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特許7551691二次電池の寿命を推定する方法、装置およびコンピュータプログラム製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】二次電池の寿命を推定する方法、装置およびコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20240909BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20240909BHJP
   G01R 31/387 20190101ALI20240909BHJP
   G01R 31/3828 20190101ALI20240909BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/367
G01R31/387
G01R31/3828
H01M10/48 P
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022094914
(22)【出願日】2022-06-13
(65)【公開番号】P2023016696
(43)【公開日】2023-02-02
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】21187489
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】アルノ アルツベルガー
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特許第7516464(JP,B2)
【文献】特許第7423697(JP,B2)
【文献】特表2024-511082(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0284846(US,A1)
【文献】特許第6494840(JP,B2)
【文献】FLEISCHAUER, M. D.; TANG, D.; GYENES, B.; OLSEN, B. C.; JOHNSON, A. D.,“Calibration process for rechargeable cell and battery test systems”,Review of Scientific Instruments,2019年04月09日,Vol. 90,pp. 043902-1~043902-7,https://doi.org/10.1063/1.5079233
【文献】SMITH, A. J.; BURNS, J. C.; XIONG, D.; DAHN, J. R.,“Interpreting High Precision Coulometry Results on Li-ion Cells”,Journal of The Electrochemical Society,2011年08月15日,Vol. 158, No. 10,pp. A1136-A1142,DOI: 10.1149/1.3625232
【文献】SMITH, A. J.; BURNS, J. C.; TRUSSLER, S.; DAHN, J. R.,“Precision Measurements of the Coulombic Efficiency of Lithium-Ion Batteries and of Electrode Materials for Lithium-Ion Batteries”,Journal of The Electrochemical Society,2009年12月17日,Vol. 157, No. 2,pp. A196-A202,DOI: 10.1149/1.3268129
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリセル(2)を分類する方法であって、
- 前記バッテリセル(2)の複数の負荷サイクル(100)は、クーロメトリ装置(4)を用いて測定され、測定結果は、複数の電流値を含み、
- 前記測定は、終了基準が満たされるまで実行され、
- 前記測定結果に基づいて、前記バッテリセル(2)の第1放電容量および第2放電容量が、第1計算規定および第2計算規定により、決定され、電流測定の較正は、前記第1計算規定および前記第2計算規定へ別々に入力され、前記電流測定の較正が決定されるメソッドが実施され、当該較正を用いて、決定された第1放電容量および第2放電容量の、最大の一致度が達成され、
- 前記測定結果に基づいて、前記バッテリセル(2)の経時劣化基準が決定され、
- 前記経時劣化基準に基づいて、複数の分類領域のうちの1つへの前記バッテリセル(2)のソートが実施される、
方法。
【請求項2】
前記経時劣化基準として、前記バッテリセル(2)のクーロン効率が、決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記経時劣化基準として、前記バッテリセル(2)のサイクル当たりの容量損失、が決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記経時劣化基準は、前記バッテリセル(2)に対する識別子と共に、データベースに保存される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
二次電池で使用中の前記バッテリセル(2)の実際の経時劣化データが受信され、前記分類領域は、前記実際の経時劣化データおよび保存された前記経時劣化基準に基づいて、調整される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記負荷サイクル(100)は、前記バッテリセル(2)の40%未満の放電を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記負荷サイクル(100)は、0.5~1.5のCレートで動作する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記負荷サイクル(100)の少なくとも一部に対して、複数の動作点が用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
負荷サイクル(100)は、第1充電状態(21)から第2充電状態(22)までの第1電荷量が測定される第1放電と、その次の、前記第2充電状態(22)から第3充電状態(23)までの第2電荷量が測定される第1充電と、前記第3充電状態(23)から第4充電状態(24)までの第3電荷量が測定される第2放電と、を含み、前記負荷サイクル(100)の充電および放電は、前記バッテリセル(2)の下限電圧と上限電圧との間で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
- 第1電荷変位が、前記第4充電状態(24)と前記第2充電状態(22)との差を用いて、決定され、第2電荷変位が、前記第3充電状態(23)と前記第1充電状態(21)との差を用いて、決定され、
- 容量損失が、前記第1電荷変位と前記第2電荷変位との差から決定され、
- 平均容量損失は、異なる前記負荷サイクル(100)の少なくとも2つの前記容量損失に基づいて決定される、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記終了基準として、2つ以上の連続する前記負荷サイクル(100)における前記容量損失の相対的変化が用いられる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記終了基準は、前記測定結果に従って得られる分類の関数として、決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12の何れか1項に記載の方法を実行する計算ユニット(10)を備えた装置(1)であって、
ーロメトリ装置(4)、を備え、
前記計算ユニット(10)は、前記バッテリセル(2)での一連の前記測定結果を記録する記憶装置を有し、記メソッドおよび前記ソートを実行するように、構成されている、
装置(1)。
【請求項14】
コンピュータプログラム(13)であって、当該コンピュータプログラム(13)は、プログラム可能な計算ユニット(10)のメモリに直接的にロード可能であり、前記コンピュータプログラム(13)が前記計算ユニット(10)において実装される場合、請求項1~12の何れか1項に記載の方法を実施するためプログラムコードを備える、コンピュータプログラム(13)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の寿命を推定するための、特には二次電池の予想容量損失を決定するための、方法、装置およびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン蓄電池は、その高い出力密度およびエネルギ密度を理由に、多くの移動用途および定置用途において、エネルギ蓄積装置として、使用される。近年、それに関して、電気的に駆動される車両における使用と、建物内の電気供給用の定置式一時貯蔵器としての使用、が急増していることである。以下、これらの技術的使用分野におけるような蓄電池を、日常言語で、バッテリまたは二次電池と称する。
【0003】
車両への供給のためまたは電気ネットワーク接続のために使用される二次電池は、400V~1000Vの電圧を有する必要がある。このために、通常の場合、数百個という多数のバッテリセルが、直列に接続される。さらに、容量または通電容量を増加させるために、個々のバッテリセルの代わりに、それぞれ複数の並列に接続されたバッテリセルのブロックも、直列に接続することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここでの不利な点は、そのような二次電池の挙動が、直列接続におけるそれぞれの最も不良のバッテリセルまたは最も不良のブロックにより、決定されること、である。例えば、直列接続において、バッテリセルのうちの1つのみが、それ以外のバッテリセルよりも著しく急速に経時劣化している場合でも、バッテリ全体が著しく経時劣化しているように見える。
【0005】
このため、通常の場合、バッテリセルを製造後にその予想寿命に従って、すなわち期待経時劣化に従って、分類することが試みられる。このステップは、プロセスチェーンにおいては、いわゆる「エンドオブライン試験(英:end-of-line test、独:End-of-Line Test)」に割り当てられ、例えば、プロセスステップ「自己放電試験(英:self-discharge test、独:Selbstentladungstest)」、と称される。そのような自己放電試験は、例えば、構成されたバッテリセルを数週間の長期間にわたって保管し、一定の間隔でセル電圧を測定するように、実施することができる。そして、バッテリセルの経時劣化の推定が、自己放電率に基づいて、行われる。ここでの欠点は、セルの長期保管および測定によりコストがかかること、そして自己放電試験に基づく経時劣化の予測があまり正確ではないという事実にある。従ってセルの経時劣化の個別の経過は、分類が同じ結果である場合でも、幅が大きい。
【0006】
本発明の課題は、バッテリセルの分類をより正確に行うことができる方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法および請求項13の特徴を有する装置によって解決される。
【0008】
本発明に係るバッテリセルを分類する方法においては、バッテリセルの複数の負荷サイクルが、高精度クーロメトリ装置(英:high-precision coulometry apparatus、独:Hoch-Praezisions-Coulometrie-Vorrichtung)を用いて測定され、測定の結果は、複数の電流値を含む。ここで、負荷サイクルに関して、好ましくは可能な限り有意であると同時に、保護的でもある動作点が、特には50%未満の充電状態である動作点が、選択される。
【0009】
測定は、終了基準が満たされるまで行われ、測定の結果に基づいて、バッテリセルの放電容量の第1の値および第2の値が、第1の計算規定および第2の計算規定により、算出され、電流測定の較正は、相異して第1の計算規定および第2計算規定へ入り、最適化メソッドが実行され、
当該最適化メソッドでは、電流測定の較正が決定され、当該較正を用いて、決定された第1の放電容量および第2の放電容量の最大の一致度が達成される。
【0010】
最後に、測定の結果に基づいて、バッテリセルの経時劣化基準が特定され、経時劣化基準に基づいて、複数の分類領域のうちの1つへのバッテリセルのソートが実行される。
【0011】
本発明に係る装置は、本発明に係る方法を実行するように構成されており、高精度クーロメトリ装置と、バッテリセルに関する一連の測定の結果を記録する記憶装置を有する計算ユニットを含み、計算ユニットは、最適化メソッド、および、複数の分類領域のうちの1つへのバッテリセルのソート、を実施するように構成されている。
【0012】
本発明により、有利には、バッテリセルの寿命期待値に基づいて分類を比較的迅速に行うことができる可能性が創出される。言い換えれば、このようにして、構成後のリチウムイオンセルの品質検査を高速化し、そして、分類正確度を向上させる、新しい方法が創出される。
【0013】
従来技術によれば品質特定に数週間の時間が必要な場合があるのに対して、この時間は、本発明によって、数日に短縮され、これにより、試験中の保管に関する資本投資を、大幅に削減することができる。
【0014】
発明の有利な構成は、請求項1に従属する請求項から得られる。ここで、請求項1または請求項14による実施形態は、下位請求項のうちの1つの特徴と組み合わせることができ、好ましくは複数の下位請求項の特徴とも組み合わせることができる。従って、さらに以下の特徴も備えられてよい。
【0015】
経時劣化基準として、バッテリセルのクーロン効率が決定されてよい。代替的にまたは追加的に、経時劣化基準として、バッテリセルの、エネルギ効率および/または有効セル内部抵抗および/またはサイクル当たりの容量損失、が決定されてもよい。
【0016】
上記のパラメータのうちの2つ以上が使用される場合、有利には、本発明の適用により、もはや、単独のパラメータのみが、すなわち自己放電率のみが、品質評価に用いられるのではなく、個別の測定で決定された、複数の独立したKPIが、用いられる。これにより、QMプロセスの堅牢性が向上し、有意性が増し、製造されたバッテリセルの現場での使用からのデータリフローを統合するための新たな可能性が得られる。
【0017】
経時劣化基準は、バッテリセルの識別子と共にデータベースに保存されてよい。このような保存により、例えば様々な製造バッチに関する差を検出するために、このようにして収集されたデータを後に評価することが可能になる。さらに、保存を行うことにより、バッテリセルの現場での使用時に得られる経時劣化データとの比較が可能になる。従って、二次電池での使用に関するバッテリセルの実際の経時劣化データが取得され、そして、分類領域は、実際の経時劣化データおよび保存された経時劣化基準に基づいて適応される場合、特に有利である。また、実際の経時劣化データに基づいて、変更される動作点を決定することができ、当該動作点は予測の将来的に改善された正確さを可能にする。
【0018】
負荷サイクルは40%未満の放電、特には25%未満の放電、を含んでよい。また、負荷サイクルは0.5~1.5の間の、特には0.8~1.2の間の、Cレート(英:C coefficient、独:C-Koeffizient)で動作してよい。これにより、充電と共に、バッテリセルの測定に有利な動作点が得られ、当該動作点では、発生する電力コストを低下させるために、充電状態(SOC)は放電(DOD)と共に高過ぎることはなく、発生する電力コストを低下させるために、その一方で放電は有意な測定にとって十分である。そのような有利な動作点は、30%のSOC、20%のDODおよび1Cである。
【0019】
複数の負荷サイクルの少なくとも一部について、上記動作点とは異なる1つまたは複数のさらなる動作点が用いられてもよい。これにより、バッテリセルの実際の動作中に発生する様々な動作状況に関して、測定がより有意となる。
【0020】
負荷サイクルは、その際好ましくは、第1充電状態から第2充電状態までの第1電荷量が測定される第1放電と、その次の、第2充電状態から第3充電状態までの第2電荷量が測定される第1充電と、第3充電状態から第4充電状態までの第3電荷量が測定される第2放電と、を含み、負荷サイクルの充電および放電は、二次電池の下限電圧と上限電圧との間で行われる。
【0021】
この場合、第1電荷変位は、第4充電状態と第2充電状態との差を用いて、そして、第2電荷変位は、第3電荷状態と第1電荷状態との差を用いて、決定され得る。さらに、容量損失は、第1電荷変位と第2電荷変位との差から、決定され得て、そして、平均容量損失は、異なる負荷サイクルの少なくとも2つの容量損失に基づいて、決定され得る。
【0022】
このようにして決定された容量損失は、終了基準として用いられ得る。特には、その際、2つ以上の連続する負荷サイクルにおける容量損失の相対的変化が、考慮されてよい。相対的変化が十分に小さい場合、バッテリセルは既に定常状態であると見なされてよく、測定を終了することができる。
【0023】
このようにして決定された容量損失は、バッテリセルの経時劣化基準としても、用いることができる。従って、既に詳述した経時劣化基準に加えて、測定の有意性が改善するさらなるそのような経時劣化基準が利用可能である。
【0024】
終了基準を、存在する測定結果に従って得られる分類の関数として、選択することが可能である。このようにして、例えば、バッテリセルに関して、それが不良品と見なされる必要があること、または、不良品カテゴリにソートされること、が明らかになる場合、測定を終了することができる。
【0025】
用いられる終了基準は、互いに組み合わせられ得る。従って、例えばこれまでに測定された負荷サイクルの最小数を上回り、容量損失の差が閾値を下回る場合、測定を終了することができる。
【0026】
本発明に対して、プログラム可能な計算ユニットのメモリに直接的にロード可能なコンピュータプログラム製品が、利用可能である。本コンピュータプログラム製品は、このコンピュータプログラム製品が計算ユニットにおいて実装される場合、本発明に係る方法を実施するためのプログラムコード手段を備える。
【0027】
コンピュータプログラムは、バッテリセル製造の上位のプロセス制御および品質保証に統合されていてもよい。
【0028】
ここで、本装置は、有利には、構成に使用されるパワーエレクトロニクス(構成回路)がHPC測定のためにも利用可能にされ得るか、または、それに応じて拡張され得る場合に、追加のハードウェアを必要とすることなく、既存の製造にも、統合され得る。代替的に、本装置は、製造プロセスに関する、完全に新しいステーションを含んでもよく、当該ステーションは、例えば自己放電試験用の、既存の測定ステーションを置き換えるかまたは補完する。
【0029】
本発明のさらなる特徴、特性および有利な点は、添付図を参照する以下の説明から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、バッテリセルを分類する装置を概略的に示す。
図2図2は、装置を用いてバッテリセルを分類するプロセス概要を概略的に示す。
図3図3は、負荷サイクルの電圧時間グラフを概略的に示す。
図4図4は、負荷サイクルの電圧電荷グラフを概略的に示す。
図5図5は、負荷サイクルの経過に関する容量損失のグラフを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、バッテリセル2を分類する装置1を示す。装置1は、高精度クーロメトリ装置4と、温度調整チャンバ3とを含む。分類されるバッテリセル2は、温度調整チャンバ3内へ導入され、電気ケーブル11によって高精度クーロメトリ装置4に接続される。
【0032】
その一方、高精度クーロメトリ装置4は、装置側では、データケーブル12を介して計算ユニット10と接続されている。高精度クーロメトリ装置4は、非常に高い正確度で、バッテリセル2の電荷時間グラフを、記録する。バッテリセル2は、この場合、周期的な負荷サイクル100で駆動される。
【0033】
計算ユニット10は、コンピュータプログラム13を含み、当該コンピュータプログラム13は、高精度クーロメトリ装置4により送信されたデータの処理を実行する。コンピュータプログラムは、値を少なくとも一時的に保存する。
【0034】
図2は、図1に示される装置を用いて実行される、バッテリセル2を分類する方法のプロセス概要を示す。本方法の計算ステップは、そこで、コンピュータプログラム13によって計算ユニット10において実行される。
【0035】
第1ステップ201では、構成後のバッテリセル2が、温度調整チャンバ3内へ導入され、温度調整される。このようにして、一定に保たれた温度が、後続の測定される負荷サイクル100の間、獲得され得る。第1ステップ201は、いくつかの実施形態では、バッテリセル2を温度調整チャンバ3に供給する方法に起因して、省略されてもよく、他の実施形態では、このステップ201は、数時間にわたって継続してもよい。
【0036】
第1ステップ201に続いて第2ステップ202が行われ、第2ステップ202では、高精度クーロメトリ装置4を用いて、バッテリセル2の測定が行われる。ここで、既に詳述した負荷サイクル100が実行され、少なくとも電流測定が行われ、当該電流測定は、電荷量の決定を可能とする。
【0037】
第2ステップ202は、第3ステップ203も含んでおり、第3ステップでは、決定されたデータを用いて電流較正が行われる。さらに、第2ステップ202は、第4ステップも含んでおり、第4ステップでは、終了基準が存在するか否かについての判断が行われる。終了基準が存在しない場合、バッテリセル2の測定は、さらなる負荷サイクル100と共に継続される。
【0038】
第3ステップ203および第4ステップ204は、この場合、各負荷サイクルの後、または、設定可能な数のさらなる測定される負荷サイクルの後に常に、実行されてよい。この場合、第3ステップ203および第4ステップ204は、基本的に互いに対して独立しているが、同時に実行されてもよい。本例では、第3ステップ203および第4ステップ204は、それぞれ10回の負荷サイクル100後に実行される。
【0039】
終了基準として、本実施例では、様々なファクタの組み合わせが用いられる。第1ファクタは、負荷サイクル100の最小回数であり、この場合は100回である。経験的に、バッテリセルの挙動は、この回数の負荷サイクル100前には、定常状態に到達しない。さらなるファクタとして、連続する負荷サイクル100間の容量損失の差が用いられる。これについては、以下においてさらに説明される。この差が5%を下回る場合、バッテリセル2は定常状態にあると見なすことができる。さらに、それまでのデータが負荷サイクル100の最小回数後に考慮される場合に、バッテリセル2についてどの分類がもたされるかが、終了基準に含められる。この分類が、バッテリセルが不良品と見なされるかまたはより下位の老朽化クラスにソートされるようなものである場合、さらなる測定は終了される。その一方、バッテリセル2が経時劣化に関して期待される高い品質を有している場合、測定は継続する。
【0040】
終了基準が満たされると、バッテリセル2の測定は終了される。次いで、第5ステップ205では、最終的な経時劣化基準の決定が行われる。本例では、第5ステップ205では、クーロン効率および平均容量損失が決定され、保存される。決定された値は、電池セル2の識別子、例えばシリアル番号、と共にデータベースに保存される。
【0041】
決定されたデータに基づいて、第6ステップ206では、バッテリセル2の最終的な分類が行われる。その際、所定のクラスへと分類が行われ、当該所定のクラスは、その後、可能な限り同様の品質のバッテリセル2を一緒に用いるために、品質基準として使用される。これにより、二次電池の特性が個々の「不良」なバッテリセル2に大きく依存して決定されることが、避けられる。このようにして、分類は、バッテリセル2を、同様の期待される経時劣化を有するクラスに、グルーピングする。
【0042】
第5ステップ205において決定された経時劣化基準は識別子と共に保存されるので、第7ステップ207では、このようにして決定された予測値をバッテリセル2の実際の経時劣化データと比較することができる。この目的のために、バッテリセル2に関するそのような実際の経時劣化データは、例えば電気自動車、機関車または建造物バッテリのような、環境におけるその使用の過程で記録され、経時劣化基準と比較される。ここで、期待される経時劣化に系統的な差がある場合、すなわち、最終的には、経時劣化基準のうちの1つまたは複数と相関する分類に系統的な差がある場合、分類の修正が行われる、例えば、経時劣化基準のうちの1つの重み付けの変更が行われる。この変更された重み付けは、新しいバッテリセル2の改善された分類をもたらす。
【0043】
バッテリセル2の実際の測定は、高精度クーロメトリ装置4を用いて行われる。図3は、電圧時間グラフを示しており、当該電圧時間グラフは、高精度クーロメトリ装置4がバッテリセル2の周期的な負荷サイクル100中に記録したものである。負荷サイクル100は、第1充電状態21から第2充電状態22への放電を含み、第1充電状態21は上限電圧25にあり、第2充電状態22は下限電圧26にある。次いで、負荷サイクル100において二次電池2は、第2充電状態22から、第3充電状態23へと充電される。次のステップとして、負荷サイクル100において第3充電状態23は、第4充電状態24まで放電される。それぞれ個々の充電ステップ/放電ステップにおいて、上限電圧25および下限電圧26は、電圧境界として維持される。充電は、充電時間tの間、継続する。放電は、放電時間tの間、継続する。
【0044】
図3に示す測定に基づいて、ここで、図4に示すように、どれほどの累積電荷量が個々の充電ステップおよび放電ステップにおいて流れたかを、算出することができる。図4は、二次電池の電圧を累積電荷量Qに対してプロットしたグラフを示す。負荷サイクル100は、再び、第1充電状態21において開始する。二次電池2は、第2充電状態22まで、第1放電31において放電される。その際、第1電荷量Q1が二次電池2から取り出される。第1電荷量Q1は、数式1により計算でき、ここで、Iは電流を示し、tは放電時間長さを示している。
【0045】
負荷サイクル100内において、二次電池2は、続いて第2充電状態22から第3充電状態23へと、第1充電32により充電される。第2電荷量Q2が二次電池2に充電される。Q2は、数式2により計算できる。
【0046】
負荷サイクル100内において、二次電池2は、続いて第3充電状態23から第4充電状態24へと、第2放電33により放電される。取り出される電荷量Q3は、再び、数式1と同様に、放電の時間長さおよびそれに関連する電流に基づいて計算できる。
【0047】
これで、第1充電状態21と第3充電状態23との間の第1電荷変位d1を求めることができる。さらに、第2充電状態22と第4充電状態24との間の第2電荷変位d2を求めることができる。第1電荷変位d1と第2電荷変位d2との差に基づいて、今や、負荷サイクル100に対する容量損失dKapを、数式3を用いて求めることができる。
【0048】
ここで、図5において、負荷サイクル当たりの容量損失を、250回の負荷サイクルについて示す。ここで、x軸には、負荷サイクル数Z、すなわち、各負荷サイクル100の実施数、を示しており、y軸には、負荷サイクル100当たりの容量損失dKap、を示している。図5は、連続する負荷サイクル100の間に、最初に過渡フェーズP1が生じること、を明らかにしている。過渡フェーズP1の長さは、動作点およびバッテリセル2の履歴、に依存する。
【0049】
本方法の測定値としての平均容量損失dKapmittelの決定は、容量損失dKapの値についてのスライディング線形フィット(英:sliding linear fit、独:gleitender linearer Fit)と、このようにして生成された線形方程式における最小勾配の決定とにより、行われる。容量損失dKapの全ての値、つまり値1~値250についての適合(フィット)に基づいて、データセットが連続的に切り詰められ、新しい直線が生成される(フィットされる)(2~250、3~250等)。適合は、データセットの所定の最小の残り長さまで、例えば長さ全体の10%まで、行われる。その後、線形方程式は、特にその勾配の値により大きさに従って昇順にソートされる。ここで、測定は、勾配のうちの少なくとも2つが、量的に、容量損失dKapの最後の10%の平均値の10%未満の値を有する場合、有効とみなすことができる。例えば、最後の20回の容量損失の平均が、特には容量損失を少なくとも200回測定する際に、5mAh/負荷サイクルである場合、両方の最適に適合された接線(「フィット」)の傾きは0.5mAh/負荷サイクル未満である必要がある。
【0050】
それ以外の場合、特にはより多くの支持点を用いて測定を繰り返す必要があるのは、システムが十分に定常状態に達していないからである。ソートに基づいて、所定の数、例えば、データセットの長さ全体の3%を丸めた数、または、2つの測定値の最小数、が選択され、適合された直線の対応するスタート指標が算出される。このようにして算出された線分のそれぞれに対して、平均された容量損失が、含まれる容量損失dKapの算術平均値として、指定される。平均容量損失dKapMittelの値は、その後、平均された個別の容量損失についての平均値として、決定される。
【0051】
まだ十分に定常状態ではない、つまり略一定の容量損失が達成されていない場合、負荷サイクルの測定は繰り返される。ソートに基づいて、その場合、再び所定の数、例えば、データセットの長さ全体の3%を丸めた数または2つの最小数が選択され、適合された直線の対応するスタート指標が算出される。このようにして算出された線分のそれぞれに対して、平均された容量損失dKapMittelが、含まれる容量損失の算術平均値として、指定される。平均容量損失dKapMittelの値は、しかしながら、算術平均された容量損失についての平均値としても、算出され得る。
【0052】
図5は、過渡フェーズP1の後に決定フェーズP2が続くことも、明らかにする。これらのフェーズは、容量損失dKapの評価中に、シフトし得る。
【0053】
容量損失に加えて、クーロン効率も経時劣化基準として用いられる。クーロン効率は次のように計算される。
【0054】
第3ステップで実行される電流較正に対しては、放電状態に割り当てることができる、つまり、例えば第2充電状態に割り当てることができる、放電容量が、2つの異なる方法で計算可能であること、を用いることができ、高精度クーロメトリ装置4の電流較正は、異なって両方の計算に入る。よって、第1計算規定によって決定される第1放電容量Q0は以下の通りである。
【0055】
さらに、第2計算規定によって決定される第2放電容量0は、先行する負荷サイクル100に割り当てられている初期放電容量Q0Aと、先行する負荷サイクル100と現在の負荷サイクルとの間の容量損失と、に基づいて計算可能である。
【0056】
理想的な、すなわち誤差がない、電流測定の場合では、両方の値は、以下のように同一である。
【0057】
しかし実際には、完全に厳密ではない電流測定において存在する電流較正に起因して、両方の値は分かれる。値の差が大きいほど、電流較正の誤差は大きい。
【0058】
数式8は、最適化の基礎としてf=Q-Q0mの形で用いられ、当該最適化においては関数値fが最小化される。最適化のために変更される変数は、電流較正を構成する。電流較正は、測定された電流値の修正された測定値への写像である。最適化により値の間での広範囲に及ぶ一致度が達成される場合、修正された測定値は、非常に正確に実際の電流に対応する。この最適化は、計算ユニット10において、コンピュータプログラム13により行われる。
【符号の説明】
【0059】
1 装置
2 バッテリセル
3 温度調整チャンバ
4 高精度クーロメトリ装置
10 計算ユニット
11 電気ケーブル
12 データケーブル
13 コンピュータプログラム製品
21 第1充電状態
22 第2充電状態
23 第3充電状態
24 第4充電状態
25 上限電圧
26 下限電圧
100 負荷サイクル
充電時間
放電時間
201 第1ステップ
202 第2ステップ
203 第3ステップ
204 第4ステップ
205 第5ステップ
206 第6ステップ
207 第7ステップ

図1
図2
図3
図4
図5