(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】組織由来多孔質マトリックス並びにその作製及び使用方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/56 20060101AFI20240909BHJP
A61L 15/40 20060101ALI20240909BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20240909BHJP
A61L 27/60 20060101ALI20240909BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
A61L27/56
A61L15/40 100
A61L27/36 100
A61L27/60
A61L27/58
(21)【出願番号】P 2021566098
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(86)【国際出願番号】 US2020032022
(87)【国際公開番号】W WO2020227601
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-04-28
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521483940
【氏名又は名称】マスキュロスケレタル トランスプラント ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコルズ,クリストファー,エム.
(72)【発明者】
【氏名】フィップス,アビゲイル
(72)【発明者】
【氏名】マダンズ,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】クナリ,エバンゲリア
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-521592(JP,A)
【文献】特表2009-504246(JP,A)
【文献】Michael MEYER,“Processing of collagen based biomaterials and the resulting materials properties”,BioMedical Engineering OnLine,2019年03月18日,Vol. 18, No. 1,DOI: 10.1186/s12938-019-0647-0
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/56
A61L 15/40
A61L 27/36
A61L 27/60
A61L 27/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再吸収性であり、マトリックスを介して流体の流れを可能にする相互連絡した複数の孔を備える組織由来多孔質マトリックスを生産する方法であって、前記方法は、
(A)真皮、脂肪、筋膜、及びそれらの組合せから選択される哺乳類組織のサンプルを取得するステップ;
(B)任意選択で、前記哺乳類組織のサイズを縮小するステップ;
(C)任意選択で、前記哺乳類組織を脱脂又は脱塩するステップ;
(D)前記哺乳類組織を脱細胞するステップ;
(E)任意選択で、前記哺乳類組織を殺菌するステップ;
(F)任意選択で、溶媒を前記哺乳類組織と混合するステップ;
(G)任意選択で、前記哺乳類組織を容器又はモールド内に配置するステップ;
(H)孔を形成又は改変するステップ;
(I)多孔質構造を備える乾燥哺乳類組織を生産するために、前記哺乳類組織を乾燥させるステップ;
(J)前記乾燥哺乳類組織を一定時間、架橋溶液と接触させることにより少なくとも部分的に架橋させることにより、及び続いて、1又は複数のすすぎを実施することにより余剰の架橋溶液を除去することにより、及び追加の余剰の架橋溶液を架橋哺乳類組織から分離するために、少なくとも部分的に前記架橋哺乳類組織を圧縮させることにより、前記乾燥哺乳類組織を安定化するステップであって、部分的に崩壊した多孔質構造を備える架橋哺乳類組織を生産する、前記乾燥哺乳類組織を安定化するステップ;
(K)前記架橋哺乳類組織を一定時間、水性溶媒と接触させることにより前記部分的に崩壊した多孔質構造の少なくとも一部分を回復させるステップ、及び続いて、二度目に凍結乾燥により前記架橋哺乳類組織を乾燥させるステップであって、安定化するステップ(J)で生産された前記架橋哺乳類組織と比較して、厚み及びポロシティを向上された多孔質構造を備える乾燥哺乳類組織を生産する、前記架橋哺乳類組織を乾燥させるステップ;及び
(L)任意選択で、前記架橋哺乳類組織を殺菌するステップ
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法によって生産される真皮、脂肪、筋膜、及びそれらの組合せから選択される哺乳類組織のサンプル由来の3次元スカフォールドである脱細胞組織を含む組織由来多孔質マトリックスであって、前記マトリックスは、再吸収性であり、前記マトリックスを介して流体の流れを可能にする相互連絡した複数の孔を備え、少なくとも部分的に、前記マトリックスを安定化させるための架橋がなされ、移植後に、制御された再吸収速度を提供し、前記組織由来多孔質マトリックスは、水性溶媒への接触及び架橋実施後の乾燥を施していない少なくとも部分的に架橋された哺乳類組織と比較して、向上された厚み及びポロシティを備え、前記組織由来多孔質マトリックスは、マニホールド層又は分離物質層又はその両方を欠く、組織由来多孔質マトリックス。
【請求項3】
前記組織由来多孔質マトリックスは、対象の創傷部位と接触して、又はそれと近接して、前記マトリックスが移植されると、少なくとも部分的に分解し、前記創傷部位のネイティブ組織と一緒に再構築するか、又はその両方であり、その際、前記創傷部位に配置した後、前記マトリックスのいずれの部分も前記創傷部位から除去する必要がない、請求項2に記載の組織由来多孔質マトリックス。
【請求項4】
前記マトリックスが、凍結乾燥されている、請求項2又は3に記載の組織由来多孔質マトリックス。
【請求項5】
前記マトリックスが、所望の形状を有し、前記所望の形状を有する容器又はモールド内で凍結乾燥されている、請求項4に記載の組織由来多孔質マトリックス。
【請求項6】
対象の創傷部位と近接して、又はそれと接触して移植されると、前記創傷部位の治癒の過程で、陰圧の適用の有無にかかわらず、前記創傷部位から、且つ前記マトリックスを介して流体の流れが起こる、請求項2~5のいずれか一項に記載の組織由来多孔質マトリックス。
【請求項7】
1つ又は複数の内在性の有益な物質をさらに含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の組織由来多孔質マトリックス。
【請求項8】
請求項2~7のいずれか一項に記載の前記組織由来多孔質マトリックスと、1つ又は複数の別の生体適合性材料を含む、生体適合性組成物。
【請求項9】
請求項2~7のいずれか一項に記載の前記組織由来多孔質マトリックスを含む多孔質要素と;
前記多孔質要素及び前記創傷包帯で処置しようとする創傷部位を覆うようなサイズ及び形状の半透性バリア要素と
を含む、前記創傷を処置するための創傷包帯。
【請求項10】
前記組織を殺菌する前記ステップ(E)が、前記乾燥ステップ(I)の前若しくは後、又はその両方に、前記組織を滅菌することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
溶媒を前記組織と混合する前記ステップ(F)が、前記乾燥ステップ(I)の前に実施され、前記溶媒は水であり、ここで、組織と水の混合物が形成され、孔を形成又は改変する前記ステップ(H)及び前記組織を乾燥させる前記ステップ(I)は、前記組織と水の混合物を凍結乾燥させることにより同時に実施される、請求項1又は
10に記載の方法。
【請求項12】
前記組織由来多孔質マトリックスを他の材料又は他の合成若しくは天然由来のマトリックスと混合する、結合する、若しくはそれ以外に組み合わせることにより、製剤化するステップをさらに含む、請求項1、10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記マトリックスの前記脱細胞組織は、前記マトリックスを介した流体の流れを可能にする複数の相互連絡した孔を備え、前記マトリックスは、再吸収性である、請求項2~7のいずれか一項に記載の組織由来多孔質マトリックス。
【請求項14】
前記脱細胞組織が、真皮、胎盤、脂肪、筋膜、及びそれらの組合せから選択される1つ又は複数の組織型に由来する、請求項13に記載の組織由来多孔質マトリックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2019年5月8日に出願された米国仮特許出願第62/845,015号の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、概して、創傷を処置するのに有用な組織由来多孔質マトリックスに関する。より具体的には、本発明は、創傷包帯又は移植片として有用な生体適合性再吸収性マトリックスに関し、これは、ドナーの組織に由来し、患者に移植されたとき、創傷治癒及び組織再構築を増強するための多孔を備える。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
創傷処置及び治癒は、何世紀にもわたって研究されている。身体の治癒メカニズムの理解が深まるにつれて、創傷治癒を増強及び加速させるための、より有効な技術が開発されてきた。創傷治癒を増強及び加速させるために使用される様々な技術として、以下のものが挙げられる:残屑、毒素及び細菌の除去するための創傷洗浄及び/又は創面切除、余剰液体の除去、局所及び全身性の抗生物質及び麻酔薬の供給、新たな組織成長のための基質の提供を目的とする、創傷へのスカフォールド(例えば、天然、生体、合成など)の適用、創傷への細胞、増殖因子若しくは他のタンパク質の提供、並びに創傷部位に対する他の組織支持療法、例えば、細胞、増殖因子及び他のタンパク質の提供。創傷治癒を増強するために、こうした技術の組合せが適用されることが多い。
【0004】
減圧(即ち、陰圧、亜大気圧、低圧)療法は、治癒が遅いか、又は完全に治癒することができない軟部組織創傷の創傷治癒を促進及び増強するための効果的な技術である。減圧療法は、時として陰圧閉鎖療法(又は「V.A.C.」)とも呼ばれ、一般に、治癒及び/又は組織成長を促進するのに十分な規模で、且つ十分な時間にわたって、周囲圧力より低い圧力を創傷部位に適用することを含む。創傷部位に適用される減圧は、血液/酸素の灌流及び体液の流れ、創傷滲出液の排出、並びに創傷部位に向かう上皮組織の移動及び創傷部位内での新たな皮下組織の形成の増大を助けると考えられている。開放型ラティススポンジ(例えば、相互連絡する孔を備える)と組み合わせると、減圧創傷療法技術は、組織欠損の領域にマクロひずみ及びミクロひずみ(及び微小変形)を付与することになり、その場合、有意な創傷治癒利益がかなり記載されている。これらの有益な効果として、限定されないが、組織変形及びストレス緩和による創傷サイズの機械的低減、創傷周囲組織の組織伸展(マクロひずみ)、並びにいくつかの有益な細胞治癒過程を増強し、上方制御する微小変形を治癒細胞に与えるミクロひずみが挙げられる。減圧療法は、単独でも、又は前述した創傷処置技術のいずれかと組み合わせて使用することもできる。
【0005】
減圧療法システム及び方法は、一般に、創傷部位上又は部位内への包帯の配置の後、包帯を介して創傷部位と流体的に連絡している減圧源を用いた、創傷部位に対する減圧の適用を含む。包帯は、創傷部位全体を通して減圧を分布させ、それによって、健康な組織から創傷部位への流体、上皮組織及び皮下組織の流れ及び移動を促進するマニホールドの役割を果たす。
【0006】
減圧療法に好適な包帯は、一般に、少なくとも多孔質要素と半透性(即ち、半密封若しくは不浸透性)バリア要素を含み、ここで、多孔質要素は、創傷部位と部分的若しくは完全に直接接触させて配置され、往々にして創傷部位を充填し、半透性バリア要素は、多孔質要素を含めて創傷部位全体を覆うように配置される。半透性バリア要素は、シート様形状を有する傾向があり、その周囲付近で創傷部位に密封状態で貼り付けられる。包帯の半透性バリア要素を通過して、多孔質要素に到達する導管が、包帯を介して減圧源と創傷部位との間の流体/空気及び圧力連絡を提供する。
【0007】
減圧療法を実施するための装置及び方法の初期実施形態は、米国特許第5,636,643号及び同第5,645,081号に記載されており、その全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。こうした初期バージョンは、生体再吸収性若しくは生体組織とインビボで再構築可能ではないか、又は一部しかそうではない材料から製造された多孔質要素を含む包帯を使用するものであった。このため、完全な治癒の前に創傷部位から多孔質要素を除去する必要があった。さらに、治癒過程の一環として、組織の内方成長が起こることが多いが、これは、多孔質要素に少なくとも部分的に侵入したため、それを除去したとき、新しく及び/又は健康な組織も除去又は損傷し、それによって治癒過程の創傷部位にさらなる外傷を、また患者にはさらなる痛みをもたらすことになった。より広範囲又はより深部の創傷部位の場合、多孔質要素の除去、並びに新しい多孔質要素(例えば、部分的に治癒した創傷部位によりフィットする、小さいサイズ若しくは異なる形状の)との交換は、何度も実施され得ることから、創傷部位に進行中の損傷及び外傷が生じ、それによって治癒過程が遅くなる、又は遅延する可能性がある。さらに、非吸収性フォームの使用は、重要な器官、神経、又は血管に隣接して配置して使用すると、腐食のリスクがあると指摘されている。
【0008】
減圧療法を実施するための改善された装置及び方法が開発され、その場合、多孔質要素の少なくとも一部が、新たな組織内方成長のためのスカフォールドを提供する再吸収性材料を含み、それらは除去する必要がない。いくつかのこうした改善された装置及び方法は、米国特許第8,163,974号及び同第8,197,806号に記載されており、それらの全開示内容も、参照により本明細書に組み込まれる。
【0009】
より具体的には、米国特許第8,163,974号は、減圧療法で使用するための改変された包帯を記載している。一実施形態は、通常、生体再吸収性ではないオープンセルフォームパッドと、それに移植された、又は重ねられた生体再吸収性細胞増殖促進マトリックスを含む包帯である。米国特許第8,163,974号は、生体再吸収性マトリックスに好適な数種の生体再吸収性材料を開示するが、それでも、特定の実施形態では、オープンセルフォームパッドと生体再吸収性マトリックスの両方が、生体再吸収性分岐ポリマーから製造され得る。加えて、米国特許第8,163,974号は、非生体吸収性多孔質マニホールド要素と生体吸収性多孔質スカフォールド要素とを含む別の改善された包帯を開示し、上記スカフォールド要素は、創傷部位と接触して配置され、細胞浸潤及び組織内方成長を促進する。この包帯はまた、中間体放出層も含み、これは、マニホールド及びスカフォールド要素の間に配置され、マニホールド要素への組織内方成長に対するバリアとして役立ち、且つ水和時に溶解する「分離」物質から製造され、それによって、非生体吸収性多孔質マニホールド要素からマニホールド要素の分離を促進する。米国特許第8,163,974号に記載の包帯のいずれの要素の製造における使用のために開示された生体再吸収性材料のいずれも、ドナーから回収された組織又は組織由来ではない。米国特許第8,163,974号に記載される生体吸収性多孔質スカフォールド要素の孔は、典型的に約50~500ミクロン、より好ましくは約100~400ミクロンの孔径を有する。50ミクロン未満の孔径は、組織内方成長を阻害又は阻止する傾向がある。一実施形態では、スカフォールド内の好ましい平均孔径は、約100ミクロンである。
【0010】
米国特許第8,197,806号は、減圧療法と併用される場合に、組織部位での軟骨形成を刺激することが意図される改良包帯を開示している。より具体的には、米国特許第8,197,806号の包帯は、組織部位に減圧を分布させるための多孔質マニホールド要素と、組織部位に隣接して配置するための多孔質スカフォールドを備えるものとして記載される。軟骨細胞及び/又はサイトカインも、組織部位に直接、又は多孔質スカフォールド要素内に提供される。米国特許第8,197,806号は、マニホールド及びスカフォールド材料のいずれか又は両方が生体再吸収性材料から作製され得ること、また、スカフォールド要素は、融解紡糸、押出、若しくはキャスティングなどの任意のポリマー加工技術を用いて、処理された同種移植材料を含め、いくつかの合成及び天然のポリマー材料のいずれかから作製され得ることを記載している。米国特許第8,197,806号に記載された包帯の生体再吸収性多孔質スカフォールド要素の孔は、25~500ミクロン、例えば50~250ミクロン、又は50~150ミクロンの範囲の孔径を有する。
【0011】
治癒を促進するための創傷部位の処置、特に、減圧療法との併用のために有用な包帯に対するさらなる改善は、患者及び医師に歓迎されるであろう。例えば、改善された及び/又は加速した細胞浸潤、増殖、成長及び活性などの効果的且つ効率的な治癒を促進する増強された能力を有する、改良創傷包帯が引き続き求められている。
【発明の概要】
【0012】
発明の概要
本明細書で説明及び考慮される本発明は、脱細胞組織を含む組織由来多孔質マトリックスに関し、ここで、マトリックスは、再吸収性であり、マトリックスを介して流体の流れを可能にする相互連絡した複数の孔を備える。対象の創傷部位と接触して、又はそれと近接して、マトリックスが移植されると、マトリックスは、少なくとも部分的に分解し、創傷部位のネイティブ組織と一緒に再構築するか、又はその両方であり、その際、創傷部位に配置した後、マトリックスのいずれの部分も創傷部位から除去する必要はない。対象の創傷部位と近接して、又はそれと接触して移植されると、創傷部位の治癒の過程で、陰圧の適用の有無にかかわらず、創傷部位から、且つマトリックスを介して流体の流れが起こる。
【0013】
一部の実施形態では、前述した組織由来多孔質マトリックスと、1つ又は複数の別の生体適合性材料とを含む生体適合性組成物が提供される。
【0014】
また、組織由来多孔質マトリックスを生産する方法も提供され、ここで、マトリックスは、再吸収性であり、マトリックスを介して流体の流れを可能にする相互連絡した複数の孔を備え、この方法は、以下:(A)組織のサンプルを取得するステップ、(B)任意選択で、組織のサイズを縮小するステップ、(C)任意選択で、組織を脱脂又は脱塩するステップ、(D)組織を脱細胞するステップ、(E)任意選択で、組織を殺菌するステップ、(F)任意選択で、溶媒を組織と混合するステップ、(G)任意選択で、組織を容器又はモールド内に配置するステップ、(H)孔を形成又は改変するステップ、(I)任意選択で、組織を乾燥させるステップ、(J)任意選択で、組織を架橋又はそれ他の安定化させるステップ、(K)任意選択で、架橋組織を乾燥させるステップ、並びに(L)任意選択で、架橋組織を殺菌するステップを含む。本方法の一部の実施形態では、組織は、真皮、胎盤、脂肪、筋膜、及びそれらの組合せから選択される1つ又は複数の組織型を含む。
【0015】
組織由来多孔質マトリックスを生産するための本方法の一部の実施形態では、組織を殺菌するステップ(E)は、乾燥ステップ(I)の前若しくは後、又はその両方に、組織を滅菌することを含む。本方法の一部の実施形態では、溶媒を組織と混合するステップ(F)が、乾燥ステップ(I)の前に実施され、溶媒は水であり、ここで、組織と水の混合物を形成し、孔を形成又は改変するステップ(H)及び組織を乾燥させるステップ(I)は、組織と水の混合物を凍結乾燥させることにより同時に実施される。本方法の一部の実施形態では、本方法は、さらに、組織由来多孔質マトリックスを他の材料又は他の合成若しくは天然由来のマトリックスと混合、結合する、若しくはそれ以外に組み合わせることにより、製剤化するステップを含む。
【0016】
また、創傷を処置する方法も提供され、これは、対象の創傷部位と接触して、又はそれと近接して、組織由来多孔質マトリックスを移植することを含み、ここで、マトリックスは、マトリックスを介した流体の流れを可能にする複数の相互連絡した孔を備える脱細胞組織を含み、マトリックスは、再吸収性である。移植から一定期間の経過後、組織由来多孔質マトリックスの一部分が再吸収されない場合、創傷を処置する方法は、さらに、後の処置で、創傷部位からマトリックスの非吸収部分の少なくとも一部分を除去することを含む。移植からの期間は、少なくとも約7日であってよい。一部の実施形態では、脱細胞組織は、真皮、胎盤、脂肪画分、筋膜、及びそれらの組合せから選択される1つ又は複数の組織型に由来する。
【0017】
また、前述した組織由来多孔質マトリックスを含む多孔質要素と、多孔質要素及び創傷包帯で処置しようとする創傷部位を覆うようなサイズ及び形状の半透性バリア要素と、を含む創傷包帯も提供される。
【0018】
前述した創傷包帯を使用する創傷の別の処置方法は、対象の創傷部位と接触して、又はそれと近接して、多孔質要素を配置すること、多孔質要素及び創傷を覆うように、多孔質要素の上に半透性バリア要素を配置すること、創傷周囲付近の健康な組織に半透性バリア要素を密閉して貼り付け、限定的な透過性のポケットを形成すること、並びに上記ポケットに陰圧を適用して、組織由来多孔質マトリックスを介して、ポケットの外へ、流体が創傷から流れるようにすることを含む。
【0019】
添付の図面を参照にしながら、本発明をさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図面の簡単な説明
【
図1】本発明に従って組織由来多孔質マトリックスを生産するための例示的な方法の基本ステップを示すフローチャートである。
【
図2】組織由来多孔質マトリックスを生産するため方法の考えられるいくつかの別の例示的な実施形態を示すフローチャートである。
【
図3】本明細書に記載される組織由来多孔質マトリックスの流体流通過を評価するために使用される試験チャンバ装置の概略図である。
【
図4】本明細書に記載される組織由来多孔質マトリックスの流体流通過を評価するために使用される、
図3の試験チャンバ装置を含む、陰圧閉鎖療法(NPTW)システムの概略図である。
【
図5】本発明に従って、胎盤組織を含む組織由来多孔質マトリックス(胎盤バイオスポンジ)を生産するための例示的な方法の基本ステップを示すフローチャートである。
【
図6】本発明に従って、真皮組織を含む組織由来多孔質マトリックス(真皮バイオスポンジ)を生産するための例示的な方法の基本ステップを示すフローチャートである。
【
図7】本発明に従って、真皮組織を含む組織由来多孔質マトリックス(真皮バイオスポンジ)を生産するための例示的な方法のステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細な説明を以下に開示する。開示される実施形態は、本発明を例示するに過ぎず、これは、様々な形態に具体化され得ることを理解すべきである。加えて、本発明の様々な実施形態と関連して提供される実施例の各々は、例示を意図し、限定的ではない。さらに、図は、必ずしも一定の縮尺ではなく、一部の特徴は、特定の要素の詳細を示すために拡大されている場合がある。加えて、図に示される任意の測定値、詳細項目などは、例示を目的とし、限定的ではない。従って、本明細書に開示される特定の構造及び機能の詳細は、限定的なものとして解釈すべきではなく、本発明を多様に使用するための、当業者への教示を目的とする。
【0022】
本明細書に記載及び考慮される組織由来多孔質マトリックス(以後、「バイオスポンジ」とも呼ばれる)は、創傷部位に適用されると、創傷治癒を促進する。何故なら、多孔質であるため、それらは、創傷部位からの余剰流体の排出を可能にしながら、組織内方成長のための3次元スカフォールドを提供するからである。本明細書に記載及び考慮される多孔質マトリックスは、格子状の多孔を有し、圧縮可能である。この圧縮可能な性質及び格子状の多孔が、マクロひずみ及びミクロひずみをそれぞれ付与することになる。これらの力は、創傷治癒の速度及び質を改善することがわかっているため、組織由来多孔質マトリックスへの急速な新たな組織内方成長に寄与すると予想される。組織由来であることから、多孔質マトリックスは、生体適合性でもあり、ネイティブ組織に再構築するが、これは、創傷部位への最初の配置後にそれらを除去又は取り替える必要がなく、従って、治癒過程中に新しく形成された組織への損傷、並びに追加の操作、患者への痛み、手術のリスクが回避されることを意味する。以前移植したマトリックスを除去するために、処置施設を何度も訪れる必要が減れば、患者にとって、より好都合、快適で、しかも低リソース(例えば、入院又は外来患者の看護ケア、在宅医療、他の保健若しくは個人医療供給者など)である集中療法コースが提供され得る。組織由来多孔質マトリックスは、無細胞であり、従って、免疫原性がなく、高度に生体適合性である。加えて、組織由来多孔質マトリックスは、原因とは無関係に、以前組織欠損及び/又は破壊を経験した対象のために、必要な嵩(バルク)、支持体、バリア機能、及びパディングを提供し得る。前述した特徴及び利益は、また、組織由来多孔質マトリックスを減圧創傷療法のための包帯として有用にもする。
【0023】
組織由来多孔質マトリックスは、若干の、又はかなりの割合の生体適合性非組織材料を含んでもよく、そうしたものとして、限定されないが、ポリマー(天然若しくは合成)、セラミック、金属、天然由来若しくは動物由来の生体材料が挙げられ、より具体的には、20~80%の割合である。組織由来多孔質マトリックスは、増殖因子、細胞外マトリックス要素、栄養素、生物学的に活性な分子、ビタミン、又は様々な組織治癒及び再構築メカニズム、例えば、限定されないが、細胞外マトリックス産生及び沈着、細胞浸潤及び増殖、病原体バリア及び低減、並びに血管新生を促進するインテグリン等の内性の有益な物質を含有してもよい。さらには、組織由来多孔質マトリックスは、外性物質若しくは材料を被覆、注入されるか、又はそうでなければ含有してもよく、そうしたものとして、限定はしないが、細胞、増殖因子、細胞外マトリックス要素、栄養素、インテグリン、抗菌剤、抗感染薬、静菌剤、又はその他の物質、例えば、限定されないが、細胞移動、付着、増殖、成長及び活性を促進するものなどが挙げられる。例えば、限定はしないが、一部の増殖因子は、細胞動員を促進し、炎症を調節することなどが知られ、及び/又はそのように考えられている。組織由来多孔質マトリックスを作製し、それらを創傷処置に使用する方法も以下に説明する。
【0024】
前述した組織由来多孔質マトリックスは、減圧療法創傷処置を実施するのに有用な特定の実施形態として後に詳しく説明するが、これは、そうした実施形態及び使用に限定されない。むしろ、当業者であれば、組織由来多孔質マトリックスが、創傷部位に適用される包帯、移植片、スカフォールドなどとして有用であり、また、減圧療法が存在しない場合であっても、創傷治癒を促進し、増強することを認識されよう。こうした使用は、一般に、本明細書に記載及び考慮される組織由来多孔質マトリックスを、対象の創傷部位と接触して、又はそれと近接して、配置(例えば、移植)することを含み、ここで、マトリックスは、再吸収性であり、マトリックスを介した流体の流れを可能にする多数の相互連絡した孔を備える。組織由来多孔質マトリックスのこうした移植は、創傷部位の治癒の過程で、陰圧の適用の有無にかかわらず、創傷部位からの、且つマトリックスを介した流体の流れを可能にし、また、それを促進する。加えて、本明細書に記載及び考慮される組織由来多孔質マトリックスは、支持、回復、再生、増強、又は置換を必要とする対象の身体の任意の部位での組織の回復、増強、付加、又は置換を目的とする、対象の処置に有用である。
【0025】
一部の実施形態では、組織由来多孔質マトリックスの少なくとも一部分は、創傷部位への移植から一定期間(例えば、少なくとも約7日、又は少なくとも約14日、又は少なくとも約21日、又は少なくとも約6週間、又は少なくとも約10週間、又は最大約3ヶ月など)の経過後、再吸収され得る。一部の実施形態では、組織由来多孔質マトリックスの一部分が、移植から一定期間の経過後に再吸収されていない場合(創傷部位を処置する医師の判断で)、そのような非再吸収部分の少なくとも一部分(即ち、一部若しくは全部)を、例えば、創傷又は自家移植の場合のネイティブ内性組織の創面切除と同様の、後の創面切除術で創傷部位から除去してもよい。加えて、一部の実施形態では、そのような非再吸収部分を創傷部位から除去するのではなく、むしろ、創傷部位に移植したまま残してもよい。移植した組織由来多孔質マトリックスの非再吸収部分を除去するか否かは、関連分野の当業者(例えば、医師)の能力及び判断で十分に可能である。一部の実施形態では、当業者(例えば、医師)の判断で、マトリックスのどの部分が再吸収されている(若しくはどの部分も再吸収されていない)か否かとは関係なく、移植から任意の時点で(即ち、場合によっては、移植から約7日後より早く)、再吸収されていない組織由来多孔質マトリックスの少なくとも一部分を創傷部位から除去することができる。
【0026】
さらには、一部の実施形態では、組織由来多孔質マトリックスを用いる対象の創傷(又は創傷部位)の処置は、対象への第1組織由来多孔質マトリックスの1回目移植(創傷と接触させて、又は近接して配置)と、1回目の移植から一定期間後に行われる第2組織由来多孔質マトリックスの2回目移植(創傷と接触させて、又は近接して配置)と、を含み得る。実際に、本明細書に記載及び考慮されるマトリックスを使用する方法の一部の実施形態は、対象の創傷又はその付近での複数のそうしたマトリックスの複数回の移植を含み得る。一部の実施形態では、組織由来多孔質マトリックスを用いた創傷の処置は、対象への2つ以上の組織由来多孔質マトリックスの1回目移植(対象の創傷部位と接触させて、又は近接して配置)を含み得る。2つ以上のマトリックスは、同時に、連続的に、又は両者を組み合わせて移植することができる。当業者には容易に理解されるように、本明細書に記載及び考慮される組織由来多孔質マトリックスの前述した使用のさらなる変更及び組合せが可能であり、且つ有用である。本明細書で使用される場合、移植後の期間に適用される用語「約」は、18時間を意味する。
【0027】
本明細書で使用される用語「創傷」及び「創傷部位」は、例えば、外傷、負傷、疾患、感染、外科手術(例えば、切除など)などによって、組織が損傷した、欠損又は変性した身体内若しくは身体上の場所若しくは位置を意味する。いくつかの疾患、外傷、負傷及び外科手術は、身体組織に対する損傷、その欠損、又は変性の1つ若しくは複数をもたらし、それによって創傷部位の形成が起こり、そうした部位は、外部、内部、又はその両方のいずれにも位置し得る。例えば、軟部組織腫瘍及び塊の外科的切除によって、多くの場合、大きな嵩の組織が失われる。他の外科及び美容的処置も、様々な程度で、機能性並びに美的外観を損ない得る組織損傷、欠損及び/又は変性を引き起こす可能性がある。組織損傷、欠損又は変性は、外傷、例えば、事故及び意図的なものを含め、鈍器による衝撃及び武器による負傷などにも起因し得る。最後に、急性及び慢性感染症並びに消耗症を含むいくつかの疾患は、身体組織の損傷、欠損及び/又は変性を引き起こし得る。こうしたあらゆる状況及び事象によって身体組織が損傷、欠損及び/又は変性した全ての場所が、限定されることなく、「創傷」及び「創傷部位」の意味に含まれることを意図する。
【0028】
本明細書で使用される用語「治癒」及び「創傷治癒」は、損傷、欠損若しくは変性した組織が、修復される、及び/又は新しい組織で置換されるプロセスを意味する。創傷治癒は、同時に、3つの一般的段階、つまり、炎症、増殖、及び成熟を含むと理解されている。これらの段階は、順次起こる傾向があるが、互いに重複することも多い。最初の「炎症」段階は、うっ血及び炎症を含み、ほとんどの場合、組織傷害又は損傷に対する身体の反応である。この後に、第2段階が続き、その際、典型的には、上皮形成、血管新生、肉芽組織形成、及びコラーゲン沈着が起こる。最後の段階は、成熟及び組織再構築から構成される傾向がある。この3段階の創傷治癒過程は、実際には、前述の説明が示すと思われるものよりも複雑であるが、完全な治癒が起こる場合、表在性、深部及び慢性創傷を含め、ほとんどの創傷について概ね正確である。創傷治癒は、虚血、浮腫、及び感染などの局所性要因、並びに例えば糖尿病、年齢、甲状腺機能低下、栄養不良、及び肥満を含む全身性要因に影響を受け、往々にしてそれらによって複雑化する。
【0029】
本明細書で使用される用語「血管新生」は、新たな血管の発生及び発育(即ち、成長)を意味し、それは、典型的に、上皮細胞の移動と、新たな毛細血管の形成から始まる。血管新生は、新たな及び既存の組織成長及び拡大の増大する代謝要求を満たし、それによって、そうした組織が、酸素、栄養素及び排液を提供するための適切な血液供給を得るようにするために必要である。このプロセスは、身体組織の治癒、成長、発育、及び維持のために必須である。
【0030】
創傷治癒の律速段階は、往々にして血管新生である。創傷治癒において、血管新生は、内皮細胞移動によって達成され、創傷床中への毛細血管の出芽は、創傷部位での組織の再生に極めて重要である。そうした毛細血管によって供給される栄養素により、創傷部位で、肉芽組織及び組織形成が可能になり、これが支持される。従って、創傷血管新生の障害は、慢性非治癒性創傷につながり得る。
【0031】
血管新生表現型の発現は、複雑なプロセスであり、そのために、いくつかの細胞及び分子事象が連続的段階で起こる必要がある。これらの活動のいくつかは、上皮細胞増殖、周囲の基底膜の分解、結合組織間質を介した内皮細胞の移動、管状構造の形成、及び新血管中への内皮細胞内膜管の成熟(吻合)を含む。血管新生は、正及び負調節因子により制御される。内皮細胞に加えて、血小板、単球、及びマクロファージなどの組織修復に関連する細胞は、傷害部位中に血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などの血管新生増殖因子を放出して、血管新生を開始する。
【0032】
本明細書で使用される用語「スカフォールド」は、細胞の増殖及び/又は組織の形成を増強又は促進するために使用される物質又は構造を指す。本発明の創傷処置及び治癒に関連して、スカフォールドは、典型的に、細胞増殖のためのテンプレートを提供する3次元多孔質構造である。
【0033】
多孔質マトリックスを表すために本明細書で使用される用語「組織由来」は、1若しくは複数のドナーから組織を回収し、回収した組織を処理して、血液、残屑、バイオバーデン、内在性細胞及び細胞材料の大部分を除去して、細胞による浸潤及び新たな組織による内方成長が可能な3次元スカフォールドを提供するのに十分な割合で初めに存在し、天然に形成された組織の物理的構造を保持しながら、免疫原性をほぼ欠失させることによって、生産される処理組織を含むことを意味する。「大部分の内在性細胞及び細胞材料」とは、処理前に回収された組織中に初め存在する細胞DNA材料の総重量に基づいて、細胞DNA材料の約50重量%(wt%)超を意味する。回収された組織は、自己(即ち、対象レシピエントと同じ個体から回収される)、同種(即ち、対象レシピエントと同じ種の異なる個体から回収される)、又は異種(即ち、対象レシピエントと異なる種の個体から回収される)であってよい。さらに、回収される組織は、脂肪、筋膜、真皮、骨、軟骨/半月板、筋肉、腱/靭帯、胎盤(羊膜、漿膜、羊膜絨毛膜、ワルトン(Wharton’s)ゼリー、及び臍帯)、胎盤ディスク、及びそれらの組合せであってよい。
【0034】
本明細書で使用される場合、組織由来多孔質マトリックスを表現するために使用される用語「多孔質」とは、マトリックスが、複数の相互連絡した孔(即ち、細孔、隙間、セル、空隙又は開口部)を有し、それらの少なくとも一部分が、互いに流体連絡しており、それによって、これらの孔が、それ自体を介して、従って、マトリックスも介して、流体の流れを通過させることを可能にすることを意味する。孔はまた、創傷治癒過程の際にマトリックス中への細胞浸潤及び組織内方成長も促進及び増強する。孔のサイズ、形状、又は相互連絡性は、均一、ランダムであるか、若しくはパターン化されていてもよく、例えば、限定はしないが、新たな組織形成、組織再構築、細胞浸潤及び増殖、血管新生、及び宿主統合などの1つ若しくは複数のプロセスを増強又は制御するように、改良することができる。
【0035】
当業者には容易に理解され、実施が可能であるように、孔のサイズ及び形状、並びにポロシティを変えることによって、組織由来多孔質マトリックスを通過する流体の流動特性の変化及び制御をもたらすことができる。一般に、本明細書に記載の組織由来多孔質マトリックスは、約75ミクロン~約1500ミクロン、例えば、約400ミクロン~約600ミクロンの平均孔径を有する。
【0036】
一般に、本明細書に記載の組織由来多孔質マトリックスは、約50%~約99%、例えば、約80%~約99%、又は約80%~約90%のポロシティを有する。この比較的高いポロシティは、浸潤細胞の付着が、新たな組織形成を誘導できるようにすると共に、所望の組織型の形成を促進する前に、所望の細胞型で多孔を接種することも可能にする。
【0037】
「再吸収性」、「吸収性」及び「生体吸収性」という用語及びそれらの文法的変形は、マトリックス又は移植片を表すために、本明細書では互換可能に使用され、マトリックス又は移植片、例えば、それらが作製される材料が、例えば、生きた組織に隣接して、それと接触して、若しくはそこに移植されて、生体環境中に移植又は配置された後の限定的期間内に、分解、再構築するか、又はその組合せが起こることを意味し、即ち、移植又は配置後にマトリックス又は移植片を除去する必要がないことを意味する。上記の限定的期間の後に、マトリックス又は移植片は、もはやその初期形状で存在した通りに認識することはできない。再吸収性マトリックス又は移植片は、多様なメカニズムのいずれかによって再吸収され得る。例えば、限定はしないが、再吸収性マトリックス又は移植片は、細胞活動の作用により、例えば、再吸収性再生マトリックスを分解するマクロファージの作用により再吸収され得る。再吸収性マトリックス又は移植片は、機械的、化学的、代謝及び/又は酵素分解により分解された後、再吸収され得る。当業者であれば、再吸収性マトリックスの分解産物が身体により再吸収され得る及び/又は身体から排出され得る限り、再吸収性の具体的なメカニズムは重要ではないことは理解されよう。生きた組織への配置又は移植後に特定の再吸収性マトリックス又は移植片が存在する限定的期間は、例えば、限定されないが、数時間、数日、数週間、数ヶ月、又は数年でもあり得る。典型的に、また当業者には理解されるように、こうした限定的期間は、様々な要因によって決定され、そうしたものとして、生体環境及び隣接組織のタイプ、移植される再吸収性マトリックス又は移植片のサイズ若しくは質量、生体環境内に存在する条件(温度、圧力、pHなど)、並びに再吸収性マトリックス又は移植片のサイズ、質量、密度及び他の特徴が挙げられる。例えば、限定されないが、移植後に再吸収性マトリックス又は移植片が存在し得る限定的期間は、生体環境内に配置された場合、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180日、若しくはそれ以上、又はそれらの間の任意の値であり得る。例えば、実際の適用パラメータとして、移植後に再吸収性マトリックス又は移植片が存在すべき限定的期間は、創傷部位に別の包帯の配置の必要性を最小限にする(例えば、包帯交換を最小限にする)ために、少なくとも約4~7日である。
【0038】
本明細書で使用される用語「減圧」は、一般に、処置を受けている組織部位に存在する周囲圧力よりも低い圧力を意味する。ほとんどの場合、この減圧は、患者が位置する大気圧より低く、限定はしないが、低圧、亜大気圧、及び陰圧を含む。同様に、減圧は、組織部位の組織に関連する静水圧より低くてもよい。「真空」及び「陰圧」という用語は、本明細書で、創傷部位に適用される圧力を表すために使用されるが、適用される実際の減圧は、完全な真空に通常伴う減圧よりもかなり低いものとなり得る。減圧は、初め、創傷部位及び周囲組織中に流体の流れを生じさせ得る。創傷部位周辺の静水圧が、予め定めた所望の減圧に接近すると、流体の流れは減少するか、又はほぼ停止する場合があり、その後、減圧は一定期間維持される。別に指示されない限り、本明細書に記載される値は、ゲージ圧である。同様に、減圧の増加と言うとき、絶対圧力の減少を指し、減圧の減少は、典型的に、絶対圧力の増加を指す。
【0039】
本明細書で使用される用語「減圧源」は、約-0.1mmHg~約-500mmHgの減圧を生成することができ、創傷処置を目的とする減圧療法の実施の使用に好適な創傷包帯と流体連絡するための可撓性導管を備える任意の装置、例えば、真空ポンプ、壁面吸込みなどを指す。減圧源は、連続的、又は創傷部位への適用時間及び非適用時間が交互に起こるように、又は断続的若しくは周期的に作動し得る。当業者には理解されるように、減圧源はまた、創傷部位への減圧療法の適用をさらに容易にするセンサー、処理ユニット、アラームインジケータ、メモリ、データベース、ソフトウェア、ディスプレイユニット、及びユーザインターフェースを含んでもよい。加えて、減圧源は、追加的な特徴及び要素を備えてもよく、そうしたものとして、限定はしないが、1つ若しくは複数の追加の入口、出口、又は両方があり、これらは、創傷部位への流体の送達、例えば、創傷部位の洗浄若しくは点滴注入、又は減圧源のフラッシング及び洗浄のための追加的導管と接続するように設計されている。流体は、創傷部位(例えば、すすぎ、浄化、灌流)又は減圧源(例えば、すすぎ、浄化、殺菌)への流体の送達の意図される目的を達成するのに適した任意の流体であってよい。
【0040】
本明細書で、限定はしないが、減圧療法を含め創傷処置法に好適な包帯の要素を表すために使用される用語「半透性」は、包帯で処置しようとする創傷若しくは他の部位に十分に気密性のポケット(例えば、創傷/多孔質要素複合を含む)を賦与又は形成し(即ち、水蒸気は通過し得る)、これにより、上記ポケットに供給される陰圧が、創傷若しくは組織部位及び周囲組織からの流体の除去を容易にし、促進するようにすることができる、一般にシート様形状の要素を意味する。本明細書で使用される場合、「半透性」の特徴は、比較的不浸透性(即ち、無孔であるか、又は低透湿性)、並びに半閉塞性(即ち、湿性又は透湿性)の両方を含む。こうした包帯の半透性要素は、その周囲付近で創傷部位に密閉して貼り付けられ、それにより、本明細書に記載される減圧の制御された適用のために、創傷部位に限定的な透過性のポケットを賦与する。従って、包帯の不浸透性要素は、完全に全ての流体及び他の物質のそこからの通過を阻止する必要はなく、当業者には理解されるように、この要素の透過性が低いほど、減圧の適用は効果的となり得る。
【0041】
本明細書で、減圧療法で使用するのに好適な包帯の要素を表すために使用される用語「不浸透性」とは、一般に、シート様形状を有し、そこからの少なくとも液状流体、任意選択的にまた気体の透過がほぼ妨げられるように少なくとも半透性である要素を意味する。
【0042】
減圧療法技術を実施するのに好適な包帯の実施形態の以下の説明では、組織由来多孔質マトリックスと、不浸透性である第2要素を含む包帯を記載する。それでも、当業者には、こうした包帯の第2要素が、半透性、例えば、限定はしないが、半閉塞性であること、また、透過性の程度(即ち、半透性、不浸透性、半閉塞性)は、そうした当業者により、減圧の適用と共に、又は適用なしで、そうした包帯を用いて処置しようとする創傷若しくは他の組織部位のタイプ、並びにそうした処置の所望の転帰に基づいて決定が可能であることは容易に理解されよう。
【0043】
減圧療法を実施するのに好適な包帯は典型的に、少なくとも多孔質要素と不浸透性要素とを含み、ここで、多孔質要素は、部分的若しくは完全に、創傷部位と直接接触して配置され、多くの場合、創傷部位を充填し、不浸透性要素は、多孔質要素(並びに場合によっては、創傷部位周辺の正常組織の一部分も)を含む創傷部位全体を覆うように配置される。こうした包帯の不浸透性要素は、典型的にシート様形状(しかし、必ずしも必要ではない)を有し、創傷部位と多孔質要素を完全に覆うように、創傷部位の縁部を超えて延在するサイズである。不浸透性要素は、例えば、限定はしないが、生体適合性接着剤を用いて、創傷周囲付近又はその周辺で健康な組織に密閉して貼り付けられる。この配置は、創傷部位及びそれに隣接する健康な組織に対する制御された減圧適用のために、創傷部位に限定的且つ制限された透過性の領域又はポケットを提供する。好ましくは、不浸透性要素は、可撓性で、しかも、水蒸気の分散を可能にする(蒸気閉鎖を防止する)が、密閉エンクロージャーを提供する不浸透性物質から作製される。
【0044】
減圧源は、不浸透性要素を介して(若しくはその下を)、並びに少なくとも部分的に包帯の多孔質要素上、又はそれと接触若しくは近接して通過する導管を通して包帯及び創傷部位と流体連絡して備えられる。当業者には認識されるように、導管の通過を可能にし、創傷部位と外部環境(及び/又は陰圧源)との間の流体連絡を可能にするように、不浸透性バリア要素から開口部を設けてもよいが、導管は、不浸透性要素の下を通過することもでき、不浸透性要素は負傷部位及び導管に密閉して貼り付けられ、その際、導管は、導管周囲の流体の流れ又は漏出を最小限にする様式で創傷部位に接近して対象に対して保持されている。組織部位に適用される減圧の量及び種類は、典型的に、適用、半透性要素の透過性、及び当業者には周知の他の要因に応じて変動し得るが、減圧は、典型的に、-5mmHg~-500mmHg、より典型的には-50mmHg~-200mmHgであろう。減圧療法に使用される具体的なプロトコルは、創傷部位の位置、減圧包帯、及び使用される任意の薬物に応じて異なる。加えて、減圧は、実質的に連続的であるか、又は経時的に圧力を上下する周期的適用であってもよい。
【0045】
一般に、包帯は、創傷部位上若しくは中への配置前に、他の追加的任意の要素と一緒に、又はそれら無しで、既に組み立てられ、連結され若しくは一体化された多孔質及び半透性要素を有し得る。或いは、多孔質、半透性及び他の任意の要素の1つ若しくは複数は、互いに個別であり、創傷部位上若しくは部位内に順次配置してもよく、その際、半透性要素は、創傷部位と、創傷部位と直接接触する多孔質要素を完全に覆う。包帯は、多くの場合、創傷部位上又は部位内にぴったり合うサイズ及び形状である。一部の実施形態では、包帯は、創傷又は処置しようとする組織部位の周囲又は領域を超えて延在するサイズ及び形状であってもよい。包帯の組織由来多孔質要素も、最初の適応時、又は逐次適用のいずれかで、層状に連続して適用することにより、必要に応じて処置部位に体積又は嵩を加えることもできる。
【0046】
本明細書に記載の組織由来多孔質マトリックスは、創傷包帯の多孔質要素としての使用に好適であり、多孔質要素全体又はその一部分を含み得る。さらに、多孔質要素は、1つ若しくは複数の部分、セクション又は層を含んでもよく、その各々が、1つ又は複数の組織由来多孔質マトリックスを含み、ここで、組織由来多孔質マトリックスは、回収された同じ、又は異なる組織型から作製されたものであってよい。
【0047】
本明細書に記載の組織由来多孔質マトリックスは、限定はしないが、慢性、急性、外傷性、亜急性、離開創傷、中間層熱傷、潰瘍、圧迫潰瘍、トンネル創傷、露出した瘻孔及びフラップスを含む様々なタイプの創傷を処置するのに(即ち、陰圧装置及び技術との併用又は併用なしで、内部及び付近への配置に)有用且つ有益である。本明細書に記載の組織由来多孔質マトリックスを用いて有益に処理され得る別のタイプの創傷として、限定はしないが、供給部位、モース手術後、レーザ手術後、及び足病(例えば、介入、切断)、癌若しくは腫瘍切除又は根絶、及び排液性創傷が挙げられる。
【0048】
上に記載した通り、組織由来多孔質マトリックスは、実質的に無細胞であり、これは、内在性細胞及び細胞材料の大部分(即ち、初めに存在するDNA材料の50wt%超)が、処理中に回収された細胞から除去されていることを意味する。従って、細胞浸潤及び新たな組織内方成長のための再吸収性3次元スカフォールドを提供する以外にも、組織由来多孔質マトリックスは、免疫原性が欠失し、従って、高度に生体適合性である。一部の実施形態では、限定はしないが、初めに存在するDNA材料の約80wt%超、又は約90wt%超、又は約95wt%超が、組織由来多孔質マトリックスから除去されており、これは、マトリックスが、初めに存在するDNA材料の約20wt%未満、又は約10wt%未満、又は約5wt%未満を含有することを意味する。
【0049】
加えて、組織由来多孔質マトリックスを作製する方法(これは、以下に詳しく説明うる)により、典型的に、十分に有益な内在性物質を保持するマトリックスが得られ、これらの物質は、限定はしないが、細胞外マトリックス産生及び沈着、細胞浸潤及び増殖、並びに血管新生を含む様々な組織治癒及び再構築メカニズムを促進する。陰圧と併用して創傷部位を処置するために使用される場合、組織由来多孔質マトリックスが、血管新生を促進し、新たな組織形成を支持する能力は、以前利用可能であった陰圧創傷包帯ではこれまで認められず、実現されなかった利益であると考えられる。孔径、ポロシティ、及び分解速度の調整により細胞浸潤及び組織再生のために最適化される、組織由来多孔質マトリックスの能力は、以前利用可能であった標準的創傷包帯ではこれまで認められず、実現されなかった利益であると考えられる。さらに、組織由来多孔質マトリックスは、外性細胞、増殖因子、細胞外マトリックス要素、栄養素、インテグリン、又はその他の物質、例えば、限定されないが、細胞移動、接着、増殖、成長及び活性をさらに促進する物質を被覆、注入してもよいし、又はそれ以外に含有してもよい。
【0050】
組織由来多孔質マトリックスはまた、1つ若しくは複数の外性生体適合性材料を含むか、又はそれらと組み合わせてもよく、それらは、生物学的に活性でもよいし、活性でなくてもよい。こうした外性材料として、限定されないが、ポリマー(天然若しくは合成)、セラミック、金属、他の生体材料、及びそれらの組合せが挙げられる。組織由来多孔質マトリックスと1つ若しくは複数の別の材料との組合せは、例えば、限定はしないが、混合、ブレンド、層形成、コーティング、及びその他の接触の1つ又は複数によって実施することができ、その場合、均質な組合せを形成してもよいし、又はしなくてもよい。1つ若しくは複数の外性材料とのこうした組合せは、いくつかの理由で実施され得るが、そうした理由として、限定はしないが、取扱い性又は他の特性(例えば、流動性、人為的造形性、成形性、形状保持又は記憶の程度、結束性、凝集、流動性、ポロシティなど)の改変、或いは機能性(レシピエントへの接着、レシピエント内若しくは上への保持)、外性組織形成能力、感染予防、pH調整、質量及び/又は利用可能表面積の増加、その他の生物活性など)の増強又は追加が挙げられる。
【0051】
組織由来多孔質マトリックスとの組合せに適したセラミックは、生体適合性であり、現在及び将来周知のもの、例えば、限定はしないが、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、アルミノケイ酸塩、ハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)-炭素複合体、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素、炭化物、並びにそれらの複合体及び組合せを含む。組織由来多孔質マトリックスとの組合せに適した金属も生体適合性であり、現在及び将来周知のもの、例えば、限定はしないが、チタン、クロミウム、タンタル、ジルコニウム、マグネシウム、ステンレス鋼、並びにそれらの合金及び組合せを含む。
【0052】
好適な天然及び合成ポリマーは、生体適合性であり、現在及び将来周知のものを含む。これらのポリマーは、生体適合性であり、インプラント及び組織由来多孔質マトリックスの分解及び再吸収の様々な好ましい速度を有する移植片を提供するように選択された割合で、組織由来多孔質マトリックスの組成物中に存在し得る。好適な合成ポリマーとして、限定されないが、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-コグリコリド酸(PLGA)などの生体吸収性ポリマー、並びに他のポリヒドロキシ酸、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ無水物、合成ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、分解性ポリシアノアクリレート及び分解性ポリウレタン、並びにポリラクチド-コグリコリド(PLAGA)ポリマー又はポリエチレングリコール-PLAGAコポリマーが挙げられる。天然ポリマーの例として、限定されないが、アルブミン、コラーゲン、フィブリン、及びポリアミノ酸、オリゴ糖(例えば、キトサン)、及び多糖(例えば、アルギン酸塩、ヒアルロン酸及びその誘導体、ヘパリン、及び他の天然に存在する糖単位の生分解性ポリマー)が挙げられる。また、ポリマーブレンドとしては、限定はしないが、ポリカーボネート、ポリフマレート、及びカプロラクトンを挙げることができる。
【0053】
図1を参照にしながら、前述した組織由来多孔質マトリックスを生産する方法をこれから説明する。細胞外マトリックスを有する組織のサンプルを取得(ドナーからの組織の回収を含むか、又は含まなくてもよい)112後、組織由来多孔質マトリックスを生産(製造)する方法100は、組織を脱細胞118して、組織中の内在性細胞又は細胞材料を減少させるか、又は実質的に全部を除去する必要がある。組織を脱細胞118する技術又は方法は、特に限定されず、組織の細胞外マトリックスの構造を完全には破壊しない、現在又は将来当業者が周知の任意の技術を含み得る。
【0054】
任意選択的及び典型的に、しかし、必ずしもではなく、脱細胞118の前に実施されるもので、組織由来多孔質マトリックスを生産する方法100は、現在又は将来当業者が周知の機械的若しくは化学的技術のいずれかによって、組織のサイズを縮小するステップ114をさらに含んでもよい。
【0055】
任意選択的及び典型的に、しかし、必ずしもではなく、脱細胞118の前に実施されるもので、組織由来多孔質マトリックスを生産する方法100は、組織の脂質若しくは無機物の量をそれぞれ低減するか、又は実質的に全部を除去するために、現在又は将来当業者が周知の技術を用いて、組織を脱脂若しくは脱塩するステップ116をさらに含んでもよい。組織の脱脂又は脱塩116を実施するか否かは、一般に、処理しようとする組織のタイプ(例えば、それぞれ、脂肪若しくは骨)及び組織由来多孔質マトリックスの意図される最終的用途に応じて決定されることになる。
【0056】
任意選択的及び典型的に、しかし、必ずしもではなく、脱細胞118の後に実施されるもので、組織由来多孔質マトリックスを生産する方法100は、組織から微生物、細菌、及び他の感染性物質の量を低減する、又は実質的に全部を除去するために、現在又は将来当業者が周知の技術により、殺菌する(即ち、組織の微生物負荷を低減する)ステップ120をさらに含み得る。こうした技術は、限定はしないが、化学的、機械的、放射線への曝露など、又はそれらの組合せであってよい。
【0057】
加えて、方法100はさらに、得られた組織由来多孔質マトリックスを懸濁させる、均一に分布させる、その体積を増加する、又は取扱い及び他の特徴を改変するために、1若しくは複数種の溶媒、例えば、限定はしないが、水、塩水、リン酸緩衝溶液、或いは当業者が周知の他の塩溶液若しくは生体適合性溶媒と、組織を混合するステップ122を含み得る。組織を1若しくは複数種の溶媒と混合するステップは、典型的に、しかし、必ずしもではなく、脱細胞118後に実施する。任意選択的及び典型的に、しかし、必ずしもではなく、組織を1又は複数種の溶媒と混合122後に実施されるもので、方法100は、組織、又は組織と溶媒(及び任意選択で、追加の内在性材料)の混合物を容器又はモールド内に配置するステップ124をさらに含み得る。容器又はモールドは、要求されるわけではないが、例えば、混合した組織と溶媒を容器又はモールドに配置して、乾燥ステップ128及び/又は架橋ステップ130に付した後に、組織に付与される所望の若しくは事前に選択した形状を有し得る。
【0058】
脱細胞118後に、細胞は、既に多孔を備えていてもよい。任意選択的及び典型的に、しかし、必ずしもではなく、脱細胞ステップ118後に実施されるもので、組織由来多孔質マトリックスを生産する方法100は、1つ又は複数の孔形成ステップ126の実施をさらに含み得る。このような1つ又は複数の孔形成ステップ126は、限定はしないが、本明細書に記載されるものを含め、現在又は将来当業者が周知の任意の技術により実施され得る。孔形成ステップ126は、組織中に孔を形成(即ち、作出)する、又は既存の孔を改変するために実施してもよいし、2回以上実施してもよい。
【0059】
以下にさらに詳しく説明するように、任意選択的及び典型的に、脱細胞118の後に実施されるもので、組織由来多孔質マトリックスを生産する方法100は、組織からの水分(例えば、水)の量を低減する、又は実質的に全部を除去するために、現在又は将来当業者が周知の任意の技術により、組織を乾燥させるステップ128をさらに含み得る。方法100は、多くの場合、こうした乾燥ステップ128を含み、これは、典型的に、しかし、必ずしもではなく、後にさらに詳しく説明するように、凍結乾燥することにより実施される。当業者には理解されるように、凍結乾燥すること(凍結乾燥とも呼ばれる)は、典型的に、2つの段階(凍結段階と乾燥段階)を含む。組織の乾燥ステップ128は、組織(溶媒及び/又は追加の外性材料と一緒に、又は一緒でなく)は、容器又はモールド内にあり、組織を所望の形状(即ち、容器又はモールドの形状)への造形を達成し得る。別の乾燥技術は、例えば、限定はしないが、脱水熱処理を含んでもよく、これは、真空下での熱の適用を含む。
【0060】
任意選択的及び典型的に、しかし、必ずしもではなく、乾燥128の後に実施されるもので、組織由来多孔質マトリックスを生産する方法100は、以下に説明するように、現在又は将来当業者が周知の任意の技術を用いて、組織由来多孔質マトリックスを架橋するか、又はそれ以外に安定化するステップ130をさらに含み得る。例えば、当業者には認識されるように、他の安定化技術として、限定はしないが、加熱及び照射(例えば、γ線、紫外線エネルギー、電子ビーム(「eビーム」)照射など)が挙げられる。架橋又は他の安定化130を実施するか否かは、一般に、処理しようとする組織のタイプ及び組織由来多孔質マトリックスの意図される最終的用途に応じて決定されることになる。架橋又はそれ以外の安定化組織由来多孔質マトリックスは、任意選択で、限定はしないが、凍結乾燥などによる、さらなる乾燥ステップ132に付してもよい。加えて、架橋又はそれ以外の安定化組織由来多孔質マトリックスは、任意選択で、例えば、しかし、必ずしもではなく、さらなる乾燥ステップ132の後に、微生物負荷を低減するさらなるステップ134に付してもよい。例えば、限定はしないが、架橋130を実施した後、及びさらなる乾燥132を実施した後、現在又は将来当業者が周知の任意の技術により、最終的滅菌ステップ(例えば、もう1回の微生物負荷の低減、又は殺菌ステップ)134が実施され得る。
【0061】
凍結乾燥は、孔の形成(例えば、ステップ126)の達成、乾燥(例えば、ステップ128)の達成、さらなる若しくは追加の乾燥(例えば、ステップ132)、又はこうしたステップ126、128、132の組合せを達成するために実施され得る。従って、一部の実施形態では、孔を形成するステップ126は、凍結乾燥による乾燥ステップ(128)と同じであっても、又は同時に実施してもよい。理論に制限されるものではないが、これから説明するように、特定のパラメータ内で凍結乾燥を実施すれば、一貫し、且つ制御可能な様式で孔が形成されると考えられる。
【0062】
例えば、凍結乾燥前に、組織を溶媒と組み合わせるステップ(122)は、組織と水(又は別の水性溶媒)を添加して(混合して)、組織及び水混合物合計を100としたとき、約1:99~約99:1の組織:水の比を有する組織及び水混合物を形成することを含む。この「過剰な」水は、凍結乾燥の凍結段階で組織中に水結晶の形成を促進し、次に、凍結乾燥の乾燥段階中にこれらの結晶を除去して、凍結乾燥した組織中に孔(即ち、空隙)を残す。一部の実施形態では、バイオスポンジを作製する目的で処理中の組織に孔を形成するために、凍結乾燥を実施する際、組織と水の比は、一般に、約1:99~約60:40、又はそれらの間の任意の比若しくは値、例えば、約1:99~約50:50、又は約1:99~約40:60、又は約5:95~約60:40、又は約10:90~約60:40、又は10:90~約50:50である。
【0063】
凍結乾燥前の組織と組み合わせる水の量(即ち、水に対する組織の比)は、当業者によって決定が可能なように、組織由来多孔質マトリックス(バイオスポンジ)を作製するのに使用される組織のタイプに応じて変動し得る。例えば、限定はしないが、使用される組織型が胎盤である場合、水に対する組織の比は、約1:99と低くなり得る。例えば、限定はしないが、使用される組織型が真皮である場合、水に対する組織の比は、約1:99~約40:60、又は約10:90~約40:60、又は約10:90~約30:70、又は約15:85~約30:70などのそれらの間の任意の比若しくは値であり得る。
【0064】
一部の実施形態では、バイオスポンジを作製する目的で処理中の組織に孔を形成するために、凍結乾燥を実施する際、凍結乾燥中(即ち、その凍結段階中)の凍結速度は、典型的に、約0.1℃/分~約2℃/分の範囲、又はそれらの間の任意の範囲若しくは値であるべきである。例えば、限定はしないが、凍結乾燥中の凍結速度は、約0.1℃/分~約2℃/分、例えば、約0.1℃/分~約1℃/分、又は約0.2℃/分~約0.5℃/分、約0.3℃/分~約0.4℃/分であり得る。
【0065】
一部の実施形態では、バイオスポンジを作製する目的で処理中の組織に孔を形成するために、凍結乾燥を実施する際、凍結乾燥の乾燥段階の乾燥時間は、典型的に、約720分(0.5日)~約10,080分(7日)の範囲、又はそれらの間の任意の範囲若しくは値、例えば、約1440分(1日)~約10,080分(7日)、又は約4320分(3日)~約8640分(6日)、約7200分(5日)~約8640分(6日)であるべきである。当業者には理解されるように、乾燥時間は、乾燥させるバイオスポンジの寸法に応じて7日を超えてもよい。
【0066】
図2は、いくつかの前述したステップを様々な順で使用する、組織由来多孔質マトリックスの生産方法200のいくつかの考えられる代替実施形態を提供する。当業者には明らかとなる、これらの実施形態200の全ては、他の同様に、組織由来多孔質マトリックスを生産する方法を実施する本開示の範囲に含まれる。
【0067】
組織由来多孔質マトリックスを生産する方法100は、さらに、1つ又は複数のパッケージングステップ(不図示)を含み得る。方法100はまた、1つ若しくは複数の混合ステップ又は製剤化ステップ(不図示)を含んでもよく、これによって、組織由来多孔質マトリックスを他の材料と混合し、結合させるか、又はそれ以外に結びつけるが、他の材料として、限定はしないが、細胞、増殖因子、他の物質(例えば、抗生物質、抗菌剤、薬学的に有効な化合物、賦形剤、担体など)、他の種類の合成若しくは天然由来のマトリックス(例えば、骨由来マトリックス若しくは合成可溶性、再吸収性マトリックスと組み合わせた脂肪由来の多孔質マトリックスなど)、並びに他の種類のマトリックス(例えば、再吸収性モノリシック若しくはメッシュスカフォールドなど)が挙げられる。
【0068】
当業者には理解されるように、担体は生物学的に不活性(biologically inert)又は不活性(inactive)でもよい。担体は、例えば、組織由来多孔質マトリックスの組織形成能力を増強する様式で生物学的に活性であってもよいし、或いは担体は、組織由来多孔質マトリックスの組織形成能力と無関係、相補的若しくは補足的のいずれであってもよい別の生体活性、特性若しくは作用を賦与又は誘導し得る。
【0069】
好適な生体適合性担体は、天然に存在するか、若しくはそれに由来するもの、又は合成、或いはそうした材料の組合せであってよい。一般に、好適な生体適合性担体として、限定はしないが、緩衝溶液、グリセロール、ヒアルロン酸塩、ポリエチレングリコール、ステアリン酸塩、セルロース由来の材料(例えば、キトサン、アルギン酸塩、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)など)、及びそれらの組合せが挙げられる。組織由来多孔質マトリックスでの使用に特に好ましい生体適合性担体として、限定はしないが、ヒアルロン酸塩、グリセロール及び緩衝溶液が挙げられる。一部の実施形態では、生体適合性担体は、ヒアルロン酸ナトリウムを含む。一部の実施形態では、生体適合性担体は、ヒアルロン酸ナトリウム及び緩衝食塩水を含む。一部の実施形態では、生体適合性担体は、グリセロールを含む。
【0070】
一部の実施形態では、担体は、等張液、塩化ナトリウム溶液、乳酸リンゲル液、リン酸緩衝食塩水(PBS)、多血小板血漿(PRP)、骨髄穿刺液(BMA)、及びヒアルロン酸(HA)又はヒアルロン酸ナトリウムなどのその誘導体の少なくとも1つを含む。複数の実施形態において、担体は、約0.1%~約1%の濃度の塩化ナトリウム溶液である。一部の実施形態では、塩化ナトリウム溶液は、約0.9%の濃度である。一部の実施形態では、担体は、ヒアルロン酸塩と水溶液の混合物である。一部の実施形態では、ヒアルロン酸ナトリウムは、約5.0×103~約3.0×106ダルトン、例えば約6.0×105~約3.0×106ダルトンの分子量を有し、水溶液と混合して、約1000センチポアズ~約275,000センチポアズ、例えば約6,000センチポアズ~約275,000センチポアズの範囲の粘度を有するマトリックス-担体混合物を形成する。一部の実施形態では、ヒアルロン酸ナトリウムを含む担体の水溶液は、例えば、限定はしないが、水、塩水、リン酸緩衝溶液(PBS)、等張食塩水などのうち1つ又は複数である。
【0071】
一部の実施形態では、担体は、トロンビンを含む。一部の実施形態では、担体は、フィブリンを含む。一部の実施形態では、担体は、グリセリンを含む。一部の実施形態では、担体は、ゼラチンを含む。一部の実施形態では、担体は、コラーゲンを含む。一部の実施形態では、担体は、レシチンを含む。一部の実施形態では、担体は、糖を含む。一部の実施形態では、担体は、多糖を含む。一部の実施形態では、担体は、2つ以上の担体要素の組合せを含む。
【0072】
当業者には理解され、実施が可能であるように、方法100の1つ又は複数のステップが、方法100の別のステップの「前」又は「後」に実施されると本明細書に記載される場合、このような1つ又は複数のステップは、必要とするわけではないが、前記別のステップの直前又は直後に実施し、それによって、他のステップがそうした1つ又は複数のステップと前記別のステップとの間に実施できるようにしてもよい。加えて、方法100、200は、少なくとも、組織のサンプルを取得するステップ112と、組織を脱細胞するステップ118は含むべきであるが、前述した「任意選択の」ステップの各々は実施されるか、又は特定の実施形態から省かれ得る。前述した取得及び脱細胞ステップ112、118に加えて、組織由来多孔質マトリックスを生産する方法100、200は、前述した任意選択のステップ114、116、120、122、124、126、128、130、132、134の任意の組合せを含んでもよく、処理ステップ114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134の1つ又は複数を、任意の順で実施してもよいし、2回以上実施してもよい。
【0073】
ドナーから回収される組織(即ち、「回収組織」)を、物理的及び化学的方法の組合せを用いて処理することにより、規定寸法、ポロシティ、機械的性質、及び制御された再吸収速度の組織由来多孔質マトリックスを生産する。本方法は、脱細胞の処理ステップと、任意選択で、微生物/ウイルス負荷を低減するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、最終的「乾燥」製品を提供するために、部分的又は完全な乾燥、又は脱水をさらに含み得る。より具体的には、最終的な「乾燥」組織由来多孔質マトリックスは、組織由来多孔質マトリックスの総重量に基づいて、約20wt%未満の水/水分、例えば、約15wt%未満、又は約10wt%未満、又は約8wt%未満、又は約6wt%未満、又は約5wt%未満の水/水分を含有する。一部の実施形態では、本方法は、乾燥/脱水を含まず、組織由来多孔質マトリックスは、パッケージング、貯蔵及び使用を通して、水和状態を維持し、そのため、それらを使用時に再水和する必要がない。部分的に乾燥した、又は非乾燥の組織由来多孔質マトリックスは、組織由来多孔質マトリックスの総重量に基づいて、約20wt%超の水/水分、例えば、約25wt%超、又は約30wt%超、又は約35wt%超の水/水分を含有する。
【0074】
組織由来多孔質マトリックスは、架橋してもよく、一部の実施形態では、こうした架橋マトリックスは、組織由来多孔質マトリックスの総重量に基づいて、約20wt%超の水/水分を含有する。架橋組織由来多孔質マトリックスは、他の実施形態では、組織由来多孔質マトリックスの総重量に基づいて、約20wt%未満の水/水分、例えば、約15wt%未満、又は約10wt%未満、又は約8wt%未満、又は約6wt%未満、又は約5wt%未満の水/水分を含有する最終「乾燥」製品として提供され得る。
【0075】
制限されるものではないが、水飽和組織由来多孔質マトリックスをその本来の非圧縮厚さの少なくとも50%まで圧縮した場合、約2キロパスカル(kPa)~約20kPaの範囲の圧縮力撓み(CFD)を有する組織由来多孔質マトリックスが、医療従事者(例えば、医師、外科医、看護師、医療アシスタントなど)に最も知られ、しかも有用であると考えられる。例えば、多孔質マトリックスを調製するために使用される回収組織が真皮である場合、約2~約10kPaのCFDが典型的に許容されるが、回収組織が胎盤組織である場合には、恐らく最大約20kPaのCFDが許容されるであろう。
【0076】
創傷治癒を促進するために使用する場合、創傷部位に配置して、約-50mmHg~約-200mmHgの範囲の減圧に付すとき、上に述べた利益のいくつかを最大にするために、組織由来多孔質マトリックスは、その初期質量及び多孔質構造の少なくとも25%を最低でも約96時間にわたって維持する必要があると考えられる。
【0077】
バイオスポンジの材料は、限定されないが、脂肪、真皮、胎盤組織、筋膜、骨、軟骨、筋肉又は脂肪/筋膜若しくは脂肪/真皮/筋膜の複合材料を含むタイプの脱細胞組織、又は異種供給源から得られる、化学的に可溶化され、機械的に縮小された、又は完全な(intact)細胞外マトリックス(ECM)に由来するものであり得る。脱細胞は、限定はしないが、以下の技術:強酸性溶液、強塩基性溶液、高張溶液、低張溶液、アルコール、洗剤、並びに圧力及び周期的凍結解凍などの物理的方法のうちの1つ又はそれらの組合せを用いて達成することができる。
【0078】
こうした材料はまた、微生物/ウイルス負荷低減(例えば、滅菌)ステップに付してもよく、このステップは、限定はしないが、以下の技術:化学的滅菌剤、酸化エチレンとの接触、γ線照射、電子ビーム照射、超臨界二酸化炭素との接触、熱への曝露、強酸性溶液との接触、又は強塩基性溶液との接触のうちの1つ又はそれらの組合せを用いて達成することができる。例えば、限定はしないが、1つ又は複数の滅菌ステップは、本明細書に記載の方法ステップのいずれかの前又は後に実施してよいが、実際的である限り多くのそうしたステップの後に、例えば、限定はしないが、他の全ての処理ステップが完了した後に、実施した場合に最も有効であると予想される。一部の実施形態では、化学的滅菌剤を使用せず、組織由来多孔質マトリックスに対する電子ビーム、γ線照射、又は熱のうち1つ若しくは複数の適用のみによる。一部の実施形態では、化学的滅菌剤と他の技術の両方を適用する。
【0079】
組織由来多孔質マトリックスを作製する方法は、任意選択で、現在又は将来当業者が周知の孔形成技術の1つ若しくはそれらの組合せにより、マトリックス中に複数の孔(即ち、多孔質構造)を形成するか、又は既存の複数の孔を改変するステップを含み得る。例えば、限定はしないが、以下の技術:凍結(制御若しくは非制御)、様々な比で水溶液との混合を含み、又は含まずに、開放モールド内又は取外し可能な格子様構造周囲での凍結-乾燥(即ち、凍結乾燥)、ポロゲン浸出、ガスフォーミング、3D印刷、エレクトロスプレー、及び取外し可能な格子様構造周囲での空気乾燥のうちの1つ又はそれらの組合せを用いて、組織由来多孔質マトリックス中に孔を形成又は改変することができる。
【0080】
一部の実施形態では、バイオスポンジの安定性を維持し、創傷部位に適用された後のバイオスポンジの再吸収速度を制御するために、限定されないが、熱架橋、以下に挙げる様々な架橋剤を用いる溶液若しくは蒸気架橋法、脱水熱(真空下での熱処理)架橋、リボフラビン若しくはアスコルビン酸を用いる若しくは用いない紫外線(UV)照射、電子ビーム照射、γ線照射などの多様な光架橋法、グルタルアルデヒド(GA)への曝露、アミノ酸リシンの存在下若しくは非存在下で、N-ヒドロキシスルホスクシンイミド(NHS)含有若しくは非含有1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド(EDC)への曝露、ゲニピン又は他の天然に存在する架橋剤への曝露、主にプロアントシアニジン(PA)から成るブドウ種子エキスへの曝露、ヒドラジン又はジフェニルホスホリルアジド(DPPA)などのアシルアジドへの曝露、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDIC)への曝露を含む、当業者には周知の手段により、架橋を実施することができる。
【0081】
一部の実施形態では、架橋は、均一ではなく、多孔質構造は、構造断面を通して架橋度の勾配が得られ、これによって、コラーゲンの様々な度合いの安定性及び再吸収が達成されるように、架橋され得る。
【0082】
一部の実施形態では、バイオスポンジは、化学的/物理的に結合された様々な多孔度のECMスポンジの2層以上から構成される。
【0083】
一部の実施形態では、バイオスポンジは、直径約0.5~約2.0ミリメートル(mm)、例えば、限定はしないが、約0.5~約1.5mmの横チャネルであり、スポンジの表面全体に均一に分散したマクロ孔を有してもよく、これは、架橋の前後に導入することができる。
【実施例】
【0084】
実施例
以下の説明、フローチャート及び表は、ヒト胎盤及びヒト真皮を含む、特定の回収組織型から組織由来多孔質マトリックスを作製するための方法の例示的な実施形態を提供する。
【0085】
特性決定試験方法
以下の記載事項は、以下に各実施形態(即ち、胎盤及び真皮)のバイオスポンジ試験マトリックス表に記載される特性決定データ及び情報を付与するために使用される試験方法の各々についての説明を提供する。
【0086】
圧縮撓み力試験(ASTM D3574に基づく)
1.スポンジの高さを測定する。
2.スポンジの長さ及び幅、又は直径を測定する。
3.スポンジが完全に湿潤及び飽和して、余剰液がスポンジから滲み出るまで、模擬慢性創傷液(sCWF)[pH8~8.5に滴定した50%TrisHCl+50%FBS、2%w/vペプトン+40mg/Lエラスターゼ]をゆっくりと添加する。
4.飽和スポンジを試験台に配置する。
5.事前の測定値に基づいてスポンジの高さの50%を計算する。
6.平坦な試験板を備えるフォースゲージを用いて、試験台と試験プレートとの間の間隔が、算出された50%高さと等しくなるまでプレートを下方に移動させて、スポンジをその初期高さの50%まで圧縮する。
7.試験中、フォースゲージにより記録されるピーク力(N)を記録する。
8.スポンジの頂面の表面積でピーク力を割り、公知の変換値によりN/mm2の単位からkPaの単位に変換する。
【0087】
一軸圧縮試験
1.サンプルを1.5×1.5×2cmの均一サイズに切断した。
2.サンプルをPBS中で1分間再水和した。
3.試験フレームに対して0.1mm/秒のひずみ速度(ElectroForce 5500, TA Instruments)で、60%ひずみ(12mm)までの圧縮ランプ試験を実施した。
4.荷重を横断面で割ったものとして、材料応力(σ)を計算した。
5.高さの変化を初期高さで割ったものとして、材料ひずみ(ε)を計算した。
6.応力-ひずみ曲線の上部領域の傾きから弾性圧縮率(E)を計算した。
7.60%ひずみまでの応力-ひずみ曲線下の面積としてレジリエンスを計算した。
【0088】
圧縮応力緩和試験
1.サンプルを1.5×1.5×2cmの均一サイズに切断した。
2.サンプルをPBS中で1分間再水和した。
3.一般的な陰圧装置を使用中に適用される荷重をシミュレートするために、125mmHgの共通設定をサンプルの形状を考慮して、3.6Nの荷重に変換した。
4.一軸圧縮試験からのデータを使用して、3.6Nを、各サンプルに適用されるべきひずみ(ε’)に変換した。
5.この試験フレームを用いて、サンプルに、4mm/秒でε’まで変位ランプを適用した。
6.サンプルをこのひずみで180秒保持した後、4mm/秒で負荷軽減した。
7.サンプルを一定時間無荷重で完全に緩和させた後、ひずみランプを適用して、もう1度反復するために、ステップ5及び6に放出した。
8.得られたデータを用いて、等式:σ(t)=Ae-t/τ+Bに従い、且つ計数及び時定数(τ)を実験データに当てはめて、サンプルの時間依存性挙動をモデル化した。
【0089】
レオロジー試験
1.サンプルを1.5×1.5×2cmの均一サイズに切断した。
2.サンプルをPBS又はBSA中で1分間再水和した。
3.レオメータ(Anton Paar MCR 301)を用いて、サンプルのせん断特性を測定した。
4.25mm径の平行プレート形状を用いて、8.5mmの測定高さでせん断を適用した。
5.一定の角周波数(1rad/s及び10rad/sで0.1%~100%ひずみ)で各サンプルに振動振幅スイープを実施して、せん断応力(σ)をひずみ(ε)の関数として測定した。
6.このデータと等式:σ=G×εを用いて、剛性率(G)を計算した。
【0090】
分解度試験
1.1.5×1.5×2cmのサンプルをPBS又は1g/dLアルブミン(文献に見いだされる創傷浸出液の一般的濃度)の濃度でBSAを含有するPBS中に再水和した。
2.各サンプルを個別の50mL円錐チューブ中に入れ、15mLの溶液を各々に添加した。
3.サンプルを37℃の静的インキュベータ内で7又は14日間保存した。
4.上に詳述したように、サンプルを一軸圧縮及びレオロジーについて試験した。
【0091】
流体の流れ試験
1.サンプルを28mm直径に切断して、内径が26.72mmの60mLシリンジ内にしっかりと固定した。
2.サンプルの縁に瞬間接着剤を塗り、各々シリンジの台に配置した。
3.Dwyer圧力計とPBSの入ったビーカとの間の三方活栓スプリットにつながるチュービングを備えるシリンジポンプにシリンジを配置した。
4.シリンジポンプを用いて、サンプルを通過する流体を抜き取るための流量を設定した。
5.30、40、50、60、70mL/分の流量を設定し、一旦安定化したら、各速度で圧力を記録した。
6.サンプル抵抗を、この圧力及び流量データの最良適合直線の傾き(抵抗=圧力の変化/流量の変化)として計算した。
【0092】
水和試験
1.サンプルを1.5×1.5×2cmの均一サイズに切断した。
2.各サンプルについて乾燥質量を記録した(Md)。
3.15mLのPBSを含む個別の50mL円錐チューブ中に導入し、37℃で24時間保持することにより、サンプルを水和した。
4.サンプルを円錐チューブから除去し、水和質量を記録した(Mw)。
5.水和比は、質量変化パーセンテージ=(Mw-Md)/Md×100として計算した。
【0093】
流体流通過試験(模擬NPWTシステム)
1.模擬NPWTシステムのセットアップ:
a.試験が短時間であるため、任意選択でエラスターゼを含有せずに、sCWFを調製する。
b.吸込み/取出し/圧力測定のためのポートを備える再封可能なパウチを含む試験チャンバを調製する(
図3参照)。
c.真空ポンプをアスピレータフラスコの側面ポートに接続する。吸着盤/チュービングを、密封のためのストッパを備えるアスピレータフラスコの上部ポートに接続する(
図4参照)。
d.吸着盤を出口ポートに配置して、ドレープで密封する。
e.真空計を圧力測定ポートに接続する。
f.バルブを用いて、チュービングを入口ポートに接続する。
g.ポンプをオンにし、ポンプゲージを用いて、真空を所望のレベル(-50mmHgゲージ圧)に調節し、システム内に漏出がないことを確認した後、オフにする。
h.試験チャンバを開き、出口ポートと測定ポートの間に、事前に湿潤させたスポンジを配置する。
i.試験チャンバを再封する。
2.吸込み弁を閉じて、真空をオンにし、パウチが真空下で完全にしぼむようにする。
3.200mLのsCWFを含有する容器中に吸込みチュービングを配置した後、吸込み弁を開く。
a.sCWFが、吸込みチュービング中に流れない場合は、液体が流れ始めるまでポンプで真空レベルを調節する。
4.模擬NPWTシステムから200mLのsCWFを抜き取るのに必要な時間を記録する。
a.200mL体積及び時間を用いて、平均体積/分の流量を計算する。
5.任意選択で、流体がシステムから抜き取られた後、アスピレータフラスコ内に収集されたsCWFの量を計測する。
【0094】
陰圧の送達(模擬NPWTシステム)
1.スポンジが挿入されているが、吸込み口はまだ閉じている流体流通過試験中に、計器により測定された真空を記録する。
2.スポンジが挿入され、且つ吸込み口が開いている流体流通過試験中に、計器により測定された真空を記録する。
【0095】
耐久性-定性(切断)
1.外科用ハサミを用いて、乾燥スポンジを切断し、切断又はひび割れがないかを観察する。
2.外科用ハサミを用いて、湿潤スポンジを切断し、切断又はひび割れがないかを観察する。
【0096】
耐久性-定性(高真空)
1.流体流通過試験が終了した後、ポンプの真空レベルを200mmHgまで増加し、より多くのsCWFを管路から抜き取れるようにする。
2.1分後、ポンプをオフにし、スポンジを取り出す。
3.組織粒子の存在について、アスピレータフラスコ中に収集された流体を目視検査する。
4.切断又はひび割れについてスポンジを目視検査する。
【0097】
再吸収-模擬慢性創傷液酵素分解
1.sCWFで飽和したスポンジを小さな密封可能容器に入れて、慢性創傷液酵素分解に曝露されたスポンジをシミュレートする。
2.最悪の場合には、追加のsCWFを添加して、スポンジを完全に浸す。
3.容器を密封し、37℃に設定した水浴中に配置する。
4.水浴中に飽和及び/又は浸漬スポンジを5日間保持する。
5.水浴から容器を取り出す。
6.容器を開けて、スポンジを取り出す。
7.組織粒子の存在について、容器内に残る流体を目視検査する。
8.流体流通過試験方法に従って飽和及び/又は浸漬スポンジを試験する。
【0098】
孔径-走査電子顕微鏡検査(SEM)
1.スポンジからサンプルを切断して、鉛直方向及び水平方向の断面を作製する。
2.SEM試料ピンスタブ上に両面カーボンテープを貼る。
3.スタブの露出したカーボンテープの上に各サンプルを載せて、サンプルを十分に接着接触させる。
4.スパッタコータ[Leica EM ACE600 Sputter Coater]を使用し、任意選択で、試料全体の被覆を確実にするために、0~45°の傾斜を含むスパッタリングシーケンスを用いて、各サンプルを約5nmのイリジウム薄膜で被覆する。
5.走査電子顕微鏡[XL30 FEG-SEM]を用いて、試料をイメージングする。
6.ImageJソフトウェアを用いて、解析する:
a.スケールを設定
b.自動閾値を適用
c.粒子を測定(500um2以上)
d.要約(フェレット平均)
【0099】
ポロシティ(液体置換)
1.50mLの無水エタノール(V1)を広口100mLメスシリンダーに添加し、シリンダーがスポンジサンプルを収容するのに十分幅広いことを確認する。
2.フォーム試験サンプルをメスシリンダー中に導入することにより、それをエタノールに浸漬する。
3.メスシリンダー内に真空を形成して、スポンジ中の気泡を取り出し、内部細孔の完全な湿潤を確実にする。
4.浸漬したサンプルのエタノールの体積を計測する(V2)。
5.サンプルからの液体の排出を回避するために、サンプルを圧縮することなく、スポンジサンプルを注意深く取り出す。
6.メスシリンダー中に残ったエタノールの体積を計測する(V3)。
7.式(V1-V3)/(V2-V3)によりサンプルのポロシティを計算する。
【0100】
マトリックス組成-生物学的要因
1.スポンジからサンプルを切断する。
2.スポンジサンプルを第三者の組織学研究所に送り、埋込み、切断の後、組織学又は免疫組織化学(IHC)染色:
a.H&E染色
b.サフラニンO染色によるグリコサミノグリカン(GAG)
c.IHCによるコラーゲンIII
d.IHCによるコラーゲンIV
e.IHCによるヒアルロン酸(HA)
f.IHCによるPDGF-bb
g.IHCによるVEGF
を実施する。
3.陽性及び陰性対照スライドと比較して、陽性染色の存在について、スライドを目視評価する。
【0101】
乾燥時のUSP<731>減量により決定される残留水分
1.1~2グラムのスポンジを分析のために送った。
2.オーブンを105℃±2℃に予熱する。
3.サンプル皿をオーブン内に30分間配置し、乾燥機内に配置して冷却させる。
4.皿を秤に載せて、計量する。風袋差引きする。
5.サンプルを皿に載せ、計量する。
6.サンプルを載せた皿を加熱オーブン内に24時間配置する。
7.24時間後、皿を乾燥機内に配置して冷却させる。
8.秤に載せて、計量する。
9.残留水分(%)を(初期重量-乾燥サンプル重量)/初期重量×100として計算する。
【0102】
動物モデルにおける前臨床有効性
動物モデルにおけるバイオスポンジの有効性評価を目的とする前臨床試験を実施するが、以下にそれについて説明した後、試験評価パラメータ及び規模の一覧を示す。この試験は、創傷床肉芽形成及び創傷床へのバイオスポンジの組織取込みを評価するために、ブタモデルで実施する。対照としてのNPWTについて現在入手可能な合成フォームと治癒を比較する。この試験の結果は、合成フォーム対照に対し、バイオスポンジ試験群において、より速く及び/又はより全体的な肉芽組織形成を示すことが予想される。
【0103】
プロトコル設計概要:
・1匹のブタをこの試験に使用し、試験は、合計7日間実施される。
・実験手順
〇メスの刃と鉗子を用いて、16の全層、3cm×3cmの正方形創傷を各ブタに形成する;ブタの両側に8つずつ。
〇創傷は、この試験中感染させないようにする(処置前後の抗生物質の使用が可能)
〇創傷包帯:
■A列:対照-合成NPWTフォーム包帯(KCI GranuFoam)
・包帯交換毎にフォーム材料及びドレープ/吸引パッドを取り替える
■B列:処置1-バイオスポンジ製剤#1
・包帯交換毎にドレープ/吸引パッドのみを取り替える
■C列:処置2-バイオスポンジ製剤#2
・包帯交換毎にドレープ/吸引パッドのみを取り替える
■D列:処置3-合成NPWTフォーム包帯と共に、現在入手可能なメッシュ無細胞真皮マトリックス
・包帯交換毎にドレープ/吸引パッドのみを取り替える
■包帯適用毎のN=4データ点
〇フォーム包帯に対して適切なポートを適用し、市販のNPWT装置を接続する。
■装置をオンにし、試験全体を通して-125mmHgの連続設定で作動する。
〇7日目にブタを犠牲にする
【0104】
・評価パラメータは、以下を含む:
〇創傷サイズ及び深さのデジタルノギス測定:D0、D2、D4、及びD7
〇D0、D2、D4、及びD7についてデジタル写真を撮影
〇組織学
■各創傷を、創傷の周囲及び創傷までの深さの1cmの周囲正常組織と一緒に切除し、10%中性干渉ホルマリン中で固定する。
■サンプルをトリミング、埋込み、切断、染色、及び組織病理学/組織形態学評価のために組織病理学研究所に送る。
〇組織病理学:
■H&E:
・有害な組織反応のスコア評点(以下の規程)
・コラーゲン成熟スコア評点(規程により半定量的)
〇組織形態学:
■H&E:
・肉芽組織厚さ(創傷床にわたって均一に間隔をあけた3地点で測定)
・包帯材料への肉芽組織の内方成長(適用可能な場合)
■CD31:
・対象領域(ROI)内の血管密度定量
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
実施例1:回収されたヒト胎盤組織から調製される胎盤バイオスポンジ
図5に示す一般的方法に従い、以下に記載され、実施される特定のパラメータを用いて、ヒト胎盤組織から胎盤バイオスポンジを調製した。
【0109】
脱細胞までの初期処理
初めに、胎盤ディスクと、任意選択で、臍帯及び羊膜/絨毛膜を水で洗浄した。次に、組織を細分し、高張溶液とブレンドすることにより、組織/高張溶液混合物を作製した。混合物を攪拌して、組織成分を脱細胞した。続いて、混合物を遠心分離してから、水に再懸濁し、攪拌することにより、高張溶液を除去した。
【0110】
1.ディスク、臍帯及び膜をさらに含む胎盤を取得した。
2.組織を浸漬し、室温の水中で揉むことにより、余剰の血液を排出し、血餅を除去した。
3.次に、メスを用いて、組織を小片に切断した。
4.余剰液体の移動を回避しながら、強力ブレンダ[Waring]中で組織片を1Lの1M NaCl溶液と混合した。
5.組織混合物を高速で約1分、2回ブレンドした。
6.次に、組織混合物を2Lフラスコに移し、オービタルシェーカー上で、90~150rpmにて約2時間攪拌した。
7.組織混合物を遠心分離ボトル中に移し、4600RPMで10分遠心分離した後、上清を流し捨てた。
8.計1Lの水を残りの組織ペレットと混合してから、2Lフラスコに移し、オービタルシェーカー上で90rpmにて約5分攪拌した。
9.組織混合物を遠心分離ボトルに移し、4600RPMで5分遠心分離した後、上清を流し捨てた。
10.計1Lの水を残りの組織ペレットと混合してから、2Lフラスコに移し、オービタルシェーカー上で90rpmにて約5分攪拌した。
11.組織混合物を遠心分離ボトルに移し、遠心分離[4600RPMで10分]した後、上清を流し捨てた。
12.組織ペレットを回収し、殺菌の前に-20℃で凍結した。
【0111】
殺菌(即ち、微生物負荷の低減):
脱細胞組織を過酢酸ベースの殺菌溶液とブレンドした後、攪拌することにより、組織を殺菌した。組織混合物を一連の遠心分離ステップに付して、各ステップ後に水中で攪拌することにより、殺菌溶液を除去した。残りの組織を、考えられる様々な比で水と混合して、組織混合物を作製し、次に、これを凍結乾燥の前に凍結した。
【0112】
1.組織を1Lの過酢酸ベースの殺菌溶液と強力ブレンダ(Waring)中で混合した。
2.組織混合物を高速で約1分ブレンドした。
3.次に、組織混合物を2Lフラスコに移し、オービタルシェーカー上で、90rpmにて約2時間攪拌した。
4.組織混合物を遠心分離ボトルに移し、4600RPMで10分遠心分離した後、上清を流し、処分した。
5.計1Lの水を残りの組織ペレットと強力ブレンダ中で混合し、高速で約1分ブレンドした。
6.組織を複数(8)回のすすぎに付しながら、PAA残留物を除去するのに十分な攪拌を実施した。7回目のすすぎ後に、組織を高速で1分のブレンドステップに付してから、最後のすすぎを行った。
7.組織混合物を遠心分離ボトル中に移し、4600RPMで10分遠心分離した後、上清を流し捨てた。
8.組織ペレットを回収し、攪拌して、より均質な混合物を作製した後、風袋重量を計量済の容器で計量した。これをベースライン「100%組織混合物」とみなした。
9.水を組織混合物と混合し、50%組織混合物を取得した。
10.次に、最終組織混合物を、凍結乾燥に好適な容器中に等分したが、これは、2つの6ウェルプレートと小さなアルミニウムカップから構成された。
【0113】
乾燥/凍結乾燥
組織混合物を凍結乾燥により乾燥させた:組織を凍結乾燥機に配置し、以下のチャートに記載する凍結乾燥サイクルを実施して、乾燥組織形態を取得した。
【0114】
【0115】
架橋:
化学架橋溶液を調製した(例えば、以下を参照)。溶液を乾燥組織形態に添加して、組織を架橋させた。架橋の後、溶液を除去し、組織を水ですすいで、残留架橋溶液を除去した。
【0116】
1.架橋溶液の調製
a.水中60mM 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(別名EDC)及び24mM n-ヒドロキシスクシンイミド(別名NHS)。
2.含有される凍結乾燥組織に、架橋溶液を、組織に直接注ぐことを避けながら、組織が完全に浸るまでゆっくりと添加した。まだ架橋していない構造の崩壊を回避するために、押し下げないようにして、溶液による組織の湿潤を確実にした。
3.架橋は、室温で60分間進行させた。
4.余剰の架橋溶液を除去し、余剰の水の入った容器中に組織を移し、15分間すすいだ。これを繰り返して、計4回水ですすいだ。
5.すすいだ組織は、スポンジとして、その形状と、液体を吸収するその能力を保持した。
【0117】
最終乾燥/凍結乾燥ステップ(任意選択のステップ):
パッケージング及び長期貯蔵に適した乾燥スポンジを取得するために、架橋スポンジを再度凍結乾燥した。
1.スポンジを好適な容器中に配置し、再度凍結乾燥した[前述の図に記載したものと同じ凍結乾燥サイクルを用いて]。
2.架橋及び凍結乾燥スポンジを適切にパッケージングした。
【0118】
胎盤バイオスポンジを生産する以上の実験の詳細を表1A及び1Bに示し、結果及び製品の特徴は、表1Bの「結果」の列に記録する。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
実施例2:回収されたヒト真皮組織から調製される真皮バイオスポンジ
図6に示す一般的方法に従い、以下に記載され、実施される特定のパラメータを用いて、ヒト真皮組織から真皮バイオスポンジを調製した。
【0126】
脱細胞までの初期処理
初めに、真皮網状層の深い層(深部真皮)を全層真皮から単離した。組織を手で小片に切断した後、高張溶液と一緒にナイフミル中でブレンドして、混合物を作製した。混合物を攪拌して、組織成分を脱細胞した。次に、混合物を再度ナイフミルでブレンドした後、遠心分離した。ペレットを界面活性剤溶液中に再懸濁させ、攪拌して、組織成分をさらに脱細胞した。続いて、水中での一連の攪拌に組織を付すことにより、界面活性剤溶液を除去した。
【0127】
1.深部真皮を全層真皮から単離した。
2.深部真皮をさらなる処理まで-70℃で凍結した。
3.深部真皮を室温で解凍した。
4.ハサミ又は回転ブレードカッタを用いて、深部真皮を小片に切断した。
5.切断した組織を、1:4組織:溶液の重量比で1M NaClと一緒にナイフミル(GM200)の容器に添加した。
6.組織混合物を7000rpmで10秒、次に10000rpmで20秒、次いで10000rpmで20秒ブレンドした。
7.組織混合物を2Lフラスコに移し、オービタルシェーカー上で150rpmにて12~24時間攪拌した。
8.組織混合物をナイフミルの容器に直接注いだ。
9.前述したパラメータを用いて、組織混合物を再度ブレンドした。
10.組織混合物を遠心分離した。
11.ペレット化した組織を0.1%Triton X溶液中に再懸濁させた。
12.組織混合物を2Lフラスコに移し、オービタルシェーカー上で150rpmにて24~28時間攪拌した。
13.遠心分離機又は篩を用いて、0.1%Triton X溶液から組織を分離した。
14.すすぎのための水に組織を添加し、オービタルシェーカー上で150rpmにて5分攪拌した。
15.遠心分離機又は篩を用いて、組織を水から分離した。
16.これを繰り返して、計8回水ですすいだ。
17.この組織をさらなる処理まで-70℃(又は-20℃若しくは-80℃)で凍結した。
【0128】
殺菌(即ち、微生物負荷の低減):
脱細胞組織を解凍し、過酢酸ベースの殺菌溶液と一緒に攪拌して、組織を殺菌した。次に、組織混合物をナイフミルでブレンドした後、1×DPBS溶液中で4回の中和すすぎを行うが、各回のすすぎ後に遠心分離を行う。残った組織を、考えられる様々な比で水と混合して組織混合物を作製し、次に、これを、凍結乾燥前にモールドに移す。
【0129】
11.組織を室温で解凍した。
12.組織を、1Lの過酢酸ベースの殺菌溶液と共に2Lフラスコに添加した。
13.組織混合物をオービタルシェーカー上で150rpmにて2~4時間攪拌した。
14.組織混合物をナイフミルの容器に直接添加し、前述したパラメータを用いて、ブレンドした。
15.組織混合物を遠心分離して、殺菌溶液を除去し、ペレットを生成した。
16.ペレットを2Lフラスコ内の1×DPBSに再懸濁させ、オービタルシェーカー上で150rpmにて5~20分攪拌した。
17.組織混合物を遠心分離して、1×DPBSを除去した。
18.これを繰り返して、計4回1×DPBSで中和すすぎを行った。
19.25:75の組織:水の重量比になるまで、組織と水を手で混合した。
20.組織混合物をモールドに移し、所望の形状を形成した。
【0130】
乾燥/凍結乾燥:
組織混合物を凍結乾燥により乾燥させた:モールド中の組織を凍結乾燥機内に配置し、以下の凍結乾燥サイクルを実施して、乾燥組織形態(スポンジ)を取得した。
【0131】
1.使用する凍結乾燥パラメータは以下の通りであった:
a.1℃/分で-40℃までのランプ
b.-5℃以下で48時間超の一次乾燥
c.25℃で少なくとも8時間の二次乾燥
【0132】
架橋及び最終乾燥/凍結乾燥:
架橋及び最終凍結乾燥は、実施例1の架橋セクションに記載した通りに実施した。
【0133】
真皮バイオスポンジを生産する以上の実験の詳細を表2A及び2Bに示し、結果及び製品の特徴は、表2Bの「結果」の列に記録する。
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
実施例3:真皮バイオスポンジ特性決定
別の真皮バイオスポンジを
図6に示す一般的方法に従ってヒト真皮組織から調製した。別の真皮バイオスポンジを生産するこの実験の詳細は、表3A及び3Bに示し、結果及び製品の特徴は、表3Bの「結果」の列に記録する。
【0139】
具体的には、この実施例3の場合、組織由来多孔質マトリックスは、以下を用いて真皮組織から生産されると認識される:
-実施例2の1:4ではなく、1:8の組織:NaCl溶液(重量)比;
-実施例2の25:75ではなく、30:70の組織:水希釈度;
-実施例2の60mM EDC/24mM NHS中に30分ではなく、6mM EDC/2.4mM NHS架橋溶液中で2時間の安定化(架橋)。
【0140】
【0141】
【0142】
実施例4:回収されたヒト真皮組織から調製された真皮バイオスポンジ
以下に記載し、実施される特定のパラメータを用いて、
図7に示すより詳細な方法に従い、ヒト真皮組織から、さらに別の真皮バイオスポンジを調製した。
【0143】
切断及び脱細胞
まず、真皮網状層の深い層(深部真皮)を全層真皮から単離する。次に、任意選択で、深部真皮をさらなる処理まで-70℃で凍結してよい。
【0144】
回転ブレードカッタを用いて、深部真皮を、約2×2cm以下のサイズの小片に切断する。切断した組織を、ナイフミル(GM300, Retsch)の容器中の1M NaCl溶液に添加する。組織と溶液を最初に2500rpmで20秒、次に4000rpmで2分、20秒間隔でブレンドする。ブレンドした組織混合物をフラスコに移し、シェーカー上で150rpmにて12~48時間にわたり1M NaCl中に浸漬する。浸漬の完了後、組織混合物をナイフミルに移し、最初に2500rpmで20秒、次に4000rpmで2分、20秒間隔でブレンドする。ブレンドの後、組織混合物を4600rpmで5分遠心分離した後、上清を流して捨てる。ペレット組織を0.1%Triton溶液中に添加し、150rpmで24~48時間浸漬する。浸漬の後、90~110μm篩を用いて、組織を溶液から分離する。次に、150rpmのシェーカー上で、組織を連続した8回5分ずつの水によるすすぎに付す。毎回のすすぎ後、90~110μm篩を用いて、組織を溶液から分離する。すすぎの完了後、組織をさらなる処理まで-70℃で凍結する。
【0145】
殺菌及び凍結乾燥の開始
凍結した組織を解凍し、90~110μm篩を用いて、余剰の水を組織から分離する。過酢酸、エタノール、及びポリエチレングリコールを含有する溶液に組織を添加し、150rpmのシェーカー上で2~4時間浸漬する。浸漬の完了後、組織混合物を、酸を中和するための10×DPBSと一緒にナイフミルに移す。組織混合物を4000rpmで2分、20秒間隔でブレンドする。ブレンド後、組織混合物を4600rpmで5分遠心分離した後、上清を流して捨てる。次に、150rpmのシェーカー上で、組織を1×DPBSによる3回5分ずつのすすぎに付し、毎回のすすぎ後、4600rpmで5分の遠心分離ステップにより、組織をすすぎ液から分離する。すすぎの完了後、組織を水で希釈して、組織スラリーを作製する(即ち、30:70の組織:水、w:w)。組織スラリーをモールドに移し、これを凍結乾燥機に配置する。適切な凍結乾燥サイクルを実施して、乾燥した組織形態を取得する。凍結乾燥を実施する技術は、特に限定されず、現在又は将来当業者に周知の任意の技術であってよい。
【0146】
安定化及び二次凍結乾燥の開始
実施例1の架橋セクションに記載した通りに安定化を実施する。架橋が完了したら、組織を、水の入ったそのモールドに戻し、凍結乾燥機に配置する。以前と同じ製法を実施して、乾燥した最終組織形態を取得する。乾燥組織は、長期貯蔵に好適なパッケージングで保存する。
【0147】
上に記載した本発明の実施形態は、あくまで例示的であること、並びに当業者は、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、変更及び改良を行い得ることは理解されよう。こうした変更及び改良は全て、本発明の範囲に含まれることが意図される。