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特許7551668触媒管組立体を管状反応器に取り込む方法、及び、管状反応器のための触媒管組立体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】触媒管組立体を管状反応器に取り込む方法、及び、管状反応器のための触媒管組立体
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20240909BHJP
   B01J 19/24 20060101ALI20240909BHJP
   B01J 8/06 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
C01B3/38
B01J19/24 A
B01J8/06 301
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021578143
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2020068035
(87)【国際公開番号】W WO2020260589
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】19183237.7
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522294671
【氏名又は名称】テクニップ エナジーズ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】マキック,ズラトコ
(72)【発明者】
【氏名】ワルスプルガー,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ファラセ,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンゾースト,フランシスカス
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/077969(WO,A1)
【文献】特表2019-532904(JP,A)
【文献】特開2003-080054(JP,A)
【文献】特開2001-192201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00 - 3/58
B01J 19/24
B01J 8/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒管組立体、ここで前記触媒管組立体は内管を備えたセンタリング組立体、管状境界部及び環状触媒構造体を備えている、を管状反応器に取り込む方法であって、
- 入口端部及び入口端部の反対側の出口端部を有する反応外管と内側に突出する要素とを備えた前記管状反応器を準備する工程、
- 閉じた端部及び開いた端部を有する前記管状境界部を準備する工程、
- 入口端部と少なくとも1つの密閉部材を含む出口端部とを有する前記内管を備えたセンタリング組立体を準備する工程、
前記環状触媒構造体を準備する工程、
- 前記環状触媒構造体を前記管状境界部の周りに取り付ける工程、
- 前記少なくとも1つの密閉部材が前記内側に突出する要素と係合するまで、前記センタリング組立体を前記反応外管に実質的に同軸に挿入する工程、並びに
- 前記管状境界部を前記センタリング組立体に実質的に同軸に取り付ける工程
を有するとともに、
前記内側に突出する要素は触媒グリッドである、方法。
【請求項2】
前記管状境界部を前記センタリング組立体に取り付ける前に、前記センタリング組立体を前記反応外管に挿入する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記センタリング組立体を前記反応外管に挿入する前に、前記管状境界部を前記センタリング組立体に取り付ける、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記管状境界部を前記センタリング組立体に取り付ける前に、前記環状触媒構造体を前記管状境界部の周りに取り付ける、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記環状触媒構造体を前記管状境界部の周りに取り付ける前に、前記管状境界部を前記センタリング組立体に取り付ける、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記環状触媒構造体を径方向に圧縮するリング状要素を前記環状触媒構造体の周りに取り付ける、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記環状触媒構造体が取り付けられている前記管状境界部を前記反応外管に挿入した後、前記リング状要素を外す又は破壊する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
触媒管組立体を管状反応器から取り出す方法であって、
- 請求項1~7のいずれか1つに記載の方法に従って触媒管組立体が取り込まれた管状反応器を準備する工程、
- 前記管状反応器から前記管状境界部を外す工程、及び
- 前記管状反応器から前記センタリング組立体を外す工
を有する、方法。
【請求項9】
前記管状境界部を外す工程により、前記センタリング組立体を外す、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
状反応器に取り込むための触媒管組立体、ここで前記触媒管組立体は内管を備えたセンタリング組立体、管状境界部及び環状触媒構造体を備えている、であって、前記管状反応器が
- 入口端部及び入口端部の反対側の出口端部と内側に突出する要素とを有する反応外管を備えており、前記触媒管組立体が
- 入口端部及び出口端部を有する前記内管を含むセンタリング組立体と、
- 閉じた端部及び開いた端部を有する前記管状境界部と
を備えており、
前記触媒管組立体が前記反応外管と前記環状触媒構造体を含むために配置される前記管状境界部との間に第1の環状チャネルを有して、前記管状境界部と前記内管との間に第2の環状チャネルを有するように、前記管状境界部は、前記反応外管内に実質的に同軸に且つ前記内管の周りに実質的に同軸に延びるように構成されており、
前記第2の環状チャネルは、前記管状境界部の開いた端部の近くで前記第1の環状チャネルと流体連結し、前記管状境界部の閉じた端部で前記内管と流体連結し、
前記内管の出口端部は、前記反応外管の内側に突出する要素と密閉して係合するように構成されている少なくとも1つの密閉部材を有しているとともに、
前記内側に突出する要素は触媒グリッドである、触媒管組立体。
【請求項11】
前記少なくとも1つの密閉部材は、円錐形状、リング状の形状又は円筒形状を有する、請求項10に記載の触媒管組立体。
【請求項12】
前記少なくとも1つの密閉部材の外径が、前記内側に突出する要素の近くの前記反応外管の内径より小さい、請求項10又は11に記載の触媒管組立体。
【請求項13】
前記内管は、前記内管の外側に取り付けられて前記内管及び前記管状境界部間の隙間を維持するように構成されたスペーサを有している、請求項10~12のいずれか1つに記載の触媒管組立体。
【請求項14】
前記管状境界部は前記少なくとも1つの密閉部材に固定して取り付けられている、請求項10~13のいずれか1つに記載の触媒管組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒管組立体を管状反応器、好ましくは多管式反応器、例えば水蒸気改質器に取り込む方法、及び管状反応器のための触媒管組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
多管式反応器で触媒プロセスを行うことが知られている。広く知られた例が、水蒸気改質の触媒プロセスである。
【0003】
水蒸気改質は、炭化水素供給原料(供給ガス)を、金属系触媒、典型的にはニッケルの存在下で(プロセスガスと称される)一酸化炭素及び水素ガスの混合物に変える触媒プロセスである。変換反応は強い吸熱性を示し、高温、典型的には少なくとも700 ℃で生じる必要がある。
【0004】
プロセスガスの触媒変換を工業炉又は燃焼加熱器の多管式反応器で行ってもよい。例えば、水蒸気改質を水蒸気改質器で行う。(水蒸気改質器などの)燃焼加熱器又は工業炉は、2つの主な部分、つまり炉(放射部)及び熱回収システム(対流部)を本質的に有している。放射部は、炉室と、炉室の天井に置かれてもよい燃焼器(頂部燃焼炉)、炉室の床に置かれてもよい燃焼器(底部燃焼炉)及び/又は炉室の側面に置かれてもよい燃焼器(側部燃焼炉)とを有している。燃焼器は、燃料の燃焼によってプロセスのために必要な熱を発生させる。放射部は、吸熱性触媒反応が生じるために触媒への十分な熱供給を可能にすべく、触媒が充填されている多数の管を更に有している。変換反応が生じる放射部の管は触媒管と称される。多数の触媒管が、所望の熱交換表面のために放射部に典型的に挿入される。対流部とも称される炉熱回収システムは、熱を回収するために多くの熱交換器を有している。放射部を出る高温の煙道ガスが、供給原料の予熱、水の加熱及び水蒸気の発生に典型的に使用されるこれらの熱交換器を通過する。
【0005】
触媒管の出口は、プロセスガスが触媒変換プロセス全体で最も高い温度、典型的には880 ℃を超えて最高950 ~980 ℃に達するゾーンである。従って、触媒管の触媒部分を出るプロセスガスは、価値のある高エネルギー熱源とみなされ得る。
【0006】
触媒管を出るプロセスガスは、改質反応のための熱源として更に使用されてもよい。このプロセスは、反応熱の一部を与えるために、プロセスガスが触媒ゾーンを出るときにプロセスガスが含む高価値の熱の一部を使用するので再生触媒変換又は復熱触媒変換と称されてもよい。復熱触媒変換では、熱交換が、触媒管の触媒ゾーンを出る高温のプロセスガスと触媒ゾーンの上流側部分で変換されるプロセスガスとの間で行われる。この方法は、(火室内の燃料及び廃ガスの燃焼による)外部の熱供給を減少させて火室効率を高めて、改質器の出口及び対流部での熱回収に必要とされる熱交換器のコストを下げるために有利に使用され得る。改質する際の復熱触媒変換のプロセスの一例が、例えば国際公開第2011/088982号パンフレットから知られている。この場合、このプロセスは復熱改質と称される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的な2つのタイプの水蒸気改質器は、触媒管の入口及び出口が炉室内で向いている方向に関して区別され得る。
【0008】
第1のタイプ(タイプ1)の水蒸気改質器では、触媒管のプロセスガス入口及びプロセスガス出口の両方が、炉の同一の側に設けられている。各触媒管は、1つの炉壁のみを通って延びるように炉室に挿入されている。ガスは、1つの炉室壁を通って炉室に入り、炉室を通って流れ、その後、同一の炉壁に戻り、再度、炉室を出る。一般に触媒管は、プロセスガスが炉室を通ってU字状の通路に流れるように構成されている。このタイプの水蒸気改質器の一例が、例えば欧州特許出願公開第2223739 号に記載されている。
【0009】
第2のタイプ(タイプ2)の水蒸気改質器では、触媒管の入口が炉室の一端部に設けられている一方、触媒管の出口が炉室の反対側の他端部に設けられている。タイプ2の改質器では、触媒管は、2つの対向する炉壁を通って延びるように炉室に挿入されている。一般に触媒管は、ガスが炉室を通って一端部から他端部に比較的直線の通路に流れるように細長い直線状の管として構成されている。このタイプの水蒸気改質器の一例が、例えば国際公開第2014/040815号パンフレットに記載されている。
【0010】
復熱改質の概念をタイプ1の水蒸気改質器に適用することが知られている。このために、特定の管が、(バヨネット管としても知られている)フィールド-チューブ反応器に基づき構成されている。この構成では、触媒管は、一方の外端部で閉じている外管と両方の外端部で開いている内管とから構成されており、内管は外管に同軸に受け入れられている。この構成は、例えば国際公開第95/11745 号パンフレット及び米国特許出願公開第2014/0196875 号明細書に記載されている。この構成は、反応器の環状配置が、触媒床を出る高温のプロセスガスと触媒床の上流側部分で変換されるプロセスガスとの熱交換を可能にするという管概念の管に基づいている。
【0011】
また、国際公開第2018/077969号パンフレットに開示されているように、復熱改質の概念を第2のタイプの水蒸気改質器に適用しようと試みられている。一構成では、触媒管組立体は、2つの同軸の環状チャネルが内管の周りに形成されるように、外管と、外管内に同軸に設けられる内管と、外管内であって内管の周りに同軸に配置される環状障壁とを備えることができる。プロセスガスが、第1の端部で外管と環状障壁との間の第1の環状チャネルに入って、第1の端部の反対側の第2の端部で環状障壁と内管との間の第2の環状チャネルに入ることができるように、外管の端部及び内管の端部が閉じられているため、プロセスガスは第1の環状チャネル内の流れに対して逆流で第2の環状チャネルを通って流れることができる。そのため、第1の端部ではプロセスガスは第2の環状チャネルから内管に入ることができ、第2の端部ではプロセスガスは管状反応器の内管を出ることができる。第1の環状チャネルは触媒材料を含むことができる。他の可能な構成が、更に国際公開第2018/077969号パンフレットに記載されている。
【0012】
第2のタイプの水蒸気改質器での復熱改質を可能にするこのような触媒管組立体の問題は、触媒材料を含む触媒管組立体を水蒸気改質器に取り込むという比較的困難な手順である。一方では、触媒管と反応外管との間のある程度の隙間が、これらの管構造の取り付けを容易にするために必要であるが、他方では、プロセスガスの最適な加熱を保証するために、様々な管とチャネルとの間のプロセスガスの漏れを最小限に抑える必要がある。漏れ率は必ずしもゼロである必要はないかもしれないが、触媒床の端部と触媒管の出口との間のガス緊密性が、復熱反応器の正常な機能を保証するために重要な面であるため、漏れ率を認識して制御する必要がある。
【0013】
本発明の目的は、前述した問題の一又は複数を解決又は緩和することである。特に、本発明は、組立体内での比較的信頼性の高い密閉を可能にしながら、触媒管組立体を取り込む、改善して簡略化された方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的のために、本発明の第1の態様によれば、請求項1の特徴によって特徴付けられる、触媒管組立体を管状反応器に取り込む方法を提供する。特に、この方法は、入口端部及び入口端部の反対側の出口端部を有する反応外管と内側に突出する要素とを備えた水蒸気改質器の管状反応器などの管状反応器を準備する工程、閉じた端部及び開いた端部を有する管状境界部を準備する工程、並びに、入口端部と、少なくとも1つの密閉部材を含む出口端部とを有する内管を備えたセンタリング組立体を準備する工程を有する。この方法は、触媒構造体を準備する工程、前記触媒構造体を前記管状境界部の周りに取り付ける工程、少なくとも1つの密閉部材が内側に突出する要素と係合するまで、前記センタリング組立体を入口端部から反応外管に実質的に同軸に挿入する工程、並びに前記管状境界部を前記センタリング組立体に実質的に同軸に取り付ける工程を更に有する。
【0015】
このようにして、触媒構造体を含む触媒管組立体を管状反応器に取り込むために、3つの取付工程しか必要ではなく、触媒の充填又は交換のための管状反応器の休止時間を著しく短縮することができる。加えて、内側に突出する要素と係合する少なくとも1つの密閉部材は、プロセスガスが第1の環状チャネルから直接管状反応器の出口端部に、つまり、第2の環状チャネル及び内管を通過することなく漏れることを最小限度に抑えることができ、好ましくは避けることができるので、内側に突出する要素と係合する少なくとも1つの密閉部材により、触媒管組立体を通るプロセスガスの正確な流れを可能にする確実な密閉が保証され得る。
【0016】
内側に突出する要素は、好ましくは反応外管の内側又は周囲に沿って設けられている。前記管状境界部の周りに取り付けられる触媒構造体は、環状触媒構造体、例えばリング状の触媒構造体である。環状触媒構造体は、取り付けられるとき、例えば図1図2及び図4に関連して示されて説明されているように、管状触媒構造体又は環状触媒構造体のブロックを形成すると理解されてもよい。環状触媒構造体を触媒管組立体に設ける利点は、触媒を反応器に正確に、例えば均一に充填することにより、特に反応器が水平に配置される場合に、ばらばらのペレットを細長くて狭い空間に充填する際に起こり得るプロセスガスの不均等な流れ分布などの問題を軽減することである。
【0017】
或いは又は加えて、触媒構造体は、環状構造体を共に形成するか又は環状構造体に予め形成される様々な部分、例えば共に維持されるハーフリング又は他の形状、又は触媒粒子、例えばペレットで構成されてもよく、第1の環状チャネルの内部形状に相当する環状触媒構造体を組立体として形成する。対照的に、例えばばらばらの粒子又はペレットをランダムに垂らす又は流すことにより、第1の環状チャネルを直接ペレットで充填することは、例えば利用可能な空間の制限及び/又は充填の均一性の点であまり好ましくないことが分かっており、充填の均一性は、ばらばらの粒子又はペレットをランダムに垂らして管を充填するときに比較的不十分であり、ひいては流れ抵抗の不均一な分布になる場合がある。この点に関して、触媒ペレットを管状反応器に充填するために使用することを開示している欧州特許出願公開第0994091 号明細書及び国際公開第2018/077969号パンフレットを参照することができる。
【0018】
管状境界部をセンタリング組立体に取り付ける前に、センタリング組立体を反応外管に好ましくは挿入してもよい。このため、反応外管内にセンタリング組立体を適切に配置して中心に置くことが可能になり得る。
【0019】
或いは、センタリング組立体を反応外管に挿入する前に、管状境界部をセンタリング組立体に取り付けてもよく、この場合、管状境界部をセンタリング組立体に、例えば溶接してもよく、両方を全体として反応外管に挿入してもよい。
【0020】
管状境界部をセンタリング組立体に取り付ける前に、環状(管状)触媒構造体を前記管状境界部の周りに好ましくは取り付けてもよい。このようにして、管状境界部及び管状触媒構造体は、反応外管の内側に既に存在するか又は依然として反応外管の外側に存在するセンタリング組立体に取り付けるために1つの組立体として共に扱われることができる。
【0021】
或いは、環状触媒構造体を管状境界部の周りに取り付ける前に、管状境界部をセンタリング組立体に取り付けてもよく、これは、例えば管状反応器が実質的に垂直な位置にある場合に有利になり得る。
【0022】
本明細書に開示されているように、つまり、少なくとも1つの密閉部材が内側に突出する要素と係合するまで、前記センタリング組立体を反応外管に実質的に同軸に挿入して、前記環状触媒構造体を前記管状境界部の周りに取り付けて、前記管状境界部を前記センタリング組立体に実質的に同軸に取り付ける方法を用いて、触媒管組立体を管状反応器に取り込むことにより、管状反応器内の流体の流れが、本質的に(少なくとも大部分が)軸方向(軸方向の流れ)であると理解されてもよい。従って、管状反応器は、例えば、一連の径方向により内側のチャネルで形成されたジグザグ状の通路に沿ってプロセスガスを導くように配置されてもよい。この点に関して、例えば、管状反応器を通してプロセスガスを軸方向に導く一連の径方向により内側のチャネルを含む反応器を開示している図1図3及び図5並びにその説明を参照することができる。
【0023】
例えば、中程度から高程度の発熱プロセスの条件下での反応器の動作中に、径方向流れ反応器の構成が発熱を有利に制限することが当業者に知られている。そのため、径方向流れ反応器の構成は、過熱及び/又は選択性若しくは触媒寿命の変更の可能性を低くする。対照的に、本願は、熱伝達の最大化の恩恵を受ける用途に特に適してもよい。例えば、水蒸気改質反応では、熱伝達は、反応を先に促進すべく著しく高く、又は可能な限り高いことが好ましい。これは、水蒸気改質触媒が典型的には厳しい温度条件に対してかなりの耐性を有することが知られているので、動作条件があまり制限されないので可能である。従って、本発明者らは、径方向流れ反応器が提供するような厳しい制御が必要ではないことが分かった。国際公開第2016/050520号パンフレットを参照すると、試薬が一連の主に径方向に向いた流路をたどるように、一連の充填された金属性容器を通して触媒が反応器に充填されるので、この反応器は中程度の発熱反応に主に適していると考えられている。
【0024】
更に、(大部分は)軸方向の流れ構成は、熱伝達を高めるように触媒環状境界部に対してガスフローを局所的に径方向に強いる構造配置によって補われてもよい。これは、流れを局所的に径方向にそらせるような手段を環状構造体に設けることにより達成され得る。適した手段は、環状構造体、好ましくは環状触媒構造体の一又は複数の外面に設けられるフィン又は他の若しくは更なる表面構造を含む。従って、管状反応器に取り込まれるような触媒組立体は、(局所的な)径方向の混合を保証するための手段を環状構造体に設けることにより、反応境界部を用いて熱伝達を高めながら、主に全体的に軸方向でのガスと触媒表面との最大限の接触を保証するジグザグ状の通路に沿ってプロセスガスを導く配置であると理解されてもよい。
【0025】
前記触媒構造体を径方向に圧縮するリング状要素が触媒構造体の周りに取り付けられていることが好ましい場合がある。前記リング状要素は、例えば灰分を含まない粘着紙、ライスペーパー又は適した金属で形成されてもよい。リング状要素は2つの機能を有することができ、つまり、一方では、環状触媒構造体(管状触媒構造体)を有する管状境界部が全体として扱われ得るようにリング状要素は管状境界部上で環状触媒構造体(管状触媒構造体)を阻止することができ、他方では、反応外管への挿入が容易になり得るように、リング状要素が触媒構造体の圧縮、つまり触媒構造体の径方向の長さを短くすることができ、製造、溶接などの許容差のためにマージンを考慮することができる。
【0026】
管状触媒構造体が取り付けられている管状境界部を反応外管に挿入した後、リング状要素を外してもよく又は破壊してもよいことが好ましい。例えば機械的に、又は温度上昇若しくは燃焼による破壊によってリング状要素を外してもよく又は破壊してもよい。このようにして、反応外管と管状境界部との間の第1の環状チャネルに触媒構造体が実質的に完全に充填され得る。リング状要素は、外されない又は破壊されない場合、流れを局所的に径方向にそらせるための手段又は更なる手段として更に機能し得る。
【0027】
本発明の別の態様は、請求項8の特徴によって定められているように、触媒管組立体を管状反応器から取り出す方法を提供する。特に、この方法は、上述したような方法に従って触媒管組立体が取り込まれた管状反応器を準備する工程、管状反応器、特に反応外管から管状境界部を特に滑らせるように外す工程、及び管状反応器、特に反応外管からセンタリング組立体を外す、特に滑り出させる工程を有する。熱サイクル、及び管状反応器内の化学反応の熱挙動に起因する膨張のため、触媒材料は、触媒の寿命中に著しく変形する場合があり、ひいては取り出しが比較的困難になる場合がある。管状境界部をまず外すことにより、好ましくは第1の管状のチャネル内に存在する触媒構造体は、径方向の内側に自由に膨張して張力を緩和し、そのため、例えばセンタリング組立体を後退させるか又は滑り出させることにより、より容易に外されてもよい。好ましくは径方向の外側に延びる形状を有してもよい、センタリング組立体の内管の出口端部に取り付けられている密閉部材により、触媒構造体がセンタリング組立体と共に滑り出ることが可能である。このようにして、管状反応器は2つの工程のみで比較的容易に取り出され得る。
【0028】
取り出しの好ましい方法では、例えば、管状境界部が、センタリング組立体の内管の出口端部に直接取り付けられた密閉部材に固定して取り付けられているとき、管状境界部を外す工程により、センタリング組立体を同様に外してもよい。このような場合、触媒構造体を含んでセンタリング組立体を有する管状境界部の組立体全体を反応外管の入口端部を介して後退させる1つの工程で、管状反応器から取り出してもよい。
【0029】
本発明の別の態様は、請求項10の特徴によって定められているような触媒管組立体を提供する。特に、第2のタイプの水蒸気改質器の管状反応器などの管状反応器のための触媒管組立体は、入口端部及び入口端部の反対側の出口端部を有する反応外管を備えており、内側に突出する要素を有している。内側に突出する要素は、好ましくは反応外管の内側又は周囲に沿って設けられている。触媒管組立体は、入口端部及び出口端部を有する内管を含むセンタリング組立体を更に備えており、閉じた端部及び開いた端部を有する管状境界部を更に備えている。触媒管組立体が反応外管と管状境界部との間に第1の環状チャネルを有して、管状境界部と内管との間に第2の環状チャネルを有するように、管状境界部は、反応外管内に実質的に同軸に且つ内管の周りに実質的に同軸に延びるように構成されている。第2の環状チャネルは、管状境界部の開いた端部の近くで第1の環状チャネルと流体連結し、管状境界部の閉じた端部で内管と流体連結する。
【0030】
発明的な方法では、内管の出口端部は、反応外管の内側に突出する要素と密閉して係合するように構成されている少なくとも1つの密閉部材を有している。このようにして、プロセスガスが第2の環状チャネル及び内管を通過することなく、第1の環状チャネルから直接反応外管の出口端部に向かって漏れることを最小限度に抑えることができ、より好ましくは避けることができる。少なくとも1つの密閉部材は更に、任意に反応外管の内側と密閉して係合してもよい。内管の出口端部と内側に突出する要素との密閉係合は、例えば構造上の許容差を補うべく中間要素と任意に組み合わせて、1つの密閉部材により又は複数の密閉部材によりなされてもよい。複数の密閉部材の場合、密閉部材は、内管の出口端部及び内側に突出する要素の両方と夫々密閉して係合する必要がない。複数の密閉部材は、1列の密閉部材を更に形成してもよく、1列の密閉部材が内管の出口端部と内側に突出する要素との間に密閉部分を形成するように、第1の密閉部材が内管の出口端部と係合し、第2の密閉部材が内側に突出する要素と係合し、他の密閉部材が任意に前記第1の密閉部材と前記第2の密閉部材との間に配置される。
【0031】
そのため、プロセスガスは、管状触媒構造体が設けられている、反応外管と管状境界部との間の第1の環状チャネルに入口端部を介して入ることにより、管状反応器に入ることができる。プロセスガスは、管状境界部の開いた端部の近くの管状境界部の開口部を通って、管状境界部と内管との間の第2の環状チャネルに入って、第1の環状チャネル内の流れに対して、第2の環状チャネルを通って管状境界部の閉じた端部に向かって逆流で流れることができ、プロセスガスは、第2の環状チャネルから内管に流入して、反応外管の出口端部に向かって、ここでも第2の環状チャネル内の流れに対して逆流で流れることができる。従って、プロセスガスは、一連の径方向により内側のチャネルを通ってジグザグ状の通路をたどり、これは、プロセスガスが組立体を通って近道をすることを防ぐ確実な密閉部材が設けられているときのみ可能である。
【0032】
第1の環状チャネルは、触媒材料、特に触媒構造体、より好ましくは本明細書に上述したような環状触媒構造体を受けるか又は含むように構成されていることが好ましい。触媒構造体は、環状構造体を共に形成する様々な部分、例えば共に維持されてもよいハーフリング又は他の形状、又は粒子で構成されてもよく、第1の環状チャネルの内部形状に好ましくは相当する環状触媒構造体を組立体として形成してもよい。或いは、触媒管組立体の別のチャネルが触媒材料で充填されてもよい。
【0033】
突出要素は、例えば触媒グリッドであってもよい。触媒グリッドは、既存の管状反応器に通常存在し、ランダムに充填された触媒粒子床を所定の位置に保持するように通常構成されている。反応外管の断面の実質的に全体に亘って延びているこのようなグリッドは、センタリング組立体を支持して前記センタリング組立体の少なくとも1つの密閉部材と係合すべく有利に使用されてもよい。或いは、このようなグリッドが存在しない場合、又は新しい反応管の場合、反応外管の内側に、例えば機械加工又は溶接により、専用の突起部又は突出要素を設けてもよい。前記専用の突出要素は、反応外管の断面に亘って延びる必要がなく、例えば反応外管の内周部に沿って内側に突出している隆起部とすることができる。このような触媒グリッド又は他の突出要素は、反応外管の内径を局所的に僅かに減少させることができるため、センタリング組立体を反応外管に比較的簡単に挿入することを依然として可能にしながら、つまり、センタリング組立体の挿入中に密閉部材と反応外管の内側との接触に起因する密閉部材の破損のリスクを制限しながら、センタリング組立体の密閉部材が前記突出要素と効果的な密閉部分を形成することができる。
【0034】
少なくとも1つの密閉部材は、有利には円錐形状、リング状の形状又は円筒形状を有し得る。円錐形状の場合、密閉部材が内管の円錐形状に広がる部分を形成し得るように、内管の出口端部が、例えば溶接により円錐形状の密閉部材に、例えば固定して連結されてもよい。円錐形状の密閉部材が反応外管に比較的容易に挿入され得るが、加えて反応外管の突出要素と直接又は更なる密閉部材を介して間接的に密閉して係合し得るように、円錐形状の密閉部材の最大の端部の外径が、反応外管の内径より僅かのみ小さくてもよい。リング状の密閉部材の場合、内管の出口端部が、例えばリング状の密閉部材に固定して連結されてもよい。或いは、リング状の密閉部材が、内管の出口端部に固定して連結される円錐形状の密閉部材と固定して取り付けられてもよい。円錐形状の密閉部材と同様に、リング状の密閉部材の外径が、反応外管の内径より僅かのみ小さくてもよい。リング状の密閉部材は、突出要素と直接又は別の密閉部材を介して係合してもよい。円筒形状の密閉部材が、例えば一又は複数の円錐形状又はリング形状の密閉部材と組み合わせて追加の密閉部材として使用されてもよく、反応外管の突出要素と直接係合してもよい。
【0035】
少なくとも1つの密閉部材の外径が、好ましくは内側に突出する要素の近くの反応外管の内径より小さくてもよいため、反応外管へのセンタリング組立体の比較的簡単な挿入を可能にすることができ、反応外管へのセンタリング組立体の挿入中の密閉部材と反応外管の内側との接触に起因する密閉部材の破損を防止することができる。加えて、密閉部材のこのような直径は、センタリング組立体を反応外管内で中心に置くことを容易にし得る。
【0036】
内管は、内管の外側に取り付けられて内管及び管状境界部間の隙間を維持するように構成されたスペーサを有利に有してもよい。従って、隙間は第2の環状チャネルを形成し得る。これらのスペーサは、内管から局所的に外側の突部として具体化されてもよく、多くの可能な幾何学的構成を有してもよく、この幾何学的構成は、例えば環状チャネルを通って流れるプロセスガスのフローパターンを向上させて、ひいては第2の環状チャネルと第1の環状チャネルとの対流熱伝達を向上させるべく選択されてもよい。或いは、前記スペーサは、管状境界部の内側、又は内管及び管状境界部の両方に更に取り付けられてもよい。管状境界部を内管の周りで中心に置くことに加えて、前記スペーサは、触媒管組立体に対する補強効果を更に有する。管状境界部及び内管が比較的長い場合があるので、管状境界部及び内管は両方共、重力の影響下で、又は例えば熱による弾性変形により曲がる場合がある。スペーサは、組立体を補強することができ、組立体の曲げの防止に有用で有り得る。従って、反応外管の取り付け及び取り込みが、触媒管組立体の水平位置で更に可能であってもよい。
【0037】
管状境界部は、少なくとも1つの密閉部材と固定して取り付けられてもよく、例えば溶接されてもよく、又は少なくとも1つの密閉部材に別の方法で取り付けられてもよい。複数の密閉部材の場合、管状境界部は、内管の出口端部に直接取り付けられている密閉部材と固定して取り付けられてもよい。このように固定して取り付けることにより、例えば上述したような取り込む方法又は取り出す方法で、全体として操作され得る管状境界部を含むセンタリング組立体のより大きい組立体を準備することができる。
【0038】
本発明を、例示的な実施形態の図面を参照して更に説明する。対応する要素は対応する参照符号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1a】本発明の態様に係る方法の第1の実施形態に従って、触媒管組立体を管状反応器に取り込む方法を示す概略図である。
図1b】本発明の態様に係る方法の第1の実施形態に従って、触媒管組立体を管状反応器に取り込む方法を示す概略図である。
図1c】本発明の態様に係る方法の第1の実施形態に従って、触媒管組立体を管状反応器に取り込む方法を示す概略図である。
図2a】本発明の態様の方法に従って、触媒構造体を管状境界部の周りに取り付ける工程を示す概略図である。
図2b】本発明の態様の方法に従って、触媒構造体を管状境界部の周りに取り付ける工程を示す概略図である。
図2c】本発明の態様の方法に従って、触媒構造体を管状境界部の周りに取り付ける工程を示す概略図である。
図3a】本発明の態様に係る方法の第2の実施形態に従って、触媒管組立体を管状反応器に取り込む方法を示す概略図である。
図3b】本発明の態様に係る方法の第2の実施形態に従って、触媒管組立体を管状反応器に取り込む方法を示す概略図である。
図3c】本発明の態様に係る方法の第2の実施形態に従って、触媒管組立体を管状反応器に取り込む方法を示す概略図である。
図4a】本発明の態様に係る方法の第3の実施形態に従って、触媒管組立体を管状反応器に取り込む方法を示す概略図である。
図4b】本発明の態様に係る方法の第3の実施形態に従って、触媒管組立体を管状反応器に取り込む方法を示す概略図である。
図4c】本発明の態様に係る方法の第3の実施形態に従って、触媒管組立体を管状反応器に取り込む方法を示す概略図である。
図4d】本発明の態様に係る方法の第3の実施形態に従って、触媒管組立体を管状反応器に取り込む方法を示す概略図である。
図5】本発明の態様に係る触媒管組立体の実施形態を示す長手断面略図である。
図6】本発明の態様に係る触媒管組立体の第2の実施形態を示す部分的な長手断面略図である。
図7】本発明の態様に係る触媒管組立体の第3の実施形態を示す部分的な長手断面略図である。
図8】本発明の態様に係る触媒管組立体の第4の実施形態を示す部分的な長手断面略図である。
図9】本発明の態様に係る触媒管組立体の第5の実施形態を示す部分的な長手断面略図である。
図10】本発明の態様に係る触媒管組立体の第6の実施形態を示す部分的な長手断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1a~図1cは、本発明の態様に係る方法の第1の実施形態に従って、触媒管組立体を管状反応器に取り込む方法を示す概略図である。触媒管組立体を管状反応器に取り込む方法の一連の様々な工程は、例えば管状反応器の向き又は取り込む構造体のタイプに応じて異なってもよい。図1aに示されている第1の工程では、水蒸気改質器などの管状反応器1 を準備する。管状反応器1 は、入口端部101 及び入口端部101 の反対側の出口端部102 を有する反応外管100 を備えており、内側に突出する要素103 を更に備えている。更に、センタリング組立体104 を準備する。センタリング組立体104 は、入口端部3 及び出口端部4 を有する内管2 を有しており、内管2 の出口端部4 は少なくとも1つの密閉部材5 を有している。この実施形態では、密閉部材5 は、内管2 の出口端部4 に取り付けられている、例えば溶接されている円錐形状の密閉部材である。
【0041】
第1の工程では、図1bに示されているように、少なくとも1つの密閉部材5 が内側に突出する要素103 と係合するまで、前記センタリング組立体104 を反応外管100 に実質的に同軸に挿入する。挿入を反応外管100 の入口端部101 を介して行い、密閉部材5 を反応外管100 の出口端部102 に向かって移動させる。次の工程では、閉じた端部6 及び開いた端部7 を有する管状境界部205aを準備する。この場合には環状触媒構造体である触媒構造体205bを更に準備し、触媒構造体205bを前記管状境界部205aの周りに取り付けて、全体として操作され得る組立体105 を形成する。この工程は、図2a~図2cで更に詳細に説明される。その後、環状触媒構造体205bを含む前記管状境界部205aを、図1cに示されているように、反応外管100 内に既に配置されている前記センタリング組立体104 に実質的に同軸に取り付ける。
【0042】
図2a~図2cは、本発明の態様の方法に従って、触媒構造体を管状境界部の周りに取り付ける工程を示す概略図である。標準的な触媒用途では、触媒の活性種は通常、支持構造体に亘って分散し、ペレット、球体、リングなどの小さなセラミック部材で形成されることができ、反応管に容易に嵌まり込んでランダムに充填される。触媒構造体では、支持構造体は、活性種が分散する固体構造の一又は複数の要素で構成されている。この支持構造体の形状及びサイズは、特定の反応器に応じて選択され得る。本例では、管状反応器1 のために複数のブロックの環状触媒構造体205bが選択されている。
【0043】
触媒構造体205bは先ず、図2aに示されているように管状境界部205aに取り付けられることができ、その後、任意には熱伝達及び物質伝達を高めるためにこれらのブロック間に中間要素(不図示)を配置して、共に積み重ねられ得る(図2b)。第3の工程では、例えば環状触媒構造体の周りに取り付けられてもよく、前記触媒構造体205bを径方向に圧縮することができるリング状要素8 を使用して、触媒構造体205bを管状境界部205aの外面で阻止してもよい。
【0044】
これらのリング状要素8 は、例えば灰分を含まない粘着紙、ライスペーパー又は金属で形成されてもよく、高温の状態では触媒構造体と共に膨張することができ、ひいては触媒構造体と反応外管100の内側との隙間を最小限に抑えることができる。このため、リング状要素8 は更に、触媒構造体を管状境界部205a上で阻止して組立体105 を形成することができ、触媒構造体を圧縮して反応外管100 への構造体の挿入を容易にすることができる。管状境界部205aに取り付けられた環状触媒構造体205bの組立体105 が反応外管100 内に配置されると、リング状要素8 は、例えば機械的に、又は例えば燃焼若しくは温度上昇による破壊によって外されてもよい。
【0045】
図3a~図3cは、本発明の態様に係る方法の第2の実施形態に従って、触媒管組立体を管状反応器に取り込む方法を示す概略図である。この順序では、直前に説明したように、管状境界部205aの周りへの触媒構造体205bの取り付けをまず行うことができ(図3a)、管状境界部205aに取り付けられた触媒構造体205bの組立体105 をセンタリング組立体104 に取り付けることができ(図3b)、その後、図3cに示されているようにセンタリング組立体104 を反応外管100 に挿入することができる。
【0046】
図4a~図4dは、本発明の態様に係る方法の第3の実施形態に従って、触媒管組立体を管状反応器に取り込む方法を示す概略図である。この順序では、図1a~図1c及び図3a~図3cに示されているような前の順序と比較して、触媒構造体205bを後の段階で管状境界部205aに取り付けることができ、これは垂直位置での管状反応器の取り込みに有利で有り得る。第1の工程では、図4aに示されているように、管状境界部205aをセンタリング組立体104 に取り付けることができる。次に、センタリング組立体104 及び管状境界部205a全体を反応外管100 に挿入することができる(図4b)。次の工程では、図4dに示されているように、反応外管100 が反応外管100 の入口端部101 まで充填されるまで、図4cに示されているように、環状触媒構造体を反応外管100 に、特に反応外管の内側と管状境界部205aとの間の第1の環状チャネルに次々に取り込む。図4a~図4dに示されているように本方法に従って管状反応器に垂直方向に取り込む場合、あまり好ましくはないが、構造体として共に保持されない触媒粒子などの非構造化触媒であっても、第1の環状チャネル11に挿入されてもよい。
【0047】
図5は、本発明の態様に係る触媒管組立体の実施形態を示す長手断面略図である。触媒管組立体10は、入口端部101 及び入口端部101 の反対側の出口端部102 を有して内側に突出する要素103 を有する反応外管100 を備えている。触媒管組立体10は、入口端部3 及び出口端部4 を有する内管2 と閉じた端部6 及び開いた端部7 を有する管状境界部205aとを含むセンタリング組立体104 を更に備えている。水蒸気改質器などの管状反応器に触媒管組立体が取り込まれると、触媒管組立体10が反応外管100 と管状境界部205aとの間に第1の環状チャネル11を有して、管状境界部205aとセンタリング組立体104 の内管2 との間に第2の環状チャネル12を有するように、管状境界部205aは、反応外管100 内に実質的に同軸に且つセンタリング組立体104 の内管2 の周りに実質的に同軸に延びている。
【0048】
第2の環状チャネル12は、管状境界部205aの開いた端部7 の近くで、例えば管状境界部205aの側壁の開口部14(図6図10参照)を通って第1の環状チャネル11と流体連結している。第2の環状チャネル12は、管状境界部205aの閉じた端部6 で内管2 と更に流体連結しており、閉鎖体、例えばエンドキャップは、プロセスガスが反応外管100 の入口端部101 を介して触媒管組立体を出ることを防ぐことができ、プロセスガスが内管2 の入口端部3 を介してセンタリング組立体104 の内管2 に入ることを可能にする。このため、反応外管100 の入口端部101 を介して管状反応器1 に入るプロセスガスは、径方向の外側に配置された第1の環状チャネル11から径方向のより内側に配置された第2の環状チャネル12を介して内管2 に一連の同心状のチャネルを通ってジグザグ状に触媒管組立体10を通って反応外管100 の出口端部102 に通過することができる。この軌跡は、内部熱再循環、特に第2の環状チャネル12に流れるガスと触媒が存在する第1の環状チャネル11に流れるガスとの熱伝達の点で比較的効率的であることが証明されている。
【0049】
内管2 の出口端部4 は、以下により詳細に説明されて示されるように、反応外管100 の内側に突出する要素103 と密閉して係合するように構成されている少なくとも1つの密閉部材5 を有している。センタリング組立体104 の内管2 は、内管2 の外側に取り付けられて内管2 及び管状境界部205a間の隙間を維持するように構成されたスペーサ13を更に有することができる。これらのスペーサの形状、サイズ及び材料は、例えば所望のガスフローのパターンに応じて選択されてもよい。スペーサは、例えば内管2 の外側に溶接されてもよいが、或いは、管状境界部205aの内側、又は内管2 及び管状境界部205aの両方に取り付けられてもよい。センタリング組立体104 及び管状境界部205aの長さが、これらの同一の管の各々の直径と比較して相対的に長くてもよいので、スペーサは、触媒管組立体の補強にも有用であり得る。
【0050】
センタリング組立体及び管状境界部の長さは、例えば略6~略20mの範囲内であってもよく、より好ましくは略10~略14mの範囲内であってもよい一方、長さ対直径の比率は実質的に40~600 の範囲内であってもよい。反応外管の内径は、例えば約100 mm又は約115 mm程度であってもよい。管状境界部の外径は、例えば約50~75mm程度の範囲内であってもよく、内管の外径は、例えば約25~50mm程度の範囲内であってもよい。特定の直径の選択を、例えば用途に必要な温度若しくは圧力、又は他のプロセスパラメータに応じて行ってもよい。
【0051】
有利な方法では、例えばエンドキャップとして具体化されてもよい管状境界部205aの閉じた端部6 は、例えば管状境界部205aを取り込む又は取り出すために管状境界部205aを操作すべく、外部工具によって係合されるように構成されている把持手段106 を有利に有してもよい。図5に示されている本実施形態では、閉じた端部6 のエンドキャップは、例えば取り出し工具によって把持され得る孔を有している。更に内管2 は、反応外管100 からのセンタリング組立体の取り外しを容易にすべく、例えば内管2 の入口端部3 の近くに、孔などの把持要素(不図示)を有することができる。把持手段の他の構成、例えば外側に突出する要素、ハンドル、又は当業者に公知のあらゆる他の適した把持手段が同様に可能である。
【0052】
管状反応器10を取り出すために、まず、例えば管状境界部205aの閉じた端部6 のエンドキャップで把持手段106 を把持することにより、管状境界部205aを管状反応器10、特に反応外管100 から外してもよい。次に、センタリング組立体104 を管状反応器10、特に反応外管100 から、好ましくは滑るように外してもよい。その後、密閉部材5 の外側に延びた形状により、触媒構造体を反応外管100 から引き出すことができる。管状境界部205aが密閉部材5 に固定して取り付けられている場合、管状境界部205aの閉じた端部6 で把持手段を把持して、触媒構造体を含むセンタリング組立体を有する管状境界部の組立体全体を反応外管100 の入口端部101 を介して後退させることにより、触媒構造体205bを含むセンタリング組立体104 を有する管状境界部205aの組立体全体が、1つの工程で管状反応器10から取り出されてもよい。
【0053】
図6は、本発明の態様に係る触媒管組立体の第2の実施形態を示す部分的な長手断面略図である。ここで、例えば図5に示されているような触媒管組立体10の反応外管100 の出口端部102 及び内管2 の出口端部4 に近い領域に重点を置く。触媒グリッド無しの新たな管状反応器に適してもよいこの実施形態では、例えば反応外管100 の内部に向かって突出する環状の隆起部であってもよい突起部として具体化された突出要素103 が、反応外管100 の内側に溶接又は機械加工されてもよい。突起部の位置は、例えば炉床の近く又は放射チャンバの境界部の近くの炉内の管状反応器の位置に応じて選択されてもよい。
【0054】
密閉部材5 は、センタリング組立体104 の内管2 の出口端部4 に溶接又は別の方法で取り付けられてもよい円錐状の密閉部材である。密閉部材5 、特に円錐体の最大端部の外径は、反応外管100 へのセンタリング組立体104 の相対的に容易な挿入を可能にして、更に円錐状の密閉部材5 及び突起部103 間の密閉係合を可能にするように、内側に突出する要素103 の近くの反応外管100 の内径より僅かに小さく選択されてもよい。任意には、円錐状の密閉部材5 は、密閉部材の最適に選択された直径によるセンタリングに加えて、突出要素103 でのセンタリング組立体104 のセンタリングを容易にし得る後退縁部を有してもよい。
【0055】
突出要素103 との密閉部材5 の密閉係合は、プロセスガスが第2の環状チャネル12及びセンタリング組立体104 の内管2 を通過することなく、第1の環状チャネルから反応外管の出口端部に直接流れることを防ぐ。加えて、円錐状の密閉部材5 の外側は、管状境界部205aの開いた端部7 を支持することができる。前記開いた端部7 は、触媒管組立体を取り込む方法に応じて密閉部材に溶接又は別の方法で取り付けられてもよく、或いは溶接されなくても取り付けられなくてもよい。このため、密閉部材5 は管状境界部205aの開いた端部7 を更に閉じることが可能である。そのため、第1の環状チャネルと第2の環状チャネルとの流体連結が、開いた端部7 の近くの管状境界部205aの側壁の開口部14、例えばスロット又は孔を介してなされてもよい。
【0056】
図7は、本発明の態様に係る触媒管組立体の第3の実施形態を示す部分的な長手断面略図である。図6の実施形態と比較して、最も重要な違いは、円錐状の密閉部材を設ける代わりに、密閉部材5'はリング状又は環状の形状を有してもよいということである。センタリングのために、密閉部材5'は、突出要素103 に溶接されてもよい対応するリップ部15を受けるように構成されている追加のスロット又は溝を任意に有してもよい。或いは、密閉部材がリップ部を有してもよく、突出要素が、前記リップ部を受けるための対応する溝を有してもよい。内管2 への密閉部材の取付、又は密閉部材での管状境界部205aの支持などの他の特徴は、前の実施形態と同様である。
【0057】
図8は、本発明の態様に係る触媒管組立体の第4の実施形態を示す部分的な長手断面略図である。図6及び図7の前の実施形態とは異なり、図8の実施形態は触媒グリッドを有する管状反応器で使用するように構成されている。触媒材料のランダムに充填された床を支持するために触媒グリッド16を使用する代わりに、触媒グリッド16が反応外管100 の突出要素103 を形成することができる。このため、密閉部材5 は、反応管の漏れを制御して、好ましくは防止すべく前記触媒グリッド16と密閉して係合することができる。他の特徴は、例えば密閉部材5 の円錐形状などの、図6に示されている実施形態の特徴と同様である。
【0058】
図9は、本発明の態様に係る触媒管組立体の第5の実施形態を示す部分的な長手断面略図である。図8の実施形態と同様に、本実施形態では突出要素103 はここでも触媒グリッドである。上記の実施形態とは異なり、1つの密閉部材5 ではなく、2つの密閉部材5a, 5bが設けられている。第1の密閉部材5aは、例えば、図7の実施形態の密閉部材と同様にリング状の密閉部材であってもよい。密閉部材5aは、内管2 の出口端部4 に取り付けられている。そのため、例えば円筒形状の第2の密閉部材5bが、前記第1の密閉部材5a及び突出要素103 と密閉して係合することができ、組み合わせて第1の環状チャネル11の密閉を可能にする。
【0059】
図10は、本発明の態様に係る触媒管組立体の第6の実施形態を示す部分的な長手断面略図である。この実施形態では、3つの密閉部材5a, 5b, 5cが設けられている。第1の密閉部材5aは円錐形状とすることができ、第1の密閉部材の狭い側が内管2 の出口端部4 に取り付けられてもよく、第2の密閉部材5bはリング状の形状であってもよく、円錐形状の密閉部材5aの広い側と密閉して係合してもよく、第3の密閉部材5cは、例えば円筒形状であってもよく、リング状の密閉部材5b及び突出要素103 の両方と密閉して係合してもよい。このため、複数の密閉部材の場合、密閉部材の1つは、内管2 の出口端部4 に取り付けられており、突出要素又は更に別の密閉部材と密閉して係合する更なる密閉部材と密閉して係合する。言い換えれば、内管と突出要素との密閉は、一又は複数の密閉部材、特に一連の密閉部材によってなされてもよい。全ての密閉部材が内管及び突出要素の両方と直接接触せず、密閉部材の組立体が、内管の出口端部及び突出要素の両方と密閉して係合する。密閉部材の他の組み合わせが同様に可能であり、触媒グリッド無しの新たな管のために本明細書に示されている実施形態が触媒グリッドと共に使用されてもよく、その逆も同様である。
【0060】
明瞭化及び簡潔な説明のために、特徴は、同一の実施形態又は個別の実施形態の一部として本明細書に記載されているが、本発明の範囲は、記載された特徴の全て又は一部の組み合わせを有する実施形態を包含し得ることが認識される。示された実施形態は、異なっていると記載されている例を除いて、同一の要素又は同様の要素を有すると理解され得る。
【0061】
特許請求の範囲では、括弧内のあらゆる参照符号は、請求項を限定すると解釈されないものとする。「備えている」という文言は、請求項に記載されている特徴又は工程以外の他の特徴又は工程の存在を除外しない。更に、「1つの(a)」及び「1つの(an)」という文言は、「1つのみ」に限定すると解釈されないものとするが、代わりに「少なくとも1つ」を意味すべく使用され、複数を除外しない。ある手段が互いに異なる請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが利点のために使用され得ないことを示さない。多くの変形例が当業者には明らかである。全ての変形例は、以下の特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲内に含まれると理解される。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図4d
図5
図6
図7
図8
図9
図10