(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出するためのガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴
(51)【国際特許分類】
C25D 3/12 20060101AFI20240909BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
C25D3/12
C25D7/00 P
(21)【出願番号】P 2021560982
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2020060455
(87)【国際公開番号】W WO2020212346
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-03
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511188635
【氏名又は名称】アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハー ウント コ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ヴァヒター
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-073990(JP,A)
【文献】特表平05-506695(JP,A)
【文献】特開2006-002246(JP,A)
【文献】特表2015-525294(JP,A)
【文献】特開2016-121377(JP,A)
【文献】米国特許第04421611(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00 - 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出するためのガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴であって、前記電気めっき浴が、一般式(I)
【化1】
(式中、
R
1=SO
3基を含むC
1~C
18炭化水素基、又はカルボキシル基を含むC
1~C
18炭化水素基、又は芳香族及び/又はヘテロ芳香族基を含むC
1~C
18炭化水素基であり;
R
2=NR
3R
4基、又はOR
5基、又は環式NR
6基であり、
R
3、R
4、R
5=水素、又はC
1~C
18脂肪族炭化水素基、又は芳香族及び/又はヘテロ芳香族基を含むC
1~C
18炭化水素基であり、R
3、R
4及びR
5は同一又は異なり;
R
6=C
3~C
8炭化水素基、又は少なくとも1つの炭素原子が、ヘテロ原子で置換されているC
3~C
8炭化水素基であり;
n=1~3である)を有する少なくとも1つの化合物及び/又はその塩を含み;
前記電気めっき浴が、0.002g/l~0.15g/lの範囲の総濃度の少なくとも1つのアセチレン化合物及び/又はその塩を更に含むことを特徴とし、
前記少なくとも1つのアセチレン化合物及び/又はその塩が、H-C≡C-CH
2-N(エチル)
2、H-C≡C-CH
2-O-CH
2-CH
2-OH、CH
3-CH(OH)-C≡C-CH(OH)-CH
3、CH
3-C(CH
3)(OH)-C≡C-C(CH
3)(OH)-CH
3、HO-CH
2-C≡C-CH
2-OH、HO-CH
2-CH
2-O-CH
2-C≡C-CH
2-O-CH
2-CH
2-OH、H-C≡C-CH
2-O-CH
2-CH
2-CH
2-OH、及びHO-CH
2-C≡C-CH
2-O-CH
2-CH
2-CH
2-OHからなる群から選択され、
前記電気めっき浴が、抱水クロラールを含み、前記抱水クロラールが、0.07g/l未満の濃度を有する、電気めっき浴。
【請求項2】
前記電気めっき浴が、前記少なくとも1つのアセチレン化合物及び/又はその塩を0.003g/l~0.1g/
lの範囲の総濃度で含むことを特徴とする、請求項1に記載のガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴。
【請求項3】
前記電気めっき浴が、抱水クロラールを0.045g/l未満の濃度で含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴。
【請求項4】
前記電気めっき浴が、更に少なくとも1つの光沢ニッケル添加剤及び/又はその塩
を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴。
【請求項5】
前記電気めっき浴が、ホルムアルデヒドを含まない、又はホルムアルデヒドを0.1g/l未
満の濃度で含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴。
【請求項6】
前記電気めっき浴が、芳香族スルホン酸及び/又はその塩を含まない
、及び/又は前記電気めっき浴が、安息香酸スルフィミドを含まないことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴。
【請求項7】
前記電気めっき浴が、内部応力低減剤及び/又はその塩から選択される少なくとも1つの化合物を更に含むことを特徴とし、前記少なくとも1つの内部応力低減剤が
、サリチル酸及び/又はその塩として選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載のガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴。
【請求項8】
導電性ワークピース上に半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出させる方法であって、以下の方法工程:
i)ワークピースを、請求項1~7のいずれか一項に記載のガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴と接触させる工程;
ii)少なくとも1つのアノードを前記ガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴に接触させる工程;
iii)前記ワークピースと前記少なくとも1つのアノードの間に電圧を印加する工程;及び
iv)半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを前記ワークピース上に電着させる工程
を含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法を実施することにより、半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出するための、請求項1~7のいずれか一項に記載のガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ワークピース上に半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出するためのガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴;及びその方法に関する。本発明は更に、本発明の方法を実施することによって半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出するための、そのようなガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴の使用を一般に対象とする。
【背景技術】
【0002】
光沢ニッケル電気めっき浴は、自動車、電気、電化製品、ハードウェア、その他の業界で使用されている。光沢ニッケルめっきの最も重要な機能は、クロムめっきの下塗りとして、仕上げ業者が滑らかな光沢仕上げを実現するのを助け、かなりの量の腐食防止を提供することである。
【0003】
高レベルの基礎金属腐食防止を必要とする装飾めっき部品の場合、半光沢ニッケル析出物は、ほとんどの場合、その後の光沢ニッケル及びクロムの析出物と組み合わせて使用される。半光沢のニッケル析出物は、通常、部品上に析出する全ニッケルの約60~70%であり、これにより、最高レベルの基礎金属腐食防止が提供され、総ニッケル厚さが最小になり、外観が最良になる。
【0004】
典型的には、ワークピース、特に金属基板は、半光沢ニッケル析出物によって覆われ、半光沢ニッケル析出物は、光沢ニッケル析出物によって覆われ、光沢ニッケル析出物は、クロム外側析出物によって覆われる。
【0005】
最も一般的なニッケル電気めっき浴は、ワット浴としても知られている硫酸塩浴である。更に、ニッケルめっき析出物の明るく光沢のある外観を実現するために、有機及び無機の薬剤(光沢剤)が電解液に添加されることが多い。添加される光沢剤の種類とその濃度によって、ニッケル析出物の外観、すなわち、輝き、光沢、半光沢、サテン等が決まる。
【0006】
従来、ワットニッケル浴から高レベリング、延性、半光沢、無硫黄のニッケル析出物を得るためにクマリンが使用されてきた。しかし、現在ではクマリンを含まない溶液が利用可能である。半光沢ニッケル仕上げは、その名の通り半光沢(semi-lustrous)であるが、特に研磨及びバフ研磨がしやすいように開発された。代替案として、その後に光沢ニッケルをメッキすれば、バフ研磨をなくすことができる。光沢及び滑らかさは、使用条件によって異なる。
【0007】
半光沢ニッケル仕上げが非常に簡単にバフ研磨及び/又は研磨される理由の1つは、析出物の構造が柱状であるのに対し、光沢ニッケル仕上げの構造は板状(ラメラ状)であるためである。しかし、析出物の構造は、様々な添加剤、pHの変化、電流密度、又は溶液の攪拌の増加によって変化する可能性があり、内部応力等の析出物の特性に影響を与えない限り問題ではない。
【0008】
メッキされたニッケル析出物の内部応力は、圧縮応力又は引張応力である可能性がある。圧縮応力は、析出物が膨張して応力を緩和する場合である。対照的に、引張応力は析出物が収縮する場合である。高度に圧縮された析出物は、ブリスター、反り、又は析出物がワークピースから分離する原因となる可能性があり、また、引張応力が高い析出物は、亀裂や疲労強度の低下に加え、反りを引き起こす可能性がある。
【0009】
ニッケル電気めっき浴、特に半光沢ニッケルプロセスの添加剤としてクマリンを使用して、優れたレベリングを備えた延性、光沢のある析出物を生成することはよく知られている。浴中の高濃度のクマリンは、一方で最良のレベリング結果をもたらすが、そのような高濃度のクマリンは、他方では、有害な分解物又は分解生成物の形成を高率でもたらす。これらの分解生成物は、その後の光沢ニッケル析出物によって容易には明るくならない不均一で鈍い灰色の領域をもたらす可能性があり、電気めっき浴中の所定の濃度のクマリンから得られるレベリングを低下させる可能性があり、ニッケル析出物の有益な物理的性質を低下させる可能性があるという点で好ましくない。
【0010】
クマリン分解生成物の望ましくない影響を克服するのを助けるために、ホルムアルデヒドや抱水クロラール等の様々な添加剤の使用も提案されている。しかし、これらの材料の適度な濃度でさえニッケル電着物の引張応力を増加させるだけでなく、クマリンのレベリング作用も著しく減少させるので、そのような添加剤の使用には一定の限界がある。
【0011】
数十年来、めっき供給業者はクマリン浴と同等のレベリング効果を謳った浴処方を多数提案してきたが、今まで、必要な基準をすべて満たした浴処方はほとんどなかった。
【0012】
上記で説明したように、クマリンのレベリングは例外的であるが、クマリンは不快な臭いがあり、分解して有害な分解生成物を形成し、これらの分解生成物は、電気めっき浴のバッチ炭素処理によってのみ除去できる。これらの処理は高価で時間がかかり、通常は少なくとも毎月、場合によっては毎週行わなければならない。
【0013】
独国特許出願公開第19610361(A1)号明細書は、基板上に半光沢ニッケルコーティングをガルバニック析出するためのプロセスを開示し、前記基板は、光沢剤添加剤として、特にピリジニウムをベースとする環状N-アリル-又はN-ビニル-アンモニウム化合物を含む酸性水性ガルバニック浴によって処理されている。
【0014】
欧州特許第2,852,698(B1)号明細書は、導電性ワークピース上に半光沢ニッケル又はニッケル合金コーティングを析出させるためのガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴;及びその方法を開示する。
【0015】
米国特許第5,164,069(A)号明細書は、ニッケルイオン及び1つ又は複数のアセチレン化合物、具体的には、アセチレンアルコールのモノ及びポリグリセロールエーテルを含む酸性電気めっき水溶液、及び表面に光沢のあるニッケル析出物を電解析出する方法を開示する。
【0016】
欧州特許出願公開第2801640(A1)号明細書は、導電性ワークピース上に半光沢ニッケル又はニッケル合金コーティングを析出させるためのガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴を開示する。
【0017】
中国特許出願公開第108950617(A)号明細書は、ビスマスを含有するニッケルニッケル-合金めっき液及びその電気めっき方法を開示する。
【0018】
しかし、高い内部応力値を生成することなく、良好な光沢特性を有する半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングの良好な析出特性の所望の複雑な組み合わせを実現する方法を示唆する既知の先行技術はごくわずかである。従来技術の浴は、いくつかの良好な特性を示す半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを実現することにほとんど成功しているが、他の特性は、良好な光沢と高い内部応力、又は不良な光沢と低い内部応力の組み合わせ等、ほとんど不良であったか、不良になった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】独国特許出願公開第19610361(A1)号明細書
【文献】欧州特許第2,852,698(B1)号明細書
【文献】米国特許第5,164,069(A)号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2801640(A1)号明細書
【文献】中国特許出願公開第108950617(A)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、先行技術を考慮して、本発明の目的は、公知の先行技術のニッケル電気めっき浴の前記欠点を示さない、ワークピース上に半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出するための修正されたガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴を提供することであった。
【0021】
特に、本発明の目的は、複数の異なる種類のワークピース上に半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出させることができる修正されたガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴を提供することであった。
【0022】
したがって、必要とされているのは、良好な光沢特性及び良好なレベリングを有する半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出させる方法である。
【0023】
本発明の別の目的は、クマリン浴のレベリング特性に近づくか、又は同等の、クマリンを含まないガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴を提供することである。
【0024】
更に、本発明の目的は、良好な光沢特性と特に組み合わせて、低い内部応力を有する半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを提供することであった。
【0025】
更に、特に本発明の目的は、コーティングされるべきワークピースが、金属、例えば鋼鉄を含む場合、金属表面の望ましくない腐食を避けるために最小限のクラック及びポアのみを有する半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを提供することであった。
【0026】
本発明の更に別の目的は、浴の寿命にわたって良好な安定性を提供するガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴を提供することである。
【0027】
更に、本発明の目的は、半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出させるために使用するのにも適切な修正されたガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴を提供することであった。
【0028】
更に、本発明の目的は、可能な限り単純な一般的な浴組成を含み、好ましくは可能な限り安価な化学物質を含む、修正されたガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0029】
これらの目的、また、明示的には述べられていないが、導入部として本明細書で論じられている関連性から直ちに導き出されるか、又は見分けられるさらなる目的は、本発明の第1の態様による請求項1のすべての特徴を有するガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴により達成される。本発明のガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴の適切な変更は、従属請求項2~7に含まれている。更に、請求項8は、本発明の第2の態様による導電性ワークピース上に半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出させるための方法を含む。本発明の第3の態様によれば、請求項9は、第2の態様による方法を実施して半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出させるための、第1の態様によるガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴の使用を含む。
【0030】
本発明は、例えば、衛生又は自動車機器用の装飾的なコーティングの分野において、導電性のワークピース上に装飾的なコーティングを析出するのに特に適しており、例えば、腐食防止及び/又は装飾層用の異なる金属層のその後の析出のために中間ニッケル又はニッケル合金層が必要である。典型的なワークピースは、自動車の内装部品、フロントグリル又はエンブレム等の金属コーティングでメッキされる表面を有する自動車産業の基板、又はドア、冷蔵庫のハンドルノブ、マイクロウェーブ、シャワーヘッド等、キッチンやバスルームの機器の部品等の金属コーティングでメッキされる表面を有する白物産業のワークピースである。基板の基本材料は、既知の方法によって導電性になり、最終的に導電性表面(例えば、銅又はニッケル又はそれらの組み合わせ)を提供するポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)等の既知のプラスチック、又はそれらの混合物とすることができ、又は、金属基板(例えば、銅又はニッケル又はそれらの組み合わせ等の導電性表面を更に有する)とすることができる。
【0031】
本発明の第1の態様による本発明は、半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出するためのガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴であって、電気めっき浴が、一般式(I)
【0032】
【0033】
(式中、
R1=SO3基を含むC1~C18炭化水素基、又はカルボキシル基を含むC1~C18炭化水素基、又は芳香族及び/又はヘテロ芳香族基を含むC1~C18炭化水素基であり;
R2=NR3R4基、又はOR5基、又は環式NR6基であり、
R3、R4、R5=水素、又はC1~C18脂肪族炭化水素基、又は芳香族及び/又はヘテロ芳香族基を含むC1~C18炭化水素基であり、R3、R4及びR5は同一又は異なり;
R6=C3~C8炭化水素基、又は少なくとも1つの炭素原子が、ヘテロ原子で置換されているC3~C8炭化水素基であり;
n=1~3である)を有する少なくとも1つの化合物及び/又はその塩を含み;
電気めっき浴が、0.002g/l~0.15g/lの範囲の総濃度の少なくとも1つのアセチレン化合物及び/又はその塩を更に含むことを特徴とし、
少なくとも1つのアセチレン化合物及び/又はその塩が、H-C≡C-CH2-N(エチル)2、H-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-OH、CH3-CH(OH)-C≡C-CH(OH)-CH3、CH3-C(CH3)(OH)-C≡C-C(CH3)(OH)-CH3、HO-CH2-C≡C-CH2-OH、HO-CH2-CH2-O-CH2-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-OH、H-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-CH2-OH、及びHO-CH2-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-CH2-OHからなる群から選択され、
電気めっき浴が、抱水クロラールを含み、抱水クロラールが、0.07g/l未満の濃度を有する、電気めっき浴を提供する。
【0034】
したがって、ワークピース上に半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出するための修正されたガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴を提供することが、予想外にも可能であり、これは公知の先行技術のニッケル電気めっき浴の前記欠点を示さない。
【0035】
特に、本発明による修正されたガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴は、電気めっき浴中の抱水クロラールの濃度を下げながら、半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出するのに適している。
【0036】
特に、本発明による修正されたガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴は、複数の異なる種類のワークピース上に半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出するのに適している。
【0037】
本発明は、少なくともクマリン浴のレベリング特性に近づく、クマリンを含まないガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴を提供する。
【0038】
達成された半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングは、良好な光沢特性及び良好なレベリングを有する。
【0039】
更に、得られた半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングは、良好な光沢特性と特に組み合わせて、低い内部応力を有する。
【0040】
更に、本発明は、浴の寿命にわたって良好な安定性を提供するガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴を提供する。
【0041】
更に、得られた半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングは、最終的な外側のコーティングに最小限のクラック及びポアを有し、これにより、コーティングされるべきワークピースが、金属、例えば、鋼、又は導電性プラスチック(例えば、銅又はニッケルコーティング又はそれらの組み合わせで金属化されたもの)を含む場合、金属表面の望ましくない腐食をうまく回避することができる。
【0042】
更に、本発明の修正されたガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴は、ほとんどが安価な単一の化学物質を有する非常に単純な一般的な浴組成物を含む。
【0043】
表の簡単な説明
本発明の目的、特徴、及び利点は、また、以下の説明を表と併せて読むことで明らかになるであろう。
表1は、本発明の実施形態による半光沢ニッケルコーティングの実験を示す。
表2は、本発明以外の比較実施形態による半光沢ニッケルコーティングの実験を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の請求項の範囲内の実施形態と、本発明の請求項の範囲外の実施形態とを区別するために、以下では後者の実施形態を「本明細書による」実施形態と呼ぶ。多くの場合、特徴は、両方に同様に適用される。
【0045】
本明細書による第1の態様は、半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出するためのガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴であって、電気めっき浴が、一般式(I)
【0046】
【0047】
(式中、
R1=SO3基を含むC1~C18炭化水素基、又はカルボキシル基を含むC1~C18炭化水素基、又は芳香族及び/又はヘテロ芳香族基を含むC1~C18炭化水素基であり;
R2=NR3R4基、又はOR5基、又は環式NR6基であり、
R3、R4、R5=水素、又はC1~C18脂肪族炭化水素基、又は芳香族及び/又はヘテロ芳香族基を含むC1~C18炭化水素基であり、R3、R4及びR5は同一又は異なり;
R6=C3~C8炭化水素基、又は少なくとも1つの炭素原子が、ヘテロ原子で置換されているC3~C8炭化水素基であり;
n=1~3である)を有する少なくとも1つの化合物及び/又はその塩を含むことを特徴とし;
電気めっき浴が、0.001g/l~0.5g/lの範囲の総濃度の少なくとも1つのアセチレン化合物及び/又はその塩を更に含む、電気めっき浴を対象とする。
【0048】
本明細書によれば、少なくとも1つのアセチレン化合物及び/又はその塩が、一般式(V)
R7-C≡C-R8
(V)
(式中、
R7=水素、又は少なくとも1つのOR9基を含むC1~C8炭化水素基であり、
R9=水素、又は少なくとも1つのOH基を含むC1~C8炭化水素基であり;
R8=少なくとも1つのOR10基を含むC1~C8炭化水素基、又は少なくとも1つのNR11R12基を含むC1~C8炭化水素基であり、
R10=水素、又は少なくとも1つのOH基を含むC1~C8炭化水素基であり;
R11、R12=水素、又はC1~C8炭化水素基であり、R11及びR12は同一又は異なる)を有する、
電気めっき浴が好ましい。
【0049】
本明細書によれば、少なくとも1つのアセチレン化合物及び/又はその塩が、一般式(V)
R7-C≡C-R8
(V)
(式中、
R7=水素、又は少なくとも1つのOR9基を含むC1~C4、好ましくはC1又はC2又はC3アルキル基であり、
R9=水素、又は少なくとも1つのOH基を含むC1~C8炭化水素基であり;
R8=少なくとも1つのOR10基を含むC1~C4、好ましくはC1又はC2又はC3アルキル基、又は少なくとも1つのNR11R12基を含むC1~C4、好ましくはC1又はC2アルキル基であり、
R10=水素、又は少なくとも1つのOH基を含むC1~C8炭化水素基であり;
R11、R12=水素、又はC1~C8炭化水素基であり、R11及びR12は同一又は異なる)を有する、
電気めっき浴が好ましい。
【0050】
本明細書によれば、少なくとも1つのアセチレン化合物及び/又はその塩が、一般式(V)
R7-C≡C-R8
(V)
(式中、
R7=水素、又は少なくとも1つのOR9基を含むC1~C4、好ましくはC1又はC2又はC3アルキル基であり、
R9=水素、又は少なくとも1つのOH基を含むC1~C3、好ましくはC1又はC2アルキル基であり;
R8=少なくとも1つのOR10基を含むC1~C4、好ましくはC1又はC2又はC3アルキル基、又は少なくとも1つのNR11R12基を含むC1~C4、好ましくはC1又はC2アルキル基であり、
R10=水素、又は少なくとも1つのOH基を含むC1~C3、好ましくはC1又はC2アルキル基であり;
R11、R12=水素、又はC1~C4、好ましくはC1又はC2アルキル基であり、R11及びR12は同一又は異なる)を有する、
電気めっき浴が好ましい。
【0051】
本明細書によれば、少なくとも1つのアセチレン化合物及び/又はその塩が、一般式(V)
R7-C≡C-R8
(V)
(式中、
R7=水素、又はCH2-OH、又はCH(OH)-CH3、C(CH3)(OH)-CH3、又はCH2-O-CH2-CH2-OH、又はCH2-O-CH2-CH2-CH2-OHであり;
R8=CH2-OH、又はCH(OH)-CH3、C(CH3)(OH)-CH3、又はCH2-O-CH2-CH2-OH、又はCH2-O-CH2-CH2-CH2-OH、又はCH2-N(エチル)2である)を有する、
電気めっき浴が好ましい。
【0052】
本明細書によれば、少なくとも1つのアセチレン化合物及び/又はその塩が、H-C≡C-CH2-N(エチル)2、H-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-OH、CH3-CH(OH)-C≡C-CH(OH)-CH3、CH3-C(CH3)(OH)-C≡C-C(CH3)(OH)-CH3、HO-CH2-C≡C-CH2-OH、HO-CH2-CH2-O-CH2-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-OH、H-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-CH2-OH、H-C≡C-CH2-OH、及びHO-CH2-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-CH2-OHからなる群から選択される、電気めっき浴が好ましい。
【0053】
本明細書によれば、電気めっき浴が、少なくとも1つのアセチレン化合物及び/又はその塩を0.001g/l~0.4g/l、好ましくは0.001g/l~0.25g/l、より好ましくは0.002g/l~0.15g/l、更により好ましくは0.003g/l~0.1g/l、更により好ましくは0.004g/l~0.08g/l、及び最も好ましくは0.001g/l~0.08g/lの範囲の総濃度で含む、電気めっき浴が好ましい。
【0054】
本明細書によれば、電気めっき浴が、抱水クロラールを、好ましくは0.005g/l~0.5g/l、より好ましくは0.01g/l~0.1g/l、及び最も好ましくは0.04g/l~0.085g/lの範囲の濃度で含む、電気めっき浴が好ましい。
【0055】
本明細書によれば、電気めっき浴が、抱水クロラールを0.07g/l未満、好ましくは0.045g/l未満の濃度で含む、電気めっき浴が好ましい。
【0056】
本明細書によれば、電気めっき浴が、少なくとも1つの光沢ニッケル添加剤及び/又はその塩、好ましくはPPS、PES及び/又はPPS-OHを、好ましくは0.005g/l~10g/l、より好ましくは0.005g/l~1g/l、及び最も好ましくは0.01g/l~0.1g/lの範囲の総濃度で更に含む、電気めっき浴が好ましい。
【0057】
本明細書によれば、電気めっき浴が、ホルムアルデヒドを含まない、又はホルムアルデヒドを0.1g/l未満、好ましくは0.05g/l未満、より好ましくは0.025g/l未満、更により好ましくは0.01g/l未満、及び最も好ましくは0.005g/l未満の濃度で含む、電気めっき浴が好ましい。
【0058】
本明細書によれば、電気めっき浴が、芳香族スルホン酸及び/又はその塩を含まない、好ましくは、1,3,6-ナフタレントリスルホン酸及び/又はその塩を含まない、及び/又は電気めっき浴が、安息香酸スルフィミド(サッカリン)を含まない、電気めっき浴が好ましい。
【0059】
本明細書によれば、電気めっき浴が、内部応力低減剤及び/又はその塩から選択される少なくとも1つの化合物を更に含み、少なくとも1つの内部応力低減剤が、好ましくは0.1g/l~10g/l、より好ましくは0.3g/l~6g/l、及び最も好ましくは0.5g/l~3.5g/lの範囲の総濃度でサリチル酸及び/又はその塩として選択される、電気めっき浴が好ましい。
【0060】
本明細書による第2の態様は、導電性ワークピース上に半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出させる方法であって、以下の方法工程:
i)ワークピースを本明細書の第1の態様によるガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴と接触させる工程;
ii)少なくとも1つのアノードを本明細書の第1の態様によるガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴と接触させる工程;
iii)ワークピースと少なくとも1つのアノードとの間に電圧を印加する工程;及び
iv)半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングをワークピース上に電着させる工程
を含む、方法を対象とする。
【0061】
本明細書による第3の態様は、本明細書による第2の態様による方法を実施することにより半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出するための、本明細書による第1の態様によるガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴の使用を対象とする。
以下では、主に本発明を更に詳細に説明する。
【0062】
第1の態様による本発明は、半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出するためのガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴であって、電気めっき浴が、一般式(I)
(式中、
R1=SO3基を含むC1~C18炭化水素基、又はカルボキシル基を含むC1~C18炭化水素基、又は芳香族及び/又はヘテロ芳香族基を含むC1~C18炭化水素基であり;
R2=NR3R4基、又はOR5基、又は環式NR6基であり、
R3、R4、R5=水素、又はC1~C18脂肪族炭化水素基、又は芳香族及び/又はヘテロ芳香族基を含むC1~C18炭化水素基であり、R3、R4及びR5は同一又は異なり;
R6=C3~C8炭化水素基、又は少なくとも1つの炭素原子が、ヘテロ原子で置換されているC3~C8炭化水素基であり;
n=1~3である)を有する少なくとも1つの化合物及び/又はその塩を含み;
電気めっき浴が、0.002g/l~0.15g/lの範囲の総濃度の少なくとも1つのアセチレン化合物及び/又はその塩を更に含むことを特徴とし、
少なくとも1つのアセチレン化合物及び/又はその塩が、H-C≡C-CH2-N(エチル)2、H-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-OH、CH3-CH(OH)-C≡C-CH(OH)-CH3、CH3-C(CH3)(OH)-C≡C-C(CH3)(OH)-CH3、HO-CH2-C≡C-CH2-OH、HO-CH2-CH2-O-CH2-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-OH、H-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-CH2-OH、及びHO-CH2-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-CH2-OHからなる群から選択され、
電気めっき浴が、抱水クロラールを含み、抱水クロラールが、0.07g/l未満の濃度を有する、電気めっき浴を提供する。
【0063】
0.002g/l~0.15g/lの範囲の総濃度の少なくとも1つのアセチレン化合物及び/又はその塩を添加することにより、良好な又は更に優れた光沢特性及び良好な又は更に優れたレベリング等の高度な特性を有する半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出することができる電気めっき浴を提供する。
【0064】
本発明による半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出するためのガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴は、ニッケルイオンを含む。これは、本明細書による電気めっき浴にも同様に適用される。
【0065】
本発明/本明細書によれば、それぞれ、塩は、これに限定されるものではないが、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等;アルカリ土類金属、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩等;有機アミン塩、例えば、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩等;無機酸塩、例えば、ハロゲン化物、好ましくは塩化物、臭化物、フッ化物及び/又はヨウ化物、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等;有機酸塩、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸等;スルホン酸塩、例えば、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等;アミノ酸塩、例えば、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等を含む。
【0066】
好ましくは、塩は、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等;アルカリ土類金属、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩等;及び/又は無機酸塩、例えば、ハロゲン化物、より好ましくは塩化物、臭化物、フッ化物及び/又はヨウ化物、硫酸塩等を含む。
【0067】
本明細書によれば、少なくとも1つのアセチレン化合物及び/又はその塩が、脂肪族アセチレン化合物及び/又はその塩である、電気めっき浴が好ましい。一般に、芳香族アセチレン化合物とは対照的に、電気めっき浴に少なくとも1つの脂肪族アセチレン化合物を提供すると、析出した半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングの特性が改善される。
【0068】
本明細書によれば、少なくとも1つのアセチレン化合物及び/又はその塩が、少なくとも1つのOH基又は少なくとも1つのN(エチル)2基を含む、電気めっき浴が好ましい。一般に、ヒドロキシ基又はジエチルアミン基は、極性を有するアセチレン化合物を提供し、それによって析出プロセスを改善する。
【0069】
本明細書によれば、R7を水素として選択する場合、R8はCH2-OHとして選択することができない、電気めっき浴が好ましい。
【0070】
式(V)による置換アルキン基としてアセチレン化合物を選択すると、析出した半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングの光沢及びレベリングが改善される。本発明の関連で利用されるアルキル基は、n-アルキル基、iso-アルキル基又はtert-アルキル基を含み得る。
【0071】
本明細書によれば、式(V)による化合物が、H-C≡C-CH2-N(エチル)2(ゴルパノールDEP)、H-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-OH(ゴルパノールPME)、HO-CH2-C≡C-CH2-OH(ゴルパノールBOZ)、CH3-CH(OH)-C≡C-CH(OH)-CH3(ゴルパノールHD)、CH3-C(CH3)(OH)-C≡C-C(CH3)(OH)-CH3、HO-CH2-CH2-O-CH2-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-OH(ゴルパノールBEO)、H-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-CH2-OH(ゴルパノールPAP)、HO-CH2-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-CH2-OH(ゴルパノールBMP)、H-C≡C-CH2-OH(ゴルパノールPA)及び/又はその塩、好ましくはゴルパノールDEP、ゴルパノールPME、ゴルパノールBOZ、ゴルパノールHD、及び/又はその塩として選択される、電気めっき浴が好ましい。
【0072】
しかし、本発明によれば、少なくとも1つのアセチレン化合物が、H-C≡C-CH2-N(エチル)2(ゴルパノールDEP)、H-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-OH(ゴルパノールPME)、HO-CH2-C≡C-CH2-OH(ゴルパノールBOZ)、CH3-CH(OH)-C≡C-CH(OH)-CH3(ゴルパノールHD)、CH3-C(CH3)(OH)-C≡C-C(CH3)(OH)-CH3、HO-CH2-CH2-O-CH2-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-OH(ゴルパノールBEO)、H-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-CH2-OH(ゴルパノールPAP)、HO-CH2-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-CH2-OH(ゴルパノールBMP)及び/又はその塩として、好ましくはゴルパノールDEP、ゴルパノールPME、ゴルパノールBOZ、ゴルパノールHD、及び/又はその塩として選択される、電気めっき浴が好ましい。
【0073】
好ましくは、電気めっき浴が、CH3-CH(OH)-C≡C-CH(OH)-CH3(ゴルパノールHD)を含む場合、電気めっき浴は、0.15g/lより高い濃度の抱水クロラールを含むことができない、好ましくは0.20g/lより高い濃度の抱水クロラールを含むことができない、及びより好ましくは0.25g/lより高い濃度の抱水クロラールを含むことができない。
【0074】
好ましくは、電気めっき浴が、CH3-CH(OH)-C≡C-CH(OH)-CH3(ゴルパノールHD)を含む場合、電気めっき浴は、1.5g/lより高い濃度のサリチル酸を含むことができない、好ましくは2.0g/lより高い濃度のサリチル酸を含むことができない、及びより好ましくは2.4g/l~2.6g/lの濃度のサリチル酸を含むことができない。
【0075】
好ましくは、電気めっき浴が、CH3-CH(OH)-C≡C-CH(OH)-CH3(ゴルパノールHD)を含む場合、電気めっき浴は、0.050g/l未満の濃度のHO-CH2-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-CH2-OH(ゴルパノールBMP)を含むことができない、好ましくは0.030g/l未満の濃度のHO-CH2-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-CH2-OH(ゴルパノールBMP)を含むことができない、及びより好ましくは0.010g/l~0.020g/lの濃度のHO-CH2-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-CH2-OH(ゴルパノールBMP)を含むことができない。
【0076】
好ましくは、電気めっき浴が、CH3-CH(OH)-C≡C-CH(OH)-CH3(ゴルパノールHD)を含む場合、電気めっき浴は、0.060g/l未満の濃度のHO-CH2-C≡C-CH2-OH(ゴルパノールBOZ)を含むことができない、好ましくは0.050g/l未満の濃度のHO-CH2-C≡C-CH2-OH(ゴルパノールBOZ)を含むことができない、及びより好ましくは0.030g/l~0.040g/lの濃度のHO-CH2-C≡C-CH2-OH(ゴルパノールBOZ)を含むことができない。
【0077】
好ましくは、電気めっき浴が、HO-CH2-CH2-O-CH2-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-OH(ゴルパノールBEO)及び/又はH-C≡C-CH2-O-CH2-CH2-OH(ゴルパノールPME)を含む場合、電気めっき浴は、1-ベンジルピリジニウム-3-カルボキシレートを0.05ml/l~0.5ml/lの濃度で含むことができない。
【0078】
好ましくは、本発明の電気めっき浴は、少なくとも1つのアセチレン化合物及び/又はその塩を0.003g/l~0.1g/l、更により好ましくは0.004g/l~0.08g/l、及び最も好ましくは0.001g/l~0.08g/lの範囲の総濃度で含む。
【0079】
好ましくは、本発明の電気めっき浴は、少なくとも1つのアセチレン化合物及び/又はその塩を0.005g/l~0.15g/l、より好ましくは0.010g/l~0.15g/l、更により好ましくは0.015g/l~0.15g/l、更により好ましくは0.020g/l~0.15g/l、更により好ましくは0.030g/l~0.15g/l、更により好ましくは0.040g/l~0.15g/l、更により好ましくは0.050g/l~0.15g/l、更により好ましくは0.060g/l~0.15g/l、更により好ましくは0.070g/l~0.15g/l、更により好ましくは0.080g/l~0.15g/l、更により好ましくは0.090g/l~0.15g/l、更により好ましくは0.10g/l~0.15g/l、更により好ましくは0.11g/l~0.15g/l、更により好ましくは0.12g/l~0.15g/l、更により好ましくは0.13g/l~0.15g/l、及び更により好ましくは0.14g/l~0.15g/lの範囲の総濃度で含む。
【0080】
好ましくは、本発明の電気めっき浴は、少なくとも1つのアセチレン化合物及び/又はその塩を0.005g/l~0.15g/l、更により好ましくは0.005g/l~0.14g/l、更により好ましくは0.005g/l~0.13g/l、更により好ましくは0.005g/l~0.12g/l、更により好ましくは0.005g/l~0.11g/l、更により好ましくは0.005g/l~0.10g/l、更により好ましくは0.005g/l~0.090g/l、更により好ましくは0.005g/l~0.080g/l、更により好ましくは0.005g/l~0.070g/l、更により好ましくは0.005g/l~0.060g/l、更により好ましくは0.005g/l~0.050g/l、更により好ましくは0.005g/l~0.040g/l、更により好ましくは0.005g/l~0.030g/l、更により好ましくは0.005g/l~0.020g/l、更により好ましくは0.005g/l~0.010g/lの範囲の総濃度で含む。
【0081】
少なくとも1つのアセチレン化合物の総濃度を好ましい濃度範囲に選択することにより、析出した半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングの特性を向上させることができる。
【0082】
好ましくは、電気めっき浴は、少なくとも2つのアセチレン化合物及び/又はその塩、好ましくは少なくとも3つのアセチレン化合物及び/又はその塩を含む。
【0083】
本明細書では、「ガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴」という用語は、半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出するために適用される場合、いわゆる「ワット電解浴」をベースとしたガルバニックニッケル浴を指し、これは、一般的な以下の組成を有する。
240~550g/l 硫酸ニッケル(NiSO4・7H2O又はNiSO4・6H2O)、
30~150g/l 塩化ニッケル(NiCl2・6H2O)、及び
30~55g/l ホウ酸(H3BO3)。
【0084】
大量の硫酸ニッケルは、必要な濃度のニッケルイオンを提供し、塩化ニッケルは、アノードの腐食を改善し、導電率を高める。ホウ酸は、pH値を維持するための弱緩衝液として使用される。
【0085】
好ましくは、ガルバニックニッケル及びニッケル合金電気めっき浴は、10g/l~50g/lの範囲の、好ましくは15g/l~40g/lの範囲の、及びより好ましくは20g/l~30g/lの範囲の塩化物含有量を有する。
【0086】
塩化ニッケルは、塩化ナトリウムにより部分的に又は完全に置換されてもよい。
【0087】
更に、電解液中の塩化物は、等量の臭化物により部分的に又は完全に置換されてもよい。
【0088】
一般に、抱水クロラールは、電位を設定するのに役立ち、更に、析出したコーティングの光沢特性及び付きまわり性を修正するのに役立つ。
【0089】
好ましくは、本発明の電気めっき浴は、抱水クロラールを0.001g/l~0.069g/lの範囲の濃度で、より好ましくは0.005g/l~0.069g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.010g/l~0.069g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.020g/l~0.069g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.025g/l~0.069g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.030g/l~0.069g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.035g/l~0.069g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.040g/l~0.069g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.045g/l~0.069g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.050g/l~0.069g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.055g/l~0.069g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.060g/l~0.069g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.065g/l~0.069g/lの範囲の濃度で含む。
【0090】
好ましくは、本発明の電気めっき浴は、抱水クロラールを0.001g/l~0.069g/lの範囲の濃度で、より好ましくは0.001g/l~0.065g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.001g/l~0.060g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.001g/l~0.055g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.001g/l~0.050g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.001g/l~0.045g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.001g/l~0.040g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.001g/l~0.035g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.001g/l~0.030g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.001g/l~0.025g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.001g/l~0.020g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.001g/l~0.015g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.001g/l~0.010g/lの範囲の濃度で、更により好ましくは0.001g/l~0.005g/lの範囲の濃度で含む。
【0091】
抱水クロラールの濃度を好ましい濃度範囲で選択することにより、析出した半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングの特性を最適化しつつ、抱水クロラールの全体的な消費量を低減して、コストを低減することができる。
【0092】
好ましくは、本発明の電気めっき浴は、抱水クロラールを0.045g/l未満の濃度で含む。
【0093】
好ましくは、本発明の電気めっき浴は、抱水クロラールを0.065g/l未満、より好ましくは0.060g/l未満、更により好ましくは0.055g/l未満、更により好ましくは0.050g/l未満、更により好ましくは0.045g/l未満、更により好ましくは0.040g/l未満、更により好ましくは0.040g/l未満、場合によっては更により好ましくは0.035g/l未満、更により好ましくは0.030g/l未満、更により好ましくは0.025g/l未満、更により好ましくは0.020g/l未満、更により好ましくは0.015g/l未満、更により好ましくは0.010g/l未満の濃度で含む。
【0094】
好ましくは、電気めっき浴は、内部応力低減剤、例えば、安息香酸、酢酸及び/又はサリチル酸、及び/又はその塩、及び湿潤剤、例えば、コハク酸、スルホコハク酸、2-エチルヘキシルスルフェート、ジヘキシルスルホコハク酸、及び/又はジアミルスルホコハク酸、及び/又はその塩から選択される少なくとも1つの化合物を、好ましくは0.001g/l~8g/l、より好ましくは0.01g/l~2g/l、及び最も好ましくは0.02g/l~1g/lの範囲の総濃度で含み得る。
【0095】
好ましくは、電気めっき浴は、少なくとも1つの湿潤剤、例えば、コハク酸、スルホコハク酸、2-エチルヘキシルスルフェート、ジヘキシルスルホコハク酸、及び/又はジアミルスルホコハク酸、及び/又はその塩、好ましくはナトリウム塩を、好ましくは0.005g/l~0.5g/l、より好ましくは0.01g/l~0.35g/l、及び最も好ましくは0.02g/l~0.1g/lの範囲の総濃度で含み得る。
【0096】
好ましくは、電気めっき浴は、内部応力低減剤及び/又はその塩から選択される少なくとも1つの化合物を含み得、少なくとも1つの内部応力低減剤は、好ましくは0.1g/l~10g/l、より好ましくは0.3g/l~6g/l、及び最も好ましくは0.5g/l~3.5g/lの範囲の総濃度でサリチル酸及び/又はその塩として選択される。このような添加剤は、達成されたコーティングの硬度、耐久性、及び光学特性にプラスの影響を及ぼす。
【0097】
好ましくは、電気めっき浴は、アルカリ金属安息香酸塩、好ましくは安息香酸ナトリウムを、好ましくは0.005g/l~5g/l、より好ましくは0.02g/l~2g/l、及び最も好ましくは0.05g/l~0.5g/lの範囲の濃度で更に含む。このような添加剤化合物は、析出したコーティングの内部応力を低減するのに役立つ。
【0098】
好ましくは、本発明の電気めっき浴は、更に少なくとも1つの光沢ニッケル添加剤及び/又はその塩、好ましくはPPS(3-(ピリジニウム-1-イル)-プロパン-1-スルホネート)、PES(3-(ピリジニウム-1-イル)-エタン-1-スルホネート)、及び/又はPPS-OH(3-(ピリジニウム-1-イル)-(2-ヒドロキシ-プロパン-1-スルホネート))を、好ましくは0.005g/l~10g/l、より好ましくは0.005g/l~1g/l、及び最も好ましくは0.01g/l~0.1g/lの範囲の総濃度で含む。好ましくは、少なくとも1つの追加の光沢ニッケル添加剤及び/又はその塩、例えば、PPS、PES、及び/又はPPS-OHと、一般式(I)を有する少なくとも1つの化合物及び/又はその塩との間の濃度比は、10:1未満、より好ましくは5:1未満、及び最も好ましくは3:1未満である。このことは、本明細書による電気めっき浴にも同様に適用される。
【0099】
これは、PPS、PES、及びPPS-OHの既知の欠点が発生することなく、式(I)を有する大量の高価な化合物を、安価な既知の光沢ニッケル添加剤、例えば、PPS、PES、及び/又はPPS-OHで置き換えることができることにより、非常に大きな利点を提供する。
【0100】
好ましくは、本発明の電気めっき浴は、ホルムアルデヒドを含まない、又はホルムアルデヒドを0.1g/l未満、好ましくは0.05g/l未満、より好ましくは0.025g/l未満、更により好ましくは0.01g/l未満、及び最も好ましくは0.005g/l未満の濃度で含む。
【0101】
ガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴中のホルムアルデヒドの存在は、ワークピース上に析出するニッケル又はニッケル合金コーティングの光沢に影響を及ぼす。好ましくはホルムアルデヒドを省略するか、又は好ましくはホルムアルデヒドの濃度を低下させることにより、半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングが析出することを有利に保証することができる。特に、これは、電気めっき浴中のホルムアルデヒドの濃度が高いと、半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングではなく、光沢ニッケル又は光沢ニッケル合金コーティングを析出させるという従来の技術とは対照的である。
【0102】
好ましくは、本発明の電気めっき浴は、芳香族スルホン酸及び/又はその塩を含まない、好ましくは1,3,6-ナフタレントリスルホン酸及び/又はその塩を含まない、及び/又は電気めっき浴は、安息香酸スルフィミド(サッカリン)を含まない。
【0103】
ガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴中の芳香族スルホン酸又は安息香酸スルフィミド(サッカリンとしても知られている)の存在は、ワークピース上に析出するニッケル又はニッケル合金コーティングの光沢、結晶構造及び電位に影響を及ぼす。好ましくは電気めっき浴中の芳香族スルホン酸又は安息香酸スルフィミドを省略することにより、半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングが析出することを有利に保証することができる。
【0104】
好ましくは、カソード電流密度は、1~10A/dm2の範囲の、好ましくは2~7A/dm2の範囲の、及びより好ましくは3~5A/dm2の範囲の値になる。
【0105】
好ましくは、作業温度は、40℃~70℃、より好ましくは45℃~65℃、及び最も好ましくは50℃~60℃の範囲にある。
【0106】
好ましくは、電気めっき浴のpH値は、2~6、より好ましくは3~5、及び最も好ましくは3.5~4.5の範囲にある。
【0107】
ガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴は、金属及び/又は金属合金、特に鋼、銅、真鍮及び/又は亜鉛ダイカストをベースとした複数の異なる種類のワークピース上に;又は「POP」ワークピース上に析出させることができる。「POP」ワークピースは、「プラスチック上のめっき」ワークピースを表す。したがって、POPは、好ましくは少なくとも1つのポリマー化合物をベースとした、より好ましくはアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリアミド、ポリプロピレン又はABS/PC(ポリカーボネート)をベースとした、合成ワークピースを含む。
【0108】
一般式(I)中のn=1~3、1又は2、又は1という表現は、一般式(I)の環系上の置換基の数を規定する。したがって、n=3の場合、一般式(I)の環系は、3つの置換基を含み、これらは、有機化学の一般的な既知の置換規則に従って、環系の窒素原子に対してオルト、メタ及び/又はパラの位置に配置することができる。結論として、n=2の場合、そのような置換基は2つ存在し、n=1の場合は、そのような置換基は存在する環系上に1つだけ存在する。
【0109】
対照的に、艶消しニッケル又はニッケル合金析出物を得るための電解液は、本発明の一部を形成しない。
【0110】
好ましくは、電気めっき浴は、一般式(I)を有する少なくとも1つの化合物を含み、
R1=SO3基を含むC1~C8、好ましくはC1~C4炭化水素基、又はカルボキシル基を含むC1~C8、好ましくはC1~C4炭化水素基、又は芳香族及び/又はヘテロ芳香族基を含むC1~C8、好ましくはC1~C4炭化水素基であり;
R2=NR3R4基、又はOR5基、又は環式NR6基であり、
R3、R4、R5=水素、又はC1~C18脂肪族炭化水素基、又は芳香族及び/又はヘテロ芳香族基を含むC1~C18炭化水素基であり、R3、R4及びR5は同一又は異なり;
R6=C4~C8炭化水素基、又は少なくとも1つの炭素原子が、ヘテロ原子で置換されているC3~C8炭化水素基であり;
n=1又は2である。
【0111】
好ましくは、電気めっき浴は、一般式(I)を有する少なくとも1つの化合物を含み、
R1=SO3基を含むC1~C8、好ましくはC1~C4炭化水素基、又はカルボキシル基を含むC1~C8、好ましくはC1~C4炭化水素基、又は芳香族及び/又はヘテロ芳香族基を含むC1~C8、好ましくはC1~C4炭化水素基であり;
R2=NR3R4基、又はOR5基、又は環式NR6基であり、
R3、R4、R5=水素、又はC1~C8、好ましくはC1~C4脂肪族炭化水素基、又は芳香族及び/又はヘテロ芳香族基を含むC1~C8、好ましくはC1~C4炭化水素基であり、R3、R4及びR5は同一又は異なり;
R6=C4又はC5炭化水素基、又は少なくとも1つの炭素原子が、硫黄又は酸素原子で置換されているC4~C5炭化水素基であり;
n=1である。
【0112】
好ましくは、電気めっき浴は、一般式(I)を有する少なくとも1つの化合物を含み、
R1=n-エチル-SO3-、又はn-プロピル-SO3-、又はn-ブチル-SO3-、又はベンジル、又はCH2-COOH及び/又はその塩、好ましくはナトリウム塩CH2-COONa基であり;
R2=NH2、又はN(エチル)2、又はO(エチル)、又はOH基、又は環式NR6基であり、
R6=C4又はC5炭化水素基、又は少なくとも1つの炭素原子が、硫黄又は酸素原子で置換されているC4~C5炭化水素基であり;
n=1である。
【0113】
好ましくは、電気めっき浴は、一般式(I)を有する少なくとも1つの化合物及び/又はその塩を含み、R1は水素ではない。
【0114】
好ましくは、電気めっき浴は、一般式(I)を有する少なくとも1つの化合物及び/又はその塩を含み、少なくとも1つの基C(O)R2は、芳香族環のオルト、メタ及び/又はパラ位にある。
【0115】
好ましくは、電気めっき浴は、一般式(I)を有する少なくとも1つの化合物及び/又はその塩を0.005g/l~10g/l、より好ましくは0.008g/l~5g/l、更により好ましくは0.01g/l~1g/l、及び最も好ましくは0.01g/l~0.1g/lの範囲の総濃度で含む。
【0116】
本発明の第1の態様による電気めっき浴のすべての好ましい特徴は、好ましくは、本発明の第2の態様による方法及び本発明の第3の態様による使用によっても構成される。言い換えれば、本発明の第1の態様/本明細書による第1の態様(すなわち、電気めっき浴、最も好ましくはその好ましい変形形態を含む)に関する前記のことは、好ましくは、本発明の方法(本発明の第2の態様)及び本明細書による第2の態様にも、それぞれ同様に適用される。
【0117】
第2の態様による本発明は、導電性ワークピース上に半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出させる方法であって、以下の方法工程:
i)ワークピースを本発明の第1の態様によるガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴と接触させる工程;
ii)少なくとも1つのアノードをガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴と接触させる工程;
iii)ワークピースと少なくとも1つのアノードとの間に電圧を印加する工程;及び
iv)半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングをワークピース上に電着させる工程
を含む、方法を提供する。
【0118】
方法として好ましくは、カソード電流密度は、1~10A/dm2の範囲の、好ましくは2~7A/dm2の範囲の、及びより好ましくは3~5A/dm2の範囲の値になる。
【0119】
方法として好ましくは、作業温度は、40℃~70℃、より好ましくは45℃~65℃、及び最も好ましくは50℃~60℃の範囲にある。
【0120】
方法として好ましくは、電気めっき浴のpH値は、2~6、より好ましくは3~5、及び最も好ましくは3.5~4.5の範囲にある。
【0121】
第3の態様による本発明は、本発明の第2の態様による方法を実施して半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出させるための、本発明の第1の態様によるガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴の使用を提供する。
【0122】
好ましくは、本発明の/本明細書による第1の態様による電気めっき浴の特徴(最も好ましくはその好ましい変形形態を含む)は、本発明の/本明細書による第3の態様の使用にそれぞれ同様に適用される。
【0123】
電気めっき浴、方法及び/又は使用として好ましくは、一般式(I)の化合物は、具体的には、以下の式(II)、(III)及び(IV)を有する化学化合物を含む。
【0124】
【0125】
合成手順を以下にまとめる。
【0126】
3-(3-(ジエチルカルバモイル)ピリジニウム-1-イル)プロパン-1-スルホネート(II)
10g(0.0555mol)のニコチン酸ジエチルアミド(99%)を50mlのエタノールに溶解する。続いて、6.78g(0.0555mol)の1,3-プロパンスルトンを加える。次に、反応混合物を78℃で48時間、還流下で加熱する。
【0127】
反応終了後、反応混合物を冷却した後、100mlのジエチルエーテルを室温で加える。得られた白色固体を4℃でろ過し、更に100mlのジエチルエーテルで洗浄し、最後に真空乾燥する。
9.00gの白色固体が得られる(理論値の54%)。
【0128】
3-(3-(ピロリジン-1-カルボニル)ピリジニウム-1-イル)プロパン-1-スルホネート(III)
10g(0.056747mol)の3-(ピロリジン-1-カルボニル)ピリジンを50mlのエタノールに溶解する。続いて、6.93g(0.056747mol)の1,3-プロパンスルトンを加える。次に、反応混合物を78℃で48時間、還流下で加熱する。
【0129】
反応終了後、反応混合物を冷却した後、100mlのジエチルエーテルを室温で加える。得られた白色固体を4℃でろ過し、更に100mlのジエチルエーテルで洗浄し、最後に真空乾燥する。
8.635gの白色固体が得られる(理論値の51%)。
【0130】
3-(3-(モルホリン-4-カルボニル)ピリジニウム-1-イル)プロパン-1-スルホネート(IV)
10g(0.05206mol)の3-(モルホリン-1-カルボニル)ピリジンを50mlのエタノールに溶解する。続いて、6.36g(0.05206mol)の1,3-プロパンスルトンを加える。次に、反応混合物を78℃で48時間、還流下で加熱する。
【0131】
反応終了後、反応混合物を冷却した後、100mlのジエチルエーテルを室温で加える。得られた白色固体を4℃でろ過し、更に100mlのジエチルエーテルで洗浄し、最後に真空乾燥する。
8.10gの白色固体が得られる(理論値の49.5%)。
【0132】
したがって、本発明は、複数の異なる種類のワークピース上に半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを析出するための修正されたガルバニックニッケル又はニッケル合金電気めっき浴を提供する問題、並びにその方法及び使用に対処する。本発明による電気めっき浴は、光沢、レベリング、延性等の所望の特性の良好かつ独自の組み合わせを有する半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングを実現する方法を提供するが、既知の先行技術の浴は、ほとんどの場合、これらの特性のうちのいくつかのみを提供することができ、ほとんどの場合、悪い下面特性の形で少なくとも1つの深刻な欠点が存在する。本発明による電気めっき浴は、例えば、鋼に対しては、良好なレベリング、低い硬度及び高い延性を有するという所望の特性の組み合わせを提供し、POPのものに対しては、良好な光沢及び同時に低い内部応力値の組み合わせを提供する。
【0133】
以下の非限定的な例は、本発明の実施形態を説明し、本発明の理解を容易にするために提供されるが、本明細書に添付される特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではない。
【0134】
一般に、本発明による実験並びに本発明以外の比較実施形態を含むすべての実験は、以下の組成を有する、いわゆる「ワット系電解浴」を用いて実施されたことを言及しなければならない。
280g/l 硫酸ニッケル(NiSO4・6H2O)、
40g/l 塩化ニッケル(NiCl2・6H2O)、
45g/l ホウ酸(H3BO3)、
0.300g/l 安息香酸ナトリウム、
0.025g/l 式(II)の化合物、
0.067g/l PPS、
0.0425g/l 抱水クロラール、及び
0.05g/l スルホコハク酸ジヘキシルナトリウム。
【0135】
ニッケルの析出は、ハルセルを用いて、温度55℃±3℃、pH4.2で2.5アンペアを10分間印加して行った。更に、ニッケルの析出中に3リットル/分の圧力空気を導入した。
【0136】
ワークピースは、ニッケルの析出に使用する前に、以下の方法で前処理を行った。
i)ホットソーククリーナーによる脱脂
ii)電解脱脂
iii)水洗い
iv)10vol%硫酸による酸浸漬
【0137】
主観的な光学判定でレベリングを行うために、銅や真鍮のサンプルのワークピースに傷をつけた。得られたワークピース上のニッケル析出物の光沢も光学的に判断した。
【0138】
レベリングと光沢について表1及び2に示されているすべての結果は、以下の同義語を使用して定性的にランク付けした。
+++ 優秀な
++ 良好な
+ 中位の
- 悪い
【0139】
異なる浴成分について表1及び2に示したすべての濃度は、特に明記されていない限り、mg/lで示した。基本的な電気めっき浴成分(ワット浴)は上記に記載されており、それらが含まれている場合でも、表中では繰り返さない。ゴルパノールDEP(N,N-ジエチル-2-プロピン-1-アミン)、ゴルパノールPME(プロパルギルアルコールエトキシレート)、ゴルパノールBOZ(2-ブチン-1,4-ジオール)、及びゴルパノールHD(3-ヘキシン-2,5-ジオール)は市販の光沢剤である。
【0140】
表1及び表2に示す実験は、結果順に番号が付けられており、括弧内の2番目の番号は、本出願人の内部実験番号である。
【0141】
表に戻って、表1は、主に本発明の実施形態による半光沢のニッケルコーティングについて実施された実験を示す。
【0142】
【0143】
表2は、電気めっき浴にアセチレン化合物が添加されていない本発明以外の比較実施形態による半光沢ニッケルコーティングの実験を示し(実験15及び16)、表1では、比較例でもある、抱水クロラールの総濃度が80mg/lの実験13を示す。
【0144】
本発明の実施形態による実験1~14(実験13は比較例である)の場合、光沢値は良好又は優秀であるが、比較実験15は、レベリングに関してしばしば良好な結果を示すが、同時に、光沢値が悪い。
【0145】
【0146】
本発明の好ましい実施形態の特別な驚くべき効果を、実験1~14と比較実験15との直接的な比較により概説する。比較実験15では、電気めっき浴に添加剤としてアセチレン系化合物が添加されていない。対照的に、実験1~14では、ゴルパノールDEP、ゴルパノールPME、ゴルパノールBOZ、及び/又はゴルパノールHDが、アセチレン系添加剤として様々な組み合わせで添加され、その結果、比較実験15の悪い光沢値とは対照的に、良好又は優秀な光沢値が得られた。
【0147】
更に、比較実験13と比較実験16を直接比較すると、アセチレン系化合物として3mg/lのゴルパノールPME、3mg/lのゴルパノールDEP、15mg/lのゴルパノールBOZを添加することにより、光沢値が良好(比較例16参照)から優秀(実施例13参照)に改善されることが明らかになったことが強調されている。しかし、これは、比較的高濃度、すなわち80mg/lの抱水クロラールの存在下で達成される。
【0148】
特に、実験14と比較実験15とを直接比較すると、アセチレン化合物として10mg/lのゴルパノールHDを添加することにより、光沢値が悪い(比較例15参照)から優秀(実施例14参照)に改善されることが明らかになったことが強調される。これは、比較的低濃度、すなわち42.5mg/lの抱水クロラールの存在下で達成されたものであり、予想外の結果であった。
【0149】
したがって、実験12及び比較実験13に関して、特定の濃度のアセチレン化合物を添加することによって優秀な光沢値が達成され、同時に、実験12、比較実験13ともに光沢値が優秀であるので、光沢値を低減することなく、抱水クロラールの濃度を42.5mg/l(実験12対比較実験13参照)に低減できたことを強調しなければならない。
【0150】
その結果、半光沢ニッケル又は半光沢ニッケル合金コーティングのレベリングや光沢値を損なうことなく、電気めっき浴内の抱水クロラールの濃度を大幅に低減することができ、製造コストを大幅に削減することができた。
【0151】
本発明の原理は、ある特定の実施形態に関連して説明されており、例示の目的で提供されているが、その様々な変更は、本明細書を読めば当業者に明らかになることを理解されたい。したがって、本明細書に開示された発明は、添付の特許請求の範囲内に入るような変更を含むものであることを理解されたい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。