(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20240909BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20240909BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20240909BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/60 321E
H01L23/36 Z
(21)【出願番号】P 2021104723
(22)【出願日】2021-06-24
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】ミネベアパワーデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】竹内 悠次郎
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 幸博
(72)【発明者】
【氏名】大内 貴之
(72)【発明者】
【氏名】串間 宇幸
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-221516(JP,A)
【文献】特開2014-222788(JP,A)
【文献】特開2016-146450(JP,A)
【文献】特開2008-171963(JP,A)
【文献】特開昭63-110693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 21/60
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、前記絶縁基板に形成された配線と、半導体チップと、リードフレームと、を備える半導体モジュールにおいて、
前記絶縁基板の前記半導体チップとは反対側の面に放熱部材を有し、
前記半導体チップは、一方の面が前記配線に接続され、他方の面が前記リードフレームに接続され、
前記配線は、前記リードフレームが接続されたフローティング配線を有し、
前記フローティング配線と前記リードフレームとの接続点は、前記絶縁基板の角部に位置
し、
前記放熱部材は、前記絶縁基板を介して前記フローティング配線と重なるように配置されており、
前記絶縁基板と前記放熱部材との間は、前記フローティング配線と重なる位置の全域において、前記絶縁基板と前記放熱部材との間に空隙を有さずに接続されていることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項2】
請求項1の半導体モジュールにおいて、前記フローティング配線と前記リードフレームとの接続点は、前記リードフレームと前記配線との他の接続点よりも前記絶縁基板の外周側に位置することを特徴とする半導体モジュール。
【請求項3】
請求項1または2の半導体モジュールにおいて、前記絶縁基板はセラミックスで形成されており、前記リードフレームは銅で形成されていることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項4】
請求項3の半導体モジュールにおいて、前記リードフレームの厚さは、1.0mm以上1.2mm以下であることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項5】
請求項
1の半導体モジュールにおいて、前記放熱部材は放熱フィンを有し、前記放熱フィンは、前記絶縁基板を介して前記フローティング配線と重なるように配置されていることを特徴とする半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁基板に固定された半導体チップと外部配線とを接続するためのリードフレームを備えた半導体モジュールが知られている。例えば、下記特許文献1には、セラミックス材で構成され、一方の主面に部品が実装される配線層が形成された絶縁基板11と、絶縁基板11の他方側に配され、絶縁基板11の外周縁より外方に突出する突出部13cを有し、絶縁基板11よりも厚さが大きいベースプレート13と、を備える、配線基板10を搭載する半導体パッケージ100が開示されている。半導体チップ20のエミッタ電極接続用のエミッタ配線パターン12aとコレクタ電極接続用のコレクタ配線パターン12bは、リードフレーム(エミッタ端子18a、及びコレクタ端子18b)によって外部電極に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1では、配線基板10の下面に配置されたベースプレート13の突出部13cによって冷却構造部40を固定できるため、冷却構造部40を固定するためにシリコングリス等の熱抵抗の大きい接着剤を用いる必要が無く、高い冷却性能が得られるとされている。
【0005】
しかしながら、半導体モジュールの高性能化・小型化に伴う大電流化・高集積化に対応すべく、半導体チップの放熱効果を従来よりも更に高めることが求められている。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、半導体チップと絶縁基板に形成された配線とリードフレームとを有する半導体モジュールにおいて、従来よりも高い放熱効果を有する半導体モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、絶縁基板と、絶縁基板に形成された配線と、半導体チップと、リードフレームと、を備える半導体モジュールにおいて、前記絶縁基板の前記半導体チップとは反対側の面に放熱部材を有し、半導体チップは、一方の面が配線に接続され、他方の面がリードフレームに接続され、上記配線は、リードフレームが接続されたフローティング配線を有し、該フローティング配線とリードフレームとの接続点は、絶縁基板の角部に位置し、前記放熱部材は、前記絶縁基板を介して前記フローティング配線と重なるように配置されており、前記絶縁基板と前記放熱部材との間は、前記フローティング配線と重なる位置の全域において、前記絶縁基板と前記放熱部材との間に空隙を有さずに接続されていることを特徴とする半導体モジュールである。
【0008】
本発明のより具体的な構成は、特許請求の範囲に記載される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体チップと絶縁基板に形成された配線とリードフレームとを有する半導体モジュールにおいて、従来よりも高い放熱効果を有する半導体モジュールを提供できる。
【0010】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のパワー半導体モジュールの構成の一例を示す斜視図
【
図2】
図1のA方向から見たパワー半導体モジュールの上面図
【
図3】
図1の
図1のB方向からみたパワー半導体モジュールの下面図
【
図4】
図1のC方向から見たパワー半導体モジュールの側面図
【
図5】
図1のD方向から見たパワー半導体モジュールの側面図
【
図7】
図6のE-E断面で見たパワー半導体モジュールの断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の半導体モジュールについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明のパワー半導体モジュールの構成の一例を示す斜視図、
図2は
図1のA方向から見たパワー半導体モジュールの上面図、
図3は
図1の
図1のB方向からみたパワー半導体モジュールの下面図、
図4は
図1のC方向から見たパワー半導体モジュールの側面図、
図5は
図1のD方向から見たパワー半導体モジュールの側面図である。
図1および
図2に示すように、本発明の一実施形態である半導体モジュール10は、絶縁基板1の表面に、配線2、半導体チップ3およびリードフレーム4がこの順で積層されている。半導体チップ3は、一方の面が絶縁基板1に形成された配線2に接続され、他方の面がリードフレーム4に接続されている。ここでは半導体チップ3の一例としてダイオードチップとIGBTチップとを用いた例を示しているが、これに限定されるものではない。
【0013】
複数の絶縁基板1(
図1および
図2では3つの絶縁基板1)が樹脂ケース7に収容されている。図示していないが、絶縁基板1の表面は、配線2、半導体チップ3およびリードフレーム4とともに、絶縁樹脂によって封止される。絶縁基板1および配線2の材料に特に限定は無いが、一例を挙げるならば、絶縁基板1はセラミックス、配線2には銅を用いることができる。
【0014】
図3~
図5に示すように、絶縁基板1の半導体チップ3が設けられている面と反対側の面には、少なくともベースプレートを有する放熱部材6が設けられている。放熱部材6は、さらに放熱フィン6aを有する構成としてもよい。放熱フィン6aの構成は、図示したような円筒形状でもよいし、図示しない平板形状でもよい。放熱部材6の冷却方法は、空冷であっても水冷であっても良い。空冷の場合は、例えばファンを設けて放熱部材6や放熱フィン6aを冷却することができる。また、水冷の場合は、例えば冷却通路を設けて水や冷却媒体が放熱部材や放熱フィン6aと接触するような構成とすることができる。
【0015】
図6は
図1の上面図の一部の構成を簡略化した図であり、
図7は
図6のE-E断面で見たパワー半導体モジュールの断面図である。
図6では、
図2のリードフレーム4の形状は簡略化して示している。
図6に示すように、リードフレーム4は、配線2と、第1の接続点4aを介して接続されている。端子5は例えば絶縁基板1の両側に設けられており、一方の側の端子5からの電流は、配線2を通り、半導体チップ3、リードフレーム4を介してもう一方の側の端子5に導かれる。
【0016】
ここで、本実施例においては、配線2として、例えば両側の端子5の間の電流の通り道など、回路として用いられている配線とは別に、回路として用いられていないフローディングの配線であるフローティング配線2aを有する構成としている。そして、絶縁基板1の角部分において、フローティング配線2aとリードフレーム4とを第2の接続点4bの位置で接続する。
【0017】
図7に示すように、半導体チップ3から生じる熱は、半導体チップ3の直下では、配線2、絶縁基板1を経由して放熱部材6へ導かれ、放熱される(放熱経路11)。また、半導体チップ3から生じる熱は、リードフレーム4を経由して第1の接続点4aへ導かれて、配線2、絶縁基板1を経由して放熱部材6へ導かれ、放熱される(放熱経路12)。
【0018】
ここまでは従来構造でも存在する放熱経路であるが、本発明では、さらに、半導体チップ3から生じる熱は、リードフレーム4を経由して第2の接続点4bへ導かれている。第2の接続点4bに導かれた熱は、フローティング配線2a、絶縁基板1を経由して放熱部材6へ導かれ、放熱される(放熱経路13)。
【0019】
このように、配線2のうち配線としては機能しないフローティング配線2aをリードフレーム4に接続することで、従来の構成の放熱経路11,12に加えて、リードフレーム4からフローティング配線2a、絶縁基板1および放熱部材6に熱を伝える放熱経路13により、放熱効果を高めることができる。
【0020】
フローティング配線2aは絶縁基板1の角部分に設けられていることにより、従来の放熱経路11、12と干渉することなく放熱経路13を追加することができるので、放熱効果を高めることができる。
【0021】
同じ理由で、フローティング配線2aとリードフレーム4との第2の接続点4bは、リードフレーム4と配線2との他の接続点である第1の接続点4aよりも、絶縁基板1の外周側に位置することが、放熱効果を高める上で好ましい。
【0022】
絶縁基板1がセラミックスで形成されており、配線2が銅で形成されている場合は、リードフレーム4の厚さは、1.0mm以上1.2mm以下であることが好ましい。熱抵抗低減の観点からは、リードフレーム4の厚さは厚い方が好ましい(厚い方が熱を伝えやすい)(放熱経路12、13を介した放熱効果が高くなる)。一方、熱疲労耐性向上の観点からは、リードフレーム4の厚さは薄い方が好ましい(銅のリードフレーム4の方がセラミックスの絶縁基板1よりも熱膨張率が大きいので、薄い方が、熱応力が小さくなる)。
【0023】
本発明者の検討の結果、熱抵抗低および熱疲労耐性をバランスさせるために、リードフレーム4の厚さは1.0mm以上1.2mm以下が好ましい。第2の接続点4bを設けている絶縁基板1の角部分ほど、絶縁基板1とリードフレーム4の熱膨張率の差による熱疲労が大きくなるが、リードフレーム4の厚さを上記範囲とすることで、熱抵抗低減および熱疲労耐性を両立することができる。
【0024】
放熱部材6は、絶縁基板1を介してフローティング配線2aと重なるように配置されていることが好ましい。半導体チップ3からの熱を逃がすフローティング配線2aの直下に放熱部材6を設けることで、放熱経路13の経路長は最短となり、放熱効果を高めることができる。また、放熱部材6が放熱フィン6aを有する場合は、放熱フィン6aが、絶縁基板1を介してフローティング配線2aと重なるように配置されていることが好ましい。
【0025】
以上、説明したように、本発明によれば、半導体チップと絶縁基板に形成された配線とリードフレームとを有する半導体モジュールにおいて、従来よりも高い放熱効果を有する半導体モジュールを提供できることが示された。
【0026】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1…絶縁基板、2…配線、2a…フローティング配線、3…半導体チップ、4…リードフレーム、4a…第1の接続点、4b…第2の接続点、5…端子、6…放熱部材、6a…放熱フィン、7…樹脂ケース、10…半導体モジュール、11,12,13…放熱経路。