(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】減衰付加装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20240909BHJP
G21C 19/07 20060101ALI20240909BHJP
G21D 1/00 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
F16F15/02 E
G21C19/07 600
G21D1/00 Z
(21)【出願番号】P 2021085988
(22)【出願日】2021-05-21
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145816
【氏名又は名称】鹿股 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100195718
【氏名又は名称】市橋 俊規
(74)【代理人】
【識別番号】100196003
【氏名又は名称】石川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 和
(72)【発明者】
【氏名】片山 洋
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-196910(JP,A)
【文献】特開2016-166518(JP,A)
【文献】特開2020-085158(JP,A)
【文献】特開平06-323355(JP,A)
【文献】特開昭61-049028(JP,A)
【文献】特許第6591310(JP,B2)
【文献】米国特許第05303524(US,A)
【文献】独国特許発明第04305132(DE,C1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
G21C 19/07
G21D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制振対象物の底部と、前記制振対象物が載置される載置部との間に配置され、前記制振対象物が振動することによって前記載置部の上面に対する前記制振対象物の下面の相対位置がデフォルト位置から第2位置に変化する場合に、前記相対位置を前記デフォルト位置に復元する復元力を発生させる復元力発生部と、
前記制振対象物の前記下面を前記載置部の前記上面に押し付ける押付力を発生させる押付力発生部と、
前記制振対象物が前記載置部の前記上面から直接的または間接的に受ける摩擦力を、前記デフォルト位置から前記第2位置までの距離の大きさに依存して変更する摩擦力調整部と
を具備
し、
前記摩擦力調整部は、前記デフォルト位置から前記第2位置までの距離の大きさに依存して、前記載置部の前記上面に対して摺動する摺動面の総面積を変更する
減衰付加装置。
【請求項2】
前記摩擦力調整部は、前記制振対象物の前記底部を構成するベース部材とは独立して設けられる摺動ブロックを有し、
前記摺動ブロックは、前記摺動ブロックと前記ベース部材との間に隙間が形成されるように、前記載置部を構成する摺動盤に載置され、
前記デフォルト位置から前記第2位置までの距離の大きさが前記隙間の大きさよりも大きい場合に、前記ベース部材が前記摺動ブロックと接触することにより前記摩擦力が増加されるように構成される
請求項
1に記載の減衰付加装置。
【請求項3】
前記摩擦力調整部は、
前記摺動盤に固定される第1シャフトと、
前記第1シャフトの長手方向軸に沿って位置変更可能な第1付勢力調整部材と、
前記第1付勢力調整部材と前記摺動ブロックとの間に配置され、前記摺動ブロックに前記摺動盤に向かう方向に第1付勢力を付与する第1弾性部材と
を有する
請求項
2に記載の減衰付加装置。
【請求項4】
前記摩擦力調整部は、前記ベース部材と前記摺動ブロックとの間の前記隙間に配置される弾性部材を有する
請求項
2または3に記載の減衰付加装置。
【請求項5】
前記摺動ブロックは、第1ブロックおよび第2ブロックを含む複数のブロックを有し、
前記第1ブロックは、前記第1ブロックと前記ベース部材との間に第1隙間が形成されるように、前記摺動盤に載置され、
前記第2ブロックは、前記第2ブロックと前記ベース部材との間に前記第1隙間よりも大きな第2隙間が形成されるように、前記摺動盤に載置され、
前記デフォルト位置から前記第2位置までの距離の大きさが、前記第1隙間の大きさよりも大きく、前記第2隙間の大きさよりも小さい場合に、前記ベース部材が前記第1ブロックと接触することにより前記摩擦力が増加されるように構成され、
前記デフォルト位置から前記第2位置までの距離の大きさが前記第2隙間の大きさよりも大きい場合に、前記ベース部材が前記第1ブロックおよび前記第2ブロックの両方と接触することにより前記摩擦力が更に増加されるように構成される
請求項
2乃至4のいずれか一項に記載の減衰付加装置。
【請求項6】
前記復元力発生部は、前記ベース部材と前記摺動盤との間に配置され、前記ベース部材および前記摺動盤のそれぞれに支持される棒ばねを有し、
前記押付力発生部は、
前記摺動盤に固定される第2シャフトと、
前記第2シャフトの長手方向軸に沿って位置変更可能な第2付勢力調整部材と、
前記第2付勢力調整部材と前記ベース部材との間に配置され、前記ベース部材に前記摺動盤に向かう方向に第2付勢力を付与する第2弾性部材と
を有する
請求項
2乃至5のいずれか一項に記載の減衰付加装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、減衰付加装置に関し、特に、地震波や衝撃波などの振動入力に対する応答変位を抑制する制振技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等に設置される各種機器は、地震荷重や飛翔体の衝突荷重などの様々な外力に対して機能を維持するように構成されていることが望ましい。近年、基準地震動が見直され、想定される地震荷重が大きく見積もられるようになった。従来の地震の揺れに耐えられるように、剛的に補強する対策だけでは耐震性を担保することが難しい場合がある。このため、建屋からの地震入力を機器に直接伝えないようにする免震の考え方を取り入れる対策が提案されている。免震を取り入れる方法としては、各種機器と建屋の床との間に積層ゴムや滑り支承などの免震装置を設置する方法がある。また、使用済核燃料貯蔵ラックなどに関しては、アンカーボルトによる固定を行わず、使用済核燃料貯蔵ラックを、燃料プールの底に載置する自立式の設置方法などがある。一般的な免震装置では、固有振動数が、地震動の主成分を含む振動数域よりも低い数値となるように設定されるため、振動入力に対する応答変位が大きくなる。そこで、機器の下端部を支持する支持部材に、復元力と摩擦力とを調整する機構を設け、地震荷重などの外力が作用した時に、機器の下端部を微小に滑らせることにより、機器への振動入力を抑制する技術が提案されている。
【0003】
特許文献2の
図5には、大きな減衰を制振対象物に付加できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6591310号公報
【文献】特開2020-85158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の減衰付加装置では、最適な減衰が付加される入力加速度を超える加速度が入力される場合には、付加される減衰が徐々に低下するとの課題がある。
そこで、本発明の目的は、広範囲の入力加速度に対して、制振対象物の振動を減衰させることができる減衰付加装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、実施形態における減衰付加装置は、制振対象物の底部と、前記制振対象物が載置される載置部との間に配置され、前記制振対象物が振動することによって前記載置部の上面に対する前記制振対象物の下面の相対位置がデフォルト位置から第2位置に変化する場合に、前記相対位置を前記デフォルト位置に復元する復元力を発生させる復元力発生部と、前記制振対象物の前記下面を前記載置部の前記上面に押し付ける押付力を発生させる押付力発生部と、前記制振対象物が前記載置部の前記上面から直接的または間接的に受ける摩擦力を、前記デフォルト位置から前記第2位置までの距離の大きさに依存して変更する摩擦力調整部と、を具備し、前記摩擦力調整部は、前記デフォルト位置から前記第2位置までの距離の大きさに依存して、前記載置部の前記上面に対して摺動する摺動面の総面積を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態により、広範囲の入力加速度に対して、制振対象物の振動を減衰させることができる減衰付加装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態または第2の実施形態における減衰付加装置が、制振対象物に取り付けられた様子を模式的に示す概略正面図である。
【
図2】
図2は、復元力発生部の一例を模式的に示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、押付力発生部の一例を模式的に示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、摩擦力調整部の一例を模式的に示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、摩擦力調整部の一例を模式的に示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、摩擦力調整部の第1変形例を模式的に示す概略断面図である。
【
図7】
図7は、摩擦力調整部の第2変形例を模式的に示す概略断面図である。
【
図8】
図8は、従来の減衰付加装置が取り付けられた制振対象物の振動モデルを示す模式図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態における減衰付加装置が取り付けられた制振対象物の振動モデルを示す模式図である。
【
図10】
図10は、入力加速度と減衰比との関係を示すグラフである。
【
図11】
図11は、固有振動数比と減衰比との関係を示すグラフである。
【
図12】
図12は、第2の実施形態における減衰付加装置の摩擦力調整部の一例を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態における減衰付加装置1に関して、添付図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、同じ機能を有する部材、部位については、同一の符号が付され、同一の符号が付されている部材、部位について、繰り返しの説明は省略される。
【0010】
(第1の実施形態)
図1乃至
図11を用いて第1の実施形態における減衰付加装置1Aについて説明する。
図1は、第1実施形態における減衰付加装置1Aが、制振対象物Bに取り付けられた様子を模式的に示す概略正面図である。なお、
図1において、減衰付加装置1Aの配置を把握し易くするために、機器2以外の部分については、正面図の代わりに、断面図が示されている。
図2は、復元力発生部6の一例を模式的に示す概略断面図である。
図3は、押付力発生部7の一例を模式的に示す概略断面図である。
図4および
図5は、摩擦力調整部8の一例を模式的に示す概略断面図である。
図6は、摩擦力調整部8の第1変形例を模式的に示す概略断面図である。
図7は、摩擦力調整部8の第2変形例を模式的に示す概略断面図である。
図8は、従来の減衰付加装置100が取り付けられた制振対象物Bの振動モデルを示す模式図である。
図9は、第1の実施形態における減衰付加装置1Aが取り付けられた制振対象物Bの振動モデルを示す模式図である。
図10は、入力加速度と減衰比との関係を示すグラフである。
図11は、固有振動数比と減衰比との関係を示すグラフである。
【0011】
(構成・作用)
第1の実施形態における減衰付加装置1Aは、制振対象物Bと摺動盤4などの載置部Cと間に配置される。減衰付加装置1Aは、地震荷重や衝撃荷重などの外力が載置部Cに作用した時に制振対象物Bに生じる振動を減衰させるために用いられる。制振対象物Bとしては、原子力発電所で用いられる使用済核燃料貯蔵ラック、電気盤、ポンプ、熱交換器、変圧器などが例示される。
【0012】
図1に記載の例では、建屋の床面3の上に、摺動盤4が載置されている。摺動盤4は、ボルト等の固定部材91によって床面3に固定されている。
図1に記載の例では、制振対象物Bを載置する載置部Cは、摺動盤4であるが、載置部Cは、床面3自体であってもよい。
【0013】
図1に記載の例では、制振対象物Bは、機器2(例えば、使用済核燃料貯蔵ラックなどの貯蔵機器、電気盤、変圧器などの電気機器、熱交換器などの熱機器、または、ポンプなどの流体機器)と、ベース部材5とを含む。ベース部材5は、機器2の下面に、溶接、ボルトなどによって固定されている。代替的に、機器2が直接的に載置部Cに載置され、ベース部材5が省略されてもよい。
【0014】
図1に記載の例では、ベース部材5には、後述の復元力発生部6、押付力発生部7、および、摩擦力調整部8が配置されている。ベース部材5は、復元力発生部6、押付力発生部7、および、摩擦力調整部8の少なくとも一部を収容可能な筐体構造を有していてもよい。
図1に記載の例では、ベース部材5は、複数の側板5Aと、下板5Bと、上板5Cとを有する。複数の側板5Aの下部は、下板5Bに溶接などによって固定され、複数の側板5Aの上部は、上板5Cに溶接などによって固定される。
【0015】
第1の実施形態における減衰付加装置1Aは、復元力発生部6と、押付力発生部7と、摩擦力調整部8と、を具備する。
【0016】
復元力発生部6は、制振対象物Bの底部(例えば、ベース部材5)と、制振対象物Bが載置される載置部C(例えば、摺動盤4)との間に配置される。
図2(a)に記載の例では、載置部Cに作用する外力に起因して制振対象物Bが振動することによって、載置部Cの上面C1に対する制振対象物Bの下面B1の相対位置が、デフォルト位置P1(換言すれば、第1位置)からデフォルト位置P1とは異なる第2位置P2(
図2(b)を参照。)に変化する。
【0017】
復元力発生部6は、制振対象物Bが振動することによって載置部Cの上面C1に対する制振対象物Bの下面B1の相対位置がデフォルト位置P1から第2位置P2に変化する場合に、当該相対位置をデフォルト位置P1(
図2(a)を参照。)に復元する復元力を発生させる。
【0018】
図3(a)に記載の例において、押付力発生部7は、制振対象物Bの下面B1を載置部Cの上面C1に押し付ける押付力を発生させる。当該押付力は、制振対象物Bの下面B1が載置部Cの上面C1に対して摺動する際に、下面B1と上面C1との間に摩擦力を生じさせる。例えば、押付力発生部7は、制振対象物Bが振動することによって載置部Cの上面C1に対する制振対象物Bの下面B1の相対位置がデフォルト位置P1から第2位置P2に変化する場合に、制振対象物Bの下面B1に、第2位置P2からデフォルト位置P1に向かう方向に摩擦力F1を付与する。当該摩擦力F1によって、制振対象物Bの振動エネルギーが吸収され、制振対象物Bの振動が減衰される。
【0019】
図4および
図5に記載の例において、摩擦力調整部8は、制振対象物Bが載置部Cの上面C1から直接的または間接的に受ける摩擦力を、デフォルト位置P1から第2位置P2までの距離の大きさに依存して変更する。
【0020】
図4および
図5に記載の例において、載置部Cの上面C1に対する制振対象物Bの下面B1の相対位置がデフォルト位置P1(
図4(a)あるいは
図5(a)を参照。)から第2位置P2(
図4(b)あるいは
図5(b)を参照。)に変化する場合を想定する。
図4(b)に記載の例では、デフォルト位置P1から第2位置P2までの距離の大きさが相対的に小さい。この場合、摩擦力調整部8は、制振対象物Bが載置部Cの上面C1から直接的または間接的に受ける摩擦力の大きさ(F1)が相対的に小さな値となるように調整する。
図5(b)に記載の例では、デフォルト位置P1から第2位置P2までの距離の大きさが相対的に大きい。この場合、摩擦力調整部8は、制振対象物Bが載置部Cの上面C1から直接的または間接的に受ける摩擦力の大きさ(F1+F2)が相対的に大きな値となるように調整する。
【0021】
(効果)
第1の実施形態では、減衰付加装置1Aは、制振対象物Bが載置部Cの上面C1から直接的または間接的に受ける摩擦力を、デフォルト位置P1から第2位置P2までの距離の大きさに依存して変更する摩擦力調整部8を備える。デフォルト位置P1から第2位置P2までの距離の大きさ、換言すれば、載置部Cの上面C1に対する制振対象物Bの下面B1の相対位置の変化の大きさに依存して、制振対象物Bに作用する制動力として機能する摩擦力の大きさが変更されることにより、広範囲の入力加速度に対して、制振対象物Bの振動を効果的に減衰させることができる。例えば、制振対象物Bに入力される入力加速度が大きく、制振対象物Bの振幅が大きい場合には、より大きな制動力が作用する。その結果、制振対象物Bの振動を効果的に減衰させることができる。
【0022】
(任意付加的な構成)
続いて、
図1乃至
図7を参照して、第1の実施形態における減衰付加装置1Aにおいて採用可能な任意付加的な構成について説明する。
【0023】
(摩擦力調整部8)
図4および
図5に記載の例では、摩擦力調整部8は、デフォルト位置P1から第2位置P2までの距離の大きさに依存して、載置部Cの上面C1に対して摺動する摺動面の総面積を変更する。
【0024】
図4(b)に記載の例では、デフォルト位置P1から第2位置P2までの距離の大きさが相対的に小さい。
図4(b)に記載の例では、載置部Cの上面C1に対して摺動する摺動面は、制振対象物Bの下面B1(より具体的には、ベース部材5の下面B1)である。
【0025】
図5(b)に記載の例では、デフォルト位置P1から第2位置P2までの距離の大きさが相対的に大きく、制振対象物Bが摺動ブロック17と接触している。
図5(b)に記載の例では、制振対象物Bおよび摺動ブロック17が載置部Cに対して摺動する。この場合、載置部Cの上面C1に対して摺動する摺動面は、制振対象物Bの下面B1(より具体的には、ベース部材5の下面B1)と、摺動ブロック17の下面17wとの両方である。よって、
図5(b)に記載の例では、
図4(b)に記載の例と比較して、載置部Cの上面C1に対して摺動する摺動面の総面積が大きい。摺動面の総面積が大きいことにより、制振対象物Bが、載置部Cの上面C1から直接的または間接的に受ける摩擦力の大きさが相対的に大きな値となる。
図5(b)に記載の例では、制振対象物Bが、載置部Cの上面C1から直接的に摩擦力F1を受け、載置部Cの上面C1から摺動ブロック17を介して間接的に摩擦力F2を受ける。
【0026】
(摺動ブロック17)
図4(a)に記載の例では、摩擦力調整部8は、制振対象物Bの底部を構成するベース部材5とは独立して設けられる摺動ブロック17を有する。摺動ブロック17は、摺動ブロック17とベース部材5との間に隙間16が形成されるように、載置部Cを構成する摺動盤4に載置されている。
【0027】
載置部Cに入力される入力加速度が小さく、制振対象物Bの振動応答が小さい場合を想定する。制振対象物Bの振動応答が小さい場合、
図4(b)に例示されるように、デフォルト位置P1から第2位置P2までの距離の大きさは、隙間16(
図4(a)を参照。)の大きさeよりも小さくなる。この場合、ベース部材5は摺動ブロック17と接触せず、ベース部材5のみが載置部Cに対して摺動する。よって、摺動ブロック17の存在は、制振対象物Bが載置部Cの上面C1から受ける摩擦力の増加に寄与しない。
【0028】
次に、載置部Cに入力される入力加速度が大きく、制振対象物Bの振動応答がより大きくなる場合を想定する。制振対象物Bの振動応答が大きい場合、
図5(b)に例示されるように、デフォルト位置P1から第2位置P2までの距離の大きさが、隙間16(
図5(a)を参照。)の大きさeよりも大きくなる。この場合、ベース部材5が摺動ブロック17と接触することにより、制振対象物Bが載置部Cの上面C1から直接的または間接的に受ける摩擦力が増加される。より具体的には、ベース部材5が摺動ブロック17と接触することにより、ベース部材5および摺動ブロック17の両方が載置部Cに対して摺動する。その結果、制振対象物Bが、載置部Cの上面C1から摺動ブロック17を介して間接的に受ける追加の摩擦力F2の分だけ、制振対象物Bが載置部Cの上面C1から受ける摩擦力が増加する。
【0029】
図5(b)に記載の例では、ベース部材5と摺動盤4との間の相対変位が閾値e(より具体的には、摺動ブロック17とベース部材5との間の隙間16の大きさe)を越えると、摩擦力調整部8の摺動ブロック17で追加の摩擦力F2が発生し、ベース部材5と摺動盤4の上面C1との間の摩擦力F1と、当該追加の摩擦力F2とによって、制振対象物Bの振動エネルギーが吸収される。
図5に記載の例では、想定される相対変位の大きさに応じて、摺動ブロック17とベース部材5との間の隙間16の大きさを設定することにより、上述の閾値eを容易に調整することが可能である。
【0030】
図4(a)に記載の例では、ベース部材5(より具体的には、ベース部材5の下板5B)に第1貫通孔部511hが形成されており、摺動ブロック17は、当該第1貫通孔部511hの内側に配置されている。また、摺動ブロック17の外面17tと第1貫通孔部511hの内面との間に、隙間16が形成されている。載置部Cの上面C1に対する制振対象物Bの下面B1の相対位置がデフォルト位置P1である状態において、摺動ブロック17の外面17tと第1貫通孔部511hの内面との間の距離(e)が、隙間16の大きさに該当する。
【0031】
摺動ブロック17は、平面視で、リング形状を有していてもよいし、その他の形状を有していてもよい。摺動ブロック17の外面17tは、平面視で、円形状を有し、第1貫通孔部511hの内面は、平面視で円形状を有していてもよい。
図4(a)に記載の例では、載置部Cの上面C1に対する制振対象物Bの下面B1の相対位置がデフォルト位置P1である状態において、平面視における摺動ブロック17の中心と、平面視における第1貫通孔部511hの中心とが一致している。代替的に、制振対象物Bの下面B1の相対位置がデフォルト位置P1である状態において、平面視における摺動ブロック17の中心が、平面視における第1貫通孔部511hの中心からずれていてもよい。
【0032】
例えば、載置部Cの上面C1に対する制振対象物Bの下面B1の相対位置が第2位置P2からデフォルト位置P1に戻った状態において、平面視における摺動ブロック17の中心が、平面視における第1貫通孔部511hの中心からずれていてもよい。制振対象物Bがデフォルト位置P1に戻った状態において、平面視における摺動ブロック17の中心が、平面視における第1貫通孔部511hの中心からずれている場合、上述の隙間16の大きさは、摺動ブロック17の外面17tと第1貫通孔部511hの内面との間の最小距離を意味する。
【0033】
(摩擦力調整部8のその他の構成)
図4(a)に記載の例では、摩擦力調整部8は、第1シャフト18と、第1付勢力調整部材19と、第1弾性部材21とを有する。摩擦力調整部8は、第1座金20a、第2座金20bなどの座金20を有していてもよい。
【0034】
図4(a)に記載の例では、第1シャフト18は、載置部C(より具体的には、摺動盤4)に固定されている。第1シャフト18は、螺合等によって載置部Cに固定される。
図4(a)に記載の例では、摺動ブロック17に貫通孔部17hが形成されており、第1シャフト18は、当該貫通孔部17hに挿入されている。また、第1シャフト18の下端部18bは、螺合等によって摺動盤4に固定されている。
【0035】
第1付勢力調整部材19は、第1シャフト18の長手方向軸AX1に沿って位置変更可能である。第1付勢力調整部材19が、第1シャフト18の長手方向軸AX1に沿って位置変更されることにより、第1弾性部材21の第1付勢力が調整される。第1付勢力調整部材19は、第1シャフト18の長手方向軸AX1に沿って位置変更可能である限りにおいて、どのような部材であってもよい。第1付勢力調整部材19は、第1シャフト18に螺合する第1ナット190であってもよいし、第1シャフト18に形成されたカム溝に沿って移動するカム部材であってもよい。また、第1シャフト18がボルトである場合には、第1付勢力調整部材19は、ボルトの頭部であってもよい。
【0036】
図4(a)に記載の例では、第1付勢力調整部材19は、第1シャフト18に螺合する第1ナット190である。
図4(a)に記載の例では、第1シャフト18の上端部18aに雄ネジ部が形成されており、第1ナット190は、当該雄ネジ部に螺合している。この場合、第1ナット190が、第1シャフト18の長手方向軸AX1まわりに、第1シャフト18に対して相対回転されることにより、第1ナット190は、第1シャフトの長手方向軸AX1に沿って位置変更される。第1ナット190は、例えば、公知の回転治具(図示せず)により回転操作される。
【0037】
第1弾性部材21は、第1付勢力調整部材19(より具体的には、第1ナット190)と摺動ブロック17との間に配置される。第1弾性部材21は、摺動ブロック17に摺動盤4に向かう方向(より具体的には、鉛直下方向)に第1付勢力を付与する。第1付勢力調整部材19が、第1シャフト18の長手方向軸AX1に沿って位置変更されることにより、第1弾性部材21の弾性変形量が変更され、摺動ブロック17に付与される第1付勢力の大きさが変更される(換言すれば、第1付勢力が調整される。)。
【0038】
図4(a)に記載の例では、第1弾性部材21は、第1シャフト18の長手方向に沿って積層された複数の皿バネを含む。代替的に、第1弾性部材21は、皿バネ以外のバネ、あるいは、ゴムであってもよい。
図4(a)に記載の例では、第1弾性部材21は、第1シャフト18の周囲に配置されている。
【0039】
図4(a)に記載の例では、第1弾性部材21と摺動ブロック17との間に第1座金20aが配置されている。第1座金20aは、摺動ブロック17が載置部Cの上面C1に対して摺動する際に、摺動ブロック17の移動を円滑に案内する。第1座金20aの下面と摺動ブロック17の上面との間の静止摩擦係数は、摺動ブロック17の下面17wと載置部Cの上面C1との間の静止摩擦係数よりも小さいことが好ましい。この場合、摺動ブロック17がベース部材5によって押圧されると、摺動ブロック17は、第1座金20aおよび載置部Cの両方によって円滑に案内され、第1座金20aおよび載置部Cの両方に対して摺動する。
【0040】
図4(a)に記載の例では、第1座金20aは、第1弾性部材21の下端部と接触する下部バネ受けとして機能している。
【0041】
図4(a)に記載の例では、第1付勢力調整部材19(より具体的には、第1ナット190)と第1弾性部材21との間に第2座金20bが配置されている。第2座金20bは、第1弾性部材21の上端部と接触する上部バネ受けとして機能する。
図4(a)に記載の例では、第2座金20bは、第1ナット190が回転操作される際に、第1ナット190の回転を円滑に案内する。
【0042】
図5(a)に記載の例において、地震荷重や衝撃荷重などの外力が載置部Cに作用すると、ベース部材5が摺動盤4の上面C1を摺動し、摺動盤4の上面C1に対するベース部材5の下面B1の相対位置が、デフォルト位置P1から第2位置P2に変化する。デフォルト位置P1から第2位置P2までの距離(換言すれば、摺動盤4に対するベース部材5の相対変位)が隙間16の大きさeを越えると、ベース部材5と摺動ブロック17とが接触し、ベース部材5および摺動ブロック17が摺動盤4に対して摺動する(
図5(b)を参照。)。ベース部材5および摺動ブロック17が摺動盤4に対して摺動すると、摺動盤4からベース部材5に、第2位置P2からデフォルト位置P1に向かう方向に摩擦力F1が発生し、摺動盤4から摺動ブロック17に、第2位置P2からデフォルト位置P1に向かう方向に追加の摩擦力F2が発生する。当該摩擦力F1および追加の摩擦力F2によって、制振対象物Bの振動エネルギーが吸収される。
【0043】
図5(b)に記載の例では(換言すれば、載置部Cに入力される入力加速度が相対的に大きい場合)、摺動盤4とベース部材5との間に作用する摩擦力F1と、摺動盤4と摺動ブロック17との間に作用する追加の摩擦力F2との両方が、制振対象物Bの振動の減衰に寄与する。他方、
図4(b)に記載の例では(換言すれば、載置部Cに入力される入力加速度が相対的に小さい場合)、摺動盤4とベース部材5との間に作用する摩擦力F1が、制振対象物Bの振動の減衰に寄与し、摺動ブロック17は制振対象物Bの振動の減衰に寄与しない。このようにして、広範囲の入力加速度に対して、制振対象物Bの振動を、より効果的に減衰させることができる。
【0044】
摩擦力調整部8が、摺動ブロック17と、第1付勢力調整部材19とを有する場合には、摩擦力F1の大きさに対する、追加の摩擦力F2の大きさの比率を容易に変更あるいは調整することができる。よって、制振対象物Bの振動特性などに合わせて、最適な減衰を容易に付加することができる。
【0045】
図5(a)に記載の例では、第1弾性部材21は、ベース部材5の内側の第1空間SP1(より具体的には、上板5C、下板5Bと、複数の側板5Aとによって囲まれた空間)に配置されている。この場合、第1弾性部材21は、ベース部材5によって保護される。
図5(a)に例示されるように、第1ナット190、および/または、第1シャフト18の上端部18aが、ベース部材5の内側の第1空間SP1に配置されていてもよい。
【0046】
図5(a)に記載の例では、ベース部材5の上板5Cに第1アクセス孔部511dが形成されている。第1アクセス孔部511dは、第1付勢力調整部材19(あるいは、第1シャフト18)と対向する位置に形成されていることが好ましい。上板5Cに第1アクセス孔部511dが形成されている場合、ユーザは、第1アクセス孔部511dを介して、第1付勢力調整部材19(あるいは、第1シャフト18)を操作することができる。
【0047】
図1に記載の例では、減衰付加装置1Aは、少なくとも2つの摩擦力調整部8を備える。減衰付加装置1Aが備える摩擦力調整部8の数は、制振対象物Bの大きさ等に応じて決定される。
【0048】
(第1変形例)
図6には、第1変形例における摩擦力調整部8が示されている。
図6に記載の例では、摩擦力調整部8は、ベース部材5と摺動ブロック17との間の隙間16に配置される弾性部材22を有する。弾性部材22は、ベース部材5(より具体的には、下板5B)が摺動ブロック17に接触する際の衝撃を緩和する。弾性部材22は、例えば、板バネである。
【0049】
(第2変形例)
図7には、第2変形例における摩擦力調整部8が示されている。
図7(a)に記載の例では、摺動ブロック17は、第1ブロック17aおよび第2ブロック17bを含む複数のブロックを有する。
【0050】
第1ブロック17aは、第1ブロック17aとベース部材5(より具体的には、下板5B)との間に第1隙間16aが形成されるように、摺動盤4に載置されている。また、第2ブロック17bは、第2ブロック17bとベース部材5(より具体的には、下板5B)との間に第1隙間16aよりも大きな第2隙間16bが形成されるように、摺動盤4に載置されている。
【0051】
図7(b)に例示されるように、デフォルト位置P1から第2位置P2までの距離の大きさが、第1隙間16aの大きさe1(
図7(a)を参照。)よりも大きく、第2隙間16bの大きさe2(
図7(a)を参照。)よりも小さい場合に、ベース部材5が第1ブロック17aと接触することにより、制振対象物Bが載置部Cの上面C1から直接的または間接的に受ける摩擦力が増加される。
【0052】
また、
図7(c)に例示されるように、デフォルト位置P1から第2位置P2までの距離の大きさが第2隙間16bの大きさe2(
図7(a)を参照。)よりも大きい場合に、ベース部材5が第1ブロック17aおよび第2ブロック17bの両方と接触することにより、制振対象物Bが載置部Cの上面C1から直接的または間接的に受ける摩擦力が更に増加される。
【0053】
図7に記載の例では、載置部Cに入力される入力加速度の大きさに応じて、制振対象物Bの振動の減衰に寄与する摺動ブロック17の数が変更される。例えば、載置部Cに入力される入力加速度の大きさが小さい場合、制振対象物Bの振動の減衰に寄与する摺動ブロック17の数がゼロであり、載置部Cに入力される入力加速度の大きさが大きくなると、制振対象物Bの振動の減衰に寄与する摺動ブロック17の数が増加され、載置部Cに入力される入力加速度の大きさが更に大きくなると、制振対象物Bの振動の減衰に寄与する摺動ブロック17の数が更に増加される。このようにして、
図7に記載の例では、更に広範囲の入力加速度に対して、制振対象物Bの振動を、より効果的に減衰させることができる。
【0054】
(復元力発生部6)
図2(a)に記載の例では、復元力発生部6は、ベース部材5と摺動盤4との間に配置される棒バネ9を有する。棒バネ9は、ベース部材5および摺動盤4のそれぞれに支持される。
【0055】
棒バネ9は、載置部Cの上面C1に対する制振対象物Bの下面B1の相対位置がデフォルト位置P1から第2位置P2に変化する場合に、棒バネ9の曲げ剛性を利用して、当該相対位置をデフォルト位置P1に復元する。より具体的には、地震荷重や衝撃荷重などの外力が載置部Cに作用することに起因してベース部材5が摺動盤4の上面C1に対して摺動する時、棒バネ9の曲げ剛性によって、摺動盤4に対するベース部材5の相対位置が元の位置(換言すれば、デフォルト位置P1)に復元される。
【0056】
図2(a)に記載の例では、棒バネ9の下端部9bは、摺動盤4に形成された第1嵌合部10(より具体的には、第1凹部)に嵌合されている。この場合、摺動盤4に対する棒バネ9の下端部9bの水平方向への相対移動が、第1嵌合部10によって拘束される。
図2(a)に記載の例では、棒バネ9の上端部9aは、ベース部材5の上板5Cに形成された第2嵌合部11(より具体的には、貫通孔部)に嵌合されている。この場合、ベース部材5に対する棒バネ9の上端部9aの水平方向への相対移動が、第2嵌合部11によって拘束される。
【0057】
図2(a)に記載の例では、ベース部材5(より具体的には、ベース部材5の下板5B)に第2貫通孔部512hが形成されており、棒バネ9は、当該第2貫通孔部512hに挿入されている。棒バネ9の外面9tと第2貫通孔部512hの内面との間には、第3隙間G3が形成されている。棒バネ9の外面9tと第2貫通孔部512hの内面との間の距離が、第3隙間G3の大きさに該当する。第3隙間G3の大きさは、
図4(a)に例示される摺動ブロック17とベース部材5との間の隙間16の大きさeよりも大きいことが好ましい。第3隙間G3が十分に大きいことにより、ベース部材5が水平方向に振動する際に、ベース部材5と棒バネ9の下端部9bとが干渉することが防止される。
【0058】
図1に記載の例では、減衰付加装置1Aは、少なくとも2つの復元力発生部6を備える。減衰付加装置1Aが備える復元力発生部6の数は、制振対象物Bの大きさ等に応じて決定される。
【0059】
(押付力発生部7)
図3(a)に記載の例では、押付力発生部7は、第2シャフト12と、第2付勢力調整部材13と、第2弾性部材15とを有する。押付力発生部7は、第3座金14a、第4座金14bなどの座金14を有していてもよい。
【0060】
図3(a)に記載の例では、第2シャフト12は、載置部C(より具体的には、摺動盤4)に固定されている。第2シャフト12は、螺合等によって載置部Cに固定される。
図3(a)に記載の例では、ベース部材5(より具体的には、ベース部材5の下板5B)に第3貫通孔部513hが形成されており、第2シャフト12は、当該第3貫通孔部513hに挿入されている。また、第2シャフト12の下端部12bは、螺合等によって摺動盤4に固定されている。
【0061】
第2シャフト12の外面12tと第3貫通孔部513hの内面との間には、第4隙間G4が形成されている。第2シャフト12の外面12tと第3貫通孔部513hの内面との間の距離が、第4隙間G4の大きさに該当する。第4隙間G4の大きさは、
図4(a)に例示される摺動ブロック17とベース部材5との間の隙間16の大きさeよりも大きいことが好ましい。第4隙間G4が十分に大きいことにより、ベース部材5が水平方向に振動する際に、ベース部材5と第2シャフト12とが干渉することが防止される。
【0062】
第2付勢力調整部材13は、第2シャフト12の長手方向軸AX2に沿って位置変更可能である。第2付勢力調整部材13が、第2シャフト12の長手方向軸AX2に沿って位置変更されることにより、第2弾性部材15の第2付勢力が調整される。第2付勢力調整部材13は、第2シャフト12の長手方向軸AX2に沿って位置変更可能である限りにおいて、どのような部材であってもよい。第2付勢力調整部材13は、第2シャフト12に螺合する第2ナット130であってもよいし、第2シャフト12に形成されたカム溝に沿って移動するカム部材であってもよい。また、第2シャフト12がボルトである場合には、第2付勢力調整部材13は、ボルトの頭部であってもよい。
【0063】
図3(a)に記載の例では、第2付勢力調整部材13は、第2シャフト12に螺合する第2ナット130である。
図3(a)に記載の例では、第2シャフト12の上端部12aに雄ネジ部が形成されており、第2ナット130は、当該雄ネジ部に螺合している。第2ナット130が、第2シャフト12の長手方向軸AX2まわりに、第2シャフト12に対して相対回転されることにより、第2ナット130は、第2シャフトの長手方向軸AX2に沿って位置変更される。第2ナット130は、例えば、公知の回転治具(図示せず)により回転操作される。
【0064】
第2弾性部材15は、第2付勢力調整部材13(より具体的には、第2ナット130)とベース部材5(より具体的には、ベース部材5の下板5B)との間に配置される。第2弾性部材15は、ベース部材5に摺動盤4に向かう方向(より具体的には、鉛直下方向)に第2付勢力を付与する。当該第2付勢力によって、ベース部材5が摺動盤4に押し付けられる。第2付勢力調整部材13が、第2シャフト12の長手方向軸AX2に沿って位置変更されることにより、第2弾性部材15の弾性変形量が変更され、ベース部材5に付与される第2付勢力の大きさが変更される(換言すれば、第2付勢力が調整される。)。
【0065】
図3(a)に記載の例では、第2弾性部材15は、第2シャフト12の長手方向に沿って積層された複数の皿バネを含む。代替的に、第2弾性部材15は、皿バネ以外のバネ、あるいは、ゴムであってもよい。
図3(a)に記載の例では、第2弾性部材15は、第2シャフト12の周囲に配置されている。
【0066】
図3(a)に記載の例では、第2弾性部材15とベース部材5との間に第3座金14aが配置されている。第3座金14aは、ベース部材5が載置部Cの上面C1(より具体的には、摺動盤4の上面)に対して摺動する際に、ベース部材5の移動を円滑に案内する。第3座金14aの下面とベース部材5との間の静止摩擦係数は、ベース部材5の下面B1と載置部Cの上面C1との間の静止摩擦係数よりも小さいことが好ましい。この場合、ベース部材5が水平方向に振動するとき、ベース部材5は、第3座金14aおよび載置部Cの両方によって円滑に案内され、第3座金14aおよび載置部Cの両方に対して摺動する。
【0067】
図3(a)に記載の例では、第3座金14aは、第2弾性部材15の下端部と接触する下部バネ受けとして機能している。
【0068】
図3(a)に記載の例では、第2付勢力調整部材13(より具体的には、第2ナット130)と第2弾性部材15との間に第4座金14bが配置されている。第4座金14bは、第2弾性部材15の上端部と接触する上部バネ受けとして機能する。
図3(a)に記載の例では、第4座金14bは、第2ナット130が回転操作される際に、第2ナット130の回転を円滑に案内する。
【0069】
図3(a)に記載の例において、地震荷重や衝撃荷重などの外力が載置部Cに作用すると、ベース部材5が摺動盤4の上面C1を摺動し、摺動盤4の上面C1に対するベース部材5の下面B1の相対位置が、デフォルト位置P1から第2位置P2に変化する(
図3(b)を参照。)。ベース部材5が摺動盤4に対して摺動すると、摺動盤4からベース部材5に、第2位置P2からデフォルト位置P1に向かう方向に摩擦力F1が発生する。当該摩擦力F1によって、制振対象物Bの振動エネルギーが吸収され、制振対象物Bの振動が減衰される。
【0070】
図3(a)に記載の例において、第2付勢力調整部材13が、第2シャフト12の長手方向軸AX2に沿って位置変更されると、ベース部材5に付与される第2付勢力の大きさが変更される。また、第2付勢力の大きさが変更されることにより、上述の摩擦力F1の大きさが変更(換言すれば、調整)される。
【0071】
図3(a)に記載の例では、第2弾性部材15は、ベース部材5の内側の第2空間SP2(より具体的には、上板5C、下板5Bと、複数の側板5Aとによって囲まれた空間)に配置されている。この場合、第2弾性部材15は、ベース部材5によって保護される。
図3(a)に例示されるように、第2ナット130、および/または、第2シャフト12の上端部12aが、ベース部材5の内側の第2空間SP2に配置されていてもよい。
【0072】
図3(a)に記載の例では、ベース部材5の上板5Cに第2アクセス孔部513dが形成されている。第2アクセス孔部513dは、第2付勢力調整部材13(あるいは、第2シャフト12)と対向する位置に形成されていることが好ましい。上板5Cに第2アクセス孔部513dが形成されている場合、ユーザは、第2アクセス孔部513dを介して、第2付勢力調整部材13(あるいは、第2シャフト12)を操作することができる。
【0073】
図1に記載の例では、減衰付加装置1Aは、少なくとも2つの押付力発生部7を備える。減衰付加装置1Aが備える押付力発生部7の数は、制振対象物Bの大きさ等に応じて決定される。
【0074】
(復元力発生部6、押付力発生部7、および、摩擦力調整部8による複合作用)
図1に記載の例において、載置部Cに水平方向に地震荷重などの外力が加わると、ベース部材5が摺動盤4の上面C1を滑動する。
【0075】
ベース部材5が摺動盤4の上面C1を滑動すると、
図2に例示される復元力発生部6は、棒バネ9による復元力を発生し、摺動盤4に対するベース部材5の振動変位が抑制される。断面形状および/または断面寸法の異なる棒バネ9を準備することにより、棒バネ9の曲げ剛性を変化させ、制振対象物Bの支持剛性(固有振動数)を調整することができる。
【0076】
ベース部材5が摺動盤4の上面C1を滑動すると、
図3に例示される押付力発生部7は、ベース部材5と摺動盤4の上面C1との間に摩擦力を発生させる。当該摩擦力によって、制振対象物Bの振動エネルギーが吸収される。第2付勢力調整部材13を用いて第2弾性部材15の変形量を調整し、ベース部材5を摺動盤4に押し付ける押付力を変化させることができる。こうして、ベース部材5が摺動盤4の上面C1を滑動するときに発生するベース部材5と摺動盤4との間の摩擦力F1の大きさを調整することができる。
【0077】
載置部Cに入力される入力加速度が大きく、制振対象物Bの振動応答がより大きくなる場合を想定する。
図5(b)に例示されるように、ベース部材5と摺動盤4との間の相対変位が閾値e(より具体的には、摺動ブロック17とベース部材5との間の隙間16の大きさe)を越えると、摩擦力調整部8で追加の摩擦力F2が発生し、ベース部材5と摺動盤4の上面C1との間の摩擦力F1と、当該追加の摩擦力F2とによって、制振対象物Bの振動エネルギーが吸収される。想定される相対変位の大きさに応じて、摺動ブロック17とベース部材5との間の隙間16の大きさを設定することにより、閾値eを容易に調整することが可能である。また、第1付勢力調整部材19を用いて第1弾性部材21の変形量を調整し、摺動ブロック17を摺動盤4に押し付ける押付力を変化させることができる。こうして、ベース部材5と摺動盤4の上面C1との間の摩擦力F1の大きさに対する、追加の摩擦力F2の大きさを自由に調整することができる。
【0078】
(効果)
続いて、
図8乃至
図11を参照して、減衰付加装置1Aが取り付けられた制振対象物Bの振動モデルを用いて、減衰付加装置1Aによって奏される効果の一例について説明する。
【0079】
図8は、従来の減衰付加装置100が取り付けられた制振対象物Bの振動モデルを示す。「W1」は制振対象物Bの重量を示し、「k1」は制振対象物Bの剛性(ばね定数)を示し、「c1」は、制振対象物Bの減衰係数を示す。また、「W2」は、減衰付加装置100の重量を示し、「k2」は、減衰付加装置100の剛性(ばね定数)を示し、「Fr2」は、押付力発生部7によって生じる摩擦力を示す。
図9は、第1の実施形態における減衰付加装置1Aが取り付けられた制振対象物Bの振動モデルの一例を示す。「W1」は制振対象物Bの重量を示し、「k1」は制振対象物Bの剛性(ばね定数)を示し、「c1」は、制振対象物Bの減衰係数を示し、「W2」は、減衰付加装置1Aの重量を示し、「k2」は、減衰付加装置1Aの剛性(ばね定数)を示し、「Fr2」は、押付力発生部7によって生じる摩擦力を示し、「Fr2’」は、摩擦力調整部8によって生じる追加の摩擦力を示す。
【0080】
図10は、載置部Cに入力される入力加速度と減衰比との関係を示すグラフである。なお、減衰比とは、臨界減衰係数に対する減衰係数の割合を意味する。
図10には、制振対象物Bに、減衰付加装置100あるいは減衰付加装置1Aが取り付けられることにより、どの程度、減衰比が増加するか(換言すれば、制振性能が向上するか)が示されている。
【0081】
なお、
図10には、減衰付加装置が取り付けられていない制振対象物B自体が有している減衰比が4%であり、また、制振対象物Bの共振振動数域を十分にカバーする振動数範囲で正弦スイープ波が入力される場合の例が示されている。
図10の横軸は、載置部Cに入力される水平方向の入力加速度の大きさを示し、
図10の縦軸は、減衰比を示す。
図10において、黒丸、黒三角、黒四角、白丸、白三角、白四角は、制振対象物Bに減衰付加装置100(剛性比k2/k1、および、重量W1に対する摩擦力Fr2の比率は、グラフ中に示されるとおりである。)が取り付けられた場合において、入力加速度に対する減衰比の変化を示す。また、
図10において、太い実線は、制振対象物Bに減衰付加装置1Aが取り付けられた場合において、入力加速度に対する減衰比の変化を示す。
【0082】
図10から、減衰比は、顕著な振幅依存性(換言すれば、入力加速度の大きさに応じて大きく変動する特性)を有することが把握される。
図10に記載の例では、入力加速度が10Galから増加することに伴い減衰比が増大している。また、入力加速度が100Galを超えた付近で、減衰比が最大となり、更に入力加速度が増加することに伴い減衰比は徐々に低下している。
図10の例では、いずれの入力加速度が入力される場合でも、減衰付加装置1が取り付けられる前の減衰比4%を概ね上回る減衰比が得られている。
【0083】
図10の例では、減衰比の最大値は、減衰付加装置100の摩擦力Fr2の大きさによって影響されず、減衰付加装置100の剛性k2が低くなると大きくなる傾向が示されている。また、減衰付加装置100の摩擦力Fr2が増加すると、減衰比のピーク(減衰特性曲線)が高加速度側にシフトする傾向が示されている。
【0084】
第1の実施形態では、制振対象物Bの応答振幅の増加(換言すれば、載置部Cに対する制振対象物Bの相対変位の増加)に伴い、摩擦力調整部8は、追加の摩擦力Fr2’を発生させる。よって、第1の実施形態では、入力加速度の大きさが大きくなった場合に、追加の摩擦力Fr2’を発生させることにより、減衰比のピーク(減衰特性曲線)を、制振対象物Bの振動中に高加速度側にシフトさせることができる。こうして、高加速度側での減衰低下が抑制される。その結果、第1の実施形態では、広範囲の入力加速度に対して、制振対象物Bの振動を効果的に減衰させることができる。
【0085】
なお、
図7に例示されるように、減衰付加装置1Aは、隙間16の大きさ(e1;e2)が異なる複数の摩擦力調整部8を有していてもよい。この場合、ベース部材5と摺動盤4との間の相対変位の大きさに応じて、摩擦力を複数段階で増加させることができる。よって、更に広範囲の入力加速度に対して、制振対象物Bの振動を効果的に減衰させることができる。
【0086】
図11には、
図10に示されるグラフを、固有振動数比をパラメータとして再整理したグラフが示されている。なお、固有振動数比は、減衰付加装置1Aが取り付けられる前の制振対象物Bの固有振動数に対する、減衰付加装置1Aが取り付けられた後の制振対象物Bの固有振動数の割合を意味する。
【0087】
図9に記載の例において、減衰付加装置1Aの剛性k2が低下すると制振対象物Bの固有振動数は低下する。
図11は、減衰付加装置1Aの剛性k2が低下し、制振対象物Bの固有振動数が低下すると(
図11において、横軸左側にシフトすると)、減衰比の最大値が増加する傾向を示している。
図11には、減衰付加装置1Aが取り付けられる前の減衰比(4%)が、最大で27%程度まで上昇する結果が示されている。
【0088】
例えば、制振対象物Bに、第1の実施形態における減衰付加装置1Aを取り付けることにより、制振対象物Bの固有振動数を、元の固有振動数の0.5倍以上0.9倍以下となるように設定することを想定する。この場合、
図11に記載の例では、減衰付加装置1Aが取り付けられる前の制振対象物Bの減衰比(4%)に対し、減衰付加装置1Aを取り付けることにより、減衰比を約3%~23%追加して、減衰比を約7~27%にすることができる。通常の溶接構造によって制振対象物Bを固定した場合の減衰比が1%程度であることを考慮すると、第1の実施形態における減衰付加装置1Aは、制振対象物Bに非常に大きな減衰を付加することが分かる。
【0089】
従来の摺動型の免震機構を用いた振動抑制技術は、地震動の主成分の振動数域を避けて、制振対象物Bの固有振動数(一般的に、免震の固有振動数と呼ばれる。)が、例えば、0.3Hz程度の非常に低い振動数に設定される。この場合、長周期地震動では、制振対象物Bの変位が大きくなる可能性がある。
【0090】
これに対し、第1の実施形態では、制振対象物Bに減衰付加装置1Aが取り付けられた後の制振対象物Bの固有振動数を、制振対象物Bに減衰付加装置1Aが取り付けられる前の制振対象物Bの固有振動数の0.5倍以上0.9倍以下となるように設定することが可能である。例えば、制振対象物Bが、使用済核燃料貯蔵ラックや電気盤のような構造物を含む場合、減衰付加装置1Aが取り付けられる前の状態では、当該制振対象物Bの固有振動数は10Hz~30Hz程度となる。この場合、制振対象物Bに減衰付加装置1を取り付けた後の状態において、制振対象物Bの固有振動数を5Hz以上とすることができる。この場合、第1の実施形態における減衰付加装置1Aが取り付けられた制振対象物Bの固有振動数を、一般的な免震機構が取り付けられた制振対象物Bの固有振動数(0.3Hz)の約16倍以上にすることができる。両者の応答加速度が同じであると考えた場合、両者の間の応答変位の比は、両者の間の振動数の比の二乗分の一となることから、減衰付加装置1Aが取り付けられた制振対象物Bの応答変位は、一般的な免震機構が取り付けられた制振対象物Bの応答変位の数百分の一となり、極めて小さくなることがわかる。
【0091】
一般的な免震機構を採用する場合には、制振対象物Bの応答変位が大きくなることから、制振対象物Bと周辺構造物との間の衝突を避けるために、応答変位を考慮して、制振対象物B用の配置面積を大きくする必要がある。これに対し、第1の実施形態における減衰付加装置1Aが取り付けられた制振対象物Bは、一般的な免震機構に比べて、応答変位が極めて小さいため、制振対象物Bの配置設計が容易である。
【0092】
更に、第1の実施形態における減衰付加装置1Aにおいて、制振対象物Bの振動特性および/または載置部Cへの振動入力条件に応じて、減衰付加装置1Aの剛性k2および/または摩擦力Fr2が調整可能とされる場合、減衰付加装置1Aは、制振対象物Bに最適な減衰を付加することができる。
【0093】
更に、第1の実施形態における減衰付加装置1Aにおいて、追加の摩擦力Fr2’の大きさ、および/または、隙間16の大きさeが調整可能とされる場合、これらのパラメータが調整されることにより、広範囲の入力加速度に対して、高い減衰効果を得ることが可能になる。例えば、地震入力や、飛翔体が建屋に衝突することに伴う衝撃波入力など様々な振動入力に対して、高い減衰効果が得られる。また、原子力発電所で用いられる使用済核燃料貯蔵ラック、電気盤、ポンプ、熱交換器、変圧器など様々な機器に対して、それぞれの振動特性に対応した調整が行われることにより、制振対象物Bに最適な減衰力を付加することができる。
【0094】
(第2の実施形態)
図1乃至
図3、
図12を参照して、第2の実施形態における減衰付加装置1Bについて説明する。
図1は、第2の実施形態における減衰付加装置1Bが、制振対象物Bに取り付けられた様子を模式的に示す概略正面図である。なお、
図1において、減衰付加装置1Bの配置を把握し易くするために、機器2以外の部分については、正面図の代わりに、断面図が示されている。
図2は、復元力発生部6の一例を模式的に示す概略断面図である。
図3は、押付力発生部7の一例を模式的に示す概略断面図である。
図12は、第2の実施形態における減衰付加装置1Bの摩擦力調整部8の一例を模式的に示す概略断面図である。
【0095】
第1の実施形態では、摩擦力調整部8が、デフォルト位置P1から第2位置P2までの距離の大きさに依存して、載置部Cの上面C1に対して摺動する摺動面の総面積が変更される例、より具体的には、摺動ブロック17が追加的に摺動される例について説明された。これに対し、第2の実施形態では、摩擦力調整部8は、載置部Cの上面C1に対して摺動する摺動面の総面積を変更することなく追加の摩擦力を発生させる点で第1の実施形態とは異なる。
【0096】
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。他方、第2の実施形態では、第1の実施形態で説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。したがって、第2の実施形態において、明示的に説明をしなかったとしても、第1の実施形態において説明済みの事項を第2の実施形態に適用できることは言うまでもない。
【0097】
(構成・作用)
図1乃至
図3に例示されるように、第2の実施形態における減衰付加装置1Bは、(1)制振対象物Bの底部(より具体的には、ベース部材5)と、制振対象物Bが載置される載置部C(より具体的には、摺動盤4)との間に配置され、制振対象物Bが振動することによって載置部Cの上面C1に対する制振対象物Bの下面B1の相対位置がデフォルト位置P1から第2位置P2に変化する場合に、当該相対位置をデフォルト位置P1に復元する復元力を発生させる復元力発生部6と、(2)制振対象物Bの下面B1を載置部Cの上面C1に押し付ける押付力を発生させる押付力発生部7と、を具備する。また、
図12に例示されるように、第2の実施形態における減衰付加装置1Bは、(3)制振対象物Bが載置部Cの上面C1から受ける摩擦力を、デフォルト位置P1から第2位置P2までの距離の大きさに依存して変更する摩擦力調整部8を、備える。
【0098】
図12に記載の例では、載置部Cの上面C1の第1領域AR1と制振対象物Bとの間の動摩擦係数が、載置部Cの上面C1の第2領域AR2と制振対象物Bとの間の動摩擦係数よりも大きい。また、
図12に記載の例では、上述のデフォルト位置P1から第2位置P2までの距離が閾値eよりも小さい場合には、制振対象物Bの下面B1は上述の第1領域AR1に接触せず、上述のデフォルト位置P1から第2位置P2までの距離が閾値e以上になると、制振対象物Bの下面B1が上述の第1領域AR1と接触する。制振対象物Bの下面B1が上述の第1領域AR1と接すると、追加の摩擦力が発生する。
【0099】
第2の実施形態では、デフォルト位置P1から第2位置P2までの距離の大きさ、換言すれば、載置部Cの上面C1に対する制振対象物Bの下面B1の相対位置の変化の大きさに依存して、制振対象物Bに作用する制動力として機能する摩擦力の大きさが変更される。こうして、広範囲の入力加速度に対して、制振対象物Bの振動を効果的に減衰させることができる。例えば、制振対象物Bに入力される入力加速度が大きく、制振対象物Bの振幅が大きい場合には、より大きな制動力が作用する。その結果、制振対象物Bの振動を効果的に減衰させることができる。
【0100】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
1、1A、1B…減衰付加装置、2…機器、3…床面、4…摺動盤、5…ベース部材、5A…側板、5B…下板、5C…上板、6…復元力発生部、7…押付力発生部、8…摩擦力調整部、9…棒バネ、9a…上端部、9b…下端部、9t…外面、10…第1嵌合部、11…第2嵌合部、12…第2シャフト、12a…上端部、12b…下端部、12t…外面、13…第2付勢力調整部材、14…座金、14a…第3座金、14b…第4座金、15…第2弾性部材、16…隙間、16a…第1隙間、16b…第2隙間、17…摺動ブロック、17a…第1ブロック、17b…第2ブロック、17h…貫通孔部、17t…外面、17w…下面、18…第1シャフト、18a…上端部、18b…下端部、19…第1付勢力調整部材、20…座金、20a…第1座金、20b…第2座金、21…第1弾性部材、22…弾性部材、91…固定部材、100…減衰付加装置、130…第2ナット、190…第1ナット、511d…第1アクセス孔部、511h…第1貫通孔部、512h…第2貫通孔部、513d…第2アクセス孔部、513h…第3貫通孔部、AR1…第1領域、AR2…第2領域、B…制振対象物、B1…下面、C…載置部、C1…上面、G3…第3隙間、G4…第4隙間、SP1…第1空間、SP2…第2空間