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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】シース分割装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
A61M25/06 554
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021548160
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 GB2020050799
(87)【国際公開番号】W WO2020193975
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】1904073.2
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】503116084
【氏名又は名称】バスクテック リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VASCUTEK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】カラム クレスウェル
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06497681(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0298839(US,A1)
【文献】実開昭62-097653(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
療デバイス送達システムと共に使用して、シースを分割し、分割された半分のシースのそれぞれを医療デバイスの周りにガイドし、前記医療デバイスを展開するためのシース分割装置であって、
前記シース分割装置は、
a) 医療デバイスを受け入れる医療デバイス経路を有する胴体と、
b) 前記シース付き医療デバイスから除去されるシース材料をガイドするシース経路を画定する1つ以上のガイド要素を有する1つ以上のアーム部材と、
を備え、
前記1つ以上のアーム部材の少なくとも一つのセクションは、前記医療デバイス経路の長手方向軸に向かって移動可能であり、および前記長手方向軸から離れるように移動可能であり、
前記シース経路は、各アーム部材の内側から第1ガイド要素を通って前記アーム部材の外側まで延在し、前記アーム部材の前記外側に沿って延在し、前記第1ガイド要素の遠位に設けられる第2ガイド部材を通って延在する、シース分割装置。
【請求項2】
2つのアーム部材が設けられ、各アーム部材が、シース材料をガイドする1つ以上のガイド要素を含む、請求項1に記載のシース分割装置。
【請求項3】
各アーム部材のうちの少なくとも一つのセクションが、弾性的に変形可能な材料で形成される、請求項1に記載のシース分割装置。
【請求項4】
各アーム部材の少なくとも一つのセクションが、ヒンジで取り付けられる、請求項1に記載のシース分割装置。
【請求項5】
前記各アーム部材のセクションは、前記シース経路に沿って引っ張られるシース材料の作用の下で、半径方向内向きに撓む、請求項1に記載のシース分割装置。
【請求項6】
各アーム部材の近位端部が、前記シース分割装置内にある医療デバイスからある位置まで、半径方向外向きに自然に延在する、請求項1に記載のシース分割装置。
【請求項7】
各アーム部材が、前記装置内に存在する医療デバイスを通って遠位方向に向かう流れに対する前記アーム部材の外向きの撓みに適合するプロファイルを、前記アーム部材の近位端部において提供する、請求項1に記載のシース分割装置。
【請求項8】
各アーム部材が、その近位端部で湾曲するプロファイルを有する、請求項7に記載のシース分割装置。
【請求項9】
各アーム部材が、長手方向に、前記医療デバイス経路の前記長手方向軸と実質的に平行に延在し、前記各アーム部材の近位範囲に第1ガイド要素を有する、請求項1に記載のシース分割装置。
【請求項10】
前記シース経路はさらに第2ガイド要素を含み、前記第2ガイド要素は、前記第1ガイド要素の遠位に設けられ、前記第1ガイド要素と円周方向に並ぶ、請求項9に記載のシース分割装置。
【請求項11】
前記第1ガイド要素及び前記第2ガイド要素は、各アーム部材のヒンジ点の両側に設けられる、請求項10に記載のシース分割装置。
【請求項12】
前記アーム部材における前記1つ以上のガイド要素はスロットを画定する、請求項1に記載のシース分割装置。
【請求項13】
前記スロットは開口スロットを画定する、請求項12に記載のシース分割装置。
【請求項14】
前記胴体は、前記医療デバイス経路の断面積を減少させるクランプ手段を有する、請求項1に記載のシース分割装置。
【請求項15】
前記クランプ手段は中央開口部を画定し、前記中央開口部は、送達シャフトに対して前記医療デバイスを十分に圧縮して前記送達シャフトと前記医療デバイスとの間の血液漏れを妨げるような寸法であるが、前記送達シャフトが医療デバイス内で摺動可能なように十分緩い寸法である、請求項14に記載のシース分割装置。
【請求項16】
前記胴体は、送達される前記医療デバイスを収容する、一緒に結合可能な複数の胴体セクションを含む、請求項1に記載のシース分割装置。
【請求項17】
前記胴体は、ヒンジで結合可能な2つの胴体セクションを有する、請求項16に記載のシース分割装置。
【請求項18】
各胴体セクションがクランププロファイルを伴い、前記胴体セクションの前記クランププロファイルは、前記胴体セクションが結合し前記装置内の前記医療デバイスの材料を圧縮すると、相互に係合する、請求項16に記載のシース分割装置。
【請求項19】
各胴体セクション上の前記クランププロファイルは、歯のようであり、前記胴体セクションが結合されているときに中央開口部を画定し、前記中央開口部は、送達シャフトに対して前記医療デバイスを十分に圧縮して前記送達シャフトと前記医療デバイスとの間の血液漏れを妨げるような寸法であるが、前記送達シャフトが前記医療デバイス内で摺動可能なように十分に緩い寸法である、請求項18に記載のシース分割装置。
【請求項20】
一方の胴体セクション上の前記クランププロファイルは単一の歯形を有し、他方の胴体セクション上の相互に係合する前記プロファイルは一対の歯形を有し、前記胴体セクションが一緒に結合するときに、前記歯形は摺動自在に連結する、請求項19に記載のシース分割装置。
【請求項21】
シース付き医療デバイスを展開する医療デバイス送達システムであって、
前記医療デバイス送達システムは、
a) 展開可能な医療デバイスを保持する医療デバイス送達シャフトと、
b) 前記送達シャフト上に設けられるシース付き医療デバイスと、
c) シースを分割し、分割された半分のシースのそれぞれを前記デバイスの周りにガイドするためのシース分割装置であり、胴体を含む、該シース分割装置と、
を備え、
前記胴体は、前記送達シャフト上に設けられる前記医療デバイスを受け入れる医療デバイス経路を含み、
前記シース分割装置は、シース経路を画定する1つ以上のガイド要素を有する1つ以上のアーム部材を備え、
前記シース経路は、前記シース付き医療デバイスから除去されるシース材料をガイドし、
前記1つ以上のアーム部材は、前記医療デバイス経路の長手方向軸に向かって移動可能であり、および前記医療デバイス経路の長手方向軸から離れるように移動可能であり、
前記アーム部材または各アーム部材は、シースの除去時に前記送達シャフトに向かって半径方向内向きに撓み、次いで、シースの除去後に半径方向外向きに撓むように構成される、医療デバイス送達システム。
【請求項22】
前記シース分割装置は、前記医療デバイスを前記送達シャフトに対して圧縮して血液漏れを妨げるように構成されるクランプ手段を備える、請求項21に記載の医療デバイス送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管手術に使用する装置および方法に関し、限定はされないが、特に血管内動脈瘤修復に使用するシース分割装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この点に関して、オンポンプ手術において、クロフォード手術のような完全開胸手術は、高い死亡率/罹患率および術後合併症と関連することが知られている。さらに、例えば結合組織病になっている大規模コホートの患者に、内臓脱分枝を行い、続いてステントグラフト/オクトパス手術を行うハイブリッド修復を行うことはできない。その上、完全血管内及びハイブリッド修復をするには、両方とも血管内デバイスにアクセスしやすいことを必要とし、これは同様に、大規模コホートの患者で問題となる可能性がある。
【0003】
一般に、人工心肺(CPB)装置を用いるオンポンプ手術は、オフポンプ手術と比較して、ショック/出血、神経、心臓、呼吸器、腎臓、急性腎不全、成人呼吸窮迫症候群、インプラント感染、術後感染、敗血症、肺炎、末梢血管合併症の危険性が増加することが知られている。
【0004】
オフポンプ手術は、死亡率と呼吸器系合併症を減少させ、入院期間を短縮し、直接自宅退院を増加させることが認められるため、利点があることを示す根拠がある。
【0005】
胸腹部医療デバイスを、オフポンプですなわち肺バイパス装置を使用せずに移植することに未達成の需要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、上記の問題に対処しようとする装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、シース付き医療デバイスを展開するための医療デバイス送達システムと共に使用するシース分割装置が提供され、シース分割装置は、医療デバイスを受け入れる医療デバイス経路を有する胴体と、シース付き医療デバイスからシース材料をガイドするシース経路を画定する1つ以上のガイド要素を有する1つ以上のアーム部材と、を備え、1つ以上のアーム部材の少なくとも一つのセクションは、医療デバイス経路の長手方向軸に向かって移動可能であり、および医療デバイス経路の長手方向軸から離れるように移動可能である。
このようにして、この装置は、医療デバイスの展開を補助する改善した機構を提供する。
【0008】
好ましくは、2つのアーム部材が設けられ、各アーム部材が、シース材料をガイドする1つ以上のガイド要素を有する。2つのこのようなアーム部材を用いて、医療デバイスから除去されるシース材料は、2つの尾部に分割され、当該尾部はそれぞれ、装置の対向する外側部上のシース経路に従う。
【0009】
好ましくは、各アーム部材の少なくとも一部が、弾性的に変形可能な材料で形成される。この点に関して、アーム部材の材料は、上述の移動を増進するプロファイルを有し得る。
【0010】
好都合には、各アーム部材の少なくとも一つのセクションが、ヒンジで取り付けられる。さらに各アーム部材は、機械的な関節ジョイントを有し得る。
【0011】
好都合には、各アーム部材が、シース経路に沿って引っ張られるシース材料の作用の下で、半径方向内向きに撓むように構成され、したがって、分割工程を容易にする。
【0012】
好ましくは、各アーム部材の近位端が、装置内にある医療デバイスからある位置まで、半径方向外向きに自然に延在する。
【0013】
好都合には、各アーム部材が、装置内に存在する医療デバイスを通って遠位方向に向かう流体の流れに対するアーム部材の外向きの撓みに適合するプロファイルを、アーム部材の近位端において提供するように構成される。このようにして、血液が医療デバイスを通って流れるときに各アーム部材によって引き起こされる損傷のリスクが軽減される。この目的のために、各アーム部材がその近位端部に外向きに広がるプロファイルを有することが好ましい。この点において、アーム部材は、実質的に円形であるシースのプロファイルに一致するように、それらの近位端部で湾曲していてもよい。
【0014】
好都合には、各アームが、長手方向に、医療デバイス経路の長手方向軸と実質的に平行に延在し、各アームの近位範囲に第1ガイド要素を有する。
【0015】
好ましくは、シース経路はさらに第2ガイド要素を備え、当該第2ガイド要素は、第1ガイド要素の遠位に設けられ、第1ガイド元素と円周方向に並ぶ。
【0016】
好都合には、第1ガイド要素及び第2のガイド要素は、各アーム部材のヒンジ点の両側に設けられる。
【0017】
好ましくは、アーム部材における1つ以上のガイド要素は、スロットである。スロットは、開口スロットであるのが便利である。
【0018】
好ましくは、シース経路は、各アーム部材の内側から第1ガイド要素を通ってアーム部材の外側まで延在し、アーム部材の外側に沿って延在し、および
第1ガイド要素の遠位に設けられる第2ガイド部材を通って延在する。
【0019】
好都合には、各アーム部材の外側プロファイルは、半径方向外側に隆起して、圧力点を提供する。これは、シース材料を医療デバイスから取り外すときに引っ張ると、シース材料が作用して、それにより、アーム部材を半径方向内側に撓ませることを助けることができる。
【0020】
好ましくは、胴体は、医療デバイス経路の少なくとも一部の断面積を減少させるクランプ手段を有する。好都合には、胴体は、送達される医療デバイスの周りのハウジングである、一緒に結合可能な複数の胴体セクションを備える。
【0021】
好ましくは、胴体は、ヒンジで結合可能な2つの胴体セクションを有する。
【0022】
好都合には、クランプ手段は、各胴体セクション上に設けられるクランププロファイルの形態をとり、胴体セクションが結合すると、胴体セクションのクランププロファイルは、相互に係合して、装置内に設けられる医療デバイスの材料を圧縮する。
【0023】
好ましくは、各胴体セクション上のクランププロファイルは、歯のようであり、胴体セクションが結合するときに中央開口部を画定し、中央開口部は、送達シャフトに対して医療デバイスを十分に圧縮して送達シャフトと医療デバイスとの間の血液漏れを防止するような寸法であるが、送達シャフトが医療デバイス内で摺動可能なように十分に緩い寸法である。
【0024】
好都合には、一方の胴体セクション上のクランププロファイルは単一の歯形を有し、他方の胴体セクション上の相互に係合するプロファイルは一対の歯形を有し、胴体セクションが一緒に結合するときに、単一の歯形の両側は摺動自在に重なり合う。
【0025】
本発明のさらなる態様によれば、上記で定められたシース分割装置を使用して医療デバイスからシースを除去する方法が提供され、この方法は、
医療デバイス上に圧縮する装置のクランプ手段が送達シャフトと医療デバイスとの間の血液漏れを防止するシールを形成している状態で、シース付き医療デバイスを血管内に挿入するステップと、
装置の遠位端からシース材料の尾部を引っ張り、その結果、アーム部材又は各アーム部材が、半径方向内向きに撓み、医療デバイスの外側プロファイルと並ぶようにより近づくステップと、
デバイスからシースを除去して、血管と係合するようにデバイスを半径方向外向きに拡張するステップと、
血流が医療デバイスを通ることを可能にし、血流はアームまたは各アームを半径方向外向きに撓ませるステップと、を含む。
このようにして、制御される方法で各アームを撓ませ、それによって、装置のサイズが制限されることから防ぐ。クランプ手段は、送達シャフトと医療デバイスとの間の血液漏れを防止するが、血液は、デバイスの他の部分または枝を通って流れることができる。
【0026】
本発明のさらなる態様によれば、シース付き医療デバイスを展開する医療デバイス送達システムであって、
システムは、
展開可能な医療デバイスを保持する医療デバイス送達シャフトと、
送達シャフト上に提供されるシース付き医療デバイスと、
胴体を備えるシース分割装置と、
を備え、
胴体は、送達シャフト上に設けられる医療デバイスを受け入れる医療デバイス経路を有し、
シース分割装置は、シース経路を画定する1つ以上のガイド要素を有する1つ以上のアーム部材を備え、
シース経路は、シース付き医療デバイスから除去されるシース材料をガイドし、
1つ以上のアーム部材は、医療デバイス経路の長手方向軸に向かって移動可能であり、および医療デバイス経路の長手方向軸から離れるように移動可能である、
医療デバイス送達システムが提供される。
【0027】
好都合には、各アーム部材が、シースを除去すると送達シャフトに向かって半径方向内向きに撓み、次いで、シースの除去後に半径方向外向きに撓むように構成される。
【0028】
好ましくは、シーススプリッタ装置は、医療デバイスを送達シャフトに対して圧縮して血液漏れを防止するように構成されるクランプ手段を備える。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明によるシース分割装置の図を示す。
図2図2a及び図2bは、本発明のアーム部材の動作を示す。
図3】装置の中心を通るように配置される送達シャフト部材を追加した図1の装置の内部図を示す。
図4図4a~4cは、装置のクランプ手段のクランプ動作の段階を示す。
図5図5a及び図5bは、医療デバイスを有する本発明の装置の動作段階を示す。
図6図6a及び図6bは、医療デバイスを有する本発明の装置の動作段階を示す。
図7】医療デバイスを有する本発明の装置の動作段階を示す。
図8図8a~8fは、胸腹部デバイスを移植する際の本発明の使用段階を示す。
図9】本発明のアーム部材の別の実施形態を示す。
図10】本発明のさらなる実施形態を示す。
【0030】
本発明の特定の実施形態を、例として及び添付の図面を参照して以下に説明する。
【0031】
図面に示されるように、本発明のシース分割装置1は、医療デバイス送達システム2の一部として提供される。
【0032】
好ましい形態では、シーススプリッタ装置は、一緒に結合して医療デバイス6が通るための中央通路を画定し得る一対の対向する側部4、5を有する胴体3を備える。図8bに示すように、医療デバイス6は、大動脈9のような血管内で展開するために、シース8の内部に圧縮できる拡張可能な内部セクション7を含む。シースは、内部セクション7を拡張して大動脈の内壁に係合させるために、分割可能である。
【0033】
各側部4、5はアーム部材10を有し、アーム部材10のうちの少なくとも一つのセクションは、シーススプリッタの長手方向軸11に対して半径方向内向き及び外向きに動くことができる。アーム部材はその近位端にガイドスロット12を備え、シース材料8は当該ガイドスロット12を通過することができる。この点に関して、特に図1および図2bに示されるように、シース材料は、シース経路に沿って、アーム部材10の内面上のガイドスロット12を通って装置の外側まで上昇し、その後装置の外面に遠位に沿って、装置の遠位端にある遠位ガイド13に向かう。この実施形態では、各アーム部材の外側プロファイルは、シース経路の途中に隆起点21を含む。シース材料を引っ張ると、シース材料は隆起点21に係合し、アーム部材を長手方向軸11に向けて内向きに付勢することを助ける。これは、本来の位置におけるアーム部材がシースの外側プロファイルよりも幅が広いことに起因する。
【0034】
アーム部材を、材料の弾性によって自然に撓むことができる材料で形成し得る。さらに、アーム部材のプロファイルを、点22に示されるある点で可撓性を促進するように形成してもよく、または図9の実施形態に示されるように、機械関節ヒンジ30をアーム部材に組み込んでもよい。さらに、アーム部材の中立位置を、可撓性が一方向にのみ必要とされるように、閉位置または開位置とするように構成し得る。この点に関して、図10に示すように、バンド24などの別個のコンポーネントを提供し得る。バンド24は、アーム部材10を閉位置に拘束し、シースが分割されてアーム部材10を開くことが可能になると取り外すことができる。
【0035】
図3および図4a~図4cは、シーススプリッタ装置を医療デバイス送達システムに取り付ける機構を示す。この点に関し、胴体3の対向する側部4,5はそれぞれ、図4aに示す開位置から図4cに示す閉位置に動くことが可能なクランプ要素14,15を含む。これに関連して、胴体の側部4、5はヒンジ16で結合され、したがって側部4、5は枢動可能であり、装置の長手方向軸11に沿って延在する医療デバイス上でクランプ要素を互いに接近させることができる。
【0036】
より具体的には、胴体セクション4、5が結合すると、クランプ要素14、15は相互に係合して、装置内に設けられる医療デバイスの材料を圧縮する。この点に関して、各胴体セクション上のクランププロファイルは、歯のようであり、胴体セクションが結合するときに中央開口部17を画定する。当該中央開口部は、医療デバイスの送達シャフト26に対して医療デバイスを十分に圧縮し、送達シャフトと医療デバイスとの間の血液漏れを防止するような寸法であるが、医療デバイス送達シャフトが医療デバイス内で摺動可能なように十分緩い。
【0037】
クランプ要素14、15のクランププロファイルは、一対の突起18および中央の空間19を有する歯のようであり、閉構成のときに、医療装置をクランプするのに適した寸法の中央開口17を確立し得る。
【0038】
スプリッタの使用は、図5a、5b、6a、6b、7および8a~8fを参照して説明される。
【0039】
図5aおよび図5bは、医療デバイスのアクセス枝27上にクランプされるシース分割装置を有する、圧縮された、シース付き医療装置6を示す。図5aの断面図は、クランプ要素15のクランププロファイルを示す。クランププロファイルは、医療デバイス6の外側を送達シャフト26に対してクランプして、送達シャフトと医療デバイスとの間の血液漏れを防止するが、医療デバイス送達シャフト26がクランプ領域において医療デバイス6内で摺動できるように十分に緩い。
【0040】
図6aおよび6bでは、シース分割装置がアクセス枝27上に依然としてクランプされている状態で、医療デバイス6は展開される。シース材料8は除去されており、医療デバイス6を拡張することができる。
【0041】
次に、図7において、シース分割装置がアクセス枝27上の所定の位置に依然としてクランプされている状態で、送達シャフト26などの装置のコンポーネントは、装置を通り、血流を運ぶ接合部42を通り越して後退する。
【0042】
図8a~8fは、動脈瘤に関する装置の使用を示す。図8aに示されるように、医療デバイス6を送達システム2の近位端部に設け、シーススプリッタ装置1をシステムの遠位端部に設ける。第1のステップでは、装置の腸骨コンポーネント28を患者に取り付け、クランプする。大動脈20内に切開部を形成し、次いでガイドワイヤ31を介して当該大動脈20を拡張する。
【0043】
図8bに示す第2のステップでは、ガイドワイヤ31を介してデバイス6を、血管壁を通して挿入し、展開する。デバイスを展開するために、医療デバイスを包むシース材料8を、矢印25によって示される方向に遠位に除去する。これに関連して、シース材料の尾部は、シース経路に沿うシーススプリッタに沿っている糸である。シース引っ張りハンドル32を引っ張ることで、シース材料の尾部にアクセスして後方に引っ張り、装置を展開することができる。
【0044】
次に、図8cに示す第3のステップでは、腸骨コンポーネント28のクランプを外すことで、血液が、シースのない装置を通り、近位端29から腸骨枝40を通って患者の腸骨41内に流れて動脈瘤内に戻り、内臓血管を潅流できる。
【0045】
図8dは、デバイスを解放して、スプリッタ装置を通じて送達システムのコンポーネントを後退させる第4のステップを示す。この点に関して、図8cに示されるステップの後、送達システムに取り付けられた状態からデバイスを解放し、クランプしているシーススプリッタに対して、送達システムのシャフト/先端部を図7に示される位置に後退させることができる。次に、これはシーススプリッタ/送達システム先端部の近位に装置のアクセス枝をクランプすることを可能にし、その結果、アクセス枝を通るいかなる血液損失も起こさずに、送達システム(シーススプリッタを含む)を完全に除去することができる。図8dは、送達システムを取り外した後の、アクセス枝がクランプされたデバイスを示す。
【0046】
図8eでは、最小限の虚血で、医療デバイス上に内臓血管を脱分枝させる。
【0047】
最後に、図8fに示す第6のステップで、動脈瘤嚢を除去する。
【0048】
これに関連して、オフポンプ手術では、血管内デバイスからシースを外すと、血管内デバイスが非常に素早く血液で満たされる傾向があることが理解されるであろう。本発明は、シースが分割されるときにシースにかかる力、およびデバイスが拡大するときにデバイスにかかる力を制御するフレキシブルアーム部材10を使用して、急激に加圧される医療デバイスからシースを外すことを容易にする、形状変化式止血シーススプリッタコンポーネントを提供する。
【0049】
一方、スプリッタのクランプ要素14、15を、中心送達シャフト26を依然として血液損失なしに実質的にクランプ要素内の嵌合部の隙間17を通って後退させることができる医療デバイスの適当な位置に有することによって、血液損失を最小限に抑える。
【0050】
これに関連して、シーススプリッタ1は、シースの1つ以上(フレキシブルアームおよびスロットの数に対応する)の尾部に取り付けられ、当該尾部は、シース経路に沿ってガイドスロット12を通ってアーム部材の内側から装置の外側へ通る。シースの尾部は、オペレータに最も近い単一のハンドル32によってつながれて、ハンドル32が引っ張られる場合、ハンドル32は、
1.シースが完全に分割されてフレキシブルアームのスロットを通って除去されるまで、取付ハンドルを使用してシース8を引き抜いてデバイスを解放し、
2.アーム部材のガイドスロットを通るシースの尾部の構成により、外向きに分割するシース尾部と内向きに曲がるアームとの間で、制御される反力を生じさせる。
【0051】
次いで、フレキシブルアーム部材10は、加圧されるデバイス6の損傷を防止することに役立てるために、最小限の反力を提供する。
【0052】
この点に関して、シーススプリッタは、以下の構成のうち1つ以上を備え得る。
1.1つ以上のアーム部材/細長い部材10であり、それぞれが、
(a)フレキシブルジョイント22を有し、
(b)シースの尾部が織り込まれる、完全にまたは部分的に閉じるガイドスロット12、13を有する。
2.アーム部材に取り付けられるクランプ(clasp)/クランプであり、
(a)理想的には、板のような2つのクランプ要素14、15を有することができ、一方側と他方側とが、一緒に閉じられるときに、係合して3層のクランプを形成し、
(b)デバイスおよび中心シャフトのための3層板の形状によって形成される隙間17を中央に有する。
【0053】
医療デバイス6は「オフポンプ」で移植されているので、シース8を医療デバイス6から取り外すと、内部セクション7は血液で膨張し、やがてスプリッタコンポーネントを押し始める。デバイスとスプリッタコンポーネントとの間のこの相互作用に関連してデバイスが損傷を受けるリスクを緩和するために、スプリッタは、形状を変えてデバイスの形状の変化に適合することができるように構成される。これにより、スプリッタが加圧されている間、デバイスが損傷を受けるリスクは緩和される。
【0054】
「オフポンプ」移植を可能にするさらなる構成は、送達システムにシーススプリッタを取り付け、スプリッタコンポーネントを通る血液損失を防止する。さらに、当該取り付けによって、最小限の血液損失で、送達システムの残りの部分を除去することまたは引き抜くことができる。すなわち、送達システムのシャフトは、スプリッタ取付部を通って摺動することができ、やがてアクセス枝(送達システムがそれを通って配置されるデバイスにおける枝)を送達システムの近位にクランプし、次いでスプリッタコンポーネントを除去することができる。
【0055】
図面に示されるシーススプリッタの実施形態は、2つの細長いアーム部材10を有し、当該アーム部材の両端は、分割されたシースのいずれか半分を通すことができるスロットまたは窓を有する。これらのスロットは、一般に鋭い切刃を利用する従来の方法ではシースを分割せず、代わりに、シースの2つの分離した端部がスロットを通って移動するときに、シースの2つの分離した端部に反対方向に力をかけて、シースを分離させて分割する。
【0056】
アーム部材の幾何学的形状は、アーム部材がある程度の組込みの可撓性を備え、本来の状態において、アーム部材が装置の主軸とほぼ平行であることを確保する。シース8がスプリッタを介して引っ張られると、シースがスプリッタアームに加える力によってアーム部材が一緒に近づき、シースが分割し始めるとともにスロットがより一直線になり、ひいてはスプリッタコンポーネントを介してシースが移動することが容易になる。シースが取り外されデバイスが血液で膨張すると、スプリッタアーム部材に対するデバイスの圧力が、アーム部材を押し離す。これは、アーム部材が加圧されるときに、アーム部材の固有の可撓性によって、アーム部材がデバイスのサイズを制限すること又はデバイスに過剰な力を加えることを防ぐことを意味する。
【0057】
送達システムへのスプリッタの取り付けに関して、好ましい実施形態の図3および図4を参照して上述したように、スプリッタは3つの構成のセット(スプリッタ胴体の一方の側に2つ、反対側に1つ)を利用し、当該構成のセットは、スプリッタが閉位置にあるときに重なり合う。これらは、実質的にデバイスの繊維を送達システムシャフト上にクランプする。このクランプ効果は、デバイスから枝を通って血液がわずかでも出ることを防止する程度には十分きついが、必要なときに送達システムのシャフトがクランプされている枝を通って摺動することが可能な程度には、依然として十分に緩い。
【0058】
したがって、好ましい実施形態では、シーススプリッタ1は、アーム部材(シースの両側に1つずつ)の形態をとる2つの分割要素を有し、シースの分割を容易にし、次いで分割された半分のシースのそれぞれをデバイスの周りにガイドすることを容易にし、シースの移動によってデバイスに起こる可能性のある損傷を防ぐ。
【0059】
分割要素は十分な可撓性を有し、分割工程の間は内向きに撓むが、その後シースが除去されデバイスが圧力/直径を増大させると外向きに撓む。
【0060】
また、展開シーケンスの残りを行うことを可能にするために、スプリッタは、その役割を完了すると、送達システム/デバイスから除去される能力を有する。これは一般に、製造/組み立て中にスプリッタをある長さの縫合糸と一緒にロックすることによって達成され、次いでこの縫合糸を手術中に切断し、スプリッタを開いて送達システムから除去することを可能にする。
【0061】
シース端部を誘導して離すように完全に形成されるガイド窓を使用する代わりに、各ガイドに開口スロットを組み込むことができ、シースを完全に包むというガイド窓の要件を実質的に回避する。
【0062】
さらに、2つの別個の窓を使用する代わりに、シースを任意の数の異なる切片に分割することができる。すなわち、1つの窓を使用してシースの一方の側に単一の裂け目を作成するか、または3つ以上の窓を使用して複数の異なるシース端部を作成することができる。
【0063】
図10の実施形態に示されるように、分割要素の本来の位置を、実質的に開構成にすることができる。さらに、これは実質的にスプリッタを閉位置に拘束する別個のコンポーネント24を組み込むことができ、次に、シースが分割されるとこれらの追加のコンポーネントが除去され、次いでスプリッタアームを外向きに開くことが可能になる。
【0064】
この点に関して、分割要素の本来の位置を、可撓性が一方向(すなわち、外側)にのみ必要とされるように、より閉位置に等しくすることができる。
【0065】
またこれは、部品が備える可撓性の要件を打ち消すことができ、図9に示されるようなヒンジなどのなにか他の物を利用して、分割要素の運動を容易にすることができる。
【0066】
スプリッタを送達システム上にクランプするという重複する構成を使用する代わりに、装置は、血液漏れのない取り付け装置を作り出すために、ゴムまたはシリコーンなどの圧縮板またはより圧縮可能な材料を使用することができる。いくつかの種類の圧縮材料または可変圧縮力を使用することにより、アクセス枝をクランプする必要なく、コンポーネントによって送達システムを完全に除去することができる。
【0067】
例えば、制御される方法でクランプ力を減少させ、スプリッタによって送達システムの先端部全体を除去することができるが、その後、血液がアクセス枝を通じて逃げることができない程度に再びクランプ力を加えることができる場合には、枝が天然血管に結合するために必要とする時間まで、クランプ鉗子を使用する代わりにスプリッタを枝上に残して、血液損失を防ぐことができる。
【0068】
シーススプリッタの胴体の半分を一緒にロックするために、縫合糸を使用する代わりに、スナップフィットまたは取り外し可能なボルトを使用することができる。またこれは、クランプ力を一時的に解放することができる、すなわち、送達システムを除去できるが、送達システムが除去されると、次いで枝上にクランプしに戻り血液損失を防止する能力を有する、何らかの機構を組み込むことができる。これは、一旦送達システムが枝の内部から除去されると、失血を防ぐための一組のクランプ鉗子を必要としなくなるであろう。
【0069】
分割アーム部材要素の本来の位置が完全に開いた状態と完全に閉じた状態との間のほぼ中間の状態にあることは、選択される材料の本来の可撓性が両方向に適しているであろうことを意味する。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9
図10