(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】複合材料及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/12 20060101AFI20240909BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20240909BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240909BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240909BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20240909BHJP
C08K 9/02 20060101ALI20240909BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
C01B33/12 Z
B01J20/10 C
C08L101/00
C08K3/36
C08K3/08
C08K9/02
C08K9/06
(21)【出願番号】P 2021544590
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(86)【国際出願番号】 SG2020050045
(87)【国際公開番号】W WO2020159446
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】10201900921S
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】503231882
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】シュイ リー
(72)【発明者】
【氏名】ホー チアティン
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1697127(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0109566(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0296852(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0207795(US,A1)
【文献】国際公開第2005/110592(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00- 33/193
B01J 20/00- 20/34
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質シリカ粒子、前記シリカ粒子の細孔内に配置された複数の金属粒子、及び前記シリカ粒子を少なくとも部分的に封入するポリマーコーティングを含
み、前記ポリマーコーティングの厚さは5~10nmの範囲である、複合材料。
【請求項2】
前記シリカ粒子は、シラン化合物で修飾されている、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記シラン化合物は、アミノ基又はカルボン酸基で官能化されている、請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記金属粒子の金属は、周期表の第8族から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記金属粒子の金属は、鉄である、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記金属粒子のサイズは、100nm未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項7】
前記多孔質シリカ粒子のサイズは、20nm~1μmの範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記多孔質シリカ粒子の細孔サイズは、5~50nmの範囲である、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項9】
前記複合材料中の金属粒子の重量は、前記多孔質シリカ粒子の乾燥重量に対して1~80重量%の範囲である、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項10】
活性化剤を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項11】
前記活性化剤は、ハロゲン化物塩である、請求項10に記載の複合材料。
【請求項12】
前記ポリマーコーティングは、ウレタン、アクリレート、メタクリレート、エポキシ、エチレン、ビニルアルコール及びそれらの混合物からなる群から選択されるモノマーを有するポリマーを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項13】
前記複合材料は、210~230cm
3/gの酸素捕捉性能を有することを特徴とする、請求項1~
12のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項14】
複合材料を調製する方法であって、複数の活性化金属及びシリカ粒子を含有する溶液をポリマー溶液と混合して、それによって前記複合材料を形成する工程を含み、前記複合材料は、多孔質シリカ粒子、前記シリカ粒子の細孔内に配置された複数の金属粒子、及び前記シリカ粒子を少なくとも部分的に封入するポリマーコーティングを含
み、前記ポリマーコーティングの厚さは5~10nmの範囲である、方法。
【請求項15】
前記シリカ粒子の細孔サイズを拡大するために、アニール又は化学エッチングする工程を更に含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記アニール工程は、100~700℃で行われる、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記化学エッチング工程は、アルカリ塩溶液の使用を含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項18】
前記溶液中のアルカリ塩の量が、シリカ粒子の0.01重量%~5重量%の範囲である、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
シリカ粒子をシラン化合物で修飾する工程を更に含む、請求項
14~
18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
シラン化合物は、アミノ基又はカルボン酸基で官能化されている、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリマー溶液の前記ポリマーが、アルコールと水との混合物に溶解される、請求項
14~
20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリマー溶液中の前記ポリマーの濃度は、0.01~10重量%の範囲である、請求項
14~
21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
金属粒子を塩で活性化して前記活性化金属を形成する工程を更に含む、請求項
14~
22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1~
13のいずれか一項に記載の複合材料の、酸素捕捉材料としての使用。
【請求項25】
請求項1~
13のいずれか一項に記載の複合材料で、基材を配合又は被膜する工程を含む、酸素捕捉膜又は酸素バリア膜を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本出願は、2019年1月31日に提出されたシンガポール出願番号10201900921Sに優先権があると主張するものであり、その開示内容は参考までに盛り込まれている。
【0002】
技術分野
本発明は、複合材料、その製造方法、複合材料の使用、及び酸素捕捉膜又は酸素バリア膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
包装中に存在する酸素は、包装された食品の品質に影響を及ぼす重要な因子である。果物や野菜のような腐敗しやすい食品は、酸素に非常に敏感であり、容易に劣化する。このような劣化は、ビタミンCの損失、脂肪及び油の酸化的酸敗、微生物の増殖及び変色を引き起こし得る。食品包装の主な目的の1つは、包装された食品を酸素から保護し、それにより長期の貯蔵寿命で食品の品質を維持することである。酸素に対する良好なバリア特性を有する包装を提供するために、多くの努力がなされてきた。同時に、改質雰囲気及び真空包装は、封止前の包装中の酸素含有量を減少させるための周知の方法である。しかしながら、包装中の残留酸素(食品中に捕捉された、又はヘッドスペース中に存在する酸素)は、これらの技術では完全に除去することができない。更に、高コスト及び複雑な操作は、改変された雰囲気及び真空パッケージングに関連するいくつかの問題である。従って、有効な酸素捕捉剤の開発が非常に望まれている。
【0004】
酸素捕捉剤は、鉄粉末、アスコルビン酸、酵素、不飽和炭化水素、感光性ポリマーなどの活性化合物の酸化によって酸素を捕捉する。有機及び不飽和炭化水素捕捉剤は比較的不安定であり、酸化後に望ましくない臭気を放出する。これらの酸素捕捉剤の中で、鉄ベースの酸素捕捉剤は、その高い補足効率、低コスト及び安全性のために、最もよく知られ、商業的に入手可能な製品である。より小さいサイズを有する鉄粒子は、大量の反応性表面原子のために、より大きい粒子と比較して、より高い捕捉能力を示す。したがって、ナノサイズの鉄粒子は、酸素捕捉への使用の潜在性が高い。しかしながら、このような小さな鉄粒子は活性が高すぎ、製造中に爆発する可能性があり、したがって、工業生産中に製造又は取り扱うことが困難である。
【0005】
ナノサイズのチャネル又は細孔を有する多孔質粒子は、担体及び保護剤として作用して、チャネル又は細孔内にナノサイズの鉄粒子を保持し、鉄粒子の凝集を回避し、酸素及び鉄ナノ粒子の接触を増強する有望な候補であり、これは、酸素捕捉能力の改善につながり得る。しかし、ナノサイズのチャネル又は細孔への鉄粒子の限られた担持は、酸素捕捉性能の制限をもたらすことがある。鉄粒子は、調製中に酸化され、酸素捕捉能力を低下させることがある。鉄/シリカナノ粒子は、酸素バリア層を形成するときに一緒に凝集することができ、酸素バリア層の不透明度の増加につながる。
【0006】
したがって、上述の欠点の1つ以上を克服又は改善する複合材料、複合ナノ粒子を調製する方法、複合材料の使用、及び酸素バリア膜を形成する方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
一つの態様において、本開示は、多孔質シリカ粒子、前記シリカ粒子の細孔内に配置された複数の金属粒子、及び前記シリカ粒子を少なくとも部分的に封入するポリマーコーティングを含む、複合材料に関する。
【0008】
有利には、ポリマーコーティングは、金属/シリカ粒子を均一に覆う保護層として作用し、多孔質シリカ粒子中の金属粒子の調製中における酸化を回避し、金属粒子の高い酸素捕捉及びポリマーマトリックス中の良好な分散をもたらす。ポリマーコーティングのナノスケールの厚さのために、金属粒子は、依然として水分によって活性化され、酸素を捕捉することができる。
【0009】
なお有利には、シリカ粒子は、金属ナノ粒子の吸着を促進するシランで官能化され得、多孔質シリカ粒子中のより高い金属粒子の担持をもたらし、したがって酸素捕捉能力を改善する。
【0010】
別の態様において、本開示は、複合材料を調製する方法に関し、複数の活性化金属及びシリカ粒子を含有する溶液をポリマー溶液と混合して、それによって前記複合材料を形成する工程を含み、前記複合材料は、多孔質シリカ粒子、前記シリカ粒子の細孔内に配置された複数の金属粒子、及び前記シリカ粒子を少なくとも部分的に封入するポリマーコーティング、を含む。
【0011】
本方法は、アニーリング又は化学エッチングによって、シリカ粒子の細孔サイズを拡大する工程を更に含んでもよい。
有利には、アニーリング又はエッチングプロセスによって、多孔質シリカ粒子は複合材料中により多くの金属粒子を保持するための、より大きな細孔/チャネルを有する。
【0012】
別の態様において、本開示は、本明細書で定義される複合材料の、酸素捕捉剤材料としての使用に関する。
【0013】
別の態様において、本開示は、本明細書で定義される複合材料で基材を配合又は被膜する工程を含む、酸素捕捉膜又は酸素バリア膜を形成する方法に関する。
【0014】
有利には、ポリマーコーティングは、ポリマー樹脂との配合プロセス中の金属/シリカ粒子の酸化及び凝集を回避し、高い酸素捕捉能力を有する透明な酸素捕捉複合膜をもたらす。
【0015】
定義
本明細書で使用される以下の単語及び用語は、以下に示される意味を有するものとする:
【0016】
本明細書で使用される「複合材料」という用語は、組み合わされた場合に材料を生成する、著しく異なる物理的又は化学的特性を有する2つ以上の構成材料から作製される材料を表す。個々の成分は、完成した材料内で分離したままであり、別個のままである。
【0017】
本明細書で使用される「酸素捕捉」という用語は、閉じ込められた領域又は混合物から酸素を収集又は除去する行為を指す。
【0018】
別段の指定がない限り、用語「備えている」及び「備える」、並びにそれらの文法的変形は、列挙された要素を含むが、追加の、列挙されていない要素の包含も可能にするように、「開いている」又は「包括的である」言語を表すことが意図される。
【0019】
本明細書中で使用される場合、用語「約」は、製剤の成分の濃度の文脈において、代表的には記載された値の+/-5%、より典型的には記載された値の+/-4%、より典型的には記載された値の+/-3%、より典型的には記載された値の+/-2%、更により典型的には記載された値の+/-1%、及び更により典型的には記載された値の+/-0.5%を意味する。
【0020】
本開示を通して、特定の実施形態は、範囲形式で開示されてもよい。範囲形式での説明は、単に利便性及び簡潔さのためであり、開示された範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、その範囲内の全ての可能なサブ範囲ならびに個々の数値を具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、及び3~6などの具体的に開示されたサブ範囲、並びに例えば、1、2、3、4、5、及び6などの具体的に開示されたその範囲内の数字を有すると考えられるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0021】
特定の実施形態はまた、本明細書において広くかつ一般的に記載されてもよい。包括的開示内に入るより狭い種及びサブ包括的グループの各々もまた、本開示の一部を形成する。これは、切り取られた材料が本明細書に具体的に列挙されているか否かにかかわらず、属から任意の主題を除去する、条件又は負の制限を伴う実施形態の一般的な説明を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本明細書で定義される複合材料を形成するプロセス2を示す模式図である。
【
図2】
図2は、ポリマーコーティングを有する又は有しない、鉄/シリカナノ粒子の数個の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す。
【
図3】
図3は、圧縮EVOHペレットの数個の光学画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここで、複合材料の例示的な非限定的な実施形態を開示する。
【0024】
本開示は、多孔質シリカ粒子、前記シリカ粒子の細孔内に配置された複数の金属粒子、及び前記シリカ粒子を少なくとも部分的に封入するポリマーコーティングを含む、複合材料に関する。
【0025】
多孔質シリカ粒子の機能は、主に、金属粒子を収容して、均一な分散及び高い補足能力を達成することである。
【0026】
シリカ粒子は、シラン化合物で修飾されていてもよい。シラン化合物は、アミノ基又はカルボン酸基で官能化されていてもよい。
【0027】
アミノ基で官能化されたシラン化合物は、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、アミノメチルトリプロポキシシラン、アミノエチルトリメトキシシラン、アミノエチルトリエトキシシラン、アミノエチルトリプロポキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリプロポキシシラン、アミノプロピルトリメトキシエトキシシラン、アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノプロピルメチルジブトキシシラン、アミノプロピルメチルジイソプロペンオキシシラン、アミノプロピルジメチルエトキシシラン、アミノプロピルジメチルメトキシシラン、アミノプロピルジメチルプロポキシシラン、アミノプロピルメチルジイソプロペンオキシシラン、アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、アミノプロピルビストリメチルシロキシメチルシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、又はこれらの混合物を含む群から選択されることができる。
【0028】
カルボン酸基で官能化されたシラン化合物は、カルボキシエチルシリコン酸二ナトリウムであってもよい。カルボン酸基で官能化されたシラン化合物は、アミノ基で官能化されたシラン化合物の修飾後に、アミノ基で官能化されたシラン化合物から変換されてもよい。シラン化合物は、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)であることが好ましい。
【0029】
金属粒子の金属は、周期表の第8族から選択することができる。金属粒子の金属は鉄であってもよい。鉄粒子は、複合材料中のゼロ価の鉄粒子であってもよい。
【0030】
金属粒子のサイズは、100nm未満、好ましくは50nm未満、特に好ましくは5nm未満であってよい。金属粒子のサイズは、約1nm~100nm、約1nm~80nm、約1nm~60nm、約1nm~50nm、約1nm~30nm、約1nm~10nm、約1nm~5nm、約5nm~100nm、約10nm~100nm、約30nm~100nm、約50nm~100nm、約60nm~100nm、又は約80nm~100nmの範囲であってよい。
【0031】
シリカ粒子のサイズは、約20nm~約1μm、約20nm~約800nm、約20nm~約600nm、約20nm~約500nm、約20nm~約400nm、約20nm~約300nm、約20nm~約100nm、約20nm~約80nm、約20nm~約60nm、約20nm~50nm、約20nm~30nm、約30nm~1μm、約50nm~約1μm、約80nm~約1μm、約100nm~約1μm、約300nm~約1μm、約400nm~約1μm、約500nm~約1μm、約600nm~約1μm、約800nm~約1μm、約50nm~約400nm、又は約100nm~300nmの範囲であってよい。
【0032】
多孔質シリカ粒子の細孔サイズは、約5nm~約100nm、約5nm~約90nm、約5nm~約80nm、約5nm~約70nm、約5nm~約60nm、約5nm~約50nm、約5nm~約40nm、約5nm~約30nm、約5nm~約20nm、約5nm~約10nm、約10nm~約100nm、約20nm~約100nm、約30nm~約100nm、約40nm~約100nm、約50nm~約100nm、約60nm~約100nm、約70nm~約100nm、約80nm~約100nm、又は約90nm~約100nmの範囲であってもよい。多孔質シリカ材料の細孔サイズは、好ましくは約10nm~約30nmの範囲であってよい。
【0033】
複合金属/シリカ粒子中の金属粒子の重量は、シリカ粒子の乾燥重量に基づいて、約1重量%~約80重量%、約1重量%~約70重量%、約1重量%~約60重量%、約1重量%~約50重量%、約1重量%~約40重量%、約1重量%~約30重量%、約1重量%~約20重量%、約1重量%~約10重量%、約1重量%~約5重量%、約5重量%~約80重量%、約10重量%~約80重量%、約20重量%~約80重量%、約30重量%~約80重量%、約40重量%~約80重量%、約50重量%~約80重量%、約60重量%~約80重量%、約70重量%~約80重量%、約10重量%~約70重量%、10重量%~約50重量%、約30重量%~約60重量%、又は約20重量%~約40重量%の範囲であってもよい。複合金属/シリカ粒子中の金属粒子の重量は、好ましくはシリカ粒子の乾燥重量に基づいて約20重量%~約60重量%の範囲であり得る。
【0034】
複合材料は、活性化剤を更に含んでもよい。活性化剤は、塩であってもよい。塩は、ハロゲン化物塩であってもよい。ハロゲン化物塩の陽イオンは、元素周期表の第1族、第2族又は第13族から選択される金属であってもよい。ハロゲン化物塩のアニオンは、塩素、臭素又はフッ素であってもよい。活性化剤は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化アルミニウム(AlCl3)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、臭化ナトリウム(NaBr)、臭化カルシウム(CaBr2)、臭化アルミニウム(AlBr3)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カルシウム(CaI2)、又はヨウ化アルミニウム(AlI3)であってもよい。活性化剤は、塩化ナトリウムであってもよい。
【0035】
活性化剤は、シリカ粒子の細孔内に捕捉され、金属粒子と接触して酸素捕捉を活性化することができる。複合材料が乾燥された後のシリカ粒子の乾燥重量に基づく活性化剤の重量パーセンテージは、約0.1重量%~約10重量%、約0.3重量%~約10重量%、約0.5重量%~約10重量%、約0.8重量%~約10重量%、約1重量%~約10重量%、約3重量%~約10重量%、約5重量%~約10重量%、約8重量%~約10重量%、約0.1重量%~約8重量%、約0.1重量%~約5重量%、約0.1重量%~約3重量%、約0.1重量%~約1重量%、約0.1重量%~約0.8重量%、約0.1重量%~約0.5重量%又は約0.1重量%~約0.3重量%である。
【0036】
ポリマーコーティングは、ウレタン、アクリレート、メタクリレート、エポキシ、エチレン、ビニルアルコール及びそれらの混合物からなる群から選択されるモノマーを有するポリマーを含み得る。ポリマーの分子量は、約10,000~約500,000、約20,000~約500,000、約50,000~約500,000、約100,000~約500,000、約200,000~約500,000、約300,000~約500,000、約10,000~約300,000、約10,000~約100,000、約20,000~約200,000、約50,000~約200,000、約100,000~約200,000、約120,000~約200,000、約150,000~約200,000の範囲であってもよい。
【0037】
ポリマーコーティングの厚さは、約0.5nm~約15nm、約1nm~約15nm、約2nm~約15nm、約3nm~約15nm、約5nm~約15nm、約8nm~約15nm、約10nm~約15nm、約13nm~約15nm、約0.5nm~約13nm、約0.5nm~約10nm、約0.5nm~約8nm、約0.5nm~約5nm、約0.5nm~約3nm、約0.5nm~約2nm、約0.5nm~約1nm、約1nm~約5nm、約1nm~約10nm、約5nm~約10nm、又は約2nm~約8nmの範囲であってよい。
【0038】
複合材料は、約210~約230cm3/g、約210~約215cm3/g、約210~約220cm3/g、約210~約225cm3/g、約215~約230cm3/g、約220~約230cm3/g、約225~約230cm3/g、約215~約220cm3/g、約220~約225cm3/g、又は約225~約230cm3/gの範囲の酸素除去性能を有することができる。
【0039】
ここで、本明細書に記載の複合材料を調製する方法の例示的な非限定的な実施形態を開示する。
【0040】
本開示は、複合材料を調製する方法に関し、複数の活性化金属及びシリカ粒子を含有する溶液をポリマー溶液と混合して、それによって前記複合材料を形成する工程を含み、前記複合材料は、多孔質シリカ粒子、前記シリカ粒子の細孔内に配置された複数の金属粒子、及び前記シリカ粒子を少なくとも部分的に封入するポリマーコーティングを含む。
【0041】
本方法は、シリカ粒子の細孔サイズ又はチャネルサイズを拡大するために、アニーリング又は化学エッチングの工程をさらに含んでもよい。
【0042】
アニーリングは、約100℃~約700℃、約100℃~約600℃、約100℃~約500℃、約100℃~約400℃、約100℃~約300℃、約100℃~約250℃、約100℃~約200℃、約100℃~約150℃、約150℃~約700℃、約200℃~約700℃、約250℃~約700℃、約300℃~約700℃、約400℃~約700℃、約500℃~約700℃、約600℃~約700℃、又は約250℃~約500℃の温度範囲であってもよい。アニール工程は、好ましくは約250℃~約500℃の温度範囲であってもよい。
【0043】
化学エッチングは、アルカリ塩溶液を使用することができる。アルカリ塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の可溶性水酸化物であってもよい。アルカリ塩は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムからなる群から選択することができる。アルカリ塩としては、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0044】
アルカリ塩の量は、シリカ粒子の約0.01重量%~約5重量%、約0.01重量%~約3重量%、約0.01重量%~約1重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、約0.01重量%~約0.3重量%、約0.01重量%~約0.1重量%、約0.01重量%~約0.05重量%、約0.01重量%~約0.03重量%、約0.03重量%~約5重量%、約0.05重量%~約5重量%、約0.1重量%~約5重量%、約0.3重量%~約5重量%、約0.5重量%~約5重量%、約1重量%~約5重量%、又は約3重量%~約5重量%の範囲であってもよい。
【0045】
この方法は、シラン化合物でシリカ粒子を修飾する工程を更に含んでもよい。シラン化合物は、アミノ基又はカルボン酸基で官能化されていてもよい。シリカ材料と反応させるために使用されるシラン化合物の量は、シリカ粒子の重量に基づいて、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、約5重量%~約10重量%、約10重量%~約30重量%、約15重量%~約30重量%、約20重量%~約30重量%、又は約25重量%~約30重量%の範囲であってよい。
【0046】
金属/シリカ複合ナノ粒子中の金属粒子の重量は、初期湿潤含浸工程中のシリカ粒子と金属塩との比率に依存し、この初期湿潤含浸工程では、金属塩がシリカ粒子の細孔内に担持され、続いてゼロ価の鉄に還元される。
【0047】
ポリマー溶液のポリマーは、アルコールと水との混合物に溶解されてもよい。アルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1,3-プロパンジオール、1-ブタノール、2-ブタノール、1,4-ブタンジオール及び1,2,4-ブタントリオールからなる群から選択することができる。
【0048】
アルコールと水との混合物中の水含有量の体積比は、約10%~80%、約10%~70%、約10%~60%、約10%~50%、約10%~40%、約10%~30%、約10%~20%、約20%~80%、約30%~80%、約40%~80%、約50%~80%、約60%~80%、又は約70%~80%の範囲であってよい。アルコールと水との混合物中の含水量の体積比は、好ましくは約20%~30%の範囲であり得る。
【0049】
ポリマー溶液は、約30℃~約100℃、約30℃~90℃、約30℃~80℃、約30℃~70℃、約30℃~60℃、約30℃~50℃、約30℃~40℃、約40℃~100℃、約50℃~100℃、約60℃~100℃、約70℃~100℃、約80℃~100℃、又は約90℃~100℃の温度範囲で調製することができる。ポリマー溶液は、好ましくは約60℃~約75℃の温度範囲で調製され得る。
【0050】
ポリマー溶液中のポリマーの濃度は、約0.01重量%~約30重量%、約0.01重量%~約25重量%、約0.01重量%~約20重量%、約0.01重量%~約15重量%、約0.01重量%~約10重量%、約0.01重量%~約5重量%、約0.01重量%~約1重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、約0.01重量%~約0.25重量%、約0.01重量%~約0.1重量%、約0.1重量%~約30重量%、約0.15重量%~約30重量%、約0.25重量%~約30重量%、約0.5重量%~約30重量%、約1重量%~約30重量%、5重量%~約30重量%、約10重量%~約30重量%、約15重量%~約30重量%、約20重量%~約30重量%、又は約25重量%~約30重量%、又は約0.15重量%~約0.25重量%の範囲でありうる。ポリマー溶液中のポリマーの濃度は、好ましくは約0.15重量%~約0.25重量%の範囲であり得る。
【0051】
複数の活性金属/シリカ粒子と混合する前に、溶液中の残留酸素を除去するために、ポリマー溶液を窒素ガスでバブリングしてもよい。
【0052】
金属/シリカ粒子は、活性化前にエタノールと水との混合物と混合されてもよい。
エタノールと水との混合物中の金属/シリカ粒子の質量含有量は、約5重量%~約80重量%、約5重量%~約70重量%、約5重量%~約60重量%、約5重量%~約50重量%、約5重量%~約40重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約10重量%、約10重量%~約80重量%、約20重量%~約80重量%、約30重量%~約80重量%、約30重量%~約80重量%、約40重量%~約80重量%、約50重量%~約80重量%、約60重量%~約80重量%、又は約70重量%~約80重量%の範囲であってもよい。エタノールと水との混合物中の金属/シリカ粒子の質量含有量は、好ましくは約7~約10重量%の範囲であり得る。
【0053】
本方法は、金属粒子を塩で活性化して前記活性化金属を形成する工程を更に含んでもよい。活性化剤は塩化ナトリウムであってもよい。塩化ナトリウム水溶液の濃度範囲は、約5重量%~約30重量%、約8重量%~約30重量%、約10重量%~約30重量%、約15重量%~約30重量%、約20重量%~約30重量%、約25重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、約5重量%~約10重量%、又は約5重量%~約8重量%である。
【0054】
新たに調製された複数の活性化金属/シリカ粒子は、撹拌下において、滴下方式でポリマー溶液中に添加されてもよい。撹拌速度は、約100rpm~約2000rpm、約100rpm~約1500rpm、約100rpm~約1000rpm、約100rpm~約800rpm、約100rpm~約500rpm、約100rpm~約200rpm、約200rpm~約2000rpm、約500rpm~約2000rpm、約800rpm~約2000rpm、約1000rpm~約2000rpm、又は約1500rpm~約2000rpmであってよい。
【0055】
本開示はまた、本明細書で定義される複合材料の酸素捕捉剤材料としての使用に関する。
【0056】
本開示はまた、本明細書に定義される複合材料で基材を配合又は被膜する工程を含む、酸素捕捉膜又は酸素バリア膜を形成する方法に関する。
【0057】
複合材料は、小袋の形態の酸素捕捉剤として直接使用されてもよい。複合材料はまた、コーティング、共押出又はブロー技術によってポリマー膜に組み込まれてもよい。配合条件を変更することによって、透明な酸素捕捉ポリマー膜を製造することができた。
【0058】
図面の簡単な説明
添付の図面は開示された実施形態を示し、開示された実施形態の原理を説明するのに役立つ。しかしながら、図面は例示のみを目的として設計されたものであり、本発明の限定の定義として設計されたものではないことを理解されたい。
【0059】
図1
[
図1]は、本明細書で定義される複合材料を形成するプロセス2を示す模式図である。
【0060】
図2
[
図2]は、ポリマーコーティングを有する又は有しない、鉄/シリカナノ粒子の数個の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す。
図2(a)は、ポリマーコーティングを有しない鉄/シリカナノ粒子のTEM画像である。
図2(b)は、0.1重量%EVOH溶液を用いて調製した、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)被覆鉄/シリカナノ粒子のTEM画像である。
図2(c)は、0.15重量%EVOH溶液を用いて調製した、EVOH被覆鉄/シリカナノ粒子のTEM画像である。
図2(d)は、0.3重量%EVOH溶液を用いて調製した、EVOH被覆鉄/シリカナノ粒子のTEM画像である。
【0061】
図3
[
図3]は、圧縮EVOHペレットの数個の光学画像を示す。
図3(a)は、5重量%の鉄/シリカナノ粒子から作製された、圧縮EVOHペレットの光学画像である。ここに挿入されているのは、対応する圧縮EVOHペレットの写真である。
図3(b)は、5重量%のEVOH被覆鉄/シリカナノ粒子から作製された、圧縮EVOHペレットの光学画像である。ここに挿入されているのは、対応する圧縮EVOHペレットの写真である。
【0062】
図面の詳細な説明
図1に示すように、多孔質シリカ粒子200、シリカ粒子200の細孔100内に配置された複数の金属粒子300、及びシリカ粒子200を少なくとも部分的に封入するポリマーコーティング400を含む、複合材料500を形成するプロセス2が、提供される。最初に、細孔100を有するシリカ粒子200が提供され、次いで、金属粒子300が細孔100内に配置されることを可能にするために、細孔100のサイズを増加させるための、細孔拡大工程4に供される。細孔100のサイズが増加するにつれて、より多くの金属粒子300がシリカ粒子200内に存在することができる。次いで、これをポリマーコーティング工程6に供し、それによって金属/シリカ粒子は、ポリマー溶液に添加され、これが金属/シリカ粒子上にポリマーコーティング400を形成し、結果物である複合材料500を形成する。
【実施例】
【0063】
本発明の非限定的な実施例は、特定の実施例を参照することによって更に詳細に記載され、これらは本発明の範囲をいかなる方法においても限定するものとして解釈されるべきではない。
【0064】
材料及び方法
臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、塩化鉄(FeCl3)、塩化ナトリウム(NaCl)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、エタノール、エチルエステル、及び水素化ホウ素ナトリウムを、Sigma Aldrich Singaporeから購入した。アンモニア(30%)を、Honey well Singaporeから購入した。水酸化ナトリウム(NaOH)を、Merck Singaporeから購入した。
【0065】
実施例1:メソポーラスシリカナノ粒子からの多孔質鉄/シリカの調製
0.6gのCTABを70mLの水に溶解し、0.6mLのアンモニア溶液(30%)及び20mLのエチルエステルと混合した。得られた溶液を、500rpm、30℃で30分間撹拌した。激しく撹拌しながら、3.5mLのTEOSを10分で溶液に滴下して加えた。TEOSの添加後、混合物を30℃で12時間撹拌した。得られたメソポーラスシリカナノ粒子を、9000rpmで10分間の遠心分離によって精製し、エタノールで2回洗浄した。シリカナノ粒子を、1M塩酸を含むエタノール溶液中に再分散させた。この懸濁液を500rpmで60℃で5時間撹拌し、次いで9000rpmで10分間遠心分離することによって精製して、シリカ粒子中の過剰なCTAB分子を除去した。CTABを除去する工程を繰り返して、CTABの大部分がシリカナノ粒子から確実に除去されるようにした。粒子を風乾し、次いで室温で真空乾燥した。
【0066】
鉄/シリカナノ粒子の調製のために、1gのメソポーラスシリカナノ粒子を25mLの水中に分散させた。次に、塩化鉄の別の溶液(0.25g)を懸濁液に滴下して加えた。懸濁液を12時間撹拌して、メソポーラスシリカのチャネル内でのFeイオンの吸着を確実にした。激しく撹拌しながら、水素化ホウ素ナトリウム溶液(0.2g)2mLをシリカ懸濁液に滴下した。最終生成物を遠心分離により精製し、体積比7:3のエタノールと水の混合物に再分散させた。
【0067】
実施例2:拡大された細孔サイズを有する多孔質鉄/シリカ複合ナノ粒子の調製及び酸素捕捉試験
0.1重量%のNaOHによってエッチングされ、10重量%のAPTESで処理されたメソポーラスシリカを調製するために、実施例1の工程に従って多孔質シリカナノ粒子を調製した。1gの多孔質シリカナノ粒子を、500mlのエタノールに分散させた。10mLの水酸化ナトリウム(NaOH)溶液(0.1重量%)を懸濁液に加え、室温で3時間撹拌した。遠心分離によって精製した後、多孔質シリカナノ粒子を、0.1gのAPTESを含むエタノール溶液中に再分散させた。混合物を室温で1時間撹拌し続け、次いでナノ粒子を遠心分離によって収集した。
【0068】
300℃でアニールし、10重量%のAPTESで処理したメソポーラスシリカを調製するために、実施例1の工程に従って、多孔質シリカナノ粒子を調製した。1gの多孔質シリカナノ粒子をオーブン300℃で1時間アニールした。次に、多孔質シリカナノ粒子を、0.1gのAPTESを含むエタノール溶液中に再分散させた。混合物を室温で1時間撹拌し続け、次いでナノ粒子を遠心分離によって収集した。
【0069】
表1は、処理なし、化学エッチング及びシラン処理、並びにアニーリング及びシラン処理を伴う、鉄/シリカ複合体の、細孔径、鉄担持量、及び酸素捕捉性能を示す。
【0070】
【0071】
実施例3:ポリマー被覆鉄/シリカナノ粒子の調製
EVOHペレットを、体積比7:3のイソプロパノールと水との混合物に、65℃で溶解した。EVOH溶液100mLを試薬ボトルに入れ、65℃で撹拌し、窒素ガスで20分間バブリングして、溶液中の残留酸素を完全に除去した。塩化ナトリウム水溶液を、鉄/シリカナノ粒子の10重量%の質量含有量を有する鉄/シリカエタノール/水混合物に添加した。次に、0.5gの鉄/シリカナノ粒子を含む50mLのエタノール/水溶液を、EVOH溶液に滴下して加えた。懸濁液を室温に冷却し、窒素でバブリングした。窒素で10分間バブリングした水20mLを懸濁液に滴下した。EVOH被覆鉄/シリカナノ粒子を遠心分離によって精製し、真空オーブン中50℃で乾燥させた。(a)鉄/シリカナノ粒子、及び(b)0.1重量%、(c)0.15重量%及び(d)0.3重量%のEVOHを含むEVOH溶液を用いて調製したエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)被覆鉄/シリカナノ粒子のTEM像を
図2に示す。
図2(b)に示すように、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)被覆は、観察されなかった。
図2(c)に示すように、EVOHポリマー層の厚さは5nmであった。
図2(d)に示すように、EVOHポリマー層の厚さは10nmであった。
【0072】
実施例4:EVOH被覆鉄/シリカナノ粒子の酸素捕捉試験
EVOH被覆鉄/シリカナノ粒子の酸素捕捉性能を評価するために、実施例3から得られた各試料0.1gを25mlのガラス製円錐フラスコに入れた。フラスコ内に1mlの水を入れたガラス瓶を入れ、室内湿度(RH)を100%に調整した。次いで、フラスコを気密ゴム隔壁ストッパで密封し、酸素捕捉実験の間、室温に置いた。EVOH被覆鉄/シリカナノ粒子の酸素捕捉性能を表2に列挙する。0.1重量%のEVOHを含む鉄/シリカサンプルのポリマーコーティング厚さは、約1nmであった。0.15%EVOHを含む試料のポリマーコーティングの厚さは約5nmであり、0.3%EVOHを含む試料のポリマーコーティングの厚さは約10nmであった。参考までに、(ポリマーコーティング無し)鉄/シリカナノ粒子は、193.1cc/g Feの捕捉能力を示した。0.15重量%のEVOHを含むEVOH溶液によって調製されたEVOH被覆鉄/シリカナノ粒子は、より高い酸素捕捉能力(211cc/g Fe)を与えた。
【0073】
表2は、異なるEVOH溶液を用いて調製された鉄/シリカナノ粒子及びEVOH被覆鉄/シリカナノ粒子の酸素捕捉性能を示す。
【0074】
【0075】
より厚いEVOH被膜を有する酸素捕捉剤は、飽和酸素捕捉能力を達成するためにより長い時間を要した。0.3重量%のEVOHを含む試料の飽和捕捉能力は、164を超えることができた。0.15重量%のEVOHを含む試料は、主に、消費されるシリカ中に拡散される酸素を減少させるための、酸素に対するEVOHのバリア特性のために、0.3重量%のEVOHを含む試料と比較して、より良好な性能を有した。少量のEVOHは、酸素を効果的にブロックすることができず、一方、多すぎる量のEVOHは酸素の拡散を著しく妨げる。EVOH濃度の最適化された範囲は、0.15~0.25重量%であるべきである。
【0076】
実施例5:EVOH被覆鉄/シリカナノ粒子を有するポリマー複合体の調製
鉄/シリカナノ粒子及びEVOH被覆鉄/シリカナノ粒子(0.15重量%のEVOH溶液を用いて調製)を、EVOHペレットと混合し、二軸スクリュー押出機を通して配合し、窒素ガスでフラッシュした。鉄/シリカナノ粒子及びEVOH被覆鉄/シリカナノ粒子の質量含有量を、5重量%に保った。得られたポリマーペレットをホットプレスにより圧縮して、薄膜を形成した。
図2に示すように、EVOH被覆鉄/シリカを有する試料では、ナノ粒子の凝集がはるかに少なく観察され、その結果、より透明な膜が得られた。さらに、EVOH被覆鉄/シリカを有するEVOHペレットは、鉄/シリカ(0.52cc/gペレット)と配合した試料よりも高い酸素捕捉能力(1.14cc/gペレット)を有していた。(a)5重量%の鉄/シリカナノ粒子及び(b)5重量%のEVOH被覆鉄/シリカナノ粒子を含む圧縮EVOHペレットの光学画像及び対応する圧縮EVOHペレットの写真を
図3に示す。光学画像に示すように、EVOH被覆鉄/シリカナノ粒子を含む試料では、鉄/シリカナノ粒子の凝集がはるかに少なく観察され、挿入図に示すように、より透明な膜が得られた。
図3aの挿入図に示された膜は、140μmの厚さを有していた。
図3aの挿入図に示された膜は、70μmの厚さを有していた。
【0077】
表3は、鉄/シリカナノ粒子及びEVOH被覆鉄/シリカナノ粒子を配合したEVOHペレットの酸素捕捉性能を示す。
【0078】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本開示では、複合材料は、積層シート、小袋、及び透過性バッグなどの容器に配置される酸素捕捉剤として使用されてもよい。複合材料はまた、酸素捕捉プラスチック膜又は酸素バリアプラスチック膜を形成するために、複合化又は被覆によって、ポリマーマトリックスに一体化される酸素捕捉剤として使用されてもよい。
【0080】
本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、前述の開示を読んだ後、本発明の様々な他の修正及び適応が当業者には明らかであり、すべてのそのような修正及び適応が添付の特許請求の範囲内に入ることが意図されることは明らかであろう。
本発明に関連する発明の実施形態の一部を以下に示す。
[実施形態1]
多孔質シリカ粒子、前記シリカ粒子の細孔内に配置された複数の金属粒子、及び前記シリカ粒子を少なくとも部分的に封入するポリマーコーティングを含む、複合材料。
[実施形態2]
前記シリカ粒子は、シラン化合物で修飾されている、実施形態1に記載の複合材料。
[実施形態3]
前記シラン化合物は、アミノ基又はカルボン酸基で官能化されている、実施形態2に記載の複合材料。
[実施形態4]
前記金属粒子の金属は、周期表の第8族から選択される、実施形態1~3のいずれか一項に記載の複合材料。
[実施形態5]
前記金属粒子の金属は、鉄である、実施形態1~4のいずれか一項に記載の複合材料。
[実施形態6]
前記金属粒子のサイズは、100nm未満である、実施形態1~5のいずれか一項に記載の複合材料。
[実施形態7]
前記多孔質シリカ粒子のサイズは、20nm~1μmの範囲である、実施形態1~6のいずれか一項に記載の複合材料。
[実施形態8]
前記多孔質シリカ粒子の細孔サイズは、5~50nmの範囲である、実施形態1~7のいずれか一項に記載の複合材料。
[実施形態9]
前記複合材料中の金属粒子の重量は、前記多孔質シリカ粒子の乾燥重量に対して1~80重量%の範囲である、実施形態1~8のいずれか一項に記載の複合材料。
[実施形態10]
活性化剤を更に含む、実施形態1~9のいずれか一項に記載の複合材料。
[実施形態11]
前記活性化剤は、ハロゲン化物塩である、実施形態10に記載の複合材料。
[実施形態12]
前記ポリマーコーティングは、ウレタン、アクリレート、メタクリレート、エポキシ、エチレン、ビニルアルコール及びそれらの混合物からなる群から選択されるモノマーを有するポリマーを含む、実施形態1~11のいずれか一項に記載の複合材料。
[実施形態13]
前記ポリマーコーティングの厚さは、0.5~15nmの範囲である実施形態1~12のいずれか一項に記載の複合材料。
[実施形態14]
前記複合材料は、210~230cm
3
/gの酸素捕捉性能を有することを特徴とする、実施形態1~13のいずれか一項に記載の複合材料。
[実施形態15]
複合材料を調製する方法であって、複数の活性化金属及びシリカ粒子を含有する溶液をポリマー溶液と混合して、それによって前記複合材料を形成する工程を含み、前記複合材料は、多孔質シリカ粒子、前記シリカ粒子の細孔内に配置された複数の金属粒子、及び前記シリカ粒子を少なくとも部分的に封入するポリマーコーティングを含む、方法。
[実施形態16]
前記シリカ粒子の細孔サイズを拡大するために、アニール又は化学エッチングする工程を更に含む、実施形態15に記載の方法。
[実施形態17]
前記アニール工程は、100~700℃で行われる、実施形態16に記載の方法。
[実施形態18]
前記化学エッチング工程は、アルカリ塩溶液の使用を含む、実施形態16に記載の方法。
[実施形態19]
前記溶液中のアルカリ塩の量が、シリカ粒子の0.01重量%~5重量%の範囲である、実施形態18に記載の方法。
[実施形態20]
シリカ粒子をシラン化合物で修飾する工程を更に含む、実施形態15~19のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態21]
シラン化合物は、アミノ基又はカルボン酸基で官能化されている、実施形態20に記載の方法。
[実施形態22]
前記ポリマー溶液の前記ポリマーが、アルコールと水との混合物に溶解される、実施形態15~21のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態23]
前記ポリマー溶液中の前記ポリマーの濃度は、0.01~10重量%の範囲である、実施形態15~22のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態24]
金属粒子を塩で活性化して前記活性化金属を形成する工程を更に含む、実施形態15~23のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態25]
実施形態1~14のいずれか一項に記載の複合材料の、酸素捕捉材料としての使用。
[実施形態26]
実施形態1~14のいずれか一項に記載の複合材料で、基材を配合又は被膜する工程を含む、酸素捕捉膜又は酸素バリア膜を形成する方法。