(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】粉粒体成膜システム
(51)【国際特許分類】
C23C 14/50 20060101AFI20240909BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20240909BHJP
B65G 27/02 20060101ALI20240909BHJP
B05C 9/06 20060101ALI20240909BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
C23C14/50 K
C23C16/44 F
B65G27/02
B05C9/06
B05C13/02
(21)【出願番号】P 2021034195
(22)【出願日】2021-03-04
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】碇 賀充
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-508544(JP,A)
【文献】特開2013-052344(JP,A)
【文献】特開2020-121829(JP,A)
【文献】特表2020-532658(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0236575(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
C23C 16/00-16/56
B65G 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体を収容することが可能な容器であって当該容器の内周に沿って延びる搬送路を有する容器と、
前記容器内において粉粒体の表面に成膜材料を成膜することが可能な成膜装置と、
前記搬送路から前記容器の外に延びる搬出路と、
前記容器内の粉粒体が前記搬送路に沿って前記搬出路に向かって搬送されるとともに前記搬出路に搬送された粉粒体が前記搬出路に沿って前記容器の外に搬出されるように前記容器を振動させる振動発生装置と、を備え
、
前記容器は、粉粒体が配置されることが可能な底面を有し、
前記搬送路に沿って搬送される粉粒体を前記搬出路に案内するための位置である搬出位置と、前記搬送路に沿って搬送される粉粒体が前記底面に向かって落下するように当該粉粒体を案内するための位置である循環位置と、の間で切り替わることが可能な搬送方向切替部材をさらに備える粉粒体成膜システム。
【請求項2】
前記搬送路は、前記容器の前記内周に沿って前記底面から螺旋状に上方に延びる螺旋搬送路である、請求項1に記載の粉粒体成膜システム。
【請求項3】
前記成膜装置は、前記螺旋搬送路上の粉粒体の表面に前記成膜材料を成膜することが可能なように構成される、請求項2に記載の粉粒体成膜システム。
【請求項4】
前記搬出路は、前記螺旋搬送路の先端に対応する位置において前記容器に接続されており、
前記搬出路が前記螺旋搬送路の前記先端から前記容器の外に延びる方向は、前記先端における当該螺旋搬送路の向きに沿った方向である、請求項2
または3に記載の粉粒体成膜システム。
【請求項5】
前記搬出路は、前記容器の外に搬出された粉粒体を重力を利用して前記搬出路に沿って前進させるために下方に傾斜する部分を有する、請求項1~
4の何れか1項に記載の粉粒体成膜システム。
【請求項6】
前記容器は第1の容器であり、前記成膜装置は第1の成膜装置であり、前記成膜材料は第1の成膜材料であり、
前記粉粒体成膜システムは、
粉粒体を収容することが可能な第2の容器であって前記搬出路に沿って前記第1の容器の外に搬出された粉粒体が前記第2の容器内に搬入されることが可能なように前記搬出路を介して前記第1の容器と連結された第2の容器と、
前記第2の容器内に搬入された粉粒体の表面に第2の成膜材料を成膜することが可能な第2の成膜装置と、をさらに備える、請求項1~
5の何れか1項に記載の粉粒体成膜システム。
【請求項7】
前記搬送路は第1の搬送路であり、前記搬出路は第1の搬出路であり、前記振動発生装置は第1の振動発生装置であり、
前記第2の容器は、当該第2の容器の内周に沿って延びる第2の搬送路を有し、
前記粉粒体成膜システムは、
前記第2の搬送路から前記第2の容器の外に延びる第2の搬出路と、
前記第2の容器内の粉粒体が前記第2の搬送路に沿って前記第2の搬出路に向かって搬送されるとともに前記第2の搬出路に搬送された粉粒体が前記第2の搬出路に沿って前記第2の容器の外に搬出されるように前記第2の容器を振動させる第2の振動発生装置と、
をさらに備える、請求項
6に記載の粉粒体成膜システム。
【請求項8】
前記粉粒体成膜システムは、前記第1の容器、前記第1の搬出路、前記第2の容器及び前記第2の搬出路を収容する真空チャンバユニットをさらに備える、請求項
7に記載の粉粒体成膜システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉粒体の表面に成膜処理を施す粉粒体成膜システムに関する。
【背景技術】
【0002】
粉粒体の表面に成膜処理を施す技術として、例えば特許文献1は、粒子材料の処理のための方法及び装置を開示している。この装置は、側壁で画定される空洞を有する、回転可能な縦型の原子層堆積(ALD)カートリッジと、前記カートリッジを上から下まで前駆体蒸気が流れることを可能にすべく、前記カートリッジの中央部に設けられる縦型の通路であって、前記カートリッジ内を実質的に上から下まで縦方向に伸びる通路と、前記空洞内において、前記縦方向の通路から前記側壁へと拡がるように設けられる螺旋状の領域と、を備え、ALD処理される粒子材料を前記カートリッジ内で回転によって上方に移動させると共に、ALD処理の最中に前記粒子材料を循環させるべく、前記縦方向の通路に沿って前記粒子材料を下方に移動させるように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、容器内で成膜処理された粉粒体を次工程に送るためには、容器から粉粒体を取り出す必要がある。しかし、特許文献1の装置では、容器内において粒子材料を搬送するための搬送路として前記螺旋状の領域が形成されているため、ALD処理された粒子材料を容器の外に効率よく出すことが難しい。
【0005】
具体的には、容器内において粉粒体を搬送するための搬送路が当該容器の内周に沿って延びるように形成されている場合、当該搬送路は、容器の内側面から径方向の内側に張り出すような張出部分を形成したり、容器内に段差を形成したりする。従って、搬送路は、容器内において粉粒体の移動の邪魔になることがあり、粉粒体が容器内に滞留する原因となる。従って、容器の内周に沿って延びる搬送路が容器内に形成されている場合には、成膜処理された粉粒体を容器の外に効率よく出すことが難しい。
【0006】
本開示は、上記のような問題を踏まえてなされたものであり、粉粒体を搬送するための搬送路が容器の内周に沿って延びるように形成されている場合であっても、容器内で成膜処理された粉粒体を容器の外に効率よく出すことが可能な粉粒体成膜システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
提供される粉粒体成膜システムは、粉粒体を収容することが可能な容器であって当該容器の内周に沿って延びる搬送路を有する容器と、前記容器内において粉粒体の表面に成膜材料を成膜することが可能な成膜装置と、前記搬送路から前記容器の外に延びる搬出路と、前記容器内の粉粒体が前記搬送路に沿って前記搬出路に向かって搬送されるとともに前記搬出路に搬送された粉粒体が前記搬出路に沿って前記容器の外に搬出されるように前記容器を振動させる振動発生装置と、を備える。
【0008】
この粉粒体成膜システムでは、搬出路は、当該搬送路から容器の外に延びており、振動発生装置は、容器内の粉粒体が搬送路に沿って搬出路に向かって搬送されるとともに搬出路に搬送された粉粒体が搬出路に沿って容器の外に搬出されるように容器を振動させる。従って、容器の内周に沿って延びる搬送路が容器内に形成されている場合であっても、容器内において成膜処理された粉粒体は、振動発生装置の振動によって搬送路に沿って搬出路まで搬送され、さらに、搬出路に沿って効率よく容器の外に搬出される。
【0009】
前記粉粒体成膜システムにおいて、前記容器は、粉粒体が配置されることが可能な底面を有し、前記搬送路は、前記容器の前記内周に沿って前記底面から螺旋状に上方に延びる螺旋搬送路であることが好ましい。この構成では、振動発生装置は、容器を振動させることにより、容器の底面に配置された粉粒体を螺旋搬送路に沿って上方に搬送することができる。
【0010】
この場合、前記成膜装置は、前記螺旋搬送路上の粉粒体の表面に前記成膜材料を成膜することが可能なように構成されることが好ましい。この構成では、螺旋搬送路上の粉粒体は、振動発生装置による振動によって撹拌されながら螺旋搬送路に沿って上方に搬送され、螺旋搬送路上で成膜される。
【0011】
前記粉粒体成膜システムは、前記搬送路に沿って搬送される粉粒体を前記搬出路に案内するための位置である搬出位置と、前記搬送路に沿って搬送される粉粒体が前記底面に向かって落下するように当該粉粒体を案内するための位置である循環位置と、の間で切り替わることが可能な搬送方向切替部材をさらに備えることが好ましい。この構成では、搬送方向切替部材が循環位置に配置されているときには、容器の底面上に配置されている粉粒体は、前記振動発生装置の振動によって螺旋搬送路に沿って上方に搬送され、搬送方向切替部材に到達すると、当該搬送方向切替部材によって案内されて底面に向かって落下する。従って、搬送方向切替部材が循環位置に配置されているときには、粉粒体成膜システムは、底面、螺旋搬送路、搬送方向切替部材及び底面の順に連続する搬送ルートを粉粒体が複数回循環するように粉粒体を移動させることができる。このことは、例えば、容器内において成膜装置が粉粒体の表面に成膜材料を成膜するのに必要な時間(成膜時間)が経過するまで、粉粒体を容器内において循環させることを可能にし、これにより、粉粒体の表面に成膜材料を確実に成膜することができる。一方、前記成膜時間が経過すると、搬送方向切替部材は搬出位置に切り換えられる。搬送方向切替部材が搬出位置に配置されているときには、粉粒体成膜システムは、成膜処理されて螺旋搬送路を上方する粉粒体を搬出路を通じて容器の外に搬出することができる。
【0012】
前記粉粒体成膜システムにおいて、前記搬出路は、前記螺旋搬送路の先端に対応する位置において前記容器に接続されており、前記搬出路が前記螺旋搬送路の前記先端から前記容器の外に延びる方向は、前記先端における当該螺旋搬送路の向きに沿った方向であることが好ましい。この構成では、螺旋搬送路の先端付近にある粉粒体に対して振動発生装置が与える力、すなわち、螺旋搬送路の先端における当該螺旋搬送路の向きに沿った方向に当該粉粒体に対して与えられる力を利用して、螺旋搬送路の先端付近にある粉粒体を搬出路に送り出し、搬出路に沿って容器の外に搬出することができる。
【0013】
前記粉粒体成膜システムにおいて、前記搬出路は、前記容器の外に搬出された粉粒体を重力を利用して前記搬出路に沿って前進させるために下方に傾斜する部分を有することが好ましい。この構成では、搬送路から搬出路に送り出された粉粒体を重力を利用して搬出路に沿って効果的に前進させることができる。
【0014】
前記粉粒体成膜システムにおいて、前記容器は第1の容器であり、前記成膜装置は第1の成膜装置であり、前記成膜材料は第1の成膜材料であり、前記粉粒体成膜システムは、粉粒体を収容することが可能な第2の容器であって前記搬出路に沿って前記第1の容器の外に搬出された粉粒体が前記第2の容器内に搬入されることが可能なように前記搬出路を介して前記第1の容器と連結された第2の容器と、前記第2の容器内に搬入された粉粒体の表面に第2の成膜材料を成膜することが可能な第2の成膜装置と、をさらに備えることが好ましい。この構成では、第1の容器内において第1の成膜材料が成膜処理された粉粒体を第2の容器に供給し、この第2の容器において当該粉粒体の表面にさらに第2の成膜材料を成膜処理することができる。第1の成膜材料と第2の成膜材料は同じであってもよく、異なっていてもよい。第1の成膜材料と第2の成膜材料が異なる場合には、粉粒体の表面に複数の異なる膜を積層することができる。
【0015】
前記粉粒体成膜システムにおいて、前記搬送路は第1の搬送路であり、前記搬出路は第1の搬出路であり、前記振動発生装置は第1の振動発生装置であり、前記第2の容器は、当該第2の容器の内周に沿って延びる第2の搬送路を有し、前記粉粒体成膜システムは、前記第2の搬送路から前記第2の容器の外に延びる第2の搬出路と、前記第2の容器内の粉粒体が前記第2の搬送路に沿って前記第2の搬出路に向かって搬送されるとともに前記第2の搬出路に搬送された粉粒体が前記第2の搬出路に沿って前記第2の容器の外に搬出されるように前記第2の容器を振動させる第2の振動発生装置と、をさらに備えることが好ましい。この構成では、第2の容器の内周に沿って延びる第2の搬送路が第2の容器内に形成されている場合であっても、第2の容器内において成膜処理された粉粒体は、第2の振動発生装置の振動によって第2の搬出路に沿って効率よく第2の容器の外に搬出される。
【0016】
前記粉粒体成膜システムは、前記第1の容器、前記第1の搬出路、前記第2の容器及び前記第2の搬出路を収容する真空チャンバユニットをさらに備えることが好ましい。この構成では、第1の容器、第1の搬出路、第2の容器及び第2の搬出路が真空チャンバユニット内に収容されているので、真空雰囲気下において粉粒体を第1の容器、第1の搬出路、第2の容器及び第2の搬出路の順に搬送することができる。これにより、真空雰囲気下において粉粒体に第1の成膜材料及び第2の成膜材料をこの順に成膜し、成膜された粉粒体を第2の搬出路に沿って第2の容器の外に搬出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、搬送路が容器の内周に沿って延びるように形成されている場合であっても、容器内で成膜処理された粉粒体を容器の外に効率よく出すことが可能な粉粒体成膜システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る粉粒体成膜システムを示す側面図であり、容器及び真空チャンバユニットを断面図で描いたものである。
【
図3】前記粉粒体成膜システムの容器、搬出路、内側案内路及び搬送方向切替部材を示す斜視図である。
【
図4】前記粉粒体成膜システムの容器、搬出路、内側案内路及び搬送方向切替部材を示す概略の平面図である。
【
図5】前記粉粒体成膜システムの容器、搬出路、内側案内路及び搬送方向切替部材を示す概略の平面図である。
【
図6】前記粉粒体成膜システムの容器及び成膜装置の一例を示す断面図である。
【
図7】前記粉粒体成膜システムによって成膜処理された粉粒体の一例を示す断面図である。
【
図8】前記実施形態の変形例1に係る粉粒体成膜システムを示す平面図であり、真空チャンバユニットを断面図で描いたものである。
【
図9】前記実施形態の変形例1に係る粉粒体成膜システムを示す側面図である。
【
図10】前記実施形態の変形例2に係る粉粒体成膜システムを示す概略の平面図である。
【
図11】前記実施形態の変形例2に係る粉粒体成膜システムを示す概略の平面図である。
【
図12】前記実施形態の変形例3に係る粉粒体成膜システムにおける容器及び成膜装置を示す断面図である。
【
図13】前記実施形態の変形例4に係る粉粒体成膜システムにおける容器及び成膜装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態に係る粉粒体成膜システムについて説明する。本実施形態に係る粉粒体成膜システムは、例えば、PVD(物理蒸着)、CVD(化学蒸着)などの成膜方法により粉粒体の表面に膜を形成するための装置である。具体的には、PVDとしては、スパッタリング、アークイオンプレーティングなどを例示できる。CVDとしては、プラズマCVD、ALD(原子層堆積)などを例示できる。
【0020】
図1は、本実施形態に係る粉粒体成膜システム100を示す側面図であり、容器及び真空チャンバユニットを断面図で描いたものである。
図2は、
図1のII-II線における断面図である。
図3は、粉粒体成膜システム100の容器、搬出路、内側案内路及び搬送方向切替部材を示す斜視図である。
【0021】
本実施形態に係る粉粒体成膜システム100は、スパッタリングにより粉粒体の表面に成膜処理を施す装置である。
【0022】
図1~
図3に示すように、本実施形態に係る粉粒体成膜システム100は、供給機1と、複数の粉粒体成膜機2と、回収機3と、真空チャンバユニット4と、を備える。
【0023】
供給機1は、粉粒体成膜機2に粉粒体を供給することが可能なように構成される。供給機1は、振動発生装置1A(振動駆動装置)と、ホッパー1Bと、粉粒体供給路1C(搬送トラフ)と、を含む。ホッパー1Bは、粉粒体を一時的に貯留することが可能な容器を含み、必要に応じて下部の出口を開いて粉粒体を粉粒体供給路1Cに供給することが可能なように構成される。振動発生装置1A及び粉粒体供給路1Cは、直動フィーダーを構成する。粉粒体供給路1Cは、振動発生装置1Aに接続された基端部と、複数の粉粒体成膜機2のうちの一つ(最上流に位置する粉粒体成膜機2)に接続された先端部と、ホッパー1Bの真下に位置する中間部と、を有する。粉粒体供給路1Cは、基端部から先端部まで直線状に延びている。振動発生装置1Aは、粉粒体供給路1C上の粉粒体が当該粉粒体供給路1Cに沿って粉粒体成膜機2に供給されるように粉粒体供給路1Cを振動させる。
【0024】
本実施形態では、前記複数の粉粒体成膜機2は、第1の粉粒体成膜機2と、第2の粉粒体成膜機2と、を含む。これらの粉粒体成膜機2は、互いに連結されている。第1の粉粒体成膜機2は、供給機1の粉粒体供給路1Cから供給された粉粒体の表面に第1の成膜材料を成膜することができ、成膜された粉粒体を第2の粉粒体成膜機2に搬送することが可能なように構成される。第2の粉粒体成膜機2は、第1の粉粒体成膜機2から供給された粉粒体の表面に第2の成膜材料を成膜することができ、成膜された粉粒体を回収機3に搬送することが可能なように構成される。従って、粉粒体成膜システム100は、
図7に示すように、粉粒体Fの表面に第1の成膜材料による表面処理Aと、第2の成膜材料による表面処理Bと、をこの順に行うことができる。
【0025】
本実施形態では、粉粒体成膜システム100は、2つの粉粒体成膜機2を有するが、後述する
図10及び
図11に示すように3つ以上の粉粒体成膜機2が連結されていてもよい。このように粉粒体成膜システム100は、粉粒体成膜機2の台数を自由に増減させることができるので、研究開発の段階から粉粒体製品の量産まで用途に応じて粉粒体成膜機2を増設することができる。また、複数の粉粒体成膜機2のそれぞれにおいて粉粒体への成膜処理を個別に行うことができるので、例えば、粉粒体製品の量産時において、複数の粉粒体成膜機2の何れかの運転を局所的に止めることができる。
【0026】
第1の成膜材料及び第2の成膜材料は、互いに異なる材料であってもよく、同じ材料であってもよい。第1の成膜材料及び第2の成膜材料のそれぞれとしては、スパッタリングによって成膜可能な種々の材料を用いることができる。
【0027】
本実施形態では、第1の粉粒体成膜機2と第2の粉粒体成膜機2は、互いに同じ構造を有するが、互いに異なる構造を有していてもよい。第1の粉粒体成膜機2は、容器10(第1の容器)と、搬出路24(第1の搬出路)と、内側案内路27(第1の内側案内路)と、振動発生装置30(第1の振動発生装置)と、搬送方向切替部材35(第1の搬送方向切替部材)と、成膜装置(第1の成膜装置)と、これらを支持する支持台90と、を備える。同様に、第2の粉粒体成膜機2は、容器10(第2の容器)と、搬出路24(第2の搬出路)と、内側案内路27(第2の内側案内路)と、振動発生装置30(第2の振動発生装置)と、搬送方向切替部材35(第2の搬送方向切替部材)と、成膜装置(第2の成膜装置)と、これらを支持する支持台90と、を備える。
【0028】
容器10は、底部と側壁部とを有する円筒形状を有し、粉粒体を収容することが可能である。容器10は、上向きに開放された形状を有する。容器10は、底部の上面である底面13と、側壁部の内側の面である内側面14と、を有する。
【0029】
底面13は、粉粒体F(
図6参照)が配置されることが可能な面である。具体的には、第1の粉粒体成膜機2における容器10の前記側壁部には、供給機1の粉粒体供給路1Cが接続されており、この粉粒体供給路1Cから供給された粉粒体の少なくとも一部は、粉粒体供給路1Cの先端から容器10内を落下して容器10の底面13に配置される。第2の粉粒体成膜機2における容器10の前記側壁部には、第1の粉粒体成膜機2の搬出路24が接続されており、この搬出路24から供給された粉粒体の少なくとも一部は、搬出路24の先端から容器10内を落下して容器10の底面13に配置される。
【0030】
本実施形態では、底面13は傾斜面を含む。この傾斜面は、底面13の中央部(円筒形状の容器10の中心軸Aを含む部分)から容器10の径方向の外側に向かって下方に傾斜する。当該傾斜面は、底面13において中央部から底面13の外周部まで連続して形成されている。なお、容器10の底面13は、傾斜面を含まない平面によって構成されていてもよい。
【0031】
容器10内には、粉粒体落下空間Sが形成されている(
図3及び
図6参照)。この粉粒体落下空間Sは、成膜処理が行われるときに、容器10内において底面13に向けて粉粒体Fを落下させるための空間であり、底面13から上方に連続する空間である。粉粒体落下空間Sの詳細については後述する。
【0032】
内側面14は、平面視で円形状を有し、底面13の外周部から上方に起立する面である。
【0033】
容器10は、搬送路21をさらに有する。搬送路21は、容器10の内周に沿って延びており、粉粒体を搬送するためのものである。具体的には、
図3及び
図6に示す本実施形態では、第1の粉粒体成膜機2における搬送路21(第1の搬送路)及び第2の粉粒体成膜機2における搬送路21(第2の搬送路)のそれぞれは、容器10の内周に沿って底面13から螺旋状に上方に延びる螺旋搬送路21である。螺旋搬送路21は、容器10の内側面14から容器10の径方向の内側に張り出すように設けられ、内側面14に沿って底面13から螺旋状に上方に延びている。螺旋搬送路21は、粉粒体落下空間S以外の領域に配置され、粉粒体Fが搬送される経路である。
【0034】
螺旋搬送路21の基端(下端)は、底面13の外周部に隣接する位置に配置され、螺旋搬送路21の先端(螺旋搬送路21における搬送方向下流側の端)は、底面13よりも上方の内側面14に隣接する位置に配置されている。具体的には、螺旋搬送路21の先端は、容器10の上部(容器10の上端付近)において内側面14に隣接する位置に設けられている。螺旋搬送路21は、粉粒体Fが配置される上面を有する。螺旋搬送路21の上面の外縁(径方向外側の縁)は、容器10の内側面14に接続されている。螺旋搬送路21は、その基端から先端に向かうにつれて位置が高くなるような勾配を有する。
【0035】
内側案内路27は、螺旋搬送路21の先端又はその近傍まで搬送された粉粒体を螺旋の内側の領域にさらに案内するためのものである。内側案内路27は、平面視で螺旋搬送路21よりも内側の領域に向かって螺旋搬送路21の先端又はその近傍から延びている。内側案内路27は、粉粒体Fが配置される上面と、この上面の一方のサイド(外周側)に位置する縁から上方に起立する側面と、を有する。内側案内路27は、内側案内路27の先端から落下する粉粒体Fの少なくとも一部の落下点が底面13の中央部となるように配置されている。具体的には、
図4に示すように、内側案内路27の先端は、平面視で容器10の中心軸Aに近い位置にある。内側案内路27は、平面視で円弧状に湾曲した形状を有する。
【0036】
搬出路24は、螺旋搬送路21の先端まで搬送された粉粒体を容器10の外に搬出するためのものである。搬出路24は、基端部24Aと、中間部24Bと、先端部24Cと、を含む。搬出路24の基端部24Aは、螺旋搬送路21の先端に対応する位置において螺旋搬送路21の先端に連続するように容器10に接続され、螺旋搬送路21の先端から容器10の外に延びている。搬出路24の中間部24Bは、基端部24Aと先端部24Cとの間に位置してこれらをつないでいる。搬出路24の先端部24Cは、当該搬出路24の下流に位置する装置に接続されている。具体的に、第1の粉粒体成膜機2における搬出路24の先端部24Cは、第2の粉粒体成膜機2における容器10の前記側壁部に接続されており、第2の粉粒体成膜機2における搬出路24の先端部24Cは、回収機3に接続されている。
【0037】
搬出路24の基端部24Aは、例えば
図3に示すように、基端部24Aの長手方向に延びる底壁241と、底壁241の長手方向に直交する底壁241の幅方向の両サイドから上方に起立する一対の側壁242,243と、を有する。図示は省略するが、搬出路24の中間部24B及び先端部24Cのそれぞれも、基端部24Aと同様の底壁241と、一対の側壁242,243と、を有する。本実施形態では、搬出路24の基端部24A、中間部24B及び先端部24Cのそれぞれは、直線状に延びるような形状を有するが、そのような形状に限られない。搬出路24の基端部24A、中間部24B及び先端部24Cの少なくとも一つは、湾曲しながら延びる部分を含んでいてもよい。
【0038】
搬出路24の基端部24Aは、例えば
図3及び
図4に示すように容器10の上部に設けられた接続部に接続されている。容器10の前記側壁部の上部には、前記接続部に対応する部位に開口26が形成されており、搬出路24の基端部24Aは、開口26を通じて螺旋搬送路21と連続している。これにより、搬出路24の基端部24Aは、容器10内に位置する螺旋搬送路21の先端から粉粒体を受け入れることができる。
【0039】
搬出路24の基端部24Aが螺旋搬送路21の先端から容器10の外に延びる方向D(延出方向D)は、螺旋搬送路21の先端における螺旋搬送路21の向きに沿った方向である。本実施形態では、螺旋搬送路21の先端は、容器10の前記接続部に対応する部位、すなわち、開口26に対応する部位である。螺旋搬送路21の先端における螺旋搬送路21の向きは、開口26を画定する縁のうちで最も搬送方向上流側に位置する部位C(
図4参照)における内側面14の接線方向に対応する。延出方向Dは、螺旋搬送路21の先端における当該螺旋搬送路21の向きに平行な方向である場合だけでなく、螺旋搬送路21の先端における当該螺旋搬送路21の向きに対して若干傾斜する方向であってもよい。
【0040】
搬出路24は、容器10の外に搬出された粉粒体を重力を利用して搬出路24に沿ってさらに前進させるために下方に傾斜する部分を有する。言い換えると、搬出路24は、当該搬出路24の下流に位置する装置に向かって下方に傾斜する部分を有する。具体的に、第1の粉粒体成膜機2における搬出路24は、第2の粉粒体成膜機2における容器10に向かって下方に傾斜する部分を有し、第2の粉粒体成膜機2における搬出路24は、回収機3に向かって下方に傾斜する部分を有する。第1の粉粒体成膜機2及び第2の粉粒体成膜機2のそれぞれでは、搬出路24の先端部24Cが当該搬出路24の基端部24Aよりも低い位置に配置されている。本実施形態では、搬出路24のうち中間部24Bと先端部24Cは、当該搬出路24の下流に位置する装置に向かって下方に傾斜している。なお、搬出路24の全体が当該搬出路24の下流に位置する装置に向かって下方に傾斜していてもよい。
【0041】
搬送方向切替部材35は、螺旋搬送路21に沿って搬送される粉粒体Fを搬出路24の基端部24Aに案内するための位置である搬出位置P1(
図4参照)と、螺旋搬送路21に沿って搬送される粉粒体Fが底面13に向かって落下するように当該粉粒体Fを案内するための位置である循環位置P2(
図5参照)と、の間で切り替わることが可能なように構成される。
【0042】
図3に示すように、搬送方向切替部材35は、螺旋搬送路21の先端又はその近傍に配置されており、螺旋搬送路21に対して搬出位置P1と循環位置P2との間で回動可能なように容器10に(例えば螺旋搬送路21に)支持されている。搬送方向切替部材35の位置の切り替えは、手動で行われてもよく、粉粒体成膜システム100が備える図略のコントローラからの指令に基づいて自動で行われてもよい。搬送方向切替部材35の位置の切り替えがコントローラからの指令に基づいて行われる場合には、粉粒体成膜システム100は、コントローラからの指令に基づいて搬送方向切替部材35を搬出位置P1と循環位置P2との間で回動させるための図略の駆動装置をさらに備える。当該駆動装置は、例えば、搬送方向切替部材35を回動させるようにコントローラからの指令に基づいて作動するモータ、シリンダなどであってもよい。
【0043】
搬送方向切替部材35は、例えば
図3に示すように、螺旋搬送路21の上面に沿って延びる底壁351と、底壁351の幅方向の両サイドから上方に起立する一対の側壁352,353と、を有する。一対の側壁352,353のそれぞれは、底壁351の延びる方向に沿って延びている。搬送方向切替部材35が
図3及び
図4に示すように搬出位置P1に配置されると、一対の側壁352,353が搬出路24の基端部24Aに向くので、搬送方向切替部材35は、螺旋搬送路21に沿って搬送される粉粒体Fを搬出路24の基端部24Aに案内することができる。一方、搬送方向切替部材35が
図5に示すように循環位置P2に配置されると、一対の側壁352,353が螺旋搬送路21の螺旋の内側の領域に向くので、搬送方向切替部材35は、螺旋搬送路21に沿って搬送される粉粒体Fが底面13に向かって落下するように当該粉粒体Fを案内することができる。本実施形態では、搬送方向切替部材35が
図5に示すように循環位置P2に配置されると、一対の側壁352,353が内側案内路27に向くので、搬送方向切替部材35は、螺旋搬送路21に沿って搬送される粉粒体Fを内側案内路27に案内することができ、内側案内路27は、粉粒体Fを当該内側案内路27に沿って内側案内路27の先端まで案内することができる。これにより、粉粒体Fは、内側案内路27の先端から底面13に向かって落下する。螺旋搬送路21、搬送方向切替部材35、搬出路24及び内側案内路27のそれぞれの構造は、粉粒体Fを上記のように案内することができるものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば
図3及び
図4に示すような構造を採用することができる。
【0044】
図3及び
図4に示すように、螺旋搬送路21は、搬送路本体21Aと、下流側端部21Bと、を含む。搬送路本体21Aは、螺旋搬送路21の大半を占める部分であり、容器10の底面13又はその近傍から搬送方向切替部材35又はその近傍まで螺旋状に延びる部分である。搬送路本体21Aは、底面13に接続された基端(下端)と、搬送方向切替部材35の基端に対応する位置にある先端と、を有する。下流側端部21Bは、螺旋搬送路21における搬送方向下流側の端部を構成する部分であり、搬送路本体21A又はその近傍から搬出路24の基端部24A又はその近傍まで延びる部分である。下流側端部21Bは、搬送路本体21Aの先端及び搬送方向切替部材35の基端に対応する位置にある基端と、搬出路24の基端部24Aの基端に対応する位置にある先端と、を有する。下流側端部21Bの先端は、螺旋搬送路21の先端である。
【0045】
図3に示すように、螺旋搬送路21の搬送路本体21Aの先端は、搬送方向切替部材35の基端よりも上方に位置し、搬送方向切替部材35の基端は、螺旋搬送路21の下流側端部21Bの基端よりも上方に位置している。搬送路本体21Aの先端を含む部分は、搬送方向切替部材35の基端を含む部分に対して平面視でオーバーラップするように配置されている。また、搬送路本体21Aの先端を含む部分は、搬送方向切替部材35の基端を含む部分だけでなく、下流側端部21Bの基端を含む部分に対しても平面視でオーバーラップするように配置されていることが好ましい。搬送方向切替部材35は、螺旋搬送路21の下流側端部21Bの上面に接するように下流側端部21Bの上に載置されていてもよく、下流側端部21Bの上面に対して上下に間隔をあけて下流側端部21Bの上方に配置されていてもよい。内側案内路27は、平面視で螺旋搬送路21よりも内側の領域に向かって螺旋搬送路21の下流側端部21Bから延びている。
図3に示すような構造は、搬出位置P1と循環位置P2との間で搬送方向切替部材35の配置の切り替えがスムーズに行われることを可能にする。また、
図3に示すような構造は、粉粒体Fが螺旋搬送路21の搬送路本体21Aの先端から搬送方向切替部材35にスムーズに搬送されること、粉粒体Fが搬送方向切替部材35の先端から螺旋搬送路21の下流側端部21Bを介して搬出路24にスムーズに搬送されること、粉粒体Fが搬送方向切替部材35の先端から内側案内路27にスムーズに搬送されることを可能にする。
【0046】
なお、
図3に示す具体例では、下流側端部21Bの先端(螺旋搬送路21の先端)は、搬出路24の基端部24Aと滑らかに連続するように接続されているが、下流側端部21Bの先端は、搬出路24の基端部24Aの基端よりも上方に位置し、段差を介して搬出路24の基端部24Aに接続されていてもよい。また、
図3に示す具体例では、下流側端部21Bは、内側案内路27と滑らかに連続するように接続されているが、下流側端部21Bは、内側案内路27の基端よりも上方に位置し、段差を介して内側案内路27に接続されていてもよい。
【0047】
振動発生装置30は、容器10内の粉粒体が螺旋搬送路21に沿って搬出路24の基端部24Aに向かって搬送されるように容器10を振動させる。上述したように搬出路24の基端部24Aの前記延出方向Dが、螺旋搬送路21の先端における当該螺旋搬送路21の向きに沿った方向である。従って、搬送方向切替部材35が搬出位置P1に配置されている場合には、振動発生装置30が容器10を上記のように振動させると、搬送方向切替部材35に搬送された粉粒体は、搬送方向切替部材35によって搬出路24の基端部24Aに案内され、搬出路24の基端部24Aに沿って容器10の外に搬出される。一方、搬送方向切替部材35が循環位置P2に配置されている場合には、振動発生装置30が容器10を上記のように振動させると、搬送方向切替部材35に搬送された粉粒体は、搬送方向切替部材35によって内側案内路27に案内され、内側案内路27の先端から粉粒体落下空間Sを通じて底面13に向かって落下する。
【0048】
振動発生装置30は、発生装置本体と、シャフトと、を含む。シャフトは、発生装置本体と容器10とを相互に連結する。シャフトの上部は容器10の底部に接続されている。これにより、発生装置本体は、シャフトを介して容器10に対して振動を伝えて容器10を振動させることができる。
【0049】
振動発生装置30は、容器10の中心軸Aの方向(上下方向)の成分と中心軸A回りの周方向の成分とを含む方向に容器10を振動させることが可能なように構成される。具体的には、振動発生装置30は、例えば、周方向の一方の方向の成分と上方の成分とを含む第1の方向と、周方向の他方の方向の成分と下方の成分とを含む第2の方向とに容器10が往復動作するように容器10を振動させてもよい。また、振動発生装置30は、例えば、周方向の一方の方向の成分と上方の成分とを含む方向と、周方向の一方の方向の成分と下方の成分とを含む方向とに容器10が交互に動作するように容器10を振動させてもよい。このような成分を含む方向に容器10を振動させることにより粉粒体Fを
図3において矢印で示すように螺旋搬送路21に沿って上方に効率よく搬送し、さらに、搬出路24又は内側案内路27に沿って案内することができる。
【0050】
粉粒体落下空間Sは、上述したように、容器10内において底面13に向けて粉粒体Fを落下させるための空間である。本実施形態では、粉粒体落下空間Sは、螺旋搬送路21よりも容器10の径方向の内側の空間である。具体的には、粉粒体落下空間Sは、螺旋搬送路21よりも容器10の径方向の内側の空間で、かつ、内側案内路27における搬送方向下流側の先端よりも下方の空間である。この粉粒体落下空間Sは、底面13から内側案内路27の先端まで上下方向に連続する空間である。
【0051】
第1の粉粒体成膜機2における成膜装置は、第1の粉粒体成膜機2における容器10内において粉粒体Fの表面に第1の成膜材料を成膜することが可能な装置である。第2の粉粒体成膜機2における成膜装置は、第2の粉粒体成膜機2における容器10内において粉粒体Fの表面(第1の成膜材料が成膜された粉粒体Fの表面)に第2の成膜材料を成膜することが可能な装置である。本実施形態では、第1の粉粒体成膜機2の成膜装置及び第2の粉粒体成膜機2の成膜装置は、互いに同じ構造を有するが、互いに異なる構造を有していてもよい。
【0052】
図6に示すように、第1の粉粒体成膜機2及び第2の粉粒体成膜機2のそれぞれの成膜装置は、スパッタリングユニット50と、不活性ガス供給部70と、を備える。
【0053】
スパッタリングユニット50は、ターゲット52と、ケース51内に収容された冷却機構などの種々の構成要素と、を含む。ターゲット52は、カソード又はカソードの一部を構成する。容器10又は真空チャンバユニット40はアノードを構成していてもよい。粉粒体成膜機2が例えばマグネトロンスパッタリングにより粉粒体の表面に成膜処理を施す装置である場合には、スパッタリングユニット50は、磁石を含む。この場合、磁石は、ターゲット52に隣接する位置(例えば、ターゲット52の真上)に配置される。なお、第1の粉粒体成膜機2におけるターゲット52を構成する材料は、第1の成膜材料の一例であり、第2の粉粒体成膜機2におけるターゲット52を構成する材料は、第2の成膜材料の一例である。
【0054】
不活性ガス供給部70は、成膜処理が行われるときに容器10内に不活性ガスを供給するためのものである。不活性ガス供給部70からの不活性ガスは、例えば、図略の配管を通じて真空チャンバユニット4内に供給され、これにより、容器10内に供給される。不活性ガスとしては、例えばアルゴンガスが用いられる。
【0055】
真空チャンバユニット4は、図略の配管を介して、真空引きのための図略のポンプに接続されている。真空チャンバユニット4は、粉粒体成膜システム100を構成する複数の部分のうち粉粒体Fを搬送する部分及び粉粒体Fに成膜材料を成膜する部分を収容する収容空間を有する。本実施形態では、真空チャンバユニット4は、供給機1のホッパー1B及び粉粒体供給路1Cと、第1の粉粒体成膜機2のターゲット52、容器10及び搬出路24と、第2の粉粒体成膜機2のターゲット52、容器10及び搬出路24と、回収機3の少なくとも一部と、を収容する。
【0056】
本実施形態では、回収機3は、ホッパー3Aを含み、当該ホッパー3Aの少なくとも一部が真空チャンバユニット4に収容されている。ホッパー3Aは、必要に応じて下部の出口を開くことにより、回収された成膜処理後の粉粒体Fを次工程に供給することが可能なように構成される。
【0057】
具体的に、真空チャンバユニット4は、供給機1のホッパー1B及び粉粒体供給路1Cを収容する供給機用の真空チャンバ41と、第1の粉粒体成膜機2のターゲット52、容器10及び搬出路24を収容する第1の粉粒体成膜機用の真空チャンバ42と、第2の粉粒体成膜機2のターゲット52、容器10及び搬出路24を収容する第2の粉粒体成膜機用の真空チャンバ42と、回収機3の少なくとも一部を収容する回収機用の真空チャンバ43と、を含む。第1の粉粒体成膜機用の真空チャンバ42は、供給機1の粉粒体供給路1Cの一部も収容している。
【0058】
次に、粉粒体成膜システム100を用いてスパッタリングにより粉粒体Fの表面に成膜処理を施す方法について説明する。
【0059】
まず、供給機1のホッパー1Bに粉粒体Fが投入され、真空チャンバユニット4内が真空状態にされる。真空チャンバユニット4において真空引きが行われた後、不活性ガス(例えばアルゴンガス)が真空チャンバユニット4内に供給される。第1の粉粒体成膜機2及び第2の粉粒体成膜機2のそれぞれの搬送方向切替部材35は、循環位置P2に配置される。この状態で、外部に置かれた図略の電源が前記アノードとターゲット52(カソード)に正負の電圧を印加することによりグロー放電が発生し、ターゲットの近傍にはプラズマ領域P(
図6参照)が生成され、不活性ガスがイオン化される。イオン化された不活性ガスは、ターゲット52に衝突し、その運動エネルギーによりターゲット52を構成する粒子E(例えば原子又は分子)が叩き出される。ターゲット52から叩き出された粒子Eの一部は、粉粒体落下空間Sにおいて下方に移動して底面13に供給される。
【0060】
一方、供給機1の振動発生装置1A、第1の粉粒体成膜機2の振動発生装置30及び第2の粉粒体成膜機2の振動発生装置30のそれぞれを作動させた状態で、予め設定された供給量でホッパー1Bから粉粒体Fが粉粒体供給路1Cに順次供給される。これにより、粉粒体供給路1C上の粉粒体が当該粉粒体供給路1Cに沿って第1の粉粒体成膜機2の容器10内に供給される。
【0061】
第1の粉粒体成膜機2の容器10内に供給された粉粒体Fの少なくとも一部は、当該容器10の底面13に落下する。従って、ターゲット52から叩き出された粒子Eの一部は、粉粒体落下空間Sにおいて下方に移動して底面13上の粉粒体Fの表面に付着する。また、本実施形態では、
図6に示すように、螺旋搬送路21の少なくとも一部と、ターゲット52の下面との間には、遮るものがない。従って、ターゲット52から叩き出された粒子Eの他の一部は、粉粒体落下空間Sにおいて螺旋搬送路21の前記少なくとも一部に向かって移動してその上にある粉粒体Fの表面に付着する。これにより、底面13上の粉粒体Fの表面に成膜処理を施すとともに、螺旋搬送路21の前記少なくとも一部の上にある粉粒体Fの表面に成膜処理を施すことができる。
【0062】
第1の粉粒体成膜機2では、振動発生装置30が容器10に所定の振動を与えているので、底面13にある粉粒体Fは、螺旋搬送路21に沿って上方に搬送される。第1の粉粒体成膜機2の搬送方向切替部材35は循環位置P2に配置されているので、搬送方向切替部材35に到達した粉粒体Fは、内側案内路27に沿って平面視で容器10の中央付近にさらに案内され、内側案内路27の先端から容器10の底面13に向かって落下する。従って、粉粒体Fは、容器10内において、底面13、螺旋搬送路21、内側案内路27及び粉粒体落下空間Sの順に並ぶ搬送ルートを、例えば予め設定された時間(第1の成膜時間)が経過するまで循環する。粉粒体Fは、前記搬送ルートを循環する間、前記成膜装置によって成膜される。
【0063】
粉粒体成膜システム100の前記コントローラは、前記第1の成膜時間が経過すると、第1の粉粒体成膜機2の搬送方向切替部材35が循環位置P2から搬出位置P1に切り替わるように前記駆動装置を作動させる。これにより、搬送方向切替部材35に到達した粉粒体Fは、搬出路24に沿って容器10の外に搬出され、第2の粉粒体成膜機2の容器10内に供給される。第2の粉粒体成膜機2の容器10内に供給された粉粒体Fの少なくとも一部は、当該容器10の底面13に落下する。
【0064】
第2の粉粒体成膜機2では、振動発生装置30が容器10に所定の振動を与えているので、底面13にある粉粒体Fは、螺旋搬送路21に沿って上方に搬送される。第2の粉粒体成膜機2の搬送方向切替部材35は循環位置P2に配置されているので、搬送方向切替部材35に到達した粉粒体Fは、内側案内路27に沿って平面視で容器10の中央付近にさらに案内され、内側案内路27の先端から容器10の底面13に向かって落下する。従って、粉粒体Fは、容器10内において、底面13、螺旋搬送路21、内側案内路27及び粉粒体落下空間Sの順に並ぶ搬送ルートを、例えば予め設定された時間(第2の成膜時間)が経過するまで循環する。粉粒体Fは、前記搬送ルートを循環する間、前記成膜装置によって成膜される。
【0065】
粉粒体成膜システム100の前記コントローラは、前記第2の成膜時間が経過すると、第2の粉粒体成膜機2の搬送方向切替部材35が循環位置P2から搬出位置P1に切り替わるように前記駆動装置を作動させる。これにより、搬送方向切替部材35に到達した粉粒体Fは、搬出路24に沿って容器10の外に搬出され、回収機3に回収される。
【0066】
以上のように、本実施形態に係る粉粒体成膜システム100では、搬出路24は、螺旋搬送路21の先端に対応する位置において螺旋搬送路21に連続するように容器10に接続されるとともに当該螺旋搬送路21から容器10の外に延びており、振動発生装置30は、容器10内の粉粒体Fが螺旋搬送路21に沿って搬出路24に向かって搬送されるとともに搬出路24に搬送された粉粒体Fが搬出路24に沿って容器10の外に搬出されるように容器10を振動させる。従って、容器10の内周に沿って底面13から上方に螺旋状に延びる螺旋搬送路21が容器10内に形成されている場合であっても、容器10内において成膜処理された粉粒体Fは、振動発生装置30の振動によって螺旋搬送路21に沿って搬出路24まで搬送され、さらに、搬出路24に沿って効率よく容器10の外に搬出される。
【0067】
本実施形態では、搬送路は、容器10の内周に沿って底面13から螺旋状に上方に延びる螺旋搬送路21であるので、振動発生装置30は、容器10を振動させることにより、容器10の底面13に配置された粉粒体Fを螺旋搬送路21に沿って上方に搬送することができる。また、本実施形態では、前記成膜装置は、容器10の底面13上にある粉粒体Fの表面に成膜材料を成膜処理することができるだけでなく、螺旋搬送路21上にある粉粒体Fの表面にも成膜材料を成膜処理することができる。螺旋搬送路21上の粉粒体Fは、振動発生装置30による振動によって撹拌されながら螺旋搬送路21に沿って上方に搬送され、螺旋搬送路21上で成膜される。
【0068】
本実施形態では、搬送方向切替部材35が循環位置P2に配置されているときには、粉粒体成膜システム100は、底面13、螺旋搬送路21、搬送方向切替部材35、内側案内路27、粉粒体落下空間S及び底面13の順に連続する搬送ルートを粉粒体Fが複数回循環するように粉粒体Fを移動させることができる。このことは、例えば、容器10内において前記成膜装置が粉粒体Fの表面に成膜材料を成膜するのに必要な成膜時間(例えば、第1の成膜時間又は第2の成膜時間)が経過するまで、粉粒体Fを容器10内において循環させることを可能にし、これにより、粉粒体Fの表面に成膜材料を確実に成膜することができる。一方、前記成膜時間が経過すると、搬送方向切替部材35は搬出位置P1に切り換えられる。搬送方向切替部材35が搬出位置P1に配置されているときには、粉粒体成膜システム100は、成膜処理されて螺旋搬送路21を上方する粉粒体Fを搬出路24を通じて容器10の外に搬出することができる。
【0069】
本実施形態では、搬出路24が螺旋搬送路21の先端から容器10の外に延びる方向D(延出方向D)は、螺旋搬送路21の先端における当該螺旋搬送路21の向きに沿った方向である。従って、螺旋搬送路21の先端付近にある粉粒体Fに対して振動発生装置30が与える力、すなわち、螺旋搬送路21の先端における当該螺旋搬送路21の向きに沿った方向に当該粉粒体に対して与えられる力を利用して、螺旋搬送路21の先端付近にある粉粒体を搬出路24に送り出し、搬出路24に沿って容器10の外に搬出することができる。
【0070】
本実施形態では、搬出路24は、容器10の外に搬出された粉粒体Fを重力を利用して搬出路24に沿ってさらに前進させるために下方に傾斜する部分を有する。従って、螺旋搬送路21から搬出路24に送り出された粉粒体Fを重力を利用して搬出路24に沿って効果的に前進させることができる。なお、粉粒体成膜システム100は、搬出路24に沿った粉粒体Fの前進をサポートするための図略の振動発生装置(直動振動発送装置)をさらに備えていてもよい。
【0071】
本実施形態では、第1の粉粒体成膜機2と第2の粉粒体成膜機2が連結されているので、第1の容器10内において第1の成膜材料が成膜処理された粉粒体Fを第2の容器10に供給し、この第2の容器10において当該粉粒体Fの表面にさらに第2の成膜材料を成膜処理することができる。
【0072】
本実施形態では、真空チャンバユニット4は、供給機1のホッパー1B及び粉粒体供給路1Cと、第1の粉粒体成膜機2のターゲット52、容器10及び搬出路24と、第2の粉粒体成膜機2のターゲット52、容器10及び搬出路24と、回収機3の少なくとも一部と、を収容する。従って、供給機1のホッパー1Bから回収機3に至るルートを真空雰囲気に調整することができる。これにより、真空雰囲気下において粉粒体を供給機1のホッパー1Bから回収機3に至るルートにおいて搬送すること、真空雰囲気下において粉粒体Fに第1の成膜材料及び第2の成膜材料をこの順に成膜することができる。また、真空チャンバユニット4は密閉された収容空間を形成しているので、粉粒体Fへの成膜処理がコンタミネーションなく行われる。
【0073】
[変形例]
図8は、前記実施形態の変形例1に係る粉粒体成膜システム100Aを示す平面図であり、真空チャンバを断面図で描いたものである。
図9は、変形例1に係る粉粒体成膜システム100Aを示す側面図である。
【0074】
図8及び
図9に示す変形例1に係る粉粒体成膜システム100Aでは、第1の粉粒体成膜機2の搬出路24は第2の粉粒体成膜機2の容器10に接続され、第2の粉粒体成膜機2の搬出路24は第1の粉粒体成膜機2の容器10に接続されている。
【0075】
図9に示すように、第1の粉粒体成膜機2及び第2の粉粒体成膜機2のそれぞれの搬出路24は、容器10の外に搬出された粉粒体を重力を利用して搬出路24に沿って前進させるために下方に傾斜する部分を有する。具体的に、第1の粉粒体成膜機2における搬出路24は、第2の粉粒体成膜機2における容器10に向かって下方に傾斜する部分を有し、第2の粉粒体成膜機2における搬出路24は、第1の粉粒体成膜機2における容器10に向かって下方に傾斜する部分を有する。第1の粉粒体成膜機2及び第2の粉粒体成膜機2のそれぞれでは、搬出路24の先端部24Cが当該搬出路24の基端部24Aよりも低い位置に配置されている。本実施形態では、搬出路24のうち中間部24Bと先端部24Cは、当該搬出路24の下流に位置する装置に向かって下方に傾斜している。なお、搬出路24の全体が当該搬出路24の下流に位置する装置に向かって下方に傾斜していてもよい。なお、粉粒体成膜システム100Aは、搬出路24に沿った粉粒体Fの前進をサポートするための図略の振動発生装置(直動振動発送装置)をさらに備えていてもよい。
【0076】
この変形例1は、第1の粉粒体成膜機2と第2の粉粒体成膜機2の間を順に移動するルートを粉粒体Fが複数回循環することを可能にする。変形例1に係る粉粒体成膜システム100Aにおける他の構成は、
図1~
図6に示す前記実施形態に係る粉粒体成膜システム100Aにおける対応する構成と同様であるので、これらの説明を省略する。なお、変形例1に係る粉粒体成膜システム100Aは、
図1及び
図2に示すような供給機1及び回収機3を備えるが、
図8及び
図9では、供給機1及び回収機3の図示は省略されている。
【0077】
図10及び
図11のそれぞれは、前記実施形態の変形例2に係る粉粒体成膜システム100Bを示す平面図である。変形例2に係る粉粒体成膜システム100Bは、3つ以上の粉粒体成膜機2(具体的には6つの粉粒体成膜機2)が連結された構造を有する。
図10は、各粉粒体成膜機2における搬送方向切替部材35が搬出位置P1に配置された状態を示し、
図11は、各粉粒体成膜機2における搬送方向切替部材35が循環位置P2に配置された状態を示している。
図10及び
図11では、6つの粉粒体成膜機2における搬送方向切替部材35が同じ位置(搬出位置P1又は循環位置P2)に配置されているが、このような配置に限られない。6つの粉粒体成膜機2における搬送方向切替部材35の一部の位置が他の搬送方向切替部材35の位置と異なっていてもよい。なお、変形例2に係る粉粒体成膜システム100Bは、
図1及び
図2に示すような供給機1及び回収機3を備えるが、
図10及び
図11では、供給機1及び回収機3の図示は省略されている。
【0078】
この変形例2では、3つ以上の粉粒体成膜機2を連結することにより、3つの以上の成膜材料を粉粒体Fに順に成膜することができる。また、この変形例2は、3つ以上の粉粒体成膜機2を順に移動するルートを粉粒体Fが複数回循環することを可能にする。
【0079】
なお、前記実施形態に係る粉粒体成膜システム100は、スパッタリングにより粉粒体の表面に成膜処理を施す装置であるが、これに限られず、例えば、アークイオンプレーティングにより粉粒体Fの表面に成膜処理を施す装置であってもよく、プラズマCVDにより粉粒体Fの表面に成膜処理を施す装置であってもよい。
【0080】
図12は、前記実施形態の変形例3に係る粉粒体成膜システム100における容器10及び成膜装置を示す断面図である。変形例3に係る粉粒体成膜システム100は、例えば
図1及び
図2に示すような第1の粉粒体成膜機2と第2の粉粒体成膜機2とを備える。変形例3では、これらの粉粒体成膜機2のそれぞれの成膜装置が
図1~
図6に示す前記実施形態と異なり、その他の構成は前記実施形態と同様である。従って、以下では、変形例3が
図1~
図6に示す前記実施形態と異なる点、すなわち成膜装置についてのみ説明し、その他の構成の説明は省略する。
【0081】
変形例3に係る粉粒体成膜システム100は、アークイオンプレーティングにより粉粒体の表面に成膜処理を施す装置である。
【0082】
変形例3では、複数の粉粒体成膜機2のそれぞれの成膜装置は、イオンプレーティングユニット50Aを備える。イオンプレーティングユニット50Aは、ターゲット52と、ケース51A内に収容さされた磁石、冷却機構などの種々の構成要素と、を含む。アークイオンプレーティングにより粉粒体Fの表面に成膜処理を施す各粉粒体成膜機2では、ターゲット52は、カソード又はカソードの一部を構成する。アノードは容器10により構成されていてもよい。この場合、前記冷却機構は、容器10の外周に巻きつけられる冷却水用の配管を有していてもよい。この配管に冷却水が供給されることにより容器10が冷却される。
【0083】
アークイオンプレーティングによる成膜処理では、真空アーク放電を利用して固体のターゲット52を蒸発させる。具体的には、この成膜処理では、真空雰囲気において、ターゲット52をカソードとし、外部に置かれた図略の電源から電力が供給されることにより、アノードとの間で真空アーク放電を発生させる。これにより、ターゲット52の表面からターゲット52を構成する成膜材料を蒸発させ、イオン化させる。イオン化した成膜材料Eは、底面13上の粉粒体F及び螺旋搬送路21上の粉粒体Fに供給され、これにより、粉粒体Fの表面に成膜処理が施される。第1の粉粒体成膜機2におけるターゲット52を構成する材料は、第1の成膜材料の一例であり、第2の粉粒体成膜機2におけるターゲット52を構成する材料は、第2の成膜材料の一例である。
【0084】
図13は、前記実施形態の変形例4に係る粉粒体成膜システム100における容器10及び成膜装置を示す断面図である。変形例4に係る粉粒体成膜システム100は、例えば
図1及び
図2に示すような第1の粉粒体成膜機2と第2の粉粒体成膜機2とを備える。変形例4では、これらの粉粒体成膜機2のそれぞれの成膜装置が
図1~
図6に示す前記実施形態と異なり、その他の構成は前記実施形態と同様である。従って、以下では、変形例4が
図1~
図6に示す前記実施形態と異なる点、すなわち成膜装置についてのみ説明し、その他の構成の説明は省略する。
【0085】
変形例4に係る粉粒体成膜システム100は、プラズマCVDにより粉粒体Fの表面に成膜処理を施す装置である。
【0086】
変形例4では、前記成膜装置は、プラズマソース60と、原料ガス供給部と、不活性ガス供給部70と、を備える。プラズマソース60は、ケース61と、このケース61内に収容された電源と、電極又はコイルと、を含む。なお、電源は、プラズマソース60の外部に置かれていてもよい。
【0087】
前記原料ガス供給部は、真空チャンバユニット4内(容器10内)に成膜材料としての原料ガスを供給する。
図13に示す具体例では、前記原料ガス供給部は、原料ガス供給用のパイプ62を有する。パイプ62は、プラズマソース60による作用が及ぶ領域に原料ガスを供給する。具体的に、パイプ62は、当該パイプ62の下面に複数のガス供給穴を有し、これらのガス供給穴からプラズマソース60の下方に原料ガスを供給することができるように構成される。パイプ62が平面視で環状の形状を有する場合には、複数のガス供給穴は、例えばパイプ62の下面において周方向に沿って互いに間隔をおいて設けられる。複数のガス供給穴は、周方向に均等に設けられることが好ましい。この場合、パイプが例えば直管である場合に比べて、成膜処理のむらを低減できる。
【0088】
原料ガスは、プラズマソース60による作用が及ぶ領域、例えば
図13において二点鎖線Pで囲まれる領域Pのようにプラズマソース60の真下の領域に原料ガス供給部のパイプ62から供給される。具体的には、プラズマソース60の下部64には開口部63が設けられている。この開口部63は、プラズマソース60の内部で生成されたプラズマを外部に放出するためのものである。プラズマソース60の開口部63からプラズマが放出されることによりプラズマソース60の真下にプラズマ領域Pが形成される。原料ガス供給部のパイプ62から供給される原料ガスは、プラズマ領域Pにおいて分解されることにより成膜可能状態となる。変形例4において、成膜可能状態となった原料ガスEとは、プラズマソース60から放出されるプラズマによって原料ガスが分解されることにより生成される生成物(分解生成物)である。
【0089】
プラズマCVDによる成膜処理では、プラズマソース60によって成膜可能状態となった原料ガスEは、プラズマソース60の開口部63の直下から上下方向に平行な下方に移動するだけでなく、上下方向に対してある程度の角度範囲で傾いた斜め下方に拡散するように移動する。これにより、底面13上の粉粒体Fの表面及び螺旋搬送路21上の粉粒体の表面に効率よく膜を形成することができる。
【0090】
[その他の変形例]
以上、実施形態に係る粉粒体成膜システム100について説明したが、本開示はこれらの形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例であってもよい。
【0091】
(1)前記実施形態では、搬送路は、容器10の内周に沿って底面13から螺旋状に上方に延びる螺旋搬送路21であるが、必ずしも螺旋状に上方に延びるものでなくてもよい。搬送路は、例えば、平面視において円弧状に容器の内周に沿って延びるものであってもよく、また、環状に容器の内周に沿って延びるものであってもよい。
【0092】
(2)真空雰囲気下でない雰囲気で行われるCVDなどの方法による成膜処理が行われる場合には、真空チャンバユニット4は省略可能である。
【0093】
(3)成膜処理の方法は、スパッタリング、アークイオンプレーティング、プラズマCVDに限られず、例えばALD(原子層堆積)などの他の方法であってもよい。
【0094】
(4)前記成膜装置は、容器10の底面13上の粉粒体F及び螺旋搬送路21に沿って搬出路24に向かって搬送される粉粒体Fの少なくとも一方の粉粒体Fの表面に前記成膜材料を成膜することが可能なように構成されていればよい。
【0095】
(5)前記実施形態に係る粉粒体成膜システム100は、複数の粉粒体成膜機2を備えるが、単一の粉粒体成膜機2のみを備えるものであってもよい。すなわち、粉粒体成膜システムは、単一の容器と、単一の成膜装置と、単一の搬出路と、単一の振動発生装置と、を備えるものであってもよい。この場合、前記容器は、当該容器の内周に沿って延びる搬送路を有し、前記成膜装置は、前記容器内において粉粒体の表面に成膜材料を成膜することが可能であり、前記搬出路は、前記搬送路から前記容器の外に延び、前記振動発生装置は、前記容器内の粉粒体が前記搬送路に沿って前記搬出路に向かって搬送されるとともに前記搬出路に搬送された粉粒体が前記搬出路に沿って前記容器の外に搬出されるように前記容器を振動させる。また、この場合、真空チャンバユニットは、単一の容器と、単一の搬出路と、を収容していてもよい。
【0096】
(6)粉粒体成膜システムは、例えば、前処理機と、少なくとも一つの粉粒体成膜機と、を備えていてもよい。この変形例では、前処理機において前処理された粉粒体が粉粒体成膜機に供給され、前処理済みの粉粒体が粉粒体成膜機において成膜処理される。前処理機において行われる前処理の具体例としては、例えば、粉粒体を加熱する加熱処理、粉粒体にプラズマを照射するプラズマ照射処理、粉粒体にイオンを照射するイオン照射処理などを挙げることができるが、前処理は、これらの具体例に限られない。この変形例における前処理機は、例えば、粉粒体を収容することが可能な前処理容器であって当該前処理容器の内周に沿って延びる搬送路(例えば螺旋搬送路)を有する前処理容器と、前処理容器内において粉粒体を前処理することが可能な前処理源と、前処理容器の搬送路から前処理容器の外に延びる搬出路と、前処理容器内の粉粒体が搬送路に沿って搬出路に向かって搬送されるとともに搬出路に搬送された粉粒体が搬出路に沿って前処理容器の外に搬出されるように前処理容器を振動させる振動発生装置と、を備える。また、前処理機は、前記搬送方向切替部材35と同様の搬送方向切替部材をさらに備えていてもよい。また、前処理機は、前記内側案内路27と同様の内側案内路をさらに備えていてもよい。この変形例における粉粒体成膜機は、スパッタリングにより粉粒体の表面に成膜処理を施すための粉粒体成膜機(例えば
図6に示す粉粒体成膜機2)であってもよく、アークイオンプレーティングにより粉粒体の表面に成膜処理を施すための粉粒体成膜機(例えば
図12に示す粉粒体成膜機2)であってもよく、プラズマCVDにより粉粒体Fの表面に成膜処理を施すための粉粒体成膜機(例えば
図13に示す粉粒体成膜機2)であってもよい。また、図示は省略するが、粉粒体成膜機は、ALD(原子層堆積)により粉粒体の表面に成膜処理を施すためのものであってもよい。
【0097】
(7)
図1、
図2、
図8~
図11に示す粉粒体成膜システムのそれぞれでは、搬出路は、容器の外に搬出された粉粒体を重力を利用して搬出路に沿ってさらに前進させるために下方に傾斜する部分を有するが、このような形態に限られない。搬出路は、下方に傾斜する部分を有していなくてもよい。この場合、粉粒体成膜システムは、搬出路に沿った粉粒体の前進をサポートするための図略の振動発生装置(直動振動発送装置)を備えていることが好ましい。
【符号の説明】
【0098】
4 :真空チャンバユニット
10 :容器
13 :底面
14 :内側面
21 :螺旋搬送路(搬送路の一例)
24 :搬出路
27 :内側案内路
30 :振動発生装置
35 :搬送方向切替部材
50 :スパッタリングユニット
50A :イオンプレーティングユニット
52 :ターゲット
60 :プラズマソース
70 :不活性ガス供給部
100,100A,100B :粉粒体成膜システム
F :粉粒体
P1 :搬出位置
P2 :循環位置