(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240909BHJP
H01J 37/08 20060101ALI20240909BHJP
H01J 37/09 20060101ALI20240909BHJP
H01J 37/305 20060101ALI20240909BHJP
H10B 43/27 20230101ALI20240909BHJP
H10B 43/40 20230101ALI20240909BHJP
H10B 43/50 20230101ALI20240909BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240909BHJP
H01L 29/788 20060101ALI20240909BHJP
H01L 29/792 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01J37/08
H01J37/09
H01J37/305 A
H10B43/27
H10B43/40
H10B43/50
H01L29/78 371
(21)【出願番号】P 2021035803
(22)【出願日】2021-03-05
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】橋本 惇一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊行
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-047093(JP,A)
【文献】特開昭58-106750(JP,A)
【文献】特開平02-230731(JP,A)
【文献】特開2003-086568(JP,A)
【文献】特開2006-041486(JP,A)
【文献】特開2018-152183(JP,A)
【文献】特開2013-243307(JP,A)
【文献】特表2019-510373(JP,A)
【文献】特表2017-513216(JP,A)
【文献】特表2009-544120(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0074249(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0263460(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0261427(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0069483(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0309018(US,A1)
【文献】米国特許第04457803(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01J 37/08
H01J 37/09
H01J 37/305
H10B 43/27
H10B 43/40
H10B 43/50
H01L 21/336
H01L 21/788
H01L 21/792
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に第1の層と、第2の層と、第3の層と、第4の層とが第1の方向に順に積層され、第1の領域および前記第1の領域とは異なる第2の領域を含む積層体を準備し、
前記第1および第2の領域にイオンビームを照射することで前記第1および第2の領域における前記第4の層をエッチングして前記第3の層を露出し、
前記第1の領域において前記第3の層が露出した状態で、前記第2の領域にイオンビームを照射することで前記第2の領域における前記第3の層と前記第2の層とをエッチングして前記第1の層を露出すること、
を含
み、
前記第4の層をエッチングすることは、前記第3の層より前記第4の層に対して選択比の高い第1のイオン種を含むイオンビームを照射することを含み、
前記第3の層をエッチングすることは、前記第2の層より前記第3の層に対して選択比の高い第2のイオン種を含むイオンビームを照射して、前記第2の層を露出することを含み、
前記第2の層をエッチングすることは、前記第1の層より前記第2の層に対して選択比の高い前記第1のイオン種を含むイオンビームを照射することを含み、
前記第1のイオン種を含むイオンビームと前記第2のイオン種を含むイオンビームとは異なるプラズマ生成室で生成し、シャッタを用いてイオン種を選択する、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
半導体基板上に第1の層と、第2の層と、第3の層と、第4の層とが第1の方向に順に積層され、第1の領域および前記第1の領域とは異なる第2の領域を含む積層体を準備し、
前記第1および第2の領域にイオンビームを照射することで前記第1および第2の領域における前記第4の層をエッチングして前記第3の層を露出し、
前記第1の領域において前記第3の層が露出した状態で、前記第2の領域にイオンビームを照射することで前記第2の領域における前記第3の層と前記第2の層とをエッチングして前記第1の層を露出すること、
を含み、
前記第4の層をエッチングすることは、前記第3の層より前記第4の層に対して選択比の高い第1のイオン種を含むイオンビームを照射することを含み、
前記第3の層をエッチングすることは、前記第2の層より前記第3の層に対して選択比の高い第2のイオン種を含むイオンビームを照射して、前記第2の層を露出することを含み、
前記第2の層をエッチングすることは、前記第1の層より前記第2の層に対して選択比の高い前記第1のイオン種を含むイオンビームを照射することを含み、
前記第1のイオン種を含むイオンビームと前記第2のイオン種を含むイオンビームとは1つのプラズマ生成室で生成し、マスセレクタを用いてイオン種を選択する、半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2の層
と前記第4の層とは酸化シリコンを含み、
前記第1のイオン種はCxFy+イオンを含み、
前記第1の層
と前記第3の層は窒化シリコン又はシリコンを含み、
前記第2のイオン種はCxHyFz+イオンを含む、
請求項
1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2の層
と前記第4の層とは酸化シリコンを含み、
前記第1のイオン種はCxFy+イオンを含み、
前記第1の層
と前記第3の層は金属を含み、
前記第2のイオン種はNFxイオン(x>2)、SFxイオン(x>3)、CFxイオン(x>3)から成る群から選択される1種を含む、
請求項
1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記プラズマ生成室を複数用い、複数のイオンビームを同時に照射する、
請求項
2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記積層体を準備することは、前記第4の層上に前記第1の領域と前記第2の領域とに開口を有するマスクを形成することをさらに含む、
請求項1乃至
5の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記マスクの材料はカーボンを含む、
請求項
6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2の領域の積層方向に絶縁膜を形成することをさらに含む、
請求項1乃至
7の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2の領域に導電体を形成することをさらに含む、
請求項1乃至
8の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1の層
と前記第3の層が窒化シリコン又はシリコンを含む場合、前記第1の層
と前記第3の層を除去し、導電層を形成することをさらに含む、
請求項1乃至
9の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は半導体装置の製造方法、積層配線構造体の製造方法、およびイオンビーム照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置としてのNAND型フラッシュメモリを用いた半導体パッケージが知られている。このようなNAND型フラッシュメモリを大容量化するために、多くのメモリセルを積層した構成をとる3次元NAND型フラッシュメモリが実用化されている。それぞれのメモリセルに接続される複数の導電層は基板上に積層され、駆動回路などに接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示に係る実施形態は、製造効率を向上し且つ信頼性を向上した半導体装置の製造方法、積層配線構造体の製造方法、およびイオンビーム照射装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板上に第1の層と、第2の層と、第3の層と、第4の層とが第1の方向に順に積層され、第1の領域および第1の領域とは異なる第2の領域を含む積層体を準備し、第1および第2の領域にイオンビームを照射することで第1および第2の領域における第4の層をエッチングして第3の層を露出し、第1の領域において第3の層が露出した状態で、第2の領域にイオンビームを照射することで第2の領域における第3の層と第2の層とをエッチングして第1の層を露出すること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】一実施形態に係る半導体装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】一実施形態に係る半導体装置のメモリセル領域MCRと引き出し領域HURの構成を示す斜視図である。
【
図3】一実施形態に係る半導体装置の積層配線構造体の構成を示す上面図および断面図である。
【
図4】一実施形態に係る積層配線構造体の製造方法を示す上面図および断面図である。
【
図5】一実施形態に係る積層配線構造体の製造方法を示す上面図および断面図である。
【
図6】一実施形態に係る積層配線構造体の製造方法を示す上面図および断面図である。
【
図7】一実施形態に係る積層配線構造体の製造方法を示す上面図および断面図である。
【
図8】一実施形態に係る積層配線構造体の製造方法を示す上面図および断面図である。
【
図9】一実施形態に係る積層配線構造体の製造方法を示す上面図および断面図である。
【
図10】一実施形態に係る積層配線構造体の製造方法を示す上面図および断面図である。
【
図11】一実施形態に係るイオンビーム照射装置の構成を示す模式図である。
【
図12】一実施形態に係る積層配線構造体の製造方法を示す上面図および断面図である。
【
図13】一実施形態に係る積層配線構造体の製造方法を示す上面図および断面図である。
【
図14】一実施形態に係る半導体装置の積層配線構造体の構成を示す上面図および断面図である。
【
図15】一実施形態に係る積層配線構造体の製造方法を示す上面図および断面図である。
【
図16】一実施形態に係る半導体装置の積層配線構造体の構成を示す上面図および断面図である。
【
図17】一実施形態に係る積層配線構造体の製造方法を示す上面図および断面図である。
【
図18】一実施形態に係るイオンビーム照射装置の構成を示す模式図である。
【
図19】一変形例に係るイオンビーム照射装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態に係る半導体装置の製造方法、積層配線構造体の製造方法、およびイオンビーム照射装置について図面を参照して具体的に説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する要素について、同一符号又は同一符号の後にアルファベットが追加された符号が付されており、必要な場合にのみ重複して説明する。以下に示す各実施形態は、この実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示する。実施形態の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定されない。実施形態の技術的思想は、特許請求の範囲に対して、種々の変更を加えたものであってもよい。
【0008】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図面において、既出の図面に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0009】
同一のプロセスにより形成された複数の膜は、同一の層構造を有し、かつ、同一の材料で構成される。本明細書においては、複数の膜がそれぞれ異なる機能又は役割を果たす場合であっても、このように同一のプロセスにより形成された複数の膜は、それぞれ同一の層に存在する膜として扱う。
【0010】
本発明の各実施の形態において、基板からメモリセルに向かう方向を上方という。逆に、メモリセルから基板に向かう方向を下方という。このように、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明するが、例えば、基板とメモリセルとの上下関係が図示と逆になるように配置されてもよい。また、以下の説明で、例えば基板上のメモリセルという表現は、上記のように基板とメモリセルとの上下関係を説明しているに過ぎず、基板とメモリセルとの間に他の部材が配置されていてもよい。
【0011】
本明細書において「αはA、B又はC」を含む、「αはA,B及びCのいずれか」を含む、「αはA,B及びCからなる群から選択される一つ」を含む、といった表現は、特に明示が無い限り、αがA~Cの複数の組み合わせを含む場合を排除しない。さらに、これらの表現は、αが他の要素を含む場合も排除しない。
【0012】
以下の各実施形態は、技術的な矛盾を生じない限り、互いに組み合わせることができる。
【0013】
以下の各実施形態では、半導体装置としてメモリセルアレイを例示して説明するが、本開示の技術をメモリセルアレイ以外の半導体装置(例えば、CPU、ディスプレイ、インターポーザなど)に適用することができる。
【0014】
<第1実施形態>
[半導体装置の全体構成]
本実施形態に係る半導体装置の全体構成について、
図1を用いて説明する。
図1は本実施形態にかかる半導体装置10の各要素の配置を示した斜視図である。
【0015】
半導体装置10はNAND型フラッシュメモリ装置であり、3次元配置されたメモリセルを含む。具体的には、半導体基板11の表面に対して垂直方向にソース側セレクトゲートトランジスタ、多数(例えば64個)のメモリセルトランジスタ、及びドレイン側セレクトゲートトランジスタが直列に接続されてメモリストリングを構成している。なお、直列に接続された多数のメモリセルトランジスタの両端、または多数のメモリセルトランジスタ間のうちの一部の間に、ダミーセルトランジスタを含んでも良い。
【0016】
半導体装置10は半導体基板11上に形成される。半導体基板11上にはメモリセル領域MCR、引き出し領域HURが区画されている。メモリセル領域MCRには3次元に積層された複数のメモリセルを含むメモリセルアレイ16が形成されている。メモリセルアレイ16は、複数の導電層及び複数の絶縁層が交互に積層された積層体を有する。この複数の導電層がメモリストリングの各トランジスタに接続されたソース側セレクトゲート線、ワード線、ドレイン側セレクトゲート線となる。複数の導電層及び複数の絶縁層は引き出し領域HURに延在して積層配線構造体17が形成されている。メモリセルアレイ16上には、図示しないビット線が設けられ、周辺回路18に接続される。積層配線構造体17上には、図示しない配線が設けられ、周辺回路18に接続される。
【0017】
半導体基板11上はさらに周辺回路領域PERが区画されている。周辺回路領域PERには周辺回路18が形成される。周辺回路18は、多数のCMOSトランジスタを有する。周辺回路18は、メモリセルに接続された各ワード線を駆動する駆動回路、各ワード線を選択するデコーダ回路、読出時にビット線電位をセンスするセンスアンプ、及び書込時にビット線に電圧を供給するビット線電位制御回路を含むカラム系回路等を有する。なお、
図1において周辺回路領域PERの配線は省略する。半導体基板11は、チップ外部と信号のやりとりや電源の供給をうけるところのパッド列19を有する。
【0018】
[メモリセル領域MCR及び引き出し領域HURの構成]
図2は本実施形態に係る半導体装置のメモリセル領域MCRと引き出し領域HURの構成を示す斜視図である。図が錯綜するのを防ぐため、導電性を有する部材を示し、図中のハッチングを省略してある。
図2で部材が示されていない部分には、二酸化シリコン等の絶縁材料を用いて絶縁されている。
【0019】
メモリセル領域MCRには、シリコン単結晶を用いた半導体基板11上にメモリセルアレイ16が形成されている。メモリセルアレイ16は、半導体基板11の表面に対して平行に伸びる絶縁層、導電層71、絶縁層、導電層72、絶縁層、導電層73、絶縁層、導電層74、絶縁層を有する。メモリセルアレイ16は、これら複数の絶縁層と複数の導電層とが交互に積層された積層体を有する。図中では導電層が4層しか示されていないが、33層、65層というようにさらに多数の層が積層される。これら導電層はトランジスタに接続されたソース側セレクトゲート線、ワード線、またはドレイン側セレクトゲート線に対応する。
【0020】
メモリセル領域MCRには、複数の絶縁層と複数の導電層を貫通するメモリピラー40が形成される。メモリピラー40は円筒状であり、外周側から中心側に向かって、二酸化シリコン膜を含むブロック絶縁膜、窒化シリコン膜を含む電荷蓄積膜、二酸化シリコン膜を含むトンネル絶縁膜、アモルファス又は多結晶シリコン膜を含む半導体チャネル、二酸化シリコン膜が積層されている。導電層71、72、73、74(セレクトゲート線、またはワード線に対応する)に囲まれた部分は、窒化シリコン膜にキャリアをトラップする不揮発性のメモリセルの一部として機能する。
【0021】
引き出し領域HURには、シリコン単結晶を用いた半導体基板11上に積層配線構造体17が形成されている。引き出し領域HURにも、メモリセル領域MCRから延在する複数の絶縁層と複数の導電層とが形成されている。積層配線構造体17は、半導体基板11の表面に対して平行に伸びる絶縁層、導電層71、絶縁層、導電層72、絶縁層、導電層73、絶縁層、導電層74、絶縁層を有する。積層配線構造体17は、これら複数の絶縁層と複数の導電層が交互に積層された積層体を有する。図中では導電層が4層しか示されていないが、33層、65層というようにさらに多数の層が積層されることは前述したとおりである。そして、これら導電層は引き出し領域HURにおいては、ワード線、ソース側セレクトゲート線、またはドレイン側セレクトゲート線から引き出された配線に対応する。
【0022】
引き出し領域HURにおいて、導電層71、72、73、74(セレクトゲート線、またはワード線から引き出された配線に対応する)は、それぞれ対応するコンタクトプラグ51、52、53、54(ここでコンタクトプラグ51、52、53、54を区別しないときにはコンタクトプラグ50とする)に接続される。各コンタクトプラグ50は、複数の絶縁層と複数の導電層を貫通するコンタクトホールを介して積層配線構造体17の上に引き出される。
【0023】
コンタクトプラグ50は、メモリピラー40よりも直径が大きく、断面積が大きい。また、コンタクトプラグ50は、メモリピラー40よりも配置密度が小さい。言い換えると、コンタクトプラグ50は、メモリピラー40のように狭い面積に高密度に配置する必要がない。
【0024】
[積層配線構造体の構成]
図3は、積層配線構造体17の構成を示す(A)上面図及び(B)断面図である。積層配線構造体17は、半導体基板11上に積層された複数の導電層71、72、73、74(ここで複数の導電層71、72、73、74を区別しないときには導電層70とする)を有する。複数の導電層71、72、73、74は、複数の絶縁層31、32、33、34、35(ここで複数の絶縁層31、32、33、34、35を区別しないときには絶縁層30とする)と交互に、半導体基板11の主面に対して垂直な方向(積層方向)に周期的に積層されている。各々の導電層70は単層である。つまり、1つの導電層70について断面形状を観察した場合、導電層70の膜厚方向(Z方向)に単一の材料が連続していてよい。また、1つの導電層70内部に界面は存在しなくてよい。導電層70の材料は例えばタングステンであってもよい。
【0025】
積層方向に隣接する導電層70と導電層70との間に、絶縁層30が形成されている。半導体基板11と最下層の導電層71との間にも絶縁層31が形成されている。積層方向に隣接する導電層70は互いに絶縁されていればよく、絶縁層30の材料は例えば二酸化シリコン(SiO2)、TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)などの酸化シリコンであってもよい。絶縁層30は例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いて堆積される。
【0026】
コンタクトホールCH1、CH2、CH3、CH4(ここでコンタクトホールCH1、CH2、CH3、CH4を区別しないときにはコンタクトホールCHとする)は、対応する導電層71、72、73、74まで、上層の互いに積層された複数の導電層70および複数の絶縁層30を貫通して形成されている。コンタクトホールCH1は、導電層71を底部として、導電層72、73、74および絶縁層32、33、34、35に共通して形成されている。コンタクトホールCH2は、導電層72を底部として、導電層73、74および絶縁層33、34、35に共通して形成されている。コンタクトホールCH3は、導電層73を底部として、導電層74および絶縁層34、35に共通して形成されている。コンタクトホールCH4は、導電層74を底部として絶縁層35に形成されている。すなわち、コンタクトホールCH1、CH2、CH3、CH4はそれぞれ、積層配線構造体17上面からの深さが異なる。本実施形態においてコンタクトホールCHは、絶縁層35に囲まれる上部における径と、対応する導電層に接続する底部における径とが略同一である。しかしながらこれに限定されず、コンタクトホールCHは、上部における径と底部における径とが異なってもよいし、上部と底部との間の中間部における径が上部または底部における径より大きくてもよい。
【0027】
コンタクトホールCHにはコンタクトプラグ50が形成されている。コンタクトプラグ51はコンタクトホールCH1の底部において導電層71と接続されている。コンタクトプラグ52はコンタクトホールCH2の底部において対応する導電層72と接続されている。コンタクトプラグ53はコンタクトホールCH3の底部において導電層73と接続されている。コンタクトプラグ54はコンタクトホールCH4の底部において対応する導電層74と接続されている。すなわち、コンタクトプラグ51、52、53、54はそれぞれ、積層配線構造体17上面からの長さが異なる。コンタクトプラグ50はいずれも円柱形であり、コンタクトプラグ50の材料は例えばタングステンなどの金属であってもよい。
【0028】
コンタクトプラグ50は、コンタクトホールCHにおいて貫通する上層の導電層70と絶縁されている。コンタクトホールCHの側面には絶縁膜60が円筒状に形成されている。すなわち、コンタクトプラグ50の側面は、絶縁膜60で覆われている。絶縁膜60の材料は例えば二酸化シリコン(SiO2)、TEOSなどの酸化シリコンであってもよい。
【0029】
[積層配線構造体の製造方法]
図4~
図10を参照して、本実施形態に係る積層配線構造体17の製造方法について説明する。
【0030】
まず
図4に示すように、半導体基板11上に、絶縁層31(TEOS膜)、犠牲層21(SiN膜)、絶縁層32(TEOS膜)、犠牲層22(SiN膜)、絶縁層33(TEOS膜)、犠牲層23(SiN膜)、絶縁層34(TEOS膜)、犠牲層24(SiN膜)、絶縁層35(TEOS膜)を順に成膜して、積層体を形成する。これら絶縁層31、32、33、34、35(TEOS膜)および犠牲層21、22、23、24(SiN膜、ここで犠牲層21、22、23、24を区別しないときには犠牲層20とする)は例えばCVD装置を用いて堆積される。交互に積層された絶縁層30と犠牲層20とは互いに接するように形成される。本実施形態において絶縁層30の材料はTEOS膜を例示したが、絶縁層30の材料はこれに限定されず、例えば二酸化シリコン(SiO
2)であってもよい。本実施形態において犠牲層20の材料は窒化シリコン膜(SiN)を例示したが、犠牲層20の材料はこれに限定されず、例えばシリコンであってもよく、タングステンなどの金属であってもよい。
【0031】
積層体の上にはコンタクトホールCHのパターンを有するマスク80が形成される。マスク80は、ハードマスクであることが好ましく、マスク80の材料は例えばカーボンであってもよい。マスク80の材料は組成の異なる2以上の材料を含んでもよく、その場合、マスク80は組成の異なる材料を含む2以上の層を含む積層構造を有していてもよい。マスク80は例えばCVD装置を用いて堆積される。マスク80のパターンは、レジストをフォトリソグラフィすることにより形成されるレジストマスクを用いて形成される。マスク80のパターンは、コンタクトホールCHを形成する領域に絶縁層35を露出する開口を有する。
【0032】
図5~8に示すように、コンタクトホールCHは、後述するイオンビーム照射装置を用いてマスク80を介して特定の領域にイオンビームを照射することによりエッチングをすることで形成される。まず
図5に示すように、コンタクトホールCH1、CH2、CH3、CH4が形成される領域すべてを含む領域A(第1~第4の領域)にイオンビームを照射することにより、領域A内のマスク80が露出する積層体の絶縁層35を選択的にエッチングする。領域Aは、引き出し領域HUR全体であってもよいし、コンタクトホールCH1、CH2、CH3、CH4が形成される領域すべてを含む最小の領域であってもよい。絶縁層35を選択的にエッチングするために、イオンビームは犠牲層24より絶縁層35に対して選択比の高いイオン種を含むことが好ましい。絶縁層35が酸化シリコンを含み、犠牲層24が窒化シリコン、シリコン、又はタングステンを含む場合、イオン種はHを含まないCxFy+イオンであることが好ましい。CxFy+イオンとしては例えば、C
3F
5+イオンであってもよく、C
4F
6+イオンであってもよい。このようなイオン種を含むイオンビームを照射することにより、犠牲層24がエッチングストッパとなり、絶縁層35を選択的にエッチングすることができる。積層体の絶縁層35を選択的にエッチングすることで、犠牲層24が露出されコンタクトホールCH4が形成される。
【0033】
図6に示すように、コンタクトホールCH1、CH2、CH3が形成される領域すべてを含む領域B(第2~第4の領域)にイオンビームを照射することにより、領域B内のマスク80が露出する積層体の犠牲層24を選択的にエッチングする。領域Bは、領域Aの一部である。領域Bは、コンタクトホールCH4が形成される領域を含まなければよく、コンタクトホールCH1、CH2、CH3が形成される領域すべてを含む最小の領域であってもよい。犠牲層24を選択的にエッチングするために、イオンビームは絶縁層34より犠牲層24に対して選択比の高いイオン種を含むことが好ましい。絶縁層34が酸化シリコンを含み、犠牲層24が窒化シリコン、又はシリコンを含む場合、イオン種はHを含むCxHyFz+イオンであることが好ましい。CxHyFz+イオンとしては例えば、CHF
2+イオンまたは、CH
2F+イオンであってもよい。絶縁層34が酸化シリコンを含み、犠牲層24が金属、例えばタングステンを含む場合、イオン種はFを多く含むNFxイオン(x>2)、SFxイオン(x>3)、CFxイオン(x>3)から成る群から選択される1種であることが好ましい。このときのイオンエネルギーは例えば500eV以下など、低いほうが絶縁層34との選択比をとりやすいので好ましい。このようなイオン種を含むイオンビームを照射することにより、絶縁層34がエッチングストッパとなり、犠牲層24を選択的にエッチングすることができる。積層体の犠牲層24を選択的にエッチングすることで、絶縁層34が露出される。
【0034】
引き続き領域Bにイオンビームを照射することにより、領域B内のマスク80が露出する積層体の絶縁層34を選択的にエッチングする。絶縁層34を選択的にエッチングするために、イオンビームは犠牲層23より絶縁層34に対して選択比の高いイオン種を含むことが好ましい。絶縁層34が酸化シリコンを含み、犠牲層23が窒化シリコン、シリコン、又はタングステンを含む場合、イオン種はHを含まないCxFy+イオンであることが好ましい。CxFy+イオンとしては例えば、C3F5+イオンまたは、C4F6+イオンであってもよい。このようなイオン種を含むイオンビームを照射することにより、犠牲層23がエッチングストッパとなり、絶縁層34を選択的にエッチングすることができる。積層体の絶縁層34を選択的にエッチングすることで、犠牲層23が露出されコンタクトホールCH3が形成される。
【0035】
図7に示すように、コンタクトホールCH1、CH2が形成される領域すべてを含む(第3および第4の領域)にイオンビームを照射することにより、領域C内のマスク80が露出する積層体の犠牲層23を選択的にエッチングする。領域Cは、領域Aの一部であり、領域Bの一部である。領域Cは、コンタクトホールCH3、CH4が形成される領域を含まなければよく、コンタクトホールCH1、CH2が形成される領域すべてを含む最小の領域であってもよい。上述したように、犠牲層23を選択的にエッチングするために、イオンビームは絶縁層33より犠牲層23に対して選択比の高いイオン種を含むことが好ましい。絶縁層33が酸化シリコンを含み、犠牲層23が窒化シリコン、又はシリコンを含む場合、イオン種はHを含むCxHyFz+イオンであることが好ましい。CxHyFz+イオンとしては例えば、CHF
2+イオンまたは、CH
2F+イオンであってもよい。絶縁層33が酸化シリコンを含み、犠牲層23が金属、例えばタングステンを含む場合、イオン種はFを多く含むNFxイオン(x>2)、SFxイオン(x>3)、CFxイオン(x>3)から成る群から選択される1種であることが好ましい。このときのイオンエネルギーは例えば500eV以下など、低いほうが絶縁層33との選択比をとりやすいので好ましい。このようなイオン種を含むイオンビームを照射することにより、絶縁層33がエッチングストッパとなり、犠牲層23を選択的にエッチングすることができる。積層体の犠牲層23を選択的にエッチングすることで、絶縁層33が露出される。
【0036】
引き続き領域Cにイオンビームを照射することにより、領域C内のマスク80が露出する積層体の絶縁層33を選択的にエッチングする。上述したように、絶縁層33を選択的にエッチングするために、イオンビームは犠牲層22より絶縁層33に対して選択比の高いイオン種を含むことが好ましい。絶縁層33が酸化シリコンを含み、犠牲層22が窒化シリコン、シリコン、又はタングステンを含む場合、イオン種はHを含まないCxFy+イオンであることが好ましい。CxFy+イオンとしては例えば、C3F5+イオンであってもよく、C4F6+イオンであってもよい。このようなイオン種を含むイオンビームを照射することにより、犠牲層22がエッチングストッパとなり、絶縁層33を選択的にエッチングすることができる。積層体の絶縁層33を選択的にエッチングすることで、犠牲層22が露出されコンタクトホールCH2が形成される。
【0037】
図8に示すように、コンタクトホールCH1が形成される領域を含む領域D(第4の領域)にイオンビームを照射することにより、領域D内のマスク80が露出する積層体の犠牲層22を選択的にエッチングする。領域Dは、領域Aの一部であり、領域Bおよび領域Cの一部である。領域Dは、コンタクトホールCH2、CH3、CH4が形成される領域を含まなければよく、コンタクトホールCH1が形成される領域を含む最小の領域であってもよい。上述したように、犠牲層22を選択的にエッチングするために、イオンビームは絶縁層32より犠牲層22に対して選択比の高いイオン種を含むことが好ましい。絶縁層32が酸化シリコンを含み、犠牲層22が窒化シリコン、又はシリコンを含む場合、イオン種はHを含むCxHyFz+イオンであることが好ましい。CxHyFz+イオンとしては例えば、CHF
2+イオンまたは、CH
2F+イオンであってもよい。絶縁層32が酸化シリコンを含み、犠牲層22が金属、例えばタングステンを含む場合、イオン種はFを多く含むNFxイオン(x>2)、SFxイオン(x>3)、CFxイオン(x>3)から成る群から選択される1種であることが好ましい。このときのイオンエネルギーは例えば500eV以下など、低いほうが絶縁層32との選択比をとりやすいので好ましい。このようなイオン種を含むイオンビームを照射することにより、絶縁層32がエッチングストッパとなり、犠牲層22を選択的にエッチングすることができる。積層体の犠牲層22を選択的にエッチングすることで、絶縁層32が露出される。
【0038】
引き続き領域Dにイオンビームを照射することにより、領域D内のマスク80が露出する積層体の絶縁層32を選択的にエッチングする。上述したように、絶縁層32を選択的にエッチングするために、イオンビームは犠牲層21より絶縁層32に対して選択比の高いイオン種を含むことが好ましい。絶縁層32が酸化シリコンを含み、犠牲層21が窒化シリコン、シリコン、又はタングステンを含む場合、イオン種はHを含まないCxFy+イオンであることが好ましい。CxFy+イオンとしては例えば、C3F5+イオンであってもよく、C4F6+イオンであってもよい。このようなイオン種を含むイオンビームを照射することにより、犠牲層21がエッチングストッパとなり、絶縁層32を選択的にエッチングすることができる。積層体の絶縁層32を選択的にエッチングすることで、犠牲層21が露出されコンタクトホールCH1が形成される。
【0039】
本実施形態においては、異なる4層の犠牲層21、22、23、24を露出するコンタクトホールCH1、CH2、CH3、CH4を形成する方法を示した。しかしながらこれに限定されず、さらに多数の層が積層される場合、対応するコンタクトホールを形成する領域毎に特定のイオン種を含むイオンビームを切り替えて照射することを繰り返すことにより、上述の方法でさらに多数の深さが異なるコンタクトホールCHを形成することができる。本実施形態においては、大きい領域Aから小さい領域Dまで順に照射領域を縮小する方法を示した。しかしながらこれに限定されず、
図6から
図8に示す領域B、C、Dを用いる工程は順不同である。本実施形態においては、引き出し領域HURの略全面を、コンタクトホールCH毎に分割してそれぞれの照射領域とした。しかしながらこれに限定されず、照射領域の面積は、コンタクトホールCHの面積の約2倍まで縮小することができる。照射領域を縮小することで、イオンビームの照射時間を短縮することができ、積層配線構造体の製造効率を向上することができる。
【0040】
上述のように本実施形態に係る積層配線構造体の製造方法は、特定の領域に特定のイオン種を含むイオンビームを照射することにより特定の層を選択的にエッチングすることで、コンタクトホールCHの積層体上面からの深さを制御することができ、積層配線構造体の信頼性を向上することができる。
【0041】
図9に示すように、マスク80を除去した後、積層体の上面、コンタクトホールCHの内側面および底部には、絶縁膜60が形成される。絶縁膜60は例えば酸化シリコンであってもよく、CVD装置を用いて堆積される。絶縁膜60はコンタクトホールCHの底部である犠牲層20の上にも形成される。このため
図10に示すように、RIEのような異方性エッチングを行い、積層体の上面およびコンタクトホールの底部の絶縁膜60を除去する。コンタクトホールCHの内側面には絶縁膜60が残る。
【0042】
底部に対応する犠牲層20を露出するコンタクトホールCHには、例えばタングステンなどの金属を埋め込むことで、コンタクトプラグ50が形成される。さらに、積層体の所定領域に図示しないスリットを掘り下げ、そのスリットより、積層体に含まれる犠牲層20を一括して除去する。その結果、犠牲層20が存在していた部分に空洞が生じる。そして、その空洞にタングステン等の金属を埋め込むことによって、
図3に示す導電層70が形成される。
【0043】
上述のように本実施形態に係る積層配線構造体の製造方法は、特定の領域に特定のイオン種を含むイオンビームを照射することにより積層体上面からの深さが異なるコンタクトホールCH1、CH2、CH3、CH4を形成することで、積層体内のそれぞれの導電層に接続するコンタクトプラグ50を容易に形成することができる。フォトリソグラフィを多用する必要がなく、積層配線構造体の製造効率を向上することができる。
【0044】
[イオンビーム照射装置の構成]
図11は、イオンビーム照射装置の構成を示す模式図である。
図11に示すイオンビーム照射装置100は、ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマ型であり、プラズマ生成室200と、ビームライン300と、ビーム照射室400と、を備える。
【0045】
プラズマ生成室200は、真空チャンバ内で磁界を発生させてマイクロ波を導入することでプラズマを発生する。プラズマが発生した状態でガスを導入して、加速電極に所定の加速電圧を印加すると、イオンビームを生成する。本実施形態に係るイオンビーム照射装置100は、異なるイオン種を含むイオンビームを生成する2つのプラズマ生成室200a、200b(ここでプラズマ生成室200a、200bを区別しないときはプラズマ生成室200とする)を備える。プラズマ生成室200aは、例えば、C4F6ガスを用いて絶縁層30(TEOS膜)を選択的にエッチングするC3F5+イオンまたは、C4F6+イオンを含むイオンビームを生成してもよい。プラズマ生成室200bは、例えば、CH3Fガスを用いて犠牲層20(SiN膜)を選択的にエッチングするCHF2+イオンまたは、CH2F+イオンを含むイオンビームを生成してもよい。
【0046】
プラズマ生成室200a、200bで生成されたイオンビームは、それぞれマスセレクタ210a、210b、シャッタ220a、220bを介して1つのビームライン300に到達する。マスセレクタ210a、210bは、それぞれの目的イオンを分離して引き出す。例えば、真空チャンバ内で、炭素元素およびフッ素元素を含むCF系のプラズマ、または炭素元素、水素元素、フッ素元素を含むCHF系のプラズマを発生させた後、マスセレクタ210a、210bでC3F5+イオンまたは、C4F6+イオン、またはCHF2+イオンまたは、CH2F+イオンを抽出することができる。シャッタ220a、220bは、例えばファラデーカップであり、それぞれのイオンビームを遮蔽する。シャッタ制御部230は、シャッタ220a、220bの開閉を制御する。シャッタ制御部230は、異なるイオン種を含む2つのイオンビームのうち何れか1つを選択、または両方遮蔽する。すなわち、シャッタ制御部230は、少なくともシャッタ220aを開くときシャッタ220bを閉じ、シャッタ220bを開くときシャッタ220aを閉じる。このような構成を有することで、異なるイオン種を含む2つのイオンビームを適宜切り替えることができる。
【0047】
ビームライン300は、プラズマ生成室200aまたはプラズマ生成室200bで生成されたイオンビームを、コンデンサレンズ310、絞り320、偏向器330、対物レンズ340を介してビーム照射室400まで到達させる。イオンビームは、コンデンサレンズ310、絞り320、対物レンズ340で集束することによってイオンビームのスポットサイズを制御することができる。イオンビームのスポットサイズ(半値全幅)は例えばナノメートルオーダーからマイクロメートルオーダーであってもよい。偏向器330は、イオンビームを一定の順序で走査したり、任意の位置に偏向することができる。このような構成を有することで、イオンビームを特定の照射領域内だけに照射することができる。
【0048】
ビーム照射室400は、基板を固定するステージ410と、ステージ410とイオンビームの相対位置を制御する相対位置制御部420と、を備える。相対位置制御部420は、例えばステージ410を動かすことによってイオンビームの照射領域を制御することができる。このような構成を有することで、イオンビームを照射する領域を制御することができる。
【0049】
上述のように本実施形態に係るイオンビーム照射装置は、特定の領域に特定のイオン種を含むイオンビームを照射することにより特定の層を選択的にエッチングすることで、コンタクトホールCHの積層体上面からの深さを制御することができ、半導体装置の信頼性を向上することができる。また、フォトリソグラフィを多用する必要がなく、半導体装置の製造効率を向上することができる。
【0050】
<第2実施形態>
本実施形態に係る積層配線構造体の構成は、第1実施形態に係る積層配線構造体の構成と同じである。本実施形態に係る積層配線構造体の製造方法は、コンタクトホールCH1、CH2、CH3の形成方法以外、第1実施形態に係る積層配線構造体の製造方法と同じである。第1実施形態と同じである説明は省略し、ここでは第1実施形態に係る積層配線構造体の製造方法と相違する部分について説明する。
【0051】
[積層配線構造体の製造方法]
図12および
図13を参照して、本実施形態に係る積層配線構造体17の製造方法について説明する。
【0052】
まず
図4および
図5で説明した方法によって、コンタクトホールCH4が形成される。
【0053】
図12に示すように、コンタクトホールCH1、CH2が形成される領域すべてを含む領域E(第3および第4の領域)にイオンビームを照射することにより、領域E内のマスク80が露出する積層体の犠牲層24を選択的にエッチングする。領域Eは、領域Aの一部である。領域Bは、コンタクトホールCH3、CH4が形成される領域を含まなければよく、コンタクトホールCH1、CH2が形成される領域を含む最小の領域であってもよい。犠牲層24を選択的にエッチングするために、イオンビームは絶縁層34より犠牲層24に対して選択比の高いイオン種を含むことが好ましい。絶縁層34が酸化シリコンを含み、犠牲層24が窒化シリコン、又はシリコンを含む場合、イオン種はHを含むCxHyFz+イオンであることが好ましい。CxHyFz+イオンとしては例えば、CHF
2+イオンまたは、CH
2F+イオンであってもよい。絶縁層34が酸化シリコンを含み、犠牲層24が金属、例えばタングステンを含む場合、イオン種はFを多く含むNFxイオン(x>2)、SFxイオン(x>3)、CFxイオン(x>3)から成る群から選択される1種であることが好ましい。このときのイオンエネルギーは例えば500eV以下など、低いほうが絶縁層34との選択比をとりやすいので好ましい。このようなイオン種を含むイオンビームを照射することにより、絶縁層34がエッチングストッパとなり、犠牲層24を選択的にエッチングすることができる。積層体の犠牲層24を選択的にエッチングすることで、絶縁層34が露出される。
【0054】
引き続き領域Eにイオンビームを照射することにより、領域B内のマスク80が露出する積層体の絶縁層34を選択的にエッチングする。絶縁層34を選択的にエッチングするために、イオンビームは犠牲層23より絶縁層34に対して選択比の高いイオン種を含むことが好ましい。絶縁層34が酸化シリコンを含み、犠牲層23が窒化シリコン、シリコン、又はタングステンを含む場合、イオン種はHを含まないCxFy+イオンであることが好ましい。CxFy+イオンとしては例えば、C3F5+イオンであってもよく、C4F6+イオンであってもよい。このようなイオン種を含むイオンビームを照射することにより、犠牲層23がエッチングストッパとなり、絶縁層34を選択的にエッチングすることができる。積層体の絶縁層34を選択的にエッチングすることで、犠牲層23が露出される。
【0055】
引き続き領域Eにイオンビームを照射することにより、領域E内のマスク80が露出する積層体の犠牲層23を選択的にエッチングする。上述したように、犠牲層23を選択的にエッチングするために、イオンビームは絶縁層33より犠牲層23に対して選択比の高いイオン種を含むことが好ましい。絶縁層33が酸化シリコンを含み、犠牲層23が窒化シリコン、又はシリコンを含む場合、イオン種はHを含むCxHyFz+イオンであることが好ましい。CxHyFz+イオンとしては例えば、CHF2+イオンまたは、CH2F+イオンであってもよい。絶縁層33が酸化シリコンを含み、犠牲層23が金属、例えばタングステンを含む場合、イオン種はFを多く含むNFxイオン(x>2)、SFxイオン(x>3)、CFxイオン(x>3)から成る群から選択される1種であることが好ましい。このときのイオンエネルギーは例えば500eV以下など、低いほうが絶縁層33との選択比をとりやすいので好ましい。このようなイオン種を含むイオンビームを照射することにより、絶縁層33がエッチングストッパとなり、犠牲層23を選択的にエッチングすることができる。積層体の犠牲層23を選択的にエッチングすることで、絶縁層33が露出される。
【0056】
引き続き領域Eにイオンビームを照射することにより、領域E内のマスク80が露出する積層体の絶縁層33を選択的にエッチングする。上述したように、絶縁層33を選択的にエッチングするために、イオンビームは犠牲層22より絶縁層33に対して選択比の高いイオン種を含むことが好ましい。絶縁層33が酸化シリコンを含み、犠牲層22が窒化シリコン、シリコン、又はタングステンを含む場合、イオン種はHを含まないCxFy+イオンであることが好ましい。CxFy+イオンとしては例えば、C3F5+イオンであってもよく、C4F6+イオンであってもよい。このようなイオン種を含むイオンビームを照射することにより、犠牲層22がエッチングストッパとなり、絶縁層33を選択的にエッチングすることができる。積層体の絶縁層33を選択的にエッチングすることで、犠牲層22が露出されコンタクトホールCH2が形成される。
【0057】
図13に示すように、コンタクトホールCH1、CH3が形成される領域を含む領域F(第2および第4の領域)にイオンビームを照射することにより、領域F内のマスク80が露出する積層体の犠牲層22および犠牲層24を選択的にエッチングする。領域Fは、領域Aの一部である。領域Fは、コンタクトホールCH2、CH4が形成される領域を含まなければよく、コンタクトホールCH1、CH3が形成される領域を含む最小の領域であってもよい。上述したように、犠牲層22および犠牲層24を選択的にエッチングするために、イオンビームは絶縁層32および絶縁層34より犠牲層22および犠牲層24に対して選択比の高いイオン種を含むことが好ましい。絶縁層32および絶縁層34が酸化シリコンを含み、犠牲層22および犠牲層24が窒化シリコン、又はシリコンを含む場合、イオン種はHを含むCxHyFz+イオンであることが好ましい。CxHyFz+イオンとしては例えば、CHF
2+イオンまたは、CH
2F+イオンであってもよい。絶縁層32および絶縁層34が酸化シリコンを含み、犠牲層22および犠牲層24が金属、例えばタングステンを含む場合、イオン種はFを多く含むNFxイオン(x>2)、SFxイオン(x>3)、CFxイオン(x>3)から成る群から選択される1種であることが好ましい。このときのイオンエネルギーは例えば500eV以下など、低いほうが絶縁層32および絶縁層34との選択比をとりやすいので好ましい。このようなイオン種を含むイオンビームを照射することにより、絶縁層32および絶縁層34がエッチングストッパとなり、犠牲層22および犠牲層24を選択的にエッチングすることができる。積層体の犠牲層22および犠牲層24を選択的にエッチングすることで、絶縁層32および絶縁層34が露出される。
【0058】
引き続き領域Fにイオンビームを照射することにより、領域F内のマスク80が露出する積層体の絶縁層32および絶縁層34を選択的にエッチングする。上述したように、絶縁層32および絶縁層34を選択的にエッチングするために、イオンビームは犠牲層21および犠牲層23より絶縁層32および絶縁層34に対して選択比の高いイオン種を含むことが好ましい。絶縁層32および絶縁層34が酸化シリコンを含み、犠牲層21および犠牲層23が窒化シリコン、シリコン、又はタングステンを含む場合、イオン種はHを含まないCxFy+イオンであることが好ましい。CxFy+イオンとしては例えば、C3F5+イオンであってもよく、C4F6+イオンであってもよい。このようなイオン種を含むイオンビームを照射することにより、犠牲層21および犠牲層23がエッチングストッパとなり、絶縁層32および絶縁層34を選択的にエッチングすることができる。積層体の絶縁層32および絶縁層34を選択的にエッチングすることで、犠牲層21および犠牲層23が露出されコンタクトホールCH1およびCH3が形成される。
【0059】
本実施形態においては、異なる4層の犠牲層21、22、23、24を露出するコンタクトホールCH1、CH2、CH3、CH4を形成する方法を示した。しかしながらこれに限定されず、さらに多数の層が積層される場合、対応するコンタクトホールを形成する領域毎に特定のイオン種を含むイオンビームを切り替えて照射することを繰り返すことにより、上述の方法でさらに多数の深さが異なるコンタクトホールCHを形成することができる。また、
図12および
図13に示す領域E、Fを用いる工程は順不同である。第1実施形態に係る積層配線構造体の製造方法よりも照射領域の切り替えが1回少なく、同様の積層配線構造体を製造することができる。
【0060】
次に
図9および
図10で説明した方法によって、
図3に示す積層配線構造体17が形成される。
【0061】
上述のように本実施形態に係る積層配線構造体の製造方法は、特定の領域に特定のイオン種を含むイオンビームを照射することにより特定の層を選択的にエッチングすることで、コンタクトホールCHの積層体上面からの深さを制御することができ、積層配線構造体の信頼性を向上することができる。また、積層体内のそれぞれの導電層に接続するコンタクトプラグ50を容易に形成することができ、積層配線構造体の製造効率を向上することができる。
【0062】
<第3実施形態>
本実施形態に係る積層配線構造体の構成は、コンタクトホールCHおよびコンタクトプラグ50の形状以外、第1実施形態に係る積層配線構造体の構成と同じである。本実施形態に係る積層配線構造体の製造方法は、マスク80を用いずイオンビームをコンタクトホールCHが形成される領域にのみ照射すること以外、第1実施形態に係る積層配線構造体の製造方法と同じである。第1実施形態と同じである説明は省略し、ここでは第1実施形態に係る積層配線構造体の構成および製造方法と相違する部分について説明する。
【0063】
[積層配線構造体の構成]
図14は、積層配線構造体17aの構成を示す(A)上面図及び(B)断面図である。積層配線構造体17aは、半導体基板11上に積層された複数の導電層71、72、73、74を有する。複数の導電層71、72、73、74は、複数の絶縁層31、32、33、34、35と交互に、半導体基板11の主面に対して垂直な方向に周期的に積層されている。
【0064】
コンタクトホールCH1a、CH2a、CH3a、CH4a(ここでコンタクトホールCH1a、CH2a、CH3a、CH4aを区別しないときにはコンタクトホールCHaとする)は、対応する導電層71、72、73、74まで、上層の互いに積層された複数の導電層70および複数の絶縁層30を貫通して形成されている。すなわち、コンタクトホールCH1a、CH2a、CH3a、CH4aはそれぞれ、積層配線構造体17a上面からの深さが異なる。本実施形態においてコンタクトホールCHaは、絶縁層35に囲まれる上部における径と、対応する導電層に接続する底部における径とが異なる。コンタクトホールCHaは、上部における径より底部における径が小さい。しかしながらこれに限定されず、上部と底部との間の中間部における径が上部における径より大きくてもよい。
【0065】
コンタクトホールCHaにはコンタクトプラグ50aが形成されている。コンタクトプラグ51a、52a、53a、54aはそれぞれ、積層配線構造体17a上面からの長さが異なる。コンタクトプラグ50aはいずれも円錐台形であってもよい。
【0066】
コンタクトプラグ50aは、コンタクトホールCHaにおいて貫通する上層の導電層70と絶縁されている。コンタクトホールCHaの側面には絶縁膜60が円筒状に形成されている。すなわち、コンタクトプラグ50aの側面は、絶縁膜60で覆われている。
【0067】
[積層配線構造体の製造方法]
図15を参照して、本実施形態に係る積層配線構造体17aの製造方法について説明する。
【0068】
本実施形態においてマスクは形成しなくてもよい。コンタクトホールCHaは、それぞれのコンタクトホールCHaを形成する領域にイオンビームを照射することによりエッチングをすることで形成される。イオンビームを照射する領域がコンタクトホールCHaを形成する領域に限定されること以外は、第1実施形態および第2実施形態に係る積層配線構造体の製造方法と同じであるので省略する。第1実施形態に係る積層配線構造体の製造方法よりも、マスクを形成する必要なく類似の積層配線構造体を製造することができる。
【0069】
上述のように本実施形態に係る積層配線構造体の製造方法は、特定の領域に特定のイオン種を含むイオンビームを照射することにより特定の層を選択的にエッチングすることで、コンタクトホールCHaの積層体上面からの深さを制御することができ、積層配線構造体の信頼性を向上することができる。また、積層体内のそれぞれの導電層に接続するコンタクトプラグ50aを容易に形成することができ、積層配線構造体の製造効率を向上することができる。
【0070】
<第4実施形態>
本実施形態に係る積層配線構造体の構成は、積層体が階段構造であること以外、第1実施形態に係る積層配線構造体の構成と同じである。本実施形態に係る積層配線構造体の製造方法は、マスク80を用いずイオンビームを用いて積層体の階段構造が形成されること以外、第1実施形態に係る積層配線構造体の製造方法と同じである。第1実施形態と同じである説明は省略し、ここでは第1実施形態に係る積層配線構造体の構成および製造方法と相違する部分について説明する。
【0071】
[積層配線構造体の構成]
図16は、積層配線構造体17bの構成を示す(A)上面図及び(B)断面図である。積層配線構造体17bは、半導体基板11上に積層された複数の導電層71b、72b、73b、74bを有する。複数の導電層71b、72b、73b、74bは、複数の絶縁層31b、32b、33b、34b、35bと交互に、半導体基板11の主面に対して垂直な方向に周期的に積層されている。複数の導電層71b、72b、73b、74bおよび複数の絶縁層31b、32b、33b、34b、35bはそれぞれ、下層の導電層70bを露出するように階段構造に形成されている。積層体の上には階段構造を包埋する絶縁体90bが形成されている。
【0072】
絶縁体90bには、コンタクトホールCH1b、CH2b、CH3b、CH4b(ここでコンタクトホールCH1b、CH2b、CH3b、CH4bを区別しないときにはコンタクトホールCHbとする)が形成されている。コンタクトホールCH1b、CH2b、CH3b、CH4bは、対応する導電層71b、72b、73b、74bまで、絶縁体90bを貫通して形成されている。すなわち、コンタクトホールCH1b、CH2b、CH3b、CH4bはそれぞれ、積層配線構造体17b上面からの深さが異なる。本実施形態においてコンタクトホールCHbは、絶縁体90bに囲まれる上部における径と、対応する導電層に接続する底部における径とが略同一である。しかしながらこれに限定されず、コンタクトホールCHbは、上部における径と底部における径とが異なってもよいし、上部と底部との間の中間部における径が上部または底部における径より大きくてもよい。
【0073】
コンタクトホールCHbにはコンタクトプラグ51b、52b、53b、54bが形成されている。コンタクトプラグ51b、52b、53b、54bはそれぞれ、積層配線構造体17b上面からの長さが異なる。
【0074】
[積層配線構造体の製造方法]
図17を参照して、本実施形態に係る積層配線構造体17bの製造方法について説明する。
【0075】
本実施形態においてマスクは形成しない。本実施形態に係る積層体の階段構造は、マスクを用いずに第1実施形態に係る積層配線構造体の製造方法で説明したようにイオンビームを照射することによりエッチングをすることで形成される。イオンビームを照射するときマスクを用いないこと以外は、第1実施形態および第2実施形態に係る積層配線構造体の製造方法と同じであるので省略する。第1実施形態に係る積層配線構造体の製造方法よりも、マスクを形成する必要なく類似の積層配線構造体を製造することができる。
【0076】
上述のように本実施形態に係る積層配線構造体の製造方法は、特定の領域に特定のイオン種を含むイオンビームを照射することにより特定の層を選択的にエッチングすることで、階段構造の段差を制御することができ、積層配線構造体の信頼性を向上することができる。また、積層体内のそれぞれの導電層に接続するコンタクトプラグ50bを容易に形成することができ、積層配線構造体の製造効率を向上することができる。
【0077】
<第5実施形態>
本実施形態に係る積層配線構造体の構成は、第1実施形態に係る積層配線構造体の構成と同じである。本実施形態に係る積層配線構造体の製造方法は、第1実施形態に係る積層配線構造体の製造方法と同じである。本実施形態に係るイオンビーム照射装置の構成は、2つのビームラインを備えること以外、第1実施形態に係るイオンビーム照射装置の構成と同じである。第1実施形態と同じである説明は省略し、ここでは第1実施形態に係るイオンビーム照射装置の構成と相違する部分について説明する。
【0078】
[イオンビーム照射装置の構成]
図18は、イオンビーム照射装置の構成を示す模式図である。
図18に示すイオンビーム照射装置100aは、ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマ型であり、プラズマ生成室200と、ビームライン300と、ビーム照射室400と、を備える。
【0079】
本実施形態に係るイオンビーム照射装置100aは、同じイオン種を含むイオンビームを生成する2つのプラズマ生成室200a、200b(ここでプラズマ生成室200a、200bを区別しないときはプラズマ生成室200とする)を備える。プラズマ生成室200a、200bは例えば、絶縁層30(TEOS膜)を選択的にエッチングするC3F5+イオンまたは、C4F6+イオン、および犠牲層20(SiN膜)を選択的にエッチングするCHF2+イオンまたは、CH2F+イオンの両方を含むイオンビームを生成してもよい。
【0080】
プラズマ生成室200a、200bで生成されたイオンビームは、それぞれマスセレクタ210a、210b、シャッタ220a、220bを介してそれぞれのビームライン300a、300bに到達する。マスセレクタ210a、210bは、それぞれの目的イオンを分離して引き出す。例えば、真空チャンバ内で、炭素元素およびフッ素元素を含むCF系のプラズマ、および炭素元素、水素元素、フッ素元素を含むCHF系のプラズマの両方を発生させた後、マスセレクタ210a、210bでC3F5+イオンまたは、C4F6+イオン、またはCHF2+イオンまたは、CH2F+イオンのどちらかを抽出(選択)することができる。マスセレクタ210a、210bは、同じイオン種を抽出(選択)する。シャッタ220a、220bは、例えばファラデーカップであり、それぞれのイオンビームを遮蔽する。シャッタ制御部230は、シャッタ220a、220bの開閉を制御する。シャッタ制御部230は、同じイオン種を含む2つのイオンビームの両方を照射、または両方を遮蔽する。すなわち、シャッタ制御部230は、少なくともシャッタ220aを開くときシャッタ220bを開き、シャッタ220aを閉じるときシャッタ220bを閉じる。このような構成を有することで、同じイオン種を含む2つのイオンビームを同時に照射することができ、エッチングの効率を向上することができる。
【0081】
ビームライン300a、300bは、プラズマ生成室200aまたはプラズマ生成室200bで生成されたイオンビームを、コンデンサレンズ310a、310b、絞り320a、320b、偏向器330a、330b、対物レンズ340a、340bを介してビーム照射室400まで到達させる。イオンビームは、コンデンサレンズ310a、310b、絞り320a、320b、対物レンズ340a、340bで集束することによってイオンビームのスポットサイズを制御することができる。イオンビームのスポットサイズ(半値全幅)は例えばナノメートルオーダーからマイクロメートルオーダーであってもよい。偏向器330a、330bは、イオンビームを一定の順序で走査したり、任意の位置に偏向することができる。このような構成を有することで、2つのイオンビームを特定の照射領域内だけに照射することができる。
【0082】
ビーム照射室400は、基板を固定するステージ410と、ステージ410とイオンビームの相対位置を制御する相対位置制御部420と、を備える。相対位置制御部420は、例えばステージ410を動かすことによってイオンビームの照射領域を制御することができる。このような構成を有することで、2つのイオンビームを照射する領域を制御することができる。
【0083】
上述のように本実施形態に係るイオンビーム照射装置は、特定の領域に特定のイオン種を含むイオンビームを照射することにより特定の層を選択的にエッチングすることで、コンタクトホールCHの積層体上面からの深さを制御することができ、半導体装置の信頼性を向上することができる。また、フォトリソグラフィを多用する必要がなく、半導体装置の製造効率を向上することができる。
【0084】
<変形例1>
本変形例に係るイオンビーム照射装置の構成は、2つのマスセレクタで異なるイオン種を選択すること以外、第5実施形態に係るイオンビーム照射装置の構成と同じである。第5実施形態と同じである説明は省略し、ここでは第5実施形態に係るイオンビーム照射装置の構成と相違する部分について説明する。
【0085】
[イオンビーム照射装置の構成]
本変形例に係るイオンビーム照射装置100aは、同じイオン種を含むイオンビームを生成する2つのプラズマ生成室200a、200b(ここでプラズマ生成室200a、200bを区別しないときはプラズマ生成室200とする)を備える。プラズマ生成室200a、200bは例えば、絶縁層30(TEOS膜)を選択的にエッチングするC3F5+イオンまたは、C4F6+イオン、および犠牲層20(SiN膜)を選択的にエッチングするCHF2+イオンまたは、CH2F+イオンの両方を含むイオンビームを生成してもよい。
【0086】
プラズマ生成室200a、200bで生成されたイオンビームは、それぞれマスセレクタ210a、210b、シャッタ220a、220bを介してそれぞれのビームライン300a、300bに到達する。マスセレクタ210a、210bは、それぞれの目的イオンを分離して引き出す。例えば、真空チャンバ内で、炭素元素およびフッ素元素を含むCF系のプラズマ、および炭素元素、水素元素、フッ素元素を含むCHF系のプラズマの両方を発生させた後、マスセレクタ210a、210bでC3F5+イオンまたは、C4F6+イオン、またはCHF2+イオンまたは、CH2F+イオンのどちらかを抽出(選択)することができる。マスセレクタ210a、210bは、異なるイオン種を抽出(選択)する。シャッタ220a、220bは、例えばファラデーカップであり、それぞれのイオンビームを遮蔽する。シャッタ制御部230は、シャッタ220a、220bの開閉を制御する。シャッタ制御部230は、異なるイオン種を含む2つのイオンビームのうち何れか1つを選択、または両方を遮蔽する。すなわち、シャッタ制御部230は、少なくともシャッタ220aを開くときシャッタ220bを閉じ、シャッタ220bを開くときシャッタ220aを閉じる。このような構成を有することで、異なるイオン種を含む2つのイオンビームを適宜切り替えることができる。
【0087】
上述のように本変形例に係るイオンビーム照射装置は、特定の領域に特定のイオン種を含むイオンビームを照射することにより特定の層を選択的にエッチングすることで、コンタクトホールCHの積層体上面からの深さを制御することができ、半導体装置の信頼性を向上することができる。また、フォトリソグラフィを多用する必要がなく、半導体装置の製造効率を向上することができる。
【0088】
<変形例2>
本変形例に係るイオンビーム照射装置の構成は、プラズマ生成室と、ビームラインと、ビーム照射室を1つずつ備えること以外、第5実施形態に係るイオンビーム照射装置の構成と同じである。第5実施形態と同じである説明は省略し、ここでは第5実施形態に係るイオンビーム照射装置の構成と相違する部分について説明する。
【0089】
[イオンビーム照射装置の構成]
図19は、イオンビーム照射装置の構成を示す模式図である。
図19に示すイオンビーム照射装置100bは、ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマ型であり、プラズマ生成室200と、ビームライン300と、ビーム照射室400と、を備える。
【0090】
本変形例に係るイオンビーム照射装置100bは、1つのプラズマ生成室200を備える。プラズマ生成室200は例えば、絶縁層30(TEOS膜)を選択的にエッチングするC3F5+イオンまたは、C4F6+イオン、および犠牲層20(SiN膜)を選択的にエッチングするCHF2+イオンまたは、CH2F+イオンの両方を含むイオンビームを生成してもよい。
【0091】
プラズマ生成室200で生成されたイオンビームは、マスセレクタ210、シャッタ220を介して1つのビームライン300に到達する。マスセレクタ210は、目的イオンを分離して引き出す。例えば、真空チャンバ内で、炭素元素およびフッ素元素を含むCF系のプラズマ、および炭素元素、水素元素、フッ素元素を含むCHF系のプラズマの両方を発生させた後、マスセレクタ210でC3F5+イオンまたは、C4F6+イオン、またはCHF2+イオンまたは、CH2F+イオンのどちらかを抽出することができる。シャッタ220は、例えばファラデーカップであり、イオンビームを遮蔽する。シャッタ制御部230は、シャッタ220の開閉を制御する。このような構成を有することで、異なる2つのイオン種を含むイオンビームを適宜切り替えることができる。
【0092】
上述のように本変形例に係るイオンビーム照射装置は、特定の領域に特定のイオン種を含むイオンビームを照射することにより特定の層を選択的にエッチングすることで、コンタクトホールCHの積層体上面からの深さを制御することができ、半導体装置の信頼性を向上することができる。また、フォトリソグラフィを多用する必要がなく、半導体装置の製造効率を向上することができる。
【0093】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、本実施形態の半導体装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、上述した各実施形態は、相互に矛盾がない限り適宜組み合わせが可能であり、各実施形態に共通する技術事項については、明示の記載がなくても各実施形態に含まれる。
【0094】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0095】
1:メモリセルアレイ、10:半導体装置、11:半導体基板、16:メモリセルアレイ、17:積層配線構造体、18:周辺回路、19:パッド列、20:犠牲層、30:絶縁層、40:メモリピラー、50:コンタクトプラグ、60:絶縁膜、70:導電層、80:マスク、100:イオンビーム照射装置、200:プラズマ生成室、210:マスセレクタ、220:シャッタ、230:シャッタ制御部、300:ビームライン、310:コンデンサレンズ、330:偏向器、340:対物レンズ、400:ビーム照射室、410:ステージ、420:相対位置制御部