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特許7551538超電導電磁石装置及び超電導電磁石装置の冷却方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】超電導電磁石装置及び超電導電磁石装置の冷却方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/04 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
H01F6/04 ZAA
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021032355
(22)【出願日】2021-03-02
(65)【公開番号】P2022133593
(43)【公開日】2022-09-14
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 沙紀
(72)【発明者】
【氏名】高見 正平
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-093914(JP,A)
【文献】特開平07-045423(JP,A)
【文献】特開2016-049159(JP,A)
【文献】特開平04-079304(JP,A)
【文献】特開昭61-229306(JP,A)
【文献】特開平05-082333(JP,A)
【文献】特表2019-526320(JP,A)
【文献】特開平11-219814(JP,A)
【文献】特開2014-192182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 6/04、27/22、27/28
H10N 60/80-60/81
H05H 7/04
G01R 33/3815
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場を発生させる超電導コイルと、
前記超電導コイルを冷却する冷却機構と、
内部に前記超電導コイルを収容し外部からの熱侵入を防ぐ輻射シールドと、
前記輻射シールドを収容する、真空断熱のための真空容器とを具備し、
前記冷却機構は、
前記超電導コイルの周方向に沿って互いに間隔を空けて配列された複数の短冊状の周方向冷却シートを具備した周方向冷却部と、
前記超電導コイルの軸方向に沿って互いに間隔を空けて配列された複数の短冊状の軸方向冷却シートを具備した軸方向冷却部と、
を具備し
前記周方向冷却部は、前記軸方向冷却部より前記超電導コイルに近い位置に配設されている
ことを特徴とする超電導電磁石装置。
【請求項2】
磁場を発生させる超電導コイルと、
前記超電導コイルを冷却する冷却機構と、
内部に前記超電導コイルを収容し外部からの熱侵入を防ぐ輻射シールドと、
前記輻射シールドを収容する、真空断熱のための真空容器とを具備し、
前記冷却機構は、
前記超電導コイルの周方向に沿って互いに間隔を空けて配列された複数の短冊状の周方向冷却シートを具備した周方向冷却部と、
前記超電導コイルの軸方向に沿って互いに間隔を空けて配列された複数の短冊状の軸方向冷却シートを具備した軸方向冷却部と、
を具備し、
前記周方向冷却シートと前記軸方向冷却シートとの間に絶縁シートが配設されていることを特徴とする超電導電磁石装置。
【請求項3】
請求項2記載の超電導電磁石装置であって、
所定の軸方向位置に沿って配設された1又は複数の前記軸方向冷却シートと、前記周方向冷却シートとの間に前記絶縁シートが配設されていないことを特徴とする超電導電磁石装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項記載の超電導電磁石装置であって、
前記周方向冷却シートは、前記超電導コイルの周方向において複数に分割されていることを特徴とする超電導電磁石装置。
【請求項5】
請求項記載の超電導電磁石装置であって、
前記周方向冷却シートは、前記超電導コイルの極の部分で分割されていることを特徴とする超電導電磁石装置。
【請求項6】
請求項1乃至の何れか1項記載の超電導電磁石装置であって、
前記軸方向冷却シートは、前記超電導コイルの軸方向において複数に分割されていることを特徴とする超電導電磁石装置。
【請求項7】
請求項記載の超電導電磁石装置であって、
前記軸方向冷却シートは、前記超電導コイルの軸方向中央部にて分割されていることを特徴とする超電導電磁石装置。
【請求項8】
請求項1乃至の何れか1項記載の超電導電磁石装置であって、
前記周方向冷却部及び前記軸方向冷却部は、前記超電導コイルの外周側又は内周側に配設されていることを特徴とする超電導電磁石装置。
【請求項9】
請求項1乃至の何れか1項記載の超電導電磁石装置であって、
前記周方向冷却部の前記短冊状の冷却シート、及び、前記軸方向冷却部の前記短冊状の冷却シートの少なくとも一方には、部分的にスリットが設けられていることを特徴とする超電導電磁石装置。
【請求項10】
磁場を発生させる超電導コイルと、
前記超電導コイルを冷却する冷却機構と、
内部に前記超電導コイルを収容し外部からの熱侵入を防ぐ輻射シールドと、
前記輻射シールドを収容する、真空断熱のための真空容器と、
を具備した超電導電磁石装置の冷却方法であって、
前記超電導コイルの周方向に沿って互いに間隔を空けて配列された複数の短冊状の周方向冷却シートを具備した周方向冷却部と、
前記超電導コイルの軸方向に沿って互いに間隔を空けて配列された複数の短冊状の軸方向冷却シートを具備した軸方向冷却部と、
を具備し
前記周方向冷却部は、前記軸方向冷却部より前記超電導コイルに近い位置に配設されている前記冷却機構によって、前記超電導コイルを冷却することを特徴とする超電導電磁石装置の冷却方法。
【請求項11】
磁場を発生させる超電導コイルと、
前記超電導コイルを冷却する冷却機構と、
内部に前記超電導コイルを収容し外部からの熱侵入を防ぐ輻射シールドと、
前記輻射シールドを収容する、真空断熱のための真空容器と、
を具備した超電導電磁石装置の冷却方法であって、
前記超電導コイルの周方向に沿って互いに間隔を空けて配列された複数の短冊状の周方向冷却シートを具備した周方向冷却部と、
前記超電導コイルの軸方向に沿って互いに間隔を空けて配列された複数の短冊状の軸方向冷却シートを具備した軸方向冷却部と、
を具備し
前記周方向冷却シートと前記軸方向冷却シートとの間に絶縁シートが配設されている前記冷却機構によって、前記超電導コイルを冷却することを特徴とする超電導電磁石装置の冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超電導電磁石装置及び超電導電磁石装置の冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鞍型コイルを有する伝導冷却型の超電導電磁石装置等は、磁場を発生させる超電導コイルと、超電導コイルを冷却する冷却機構と、外部からの熱侵入を防ぐ輻射シールドと、真空断熱のための真空容器とを具備している。そして、超電導コイル外周等に配設され、超電導コイルを冷却するための冷却機構を構成する冷却シートとして、超電導コイルの軸上に沿う方向で幅の広い純アルミシートが施工されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-153733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の伝導冷却型超電導コイルでは、パルス電流を流したとき、コイルの鎖交磁束によって純アルミシートに渦電流が生じて発熱する場合がある。そして、この渦電流による発熱のため、その発熱量に応じて冷凍機台数を増やす必要が生じたり、発熱箇所が起因となってクエンチが発生する、といった課題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたもので、その目的は、超電導コイルの冷却のための冷却シートの渦電流による発熱を抑制して効率的に超電導コイルを冷却することのできる超電導電磁石装置及び超電導電磁石装置の冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の超電導電磁石装置は、磁場を発生させる超電導コイルと、前記超電導コイルを冷却する冷却機構と、内部に前記超電導コイルを収容し外部からの熱侵入を防ぐ輻射シールドと、前記輻射シールドを収容する、真空断熱のための真空容器とを具備し、前記冷却機構は、前記超電導コイルの周方向に沿って互いに間隔を空けて配列された複数の短冊状の周方向冷却シートを具備した周方向冷却部と、前記超電導コイルの軸方向に沿って互いに間隔を空けて配列された複数の短冊状の軸方向冷却シートを具備した軸方向冷却部と、を具備し、前記周方向冷却部は、前記軸方向冷却部より前記超電導コイルに近い位置に配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態により、超電導コイルの冷却のための冷却シートの渦電流による発熱を抑制して効率的に超電導コイルを冷却することのできる超電導電磁石装置及び超電導電磁石装置の冷却方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る超電導電磁石装置の構成を模式的に示す図。
図2】鞍型超電導コイルの超電導線の巻き形状を説明するための図。
図3】超電導コイルの軸方向の形状の例を模式的に示す図。
図4】超電導コイルの周方向の形状の例を模式的に示す図。
図5】超電導コイルの周方向の形状の例を模式的に示す図。
図6】第1実施形態の超電導コイルの周方向の冷却シートの構成を模式的に示す図。
図7】第1実施形態の超電導コイルの周方向の冷却シートの構成を模式的に示す図。
図8】第1実施形態の超電導コイルの軸方向の冷却シートの構成を模式的に示す図。
図9】第1実施形態の周方向及び軸方向の冷却シートの構成の例を模式的に示す図。
図10】周方向及び軸方向の冷却シートの構成の他の例を模式的に示す図。
図11】第1実施形態の冷却シートの概略構成を模式的に示す斜視図。
図12】冷却シートの樹枝状の接続状態の様子を模式的に示す図。
図13】湾曲した形状の超電導コイルの周方向の冷却シートの構成を模式的に示す図。
図14】第2実施形態の超電導コイルの構成を模式的に示す図。
図15】第2実施形態の超電導コイルの要部構成を模式的に示す図。
図16】第3実施形態の超電導コイルの構成を模式的に示す図。
図17】第3実施形態の超電導コイルの構成を模式的に示す図。
図18】第3実施形態の変形例の超電導コイルの構成を模式的に示す図。
図19】第3実施形態の変形例の超電導コイルの構成を模式的に示す図。
図20】第3実施形態の変形例の超電導コイルの構成を模式的に示す図。
図21】第4実施形態の変形例の超電導コイルの構成を模式的に示す図。
図22】第4実施形態の変形例の超電導コイルの構成を模式的に示す図。
図23】第4実施形態の変形例の超電導コイルの構成を模式的に示す図。
図24】第4実施形態の変形例の超電導コイルの構成を模式的に示す図。
図25】第4実施形態の変形例の超電導コイルの構成を模式的に示す図。
図26】第4実施形態の変形例の超電導コイルの構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1に示す様に、鞍型超電導コイルを有する伝導冷却型の超電導電磁石装置100は、磁場を発生させる超電導コイル101と、超電導コイル101を冷却する冷却機構102と、内部に超電導コイル101を収容し外部からの熱侵入を防ぐ輻射シールド103と、輻射シールド103を収容する、真空断熱のための真空容器104とを具備している。運用時には超電導コイル101にパルス電流を流して使用する。
【0011】
本実施形態の超電導コイル101は、鞍型コイルと呼ばれるもので、その超電導線の巻き形状は、図2に示すように、鞍型となっている。しかし、その全体の外形は、超電導線の他絶縁シート等を設けるため、略円筒状となっている。超電導コイル101としては、軸方向に沿った形状が直線状のものの他、例えば図3に示すように、軸方向に沿った形状が湾曲した形状のもの等、どのような形状のものも使用することができる。また、本実施形態に使用する超電導コイル101としては、例えば、図4に示すように、周方向の形状が円形のもの、図5に示すように、周方向の形状が楕円状のもの等、どのような形状のものも使用することができる。
【0012】
超電導コイル101には、冷却機構102を構成する純アルミシートからなる冷却シートが設けられている。この冷却シートは、図1に示す冷却機構102の一部を構成するものであり、真空容器104の外側に設けられた冷凍機と接続され、冷凍機からの冷熱を伝えて超電導コイル101を冷却する。図6に示すように、超電導コイル101の外周側には、超電導コイル101の周方向に沿って、複数の短冊状の周方向冷却シート110が、互いに周方向冷却シート間ギャップ(間隔)111を設けて配設されている。
【0013】
また、周方向冷却シート110は、超電導コイル101の全周に亘って配設されているのではなく、図7にも示すように、コイルの配設されていない極の部分において分割され、周方向冷却シート分割ギャップ(間隔)112を設けて配設されている。図7に示した例では、2極のコイルとなっており、図7中上側と下側の部分が、コイルの配設されていない極の部分となっており、この極の部分に周方向冷却シート分割ギャップ112を設けて周方向冷却シート110が設けられている。すなわち、周方向冷却シート110は、周方向に沿って周方向冷却シート分割ギャップ112により2分割された構成となっており、周方向に沿って周方向冷却シート間ギャップ111により複数に分割された構成となっている。
【0014】
上記した周方向冷却シート110の外周には、図8に示すように、超電導コイル101の軸方向に沿って、複数の短冊状の軸方向冷却シート120が、互いに軸方向冷却シート間ギャップ(間隔)121を設けて配設されている。また、軸方向冷却シート120は、超電導コイル101の軸方向中間部において、軸方向冷却シート分割ギャップ(間隔)122を設けて配設されている。すなわち、軸方向冷却シート120は、軸方向に沿って軸方向冷却シート分割ギャップ122により2分割された構成となっており、周方向に沿って軸方向冷却シート間ギャップ121により複数に分割された構成となっており、各軸方向冷却シート120は、電気的に接続されていない構成となっている。
【0015】
図9に示すように、周方向冷却シート110と軸方向冷却シート120との間には、絶縁シール、例えばカプトンテープ130が配設されており、このカプトンテープ130によって周方向冷却シート110と軸方向冷却シート120とが電気的に絶縁されている。また、周方向冷却シート110は樹脂製の接着剤等によってコイル側に貼り付けられており、その外周にカプトンテープ130を介して軸方向冷却シート120が樹脂製の接着剤等によって貼り付けられている。
【0016】
なお、図9は、周方向冷却シート110及び軸方向冷却シート120がコイルの外周側に設けられている場合について示しているが、図10に示すように、周方向冷却シート110及び軸方向冷却シート120をコイルの巻枠側、つまり、コイルの内周側に設けてもよい。
【0017】
この場合、巻枠側に軸方向冷却シート120が位置し、コイル側に周方向冷却シート110が位置するように配設することが好ましい。すなわち、コイルに近くなる位置側に周方向冷却シート110が位置するように配設することが好ましい。これによって、クエンチが発生した際に、周方向冷却シート110によってクエンチによる熱をコイル全体に迅速に効率良く伝達することができる。なお、図9図10では、カプトンテープ130を軸方向冷却シート120側に設けた構成となっている例を示しているが、カプトンテープ130を周方向冷却シート110側に設けてもよい。
【0018】
図11に、周方向冷却シート110及び軸方向冷却シート120の構成を斜視図により模式的に示す。なお、図11においては、分かり易くするため、周方向冷却シート110の数及び軸方向冷却シート120の数は、実際の数より少なく示している。各軸方向冷却シート120は、前述した冷凍機に接続される。
【0019】
また、本実施形態では、複数の軸方向冷却シート120のうちの、所定の軸方向位置に配置されたいずれか1本、本実施形態では軸方向において2分割されているので合計2本(周方向にも2分割させた場合には、軸方向も併せて合計4本)については、間にカプトンテープ130を介在させることなく、周方向冷却シート110に接着された構成となっている。かかる構成を採用することによって、周方向冷却シート110と軸方向冷却シート120との間の熱伝導性を良好にすることができる。この場合、軸方向冷却シート120を一本の茎、周方向冷却シート110を枝とした樹枝状の構成となる。このような軸方向冷却シート120と周方向冷却シート110との樹枝状の接続状態の様子を図12に模式的に示す。
【0020】
以上のように、本実施形態の超電導コイル101では、上記構成の周方向冷却シート110及び軸方向冷却シート120によって、冷却機構を構成することによって、コイルの鎖交磁束が貫く面積、渦電流の発生断面積を減らすことができる。
【0021】
すなわち、冷却シートが、軸方向と周方向に分割されており、また、冷却シートの長手方向の渦電流経路を断つために、軸方向冷却シート120についてはコイル軸方向中心部に、軸方向冷却シート分割ギャップ122が設けられ、周方向冷却シート110についてはコイルの極部に周方向冷却シート分割ギャップ112が設けられている。さらに、周方向冷却シート110と軸方向冷却シート120は、カプトンテープ130等で絶縁されており、これらの間で電気的な経路が形成されることを防止している。さらにまた、周方向冷却シート110と交差する軸方向冷却シート120のいずれか1本(軸方向冷却シート分割ギャップ122を設けて分割しているため、計2本)は、カプトンテープ130を介さずに直接接触させる(軸方向冷却シート120を一本の茎、周方向冷却シート110を枝とした樹枝状)構成として冷却効果を向上させている。
【0022】
上記冷却構造により、渦電流の発生断面積を従来に較べて大幅に低減することができ、渦電流による発熱によってクエンチが発生する可能性を低減させることができる。また、コイルを全体的に、かつ、ほぼ均一に冷却することが可能であり、一方、上記樹枝状構造により、コイルクエンチ時にクエンチによる熱をコイル全体に効率よく伝搬可能である。これによって、冷凍機台数の減少、コイル負荷の減少といった効果が得られる。
【0023】
なお、本実施形態では、鞍型コイルを例としているが、パルス型の直流や交流を流す超電導コイルであれば形状は問わない。例えば、レーストラック型、ソレノイド等+湾曲型、直線型等の何れでもよい。そして、超電導線材はNbTi、NbSn、高温超電導線材(Y系等)等を使用することができる。また、磁場発生領域の断面形状についても、本実施形態は円形を例としているが、楕円形でも四角でもよい。冷却シートは、高純度のアルミニウムシートを使用しているが、極低温領域で熱伝導率が高い材料であれば他の金属でもよい。なお、図13に湾曲した形状の超電導コイルに周方向冷却シートを貼着した状態の例を示す。
【0024】
冷却シートの施工箇所は、コイル外周面でもコイル内周面でもよく、複数のコイルを積層する場合には、積層間でもよい。また、これらの箇所のいずれか一箇所でも複数箇所でもよい。また、軸方向、周方向の冷却シートを分割するギャップ位置は、本実施形態では軸方向はコイル軸方向の中心部、周方向はコイル極部に設けているが、軸方向についてはコイル上であれば中心部以外、周方向については一周していなければ極部以外の位置にギャップを設けても良い。
【0025】
冷却シート間の絶縁方法は、本実形態では、軸方向冷却シート120に絶縁シートであるカプトンテープ130を施工しているが、軸方向冷却シート120には施工せず周方向冷却シート110にカプトンテープ130を施工しても、両方に施工してもよい。また、冷却シート間の絶縁は、カプトンシートを絶縁樹脂で貼り付けた絶縁でも、直接絶縁樹脂を塗布して絶縁してもよい。
【0026】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。基本構成は第1実施形態と同じであり、第1実施形態と対応する部分には同一の符号を付して重複した説明は省略する。図14は、第2実施形態の超電導コイル101aの構成を示すもので、図14に示すように、第2実施形態の超電導コイル101aについては、磁場発生領域の断面形状が楕円状の場合を例にして説明する。
【0027】
このコイルの外周側には、図14に示すように、短冊状の冷却シート(第2実施形態では、純アルミニウムシート)からなる周方向冷却シート110がコイルの周方向に沿って配設されている。周方向冷却シート110は、第1実施形態と同様に、周方向に沿って周方向冷却シート分割ギャップ112により2分割された構成となっており、周方向に沿って周方向冷却シート間ギャップ111(図14には図示せず。)により複数に分割された構成となっている。
【0028】
また、図14に示すように、周方向冷却シート110の外側には、同様に短冊状の冷却シート(第2実施形態では、純アルミニウムシート)からなる軸方向冷却シート120が軸方向に沿って配設されている。軸方向冷却シート120は、第1実施形態と同様に、軸方向に沿って軸方向冷却シート分割ギャップ122(図14には図示せず。)により2分割された構成となっており、軸方向に沿って軸方向冷却シート間ギャップ121により複数に分割された構成となっている。
【0029】
すなわち、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、冷却シートが、短冊状の複数の周方向冷却シート110及び軸方向冷却シート120から構成されている。そして、特にコイルの発熱量が多い部分において、図15に示すように、これらの短冊状の複数の周方向冷却シート110及び軸方向冷却シート120に、その長手方向に沿って複数のスリット113、スリット123が設けられた構成となっている。
【0030】
上記のように、第2実施形態では、超電導コイルを冷却する冷却シートが、第1実施形態と同様に、コイルの鎖交磁束が貫く面積、渦電流の発生断面積を減らす様に、軸方向と周方向とに分割されている。また、冷却シートの長手方向の渦電流経路を断つために、軸方向冷却シート120についてはコイル軸方向中心部に、軸方向冷却シート分割ギャップ122が設けられ、周方向冷却シート110についてはコイルの極部に周方向冷却シート分割ギャップ112が設けられている。さらに、第2実施形態では、これに加えて、コイルの発熱量が多い範囲に複数のスリット113、スリット123が設けられた構成となっている。
【0031】
スリット113、スリット123の施工方法としては、本実施形態ではレーザ切断を用いているが、これに限らず、ワイヤーカット切断でもよく、手動切断であってもよい。
【0032】
なお、本実施形態では、鞍型コイルを例としているが、パルス型の直流や交流を流す超電導コイルであれば形状は問わない。例えば、レーストラック型、ソレノイド等+湾曲型、直線型等の何れでもよい。また、磁場発生領域の断面形状についても、本実施形態は楕円形を例としているが、円形でも四角でもよい。冷却シートは、高純度のアルミニウムシートを使用しているが、極低温領域で熱伝導率が高い材料であれば他の金属、例えば高純度の銅、インジウムでもよい。
【0033】
冷却シートの施工箇所は、コイル外周面でもコイル内周面でもよく、複数のコイルを積層する場合には、積層間でもよい。また、これらの箇所のいずれか一箇所でも複数箇所でもよい。また、軸方向、周方向の冷却シートを分割するギャップ位置は、本実施形態では軸方向はコイル軸方向の中心部、周方向はコイル極部に設けているが、軸方向についてはコイル上であれば中心部以外、周方向については一周していなければ極部以外の位置にギャップを設けても良い。その他についても、第1実施形態と同様である。
【0034】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。基本構成は第1実施形態と同じであり、第1実施形態と対応する部分には同一の符号を付して重複した説明は省略する。図16図17は、第3実施形態の超電導コイル101bの構成を示すもので、これらの図に示すように、第3実施形態の超電導コイル101bについては、所謂パンケーキコイルの場合を例にして説明する。パンケーキコイルは、例えばテープ状の線材を巻回して構成されている。
【0035】
このコイルの外周側には、短冊状の冷却シート(第3実施形態では、純アルミニウムシート)からなる周方向冷却シート110がコイルの周方向に沿って配設されている。周方向冷却シート110は、周方向に沿って周方向冷却シート分割ギャップ112を少なくとも1つ有する構成となっており、周方向に沿って周方向冷却シート間ギャップ111により複数に分割された構成となっている。
【0036】
また、周方向冷却シート110の外側には、同様に短冊状の冷却シート(第3実施形態では、純アルミニウムシート)からなる軸方向冷却シート120が軸方向に沿って配設されている。軸方向冷却シート120は、軸方向に沿って軸方向冷却シート間ギャップ121により複数に分割された構成となっている。なお、図16では、一部の軸方向冷却シート120の図示を省略してあるが、軸方向冷却シート120は、全周に亘って設けられている。図17に示すように、軸方向冷却シート120は、超電導コイル101bの軸方向端部の両面に対しても設けられている。軸方向冷却シート120は、冷却機構に接続されている。
【0037】
すなわち、第3実施形態では、第1実施形態と同様に、冷却シートが、短冊状の複数の周方向冷却シート110及び軸方向冷却シート120から構成されている。
【0038】
上記のように、第3実施形態では、超電導コイルを冷却する冷却シートが、第1実施形態と同様に、コイルの鎖交磁束が貫く面積、渦電流の発生断面積を減らす様に、軸方向と周方向とに分割されている。このように、本発明は、パンケーキコイルについても適用することができる。
【0039】
図18,19,20は、第3実施形態の変形例の構成を示す図である。図18は、パンケーキコイルを複数積層した場合に構成の例を示している。図19は、軸方向冷却シート120をパンケーキコイルの内側部分にも設けた構成例を示している。図20は、軸方向冷却シート120に加えて周方向冷却シート110をパンケーキコイルの内側部分にも設けた構成例を示している。
【0040】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。基本構成は第1実施形態と同じであり、第1実施形態と対応する部分には同一の符号を付して重複した説明は省略する。図21図22は、第4実施形態の超電導コイル101cの構成を示すもので、これらの図に示すように、第4実施形態の超電導コイル101cについては、所謂ソレノイドコイルの場合を例にして説明する。
【0041】
このコイルの外周側には、短冊状の冷却シート(第4実施形態では、純アルミニウムシート)からなる周方向冷却シート110がコイルの周方向に沿って配設されている。周方向冷却シート110は、周方向に沿って周方向冷却シート分割ギャップ112を少なくとも1つ有する構成となっており、周方向に沿って周方向冷却シート間ギャップ111により複数に分割された構成となっている。
【0042】
また、周方向冷却シート110の内側には、同様に短冊状の冷却シート(第4実施形態では、純アルミニウムシート)からなる軸方向冷却シート120が軸方向に沿って配設されている。軸方向冷却シート120は、軸方向に沿って軸方向冷却シート間ギャップ121により複数に分割された構成となっている。軸方向冷却シート120は、冷却機構に接続されている。なお、周方向冷却シート110及び軸方向冷却シート120は、超電導コイル101cの内周側に設けてもよく、外周側と内周側の両方に設けてもよい。
【0043】
すなわち、第4実施形態では、第1実施形態と同様に、冷却シートが、短冊状の複数の周方向冷却シート110及び軸方向冷却シート120から構成されている。
【0044】
上記のように、第4実施形態では、超電導コイルを冷却する冷却シートが、第1実施形態と同様に、コイルの鎖交磁束が貫く面積、渦電流の発生断面積を減らす様に、軸方向と周方向とに分割されている。また、周方向冷却シート110については周方向冷却シート分割ギャップ112が設けられている。このように、本発明は、ソレノイドコイルについても適用することができる。
【0045】
図23,24,25,26は、第4実施形態の変形例の構成を示す図である。図23は、ソレノイドコイルを内側と外側の2重に配置した場合の構成例を示している。この場合、3重以上などさらに多重にソレノイドコイルを配置してもよい。図24は、ソレノイドコイルを複数積層した場合の構成例を示している。図25は、周方向冷却シート110及び軸方向冷却シート120をソレノイドコイルの内側部分にも設けた構成例を示している。図26は、軸方向冷却シート120をソレノイドコイルの軸方向端部の両側面にも設けた構成例を示している。
【0046】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
100……超電導電磁石装置、101,101a,101b,101c……超電導コイル、102……冷却機構、103……輻射シールド、104……真空容器、110……周方向冷却シート、111……周方向冷却シート間ギャップ、112……周方向冷却シート分割ギャップ、113……スリット、120……軸方向冷却シート、121……軸方向冷却シート間ギャップ、122……軸方向冷却シート分割ギャップ、123……スリット、130……カプトンテープ。
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