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特許7551622スルホンアミド除草剤プロセス中間生成物の調製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】スルホンアミド除草剤プロセス中間生成物の調製
(51)【国際特許分類】
   C07C 253/30 20060101AFI20240909BHJP
   C07C 255/15 20060101ALI20240909BHJP
   C07D 213/64 20060101ALI20240909BHJP
   C07D 213/61 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
C07C253/30 CSP
C07C255/15
C07D213/64
C07D213/61
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021537943
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 US2019067720
(87)【国際公開番号】W WO2020139734
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】62/785,353
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501035309
【氏名又は名称】コルテバ アグリサイエンス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【弁理士】
【氏名又は名称】吉光 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】オッペンハイマー,ジョシアン
(72)【発明者】
【氏名】オーベル,マティアス エス.
(72)【発明者】
【氏名】オンダリ,マーク イー.
【審査官】長谷川 莉慧霞
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0214825(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108558744(CN,A)
【文献】Michael A. GONZALEZ etal.,Process Development for the Sulfonamide HerbicidePyroxsulam,Organic Process Research & Development,2008年03月01日,Vol. 12, No. 2,pp. 301-303,DOI: 10.1021/op700281w
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY/MARPAT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセトニトリル、塩基、及び式VIの化合物
【化1】
を組み合わせ、式VII
【化2】

(式中、Rは、C~Cアルキルであり、及びXは、Clである)
の化合物を形成するステップを含む方法。
【請求項2】
前記式VIIの化合物を酸、酸とアルコール、酸と水、アルコキシド、脱水ハロゲン化試薬又はそれらの組み合わせの少なくとも1つと組み合わせて、式IV:
【化3】

(式中、Yは、ハロゲン、OH又はORであり、及びRは、C~Cアルキルである)
の化合物を形成するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸を選択する場合、前記酸は、HSO、HCl、HBr又はHI及びそれらの混合物を含む群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸とアルコールの組み合わせを選択する場合、前記アルコールは、C~Cアルコールである、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記アルコキシドを選択する場合、前記アルコキシドは、ナトリウムC~Cアルコキシド又はカリウムC~Cアルコキシドである、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記脱水ハロゲン化試薬を選択する場合、前記脱水ハロゲン化試薬は、SOCl、SOBr、POCl、POBr、PCl、PBr、PCl、PBr、オキサリルクロリド又はそれらの混合物を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸とアルコールの組み合わせを選択する場合、前記アルコールは、メタノールである、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アルコキシドを選択する場合、前記アルコキシドは、ナトリウムメトキシド又はカリウムメトキシドある、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップは、前記酸及び前記アルコールを前記式VIIの化合物と同時に組み合わせて、前記式IVの化合物(式中、Yは、ORであり、及びRは、C~Cアルキルである)を提供するステップを含む、請求項2~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップは、前記酸及び水を前記式VIIの化合物と同時に組み合わせて、前記式IVの化合物(式中、Yは、OHである)を提供するステップを含む、請求項2~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップは、HCl又はHBrである酸及び次に前記アルコキシドを前記式VIIの化合物と逐次組み合わせて、前記式IVの化合物(式中、Yは、ORであり、ここで、Rは、C~Cアルキルである)を提供するステップを含む、請求項2~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップは、前記脱水ハロゲン化試薬及び次に前記アルコキシドを前記式VIIの化合物と逐次組み合わせて、前記式IVの化合物(式中、Yは、ORであり、及びRは、C~Cアルキルである)を提供するステップを含む、請求項2~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップは、前記式VIIの化合物(式中、Xは、Clである)及び塩化チオニルである前記脱水ハロゲン化試薬を含んで、前記式IVの化合物(式中、Yは、Clである)を提供するステップを含む、請求項2~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップは、前記式VIIの化合物(式中、Xは、Clである)及びナトリウムメトキシド又はカリウムメトキシドである前記アルコキシドを含んで、前記式IVの化合物(式中、Yは、OCHである)を提供するステップを含む、請求項2~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
【化6】

(式中、Rは、C~Cアルキルであり、及びXは、Clである)
を含む化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年12月27日付けで出願された米国仮特許出願第62/785,353号明細書に対する優先権を主張するものであり、その全ての開示が参照により明確に本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、新規の方法、新規の化合物及びそのような化合物を生成する方法を含む。そのような新規の方法及び化合物は、ピロクススラムなどの除草剤などの他の有用な化合物の製造のための有用な中間物である。
【背景技術】
【0003】
ピロクススラム(I)、トリアゾロピリミジンスルホンアミド系のメンバーは、例えば、穀物において多くの広葉雑草及びイネ科雑草の制御を提供する市販の除草剤である。ピロクススラムの調製は、例えば、国際PCT出願公開国際公開第2002036595A2号パンフレット及び米国特許出願公開第2005/0215570A1号明細書に記載されている。
【化1】
【0004】
ピロクススラム(I)の調製の従来方法において、最終ステップは、通常、式IIのアミンと、式IIIのスルホニルクロリドとのカップリングを含み得る。
【化2】
【0005】
そのような方法では、スルホニルクロリドIIIは、2-オキソ-ピリジンIIIaを、3-クロロピリジンIIIbを介して2-メトキシピリジンIIIcに変換することによって調製できる。スルホニルクロリドIIIは、次に、IIIcと、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)及び元素硫黄の混合物とのメタル化反応/チオール化反応により、その後、取得したリチウムチオレートと塩素/HClとのクロロ酸化によりIIIを提供することによって調製できる。
【化3】
【0006】
しかし、このような従来の方法は、費用がかかり、利益を削減することがあり、且つ一部の市場において、生成したピロクススラムを使用する能力に悪影響を与える場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、効率的で実利的な方法でのピロクススラムの製造コストを削減する必要性が存在する。更に、現在制限されている市場でピロクススラムを販売できる方法でピロクススラムを生成する能力も必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の式III
【化4】
で示されるスルホニルクロリドIIIの化学前駆体を調製するための新規でコスト効果がより高い方法を可能にする様々な新規の化合物及びそれらの調製方法を提供する。そのような化合物は、ピロクススラムなどの除草剤の調製において、重要な中間生成物であり得る。具体的には、これらの前駆体は、以下の式IV
【化5】
(式中、Yは、ハロゲン、OH又はOCHである)
の化合物を含む。
【0009】
本開示の別の態様は、記載された方法によって生成された新規中間生成物、例えば式VII:
【化6】
の化合物を含む。
【0010】
いくつかの態様では、アセトニトリル、塩基、及び式Vの化合物もしくは式VIの化合物
【化7】
を組み合わせて、式VII
【化8】
(式中、Rは、C~Cアルキルであり、及びXは、Cl又はOHである)
の化合物を形成することを含む方法が提供される。いくつかの態様では、方法は、式VIIの化合物を酸、アルコール、水、アルコキシド、脱水ハロゲン化試薬又はそれらの組み合わせの少なくとも1つと組み合わせて、式IV:
【化9】
(式中、Yは、ハロゲン、OH又はORであり、及びRは、C~Cアルキルである)
の化合物を形成することを更に含み得る。様々な態様では、酸は、HSO、HCl、HBr又はHI及びそれらの混合物を含む群から選択され得る。様々な態様では、アルコールは、C~Cアルコール(例えば、メタノール)である。様々な態様では、アルコキシドは、ナトリウムC~Cアルコキシド又はカリウムC~Cアルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシド又はカリウムメトキシド)である。
【0011】
例示的な脱水ハロゲン化試薬としては、SOCl、SOBr、POCl、POBr、PCl、PBr、PCl、PBr、オキサリルクロリド又はそれらの混合物が挙げられる。
【0012】
様々な態様は、組み合わせることが、酸及びアルコールを式VIIの化合物と同時に組み合わせて、式IVの化合物(式中、Yは、ORであり、及びRは、C~Cアルキルである)を提供することを含む方法も含む。
【0013】
方法は、組み合わせることが、酸及び水を式VIIの化合物と同時に組み合わせて、式IVの化合物(式中、Yは、OHである)を提供することを含む態様も含み得る。
【0014】
いくつかの態様では、方法は、HCl又はHBrである酸及び次にアルコキシドを式VIIの化合物と逐次組み合わせて、式IVの化合物(式中、Yは、ORであり、ここで、Rは、C~Cアルキルである)を提供することを含み得る。
【0015】
いくつかの態様は、脱水ハロゲン化試薬及び次にアルコキシドを式VIIの化合物と逐次組み合わせて、式IVの化合物(式中、Yは、ORであり、及びRは、C~Cアルキルである)を提供することを含む。
【0016】
いくつかの態様では、組み合わせることは、式IVの化合物(式中、Yは、OHである)及び塩化チオニルである脱水ハロゲン化試薬を含んで、式IVの化合物(式中、Yは、Clである)を提供し得る。
【0017】
様々な態様では、いくつかの方法は、組み合わせることが、式IVの化合物(式中、Yは、ハロゲンである)及びナトリウムメトキシド又はカリウムメトキシドであるアルコキシドを含んで、式IVの化合物(式中、Yは、OCHである)を提供する態様を含む。
【0018】
様々な方法は、式IVの化合物(式中、Yは、OCHである)を強塩基及び硫黄と組み合わせて、式IVb
【化10】
の化合物を提供することを更に含む方法も含む。
【0019】
いくつかの態様は、式IVbの化合物をCl、HCl及び水と組み合わせて、式III
【化11】
の化合物を提供するステップを更に含む方法も含む。
【0020】
様々な化合物は、
【化12】
(式中、Rは、C~Cアルキルであり、及びXは、Cl又はOHである)
を含み得る。
【発明を実施するための形態】
【0021】
スルホニルクロリドIIIの前駆体、ピロクススラム除草剤のいくつかの調製方法において重要な中間生成物の調製方法が記載される。具体的には、式IV
【化13】
(式中、Y=ハロゲン、OH又はOCHである)
の化合物(式中、Yは、ハロゲン、OH又はOCHである)は、本明細書に記載の方法により調製できる。
【0022】
スキーム1及び2に例示されるように、本方法は、(1)式V又はVIの化合物を式VIIのニトリルに変換し、(2)VIIを式IVの化合物(式中、Yは、ハロゲン、OH又はOCHである)に変換する化学プロセスステップを含み、及び1種又は複数の反応物は、酸(A)、アルコール(B)、水(C)、アルコキシド(D)又は脱水ハロゲン化試薬(E)及びそれらの組み合わせを含む反応物A、B、C、D又はEから選択され得る。
【化14】
(式中、Rは、C~Cアルキルであり、及びXは、Cl又はOHである。)
【化15】
(式中、Yは、ハロゲン、OH又はOCHである。)
【0023】
I.定義
本明細書で使用される場合、用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、F、Cl、Br及びIの1つ又は複数を含むと理解され得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「アリール」及びアリールオキシなどの派生語は、6~14個の炭素原子の一価の芳香族炭素環基を含む基を含むと理解され得る。アリール基は、単環又は縮合した複数の環を含むことができる。いくつかの態様では、アリール基は、C~C10アリール基を含む。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、フェニルシクロプロピル及びインダニルが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、アリール基は、フェニル、インダニル又はナフチル基であり得る。「ヘテロアリール」という用語及び「ヘテロアリールオキシ」などの派生語は、1個以上のヘテロ原子、すなわちN、O又はSを含有する5員又は6員の芳香族環を指す。これらのヘテロ芳香族環は、他の芳香族系に融合し得る。いくつかの態様では、ヘテロアリール基は、ピリジル基、ピリミジル基又はトリアジニル基であり得る。
【0025】
アリール又はヘテロアリール置換基は、置換されていないか、又は1つ若しくは複数の化学部分で置換され得る。好適な置換基の例としては、例えば、アミノ、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、ホルミル、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルキル、C~Cハロアルコキシ、C~Cアシル、C~Cアルキルチオ、C~Cアルキルスルフィニル、C~Cアルキルスルホニル、C~C10アルコキシカルボニル、C~Cカルバモイル、ヒドロキシカルボニル、C~Cアルキルカルボニル、アミノカルボニル、C~Cアルキルアミノカルボニル、C~Cジアルキルアミノカルボニルが挙げられる。但し、置換基は、立体適合性があり、且つ化学結合及び歪みエネルギーの規則が満たされていることを条件とする。好ましい置換基としては、ハロゲン、C~Cアルキル、C~C10アルコキシカルボニル及びC~Cハロアルキルが挙げられる。
【0026】
II.ニトリルVIIの調製
式IVの化合物(式中、Yは、ハロゲン、OH又はOCHである)を調製する方法の第一ステップは、スキーム3に示されるように、V又はVIと、アセトニトリル及び塩基から調製したアセトニトリルのリチウムアニオンとの反応による、式V又はVIの化合物の式VIIのニトリルへの変換を含む。この反応ステップに使用する塩基としては、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)及びリチウム又はナトリウムヘキサメチルジシラザン(LHMDS又はNaHMDS)などの有機リチウム試薬を挙げることができるが、これらに限定されない。ナトリウム及びカリウムtert-ブトキシド(Na-tBuO及びK-tBuO)、tert-アミルオキシドなどの他の塩基も使用できる。Vとリチウムアセトニトリルとの反応は、その開示が参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第8,063,226号明細書に開示されているが、以下のVIを使用したVII(X=Cl)の生成は、以前には開示されていない。
【化16】
(式中、Rは、C~Cアルキルであり、Xは、Cl又はOHである。)
【0027】
化合物VIは、国際PCT出願公開国際公開第2002053518号パンフレットに記載される以下のプロセスにより生成できる。
【化17】
【0028】
VIIを生成するプロセスステップは、限定しないが、THF(テトラヒドロフラン)、DME(1,2-ジメトキシエタン)、2-メチル-THF、ジエチルエーテル、ジオキサン、それらの混合物のようなエーテル溶媒及びこれらの溶媒とペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素溶媒との混合物などの溶媒中で実施できる。このプロセスステップを実施するための温度範囲は、約25℃~約-80℃、約0℃~約-80℃、約25℃~約-70℃又は約0℃~約-70℃の範囲であり得、反応は、約1時間~約72時間、約1時間~約48時間、約1時間~約24時間、約1時間~約12時間、約1時間~約6時間又は約1/2時間~約2時間の範囲の期間にわたり実施され得る。
【0029】
約1.0~約1.5、約1.0~1.4、約1.0~1.3、約1.0~1.2又は約1.0~1.1モル当量の塩基は、VIIを生成するプロセスで使用できる。
【0030】
III.ピリジンIVの調製
式IVの化合物を調製する方法の第二ステップは、式VIIの化合物(式中、Rは、C~Cアルキルであり、及びXは、Cl又はOHである)を、スキーム4に示すように、反応物又は反応物の組み合わせと共に処理することにより、式IVの化合物に変換することを含む。使用される反応物又は反応物の組み合わせは、ニトリルVIIのピリジンIVへの環化を促進する反応物を含むことが好ましい。
【化18】
(式中、Yは、ハロゲン、OH又はOCHである。)
【0031】
以下の表1は、スキーム4において示した変換に使用できる多くの反応物を列挙する。反応物A(酸)又はE(脱水ハロゲン化試薬)は、VIIのIVへの環化を容易に促進するが、しかし、反応物B、C若しくはDの単独の使用又は組み合わせでの使用は、VIIのIVへの環化を容易に促進しない。しかし、反応物B、C又はDを反応物A又はBと組み合わせて使用する場合、同時手法(VIIに添加する前に一緒に混合)において又は逐次的手法(VIIに別々に添加)においてのいずれかの後、ニトリルVIIのピリジンIVへの環化が行われることになる。
【0032】
【表1】
【0033】
同時手法で実施される一態様では、酸及びアルコールを含有する混合液は、化合物VIIと組み合わせて、化合物IV(式中、Xは、Cl又はOHであり、Rは、C~Cアルキルであり、及びRは、C~Cアルキルである)を提供できる。この態様は、以下の反応により例示される。
【化19】
【0034】
同時手法で実施される別の態様では、酸及び水を含有する混合液は、化合物VIIと組み合わせて、化合物IV(式中、Xは、Cl又はOHであり、及びRは、C~Cアルキルである)を提供できる。この態様は、以下の反応により例示される。
【化20】
【0035】
逐次的手法で実施される一態様では、無水酸HY(Yは、Cl又はBrである)は、化合物VIIと組み合わせて、化合物IV(式中、Yは、Cl又はBrである)を提供でき、その後、アルコキシドMOR(Mは、Na又はKである)と組み合わせて、化合物IV(式中、Rは、C~Cアルキルである)を提供できる。この態様は、以下の反応により例示される。
【化21】
【0036】
逐次的手法で実施される別の態様では、脱水ハロゲン化試薬(SOY、POY、PY又はPY)は、化合物VIIと組み合わせて、化合物IV(式中、Yは、Cl又はBrである)を提供でき、その後、アルコキシドMOR(Mは、Na又はKである)と更に組み合わせて、化合物IV(式中、Rは、C~Cアルキルである)を提供できる。この態様は、以下の反応により例示される。
【化22】
【0037】
式VIIの化合物からの式IVの置換ピリジンの調製に使用するのに好適であり得る溶媒としては、アセトニトリル(ACN)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジクロロメタン(DCM)、1,2-ジクロロエタン(DCE)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチル-THF、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、トルエン、1種若しくは複数のキシレン、メタノール又はエタノール及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0038】
いくつかの態様では、1種又は複数の反応物は、式IVの置換ピリジンの調製において溶媒としての役割を果たすことができる。
【0039】
式VIIの化合物からの式IVの化合物の調製は、少なくとも約0℃、少なくとも約10℃、少なくとも約20℃、少なくとも約25℃、少なくとも約30℃、少なくとも約40℃、少なくとも約50℃、少なくとも約60℃、少なくとも約70℃、少なくとも約80℃、少なくとも約90℃又は少なくとも約100℃の温度で実施することができる。いくつかの態様では、式VIIの化合物からの式IVの化合物の調製は、約0℃~約50℃、約10℃~約50℃、約25℃~約50℃、約25℃~約60℃、約25℃~約70℃、約25℃~約80℃、約25℃~約90℃、約25℃~約100℃、約25℃~約125℃又は約25℃~約150℃の温度で実施することができる。
【0040】
IV.2-アルコキシ-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-スルホニルハライドIIIdの調製
式IVの化合物は、次に、既に開示した方法を用いて、式IIId(式中、Rは、C~Cアルキルであり、及びYは、Cl又はBrである)のスルホニルハライドに変換できる。この変換は、スキーム5に示され、化合物IVを強塩基及び硫黄で処理した後、単離されていないリチウム-硫黄の中間生成物をハロゲン化水素酸HY、ハロゲンY(ここで、Yは、Cl又はBrである)及び水の混合物で処理して、式IIIdの化合物(式中、Yは、Cl又はBrであり、及びRは、C~Cアルキルである)を提供することを含む。
【化23】
【0041】
式IIIdの化合物の調製の一態様では、Yは、Cl(塩素;Y=Cl)であり、ハロゲン化水素酸HYは、HClであり、及びRは、CH(例えば、式IIIの化合物)である。
【0042】
式IIIdの化合物の調製の別の態様では、水非混和性の共溶媒が含まれ得る。この共溶媒は、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン若しくは1,2-ジクロロベンゼン又はそれらの混合物から選択され得る。
【0043】
式IIIdの化合物の調製の別の態様では、相間移動触媒が調製において含まれ得る。好適な相間移動触媒としては、例えば、メチルトリブチルアンモニウムクロリドなどのテトラアルキルアンモニウムハライドが挙げられ得る。
【0044】
IV.単離/精製
本明細書に記載の方法による式IV及びVIIの化合物の調製後、標準的な単離及び精製技術を用いることにより生成物を単離することができる。例えば、粗生成物を、本明細書に記載されているような標準的な方法を使用して単離することができ、単一の溶媒又は2種以上の溶媒の混合物を使用する結晶化により精製することができる。また、粗生成物を単成分、2成分又は3成分溶媒の混合物で洗浄するか、又は粗生成物をそれらの混合物中で撹拌することにより精製することができる。一態様では、水性アルコール溶媒の混合液中で撹拌することにより粗生成物を精製することができる。
【0045】
粗生成物は、この粗組成物を単一の溶媒に溶解させて溶液を形成し、次いで第2の溶媒をその溶液に加え、生成物を2種の溶媒の混合物から晶出させることにより精製することもできる。
【0046】
粗生成物は、真空下での蒸留により精製することもできる。
【0047】
以下の実施例は、本明細書に記載の方法及び組成物の様々な態様を例示するために示すものである。
【実施例
【0048】
実施例1a.2,2,4-トリクロロ-4-エトキシ-1,1,1-トリフルオロブタンの調製
【化24】
100mLの三口丸底フラスコに1,1,1-トリクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン(41.60g、220.02ミリモル)及びn-1-(ビニルオキシ)ブタン(9.8g、97.84ミリモル)を装入した。混合物を45℃まで加熱した後、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(0.186g、1.13ミリモル;直ちに溶解)を添加した。反応混合物を45℃で10分間加熱し、その後、温度を50℃まで加熱した。反応混合物を4時間加熱した後、アリコートのNMRが約50%の変換を示した。追加のAIBN(0.28g)及び1,1,1-トリクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン(17g)を添加し、50℃で終夜撹拌を続けた。蒸留により過剰の出発材料を除去し、透明な帯黄色オイル(17g、収量60%)として所望の生成物を得た。1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 5.97(dd,J=7.7,2.4Hz,1H),3.95(dt,J=9.3,6.4Hz,1H),3.56(dt,J=9.3,6.5Hz,1H),3.12(dd,J=15.2,7.7Hz,1H),3.01(dd,J=15.2,2.4Hz,1H),1.71-1.57(m,2H),1.50-1.32(m,2H),0.94(t,J=7.4Hz,3H).13C NMR(101MHz,クロロホルム-d)δ 126.14,123.33,120.53,93.42,81.70,81.35,71.04,49.98,30.80,19.14,13.61.
【0049】
実施例1b.(E)-5-エトキシ-3-ヒドロキシ-3-(トリフルオロメチル)ペンタ-4-エンニトリルの調製
【化25】
磁気攪拌棒及び窒素導入管を装備した125mLの三口反応器に50mLの1,2-ジメトキシエタン(DME)を装入し、撹拌を開始し、ドライアイス/イソプロピルアルコール浴で-72℃まで冷却した。冷却した混合物に12.49mL(7.98グラム)の2.5モルn-ブチルリチウムのヘキサン溶液(23.11重量%)を添加し、-72℃まで再平衡化させた。1.282グラム(1.631mL)のアセトニトリルを計量導入し、アニオンの完全な形成に90分見込んだ。別々のバイアルで5gの化合物Vaを10mLのDMEで希釈して、シリンジを介して混合液を計量導入した。混合物を-72℃で1時間撹拌した後、浴を取り除き、混合物を室温まで温めた。HSOの溶液(5mの脱イオン水中に1.677グラムの97重量%硫酸)で混合物を急冷した。次に、トルエン(100mL)を混合物に加え、撹拌した。二相混合物を500mLの分液漏斗に移し、水性相を水切りした。20mLずつのトルエンで水性相を2回、再抽出した。有機溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、茶色の半透明オイルまで濃縮した。1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 6.88(d,J=12.7Hz,1H),4.89(d,J=12.7Hz,1H),3.84(q,J=7.0Hz,2H),2.92(d,J=16.7Hz,1H),2.78(d,J=16.6Hz,1H),2.36(s,1H),1.33(t,J=7.0Hz,3H).
【0050】
実施例1c.(E)-3-クロロ-5-エトキシ-3-(トリフルオロメチル)ペンタ-4-エンニトリルの調製
【化26】
50mLの三口丸底フラスコに磁気攪拌棒、温度計ウェル、窒素供給、セプタム及び1/8インチの圧縮フィッティングを装備した。容器を不活性にした後、セプタムを介して12mLの無水DMEを添加した。反応器をIPA-ドライアイス浴に浸漬させて、反応器の内部温度を-73℃に到達させた。ガスタイトシリンジを用いて、セプタムを介して1.17gの2.5モルn-ブチルリチウムのヘキサン溶液を注入した。0.172グラムのアセトニトリルを同様の方法で添加し、反応器に茶黄色で透明な溶液をもたらした。アセトニトリルの添加時に発熱に留意し、大量の場合にはシリンジポンプを使用することが望ましい。混合物を30分間撹拌して、完全なアニオンの形成を確実にした。別々のバイアルに0.172グラムの2,2,4-トリクロロ-4-エトキシ-1,1,1-トリフルオロブタンを添加した後、3mLの無水DMEで希釈した。2,2,4-トリクロロ-4-エトキシ-1,1,1-トリフルオロブタン溶液を5mLのシリンジに引き込み、0.15mL/分の速度で添加するシリンジポンプにより、1/8インチのラインに装入した。色が黄色で透明から暗茶色/不透明に変化した。初期温度は、-71.5℃であり、2,2,4-トリクロロ-4-エトキシ-1,1,1-トリフルオロブタンの添加後の最終温度は、-68.9℃であった。混合物を約-72℃で30分間撹拌した後、浴を取り除き、混合物を0℃まで温めた。次に、0℃で反応器に添加することにより、1.11グラムの塩化アンモニウム飽和水溶液で混合物を急冷した。塩化アンモニウムで急冷した混合物を分析前に一晩寝かせた。トルエン中に急冷した反応混合物を取り込み、分液漏斗において脱イオン水で洗浄した。未加工の材料のNMRによる分析は、所望の生成物が存在することを示した。
【0051】
実施例2a.2-クロロ-4-(トリフルオロメチル)ピリジンの調製
【化27】
セプタムキャップ及び磁気攪拌棒付きの35mLバイアルに、トルエンに溶かした1グラムの(E)-5-エトキシ-3-ヒドロキシ-3-(トリフルオロメチル)ペンタ-4-エンニトリルを加え、続いて2gの純塩化チオニルを加えた。混合物を窒素下に置いた。混合物は、透明で橙色であった。バイアル及びその含有物を撹拌しながら、50℃まで12時間加熱した。12時間の加熱後、H-NMR及び19F-NMR分光法により、バイアルの含有物を分析した。比較のために予想生成物の基準物質を19F-NMR分析に含めた。H-NMR分析は、反応混合物中に多少の不純物を示し、19F-NMR分析は、環化前駆体の所望の2-クロロ-4-(トリフルオロメチル)ピリジンへの変換を示した。未加工の材料の最適化されていない収量:約60%。H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 8.58(d,J=5.0Hz,1H),7.57(s,1H),7.48-7.41(m,1H).
実施例2b.2-メトキシ-4-(トリフルオロメチル)ピリジンの調製
【化28】
実施例2c.2-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)ピリジンの調製
【化29】
【0052】
本明細書に記載の特定の組成物及び方法は、特許請求の範囲のいくつかの態様の例示として意図されたものであり、それらによって特許請求の範囲の組成物及び方法の範囲が限定されることはなく、機能的に均等ないかなる組成物及び方法も特許請求の範囲に含まれることを意図している。本明細書に示され、記載されているものに加えて、組成物及び方法の種々の変更形態も添付の特許請求の範囲に含まれることを意図している。更に、本明細書に開示の特定の代表的な組成物質及び方法のステップのみが具体的に記載されているが、組成物質及び方法のステップの他の組み合わせも、具体的に記載されていなくても添付の特許請求の範囲に含まれることを意図している。したがって、ステップ、要素、成分又は構成要素の組み合わせは、本明細書に明示的に言及されている場合もあるが、たとえ明示的に言及されていなくても、ステップ、要素、成分及び構成要素の他の組み合わせも含まれる。本明細書で使用される場合、「含む」という用語及びその変形は、「包含する」という用語及びその変形と同義的に使用され、オープンの非限定的な用語である。「含む」及び「包含する」という用語は、様々な態様を説明するために本明細書で使用されているが、「実質的に~からなる」及び「~からなる」という用語は、本発明のより具体的な態様を提供するために「含む」及び「包含する」の代わりに使用され得、且つまた開示される。