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特許7551578異常検知システム、異常検知システムの異常検知方法、及び異常検知システムの記録媒体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】異常検知システム、異常検知システムの異常検知方法、及び異常検知システムの記録媒体
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/38 20180101AFI20240909BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
F24F11/38
G05B23/02 302Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021134891
(22)【出願日】2021-08-20
(65)【公開番号】P2023028912
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2024-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡 恵子
(72)【発明者】
【氏名】國眼 陽子
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 久恵
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 規和
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 伯之
(72)【発明者】
【氏名】平 友恒
(72)【発明者】
【氏名】緒方 英治
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/174734(WO,A1)
【文献】特開2020-016358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/38
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機器とセンサとを有する空調システムと、
前記空調システムを監視する監視計算機と、
を有する異常検知システムであって、
前記複数の機器は、複数の機器種類より構成され、
前記監視計算機は:
(1)前記複数のセンサから、前記複数の機器に関する複数の測定値を取得し、
(2)前記複数の機器種類について:
(2A)前記機器種類に関する前記センサの測定値を選択し、
(2B)選択した前記測定値に基づいて統計値を計算し、
(3)前記複数の機器種類毎に、計算した複数の前記統計値に基づいて、特徴量空間内の位置を示す特徴量セットを計算し、
(4)学習中である場合:
(4A)前記特徴量セットを正常データとして前記特徴量空間に登録し、
(5)学習後の監視状態である場合:
(5A)前記特徴量セットと正常データとの乖離に基づいて、異常の有無を判断し、
(5B)異常と判断した場合:
(5Ba)前記複数の機器種類の中から、所定の機器種類を、異常が発生した機器種類と特定し、
(5Bb)前記所定の機器種類である、1以上の機器から、異常が発生した機器を特定する
ことを特徴とする異常検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の異常検知システムであって、
前記(5Ba)は、前記複数の機器種類の中から、所定の機器種類に関連した所定の前記統計値に基づいて、前記所定の機器種類の異常の有無を評価し、異常原因を特定する
ことを特徴とする異常検知システム。
【請求項3】
請求項2記載の異常検知システムであって、
前記(5Bb)は、異常検知した所定の機器種類の中から、所定の機器に関連した所定の測定値に基づいて、前記所定の機器の異常の有無を評価し、異常個所を特定する
ことを特徴とする異常検知システム。
【請求項4】
請求項3に記載の異常検知システムであって、
前記複数の機器は、稼働および非稼働の状態を少なくとも持ち、
前記(2B)の前記統計値の計算は、停止中の機器に関する測定値は考慮対象外とする、又は事前に定められた値とみなして、計算に用いる
ことを特徴とする異常検知システム。
【請求項5】
プロセッサとインターフェースとを有し、空調システムを監視する監視計算機であって、
前記空調システムは、複数の機器とセンサとを有し、
前記複数の機器は、複数種類の機器より構成され、
前記プロセッサは:
(1)前記インターフェースを介して、前記複数のセンサから測定値を取得し、
(2)前記空調システムを構成する機器の種類の各々について:
(2A)前記機器種類に関するセンサの測定値を選択し、
(2B)選択した測定値に基づいて統計値を計算し、
(3)前記複数の機器種類毎に、計算した複数の統計値に基づいて、特徴量空間内の位置を示す特徴量セットを計算し、
(4)学習中である場合:
(4A)前記特徴量セットを正常データとして前記特徴量空間に登録し、
(5)学習後の監視状態である場合:
(5A)前記特徴量セットと正常データとの乖離に基づいて、異常の有無を判断し、
(5B)異常と判断した場合:
(5Ba)複数の機器種類の中から、所定の機器種類を、異常が発生した機器種類と特定し、
(5Bb)前記所定の機器種類である、1以上の機器から、異常が発生した機器を特定する、
ことを特徴とする異常検知システム。
【請求項6】
空調を行うための複数の機器、及び前記複数の機器の動作状態量を計測する複数のセンサを有する空調システムと、前記空調システムの動作状態を監視する監視計算機とを有する異常検知システムの異常検知方法であって、
監視計算機は、
複数の前記センサから、複数の機器種類に関する複数の測定値を取得し、同じ前記機器種類(以下、同種機器と表記する)に関する測定値を選択し、選択した測定値に基づいて統計値を計算するステップと、
少なくとも2種類の前記同種機器の夫々の統計値に基づいて、特徴量空間内の位置を示す特徴量セットを計算するステップと、
学習状態である場合、前記特徴量セットを正常データとして特徴量空間に登録するステップと、
学習後の監視状態である場合、前記特徴量セットと前記正常データとの乖離度合に基づいて、異常原因を判断するステップと、
前記異常原因に基づいて、複数の前記同種機器の中から、所定の前記同種機器を異常が発生した前記同種機器と特定し、更に所定の前記同種機器から、異常が発生した前記機器を特定するステップとを実行する
ことを特徴とする異常検知システムの異常検知方法。
【請求項7】
空調を行うための複数の機器、及び前記複数の機器の動作状態量を計測する複数のセンサを有する空調システムと、前記空調システムの動作状態を監視する監視計算機とを有する異常検知システムであって、
前記監視計算機は、全体解析部と詳細解析部を備え、
前記全体解析部は、
前記複数のセンサから、前記複数の機器に関する複数の測定値を取得する測定値取得部と、
前記複数の機器における同じ機器種類(以下、同種機器と表記する)に関する前記測定値に基づいて、前記同種機器の統計値を計算する統計値計算部と、
2組の前記同種機器の前記統計値をパラメータとする統計値2次元平面における前記統計値の位置を示す統計値セットを計算する統計値分布密度計算部と、
学習モードにおいて、前記統計値セットを正常データとして前記統計値2次元平面に登録する統計値正常データ格納部と、
学習モードの後で実行される監視モードにおいて、前記統計値分布密度計算部で計算された前記統計値セットと、前記統計値正常データ格納部に格納された前記統計値セットの乖離状態に基づいて前記同種機器の異常の有無を判断する異常検出部と、
前記異常検出部で検出された複数の異常の相関から異常原因を特定する異常原因特定部を備え、
前記詳細解析部は、
2組の前記測定値をパラメータとする測定値2次元平面における前記測定値の位置を示す測定値セットを計算する測定値分布密度計算部と、
学習モードにおいて、前記測定値セットを正常データとして前記測定値2次元平面に登録する測定値正常データ格納部と、
学習モードの後で実行される監視モードにおいて、前記異常原因特定部からの異常原因に関係する前記測定値を選択し、選択された前記測定値に基づいて前記測定値分布密度計算部で計算された前記測定値セットと、前記測定値正常データ格納部に格納された前記測定値セットの乖離状態に基づいて前記異常原因に関係する前記同種機器を特定し、更に前記同種機器から異常が発生した異常機器を特定する異常機器特定部を備えている
ことを特徴とする異常検知システム。
【請求項8】
請求項7に記載の異常検知システムであって、
前記統計値分布密度計算部によって求められる前記統計値2次元平面は、複数の前記統計値の2組の前記統計値を総当たりで計算した数だけ求められ、
前記測定値分布密度計算部によって求められる前記測定値2次元平面は、複数の前記測定値の2組の前記測定値を総当たりで計算した数だけ求められる
ことを特徴とする異常検知システム。
【請求項9】
請求項7に記載の異常検知システムであって、
前記統計値分布密度計算部は、前記統計値を特徴ベクトルに変換して前記統計値2次元平面に画像形式で登録し、
前記測定値分布密度計算部は、前記測定値を特徴ベクトルに変換して前記測定値2次元平面に画像形式で登録する
ことを特徴とする異常検知システム。
【請求項10】
請求項7に記載の異常検知システムであって、
前記異常原因特定部は、複数の統計値の異常状態と複数の前記異常原因をマップ形式で登録し、夫々の前記統計値の異常状態の組み合わせの相関から前記異常原因を前記マップから抽出する
ことを特徴とする異常検知システム。
【請求項11】
空調を行うための複数の機器、及び前記複数の機器の動作状態量を計測する複数のセンサを有する空調システムと、前記空調システムの動作状態を監視する監視計算機とを有する異常検知システムに使用される前記監視計算機を動作させるプログラムを記憶した異常検知システムの記録媒体であって、
前記記録媒体には、
前記複数のセンサから、前記複数の機器に関する複数の測定値を取得する測定値取得プログラムと、
前記複数の機器における同じ機器種類(以下、同種機器と表記する)に関する前記測定値に基づいて、前記同種機器の統計値を計算する統計値計算プログラムと、
前記同種機器に関係する2組の前記統計値をパラメータとする統計値2次元平面における前記統計値の位置を示す統計値セットを計算する統計値分布密度計算プログラムと、
学習モードにおいて、前記統計値セットを正常データとして前記統計値2次元平面に登録する統計値正常データ格納プログラムと、
学習モードの後で実行される監視モードにおいて、前記統計値分布密度計算プログラムで計算された前記統計値セットと、前記正常データ格納プログラムによって格納された前記統計値セットの乖離状態に基づいて前記同種機器の異常の有無を判断する異常検出プログラムと、
前記異常検出プログラムで検出された複数の異常の相関から異常原因を特定する異常原因特定プログラムと、、
2組の前記測定値をパラメータとする測定値2次元平面における前記測定値の位置を示す測定値セットを計算する測定値分布密度計算プログラムと、
学習モードにおいて、前記測定値セットを正常データとして前記測定値2次元平面に登録する測定値正常データ格納プログラムと、
学習モードの後で実行される監視モードにおいて、前記異常原因特定プログラムで求められた前記異常原因に関係する前記測定値を選択し、選択された前記測定値に基づいて前記測定値分布密度計算プログラムで計算された前記測定値セットと、前記測定値正常データ格納プログラムによって格納された前記測定値セットの乖離状態に基づいて前記異常原因に関係する前記同種機器を特定し、更に前記同種機器から異常が発生した異常機器を特定する異常機器特定プログラムを備えている
ことを特徴とする異常検知システムの記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検知システム、異常検知システムの異常検知方法、及び異常検知システムの記録媒体に係り、特に空調システムの異常を検知する異常検知システム、異常検知システムの異常検知方法、及び異常検知システムの記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
空調システムの異常や故障(以下、異常と表記する)や、その異常の発生の兆候を検知(異常検知)することは、空調システムの点検作業やメンテナンスのコスト低減のために極めて重要である。また、最近では顧客へ空調設備を提供するだけではなく、空調設備の運用や保守を一括して請け負うサービスが、事業化される動きがある。
【0003】
また、業務用空調システムや冷凍冷蔵機器においては、2015年4月から環境省より「フロン排出抑制法」が施行され、企業が保有するフロンガスを使用する機器に対して“簡易点検”と“定期点検”が義務化されている。このため、空調システムの異常を把握することが、サービス事業を運営する上で重要となってきている。
【0004】
更に、冷媒が循環する配管で連結された、室外機(一台、或いは複数台)と室内機(複数台)で構成される空調システムの異常を検知し、その異常原因を特定して何れの機器に異常を発生しているか特定することが、保守・修理の観点から重要である。
【0005】
このような異常検知を活用することにより、以下に示す環境価値、経済価値、社会価値を提供することができる。
【0006】
つまり、環境価値においては、冷媒(フロン)漏洩の早期検知による漏洩量削減で温暖化防止に寄与できる。また、経済価値においては、空調設備の突発故障による顧客の事業損失を抑制(生産停止・歩留まり・食品廃棄損、等)し、また保守メンテナンスを時間基準から状態基準に変更することで、ライフサイクルコストの削減に寄与できる。更に、社会価値においては、医療現場等のミッションクリティカルな空調設備の安定稼動、及び保守人材不足(保守作業員の作業効率向上)の解消に寄与できる。
【0007】
ところで、空調システムの異常検知では、室外機、及び室内機に設けたセンサ信号から算出される機器毎の能力値(特徴量)を入力として正常状態を学習し、学習した正常状態からの乖離度合に基づき異常検知を行うことが知られている。学習方式として、室内機1台と室外機1台の組み合わせで行う個別学習と、全室内機と全室外機をまとめて行う一括学習がある。
【0008】
個別学習の問題点は、室外機にある機器毎の能力値(特徴量)は、複数の室内機の稼働状態(稼働/非稼働)の影響を受けることである。つまり、個別学習の場合は、運転パターン(各室内機の稼働/非稼働の組み合わせ)によって、室外機の正常状態の特徴分布が変化するため、正しい異常検知ができない。
【0009】
この問題を回避するには運転パターン別の学習が必要となる。しかしながら、多数の室外機、室内機で構成されるVRF(Variable refrigerant flow)空調システムを対象とすると、運転パターン数が膨大になるため現実的ではない。
【0010】
また、一括学習の問題点は、一括学習であれば、運転パターンによって異なる分布が学習される。しかしながら、一括学習では次元が高くなり、正常状態の特徴分布が租になることから、虚報が多発する、或いは閾値が高くなって異常検知感度が低下するといった不具合を生じる。
【0011】
システムを構成する機器の異常検知に関して、例えば特開2001-289492公報(特許文献1)には、エンジン駆動式空気調和機において、エンジンが運転不可能な状態になった場合、エンジンストールが発生したかどうかを監視しておき、エンジンストールが発生した場合にスロットル診断モードを開始し、燃料調整弁診断モードを実行することで、圧縮機を駆動する内燃機関の不具合を検知するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2001-289492公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に記載の異常検知システムは、エンジン駆動式空気調和機において、エンジンが運転不可能な状態になった場合、エンジンストールが発生したかどうかを監視しておき、エンジンストールが発生するとスロットル診断モードを開始し、燃料調整弁診断モードを実行することで、圧縮機を駆動する内燃機関の不具合を検知するシステムである。
【0014】
然るに、特許文献1には、複数の室内機、室外機で構成される空調システムに適用した場合の異常検知に関する考慮はなされていない。このように、特許文献1においては、冷媒が循環する配管で連結された室外機(1台、或いは複数台)、及び室内機(複数台)で構成される空調設備の異常を検知し、その異常原因を特定し、何れの機器が異常かを特定することについての開示や示唆は認められない。
【0015】
本発明の目的は、冷媒が循環する配管で連結された、室外機(1台、或いは複数台)、及び室内機(複数台)で構成される空調設備の異常を検知し、その異常原因を特定し、しかも何れの機器に異常が発生していかを特定することができる異常検知システム、異常検知システムの異常検知方法、及び異常検知システムの記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、
複数の機器と、センサとを有する空調システムと、この空調システムを監視する監視計算機とを有する異常検知システムであって、
複数の機器は、複数の機器種類より構成され、
監視計算機は、
(1)複数のセンサから、複数の機器に関する複数の測定値を取得し、
(2)各機器種類について、
(2A)当該機器種類に関するセンサの測定値を選択し、
(2B)選択した値に基づいて統計値を計算し、
(3)複数の機器種類毎に、計算した複数の統計値に基づいて、特徴量空間内の位置を示す特徴量セットを計算し、
(4)学習中である場合は、
(4A)特徴量セットを正常データとして特徴量空間に登録し、
(5)学習後の監視状態である場合は、
(5A)特徴量セットと正常データとの乖離に基づいて、異常の有無を判断し、
(5B)異常と判断した場合は、
(5Ba)複数の機器種類の中から、所定の機器種類を、異常が発生した機器種類と特定し、
(5Bb)所定の機器種類である、1以上の機器から、異常が発生した機器を特定する、
ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、
空調を行うための複数の機器、及び記複数の機器の動作状態量を計測する複数のセンサを有する空調システムと、空調システムの動作状態を監視する監視計算機とを有する異常検知システムの異常検知方法であって、
監視計算機は、
複数のセンサから、複数の機器種類に関する複数の測定値を取得し、同じ機器種類(以下、同種機器と表記する)に関する測定値を選択し、選択した測定値に基づいて統計値を計算するステップと、
少なくとも2種類の同種機器の夫々の統計値に基づいて、特徴量空間内の位置を示す特徴量セットを計算するステップと、
学習状態である場合、特徴量セットを正常データとして特徴量空間に登録するステップと、
学習後の監視状態である場合、特徴量セットと正常データとの乖離度合に基づいて、異常原因を判断するステップと、
異常原因に基づいて、複数の同種機器の中から、所定の同種機器を異常が発生した同種機器と特定し、更に所定の同種機器から、異常が発生した機器を特定するステップとを実行する
ことを特徴とする。
【0018】
更に本発明は、
空調を行うための複数の機器、及び複数の機器の動作状態量を計測する複数のセンサを有する空調システムと、空調システムの動作状態を監視する監視計算機とを有する異常検知システムに使用される監視計算機を動作させるプログラムを記憶した異常検知システムの記録媒体であって、
記録媒体には、
複数のセンサから、複数の機器に関する複数の測定値を取得する測定値取得プログラムと、
複数の機器における同じ機器種類(以下、同種機器と表記する)に関する測定値に基づいて、同種機器の統計値を計算する統計値計算プログラムと、
同種機器に関係する2組の統計値をパラメータとする統計値2次元平面における統計値の位置を示す統計値セットを計算する統計値分布密度計算プログラムと、
学習モードにおいて、統計値セットを正常データとして統計値2次元平面に登録する統計値正常データ格納プログラムと、
学習モードの後で実行される監視モードにおいて、統計値分布密度計算プログラムで計算された統計値セットと、正常データ格納プログラムによって格納された統計値セットの乖離状態に基づいて同種機器の異常の有無を判断する異常検出プログラムと、
異常検出プログラムで検出された複数の異常の相関から異常原因を特定する異常原因特定プログラムと、、
2組の測定値をパラメータとする測定値2次元平面における測定値の位置を示す測定値セットを計算する測定値分布密度計算プログラムと、
学習モードにおいて、測定値セットを正常データとして測定値2次元平面に登録する測定値正常データ格納プログラムと、
学習モードの後で実行される監視モードにおいて、異常原因特定プログラムで求められた異常原因に関係する測定値を選択し、選択された測定値に基づいて測定値分布密度計算プログラムで計算された測定値セットと、測定値正常データ格納プログラムによって格納された測定値セットの乖離状態に基づいて異常原因に関係する同種機器を特定し、更に同種機器から異常が発生した異常機器を特定する異常機器特定プログラムを備えている
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、冷媒が循環する配管で連結された、室外機(1台以上)、及び室内機(1台以上)で構成される空調設備の異常を検知し、その異常原因を特定し、更に何れの機器に異常が発生しているかを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明が適用される空調システムの異常検知システムの基本構成を示す構成図である。
図2】本発明の実施形態になる空調システムの異常検知システムの処理ブロックを示す制御ブロック図である。
図3】複数の機器を有する空調システムの構成を説明する説明図である。
図4】機器毎の測定値と同種機器統計値の関係を説明する説明図である。
図5A】学習モードにおける正常データの2次元分布密度を説明する説明図である。
図5B図5Aを詳細にした2次元分布密度を説明する説明図である。
図6A図2に示す全体解析部における2次元分布密度による異常原因を特定する例を説明する説明図である。
図6B図6Aに示す異常原因を特定する例を更に詳細に説明する説明図である。
図7】統計値の組合せによる異常原因特定マップの例を説明する説明図である。
図8】異常原因に関係する機器の測定値セットによる2次元分布密度による異常機器を特定する例を説明する説明図である。
図9A】正常時の空調システムにおける機器の測定値、及び統計値を基にした学習処理フローの前半を示すフローチャート図である。
図9B】正常時の空調システムにおける機器の測定値、及び統計値を基にした学習処理フローの後半を示すフローチャート図である。
図10A】監視時の空調システムにおける機器の測定値、及び統計値を基にした監視処理フローの前半を示すフローチャート図である。
図10B】監視時の空調システムにおける機器の測定値、及び統計値を基にした監視処理フローの中半を示すフローチャート図である。
図10C】監視時の空調システムにおける機器の測定値、及び統計値を基にした監視処理フローの後半を示すフローチャート図である。
図11】異常検知システムを構成する表示装置の表示画面の表示例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0022】
図1は、空調システムにおける異常検知システムの基本構成を示している。空調システムにおける異常検知システムは、空調を行う複数の機器とセンサとを有する空調設備システム100と、空調設備システム100の動作を監視する監視計算機200とで構成されている。
【0023】
空調設備システム100における空調システムは、基本的には室外機と室内機とで構成されており、これらは冷媒配管によって連結されている。室外機は、圧縮機、熱交換機、膨張弁、送風ファン等の機器を備え、また室内機は、熱交換機、膨張弁、送風ファン等の機器を備えている。更に、夫々の機器には、機器の動作状態量(例えば、温度、圧力、電流等)を検出するセンサが設けられている。
【0024】
空調システムは、1台以上の室外機と1台以上の室内機とから構成されているので、夫々の室外機、室内機を構成する複数の機器は、機器種類として把握される。ここで機器種類とは、或る機能を実行する機器の種類である。例えば、機器種類として圧縮機に着目すると、異なる室外機の圧縮機は、圧縮機としてみると「同種機器」であり、同様に、機器種類として膨張弁、送風ファンに着目すると、異なる室外機の膨張弁、送風ファンは、夫々が「同種機器」となる。もちろん室内機についても同様である。
【0025】
動作状態量はセンサから直接的に計測できるセンサ信号や、センサで計測できず、センサ信号に基づいて演算によって求める測定値があるが、基本的には、以下では両方を含めて測定値として説明を行う。尚、センサ信号、或いは測定値として、特別に取り扱う場合は、その旨の記載を行う。
【0026】
また、監視計算機200は、入出力機能を備えるインターフェースと、演算機能を備えるプロセッサを備えており、プロセッサは、制御プログラムにしたがって以下に述べる本実施形態に係る演算を実行することができる。また、プロセッサの一例としては、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)が考えられるが、所定の演算処理を実行する主体であれば他の半導体デバイスを使用することも可能である。
【0027】
監視計算機200は、空調設備システムに一体的に結合されていても良いし、有線/無線によって接続されたクラウドシステムであっても良い。また、制御プログラムは、制御機能を備えているので、制御機能ブロックとして捉えることができる。
【0028】
図2は、空調システムにおける異常検知システムの構成を示している。空調設備システム100は、複数の顧客サイトに設置され、ネットワークを介してセンサ情報等が監視計算機200に転送される。顧客サイトは、建築物(ビル等の建物)に対応し、例えば、建築物に備えられたVRF空調システム等が対応する。
【0029】
空調設備システム100は、1つ、又は複数の空調システム101と、空調システム101に設置されている複数の機器のセンサ信号(Ssig)を入力し、監視計算機200へ転送するセンサ信号入力部102から構成されている。空調システム101には、1つ、又は複数の種々の機器にセンサが設置されている。尚、複数の機器のセンサ信号(Ssig)は、例えば、温度、電流、圧力等に関するものである。
【0030】
監視計算機200は、空調システム101の異常を検知し、その「異常原因」を特定する全体解析部(異常原因特定解析部)210と、この全体解析部210で得られた「異常原因」を基に、空調システム101の異常個所、例えば、複数の室外機、或いは室内機の「異常機器」を特定する詳細解析部(異常機器特定解析部)220から構成されている。
【0031】
これらの全体解析部210、及び詳細解析部220は、プロセッサの制御プログラムで実行される機能である。これらの制御プログラムで実行される処理フローは、図9A図9B、及び図10A図10Cで説明する。
【0032】
全体解析部210は、空調設備システム100から転送された複数の機器のセンサ信号(Ssig)を、センサ信号加工部211に入力し、このセンサ信号加工部211で作成された「同種機器」の統計値(Ssta)を用いて、空調システム101の異常を検知し、その「異常原因」を特定するものである。
【0033】
全体解析部210は、特徴ベクトル抽出部212、異常測度算出部213、閾値算出部214、異常検出部215、及び異常原因特定部216を備えている。
【0034】
一方、詳細解析部220は、空調設備システム100から転送された複数の機器のセンサ信号(Ssig)を、センサ信号加工部211に入力し、センサ信号加工部211で作成された機器毎の測定値(Ssop)を用いて、全体解析部210で得られた「異常原因」を基に測定値(Ssop)を選択し、空調システム101の異常個所である「異常機器」を特定するものである。
【0035】
詳細解析部220は、異常原因特徴量抽出部221、異常原因特徴量解析部222、異常原因特徴量学習データ格納部223、及び異常個所特定部224を備えている。
【0036】
次に、全体解析部210、及び詳細解析部220の制御機能について説明するが、先ず全体解析部210の正常状態における「学習モード」について説明する。
【0037】
全体解析部210においては、空調設備システム100から転送された複数の機器のセンサ信号(Ssig)が、センサ信号加工部211によって「同種機器」の統計値(Ssta)に変換される。この統計値(Ssta)は複数求められる。また、統計値(Ssta)は「合計値、平均値、最大値、最小値、標準偏差、分散、中央値、ヒストグラム」等で定義される。この統計値(Ssta)は、後段の特徴ベクトル抽出部212に入力される。
【0038】
特徴ベクトル抽出部212は、「同種機器」の統計値(Ssta)を用いて特徴ベクトルを抽出し、抽出された特徴ベクトルは、異常測度算出部213に入力される。異常測度算出部213は、予め指定された学習期間の特徴ベクトルを用いて、所定時間間隔(各時刻と表現する場合もある)で、特徴ベクトル毎に異常測度を算出する。
【0039】
算出された異常測度は、閾値算出部214に入力され、閾値算出部214は、「学習モード」での異常測度に応じた閾値(SL)を算出する。閾値算出部214で算出された閾値(SL)と、異常測度算出部213で求められた異常測度は、異常検出部215で比較される。そして、その比較結果は異常原因特定部216に送られ、ここで、「異常原因」が特定される。
【0040】
次に全体解析部210の「監視モード」について説明する。「監視モード」は、「学習モード」が終了した後に実行される。全体解析部210の「監視モード」では、空調設備システム100から転送された複数の機器のセンサ信号(Ssig)は、センサ信号加工部211によって「同種機器」の統計値(Ssta)に変換され、特徴ベクトル抽出部212が、「同種機器」の統計値(Ssta)を用いて特徴ベクトルを抽出する。
【0041】
異常測度算出部213は、予め指定された監視期間の特徴ベクトルを用いて、所定時間間隔(各時刻と表現する場合もある)で、特徴ベクトル毎に異常測度を算出する。異常検出部215は、「監視モード」において算出された異常測度と、閾値算出部214によって「学習モード」の異常測度から求めた閾値(SL)とを比較して異常を判定する。異常原因特定部216は、異常に関係する「同種機器」の統計値(Ssta)、つまり、統計値(Ssta)に対応した特徴ベクトルを分析することで、空調設備システム100の「異常原因」を特定する。
【0042】
次に、センサ信号加工部211、特徴ベクトル抽出部212、異常測度算出部213、閾値算出部214、異常検出部215、及び異常原因特定部216の詳細な機能について説明する。
【0043】
センサ信号加工部211は、空調設備システム100に設置された複数の機器のセンサ信号(Ssig)から定常稼動データ(以下、正常データと表記する)を抽出し、機器種類に関するセンサの測定値として機器毎の測定値(Ssop)を算出する。この測定値(Ssop)は、詳細解析部220においても使用される。
【0044】
更にセンサ信号加工部211は、機器種類毎の測定値(Ssop)を選択し、選択した測定値(Ssop)に基づいて機器種類毎にまとめた統計値である、「同種機器」の統計値(Ssta)を算出する。統計値(Ssta)は、上述したように「合計値、平均値、最大値、最小値、標準偏差、分散、中央値、ヒストグラム」等である。もちろんこれ以外の統計値を使用しても良い。
【0045】
特徴ベクトル抽出部212は、統計値(Ssta)に対して平均を「0」、分散を「1」とする正準化を施す処理を実行する。そして、或る時刻t(t=0、1、2、…)に対して、以下の[式1]に示す通り、ベクトルx(t)を1時刻につき1個抽出する。
x(t)=(x1(t)、x2(t)、…、xM-1(t)、xM(t))……[式1]
ここで、xm(t)(m=1、2、…、M)は、正準化後の時刻tのm番目の統計値(Ssta)である。
【0046】
異常測度算出部213は、局所部分空間法(LSC:Local Subspace Classifier)を採用して測度を求めている。LSC法は異常検知技術として多く用いられており、未知データに対するk個の近傍データxi(i=1、…、k)を用いて、「k-1次元」の部分空間を作成する。そして、未知データと「k-1次元」の部分空間の投影距離に基づいて、異常かどうかを判定する方法である。異常測度は、未知データと「k-1次元」の部分空間の投影距離で表わされるため、未知データに最も近い部分空間上の点を求めれば良い。
【0047】
閾値算出部214は、異常測度算出部213が算出した異常測度を昇降順にソートし、最大の異常測度の値を閾値(SL)とする。この方法によれば簡単に閾値(SL)を求めることができる。尚、これ以外の方法で閾値(SL)を求めることもできる。
【0048】
異常検出部215は、異常測度算出部213が算出した異常測度が、閾値算出部214が設定した閾値(SL)を超えるか否かを判定し、この閾値(SL)を超えると異常であると判定し、閾値(SL)を超えないと正常であると判定する。
【0049】
異常原因特定部216は、異常が連続して検知されている異常区間を求め、区間毎に2次元分布密度に基づいて、異常に関係する「同種機器」の統計値(Ssta)を抽出する。そのためには、「学習モード」時に、「同種機器」の統計値(Ssta)に基づいた正常データの2次元分布密度が、2種類の「同種機器」の統計値(Ssta)の総当たりで計算され、これを画像形式で保存するようにされている。したがって、総当たりで計算された複数の2次元分布密度が得られることになる。詳細は図5A図5Bに示している。
【0050】
2次元分布密度は、請求項においては「特徴空間」と定義され、特徴ベクトルが表現される空間である。尚、統計値(Ssta)は、特徴ベクトルで表されているので、濃淡画像として取り扱うことができ、この画像が、「学習モード」によって得られた正常状態の画像となる。
【0051】
一方、「監視モード」時に、複数の測定値から求められた「同種機器」の統計値(Ssta)の監視データが、2次元分布密度の画像のどこにプロットされたかに応じて、2種類の「同種機器」の統計値(Ssta)の乖離度が算出される。そして、この乖離度の大きいものから順に、異常に関係する「同種機器」の統計値(Ssta)として抽出される。
【0052】
これは、異常データの分布が、正常データの分布から離れている異常に関係する「同種機器」の統計値(Ssta)を見つけることを意味する。異常に関係する「同種機器」の統計値(Ssta)を特定した後、「同種機器」の統計値(Ssta)の組み合わせによる異常原因特定マップ(詳細は、図7を参照して説明する)を参照し、異常原因を特定する。一般的には、異常原因は、例えば冷媒漏れ、膨張弁故障、圧縮機故障等が考えられる。
【0053】
次に、詳細解析部220の機能について説明するが、先ず詳細解析部220の正常状態における「学習モード」について説明する。
【0054】
詳細解析部220の「学習モード」においては、空調設備システム100から転送された複数の機器のセンサ信号(Ssig)がセンサ信号加工部211に入力され、センサ信号加工部211が、機器毎の測定値(Ssop)に変換する。この測定値(Ssop)は、異常原因特徴量抽出部221に入力され、異常原因特徴量抽出部221が、「異常原因」に関係する機器毎の測定値(Ssop)セットを抽出する。測定値(Ssop)セットは、或る特定の機器に関する複数の測定値の集まりを意味している。
【0055】
異常原因特徴量解析部222は、各異常原因に関係する機器毎の測定値(Ssop)セットを使用して、正常データの2次元分布密度を作成する。これは全体解析部210で作成した統計値(Ssta)の2次元分布密度と同じ手法で作成されている。この正常データの2次元分布密度は、異常原因特徴量学習データ格納部223に送られ、異常原因特徴量学習データ格納部223のメモリに格納される。
【0056】
尚、正常データの2次元分布密度は機器数分、例えば、室外機の数に対応した圧縮機、膨張弁、送風ファン、熱交換器の数や、室内機の数に対応した膨張弁、送風ファン、熱交換器の数だけ作成される。もちろん、これ以外の機器があれば、これについても作成される。
【0057】
一方、詳細解析部220の「監視モード」では、空調設備システム100から転送された複数の機器のセンサ信号(Ssig)が、センサ信号加工部211によって機器毎の測定値(Ssop)に変換される。また、異常特徴量抽出部221が「異常原因」に関係する機器毎の測定値(Ssop)セットを抽出し、機器毎の測定値(Ssop)セットは、異常原因特徴量解析部222に送られる。
【0058】
次に、異常原因特徴量解析部222が、入力された「異常原因」に関係する機器毎の測定値(Ssop)セットを使用して、監視データの2次元分布密度を画像として作成する。そして、異常原因特徴量学習データ格納部223は、全体解析部210の異常原因特定部216で特定された「異常原因」に基づいて、この「異常原因」に関係する機器毎の測定値(Ssop)セットによる正常データの2次元分布密度を選定する。
【0059】
更に機器毎の測定値(Ssop)セットによる、監視データの2次元分布密度と正常データの2次元分布密度を比較して、「異常機器」を特定する。尚、監視データの2次元分布密度は機器数分、例えば、室外機の数に対応した圧縮機、膨張弁、送風ファン、熱交換器の数や、室内機の数に対応した膨張弁、送風ファン、熱交換器の数だけ作成される。
【0060】
次に、異常原因特徴量抽出部221、異常原因特徴量解析部222、異常原因特徴量学習データ格納部223、異常個所特定部224の機能について説明する。
【0061】
異常原因特徴量抽出部221は、センサ信号加工部211から得られた機器毎の測定値(Ssop)から、「異常原因」に関係する機器毎の測定値(Ssop)セットを抽出する。
【0062】
異常原因特徴量解析部222は、抽出した機器毎の測定値(Ssop)セットの内、異常原因に関係する2種類の測定値(Ssop)を入力とし、総当たり組み合わせによる正常データ、及び監視データの2次元分布密度を、機器毎(例えば、室外機や室内機の数に対応した圧縮機、膨張弁、送風ファンの毎)に作成する。
【0063】
異常原因特徴量学習データ格納部223は、異常原因特徴量解析部222で求めた正常データの2次元分布密度を、機器毎(例えば、室外機や室内機の数に対応した圧縮機、膨張弁、送風ファン毎)にメモリに格納する。
【0064】
異常個所特定部224は、全体解析部210の異常原因特定部216で特定された「異常原因」に基づいて、この「異常原因」に関係する機器毎の測定値(Ssop)セットによる正常データの2次元分布密度を、異常原因特徴量学習データ格納部223から選定し、更に「異常原因」に関係する機器毎の測定値(Ssop)セットによる監視データの2次元分布密度と比較する。この比較結果によって、「異常機器」を特定することができる。尚、監視データの2次元分布密度は、機器毎(例えば、室外機や室内機の数に対応した圧縮機、膨張弁、送風ファン)に作成される。
【0065】
次に、複数の機器を有する空調システムの構成を説明する。図3に示す空調システム101は、例えば、複数の室外機110、120、130と、複数の室内機140、150、160、170から構成される。これら室外機および室内機の数は、限定されることはなく、その数は増やすことも減らすことも可能である。
【0066】
また、室外機110、120、130は、同じ種類の同種機器111、121、131、及び同種機器112、122、132を有する。例えば、同種機器111~131は熱交換器であり、同種機器112~132は圧縮機であり、これら同じ種類の同種機器はいくつあっても良いものである。
【0067】
同様に、室内機140、150、160、170も、同種機器141、151、161、171、及び同種機器142、152、162、172を有する。例えば、同種機器141~171は膨張弁であり、同種機器142~172は熱交換器であり、これら同じ種類の同種機器はいくつあっても良いものである。
【0068】
室外機110~130、及び室内機140~170で構成される空調システム101は、冷媒が循環する配管201で連結されている。したがって、室外機110~130に設けてあるセンサは、室内機140~170の稼働状態(稼働/日稼働)の影響を受ける。
【0069】
一方で、複数の機器の動作状態量を検出するセンサのセンサ信号(Ssig)、このセンサ信号(Ssig)から求められる機器毎の測定値(Ssop)、及び「同種機器」の統計値(Ssta)は、機器自体の動作状態を反映していると見做せるものである。図4にその一例を示している。
【0070】
図4は、項番、特徴量の名称、機器毎の測定値(Ssop)、及び「同種機器」の統計値(Ssta)を示している。直接的にセンサで計測できない機器(圧縮機、熱交換器等)の能力値(特徴量)は、実際に設置されている既存センサの動作状態量から、演算式によって疑似的な測定値として求めることができる。これを用いて異常状態を容易に把握することができるようになる。
【0071】
図4における、1列目は項番を示し、2列目は特徴量の名称を示し、3列目は既存センサの動作状態量から演算式(例えば、四則演算)によって求めた機器毎の測定値(Ssop)を示し、4列目は機器毎の測定値(Ssop)を、同じ機種毎にまとめた「同種機器」の統計値(Ssta)を示している。
【0072】
2列目の特徴量は、例えば、F1は膨張弁の制御を示す特徴量であり、F2は冷媒の状態を示す特徴量であり、F3は圧縮機の効率を示す特徴量である。F4~F7においても同様である。これらの特徴量は、これ以外にも多くの特徴量を設定することができる。
【0073】
3列目の機器毎の測定値(Ssop)は、機器の種類毎に計測される。例えば、室外機関連の特徴量である場合、室外機の数に対応した機器、例えば圧縮機、熱交換器、膨張弁、送風ファンの測定値(Ssop)が求められる。同様に、室内機関連の特徴量である場合、室内機の数に対応した機器、例えば熱交換器、膨張弁、送風ファンの測定値(Ssop)が求められる。もちろん、機器数が増えれば、機器毎の測定値(Ssop)の数も増えることになる。
【0074】
4列目の「同種機器」の統計値(Ssta)は、機器の種類毎に「同種機器」として纏めて求められる。例えば、室内機関連の特徴量であり、同じ機器毎の測定値(Ssop)が複数個ある場合、これらは統計値(Ssta)として纏められるので、「同種機器」の統計値(Ssta)は1種類になる。室外機関連および圧縮機関連の特徴量でも同様であり、「同種機器」の統計値(Ssta)は1種類になる。
【0075】
尚、統計値(Ssta)は特徴ベクトルに対応するので、以下では、統計値(Ssta)は特徴ベクトルを意味するものとして説明を進めることもある。
【0076】
統計値(Ssta)は、例えば、「合計値、平均値、最大値、最小値、標準偏差、分散、中央値、ヒストグラム」等として定義される。例えば、特徴量F1は「平均値」として統計値(Ssta)が定義され、特徴量F2は「合計値」として統計値(Ssta)が定義され、特徴量F3も「平均値」として統計値(Ssta)が定義されている。
【0077】
例えば、機器の能力を表す熱量や制御量に関する特徴量は、同種機器毎の測定値(Ssop)を合計する演算で求められ、機器の状態、効率、指数を表す特徴量は、同種機器毎の測定値(Ssop)を平均する演算で求められる。
【0078】
このように、特徴量の種類や状態に対応して、同種機器毎の測定値(Ssop)における統計値(Ssta)を求めれば良い。尚、「同種機器」の統計値(Ssta)を算出する際には、サーモオフ(室外機が停止する状態)の場合、サーモオフ条件となる機器毎の測定値(Ssop)を「0」にしておくことが望ましい。これは、サーモオフの機器から出力される信号がノイズとなるためである。
【0079】
このように、複数の機器は、稼働および非稼働の状態を少なくとも持ち、統計値の計算は、停止中の機器に関する測定値は考慮対象外とする、又は事前に定められた値と見做して計算に用いるようにすることができる。
【0080】
図5A図5Bは、全体解析部210の異常原因特定部216による、正常データおよび監視データの2次元分布密度の画像の例を示している。ここで、詳細解析部220の異常原因特徴量解析部222においても同様である。尚、以下では図4の記載を基礎として、統計値を「Fall」で表記している。
【0081】
図5Aにおける横軸は、図4に示す或る「同種機器」の特徴量(F1)の統計値(Fall1)であり、縦軸は、横軸の「同種機器」と関連する図4に示す或る「同種機器」の特徴量(F2)の統計値(Fall2)である。
【0082】
図5Aは、特徴ベクトルが表現される「特徴空間」としての画像形式の2次元分布密度グラフ(G2dg)であり、2次元分布密度の画素値の「0」を白、「最大値」を黒、その間をグレーの濃淡で表したものである。この図からわかるように、正常データ(Dnor)に対して、監視データ(Derr)は乖離した位置に存在し、異常が生じていることがわかる。
【0083】
尚、画像の作り方は上述した方法に限定されないものであり、例えば単純な頻度分布ではなく、1個のデータにガウス分布や他の重みつきフィルタを割り当て、それを重畳するようにしても良い。
【0084】
また、上述した方法で得られた画像に、所定サイズの最大値フィルタをかけたり、平均フィルタ、その他の重みつきフィルタをかけたりしても良い。また、必ずしも画像形式で保存する必要はなく2次元配列をテキスト形式で保存しても良い。更に、画素値はグレーの濃淡ではなく、分布の有る画素を1、分布の無い画素を0とした二値化2次元配列のテキスト形式で保存しても良い。
【0085】
図5Bは、一例として、空調システム101における、互いに関連する或る2種類の「同種機器」についての2次元分布密度グラフ(G2dg)を示している。横軸における第1の「同種機器」の統計値(Fall1)は、例えば、膨張弁の制御を示す特徴量であり、縦軸における第2の「同種機器」の統計値(Fall2)は、例えば、冷媒状態を示す特徴量である。
【0086】
図5Bにおいて、スケール化された第1の「同種機器」の統計値(Fall1)の最小値(MIN)から最大値(MAX)を横軸とし、同様にスケール化された第2の「同種機器」の統計値(Fall2)の最小値(MIN)から最大値(MAX)を縦軸としている。
【0087】
そして、第1のパラメータである横軸の膨張弁の制御を示す特徴量(t1)における冷媒状態を示す特徴量(p1)が(X1、Y1)としてプロットされ、第2のパラメータである膨張弁の制御を示す特徴量(t2)における冷媒状態を示す特徴量(p2)が(X2、Y2)としてプロットされている。
【0088】
作成される画像形式の2次元分布密度グラフ(G2dg)には、顧客サイト及び空調システムの空調機を識別するための、識別情報「S0001 A0001」(ここで、S0001は顧客サイト識別番号、A0001は空調機識別番号である)が付与されている。このように、空調システム101に関連する全ての「同種機器」の統計値(Fall)を元に、2種類の「同種機器」の統計値(Fall)の組み合わせについて、図5A図5Bのような、画像化された2次元分布密度グラフ(G2dg)が生成され、識別番号と対応付けられている。
【0089】
上述した処理で作成された2次元分布密度グラフ(G2dg)は、2種類の「同種機器」の統計値(Fall)の相関関係を示すグラフであるといえる。尚、2次元分布密度グラフ(G2dg)は、「同種機器」の統計値(Fall)のみならず、機器毎の測定値(Ssop)にも適用することができる。これは、後述する詳細解析部220で適用される。
【0090】
図6Aは、全体解析部210の監視モードにおける、機器種類毎に纏めた統計値(Fall)による2次元分布密度グラフ(G2dg)を用いて、「異常原因」を特定する例を示している。特に、異常測度算出部213、閾値算出部214,異常検出部215、及び異常原因特定部216の出力を示している。
【0091】
図6Aの異常検知グラフ(Grp)において、横軸は時間(日付)の経過を表し、「AM」は異常測度算出部213による異常測度を示し、「SL」は閾値算出部214による閾値(SL)を示し、「AD」は異常検出部215の異常検知の有無を表している。そして、異常測度(AM)が閾値(SL)を超えた場合に、異常検知(AD)が出力されることを示している。
【0092】
図6Aでは、例えば異常区間(Wd1)と異常区間(Wd2)で、連続して異常検知がなされている。そして、異常が連続して検知されている異常区間を対象とし、異常区間毎に、2次元分布密度グラフ(G2dg)に基づき、図5Aの監視データ(Derr)に対応する異常関連特徴量(統計値)を抽出する。
【0093】
図6Bは、監視モードで異常検知した異常区間(Wd1)と異常区間(Wd2)について、機器種類毎にまとめた統計値(Fall)を活用した、図5Aと同様の形式の2次元分布密度グラフ(G2dg-1)、(G2dg-2)と、2次元分布密度グラフ(G2dg)に基づいた異常関連特徴量(統計値)の寄与度グラフ(Gcnt-1)、(Gcnt-2)を示している。
【0094】
ここで、2次元分布密度グラフ(G2dg-1)と寄与度グラフ(Gcnt-1)は、異常区間(Wd1)の場合を示し、2次元分布密度グラフ(G2dg-2)と寄与度グラフ(Gcnt-2)は、異常区間(Wd2)の場合を示している。
【0095】
「学習モード」時に、図5Aに示す正常データの2次元分布密度グラフ(G2dg)は、2種類の「同種機器」の統計値(Fall)を総当たりで計算し、これを画像形式で保存するようにしておく。したがって、総当たりで計算された複数の2次元分布密度グラフ(G2dg)が得られることになる。以下、この画像を「分布密度画像」と表記する。
【0096】
そして、異常検知時に、図5Aに示すような異常データ(Derr)が、分布密度画像のどこにプロットされたかに応じて特徴量の寄与度を算出し、寄与度が高い特徴量から順に異常関連特徴量として抽出する。これは、異常データの分布が正常データの分布から離れている特徴量を見つけることを意味する。
【0097】
図6Bにおいて、異常区間(Wd1)では寄与度グラフ(Gcnt-1)にあるように、統計値(Fall7)、(Fall2)、(Fall1)…の順序で抽出され、、異常区間(Wd2)では寄与度グラフ(Gcnt-2)にあるように、統計値(Fall7)、(Fall4)、(Fall1)…の順序で抽出される。
【0098】
図7は、機器種類毎にまとめた統計値(Fall)の組み合わせによる、異常原因特定マップの例を示している。横軸は、機器種類毎にまとめた統計値(Fall)、すなわち特徴量(例えば、冷暖房能力、冷媒状態、圧縮機効率等)を示し、縦軸は、異常原因(例えば、冷媒漏れ、膨張弁故障、圧縮機故障など)を示している。マップ内の低/高は、「学習モード」時の特徴量(正常統計値)の状態を基準とした、異常関連特徴量(異常統計値)の状態(一致度)を表している。ここでは、「高」の方が正常統計値に近いことを表している。
【0099】
そして、図7にある通り、異常検知した特徴量セット(Fall1~Fall7の複数の特徴量の集まり)と各異常原因の相関度を比較し、相関度が高い「異常原因」を特定する。例えば、異常検知した特徴量セットが、(Fall1)、(Fall2)、(Fall7)の組み合わせの場合、「異常原因」はAC5となる。つまり、複数の統計値(特徴量)の異常状態と複数の異常原因をマップ形式で登録し、夫々の統計値(特徴量)の異常状態の組み合わせの相関から異常原因をマップから抽出するものである。
【0100】
このように、複数の機器種類の中から、所定の機器種類に関連した所定の統計値に基づいて、所定の機器種類の異常の有無を評価し、「異常原因」を特定することができる。
【0101】
次に「異常原因」から「異常機器」を特定する詳細解析部220について説明する。ここでは、室内機の数が3台の場合を示している。図8は、図2に示す全体解析部210から詳細解析部220に入力される、「異常原因」に関係する機器の測定値セットによる2次元分布密度グラフで「異常機器」を特定する例を示している。2次元分布密度グラフの考え方は、先に述べた統計値の場合と同様である。
【0102】
例えば、図6Aの「監視モード」で異常検知した異常区間(Wd1)と異常区間(Wd2)について、図7の異常原因特定マップを活用し、「異常原因」がAC5で、しかも、この「異常原因」が室内機(同種機器)関連の異常であると仮定する。
【0103】
次に、詳細解析部220の異常原因特徴量解析部222による、正常データおよび監視データの2次元分布密度の画像の例をについて説明する。
【0104】
図8は、図5Aと同様の形式の2次元分布密度グラフ(G2sdg-1)、(G2sdg-2)と、2次元分布密度グラフ(G2sdg)に基づいた機器の異常発生回数グラフ(Gscnt-1)、(Gscnt-2)を示している。
【0105】
2次元分布密度グラフ(G2sdg-1)と機器の異常発生回数グラフ(Gscnt-1)は、異常区間(Wd1)の場合を示し、2次元分布密度グラフ(G2sdg-2)と機器の異常発生回数グラフ(Gscnt-2)は、異常区間(Wd2)の場合を示している。
【0106】
「学習モード」時に、2次元分布密度グラフ(G2sdg)は、2種類の「同種機器」の測定値(Ssop)を総当たりで計算し、これを画像形式で保存するようにしておく。したがって、総当たりで計算された複数の2次元分布密度(G2sdg)が得られることになる。これも統計値の場合と同様である。
【0107】
そして、「監視モード」での異常検知時に、図8に示すような異常データ(Dserr)が、総当たりで計算された複数の2次元分布密度グラフ(G2sdg)のどこにプロットされたかに応じて異常発生を検出する。この場合、異常区間(Wd1)と異常区間(Wd2)で、室内機3に異常が発生していることがわかる。
【0108】
そして、2種類の「同種機器」の測定値(Ssop)を総当たりで計算した2次元分布密度グラフ(G2sdg)における異常発生回数を計数し、異常発生回数グラフ(Gscnt-1)、(Gscnt-2)にあるように、異常発生回数が多い或る特定の「異常機器」、ここでは室内機3に異常が発生している可能性が高いと見做している。
【0109】
つまり、「異常原因」に関係する個別の機器の測定値セットの正常時の「学習モード」における正常データと「監視モード」における監視データを、2次元分布密度グラフ(G2sdg-1)、(G2sdg-2)で比較し、室内機毎の異常発生の回数を計数し、計数値が多いほど異常が発生している可能性が高いと見做している。この場合は、室内機3が、異常を発生していると見做している。尚、ここでは「異常機器」を室内機として捉えたが、より下位の室内機の構成機器を対象とすることも可能であることはいうまでもない。
【0110】
このように、異常検知した所定の機器種類の中から、所定の機器に関連した所定の測定値に基づいて、所定の機器の異常の有無を評価し、異常個所(異常機器)を特定することができる。
【0111】
以上説明した本実施形態によれば、
(1)機器種類毎にまとめた統計値の導入により、この機器の一部が停止、あるいは一部の機器の運転状態が変化した場合でも、統計値として値が得られるため、監視が継続できる、
(2)機器種類毎にまとめた統計値の導入により、少ない稼働データで学習して異常を検知できるため、初期学習期間の短縮が可能である、
(3)個別機器の測定値セットで特徴量空間を作るのに対し、特徴空間の次元が落とせるため、疎にならない。よって、正常データが十分に密となり、精度よく異常判別ができる
といった作用、効果を奏することができる。
【0112】
次に、監視計算機200のプロセッサによって実行される「学習モード」の処理フローについて説明する。図9は、正常な空調システムの個別機器の測定値、及び機器種類毎(同種機器)にまとめた統計値を基にした学習処理フローを示している。
【0113】
≪ステップS901≫
ステップS901においては、最初に空調システム101から転送された複数の機器のセンサ信号(Ssig)が、センサ信号入力部103に取り込まれる。センサ信号(Ssig)が入力されると、ステップS902の処理を実行する。
【0114】
≪ステップS902≫
ステップS902においては、「学習モード」の任意の期間において、ループ処理1を開始し、任意の期間が終了するまで以下の処理を繰り返して実行する。ループ処理1が開始されると、ステップS903の処理を実行する。
【0115】
≪ステップS903≫
ステップS903においては、ステップS902でループ処理1が開始されると、ループ処理2を開始し、センサ信号毎に正常時のデータを取り込み、ループ処理2が終了するまで以下の処理を繰り返して実行する。ループ処理2が開始されると、ステップS904の処理を実行する。
【0116】
≪ステップS904≫
ステップS904においては、取り込まれたデータから機器毎の測定値が求められる。例えば、1分間隔、1時間間隔、1日間隔の測定値が求められる。測定値は、センサ信号加工部211によってセンサ信号を機器毎の測定値に変換して得られ、「異常原因」に関係する機器毎の測定値セットが異常特徴量抽出部221に入力される。この処理が実行されるとステップS905の処理を実行する。
【0117】
≪ステップS905≫
ステップS905においては、詳細解析部220によって異常原因数毎にループ処理3を開始し、ループ処理3が終了するまで以下の処理を繰り返して実行する。この処理が実行されるとステップS906の処理を実行する。
【0118】
≪ステップS906≫
ステップS906においては、更に詳細解析部220によって、機器数毎(例えば、室内機数毎、室外機数毎、圧縮機数毎)にループ処理4を開始し、ループ処理4が終了するまで以下の処理を繰り返して実行する。この処理が実行されるとステップS907の処理を実行する。
【0119】
≪ステップS907≫
ステップS907においては、異常特徴量抽出部222が「異常原因」に関連する機器毎の測定値セットを抽出し、異常原因特徴量解析部222が各異常原因に関連する機器毎の測定値セットを使用して、正常データの2次元分布密度を作成する。この処理が実行されるとステップS908の処理を実行する。
【0120】
≪ステップS908≫
ステップS908においては、正常データの2次元分布密度が、異常原因特徴量学習データ格納部223に格納される。この格納処理によってループ処理4が終了される。この処理が実行されるとステップS909の処理を実行する。
【0121】
≪ステップS909≫
ステップS909においては、センサ信号加工部211が、機器毎の測定値を基にした「同種機器」の統計値を計算し、この「同種機器」の統計値セットが異常原因特定部216に入力される。この処理が実行されるとステップS910の処理を実行する。
【0122】
≪ステップS910≫
ステップS910においては、異常原因特定部216が「異常原因」に関連する「同種機器」の統計値セットを抽出し、異常原因特定部216が各異常原因に関連する「同種機器」の統計値セットを使用して、正常データの2次元分布密度を作成する。この処理が実行されるとステップS911の処理を実行する。
【0123】
≪ステップS911≫
ステップS911においては、正常データの2次元分布密度が、異常原因特定部217に格納される。この格納処理によってループ処理3が終了される。この処理が実行されるとステップS912の処理を実行する。
【0124】
≪ステップS912≫
ステップS912においては、全体解析部210によって、「同種機器」の統計値セットが特徴ベクトル抽出部212に入力される。この処理が実行されるとステップS913の処理を実行する。
【0125】
≪ステップS913≫
ステップS913においては、特徴ベクトル抽出部212が「同種機器」の統計値を用いた特徴ベクトルを抽出する。この処理が実行されるとステップS914の処理を実行する。
【0126】
≪ステップS914≫
ステップS914においては、異常測度算出部213によって、予め指定された学習期間の特徴ベクトルを用いて所定時間毎(各時刻と表現する場合もある)の特徴ベクトル毎に異常測度を算出する。この処理が実行されるとステップS915の処理を実行する。
【0127】
≪ステップS915≫
ステップS915においては、閾値算出部214によって、異常測度に応じた閾値(SL)を算出する。この処理が実行されるとステップS916の処理を実行する。
【0128】
≪ステップS916≫
ステップS916においては、ループ処理2が終了される。この処理が実行されるとステップS917の処理を実行する。
【0129】
≪ステップS917≫
ステップS917においては、ループ処理1が終了される。この処理が実行されると「学習モード」が終了される。
【0130】
次に、監視計算機200のプロセッサによって実行される「監視モード」の処理フローについて説明する。図10A図10Cは、学習後の監視状態にある空調システムの個別機器の測定値、及び機器種類毎にまとめた統計値を基にした監視処理フローを示している。先ず図10Aから説明を行う。
【0131】
≪ステップS1001≫
ステップS1001においては、最初に空調システム101から転送された複数の機器のセンサ信号(Ssig)が、センサ信号入力部103に取り込まれる。センサ信号(Ssig)が入力されると、ステップS1002の処理を実行する。
【0132】
≪ステップS1002≫
ステップS1002においては、監視モードの任意の期間において、ループ処理1を開始し、任意の期間が終了するまで以下の処理を繰り返して実行する。ループ処理1が開始されると、ステップS1003の処理を実行する。
【0133】
≪ステップS1003≫
ステップS1003においては、ステップS1002でループ処理1が開始されると、ループ処理2を開始し、センサ信号毎に監視時のデータを取り込み、以下の処理を繰り返して実行する。ループ処理2が開始されると、ステップS1004の処理を実行する。
【0134】
≪ステップS1004≫
ステップS1004においては、機器毎の測定値が求められる。例えば、1分間隔、1時間間隔、1日間隔の測定値が求められる。測定値は、センサ信号加工部211によってセンサ信号を機器毎の測定値に変換して得られ、「異常原因」に関連する機器毎の測定値セットが異常特徴量抽出部221に入力される。この処理が実行されるとステップS1005の処理を実行する。
【0135】
≪ステップS1005≫
ステップS1005において、センサ信号加工部211が、機器毎の測定値を基にした「同種機器」の統計値を計算し、この「同種機器」の統計値セットが特徴ベクトル抽出部212に入力される。この処理が実行されるとステップS1006の処理を実行する。
【0136】
≪ステップS1006≫
ステップS1006においては、特徴ベクトル抽出部212によって「同種機器」の統計値を用いた特徴ベクトルを抽出する。この処理が実行されるとステップS1007の処理を実行する。
【0137】
≪ステップS1007≫
ステップS1007においては、異常測度算出部213によって、予め指定された監視期間の特徴ベクトルを用いて所定時間毎(各時刻と表現する場合もある)の特徴ベクトル毎に異常測度を算出する。これは、図6Aに示す異常測度(AM)に対応している。この処理が実行されるとステップS1008の処理を実行する。
【0138】
≪ステップS1008≫
ステップS1008においては、異常検出部215によって、ステップS1007で算出された異常測度と「学習モード」での異常測度から求めた閾値(SL)とを比較し、その大小から異常かどうかを判定する。これは、図6Aに示す異常測度(AM)と閾値(SL)の比較に対応し、また、異常と判定されると異常検知(AD)が生成される。この処理が実行されるとステップS1009の処理を実行する。
【0139】
≪ステップS1009≫
ステップS1009においては、異常検出部216によって、ステップS1007で求められた異常測度が正常と判定された場合、ステップS1003に戻って、次の異常測度に対して、S1003~S1008の処理を繰り返すことになる。一方、ステップS1007で求められた異常測度が異常と判定された場合、ステップS1010の処理を実行する。ステップS1010以降は、図10Bに示している。
【0140】
≪ステップS1010≫
ステップS1010においては、全体解析部210によって異常原因数毎にループ処理3を開始し、以下の処理を繰り返して実行する。この処理が実行されるとステップS1011の処理を実行する。
【0141】
≪ステップS1011≫
ステップS1011においては、異常原因特定部216が「異常原因」に関連する「同種機器」の統計値セットを抽出する。そして、各異常原因に関連する「同種機器」の統計値セットを使用して、監視データの2次元分布密度を作成する。尚、「異常原因」は、例えば、冷媒漏れ、膨張弁故障、圧縮機故障等がある。この処理が実行されるとステップS1012の処理を実行する。
【0142】
≪ステップS1012≫
ステップS1012においては、ループ処理3が終了される。この処理が実行されるとステップS1013の処理を実行する。
【0143】
≪ステップS1013≫
ステップS1013においては、異常原因特定部216が、各異常原因に関連する「同種機器」の統計値セットを使用した正常データと監視データの2次元分布密度を比較する。この処理が実行されるとステップS1014の処理を実行する。
≪ステップS1014≫
ステップS1014においては、ステップS1013の比較によって、異常である「同種機器」の統計値(以降、異常特徴量と呼ぶ)を異常特徴量毎に計数する。これは、図6Bにおける異常特徴量(統計値)の寄与度グラフ(Gcnt)に対応している。この処理が実行されるとステップS1015の処理を実行する。
【0144】
≪ステップS1015≫
ステップS1015においては、ステップS1014で計数した異常特徴量が多い順にランキングを付与する。これも図6Bにおける異常特徴量(統計値)の寄与度グラフ(Gcnt)に対応しており、例えば、「Fall7」、「Fall2」、…のようにランキングされる。この処理が実行されるとステップS1016の処理を実行する。
【0145】
≪ステップS1016≫
ステップS1016においては、ランキングされた異常特徴量の中で、所定の上位N位の異常特徴量を抽出する。これも図6Bにおける異常特徴量(統計値)の寄与度グラフ(Gcnt)に対応しており、例えば、「Fall7」、「Fall2」、「Fall1」、「Fall4」が抽出される。上位N位は、「異常原因」を分別可能な主要な特徴量数によって決定する。この処理が実行されるとステップS1017の処理を実行する。
【0146】
≪ステップS1017≫
ステップS1017においては、各異常原因の主要な特徴量との一致度を算出する。これは、図7の特徴量毎に付与した「低/高」に対応している。この処理が実行されるとステップS1018の処理を実行する。
【0147】
≪ステップS1018≫
ステップS1018においては、特徴量の一致度から、各異常原因発生の割合(相関度)を算出する。これは、図7に示す一致度の集まりを評価して算出される。この処理が実行されるとステップS1018の処理を実行する。
【0148】
≪ステップS1019≫
ステップS1019においては、各異常原因(AC)の発生割合が高いものから順にランキングを付与する。例えば、「AC5」、「AC4」…の順にランキングされる。この処理が実行されるとステップS1020の処理を実行する。ステップS1020以降は、図10Cに示している。
【0149】
≪ステップS1020≫
ステップS1020においては、ステップS1019で求めたランキングから「異常原因」の発生割合の順位1位を、「異常原因」として特定する。
【0150】
≪ステップS1021≫
ステップS1021においては、詳細解析部220の異常原因特徴量抽出部222は、異常原因特定部216で特定された「異常原因」に基づいて、センサ信号加工部211に格納された機器毎の測定値の中から、「異常原因」に関係する機器毎の測定値セットを抽出する。この処理が実行されるとステップS1021の処理を実行する。
【0151】
≪ステップS1022≫
ステップS1021においては、「異常原因」に関係する機器数毎にループ処理4を開始し、以下の処理を繰り返して実行する。この処理が実行されるとステップS1023の処理を実行する。
【0152】
≪ステップS1023≫
ステップS1023においては、異常原因特徴量解析部222は、抽出した機器毎の測定値セットの内、各異常原因に関係する2種類を入力とし、総当たり組み合わせによる監視データの2次元分布密度を機器毎に作成する。これは、図8の2次元分布密度グラフ(G2sdg)に対応している。この処理が実行されるとステップS1024の処理を実行する。
【0153】
≪ステップS1024≫
ステップS1024においては、ループ処理4が終了される。この処理が実行されるとステップS1025の処理を実行する。
【0154】
≪ステップS1025≫
ステップS1025においては、異常個所特定部224によって、異常原因特定部216で特定された「異常原因」に基づいて、この「異常原因」に関係する機器毎の測定値セットによる正常データの2次元分布密度を、異常原因特徴量学習データ格納部223から選定し、更に、「監視モード」における機器毎の測定値セットによる監視データの2次元分布密度と比較する。この処理が実行されるとステップS10265の処理を実行する。
【0155】
≪ステップS1026≫
ステップS1026においては、ステップS1025の比較によって、異常である機器を異常機器毎に計数する。これは、図8における機器の異常発生回数グラフ(Gscnt)に対応している。そして、計数値が最も多い機器を「異常機器」としてとして特定する。この処理が実行されるとステップS1027の処理を実行する。
【0156】
≪ステップS1027≫
ステップS1027においては、ループ処理2が終了される。この処理が実行されるとステップS1028の処理を実行する。
【0157】
≪ステップS1028≫
ステップS1028においては、ループ処理1が終了される。この処理が実行されると監視モードが終了される。
【0158】
次に監視計算機200に接続された表示画面の画面構成について説明する。図11は、異常予兆検知、異常原因、及び異常機器(異常個所)を表示する画面の例を示している。
【0159】
図11において、表示画面(DSPY)は、監視計算機200に接続される表示装置の画面に表示される。表示画面(DSPY)には、異常予兆検知表示枠(Dpd)、異常原因特定枠(Dic)、及び異常機器特定枠(Ddi)が表示される。
【0160】
異常予兆検知表示枠(Dpd)には、時間経過に沿った図6Aに示す異常検知グラフ(Grp)が表示される。これによれば、異常検知の時間的な推移が読み取れるので、異常発生の予兆を読み取ることが可能となる。
【0161】
異常原因特定枠(Dic)には、図6Bに示す2次元分布密度グラフ(G2dg)と異常関連特徴量の寄与度グラフ(Gcnt)が表示される。これによれば、「異常原因」を特定する根拠が視覚化されるので、ユーザに対する理解を深めることができる。更に、これの具体的な文字表示枠(SC)も表示されるので、故障原因を明確に把握することができる。
【0162】
異常機器特定枠(Ddi)には、図8に示す2次元分布密度グラフ(G2sdg)と機器の異常発生回数グラフ(Gscnt)が表示される。これによれば、「異常機器」を特定する根拠が視覚化されるので、ユーザに対する理解を深めることができる。更に、これの具体的な文字表示枠(SE)も表示されるので、「異常機器」を明確に把握することができる。
【0163】
本発明は、複数のセンサから、複数の機器種類に関する複数の測定値を取得し、機器種類に関するセンサの測定値を選択し、選択した値に基づいて統計値を計算し、複数の機器種類毎に、計算した複数の統計値に基づいて、特徴量空間内の位置を示す特徴量セットを計算し、学習中である場合、特徴量セットを正常データとして特徴量空間に登録し、学習後の監視状態である場合、特徴量セットと正常データとの乖離に基づいて、異常の有無を判断し、異常と判断した場合、複数の機器種類の中から、所定の機器種類を、異常が発生した機器種類と特定し、更に所定の機器種類である1以上の機器から、異常が発生した機器を特定することを特徴としている。
【0164】
これによれば、冷媒が循環する配管で連結された、室外機(1台以上)、及び室内機(1台以上)で構成される空調設備の異常を検知し、その異常原因を特定し、しかも何れの機器に異常が発生しているかを特定することができる。
【0165】
尚、本発明は上記したいくつかの実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。各実施例の構成について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0166】
100…空調システム、102…複数機器のセンサ信号、103…センサ信号入力部、200…監視計算機、210…全体解析部、220…詳細解析部、211…センサ信号加工、212…「同種機器」の統計213…特徴ベクトル抽出部、214…異常測度算出部、215…しきい値算出部、216…異常検出部、217…異常原因特定部、221…機器毎の測定値、222…異常原因特徴量抽出部、223…異常原因特徴量解析部、224…異常原因特徴量の学習データ格納部、225…異常個所特定部。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11