に変形させることとなり、当該変形によって容器状の物体2の当該周壁2aと容器状の当該物体2の下方に積層されていた容器状の物体2の周壁2aとの間に隙間を生成させる工程が実行される。このように、1番上の容器状の物体2の当該周壁2aとその一つ下の2番目に積層されていた容器状の物体2の周壁2aとの間に隙間が形成され、空気が流入される。1番目の物体2をゆがませることにより空気の流入経路が形成される。摩擦体30が上方端2bにかかる位置に配置され、摩擦体30が上方端2bを外側に押して変形させることによりさらに空気の流入経路となる隙間を形成しやすくできる。よって、このように空気の流入経路を形成して両方の周壁2aの間に負圧が生じることを抑制し、両方の周壁2aの間に負圧が生じてしまうことによって1番上の1番目の容器状の物体2と2番目の容器状の物体2とが一緒にピックアップされてしまうこと、又は2番目の容器状の物体2が浮き上げられてしまい傾いたり落ちたりすること、を抑制できる。また、ガイド部材18が上方端2bに突き当たった状態で、摩擦体30が周壁2aを径方向に広げるとき、摩擦体30は物体2の上方端2bを広げるので、1番上の1番目の容器状の物体2と2番目の容器状の物体2との間に上部の端部から空気がより入りやすくでき、両者が一緒にピックアップされてしまうこと等をより抑制できる。
【0040】
次いで、制御装置20は、複数のフィンガ14が摩擦体30により物体2の周壁2aを径方向に変形させている状態で、ハンド1を上方側に退避させることによって、物体2を物体2の下方に積層されていた物体2から離間させてピックアップする工程を実行させる。摩擦体30が物体2の周壁2aの内面に接した状態で、摩擦体30が1番上の物体2のみを保持して持ち上げることができる。また、2番目の容器状の物体2が1番目の容器状の物体2により負圧で上方や斜めに引かれて2番目の容器状の物体2が傾いたり浮き上がったりすること(支持棒9があったとしても物体2が傾く等の可能性がある)、複数個積層された状態の物体群(容器群)自体が傾いたり(支持棒9があったとしても物体群が傾く等の可能性がある)、移動したりすることも抑制できる。従って、次回以降にハンド1が物体2をピックアップすることを失敗することも抑制できる。なお、ハンド1は、積層されていた物体2をピックアップすることを説明しているが、ハンド1は、積層されていない状態の物体2をピックアップ、保持、移動等することもできる。ハンド1は、積層されていない状態の物体2を保持し、位置を変更したり、修正したりすることもできる。
【0041】
次いで、制御装置20は、摩擦体30が物体2を内側から保持している状態で、ハンド1を配置対象物10の上部に移動させ、物体2を配置対象物10の上部まで移動させる。このとき、物体2の上端は当接要素28に接した状態であり、物体2を比較的安定して移動させやすくできる。制御装置20は、カメラ等で認識した配置対象物10の位置等に基づいて物体2を配置対象物10上の所定の位置まで移動させる。制御装置20は、摩擦体30が物体2を保持している状態で、物体2を配置対象物10上に配置し、フィンガ14及び摩擦体30を閉状態に作動させる。このときハンド1はコンベヤベルト8と同期した速度で同方向に移動しながら配置動作を行うことができる。物体2が配置対象物10上に配置されると、制御装置20は、ハンド1を上昇させ、待機状態に戻る。
【0042】
上述した本発明の第1実施形態によるハンド1によれば、ガイド部材18が物体2と前記複数のフィンガ14との間の相対的な高さ関係を規定することができ、摩擦体30が物体2の周壁2aの内面に作用する位置を比較的安定して規定でき、アクチュエータ16が当該複数のフィンガ14を、径方向外方へと互いから遠ざかるように拡開移動させることにより、複数のフィンガ14の各々が有する摩擦体30が保持対象の物体2の周壁2aの内面に対して静摩擦力を作用させ、上方側が開口した周壁2aを有する物体2を保持できる。また、本実施形態の構成によれば、例えば、複数の上方側が開口した周壁2aを有する物体2が例えば互いに重ねられて配置されている状態から、上方側が開口した周壁2aを有する物体2を1つずつピックアップして保持できる。
【0043】
さらに、本実施形態のハンド1によれば、摩擦体30は、各フィンガ14の周面全体を覆うように形成されると共に粘弾性素材により形成された筒状部材であるので、摩擦体30の保持対象の物体2に作用する位置が保持対象の物体2のわずかな移動により変化される場合や摩擦体30の保持対象の物体2に作用する位置が保持対象の物体2自体の形状や大きさの変更により変化される場合にも、複数のフィンガ14の各々が有する摩擦体30が保持対象の物体2の周壁2aの内面に対して静摩擦力を作用させやすくでき、上方側が開口した周壁2aを有する物体2をより確実に保持できる。また、摩擦体30が、例えば、物体2の製造誤差による形状の違いや、物体2の形状のバリエーション等の形状の違いにも対応して物体2を保持しやすくできる。
【0044】
さらに、本実施形態のハンド1によれば、ガイド部材18は、保持対象の物体2の周壁2aの上方端に複数個所で突き当たる複数の当接要素28を有しているので、当接要素28が複数個所で物体2とフィンガ14との相対的な高さ関係を調整して、ガイド部材18が物体2と複数のフィンガ14との間の相対的な高さ関係をより安定して規定することができ、摩擦体30が物体2の周壁2aに接触する位置をより安定して規定できる。
【0045】
さらに、本実施形態のハンド1によれば、複数の当接要素28の各々は、径方向に見て、複数のフィンガ14の各々と重ならない位置に配置されているので、ガイド部材18とフィンガ14に取付けられた摩擦体30とが干渉しにくく、ガイド部材18が物体2と複数のフィンガ14との間の相対的な高さ関係を安定して規定しながらも、複数のフィンガ14の各々が有する摩擦体30が保持対象の物体2の周壁2aの内面に対して静摩擦力を作用させ、上方側が開口した周壁2aを有する物体2をより確実に保持できる。
【0046】
さらに、本実施形態のハンド1によれば、アクチュエータ16は、複数のフィンガ14を、当該複数のフィンガ14の回転対称性を維持したまま、径方向に移動させるように構成されている。これにより、複数のフィンガ14の各々が有する摩擦体30が、回転対称性を維持したまま、径方向に移動され、物体2の例えば環状の周壁2aの内面に対して回転対称性を有する位置で静摩擦力を作用させ、物体2をバランスよく保持しやすくでき、また例えば環状の周壁2aを有する物体2をより保持しやすくできる。
【0047】
さらに、本実施形態のハンド1によれば、隙間を生成させる工程により、周壁2aの上方端にガイド部材18が突き当てられている状態で、複数のフィンガ14を、径方向外方へと互いから遠ざかるように拡開移動させ、周壁2aの内面に接触させ更に周壁2aを径方向に変形させ、当該変形によって当該容器(物体2)の当該周壁2aと当該容器(物体2)の下方に積層されていた容器(物体2)の周壁2aとの間に隙間を生成させ、ピックアップする工程により、複数のフィンガ14が容器(物体2)の周壁2aを径方向に変形させている状態で、ハンド1を上方側に退避させることによって、容器(物体2)を当該容器(物体2)の下方に積層されていた容器(物体2)から離間させてピックアップする。これにより、上方側が開口した周壁2aを有する柔軟な容器(物体2)が複数個積層された状態から、当該周壁2aの内面に対する静摩擦力を用いて当該容器(物体2)を1個ずつピックアップすることができる。
【0048】
次に、図7乃至図9により、本発明の第2実施形態によるハンドを説明する。第2実施形態は、本発明によるハンドのガイド部材を異なる形状に形成した例である。図7は本発明の第2実施形態によるハンドの上面図であり、図8図7のハンドのガイド部材の2つに分かれるアーム部を側方側から見た側面図であり、図9図7のハンドのガイド部材の2つに分かれるアーム部を正面側から見た正面図である。第2実施形態によるハンドは、上述した第1実施形態によるハンドと構造がほぼ同じであるため、本発明の第2実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様な部分については参照符号を付して図示及び説明を省略する。
【0049】
第2実施形態のハンド101は保持対象となる物体2を保持する。本実施形態のハンド101は、物体2を保持する保持システム4に設けられる。
【0050】
ハンド101は、物体2を、当該周壁2aの内面に対する静摩擦力を用いて保持する。ハンド101は、物体2を、物体2が複数個積層された状態から物体2を1個ずつピックアップして保持し且つコンベヤベルト8上の配置対象物10上の特定の位置まで搬送する。
【0051】
ハンド101は、フィンガ14と、アクチュエータ16と、複数のフィンガ14に対して所定の相対的な高さ位置に設けられ、保持対象の物体2の周壁2aの上方端に突き当たることで、当該物体2と複数のフィンガ14との間の相対的な高さ関係を規定するガイド部材18と、複数のフィンガ14に対して所定の相対的な高さ位置に設けられ、保持対象の物体2の周壁2aの上方端に突き当たることで、当該物体2と複数のフィンガ14との間の相対的な高さ関係を規定するガイド部材118と、制御装置20と、備えている。
【0052】
ガイド部材18は、アクチュエータ16の側方から半径方向外側に向けて延びた後、外側の端部から下方に向けて垂下するアーム部26と、このアーム部26の先端に設けられ、保持対象の物体2の周壁2aの上方端2bに複数個所で突き当たる複数の当接要素28を有している。
【0053】
ガイド部材118は、アクチュエータ16の側方から半径方向外側に向けてほぼ水平に延びた後2つに分かれ、上面視でY字状に形成されて、これらの外側の端部から下方に向けて垂下するY字状のアーム部126と、このアーム部126の先端に設けられ、保持対象の物体2の周壁2aの上方端2bに複数個所で突き当たる当接要素128を有している。ガイド部材118は、ピックアップしようとする物体2の姿勢を安定させようとする機能を有すると共に、後述するように摩擦体30を物体2の上端にかかる位置に位置決めする機能を有する。ガイド部材118は、物体2に対するアクチュエータ16及びフィンガ14側の姿勢や相対的な位置関係をガイドすると共に安定させるという機能をも有していてもよい。また、ガイド部材118は、積層した物体2の上から2番目以降の物体2の傾きや浮き上がりを修正して積層した物体2を鉛直方向に延びる積層した状態に修正することができる。
【0054】
複数のアーム部26及びアーム部126の各々、及び複数の当接要素28及び当接要素128の各々は、径方向に見て、複数のフィンガ14の各々と重ならない位置に配置されている。また、複数のアーム部26及びアーム部126の各々、及び複数の当接要素28及び当接要素128の各々は、上面視で、周方向にフィンガ14の各々の間に設けられている。アーム部126及び当接要素128は、中心線に対して対称性を有するように配置されている。
【0055】
当接要素128のそれぞれは、上方端2b上の位置に対応するように配置され、上方端2bが複数の当接要素128や当接要素28と接するので、物体2の位置、向き及び/又は傾きを安定させ調整しやすくできる。当接要素28の下面は、幅細の板状に形成されるが、円形の当接面等により形成されてもよい。また、当接要素128の下面は、円形の当接面等により形成されるが、幅細等の板状に形成されてもよい。当接要素28及び当接要素128は、同一水平面上に配置され、すなわち同じ高さに位置している。よって、当接要素28及び当接要素128が物体2の上方端2bに突き当たるとき、物体2と前記複数のフィンガ14(摩擦体30)との間の相対的な高さ関係は、第1実施形態における物体2と前記複数のフィンガ14(摩擦体30)との間の相対的な高さ関係と同じとなるので説明を省略する。なお、本実施形態においては、ハンド101は、1つのガイド部材18と、2つのガイド部材118とを備えているが、例えば、ガイド部材18が省略され、3つ以上のガイド部材118が設けられてもよく、また例えば2つ以上のガイド部材18が設けられ、1つ以上のガイド部材118が設けられてもよい。
なお、本発明の第2実施形態によるハンド101の動作(作用)については、第1実施形態によるハンド1の動作(作用)と基本的に同じであるので説明を省略する。
【符号の説明】
【0056】
1 ハンド
2 物体
2a 周壁
2b 上方端
14 フィンガ
14a 周面
16 アクチュエータ
18 ガイド部材
28 当接要素
30 摩擦体
101 ハンド
118 ガイド部材
128 当接要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9