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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】杭打機
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/00 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
E02D13/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021049503
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022147994
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】栗本 真司
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 隆明
(72)【発明者】
【氏名】山口 愛斗
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-250956(JP,A)
【文献】特開2019-199760(JP,A)
【文献】特開2004-316226(JP,A)
【文献】実開昭56-016690(JP,U)
【文献】特開2007-046397(JP,A)
【文献】特開平01-223290(JP,A)
【文献】実開昭55-099344(JP,U)
【文献】米国特許第04604724(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前後左右に設けられたジャッキと、前記上部旋回体の前部に立設したリーダと、該リーダの前面に沿って昇降可能なロッド回転駆動装置とを備えている杭打機において、
前記ロッド回転駆動装置は、ロッドに回転力を付与する駆動装置本体と、該駆動装置本体に前記ロッドを固定するチャック機構とを有し、
前記チャック機構は、前記駆動装置本体に対して前記ロッドの軸方向の移動を規制した閉じ状態と、規制解除した開き状態とに開閉動作可能に構成され、
前記チャック機構を動作させる制御回路には、運転者のチャック操作を受け付ける運転者側操作スイッチと、作業者の確認操作を受け付ける作業者側操作スイッチと、該作業者側操作スイッチが確認操作を受け付けたときに、前記チャック機構の閉じ状態から開き状態への切替動作を許可するインターロック回路とが設けられていることを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記作業者側操作スイッチは、前ジャッキのうちの少なくとも左右いずれかのジャッキに設けられていることを特徴とする請求項1記載の杭打機。
【請求項3】
前記制御回路は、前記作業者側操作スイッチに連動した表示灯を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の杭打機。
【請求項4】
前記制御回路には、前記運転者側操作スイッチ、作業者側操作スイッチ及びインターロック回路を介装して一定区間を開閉可能なループ状回路が構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の杭打機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に関し、詳しくは、機体の前部に立設したリーダに沿って昇降可能なロッド回転駆動装置を備えた杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、杭打機に用いられるロッド回転駆動装置(オーガ)では、回転駆動源を備えた駆動装置本体に、ロッドに設けた角軸部を挿通して係合可能な角孔を有するロッド回転部(出力軸)と、前記角軸部の下部に設けた周方向の溝部に係合可能なチャック板とを一体回転可能に備えたものが知られている。チャック板は、スプリングの力により係合してロッド回転部にロッドを固定し、この固定の解除は、円錐状のコーン形チャック解除部材をチャック板に設けた受部に圧入し、チャック板をスプリングの力に抗して押し拡げることにより行なう構造である。こうしたチャック機構の開閉操作は、通常、運転席にある切替スイッチにより行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-189576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、同一の作業箇所で杭打機と作業者とが並行作業を行なう場合、運転者は、作業指揮者の合図に従って運転操作を行っている。しかしながら、雨天時や夜間などの現場では、互いに離れた位置相互間での意思の疎通が良好に図れない事態が起こり得る。その上、機体の前部にリーダを立設した杭打機では、特に施工位置(杭芯位置)の周囲に死角ができやすく、不用意にチャック開き操作を行うと、駆動装置本体からロッドを落下させてしまい、杭打機の周囲で作業している作業者が危険な状況に陥るおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、運転者の誤操作を防止し、杭打機の周囲で作業している作業者との間で接触事故を防止することが可能な安全装置を備えた杭打機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前後左右に設けられたジャッキと、前記上部旋回体の前部に立設したリーダと、該リーダの前面に沿って昇降可能なロッド回転駆動装置とを備えている杭打機において、前記ロッド回転駆動装置は、ロッドに回転力を付与する駆動装置本体と、該駆動装置本体に前記ロッドを固定するチャック機構とを有し、前記チャック機構は、前記駆動装置本体に対して前記ロッドの軸方向の移動を規制した閉じ状態と、規制解除した開き状態とに開閉動作可能に構成され、前記チャック機構を動作させる制御回路には、運転者のチャック操作を受け付ける運転者側操作スイッチと、作業者の確認操作を受け付ける作業者側操作スイッチと、該作業者側操作スイッチが確認操作を受け付けたときに、前記チャック機構の閉じ状態から開き状態への切替動作を許可するインターロック回路とが設けられていることを特徴としている。
【0007】
また、前記作業者側操作スイッチは、前ジャッキのうちの少なくとも左右いずれかのジャッキに設けられていることを特徴としている。さらに、前記制御回路は、前記作業者側操作スイッチに連動した表示灯を備えていることを特徴としている。加えて、前記制御回路には、前記運転者側操作スイッチ、作業者側操作スイッチ及びインターロック回路を介装して一定区間を開閉可能なループ状回路が構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、杭打機に備わる安全装置として、チャック機構を動作させる制御回路に作業者側操作スイッチの確認操作を受けてチャック機構の開き動作を許可するインターロック回路を設けているので、作業者の許可を得るまでは運転者によるチャック開き操作を禁止することが可能となり、誤ったタイミングでチャック開き操作が実行されてしまう危険をなくすことができる。これにより、杭打機に特有の作業、例えば、ロッドの掴み替えや杭の継ぎ足し作業など、ロッド回転駆動装置の真下での作業における作業者の安全に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一形態例を示す杭打機の側面図である。
図2】同じく正面図である。
図3】同じく要部正面図である。
図4】同じく前ジャッキに設けた作業者側操作スイッチを示す図である。
図5】同じくチャック機構を動作させる制御回路図である。
図6】同じくチャック開き禁止操作を受け付けている状態でチャック開き操作を受け付けた状態を示す回路図である。
図7】同じくチャック閉じ操作を受け付けている状態でチャック開き許可操作を受け付けた状態を示す回路図である。
図8】同じくチャック開き許可操作を受け付けている状態でチャック開き操作を受け付けた状態を示す回路図である。
図9】同じくチャック開き操作を受け付けている状態でチャック開き許可操作を受け付けた状態を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至図9は、本発明の杭打機を示す図である。杭打機11は、1台で地盤改良仕様と鋼管埋設仕様との対応が可能な兼用機であって、図1及び図2に示すように、クローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に立設したリーダ15と、該リーダ15を後方から支持するリーダ起伏シリンダ16と、前記リーダ15に昇降可能に設けられたロッド回転駆動装置(オーガ)17とを備えている。また、上部旋回体13の中央前部には、リーダ15を起伏可能に支持するリーダサポート18が設けられている。
【0011】
上部旋回体13の右側前部には、運転者が搭乗してロッド回転駆動装置17や上部旋回体13などの操作を行うための運転室19が設けられ、右側後部には、作動油タンクなどの油圧機器を収納する機器収納ハウス(図示せず)が設けられている。一方、左側部には、エンジンの駆動を受けて圧油を供給するためのエンジンパワーユニットや、これに付属する燃料タンクなどの複数の関連機器を収納するエンジン収納ハウス20が設けられている。また、上部旋回体13の前後左右の4箇所に安定用のジャッキ21が設けられるとともに、上部旋回体13の後端部には杭打機11のバランスをとるためのカウンタウエイト22が搭載されている。
【0012】
リーダ15は、断面が角筒状に形成された複数のリーダ部材を互いに連結したもので、前記リーダサポート18に設けられた車幅方向の支軸に回動可能に取り付けられている。また、リーダ15の上端部には、吊上げ用ロープが巻掛けられるトップシーブ23が、下部前方には、回転駆動される施工部材の振れを防止する開閉可能な振止装置24がそれぞれ備わっており、リーダ15の両側面前端部には、左右一対のガイドパイプ25,25が、リーダ15の全長に亘って連続的に設けられている。
【0013】
ロッド回転駆動装置17は、駆動装置本体(ギヤケース)17aに挿通係合した施工部材を固定するための開閉自在なチャック機構17bと、該施工部材に回転駆動力を付与するためのオーガ駆動用油圧モータ17cとを備えており、前記ガイドパイプ25,25に摺接する左右一対のガイドギブ17d,17dが後方に突出して設けられ、リーダ15の上下に設けられたスプロケットに掛け渡されるチェーンにより、リーダ15の前面に沿って昇降可能に構成されている。
【0014】
杭打機11を使用して地盤改良を行う際には、施工部材として掘削ロッドが使用される。掘削ロッド26は、セメントミルクなどの地盤改良剤が中を通る継足し可能な中空管であり、長さ方向の複数箇所に前記チャック機構17bに係合するチャック溝26aを備えた角軸部26bが設けられ、下端には掘削刃27a及び撹拌翼27bを有する掘削ヘッド27が装着されている。これにより、図示は省略するが、チャックシリンダの伸縮動作に従ってチャック機構17bの開閉動作が行われ、その閉じ状態では、チャック機構17bに備わるチャック板と掘削ロッド26のチャック溝26aとが係合し、駆動装置本体17aに対して掘削ロッド26の軸方向(上下方向)の移動が規制される。一方、チャック機構17bの開き状態では、チャック板とチャック溝26aとの係合状態が解かれて、掘削ロッド26のロッド回転駆動装置17に対して軸方向の相対移動が可能になる。
【0015】
このように形成した杭打機11は、掘削ロッド26の中間角軸部26bをロッド回転駆動装置17にて把持した状態で、振止装置24により掘削ロッド26が回転可能かつ上下動可能に保持され、掘削ロッド26の上端部において、回り止め装置28で保持されたスイベルジョイント29に注入ホース(グラウトホース)30が接続される。そして4本のジャッキ21を全て接地させた作業開始状態で、掘削ロッド26を回転駆動しながらリーダ15に沿って下降させるとともに、掘削ロッド26を通って送られた地盤改良剤を掘削ヘッド27の先端から掘削孔に噴射することにより、掘削ヘッド27の掘削刃27aで掘削した土砂と地盤改良剤とを掘削ヘッドの撹拌翼27bで混合する。
【0016】
ここで、ロッド回転駆動装置17がリーダ15の下端部に到達したときに、中間角軸部26bの把持を解除したロッド回転駆動装置17を上昇させ、上部角軸部26bを把持させる掴み替えを行う。このとき、掘削ロッド26をその位置に固定しておくために、振止装置24の固定手段によって掘削ロッド26が把持される。ロッド回転駆動装置17の移動によって掘削ロッド26の把持位置を上部側に切り替えたら、掘削ロッド26を回転駆動しながら下降させて、掘削刃27aで掘削した土砂と地盤改良剤とを撹拌翼27bで混合する。そして、所定深度まで掘削ヘッド27を下降させた後、逆の手順で掘削ヘッド27を引上げることによって地盤改良作業が終了する。
【0017】
ところで、杭の埋設予定位置(杭芯位置)の近傍領域内では、多くの作業者が存在して込み入った環境となり、その上、運転室19内にいる運転者の死角も多く存在している。。こうしたなかで、運転者が誤ったタイミングでチャック開き操作を行うと、駆動装置本体17aから掘削ロッド26を落下させてしまい、周囲の作業者が危険な状況に陥るおそれがある。そこで、杭打機11には、閉じ状態のチャック機構17bが不用意に開かれることを防止する安全装置が備わっている。
【0018】
前記安全装置は、図5などに示すように、チャック機構17bを動作させる制御回路31に組み込まれているもので、基本的には、運転者のチャック操作としてチャック開き操作(開)又はチャック閉じ操作(閉)を受け付ける運転者側操作スイッチ32と、作業者の確認操作としてチャック開き許可操作(開)又はチャック開き禁止操作(閉)を受け付ける作業者側操作スイッチ33と、作業者側操作スイッチ33がチャック開き許可操作を受け付けたときに、チャック機構17bの閉じ状態から開き状態への切替動作を許可するインターロック回路34とを備えている。
【0019】
運転者側操作スイッチ32は、例えば、任意の一方の切替状態に連動して切り替え可能な2極双投形の切替スイッチである。取付位置については従来のものと同じく、運転室19内の操作パネルに取り付けられている。運転者側操作スイッチ32にはレバーロック式のトグルスイッチが採用され、レバーを操作軸方向に一旦引上げてから傾動操作を行うとオン/オフ(接点開閉)し、レバーを手から離すとレバーは操作軸方向に復帰して傾動操作位置でロック状態となる。
【0020】
作業者側操作スイッチ33は、例えば、任意の一方の切替状態に連動して切り替え可能な2極双投形の切替スイッチである。取付位置については、図2乃至図4に示すように、上部旋回体13の前方右側、すなわち、運転室19の前方に配置されている右前ジャッキ21の上端部に設けられ、具体的には、操作面35aを車幅方向外側に向けて設置した箱体(スイッチカバー)35に、表示灯(赤色LED)36と共に取り付けられている。作業者側操作スイッチ33には自己保持形のプッシュ式ボタンスイッチが採用され、ボタンを押し込むとストローク端でオン(接点閉)して保持され、もう一度押し込むとオフ(接点開)し、その保持が解除されて復帰する。
【0021】
インターロック回路34は、例えば、2系統のスイッチが内蔵されるリレースイッチであって、コイル34a、第1スイッチ34b及び第2スイッチ34cからなる。両スイッチ34b,34cは、コイル34aが励磁されたときにこのコイル34aに引き寄せられてオンする励磁接点と、非励磁時のときにオンする非励磁接点とを有している。ここで、インターロックとは、所与の条件が整って初めて次の動作を実行させるための仕組みのことをいい、本実施形態では、運転者側操作スイッチ32のチャック閉じ操作を受け付けた状態であること、及び、作業者側操作スイッチ33のチャック開き許可操作を受け付けた状態であることを要件として、運転者側操作スイッチ32の閉じ側から開き側への切替操作を有効にし、これらの要件を欠いた場合には運転者側操作スイッチ32の開き側への切替操作を無効にすることである。
【0022】
以下では、具体的な回路構成について、図5を参照しながら説明する。制御回路31は、電源に接続されるヒューズ37から2本の配線L1,L2を分岐し、配線L1には運転者側操作スイッチ32の共通端子が接続され、配線L2にはインターロック回路34の第1スイッチ34bの共通端子が接続されている。また、第1スイッチ34bの励磁接点には、作業者側操作スイッチ33の第1極側(図5において左側)の共通端子との間で配線L3が接続されている。
【0023】
運転者側操作スイッチ32の第1極側(図5において左側)の閉接点には、作業者側操作スイッチ33の第1極側開接点との間で配線L4が接続されている。これにより、配線L1、配線L2、配線L3、配線L4は、これらの間に直列状態で介装された各スイッチ32,33,34bにより開閉可能なループ状回路を構成している。また、配線L4から分岐した配線L5にはインターロック回路34のコイル34aが接続されている。
【0024】
運転者側操作スイッチ32の第2極側(図5において右側)の閉接点には、チャックシリンダを油圧で縮作動するための縮側ソレノイド(駆動回路)38との間で配線L6が接続されている。これにより、配線L6が通電状態になると、縮側ソレノイド38が励磁して電磁切替弁のスプール位置を切り替え、チャック機構17bを閉じるように油圧制御がなされる。また、運転者側操作スイッチ32の第1極側開接点には、インターロック回路34の第2スイッチ34cの共通端子との間で配線L7が接続されている。さらに、第2スイッチ34cの励磁接点には、作業者側操作スイッチ33の第2極側(図5において右側)の共通端子との間で配線L8が接続されている。
【0025】
作業者側操作スイッチ33の第2極側開接点には、チャックシリンダを油圧で伸作動するための伸側ソレノイド(駆動回路)39との間で配線L9が接続されている。これにより、配線L9が通電状態になると、伸側ソレノイド39が励磁して電磁切替弁のスプール位置を切り替え、チャック機構17bを開くように油圧制御がなされる。また、表示灯36は、作業者側操作スイッチ33に連動するもので、回路上の図示は省略するが、表示灯36が通電されて点灯すると、チャック開き操作を許可した旨を作業者に報知する(図4)。このとき、運転室19内に設置されているブザー(図示せず)が鳴動し、チャック開き操作が許可された旨を運転者に報知する。
【0026】
以下では、このような構成の安全装置の作動について、図5乃至図9を参照しながら説明する。杭打機11により地盤改良作業を行う場合、掘削ロッド26の中間角軸部26bをロッド回転駆動装置17にて把持し、振止装置24を閉じて掘削ロッド26の下端部を保持する(図1)。この状態では、運転者側操作スイッチ32がチャック閉じ操作を受け付けているので、図5に示すように、電源からの電流が、配線L1、配線L6に流れ、縮側ソレノイド38が励磁した状態、すなわち、チャック機構17bが閉じた状態に保持されている。
【0027】
作業者側操作スイッチ33では、あらかじめチャック開き禁止操作(閉)が受け付けられている。ここで、電源からの電流が、配線L1、配線L4、配線L5に流れると、インターロック回路34のコイル34aが励磁し、第1スイッチ34b及び第2スイッチ34cの励磁接点がそれぞれオンの状態(インターロック作動状態)となる。この状態において、表示灯36は消灯状態になっている。
【0028】
作業の進行に伴ってロッド回転駆動装置17がリーダ15の上端に到達すると、掘削ロッド26の掴み替えが行われる。このとき、運転者が誤ったタイミングでチャック開き操作を行った場合に、運転者側操作スイッチ32が閉じ側から開き側に切り替えられる。この状態では、図6に示すように、配線L4からの電流の流れが遮断されることで、インターロック回路34のコイル34aに通電されなくなる結果、第1スイッチ34b及び第2スイッチ34cの非励磁接点がそれぞれオンの状態(インターロック停止状態)となる。
【0029】
こうした無効な操作(誤操作)を行うと、配線L6からの電流の流れが遮断されることで、縮側ソレノイド38に通電されなくなる結果、電磁切替弁のスプール位置が中立に復帰してアンロード状態(無負荷運転状態)となる。これにより、チャックシリンダは、付設の油圧保持弁により内部の圧油が封止され、収縮状態のままで保持される。
【0030】
運転者において復帰操作(チャック閉じ操作)を行い、インターロック回路34を作動状態とし、作業者において振止装置24の固定状態を確認するなどの必要な安全確認を行った後、作業者側操作スイッチ33を閉じ側から開き側に切り替える。この状態では、図7に示すように、配線L3と配線L4との間が導通し、前記ループ状回路が通電状態となる。ここで、作業者のチャック開き許可操作を受け付けている状態において、表示灯36は点灯状態になっている。
【0031】
作業者から操作指示が与えられた運転者は、このタイミングでチャック開き操作が許可される。そして、運転者が自ら安全確認を行った後、切替操作により運転者側操作スイッチ32が閉じ側から開き側に切り替えられる。そして、図8に示すように、ループ状回路の一方側区間(配線L1,L4間)が開いた状態であっても、他方側区間(配線L3,L4間)が閉じた状態になることで、電源からの電流が、配線L2、配線L3、配線L4、配線L5に流れ、コイル34aの励磁状態がそのまま継続される。すなわち、インターロック作動状態が途中で停止されずにそのまま継続される。これにより、電源からの電流が、配線L1、配線L7、配線L8、配線L9に流れて伸側ソレノイド39が励磁し、チャック機構17bを開くように油圧制御がなされる。
【0032】
こうして、ロッド把持状態を解除したロッド回転駆動装置17を上昇させ、掘削ロッド26の把持位置を上部側に切り替えたら、その位置でチャック閉じ操作と振止装置24の固定解除操作とを順に行うことにより、掘削ロッド26の掴み替えが完了する。
【0033】
ところで、図6に示されるように、無効なチャック開き操作が行われている状態では、運転者の復帰操作(チャック閉じ操作)がなされる前に作業者の確認操作(チャック開き許可操作)が行われる場合もあり得る。このような場合、図9に示すように、ループ状回路の非導通区間(配線L3,L4間)が閉じられるだけなので、インターロック回路34の停止状態に変化が生じることはない。これにより、運転者の無効なチャック開き操作が行われている状態では、作業者が確認操作を行っても、直ちにチャック開き操作が有効とされることはなく、作業者が確認操作をした瞬間に不意にチャックが開くような状況にはならない。ここで、運転者が復帰操作(チャック閉じ操作)を行えば、制御回路31はインターロック作動状態に復帰し、再度のチャック開き操作が有効に機能する。
【0034】
このように、本発明によれば、杭打機11に備わる安全装置として、チャック機構17bを動作させる制御回路31に作業者側操作スイッチ33の確認操作を受けてチャック機構17bの開き動作を許可するインターロック回路34を設けているので、作業者の許可を得るまでは運転者によるチャック開き操作を禁止することが可能となり、誤ったタイミングでチャック開き操作が実行されてしまう危険をなくすことができる。これにより、杭打機11に特有の作業、例えば、掘削ロッド26の掴み替えや杭の継ぎ足し作業など、ロッド回転駆動装置17の真下での作業における作業者の安全に寄与するものである。
【0035】
また、作業者側操作スイッチ33を杭打機11の前ジャッキ21に設けているので、作業者の確認操作が地上にいながら容易かつ安全に行うことができる。しかも、確認操作を行った作業者を運転席から目視することが容易であり、チャック開き許可操作の指示を出す作業者と指示を受ける運転者との間で意思の疎通が図りやすくなる。さらに、作業者側操作スイッチ33に連動した表示灯36を備えているので、離れた場所からでも操作状態を容易に確認することができる。これにより、操作の安全性や確実性が高まり、作業者にとって安心感が得られるものである。
【0036】
加えて、制御回路31において、運転者側操作スイッチ32、作業者側操作スイッチ33及びインターロック回路34を介装したループ状回路を構成しているので、簡単な回路構成でインターロックの動作条件を設定することができる。したがって、運転者側操作スイッチ32にてチャック閉じ操作が受け付けられない限りインターロック回路34を作動させず、ひとたび作動すれば、その状態を維持させるには作業者側操作スイッチ33にて確認操作が受け付けられることを要する、といった2重操作の条件設定が可能となる。こうして上手く条件を設定することにより、チャック機構17bの不意な開き動作を防止しつつ、正しい順序で開き動作を行えることから、杭打機11の安全な運用にも資するものである。
【0037】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、インターロック回路は、本実施形態のようなリレースイッチであれば安価に構成できるが、例えば、インターロック作動信号を生成する制御コントローラを用いて構成することもできる。また、作業者側操作スイッチにはロッカースイッチやトグルスイッチなどが採用でき、その取付位置については、作業者と運転者との間でコミュニケーションが取れる位置であれば左前ジャッキでもあるいはジャッキ以外の箇所でもよく、例えば、高さ調整可能なスイッチ取付部を介して取り付けるなど、杭打機の仕様に応じて適宜変更を加えることができる。さらに、作業者が携帯するリモコンからの確認信号を受信する方式などでもよく、杭打機が使用される多様な環境において広く適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
11…杭打機、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…リーダ、16…リーダ起伏シリンダ、17…ロッド回転駆動装置、17a…駆動装置本体、17b…チャック機構、17c…オーガ駆動用油圧モータ、17d…ガイドギブ、18…リーダサポート、19…運転室、20…エンジン収納ハウス、21…ジャッキ、22…カウンタウエイト、23…トップシーブ、24…振止装置、25…ガイドパイプ、26…掘削ロッド、26a…チャック溝、26b…角軸部、27…掘削ヘッド、27a…掘削刃、27b…撹拌翼、28…回り止め装置、29…スイベルジョイント、30…注入ホース、31…制御回路、32…運転者側操作スイッチ、33…作業者側操作スイッチ、34…インターロック回路、34a…コイル、34b…第1スイッチ、34c…第2スイッチ、35…箱体、35a…操作面、36…表示灯、37…ヒューズ、38,39…ソレノイド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9