IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハッチンソンの特許一覧

特許7551602動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用
<>
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図1
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図2
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図2a
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図3
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図4
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図5
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図6
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図7
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図8
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図9
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図10
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図11
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図12
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図13
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図14
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図15
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図16
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図17
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図18
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図19
  • 特許-動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】動的用途のためのゴム組成物、その製造方法、それを含む製品、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/36 20060101AFI20240909BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240909BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240909BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240909BHJP
【FI】
F16F1/36 C
C08L75/04
C08L21/00
C08K3/013
F16F1/36 B
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2021519138
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 FR2019052377
(87)【国際公開番号】W WO2020074821
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】1859354
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591136931
【氏名又は名称】ハッチンソン
【氏名又は名称原語表記】HUTCHINSON
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ル ロシニョール,ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】グオ,レナ
(72)【発明者】
【氏名】ドュバ,マリ
(72)【発明者】
【氏名】ウォワゼル,パトリス
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-254012(JP,A)
【文献】特表2016-529376(JP,A)
【文献】特表2003-506550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/36
C08L 75/04
C08L 21/00
C08K 3/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両または産業用機器のための防振支持体および弾性関節から選択される、動的機能を有する機械的部材に使用可能なゴム組成物であって、
前記ゴム組成物は、少なくとも1つのエラストマーを基盤とするとともに、以下を含むものであり、
-補強充填剤、および、
-前記少なくとも1つのエラストマー中に分散された、ウレタン基を有するポリマー、
前記ゴム組成物は、前記補強充填剤を有する前記少なくとも1つのエラストマーと、前記ウレタン基を有するポリマーの前駆体と、鎖延長剤の、熱機械的混合反応の生成物を含むものであり、
前記ゴム組成物は、以下の条件(i)~(v)の少なくとも1つを満たす、錯体せん断係数Gに対する貯蔵係数の比率であるG’0.5%/G’20%を有し、
前記G’0.5%およびG’20%は、同一の周波数5Hzおよび同一の温度Tで0.02%~50%のせん断ひずみを受けた二重せん断試験片について、動的ひずみ振幅0.5%および20%の各々で標準ISO 4664に従って測定される、ゴム組成物:
(i)T=100℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.15、
(ii)T=65℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.40、
(iii)T=25℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.50、
(iv)T=0℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.60、
(v)T=-30℃のとき、G’0.5%/G’20%≦2.50。
【請求項2】
前記ゴム組成物は、少なくとも条件(i)を満たし、
前記試験片は、8サイクルにわたって、0±4mm、50mm/分の予備的機械調整を受ける、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム組成物は、条件(ii)、(iii)、(iv)および(v)をも満たす、請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム組成物は、補強充填剤としてのカーボンブラック10~40phr(phr:100部のエラストマーあたりの重量部)、および、前記ウレタン基を有するポリマー10~50phrを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム組成物は、以下の条件(i-a)をも満たす、請求項4に記載のゴム組成物:
(i-a)T=100℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.12。
【請求項6】
前記ゴム組成物が、前記カーボンブラック15~30phr、および、前記ウレタン基を有するポリマー15~30phrを含む、請求項4または5に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記ウレタン基を有するポリマーが、1nm~5μmの最大数平均横断寸法を有する小塊の形状にて、前記少なくとも1つのエラストマー中に分散している、請求項1~6のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記ウレタン基を有するポリマーが、50nm~2μmの最大数平均横断寸法を有する小塊の形状にて、前記少なくとも1つのエラストマー中に分散している、請求項7に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記ゴム組成物が、
-標準ASTM D 412に従って一軸張力で測定された、それぞれ100%、300%、および400%の歪みでの割線係数M100、M300、およびM400のうちの少なくとも1つ:
M100≧1.5MPa、
M300≧5.5MPa、および、
M400≧9.5MPa;
および/または
-標準ASTM D 412に従って、少なくとも26MPaの一軸張力で測定された、引っ張り強さR/r
を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記ゴム組成物が、標準ASTM D 2240に従って測定された、少なくとも48のショアA硬度を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つのエラストマーが、シリコーンゴムを除く、ジエンまたは非ジエンエラストマーから選択されるゴムであり、
前記ゴム組成物は、架橋システムを含み、
前記架橋システムは、前記少なくとも1つのエラストマーと、前記ウレタン基を有するポリマーとを共架橋するために、前熱機械的混合反応の生成物と反応することが可能である、請求項1~10のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項12】
前記架橋システムが硫黄を有する、請求項11に記載のゴム組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つのエラストマーが、無極性ジエンエラストマーである、請求項11または12に記載のゴム組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つのエラストマーが、天然ゴム(NR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)およびスチレン-ブタジエン共重合体(SBR)から選択される、請求項13に記載のゴム組成物。
【請求項15】
前記ウレタン基を有するポリマーが、
-前記ポリマー中に20%~40%の質量分率で存在し、前記鎖延長剤および前記前駆体に含まれる第1の前駆体を含む、剛性セグメント、および、
-官能基化された鎖末端を有するジエンポリマーである、前記前駆体に含まれる第2の前駆体を含む、柔軟性セグメント、にセグメント化され、
前記ウレタン基を有するポリマーは、前記第2の前駆体の二重結合を介して前記少なくとも1つのエラストマーと共架橋されて、共有結合を介して前記少なくとも1つのエラストマーと繋がった三次元ネットワークを形成する、請求項1~14のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項16】
前記剛性セグメントは、前記ポリマー中に25%~35%の質量分率で存在し、前記柔軟性セグメントにおいて、前記第2の前駆体は、官能基化されたポリブタジエンである、請求項15に記載のゴム組成物。
【請求項17】
前記第1の前駆体および第2の前駆体が、前記少なくとも1つのエラストマー、前記補強充填剤、および、前記鎖延長剤との前熱機械的混合反応のための2つの別個の反応物を形成し、
前記第1の前駆体及び前記第2の前駆体が、前駆体のプレポリマーを形成しない、請求項15または16に記載のゴム組成物。
【請求項18】
前記鎖延長剤が、700g/mol以下のモル質量を有する、請求項15~17のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項19】
前記ウレタン基を有するポリマーが、ポリウレタン-尿素を除く、イソシアネート化合物から得られるポリウレタンの族に属するものである、請求項15~18のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項20】
-前記第1の前駆体は、2よりも大きな官能性を有するポリイソシアネートであり、
-前記第2の前駆体は、2よりも大きな官能性を有する、ジオール官能基化ジエンポリマーであり、
-前記鎖延長剤は、300g/mol以下のモル質量を有するジオールおよびトリオールから選択されるポリオールである、請求項19に記載のゴム組成物。
【請求項21】
-前記第1の前駆体は、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび4,4’-ジフェニルメチレンジイソシアネートに基づくモノマーまたはプレポリマーから選択され、
-前記第2の前駆体は、1000~3000g/molの数平均分子量、および、2.2以上の官能性を有する非水素化ヒドロキシテレケリックポリブタジエンであり、
-前記鎖延長剤は、シクロヘキサンジメタノール、イソソルビドおよびグリセロールから選択される、請求項20に記載のゴム組成物。
【請求項22】
-前記少なくとも1つのエラストマーは、無極性ジエンエラストマーであり、天然ゴム(NR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)およびスチレン-ブタジエン共重合体(SBR)から選択され、
-前記補強充填剤は、前記ゴム組成物中に15~30phr(phr:100部のエラストマーあたりの重量部)の量で存在するカーボンブラックを含み、
-前記ウレタン基を有するポリマーは、15~30phrの量で前記ゴム組成物中に存在し、および、
-前記ゴム組成物中の前記カーボンブラック、および、前記ウレタン基を有するポリマーの総量は、35~55phrである、請求項19~21のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項23】
前記ゴム組成物が、以下の条件(i-a)を満たす、請求項22に記載のゴム組成物:
(i-a)T=100℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.12。
【請求項24】
前記ウレタン基を有するポリマーが、イソシアネートなしで得られるポリヒドロキシウレタンの族に属するものである、請求項15~18のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項25】
-前記第1の前駆体は、ジアミンおよびトリアミンから選択されるポリアミンであり、
-前記第2の前駆体は、シクロ炭酸塩鎖末端で官能基化されたジエンポリマーであり、
-前記鎖延長剤は、500g/mol以下のモル質量を有する環状炭酸塩である、請求項24に記載のゴム組成物。
【請求項26】
-前記第1の前駆体は、1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、キシリレンジアミン、2,2’-(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)、および、トリス(2-アミノエチル)アミンから選択され、
-前記第2の前駆体は、それぞれ5員または6員である2つの炭酸塩末端環で官能基化されたポリブタジエンであり、
-前記鎖延長剤は、シクロヘキサンビス炭酸塩、レゾルシノールビス炭酸塩、グリセロールトリ炭酸塩、および、フロログルシノールトリ炭酸塩から選択される、請求項25に記載のゴム組成物。
【請求項27】
-前記少なくとも1つのエラストマーは、無極性ジエンエラストマーであり、天然ゴム(NR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、および、スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)から選択され、
-前記補強充填剤は、前記ゴム組成物中に15~30phr(phr:100部のエラストマーあたりの重量部)の量で存在するカーボンブラックを含み、
-前記ウレタン基を有するポリマーは、15~30phrの量で前記ゴム組成物中に存在し、
-前記ゴム組成物中の、前記カーボンブラック、および、前記ウレタン基を有するポリマーの総量は、35~55phrである、請求項24~26のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項28】
前記ゴム組成物は、以下の条件(i-a)~(v-a)の少なくとも1つを満たす、請求項27に記載のゴム組成物:
(i-a)T=100℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.12、
(ii-a)T=65℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.20、
(iii-a)T=25℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.30、
(iv-a)T=0℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.40、
(v-a)T=-30℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.50。
【請求項29】
前記ゴム組成物は、以下の条件(i-b)~(v-b)の少なくとも1つをも満たす、請求項28に記載のゴム組成物:
(i-b)T=100℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.10、
(ii-b)T=65℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.15、
(iii-b)T=25℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.20、
(iv-b)T=0℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.25、
(v-b)T=-30℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.40。
【請求項30】
電動車両または産業用機器のための防振支持体および弾性関節から選択される、動的機能を有する機械的部材であって、
前記機械的部材は、動的応力を受けるように構成された、ゴム組成物からなる少なくとも1つの弾性部材を含み、
前記ゴム組成物は、請求項1~29のいずれか一項に記載のゴム組成物である、機械的部材。
【請求項31】
以下の工程を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のゴム組成物の製造方法:
a)前記少なくとも1つのエラストマー中に、前記補強充填剤、前記前駆体、および前記鎖延長剤の前記熱機械的混合反応を介して、前記ウレタン基を有するポリマーを分散させたものを含む非架橋混合物を形成する工程、
b)前記のように得られた架橋性混合物の機械的加工を伴う架橋システムを前記混合物へ添加する工程、次いで、
c)130℃~180℃の間の温度でのプレス中での加硫によって前記架橋性混合物を架橋する工程であって、前記ウレタン基を有するポリマーは、前記少なくとも1つのエラストマーと化学的に共架橋されて、当該エラストマーと共有結合を形成する、工程。
【請求項32】
工程a)において、前記反応は、130℃~180℃の最大温度にて内部混合機中で実施され、
工程b)において、前記架橋性混合物の前記機械的加工は、オープンミル中で80℃未満の最高温度で行われ、および、
工程c)において、前記架橋性混合物の前記架橋は、圧縮成形によって行われる、請求項31に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項33】
前記少なくとも1つのエラストマー、前記ウレタン基を有するポリマーが、前記鎖延長剤と前記第1の前駆体とを有する剛性セグメント、および、前記第2の前駆体を有する柔軟性セグメントにセグメント化された後で、前記前駆体が、工程a)で別々に添加される第1の前駆体および第2の前駆体を形成する、請求項31または32に記載の製造方法。
【請求項34】
工程a)で形成される、前記ウレタン基を有するポリマー中の、前記第1の前駆体および前記鎖延長剤の全質量分率が、20%~40%である、請求項33に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、動的機能を有する機械的部材に使用可能なゴム組成物、この組成物の製造方法、このような部材、およびウレタン基を有するポリマーの使用に関する。本発明は、非限定的な方法で、特に、電動車両または産業用機器のための防振支持体および弾性関節から選択される特に機械的部材に適用される。
【0002】
公知の方法で、ポリウレタン(PU)は、イソシアネート(NCO)とアルコール(OH)官能基との反応によって得られ、ウレタン官能基(NHCOO)を生成する。
【0003】
典型的には、ポリイソシアネートから成る第1の前駆体と、長鎖ポリオールから成る第2の前駆体と、ポリオール型の鎖延長剤との反応によって製造されるポリウレタンのうち、セグメント化されたポリウレタンが知られている。セグメント化されたポリウレタンは、第2の前駆体によって形成された柔軟性セグメントと、第1の前駆体および鎖延長剤によって形成された剛性セグメントとを含み、これらの柔軟性セグメントと剛性セグメントとの間には、相互に混和しない相分離がある。
【0004】
WO-A1-2015/032681は、熱可塑性ポリウレタンと、特に印刷ローラーのためのゴムとの混合物に関するものであり、その実施例では、ニトリルゴム(NBR)を、2つのポリイソシアネートとマクログリコール前駆体とを一緒に組み込んだあらかじめ製造された単一のプレポリマー、および、ジアミン型の鎖延長剤と反応させることによる、ニトリルゴムと混合したポリウレタン-尿素のin situ製造を専ら開示している。
【0005】
前記文献において合成されたポリウレタン-尿素の主な欠点は、前駆体のプレポリマーの使用にある。前駆体のプレポリマーは、ポリウレタン-尿素のin situ合成を、極性エラストマー(例えばNBR)の使用に制限する。そして、前記NBR中のポリウレタン-尿素から得られる分散物は、最少量の補強充填剤を組みこまない、試験されるNBR/ポリウレタン-尿素混合物にとって十分でない機械的特性、および、特に動的特性を生じさせるという事実によってポリウレタン-尿素のin situ合成が制限される。
【0006】
非イソシアネートポリウレタン(NIPU)は、さらに知られている。非イソシアネートポリウレタン(NIPU)は近年、イソシアネートの毒性と安定性との問題を克服するため、および、従って、その使用に関する厳しい規制を未然に防ぐために開発されている。これらのNIPUは、一般的に、アミン誘導体を環状カルボキシ塩と反応させ、以下の反応式に従ってポリヒドロキシウレタン(PHU)を製造することによって製造される:
【0007】
【化1】
【0008】
US 9 416 227 B2には、例えば、ポリヒドロキシウレタンから非イソシアネートの微粒子を製造することが開示されている。
【0009】
従来、ゴム組成物中のエラストマーの補強は、前記組成物の機械的特性の向上のために、一方ではエラストマーと充填剤との相互作用、もう一方では補強材同士の相互作用、および流体力学的効果を用いて、充填剤(例えばカーボンブラックおよび/またはシリカ)を添加することにより行われている。
【0010】
しかしながら、これらの充填剤-エラストマーおよび充填剤-充填剤の相互作用は、通常ペイン効果(Payne effect)と呼ばれる望ましくない現象を引き起こす。前記現象は、特に動適応力を受ける架橋ゴム組成物の低温での非線形性(すなわち、振幅剛化)および剛化によって反映される。この剛化は、使用される補強充填剤との上述した相互作用のために、組成物について不十分であることが証明され得る動的特性を伴い、これらの動的特性は、通常、2つの動的ひずみ振幅において、組成物の錯体弾性せん断弾性係数Gに対する貯蔵係数G’の比率を測定することによって評価され得る。注意すべき事項として、錯体係数Gは、式G=G’+iG’’によって定義される:
G’:貯蔵係数または弾性率として知られるGの実部であって、G’は、組成物の剛性または粘弾性挙動(すなわち、貯蔵され、完全に回復されたエネルギー)を特徴づける;および
G’’:損失弾性率として知られるGの虚部であって、G’’は、組成物の粘性挙動(すなわち、熱の形態で分散されるエネルギーであって、比率G’’/G’はtanδ損失係数を定義することを指摘しておく)を特徴づける。
【0011】
この比率は、典型的には、高い動的振幅で測定されたG’に対して、低い動的振幅での動的機械分析(DMA)によって測定されたG’に対応し、2つの弾性率G’は、同じ周波数および同じ温度(例えば、G’0.5%/G’20%)で測定される。公知の方法では、G’0.5%/G’20%は、典型的には、ポリイソプレン(IR)に基づき、動的用途に使用できるように、40phr(phr:100部のエラストマーあたりの重量部)のN330等級のカーボンブラックで強化したゴム組成物について、1.80~2.00である。実際、強化材料では、粘弾性挙動が、小さな動的ひずみ振幅から始まり、ひずみの有意な増加に伴ってG’が実質的に減少することが知られている。
【0012】
近年の研究の過程で、本出願人は、組成物の静的性質(特に割線弾性率および剛性に関して)を損なうことなく、20%の最大ひずみでの貯蔵弾性率G’が、0.5%の実質的にゼロのひずみでの貯蔵弾性率G’よりもかろうじて低減されるように、1.00にできるだけ近くなるように、上述した貯蔵弾性率G’0.5%/G’20%の比率を最小にすることによって、架橋ゴム組成物におけるこのペイン効果を集中的に最小にすることを追求した。結果として、これらの組成物を動的用途において特に有利にすることが可能である。
【0013】
したがって、本発明の一目的は、特に、従来技術のゴム組成物の動的特性を改善する一方で、同時に、従来技術のゴム組成物の静的特性を保つことによって、上述した欠点を特に克服する新規ゴム組成物を提案することである。
【0014】
驚くべきことに、本目的は、エラストマーを、補強充填剤、ウレタン基を有するポリマーの前駆体、および鎖延長剤と、熱機械的混合によって反応させる場合、次いで、本反応の生成物を、以下に詳述する特定の条件下で、その後架橋させる場合に、同一のエラストマーに基づく一方でウレタン基を有するポリマーを含まず、代わりに組成物中の前記ポリマーの量だけ増加した量と同一の補強充填剤を有する架橋ゴム混合物との比較において、得られた組成物では、最小化したペイン効果および保持された静的性質を有するエラストマーマトリクス中でin situで形成されることによってセグメント化された、ウレタン基を有する本ポリマーのエラストマー中で微細かつ均一な分散物を得ることが可能となるということを、本出願人が、ちょうど本質的に発見することによって達成される。
【0015】
言い換えれば、本発明によるゴム組成物は、少なくとも1つのエラストマーに基づき、前記少なくとも1つのエラストマー中に分散したウレタン基を有するポリマーと、補強充填剤とを有し、前記組成物は、前記少なくとも1つのエラストマーと前記補強充填剤とのin situでの熱機械的混合反応の生成物、前記ウレタン基を有するポリマーの前駆体、および鎖延長剤を含む。
【0016】
本発明によれば、電動車両または産業用機器のための防振支持体および弾性関節から特に選択される、動的機能を有する機械的部材に使用可能な組成物であって、前記組成物は、以下の条件(i)~(V)の少なくとも1つを満たす、錯体せん断係数Gに対する貯蔵係数の比率であるG’0.5%/G’20%を有し、G’0.5%およびG’20%は、同一の周波数5Hzおよび同一の温度Tで0.02%~50%のせん断ひずみを受けた二重せん断試験片について、動的ひずみ振幅0.5%および20%の各々で標準ISO 4664に従って測定される:
(i)T=100℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.15、
(ii)T=65℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.40、
(iii)T=25℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.50、
(iv)T=0℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.60、
(v)T=-30℃のとき、G’0.5%/G’20%≦2.50。
【0017】
本明細書において、用語「補強充填剤」は、組成物のエラストマーマトリクス(すなわち、前記少なくとも1つのエラストマー)中で非常に微細に分割され、特に組成物に割線係数、十分に高い引っ張り強さ、および十分に高い剛性を与えるように補強することができる任意の分散充填剤であり、この充填剤は、検討中の用途に対して十分に補強する、少なくとも1つの有機充填剤(例えばカーボンブラック)、および/または、検討中の用途に対して十分に補強する少なくとも1つの無機充填剤(例えばシリカ)を含み得る。
【0018】
本明細書において用語「in situでの熱機械的混合反応の生成物」は、通常の方法では、少なくとも1つの熱工程を含む上述の成分の機械加工によって生成される混合物であって、その熱工程の間に、前記少なくとも1つのエラストマーが前記補強充填剤、前記前駆体、および前記鎖延長剤と混合されるだけでなく、好ましくは、本発明による組成物を得る目的で、本熱機械的混合の後に得られる非架橋混合物に添加される架橋システム(例えば、硫黄および促進剤を含む加硫)を除いて、例えば活性剤錯体(例えば、酸化亜鉛およびステアリン酸)および可塑剤(例えば、油)といったゴム組成物中で従来使用される他の添加剤と混合され、以下で説明するような公知の方法で最終的に架橋される。
【0019】
前記のように得られた本発明による架橋ゴム組成物は、以下に説明するように、前記ウレタン基を有するポリマーの硬性セグメントを組み込んだ架橋エラストマーネットワークと、エラストマー中に実に微細に分散され、かつ全体的に均一である、本ポリマーの柔軟性セグメントを含む有機強化ネットワークと、を含む絡み合ったネットワークを形成することに留意されたい。本出願人は、このように分散された本ポリマーによってそれぞれ形成された柔軟性および剛性セグメントのこの特定の絡み合いが、上述の特に有利な条件(i)~(v)を得ることを可能にし、その少なくとも1つが、上記比率G’0.5%/G’20%について満たされることを発見した。
【0020】
これらの条件(i)~(v)は、前記ポリマーを含まず、同じ補強充填剤を、組成物中の前記ポリマーの量だけ増加した量(全ての他の成分は不変のままである)含む従来の架橋組成物について観察されるペイン効果と比較して、-30℃~100℃に及ぶ広い温度範囲にわたるペイン効果の最小化(すなわち、有意な減少)の証拠であることにも留意されたい。
【0021】
また、本発明によるゴム組成物において、ウレタン基を含む前記ポリマーは、実質的に保たれる、静的割線弾性率、引っ張り強さおよび硬度特性を示す以下の実施例において実証されるように、本ポリマーが部分的に置き換わり得る、一定量の前記補強充填剤への補充物として、ゴム組成物に補強機能も及ぼすことに留意されたい。
【0022】
有利には、本発明の組成物は、少なくとも条件(i)、好ましくは(ii)、(iii)、(iv)および(v)をも満たすことができ、前記試験片は、8サイクルにわたって、0±4mm、50mm/分の予備的な機械的調整を受けることができる。
【0023】
本発明の好ましい実施例によれば、組成物は、補強充填剤としてのカーボンブラック10~40phr(phr:100部のエラストマーあたりの重量部)、および、前記ウレタン基を有するポリマー10~50phrを含み、前記組成物は、好ましくは以下の条件(i-a)を満たす:
(i-a)T=100℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.12。
【0024】
より好ましくは、本発明の組成物が、前記カーボンブラック(例えばN330等級)15~30phr、および前記ウレタン基を有するポリマー15~30phrを含む。
【0025】
本発明の別の実施形態によれば、前記ウレタン基を有するポリマーは、1nm~5μm、好ましくは50nm~2μm、さらに好ましくは100nm~1μmの、より大きな数平均横断寸法(すなわち、全体的に球形の小塊である場合の直径)を有する小塊の形態にて、前記少なくとも1つのエラストマー中に分散させることができる。
【0026】
したがって、組成物の連続エラストマーマトリクス中の前記ポリマーの本分散は、有利には微細であり、全体的に均一であることに留意されたい。本分散は特に、前記比率G’0.5%/G’20%の減少によるそれらの最小化されたペイン効果を含む、本発明の組成物の上述の機械的特性を得ることに著しく寄与する。
【0027】
一般的に、本発明の組成物は、有利には、
-標準ASTM D 412に従って一軸張力で測定された、それぞれ100%、300%、および400%の歪みでの割線係数M100、M300、およびM400のうちの少なくとも1つ:
M100≧1.5MPa、
M300≧5.5MPa、および、
M400≧9.5MPa;
および/または
-標準ASTM D 412に従って、少なくとも26MPaの一軸張力で測定された、引っ張り強さR/rもまた有し得る。
【0028】
組成物のこれらの静的特性は、有利には、前記ポリマーを含まず、例えばN330等級のカーボンブラックのような同一の補強充填剤を含むが、組成物中の前記ポリマーの量だけ増加した量(他の全ての成分は不変のままである)含む、従来の架橋された組成物によって提示されるものに近いことに留意されたい。
【0029】
有利には、本発明による組成物は、標準ASTM D 2240に従って測定された、少なくとも48、好ましくは50~55のショアA硬度を有し得る。
【0030】
本発明による組成物については一般的に、前記少なくとも1つのエラストマーが、有利には、シリコーンゴムを除く、ジエンまたは非ジエンエラストマーから選択されるゴムであり、前記組成物は、例えば硫黄を有する架橋システムを含み、前記架橋システムは、前記少なくとも1つのエラストマーと、前記ウレタン基を有するポリマーとを共架橋するために、前記in situでの熱機械的混合反応の生成物と反応することが可能である。
【0031】
好ましくは、前記少なくとも1つのエラストマーが、無極性ジエンエラストマーであって、さらに好ましくは、天然ゴム(NR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)およびスチレン-ブタジエン共重合体(SBR)から選択される、
WO-A1-2015/032681で試験されたニトリルゴム(NBR)のような極性ジエンエラストマーとは対照的に、特に無極性ジエンエラストマーの使用によって、本無極性エラストマー中の前記ウレタン基を有するポリマーの改善された分散(細かさおよび均一性の両方に関して)を得ることが可能になり、その結果、前記比率G’0.5%/G’20%およびこの組成物について観察されたペイン効果を最小限にすることによって組成物の動的特性を改善することが可能になることに留意されたい。
【0032】
また、一般的に、本発明による組成物について、前記ウレタン基を有するポリマーは、有利には、
-前記ポリマー中に20%~40%、好ましくは25%~35%の質量分率で存在することができ、前記鎖延長剤および第1の前記前駆体を含む、剛性セグメント、および、
-官能基化された鎖末端を有するジエンポリマー、好ましくは官能基化されたポリブタジエンである、第2の前記前駆体を含む、柔軟性セグメント、にセグメント化され、
前記ウレタン基を有するポリマーは、前記第2の前駆体の二重結合を介して前記少なくとも1つのエラストマーと共架橋されて、共有結合を介して前記少なくとも1つのエラストマーと繋がった三次元ネットワークを形成する。
【0033】
前記ポリマー中の前記剛性セグメントの本特定の質量分率は、本発明の組成物の上述の静的特性を損なうことなく、前記比率G’0.5%/G’20%を最小にすることに寄与するという事実のために、優先的であることに留意されたい。
【0034】
ウレタン基を有するポリマーと前記少なくとも1つのエラストマーとの本発明による化学的共架橋(例えば、硫黄との架橋のための共加硫)は、前記第2の前駆体中に存在する二重結合によって可能になり、ウレタン基を有するポリマーがファンデルワールス型の弱いエネルギー結合を介してのみエラストマーに結合される組成物と比較して、共有結合によって組成物をより良好に強化し、その中のペイン効果を低減することを可能にすることにも留意されたい。
【0035】
本発明の好ましい特徴によれば、前記第1の前駆体および第2の前駆体は、前記少なくとも1つのエラストマー、前記補強充填剤、および、前記鎖延長剤との前記in situでの熱機械的混合反応のための2つの別個の反応物を形成し、前記前駆体は、前駆体のプレポリマーを形成しない。
【0036】
言い換えれば、WO-A1-2015/032681の実施例における、NBR極性エラストマー中のポリウレタン-尿素の分散を、本分散の品質を犠牲にすることによって制限する前駆体のプレポリマーの使用に反して、本発明による2つの前駆体は、好ましくは熱機械的混合を行うためにエラストマーに別々に添加される。
【0037】
前記少なくとも1つのエラストマーと、別々に添加された2つの前駆体との別々の本反応は、エラストマーマトリクス中のウレタン基を有する前記ポリマーから得られる分散液の品質を、微細性および均一性の両方の観点で改善することに寄与することに留意されたい。
【0038】
さらに好ましくは、前記鎖延長剤が、700g/mol以下、好ましくは600g/mol未満のモル質量を有する。
【0039】
前記鎖延長剤は、有利には短鎖を特徴とすることにも留意されたい。
【0040】
本発明の第1の実施形態によれば、前記ウレタン基を有するポリマーは、WO-A1-2015/032681の実施例で合成されたようなポリウレタン-尿素を除く、イソシアネート化合物から得られるポリウレタン(PU)の族に属するものである。
【0041】
本発明の本第1の実施形態によれば:
-前記第1の前駆体は、2よりも大きな官能性を有するポリイソシアネートであり得、好ましくは、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび4,4’-ジフェニルメチレンジイソシアネートに基づくモノマーまたはプレポリマーから選択されるものであり得、
-前記第2の前駆体は、2よりも大きな官能性を有する、ジオール官能基化ジエンポリマーであり得、好ましくは、1000~3000g/molの数平均分子量、および、2.2以上の官能性を有する非水素化ヒドロキシテレケリックポリブタジエンであり得、
-前記鎖延長剤は、300g/mol以下のモル質量を有するジオールおよびトリオール(短鎖ポリオール)から選択されるポリオールであり得、好ましくはシクロヘキサンジメタノール、イソソルビドおよびグリセロールから選択され得る。
【0042】
本発明の第1の実施形態の好ましい実施例によれば:
-前記少なくとも1つのエラストマーは、有利には、無極性ジエンエラストマー、好ましくは天然ゴム(NR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)およびスチレン-ブタジエン共重合体(SBR)から選択されるものであり、
-前記補強充填剤は、前記組成物中に15~30phr(phr:100部のエラストマーあたりの重量部)の量で存在するカーボンブラック(例えばN330等級)を含み、
-前記ウレタン基を有するポリマーは、有利には、15~30phrの量で前記組成物中に存在し、および、
-前記組成物中の前記カーボンブラック、および、前記ウレタン基を有するポリマーの総量は、有利には、35~55phrである。
【0043】
本発明の第1の実施形態の好ましい実施例によれば、前記組成物は、以下の条件(i-a)を満たす:
(i-a)T=100℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.12。
【0044】
本発明の第2の実施形態によれば、前記ウレタン基を有するポリマーは、イソシアネートなしで得られるポリヒドロキシウレタン(NIPU)の族に属する。
【0045】
本発明の本第2の実施形態によれば:
-前記第1の前駆体は、ジアミンおよびトリアミンから選択されるポリアミンであり得、好ましくは、1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、キシリレンジアミン、2,2’-(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)、および、トリス(2-アミノエチル)アミンから選択されるものであり得、
-前記第2の前駆体は、シクロ炭酸塩鎖末端で官能基化されたジエンポリマーであり、好ましくはそれぞれ5員または6員である2つの炭酸塩末端環で官能化されたポリブタジエンであり得、
-前記鎖延長剤は、500g/mol以下のモル質量を有する(すなわち、短鎖である)環状炭酸塩であり、好ましくはシクロヘキサンビス炭酸塩、レゾルシノールビス炭酸塩、グリセロールトリ炭酸塩、および、フロログルシノールトリ炭酸塩から選択され得るものである。
【0046】
本発明の本第2の実施形態の好ましい実施例によれば:
-前記少なくとも1つのエラストマーは、有利には、無極性ジエンエラストマーであり、好ましくは天然ゴム(NR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、および、スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)から選択されるものであり、
-前記補強充填剤は、前記ゴム組成物中に15~30phr(phr:100部のエラストマーあたりの重量部)の量で存在するカーボンブラック(例えばN330等級)を含み、
-前記ウレタン基を有するポリマーは、15~30phrの量で前記ゴム組成物中に存在し、
-前記ゴム組成物中の前記カーボンブラック、および、前記ウレタン基を有するポリマーの総量は、35~55phrである。
【0047】
本発明の第2の実施形態の本優先的な例によれば、ゴム組成物は、有利には、以下の(i-a)~(v-a)の少なくとも1つ、好ましくは以下の(i-a)~(v-a)の全てを満たし得る:
(i-a)T=100℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.12、
(ii-a)T=65℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.20、
(iii-a)T=25℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.30、
(iv-a)T=0℃のとき、 G’0.5%/G’20%≦1.40、
(v-a)T=-30℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.50。
【0048】
第2の実施形態の本優先的な例によれば、ゴム組成物は、より有利には、以下の条件(i-b)から(v-b)の少なくとも1つ、および好ましくは以下の条件(i-b)から(v-b)の全てをも満たす:
(i-b)T=100℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.10、
(ii-b)T=65℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.15、
(iii-b)T=25℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.20、
(iv-b)T=0℃のとき、 G’0.5%/G’20%≦1.25、
(v-b)T=-30℃のとき、G’0.5%/G’20%≦1.40。
【0049】
本発明による動的機能を有する機械的部材は、電動車両または産業用機器のための防振支持体および特に弾性関節から選択され、前記部材は、動的応力を受けるように構成された、上記で定義されたゴム組成物からなる少なくとも1つの弾性部材を含む。
【0050】
上記で定義したゴム組成物を製造するための本発明による製造方法は、以下の工程を含む:
a)前記少なくとも1つのエラストマー中に、前記補強充填剤、前記前駆体、および前記鎖延長剤の前記熱機械的混合反応を介して、前記ウレタン基を有するポリマーを分散させたものを含む非架橋混合物を形成する工程であって、前記反応は、好ましくは、130℃~180℃の最大温度にて内部混合機中で実施される工程、
b)前記のように得られた架橋性混合物の機械的加工を伴う架橋システムを前記混合物へ添加する工程であって、好ましくはオープンミル中で80℃未満の最高温度で行われる工程、次いで、
c)130℃~180℃の間の温度でのプレス中での加硫によって前記架橋性混合物を架橋する工程であって、好ましくは圧縮成形によって行われ、前記ウレタン基を有するポリマーは、前記少なくとも1つのエラストマーと化学的に共架橋されて、当該エラストマーと共有結合を形成する、工程。
【0051】
この化学的共架橋は、得られる組成物を満足に強化することを可能にし、同時に、組成物のペイン効果を最小限にすること、およびこの共架橋は、前記第2の前駆体によって担持される二重結合によって、および、第1および第2の前駆体のそれぞれについて2を超える官能性の使用によって可能にされることに留意されたい。
【0052】
工程a)の熱機械的混合は少なくとも1つの熱工程を含むことができ、その最低温度に達し、最高温度が130℃から180℃の間、好ましくは140℃から170℃の間であることができることにも留意されたい。適切な混合時間は、当業者によって採用される操作条件、特に選択される温度、ならびに熱機械的作業に供される成分の性質および体積の機能に比例して変化する。
【0053】
好ましくは、前記少なくとも1つのエラストマー、前記ウレタン基を有するポリマーが、前記鎖延長剤と前記第1の前駆体とを有する剛性セグメント、および、前記第2の前駆体を有する柔軟性セグメントとにセグメント化された後で、前記前駆体が、工程a)で別々に添加される第1の前駆体および第2の前駆体を、形成する。
【0054】
前記少なくとも1つのエラストマー(好ましくは無極性ジエンエラストマー)の内部ミキサーへの最初の導入は、本エラストマーを十分に可塑化することを可能にし、エラストマーマトリクスに続いて添加されるその他の成分の取り込みを容易にすることを可能にすることに留意されたい。
【0055】
さらに好ましくは、工程a)で形成される、前記ウレタン基を有するポリマー中の、前記第1の前駆体および前記鎖延長剤の全質量分率が、20%~40%であり、好ましくは25%~35%である。
【0056】
本発明の別の実施形態によれば、
前記ウレタン基を有するポリマーを有さず、前記組成物中の前記補強充填剤および、前記ウレタン基を有するポリマーの全phrと等量のphrの前記補強充填剤を有する前記少なくとも1つのエラストマーに基づくゴム混合物との比較において、-30℃~100℃の全ての温度Tで前記組成物のペイン効果を軽減するために、前記ペイン効果は、前記組成物の錯体せん断係数Gに対する貯蔵係数G’の前記比率G’0.5%/G’20%によって定量され、
少なくとも1つのエラストマーと、補強充填材と、前記ポリマーの前駆体と、鎖延長剤とのin situでの熱機械的混合反応を介して、少なくとも1つのエラストマーに基づいている、ゴム組成物中に分散した、ウレタン基を有するポリマーが使用される。
【0057】
本発明の本使用によれば、
前記ウレタン基を有するポリマーを有さず、前記ポリマーおよび前記カーボンブラックを有する前記組成物の全phrと等量のphrの前記カーボンブラックを有する前記ゴム組成物との比較において、
前記比率G’0.5%/G’20%を40%超に低減し、および、追加的に、前記組成物のショアA硬度を15%以内にもまた維持するために、前記ウレタン基を有するポリマー10~50phr、および、補強充填剤としてのカーボンブラック10~40phr(phr:エラストマー100部あたりの重量部)を有する前記ゴム組成物が、有利には使用され得る。
【0058】
本発明の他の特徴、利点、および詳細は、添付の図面に関連して非限定的な例示として与えられる、本発明のいくつかの実施例の以下の説明を読むことによって明らかになるであろう:
〔図面の簡単な説明〕
〔本発明の一実施形態(PU)について〕
図1は、非強化ゴム組成物と、40phrのカーボンブラックによって強化された既知混合物と、鎖延長剤を含まず40phrのPUを有する強化されていない(すなわち、剛性セグメント(以下ではRSと示す)を含まない)、本発明に一致しないゴム組成物と、RSを含まず20phrのPUおよび20phrのカーボンブラックを有する、本発明に一致しないゴム組成物との、100℃での割線弾性係数M100、M300およびM400、ショアA硬度および比率G’0.5%/G’20%を示すグラフであって、
図2は、40phrのカーボンブラックによって強化した前記既知混合物、20phrのカーボンブラックによって強化された既知の別の混合物、本発明によらない前記化合物、および、RSの質量の30%を有する20phrのPUおよび20phrのカーボンブラックを有する本発明による組成物I1について、グリセロール鎖延長剤をM100、M300、およびM400に添加する影響、引っ張り強さR/r、ショアA硬度、および100℃でのG’0.5%/G’20%を図示したグラフであって、
図2aは、40phrのカーボンブラックを有する既知混合物、20phrのカーボンブラックと、本発明による第1の前駆体に由来するが本発明によらない第2の前駆体に由来する20phrのPUと、を含む、本発明によらない2つの混合物、および、20phrのカーボンブラックと、前記第1の前駆体に由来するが、本発明の第2の前駆体に由来する20phrのPUとを含む本発明による組成物I1’に関して、第2の前駆体の官能性および不飽和度がM100、M300、およびM400に及ぼす影響、およびR/rを示すグラフであって、
図3は、40phrのカーボンブラックにより強化された既知混合物、20phrのカーボンブラックにより強化された別の既知混合物、および、RSの質量で30%を有し、それぞれCDM、イソソルビド、およびグリセロール鎖延長剤(図示式参照)を有する20phrの3つのPUおよび20phrのカーボンブラックを有する本発明I2、I3、およびI1による3組成物に関して、組成物I1と同一のポリイソシアネート(Suprasec 2015)およびポリオール(polyBd R20 LM)前駆体について、様々な鎖延長剤のM100、M300、およびM400に対する影響、引っ張り強さR/r、ショアA硬度、および100℃でのG’0.5%/G’20%を示すグラフであって、
図4は、40phrのカーボンブラックにより強化された既知混合物、20phrのカーボンブラックにより強化された別の既知混合物、ポリイソシアネートSuprasec 2015および、20phrのカーボンブラックと、3つの他のPUを有するが、それぞれIPDI、HDI、および4,4’-MDIポリイソシアネート(図示式参照)と共に得られる発明I4、I5、およびI6による3つの別の組成物について、同一のCHDM鎖延長剤およびポリオール前駆体(polyBd R20 LM)に関して、様々なポリイソシアネート前駆体のM100、M300、およびM400に対する影響、R/r、ショアA硬度、および100℃でのG’0.5%/G’20%を示すグラフであって、
図5は、40phrのカーボンブラックにより強化された既知混合物と、組成物I1、I2、I3、I4、I5、およびI6と、に関して、-30℃~100℃の範囲の様々な温度で得られる比率G’0.5%/G’20%を示すグラフであって、
図6、7、8、9、および10は、組成物I2、I3、I1、I4,およびI5に関して、「タッピング」方式で得られる原子間力顕微鏡(AFM)図であり、それぞれの組成物に関して、左側の図は地形図であって、右側の図は位相画像であって、
〔本発明の第二の実施形態(NIPU)について〕
図11は、40phrのカーボンブラックによって強化された既知混合物、20phrのカーボンブラックによって強化された他の既知混合物、および、それぞれシクロヘキサンビスCC、レゾルシノールビスCC、グリセロールトリCC、およびフロログルシノールトリCC延長剤(図示式参照)と共に得られる、20phrの5つのNIPUおよび20phrのカーボンブラックを有する組成物I7、I8、I9、およびI10による4つの組成物について、同一の第1のポリアミン前駆体(1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、CHMAと省略される)、および同一の第2のポリシクロカーボネート前駆体(シクロカーボネート末端ポリブタジエン)に関して、様々な環状カーボネート(以下CCと省略される)鎖延長剤のM100、M300、およびM400に対する影響、R/r、ショアA、および100℃でのG’0.5%/G’20%を示すグラフであって、
図12は、40phrのカーボンブラックで強化された既知混合物、20phrのカーボンブラックで強化された既知混合物、CHMA延長剤を有する組成物I10、および、それぞれポリアミン、キシリレンジアミン、EDEAおよびTAEA(図示式参照)と共に得られる、20phrの3つのNIPU、20phrのカーボンブラックを有する本発明I11、I12、およびI13による3つの別の組成物について、同一のフロログルシノールトリCC鎖延長剤および同一のポリシクロカーボネート第2の前駆体(シクロカーボネート末端ポリブタジエン)に関して、様々なポリアミン前駆体の、M100、M300、およびM400に対する影響、R/r、ショアA、および100℃でのG’0.5%/G’20%を示すグラフであって、
図13は、40phrのカーボンブラックおよび、組成物I7、I8、I9、I10、I11、I12、およびI13を有する既知混合物について、-30℃~100℃の範囲の様々な温度で得られるG’0.5%/G’20%を示すグラフであって、および、
図14、15、16、17、18、19、および20は、「タッピング」方式で得られる原子間力顕微鏡(AFM)図であって、それぞれ、組成物I7、I8、I9、I10、I11、I12、およびI13に関する図であって、それぞれの組成物に関して、左側の図は地形図であり、右側の図は位相図である。
【0059】
混合物およびこのように示された組成物の全てのこれらの実施例において、使用したエラストマーマトリクスは、IR Nipol 2200として知られる、同一の合成ポリイソプレンであり、補強充填剤としてN330カーボンブラックが使用され、以下の表(phr:IR100部あたりの重量部で表される)で成分が同定されている。
【0060】
図1から図10で示されている本発明の第1の実施形態では、PUは、本発明による、組成物I1、I2、およびI3に関する下記の第1および第2の前駆体を伴ってin situで得られた:
【0061】
【化2】
【0062】
本発明による組成物I4、I5、およびI6に関するPUは、同一の第2の前駆体PolyBd R20 LMを伴って得られたが、図4に示される式を有する別の第1の前駆体IPDI、HDIおよび4,4’-MDIを伴って得られた。
【0063】
図11から20に示される本発明の第2の実施形態では、NIPUは、本発明による組成物I7、I8、I9、およびI10に関する以下の第1および第2の前駆体を伴ってin situで得られた。
【0064】
-1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)(以下の表中のシクロヘキサミン、又はCHMAと省略する)及び
-シクロカーボネート末端ポリブタジエン(PolyBd-CCと省略する)。
【0065】
組成物I11、I12、およびI13に関するNIPUは、同一の第2の前駆体を伴うが、別の第1の前駆体である、図12に示される式を有するキシリレンジアミン、EDEA、およびTAEAを伴って得られた。
【0066】
本発明による組成物I1からI13の全てを得るために用いる工程に関して、以下の実験プロトコルに従った。
【0067】
ウレタン基(PUまたはNIPU)を有するポリイソプレン/ポリマー混合物を、熱機械的混合工程に関してHaake内部撹拌器を用いて調製し、次いで、得られた混合物に架橋システムを組み込むためのPolymixオープンロールミル(open roll mill)を使用して調製した。
【0068】
エラストマーは、最初に内部撹拌器に導入されることにより、可塑化、および、そのほかの成分の取り込みが容易になった。公称温度は次いで55℃であり、回転子速度は45rpmであった。1.5分間混合した後、ステアリン酸およびZnO(Silox 3C)から成る活性剤錯体、油(Plaxolene 50)およびN330カーボンブラックを添加した。1分後、第1および第2の前駆体を内部撹拌器に導入した。前記2つの前駆体は液体であることから、機械的混合回転モーメント(torque)は、それらを組み込むとかなり低下し、前記機械的回転モーメントを再び増加させるためには、PUまたはNIPUの精製を待つ必要があった。次いで、材料を、Haake混合器中に存在する回転子速度を上昇させることによってに加熱し、混合物が150℃に到達したときに、混合物を回収した。
【0069】
次いで、架橋システムをPolymixオープンミルに添加し、ローラーの温度を40℃に設定した。次に、得られた架橋可能な組成物の加硫を、150℃の水圧プレス下で圧縮成形することによって行った。
【0070】
割線モジュールM100、M300、およびM400、引っ張り強さR/r(添付のグラフの各々の材料に関して左から右へ連続して示される)およびショアA硬度を含む組成物の静的特性の測定のために、ISO 37に従って一軸引張試験を実施した:23℃でInstron 5565動力計を用いて、10kNの力セル、処理速度500mm/分で行った。使用されたダンベル試験片は、H2型(作業長=25mm、幅=4mm、厚さ=2mm)であった。
【0071】
組成物の動的特性および、特に様々なゴム混合物と組成物とのペイン効果を示す前記比率G’0.5%/G’20%の測定のために、前記工程を、Metravib DMA+1000機械を用いて様々な温度(-30、0、25、65、および100℃)で行った。これを行うために、1/2QC二重せん断試験片を使用した。前記試験片は、周波数5Hzにおいて0.02%から50%の範囲のせん断ひずみを受けた。予備的な機械的調整(0±4mm、50mm/分、8サイクル)を行った。2005年の規格ISO4664(2011年に確認)に従い、これらの貯蔵弾性率G’を測定した。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【0077】
【表6】
【0078】
【表7】
【0079】
【表8】
【0080】
【表9】
【0081】
【表10】
【0082】
【表11】
【0083】
図1において見られるように、in situ合成された40phrのPUを有する非強化混合物は、非強化のPUを有さない混合物と比較すると弾性係数が向上したが、40phrのカーボンブラックを有する混合物の弾性係数基準に到達することはなかった。しかしながら、40phrのPUを有する非強化混合物のペイン効果は、PUの代わりに40phrのカーボンブラックを有する混合物のペイン効果と比較して、非常に減少する。RSを有さずin situ合成されたカーボンブラック+PUの「混合強化」を有する本発明に依らない組成物は、40phrのPUを有する非強化混合物に相当するペイン効果を有すると同時に、前記非強化混合物よりも良い静的特性を有すること(G’0.5%/G’20%が1.05であって、40phrのカーボンブラックを有する混合物と同等の1.94に比べて、非常に少ないことを参照)が可能である。
【0084】
図2において見られるように、鎖延長剤の添加は、組成物の弾性係数および硬度を特に増加させることによって、in situ合成されるPU中で剛性セグメント(RS)が形成されることを介して、静的特性のさらなる向上を可能にする。30%のRS質量含有量では、(40phrのカーボンブラックを搭載した)基準混合物と同一水準の硬度が達成され、それに加え、基準混合物と比較して非常に減少したペイン効果を示すこと(G’0.5%/G’20%が1.08)を、組成物I1が明らかにする。
【0085】
図3において見られるように、選択された鎖延長剤の構造の選択、および、それゆえにエラストマーマトリクス中で得られる剛性要素の性質の選択は、同一のポリイソシアネート(Suprasec 2015)および同一の30%のRS質量に関して、組成物I1、I2、およびI3の機械的特性を改変することを可能にし、同時に、前記基準混合物の硬度と近いまたは同一の硬度を有し、低いペイン効果もまた有する(100℃での比率G’0.5%/G’20%が常に1.12未満または1.10以下でさえあることを参照)。
【0086】
図4において見られるように、ポリイソシアネートの構造(CHDM鎖延長剤と同一)の選択によって、組成物I2、I4、I5、およびI6の機械的特性を改変することもまた可能である。100℃でのペイン効果は、I2、I4、I5、およびI6に関しては低いままであり(比率G’0.5%/G’20%は1.12以下であることを参照)、前記基準混合物のペイン効果と比較して遥かに低い。
【0087】
組成物I1からI6の様々な温度(-30℃、0℃、25℃、65℃、および100℃)で測定された動的特性を示す図5において見られるように、前記基準混合物と比較してペイン効果はこれらの組成物I1からI6の方が極めて減少する。
【0088】
結論として、上述した結果は、本発明の第1の実施形態による組成物の動的特性が、(40phrのカーボンブラックを含み、PUを含まない)前記基準混合物によって表される先行技術と比較して、著しく向上することを示している。この向上によって、有利には、これらの組成物を動的用途および、-30℃から100℃に広がる広い温度範囲において使用可能となる。
【0089】
図6から10が示すことには、in situで前記のように得られたPUは、50nmから2μm、またはさらには、100nmから1μmの範囲の大きな数平均横断寸法を有する小塊の形態で、極めて微細に比較的均一にポリイソプレン中に分散する。この分散は、特に最小化されたペイン効果を含む、本発明の組成物の上述した機械的特性を得ることに対して寄与する。
【0090】
要約すると、このように絡まったPU網目構造を有するエラストマーマトリクスの化学的強化によって、基準混合物と比較して組成物I1からI6の機械的特性(弾性係数や硬度)の維持が可能となり、同時に、前記基準混合物と比較して非線形性(動的剛性)を最小限にする。
【0091】
組成物について得られた機械的特性に対する、第2の前駆体の官能性およびエチレン性不飽和の影響は、同一の特定のマスターバッチ、マスターバッチの式は前記の表1で詳述した非強化対照ゴム混合物の式であるが、そのマスターバッチを用いて、以下を調製することにより、さらに研究した:
-マスターバッチに添加された40phrのN330カーボンブラックにより強化された既知の対照ゴム混合物;
-マスターバッチに加えて、20phrのN330カーボンブラック、および、第1のMDI前駆体「Suprasec 2015」と、第2の前駆体として「PolyBd-OH R45 HTLO」として知られるヒドロキシテレケリックポリブタジエン(Mn=2800g/mol、官能性=2.5)と、鎖延長剤としての上述のCHDMとに由来する、20phrのPUを含む、本発明による組成物I1’;
-マスターバッチに加えて、20phrのN330カーボンブラック、および、第1のMDI前駆体「Suprasec 2015」と、鎖延長剤としてのCHDMと、第2の前駆体としてのヒドロキシテレケリックポリブタジエン「Krasol LBH 2000」(Mn=2100g/molおよび1.9に等しい官能性を有する)と、に由来する20phrのPUを含む、本発明によらないゴム混合物No.1;および
-マスターバッチに加えて、20phrのN330カーボンブラック、および、第1のMDI前駆体「Suprasec 2015」と、鎖延長剤としてのCHDMと、第2の前駆体としての水素化ヒドロキシテレケリックポリブタジエン「Krasol HLBH-P 2000」(Mn=2100g/molおよび1.9に等しい官能性)に由来する20phrのPUを含む、本発明によらないゴム混合物No.2。
【0092】
組成物I1’および、上述した3つの混合物は、上述で示されるように、架橋システムとしての1.6当量の加硫剤(表1参照)、および、組成物I1からI6について前記で説明したように、剛性セグメントRSを30%有するPUと共に調製された。以下の表12は、I1’および、混合物No.1およびNo.2に関するマスターバッチを原料として使用される式を要約する。
【0093】
【表12】
【0094】
図2aにおいて見られるように、第2の前駆体Krasol LBH 2000は、混合物No.1に対して、組成物I1’の張力係数よりも著しく低い張力係数を与え、Kurasol LBH 2000の分子量MnはPolyBd R45 HTLOの分子量よりも低い一方で、混合物No.1の(第1の前駆体とちょうど同様に)第2のポリオール前駆体は、2より大きい官能性を有する。短い柔軟性セグメントを有するにも関わらず、混合物No.1に関して実際はより低い機械的特性が得られた。形成されるPUは直線状である。形成されるPUが直線状であることは、その二重結合を介して、組成物I1’のエラストマーマトリクスによって形成されたPUを化学的に共架橋し、組成物をより良好に強化する3次元的構造を前記PUに与える、という、第2のポリオール前駆体の官能性2.5というプラスの効果を実証している。
【0095】
二重結合を有さない、第2の水素化前駆体Krasol HLBH-P 2000は、混合物No.2に対して、混合物No.1の機械的特性と比較してさらに劣る機械的特性を与えることもまた、図2aにおいて見られる。具体的には、第2の前駆体中に二重結合が存在しないことは、ポリイソプレンを有するPUの共加硫に対抗し(混合物No.2において形成されるPUもまた直線状である)、従って、PUと混合物のエラストマーマトリクスとの間で共有結合が生じないことによって、第2の前駆体の補強が劣ることに繋がる。
【0096】
40phrのN330を有する既知混合物について得られるペイン効果は、組成物I1’に関する混合物No.1およびNo.2に関して(以下の表13参照)、上述で示したように100℃で測定された。
【0097】
【表13】
【0098】
表13において見られるように、ペイン効果は、それぞれ直線状のPUを組み込んだ混合物No.1およびNo.2でより高い。実際、動的応力の間に、混合物No.1およびNo.2の直線状PUの鎖の間の低エネルギー結合を切断することの方が、組成物I1’の共架橋されたPUの三次元的網目構造を切断することよりも簡単である。
【0099】
第2の前駆体に固有の性質(特にその官能性およびその二重結合)は、従って、組成物の目的の機械的特性の生成を決める要因となる。
【0100】
〔本発明の第2の実施形態(NIPU)〕
【0101】
【表14】
【0102】
【表15】
【0103】
【表16】
【0104】
【表17】
【0105】
【表18】
【0106】
【表19】
【0107】
【表20】
【0108】
図11において見られるように、in situ合成されるNIPUの添加によって、20phrのカーボンブラックのみで強化された混合物の弾性係数よりも大きい弾性率が、IR/NIPU混合物の弾性係数によって特に示されるように、エラストマーマトリクスの強化もまた可能となる。
【0109】
さらに、(第1のポリアミン前駆体1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)を有する)鎖延長剤の構造選択によって、(40phrのカーボンブラックを有し、NIPUを有さない)前記基準混合物の硬度と近い硬度を得るために、組成物I7からI10の機械的特性を改変することが可能である。
【0110】
組成物I7からI10のそれぞれの100℃でのペイン効果は、使用される鎖延長剤に関係なく、非常に低い(前記比率が1.05以下であることを参照)。
【0111】
図12において見られるように、使用されるポリアミン(同一のフロログルシノールトリCC鎖延長剤)の選択もまた、組成物I10からI13の機械的特性に影響を及ぼし、前記組成物に可変の(48から52のショアA)硬度を与えることを可能にする。すべての場合において、100℃でのペイン効果は、前記基準混合物と比較して、常に非常に低減される(前記比率が1.09以下であり、または、1.06でさえあることを参照)。
【0112】
様々な温度(-30℃、0℃、25℃、65℃、及び100℃)で測定された組成物I7からI13の動的特性を示す図13において見られるように、ペイン効果は組成物I7からI13では、前記基準混合物と比較して極めて低減している。
【0113】
結論として、上述の結果は、本発明の本第2の実施形態による組成物の動的特性が、(40phrのカーボンブラックを有し、NIPUを有さない)前記基準混合物によって表される先行技術と比較して、著しく向上し、これにより、有利には、前記組成物を動的用途において、-30℃から100℃に広がる幅広い温度範囲で使用可能であることを実証している。
【0114】
図14から図20は、このようにin situで得られるNIPUが、50nmから2μmの間、またさらには100nmから1μmの間の大きな数平均横断寸法を有する小塊の形態でポリイソプレン中に非常に微細に比較的均一に分散していることを示す。本分散は、本発明の組成物の上述した、特に、最小化されたペイン効果を含む機械的特性を得ることに寄与する。
【0115】
要約すると、このように絡み合ったNIPU網目構造を有するエラストマーマトリクスの化学的強化は、このように、前記基準混合物に対する組成物I7からI13の機械的特性(弾性係数および硬度)を維持することを可能にし、同時に、前記基準混合物に対する非線形性(動的特性)を最小限にする。
【図面の簡単な説明】
【0116】
図1】非強化ゴム組成物と、40phrのカーボンブラックによって強化された既知混合物と、鎖延長剤を含まず40phrのPUを有する強化されていない(すなわち、剛性セグメント(以下ではRSと示す)を含まない)、本発明に一致しないゴム組成物と、RSを含まず20phrのPUおよび20phrのカーボンブラックを有する、本発明に一致しないゴム組成物との、100℃での割線弾性係数M100、M300およびM400、ショアA硬度および比率G’0.5%/G’20%を示すグラフである。
図2】40phrのカーボンブラックによって強化した前記既知混合物、20phrのカーボンブラックによって強化された既知の別の混合物、本発明によらない前記化合物、および、RSの質量の30%を有する20phrのPUおよび20phrのカーボンブラックを有する本発明による組成物I1について、グリセロール鎖延長剤をM100、M300、およびM400に添加する影響、引っ張り強さR/r、ショアA硬度、および100℃でのG’0.5%/G’20%を図示したグラフである。
図2a】40phrのカーボンブラックを有する既知混合物、20phrのカーボンブラックと、本発明による第1の前駆体に由来するが本発明によらない第2の前駆体に由来する20phrのPUと、を含む、本発明によらない2つの混合物、および、20phrのカーボンブラックと、前記第1の前駆体に由来するが、本発明の第2の前駆体に由来する20phrのPUとを含む本発明による組成物I1’に関して、第2の前駆体の官能性および不飽和度がM100、M300、およびM400に及ぼす影響、およびR/rを示すグラフである。
図3】40phrのカーボンブラックにより強化された既知混合物、20phrのカーボンブラックにより強化された別の既知混合物、および、RSの質量で30%を有し、それぞれCDM、イソソルビド、およびグリセロール鎖延長剤(図示式参照)を有する20phrの3つのPUおよび20phrのカーボンブラックを有する本発明I2、I3、およびI1による3組成物に関して、組成物I1と同一のポリイソシアネート(Suprasec 2015)およびポリオール(polyBd R20 LM)前駆体について、様々な鎖延長剤のM100、M300、およびM400に対する影響、引っ張り強さR/r、ショアA硬度、および100℃でのG’0.5%/G’20%を示すグラフである。
図4】40phrのカーボンブラックにより強化された既知混合物、20phrのカーボンブラックにより強化された別の既知混合物、ポリイソシアネートSuprasec 2015および、20phrのカーボンブラックと、3つの他のPUを有するが、それぞれIPDI、HDI、および4,4’-MDIポリイソシアネート(図示式参照)と共に得られる発明I4、I5、およびI6による3つの別の組成物について、同一のCHDM鎖延長剤およびポリオール前駆体(polyBd R20 LM)に関して、様々なポリイソシアネート前駆体のM100、M300、およびM400に対する影響、R/r、ショアA硬度、および100℃でのG’0.5%/G’20%を示すグラフである。
図5】40phrのカーボンブラックにより強化された既知混合物と、組成物I1、I2、I3、I4、I5、およびI6と、に関して、-30℃~100℃の範囲の様々な温度で得られる比率G’0.5%/G’20%を示すグラフである。
図6】組成物I2に関して、「タッピング」方式で得られる原子間力顕微鏡(AFM)図であり、左側の図は凹凸像(topographic image)であって、右側の図は位相画像である。
図7】組成物I3に関して、「タッピング」方式で得られる原子間力顕微鏡(AFM)図であり、左側の図は凹凸像であって、右側の図は位相画像である。
図8】組成物I1に関して、「タッピング」方式で得られる原子間力顕微鏡(AFM)図であり、左側の図は凹凸像であって、右側の図は位相画像である。
図9】組成物I4に関して、「タッピング」方式で得られる原子間力顕微鏡(AFM)図であり、左側の図は凹凸像であって、右側の図は位相画像である。
図10】組成物I5に関して、「タッピング」方式で得られる原子間力顕微鏡(AFM)図であり、左側の図は凹凸像であって、右側の図は位相画像である。
図11】40phrのカーボンブラックによって強化された既知混合物、20phrのカーボンブラックによって強化された他の既知混合物、および、それぞれシクロヘキサンビスCC、レゾルシノールビスCC、グリセロールトリCC、およびフロログルシノールトリCC延長剤(図示式参照)と共に得られる、20phrの5つのNIPUおよび20phrのカーボンブラックを有する組成物I7、I8、I9、およびI10による4つの組成物について、同一の第1のポリアミン前駆体(1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、CHMAと省略される)、および同一の第2のポリシクロカーボネート前駆体(シクロカーボネート末端ポリブタジエン)に関して、様々な環状カーボネート(以下CCと省略される)鎖延長剤のM100、M300、およびM400に対する影響、R/r、ショアA、および100℃でのG’0.5%/G’20%を示すグラフである。
図12】40phrのカーボンブラックで強化された既知混合物、20phrのカーボンブラックで強化された既知混合物、CHMA延長剤を有する組成物I10、および、それぞれポリアミン、キシリレンジアミン、EDEAおよびTAEA(図示式参照)と共に得られる、20phrの3つのNIPU、20phrのカーボンブラックを有する本発明I11、I12、およびI13による3つの別の組成物について、同一のフロログルシノールトリCC鎖延長剤および同一のポリシクロカーボネート第2の前駆体(シクロカーボネート末端ポリブタジエン)に関して、様々なポリアミン前駆体の、M100、M300、およびM400に対する影響、R/r、ショアA、および100℃でのG’0.5%/G’20%を示すグラフである。
図13】40phrのカーボンブラックおよび、組成物I7、I8、I9、I10、I11、I12、およびI13を有する既知混合物について、-30℃~100℃の範囲の様々な温度で得られるG’0.5%/G’20%を示すグラフである。
図14】「タッピング」方式で得られる原子間力顕微鏡(AFM)図であって、組成物I7に関する図であって、左側の図は凹凸像であり、右側の図は位相画像である。
図15】「タッピング」方式で得られる原子間力顕微鏡(AFM)図であって、組成物I8に関する図であって、左側の図は凹凸像であり、右側の図は位相画像である。
図16】「タッピング」方式で得られる原子間力顕微鏡(AFM)図であって、組成物I9に関する図であって、左側の図は凹凸像であり、右側の図は位相画像である。
図17】「タッピング」方式で得られる原子間力顕微鏡(AFM)図であって、組成物I10に関する図であって、左側の図は凹凸像であり、右側の図は位相画像である。
図18】「タッピング」方式で得られる原子間力顕微鏡(AFM)図であって、組成物I11に関する図であって、左側の図は凹凸像であり、右側の図は位相画像である。
図19】「タッピング」方式で得られる原子間力顕微鏡(AFM)図であって、組成物I12に関する図であって、左側の図は凹凸像であり、右側の図は位相画像である。
図20】「タッピング」方式で得られる原子間力顕微鏡(AFM)図であって、組成物I13に関する図であって、左側の図は凹凸像であり、右側の図は位相画像である。
図1
図2
図2a
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20