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特許7551684パワーコンディショナ、および蓄電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】パワーコンディショナ、および蓄電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/35 20060101AFI20240909BHJP
   B60L 53/51 20190101ALI20240909BHJP
   B60L 53/53 20190101ALI20240909BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240909BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240909BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240909BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20240909BHJP
【FI】
H02J7/35 K
B60L53/51
B60L53/53
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J7/00 P
H02J7/00 303C
H02J7/02 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022065020
(22)【出願日】2022-04-11
(65)【公開番号】P2023155602
(43)【公開日】2023-10-23
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末沢 悠
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-029447(JP,A)
【文献】特開2020-031484(JP,A)
【文献】特開2020-005352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
H02J1/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統、太陽光発電装置、第1蓄電池を含む蓄電装置、第2蓄電池を含む電動車に接続される電動車用充電装置および負荷装置に接続して使用されるパワーコンディショナであって、
前記商用電力系統および前記電動車用充電装置の間に位置する電力変換部と、
前記蓄電装置を制御する第1制御部、前記電動車用充電装置を制御する第2制御部、前記電力変換部を制御する第3制御部、余剰電力量予測部系統充電要否判定部、負荷消費電力量予測部および電動車消費電力量予測部を含む制御部と
を備え、
前記余剰電力量予測部は、前記太陽光発電装置の発電電力量と前記負荷装置の消費電力量との差である余剰電力量を予測し、
前記系統充電要否判定部は、前記余剰電力量が前記第1蓄電池の空き電力量よりも多い場合は、前記第1制御部を介して前記蓄電装置に放電を行わせるとともに前記第2制御部を介して前記電動車用充電装置に充電を行わせることにより、前記第1蓄電池から前記第2蓄電池に式“前記余剰電力量-前記第1蓄電池の空き電力量”で計算される量の電力を移動させ、さらに、前記第1蓄電池からの電力の移動により前記第2蓄電池の充電率が予め定めた目標充電率に達しない場合は、前記第3制御部を介して前記電力変換部を作動させることにより前記商用電力系統からの電力を用いて前記第2蓄電池を充電させ
前記系統充電要否判定部は、前記商用電力系統からの電力を用いて前記第2蓄電池を充電させるか否かの判定を予め定めた判定時刻に行い、
前記負荷消費電力量予測部は、予め定めた準備時刻に、前記判定時刻までの間の前記負荷装置の消費電力量を予測し、
前記電動車消費電力量予測部は、前記準備時刻に取得した前記電動車の状態に関する情報に基づいて前記判定時刻までの間の前記電動車の消費電力量を予測し、
前記第1制御部は、式“前記余剰電力量-前記負荷装置の消費電力量から求めた前記判定時刻における前記第1蓄電池の空き電力量”で計算される電力量が、前記電動車の消費電力量から求めた前記判定時刻における前記第2蓄電池の空き電力量よりも少ない場合は、前記準備時刻から前記判定時刻までの間、前記蓄電装置に放電を行わせない
ことを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項2】
前記系統充電要否判定部は、前記第1蓄電池からの電力の移動により前記第2蓄電池の充電率が前記目標充電率に達する場合であっても、前記電力の移動が予め定めた時刻までに終わらないと見込まれる場合は、前記第3制御部を介して前記電力変換部を作動させることにより前記商用電力系統からの電力を用いて前記第2蓄電池を充電させる
ことを特徴とする請求項1に記載のパワーコンディショナ。
【請求項3】
太陽光発電装置と、第1蓄電池を含む蓄電装置と、第2蓄電池を含む電動車に接続される電動車用充電装置と、これらに接続されたパワーコンディショナとを備え、前記パワーコンディショナが商用電力系統および前記電動車用充電装置の間に位置する電力変換部を有するとともに負荷装置に接続されて使用される蓄電システムであって、
前記蓄電装置を制御する第1制御部と、
前記電動車用充電装置を制御する第2制御部と、
前記電力変換部を制御する第3制御部と、
余剰電力量予測部と、
系統充電要否判定部と
負荷消費電力量予測部と、
電動車消費電力量予測部と
を備え、
前記余剰電力量予測部は、前記太陽光発電装置の発電電力量と前記負荷装置の消費電力量との差である余剰電力量を予測し、
前記系統充電要否判定部は、前記余剰電力量が前記第1蓄電池の空き電力量よりも多い場合は、前記第1制御部を介して前記蓄電装置に放電を行わせるとともに前記第2制御部を介して前記電動車用充電装置に充電を行わせることにより、前記第1蓄電池から前記第2蓄電池に式“前記余剰電力量-前記第1蓄電池の空き電力量”で計算される量の電力を移動させ、さらに、前記第1蓄電池からの電力の移動により前記第2蓄電池の充電率が予め定めた目標充電率に達しない場合は、前記第3制御部を介して前記電力変換部を作動させることにより前記商用電力系統からの電力を用いて前記第2蓄電池を充電させ
前記系統充電要否判定部は、前記商用電力系統からの電力を用いて前記第2蓄電池を充電させるか否かの判定を予め定めた判定時刻に行い、
前記負荷消費電力量予測部は、予め定めた準備時刻に、前記判定時刻までの間の前記負荷装置の消費電力量を予測し、
前記電動車消費電力量予測部は、前記準備時刻に取得した前記電動車の状態に関する情報に基づいて前記判定時刻までの間の前記電動車の消費電力量を予測し、
前記第1制御部は、式“前記余剰電力量-前記負荷装置の消費電力量から求めた前記判定時刻における前記第1蓄電池の空き電力量”で計算される電力量が、前記電動車の消費電力量から求めた前記判定時刻における前記第2蓄電池の空き電力量よりも少ない場合は、前記準備時刻から前記判定時刻までの間、前記蓄電装置に放電を行わせない
ことを特徴とする蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用電力系統、太陽光発電装置、蓄電装置、電動車用充電装置および負荷装置に接続して使用されるパワーコンディショナ、および蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商用電力系統から供給された交流電力を直流電力に変換して出力する整流器と、太陽光発電装置と、蓄電装置とが連携して負荷としての通信装置に必要な直流電力を供給するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このシステムは、整流器および太陽光発電装置が出力する電力の合算電力量が負荷の消費電力量よりも多い場合は、余剰分が蓄電装置の蓄電池に充電され、逆の場合は、蓄電装置の蓄電池が不足分を放電するよう構成されている。また、このシステムは、翌日の太陽光発電装置の発電電力量と翌日の負荷の消費電力量の差である余剰電力量を推定し、推定した余剰電力量分の空きができるように蓄電装置の蓄電池を予め放電させるよう構成されている。この構成によれば、余剰電力となる発電電力の一部が捨てられるのを防ぐことができる、とのことである。
【0004】
なお、商用電力系統、太陽光発電装置、蓄電装置および負荷の間での電力の受け渡しを実現する部分は、「パワーコンディショナ」と呼ばれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-100956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
負荷が無線基地局のような24時間稼働の通信装置である場合は、負荷が常に電力を消費するので、任意のタイミングで蓄電装置の蓄電池に余剰電力量分の空きをつくることができる。しかしながら、負荷が一般的な家庭負荷である場合は、負荷が常に電力を消費するとは限らないので、余剰電力量分の空きをつくるために蓄電装置の蓄電池を放電させようとしても放電先がなく放電させられないことがあった。例えば、多くの人が就寝する0時~5時の間は、一般的な家庭負荷はほとんど電力を消費しない。このため、上記従来のシステムは、0時~5時の間に、余剰電力量分の空きをつくるために蓄電装置の蓄電池を放電させることができなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、従来よりも確実に蓄電装置の蓄電池に余剰電力量分の空きを予めつくることが可能なパワーコンディショナおよび蓄電システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るパワーコンディショナは、商用電力系統、太陽光発電装置、第1蓄電池を含む蓄電装置、第2蓄電池を含む電動車に接続される電動車用充電装置および負荷装置に接続して使用されるものであって、商用電力系統および電動車用充電装置の間に位置する電力変換部と、蓄電装置を制御する第1制御部、電動車用充電装置を制御する第2制御部、電力変換部を制御する第3制御部、余剰電力量予測部および系統充電要否判定部を含む制御部とを備え、余剰電力量予測部は、太陽光発電装置の発電電力量と負荷装置の消費電力量との差である余剰電力量を予測し、系統充電要否判定部は、余剰電力量が第1蓄電池の空き電力量よりも多い場合は、第1制御部を介して蓄電装置に放電を行わせるとともに第2制御部を介して電動車用充電装置に充電を行わせることにより、第1蓄電池から第2蓄電池に式“余剰電力量-第1蓄電池の空き電力量”で計算される量の電力を移動させ、さらに、第1蓄電池からの電力の移動により第2蓄電池の充電率が予め定めた目標充電率に達しない場合は、第3制御部を介して電力変換部を作動させることにより商用電力系統からの電力を用いて第2蓄電池を充電させる、との構成を有している。
【0009】
この構成によれば、電動車を構成する第2蓄電池を放電先とすることにより、負荷装置が電力を消費していなくても蓄電装置を構成する第1蓄電池に余剰電力量分の空きをつくることができる。また、この構成によれば、商用電力系統から第2蓄電池に供給する電力の量を必要最小限としながら、第2蓄電池を目標充電率まで充電することができる。
【0010】
上記パワーコンディショナの系統充電要否判定部は、第1蓄電池からの電力の移動により第2蓄電池の充電率が目標充電率に達する場合であっても、電力の移動が予め定めた時刻までに終わらないと見込まれる場合は、第3制御部を介して電力変換部を作動させることにより商用電力系統からの電力を用いて第2蓄電池を充電させる、との構成を有していることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、商用電力系統から第2蓄電池に供給する電力の量を必要最小限としながら、より確実に第2蓄電池を目標充電率まで充電することができる。
【0012】
上記パワーコンディショナの系統充電要否判定部は、商用電力系統からの電力を用いて第2蓄電池を充電させるか否かの判定を予め定めた判定時刻に行う、との構成を有していてもよい。この場合、上記パワーコンディショナの制御部は、負荷消費電力量予測部および電動車消費電力量予測部をさらに含み、負荷消費電力量予測部は、予め定めた準備時刻に、判定時刻までの間の負荷装置の消費電力量を予測し、電動車消費電力量予測部は、準備時刻に取得した電動車の状態に関する情報に基づいて判定時刻までの間の電動車の消費電力量を予測し、第1制御部は、式“余剰電力量-負荷装置の消費電力量から求めた判定時刻における第1蓄電池の空き電力量”で計算される電力量が、電動車の消費電力量から求めた判定時刻における第2蓄電池の空き電力量よりも少ない場合は、準備時刻から判定時刻までの間、蓄電装置に放電を行わせない、との構成を有していることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、準備時刻から判定時刻までの間の第1蓄電池に蓄えられた電力の消費を抑制することにより、商用電力系統から電動車を構成する第2蓄電池に供給する電力の量をさらに低減させることができる。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る蓄電システムは、太陽光発電装置と、第1蓄電池を含む蓄電装置と、第2蓄電池を含む電動車に接続される電動車用充電装置と、これらに接続されたパワーコンディショナとを備え、パワーコンディショナが商用電力系統および電動車用充電装置の間に位置する電力変換部を有するとともに負荷装置に接続されて使用されるものであって、蓄電装置を制御する第1制御部と、電動車用充電装置を制御する第2制御部と、電力変換部を制御する第3制御部と、余剰電力量予測部と、系統充電要否判定部とを備え、余剰電力量予測部は、太陽光発電装置の発電電力量と負荷装置の消費電力量との差である余剰電力量を予測し、系統充電要否判定部は、余剰電力量が第1蓄電池の空き電力量よりも多い場合は、第1制御部を介して蓄電装置に放電を行わせるとともに第2制御部を介して電動車用充電装置に充電を行わせることにより、第1蓄電池から第2蓄電池に式“余剰電力量-第1蓄電池の空き電力量”で計算される量の電力を移動させ、さらに、第1蓄電池からの電力の移動により第2蓄電池の充電率が予め定めた目標充電率に達しない場合は、第3制御部を介して電力変換部を作動させることにより商用電力系統からの電力を用いて第2蓄電池を充電させる、との構成を有している。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来よりも確実に蓄電装置の蓄電池に余剰電力量分の空きを予めつくることが可能なパワーコンディショナおよび蓄電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施例に係るパワーコンディショナを備えた蓄電システムを示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施例に係るパワーコンディショナにおける電力の移動を示す図である。
図3】本発明の第1実施例に係るパワーコンディショナの系統充電要否判定部の動作を示すフロー図である。
図4】本発明の第2実施例に係るパワーコンディショナを備えた蓄電システムを示すブロック図である。
図5】本発明の第2実施例に係るパワーコンディショナにおける電力の移動を示す図である。
図6】本発明の第2実施例に係るパワーコンディショナの系統充電要否判定部の動作を示すフロー図である。
図7】本発明の変形例に係るパワーコンディショナを備えた蓄電システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係るパワーコンディショナおよび蓄電システムの実施例について説明する。
【0018】
[第1実施例]
図1に、本発明の第1実施例に係るパワーコンディショナ10Aを備えた蓄電システムを示す。同図に示すように、パワーコンディショナ10Aは、太陽光発電装置80、蓄電装置81、電動車用充電装置82、商用電力系統84および家庭負荷85に接続して使用されるもので、DC/DC変換部20、双方向DC/DC変換部30、双方向DC/AC変換部40および制御部50Aを備えている。
【0019】
太陽光発電装置80は、住宅の屋根等に設置された太陽電池を含み、日射量に応じた量の直流電力を出力する。本明細書では、この直流電力の量を「発電電力量」と呼ぶこととする。
【0020】
蓄電装置81は、P[kWh](図2(A)参照)の蓄電容量を有する蓄電池81aを含んでいる。蓄電装置81は、双方向DC/DC変換部30から供給された直流電力で蓄電池81aを充電すること、および蓄電池81aを放電させて双方向DC/DC変換部30に直流電力を供給することができる。なお、蓄電池81aは、本発明の「第1蓄電池」に相当する。
【0021】
電動車用充電装置82は、DC/DC変換部82aおよび充電ケーブル82bを含んでいる。電動車用充電装置82は、充電ケーブル82bを介して、PEV[kWh](図2(B)参照)の蓄電容量を有する蓄電池83aを搭載した電動車83に接続される。電動車用充電装置82は、連携点11から供給された直流電力で蓄電池83aを充電することができる。なお、蓄電池83aは、本発明の「第2蓄電池」に相当する。
【0022】
電動車用充電装置82は、蓄電池83aを放電させて連携点11に直流電力を供給することもできる。
【0023】
電動車用充電装置82と電動車83との接続は、充電ケーブル82bによる接続に替えて非接触接続でもよい。
【0024】
電動車83は、電気自動車(EV,Electric Vehicle)またはプラグインハイブリッド車(PHV,Plug-in Hybrid Vehicle)である。
【0025】
DC/DC変換部20は、太陽光発電装置80が出力した直流電力を昇圧し、昇圧後の直流電力を連携点11に出力する。
【0026】
双方向DC/DC変換部30は、連携点11から供給された直流電力を降圧し、降圧後の直流電力を蓄電装置81に供給することができる。また、双方向DC/DC変換部30は、蓄電装置81から供給された直流電力を昇圧し、昇圧後の直流電力を連携点11に供給することができる。
【0027】
双方向DC/AC変換部40は、連携点11に接続されたDC側入出力端と、商用電力系統84および家庭負荷85に接続されたAC側入出力端とを含んでいる。双方向DC/AC変換部40は、DC側入出力端に供給された直流電力を交流電力に変換し、AC側入出力端から出力することができる。また、双方向DC/AC変換部40は、AC側入出力端に供給された交流電力を直流電力に変換し、DC側入出力端から出力することができる。なお、双方向DC/AC変換部40は、本発明の「電力変換部」に相当する。
【0028】
AC側入出力端と商用電力系統84の間、およびAC側入出力端と家庭負荷85の間には、図1には示していない開閉器、リレー等が存在してもよい。
【0029】
太陽光発電装置80の発電電力量が比較的多く、発電電力量が家庭負荷85の消費電力量よりも多い場合、式“発電電力量-消費電力量”で計算される量の余剰電力は、基本的には蓄電池81aの充電に充てられる。電動車用充電装置82に電動車83が接続されている場合は、余剰電力の一部を蓄電池83aの充電に充ててもよい。
【0030】
一方、太陽光発電装置80の発電電力量が比較的少なく(またはゼロであり)、発電電力量が家庭負荷85の消費電力量よりも少ない場合は、商用電力系統84から供給される電力および蓄電池81aを放電させることにより得た電力の少なくとも一方で式“消費電力量-発電電力量”で計算される量の不足電力が賄われる。この際、蓄電池81aの電力が優先的に使用される。
【0031】
制御部50Aは、蓄電装置81および双方向DC/DC変換部30の動作を制御する蓄電装置制御部51、電動車用充電装置82の動作を制御する電動車用充電装置制御部52および双方向DC/AC変換部40の動作を制御する双方向DC/AC制御部53を含んでいる。なお、蓄電装置制御部51は本発明の「第1制御部」に相当し、電動車用充電装置制御部52は本発明の「第2制御部」に相当し、双方向DC/AC制御部53は本発明の「第3制御部」に相当する。
【0032】
制御部50Aは、余剰電力量予測部54および系統充電要否判定部55をさらに備えている。
【0033】
余剰電力量予測部54は、当日の気象条件、過去の発電電力量および過去の消費電力量等を教師データとした機械学習により予め作成した学習済モデルを用いて、当日の余剰電力量PPV[kWh](図2(A)参照)を予測する。余剰電力量予測部54は、これ以外の方法により余剰電力量PPVを予測してもよい。
【0034】
余剰電力量予測部54は、深夜0時にこの予測を行う。深夜0時よりも前に予測を行う場合、余剰電力量予測部54は、当日ではなく翌日の余剰電力量PPVを予測することになる。
【0035】
系統充電要否判定部55は、余剰電力量予測部54による余剰電力量PPVの予測が完了すると、蓄電池81aの空き電力量PS2[kWh](=蓄電容量P-残り電力量PS1)と余剰電力量PPVとに基づいて、蓄電池81aから蓄電池83aへの電力の移動(以下、エレムーブという。エレムーブは出願人保有の登録商標)だけで蓄電池81aに余剰電力量PPV分の空きができ、かつ蓄電池83aの充電率が所定の目標充電率(本実施例では、100%)に達するか否かを判定する。
【0036】
系統充電要否判定部55は、余剰電力量予測部54による余剰電力量PPVの予測が完了すると、直ちに判定を行う。つまり、系統充電要否判定部55は、実質的に深夜0時に判定を行う。なお、深夜0時は、本発明の「判定時刻」に相当する。
【0037】
図2は、エレムーブを模式的に表したものである。余剰電力量PPVが深夜0時時点の蓄電池81aの空き電力量PS2を上回る場合は、このままでは当日の昼間に発生する余剰電力量PPVの全部を蓄電池81aに蓄えることができないので、同図に示すように、式“PPV-PS2”で計算される量の電力を電動車83の蓄電池83aにエレムーブする。
【0038】
深夜0時時点の蓄電池83aの空き電力量PEV2[kWh](=蓄電容量PEV-残り電力量PEV1)が“PPV-PS2”よりも少なければ、エレムーブにより蓄電池83aの充電率を100%にすることができるので、系統充電要否判定部55は、商用電力系統84から供給される電力による蓄電池83aの充電(以下、系統充電という)は不要と判定する。一方、空き電力量PEV2が“PPV-PS2”よりも多ければ、エレムーブのみでは蓄電池83aの充電率を100%にすることができないので、系統充電要否判定部55は、系統充電により不足分を補う必要があると判定する。余剰電力量PPVが蓄電池81aの空き電力量PS2を下回る場合も、系統充電要否判定部55は、系統充電を行う必要があると判定する。
【0039】
当然ながら、エレムーブには、移動させる電力の量“PPV-PS2”に概ね比例した時間がかかる。また、蓄電池83aの充電は、電動車83の利便性が低下するのを防ぐのと電気料金が安い時間帯に行う必要があるために、予め定めた時刻(例えば、6時)までに完了しなければならない。このため、系統充電要否判定部55は、上記の判定を行うにあたり、エレムーブが予め定めた時刻までに完了するか否かも考慮する。
【0040】
図3を参照しながら、系統充電要否判定部55による判定について具体的に説明する。
【0041】
ステップS1-1において、系統充電要否判定部55は、“PPV-PS2”が0よりも大きいか否かを判定する。“PPV-PS2”が0よりも大きければステップS1-2に進み、“PPV-PS2”が0以下であればステップS1-6に進む。
【0042】
ステップS1-2において、系統充電要否判定部55は、“PPV-PS2”がPEV2よりも大きいか否かを判定する。“PPV-PS2”がPEV2よりも大きければステップS1-3に進み、“PPV-PS2”がPEV2以下であればステップS1-5に進む。
【0043】
ステップS1-3において、系統充電要否判定部55は、“PPV-PS2”のエレムーブが予め定めた時刻(6時)までに完了するか否か、すなわち間に合うか否かを判定する。間に合う場合はステップS1-4に進み、間に合わない場合はステップS1-5に進む。
【0044】
ステップS1-4において、系統充電要否判定部55は、エレムーブだけで予め定めた時刻までに電動車83の蓄電池83aを目標充電率まで充電することができるため、系統充電は不要であるとの判定をする。この場合、系統充電要否判定部55は、蓄電装置制御部51を介して蓄電装置81に放電を行わせるとともに電動車用充電装置制御部52を介して電動車用充電装置82に充電を行わせる。
【0045】
ステップS1-5において、系統充電要否判定部55は、エレムーブだけでは予め定めた時刻までに電動車83の蓄電池83aを目標充電率まで充電することができないため、エレムーブとともに系統充電を行う必要があるとの判定をする。この場合、系統充電要否判定部55は、蓄電装置制御部51を介して蓄電装置81に放電を行わせるとともに電動車用充電装置制御部52を介して電動車用充電装置82に充電を行わせ、さらに、双方向DC/AC制御部53を介して双方向DC/AC変換部40を作動させる。
【0046】
ステップS1-6において、系統充電要否判定部55は、エレムーブ可能な電力が存在しないため、系統充電を行う必要があるとの判定をする。この場合、系統充電要否判定部55は、双方向DC/AC制御部53を介して双方向DC/AC変換部40を作動させる。
【0047】
このように、本実施例に係るパワーコンディショナ10Aによれば、電動車83の蓄電池83aを放電先とすることにより、家庭負荷85が電力を消費していなくても蓄電装置81の蓄電池81aに余剰電力量分の空きをつくることができる。また、本実施例に係るパワーコンディショナ10Aによれば、必要最小限の量の電力を商用電力系統84から供給することにより、予め定めた時刻までに電動車83の蓄電池83aを目標充電率まで確実に充電することができる。
【0048】
[第2実施例]
図4に、本発明の第2実施例に係るパワーコンディショナ10Bを備えた蓄電システムを示す。同図に示すように、パワーコンディショナ10Bは、制御部50Aの代わりに制御部50Bを備えている点と、通信部60をさらに備えている点とにおいてパワーコンディショナ10Aと相違しているが、他の点においてはパワーコンディショナ10Aと概ね一致している。ただし、パワーコンディショナ10Aおよびパワーコンディショナ10Bは、余剰電力量予測部54および系統充電要否判定部55の動作も若干相違している。
【0049】
通信部60は、無線通信により電動車83の状態に関する情報を取得することができる。通信部60は、電動車83から直接的に情報を取得してもよいし、適当な中継装置を介して間接的に情報を取得してもよいし、電動車83の情報を格納したサーバから情報を取得してもよい。
【0050】
通信部60が取得する電動車83の情報には、例えば、電動車83の現在位置、現在の乗車人数、現在の電装品使用状況、および現在の蓄電池83aの残り電力量が含まれる。
【0051】
制御部50Bは、制御部50Aに負荷消費電力量予測部56および電動車消費電力量予測部57を追加したものである。
【0052】
負荷消費電力量予測部56は、太陽光発電装置80による発電がそろそろ終了する時刻(例えば、17時)になると、家庭負荷85の過去の消費電力量等を教師データとした機械学習により予め作成した学習済モデルを用いて、17時から翌0時までの間の家庭負荷85の消費電力量(以下、負荷消費電力量という)P[kWh]を予測する。そして、負荷消費電力量予測部56は、17時時点の蓄電池81aの空き電力量PS4[kWh](=蓄電容量P-残り電力量PS3)と、予測した負荷消費電力量Pとに基づいて、翌0時時点の蓄電池81aの空き電力量を求める。家庭負荷85によって蓄電池81aに蓄えられた電力がPだけ消費された結果、翌0時時点の蓄電池81aの空き電力量は、図5(A),(C)に示すように“PS4+P”となる。なお、17時は、本発明の「準備時刻」に相当する。
【0053】
電動車消費電力量予測部57は、準備時刻(17時)になると、通信部60が取得した電動車83の情報に基づいて、17時から翌0時までの間の電動車83の消費電力量(以下、電動車消費電力量という)P[kWh]を予測する。例えば、電動車消費電力量予測部57は、17時時点の電動車83の位置(すなわち、電動車用充電装置82から電動車83までの距離)および電動車83の残り電力量PEV3[kWh]等を教師データとした機械学習により予め作成した学習済モデルを用いて、電動車消費電力量Pを予測する。そして、電動車消費電力量予測部57は、17時時点の蓄電池83aの空き電力量PEV4[kWh](=蓄電容量PEV-残り電力量PEV3)と、予測した電動車消費電力量Pとに基づいて、翌0時時点の蓄電池83aの空き電力量を求める。電動車用充電装置82に辿り着くまでの帰路で蓄電池83aに蓄えられた電力がPだけ消費された結果、翌0時時点の蓄電池83aの空き電力量は、図5(B),(D)に示すように“PEV4+P”となる。
【0054】
余剰電力量予測部54は、深夜0時(判定時刻)ではなく17時(準備時刻)に翌日の余剰電力量PPVを予測する。
【0055】
17時を過ぎて太陽光発電装置80の発電電力量が低下してくると、蓄電装置制御部51は、蓄電装置81に放電を行わせて蓄電池81aに蓄えられていた電力を家庭負荷85に供給する。ただし、蓄電装置制御部51は、余剰電力量PPVと翌0時時点の蓄電池81aの空き電力量“PS4+P”との差“PPV-(PS4+P)”が翌0時時点の蓄電池83aの空き電力量“PEV4+P”よりも少ない場合は、17時から翌0時の間、蓄電装置81に放電を行わせない。この場合は、商用電力系統84から家庭負荷85に電力が供給されることとなる。
【0056】
系統充電要否判定部55は、図6に示すように、“PPV-PS2”の代わりとなる“PPV-(PS4+P)、およびPEV2の代わりとなる“PEV4+P”を用いて、ステップS2-1~S2-3の判定を実行する。ステップS2-4~S2-6は、第1実施例のステップS1-4~S1-6に相当する。
【0057】
このように、本実施例に係るパワーコンディショナ10Bによれば、準備時刻から判定時刻までの間の蓄電池81aに蓄えられた電力の消費を抑制することにより、判定時刻以降にエレムーブとともに行う系統充電の量を低減させる、または完全にゼロにすることができる。
【0058】
以上、本発明に係るパワーコンディショナおよび蓄電システムの第1実施例および第2実施例について説明してきたが、本発明の構成はこれらに限定されるものではない。
【0059】
[変形例]
例えば、本発明に係るパワーコンディショナは、図7に示したパワーコンディショナ10Cのような構成、すなわち、制御部50Aの代わりに制御部50Cを備えた構成をとることができる。制御部50Cは、電動車利用予測部58をさらに備えている点において制御部50Aと相違している。
【0060】
電動車利用予測部58は、電動車83の過去の利用状況、および電動車83を利用する者の当日のスケジュールの少なくとも一方に基づいて、目標充電率を定める。例えば、電動車利用予測部58は、電動車83の過去の利用状況や利用者のスケジュールから当日の電動車83の走行距離を予測し、予測した走行距離に応じて目標充電率を定める。走行距離が比較的少ない場合、電動車利用予測部58は、目標充電率を例えば60%とする。この場合、系統充電要否判定部55は、電動車83の蓄電池83aの充電率を60%とするために系統充電が必要か否かを判定する。この構成によれば、エレムーブとともに行う系統充電の量をさらに低減させることができる。
【0061】
また、図1図4および図7は、制御部51,52,53、予測部54,56,57,58および判定部55と双方向DC/AC変換部40等とがパワーコンディショナ10A~10Cの構成要素として描かれているが、制御部51,52,53、予測部54,56,57,58および判定部55の全部または一部は、パワーコンディショナ10A~10C外に配置されていてもよい。
【0062】
また、図1図4および図7は、DC/DC変換部20および双方向DC/DC変換部30がパワーコンディショナ10A~10Cの構成要素として同一の筐体に収容されているかのように描かれているが、これらの全部または一部は、別の筐体に収容されていてもよい。
【0063】
また、第1実施例および第2実施例における0時は、判定時刻の単なる一例にすぎない。本発明では、家庭負荷85の消費電力量が少なく、かつ電動車83の利用開始時刻までの時間的余裕がある23時~翌3時の間で判定時刻を設定することが好ましい。
【0064】
第2実施例における17時も、準備時刻の単なる一例にすぎない。本発明では、太陽光発電装置80の発電電力量が少なく、かつ判定時刻までの時間的余裕がある16時~19時の間で準備時刻を設定することが好ましい。準備時刻から判定時刻までの時間が短いと、エレムーブとともに行う系統充電の量を十分に低減させることができない。
【符号の説明】
【0065】
10A,10B,10C パワーコンディショナ
11 連携点
20 DC/DC変換部
30 双方向DC/DC変換部
40 双方向DC/AC変換部
50A,50B,50C 制御部
51 蓄電装置制御部(第1制御部)
52 電動車用充電装置制御部(第2制御部)
53 双方向DC/AC制御部(第3制御部)
54 余剰電力量予測部
55 系統充電要否判定部
56 負荷消費電力量予測部
57 電動車消費電力量予測部
58 電動車利用予測部
60 通信部
80 太陽光発電装置
81 蓄電装置
81a 蓄電池(第1蓄電池)
82 電動車用充電装置
82a DC/DC変換部
82b 充電ケーブル
83 電動車
83a 蓄電池(第2蓄電池)
84 商用電力系統
85 家庭負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7