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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240909BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240909BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240909BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
H01L29/78 652L
H01L29/78 652G
H01L29/78 653C
H01L29/78 656A
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652T
H01L29/78 658F
H01L21/28 301Z
H01L21/28 301A
H01L21/28 301B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021057051
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154154
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100200104
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 実
(72)【発明者】
【氏名】久保形 雅之
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/244384(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/213603(WO,A1)
【文献】特開2015-053455(JP,A)
【文献】特開2011-233643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 21/336
H01L 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面と第1方向において対向する第2面とを有する半導体層の第1
領域と、
前記第1領域の前記第2面と電気的に接続された第1電極と、
前記第1領域に設けられた第1ゲート電極と、
を有する第1トランジスタと、
前記第1方向と交わる第2方向において前記第1領域と隣り合って設けられ、前記第
1面と前記第2面とを有する前記半導体層の第2領域と、
前記第2領域に設けられた第2ゲート電極と、
前記第2領域の前記第2面と電気的に接続され、前記第1電極と離間して設けられた
第2電極と、
を有する第2トランジスタと、
前記第1面側に設けられ、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタと
電気的に接続された第3電極と、
前記第1面との間に前記第3電極が位置するよう設けられた制御層と、
を有し、
前記第3電極は、
第1金属層と、
前記第1金属層よりも前記第2面側に設けられた第2金属層と、
前記第1金属層と前記第2金属層の間に設けられた第3金属層と、
前記第1金属層と前記制御層との間に設けられた第4金属層と、
を有し、
前記第3電極のうち前記第1金属層の前記第1方向における厚さが最も厚く、
前記制御層は前記第1金属層よりも小さい線膨張係数を有する半導体装置。
【請求項2】
前記第1方向における前記第1金属層の厚さは10μm以上であり、且つ前記第1方向における前記半導体層の厚さは100μm以下である請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1金属層は、銀、銅のいずれかを含む請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記制御層は、シリコン、タングステン、モリブデン、クロムのいずれかを含む請求項1乃至いずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2つのトランジスタ、例えば金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor;MOSFET)を1つの半導体チップに形成する技術がある。2つのMOSFETは、共通のドレイン電極を有する。
【0003】
共通のドレイン電極の金属層は、オン動作時の抵抗低減のため膜厚が厚く形成される。一方、半導体装置の半導体素子領域は、オン動作時の抵抗低減のため、薄く形成される傾向にある。そのため、半導体装置の製造工程時、または配線基板へ半導体装置を実装する際に、半導体素子領域が反ってしまい、クラックが発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-69852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、半導体素子の反り、及びクラック発生を抑制できる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の半導体装置は、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第3電極と、制御層と、を有する。第1トランジスタは、半導体層の第1領域と、第1電極と、第1ゲート電極と、を有する。半導体層の第1領域は、第1面と、第1面と第1方向において対向する第2面とを有する。第1電極は、第1領域の第2面と電気的に接続される。第1ゲート電極は、第1領域に設けられる。第2トランジスタは、半導体層の第2領域と、第2ゲート電極と、第2電極と、を有する。半導体層の第2領域は、第1方向と交わる第2方向において第1領域と隣り合って設けられ、第1面と第2面とを有する。第2ゲート電極は、第2領域に設けられる。第2電極は、第2領域の第2面と電気的に接続され、第1電極と離間して設けられる。第3電極は、第1面側に設けられ、第1トランジスタ及び第2トランジスタと電気的に接続される。第3電極は、第1金属層と、第1金属層よりも第2面側に設けられた第2金属層と、第1金属層と第2金属層の間に設けられた第3金属層と、第1金属層と制御層との間に設けられた第4金属層と、を有する。制御層は、第1面との間に第3電極が位置するよう設けられる。第3電極のうち第1金属層の第1方向における厚さが最も厚く、制御層は第1金属層よりも小さい線膨張係数を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る半導体装置100の断面図。
図2】ドレイン電極、及び制御層に用いられる物質の線膨張係数を示した図。
図3】第1の実施形態に係る半導体装置100の平面図。
図4】第1の実施形態に係る半導体装置100の等価回路図。
図5】(a)、(b)は、第1の実施形態に係る半導体装置100の製造方法を示す図。
図6】(a)、(b)は、第1の実施形態に係る半導体装置100の製造方法を示す図。
図7】(a)、(b)は、第1の実施形態に係る半導体装置100の製造方法を示す図。
図8】第1の実施形態に係る半導体装置100の製造方法を示す図。
図9】配線基板上に実装された第1の実施形態に係る半導体装置100を示す模式図。
図10】比較例に係る半導体装置300の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。この説明に際し、全図にわたり、共通する部分には共通する符号を付す。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。なお、本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0009】
[第1の実施形態]
(半導体装置100の構造)
第1の実施形態に係る半導体装置100の詳細な構造について、図1図2、及び図3を参照して説明する。図1は第1の実施形態に係る半導体装置100の断面図である。図2は、ドレイン電極40、及び制御層50に用いられる物質の線膨張係数を示している。図3は第1の実施形態に係る半導体装置100の平面図である。
【0010】
以下の説明において、n、n、n及び、p、p、pの表記は、各導電型における不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわちnはnよりもn型の不純物濃度が相対的に高く、nはnよりもn型の不純物濃度が相対的に低いことを示す。また、pはpよりもp型の不純物濃度が相対的に高く、pはpよりもp型の不純物濃度が相対的に低いことを示す。なお、n型、n型を単にn型、p型、p型を単にp型と記載する場合もある。
【0011】
図1に表す第1の実施形態に係る半導体装置100は、双方向の電流の流れを制御するスイッチングデバイスである。第1の実施形態に係る半導体装置100は、例えば、バッテリの保護回路に用いられる。第1の実施形態に係る半導体装置100は、2つのトレンチゲート型MOSFETが、ドレイン電極が共通となるように接続されている。
【0012】
第1の実施形態に係る半導体装置100は、半導体層10と、第1ソース電極(第1電極)21と、第2ソース電極(第2電極)22と、第1ゲート電極31と、第2ゲート電極32と、ドレイン電極(第3電極)40と、制御層50と、第1ソース電極パッド81と、第2ソース電極パッド82と、第1ゲート電極パッド91と、第2ゲート電極パッド92と、を有する。
【0013】
半導体層10は、第1面P1と、第2面P2と、第1領域10aと、第2領域10bと、を有する。図1において、第1領域10aは鎖線で、第2領域10bは一点鎖線で示した。
【0014】
第1面P1から第2面P2に向かう方向をZ方向(第1方向)とする。また、Z方向と直交する方向をX方向(第2方向)、X方向及びZ方向と直交する方向をY方向(第3方向)とする。図1、及び図2に示す半導体装置100はX-Z平面における断面図を示している。また、説明のために、第1面P1から第2面P2に向かう方向を「上」と言い、その反対方向を「下」と言う。
【0015】
第1領域10aは、第1面P1と、第2面P2と、を有する半導体層10に設けられた領域である。第2領域10bは、第1面P1と、第2面P2と、を有し、X方向において第1領域10aと隣り合って設けられる。
【0016】
第1領域10aは、n型のドレイン領域11と、n型のドリフト領域12と、p型の第1ベース領域13aと、n型の第1ソース領域14aと、を有する。
【0017】
型のドレイン領域11は、半導体層10の第1面P1側に設けられる。n型のドリフト領域12は、Z方向においてn型のドレイン領域11の上に設けられている。
【0018】
p型の第1ベース領域13aは、第1領域10aに複数設けられている。複数のp型の第1ベース領域13aは、X方向において後述する第1絶縁膜61を介して互いに隣接し、第1領域10aのn型のドリフト領域12の上に設けられる。
【0019】
型の第1ソース領域14aは、Z方向においてp型の第1ベース領域13aの上に設けられている。すなわち、n型の第1ソース領域14aは、第1領域10aの第2面P2側に設けられている。
【0020】
第2領域10bは、n型のドレイン領域11と、n型のドリフト領域12と、p型の第2ベース領域13bと、n型の第2ソース領域14bと、を有する。
【0021】
p型の第2ベース領域13bは、第2領域10bに複数設けられている。複数のp型の第2ベース領域13bは、X方向において離間して第2領域10bのn型のドリフト領域12の上に設けられる。
【0022】
型の第2ソース領域14bは、Z方向においてp型の第2ベース領域13bの上に設けられている。すなわち、n型の第1ソース領域14aは、第2領域10bの第2面P2側に設けられている。
【0023】
半導体層10は、例えば、半導体材料として、シリコン(Si)又は炭化シリコン(SiC)を含む。半導体材料としてシリコンが用いられる場合、半導体層10のZ方向における厚さは100μm以下である。
【0024】
第1ソース電極21は、n型の第1ソース領域14aの上に設けられている。第1ソース電極21は、n型の第1ソース領域14aと電気的に接続される。
【0025】
第1ゲート電極31は、第1領域10aに複数設けられている。第1ゲート電極31は、X方向においてp型の第1ベース領域13aと隣接して設けられている。第1ゲート電極31と半導体層10との間には、第1絶縁膜61が設けられている。
【0026】
第2ソース電極22は、n型の第2ソース領域14bの上に設けられている。第2ソース電極22は、n型の第2ソース領域14bと電気的に接続される。
【0027】
第2ゲート電極32は、第2領域10bに複数設けられている。第2ゲート電極32は、X方向においてp型の第2ベース領域13bと隣接して設けられている。第2ゲート電極32と半導体層10との間には、第2絶縁膜62が設けられている。
【0028】
第1ソース電極21の一部、第2ソース電極22の一部、及び半導体層10の一部は、絶縁膜60で覆われる。
【0029】
ドレイン電極40は、図2に示すように、第1金属層41と、第2金属層42と、第3金属層43と、第4金属層44と、を有する。ドレイン電極40は、n型のドレイン領域11の下に設けられ、n型のドレイン領域11と電気的に接続される。
【0030】
第1金属層41は、半導体装置100のオン動作時に流れる電流の主経路であり、ドレイン電極40の各金属層のうち最もZ方向の厚さが厚い。第1金属層41のZ方向の厚さは、例えば、10μm以上である。第1金属層41は、例えば、銀(Ag)、または銅(Cu)である。第2金属層42は、n型のドレイン領域11の下に設けられている。第2金属層42は、半導体層10との接着性を向上させる金属、例えば、チタン(Ti)が用いられる。第2金属層42のZ方向の厚さは、例えば、1μm以下である。第3金属層43は、第1金属層41と第2金属層42との間に設けられる。第3金属層43は、半導体層(例えば、n型のドレイン領域11)の酸化や、半導体層中への金属の拡散を防ぐバリアメタル層であり、例えば、ニッケル(Ni)が用いられる。第3金属層43のZ方向の厚さは、例えば、1μmである。第4金属層44は、第1金属層41の下に設けられる。第4金属層44は第1金属層41の腐食を防ぐ腐食防止層で、例えば、ニッケル(Ni)が用いられる。第4金属層44のZ方向の厚さは、例えば、1μmである。なお、第2金属層42、第3金属層43、及び第4金属層44は設けなくても実施可能である。
【0031】
制御層50は、第4金属層44の下に設けられる。制御層50には、ドレイン電極40の各金属層うち最もZ方向の厚さが厚い金属層、すなわち、第1金属層41よりも線膨張係数が小さい物質が用いられる。制御層50に用いられる物質は、例えば、Si、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)である。ドレイン電極40の各金属層、及び制御層50に用いられる物質の線膨張係数は、図2に示した。さらに、制御層50は、硬い物質である方が望ましい。
【0032】
第1の実施形態に係る半導体装置100は、以上説明した構造により、第1トランジスタ71、及び第2トランジスタ72を形成している。第1トランジスタ71は、第1領域10aと、第1ソース電極21と、第1ゲート電極31と、第1絶縁膜61と、ドレイン電極40と、を有する。第2トランジスタ72は、第2領域10bと、第2ソース電極22と、第2ゲート電極32と、第2絶縁膜62と、ドレイン電極40と、を有する。すなわち、第1トランジスタ71、及び第2トランジスタ72は、共通のドレイン電極40を有する。
【0033】
第1ゲート電極31、及び第2ゲート電極32は、Y方向に延在している。第1ゲート電極31、及び第2ゲート電極32と同様に、半導体装置100に設けられている各領域、例えば、第1ベース領域13a、第2ベース領域13b、第1ソース領域14a、第2ソース領域14bは、それぞれがY方向に延在している。
【0034】
図4は、第1の実施形態に係る半導体装置100のX-Y平面における平面図を示している。図4のA-A’線による断面図は、図1である。第1トランジスタ71の上部には第1ソース電極パッド81と、第1ゲート電極パッド91と、が設けられ、絶縁膜60の外部に露出している。第1ソース電極パッド81は、第1ソース電極21と電気的に接続されている。第1ゲート電極パッド91は、第1ゲート電極31と電気的に接続されている。第2トランジスタ72の上部には第2ソース電極パッド82と、第2ゲート電極パッド92と、が設けられ、絶縁膜60の外部に露出している。第2ソース電極パッド82は、第2ソース電極22と電気的に接続されている。第2ゲート電極パッド92は、第2ゲート電極32と電気的に接続されている。
【0035】
(半導体装置100の動作)
半導体装置100の動作について、図3を参照して説明する。図3は、第1の実施形態に係る半導体装置100の等価回路図を示している。
【0036】
前述したように、第1の実施形態に係る半導体装置100は、例えば、バッテリの保護回路に用いられる。
【0037】
充電時、及び放電時は、第1ゲート電極31及び第2ゲート電極に閾値以上の電圧が印加され、第1トランジスタ71、及び第2トランジスタ72がオン状態となる。充電時、電流は第1ソース電極21からドレイン電極40へ流れる。その後電流はドレイン電極40の第1金属層41をX方向に通過し、第2トランジスタ72へ到達する。放電時、電流は第2ソース電極22からドレイン電極40へ流れる。その後電流はドレイン電極40の第1金属層41をX方向に通過し、第1トランジスタ71へ到達する。
【0038】
過充電、過放電時には、制御回路(不図示)により第1トランジスタ71、及び第2トランジスタ72のうちいずれか1つのトランジスタがオフ状態となる。
【0039】
以上説明したように、半導体装置100は、双方向の電流の流れを制御する。
【0040】
(半導体装置100の製造方法)
図5図7は、第1の実施形態に係る半導体装置100の製造工程を表す工程断面図である。図5図7を参照して、第1の実施形態に係る半導体装置100の製造方法の一例を説明する。
【0041】
まず、n型の半導体基板11を用意する。半導体基板11は後のn型のドレイン領域11である。次に、Z方向において、n型の半導体基板11の上にエピタキシャル成長させることで、n型のドリフト領域12を形成する。
【0042】
図5(a)に示すように、ドリフト領域12中に、第1ベース領域13a、第2ベース領域13b、第1ソース領域14a、第2ソース領域14b、第1ゲート電極31、第2ゲート電極32、第1絶縁膜61、第2絶縁膜62、第1ソース電極21、第2ソース電極22、第1ソース電極パッド81、第2ソース電極パッド82、第1ゲート電極パッド91、第2ゲート電極パッド92、及び絶縁膜60を形成する。
【0043】
図5(b)に示すように、n型の半導体基板11を研削して、半導体層10のZ方向の厚さを薄くする。
【0044】
図6(a)に示すように、例えば、スパッタによって、第2金属層42、及び第3金属層43を形成する。
【0045】
図6(b)に示すように、スパッタによって、第1金属層41の一部を形成する。その後、図7(a)に示すように、めっきによって第1金属層41を形成する。
【0046】
図7(b)に示すように、例えば、めっきによって第4金属層44を形成する。
【0047】
図8に示すように、例えば、スパッタによって制御層50を形成する。
【0048】
(第1の実施形態の効果)
第1の実施形態に係る半導体装置100の効果について、比較例の半導体装置300を用いて説明する。図10は、比較例に係る半導体装置300の断面図を示している。比較例の半導体装置300は、制御層50が設けられていない点で、第1の実施形態の半導体装置100と異なる。
【0049】
比較例の半導体装置300、及び第1の実施形態に係る半導体装置100は、図9に示すように、ドレイン電極40を上に向けた状態で、配線基板200に実装される。すなわち、半導体装置100の第1ソース電極パッド81、第2ソース電極パッド82、第1ゲート電極パッド91、及び第2ゲート電極パッド92が、接合材210を介して、配線基板200の導体部220に接合される。接合材210は、例えば、はんだである。なお、半導体装置100は、樹脂等で封止されるが、図9では樹脂は省略して示されている。
【0050】
半導体装置100の第1ソース電極パッド81、第2ソース電極パッド82、第1ゲート電極パッド91、及び第2ゲート電極パッド92と、接合材210で接続するために、リフロー炉の温度を上昇させる。
【0051】
その際、ドレイン電極40は温度上昇によって熱膨張する。半導体層10も熱膨張するが、一般に半導体層10の線膨張係数よりもドレイン電極40の線膨張係数のほうが大きいため、半導体層10よりもドレイン電極40の膨張量のほうが大きい。例えば、半導体層10の主材料がSi、ドレイン電極40の各金属層のうち最もZ方向の厚さが厚い第1金属層41の主材料がAgであるとすると、Siの線膨張係数は2.8×10-6、Agの線膨張係数は19.7×10-6、である。半導体層10とドレイン電極40の第1金属層41は、第2金属層42、及び第3金属層43を介して互いに固着しているため、半導体層10とドレイン電極40が固着した部分の面積は一定でなければならない。
【0052】
そのため、膨張量が大きいドレイン電極40の面積が大きくなるよう曲げ応力が生じ、半導体層10とドレイン電極40はドレイン電極40側に凸に反る。曲げ応力に起因する反りが原因で、半導体層10にクラックが発生する恐れがある。
【0053】
半導体装置100のオン動作時の低抵抗化のため、半導体層10の厚さは小さく、且つドレイン電極40の電流主経路である第1金属層41の厚さは大きくなる。特に、半導体層10が100μm以下の場合、反りが大きくなり、半導体層10にクラックが発生しやすくなっていた。
【0054】
以上の内容を踏まえ、第1の実施形態に係る半導体装置100の効果について説明する。第1の実施形態に係る半導体装置100は、ドレイン電極40の下にドレイン電極40よりも小さい線膨張係数を有する制御層50が設けられている。ドレイン電極40が半導体層10と制御層50とで挟まれた状態でリフロー炉の温度を上昇させる。
【0055】
曲げ応力が発生しやすいドレイン電極40は、線膨張係数がドレイン電極40よりも小さい半導体層10と制御層50とで挟まれているため、線膨張係数差に起因する曲げ応力の発生を抑制することができる。よって、曲げ応力に起因する半導体層10とドレイン電極40の凸形状の反り発生が抑制されるため、制御層50を設けることでオン動作時の低抵抗を保ちつつ、半導体層10へのクラック発生を抑制できる。
【0056】
また、第1の実施形態に係る半導体装置100の使用時に、熱が発生し、半導体装置100の周囲の温度が上昇することがある。この場合においても、曲げ応力に起因する反りが原因で、半導体層10にクラックが発生するおそれがあるが、制御層50を設けることで半導体層10へのクラック発生を抑制できる。
【0057】
さらに、比較例の半導体装置300の製造時に、スパッタを用いて第2金属層42、第3金属層43、及び第1金属層41の一部を半導体層10の第1面P1に形成している。スパッタを用いると、高エネルギーの粒子が半導体層10と衝突するため、半導体層10の温度が上昇した状態で第2金属層42、第3金属層43、及び第1金属層41の一部が形成される。次に第1金属層41、及び第4金属層44をめっきによって形成する。めっきを用いる場合、常温に近い温度で金属層が形成される。そのため、第2金属層42、第3金属層43、及び第1金属層41の一部の形成から、第1金属層41、及び第4金属層44を形成する過程において、半導体層10、及び各金属層は温度が降下する。前述したように、一般に半導体層10の線膨張係数よりもドレイン電極40の線膨張係数のほうが大きいため、半導体層10よりもドレイン電極40の収縮量のほうが大きい。そのため、収縮量が大きいドレイン電極40の面積が小さくなるよう曲げ応力が生じ、半導体層10とドレイン電極40は半導体層10側に凸に歪む。ウェハ状態で反りが生じると、個片化が難しくなり、個片化後にも反りが残るため、半導体装置100が配線基板200へ実装される際に実装不良が起こるおそれがある。
【0058】
一方、第1の実施形態に係る半導体装置100は、第4金属層44を形成した後、制御層50を形成する。制御層50はスパッタで形成されるため、半導体層10、及びドレイン電極40の温度が上昇する。ドレイン電極40形成時に生じた反りは、温度上昇によって解消する。制御層50の形成後に温度が降下するが、曲げ応力が発生しやすいドレイン電極40は、線膨張係数がドレイン電極40よりも小さい半導体層10と制御層50とで挟まれているため、線膨張係数差に起因する曲げ応力の発生を抑制することができる。よって、制御層50を設けることで、曲げ応力に起因する半導体層10とドレイン電極40の凸形状の反り発生を抑制することができる。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
10 半導体層
10a 第1領域
10b 第2領域
11 ドレイン領域
12 ドリフト領域
13a 第1ベース領域
13b 第2ベース領域
14a 第1ソース領域
14b 第2ソース領域
21 第1ソース電極(第1電極)
22 第2ソース電極(第2電極)
31 第1ゲート電極
32 第2ゲート電極
40 ドレイン電極(第3電極)
41 第1金属層
42 第2金属層
43 第3金属層
44 第4金属層
50 制御層
60 絶縁膜
61 第1絶縁膜
62 第2絶縁膜
71 第1トランジスタ
72 第2トランジスタ
81 第1ソース電極パッド
82 第2ソース電極パッド
91 第1ゲート電極パッド
92 第2ゲート電極パッド
100、300 半導体装置
200 配線基板
210 接合材
220 導体部
P1 第1面
P2 第2面
図1
図2
図3
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図10