(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】自動水栓
(51)【国際特許分類】
E03C 1/05 20060101AFI20240909BHJP
E03C 1/042 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
E03C1/05
E03C1/042 F
(21)【出願番号】P 2021092933
(22)【出願日】2021-06-02
【審査請求日】2024-03-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 〔販売日〕 令和 3年 4月 28日 〔販売先〕 クリナップ株式会社 〔刊行物等〕 〔ウェブサイトの掲載日〕 令和 3年 4月 1日 〔ウェブサイトのアドレス〕 SANEI株式会社のホームページ https://www.sanei.ltd/?post_type=item&s=&ref=off&dl=off&num=off&str=ek870ae https://www.sanei.ltd/products/ek870ae-d7n-13/
(73)【特許権者】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野上 典秀
(72)【発明者】
【氏名】片岡 健介
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-152012(JP,A)
【文献】特開2007-270538(JP,A)
【文献】特開2020-111972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下向き開口の吐水口を備える水栓本体と、該水栓本体の前記吐水口より手前側或いは奥側の位置に配置されて下方に差し出された物体を検出する反射型の光電センサと、前記水栓本体の前記光電センサより下側の位置に配置されて前記吐水口からの吐水状態を手動操作により切り替えることが可能な切替操作部と、を有する自動水栓であって、
前記切替操作部が、
前記吐水口の手前側或いは奥側のうち前記光電センサが設けられる側に向かって突出する突起と、
該突起の上向き面に設けられて前記光電センサから投光される光を吸収することで前記突起が前記光電センサにより検出されることを防止する光吸収部と、を有する自動水栓。
【請求項2】
請求項1に記載の自動水栓であって、
前記突起が、前記吐水口の手前側に向かって突出して前記切替操作部の操作面を成す自動水栓。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の自動水栓であって、
前記切替操作部が、前記突起の水平方向の押し込み操作に伴う出没動作の度に前記吐水口からの吐水状態を切り替える自動水栓。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の自動水栓であって、
前記突起の前記上向き面が、前記光電センサと投光方向に対向する対向面とされる自動水栓。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の自動水栓であって、
前記光吸収部が、前記突起の前記上向き面に被膜される黒色めっきから成る自動水栓。
【請求項6】
請求項5に記載の自動水栓であって、
前記黒色めっきが、前記突起の外面全体に被膜される自動水栓。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の自動水栓であって、
前記水栓本体が、内部に吐水管となるフレキシブルホースが通される外装パイプと、前記フレキシブルホースの先端に接続されて前記外装パイプに対して前記フレキシブルホースの伸びる方向に着脱可能なように組み付けられる吐水ヘッドと、を有し、
前記光電センサが、前記外装パイプの前記吐水ヘッドに臨む先端面に設けられ、前記切替操作部が、前記吐水ヘッドの周りに前記突起が突出する形に設けられる自動水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動水栓に関する。詳しくは、吐水口を備える水栓本体と、吐水口の下方に差し出された物体を検出する反射型の光電センサと、吐水口からの吐水状態を手動操作により切り替えることが可能な切替操作部と、を有する自動水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、キッチンや洗面台で使用される自動水栓が開示されている。この自動水栓は、使用者が吐水口の下方に手を差し出すことで、光電センサがこれを検出して吐水口から湯水を自動的に吐水する構成とされる。
【0003】
特許文献2には、吐水口の周囲に回転操作式の切替操作部が設けられ、使用者が切替操作部を左右に回すことで、吐水口からの吐水をストレート吐水とシャワー吐水とに切り替えられる自動水栓が開示されている。上記切替操作部には、使用者が操作時に指を掛けやすいように外側に突出する突起が付いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-108286号公報
【文献】特許第5465687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載のような切替操作部を、特許文献1に記載のような光電センサを備える自動水栓に設ける場合、光電センサと突起との配置関係が不適切であると、突起が意図せず光電センサにより検知されてしまうおそれがある。そこで、本発明は、切替操作部を光電センサの配置による制約を受けることなく設けることが可能な自動水栓を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の自動水栓は次の手段をとる。すなわち、自動水栓は、下向き開口の吐水口を備える水栓本体と、水栓本体の吐水口より手前側或いは奥側の位置に配置されて下方に差し出された物体を検出する反射型の光電センサと、水栓本体の光電センサより下側の位置に配置されて吐水口からの吐水状態を手動操作により切り替えることが可能な切替操作部と、を有する。
【0007】
切替操作部が、吐水口の手前側或いは奥側のうち光電センサが設けられる側に向かって突出する突起と、突起の上向き面に設けられて光電センサから投光される光を吸収することで突起が光電センサにより検出されることを防止する光吸収部と、を有する。
【0008】
ここで、「手前側」とは、自動水栓の正面に立つ使用者から見た手前側を指している。吐水口が左右に首振り可能な構成とされる場合には、吐水口が使用者の正面に向けられた状態における使用者から見た手前側を指す。
【0009】
上記構成によれば、切替操作部の突起が光電センサの投光範囲(検知範囲)に入る配置となっても、光吸収部により突起が光電センサにより検出されることが防止される。したがって、切替操作部を光電センサの配置による制約を受けることなく設けることができる。
【0010】
また、本発明の自動水栓は、更に次のように構成されていてもよい。突起が、吐水口の手前側に向かって突出して切替操作部の操作面を成す。
【0011】
上記構成によれば、切替操作部の操作面を成す突起が使用者から視認しやすい位置に配置される。したがって、切替操作部の使い勝手を向上させることができる。また、光電センサが吐水口より手前側の位置で物体を検出できるようになる。したがって、使用者が吐水口に手前側から手を差し出した際に、吐水口から手にレスポンス良く吐水することができる。
【0012】
また、本発明の自動水栓は、更に次のように構成されていてもよい。切替操作部が、突起の水平方向の押し込み操作に伴う出没動作の度に吐水口からの吐水状態を切り替える。
【0013】
上記構成によれば、切替操作部が操作されても、突起が光電センサにより検出されないようにすることができる。
【0014】
また、本発明の自動水栓は、更に次のように構成されていてもよい。突起の上向き面が、光電センサと投光方向に対向する対向面とされる。
【0015】
上記構成によれば、突起が光電センサと上向き面とが対向する、光電センサにより検出されやすい形状とされても、光電センサによる検出を適切に防止することができる。
【0016】
また、本発明の自動水栓は、更に次のように構成されていてもよい。光吸収部が、突起の上向き面に被膜される黒色めっきから成る。
【0017】
上記構成によれば、突起の上向き面に黒色めっきを被膜する簡素な構成により、上向き面の外観形状を崩すことなくに光吸収部を適切に設けることができる。
【0018】
また、本発明の自動水栓は、更に次のように構成されていてもよい。黒色めっきが、突起の外面全体に被膜される。
【0019】
上記構成によれば、突起の外面全体の仕上がりに統一感を持たせることができる。
【0020】
また、本発明の自動水栓は、更に次のように構成されていてもよい。水栓本体が、内部に吐水管となるフレキシブルホースが通される外装パイプと、フレキシブルホースの先端に接続されて外装パイプに対してフレキシブルホースの伸びる方向に着脱可能なように組み付けられる吐水ヘッドと、を有する。光電センサが、外装パイプの吐水ヘッドに臨む先端面に設けられる。切替操作部が、吐水ヘッドの周囲面から突起が突出する形に設けられる。
【0021】
上記構成によれば、着脱による組み付け位置のズレが生じやすい吐水ヘッドと外装パイプとの間に切替操作部と光電センサとが分かれて設けられても、突起が光電センサにより検出されないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1の実施形態に係る自動水栓の概略構成を示す斜視図である。
【
図8】切替操作部を押し込んだ状態を示す部分断面側面図である。
【
図9】吐水ヘッドを引き出した状態を示す拡大斜視図である。
【
図10】他の実施形態に係る自動水栓の概略構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0024】
《第1の実施形態》
(自動水栓1の概略構成について)
始めに、本発明の第1の実施形態に係る自動水栓1の構成について、
図1~
図9を用いて説明する。なお、以下の説明において、手前、奥、上、下、左、右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。各図中に示す方向は、それぞれ、自動水栓1の正面に立つ使用者から見た方向となっている。以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、
図1~
図9のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係る自動水栓1は、キッチンカウンタのシンクSの奥側の天板T上に設置される、いわゆる台付きタイプの混合水栓として構成される。この自動水栓1は、キッチンカウンタの天板T下より供給される湯と水とを内部で混合して吐水口13AよりシンクSへと吐水することができる機能を備える。
【0026】
具体的には、
図2~
図4に示すように、自動水栓1は、その天板T上に設置される水栓本体10に、湯水(湯と水)の吐水・止水を手動により切り替えることが可能なレバーハンドル14と、吐水口13Aへの手の差し出しを検出して湯水の吐水・止水を自動で切り替えられるようにする反射型の光電センサ17と、を備える。レバーハンドル14は、水栓本体10の天板T上に固定設置される縦長な箱形状の外装基部11上に設けられている。
【0027】
詳しくは、レバーハンドル14は、その奥側の基端部14Aが、外装基部11の手前側の天板部上に上下左右に首振りすることができる状態に組み付けられている。そして、レバーハンドル14は、上記基端部14Aから操作部となる板状のレバー部14Bが手前側に向かって延び出す形状とされる。
【0028】
上記レバーハンドル14は、使用者がレバー部14Bを掴んで上下左右に回転操作することにより、外装基部11内に設けられたカートリッジ11Aを操作して、吐水する湯水の混合割合の調節や吐水・止水の切り替えを行う。具体的には、レバーハンドル14が下げられることにより、上記カートリッジ11A内の図示しない開閉弁が閉弁されて湯水の吐水が止められる。
【0029】
また、レバーハンドル14が左右に回されることにより、上記カートリッジ11A内で混合される湯水の混合割合がレバーハンドル14の回転位置に応じた設定温度となるように調節される。また、レバーハンドル14が引き上げられることにより、上記カートリッジ11A内の開閉弁がレバーハンドル14の操作量に応じた分だけ開弁される。それにより、開閉弁の開度に応じた量の湯水が吐水口13Aから吐水される。
【0030】
具体的には、上記開弁によりカートリッジ11Aから流された湯水は、外装基部11の奥側の天板部上に接続された、グースネック状に手前側へ延びる外装パイプ12内に流される。そして、外装パイプ12内に流された湯水は、その先端部に組み付けられた円筒型の吐水ヘッド13(
図5参照)内を通って、その先端面に形成された吐水口13A(
図6参照)からシンクSへと吐水される。
【0031】
上記外装パイプ12は、
図2に示すように、その基端部が、外装基部11の奥側の天板部上に左右に首振りすることができる状態に接続されている。上記接続により、外装パイプ12は、外装基部11を右側に越える位置と左側に越える位置との間で左右に首振りすることができる状態とされる。上記首振りにより、使用者が吐水口13Aの位置を左右に調節したり、外装パイプ12を使用者の邪魔にならない位置へと退かせたりすることができる。
【0032】
水栓本体10は、上述した外装基部11と、外装パイプ12と、吐水ヘッド13と、を有する。吐水ヘッド13は、外装パイプ12内に通された吐水管となるフレキシブルホース15の先端に接続されている。フレキシブルホース15は、その基端側の管部が、外装基部11内を通って天板Tの下側へと引き込まれ、そこから上向きに返されて上述した外装基部11内のカートリッジ11Aの吐出口に接続されている。上記接続により、カートリッジ11Aの開弁に伴い流される湯水が、フレキシブルホース15を通って吐水ヘッド13の吐水口13Aから吐水されるようになっている。
【0033】
図6~
図7に示すように、吐水ヘッド13は、外装パイプ12のグースネック状に湾曲した先の端部に着脱可能なように装着されている。詳しくは、外装パイプ12は、その湾曲した先の端部が、前後方向に長尺な長円板状を成す形に形成されている。
【0034】
吐水ヘッド13は、上記外装パイプ12の先端部の奥側領域に形成された凹部12A(
図9参照)内に下方から差し込まれて嵌合される構成とされる。上記凹部12Aは、吐水ヘッド13を正面に向けた状態でのみ下方から差し込んで装着することができる形状とされる。
【0035】
上記装着により、吐水ヘッド13は、
図6~
図7に示すように、外装パイプ12の先端部の奥側領域から下方に突出する形にセットされる。上記吐水ヘッド13は、
図9に示すように、使用者が吐水ヘッド13を掴んで下方に引張ることにより、外装パイプ12の凹部12Aとの嵌合状態から外される。それにより、吐水ヘッド13は、その基端部に接続されたフレキシブルホース15と共に、外装パイプ12の先端から下方に引き出される。
【0036】
図5~
図7に示すように、吐水ヘッド13の手前側部には、押しボタン式の突起16Aを備える切替操作部16が設けられている。突起16Aは、吐水ヘッド13の正面中央位置に配置されている(
図4参照)。突起16Aは、吐水ヘッド13の周面形状に沿って左右方向に長円状に湾曲して延びる左右対称な曲板形状とされる。
【0037】
吐水ヘッド13は、使用者が切替操作部16の突起16Aの手前側の側面(前面)を奥側へプッシュする度に、吐水口13Aからの吐水をストレート吐水とシャワー吐水とに切り替える構成とされる。切替操作部16は、いわゆるプッシュラッチ機構により、使用者が突起16Aの前面を奥側へプッシュする度に、突起16Aが吐水ヘッド13内に面一状に押し込まれる状態(
図8参照)と、吐水ヘッド13から手前側へ突出する状態(
図6~
図7参照)と、に交互に切り替えられる構成とされる。
【0038】
吐水ヘッド13は、
図6~
図7に示すように、切替操作部16の突起16Aが吐水ヘッド13から手前側に突出する状態に切り替えられることにより、吐水口13Aからの吐水状態をストレート吐水に切り替える。また、吐水ヘッド13は、
図8に示すように、切替操作部16の突起16Aが吐水ヘッド13内に押し込まれる状態に切り替えられることにより、吐水口13Aからの吐水状態をシャワー吐水へと切り替える。
【0039】
図6~
図7に示すように、外装パイプ12の先端部の手前側領域には、反射型の光電センサ17が設けられている。光電センサ17は、赤外光や可視光等の光を投光する投光部と、投光されて物体に当たって反射した光を受光する受光部と、を備える。
【0040】
光電センサ17は、その投光部の設けられた外装パイプ12の先端部の手前側領域から下方に向かって放射状に光を投光する。そして、光電センサ17は、吐水口13Aの下方に使用者の手等の物体が差し出された場合に、その物体に当たって反射した光を受光部において受光することにより物体の接近を検出する。
【0041】
具体的には、光電センサ17の受光部に反射光が受光されると、その受光量に応じた大きさの出力信号(検出信号)が、図示しない制御部に入力される。制御部は、受光部において受光する反射光の受光量が所定値以上になった場合、吐水口13Aの下方に使用者の手等の物体が差し出されたものと検知する。
【0042】
それにより、制御部は、
図2等で前述したカートリッジ11Aから下流側の吐水路とフレキシブルホース15との間に介設された不図示の電磁弁に制御信号を送信して電磁弁を開弁する。この開弁により、レバーハンドル14が引き上げられた操作状態の時には、その操作位置に応じた量及び温度の湯水がフレキシブルホース15を通って吐水口13Aから吐水される。
【0043】
上記不図示の制御部は、光電センサ17の受光部において受光する反射光の受光量が所定値より低い場合、吐水口13Aの下方に使用者の手等の物体が差し出されていないものと判定する。その場合には、制御部は、上述した電磁弁を閉弁するよう制御信号を送信し、レバーハンドル14の操作位置によらず吐水口13Aからの吐水を止めた状態に維持する。
【0044】
すなわち、制御部は、吐水口13Aの下方に使用者の手等の物体が差し出されていない場合には、電磁弁を閉弁した状態とし、レバーハンドル14の操作位置によらず吐水口13Aからの吐水を止めた状態に維持する。また、制御部は、吐水口13Aの下方に使用者の手等の物体が差し出されて、光電センサ17の受光部において受光する反射光の受光量が所定値以上になった場合に、電磁弁を開弁状態に切り替え、レバーハンドル14の操作位置に応じた量及び温度の湯水を吐水口13Aから吐水する。制御部は、受光部における反射光の受光量が所定値以上となっている間、電磁弁を開弁した状態に維持する。
【0045】
図4~
図7に示すように、光電センサ17は、上述した外装パイプ12の先端部における左右方向の中央位置に配置されている。上記配置により、光電センサ17は、吐水ヘッド13が外装パイプ12の先端部に装着された状態では、その直下に、切替操作部16の突起16Aが左右方向の配置が重なる状態として設けられる構成とされる。
【0046】
そのようなことから、光電センサ17は、
図7に示すように、切替操作部16の突起16Aが手前側に突出した状態では、その光の投受光面が突起16Aの上向き面16Bの一部と光の投光方向、すなわち放射状に光が投光される投光方向に対向する配置とされる。具体的には、切替操作部16の突起16Aは、その吐水ヘッド13から手前側に突出する部分の手前側上角部のアール面が、光電センサ17の投受光面と投光方向に対向する上向き面16Bとされる。
【0047】
上記配置により、光電センサ17から投光された光の一部が、吐水口13Aよりも光電センサ17に近い位置にある突起16Aの上向き面16Bに当たって反射し、光電センサ17の受光部に受光されることがある。この反射光の受光量が所定値以上になることがあると、使用者が吐水口13Aの下方に手等の物体を差し出していないにも関わらず、制御部において手等の物体が差し出されたものと検知されてしまうおそれがある。
【0048】
そこで、このような意図しない検知を防ぐべく、突起16Aの上向き面16Bには、光電センサ17から投光される光が当てられた場合に、この光を吸収して光電センサ17に反射光を受光させにくくすることができる光吸収部としての黒色クロムめっきBCがコーティングされている。ここで、黒色クロムめっきBCが、本発明の「光吸収部」及び「黒色めっき」に相当する。
【0049】
黒色クロムめっきBCは、突起16Aの外面全体、すなわち突起16Aの外観として見え得る上向き面16Bの他、手前側の側面(前面)や左右の側面、それに下向き面等の外面全体に亘ってコーティングされている。
【0050】
上記黒色クロムめっきBCは、光電センサ17から投光される光が突起16Aの上向き面16Bに当てられても、光電センサ17の受光部に反射する光の受光量が所定値より低くなるように光を吸収することが可能な光吸収率と低反射率とを備えるものとされる。そのため、切替操作部16の突起16Aが光電センサ17の投光範囲(検知範囲)に入る配置とされても、黒色クロムめっきBCにより突起16Aが光電センサ17により検出されることが防止される。
【0051】
したがって、切替操作部16を光電センサ17の配置による制約を受けることなく設けることができる。なお、水栓本体10の突起16A以外の外面には、ニッケルクロムめっきがコーティングされている。
【0052】
(まとめ)
以上をまとめると、第1の実施形態に係る自動水栓1は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0053】
すなわち、自動水栓(1)は、下向き開口の吐水口(13A)を備える水栓本体(10)と、水栓本体(10)の吐水口(13A)より手前側の位置に配置されて下方に差し出された物体を検出する反射型の光電センサ(17)と、水栓本体(10)の光電センサ(17)より下側の位置に配置されて吐水口(13A)からの吐水状態を手動操作により切り替えることが可能な切替操作部(16)と、を有する。
【0054】
切替操作部(16)が、吐水口(13A)の手前側或いは奥側のうち光電センサ(17)が設けられる側(手前側)に向かって突出する突起(16A)と、突起(16A)の上向き面(16B)に設けられて光電センサ(17)から投光される光を吸収することで突起(16A)が光電センサ(17)により検出されることを防止する光吸収部(BC)と、を有する。
【0055】
ここで、「手前側」とは、自動水栓(1)の正面に立つ使用者から見た手前側を指している。吐水口(13A)が左右に首振り可能な構成とされる場合には、吐水口(13A)が使用者の正面に向けられた状態における使用者から見た手前側を指す。
【0056】
上記構成によれば、切替操作部(16)の突起(16A)が光電センサ(17)の投光範囲(検知範囲)に入る配置となっても、光吸収部(BC)により突起(16A)が光電センサ(17)により検出されることが防止される。したがって、切替操作部(16)を光電センサ(17)の配置による制約を受けることなく設けることができる。
【0057】
また、突起(16A)が、吐水口(13A)の手前側に向かって突出して切替操作部(16)の操作面を成す。上記構成によれば、切替操作部(16)の操作面を成す突起(16A)が使用者から視認しやすい位置に配置される。したがって、切替操作部(16)の使い勝手を向上させることができる。また、光電センサ(17)が吐水口(13A)より手前側の位置で物体を検出できるようになる。したがって、使用者が吐水口(13A)に手前側から手を差し出した際に、吐水口(13A)から手にレスポンス良く吐水することができる。
【0058】
また、切替操作部(16)が、突起(16A)の水平方向の押し込み操作に伴う出没動作の度に吐水口(13A)からの吐水状態を切り替える。上記構成によれば、切替操作部(16)が操作されても、突起(16A)が光電センサ(17)により検出されないようにすることができる。
【0059】
また、突起(16A)の上向き面(16B)が、光電センサ(17)と投光方向に対向する対向面とされる。上記構成によれば、突起(16A)が光電センサ(17)と上向き面(16B)とが対向する、光電センサ(17)により検出されやすい形状とされても、光電センサ(17)による検出を適切に防止することができる。
【0060】
また、光吸収部(BC)が、突起(16A)の上向き面(16B)に被膜される黒色めっき(BC)から成る。上記構成によれば、突起(16A)の上向き面(16B)に黒色めっき(BC)を被膜する簡素な構成により、上向き面(16B)の外観形状を崩すことなくに光吸収部(BC)を適切に設けることができる。
【0061】
また、黒色めっき(BC)が、突起(16A)の外面全体に被膜される。上記構成によれば、突起(16A)の外面全体の仕上がりに統一感を持たせることができる。
【0062】
また、水栓本体(10)が、内部に吐水管となるフレキシブルホース(15)が通される外装パイプ(12)と、フレキシブルホース(15)の先端に接続されて外装パイプ(12)に対してフレキシブルホース(15)の伸びる方向に着脱可能なように組み付けられる吐水ヘッド(13)と、を有する。光電センサ(17)が、外装パイプ(12)の吐水ヘッド(13)に臨む先端面に設けられる。切替操作部(16)が、吐水ヘッド(13)の周囲面から突起(16A)が突出する形に設けられる。
【0063】
上記構成によれば、着脱による組み付け位置のズレが生じやすい吐水ヘッド(13)と外装パイプ(12)との間に切替操作部(16)と光電センサ(17)とが分かれて設けられても、突起(16A)が光電センサ(17)により検出されないようにすることができる。
【0064】
《第2の実施形態》
続いて、本発明の第2の実施形態に係る自動水栓1'の構成について、
図10を用いて説明する。本実施形態に係る自動水栓1'は、吐水ヘッド13が外装パイプ12の先端部の手前側領域に着脱可能なように装着される構成とされる。
【0065】
そして、吐水ヘッド13の吐水口13Aからの吐水をストレート吐水とシャワー吐水とに切り替える切替操作部16'の突起16A'が、吐水ヘッド13の奥側の側部に設けられている。また、吐水口13Aへの手の差し出しを検出して湯水の吐水・止水を自動で切り替えられるようにする反射型の光電センサ17'が、外装パイプ12の先端部の奥側領域に設けられている。
【0066】
切替操作部16'は、使用者が突起16A'の奥側面を手前側にプッシュする度に、突起16A'が吐水ヘッド13内に面一状に押し込まれる状態と、吐水ヘッド13から奥側へ突出する状態と、に交互に切り替えられる構成とされる。吐水ヘッド13は、切替操作部16'の突起16A'が吐水ヘッド13から奥側に突出する状態に切り替えられることで、吐水口13Aからの吐水状態をストレート吐水に切り替える。また、吐水ヘッド13は、切替操作部16'の突起16A'が吐水ヘッド13内に押し込まれる状態に切り替えられることで、吐水口13Aからの吐水状態をシャワー吐水へと切り替える。
【0067】
上記配置により、光電センサ17'は、切替操作部16'の突起16A'が奥側に突出した状態では、突起16A'の上向き面16B'の一部と光の投光方向、すなわち下方に向かって放射状に光が投光される投光方向に対向する配置とされる。具体的には、切替操作部16'の突起16A'は、その吐水ヘッド13から奥側に突出する部分の奥側上角部のアール面が、光電センサ17'の投受光面と投光方向に対向する上向き面16B'とされる。
【0068】
そこで、上記突起16A'の意図しない検知を防ぐべく、突起16A'の上向き面16B'には、光電センサ17'から投光される光が当てられた場合に、この光を吸収して光電センサ17'に反射光を受光させにくくすることができる光吸収部としての黒色クロムめっきBCがコーティングされている。黒色クロムめっきBCは、突起16A'の外面全体、すなわち突起16A'の外観として見え得る上向き面16B'の他、奥側の側面(後面)や左右の側面、それに下向き面等の外面全体に亘ってコーティングされている。
【0069】
このように、切替操作部16'の突起16A'と光電センサ17'とが吐水口13Aの奥側にそれぞれ配置される関係となっても、突起16A'にコーティングされた黒色クロムめっきBCにより、光電センサ17'による意図しない突起16A'の検知を防ぐことができる。なお、上記以外の構成は、第1の実施形態で示した自動水栓1の構成と同一の構成となっているため、対応する構成に同一の符号を付して説明を省略することとする。
【0070】
(まとめ)
以上をまとめると、第2の実施形態に係る自動水栓1'は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0071】
すなわち、自動水栓(1')は、下向き開口の吐水口(13A)を備える水栓本体(10)と、水栓本体(10)の吐水口(13A)より奥側の位置に配置されて下方に差し出された物体を検出する反射型の光電センサ(17')と、水栓本体(10)の光電センサ(17')より下側の位置に配置されて吐水口(13A)からの吐水状態を手動操作により切り替えることが可能な切替操作部(16')と、を有する。
【0072】
切替操作部(16')が、吐水口(13A)の手前側或いは奥側のうち光電センサ(17')が設けられる側(奥側)に向かって突出する突起(16A')と、突起(16A')の上向き面(16B')に設けられて光電センサ(17')から投光される光を吸収することで突起(16A')が光電センサ(17')により検出されることを防止する光吸収部(BC)と、を有する。
【0073】
上記構成によれば、切替操作部(16')の突起(16A')が光電センサ(17')の投光範囲(検知範囲)に入る配置となっても、光吸収部(BC)により突起(16A')が光電センサ(17')により検出されることが防止される。したがって、切替操作部(16')を光電センサ(17')の配置による制約を受けることなく設けることができる。
【0074】
また、切替操作部(16')が、突起(16A')の水平方向の押し込み操作に伴う出没動作の度に吐水口(13A)からの吐水状態を切り替える。上記構成によれば、切替操作部(16')が操作されても、突起(16A')が光電センサ(17')により検出されないようにすることができる。
【0075】
また、突起(16A')の上向き面(16B')が、光電センサ(17')と投光方向に対向する対向面とされる。上記構成によれば、突起(16A')が光電センサ(17')と上向き面(16B')とが対向する、光電センサ(17')により検出されやすい形状とされても、光電センサ(17')による検出を適切に防止することができる。
【0076】
また、光吸収部(BC)が、突起(16A')の上向き面(16B')に被膜される黒色めっき(BC)から成る。上記構成によれば、突起(16A')の上向き面(16B')に黒色めっき(BC)を被膜する簡素な構成により、上向き面(16B')の外観形状を崩すことなくに光吸収部(BC)を適切に設けることができる。
【0077】
また、黒色めっき(BC)が、突起(16A')の外面全体に被膜される。上記構成によれば、突起(16A')の外面全体の仕上がりに統一感を持たせることができる。
【0078】
また、水栓本体(10)が、内部に吐水管となるフレキシブルホース(15)が通される外装パイプ(12)と、フレキシブルホース(15)の先端に接続されて外装パイプ(12)に対してフレキシブルホース(15)の伸びる方向に着脱可能なように組み付けられる吐水ヘッド(13)と、を有する。光電センサ(17')が、外装パイプ(12)の吐水ヘッド(13)に臨む先端面に設けられる。切替操作部(16')が、吐水ヘッド(13)の周囲面から突起(16A')が突出する形に設けられる。
【0079】
上記構成によれば、着脱による組み付け位置のズレが生じやすい吐水ヘッド(13)と外装パイプ(12)との間に切替操作部(16')と光電センサ(17')とが分かれて設けられても、突起(16A')が光電センサ(17')により検出されないようにすることができる。
【0080】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を2つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0081】
1.本発明の自動水栓は、吐水量や温度の調節を行うレバーハンドルを備えないタイプの自動水栓であっても良い。また、自動水栓は、湯水を吐水する混合水栓の他、水のみを吐水する単水栓に適用されるものであっても良い。
【0082】
2.吐水ヘッドは、外装パイプに対して着脱不能な構成となっていても良い。また、外装パイプは、外装基部に対して左右に首振りできない構成となっていても良い。
【0083】
3.切替操作部は、突起を水平方向に押し込むことで出没動作する押し込み式の操作構造から成るものの他、いわゆるシーソスイッチ式や回転式、スライド式の操作構造から成るものであっても良い。回転式の切替操作部としては、水平軸まわりの回転により突起(つまみ)を上げ下げするような操作構造や、吐水口まわりに旋回させるような操作構造が挙げられる。
【0084】
また、スライド式の操作構造としては、突起を水平方向や高さ方向にスライドさせる操作構造が挙げられる。切替操作部に設けられる突起は、使用者が切替操作部の操作時に指を掛けたり当てたりすることができる操作面となるものの他、文字やピクトグラム等で操作方向を表示するための単なる表示面とされるものであっても良く、具体的な用途は特に限定されるものではない。
【0085】
切替操作部は、吐水口からの吐水状態をストレート吐水とシャワー吐水とに2段階に切り替えるものの他、気泡を含んだ水はねしにくい泡沫吐水や浄水にも切り替え可能な3段階以上の切り替えを行える構成であっても良い。
【0086】
4.光吸収部は、光電センサから投光される光を吸収して反射光を抑制することで突起が光電センサにより検出されることを防止することができるものであれば良く、黒色クロムめっき以外の黒色めっき又は濃色めっきから成るものであっても良い。黒色めっきや濃色めっきは、電解めっきの他、無電解めっきにより形成されるものであっても良い。また、光吸収部は、カーボンブラック等の顔料をアクリル樹脂やABS樹脂等の樹脂に分散させて黒色に着色した着色面から成るものであっても良い。
【0087】
光吸収部は、少なくとも突起の上向き面に形成される必要はあるが、必ずしも突起の外面全体に被膜されていなくても良い。黒色クロムめっきが、突起の外面のみでなく、水栓本体全体の外面にも被膜されるようになっていても良い。それにより、水栓本体全体をより統一感のある外観に仕上げることができる。
【0088】
5.突起の上向き面、すなわち光電センサと投光方向に対向する対向面を成す上向き面は、突起の上角部のアール面等の湾曲面から成るものの他、傾斜面等の平面から成るものであっても良い。
【符号の説明】
【0089】
1 自動水栓
1' 自動水栓
10 水栓本体
11 外装基部
11A カートリッジ
12 外装パイプ
12A 凹部
13 吐水ヘッド
13A 吐水口
14 レバーハンドル
14A 基端部
14B レバー部
15 フレキシブルホース
16 切替操作部
16A 突起
16B 上向き面
16' 切替操作部
16A' 突起
16B' 上向き面
17 光電センサ
17' 光電センサ
BC 黒色クロムめっき(光吸収部、黒色めっき)
S シンク
T 天板