(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】生体分子を分離するための方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/22 20060101AFI20240909BHJP
C12M 1/33 20060101ALI20240909BHJP
C12M 1/02 20060101ALI20240909BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20240909BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20240909BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
C07K1/22
C12M1/33
C12M1/02 A
B01J20/34 G
B03C1/00 A
B01D15/00 M
(21)【出願番号】P 2021557164
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(86)【国際出願番号】 EP2020058020
(87)【国際公開番号】W WO2020193483
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-01
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】サイティバ・スウェーデン・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】オラ・リンド
(72)【発明者】
【氏名】ニルス・ノルマン
(72)【発明者】
【氏名】サラ・ハグブラッド・サールベリ
(72)【発明者】
【氏名】ロニー・パルムグレーン
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/122089(WO,A1)
【文献】特表2002-528737(JP,A)
【文献】New BIOTECHNOLOGY,2018年,Vol.42,pp.48-55
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12M 1/00- 3/10
C12Q 1/00- 3/00
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体分子を細胞培養物から分離するための方法であって、
(a)前記生体分子に結合することができるリガンドを含む磁性粒子を提供する工程と、
(b)前記生体分子を含む細胞培養物を前記磁性粒子と接触させて、結合した生体分子を含む磁性粒子を取得する工程と、
(c)磁場を用いて磁気セパレーター内に前記磁性粒子を保持する工程と、
(d)任意選択的に、洗浄液を用いて前記磁性粒子を洗浄する工程と、
(e)前記磁気セパレーターの少なくとも1つの面において前記磁性粒子を攪拌して、前記磁気セパレーター内に磁性粒子の流動床を形成する工程と、
(f)前記磁場を用いて前記磁気セパレーター内に前記磁性粒子を保持しつつ、前記少なくとも1つの面に対して実質的に直角方向に溶出液の流れを提供して、前記結合した生体分子を前記磁性粒子から溶出させる工程と
を含む方法。
【請求項2】
工程(e)が、前記磁場の強度を変化させることにより、例えば振動磁場を適用すること等により、前記磁性粒子を攪拌する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)又は工程(c)が、前記磁性粒子を、少なくとも1つの撹拌機、例えば複数の撹拌機等を含む磁気セパレーターに添加する工程を含み、及び工程(e
)が、撹拌機のスイッチをオンにすることにより、前記磁性粒子を攪拌する工程を含む、請求項1から
2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
工程(d)が、下記のサブ工程、
(d1)少なくとも1つの面において前記磁性粒子を攪拌して、磁性粒子の流動床を形成する工程と、
(d2)前記磁場内で前記磁性粒子を保持しつつ、前記少なくとも1つの面に対して実質的に直角方向に洗浄液の流れを提供して前記細胞培養物を除去する工程と
を含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(e
)が、前記磁気セパレーターの複数の実質的に平行な面において、前記磁性粒子を攪拌して磁性粒子の複数の流動床を形成する工程を含み、及び工程(f
)が、複数の面に対して実質的に直角方向に、前記溶出液の流れを提供する工程を含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記生体分子が、最大10ベッド容積、例えば9、8、7、6、5、4、3、2、又は1ベッド容積等、好ましくは最大4ベッド容積、より好ましくは最大3ベッド容積の溶出液を用いて溶出される、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも工程(c)~工程(f
)、例えば工程(b)~工程(f
)等が、前記磁気セパレーター内で実施され、好ましくは前記磁気セパレーターが高勾配磁気分離システムである、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)が、
(i)前記磁性粒子を磁気セパレーターに添加する工程と、その後に前記細胞培養物に由来するフィードを前記磁気セパレーターに提供する工程、又は
(ii)前記結合した生体分子を含む、前記細胞培養物と前記磁性粒子との混合物に由来するフィードを磁気セパレーターに提供する工程
を含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)~工程(f
)が、統合型バイオリアクター容器/コンタクター及び磁気セパレーター内で実施される、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(d)が、下記のサブ工程、
(i)前記磁場を除去する工程と
(ii)前記磁性粒子を再懸濁する工程と、
(iii)前記磁性粒子を洗浄液の一部分と接触させる工程と、
(iv)磁場を用いて前記磁性粒子を保持する工程と、
(v)保持された前記磁性粒子から前記洗浄液を除去する工程と
を含む、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(d)が、工程(e
)に進む前に少なくとも1回繰り返される、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(f)又は(e1)における前記溶出液の線流速が、工程(f)において10~3000cm/時の範囲、好ましくは50~600cm/時の範囲である、請求項1から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(e
)における撹拌機のスピードが、15~1500rpmの範囲、好ましくは50~300rpmの範囲である、請求項
3から
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記磁気セパレーターが、クロマトグラフィーシステムと接続している、請求項1から
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記磁性粒子が、8~300μmの範囲、好ましくは37~100μmの範囲の容積加重されたメジアン直径(d50、v)を有する、請求項1から
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記磁性粒子が、沈降した粒子1ml当たり1.05~1.20gの平均密度を有する、請求項1から
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記磁性粒子のそれぞれが、多孔性ポリマーマトリックス及び前記多孔性ポリマーマトリックス中に埋め込まれた1つ又は複数の磁性顆粒を含む、請求項1から
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記磁性粒子のそれぞれが、5~15質量%の前記磁性顆粒を含む、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記磁性顆粒が、1~5μmの容積加重されたメジアン直径(d50、v)を有する、請求項
17又は
18に記載の方法。
【請求項20】
前記磁性粒子のそれぞれが、粒子の中央領域において、前記粒子の表面領域における濃度の少なくとも200%の磁性顆粒の濃度を含み、前記中央領域が、粒子表面から粒子半径の0.2倍を上回る距離を有することとして定義され、及び前記表面領域が、粒子表面から粒子半径の0.2倍未満の距離を有することとして定義される、請求項
17から
19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体分子分離分野に関し、特に磁気セパレーター内で細胞培養物から又は生体溶液から生体分子を分離するための方法と関連する。
【背景技術】
【0002】
磁性吸着ビーズを使用して生体分子を分離することは、当技術分野において公知である。例えば、米国特許第7506765B2号は、磁場内に配置されている磁性材料のプレート状分離構造のマトリックスを通じて実施される、懸濁物からの磁性粒子の選択的分離を目的とする高勾配磁気セパレーターについて記載する。更に、本明細書により参考としてそのまま組み込まれている米国特許第6602422B1号は、マイクロ分離カラム上で生体物質を精製するための分離及び放出方法に関する。同方法は、磁性担体からの生体物質の放出及びマイクロ分離カラムからの溶出を含み、但し該磁性担体は、強磁性粒子のマトリックスによりマイクロ分離カラム内部になおも磁気的に保持されている。国際公開第2018122246号は、生体分子を細胞培養物から分離するための方法であって、生体分子を磁性ビーズに結合させる工程、磁気セパレーターを使用することにより、結合した生体分子を含む磁性ビーズを残りの細胞培養物から分離する工程、結合した生体分子を含む磁性ビーズを、添加したバッファーと共にスラリーとして搬送して、溶出細胞を分離する工程、及び生体分子を溶出細胞内の磁性ビーズから溶出させる工程を含む方法について記載する。また、国際公開第2018122089号も、多孔性マトリックス及びマトリックス内に埋め込まれた1つ又は複数の磁性粒子を含み、そして多孔性マトリックスと共有結合的にカップリングした免疫グロブリン結合リガンドを更に含む磁性ビーズに関する。
【0003】
磁性ビーズ処理は、未精製のフィード細胞ストックから標的生体分子を直接精製する有効なやり方であり、またこの技術は、清澄化ツール、例えば遠心分離、濾過、及びキャプチャークロマトグラフィー等に置き換わることができる。磁性ビーズは、標的生体分子に対して親和性を有するリガンドにより機能化される。磁性ビーズが添加され、そしてフィード内のすべての標的生体分子に特異的に結合するように、未精製のフィードと所定の時間混合される。結合後、磁性ビーズはマグネットによりトラップされる一方、細胞及び不純物はデカント除去される。洗浄バッファーが磁性ビーズに添加され、そしてマグネットは解除され、そして洗浄バッファー及び磁性ビーズと共に混合される。混合後、マグネットを稼働させるとビーズがトラップされ、そして洗浄バッファーはデカント除去される。数回洗浄後、溶出バッファーが、洗浄バッファーの場合と同様に磁性ビーズに添加され、そしていくつかのバッチ溶出工程を使用することで、標的生体分子が磁性ビーズから放出される。すべての洗浄工程及び溶出工程はバッチモードで行われ、また高溶出収率を実現するために数回のバッチ溶出工程を実施する必要があるので、この技術を使用した場合、標的物は、カラムクロマトグラフィーと比較してそれよりも稀釈されてしまう。また、バッチ溶出法を使用した場合、溶出バッファーは、磁性ビーズから標的生体分子を放出させるための適正な溶出条件に到達するために、洗浄バッファーの用量を設定する必要があり、また溶出工程毎に異なる又は大量の溶出バッファーを必要とするので、溶出条件を最適化するのもより困難である。これを克服する一つのやり方は、洗浄したビーズを溶出工程用のクロマトグラフィーカラム中に移して溶出バッファー容積を減少させ、そして最適化された1つの溶出バッファーによる分画化を使用して溶出プールを収集することである。しかしながら、これは追加の機器及びカラム充填を必要とし、時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第7506765B2号
【文献】米国特許第6602422B1号
【文献】国際公開第2018122246号
【文献】国際公開第2018122089号
【文献】米国特許第20140296464A1号
【文献】米国特許第20160288089A1号
【文献】国際公開第2018011600A1号
【文献】国際公開第2018037244A1号
【文献】国際公開第2013068741A1号
【文献】国際公開第2015052465A1号
【文献】米国特許第7867784B2号
【文献】インド特許第201911019289号
【非特許文献】
【0005】
【文献】https://www.gelifesciences.com/en/us/solutions/bioprocessing/products-and-solutions/downstream-bioprocessing/fibro-chromatography
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、当技術分野において、プロセス時間の短縮及びより高コスト効率のプロセスを実現しつつ、未精製フィードから生体分子を効率的に捕捉及び精製することを含む、生体分子を分離するための改善した方法に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
生体分子を分離するための改善した方法を提供する上記目的は本開示により達成され、同目的は、磁気セパレーター内でフロー溶出及び撹拌を同時に適用することにより生体分子を分離するための方法に関する。本明細書に示す通り、これにより、少ない溶出容積を使用することで、驚異的に高い収率及び純度を有して標的生体分子を磁気セパレーターから直接フロー溶出することが可能である。方法の精度はカラムクロマトグラフィーの精度に等しくありながら、必要とされるプロセス時間は実質的により短い。
【0008】
より具体的には、本開示は、生体分子を細胞培養物から又は生体溶液から分離するための方法であって、
(a)生体分子に結合することができるリガンドを含む磁性粒子を提供する工程と、
(b)生体分子を含む細胞培養物又は生体溶液を磁性粒子と接触させて、結合した生体分子を含む磁性粒子を取得する工程と、
(c)磁場を用いて磁気セパレーター内に磁性粒子を保持する工程と、
(d)任意選択的に、洗浄液を用いて磁性粒子を洗浄する工程と、
(e)磁気セパレーターの少なくとも1つの面において磁性粒子を攪拌して、磁気セパレーター内に磁性粒子の流動床を形成する工程と、
(f)磁場を用いて磁気セパレーター内に磁性粒子を保持しつつ、少なくとも1つの面に対して実質的に直角方向に溶出液の流れを提供して、結合した生体分子を磁性粒子から溶出させる工程と
を含む方法と関連する。
【0009】
本発明者らが実現した更なる改善として、磁気分離には、メンブレンクロマトグラフィーが生体分子を更に精製するために後続し得ることが挙げられる。従って、本開示は、生体分子を細胞培養物から又は生体溶液から分離するための方法であって、
(a)生体分子に結合することができるリガンドを含む磁性粒子を提供する工程と、
(b)生体分子を含む細胞培養物又は生体溶液を磁性粒子と接触させて、結合した生体分子を含む磁性粒子を取得する工程と、
(c)磁場を用いて磁気セパレーター内に磁性粒子を保持する工程と、
(d)任意選択的に、洗浄液を用いて磁性粒子を洗浄する工程と
(e1)磁場を用いて磁気セパレーター内に磁性粒子を保持しつつ、磁気セパレーターを通過する溶出液の流れを提供して、結合した生体分子を磁性粒子から溶出させる工程と、
(f1)磁気セパレーターから溶出した生体分子をメンブレンクロマトグラフィーデバイスに搬送する工程と、
(g1)メンブレンクロマトグラフィーにより、不純物及び/又は汚染物質から生体分子を分離する工程と
を含む方法を提供する。
【0010】
本開示の好ましい態様を、本発明を実施するための形態及び従属する特許請求の範囲において、以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示に基づき生体分子を分離するための方法のフローチャートを示す図である。
【
図2】本開示の方法で使用するのに適するシステムを図式的に示す図である。
【
図3】本開示の方法で使用するのに適する磁気セパレーターの非限定的な実施形態の概略図を示す図である。
【
図4】下記実施例1に記載されているポリクロナールIgG実験から得られた溶出曲線を表すグラフを示す図である。
【
図5A】下記実施例2に記載されているモノクロナール抗体(mAb)実験から得られた溶出曲線を表すグラフを示す図である。
【
図5B】下記実施例2に記載されているモノクロナール抗体(mAb)実験から得られた溶出曲線を表すグラフを示す図である。
【
図5C】下記実施例2に記載されているモノクロナール抗体(mAb)実験から得られた溶出曲線を表すグラフを示す図である。
【
図6】本開示に基づき生体分子を分離するための代替法のフローチャートを示す図である。
【
図7】本開示に基づき生体分子を分離するための代替法の1つの実施形態に基づき使用され得るメンブレンクロマトグラフィーデバイスの断面を示す図である。
【
図8A】下記実施例3に記載されているモノクロナール抗体(mAb)実験から得られた溶出曲線を表すグラフを示す図である。
【
図8B】下記実施例3に記載されているモノクロナール抗体(mAb)実験から得られた溶出曲線を表すグラフを示す図である。
【
図8C】下記実施例3に記載されているモノクロナール抗体(mAb)実験から得られた溶出曲線を表すグラフを示す図である。
【
図8D】下記実施例3に記載されているモノクロナール抗体(mAb)実験から得られた溶出曲線を表すグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、
図1に例示するような、細胞培養物から又は生体溶液から生体分子を分離するための方法を提供することにより、生体分子を分離するための既存の方法と関連する問題を解決し、又は少なくとも緩和するが、同方法は、
(a)生体分子に結合することができるリガンドを含む磁性粒子を提供する工程と、
(b)生体分子を含む細胞培養物又は生体溶液を磁性粒子と接触させて、結合した生体分子を含む磁性粒子を取得する工程と、
(c)磁場を用いて磁気セパレーター内に磁性粒子を保持する工程と、
(d)任意選択的に、洗浄液を用いて磁性粒子を洗浄する工程と、
(e)磁気セパレーターの少なくとも1つの面において磁性粒子を攪拌して、磁気セパレーター内に磁性粒子の流動床を形成する工程と、
(f)磁場を用いて磁気セパレーター内に磁性粒子を保持しつつ、少なくとも1つの面に対して実質的に直角方向に溶出液の流れを提供して、結合した生体分子を磁性粒子から溶出させる工程と
を含む。
【0013】
本開示の方法の顕著な利点として、生体分子が驚異的に低い総溶出容積、より具体的には、最大10ベッド容積の溶出液、例えば9、8、7、6、5、4、3、2、又は1ベッド容積等、好ましくは最大4ベッド容積、より好ましくは最大3ベッド容積である溶出容積を用いて溶出されることが挙げられる。本明細書では、「ベッド容積」は、通常ミリリットル(ml若しくはmL)又はリットル(L)で表わされる、沈降した磁性粒子の容積として理解される。生体分子を溶出するのに必要とされる総溶出容積が小さいほど、溶出した生体分子のサンプルの濃度は高まり、分散度は低くなる。大容量のサンプルの取り扱いを回避するために、生体分子の濃度が高い方が後続するポリッシング工程のいずれにおいても望ましい。
【0014】
上記したように、本開示の方法の更なる改善は、磁気分離後のメンブレンクロマトグラフィーによる生体分子の更なる精製と関係し得る。従って、本開示は、
図6に例示するように、細胞培養物又は生体溶液から生体分子を分離するための方法を提供するが、同方法は、
(a)生体分子に結合することができるリガンドを含む磁性粒子を提供する工程と、
(b)生体分子を含む細胞培養物又は生体溶液を磁性粒子と接触させて、結合した生体分子を含む磁性粒子を取得する工程と、
(c)磁場を用いて磁気セパレーター内に磁性粒子を保持する工程と、
(d)任意選択的に、洗浄液を用いて磁性粒子を洗浄する工程と、
(e1)磁場を用いて磁気セパレーター内に磁性粒子を保持しつつ、磁気セパレーターを通過する溶出液の流れを提供して、結合した生体分子を磁性粒子から溶出させる工程と、
(f1)磁気セパレーターから溶出した生体分子をメンブレンクロマトグラフィーデバイスに搬送する工程と、
(g1)メンブレンクロマトグラフィーにより、不純物及び/又は汚染物質から生体分子を分離する工程と
を含む。
【0015】
磁気分離後にメンブレンクロマトグラフィーを追加すると、高純度の生体分子をもたらす極めて単純且つ迅速なプロセスが得られる。
【0016】
用語「生体分子」は、生体分子が細胞培養物中の細胞によって産生され(多くの場合、組換えにより)、そして任意の分離及び精製手段によって細胞培養物から精製されるバイオプロセシングの分野におけるその従来の意味を有する。代替的に、生体分子は、細胞培養物に必ずしも由来しない生体溶液中に存在する。生体分子の非限定的な例は、共にリンクしたモノマーからなる大型の生物学的ポリマー、例えば酵素、抗体及び抗体断片、並びに炭水化物、及び核酸配列、例えばDNA及びRNA等を含む、但しこれらに限定されないペプチドやタンパク質(天然物又は組換え物であり得る)である生体高分子である。生体分子のその他の非限定的な例は、プラスミド及びウイルスである。生体分子又は生体高分子は、例えばバイオ医薬品、すなわち医薬化合物として使用されるように意図される生物学的高分子を含む、但しこれに限定されない生体分子であり得る。本明細書では、本開示の方法により、残りの細胞培養物又は生体溶液から分離される生体分子は、代替的に「標的生体分子」又は「標的」と呼ばれる場合もある。「生体分子」は生体分子の種類を意味するように意図され、そして該用語の単数形であっても、多数の生体分子のそれぞれを包含し得るものと理解される。
【0017】
本明細書において、用語「細胞培養物」とは、細胞の培養物又は培養される細胞の群を指し、その場合、細胞は任意の種類の細胞、例えば細菌細胞、ウイルス細胞、真菌細胞、昆虫細胞、又は哺乳動物細胞等であり得る。細胞培養物は曖昧であり得、すなわち複数の細胞を含み、又は細胞枯渇状態であり得、すなわち培養物は全く又はほとんど細胞を含まないが、しかし細胞を除去する前に細胞から放出された生体分子を含む。更に、本開示の方法で使用されるような曖昧な細胞培養物は、無処理細胞、破壊された細胞、細胞ホモジネート、及び/又は細胞ライセートを含み得る。
【0018】
用語「生体溶液」とは、生体分子又は数種類の生体分子の混合物を含む、生物学的起源の溶液を意味するように意図されている。生体溶液の例は、ヒト又は動物に由来する任意の種類の体液、例えば血漿、血液、喀痰、尿、及び乳汁等である。
【0019】
用語「磁性粒子」は、磁場により引き付けられ得る粒子として本明細書では定義される。同時に、本開示の方法で使用される磁性粒子は、磁場が存在しない場合には凝集しないものでなければならない。換言すれば、磁性粒子は超常磁性粒子のように挙動しなければならない。粒子は、任意の対称形状、例えば球形若しくは立方形等、又は任意の非対称形状を有し得る。球状の磁性粒子は、多くの場合磁性ビーズと呼ばれる。用語「磁性粒子」、「磁性ビーズ」、「Mag粒子」、「Magビーズ」、「マグ粒子」、及び「マグビーズ」は、本明細書では交換可能に使用され得るものと理解され、その範囲は球状形状を有する磁性粒子に限定されない。
【0020】
本開示の方法で使用するのに適する磁性粒子は、本明細書により参考としてそのまま組み込まれている国際公開第2018122089号に記載されている。特に、磁性粒子は、8~300μmの範囲、例えば8、9、10、15、20、25、30、35、36、37、38、39、40、50、60、70、80、90、95、100、105、110、150、200、250、又は300μm等、好ましくは20~200μmの範囲、より好ましくは37~100μmの範囲の容積加重されたメジアン直径(d50、v)を有し得る。更に、本開示の方法で使用するのに適する磁性粒子は、沈降した磁性粒子1ml当たり1.05~1.20gの平均密度を有し得る。
【0021】
本開示の方法で使用するのに適する磁性粒子は、多孔性マトリックス、好ましくは多孔性ポリマーマトリックス、及び多孔性マトリックス中に埋め込まれた1つ又は複数の磁性顆粒を含み得る。磁性粒子は、好適には約5~15質量%の磁性顆粒を含み得る。各磁性粒子の多孔性マトリックス中に埋め込まれた磁性顆粒は、約1~約5μmの容積加重されたメジアン直径(d50、v)を有し得る。更に、磁性粒子は、好適には、磁性粒子の中央領域において、該磁性粒子の表面領域における濃度の少なくとも200%の磁性顆粒の濃度を含み得るが、但し、該中央領域は、該磁性粒子表面から粒子半径の0.2倍を上回る距離を有することとして定義され、及び該表面領域は、該磁性粒子の表面から粒子半径の0.2倍未満の距離を有することとして定義される。
【0022】
本開示の方法で使用される磁性粒子は、生体分子に結合することができるリガンドを含む。リガンドは、磁性粒子の多孔性マトリックスと共有結合的にカップリングし得る。リガンドの種類及び生体分子に対するその親和性定数koff/konは、細胞培養物又は生体溶液から分離される生体分子の種類に基づき選択されるものと理解される。更に、磁性粒子1個当たりのリガンドの濃度は、例えば細胞培養物内又は生体溶液内の生体分子の濃度、磁性粒子の寸法、及び/又は磁気セパレーターに添加される磁性粒子の総容積に依存し、又はそれらと相互に関係するものと理解される。
【0023】
本開示の現時点で好ましい実施形態では、生体分子を分離するための本開示の方法で使用される磁性粒子は、Mag Sepharose(商標) PrismA(GE Healthcare Bio-Sciences AB社、art. no. 17550000)である。
【0024】
図2は、本開示に基づく方法を実施するのに使用され得る分離システム1の非限定的な例を図式的に示す。システム1は磁気セパレーター5を備える。用語「磁気セパレーター」は、分離プロセスの分野におけるその従来の意味を有し、そして磁性粒子を液体から分離する装置を指す。本開示の現時点で好ましい実施形態では、生体分子を分離するための本方法で使用される磁気セパレーターは高勾配磁気セパレーターであり、本明細書により参考としてそのまま組み込まれている米国特許第7506765B2号に記載されるように、高勾配磁気分離システム(HGMS)と代替的に呼ばれる。
図2に示す分離システム1の部分は、本明細書により参考としてそのまま組み込まれている国際公開第2018122246号に記載されているシステムの部分と類似している。磁気セパレーター5は、前記生体分子を含む細胞培養物3又は生体溶液3由来のフィードを受け取り、及びこの生体分子に結合することができるリガンドを含む磁性粒子を受け取るためのインレット5aを備える。磁気セパレーター5は、前記結合した生体分子を含む前記磁性粒子を、残りのフィードから分離するように構成される。磁気セパレーター5は、磁気セパレーター内部に磁性材料又は着磁可能材料の部分を含み、その部分は磁場が適用されたときに磁性粒子を引き付ける。
【0025】
図2に示す分離システム1は、磁気セパレーター5のインレット5aと接続する捕捉セル9を備える。
図2に示す捕捉セル9は、細胞培養物3由来のフィードを受け取るための細胞培養物/生体溶液インレット9a、及び磁性粒子を受け取るための少なくとも1つの磁性粒子インレット9bを備える。捕捉セル9は、細胞培養物又は生体溶液からのフィードを混合するように構成され、従って磁性粒子は、磁気セパレーター5に搬送される前に、標的生体分子が磁性粒子と結合するのを可能にする。しかしながら、捕捉セル9は、システム1の任意選択的なコンポーネントであるものと理解される。磁性ビーズが細胞培養物3又は生体溶液にそれぞれ添加され、結合した生体分子を含む、細胞培養物と磁性粒子との混合物に由来する、又は生体溶液と磁性粒子との混合物に由来するフィードを磁気セパレーター5に提供する工程が後続する場合には、細胞培養物3又は生体溶液3は捕捉セルとして等しく十分に機能し得る。別の代替案として、それに替えて磁性ビーズを磁気セパレーター5に直接添加することが挙げられる。細胞培養物又は生体溶液のそれぞれを個別に添加すること、及び磁性ビーズを磁気セパレーター中に直接添加することは、すべての実施形態について可能である。
【0026】
従って、本開示の方法の工程(b)は、
(i)磁性粒子を磁気セパレーターに添加する工程と、その後に細胞培養物又は生体溶液に由来するフィードを磁気セパレーターに提供する工程、又は
(ii)結合した生体分子を含む、細胞培養物と磁性粒子との混合物に由来する、若しくは生体溶液と磁性粒子との混合物に由来するフィードを磁気セパレーターに提供する工程
を含み得る。
【0027】
工程(b)、すなわち、生体分子を含む細胞培養物又は生体溶液を磁性粒子と接触させて、生体分子を磁性粒子に結合させる工程の後、工程(c)、(d)、及び(e)に記載の磁性粒子は、結合した生体分子を含むものと理解される。
【0028】
上記した工程(d)によれば、本開示の方法は、任意選択的に、洗浄液を用いて磁性粒子を洗浄する工程を含み得る。この目的のために、磁気セパレーター5は、好ましくは、磁性材料の部分に磁気的に結合したコンポーネント以外のその他のコンポーネントを磁気セパレーター5から洗い出すように構成された洗浄装置13と接続している。洗浄装置13は、ポンプ及びおそらくは捕捉セル9経由で磁気セパレーターのインレット5aに接続した、少なくとも1つの洗浄バッファー供給装置15、及び磁気セパレーター5のアウトレット5bに接続した洗浄バッファー収集装置17を備える。洗浄装置13は、磁性部分に結合したコンポーネント以外のフィードのその他のコンポーネントを洗い出すために、磁気セパレーター5を通じて洗浄バッファーを流すように構成される。
【0029】
本開示の方法によれば、磁性ビーズは、磁気セパレーターにおいてバッチモードで洗浄され得るが、磁気セパレーターは、磁性粒子がバッチモードで洗浄されるときに、磁場を放出するように構成されている。代替的且つ有利には、上記方法は、少なくとも1つの洗浄工程を連続モードで適用する工程を含み、この場合、上記方法の工程(d)は、下記のサブ工程:
(d1)少なくとも1つの面において磁性粒子を攪拌して、磁性粒子の流動床を形成する工程と、
(d2)磁場内で磁性粒子を保持しつつ、少なくとも1つの面に対して実質的に直角方向に洗浄液の流れを提供して、細胞培養物又は生体溶液を除去する工程と
を含む。
【0030】
本明細書において、慣用句「少なくとも1つの面に対して実質的に直角」は、少なくとも1つの面に対して80~90°の角度を意味するように解釈される。
【0031】
更に、本開示の方法の工程(d)は、下記のサブ工程:
(i)磁場を除去する工程と、
(ii)磁性粒子を再懸濁する工程と、
(iii)磁性粒子を洗浄液の一部分と接触させる工程と、
(iv)磁場を用いて磁性粒子を保持する工程と、
(v)保持された磁性粒子から洗浄液を除去する工程と
を含み得る。
【0032】
代替的又は付加的に、本開示の方法の工程(d)は、工程(e)又は代替的に工程(e1)に進む前に、少なくとも1回、例えば1、2、3回等、又はそれより多くの回数、反復され得る。
【0033】
図2に示すようなシステム1は、溶出液及び廃棄物を収集するための収集セル7を更に備える。本開示の方法の工程(f)において、溶出液がインレット5a経由で磁気セパレーター5に進入可能にすることによって、及び溶出液がアウトレット5b経由で磁気セパレーター5から排出可能にすることによって、磁気セパレーター5を通じて溶出液の流れが提供されるものと理解される。溶出した生体分子は、溶出液と共に磁気セパレーター5から排出され、そして磁気セパレーター5のアウトレット5bと接続した収集セル7内に収集され得る。
【0034】
従って、本開示の方法は、任意選択的に、工程(f)の後に、磁場を用いて磁性粒子を磁気セパレーター内に保持しつつ、磁気セパレーターから溶出液と共に排出される溶出した生体分子を収集セル内に収集する工程を含む工程(g)を更に含み得る。収集セルは、磁気セパレーターのアウトレットと接続している。
【0035】
代替的実施形態によれば、収集セル7の代わりに、
図2に示すようなシステム1は、生体分子を更に精製(ポリッシングとも呼ばれる)するためのメンブレンクロマトグラフィーデバイス101を備える。本実施形態では、本開示の方法の工程(e1)において、溶出液がインレット5a経由で磁気セパレーター5に進入可能にすることによって、及び溶出液がアウトレット5b経由で磁気セパレーター5から排出可能にすることによって、磁気セパレーター5を通じて溶出液の流れが提供される。溶出した生体分子は、溶出液と共に磁気セパレーター5から排出され、そして磁気セパレーター5のアウトレット5bと接続したメンブレンクロマトグラフィーデバイス101内での不純物及び/又は汚染物質からの分離によって更に精製され得る。
【0036】
図2に示すシステム1において、細胞培養物3又は生体溶液3、磁気セパレーター5、及び収集セル7又は代替的にメンブレンクロマトグラフィーデバイス101は、事前滅菌処理された可撓性チューブ及び無菌コネクターによって接続され得るものと理解される。更に、収集セル7又は代替的にメンブレンクロマトグラフィーデバイス101は、事前滅菌処理済み且つディスポーザブルであり得る。単回使用のための閉鎖した滅菌状態の分離システムが、本明細書により提供可能である。
【0037】
本開示の方法を実施するのに使用される磁気セパレーターは、攪拌装置を更に備える(
図2には図示せず;下記で更に記載するように、1つの非限定的な例を
図3に示す)。攪拌装置は、磁性粒子に対して攪拌動作を適用し、磁気セパレーターを通過する流れの方向に対して直角の面内で磁性粒子を動き回らせるように構成される。攪拌装置は、少なくとも1つのコンポーネント、例えば振動磁場を適用すること、すなわち中央の点又は面付近で規則的に強度を変化させること等により、磁場の強度を変化させるように構成された複数のコンポーネント等を含み得る。従って、本開示の方法の工程(e)又は代替的に工程(e1)は、磁気セパレーターの少なくとも1つの面において磁場の強度を変化させることにより、例えば磁気セパレーターの少なくとも1つの面において振動磁場を適用すること等により、磁性粒子を攪拌する工程を含み得る。代替的に、攪拌装置は、少なくとも1つの撹拌機、例えば複数の撹拌機等を含み得るが、この場合、本開示の方法の工程(e)又は代替的に工程(e1)は、撹拌機を適用すること、又はそのスイッチをオンにすることにより、磁性粒子を攪拌する工程を含む。本明細書において、用語「撹拌機」とは、磁気セパレーター内で磁性粒子を攪拌する、例えば回転させ又はかき混ぜる等の能力を有する任意の種類のデバイス又は物質/材料を指す。適する撹拌機の非限定的な例は、磁気セパレーターの少なくとも1つの固定された構造に連結した、例えばローターを形成する中央の回転可能なキャリアシャフトに取り付けられたデバイス、例えば回転可能な分離構造等、例えば回転可能なディスク又は回転可能なブレード等である。分離構造は、例えば、ワイヤーメッシュ、有孔金属箔、又は有孔金属シートから構成され得る。
【0038】
有利には、撹拌機は着磁可能材料を含み得るが、この場合、撹拌機は磁気セパレーター内部の磁性材料の部分として作動することができ、その部分は、磁場が適用されたときに磁性粒子を引き付ける。
【0039】
図3は、本開示に基づく方法を実施するのに使用され得る磁気セパレーター5の非限定的な例の断面図を図式的に示す。
図3の矢印は、インレット5aから磁気セパレーター5に進入し、そして磁気セパレーター5のアウトレット5bから排出され得る液体(例えば、溶出液)の流れを例示する。磁気セパレーター5は筐体6を備え、及び電磁石が起動すると、磁気セパレーター内で磁場を生み出すように構成された中空で円筒形の電磁石11を更に備える。磁気セパレーターは、複数の回転ディスク17が取り付けられたローター15を備える攪拌装置13を更に備える。攪拌装置13は、本開示の方法の工程(e)又は代替的に工程(e1)に基づき、磁気セパレーター5の少なくとも1つの面において磁性粒子21を攪拌して、磁気セパレーター内に磁性粒子の流動床を形成するように構成される。
図3では、磁気セパレーター5は、筐体6に取り付けられた複数の静止ディスク19を更に備える。回転ディスク17及び静止ディスク19は、筐体6内で交互に配置されている。回転ディスク17及び/又は静止ディスク19は、着磁可能材料を含み得る。更に、回転ディスク17及び/又は静止ディスク19は、磁性粒子及び細胞培養物/生体溶液がディスクを通過できるように有孔であり得る。回転ディスクのコンフィギュレーション及び/又は静止ディスクのコンフィギュレーションは、
図3に示すコンフィギュレーションとは異なってもよいものと理解される。例えば、静止ディスク19は、例えばシーリング材料によってローター15と接続し得る。更に、回転ディスクは、筐体6の壁に接合する場合もあれば、また結合しない場合もある。攪拌装置は、
図3に示すコンポーネント以外のその他のコンポーネントを含み得るものと、更に理解される。例えば、磁気セパレーターの固定された構造に連結した着磁可能材料の部分を有することに替えて、又はそれに付加して磁気セパレーターの固定された構造のいずれにも連結しておらず、また磁場が適用されたときに磁性粒子を引き付け、そして磁場中の磁性粒子を磁気セパレーター内に保持する能力を有する磁性材料又は着磁可能材料の部分、例えば多量若しくは多数のスチールウール又はワイヤーウール等を磁気セパレーター内部に含めることが検討される。
【0040】
本開示の方法の工程(e)又は代替的に工程(e1a)は、磁気セパレーターの少なくとも1つの面内、例えば複数の実質的に平行な面又は平行面内等において磁性粒子を攪拌して、磁性粒子の複数の流動床を形成する工程を含み得る。本明細書において、「実質的に平行な面」とは、相互の関係において、0~10°の角度で配置されている面として解釈される。複数の実質的に平行な面又は平行面の場合、工程(f)又は代替的に工程(e1b)は、複数の面に対して実質的に直角又は直角の方向に溶出液の流れを提供する工程を含む。理論に拘泥するものではないが、攪拌装置が、磁気セパレーター内に平行に配置され、そして複数の平行面内で磁性粒子を撹拌するように構成された、回転可能なコンポーネントの形態の複数の撹拌機を含む場合には、撹拌機の各対の間に流動床を形成することが可能であると考えられている。
【0041】
本開示の方法において、工程(e)における、又は代替的に工程(e1)における撹拌機のスピードは、15~1500rpmの範囲、例えば15、20、30、40、50、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、又は1500等、好ましくは50~300rpmの範囲であり得る。
【0042】
代替的実施形態によれば、工程(e)に後続する上記工程(f)及び(g)は、工程(e1)に後続する工程(f1)及び(g1)に置き換わり、
(f1)磁気セパレーターから溶出した生体分子をメンブレンクロマトグラフィーデバイスに搬送する工程と、
(g1)メンブレンクロマトグラフィーにより、生体分子を不純物及び/又は汚染物質から分離する工程と
を含む。
【0043】
図2に示すシステム1内のメンブレンクロマトグラフィーデバイス101の位置は上記されている。工程(g1)は、生体分子のポリッシングと代替的に呼ばれる場合がある。
【0044】
用語「メンブレンクロマトグラフィー」は、バイオプロセシングの分野におけるその従来の意味を有する。メンブレンクロマトグラフィーでは、液体のコンポーネント、例えば、個々の分子、会合物、又は粒子を、該液体と接触する固相表面に結合させる工程が存在する。固相の活性な表面には、対流輸送により、分子のアクセスが可能である。充填式のクロマトグラフィーカラムに対するメンブレン吸着材の長所として、かなり高流速で稼働させるのにそれが適していることが挙げられる。これは対流式クロマトグラフィーとも呼ばれる。対流式クロマトグラフィーマトリックスには、マトリックスの流入側と流出側との間に水圧差を負荷することがマトリックスを潅流させる力となり、物質のマトリックス中への又はマトリックス外への実質的に対流式の輸送(高流速において非常に迅速にもたらされる)を実現する任意のマトリックスが含まれる。対流式クロマトグラフィー及びメンブレン吸着材は、例えば、本明細書により参考としてそのまま組み込まれている米国特許第20140296464A1号、同第20160288089A1号、国際公開第2018011600A1号、同第2018037244A1号、同第2013068741A1号、同第2015052465A1号、米国特許第7867784B2号に記載されている。
【0045】
本開示の方法では、メンブレンクロマトグラフィーデバイスは、使用する際に、移動相が通過可能である複数の細孔を備える静止相を形成する、1つ又は複数の静電紡糸ポリマーナノファイバーを含むクロマトグラフィー材料を含み得る。静止相はメンブレンの形態であり得る。
【0046】
或いは、メンブレンクロマトグラフィーデバイスは、少なくとも1つの吸着性メンブレンを含み得る。吸着性メンブレンは、ポリマーナノファイバーを含み得る。任意選択的に、メンブレン、例えば吸着性メンブレンは、ポリマーナノファイバーの不織布ウェブを含み得る。
【0047】
ポリマーナノファイバーは、平均直径10nm~1000nmを有し得る。いくつかの用途において、平均直径200nm~800nmを有するポリマーナノファイバーが適する。平均直径200nm~400nmを有するポリマーナノファイバーは、特定の用途に適し得る。
【0048】
クロマトグラフィー材料又はメンブレン、例えば吸着性メンブレンは、ポリスルホン、ポリアミド、ナイロン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、及びポリエチレンオキサイド、及びその混合物からなる群から選択されるポリマーを含み得る。代替的又は付加的に、ポリマーは、例えばセルロース及びセルロースの部分的誘導体、特にセルロースエステル、例えばセルロースアセテート、架橋セルロース、グラフト結合セルロース、又はリガンド結合セルロース等からなる群から選択されるようなセルロース性ポリマーであり得る。
【0049】
本開示の方法において、メンブレンクロマトグラフィーデバイスは、(i)正に荷電した基、例えば四級アミノ基、四級アンモニウム基、若しくはアミン基等、又は(ii)負に荷電した基、例えばスルホネート基若しくはカルボキシレート基等により機能化されたクロマトグラフィー材料を含み得る。代替的又は付加的に、メンブレンクロマトグラフィーデバイスは、マルチモーダルアニオン交換リガンド及びマルチモーダルカチオン交換リガンドからなる群から選択されるマルチモーダルリガンドにより機能化されたクロマトグラフィー材料を含み得る。マルチモーダルアニオン交換リガンドは、支持体とカップリングしたN-ベンジル-N-メチルエタノールアミンリガンドであり得、前記支持体は、リンカーを介してリガンドの窒素原子とリンクしている。代替的又は付加的に、メンブレンクロマトグラフィーデバイスは、(i)イオン交換基、(ii)親和性ペプチド/タンパク質に基づくリガンド、(iii)疎水的相互作用リガンド、(iv) IMACリガンド、又は(v) DNAに基づくリガンド、例えばオリゴdT等により機能化されたクロマトグラフィー材料を含み得る。
【0050】
対流式メンブレン吸着材について、その表面積及び容量を増加させるために、例えば上記のようなナノファイバーの使用等により、対流マトリックスの対流細孔のサイズを低下させることができる。その結果、しかしながら流れに対する抵抗は増加する。従って、高容量の対流マトリックスを含むクロマトグラフィーデバイスを通じて高速の流速を得るには、高動作圧に耐えることができるクロマトグラフィーデバイス及び設計を必要とする。
【0051】
メンブレンクロマトグラフィーが関係する本開示の方法の一実施形態では、本明細書により参考としてそのまま組み込まれている、これまでに出願された特許出願、インド特許第201911019289号、内部参照番号502800-IN-1に詳記されているようなメンブレンクロマトグラフィーデバイスを使用することができる。
【0052】
図7に例示するように、メンブレンクロマトグラフィーデバイス101は、カセット105内に設けられたクロマトグラフィー材料ユニット103を含む。メンブレンクロマトグラフィーデバイス101は、少なくとも1つのクロマトグラフィー材料ユニット103の内部及び外部に液体を送達するように構成された液体送達システム107を更に含む。クロマトグラフィー材料ユニット103は、上記したような液体送達システム107の送達デバイス109aと収集デバイス109bの間にサンドイッチされている。送達デバイス109a及び収集デバイス109bは、
図7に示す実施形態において同一であるが、しかしながら、そうである必要はない。
図7に示す実施形態において、カセット105は、送達デバイス109a及び収集デバイス109bの形態で、クロマトグラフィー材料ユニット103及び液体送達システム107を含む。別の実施形態では、前記液体送達システム107は、カセット105とは分離して、例えば分離ユニットとして提供可能、又はクロマトグラフィーデバイス101の筐体113に一体化可能である。
【0053】
メンブレンクロマトグラフィーデバイス101は、筐体113を更に含み、その中に少なくとも1つのクロマトグラフィー材料ユニット3及びカセット105が設けられる。筐体は、トッププレート125及びボトムプレート127を備える。液体フィードを受け取るためのインレット115はトッププレート125に設けられ、またクロマトグラフィーデバイスからの液体流出流を移送するためのアウトレット119は、ボトムプレート127に設けられる。トッププレート125及びボトムプレート127は、インレット流体チャンネル117が、インレット115を、液体送達システム107を介してクロマトグラフィー材料ユニット103に結びつけるように、及びアウトレット流体チャンネル121が、アウトレット119を、液体送達システム107を介してクロマトグラフィー材料ユニット103に結びつけるように相互に接続している。
【0054】
液体送達システム107の送達デバイス109aは、クロマトグラフィー材料ユニット103のインレット表面153aに隣接して設けられたプレート(図示せず)を含み得るが、その場合、前記プレートは、クロマトグラフィーデバイス101のインレット115から供給された液体フィードを、クロマトグラフィー材料ユニット103に送達するためのいくつかの開口部を備え、該プレート内の前記開口部の総面積は、該プレートの残りの面積より小さく、又は該プレートの残りの面積の20%未満若しくは10%未満であり、前記開口部は、送達デバイス109aに設けられた1つ又は複数の流体導管(図示せず)を介して、送達デバイスインレット157aと繋がっている。
【0055】
更に、液体送達システム107の収集デバイス9bは、クロマトグラフィー材料ユニット103のアウトレット表面153bに隣接して設けられるプレート(図示せず)を含み得るが、その場合、前記プレートは、クロマトグラフィー材料ユニット103からの液体を収集するためのいくつかの開口部を備え、該プレート内の前記開口部の総面積は、該プレートの残りの面積より小さく、又は該プレートの残りの面積の20%未満若しくは10%未満であり、前記開口部は、収集デバイス109b内に設けられた1つ又は複数の流体導管(図示せず)を介して収集デバイスアウトレット157bに接続している。
【0056】
少なくとも1つのクロマトグラフィー材料ユニット103は、少なくとも1つの吸着性メンブレン、及び/又は本明細書に別途記載されている任意の1つの若しくはいくつかのクロマトグラフィー材料を含み得る。最低1つのクロマトグラフィー材料ユニットが、少なくとも1つのトップスペーサー層(図示せず)と少なくとも1つのボトムスペーサー層(図示せず)の間にサンドイッチされた少なくとも1つの吸着性メンブレンを含み得る、又は相互に積層され且つスペーサー層(図示せず)を用いて隙間が設けられ、そして少なくとも1つのトップスペーサー層と少なくとも1つのボトムスペーサー層の間にサンドイッチされた、少なくとも2つの吸着性メンブレンを含み得る。
【0057】
前記クロマトグラフィーデバイス101の少なくともいくつかの部分は、少なくともインレット115及びアウトレット119が開放されたまま、共に密閉され得る。いくつかの実施形態では、前記クロマトグラフィーデバイス101の少なくともいくつかの部分は、プラスチック又はエラストマーにより共に密閉され得る。代替的又は付加的に、前記クロマトグラフィーデバイス101の少なくともいくつかの部分がオーバーモールドされ、そして共に密閉され得る。更に、カセット105及び/又は筐体113はオーバーモールドされ得る。オーバーモールドとは、密閉性を生み出す方法であり、そしてデバイスに安定性を付与し、これにより頑強なメンブレンクロマトグラフィーデバイス101を提供する方法である。オーバーモールド後、クロマトグラフィーデバイス101は、少なくとも10bar又は少なくとも15barの動作圧に耐えることができる。
【0058】
本開示の方法の工程(f)又は代替的に工程(e1b)において、少なくとも1つの面に対して実質的に直角方向、又は代替的に複数の面に対して実質的に直角方向の線流速は、10~3000cm/時の範囲、好ましくは50~600cm/時の範囲である。類似した流速、すなわち、10~3000cm/時の範囲、好ましくは50~600cm/時の範囲の流速が、例えば、工程(d)、工程(e)若しくは代替的に工程(e1)、及び/又は工程(g)若しくは代替的に工程(f1)、及び/又は工程(g1)等の、但しこれらに限定されない、本開示の方法のその他の工程において、該当する場合適用され得る。
【0059】
本開示の方法の工程(g1)において、生体分子がメンブレンクロマトグラフィーデバイス内に滞留する時間は、約0.5秒~約6分、好ましくは約1秒~約30秒の範囲であり得る。これは、メンブレン又はクロマトグラフィー材料内に生体分子が滞留する時間が、約0.5秒~約6分、好ましくは約1秒~約30秒の範囲であり得ることに等しい。
【0060】
従って、メンブレンクロマトグラフィーデバイスを通過する溶出液の流速は、工程(g1)におけるメンブレンクロマトグラフィーデバイス内の滞留時間(約0.5秒~約6分、好ましくは約1秒~約30秒の範囲)に対応する範囲であり得る。
【0061】
メンブレン又はクロマトグラフィー材料を通過する溶出液の流れは、通常流又は接線流であり得る。
【0062】
更に、工程(g1)におけるメンブレンクロマトグラフィーは、フロースルーメンブレンクロマトグラフィーであり得る。
【0063】
本開示の方法は、工程(e1)と工程(f1)との間に、溶出液のpHの調整、溶出液の希釈、又は溶出液の電気伝導度の調整を実施する工程を更に含み得る。本開示の方法において、少なくとも工程(c)~(f)、又は代替的に工程(c)~(e1)、例えば工程(b)~(f)又は代替的に工程(b)~(e1)等は、磁気セパレーター内で実施され得る。
【0064】
代替的に、工程(b)~(f)又は工程(b)~(e1)のそれぞれは、コンタクターと流体接続しているバイオリアクター容器、及び磁気セパレーターと流体接続しているコンタクターを備えるシステムにおいて実施され得る。バイオリアクター容器は、細胞培養物/生体溶液から生体分子を分離するのを開始する前に、細胞培養物/生体溶液を含む。磁性粒子と細胞培養物/生体溶液との接触は、細胞培養物/生体溶液及び磁性粒子が搬送される(例えば、ポンプ搬送される、液体の流れに取り込まれる、又は重力によりフィードされる)容器であり得、また磁性粒子中に迅速な質量輸送を提供するためにある程度攪拌され得るコンタクター内で実施され得る。バイオリアクター容器又はコンタクターは、例えば可撓性のバッグ、例えば1つ又は複数のインレットポート及びアウトレットポートを備える可撓性のプラスチックバッグ等であり得る。
【0065】
本開示の方法で使用される分離システムは、加圧装置、例えば磁気セパレーターを通過する流れを生み出すように構成されたペリスタポンプを更に含み得る。代替的に、磁気セパレーターを通過する流れは、もっぱら重力により生み出され得る。一般的に、本開示の方法を機能させるためにシステムに適用される圧力は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムに適用される圧力よりもかなり低圧であり得る。本明細書に関連する長所として、より簡素な構成及びより低いコストが挙げられる。分離システムに適用される圧力の好適な範囲の非限定的な例は、0~0.5bar、例えば0.01~0.5bar等である。
【0066】
本開示の方法において、磁気セパレーターは、クロマトグラフィーシステム、例えばAKTA(商標)パイロットシステム(GE Healthcare社)等と接続し得る(すなわち、クロマトグラフィーシステム内のクロマトグラフィーカラムと置き換わる)。クロマトグラフィーシステムのポンプ圧力性能は不要であるものの、勾配生成用のデュアルポンプ、バルブ系、及びクロマトグラフィーシステムの検出器を含むバッファーコントロール特性を使用するのが好都合であり得る。
【0067】
本開示の方法で使用されるシステム及び/又は磁気セパレーター及び/又はその中のメンブレンクロマトグラフィーデバイスは、自動操作、半自動操作、又は手動操作用として構成され得る。それらは、パイロットスケールプロセス及び製造スケールプロセスの両方において使用可能であり、磁性粒子の量は、少なくとも0.1L~10Lである。それらは、特にバイオ医薬品を、清澄化前のフィード、例えば細胞培養物、生体溶液、又は細胞ライセート等から捕捉するのに適用可能である。
【0068】
1つ又は複数の列挙した要素「を含む」デバイスは、特に列挙されないその他の要素も含み得る。用語「~を含む(comprising)」は、サブセットとして、デバイスはリスト化されたコンポーネントを有し、提示されたその他の特性又はコンポーネントは有さないことを意味する「~から実質的になる(consisting essentially of)」を含む。同様に、1つ又は複数の列挙した工程「を含む」方法は、特に列挙されないその他の工程も含み得る。
【0069】
単数形「a」及び「an」は、複数形もまた含むものとして解釈されなければならない。
【0070】
下記の実施例で使用される磁気セパレーターは、高勾配磁気分離システム(HGMS)、より具体的にはMES 100 RS(Andritz KMPT GmbH社)である。しかしながら、上記で詳記したように構成された任意の種類の磁気セパレーターが、本開示の方法を実施するのに使用され得るものと理解される。
【0071】
同じように、上記したように、高動作圧に耐えることができる設計を有する任意の種類のメンブレンクロマトグラフィーデバイスが、本開示の方法を実施するのに使用することができ、従って下記の実施例のいくつかで使用されるようなセルロースファイバークロマトグラフィー(Fibroクロマトグラフィーとして知られている)カセット/ユニットに限定されないものと理解される。Fibroクロマトグラフィー(GE Healthcare Life Sciences社)は、プロセスの所要時間を短くし、また生産性を高めるための超高速クロマトグラフィー精製法であり、高流速及び高容量セルロースファイバーを利用する(https://www.gelifesciences.com/en/us/solutions/bioprocessing/products-and-solutions/downstream-bioprocessing/fibro-chromatography)。
【0072】
更に、メンブレンクロマトグラフィーデバイスで使用されるメンブレンクロマトグラフィー材料は、下記の実施例のいくつかで使用されるような、いわゆるFibro adhere材料に限定されない。Fibro adhere(GE Healthcare Life Sciences社)は、セルロースナノファイバーを含む材料であり、強力なイオン交換マルチモーダルリガンドを用いて誘導体化され得る。好適なメンブレンクロマトグラフィー材料の別の非限定的な例は、高流体速度の使用を可能にする硬質アガロースマトリックスに基づくCapto(商標) adhere(GE Healthcare Life Sciences社)である。アガロースマトリックスは、マルチモーダルアニオン交換リガンド、N-ベンジル-N-メチルエタノールアミンを用いて誘導体化される。
【実施例1】
【0073】
目的
本試験の目的は、Mag Sepharose(商標) PrismA、及び高勾配磁気セパレーター(HGMS)システム、MES100RS(Andritz KMPT GmbH社)を使用して、IgGを結合及び溶出させることであった。本目的は、フロー溶出を使用して、HGMSシステムからIgGを溶出させることが可能であるか検討することであった。
【0074】
材料
ポリクロナールIgG(Gammanorm(商標))、Octapharma社
NaH2PO4 H2O、pa、Merck社
Na2HPO4 2H2O、pa、Merck社
酢酸Na三水和物、pa、Merck社
酢酸、pa、Merck社
ツイーン(商標)20、Merck社
トリス塩基、pa、Merck社
Mag Sepharose(商標) PrismA、GE Healthcare社
【0075】
機器
HGMS機器、MES 100 RS、Andritz KMPT GmbH社
25Lプラスチックバッファートレイ
混合ローター、RW20、Janke & Kunkel社
125mL滅菌プラスチックボトル、Nalgene社
分光光度計、GENESYS(商標) 10S UV-Vis、Thermo Scientific社
ガラスフィルター、G3、約700mL、Scott Duran社
遠心分離機、5810R、Eppendorff社
【0076】
バッファー
20mMリン酸Na + 0.15M NaCl pH7.4
11.35gのNaH2PO4 H2O、74.3gのNa2HPO4、及び219.2gのNaClを、25Lバッファーコンテナ内で、25LのdH2Oを用いて稀釈、混合した。
100mM NaOAc pH3.2
140mLの酢酸及び7.4gのNaOAc 3H2Oを、25Lバッファーコンテナ内で、25LのdH2Oを用いて稀釈、混合した。
1M NaOH
40gのNaOHを、1000mLのmilliQ水を用いて稀釈、混合した。
0.05%ツイーンを含むPBS
Medicago社製PBSの錠剤2個を、2000mL MilliQ水と混合した。1mLのツイーン20をピペット採取し、そして該溶液と混合した。
100mM NaOAc pH2.9
5.7mLの酢酸及び0.02gのNaOAc 3H2Oを、1000mLのmilli-Q水と混合した。
【0077】
プロトコール
Mag Sepharose PrismAの調製
200mLのMag Sepharose PrismAを、使用前に、5cvのPBSを用いてガラスフィルター(G3ポアサイズ)上で洗浄した。
IgGの調製(6L中、2mg/ml)
12g(165mg/mlで73ml)のヒトIgG、Gammanormを、6Lの20mMリン酸Na + 0.15M NaCl pH7.4で稀釈した。総容積は6080mlであり、またUV280においてIgG濃度を分析したところ1.9mg/mlであった。
IgGを含むMag Sepharose PrismA 37~100のインキュベーション
洗浄済みのビーズ400mLを、IgGgを含む6Lの溶液と共にバケットに移し、そして1時間混合した。
【0078】
HGMSプロセス
冷却水、空気圧、及び蒸留水を、MES 100 RSシステムに負荷した。チューブを洗浄し、そしてシステムから空気を取り除くために、室温で1Lのメスフラスコを満たす水を用いて、次に調製済みのバッファーを用いて、システムのペリスタポンプを最初に較正した。
【0079】
【0080】
インキュベーション後、磁気セパレーター上で下記のプログラムを使用した:
2 GE-IgG-purif:
メイン工程1:磁性粒子(MP)の負荷
サブ1:負荷:開始前にすべて停止する、工程所要時間250秒、マグネットを稼働、ポンプ設定値+50%、バルブXV01及びXV14を開放。
PBSバッファーを使用しながら手作業により残りのフィードをポンプ搬送してチューブを洗浄した。
メイン工程2:再循環
サブ1:再循環:工程所要時間30秒、マグネットを稼働、ポンプ設定値+30%、バルブXV08及びXV13を開放。
メイン工程3:バッファー洗浄
サブ1:バッファー1のフィード:工程所要時間60秒、マグネット稼働、ポンプ設定値+70%、バルブXV02及びXV14を開放。
サブ2:バッファーの混合:開始前にすべて停止する、工程所要時間20秒、ミキサー設定値60%
サブ3:トラップ:工程所要時間10秒、マグネット稼働、
サブ4:再捕捉:工程所要時間60秒、マグネット稼働、ポンプ設定値+30%、バルブXV08及びXV13を開放。
サブ5:移送:工程所要時間1秒、マグネット稼働、バルブXV02、XV08、及びXV13、及びXV14を開放。
メイン工程4: H2O洗浄
サブ1:バッファー2のフィード:工程所要時間60秒、マグネット稼働、ポンプ設定値+70%、バルブXV03及びXV14を開放。
サブ2:バッファーの混合2:開始前にすべて停止する、工程所要時間20秒、ミキサー設定値60%
サブ3:トラップ:工程所要時間10秒、マグネット稼働、
サブ4:再捕捉:工程所要時間60秒、マグネット稼働、ポンプ設定値+30%、バルブXV08及びXV13を開放。
サブ5:移送:工程所要時間1秒、マグネット稼働、バルブXV02、XV08、及びXV13、及びXV14を開放。
メイン工程5:溶出
サブ1:トラップ:工程所要時間10秒、マグネット稼働
サブ2:再捕捉:工程所要時間60秒、マグネット稼働、ポンプ設定値+30%、バルブXV08及びXV13を開放。
サブ3:移送:工程所要時間1秒、マグネット稼働、バルブXV07、XV08、及びXV13、及びXV16を開放。
サブ4:溶出液のフィード:工程所要時間4200秒、マグネット稼働、ミキサー設定値10%、ポンプ設定値+5%、バルブXV07及びXV16を開放。
溶出液を、約100mlの分画において、事前秤量した125mlプラスチックボトル中に、手作業により収集した。溶出後、各ボトルを秤量し、そして各ボトル中の実際の溶出容量を、空のボトル容量が有する総容量(51.5mg)を減じることにより決定した。
【0081】
分析
溶出液を、2Mトリス塩基を用いてpH5に中和した。全分画について、力価を、分光光度計(ThermoFisher社製GENESYS)を使用してUV280で決定した。
【0082】
結果、分析、及び結論
1cmキュベット内のUV280値を吸光係数1.36で割り算してIgGの濃度をmg/mlで取得することにより、濃度を計算した。UV280値が1を上回る場合にはサンプルを稀釈した。濃度及び累積収率を溶出の累積容積に対してプロットした。
図4のグラフは、収率が98%、2.7×CV(総磁性ビーズ容積0.4L)のときの特徴的な溶出ピークを示す。
【0083】
結論
マグビーズが溶出期間中に磁気チャンバーから流出しないように混合及び流速を設定した。同時にマグネットのスイッチをオンにしながら混合すると、マグビーズは磁気チャンバー内で懸濁され、IgGのバッチ溶出の代わりに連続溶出を可能にする。
この実験は、磁気チャンバー内でMag Sepharose PrismA 37~100μmと混合しながら、連続モードでIgGを溶出させることが可能であり、2.7容積のMag Sepharoseビーズでは収率98%が得られることを示す。
【実施例2】
【0084】
目的
この試験の目的は、Mag Sepharose PrismA(37~100μm)及び高勾配磁気セパレーター(HGMS)システム、MES100RS(Andritz KMPT GmbH社)を使用して、IgG1モノクロナール抗体を含むCHO細胞培養物を清透化及び精製することであった。本目的は、フロー溶出を使用してMagセファロースを一切失うことなく、mAbをHGMSシステムから溶出させることが可能であるか検討することであった。
【0085】
材料
CHO細胞培養物、GE Healthcare社
NaH2PO4 H2O、pa、Merck社
Na2HPO4 2H2O、pa、Merck社
酢酸Na三水和物、pa、Merck社
酢酸、pa、Merck社
ツイーン20、Merck社
トリス塩基、pa、Merck社
Mag Sepharose PrismA、37~100μm、GE Healthcare社
mAb標準、8.82mg/mL、GE Healthcare社
【0086】
機器
HGMS機器、MES 100 RS、Andritz KMPT GmbH社
25Lプラスチックバッファートレイ
混合ローター、RW20、Janke & Kunkel社
125mL滅菌プラスチックボトル、Nalgene社
HPLC、1260 Infinity、Agilent Technologies社
ガラスフィルター、G3ポアサイズ、約700mL、Scott Duran社
遠心分離機、5810R、Eppendorff社
pHメーター、913 pHメーター、Metrohm社
MabSelect SuRe HiTrap、29-0491-04、GE HEALTHCARE社
Superdex 200 Increase 10/300 GL、GE HEALTHCARE社
0.2μmシリンジフィルター、Sterivex HV、Millipore社
10~100μLピペット、Mettler Toledo社
100~1000μLピペット、Eppendorff社
Cellbag(商標) 10L、BC11、Basic、GE HEALTHCARE社
【0087】
条件及び実測値
溶液の調製物:
20mMリン酸Na + 0.15M NaCl pH7.4
11.35gのNaH2PO4 H2O、74.3gのNa2HPO4、及び219.2gのNaClを稀釈し、そして25Lバッファーコンテナ内で25L dH2Oと混合した。
100mM NaOAc pH3.2
140mLの酢酸及び7.4gのNaOAc 3H2Oを稀釈し、そして25Lバッファーコンテナ内で25LのdH2Oと混合した。
1M NaOH
40gのNaOHを稀釈し、そして1000mLのmilliQ水と混合した。
0.05%ツイーンを含むPBS
Medicago社製PBSの錠剤2個を、2000mLのMilliQ水と混合した。1mLのツイーン20をピペット採取し、そして該溶液と混合した。
100mM NaOAc pH2.9
5.7mLの酢酸及び0.02gのNaOAc 3H2Oを、1000mLのmilli-Q水と混合した。
【0088】
mAbフィードの調製
mAbを含有する約7Lの量のCHO細胞を使用した。細胞密度は、23.81MVC/mL、生存率: 66.4%、及びmAb力価2.7mg/mLであった。細胞を10Lのcell bag(basic)中にポンプ搬送した。
【0089】
力価分析法、MabSelect SuRe HiTrap結合及び溶出の準備
MabSelect SuRe HiTrap(商標)カラムをHPLCシステムに接合させた。下記の表に従い、mAb(mAb力価8.82mg/mL)を用いた標準曲線を、250μLプラスチック製HPLCバイアル内で調製した。
【0090】
【0091】
【0092】
細胞培養物の力価決定
約10mLの細胞懸濁物を3000rpmで5分間遠心分離し、そして総細胞懸濁物容積及び総固体容積をモニタリングすることにより、細胞デブリ(固体)容積は5%であることを確認した。上清を0.2μmのフィルターを通じて1mL HPLCバイアル中に濾過した。上清の力価を、上記記載の力価測定法に従い決定した。
【0093】
【0094】
Mag Sepharose PrismAの調製
400mLのMag Sepharose PrismAを、使用前に5cvのPBSを用いてガラスフィルター(G3ポアサイズ)上で洗浄した。
【0095】
Mag Sepharose PrismAと細胞培養物のインキュベーション
400mLの洗浄済みビーズを6250gのCHO細胞懸濁物と共にボトルに移した。磁性ビーズをCHO細胞懸濁物と1時間混合した。1mLのサンプルを遠心分離し、そしてフィード中の(Mag Sepharose PrismAに結合しなかった)残存mAbを調査するために、mAbSelect SuRe Hitrap法(上記参照)を用いて分析した。
【0096】
HGMSプロセス
冷却水、空気圧、及び蒸留水を、MES 100 RSシステムに負荷した。室温で1Lのメスフラスコを満たす水を用いて、システムのペリスタポンプを較正した。
使用されるインレットチューブ及びバルブXV01、XV02、XV03、XV07を、dH2Oでプライミングした。磁気セパレーター内の気泡を、すべての空気が除去されるまでシステムをプライミングし、同時にミキサーを50%で稼働させることにより除去した。循環バルブXV08とXV013の間のホースを、システム内で逆流を使用して空気が存在しなくなるまで満たした。
水によるプライミング後、実際のランニングバッファーでシステムをプライミングした。
XV01= Magビーズ混合物の負荷(20mMリン酸Na + 0.15M NaCl pH7.4を用いてプライミングした)
XV02= 20mMリン酸Na + 0.15M NaCl pH7.4
XV03= dH2O
XV07= 100mM酢酸Na pH3.2
インキュベーション後、磁気セパレーター上で下記のプログラムを使用した。
工程1. 磁性粒子及びフィードの混合物を負荷する
ポンプ搬送時間を250秒に設定し、6Lのフィード混合物をポンプ搬送した。
残存するフィードを、PBSバッファーを使用して手作業によりポンプ搬送して、混合物のインレットチューブを洗浄した。
システムを再循環に設定して、分離ユニット内の着磁可能ディスク上にすべての磁性ビーズをトラップした。
工程2. 20mMリン酸Na + 0.15M NaClで洗浄する、4サイクル繰り返す
サブ工程1. 70%ポンプスピードを使用して、バッファーを60秒間フィードする(バッファー2L)。
サブ工程2. バッファー及びビーズを、60%ロータースピードで20秒間混合し、そしてマグネット及びバルブの稼働を停止する。
サブ工程3. マグネットを稼働させてビーズをトラップする。
サブ工程4. 再捕捉。30%のポンプ速度を使用して再循環し、すべてのビーズをトラップする。
サブ工程5. 移送。短時間(1s)バルブを開放して背圧を回避する。
工程3. 水で洗浄する、1サイクル
水がバルブXV03からポンプ搬送された点を除き、20mMリン酸Na + 0.15M NaClを用いた洗浄と同一のサブ工程を水洗浄で使用した。
工程4. 溶出
この工程では、ミキサー及びマグネットを稼働させながらmAbをフロー溶出させた。
サブ工程1. トラップ。マグネットを稼働させる。
サブ工程2. 再捕捉。30%ポンプスピードを使用して60秒間再循環する。
サブ工程3. 移送。短時間(1s)バルブを開放して背圧を回避する。
サブ工程4. 溶出液のフィード: 100mM NaOAc pH3.2、バルブXV07を用いて溶出させる。マグネット稼働、ポンプスピード5%(140mL/分)、ミキサーを10%に設定。溶出を4286秒行った。
溶出させた材料を、約100mLの分画において、事前秤量した150mLプラスチックボトル中に、手作業により収集した。
溶出後、各ボトルを秤量し、そして各ボトル中の実際の溶出容量を、空のボトル容量が有する総容量を減じることにより決定した。下記の表5を参照。
【0097】
【0098】
溶出液の分画は淡黄色~透明であった。
溶出液を、2Mトリス塩基を用いてpH5に中和し、その後0.2μm濾過した。2Mトリス塩基の実際の容量も、上記溶出液の質量に含めた。全分画について、力価を、MagSelect SuRe HiTrap結合及び溶出アッセイにより決定した。上記参照。
最終的に、分画7~18をプールし、そしてこのプールの1mLを200mMリン酸Na pH6.8を用いて、1.5mL HPLCバイアル内で20×稀釈し、そしてHPLCシステム上でサイズ排除クロマトグラフィー分析法(SEC)を用いて分析し、そしてmAb標準(同一のバッファーを用いて8×稀釈した)と比較した。
セパレーター内のMag Sepharoseをリリースし、そして容器内にポンプ搬送して戻した。樹脂を、2cvの1M NaOHを用いて、G3ガラスフィルター上で30分間洗浄し、それを5cvのPBSを用いて平衡化し、そして最終的に、2cvの20%エタノールを保存溶液として用いて洗浄し、そして保管用として、樹脂を20% EtOHと共にプラスチックボトル中に戻した。
【0099】
SEC法による純度
注入容積: 10μL
流速: 0.8mL/分
カラム: Superdex 200 Increase 10/300 GL
停止時間: 26分
214nmにおいて検出。
【0100】
HCP分析
開始及びプール溶出液サンプルにおいて、宿主細胞タンパク質(HCP)分析前に、50μLの保存溶液を450μLのサンプルに添加した。
ソフトウェアパッケージ5.3.0を備えるGyrolabワークステーション(Gyros Protein Technologies社)上で、第3世代CHO-HCP ELISAキット(Cygnus社)を使用して分析を実施した。
【0101】
結果、分析、及び結論
図5Aは、磁気セパレーターからのmAbの溶出プロファイルを示す。1.2Lの溶出液に対応するプール分画(分画7~18)は、3ベッド容積(1ベッド容積 = 400mL)の溶出バッファーを用いることで、87%のmAb収率が取得可能であることを示す。プールされた溶出液の濃度は、4×濃度である10.7mg/mLであった。インキュベーション工程における結合収率は94%であり、また総溶出収率は91%であった。
プールされたサンプルをSEC及びHCPアッセイにより分析し、そして純粋なmAb標準と比較した。結果を、
図5B(より小スケール)及び
図5C(より大スケール;ピークの基部を拡大)に示す。実線はプールされたmAb溶出液であり、また点線は純粋なmAb標準である。クロマトグラムは標準化されている。凝集ピーク、メインピーク、及びメインピーク後のピークを積分し、純度を98.5%と決定した。
【実施例3】
【0102】
目的
この研究の目的は、流動化した磁性ビーズを使用しつつもビーズを移動させないで、IgGをMag Sepharose PrismAからフロー溶出させるのに、どの混合スピード(ロータースピード)及び流速が使用可能であるか調査することであった。混合スピード、ビーズの容積、及びビーズサイズが異なるときに、IgG溶出プロファイルがどのような影響を受けるか、それについても調査した。
【0103】
機器
HGMSセパレーター、MES100RS serial no 400213239、Andritz Gmbh社
インキュベーション時のミキサー、IL82274-3、Janke-Kunkel社
UVリーダー、SpectraMax(商標) plus、Molecular Devices社
UVリーディングプレート、96ウェル、3635 Lot 33918007、Corning社
天秤、PG 5002 DeltaRange、Mettler社
プラスチックボトル 130mL
25Lプラスチックバッファーボトル
Mag Sepharose PrismA 0~37μm Lot LS-033447、GE HEALTHCARE社
Mag Sepharose PrismA 37~100μm LS-32871、GE HEALTHCARE社
【0104】
材料
ヒトIgG、Gammanorm 165mg/mL、Octapharma社
NaH2PO4 H2O、pa、Merck社
Na2HPO4 2H2O pa、Merck社
NaCl、pa、Merck社
酢酸、pa、Merck社
酢酸Na 3H2O、pa、Merck社
【0105】
条件及び実測値
溶液の調製:
Aバッファー、20mM PO4 + 0.15M NaCl pH7.5
【0106】
【0107】
Bバッファー、0.1M 酢酸Na pH3.2
【0108】
【0109】
IgG 2mg/mL
73mLのIgG(Gammanorm)を、6LのAバッファーに稀釈して、濃度が約2.0mg/mLのIgGを取得した。
【0110】
ビーズ喪失を調査するためのロータースピード及び流速のテスト
100mL、300mL、又は400mL(湿って沈降した樹脂)のMag Sepharose PrismA 37~100μm又は0~37μmを、マグネットを稼働させながらHGMSシステム内にポンプ搬送した。どのロータースピード及び流速であれば、磁性ビーズはHGMSチャンバーから移動(目視的に)し始めるか調査するために、ローターを異なるスピードで稼働させ、そしてAバッファーについてポンプ流速も変化させた。
結果を下記のTable 6~10(表8~12)に示す。
100mLのMag Sepharose 0~37μmを負荷した場合:ビーズは、ロータースピード150rpmで、2100mL/分までトラップされた。ロータースピードが225rpmのとき、ビーズはHGMSの外部に移動し始める。
300mLのMag Sepharose 0~37μmを負荷した場合:ビーズは、ロータースピード75rpmで、560mL/分までトラップされた。
100mLのMag Sepharose 37~100μmを負荷した場合:ビーズは、ロータースピード150rpmで、2100mL/分までトラップされた。
300mLのMag Sepharose 37~100μmを負荷した場合:ビーズは、ロータースピード150rpmで、560mL/分までトラップされた。ビーズは、ロータースピード300rpmのとき、140mL/分でもなおもトラップされた。
400mLのMag Sepharose 37~100μmを負荷した場合:ビーズは、ロータースピード75rpmで、1400mL/分までトラップされた。
ビーズがHGMSシステムから外部に移動し始めるロータースピードよりも低いロータースピードであれば、いずれの負荷においても、より高い流速で稼働させることが可能であった。表を参照。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
IgGのフロー溶出試験
400mLの各樹脂プロトタイプを、6LのIgG(2mg/mL)サンプルと共に1時間超インキュベートした。
100mL又は400mL(1.6L又は6.4LのIgG樹脂混合物)のIgG吸着Mag Sepharose PrismAを、システム内にポンプ搬送し、そして磁性ビーズをマグネットにトラップさせ、そしてビーズを1LのAバッファーを用いて3回洗浄した。
ビーズ容積及びロータースピードが溶出性能にどのような影響を及ぼすか調査するために、140mL/分において、異なるロータースピードにて溶出を実施した。
溶出時、約100~2100mLの分画を収集し、そして吸収を、UVプレートリーダーを使用して分画毎に決定し、また各分画の正確な容積も秤量を使用して決定した。各分画のUVを、累積溶出容積に対してプロットした。
図1~4を参照。
一般的に、ローター回転が0%のとき、溶出バッファーを数カラムボリューム(4000mL超)流した後であっても高濃度のIgGが溶出液中になおも存在したので、IgGの溶出は不十分であったことを示し、また溶出プロファイルも濃度が低下する傾向をみせなかった。
37μm未満のビーズの場合、ビーズの容積が小さいほど、ロータースピードに対する依存性は小さくなる。100mLのビーズの場合、75及び150rpmのロータースピードにおける溶出ピーク形状は類似した(
図8A)。400mLのビーズの場合、溶出ピーク形状はロータースピード間でより有意に異なり、150rpmを使用したときにIgGの溶出は最も効果的であった(
図8C)。
37~100μmのビーズの場合、ビーズの容積が小さいほど、ロータースピードに対する依存性は小さくなる。100mLのビーズの場合、75rpmのロータースピード及び150rpmのロータースピードにおける溶出ピークは類似した(
図8B)。400mLのビーズの場合、150rpmの回転と0rpmの回転の間で、溶出ピーク形状は劇的に異なった。150rpmで回転させたとき、IgGは対称的な溶出ピークで溶出した一方、0rpmの回転では、IgGは6500mLの溶出バッファーを流した後でもなおも溶出した(
図8D)。
0~37μmのビーズを37~100μmのビーズと比較すると、100mLのビーズを使用したとき、溶出ピーク形状は類似している(
図8A及び
図8Bをそれぞれ参照)。400mLのビーズ及び150rpmの回転のとき、より大型のビーズ(37~100μm)の方が、37μm未満のビーズ(400mL)における溶出ピークよりもかなりシャープな溶出ピークを示した。より大型のビーズを使用すると、溶出バッファーが2000mLに達する前に大部分のIgGが溶出したと思われる一方、37μm未満のビーズの場合、溶出ピークは、4000mL流しても安定したベースラインまで低下しなかった(
図8C及び
図8Dをそれぞれ参照)。
【実施例4】
【0117】
目的
この試験の目的は、磁気分離後に、生体分子をポリッシングするためのメンブレンクロマトグラフィー工程を付加したときの効果を評価することであった。より具体的には、試験には、高勾配磁気セパレーターシステムを使用することによって、Mag Sepharose PrismAを用いた精製を行い、その後にFibro adhereユニットプロトタイプを用いたメンブレンクロマトグラフィーによってIgG1モノクロナール抗体(mAb)をポリッシングする工程が含まれた。
【0118】
材料
開始サンプル: CHO細胞を対象としてXDR-10培養することから得られたIgG1モノクロナール抗体、生存率66.4%、濃度2.7g/L
Superdex(商標) 200 Increase 10/300 GL、GE HEALTHCARE社
MagSepharose PrismA 37~100μm、400ml、GE HEALTHCARE社
Fibro Adhereユニットプロトタイプ、0.4ml:
・Fibro Adhere1: 167g/リットルのAdhere反応濃度を用いて、アリルグリシジルエーテル(AGE)を添加した後に、材料をジビニルスルホン(DVS)で架橋した。力価は563μmol/g。
・Fibro Adhere2: 167g/リットルのAdhere反応濃度を用いて、AGEを添加する前に、材料をDVSで架橋した。力価は212μmol/g。
・Fibro Adhere3: 500g/リットルのAdhere反応濃度を用いて、AGEを添加する前に、材料をDVSで架橋した。力価は478μmol/g。
【0119】
機器
AKTA(商標) Pure 25、GE HEALTHCARE社
HPLC Infinity 1200、Agilent technologies社
【0120】
バッファー
25mMリン酸Na + 0.15M NaCl pH6.3
4.88gのNaH2PO4 H2O、2.6gのNa2HPO4、及び17.5gのNaClを、2LのdH2Oで稀釈、混合した。
25mMリン酸Na pH7
1.16gのNaH2PO4 H2O及び2.367gのNa2HPO4を、1LのdH2Oで稀釈、混合した。
25mMリン酸Na + 1M NaCl pH7
0.464gのNaH2PO4 H2O、3.851gのNa2HPO4、及び58.44gのNaClを、1LのdH2Oで稀釈、混合した。
25mMリン酸Na pH7.5
0.73gのNaH2PO4 H2O及び3.508g Na2HPO4を、1LのdH2Oで稀釈、混合した。
100mM酢酸 pH3.0
6mlの氷酢酸を1LのdH2Oで稀釈、混合した。
【0121】
条件及び実測値
実施例2に記載されるように、高勾配磁気セパレーターシステムを使用してMagSepharose PrismAから溶出させた溶出液を、Fibro adhereユニットプロトタイプを用いたメンブレンクロマトグラフィーにより更にポリッシングするために使用した。
Fibro AdhereユニットをAKTA Pure 25システムに接続し、そして3つの異なる25mM Na-リン酸バッファー条件(pH及び電気伝導度)について評価した。Table 11(表13)を参照。50単位容積(20ml)について、16ml/分の流速で平衡化を実施した後、4mlのmAbサンプルを16ml/分で適用し、そして通過画分を収集した。Fibro Adhereユニットを、20単位容積(8ml)を用いて洗浄し、そして25単位容積(10ml)について、100mM酢酸pH3.0を用いて16ml/分の流速で清浄化した後、50単位容積(20ml)について再平衡化した。UVを280nmで常時モニタリングした。
【0122】
【0123】
結果、分析、及び結論
異なるバッファー条件において、Fibro Adhereを用いてmAbをポリッシングして得られたクロマトグラムは、3バッファー条件いずれにおいても、サンプル適用期間中に高UV値を示した。サンプル適用期間中のサンプルの通過画分を収集し、更に分析した。Table 12(表14)を参照。mAbの濃度及び凝集物の割合(%)を、SEC-HPLC、Superdex 200 Increase 10/300 GLにより、0.2MのNaリン酸バッファーを用いて、1サンプル毎に0.8ml/分の流速で26分間分析した。通過画分中の宿主細胞タンパク質レベルを、Cygnus第3世代CHO HCP ELISAキットを用いて分析した。
【0124】
【0125】
結論として、mAbのポリッシングは高収率(93~100%)、及び宿主細胞タンパク質(HCP)の実質的な低下をもたらした。pHが7.5及び電気伝導度が3.5mS/cmのとき、HCPの低下は最大であり、93~99%の収率をもたらしたが、またHCPの低下は、Fibro Adhereプロトタイプを用い、最高リガンド密度を用いたときに最高であった。
【0126】
本開示は、上記したその例示的実施形態に限定されず、また下記の特許請求の範囲の範囲内で、本開示に対して考え得るいくつかの改変を加えることが可能であるものと理解される。
【符号の説明】
【0127】
1 分離システム、システム(
図2)
3 細胞培養物、生体溶液(
図2)
3 クロマトグラフィー材料ユニット(
図7)(※誤りの可能性)
5 磁気セパレーター(
図2)
5a インレット(
図2)
5b アウトレット(
図2)
6 筐体(
図3)
7 収集セル(
図2)
9 捕捉セル(
図2)
9a 細胞培養物/生体溶液インレット(
図2)
9b 磁性粒子インレット(
図2)
9b 収集デバイス(
図7)(※誤りの可能性)
11 電磁石(
図3)
13 洗浄装置(
図2)
13 攪拌装置(
図3)
15 洗浄バッファー供給装置(
図2)
15 ローター(
図3)
17 洗浄バッファー収集装置(
図2)
17 回転ディスク(
図3)
19 静止ディスク(
図3)
21 磁性粒子(
図3)
101 メンブレンクロマトグラフィーデバイス(
図2)(
図7)
103 クロマトグラフィー材料ユニット(
図7)
105 カセット(
図7)
107 液体送達システム(
図7)
109a 送達デバイス(
図7)
109b 収集デバイス(
図7)
113 筐体(
図7)
115 インレット(
図7)
117 インレット流体チャンネル(
図7)
119 アウトレット(
図7)
121 アウトレット流体チャンネル(
図7)
125 トッププレート(
図7)
127 ボトムプレート(
図7)
153a インレット表面(
図7)
153b アウトレット表面(
図7)
157a 送達デバイスインレット(
図7)
157b 収集デバイスアウトレット(
図7)