(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】NKp46結合タンパク質の可変領域
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240909BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240909BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240909BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240909BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240909BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240909BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240909BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240909BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240909BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240909BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240909BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240909BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240909BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240909BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
C07K16/28
C07K19/00
C12N15/13 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P31/00
A61P29/00
A61P37/02
C12P21/02 C
C12P21/08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022096649
(22)【出願日】2022-06-15
(62)【分割の表示】P 2018552124の分割
【原出願日】2016-12-20
【審査請求日】2022-07-14
(32)【優先日】2015-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506000184
【氏名又は名称】イナート・ファルマ・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】INNATE PHARMA PHARMA S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ゴーティエ
(72)【発明者】
【氏名】ナディア・アンセリズ
(72)【発明者】
【氏名】アリアーヌ・モレル
(72)【発明者】
【氏名】バンジャマン・ロッシ
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-502322(JP,A)
【文献】国際公開第2015/138600(WO,A1)
【文献】特表2013-512927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトNKp46ポリペプチドに結合する抗原結合ドメインを含む、ヒトNKp46ポリペプチドに結合するタンパク質又はポリペプチドであって、前記抗原結合ドメインは、配列番号202、203、又は204(NKp46-2 H1、H2、又はH3可変ドメイン)のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号205(NKp46-2 L1可変ドメイン)のアミノ酸配列を含むVLである重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)の組み合わせを含む、タンパク質又はポリペプチド。
【請求項2】
多重特異的抗原結合タンパク質である、請求項1に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項3】
前記VH及び前記VLは、単一ポリペプチド鎖上に位置し、且つペプチドリンカーを介して互いに融合されている、請求項1又は2に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項4】
前記VHは、前記タンパク質内の第1のポリペプチド鎖上に位置し、及び前記VLは、前記タンパク質内の第2のポリペプチド鎖上に位置する、請求項1~3のいずれか一項に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項5】
完全長IgG抗体、又は前記NKp46ポリペプチドとの結合性を維持するその断片である、請求項1に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項6】
前記タンパク質は、目的の抗原に結合する第2の抗原結合ドメインをさらに含む多重特異的タンパク質であり、前記多重特異的タンパク質は、NKp46発現NK細胞に、前記目的の抗原を発現する標的細胞を溶解させることができる、請求項1又は2に記載の
タンパク質又はポリペプチド。
【請求項7】
ヒトNKp46ポリペプチドに結合する抗原結合ドメインを含む、ヒトNKp46ポリペプチドに結合するタンパク質又はポリペプチドであって、前記抗原結合ドメインは、抗体:NKp46-2 H1L1、NKp46-2 H2L1又はNKp46-2 H3L1のそれぞれのVH及びVLドメインと少なくとも90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を含むVH及びVLドメインを含み、前記VHは配列番号5のアミノ酸配列を有するVHのCDR1、2、及び3、及びヒトIGHV4-30-4遺伝子セグメントのFR1、2、及び3を含み、前記VLは配列番号6のアミノ酸配列を有するVLのCDR1、2、及び3、及びヒトIGKV1-39遺伝子セグメントのFR1、2、及び3を含む、タンパク質又はポリペプチド。
【請求項8】
前記VH及びVLドメインは、同じポリペプチド鎖上に存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項9】
前記VH及びVLドメインは、ペプチドリンカーによって分離されている、請求項1~8のいずれか一項に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項10】
目的の抗原に結合する第2の抗原結合ドメインをさらに含む多重特異的タンパク質であり、前記多重特異的タンパク質は、NKp46発現NK細胞に、前記目的の抗原を発現する標的細胞を溶解させることができる、請求項1~9のいずれか一項に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項11】
単一ポリペプチド鎖からなる、請求項10に記載の
タンパク質又はポリペプチド。
【請求項12】
NKp46ポリペプチドに結合する前記抗原結合ドメイン及び目的の抗原に結合する前記抗原結合ドメインは、リンカーを介してVLに融合されたVHをそれぞれ含む、請求項10又は11に記載の
タンパク質又はポリペプチド。
【請求項13】
二量体、三量体、又は四量体から選択される多量体ポリペプチドである、請求項10又は12に記載の
タンパク質又はポリペプチド。
【請求項14】
Fcドメインの少なくとも一部を含み、且つ完全長野生型ヒトIgG1抗体と比較して、ヒトCD16ポリペプチドに対して低い結合性を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項15】
Fcドメインの少なくとも一部を含み、前記Fcドメインは、二量体であり、且つヒトCD16に対する結合性を維持している、請求項1~13のいずれか一項に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項16】
前記タンパク質は、ヒトCH1又はCκ定常ドメイン(V-(CH1/Cκ)単位)に融合された少なくとも1つの重鎖又は軽鎖可変ドメイン及びFcドメインをそれぞれ含む少なくとも2つの異なるポリペプチド鎖を含むヘテロ多量体タンパク質であり、前記
ポリペプチド鎖は、CH1-Cκ二量体化され、且つ非共有結合により、及びそれぞれのCH1ドメインとCκドメインとの間に形成されたジスルフィド結合により、且つそれぞれのFc部分のCH3ドメイン間の非共有結合により、さらに互いに結合されている、請求項1~10及び12~15のいずれか一項に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項17】
前記第1及び第2ポリペプチド鎖の両方は、前記CH1及び/又はCκドメインと前記Fcドメインとの接合部にヒンジドメインを含む、請求項16に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項18】
前記抗原結合ドメイン、ポリペプチド、又は多重特異的タンパク質は、前記NKp46ポリペプチドに一価で結合する、請求項1~17のいずれか一項に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項19】
ヘテロ二量体であり、且つ
(a)ドメイン配置:
V
a-1-(CH1又はCK)
a-Fcドメイン-V
a-2-V
b-2
を有する第1のポリペプチド、及び
(b)ドメイン配置:
V
b-1-(CH又はCK)
b-Fcドメイン
を有する第2のポリペプチド鎖、
を含み、
V
a-1及びV
b-1の一方は、軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は、重鎖可変ドメインであり、V
a-2及びV
b-2の一方は、軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は、重鎖可変ドメインであり;
(CH1又はCK)
bは、中心鎖上の前記(CH1又はCK)
aと二量体化し、及び前記V
b-1は、前記中心鎖のV
a-1と共に抗原結合ドメインを形成し、V
a-2及びV
b-2は、抗原結合ドメインを共に形成する、請求項1~10及び12~15のいずれか一項に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項20】
ヘテロ三量体であり、且つ
(a)ドメイン配置:
V
a-1-(CH1又はCK)
a-Fcドメイン-V
a-2-(CH1又はCK)
b
を有する第1のポリペプチド鎖、
(b)ドメイン配置:
V
b-1-(CH1又はCK)
c-Fcドメイン
を有する第2のポリペプチド鎖、及び
(c)ドメイン配置:
V
b-2-(CH1又はCK)
d
を有する第3のポリペプチド鎖、
を含み、
V
a-1及びV
b-1の一方は、軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は、重鎖可変ドメインであり、V
a-2及びV
b-2の一方は、軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は、重鎖可変ドメインであり;
(CH1又はCK)
cは、中心鎖上の前記(CH1又はCK)
aと二量体化し、且つ前記V
a-1及び前記V
b-1は、抗原結合ドメインを形成し;及び
(CH1又はCK)
dは、前記中心鎖上の前記(CH1又はCK)
b単位と二量体化し、且つ前記V
a-2及び前記V
b-2は、抗原結合ドメインを形成する、請求項1~10及び12~15のいずれか一項に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項21】
V
a-2及びV
b-2は、NKp46に結合する抗原結合ドメインを共に形成する、請求項19又は20に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項22】
ドメイン配置:
【化1】
を有する、請求項19~21のいずれか一項に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項23】
ドメイン配置:
【化2】
を有する、請求項19~21のいずれか一項に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項24】
ドメイン配置:
【化3】
を有する、請求項19~21のいずれか一項に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項25】
前記ヒトNKp46ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドである、請求項1~24のいずれか一項に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項26】
カニクイザル(macaca fascicularis)NKp46ポリペプチドに結合する、請求項1~25のいずれか一項に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項27】
ヒトNKp46ポリペプチドとの結合について、NKp46-2のVH及びVLドメインを有するモノクローナル抗体と競合する、請求項1~26のいずれか一項に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか一項に記載のタンパク質又はポリペプチド、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項29】
請求項1~27のいずれか一項に記載のタンパク質又はそのポリペプチド鎖をコードする単離された核酸。
【請求項30】
請求項1~27のいずれか一項に記載のタンパク質又はポリペプチドを産生する組換え細胞
であって、前記組換え細胞が請求項1~27のいずれか一項に記載のタンパク質又はポリペプチドをコードする核酸を含む、組換え細胞。
【請求項31】
タンパク質を産生する方法であって、請求項1~27のいずれか一項に記載のタンパク質の発現に適した条件下において、請求項30に記載の細胞を培養するステップと、前記タンパク質を回収するステップとを含む方法。
【請求項32】
疾患の処置のための薬剤の製造のための、請求項1~27のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項28に記載の組成物の使用。
【請求項33】
前記疾患は、癌、感染病、又は炎症性若しくは自己免疫疾患である、請求項32に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全ての図面及び配列表を含め、参照により全内容が本明細書に組み入れられる、2015年12月28日出願の米国仮特許出願第62/271,474号明細書の利益を主張するものである。
【0002】
配列表の参照
本出願は、電子形式の配列表と合わせて出願されている。この配列表は、2016年12月19日に作成された376KBサイズの「NKp46-7 PCT_ST25 txt」という名称のファイルとして提供される。この配列表の電子形式の情報は、参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる。
【0003】
免疫グロブリン可変領域、及びこの可変領域を含むタンパク質、例えば抗体及び多重特異的タンパク質が提供される。このタンパク質は、NK細胞に結合し、且つこのNK細胞を特異的にリダイレクトして目的の標的細胞を溶解することができる。このタンパク質は、疾患、特に癌又は感染病の処置に有用である。
【背景技術】
【0004】
2つの異なるエピトープに結合する二重特異的抗体は、特異性を高める機会、効力を拡張する機会、及び従来のモノクローナル抗体では達成できない作用の新規な機序を利用する機会を提供する。同時に2つの標的に結合する二重特異的抗体の様々な形態が報告されている。また、二重特異的抗体を用いて2つの異なる受容体を架橋してシグナル伝達経路を阻害することは、様々な適用例で有用性を示している(例えば、(非特許文献1)を参照されたい)。二重特異的抗体は、2つの異なる受容体を中和するために使用されてきた。他のアプローチでは、二重特異的抗体は、免疫エフェクター細胞を動員するために使用され、ここで、T細胞の活性化が、2つの異なる細胞型における受容体に同時に結合する二重特異的抗体によって腫瘍細胞の近傍で達成される((非特許文献2)を参照されたい)。これまでに開発されたアプローチは、主として、T細胞上のCD3複合体を腫瘍関連抗原に結合する二重特異的抗体に関係している。しかしながら、他の例では、一方のアームがCD16(FcγRIIIa)に結合し、且つ他方のアームが目的の抗原、例えば、CD19に結合する二重特異的抗体が開発された((非特許文献3)を参照されたい)。
【0005】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、従来にない免疫に関与するリンパ球の亜集団である。NK細胞は、不所望の細胞、例えば、腫瘍又はウイルス感染細胞を排除することができる効率的な免疫学的監視機構を提供する。NK細胞の特徴及び生物学的特性は、CD16、CD56、及び/又はCD57を含む表面抗原の発現、細胞表面上のα/β又はγ/δTCR複合体の非存在、特定の細胞溶解酵素の活性化によって「自己」MHC/HLA抗原を発現することができない細胞に結合してその細胞を殺す能力、NK活性化受容体のリガンドを発現する腫瘍細胞又は他の異常細胞を殺す能力、及び免疫応答を刺激又は抑制するサイトカインと呼ばれるタンパク質分子を放出する能力を含む。
【0006】
NK細胞の活性は、シグナルの活性化及び阻害の両方を伴う複合機構によって調節される。NK細胞媒介認識及びHLAクラスI欠損標的細胞の殺生において重要な役割を果たすいくつかの異なるNK細胞受容体が同定されている。1つの受容体は、NK細胞に特異的ではないが、NK細胞媒介ADCCに関与するFcγR3a(CD16)である。別のNK細胞受容体は、IgスーパーファミリーのメンバーであるNKp46である。NKp46は、NK細胞に特異的であり、特定のmAbによって誘導されるその架橋は、細胞内Ca++のレベルを上昇させる強いNK細胞の活性化をもたらし、それにより細胞障害性が誘発され、リンホカインが放出される。(特許文献1)(Innate Pharma)は、Fcγ陽性の血液悪性腫瘍の処置での、Fcγ受容体に結合する単一特異的完全長IgG抗NKp46抗体の使用を開示している。腫瘍細胞(例えば、B細胞悪性腫瘍)上のFcγ受容体は、NK細胞に結合する抗NKp46抗体のFcドメインと相互作用し、それにより、活性化NK細胞が、抗体の2つの反応部分(例えば、抗原認識ドメイン及びFcドメイン)によってそれらの標的細胞に接近するようになり、処置の効率を高めると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2005/105858号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【文献】Jackman,et al.,(2010)J.Biol.Chem.285:20850-20859
【文献】Baeuerle,P.A.,et al,(2009)Cancer Res 69(12):4941-4
【文献】Kellner et al.(2011)Cancer Lett.303(2):128-139
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これまで、NK細胞特異的二重特異的抗体は開発されていない。NK細胞障害性を漸増させる除去剤、例えば、抗腫瘍抗体は、典型的にはCD16によってADCCを媒介する完全長IgG1である。様々な形態の二重特異的抗体の存在にもかかわらず、恩恵をもたらし得る新規な十分に定義された作用機序を有し、且つ完全長抗体に加えて使用することができるタンパク質が当技術分野でなお要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、本発明は、ヒトNKp46ポリペプチド及び非ヒト霊長類(例えば、例えば、カニクイザル(Macaca fascicularis))NKp46ポリペプチドの両方と交差反応する抗体超可変領域の発見に起因する。別の態様では、本発明は、NK細胞上のNKp46に結合する一本鎖タンパク質及び多重特異的タンパク質(例えば、限定されるものではないが、抗体ベースのタンパク質形態を含む、ポリペプチド、一本鎖タンパク質、多重鎖タンパク質)で機能を維持する抗体超可変領域の発見に起因する。
【0011】
また、抗原結合ドメインによって結合されたエピトープも提供される。抗原ドメインは、非常に強力な抗原結合タンパク質を提供するNKp46上のエピトープに結合する。エピトープは、NK細胞の表面に発現されるNKp46を含め、ヒト及び非ヒト霊長類によってさらに共有されている。
【0012】
可変領域は、一価でNKp46に結合するポリペプチド(例えば、抗体、Fcタンパク質、scFvなど)に組み込まれた場合、(標的細胞の非存在下で)NKp46活性化を誘発することなく、単離NK細胞上のNKp46への結合を可能にする。可変領域は、一本鎖ポリペプチドとして、例えば、F(ab)型と同様にペプチドリンカーによって分離された直列型可変領域として高親和性でNKp46に結合することができ、且つ一価結合剤として、NK細胞が標的細胞を溶解するように誘導することを可能にするNKp46エピトープに結合することができる。このような特性は、特に、重鎖及び軽鎖抗NKp46可変領域を介してNKp46及び目的の抗原に結合し、且つ目的の抗原に特異的に結合する超可変領域(例えば、重鎖及び軽鎖可変領域)を介して標的細胞上の目的の抗原に特異的に結合する多重特異的(例えば、二重特異的)タンパク質におけるものを含め、様々な適用例でこれらを有利にする。このような多重特異的タンパク質は、NK細胞をリダイレクトして、目的の抗原を発現する標的細胞、例えば、疾患に関与する細胞を溶解することができる。本明細書に開示される超可変領域及びヒト化可変領域は、一本鎖形態の一価結合性を維持し、これらが単一ポリペプチド鎖上に配置される構造で有利に使用することができるが、これらは、他の適用例、例えば、in vivo又はin vitroで(例えば、生物学的試料中で)ヒト及び/又は非ヒト霊長類NKp46ポリペプチドに結合し、それを調節し、且つ/又はそれを検出するように、例えば、可変領域が、別々の鎖上にある他のタンパク質、例えば、二重特異的抗体及びFcタンパク質、又はより一般的には単一特異的及び/又は従来の抗NKp46抗体上にある他のタンパク質でも使用し得ることを理解されたい。
【0013】
一態様では、ヒト及び非ヒト霊長類NKp46ポリペプチドの両方に(例えば、本明細書の方法により、表面プラズモン共鳴及び/又はフローサイトメトリーによって評価される、NKp46発現細胞に対して同様の親和性で)結合する抗原結合ドメイン(ABD)が提供される。一実施形態では、ABDは、一本鎖抗原結合ドメイン(例えば、scFv)としてNKp46ポリペプチドに結合することができる。一実施形態では、ABDは、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖可変領域(例えば、重鎖及び軽鎖可変ドメインが単一のポリペプチド鎖上に位置する)を含む(又はこれに含まれる)。別の実施形態では、重鎖及び軽鎖可変ドメインは、多量体タンパク質内の異なるポリペプチド鎖上に位置する。重鎖可変領域は、ヒト起源の重鎖フレームワーク領域を含み、軽鎖可変領域は、ヒト起源の軽鎖フレームワーク領域を含み、任意選択的に、重鎖及び/又は軽鎖フレームワーク領域は、1つ以上のアミノ酸改変(例えば、残基が、その位置の親(例えば、マウス)フレームワークに存在する残基によって置換される置換、復帰変異)を含み、任意選択的に、アミノ酸改変は、非ヒト霊長類NKp46への結合を提供するか又は増加させる。一実施形態では、このようなABD及び/又は可変領域を含むタンパク質、Fcタンパク質、抗体、又は抗体断片が提供される。一態様では、このような抗原結合ドメイン(ABD)をコードする単離された核酸及び/又は組換え核酸が提供される。
【0014】
このようなタンパク質又はポリペプチドの例としては、例えば、単一のポリペプチド鎖NKp46結合ドメイン(単一ポリペプチド鎖上に位置するヒトNKp46に結合するABD、例えば、(ポリ)ペプチドリンカーによって分離されたVH及びVLを含むポリペプチド)が挙げられる。一実施形態では、一本鎖NKp46結合ドメインは、ペプチドリンカーによって分離された、本明細書に開示されるVH及びVLドメインを含む。単一ポリペプチド鎖は、1つ以上のさらなるポリペプチド鎖を含む多鎖ポリペプチドに含まれてもよく、又は単一ポリペプチド鎖として単離されてもよい。抗NKp46 ABDを含むタンパク質又はポリペプチドの別の例としては、第1及び第2ポリペプチド鎖を含む多量体タンパク質が挙げられ、ここで、一方の鎖は、本明細書に開示される抗NKp46 ABDのVHドメインを含み、及び他方の鎖は、本明細書に開示される抗NKp46 ABDのVLを含み、これらの鎖は、VH及びVLがNKp46に結合する抗原結合ドメインを形成するように構成されている。
【0015】
一態様では、ヒトNKp46ポリペプチドに結合し、任意選択的に、非ヒト霊長類NKp46ポリペプチドにさらに結合するタンパク質又はポリペプチド(例えば、単一特異的、二重特異的、若しくは多重特異的抗体又はタンパク質、scFv、F(ab)、又はF(ab)2、多重特異的Fcタンパク質)が提供され、このタンパク質又はポリペプチドは、(a)ヒトIGHV1-69遺伝子に由来するヒト重鎖フレームワーク領域(FR1、FR2、及びFR3)と、NKp46-1抗体の重鎖CDR1、2、及び3とを含む重鎖可変領域;並びに(b)ヒトIGKV1-33遺伝子に由来するヒト軽鎖フレームワーク領域(FR1、FR2、及びFR3)と、NKp46-1抗体の軽鎖CDR1、2、及び3とを含む軽鎖可変領域を含む。任意選択的に、Kabat付番、Chotia付番、又はIMGT付番によって定義されるCDRである。一実施形態では、このタンパク質又はポリペプチドは、野生型NKp46ポリペプチドに結合するが、野生型NKp46に対する結合性と比較して、残基K41、E42、E119、Y121、及び/又はY194(配列番号1を参照されたい)のいずれか1つ以上の変異(例えば、アラニン置換)を有する変異NKp46ポリペプチドに対して低い結合性を有する。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列を含み、且つ/又は軽鎖可変領域は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、NKp46-1 H1又はH3可変ドメインのアミノ酸配列(又はこのアミノ酸配列と少なくとも80、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列)を含み、且つ軽鎖可変領域は、NKp46-1 L1可変ドメインのアミノ酸配列(又はこのアミノ酸配列と少なくとも80、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列)を含む。
【0016】
一態様では、ヒトNKp46ポリペプチドに結合し、任意選択的に、非ヒト霊長類NKp46ポリペプチドにさらに結合するタンパク質又はポリペプチド(例えば、単一特異的、二重特異的若しくは多重特異的抗体若しくはタンパク質、scFv、F(ab)、又はF(ab)2、多重特異的Fcタンパク質)が提供され、このタンパク質又はポリペプチドは、(a)IGHV4-30-4遺伝子に由来するヒト重鎖フレームワーク領域(FR1、FR2、及びFR3)と、NKp46-2抗体の重鎖CDR1、2、及び3とを含む重鎖可変領域;並びに(b)IGKV1-39遺伝子に由来するヒト軽鎖フレームワーク領域(FR1、FR2、及びFR3)と、NKp46-2抗体の軽鎖CDR1、2、及び3とを含む軽鎖可変領域を含む。任意選択的に、Kabat付番、Chotia付番、又はIMGT付番によって定義されるCDRである。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列を含み、且つ/又は軽鎖可変領域は、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、NKp46-2 H1、H2、又はH3可変ドメインのアミノ酸配列(又はこのアミノ酸配列と少なくとも80、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列)を含み、且つ軽鎖可変領域は、NKp46-2 L1可変ドメインのアミノ酸配列(又はこのアミノ酸配列と少なくとも80、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列)を含む。
【0017】
一態様では、ヒトNKp46ポリペプチドに結合し、任意選択的に、非ヒト霊長類NKp46ポリペプチドにさらに結合するタンパク質又はポリペプチド(例えば、単一特異的、二重特異的若しくは多重特異的抗体若しくはタンパク質、scFv、F(ab)、又はF(ab)2、多重特異的Fcタンパク質)が提供され、このタンパク質又はポリペプチドは、(a)IGHV1-69遺伝子に由来するヒト重鎖フレームワーク領域(FR1、FR2、及びFR3)と、NKp46-3抗体の重鎖CDR1、2、及び3とを含む重鎖可変領域;並びに(b)IGKV3-11及び/又はIGKV3-15遺伝子に由来するヒト軽鎖フレームワーク領域(FR1、FR2、及びFR3)(例えば、IGKV3-11及びIGKV3-15配列又はセグメントの両方を含むモザイク可変領域)と、NKp46-3抗体の軽鎖CDR1、2、及び3とを含む軽鎖可変領域を含む。任意選択的に、Kabat付番、Chotia付番、又はIMGT付番によって定義されるCDRである。一実施形態では、このタンパク質又はポリペプチドは、野生型NKp46ポリペプチドに結合するが、野生型NKp46に対する結合性と比較して、残基P132、E133、I135、及び/又はS136(配列番号1を参照されたい)のいずれか1つ以上の変異(例えば、アラニン置換)を有する変異NKp46ポリペプチドに対して低い結合性を有する。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列を含み、且つ/又は軽鎖可変領域は、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、NKp46-3 H1、H3、又はH4可変ドメインのアミノ酸配列(又はこのアミノ酸配列と少なくとも80、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列)を含み、且つ軽鎖可変領域は、NKp46-3 L1可変ドメインのアミノ酸配列(又はこのアミノ酸配列と少なくとも80、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列)を含む。
【0018】
一態様では、ヒトNKp46ポリペプチドに結合し、任意選択的に、非ヒト霊長類NKp46ポリペプチドにさらに結合するタンパク質又はポリペプチド(例えば、単一特異的、二重特異的若しくは多重特異的抗体若しくはタンパク質、scFv、F(ab)、又はF(ab)2、多重特異的Fcタンパク質)が提供され、このタンパク質又はポリペプチドは、(a)IGHV1-46及び/又はIGHV1-69遺伝子に由来するヒト重鎖フレームワーク領域(FR1、FR2、及びFR3)(例えば、IGHV1-46及びIGHV1-69配列又はセグメントの両方を含むモザイク可変領域)と、NKp46-4抗体の重鎖CDR1、2、及び3とを含む重鎖可変領域;並びに(b)IGKV1-NL1遺伝子に由来するヒト軽鎖フレームワーク領域(FR1、FR2、及びFR3)と、NKp46-4抗体の軽鎖CDR1、2、及び3とを含む軽鎖可変領域を含む。任意選択的に、Kabat付番、Chotia付番、又はIMGT付番によって定義されるCDRである。一実施形態では、このタンパク質又はポリペプチドは、野生型NKp46ポリペプチドに結合するが、野生型NKp46に対する結合性と比較して、残基R101、V102、E104、及び/又はL105(配列番号1を参照されたい)のいずれか1つ以上の変異(例えば、アラニン置換)を有する変異NKp46ポリペプチドに対して低い結合性を有する。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列を含み、且つ/又は軽鎖可変領域は、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、NKp46-4 H1可変ドメインのアミノ酸配列(又はこのアミノ酸配列と少なくとも80、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列)を含み、且つ軽鎖可変領域は、NKp46-4 L2可変ドメインのアミノ酸配列(又はこのアミノ酸配列と少なくとも80、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列)を含む。
【0019】
一態様では、ヒトNKp46ポリペプチドに結合し、任意選択的に、非ヒト霊長類NKp46ポリペプチドにさらに結合するタンパク質又はポリペプチド(例えば、単一特異的、二重特異的若しくは多重特異的抗体若しくはタンパク質、scFv、F(ab)、又はF(ab)2、多重特異的Fcタンパク質)が提供され、このタンパク質又はポリペプチドは、(a)IGHV4-30-4遺伝子に由来するヒト重鎖フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3)と、NKp46-9抗体の重鎖CDR1、2、及び3とを含む重鎖可変領域;並びに(b)IGKV1-39遺伝子に由来するヒト軽鎖フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3)と、NKp46-9抗体の軽鎖CDR1、2、及び3とを含む軽鎖可変領域を含む。任意選択的に、Kabat付番、Chotia付番、又はIMGT付番によって定義されるCDRである。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列を含み、且つ/又は軽鎖可変領域は、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、NKp46-9 H2可変ドメインのアミノ酸配列(又はこのアミノ酸配列と少なくとも80、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列)を含み、且つ軽鎖可変領域は、NKp46-9 L1又はL2可変ドメインのアミノ酸配列(又はこのアミノ酸配列と少なくとも80、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列)を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、NKp46-9 H3可変ドメインのアミノ酸配列(又はこのアミノ酸配列と少なくとも80、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列)を含み、且つ軽鎖可変領域は、NKp46-9 L1又はL2可変ドメインのアミノ酸配列(又はこのアミノ酸配列と少なくとも80、90%、95%、又は98%の同一性を共有するアミノ酸配列)を含む。
【0020】
一態様では、それぞれヒトFR1、2、及び3フレームワーク領域を含む重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合ドメイン、又はヒト及び非ヒト霊長類NKp46ポリペプチド、例えば、細胞表面NKp46ポリペプチドに結合するようなABDを含むタンパク質又はポリペプチド(例えば、モノクローナル抗体、scFv、多重特異的ポリペプチド、二重特異的抗体、DART(登録商標)、若しくはBiTe(登録商標)、又はこのようなものを含むタンパク質など)が提供され、このタンパク質又はポリペプチドは、
(a)それぞれ配列番号199又は200に示されているNKp46-1 H1又はH3可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%(又は100%)同一であるアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号201に示されているNKp46-1 L1可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を含むVL;
(b)それぞれ配列番号202、203、又は203に示されているNKp46-2 H1、H2、又はH3可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%(又は100%)同一であるアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号205に示されているNKp46-2 L1可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を含むVL;
(c)それぞれ配列番号206、207、又は208に示されているNKp46-3 H1、H3、又はH4可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%(又は100%)同一であるアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号209に示されているNKp46-3 L1可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を含むVL;
(d)配列番号210、211、又は212に示されているNKp46-4 H1、H2、又はH3可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%(又は100%)同一であるアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号213に示されているNKp46-4 L2可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を含むVL;
(e)それぞれ配列番号215に示されているNKp46-9 H2可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%(又は100%)同一であるアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号217又は218に示されているNKp46-9 L1又はL2可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を含むVL;又は
(f)配列番号215に示されているNKp46-9 H3可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%(又は100%)同一であるアミノ酸配列を含むVH、及びそれぞれ配列番号217又は218に示されているNKp46-9 L1又はL2可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を含むVL
からなる群から選択されるVH及びVLの組み合わせを含む。
【0021】
一態様では、それぞれヒトFR1、2、及び3フレームワーク領域を含む重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合ドメイン、又はヒト及び非ヒト霊長類NKp46ポリペプチドに結合するようなABDを含むタンパク質又はポリペプチドが提供され、このタンパク質又はポリペプチドは、
(a)配列番号3に示されているアミノ酸配列を有するVHドメインのCDR1、2、及び3と、ヒトIGHV1-69遺伝子セグメントのFR1、2、及び3とを含むVH、並びに配列番号4に示されているアミノ酸配列を有するVLドメインのCDR1、2、及び3と、ヒトIGKV1-33遺伝子セグメントのFR1、2、及び3とを含むVL;
(b)配列番号5に示されているアミノ酸配列を有するVHドメインのCDR1、2、及び3と、ヒトIGHV4-30-4遺伝子セグメントのFR1、2、及び3とを含むVH、並びに配列番号6に示されているアミノ酸配列を有するVLドメインのCDR1、2、及び3と、ヒトIGKV1-39遺伝子セグメントのFR1、2、及び3とを含むVL;
(c)配列番号7に示されているアミノ酸配列を有するVHドメインのCDR1、2、及び3と、ヒトIGHV1-69遺伝子セグメントのFR1、2、及び3とを含むVH、並びに配列番号8に示されているアミノ酸配列を有するVLドメインのCDR1、2、及び3と、ヒトIGKV3-11及び/又はIGKV3-15遺伝子セグメントのFR1、2、及び3とを含むVL;
(d)配列番号9に示されているアミノ酸配列を有するVHドメインのCDR1、2、及び3と、ヒトIGHV1-46及び/又はIGHV1-69遺伝子セグメントのFR1、2、及び3とを含むVH、並びに配列番号10に示されているアミノ酸配列を有するVLドメインのCDR1、2、及び3と、ヒトIGKV1-NL1遺伝子セグメントのFR1、2、及び3とを含むVL;
(e)配列番号13に示されているアミノ酸配列を有するVHドメインのCDR1、2、及び3と、ヒトIGHV4-30-4遺伝子セグメントのFR1、2、及び3とを含むVH、並びに配列番号14に示されているアミノ酸配列を有するVLドメインのCDR1、2、及び3と、ヒトIGKV1-39遺伝子セグメントのFR1、2、及び3とを含むVL
からなる群から選択されるVH及びVLの組み合わせを含む。
【0022】
任意の態様では、抗原結合ドメインは、抗体:NKp46-1 H1L1、NKp46-1 H3L1、NKp46-2 H1L1、NKp46-2 H2L1、NKp46-2 H3L1、NKp46-3 H1L1、NKp46-3 H3L1、NKp46-3 H4L1、NKp46-4 H1L2、NKp46-4 H2L2、NKp46-4 H3L2、NKp46-9 H2L1、NKp46-9 H2L2、NKp46-9 H3L1、又はNKp46-9 H3L2のいずれか1つのそれぞれのVH及びVLと少なくとも80%、90%、95%、又は98%(又は100%)同一であるアミノ酸配列を含むVH及びVLを含み得る。
【0023】
一態様では、それぞれヒトFR1、2、及び3フレームワーク領域を含む重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合ドメイン、又はNKp46ポリペプチドに結合するようなABDを含むタンパク質又はポリペプチド(例えば、抗体、多重特異的タンパク質)が提供され、このタンパク質又はポリペプチドは、抗体:NKp46-1 H1L1、NKp46-1 H3L1、NKp46-2 H1L1、NKp46-2 H2L1、NKp46-2 H3L1、NKp46-3 H1L1、NKp46-3 H3L1、NKp46-3 H4L1、NKp46-4 H1L2、NKp46-4 H2L2、NKp46-4 H3L2、NKp46-9 H2L1、NKp46-9 H2L2、NKp46-9 H3L1、又はNKp46-9 H3L2のいずれか1つのそれぞれのVH及びVLと少なくとも80%、90%、95%、又は98%(又は100%)同一であるアミノ酸配列を含む。これらの抗体のVH及びVL配列は、表C及び実施例1のパートBに列挙される。
【0024】
一実施形態では、NKp46-1 VLは、Kabat 87位にアミノ酸置換を含み得、任意選択的に、87位の残基はフェニルアラニンである。NKp46-1 VHは、Kabat残基27、66、及び/又は67にアミノ酸置換を含み、任意選択的に、Kabat残基37、48、及び/又は91に置換をさらに含み得る。任意選択的に、特定の位置に存在する残基は、例えば、実施例1に示されるように、本明細書の位置で置換された残基である。
【0025】
一実施形態では、NKp46-2 VLは、Kabat 48位にアミノ酸置換を含み得、任意選択的に、48位の残基はバリンである。NKp46-2 VHは、Kabat残基27及び/又は71にアミノ酸置換を含み、任意選択的に、Kabat残基48及び/又は67に置換をさらに含み、任意選択的に、Kabat残基31に置換をさらに含み得る。任意選択的に、特定の位置に存在する残基は、例えば、実施例1に示されるように、本明細書の位置で置換された残基である。
【0026】
一実施形態では、NKp46-3 VLは、Kabat 49位にアミノ酸置換を含み得、任意選択的に、49位の残基はリジンである。NKp46-3 VHは、Kabat残基27にアミノ酸置換を含み、任意選択的に、Kabat残基48及び/又は67に置換をさらに含み、任意選択的に、Kabat残基69に置換をさらに含み得る。任意選択的に、特定の位置に存在する残基は、例えば、実施例1に示されるように、本明細書の位置で置換された残基である。
【0027】
一実施形態では、NKp46-4 VLは、Kabat 36位及び/又は48位にアミノ酸置換を含み得、任意選択的に、36位の残基はフェニルアラニンであり、任意選択的に、48位の残基はバリンである。NKp46-4 VHは、Kabat残基30、48及び/又は93にアミノ酸置換を含み、任意選択的に、Kabat残基67に置換をさらに含み、任意選択的に、Kabat残基69に置換をさらに含み得る。任意選択的に、特定の位置に存在する残基は、例えば、実施例1に示されるように、本明細書の位置で置換された残基である。
【0028】
一実施形態では、NKp46-9 VLは、Kabat 36位にアミノ酸置換を含み得、任意選択的に、36位の残基はシステインであり、任意選択的に、Kabat残基48に置換をさらに含み、任意選択的に、48位の残基はバリンである。NKp46-9 VHは、Kabat残基71にアミノ酸置換を含み、任意選択的に、Kabat残基27に置換をさらに含み、任意選択的に、Kabat残基48及び/又は67に置換をさらに含み得る。任意選択的に、特定の位置に存在する残基は、例えば、実施例1に示されるように、本明細書の位置で置換された残基である。
【0029】
任意の実施形態の一態様では、このタンパク質又はポリペプチドは、NKp46に1価で結合する。任意の実施形態の態様では、このタンパク質又はポリペプチドは、NKp46に結合する1つ以下の抗原結合ドメインを含むか又は包含する。
【0030】
一実施形態では、このタンパク質又はポリペプチドは、ヒトFcドメイン又はその一部を含み、このFcドメイン又はその一部は、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)及びヒトCD16ポリペプチドに結合することができる。FcγRIIIa(CD16)が全てのNK細胞上に存在するわけでないため、FcγRIIIaを介して抗体依存性細胞毒性(ADCC)を与えるように設計された従来の治療用抗体(例えば、ヒトアイソタイプIgG1)は、全てのNK細胞を動員しない可能性があり;これに対して本タンパク質は、NKp46を介して全てのNK細胞を応答させることができ、従って、本タンパク質は、NKp46+CD16-NK細胞及びNKp46+CD16+NK細胞の細胞溶解活性を活性化又は増加させるのに有用となる。
【0031】
一実施形態では、このタンパク質又はポリペプチドは、ヒトFcドメイン又はその一部を含み、このFcドメイン又はその一部は、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合することができ、ヒトCD16ポリペプチドには結合しない。
【0032】
一実施形態では、このタンパク質又はポリペプチドは、一本鎖ポリペプチドである。一実施形態では、このタンパク質又はポリペプチドは、多量体ポリペプチド、任意選択的に、二量体、三量体、又は四量体タンパク質である。
【0033】
有利には、一実施形態では、NK細胞及び標的細胞の存在下において、多重特異的タンパク質は、(i)標的細胞上の目的の抗原及び(ii)NK細胞上のNKp46に結合することができ、標的細胞上の目的の抗原及びNKp46の両方に結合すると、NKp46によってNK細胞にシグナル伝達を誘導し、且つ/又はこのNK細胞を活性化することができ(このタンパク質はNKp46アゴニストとして作用する)、これにより、特にNKp46によって伝達される活性化シグナルによってNK細胞の活性化及び/又は標的細胞の溶解が促進される。特定の有利な実施形態では、多重特異的は、NKp46に結合する単一抗原結合ドメインを含む(このタンパク質はNKp46に1価で結合する)。一実施形態では、このタンパク質は、標的細胞上の目的の抗原及びNK細胞上のNKp46の両方に結合すると、NKp46によってNK細胞にシグナル伝達を誘導することができる。一実施形態では、このタンパク質は、第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインを含み、この第1又は第2の抗原結合ドメインの一方は、ヒトNKp46ポリペプチドに結合し、及びこの第1又は第2の抗原結合ドメインの他方は、標的細胞で発現される目的の抗原に結合する。
【0034】
一実施形態では、多重特異的タンパク質は、単量体である。一実施形態では、多重特異的タンパク質は、二量体、例えば、ヘテロ二量体、三量体、又は四量体である。一実施形態では、このタンパク質は、ヘテロ二量体、ヘテロ三量体、又はリンカーペプチドによって分離されたNKp46(本明細書に開示されるVH及びVL)に結合するABDのVH及びVLドメインを含む第1のポリペプチド鎖、及び任意選択的なFcドメイン、及び目的の抗原に結合する1つ以上の可変領域又は抗原結合ドメインを含む第2のポリペプチド鎖、及び任意選択的なFcドメインを含む四量体である。一実施形態では、第1及び第2のポリペプチド鎖の両方は、Fcドメインを含み、このタンパク質は、二量体Fcドメインを含み、任意選択的に、Fcドメインは、ヒトCD16に結合することができる。一実施形態では、単量体又は二量体タンパク質は、NKp46に結合する抗原結合ドメイン(ABD)と目的の抗原に結合する抗原結合ドメインとの間にFcドメインが入ったドメイン構造を有するタンパク質を含む。一実施形態では、多重特異的Fc由来ポリペプチドは、二重特異的抗体である。
【0035】
本明細書のタンパク質のいずれかの一実施形態では、目的の抗原に結合する多重特異的タンパク質の抗原結合ドメインは、NK細胞によって溶解しようとする標的細胞によって発現される抗原(例えば、ポリペプチド)に結合する。任意選択的に、このような抗原は、癌細胞、腫瘍関連免疫細胞(例えば、免疫抑制因子又は調節細胞)、ウイルス感染細胞、又は自己免疫若しくは炎症性疾患に寄与する細胞によって発現される。任意選択的に、目的の抗原は、それに特異的に結合する完全長ヒトIgG1抗体に接触したときに細胞内に内部移行され得ることが分かっている癌抗原である。
【0036】
本明細書の実施形態のいずれかの一態様では、VH及び/又はVL、抗体重鎖及び/又は軽鎖、一本鎖抗原結合ドメイン、本開示のタンパク質のいずれかの第1、第2、第3、又はさらなるポリペプチド鎖をコードする組換え核酸が提供される。本明細書の実施形態のいずれかの一態様では、本開示の核酸を含む組換え宿主細胞が提供される。
【0037】
いずれの方法も、特に「発明を実施するための形態」を含め、本出願に開示されるあらゆるステップを含むとしてさらに特徴付けることができる。本発明は、本明細書に開示のタンパク質を同定する、試験する、及び/又は産生する方法にさらに関する。本発明は、任意の本方法によって得ることができる多重特異的タンパク質にさらに関する。本開示は、本明細書に開示される多重特異的タンパク質の医薬剤又は診断剤にさらに関する。本開示は、治療又は診断の方法での多重特異的タンパク質の使用方法にさらに関する。
【0038】
本発明のこれら及び追加の有利な態様及び特徴は、本明細書の他の箇所でさらに説明され得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、抗CD19-F1-抗CD3は、分離されたときにB221(CD19)細胞株又はJURKAT(CD3)細胞株の存在下でT/B細胞凝集を引き起こさないが、B221細胞及びJURKAT細胞の両方が混合培養されたときに細胞の凝集を引き起こすことを示す。
【
図2-1】
図2A~Fは、産生された二重特異的タンパク質の異なるドメイン配置を示す。
【
図3】
図3A~Bは、NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、又はNKp46-4に基づくNKp46結合領域を有する二重特異的F1及びF2抗体は、静止NK細胞をそのCD19陽性Daudi腫瘍標的細胞に誘導することができるが、アイソタイプ対照抗体は、このDaudi細胞の除去をもたらさなかったことをそれぞれ示す。リツキシマブ(RTX)は、ADCCの陽性対照として機能し、RTX(このアッセイでは10μg/ml)で得られた最大応答は21.6%の特異的溶解であった。
【
図4-1】
図4A(上側パネルCD107、下側パネルCD69)は、F2形態タンパク質におけるNKp46及びCD19結合領域を有する二重特異的抗体が標的細胞の非存在下で静止NK細胞を活性化しないが、完全長抗NKp46抗体及び陽性対照アレムツズマブがNK細胞を活性化したことを示す。
【
図4-2】
図4Bは、Daudi標的細胞の存在下において、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体(NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、又はNKp46-4結合ドメインのそれぞれを含む)が静止NK細胞を活性化させたが(上側パネルCD107、下側パネルCD69)、完全長抗CD19が最良でもNK細胞の非常に低い活性化のみを示したことを示す。完全長抗NKp46抗体又はアレムツズマブのいずれも、NK細胞のみの存在下で観察された活性化を超える実質的な活性化の増加を示さなかった。
【
図4-3】
図4C(上側パネルCD107、下側パネルCD69)は、CD19陰性HUT78細胞の存在下において、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体(NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、又はNKp46-4可変領域のそれぞれを含む)のいずれもNK細胞を活性化しなかったことを示す。しかしながら、完全長抗NKp46抗体及びアレムツズマブは、NK細胞のみの存在下で観察された活性化と同様のレベルでNK細胞の検出可能な活性化を引き起こした。アイソタイプ対照抗体は活性化を誘導しなかった。
【
図5】
図5A~Bは、1:1の低いエフェクター:標的比において、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体のそれぞれがDaudi細胞の存在下でNK細胞を活性化させたこと、及び二重特異的抗NKp46x抗CD19が、ADCC誘導抗体である完全長ヒトIgG1のように抗CD19抗体よりも遥かに強力であることを示す。上側パネルはCD107(
図5A)であり、下側パネルはCD69(
図5B)を示す。
【
図6】
図6A~Bは、各NKp46xCD19二重特異的タンパク質(一本鎖形態F3、並びに多量体形態F5及びF6)は、ヒトKHYG-1 CD16陰性hNKp46陽性NK細胞株によってDaudi(
図6A)細胞又はB221(
図6B)細胞の特異的な溶解を誘導したが、リツキシマブ及びヒトIgG1アイソタイプ対照(IC)抗体は、それを誘導しなかったことを示す。
【
図7】FcドメインがCD16に結合するF5形態のNKp46xCD19二重特異的タンパク質は、Daudi標的細胞溶解の媒介において完全長IgG1抗CD19抗体又はF6形態二重特異的タンパク質よりも遥かに強力であることを示す。FcドメインがCD16に結合しないF6形態の二重特異的抗CD19は、完全長lgG1抗CD19抗体と同程度にDaudi標的細胞のNK細胞溶解の媒介において強力であり、これは、対照IgG1抗CD19抗体がCD19に二価で結合することを考えると注目に値する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書で使用される「1つの(a)」又は「1つの(an)」は1つ以上を意味し得る。請求項において「含む(comprising)」という語と共に使用される場合、「1つの(a)」又は「1つの(an)」という語は1つ又は2つ以上を意味し得る。
【0041】
「含む」が使用される場合、これは、任意選択的に「本質的に~からなる」で置き換えることができ、さらに任意選択的に「~からなる」に置き換えることができる。
【0042】
本明細書で使用される「抗原結合ドメイン」という語は、エピトープに免疫特異的に結合することができる3次元構造を含むドメインを指す。従って、一実施形態では、前記ドメインは、超可変領域、任意選択的に抗体鎖のVH及び/又はVLドメイン、任意選択的に少なくとも1つのVHドメインを含み得る。別の実施形態では、結合ドメインは、抗体鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含み得る。別の実施形態では、結合ドメインは、非免疫グロブリン足場からのポリペプチドドメインを含み得る。
【0043】
本明細書の「抗体」という語は、広い意味で使用され、特に、完全長モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、並びに抗体断片及び誘導体(但し、所望の生物学的活性を示すものに限られる)を含む。抗体の作製に適切な様々な技術が、例えば、Harlow,et al.,ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1988)に示されている。「抗体断片」は、完全長抗体、例えば、その抗原結合領域又は可変領域の一部を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab)2、F(ab’)2、F(ab)3、Fv(典型的には、抗体の単一アームのVL及びVHドメイン)、一本鎖Fv(scFv)、dsFv、Fd断片(典型的には、VH及びCH1ドメイン)、及びdAb(典型的には、VHドメイン)断片;VH、VL、VhH、及びV-NARドメイン;ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、及びカッパボディ(例えば、Ill et al.,Protein Eng 1997;10:949-57を参照されたい);ラクダIgG;IgNAR;並びに抗体断片から形成された多重特異的抗体断片、及び1つ以上の単離されたCDR又は機能的パラトープが挙げられ、単離されたCDR又は抗原結合残基若しくはポリペプチドは、機能的抗体断片を形成するように1つに結合又は連結され得る。様々なタイプの抗体断片が、例えば、Holliger and Hudson,Nat Biotechnol 2005;23,1126-1136;国際公開第2005040219号パンフレット、及び米国特許出願公開第20050238646号明細書及び同第20020161201号明細書に記載され、再考察されている。
【0044】
本明細書で使用される「抗体誘導体」という語は、完全長抗体、又は例えばその少なくとも抗原結合領域又は可変領域を含む抗体の断片を含み、1つ以上のアミノ酸が、例えば、アルキル化、PEG化、アシル化、エステル形成、又はアミド形成などによって化学修飾されている。これは、限定されるものではないが、PEG化抗体、システイン-PEG化抗体、及びこれらの変異体を含む。
【0045】
「超可変領域」という語は、本明細書で使用される場合、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般に、「相補性決定領域」又は「CDR」のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基24-34(L1)、50-56(L2)、及び89-97(L3)並びに重鎖可変ドメインの残基31-35(H1)、50-65(H2)、及び95-102(H3);Kabat et al.1991)、及び/又は「超可変ループ」のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基26-32(L1)、50-52(L2)、及び91-96(L3)及び重鎖可変ドメインの残基26-32(H1)、53-55(H2)、及び96-101(H3);Chothia and Lesk,J.Mol.Biol 1987;196:901-917)を含む。典型的には、この領域のアミノ酸残基の付番は、前出のKabatらに記載の方法によって行われる。本明細書の「Kabat位置」、「Kabatと同様の可変ドメイン残基の付番」、及び「Kabatによる」などの句は、重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインについてのこの付番方式を指す。Kabat付番方式を用いると、ペプチドの実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はCDRの短縮又はFR又はCDRへの挿入に一致するより少ない又は追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、CDR H2の残基52の後の単一アミノ酸挿入(Kabatによる残基52a)及び重鎖FR残基82の後の挿入残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b、及び82cなど)を含み得る。残基のKabat付番は、抗体の配列の相同領域と「基準」Kabat付番配列とのアラインメントによって所与の抗体について決定することができる。
【0046】
本明細書で使用される「フレームワーク」又は「FR」残基とは、CDRとして定義される部分を除く抗体可変ドメインの領域のことである。各抗体可変ドメインフレームワークは、CDRによって分離された連続した領域にさらに細分することができる(FR1、FR2、FR3、及びFR4)。
【0047】
本明細書で定義される「定常領域」とは、軽鎖又は重鎖免疫グロブリン定常領域遺伝子の1つによってコードされる抗体由来定常領域のことである。本明細書で使用される「定常軽鎖」又は「軽鎖定常領域」とは、κ(Cκ)又はλ(Cλ)軽鎖によってコードされる抗体の領域のことである。定常軽鎖は、典型的には、単一ドメインを含み、且つ本明細書で定義されるように、Cκの108~214位、又はCλを指し、付番は、EUインデックスによる((Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,United States Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda)。本明細書で使用される「定常重鎖」又は「重鎖定常領域」とは、μ、δ、γ、α、又はε遺伝子によってそれぞれコードされてIgM、IgD、IgG、IgA、又はIgEとして抗体のアイソタイプを確定する抗体の領域のことである。完全長IgG抗体では、本明細書で定義される定常重鎖は、CH1ドメインのN末端からCH3ドメインのC末端までを指し、従って118~447位を含み、付番は、EUインデックスによる。
【0048】
本明細書で使用される「Fab」又は「Fab領域」とは、VH、CH1、VL、及びCL免疫グロブリンドメインを含むポリペプチドのことである。Fabは、分離されたこの領域、又はポリペプチド、多重特異的ポリペプチド、若しくはABD、又は本明細書で概説された他の実施形態との関連でのこの領域を指し得る。
【0049】
本明細書で使用される「一本鎖Fv」又は「scFv」とは、抗体のVH及びVLドメインを含む抗体断片のことであり、これらのドメインは、単一ポリペプチド鎖に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、scFvが、抗原結合のための所望の構造を形成できるようにする、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvを作製する方法は当技術分野で周知である。scFvを作製する方法の再考察については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照されたい。
【0050】
本明細書で使用される「Fv」、又は「Fv断片」、又は「Fv領域」とは、単一抗体のVL及びVHドメインを含むポリペプチドのことである。
【0051】
本明細書で使用される「Fc」又は「Fc領域」とは、第1の定常領域免疫グロブリンドメインを除く、抗体の定常領域を含むポリペプチドのことである。従って、Fcは、IgA、IgD、及びIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、並びにIgE及びIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、並びに可撓性ヒンジN末端からこれらのドメインまでを指す。IgA及びIgMでは、FcはJ鎖を含み得る。IgGでは、Fcは、免疫グロブリンドメインCγ2(CH2)及びCγ3(CH3)、並びにCγ1とCγ2との間のヒンジを含む。Fc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、少なくとも残基C226、P230、又はA231からそのカルボキシ末端までを含むように定義され、この付番はEUインデックスによる。Fcは、以下に記載される、分離されたこの領域、又はFcポリペプチドとの関連でのこの領域を指し得る。本明細書で使用される「Fcポリペプチド」又は「Fc由来ポリペプチド」とは、Fc領域の全て又は一部を含むポリペプチドのことである。Fcポリペプチドは、限定されるものではないが、抗体、Fc融合体、及びFc断片を含む。
【0052】
本明細書で使用される「可変領域」とは、それぞれ軽鎖(κ及びλを含む)免疫グロブリン遺伝子座及び重鎖免疫グロブリン遺伝子座を構成するVL(Vκ(VK)及びVλを含む)遺伝子及び/又はVH遺伝子のいずれかによって実質的にコードされる1つ以上のIgドメインを含む抗体の領域のことである。軽鎖可変領域又は重鎖可変領域(VL又はVH)は、「相補性決定領域」又は「CDR」と呼ばれる3つの超可変領域によって中断された「フレームワーク」又は「FR」領域からなる。フレームワーク領域及びCDRとの関連では、例えば、Kabatと同様に(“Sequences of Proteins of Immunological Interest,” E.Kabat et al.,U.S.Department of Health and Human Services,(1983)を参照されたい)、及びChothiaと同様に正確に定義されている。抗体のフレームワーク領域、即ち、構成軽鎖及び構成重鎖の組み合わせフレームワーク領域は、CDRを配置して整列させる役割を果たし、CDRは抗原への結合に主に関与する。
【0053】
「特異的に結合する」という語は、抗体又はポリペプチドを、タンパク質の組換え形態、その中のエピトープ、又は単離された標的細胞の表面に存在するナイーブタンパク質のいずれかを用いて評価される、好ましくは競合的結合アッセイでの結合パートナー、例えば、NKp46に結合できることを意味する。競合的結合アッセイ及び特異的結合を決定する他の方法は、以下にさらに記載され、当技術分野で周知である。
【0054】
抗体又はポリペプチドが、特定のモノクローナル抗体(例えば、抗NKp46単一又は二重特異的抗体との関連でのNKp46-1、-2、-4、-6、又は-9)と「競合する」と言われる場合、この「競合する」は、抗体又はポリペプチドが、組換え標的(例えば、NKp46)分子又は表面発現標的(例えば、NKp46)分子のいずれかを用いた結合アッセイでモノクローナル抗体と競合することを意味する。例えば、試験抗体が、結合アッセイにおいてNKp46-1、-2、-4、-6、又は-9のNKp46ポリペプチド又はNKp46発現細胞に対する結合性を低下させる場合、抗体は、それぞれNKp46-1、-2、-4、-6、又は-9と「競合する」と言われる。
【0055】
本明細書で使用される「親和性」という語は、抗体又はポリペプチドのエピトープへの結合の強さを指す。抗体の親和性は、[Ab]×[Ag]/[Ab-Ag]として定義される解離定数KDによって示され、[Ab-Ag]は抗体-抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は非結合抗体のモル濃度であり、及び[Ag]は非結合抗原のモル濃度である。親和定数KAは1/KDによって定義される。mAbの親和性の決定に好ましい方法は、参照によりその全内容が本明細書に組み入れられるHarlow,et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988),Coligan et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1992,1993)、及びMuller,Meth.Enzymol.92:589-601(1983)に記載されている。mAbの親和性を決定するための当技術分野で周知の1つの好ましい標準的な方法では、(例えば、BIAcore(商標)SPR分析装置での分析によって)表面プラズモン共鳴(SPR)スクリーニングを使用する。
【0056】
本発明との関連では、「決定基」は、ポリペプチド上の相互作用又は結合の部位を指定する。
【0057】
「エピトープ」という語は、抗原決定基を指し、抗体又はポリペプチドが結合する抗原の範囲又は領域である。タンパク質エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基、並びに特定の抗原結合抗体又はペプチドによって効果的にブロックされるアミノ酸残基、即ち、抗体の「フットプリント」内のアミノ酸残基を含み得る。タンパク質エピトープは、例えば、抗体又は受容体と結合することができる複合抗原分子上の最も単純な形態又は最も小さい領域である。エピトープは、線形又は高次構造/構造であり得る。「線形エピトープ」という語は、アミノ酸の線形配列(一次構造)上の連続したアミノ酸残基から構成されるエピトープとして定義される。「高次構造又は構造エピトープ」という語は、全てが連続しているわけではないアミノ酸残基から構成され、従って分子の折り畳み(二次、三次、及び/又は四次構造)によって互いに近接するアミノ酸の線形配列の分離した部分を表すエピトープとして定義される。高次構造エピトープは3次元構造によって決まる。従って、「高次構造の」という語は、「構造の」という語と頻繁に同義的に使用される。
【0058】
本明細書の「アミノ酸改変」とは、ポリペプチド配列におけるアミノ酸の置換、挿入、及び/又は欠失のことである。本明細書のアミノ酸改変の一例は置換である。本明細書の「アミノ酸改変」とは、ポリペプチド配列におけるアミノ酸の置換、挿入、及び/又は欠失のことである。本明細書の「アミノ酸置換」又は「置換」とは、タンパク質配列の所与の位置のアミノ酸の別のアミノ酸での置換のことである。例えば、置換Y50Wは、親ペプチドの変異体を指し、50位のチロシンがトリプトファンで置換されている。ポリペプチドの「変異体」は、基準ポリペプチド、典型的にはナイーブ又は「親」ポリペプチドと実質的に同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。ポリペプチド変異体は、ナイーブアミノ酸配列内の特定の位置に1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を有し得る。
【0059】
「保存的な」アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、同様の物理化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるアミノ酸置換である。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で公知であり、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。
【0060】
2つ以上のポリペプチドの配列間の関係で使用される「同一性」又は「同一の」という語は、2つ以上のアミノ酸残基のストリング間の一致の数によって決定される、ポリペプチド間の配列関連性の程度を指す。「同一性」は、特定の計算モデル又はコンピュータープログラム(即ち、「アルゴリズム」)によって行われる、(存在する場合)ギャップアライメントを用いた同様の2つ以上の配列間の完全な一致のパーセントを示す。関連ポリペプチド間の同一性は、公知の方法によって容易に計算することができる。このような方法としては、限定されるものではないが、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M.Stockton Press,New York,1991;and Carillo et al.,SIAM J.Applied Math.48,1073(1988)に記載の方法が挙げられる。
【0061】
同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間の最大の一致を得るように設計されている。同一性を決定する方法は、公表されているコンピュータープログラムに記載されている。2つの配列間の同一性を決定するための好ましいコンピュータープログラム方法は、GAP(Devereux et al.,Nucl.Acid.Res.12,387(1984);Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,Wis.)、BLASTP、BLASTN、及びFASTA(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215,403-410(1990))を含め、GCGプログラムパッケージを含む。BLASTXプログラムは、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)及び他の情報源(BLAST Manual,Altschul et al.NCB/NLM/NIH Bethesda,Md.20894;Altschul et al.,前出)から公表されている。周知のSmith Watermanアルゴリズムも同一性の決定に使用することができる。
【0062】
「単離された」分子は、組成物中の主な種である分子であり、この組成物中では、この分子は、この分子が属する分子のクラスに対して見出される(即ち、単離された分子は、組成物中の分子のタイプの少なくとも約50%を構成し、典型的には、組成物中の分子、例えば、ペプチドの種の少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%以上を構成する)。通常、ポリペプチドの組成は、組成物中に存在する全てのペプチド種との関連でのポリペプチドに対して、又は少なくとも提案される使用との関連での実質的に活性なペプチド種に対して98%、98%、又は99%の均一性を示す。
【0063】
本明細書に関連して、「処置」又は「処置する」は、反対の旨の記載がない限り、疾患又は障害の1つ以上の症状又は臨床的に関連する兆候を予防すること、緩和すること、管理すること、治癒すること、又は軽減することを指す。例えば、疾患又は障害の症状又は臨床的に関連する兆候が確認されていない患者の「処置」は、防止又は予防療法であり、疾患又は障害の症状又は臨床的に関連する兆候が確認された患者の「処置」は、一般に、防止又は予防療法とはならない。
【0064】
本明細書で使用される「NK細胞」は、従来にない免疫に関与するリンパ球の亜集団を指す。NK細胞は、特定の特徴及び生物学的特性、例えば、ヒトNK細胞のCD56及び/又はNKp46を含む特定の表面抗原の発現、細胞表面のα/β又はγ/δTCR複合体の非存在、特定の細胞溶解装置の活性化によって「自己」MHC/HLA抗原を発現することができない細胞に結合してその細胞を殺す能力、NK活性化受容体のリガンドを発現する腫瘍細胞又は他の異常細胞を殺す能力、及び免疫応答を刺激又は抑制するサイトカインと呼ばれるタンパク質分子を放出する能力によって特定することができる。これらの特徴及び活性のいずれかを用いて、当技術分野で周知の方法でNK細胞を特定することができる。NK細胞のいかなる亜集団もNK細胞という語に包含される。本明細書に関連して、「活性な」NK細胞は、標的細胞を溶解するか又は他の細胞の免疫機能を促進する能力を有するNK細胞を含む生物学的に活性なNK細胞を指す。NK細胞は、当技術分野で公知の様々な技術、例えば、血液サンプルからの単離、細胞吸着除去療法、組織又は細胞の収集などによって得ることができる。NK細胞を伴うアッセイの有用なプロトコルは、Natural Killer Cells Protocols(edited by Campbell KS and Colonna M).Human Press.pp.219-238(2000)に記載されている。
【0065】
「内在化」という語は、「細胞内への内部移行」と互換的に用いられ、分子を細胞の細胞外表面から細胞の細胞内表面に移動させるプロセスに関連する分子事象、生化学的事象、及び細胞事象を指す。分子の細胞内への内部移行に関与するプロセスは周知であり、とりわけ、細胞外分子(例えば、ホルモン、抗体、及び有機小分子);膜結合分子(例えば、細胞表面受容体);及び細胞外分子に結合した膜結合分子の複合体(例えば、膜貫通受容体に結合したリガンド又は膜結合分子に結合した抗体)の内部移行を含み得る。従って、「内部移行の誘導及び/又は増加」は、細胞内への内部移行が開始され、且つ/又は細胞内への内部移行の速度及び/若しくは程度が増加する事象を含む。
【0066】
本明細書で使用される、Nkp46で「アゴニスト」活性を有する作用物質は、「NKp46シグナル伝達」を引き起こす又は増加させることができる作用物質である。「NKp46シグナル伝達」は、細胞内シグナル伝達経路を活性化させるか又は伝達するNKp46ポリペプチドの能力を指す。NKp46シグナル伝達活性の変化は、例えば、シグナル伝達要素のリン酸化の監視などによるNKp46シグナル伝達経路の変化を測定するように設計されたアッセイ、特定のシグナル伝達要素と他のタンパク質若しくは細胞内構造の結合を測定するアッセイ、又はキナーゼなどの成分の生化学活性において、又はNKp46感受性プロモーター又はエンハンサーの制御下でのレポーター遺伝子の発現を測定するように設計されたアッセイにより、又はNKp46ポリペプチドによって媒介される下流の効果(例えば、NK細胞における特定の細胞溶解装置の活性化)により間接的に測定することができる。レポーター遺伝子は、天然に存在する遺伝子であり得る(例えば、サイトカインの産生を監視する)、又は細胞に人工的に導入される遺伝子であり得る。他の遺伝子は、このような調節要素の制御下に置くことができ、従って、NKp46シグナル伝達のレベルを報告する役割を果たす。
【0067】
「NKp46」は、Ncr1遺伝子又はこのような遺伝子から調製されるcDNAによってコードされるタンパク質又はポリペプチドを指す。あらゆる天然に存在するイソ型、対立遺伝子、又は変異体は、NKp46ポリペプチドという語(例えば、配列番号1に90%、95%、98%、若しくは99%同一のNKp46ポリペプチド、又はその少なくとも20、30、50、100、若しくは200のアミノ酸残基の連続した配列)に包含される。ヒトNKp46(イソ型a)の304のアミノ酸残基の配列は、以下のように示される。
【化1】
【0068】
配列番号1は、NCBIアクセッション番号NP_004820に一致し、この開示は、参照により本明細書に組み入れられる。ヒトNKp46 mRNA配列は、NCBIアクセッション番号NM_004829に示されており、この開示は、参照により本明細書に組み入れられる。カニクイザル(macaca fascicularis)(カニクイザル)NKp46ポリペプチドの細胞外ドメインのアミノ酸残基配列は、次の通りである。
【化2】
【0069】
抗NKp46抗体の作製
抗NKp46抗原結合ドメインは、ヒトNKp46ポリペプチドの細胞外部分に結合する。一態様では、本開示のVH及びVLを含むタンパク質は、ヒト化抗体であるか又はそれを含む。一態様では、抗体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4定常ドメインから選択される定常ドメインを含み、任意選択的に1つ以上のアミノ酸改変を含む。一態様では、抗NKp46抗体は、Fab断片、Fab’断片、Fab’-SH断片、F(ab)2断片、F(ab’)2断片、Fv断片、重鎖Ig(ラマIg又はラクダIg)、VHH断片、単一ドメインFV、及び一本鎖抗体断片から選択される抗体断片を含む。一態様では、抗NKp46抗体は、scFV、dsFV、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、カッパボディ、IgNARから選択される合成又は半合成抗体由来分子;及び多重特異的抗体を含む。この作用物質は、任意選択的に、Fcドメインをさらに含み得る。一態様では、抗体は、少なくとも部分的に精製された形態である。一態様では、抗体は、本質的に単離された形態である。
【0070】
抗体は、当技術分野で公知の様々な技術によって作製することができる。例えば、参照によりその開示が本明細書に組み入れられる、2016年6月23日に出願されたPCT出願番号PCT/欧州特許出願公開第2016/064537号明細書(Innate Pharma)に記載されているように、抗体競合を評価することができる免疫学的スクリーニングアッセイは、本明細書の抗原結合ドメインを評価できるため、NKp46上の同じエピトープに結合する抗体を選択するために使用することができる。
【0071】
典型的には、本明細書で提供される抗NKp46抗体又はNKp46結合タンパク質は、NKp46ポリペプチド(例えば、本明細書の実施例で作製されるNKp46ポリペプチド)に対して約104~約1011M-1(例えば、約108~約1010M-1)の範囲の親和性を有する。例えば、特定の態様では、本開示は、例えば、(例えば、BIAcore(商標)SPR分析装置での分析による)表面プラズモン共鳴(SPR)スクリーニングによって決定される、NKp46に対する1×10-9M未満の平均解離定数(KD)を有する抗NKp46抗体又はNKp46結合タンパク質を提供する。より特定の例示的な態様では、本開示は、ヒト又はカニクイザルのNKp46タンパク質に対して約1×10-8M~約1×10-10M、又は約1×10-9M~約1×10-11MのKDを有する抗NKp46抗体又はNKp46結合タンパク質を提供する。一実施形態では、NKp46抗体又はNKp46結合タンパク質は、1-log又は2-logのみ異なる、ヒト及びカニクイザルNKp46タンパク質に対する解離定数(KD)を有する。
【0072】
抗体又はNKp46結合タンパク質は、例えば、約100ナノモル、約60ナノモル、約10ナノモル、約5ナノモル、又は1ナノモル以下、好ましくはサブナノモル以下、又は任意選択的に約500ピコモル、約200ピコモル、約100ピコモル、又は約10ピコモル以下の平均KD(即ち、これらよりも高い親和性)によって特徴付けることができる。KDは、例えば、例えば、組換え作製されたヒトNKp46タンパク質をチップ表面上に固定化し、続いて試験されるべき抗体を溶液に加えることによって決定することができる。
【0073】
NKp46ポリペプチド上に存在するエピトープに結合する抗体又は他のNKp46結合タンパク質をコードするDNAを単離し、適切な宿主へのトランスフェクションのための適切な発現ベクターに導入される。次いで、宿主は、抗体又は他のNKp46結合タンパク質の組換え作製のために使用される。例えば、DNAを発現ベクターに導入することができ、通常、免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞、例えば、大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞にトランスフェクションして、組換え宿主細胞で所望のタンパク質を合成した。
【0074】
一実施形態では、本明細書のタンパク質及び抗体は、NKp46のD1ドメイン、NKp46のD2ドメイン、又は配列番号1のNKp46ポリペプチドのD1及びD2ドメインの両方にまたがる領域に(D1及びD2ドメインの境界、D1/D2接合部で)結合する。一実施形態では、このタンパク質又は抗体は、10-8M未満、10-9M未満、又は10-10M未満のKDによって特徴付けられるヒトNKp46に対する親和性を有する。
【0075】
別の実施形態では、このタンパク質又は抗体は、抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、又はNKp46-4のようなNKp46上の実質的に同じエピトープでNKp46に結合する。別の実施形態では、抗体は、NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、又はNKp46-4によって結合されるセグメントに少なくとも部分的に重複するか、又はこのセグメントの少なくとも1つの残基を含む。一実施形態では、エピトープの全ての重要な残基は、ドメインD1又はD2に対応するセグメントにある。一実施形態では、抗体は、D1ドメインに存在する残基及びD2ドメインに存在する残基に結合する。一実施形態では、この抗体又はタンパク質は、配列番号1のNKp46ポリペプチドのドメインD1又はD2に対応するセグメントにおける1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つ以上の残基を含むエピトープに結合する。一実施形態では、この抗体又はタンパク質は、ドメインD1に結合し、且つ残基R101、V102、E104、及び/又はL105の1つ、2つ、3つ、又は4つを含むエピトープに結合する。一実施形態では、この抗体又はタンパク質は、ドメインD1/D2接合部に結合し、且つ残基K41、E42、E119、Y121、及び/又はY194の1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つを含むエピトープに結合する。一実施形態では、この抗体はドメインD2に結合し、且つ残基P132、E133、I135、及び/又はS136の1つ、2つ、3つ、又は4つを含むエピトープに結合する。
【0076】
本明細書の実施例のセクションは、一連の変異ヒトNKp46ポリペプチドの構造を説明する。NKp46変異体でトランスフェクトされた細胞への抗NKp46抗体又はタンパク質の結合を測定し、これを、野生型NKp46ポリペプチド(配列番号1)に結合する抗NKp46抗体又はタンパク質の能力と比較した。本明細書で使用される抗NKp46抗体又はタンパク質と変異NKp46ポリペプチドとの間の結合の減少は、結合親和性の低下(例えば、公知の方法、例えば、特定の変異体を発現する細胞のFACS試験により、又は変異ポリペプチドへの結合のBiacore試験により測定される)、及び/又は抗NKp46抗体又はタンパク質の全結合能力の低下(例えば、抗NKp46抗体濃度対ポリペプチド濃度のプロットにおけるBmaxの減少によって証明される)が存在することを意味する。結合の有意な減少は、変異残基が抗NKp46抗体又はタンパク質への結合に直接関与するか、又は抗NKp46抗体又はタンパク質がNKp46に結合するときに結合タンパク質に近接していることを示す。従って、エピトープは、好ましくはこのような残基を含み、且つこのような残基に隣接したさらなる残基を含み得る。
【0077】
一部の実施形態では、結合の有意な減少は、抗NKp46抗体又はタンパク質と変異NKp46ポリペプチドとの間の結合親和性及び/又は結合能力が、この抗体又はタンパク質と野生型NKp46ポリペプチド(例えば、配列番号1に示されるポリペプチド)との間の結合に対して40%超、50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、又は95%超減少していることを意味する。特定の実施形態では、結合は、検出可能な限界よりも低下する。一部の実施形態では、結合における有意な減少は、抗NKp46抗体の変異NKp46ポリペプチドへの結合が、抗NKp46抗体と野生型NKp46ポリペプチド(例えば、配列番号1に示されているポリペプチド(又はその細胞外ドメイン))との間で観察される結合の50%未満である(例えば、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、又は10%未満)であるときに証明される。このような結合の測定は、当技術分野で公知の様々な結合アッセイを用いて行うことができる。このような1つのアッセイの特定の例は、実施例のセクションで説明される。
【0078】
一部の実施形態では、野生型NKp46ポリペプチド(例えば、配列番号1)中の残基が置換された変異NKp46ポリペプチドに対して有意に低い結合性を示す抗NKp46抗体又はタンパク質が提供される。形態は、本明細書で使用される略語表記法では、野生型残基:ポリペプチド中の位置:配列番号1に示されている残基が付番された変異残基である。
【0079】
一部の実施形態では、抗NKp46抗体又はタンパク質は、野生型NKp46ポリペプチドに結合するが、野生型NKp46に対する結合性と比較して、残基R101、V102、E104、及び/又はL105(配列番号1を参照されたい)のいずれか1つ以上の変異(例えば、アラニン置換)を有する変異NKp46ポリペプチドに対して低い結合性を有する。
【0080】
一部の実施形態では、抗NKp46抗体又はタンパク質は、野生型NKp46ポリペプチドに結合するが、野生型NKp46に対する結合性と比較して、残基K41、E42、E119、Y121、及び/又はY194(配列番号1を参照されたい)のいずれか1つ以上の変異(例えば、アラニン置換)を有する変異NKp46ポリペプチドに対して低い結合性を有する。
【0081】
一部の実施形態では、抗NKp46抗体又はタンパク質は、野生型NKp46ポリペプチドに結合するが、野生型NKp46に対する結合性と比較して、残基P132、E133、I135、及び/又はS136(配列番号1を参照されたい)のいずれか1つ以上の変異(例えば、アラニン置換)を有する変異NKp46ポリペプチドに対して低い結合性を有する。
【0082】
親抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、及びNKp46-4の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、本明細書中の表Bに記載されている。ヒト及び非ヒト霊長類NKp46の両方に対して高い結合親和性を示したヒト化抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、及びNKp46-9の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、本明細書中の表Cに記載されている。
【0083】
NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp-46-4、NKp46-6、又はNKp46-9抗体の重鎖可変領域は、それぞれの抗体について、ヒト重鎖FR1フレームワーク領域;表Aに記載のアミノ酸配列又はその少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10の連続したアミノ酸の配列を含むHCDR1領域であって、これらのアミノ酸の1つ以上が異なるアミノ酸で置換されていてもよい、HCDR1領域;ヒト重鎖FR2フレームワーク領域;表Aに記載のアミノ酸配列又はその少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10の連続したアミノ酸の配列を含むHCDR2領域であって、これらのアミノ酸の1つ以上が異なるアミノ酸で置換されていてもよい、HCDR2領域;ヒト重鎖FR3フレームワーク領域;及び表Aに記載のアミノ酸配列又はその少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10の連続したアミノ酸の配列を含むHCDR3領域であって、これらのアミノ酸の1つ以上が異なるアミノ酸で置換されていてもよい、HCDR3領域を含み得る。任意選択的に、この可変領域は、ヒト重鎖FR4フレームワーク領域をさらに含む。
【0084】
NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp-46-4、NKp46-6、又はNKp46-9抗体の軽鎖可変領域は、それぞれの抗体について、ヒト軽鎖FR1フレームワーク領域;表Aに記載のアミノ酸配列又はその少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10の連続したアミノ酸の配列を含むLCDR1領域であって、これらのアミノ酸の1つ以上が異なるアミノ酸で置換されていてもよい、LCDR1領域;ヒト軽鎖FR2フレームワーク領域;表Aに記載のアミノ酸配列又はその少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10の連続したアミノ酸の配列を含むLCDR2領域であって、これらのアミノ酸の1つ以上が異なるアミノ酸で置換されていてもよい、LCDR2領域;ヒト軽鎖FR3フレームワーク領域;及び表Aに記載のアミノ酸配列又はその少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10の連続したアミノ酸の配列を含むLCDR3領域であって、これらのアミノ酸の1つ以上が欠失していてもよく、又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい、LCDR3領域を含み得る。任意選択的に、この可変領域は、ヒト軽鎖FR4フレームワーク領域をさらに含む。
【0085】
VH及びVLの組み合わせの例としては、
(a)配列番号3のCDR1、2、及び3と、ヒトIGHV1-69遺伝子セグメントのFR1、2、及び3とを含むVH、並びに配列番号4のCDR1、2、及び3と、ヒトIGKV1-33遺伝子セグメントのFR1、2、及び3とを含むVL;
(b)配列番号5のCDR1、2、及び3と、ヒトIGHV4-30-4遺伝子セグメントのFR1、2、及び3とを含むVH、並びに配列番号6のCDR1、2、及び3と、ヒトIGKV1-39遺伝子セグメントのFR1、2、及び3とを含むVL;
(c)配列番号7のCDR1、2、及び3と、ヒトIGHV1-69遺伝子セグメントのFR1、2、及び3とを含むVH、並びに配列番号8のCDR1、2、及び3と、ヒトIGKV3-11及び/又はIGKV3-15遺伝子セグメントのFR1、2、及び3とを含むVL;
(d)配列番号9のCDR1、2、及び3と、ヒトIGHV1-46及び/又はIGHV1-69遺伝子セグメントのFR1、2、及び3とを含むVH、並びに配列番号10のCDR1、2、及び3と、ヒトIGKV1-NL1遺伝子セグメントのFR1、2、及び3とを含むVL;又は
(e)配列番号13のCDR1、2、及び3と、ヒトIGHV4-30-4遺伝子セグメントのFR1、2、及び3とを含むVH、並びに配列番号14のCDR1、2、及び3と、ヒトIGKV1-39遺伝子セグメントのFR1、2、及び3とを含むVL
が挙げられる。
【0086】
別の態様では、VH及びVLの組み合わせの例としては、
(a)NKp46-1 H1又はH3可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を含むVH、及びNKp46-1 L1可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を含むVL;
(b)NKp46-2 H1、H2、又はH3可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を含むVH、及びNKp46-2 L1可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を含むVL;
(c)NKp46-3 H1、H3、又はH4可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を含むVH、及びNKp46-3 L1可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を含むVL;
(d)NKp46-4 H1可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を含むVH、及びNKp46-4 L2可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を含むVL;
(e)NKp46-9 H2可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を含むVH、及びNKp46-9 L1又はL2可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を含むVL;又は
(f)NKp46-9 H3可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を含むVH、及びNKp46-9 L1又はL2可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を含むVL
が挙げられる。
【0087】
一実施形態では、前述のCDRは、例えば、表Aに示されているようにKabatに従っている。一実施形態では、前述のCDRは、例えば、表Aに示されているようにChotia付番に従っている。一実施形態では、前述のCDRは、例えば、表Aに示されているようにIMGT付番に従っている。
【0088】
一実施形態では、特定のVH又はVLは、実施例1に示されているKabat位置でヒトフレームワークにアミノ酸置換(例えば、復帰変異)を含み;任意選択的に、対応するKabat位置において実施例1で置換されたアミノ酸残基は、特定の位置に存在するとして特定することができる。
【0089】
本明細書の実施形態のいずれかの別の態様では、重鎖及び軽鎖のCDR1、2、及び3のいずれも、その少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10の連続したアミノ酸の配列によって特徴付けることができ、且つ/又は対応する配列番号又は表Aに記載されている特定のCDR又はCDRのセットと少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、又は95%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有するとして特徴付けることができる。
【0090】
IMGT、Kabat、及びChothia定義システムによるCDRの配列は以下の表Aに要約されている。本発明による抗体の可変鎖の配列は以下の表Bに記載されている。本明細書の任意の実施形態では、VL又はVH配列は、シグナルペプチド又はその任意の一部を含むか又は欠くように指定又は付番することができる。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
多重特異的抗体及びポリペプチド
NKp46に結合する抗原結合ドメイン(ABD)は、本明細書で提供される抗NKp46 CDR、VH、及びVL配列に由来し得る(「抗NKp46可変ドメイン」のセクションを参照されたい)。抗原結合ドメインは、NKp46(例えば、細胞表面で発現されるヒトNKp46)に結合することができる抗原結合ドメインを形成するように同一又は別々のポリペプチドに配置することができる。ABDは、例えば、scFv、直列型scFv、Bite、DART、Fab、F(ab)2、抗体、二重特異的抗体、又は単量体若しくは多量体Fcタンパク質として作製することができる。
【0096】
多重特異的タンパク質(例えば、抗体、直列型scFv、BiTe、DART、Fcタンパク質)の構築のために、目的の抗原(NKp46以外)に結合する抗原結合ドメインを、様々な免疫グロブリン又は非免疫グロブリン足場、例えば、ブドウ球菌プロテインAのZドメイン、エンジニアリングされたKunitzドメインに基づくアフィボディ、ヒトフィブロネクチンIIIの第10の細胞外ドメインに基づくモノボディ又はアドネクチン、リポカリン由来のアンチカリン、DARPins(設計アンキリンリピートドメイン)、多量体化LDLR-Aモジュール、アビマー、又はシステインに富むノッチンペプチド(knottin peptide)から容易に得ることができる。例えば、参照によりその開示が本明細書に組み入れられるGebauer and Skerra(2009)Current Opinion in Chemical Biology 13:245-255を参照されたい。
【0097】
目的の抗原(NKp46以外)に結合する可変ドメインは、抗体、例えば、2つのポリペプチド鎖上に見られる関連するVL及びVHドメインの形態、又は一本鎖抗原結合ドメイン、例えば、scFv、VHドメイン、VLドメイン、dAb、V-NARドメイン、若しくはVHHドメインの形態の抗体から得ることができる。抗原結合ドメイン(例えば、ABD1及びABD2)も、Fabとして抗体から容易に得ることができる。
【0098】
典型的には、抗体は、最初は、抗体(例えば、ヒトポリペプチド)を得るのに望ましいポリペプチド、又は典型的には免疫原性断片であるその断片若しくは誘導体を含む免疫原を用いて、非ヒト動物、例えば、マウスの免疫によって得られる。非ヒト哺乳動物を抗原で免疫するステップは、マウスの抗体の産生を刺激するための当技術分野で周知の任意の方式で行うことができる(例えば、参照によりその全開示内容が本明細書に組み入れられるE.Harlow and D.Lane,Antibodies:A Laboratory Manual.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(1988)を参照されたい)。
【0099】
多重特異的ポリペプチドで使用するための目的の抗原(NKp46以外)に結合する抗原結合ドメイン(ABD)は、所望の細胞標的に基づいて選択することができ、例えば、癌抗原、細菌抗原、又はウイルス抗原などを含み得る。本明細書で使用される「細菌抗原」という語は、限定されるものではないが、無傷細菌、弱毒細菌、若しくは死菌、あらゆる構造的若しくは機能的細菌タンパク質若しくは炭水化物、又は抗原性であるべき十分な長さ(典型的には、約8アミノ酸以上)の細菌タンパク質の任意のペプチド部分を含む。例としては、グラム陽性細菌抗原及びグラム陰性細菌抗原が挙げられる。一部の実施形態では、細菌抗原は、ヘリコバクター(Helicobacter)種、特にヘリコバクターピロリス(Helicobacter pyloris);ボレリア(Borelia)種、特にボレリア・ブルグドルフェリ(Borelia burgdorferi);レジオネラ(Legionella)種、特にレジオネラ・ニューモフィリア(Legionella pneumophilia);マイコバクテリア属(Mycobacteria s)種、特に結核菌(M.tuberculosis)、アビウム菌(M.avium)、イントラセルラ菌(M.intracellulare)、M.カンサシイ(M.kansasii)、M.ゴルドナエ(M.gordonae);ブドウ球菌(Staphylococcus)種、特に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus);ナイセリア(Neisseria)種、特に淋菌(N.gonorrhoeae)、髄膜炎菌(N.meningitidis);リステリア(Listeria)種、特にリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes);ストレプトコッカス(Streptococcus)種、特にS.ピオゲネス(S.pyogenes)、S.アガラクティエ(S.agalactiae)、S.ファエカリス(S.faecalis);S.ボビス(S.bovis)、肺炎連鎖球菌(S.pneumonias);嫌気性連鎖球菌(anaerobic Streptococcus)種;病原性カンピロバクター(pathogenic Campylobacter)種;エンテロコッカス(Enterococcus)種;ヘモフィルス(Haemophilus)種、特にヘモフィルスインフルエンザ(Haemophilus influenzue);バチルス(Bacillus)種、特に炭疽菌(Bacillus anthracis);コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、特にコリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheriae);エリジペロスリックス(Erysipelothrix)種、特にブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae);クロストリジウム(Clostridium)種、特にウェルシュ菌(C.perfringens)、破傷風菌(C.tetani);エンテロバクター(Enterobacter)種、特にエンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、クレブシエラ(Klebsiella)種、特にクレブシエラ1Sニューモニエ(Klebsiella 1S pneumoniae)、パストレラ(Pasturella)種、特にパストレラ・マルトシダ(Pasturella multocida)、パスツレラ(Pasturella)種、特にパスツレラ・ムルトシダ(Pasturella multocida)、バクテロイデス(Bacteroides)種;フソバクテリウム(Fusobacterium)種、特にフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum);ストレプトバチルス(Streptobacillus)種、特にストレプトバチルス・モリホルミス(Streptobacillus moniliformis);トレポネーマ(Treponema)種、特にトレポネーマ(Treponema pertenue);レプトスピラ(Leptospira);病原性エシェリキア種(pathogenic Escherichia);及びアクチノマイセス(Actinomyces)種、特にアクチノミセス・イスラエリ(Actinomyces israelli)からなる群から選択される細菌に由来する。
【0100】
本明細書で使用される「ウイルス抗原」という語は、限定されるものではないが、無傷全ウイルス、弱毒全ウイルス、若しくは死滅全ウイルス、任意の構造的若しくは機能的ウイルスタンパク質、又は抗原性であるべき十分な長さ(典型的には、約8アミノ酸以上)のウイルスタンパク質の任意のペプチド部分を含む。ウイルス抗原の供給源としては、限定されるものではないが、レトロウイルス科(例えば、ヒト免疫不全ウイルス、例えば、HIV-1(HTLV-III、LAV、又はHTLV-III/LAV、又はHIV-IIIとも呼ばれる;及び他の分離株、例えば、HIV-LP;ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス;ヒトコクサッキーウイルス;ライノウイルス、エコーウイルス);カルシウイルス科(例えば、胃腸炎を引き起こす株);トガウイルス科(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(例えば、デングウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロナウイルス科(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス);ブンヤウイルス科(例えば、ハンタウイルス、ブンヤウイルス、フレボウイルス、及びナイロウイルス);アレナウイルス科(出血熱ウイルス);レオウイルス科(例えば、レオウイルス、オルビウイルス、及びロタウイルス);ボルナビリダエ科;ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);パポバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス(殆どのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(単純ヘルペスウイルス(HSV)1及び2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス;ポックスウイルス科(バリオラウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);及びイリダウイルス科(例えば、アフリカブタ熱ウイルス);及び未分類ウイルス(例えば、デルタ肝炎の作用物質(B型肝炎ウイルスの欠陥サテライト(defective satellite)と考えられる)、C型肝炎;ノーウォーク及び関連ウイルス、及びアストロウイルス)の科からのウイルスが挙げられる。別法では、ウイルス抗原は、組換えにより作製することができる。
【0101】
本明細書で使用される「癌抗原」及び「腫瘍抗原」という語は、同義的に使用され、癌細胞によって差次的に発現されるか、又は腫瘍促進効果(pro-tumor effect)(例えば、免疫抑制効果)を有する非腫瘍細胞(例えば、免疫細胞)によって発現される抗原(NKp46以外)を指し、これにより、癌細胞を標的にするために利用することができる。癌抗原は、明らかに腫瘍特異的免疫応答を潜在的に刺激し得る抗原である。これらの抗原の一部は、正常細胞によってコードされるが、必ずしも発現されるものではないか、又はより低いレベル若しくは少ない頻度で発現される。これらの抗原は、正常細胞では通常サイレントである(即ち、発現されない)抗原、分化の特定の段階のみで発現される抗原、及び胚抗原及び胎児抗原のように一時的に発現される抗原として特徴付けることができる。他の癌抗原は、変異細胞遺伝子、例えば、癌遺伝子(例えば、活性化ras癌遺伝子)、サプレッサー遺伝子(例えば、変異p53)、内部欠失又は染色体転座から生じる融合タンパク質によってコードされる。さらに他の癌抗原は、ウイルス遺伝子、例えば、RNA及びDNA腫瘍ウイルスに保持されたウイルス遺伝子によってコードすることができる。さらに他の癌抗原は、腫瘍促進効果を媒介することができる免疫細胞、例えば、単球又はマクロファージ、任意選択的に、サプレッサーT細胞、制御性T細胞、又は骨髄由来サプレッサー細胞上で発現させることができる。
【0102】
癌抗原は、通常、過剰発現されるか又は異常な回数で発現されるか、又は標的の細胞集団によって発現される正常細胞の表面抗原である。理想的には、標的抗原は、増殖細胞(例えば、腫瘍細胞)又は腫瘍促進細胞(例えば、免疫抑制効果を有する免疫細胞)上でのみ発現されるが、これは、実際には稀にのみ観察される。結果として、標的抗原は、多くの場合、増殖疾患組織と健康組織との間の差次的な発現に基づいて選択される。癌抗原の例としては、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、Cripto、CD4、CD20、CD30、CD19、CD38、CD47、糖タンパク質NMB、CanAg、Her2(ErbB2/Neu)、Siglecファミリーメンバー、例えば、CD22(Siglec2)又はCD33(Siglec3)、CD79、CD138、CD171、PSCA、L1-CAM、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、BCMA、CD52、CD56、CD80、CD70、E-セレクチン、EphB2、メラノトランスフェリン、Mud6、及びTMEFF2が挙げられる。癌抗原の例としては、免疫グロブリン免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)、例えば、サイトカイン受容体、Killer-Ig様受容体、CD28ファミリータンパク質、例えば、Killer-Ig様受容体3DL2(KIR3DL2)、B7-H3、B7-H4、B7-H6、PD-L1、IL-6受容体も挙げられる。例としては、網羅するものではないが、MAGE、MART-1/Melan-A、gp100、主要組織適合複合体クラスI関連鎖A及びBポリペプチド(MICA及びMICB)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、タンパク質チロシンキナーゼ7(PTK7)、受容体タンパク質チロシンキナーゼ3(TYRO-3)、ネクチン(例えば、ネクチン-4)、主要組織適合複合体クラスI関連鎖A及びBポリペプチド(MICA及びMICB)、UL16結合タンパク質(ULBP)ファミリーのタンパク質、レチノイン酸初期transcript-1(RAET1)ファミリーのタンパク質、癌胎児抗原(CEA)及びその免疫原性エピトープCAP-1及びCAP-2、etv6、aml1、前立腺特異的抗原(PSA)、T細胞受容体/CD3ζ鎖、腫瘍抗原のMAGEファミリー、腫瘍抗原のGAGEファミリー、抗ミュラー管ホルモンII型受容体、δ様リガンド4(DLL4)、DR5、ROR1(受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1又はNTRKR1(EC2.7.10.1)としても知られている)、BAGE、RAGE、LAGE-1、NAG、GnT-V、MUM-1、CDK4、MUCファミリー、VEGF、VEGF受容体、アンジオポイエチン-2、PDGF、TGF-α、EGF、EGF受容体、ヒトEGF様受容体ファミリーのメンバー、例えば、HER-2/neu、HER-3、HER-4、又は少なくとも1つのHERサブユニットからなるヘテロ二量体受容体、ガストリン放出ペプチド受容体抗原、Muc-1、CA125、インテグリン受容体、αvβ3インテグリン、α5β1インテグリン、αIIbβ3-インテグリン、PDGFβ受容体、SVE-カドヘリン、IL-8受容体、hCG、IL-6受容体、CSF1R(腫瘍関連単球及びマクロファージ)、α-フェトプロテイン、E-カドヘリン、α-カテニン、β-カテニン、及びγ-カテニン、p120ctn、PRAME、NY-ESO-1、cdc27、大腸線種様ポリープタンパク質(APC)、フォドリン、コネキシン37、Ig-イディオタイプ、p15、gp75、GM2及びGD2ガングリオシド、ウイルス産物、例えば、ヒトパピローマウイルスタンパク質、imp-1、P1A、EBVコード核抗原(EBNA)-1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX-1、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-1、SSX-4、SSX-5、SCP-1、及びCT-7、及びc-erbB-2が挙げられる。一態様では、目的の抗原は、例えば、Fcγ受容体細胞の存在下又は非存在下のいずれかにおいて、従来のヒトIgG1抗体によって結合されると細胞内に内部移行され得る抗原(例えば、上記の抗原のいずれか1つ)である。一態様では、目的の抗原は、CD19ポリペプチドであり;一態様では、多重特異的タンパク質はscFvを含み、このscFvは、本明細書の実施例の抗CD19 scFvの配列と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、又は95%同一であるアミノ酸配列を含むCD19に結合するか、又は本明細書に示される抗CD19重鎖及び軽鎖可変領域の重鎖及び軽鎖CDR-1、2、及び3を含む。
【0103】
一実施形態では、目的の抗原に結合するABDは、目的の抗原(例えば、マウス抗体、ヒト抗体)に結合する親抗体に由来し(例えば、この親抗体の超可変領域又はそのCDRを含み)、その抗原性標的(細胞上の目的の抗原)に結合すると、この目的の抗原の抑制的調節又は細胞内への内部移行を促進又は誘導する。一実施形態では、目的の抗原は、癌抗原、例えば、内部移行することが分かっている上記の癌抗原(例えば、免疫グロブリン免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)メンバー、例えば、サイトカイン受容体α鎖又はβ鎖、Killer-Ig様受容体、CD28ファミリータンパク質、B7-H3、B7-H4、B7-H6、KIR3DL2、PTK7、ROR1、L1-CAM、Siglecファミリーメンバー、EGF受容体及びEGF様受容体ファミリーメンバー、EGFR、HER-2、インテグリン、抗MullerianホルモンII型受容体、及びCSF-1Rなど)の1つである。一実施形態では、抗原性標的は、腫瘍促進効果を媒介することができる免疫細胞、例えば、単球又はマクロファージ、任意選択でサプレッサーT細胞、制御性T細胞、又は骨髄由来サプレッサー細胞上に存在するポリペプチドである。
【0104】
一実施形態では、非NKp46 ABDは、癌抗原、ウイルス抗原、微生物抗原、又は感染細胞(例えば、ウイルス感染)又は炎症促進性免疫細胞上に存在する抗原に結合する。
【0105】
所望の特異性及び/又は活性を有する適切な抗原結合ドメインが特定されると、ABDのそれぞれをコードするDNAを、適切な宿主へのトランスフェクションのために、任意の要素、例えば、酵素認識タグ、CH1、Cκ、CH2及び/又はCH3ドメイン並びに他の任意選択的な要素をコードするDNA(例えば、ヒンジ領域をコードするDNA)と共に、適切な配置で適切な発現ベクターに別個に配置することができる。ABDは、互いに機能的に連結された所望のドメインを有するFcポリペプチドを作製するために、いずれのタイプのポリペプチドが作製されるべきかに応じて、1つの発現ベクター又は別個のベクターに配置することができる。次いで、宿主を多重特異的ポリペプチドの組換え産生に使用することができる。
【0106】
例えば、ポリペプチド融合産物をベクターから作製することができ、このベクターでは2つのABDの第1のABDが、CH2ドメインのN末端に(例えば、重鎖又は軽鎖CH1、CK、又はCλ定常領域及び/又はヒンジ領域を介して直接)機能的に連結され、CH2ドメインが、そのC末端からN末端でCH3ドメインに機能的に連結されている。2つのABDの第2のABDは、いずれかの末端でポリペプチドに連結することができるか、又は第1のABDを含むポリペプチドと二量体、例えば、ヘテロ二量体を形成する第2のポリペプチド鎖上とすることができる。このポリペプチドは、完全長Fcドメインを含み得る。
【0107】
次いで、例えば、多重特異的ポリペプチドを適切な宿主細胞で又は任意の適切な合成プロセスによって産生することができる。多重特異的ポリペプチドの発現用に選択された宿主細胞は、限定されるものではないが、免疫グロブリンCH2ドメインのタンパク質を装飾するオリゴ糖部分の組成の変化を含め、最終組成物にとって重要な寄与因子である。宿主細胞は、哺乳動物起源であってもよく、又はCOS-1、COS-7、HEK293、BHK21、CHO、BSC-1、Hep G2、653、SP2/0、293、HeLa、骨髄腫、リンパ腫、酵母、昆虫若しくは植物細胞、又はそれらの任意の誘導体、不死化若しくは形質転換細胞から選択してもよい。別法では、宿主細胞は、ポリペプチドをグリコシル化できない種又は生物、例えば、原核細胞又は生物、例えば、天然又はエンジニアリングされた大腸菌属(E.coli spp.)、クレブシエラ属(Klebsiella spp.)、又はシュードモナス属(Pseudomonas spp.)から選択することができる。
【0108】
様々な異なるタンパク質形態を、単量体、ヘテロ二量体、ヘテロ三量体、及び四量体の多重特異的タンパク質を含む本開示のNKp46結合VH-VL対を使用して調製することができる。限定されるものではないが、例えば、参照によりその開示が本明細書に組み入れられる、2016年6月23日に出願されたPCT出願番号PCT/欧州特許出願公開第2016/064537号明細書(Innate Pharma)に記載されている様々な形態のいずれも含まれる。
【0109】
単量体タンパク質
一例では、多重特異的タンパク質は、単一ポリペプチド鎖中において、NKp46に結合する第1の抗原結合ドメイン(例えば、(ポリ)ペプチドリンカーによって分離された、本明細書に開示されるVH及びVLを含むABD)及びNKp46以外の抗原に結合する第2の抗原結合ドメインを含む。一実施形態では、タンパク質又はポリペプチドは、本開示の抗NKp46 VH及びVLを含むscFv、又はNKp46に結合するscFvを含む直列型scFv、及び任意選択的に別のポリペプチド又はアミノ酸配列に融合された(ポリ)ペプチドリンカーによって連結された、NKp46又はNKp46以外の目的の抗原に結合する第2のscFvであるか、又はこれらを含む。
【0110】
このような一本鎖抗原結合タンパク質の例としては、BiTE及びDARTタンパク質形態が挙げられる。BITE(登録商標)(Bispecific T-cell Engager)として知られているscFvベースの二重特異的抗体構築物は、可撓性リンカーを介して直列に連結された、それぞれVHとVLとの対によって提供される、2つの抗原結合ドメインを含む単一ポリペプチドを利用する(例えば、Nagorsen et al.,2009,Leukemia&Lymphoma 50:886-91;Amann et al.,2009,J Immunother 32:453-64;Baeuerle and Reinhardt,2009,Cancer Res 69:4941-44を参照されたい)。DART(登録商標)(Dual-Affinity Re-Targeting)と呼ばれる別の二重特異的抗体は、ジスルフィド安定化ダイアボディ設計を利用する(例えば、Moore et al.,2011,Blood 117:4542-51;Veri et al.,2010,Arthritis Rheum 62:1933-43を参照されたい)。
【0111】
一実施形態では、単一ポリペプチド鎖は、Fcドメイン(例えば、完全長Fcドメイン又はその一部)をさらに含み、任意選択的に、Fcドメインは、第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとの間に配置される。
【0112】
任意の実施形態の一態様では、第1の抗原結合ドメイン及び/又は第2の抗原結合ドメインは、scFvを含み、任意選択的に、このscFvは、ヒトフレームワークアミノ酸配列を含む。一実施形態では、(a)NKp46に結合する第1のscFv、(b)NKp46以外の抗原に結合する第2のscFv、及び任選択的に(c)ヒトFcドメインの少なくとも一部を含む単量体二重特異的Fc由来ポリペプチドが提供される。任選択的的に、このFcドメインは、(i)別のFc由来ポリペプチドと二量体化せず、且つ(ii)ヒトFcRnに結合することができる。任意選択的に、Fcドメインは、第1のscFvと第2のscFvとの間に配置される。
【0113】
2つのABD及びFcドメインの少なくとも一部を含むポリペプチド融合産物が単量体である場合、CH3ドメインは、CH3-CH3二量体化を防止するために配置することができ、且つ/又はアミノ酸改変を含むことができる。一実施形態では、CH3ドメインは、鎖間CH3-CH3二量体化を防止するために二量体の界面に変異を含む。別の実施形態では、CH3ドメインは、鎖間CH3-CH3二量体化を防止するための直列型CH3ドメインである(又はFcドメインが直列型CH3ドメインを含む)。このような単量体は、(例えば、野生型完全長ヒトIgG1抗体と比較して)部分的なFcRn結合性を維持する。任意選択的に、単量体ポリペプチドは、中程度の親和性でヒトFcRnに結合することができ、例えば、FcRnに対する結合性を維持するが、完全長野生型ヒトIgG1抗体と比較して、ヒトFcRn受容体に対して低い結合性を有する。Fc部分は、例えば、CH2ドメインに、1つ以上のFcγ受容体に対する結合性をさらに低下させるか、又は実質的に消失させる1つ以上のアミノ酸改変をさらに含み得る。
【0114】
1つの構成では、ヒトFcドメインの少なくとも一部を有する単量体Fc由来ポリペプチドは、CH2ドメイン及びCH3ドメインを有利に含むことができ、前記CH3ドメインは、別のFc由来ポリペプチドとの二量体化を防止するための改変CH3二量体界面(例えば、CH3二量体界面の変異)を含む。例えば、
図2A)の形態1及び2を参照されたい。本明細書の任意のポリペプチド又は方法の一実施形態では、CH3ドメインは、L351位、T366位、L368位、P395位、F405位、T407位(又はY407位)、及び/又はK409位(Kabatと同様のEU付番)の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つでアミノ酸置換を含む。
【0115】
単量体多重特異的タンパク質に使用することができるCH3ドメインの別の構成は、直列型CH3ドメインである(例えば、
図2Aの形態3及び4を参照されたい)。直列型CH3ドメインは、第1及び第2のCH3ドメインを含み、2つのCH3ドメインは、非共有相互作用を介して互いに結合している。一実施形態では、2つのCH3ドメインは、各CH3ドメインのCH3二量体化界面を介して互いに結合している。一実施形態では、ポリペプチド鎖は、Fcドメインを含む別のポリペプチド鎖と二量体化しない。直列型CH3ドメインを含むFcドメインは、新生児Fc受容体(FcRn)と相互作用するが、ヒトFcγ受容体、特にCD16に対して低い結合性を有するか又は結合しない。
【0116】
多量体タンパク質
NKp46に結合するABD(例えば、本明細書に開示されるVH及びVLを含むABD)を含む多量体二重特異的タンパク質、例えば、ヘテロ二量体、ヘテロ三量体、及び四量体(後者は、例えば、2つの重鎖及び2つの軽鎖を有する抗体を含む)は、様々な形態に従って作製することができる。
【0117】
一実施形態では、多量体タンパク質又はポリペプチドは、2つの異なる親抗体に由来する可変領域(又はその1CDR、2CDR、若しくは3CDR)を含む2つの重鎖、及び2つの異なる親抗体に由来する可変領域(又はその1CDR、2CDR、若しくは3CDR)を含む2つの軽鎖から構成される四量体抗体である。このような四量体は、(a)可変領域、CH1ドメイン、ヒンジ、及びFcドメインをそれぞれ含む2つの重鎖、並びに(b)軽鎖可変領域及びCKドメインをそれぞれ含む2つの抗体軽鎖を含むことができ、一方の重鎖可変領域は、軽鎖可変領域と共にNKp46に結合し、他方の重鎖可変領域は、軽鎖可変領域と共に目的の抗原に結合する。
【0118】
多量体タンパク質を作製する1つの有利な方法は、それぞれヒトCH1又はCκ定常ドメイン(V-(CH1/Cκ)単位)に融合された少なくとも1つの重鎖又は軽鎖可変ドメインを含む異なるポリペプチド鎖の組立によるものであり、タンパク質鎖は、CH1-Cκ二量体化され、且つ非共有結合によって、及び任意選択的なそれぞれのCH1とCκドメインとの間に形成されるジスルフィド結合によってさらに互いに結合される。一実施形態では、それぞれV-(CH1/Cκ)単位を含む少なくとも2つ又は3つのポリペプチド鎖を含む、第1及び第2の抗原に結合する単離又は精製されたヘテロ二量体又はヘテロ三量体タンパク質が提供され、これにより、これらの鎖は、非共有結合により、及び任意選択的にCH1とCκドメインとの間のジスルフィド結合により、さらに互いに結合され、任意選択的に、これにより、これらの鎖は、Fc部分のそれぞれの可変領域とCH3ドメインとの間の非共有結合によってさらに結合される。
【0119】
可変領域及び定常領域は、各鎖がその所望の相補的なパートナー鎖(partner chain)と優先的に会合するように選択及び構成することができる。従って、得られる多量体タンパク質は、組換え宿主細胞を用いる従来の作製方法を用いて作製するのが容易である。単位におけるCH1及びCκといずれのVH、VLを会合させるかの選択は、所望の多量体の形成を促進するように対合するべき単位間の親和性に基づく。得られる多量体は、相補的なVHドメインとVLドメインとの間の非共有結合により、相補的なCH1ドメインとCκドメインとの間の非共有結合により、及び任意選択的に相補的なCH1ドメインとCκドメインとの間のジスルフィド結合により、及び/又は任意選択的に相補的なヒンジドメイン間のジスルフィド結合により、さらに結合される。VH-VL会合は、VH-VH又はVL-VLよりも強く、結果として、本明細書に示されるように、VH又はVLをCH1又はCκのいずれかに隣接して配置することができ、且つ得られるV-C単位は、好ましくはそのV-C対応物とパートナーになる。例えば、VH-Cκは、VH-CH1よりもVL-CH1と優先的に対合する。加えて、Fcドメインを含むことにより、2つのFc含有鎖がFcドメインのCH3ドメイン間の非共有結合によって結合されるため、好ましい鎖対合がさらに改善される。異なるV-C組み合わせは、任意選択的に、Fc対合にさらに組み合わせられ、これによりヘテロ多量体タンパク質を作製するためのツールを提供する。
【0120】
一実施形態では、ヘテロ多量体ポリペプチド又はタンパク質は、単量体Fcドメインを含み(例えば、第2のポリペプチドはFcドメインを含まない)、任意選択的に、Fcドメインは、CH3-CH3二量体化を防止するアミノ酸変異を有するCH3ドメイン又は直列型CH3ドメインを含む。
【0121】
別の実施形態では、上記ヘテロ多量体ポリペプチド又はタンパク質は、ヒトCD16に結合することができる二量体Fcドメイン、例えば、アミノ酸残基N297でN結合型グリコシル化を含むヒトFcドメイン(Kabat EU付番)を含む。
【0122】
ヘテロ二量体は、例えば、以下の構成を有することができる(
図2A及び
図2Cに形態2、11、及び12として示されているようなタンパク質の例も参照されたい)。
【化3】
ここで、第1のポリペプチド鎖のV
a-1及び第2のポリペプチド鎖のV
b-1の一方は軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は重鎖可変ドメインであり、V
a-2及びV
b-2の一方は軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は重鎖可変ドメインである。
【0123】
ヘテロ二量体は、別の例では、以下の構成を有することができる(
図2Bに形態10として示されているこのようなタンパク質の例も参照されたい)。
【化4】
ここで、第1のポリペプチド鎖のV
a-1及び第2のポリペプチド鎖のV
b-1の一方は軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は重鎖可変ドメインであり、V
a-2及びV
b-2の一方は軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は重鎖可変ドメインである。
【0124】
得られるヘテロ二量体は、別の例では、以下の構成を有することができる(
図2D及び
図2Eに形態13及び14として示されているようなタンパク質の例も参照されたい)。
【化5】
ここで、第1のポリペプチド鎖のV
a-1及び第2のポリペプチド鎖のV
b-1の一方は軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は重鎖可変ドメインであり、V
a-2及びV
b-2の一方は軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は重鎖可変ドメインである。
【0125】
ヘテロ三量体タンパク質は、例えば、第1のCH1又はCK定常領域に融合された第1の可変ドメイン(V)、第2のCH1又はCK定常領域に融合された第2の可変ドメイン(V)、及び第1の可変ドメインと第2の可変ドメインとの間に配置されたFcドメイン又はその一部(即ち、Fcドメインは、第1及び第2のV-(CH1/CK)単位間に配置されている)を含む中心(第1)のポリペプチド鎖を使用することによって形成することができる。例えば、ヘテロ三量体タンパク質に使用される中心のポリペプチド鎖は、(N末端からC末端に)以下のドメイン配置を有することができる:
Va-1-(CH1又はCK)a-Fcドメイン-Va-2-(CH1又はCK)b。
【0126】
次いで、第2のポリペプチド鎖は、(N末端からC末端に)ドメイン配置:
Vb-1-(CH1又はCK)c、又は
Vb-1-(CH1又はCK)c-Fcドメイン
を含むことができ、それにより、(CH1又はCK)cが中心鎖の(CH1又はCK)aと二量体化し、Va-1とVb-1とが抗原結合ドメインを形成する。
【0127】
次いで、第3のポリペプチド鎖は、(N末端からC末端に)ドメイン配置:
Vb-2-(CH1又はCK)d
を含むことができ、それにより、(CH1又はCK)dが中心鎖の(CH1又はCK)b単位と二量体化し、Va-2とVb-2とが抗原結合ドメインを形成する。
【0128】
二量体Fcドメイン(
図2D及び
図2Eにも形態5、6、7、及び16として示されている)を有する、得られるヘテロ三量体の構成の一例は、ドメイン配置:
【化6】
を有する。
【0129】
単量体Fcドメイン(
図2B及び
図2Cにも形態8、9、及び17として示されている)を有する、得られるヘテロ三量体の構成の一例は、ドメイン配置:
【化7】
を有する。
【0130】
従って、三量体ポリペプチドの構成では、第1のポリペプチドは、別個のポリペプチド鎖の可変ドメイン(即ち、第2鎖及び第3鎖の可変ドメイン)を有する抗原結合ドメインをそれぞれ形成する2つの可変ドメインを有することができ、第2のポリペプチド鎖は、1つの可変ドメインを有し、第3のポリペプチドは、1つの可変ドメインを有する。
【0131】
三量体ポリペプチドは、
(a)第1のCH1又はCK定常領域に融合された第1の可変ドメイン(V)、第2のCH1又はCK定常領域に融合された第2の可変ドメイン(V)、及び第1の可変ドメインと第2の可変ドメインとの間に配置されたFcドメイン又はその一部を含む、第1のポリペプチド鎖、
(b)第1及び第2のポリペプチドがCH1-CKヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖の第1のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択されたCH1又はCK定常領域にそのC末端で融合された可変ドメイン、及び任意選択的にFcドメインを含む、第2のポリペプチド鎖、及び
(c)CH1又はCK定常領域に(例えば、そのC末端で)融合された可変ドメインを含む、第3のポリペプチド鎖であって、この可変ドメイン及び定常領域が、第1のポリペプチド鎖の第2の可変ドメイン及び第2のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択され、それにより、第1及び第3のポリペプチドが、非共有結合により、及び任意選択的に、第3のポリペプチドのCH1又はCK定常領域と第1のポリペプチドの第1のCH1又はCK定常領域との間ではなく、第3のポリペプチドのCH1又はCK定常領域と第1のポリペプチドの第2のCH1又はCK定常領域との間に形成されたジスルフィド結合によりさらに結合されたCH1-CKヘテロ二量体を形成する、第3のポリペプチド鎖
を含み、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドと第3のポリペプチドとがCH1-CKヘテロ三量体を形成し、第1のポリペプチド鎖の第1の可変ドメインと第2のポリペプチド鎖の可変ドメインとが、目的の第1の抗原に特異的な抗原結合ドメインを形成し、且つ第1のポリペプチド鎖の第2の可変ドメインと第3のポリペプチド鎖の可変ドメインとが、目的の第2の抗原に特異的な抗原結合ドメインを形成する。目的の2つの抗原の1つは、NKp46であり、NKp46に結合するABDは、本開示のVH-VL可変ドメイン対を含む。
【0132】
形成される三量体二重特異的ポリペプチドのドメイン配置の例としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる。
【0133】
【0134】
任意のドメイン配置では、Fcドメインは、CH2-CH3単位(完全長CH2及びCH3ドメイン又はその断片)を含み得る。Fcドメイン(二量体Fcドメイン)を有する2つの鎖を含むヘテロ二量体又はヘテロ三量体では、CH3ドメインは、CH3-CH3二量体化が可能である(例えば、野生型CH3ドメイン)。Fcドメイン(単量体Fcドメイン)を有する1つの鎖のみを含むヘテロ二量体又はヘテロ三量体では、Fcドメインは、CH3-CH3二量体化が不可能であり、例えば、CH3ドメインが、CH3二量体界面にアミノ酸改変を有するか、又はFcドメインが、CH3-CH3二量体化が不可能な直列型CH3ドメインを含む。
【0135】
一部の例示的な構成では、多重特異的タンパク質は、四量体、例えば、2つの軽鎖及び2つの異なる重鎖を有するヘテロ二量体型四量体(heterodimeric tetramer)であり得、重鎖は、ヘテロ二量体化のためにエンジニアリングされる。このようなタンパク質は、例えば、参照によりその開示が本明細書に組み入れられる、2016年6月23日に出願されたPCT出願番号PCT/欧州特許出願公開第2016/064537号明細書(Innate Pharma)に記載されているように調製することができる。
【0136】
本開示の任意のタンパク質では、ヒンジ領域は、典型的には、CH1ドメインとCH2ドメインとの間のポリペプチド鎖に存在し、且つ/又はCKドメインとCH2ドメインとの間に存在し得る。ヒンジ領域は、任意選択的に、例えば、適切なリンカーペプチドによって置き換えることができる。
【0137】
本開示で記載されるタンパク質ドメインは、任意選択的に、N末端からC末端であると指定することができる。例示のための開示のタンパク質の配置は、N末端(左側)からC末端へと示されている。ドメインは、互いに融合されていると言える(例えば、ドメインは、その左側のドメインのC末端に融合されていると言え、且つ/又はドメインは、その右側のドメインのN末端に融合されていると言える)。
【0138】
本開示に記載されるタンパク質ドメインは、直接又は介在アミノ酸配列を介して互いに融合することができる。例えば、CH1又はCKドメインは、リンカーペプチド、任意選択的にヒンジ領域又はその断片を介してFcドメイン(又はそのCH2若しくはCH3ドメイン)に融合される。別の例では、VH又はVKドメインは、リンカーペプチドを介してCH3ドメインに融合される。直列型に互いに連結されたVH及びVLドメインは、(例えば、scFvのように)リンカーペプチドを介して融合される。Fcドメインに連結されたVH及びVLドメインは、リンカーペプチドを介して融合される。2つのポリペプチド鎖は、非共有結合により、及び任意選択的に相補的なCH1及びCKドメイン内のシステイン残基間に形成される鎖間ジスルフィド結合によりさらに互いに結合される(「|」によって示される)。
【0139】
リンカー及びFcドメインは、例えば、参照によりその開示が本明細書に組み入れられる、2016年6月23日に出願されたPCT出願番号PCT/欧州特許出願公開第2016/064537号明細書(Innate Pharma)により詳細に記載されている。
【0140】
多重特異的タンパク質が作製されると、このタンパク質を生物学的活性について評価することができる。
【0141】
本明細書の任意の実施形態の一態様では、多重特異的タンパク質は、NKp46発現細胞(例えば、精製NK細胞)及び目的の抗原を発現する標的細胞の存在下でインキュベートされた場合、NKp46発現細胞(例えば、NK細胞、レポーター細胞)の活性化を誘導することができる。
【0142】
本明細書の任意の実施形態の一態様では、多重特異的タンパク質は、NKp46発現細胞(例えば、精製NK細胞)及び目的の抗原を発現する標的細胞の存在下でインキュベートされた場合、NKp46発現細胞(例えば、NK細胞、レポーター細胞)にNKp46シグナル伝達を誘導することができる。
【0143】
任意選択的に、NK細胞の活性化又はシグナル伝達は、活性化の細胞表面マーカー、例えば、CD107、CD69などの発現の増加によって特徴付けられる。
【0144】
活性は、例えば、多重特異的ポリペプチドの存在下において、標的細胞とNKp46発現細胞とを互いに接触させることによって測定することができる。一例では、標的細胞とNK細胞との凝集が測定される。別の例では、多重特異的タンパク質は、例えば、NK細胞の活性に関連した当技術分野で公知の任意の特性又は活性、例えば、細胞毒性のマーカー(CD107)又はサイトカインの産生(例えば、IFN-γ若しくはTNF-α)の測定可能な増加をもたらす能力、細胞内遊離カルシウムレベルの増加、リダイレクト殺傷アッセイ(redirected killing assay)において標的細胞を溶解する能力などについて評価することができる。活性アッセイは、例えば、参照によりその開示が本明細書に組み入れられる、2016年6月23日に出願されたPCT出願番号PCT/欧州特許出願公開第2016/064537号明細書(Innate Pharma)により詳細にさらに記載されている。
【0145】
化合物の使用
NKp46に結合する抗原結合ドメインを含む本開示による化合物は、例えば、NKp46ポリペプチド及び/又はNKp46ポリペプチドを発現する細胞(例えば、NK細胞)への結合、これらの検出、除去、精製、又はこれらの活性の調節を含め、様々な用途に使用することができる。
【0146】
一態様では、必要とする哺乳動物の処置又は診断用の医薬製剤の製造における本明細書で定義される任意の化合物の使用が提供される。また、薬剤として、又は薬剤中の活性成分若しくは活性物質として上記定義された任意の化合物の使用も提供される。さらなる態様では、経口投与、局所投与、又は注射用の固体又は液体製剤を提供するために、上記定義された化合物を含む医薬組成物を調製する方法が提供される。このような方法又はプロセスは、少なくとも化合物を薬学的に許容され得る担体と混合するステップを含む。
【0147】
一態様では、特定の効果を与えることによって所定の状態を処置する、予防する、若しくはより一般的には所定の状態に影響を及ぼす、又は本明細書に記載の多重特異的タンパク質若しくはこの多重特異的タンパク質を含む(医薬)組成物を用いて特定の状態を検出する方法が提供される。
【0148】
例えば、一態様では、本発明は、必要とする患者(例えば、癌又はウイルス若しくは細菌感染を有する患者)においてNKp46+NK細胞の活性を回復させるか又は高める方法を提供し、この方法は、前記患者に本明細書に記載の多重特異的タンパク質を投与するステップを含む。一実施形態では、この方法は、リンパ球(例えば、NK細胞)の活性の増加が有益であるか、又は不十分なNK細胞の活性によって引き起こされる若しくは特徴付けられる疾患、例えば、癌又はウイルス若しくは微生物/細菌感染を有する患者にNKp46+リンパ球の活性の増加に関する。
【0149】
本明細書に記載のポリペプチドを使用して、抗体で処置することができる障害、例えば、癌、固形及び非固形腫瘍、血液悪性腫瘍、感染、例えば、ウイルス感染、及び免疫又は自己免疫疾患を予防又は処置することができる。
【0150】
一実施形態では、目的の抗原(非NKp46抗原)は、以下からなる群から選択される癌のタイプの悪性細胞の表面で発現される抗原である:膀胱癌、頭頸部癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、頸癌、甲状腺癌、及び扁平上皮癌を含む皮膚癌を含む癌腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫、及びバーケッツリンパ腫を含むリンパ系統の造血腫瘍;急性及び慢性の骨髄性白血病及び前骨髄球性白血病を含む骨髄系統の造血腫瘍;線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む間葉系起源の腫瘍;神経芽腫及び神経膠腫を含む他の腫瘍;星状細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、及び神経鞘腫を含む中枢及び末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫、及び骨肉腫を含む横紋筋起源の腫瘍;並びに黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、濾胞性甲状腺癌、及び奇形癌を含む他の腫瘍、リンパ系統の造血腫瘍、例えば、限定されるものではないが、小細胞及び大脳細胞型を含むT細胞障害、例えば、T前リンパ球性白血病(T-PLL)を含むT細胞及びB細胞腫瘍;好ましくはT細胞型の大顆粒性リンパ球性白血病(LGL);セザリー症候群(SS);成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL);a/d T-NHL肝脾臓リンパ腫;末梢/胸腺後T細胞リンパ腫(多形性及び免疫芽球性亜型);血管免疫芽球性T細胞リンパ腫;血管中心(鼻)T細胞リンパ腫;未分化(Ki 1+)大細胞リンパ腫;腸管T細胞リンパ腫;Tリンパ芽球;並びにリンパ腫/白血病(T-Lbly/T-ALL)。
【0151】
一実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドを使用して、以下からなる群から選択される癌を予防又は処置することができる:膀胱癌、頭頸部癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、頸癌、甲状腺癌、及び扁平上皮癌を含む皮膚癌を含む癌腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫、及びバーケッツリンパ腫を含むリンパ系統の造血腫瘍;急性及び慢性の骨髄性白血病及び前骨髄球性白血病を含む骨髄系統の造血腫瘍;線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む間葉系起源の腫瘍;神経芽腫及び神経膠腫を含む他の腫瘍;星状細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、及び神経鞘腫を含む中枢及び末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫、及び骨肉腫を含む横紋筋起源の腫瘍;並びに黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、濾胞性甲状腺癌、及び奇形癌を含む他の腫瘍。本発明によって処置することができる他の例示的な障害としては、リンパ系統の造血腫瘍、例えば、限定されるものではないが、小細胞及び大脳細胞型を含むT細胞障害、例えば、T前リンパ球性白血病(T-PLL)を含むT細胞及びB細胞腫瘍;好ましくはT細胞型の大顆粒性リンパ球性白血病(LGL);セザリー症候群(SS);成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL);a/d T-NHL肝脾臓リンパ腫;末梢/胸腺後T細胞リンパ腫(多形性及び免疫芽球性亜型);血管免疫芽球性T細胞リンパ腫;血管中心(鼻)T細胞リンパ腫;未分化(Ki 1+)大細胞リンパ腫;腸管T細胞リンパ腫;Tリンパ芽球;並びにリンパ腫/白血病(T-Lbly/T-ALL)が挙げられる。
【0152】
一例では、腫瘍抗原は、リンパ腫細胞又は白血病細胞の表面で発現される抗原であり、多重特異的タンパク質は、リンパ腫又は白血病を有する個人に投与され、且つ/又はこの個人の処置に使用される。任意選択的に、腫瘍抗原は、CD19、CD20、CD22、CD30、又はCD33から選択される。
【0153】
一態様では、処置の方法は、例えば、本明細書に開示される疾患、例えば、上記の群から選択される癌の処置のために、治療有効量の本明細書に記載の多重特異的タンパク質を個人に投与するステップを含む。治療有効量は、疾患又は障害を有する患者に治療効果を有する(又は疾患若しくは障害を有する患者及び患者と実質的に同様の特徴を有する患者の少なくとも相当な割合でこのような効果を促進する、高める、及び/又は誘導する)任意の量であり得る。
【0154】
一実施形態では、本明細書に記載の多重特異的タンパク質は、単剤療法(他の治療薬を用いない)として、又は抗体が投与される特定の治療目的に通常利用される作用物質を含む1つ以上の他の治療薬との併用治療に使用することができる。追加の治療薬が、処置される特定の疾患又は状態の単剤療法でその治療薬に典型的に使用される量及び治療計画で通常投与される。このような治療薬は、癌の処置に使用される場合、限定されるものではないが、抗癌剤及び化学療法薬を含み;感染病の処置では、限定されるものではないが、抗ウイルス薬及び抗生物質を含む。
【0155】
本明細書に開示されるタンパク質及び/又はポリペプチドをキットに含めることができる。このキットは、任意選択的に、任意の数のポリペプチド及び/又は他の化合物、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、又は他の数のタンパク質及び/又はポリペプチド及び/又は他の化合物をさらに含み得る。キットの内容についてのこの記載は、決して限定ではないことを理解されたい。例えば、キットは、他のタイプの治療化合物を含み得る。任意選択的に、キットは、タンパク質及び/又はポリペプチドの使用についての取扱説明書、例えば、本明細書に記載の方法の詳細も含む。
【0156】
また、上記定義された化合物を含む医薬組成物も提供される。化合物は、医薬組成物として医薬担体と共に精製された形態で投与することができる。形態は、意図する投与方式及び治療又は診断用途によって決まる。医薬担体は、化合物を患者に送達するのに適した任意の適合性の非毒性物質とすることができる。薬学的に許容され得る担体は、当技術分野で公知であり、例えば、水溶液、例えば、(滅菌)水若しくは生理緩衝食塩水、又は他の溶媒若しくはビヒクル、例えば、グリコール、グリセロール、油、例えば、オリーブ油、又は注射可能な有機エステル、アルコール、脂肪、ワックス、及び不活性固体を含む。薬学的に許容され得る担体は、例えば化合物の吸収を安定させるか又は高めるように作用する、生理的に許容され得る化合物をさらに含み得る。このような生理的に許容され得る化合物は、例えば、炭水化物、例えば、グルコース、スクロース、又はデキストラン、抗酸化物、例えば、アスコルビン酸又はグルタチオン、キレート剤、低分子量タンパク質、又は他の安定剤若しくは賦形剤を含む。当業者であれば、生理的に許容され得る化合物を含む薬学的に許容され得る担体の選択が、例えば、組成物の投与経路によって決まることを理解されよう。薬学的に許容され得るアジュバント、緩衝剤、及び分散剤なども医薬組成物に含まれ得る。
【0157】
化合物は、非経口投与することができる。非経口投与用の化合物の調製は、滅菌でなければならない。滅菌は、任意選択的に凍結乾燥及び再生の前又は後での、滅菌濾過膜に通す濾過によって容易に達成される。化合物の投与の非経口経路は、公知の方法、例えば、静脈内経路、腹腔内経路、筋肉内経路、動脈内経路、若しくは病巣内経路による注射又は注入に従う。化合物は、注入又はボーラス注射によって連続的に投与することができる。静脈注射用の典型的な組成物は、特定のタイプの化合物及びその必要な投与計画に合わせて、任意選択的に20%アルブミン溶液が添加された100~500mlの滅菌0.9%NaCl又は5%グルコース及び1mg~10gの化合物を含むように構成することができる。非経口投与可能な組成物を調製する方法は、当技術分野で公知である。
【実施例】
【0158】
実施例1:
抗huNKp46抗体の作製
パートA:抗huNKp46抗体の作製
Balb/cマウスを組換えヒトNKp46細胞外ドメイン組換えFcタンパク質で免疫した。マウスは、50μgのNKp46タンパク質と完全フロイントアジュバントのエマルションの腹腔内投与により最初の免疫を行い、50μgのNKp46タンパク質と不完全フロイントアジュバントのエマルションの腹腔内投与により2回目の免疫を行い、最後に、10μgのNKp46タンパク質の静脈投与により追加免疫した。免疫脾細胞を追加免疫の3日後にX63.Ag8.653不死化B細胞に融合し、これを放射線照射脾細胞の存在下で培養した。
【0159】
一次スクリーニング:増殖しているクローンの上清(S/N)を、細胞表面でヒトNKp46構築物を発現する細胞株を用いるフローサイトメトリーによって一次スクリーニングで試験した。簡単に述べると、FACSスクリーニングでは、上清中の反応抗体の存在を、PEで標識されたヤギ抗マウスポリクローナル抗体(pAb)によって明らかにした。
【0160】
NKp46に結合する抗体のセレクションを選択し、完全長ヒトIgG抗体及び二重特異的抗体として作製した。実施例2~13の二重特異的分子に関してその活性について評価された可変領域の中には、本明細書の表Bに示されているそれぞれの可変領域を有する抗体NKp46-1、-2、-3、-4、-6、及び-9があった。
【0161】
パートB:ヒト化抗ヒト/抗カニクイザルNKp46抗体の作製
本明細書の表Bに示されているそれぞれの可変領域を有する抗体NKp46-1、-2、-3、及び4を、以下に示されているアミノ酸配列を有する重鎖及び軽鎖の相補性決定領域(CDR)移植によってヒト化抗体として作製した。抗体は、CHO細胞を用いて産生し、ヒトNKp46への結合について試験した。
【0162】
CDR移植抗体のそれぞれは、良好な親和性でヒトNKp46に結合した。しかしながら、CDR移植抗体のいずれも、カニクイザルNKp46には結合しなかった。ヒトNKp46上のエピトープを決定し(実施例13を参照されたい);抗体可変領域の高次構造又はCDRの配置に影響を及ぼす改変が、認識されるべきカニクイザルNKp46で共有されるエピトープを可能にし得るという可能性を考慮して、NKp46-1、-2、-3、-4、及び-9のCDR移植抗体のそれぞれについて複数の変異体を用意し、CHO細胞を用いて産生し、カニクイザルNKp46への結合について試験した。抗体NKp46-1、-2、-3、-4、及び-9のそれぞれについて、ヒト及びカニクイザルNKp46結合によって共有されるエピトープの良好な親和性での認識を可能にする1つ以上の変異体を同定した。3Dモデリング研究に基づいて、NKp46-1 CDR及びヒトフレームワークを含む様々な重鎖及び軽鎖可変領域を設計し、ヒトIgG1抗体として作製し、カニクイザルNKp46への結合について試験した。
【0163】
抗体NKp46-1
3Dモデリング研究に基づいて、NKp46-1 CDR及びヒトフレームワークを含む様々な重鎖及び軽鎖可変領域を設計し、ヒトIgG1抗体として作製し、カニクイザルNKp46への結合について試験した。重鎖と軽鎖の2つの組み合わせは、ヒト及びカニクイザルNKp46の両方に結合することができる。重鎖可変領域「H1」及び重鎖「H3」は、いずれの場合も軽鎖「L1」と組み合わせた。これらの交差結合可変領域は、重鎖可変領域について、NKp46-1重鎖CDR(以下に下線付きで示されている)、ヒトIGHV1-69
*06遺伝子フレームワーク1、2、及び3領域、並びにヒトIGHJ6
*01遺伝子フレームワーク4領域を含んでいた。軽鎖可変領域:NKp46-1軽鎖CDR(以下に下線付きで示されている)、ヒトIGKV1-33
*01遺伝子フレームワーク1、2、及び3領域、並びにヒトIGKJ4
*01遺伝子フレームワーク4領域。CDRは、Kabat付番に従って選択した。H1鎖、H3鎖、及びL1鎖は、特定のアミノ酸置換を有していた(以下に太字及び下線付きで示されている)。L1は、Kabat軽鎖残基87にフェニルアラニンを有していた。H1は、Kabat重鎖残基27にチロシンを、且つKabat残基66及び67にそれぞれリジン及びアラニンを有していた。加えて、H3は、Kabat残基37にグリシンを、Kabat残基48にイソロイシンを、且つKabat残基91にフェニルアラニンを有していた。
NKp46-1:“H1”重鎖可変領域
【化8】
NKp46-1:“H3”重鎖可変領域
【化9】
NKp46-1:“L1”軽鎖可変領域
【化10】
【0164】
抗体NKp46-2
3Dモデリング研究に基づいて、NKp46-2 CDR及びヒトフレームワークを含む様々な重鎖及び軽鎖可変領域を設計し、ヒトIgG1抗体として作製し、カニクイザルNKp46への結合について試験した。重鎖と軽鎖の3つの組み合わせは、ヒト及びカニクイザルNKp46の両方に結合することができる。重鎖可変領域「H1」、「H2」、及び重鎖「H3」は、いずれの場合も軽鎖「L1」と組み合わせた。興味深いことに、さらに、H1L1は、配列番号5及び6のVH及びVLを有する親抗体NKp46-2と比較して改善された結合親和性を有していた。これらの交差結合可変領域は、重鎖可変領域について、NKp46-2重鎖CDR(以下に下線付きで示されている)、ヒトIGHV4-30-4
*01遺伝子フレームワーク1、2、及び3領域、並びにヒトIGHJ1
*01遺伝子フレームワーク4領域を含んでいた。軽鎖可変領域:NKp46-2軽鎖CDR(以下に下線付きで示されている)、ヒトIGKV1-39
*01遺伝子フレームワーク1、2、及び3領域、並びにヒトIGKJ4
*01遺伝子フレームワーク4領域。CDRは、Kabat付番に従って選択した。L1鎖、H1鎖、H2鎖、及びH3鎖は、特定のアミノ酸置換を有していた(以下に太字及び下線付きで示されている)。L1は、Kabat軽鎖残基48にバリンを有していた。H1は、Kabat重鎖残基27にチロシンを、且つKabat残基71にアルギニンを有していた。加えて、H2は、Kabat残基48にメチオニンを、且つKabat残基67にイソロイシンを有していた。加えて、H3は、Kabat残基31にトレオニンを有していた。
NKp46-2:“H1”重鎖可変領域
【化11】
NKp46-2:“H2”重鎖可変領域
【化12】
NKp46-2:“H3”重鎖可変領域
【化13】
NKp46-2:“L1”軽鎖可変領域
【化14】
【0165】
抗体NKp46-3
3Dモデリング研究に基づいて、NKp46-3 CDR及びヒトフレームワークを含む様々な重鎖及び軽鎖可変領域を設計し、ヒトIgG1抗体として作製し、カニクイザルNKp46への結合について試験した。重鎖及び軽鎖の3つの組み合わせは、ヒト及びカニクイザルNKp46の両方に結合することができる。重鎖可変領域「H1」、「H3」、及び重鎖「H4」は、いずれの場合も軽鎖「L1」と組み合わせた。興味深いことに、さらに、H3L1は、配列番号7及び8のVH及びVLを有する親抗体NKp46-3と比較して改善された結合親和性を有していた。これらの交差結合可変領域は、重鎖可変領域について、NKp46-3重鎖CDR(以下に下線付きで示されている)、ヒトIGHV1-69
*02遺伝子フレームワーク1、2、及び3領域、並びにヒトIGHJ6
*01遺伝子フレームワーク4領域を含んでいた。軽鎖可変領域:NKp46-3軽鎖CDR(以下に下線付きで示されている)、IGKV3-15由来のFR1及びFR2並びにIGKV3-11由来のFR3を用いるモザイクアプローチによって形成されたフレームワーク1、2、及び3領域、並びにヒトIGKJ2
*01遺伝子フレームワーク4領域。CDRは、Kabat付番に従って選択した。L1鎖、H1鎖、H3鎖、及びH4鎖は、特定のアミノ酸置換を有していた(以下に太字及び下線付きで示されている)。L1は、Kabat軽鎖残基49にリジンを有していた。H1は、Kabat重鎖残基27にチロシンを有していた。加えて、H3は、Kabat残基48にイソロイシンを、且つKabat残基67にアラニンを有していた。加えて、H4は、Kabat残基69にロイシンを有していた。
NKp46-3:“H1”重鎖可変領域
【化15】
NKp46-3:“H3”重鎖可変領域
【化16】
NKp46-3:“H4”重鎖可変領域
【化17】
NKp46-3:“L1”軽鎖可変領域
【化18】
【0166】
抗体NKp46-4
3Dモデリング研究に基づいて、NKp46-4 CDR及びヒトフレームワークを含む様々な重鎖及び軽鎖可変領域を設計し、ヒトIgG1抗体として作製し、カニクイザルNKp46への結合について試験した。軽鎖「L2」と組み合わせられた重鎖可変領域「H1」は、ヒト及びカニクイザルNKp46の両方、並びに親抗体に結合することができた。2つの他の抗原結合領域(1つが「L2」及び「H2」から構成され、もう1つが「L2」及び「H3」から構成されている)は、カニクイザルNKp46に中等度で結合することができたが、その親和性は、ヒトNK-46の親和性の10分の1であった。これらの交差結合可変領域は、重鎖可変領域について、NKp46-4重鎖CDR(以下に下線付きで示されている)、IGHV1646由来のFR1、IGHV1-69由来の0FR3、及び共通FR2(IGHV1-46とIGHV1-69が同じFR2を共有する)を用いるモザイクアプローチを用いて設計されたヒトフレームワーク1、2、及び3領域、並びにヒトIGHJ6
*01遺伝子フレームワーク4領域を含んでいた。軽鎖可変領域:NKp46-4軽鎖CDR(以下に下線付きで示されている)、IGKV1-NL1由来のフレームワーク1、2、及び3領域、並びにヒトIGKJ4
*01遺伝子フレームワーク4領域。CDRは、Kabat付番に従って選択した。L2鎖、H1鎖、H2鎖、及びH3鎖は、特定のアミノ酸置換を有していた(以下に太字及び下線付きで示されている)。L2は、Kabat軽鎖残基36にフェニルアラニンを、且つKabat残基48にバリンを有していた。H1は、Kabat重鎖残基30にトレオニンを、Kabat残基48にイソロイシンを、且つKabat残基93にバリンを有していた。H2は、Kabat残基67にトレオニンを有していた。加えて、H3は、Kabat残基69にロイシンを有していた。
NKp46-4:“H1”重鎖可変領域
【化19】
NKp46-4:“H2”重鎖可変領域
【化20】
NKp46-4:“H3”重鎖可変領域
【化21】
NKp46-4:“L2”軽鎖可変領域
【化22】
【0167】
抗体NKp46-9
3Dモデリング研究に基づいて、NKp46-9 CDR及びヒトフレームワークを含む様々な重鎖及び軽鎖可変領域を設計し、ヒトIgG1抗体として作製し、カニクイザルNKp46への結合について試験した。軽鎖可変領域「L1」又は「L2」のいずれかと組み合わせられたときの重鎖可変領域「H2」、及び軽鎖可変領域「L1」又は「L2」のいずれかと組み合わせられたときの重鎖可変領域「H3」は、親抗体(配列番号13及び14のVH及びVLを有する)よりも高い親和性でヒト及びカニクイザルNKp46の両方に結合することができた。「H1」鎖は、試験されたいずれの軽鎖を有するカニクイザルNKp46とも結合できなかったが、ヒトNKp46には十分に結合できた。これらの交差結合可変領域は、重鎖可変領域について、NKp46-9重鎖CDR(以下に下線付きで示されている)、IGHV4-30-4
*01由来のヒトフレームワーク1、2、及び3領域、並びにヒトIGHJ6
*01遺伝子フレームワーク4領域を含んでいた。軽鎖可変領域:NKp46-9軽鎖CDR(以下に下線付きで示されている)、IGKV1-39
*01由来のフレームワーク1、2、及び3領域、並びにヒトIGKJ2
*01遺伝子フレームワーク4領域。CDRは、Kabat付番に従って選択した。L1鎖、L2鎖、H1鎖、H2鎖、及びH3鎖は、特定のアミノ酸置換を有していた(以下に太字及び下線付きで示されている)。L1は、Kabat残基36にシステインを有していた。L2は、Kabat軽鎖残基48にバリンを有していた。H1は、Kabat重鎖残基71にアルギニンを有していた。加えて、H2は、Kabat残基27にチロシンを有していた。H3は、Kabat残基48にメチオニンを、且つKabat残基67にイソロイシンを有していた。
NKp46-9:“H1”重鎖可変領域
【化23】
NKp46-9:“H2”重鎖可変領域
【化24】
NKp46-9:“H3”重鎖可変領域
【化25】
NKp46-9:“L1”軽鎖可変領域
【化26】
NKp46-9:“L2”軽鎖可変領域
【化27】
【0168】
実施例2:
エフェクター細胞受容体を標的とする、FcRnには結合するがFcγRには結合しない二重特異的抗体形態の同定
この実験の目的は、Fcドメインを、抗NKp46結合ドメイン及び抗標的抗原結合ドメインと共にポリペプチドに配置する新規な二重特異的タンパク質形態を開発することにあった。二重特異的タンパク質は、その抗NKp46結合ドメインを介してNKp46に一価で結合する。単量体Fcドメインは、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に対する少なくとも部分的な結合性を維持するが、ヒトCD16及び/又は他のヒトFcγ受容体には実質的に結合しない。結果として、二重特異的タンパク質は、Fcγ媒介(例えば、CD16媒介)標的細胞溶解を誘導しない。
【0169】
実施例2-1 抗CD19-IgG1-Fcmono抗CD3の作製及び結合分析
このようなタンパク質が機能的であり得るか否かを示すことができる抗NKp46二重特異的抗体が作製されていないため、NKp46を介したNK細胞の標的化前に新規な一価二重特異的タンパク質形態の機能を調べるために、NKp46の代わりにCD3をモデル抗原として使用した。
【0170】
腫瘍抗原CD19に特異的なscFv(抗CD19 scFv)及びT細胞の活性化受容体CD3に特異的なscFv(抗CD3 scFv)をベースとした二重特異的Fcを使用して、新規な単量体二重特異的ポリペプチド形態のFcRn結合及びCD19結合機能を評価した。最終ポリペプチドのドメイン配置は、「F1」形態とも呼ばれる(CH2ドメインの星は、本明細書で試験されたポリペプチドには含まれていない任意選択的なN297S変異を示す)。
【0171】
二重特異的単量体Fc含有ポリペプチドを、腫瘍抗原CD19に特異的なscFv(抗CD19 scFv)及びT細胞の活性化受容体CD3に特異的なscFv(抗CD3 scFv)をベースに構築した。CH3ドメインは、変異(EU付番)L351K、T366S、P395V、F405R、T407A、及びK409Yを含んでいた。このポリペプチドは、次のように配置されたドメインを有する:抗CD19-CH2-CH3-抗CD3。アミノ酸配列STGSを有するCH3/VHリンカーペプチドをコードするDNA配列を、CH3-VH接合部に特定のSall制限部位を挿入するために設計した。
【0172】
CH3ドメインは、変異(EU付番)L351K、T366S、P395V、F405R、T407A、及びK409Yを含んでいた。CH2ドメインは、野生型CH2であった。単量体CH2-CH3Fc部分及び抗CD19のDNA及びアミノ酸配列は以下に示されている。
【0173】
抗CD19 scFvに対応する軽鎖及び重鎖DNA及びアミノ酸配列は次の通りであった。
【0174】
【0175】
単量体CH2-CH3 Fc部分及び最終二重特異的IgG1-Fcmonoポリペプチド(その構築物では最後のKが除去された)のDNA配列が配列番号117に示されている。アミノ酸配列が配列番号2に示されている。抗CD19-F1-抗CD3完全配列(成熟タンパク質)が配列番号118に示されている。
【0176】
組換えタンパク質のクローニング及び産生
コード配列を直接合成及び/又はPCRによって構築した。PCRは、PrimeSTAR MAX DNAポリメラーゼ(Takara,#R045A)を用いて行い、PCR産物を、NucleoSpinゲル及びPCR clean-upキット(Macherey-Nagel,#740609.250)を用いて1%アガロースゲルから精製した。精製した後、PCR産物を定量してから、製造者のプロトコル(ClonTech,#ST0345)に記載されているようにIn-Fusion連結反応を行った。プラスミドは、Nucleospin 96プラスミドキット(Macherey-Nagel,#740625.4)を用いてEVO200(Tecan)で行われたミニプレップ調製後に得た。次いで、CHO細胞株のトランスフェクションの前に、プラスミドを配列の確認のために配列決定した。
【0177】
CHO細胞を、フェノールレッド及び6mM GlutaMaxが添加されたCD-CHO培地(Invitrogen)で増殖した。トランスフェクションの前日に、細胞をカウントし、175,000細胞/mlで播種した。トランスフェクションのために、細胞(200,000細胞/トランスフェクション)を、AMAXA SF細胞株キット(AMAXA,#V4XC-2032)に記載されているように調製し、Nucleofector 4D装置でDS137プロトコルを用いてヌクレオフェクトした。全てのトランスフェクションは、300ngの検証済みプラスミドを用いて行った。トランスフェクション後、細胞を24ウェルプレートの予熱された培養培地に播種する。24時間後、ハイグロマイシンBを培養培地に添加した(200μg/ml)。タンパク質の発現を1週間後に培地で監視する。次いで、タンパク質を発現している細胞をサブクローニングして最高の産生株を得る。96平底ウェルプレートを用いて、200μg/mlのハイグロマイシンBが添加された200μlの培養培地に1細胞/ウェルで細胞を播種して、サブクローニングを行った。クローンの生産性を試験する前に、細胞を3週間放置した。
【0178】
IgG1-Fc断片を含む組換えタンパク質を、プロテインAビーズ(-rProteinA Sepharose fast flow,GE Healthcare,ref.:17-1279-03)を用いて精製する。簡単に述べると、細胞培養上清を濃縮し、遠心分離によって清澄化し、プロテインAカラムに注入し、組換えFc含有タンパク質を捕捉した。タンパク質を酸性pH(クエン酸0.1M pH3)で溶出し、TRIS-HCL pH8.5を用いて即座に中和し、1×PBSで透析した。「six his」タグを含む組換えscFvを、コバルト樹脂を用いてアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。他の組換えscFvをサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって精製した。
【0179】
実施例2-2:抗CD19-IgG1-Fcmono-抗CD3~B221、JURKAT、HUT78、及びCHO細胞株の結合分析
細胞を回収して、抗CD19-F1-抗CD3産生細胞の細胞上清で4℃において1時間染色した。染色緩衝液(PBS 1X/BSA 0.2%/EDTA 2mM)で2回洗浄した後、細胞をヤギ抗ヒト(Fc)-PE抗体(IM0550 Beckman Coulter-1/200)で4℃において30分間染色した。2回の洗浄後、染色物をBD FACS Canto IIで得て、FlowJoソフトウェアを用いて分析した。
【0180】
CD3及びCD19の発現もフローサイトメトリーによって制御した。細胞を回収して、5μlの抗CD3-APC及び5μlの抗CD19-FITC抗体を用いて、PBS 1X/BSA 0.2%/EDTA 2mM緩衝液で4℃において30分間染色した。2回の洗浄後、染色物をBD FACS Canto IIで得て、FlowJoソフトウェアを用いて分析した。
【0181】
抗CD19-F1-抗CD3タンパク質は、CD3細胞株(HUT78及びJURKAT細胞株)及びCD19細胞株(B221細胞株)に結合するが、陰性対照として使用されるCHO細胞株には結合しない。
【0182】
実施例2-3:
精製抗CD19-F1-抗CD3によるT細胞及びB細胞の凝集
精製抗CD19-F1-抗CD3をT/B細胞凝集アッセイで試験して、抗体が、CD19及びCD3発現細胞の凝集において機能するか否かを評価した。
【0183】
結果が
図1に示されている。上のパネルは、抗CD19-F1-抗CD3は、B221(CD19)又はJURKAT(CD3)細胞株の存在下で凝集を引き起こさないが、B221及びJURKAT細胞の両方が同時にインキュベートされるときに細胞を凝集させることを示し、二重特異的抗体が機能的であることを例示する。下のパネルは、抗体を含まない対照を示す。
【0184】
実施例2-4:
二重特異的単量体FcポリペプチドのFcRnに対する結合性
表面プラズモン共鳴(SPR)による親和性試験
Biacore T100の一般的な手順及び試薬
SPR測定をBiacore T100装置(Biacore GE Healthcare)において25℃で行った。全てのBiacore実験では、酢酸緩衝液(50mM酢酸 pH5.6、150mM NaCl、0.1%界面活性剤p20)及びHBS-EP+(Biacore GE Healthcare)がそれぞれ泳動用緩衝液及び再生緩衝液としての役割を果たした。センサーグラムをBiacore T100 Evaluationソフトウェアで分析した。組換えマウスFcRnをR&D Systemsから購入した。
【0185】
FcRnの固定化
組換えFcRnタンパク質をSensor Chip CM5上のデキストラン層のカルボキシル基に共有結合により固定した。チップ表面をEDC/NHS(N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及びN-ヒドロキシスクシンイミド(Biacore GE Healthcare))で活性化した。FcRnタンパク質を結合緩衝液(10mM酢酸、pH5.6)で10μg/mlに希釈し、適切な固定化レベル(即ち、2500RU)に達するまで注入した。残りの活性化基の不活性化を、100mMエタノールアミン pH8(Biacore GE Healthcare)を用いて行った。
【0186】
親和性試験
一価親和性試験をSingle Cycle Kinetic(SCK)プロトコルに従って行った。5段階希釈の41.5~660nMの可溶性分析物(抗体及び二重特異的分子)を(再生なしで)FcRnに添加し、再生の10分前に解離させた。各分析物について、全てのセンサーグラムを、1:1SCK結合モデルを用いてフィッティングした。
【0187】
結果
そのCH2-CH3ドメインが2つの抗原結合ドメイン(ここでは2つのscFv)間に配置された抗CD19-F1-抗CD3を評価して、このような二重特異的単量体Fcタンパク質が、FcRnに対する結合性を維持することができ、それにより、従来の二重特異的抗体と比較して改善されたin vivo半減期を有するか否かを決定した。結果は、FcRN結合性が維持されたことを示し、このモデルは、正常なIgGに対して、2:1の比率(各抗体に対して2つのFcRn)ではなく1:1の比率(各単量体Fcに対して1つのFcRn)を示唆している。
【0188】
親和性を、ヒトIgG1定常領域を有するキメラ完全長抗体に対してSPRを用いて評価した。単量体Fcは、FcRnに対して著しい単量体結合性を維持した(単量体Fc:KD=194nMの親和性;二価結合性を有する完全長抗体:KD=15.4nMの親和性)。
【0189】
実施例3:
抗CD19x抗NKp46二重特異的単量体Fcドメインポリペプチドの作製
NK細上の活性化受容体が標的細胞の溶解に寄与し得るかは不明であり、さらに抗NKp46抗体がNKp46をブロックし得るため、細胞毒性がNKp46によって媒介することができたか否かはさらに不明であった。そのため、本発明者らは、二重特異的タンパク質形態が、NKp46のトリガーを引き起こすことができたか否か、及びそれが標的細胞の非存在下でNKp46アゴニズムを誘導し、それにより、標的から離れた不適切なNK活性化及び/又は標的細胞に対する全活性の低下をもたらすことができたか否かを調べた。
【0190】
新規な二重特異的タンパク質形態を、FcRnには結合するがFCγRには結合しない一本鎖タンパク質として開発した。加えて、2つ又は3つのポリペプチド鎖を含み、Fcドメインが単量体を維持している多量体タンパク質を開発し、この多量体タンパク質は、scFv形態に変換されたときにそれらの標的に対する結合性を維持しない抗体可変領域での使用に適合している。scFv形態は、抗体のスクリーニングに便利に使用することができ、少なくとも1つの結合領域をF(ab)構造として含めることにより、任意の抗標的(例えば、抗腫瘍)抗体可変領域を、抗体がscFvとして結合性を維持するか否かにかかわらず、二重特異的タンパク質内のF(ab)形態として二重特異的構築物で直接発現させて試験することができ、それにより、利用可能な抗体を単純にスクリーニングしてその数を増加させることができる。Fcドメインが単量体を維持するこれらの形態は、最大の配座柔軟性を維持するという利点を有し、且つ以下に示すようにNKp46又は標的抗原に対する最適な結合性を可能にし得る。
【0191】
異なる構築物を、実施例2-1に記載の腫瘍抗原CD19に特異的なscFvからの可変ドメイン、及び実施例1に示されたNKp46受容体に特異的な抗体からの異なる可変領域を用いて、二重特異的抗体の調製に使用するために作製した。また、NKp46受容体に特異的な市販の抗体Bab281(Beckman Coulter,Inc.(Brea,CA,USA)が市販するmIgG1(Pessino et al,J.Exp.Med,1998,188(5):953-960 and Sivori et al,Eur J Immunol,1999.29:1656-1666も参照されたい))からの可変領域を抗NKp46として用いて作製した。
【0192】
Fcドメインが、一本鎖ポリペプチド又は1つの鎖のみがFcドメインを有する多量体において単量体を維持するために、CH3-CH3二量体化を2つの異なる戦略:(1)特定の変異を包含するCH3ドメイン(EU付番)、即ち、L351K、T366S、P395V、F405R、T407A、及びK409Yの使用;又は(2)直列型CH3ドメインが、鎖間CH3-CH3二量体化を防止する、互いに結合した可撓性リンカーによって分離されている直列型CH3ドメインの使用によって防止した。上記特定された点変異を含む単量体CH2-CH3 Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、実施例2-1と同じであった。直列型CH3ドメインを有する単量体CH2-CH3-リンカー-CH3 Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は
図2A~2Dに示されている。
【0193】
抗CD19 scFvの軽鎖及び重鎖DNA及びアミノ酸配列も実施例2-1と同じであった。タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。様々な抗NKp46 scFvの軽鎖及び重鎖DNA及びアミノ酸配列が以下に示されている。
【0194】
【0195】
【0196】
形態1(F1)(抗CD19-IgG1-Fcmono-抗NKp46(scFv))
形態1(F1)のドメイン構造が
図2Aに示されている。二重特異的Fc含有ポリペプチドを、腫瘍抗原CD19(抗CD19 scFv)に特異的なscFv及びNKp46受容体に特異的なscFvをベースに構築した。このポリペプチドは、以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する一本鎖ポリペプチドである。
(Vκ-VH)
抗CD19-CH2-CH3-(VH-Vκ)
抗NKp46
【0197】
アミノ酸配列STGSを有するCH3/VHリンカーペプチドをコードするDNA配列を、CH3-VH接合部に特定のSall制限部位を挿入するために設計した。
図2に示されている最終ポリペプチドのドメイン配置(CH2ドメインの星は、任意選択的なN297S変異を示す)では、抗CD3 scFvが抗NKp46 scFvによって置換されている。(Vκ-VH)単位は、VHドメインとVκドメインとの間にリンカーを含む。タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的ポリペプチドのアミノ酸配列(完全な配列(成熟タンパク質))が、以下の表2Bに列記された対応する配列番号に示されている。
【0198】
【0199】
形態2(F2):CD19-F2-NKp46-3
F2ポリペプチドのドメイン構造が
図2Aに示されている。単量体CH2-CH3 Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、実施例2-1と同様であり、それは、同様にCH3ドメイン変異(変異(EU付番)L351K、T366S、P395V、F405R、T407A、及びK409Y)を含む。ヘテロ二量体は、以下から構成される。
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
(Vκ-VH)
抗CD19-CH2-CH3-VH
抗NKp46-CH1、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
VK
抗NKp46-CK。
【0200】
(Vκ-VH)単位は、VHドメイン、リンカー、及びVκ単位(即ち、scFv)から構成されていた。本発明の二重特異的ポリペプチドの他の形態と同様に、アミノ酸配列STGSを有するCH3/VHリンカーペプチドをコードするDNA配列を、CH3-VH接合部に特定のSall制限部位を挿入するために設計した。タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。F2タンパク質の第1鎖及び第2鎖のアミノ酸配列は、配列番号140及び141に示されている。
【0201】
形態3(F3):CD19-F3-NKp46-3
F3ポリペプチドのドメイン構造が
図2Aに示されている。CH2-CH3 Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、同じポリペプチド鎖上の2つのCH3ドメインが互いに結合し、それにより、異なる二重特異的タンパク質間の二量体化が防止される直列型CH3ドメインを含んでいた。
【0202】
一本鎖ポリペプチドは、以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する。
(Vκ-VH)抗CD19-CH2-CH3-CH3-(VH-Vκ)抗NKp46
【0203】
(VκK-VH)単位は、VHドメイン、リンカー、及びVκ単位(scFv)から構成されていた。タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、3.4mg/Lの高い産生収率を示し、精製されたタンパク質で単純なSECプロフィールを示した。F3タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号142に示されている。
【0204】
形態4(F4):CD19-F4-NKp46-3
F4ポリペプチドのドメイン構造が
図2Aに示されている。CH2-CH3 Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、形態F3のように直列型CH3ドメインを含み、さらにN結合型グリコシル化を防止し、且つFcγR結合を消失させるN297S変異を含む。タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、1mg/Lの良好な産生収率を示し、精製されたタンパク質は、単純なSECプロファイルを示した。NKp46-3可変ドメインを有するF4タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号143に示されている。
【0205】
形態8(F8)
F8ポリペプチドのドメイン構造が
図2Bに示されている。単量体CH2-CH3 Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、形態F2と同様であり、且つ同様にCH3ドメイン変異(変異(EU付番)L351K、T366S、P395V、F405R、T407A、及びK409Y、並びにN連結グリコシル化を防止してFcγR結合性をさらに消失させるN297S変異)を含む。F8タンパク質の3つの変異体を作製した:(a)ヒンジ領域のシステイン残基が完全なまま残ったもの(野生型、F8Aと呼ばれる)、(b)ヒンジ領域のシステイン残基がセリン残基によって置換された第2のもの(F8B)、及び(c)ヒンジの残基DKTHTCPPCPを置換しているリンカー配列GGGSSを含む第3のもの(F8C)。変異体F8B及びF8Cは、中心鎖のホモ二量体の形成を防止するため作製に利点を提供した。このヘテロ三量体は、以下から構成される;
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
V
H
抗CD19-CH1-CH2-CH3-VH
抗NKp46-Cκ、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
VK
抗NKp46-CH1、及び
(3)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第3のポリペプチド鎖:
Vκ
抗CD19-Cκ。
【0206】
タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、3.7mg/L(F8C)の高い産生収率を示し、精製されたタンパク質は、同様に単純なSECプロフィールを示した。NKp46-3可変領域を有するF8タンパク質(C変異体)の3つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号144、145、及び146に示されている。
【0207】
形態9(F9):CD19-F9-NKp46-3
F9ポリペプチドは、中心ポリペプチド鎖、及びそれぞれCH1-Cκの二量体化によって中心鎖に結合された2つのポリペプチド鎖を有する三量体ポリペプチドである。三量体F9タンパク質のドメイン構造が
図2Bに示されており、CH1とCκドメインとの間の結合は、鎖間ジスルフィド結合である。2つの抗原結合ドメインは、抗体がscFv形態で機能を維持するか否かにかかわらず、この抗体の使用を可能にするF(ab)構造を有する。CH2-CH3 Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、形態F4と同様の直列型CH3ドメインを含み、且つN297S置換を含むCH2ドメインを含む。F9タンパク質の3つの変異体を作製した:(a)ヒンジ領域のシステイン残基が完全なまま残った第1のもの(野生型、F9Aと呼ばれる)、(b)ヒンジ領域のシステイン残基がセリン残基によって置換された第2のもの(F9B)、及び(c)ヒンジの残基DKTHTCPPCPを置換しているリンカー配列GGGSSを含む第3のもの(F9C)。変異型F9B及びF9Cは、中心鎖のホモ二量体の形成を防止することによって作製に利点を提供した。このヘテロ三量体は、以下から構成される:
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
V
H
抗CD19-CH1-CH2-CH3-CH3-V
H
抗NKp46-Cκ、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
Vκ
抗NKp46-CH1、及び
(3)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第3のポリペプチド鎖:
Vκ
抗CD19-Cκ。
【0208】
タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、8.7mg/L(F9A)及び3.0mg/L(F9B)の高い産生収率を示し、精製されたタンパク質は、同様に単純なSECプロフィールを示した。
【0209】
F9タンパク質変異型F9Aの3つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号147、148、及び149に示されている。F9タンパク質変異型F9Bの3つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号150、151、及び152に示されている。F9タンパク質変異型F9Cの3つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号153、154、及び155に示されている。
【0210】
形態10(F10):CD19-F9-NKp46-3
F10ポリペプチドは、中心ポリペプチド鎖、及びCH1-Cκの二量体化によって中心鎖に結合された第2のポリペプチド鎖を有する二量体タンパク質である。二量体F10タンパク質のドメイン構造が
図2Bに示され、CH1とCκドメインとの間の結合は、鎖間ジスルフィド結合である。2つの抗原結合ドメインの一方はFab構造を有し、且つ他方はscFvである。CH2-CH3 Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、形態F4に示されているように直列型CH3ドメインを含み、且つN297S置換を含むCH2ドメインを含む。F10タンパク質の3つの変異体も作製した:(a)ヒンジ領域のシステイン残基が完全なまま残った第1のもの(野生型、F10Aと呼ばれる)、(b)ヒンジ領域のシステイン残基がセリン残基によって置換された第2のもの(F10B)、及び(c)ヒンジの残基DKTHTCPPCPを置換しているリンカー配列GGGSSを含む第3のもの(F10C)。変異型F10B及びF10Cは、中心鎖のホモ二量体の形成を防止するため作製に利点を提供した。(Vκ-V
H)単位は、V
Hドメイン、リンカー、及びVκ単位(scFv)から構成されていた。ヘテロ二量体は、以下から構成される:
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
V
H
抗CD19-CH1-CH2-CH3-CH3-(V
H-Vκ)
抗NKp46、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
Vκ
抗CD19-Cκ。
【0211】
これらのタンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、2mg/L(F10A)の良好な産生収率を示し、精製されたタンパク質は、同様に単純なSECプロフィールを示した。F10Aタンパク質変異体の2つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号156(第2鎖)及び157(第1鎖)に示されている。F10Bタンパク質変異体の2つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号158(第2鎖)及び159(第1鎖)に示されている。F10Cタンパク質変異体の2つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号160(第2鎖)及び161(第1鎖)に示されている。
【0212】
形態11(F11):CD19-F11-NKp46-3
F11ポリペプチドのドメイン構造が
図2Cに示されている。このヘテロ二量体タンパク質は、抗原結合ドメインの構造が逆である点を除いてF10と同様である。2つの抗原結合ドメインの一方はFab様構造を有し、且つ他方はscFvである。このヘテロ二量体は、以下から構成される:
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
(Vκ-V
H)
抗CD19-CH2-CH3-CH3-VH
抗NKp46-Cκ、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
Vκ
抗NKp46-CH1。
【0213】
タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、2mg/Lの良好な産生収率を示し、精製されたタンパク質は、同様に単純なSECプロフィールを示した。F11タンパク質の2つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号162(第1鎖)及び配列番号163(第2鎖)に示されている。
【0214】
形態12(F12):CD19-F12-NKp46-3
二量体F12ポリペプチドのドメイン構造が
図2Cに示されており、CH1とCκドメインとの間の結合は、ジスルフィド結合である。このヘテロ二量体タンパク質は、F11に類似しているが、F(ab)構造内のCH1及びCκドメインが逆である。このヘテロ二量体は、以下から構成される:
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
(Vκ-V
H)
抗CD19-CH2-CH3-CH3-V
H
抗NKp46-CH1、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
Vκ
抗NKp46-Cκ。
【0215】
タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、2.8mg/Lの良好な産生収率を示し、精製されたタンパク質は、同様に単純なSECプロフィールを示した。F12タンパク質の2つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号164(第1鎖)及び配列番号165(第2鎖)に示されている。
【0216】
形態17(F17):CD19-F17-NKp46-3
三量体F17ポリペプチドのドメイン構造が
図2Cに示されており、CHとCκドメインとの間の結合はジスルフィド結合である。ヘテロ二量体タンパク質は、F9と同様であるが、V
H及びVκドメイン、並びにC末端F(ab)構造内のCH1及びCκドメインは、それぞれ、それらのパートナーと逆である。このヘテロ三量体は、以下から構成される:
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
V
H
抗CD19-CH1-CH2-CH3-CH3-Vκ
抗NKp46-CH1、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
V
H
抗NKp46-Cκ、及び
(3)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第3のポリペプチド鎖:
Vκ
抗CD19-Cκ。
【0217】
加えて、F17タンパク質の3つの変異体を作製した:(a)ヒンジ領域のシステイン残基が完全なまま残った第1のもの(野生型、F17Aと呼ばれる)、(b)ヒンジ領域のシステイン残基がセリン残基によって置換された第2のもの(F10B)、及び(c)ヒンジの残基DKTHTCPPCPを置換しているリンカー配列GGGSSを含む第3のもの(F17C)。タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。F17Bタンパク質の3つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号166、167、及び168に示されている。
【0218】
実施例4:
二量体Fcドメインを有する二重特異的NKp46抗体形態
二量体Fcドメインを有する新規なタンパク質構築物を開発し、このタンパク質構築物は、実施例3の単量体Fcドメインタンパク質の多数の利点を共有するが、高い親和性でFcRnに結合する。FcγR(CD16を含む)に対して低い結合性を有する若しくは結合性が消失しているか、又はFcγR(CD16を含む)に対する結合性を有する様々なタンパク質形態を作製し、例えば、ヒトCD16に対する結合親和性は、SPRによって評価される野生型ヒトIgG1抗体の結合親和性の1-logの範囲内であった(例えば、実施例16の方法を参照されたい)。この様々なポリペプチド形態を、(VH-(CH1/Cκ)-CH2-CH3-)単位又は(Vκ-(CH1又はCκ)-CH2-CH3-)単位を有する中心鎖を含むヘテロ二量体タンパク質の機能を調べるために試験し、比較した。CH3ドメインの一方又は両方は、任意選択的に介在アミノ酸配列若しくはドメインを介して、可変ドメイン(分離されたポリペプチド鎖上の可変ドメインに結合する単一可変ドメイン)、直列型可変ドメイン(例えば、scFv)、又は単一可変ドメインとして抗原に結合することができる単一可変ドメインに融合される。2つの鎖が、CH1-Cκ二量体化によって結合してジスルフィド結合二量体を形成するか、又は第3鎖と結合する場合には三量体を形成する。
【0219】
様々な構築物を、二重特異的抗体の調製に使用するために、実施例2-1に記載の腫瘍抗原CD19に特異的なscFvに由来する可変ドメインDNA及びアミノ酸配列、並びに実施例1で明らかにされたNKp46に特異的な抗体からの異なる可変領域を用いて作製した。タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。ドメイン構造は、
図2A~
図6Dに示されている。
【0220】
形態5(F5):CD19-F5-NKp46-3
三量体F5ポリペプチドのドメイン構造が
図2Dに示されており、ヒンジドメイン間の鎖間結合(鎖上のCH1/CκドメインとCH2ドメインとの間に図形で示されている)及びCH1とCκドメインとの間の鎖間結合は鎖間ジスルフィド結合である。ヘテロ三量体は、以下から構成される:
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
V
H
抗CD19-CH1-CH2-CH3-V
H
抗NKp46-Cκ、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
Vκ
抗CD19-CK-CH2-CH3、及び
(3)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第3のポリペプチド鎖:
Vκ
抗NKp46-CH1。
【0221】
タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、37mg/Lの高い産生収率を示し、精製されたタンパク質は、同様に単純なSECプロフィールを示した。3つのポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号169(第2鎖)、170(第1鎖)、及び171(第3鎖)に示されている。
【0222】
形態6(F6):CD19-F6-NKp46-3
ヘテロ三量体F6ポリペプチドのドメイン構造が
図2Dに示されている。F6タンパク質は、F5と同じであるが、N連結グリコシル化を防止するためのN297S置換を含む。タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、12mg/Lの高い産生収率を示し、精製されたタンパク質は、単純なSECプロフィールを示した。3つのポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号172(第2鎖)、173(第1鎖)、及び174(第3鎖)に示されている。
【0223】
形態7(F7):CD19-F7-NKp46-3
ヘテロ三量体F7ポリペプチドのドメイン構造が
図2Dに示されている。F7タンパク質は、中心鎖とVκ
抗NKp46-CH1鎖との二量体種の少数集団の形成を防止するために、それらのC末端でFcドメインに連結されたCH1及びCκドメインにシステインのセリンでの置換を有する点を除いてF6と同じである。タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、11mg/Lの高い産生収率を示し、精製されたタンパク質は、単純なSECプロフィールを示した。3つのポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号175(第2鎖)、176(第1鎖)、及び177(第3鎖)に示されている。
【0224】
形態13(F13):CD19-F13-NKp46-3
二量体F13ポリペプチドのドメイン構造が
図2Dに示されており、ヒンジドメイン間の鎖間結合(鎖上のCH1/CκドメインとCH2ドメインとの間に示されている)及びCH1ドメインとCκドメインとの間の鎖間結合は、鎖間ジスルフィド結合である。このヘテロ二量体は、以下から構成される:
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
V
H
抗CD19-CH1-CH2-CH3-(V
H-Vκ)
抗NKp46、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
Vκ
抗CD19-Cκ-CH2-CH3。
【0225】
(VH-Vκ)単位は、VHドメイン、リンカー、及びVκ単位(scFv)から構成されていた。
【0226】
タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、6.4mg/Lの高い産生収率を示し、精製されたタンパク質は、単純なSECプロフィールを示した。2つのポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号178(第2鎖)及び179(第1鎖)に示されている。
【0227】
形態14(F14):CD19-F14-NKp46-3
二量体F14ポリペプチドのドメイン構造が
図2Eに示されている。F14ポリペプチドは、F13形態の構造を共有する二量体ポリペプチドであるが、野生型Fcドメイン(CH2-CH3)の代わりに、F14二重特異的形態は、N連結グリコシル化をなくすためにCH2ドメイン変異N297Sを有する。タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、2.4mg/Lの高い産生収率を示し、精製されたタンパク質は、単純なSECプロフィールを示した。2つのポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号180(第2鎖)及び181(第1鎖)に示されている。
【0228】
形態15(F15):CD19-F15-NKp46-3
三量体F15ポリペプチドのドメイン構造が
図2Eに示されている。F15ポリペプチドは、F6形態の構造を共有するが、中心鎖と第2鎖との間のN末端VH-CH1とVκ-Cκ単位とが逆であるため異なっている三量体ポリペプチドである。タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、0.9mg/Lの良好な産生収率を示し、精製されたタンパク質で単純なSECプロフィールを示した。3つのポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号182(第2鎖)、183(第1鎖)、及び184(第3鎖)に示されている。
【0229】
形態16(F16):CD19-F16-NKp46-3
三量体F16ポリペプチドのドメイン構造が
図2Eに示されている。F16ポリペプチドは、F6形態の構造を共有するが、中心鎖と第2鎖との間のC末端VH-CKとVκ-CH1単位とが逆であるため異なっている三量体ポリペプチドである。タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。3つのポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号185(第2鎖)、186(第1鎖)、及び187(第3鎖)に示されている。
【0230】
形態T5(T5)
三量体T5ポリペプチドのドメイン構造が
図2Fに示されている。T5ポリペプチドは、F5形態の構造を共有する三量体ポリペプチドであるが、第3鎖(Fcドメインを欠いている鎖)のC末端におけるscFv単位の融合により異なる。従って、このタンパク質は、目的の抗原に対する2つの抗原結合ドメイン及びNKp46に対する1つの抗原結合ドメインを有し、且つそのFcドメインを介してCD16に結合する。タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。T5タンパク質は、異なる抗体に由来するヒトCD20に結合する(且つCD20上の異なるエピトープに結合する)2つの抗原結合ドメインを有していた。第1の抗CD20 ABDは、親抗体GA101(GAZYVA(登録商標)、Gazyvaro(登録商標)、オビヌツズマブ、Roche Pharmaceuticals)のV
H及びV
Lを含んでいた。第2の抗CD20 ABDは、親抗体リツキシマブ(Rituxan(登録商標)、Mabthera(登録商標)、Roche Pharmaceuticals)のV
H及びV
Lを含んでいた。第3の抗原結合ドメインは、ヒトNKp46に結合する。T5タンパク質の3つの鎖のアミノ酸配列が以下に示されている(リツキシマブ配列は太字で下線付きであり、抗GA101配列は下線付きであり、抗NKp46配列はイタリック体である)。
【0231】
GA101-T5-Ritux-NKp46
ポリペプチド1(配列番号188)
【化28】
ポリペプチド2(配列番号189)
【化29】
ポリペプチド3:(配列番号190)
【化30】
【0232】
形態T6(T6)
三量体T6ポリペプチドのドメイン構造が
図2Fに示されている。T6ポリペプチドは、F6形態の構造を共有する三量体ポリペプチドであるが、第3鎖(Fcドメインを欠いている鎖)のC末端におけるscFv単位の融合により異なる。この三量体タンパク質は、目的の抗原に対する2つの抗原結合ドメイン及びNKp46に対する1つの抗原結合ドメインを含み、N297置換によりそのFcドメインを介してCD16に結合しない。タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。T6タンパク質は、ヒトCD20に結合する2つの抗原結合ドメインを含む。第1の抗CD20 ABDは、親抗体GA101のV
H及びV
Lを含み、且つ第2の抗CD20 ABDは、リツキシマブのV
H及びV
Lを含む。T6タンパク質の3つの鎖のアミノ酸配列が配列番号191、192、及び193に示されている。
【0233】
形態T9B(T9B)
三量体T9Bポリペプチドのドメイン構造が
図2Fに示されている。T9Bポリペプチドは、F9形態(F9B変異体)の構造を共有する三量体ポリペプチドであるが、遊離CH1ドメイン(第3鎖上)のC末端におけるscFv単位の融合により異なる。このタンパク質は、目的の抗原に対する2つの抗原結合ドメイン及びNKp46に対する1つの抗原結合ドメインを含むが、単量体Fcドメイン及び/又はN297置換によりそのFcドメインを介してCD16に結合しない。上記のような三量体タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。T9Bタンパク質は、ヒトCD20に結合する2つの抗原結合ドメインを有していた。第1の抗CD20 ABDは、親抗体GA101のV
H及びV
Lを含み、且つ第2の抗CD20 ABDは、親抗体リツキシマブのV
H及びV
Lを含んでいた。T9Bタンパク質の3つの鎖のアミノ酸配列が以下に示されている。
【0234】
GA101-T9B-Ritux-NKp46
ポリペプチド2:(配列番号195)
【化31】
ポリペプチド1:(配列番号194)
【化32】
ポリペプチド3(配列番号196):
【化33】
【0235】
形態T11(T1):CD19-T11-NKp46-3
二量体T11ポリペプチドのドメイン構造が
図2Fに示されている。T11ポリペプチドは、F11形態の構造を共有する三量体ポリペプチドであるが、遊離CH1ドメインのC末端におけるscFv単位の融合により異なる。この二量体タンパク質は、目的の抗原に対する2つの抗原結合ドメイン及びNKp46に対する1つの抗原結合ドメインを含むが、単量体Fcドメイン及び/又はN297置換によりそのFcドメインを介してCD16に結合しない。タンパク質を実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。T11タンパク質は、ヒトCD20に結合する2つの抗原結合ドメインを含む。第1の抗CD20 ABDは、親抗体GA101のV
H及びV
Lを含み、且つ第2の抗CD20 ABDは、リツキシマブのV
H及びV
Lを含んでいた。T11タンパク質の2つの鎖のアミノ酸配列が以下に示されている。
【0236】
GA101-T11-Ritux-NKp46
ポリペプチド1(配列番号197):
【化34】
ポリペプチド2(配列番号198):
【化35】
【0237】
実施例5:
表面プラズモン共鳴(SPR)による、二重特異的タンパク質によるNKp46結合親和性
Bacore T100の一般的な手順及び試薬
SPR測定をBiacore T100装置(Biacore GE Healthcare)において25℃で行った。全てのBiacore実験では、HBS-EP+(Biacore GE Healthcare)及びNaOH 10mMは、それぞれ泳動用緩衝液及び再生緩衝液としての役割を果たした。センサーグラムをBiacore T100 Evaluationソフトウェアで分析した。プロテインAを(GE Healthcare)から購入した。ヒトNKp46組換えタンパク質をクローニングし、産生し、且つInnate Pharmaで精製した。
【0238】
プロテインAの固定化
プロテインAタンパク質をSensor Chip CM5上のデキストラン層のカルボキシル基に共有結合により固定した。チップ表面をEDC/NHS(N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及びN-ヒドロキシスクシンイミド(Biacore GE Healthcare))で活性化した。プロテインAを結合緩衝液(10mM酢酸、pH5.6)で10μg/mlに希釈し、適切な固定化レベル(即ち、2500RU)に達するまで注入した。残りの活性化基の不活性化を、100mMエタノールアミン pH8(Biacore GE Healthcare)を用いて行った。
【0239】
結合試験
まず、二重特異的タンパク質を、NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、又はNKp46-4の抗体からの異なる抗NKp46可変領域を有する実施例2に記載の形態F1で試験した。次に、抗体を、NKp46-3抗体からの抗NKp46可変領域を有する異なる形態F3、F4、F5、F6、F9、F10、F11、F13、F14として試験し、完全長ヒトIgG1のようなNKp46-3抗体と比較した。
【0240】
二重特異的タンパク質を1μg/mLでプロテインAチップ上において捕捉し、組換えヒトNKp46タンパク質を、5μg/mLにおいて、捕捉した二重特異的抗体に注入した。ブランク差し引きのために、サイクルを再び行って、NKp46タンパク質を泳動用緩衝液に替えた。
【0241】
Bab281抗体を、SPRによってNKp46に対する結合性について別個に試験し、さらに細胞表面にヒトNKp46構築物を発現する細胞株を用いてフローサイトメトリーによって試験した。FACSスクリーニングのために、上清中の反応抗体の存在を、PEで標識されたヤギ抗マウスポリクローナル抗体(pAb)によって明らかにした。SPC及びFACSの結果は、Bab281ベースの抗体が、NKp46細胞株にもNKp46 Fcタンパク質にも結合しないことを示した。Bab281は、二重特異的形態で存在する場合、その標的に対する結合性を失った。
【0242】
親和性試験
一価親和性試験を、製造者(Biacore GE Healthcare kinetic wizard)が推奨する正規のCapture-Kineticプロトコルに従って行った。62.5~400nMの範囲のヒトNKp46組換えタンパク質の7段階希釈物を、捕捉した二重特異的抗体に連続的に注入し、再生の10分前に解離させた。全てのセンサーグラムのセットを、1:1動態結合モデルを用いてフィッティングした。
【0243】
結果
SPRは、NKp46-1、2、3、及び4 scFv結合ドメインを有する形態F1の二重特異的ポリペプチドは、NKp46に結合したが、他の抗NKp46抗体のscFvを有する他の二重特異的ポリペプチドは、NKp46結合性を維持しなかったことを示した。単量体二重特異的形態で結合性を維持しなかった結合ドメインは、当初はNKp46に結合したが、二重特異的形態への変換時に結合性を失った。形態F1、F2、F3、F4、F5、F6、F9、F10、F11、F13、F14の二重特異的ポリペプチドの全ては、NKp46-3可変領域を用いる場合にNKp46に対する結合性を維持した。一価親和性並びに動力学的結合及び解離速度定数が以下の表3に示されている。
【0244】
【0245】
実施例6:
Daudi腫瘍標的に対するNK細胞とFc含有NKp46xCD19二重特異的タンパク質との結合
単量体Fcドメイン及び実施例3に記載の一本鎖F1又は二量体F2形態に従って配置されたドメイン、及びNKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、又はNKp46-4をベースとするNKp46結合領域を有する二重特異的抗体を、NK細胞にCD19陽性腫瘍標的細胞(Bリンパ芽球細胞株によって十分に特徴付けられるDaudi)を溶解させる機能的能力について試験した。F2タンパク質は、scFv形態ではNKp46に対する結合性を失うが、F2のF(ab)様形態では結合性を維持するNKp46-9の可変領域をさらに含んでいた。
【0246】
簡単に述べると、(a)静止ヒトNK細胞、及び(b)ヒトNKp46でトランスフェクトされたヒトNK細胞株KHYG-1のそれぞれの細胞溶解活性をU底96ウェルプレート中の典型的な4時間の51Cr放出アッセイで評価した。Daudi細胞を51Cr(50μCi(1.85MBq)/1×106細胞)で標識し、次いで異なる濃度の単量体二重特異的抗体の存在下において、KHYG-1では50、静止NK細胞では(F1タンパク質に対して)10又は(F2タンパク質に対して)8.8に等しいエフェクター/標的比において、hNK46でトランスフェクトされたKHYG-1と混合した。短時間の遠心分離及び37℃で4時間のインキュベーション後、上清のサンプルを取り出して、LumaPlate(Perkin Elmer Life Sciences,Boston,MA)に移し、51Crの放出をTopCount NXT ベータ検出器(PerkinElmer Life Sciences,Boston,MA)で測定した。全ての実験条件を3連で分析し、特異的溶解のパーセンテージを以下のように決定した:100×(平均cpm実験放出-平均cpm自然放出)/(平均cpm総放出-平均cpm自然放出)。総放出のパーセンテージは、2% Triton X100(Sigma)での標的細胞の溶解によって得られ、自然放出は、培地(エフェクターもAbsも含まない)中の標的細胞に一致する。
【0247】
結果
KHYG-1 hNKp46 NK実験モデルでは、各二重特異的抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、又はNKp46-9が、陰性対照(ヒトIgG1アイソタイプ対照(IC)及びCD19/CD3二重特異的抗体)と比較して、ヒトKHYG-1 hNKp46 NK細胞株によるDaudi細胞の特異的溶解を誘導し、それにより、これらの抗体が、CD19/NKp46架橋によってKHYG-1 hNKp46によるDaudi標的細胞の溶解を誘導することが示された。
【0248】
静止NK細胞をエフェクターとして使用したときに、各二重特異的抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、又はNKp46-9が同様に、陰性対照(ヒトIgG1アイソタイプ対照(IC)抗体)と比較して、ヒトNK細胞によるDaudi細胞の特異的溶解を誘導し、それにより、これらの抗体が、CD19/NKp46架橋によってヒトNK細胞によるDaudi標的細胞の溶解を誘導することが示された。リツキシマブ(RTX、キメラIgG1)を静止ヒトNK細胞によるADCC(抗体依存性細胞傷害)の陽性対照として使用した。RTX(このアッセイでは10μg/mlで)で得られた最大応答は、21.6%の特異的溶解であり、二重特異的抗体が高い標的細胞溶解活性を有することを例証した。静止NK細胞での実験の結果は、一本鎖F1タンパク質については
図3Aに示され、二量体Fcタンパク質については
図3Bに示されている。
【0249】
実施例7:
完全長抗NKp46 mAbと枯渇抗腫瘍mAbとの比較:NKp46xCD19二重特異的タンパク質が非特異的NK活性化を防止する
これらの試験は、二重特異的抗体が、非特異的NK細胞の活性化を引き起こすことなく、癌標的細胞に対するNKp46媒介NK活性化を媒介できるか否かを調べることを目的とした。
【0250】
NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、又はNKp46-9からの抗NKp46可変ドメインを有する実施例3に記載のF2形態に従った配置を有するNKp46xCD19二重特異的タンパク質を以下と比較した:
(a)完全長単一特異的抗NKp46抗体(ヒトIgG1のようなNKp46-3)、及び
(b)ADCC誘導抗体対照比較(ADCC inducing antibody control comparator)としての完全長ヒトIgG1のような抗CD19抗体。
【0251】
実験は、対照として以下をさらに含んでいた:リツキシマブ、高い発現レベルを有する標的抗原の抗CD20 ADCC誘導抗体対照;抗CD52抗体アレムツヅマブ、標的細胞及びNK細胞の両方に存在するCD52標的に結合するヒトIgG1;並びに陰性対照アイソタイプ対照治療抗体(標的細胞(HUG1-IC)に存在する標的に結合しないヒトIgG1)。
【0252】
様々なタンパク質を、CD19陽性腫瘍標的細胞(Daudi細胞)の存在下、CD19陰性CD16陽性標的細胞(HUT78 Tリンパ腫細胞)の存在下、且つ標的細胞の非存在下でのNK細胞の活性化に対する機能的な影響について試験した。
【0253】
簡単に述べると、NK活性化を、フローサイトメトリーにより、NK細胞でのCD69及びCD107の発現を評価することによって試験した。アッセイは、完全RPMI、150μL最終/ウェルにおいて96Uウェルプレートで行った。エフェクター細胞は、ドナーから精製した新鮮なNK細胞とした。標的細胞は、Daudi(CD19-陽性)、HUT78(CD19-陰性)、又はK562(NK活性化対照細胞株)とした。K562陽性対照に加えて、以下の3つの条件を試験した。
>NK細胞のみ
>NK細胞対Daudi(C19+)
>NK細胞対HUT78(CD19-)
エフェクター:標的(E:T)比は、2.5:1(50,000E:20,000T)とし、抗体の希釈範囲は、1/4希釈で10μg/mLから始めた(n=8の濃度)。抗体、標的細胞、及びエフェクター細胞を混合し、300gで1分間回転させ、37℃で4時間インキュベートし、500gで3分間回転させ、染色緩衝液(SB)で2回洗浄し、50μLの染色Abミックスを加え、300gで30分間インキュベートし、CellFixを含むSB再懸濁ペレットで2回洗浄し、4℃で一晩保存し、Canto II(HTS)で蛍光を明らかにした。
【0254】
結果
1.NK細胞のみ
結果は
図4Aに示されている。標的抗原発現細胞の非存在下において、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体(NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、及びNKp46-9の可変領域のそれぞれを含む)はいずれも、CD69又はCD107の発現による評価によるとNK細胞を活性化しなかった。完全長抗CD19もNK細胞を活性化しなかった。しかしながら、完全長抗NKp46抗体は、NK細胞の検出可能な活性化を引き起こした。アレムツヅマブも非常に高いレベルでNK細胞の活性化を誘導した。アイソタイプ対照抗体は、活性化を誘導しなかった。
【0255】
2.NK細胞対Daudi(CD19+)
結果は
図4Bに示されている。標的抗原発現細胞の存在下において、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体(NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、及びNKp46-9の結合ドメインのそれぞれを含む)は全て、NK細胞を活性化した。完全長抗CD19は、最良でも非常に低いNK細胞の活性化のみを示した。完全長抗NKp46抗体もアレムツヅマブも、NK細胞のみの存在下で観察された活性化を超えた活性化の実質的な増加を示さなかった。
図4は、完全長抗NKp46抗体が、NK細胞のみの存在下で観察されたベースライン活性化と同様のレベルを示すことを示す。アレムツヅマブも、NK細胞のみの存在下で観察された活性と同様のレベルのNK細胞の活性化を誘導し、この設定のより高い抗体濃度(ET 2.5:1)では、活性化は、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体を用いたときよりも高かった。アイソタイプ対照抗体は、活性化を誘導しなかった。
【0256】
3.NK細胞対HUT78(CD19-)
結果は
図4Cに示されている。標的抗原陰性HUT78細胞の存在下において、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体(NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、及びNKp46-9の可変領域のそれぞれを含む)は全て、NK細胞を活性化した。しかしながら、完全長抗NKp46抗体及びアレムツヅマブは、NK細胞のみの存在下で観察された同様のレベルでNK細胞の検出可能な活性化を引き起こした。アイソタイプ対照抗体は、活性化を誘導しなかった。
【0257】
結論として、二重特異的抗NKp46タンパク質は、完全長単一特異的抗NKp46抗体、及び標的細胞の非存在下で同様にNK細胞を活性化する枯渇IgGアイソタイプの完全長抗体とは異なり、標的細胞特異的にNK細胞を活性化することができる。抗NKp46二重特異的タンパク質で達成されるNK細胞の活性化は、完全長抗CD19 IgG1抗体で観察される活性化よりも高かった。
【0258】
実施例8:
低いET比での枯渇抗腫瘍mAb:NKp46xCD19二重特異的タンパク質の比較効果
これらの試験は、二重特異的抗体が、低いエフェクター:標的比において、癌標的細胞に対するNKp46媒介NK細胞活性化を媒介できるか否かを調べることを目的とした。この実施例に使用されるET比は、実施例7で使用された2.5:1のET比又は実施例6の10:1のET比よりもin vivoで遭遇するであろう設定に近いと考えられる1:1とした。
【0259】
NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、又はNKp46-9からの抗NKp46可変ドメインを有する実施例3に記載のF2形態に従った配置を有するNKp46xCD19二重特異的タンパク質を以下と比較した:
(a)完全長単一特異的抗NKp46抗体(ヒトIgG1のようなNKp46-3)、及び
(b)ADCC誘導抗体対照比較としての完全長ヒトIgG1のような抗CD19抗体。
【0260】
実験は、対象として以下をさらに含んでいた:リツキシマブ(高い発現レベルを有する標的抗原の抗CD20 ADCC誘導抗体対照);抗CD52抗体アレムツヅマブ(標的細胞及びNK細胞の両方に存在するCD52標的に結合するヒトIgG1)、並びに陰性対照アイソタイプ対照治療抗体(標的細胞(HUG1-IC)に存在する標的に結合しないヒトIgG1)。様々なタンパク質を、CD19陽性腫瘍標的細胞(Daudi細胞)の存在下、CD19陰性CD16陽性標的細胞(HUT78 Tリンパ腫細胞)の存在下、且つ標的細胞の非存在下でのCD69又はCD107の発現により評価される、NK細胞活性化に対する機能的な影響について試験した。これらの実験は、ET比を1:1としたことを除いて実施例7と同様に行った。
【0261】
結果
結果は
図5に示されている(
図5A:CD107及び
図5B:CD69)。標的抗原発現細胞の存在下では、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体(NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、及びNKp46-9の可変領域のそれぞれを含む)は全て、Daudi細胞の存在下でNK細胞を活性化した。
【0262】
Daudi細胞の存在下で二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体によって誘導される活性化は、この設定で低い活性を有するADCC誘導抗体のような完全長ヒトIgG1抗CD19抗体よりも遥かに強力であった。さらに、この低いE:T比の設定では、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体によって誘導される活性化は、抗CD20抗体リツキシマブと同程度に強力であり、差異は、差異が2.5:1のET比で観察された濃度よりも10倍高い最高濃度でのみ観察された。
【0263】
標的細胞の非存在下又は標的抗原陰性HUT78細胞の存在下では、完全長抗NKp46抗体及びアレムツヅマブは、Daudi細胞の存在下で観察されたベースライン活性化と同様のレベルを示した。抗NKp46x抗CD19抗体は、HUT78細胞の存在下でNK細胞を活性化しなかった。
【0264】
結論として、二重特異的抗NKp46タンパク質は、標的細胞特異的にNK細胞を活性化することができ、より低いエフェクター:標的比は、NK細胞の活性化の媒介において従来のヒトIgG1抗体よりも有効である。
【0265】
実施例9:
NKp46の動作機序
NKp46-3からの抗NKp46可変ドメインを有する実施例3又は4に記載のF2、F3、F5、又はF6形態に従った配置を有するNKp46x抗CD19二重特異的抗体を、CD16-/NKp46+NK細胞株にCD19陽性腫瘍標的細胞を溶解させる機能的能力について、リツキシマブ(抗CD20 ADCC誘導抗体)、及びヒトIgG1アイソタイプ対照抗体と比較した。
【0266】
簡単に述べると、CD16-/NKp46+ヒトNK細胞株KHYG-1の細胞溶解活性をU底96ウェルプレート中の典型的な4時間の51Cr放出アッセイで評価した。Daudi細胞又はB221細胞を51Cr(50μCi(1.85MBq)/1×106細胞)で標識し、次いで1/5希釈(n=8の濃度)で10-7mol/mLから始まる希釈範囲の試験抗体の存在下において、50:1に等しいエフェクター/標的比でKHYG-1と混合した。
【0267】
短時間の遠心分離及び37℃で4時間のインキュベーション後、50μLの上清を取り出して、LumaPlate(Perkin Elmer Life Sciences,Boston,MA)に移し、51Crの放出をTopCount NXTベータ検出器(PerkinElmer Life Sciences,Boston,MA)で測定した。全ての実験条件を3連で分析し、特異的溶解のパーセンテージを以下のように決定した:100×(平均cpm実験放出-平均cpm自然放出)/(平均cpm総放出-平均cpm自然放出)。総放出のパーセンテージは、2% Triton X100(Sigma)での標的細胞の溶解によって得られ、自然放出は、培地(エフェクターもAbsも含まない)中の標的細胞に一致する。
【0268】
結果
結果は、
図6A(KHYG-1対Daudi)及び
図6B(KHYG-1対B221)に示されている。KHYG-1 hNKp46 NK実験モデルでは、各NKp46xCD19二重特異的タンパク質(形態F2、F3、F5、及びF6)は、ヒトKHYG-1 hNKp46 NK細胞株によるDaudi細胞又はB221細胞の特異的溶解を誘導したが、リツキシマブ及びヒトIgG1アイソタイプ対照(IC)抗体は誘導しなかった。
【0269】
実施例10:
新鮮なヒトNK細胞を用いる二重特異的抗体と従来のIgG抗体との比較効果
NKp46-3由来の抗NKp46可変ドメインを有するF5形態に従った配置を有するヒトCD16に結合するNKp46xCD19二重特異的タンパク質を、精製されたNK細胞にCD19陽性Daudi腫瘍標的細胞を溶解させる機能的能力について、F6形態(CD16結合を欠いている)と同じ二重特異的抗体及びヒトIgG1アイソタイプ抗CD19抗体、並びにヒトIgG1アイソタイプ対照抗体と比較した。
【0270】
簡単に述べると、EFS Buffy Coatからの新鮮なヒト精製NK細胞の細胞溶解活性をU底96ウェルプレート中の典型的な4時間の51Cr放出アッセイで評価した。Daudi細胞又はHUT78細胞(CD19を発現しない陰性対照細胞)を51Crで標識し、次いで1/10希釈(n=8の濃度)で10μg/mlから始まる希釈範囲の試験抗体の存在下において、10:1に等しいエフェクター/標的比でNK細胞と混合した。
【0271】
短時間の遠心分離及び37℃で4時間のインキュベーション後、50μlの上清を取り出し、LumaPlate(Perkin Elmer Life Sciences,Boston,MA)に移し、51Crの放出をTopCount NXTベータ検出器(PerkinElmer Life Sciences,Boston,MA)で測定した。全ての実験条件を3連で分析し、特異的溶解のパーセンテージを以下のように決定した:100×(平均cpm実験放出-平均cpm自然放出)/(平均cpm総放出-平均cpm自然放出)。総放出のパーセンテージは、2% Triton X100(Sigma)での標的細胞の溶解によって得られ、自然放出は、培地(エフェクターもAbsも含まない)中の標的細胞に一致する。
【0272】
結果が
図7に示されている。N297置換によりFcドメインがCD16に結合しないCD19-F6-NKp46(F6形態の二重特異的タンパク質)は、Daudi標的細胞のNK細胞溶解の媒介において完全長IgG1抗CD19抗体と同程度に強力であり、これは、対照IgG1抗CD19抗体がCD19に二価で結合すること、及び抗CD19がCD16によって結合されることを考慮すると注目に値する。驚くべきことに、FcドメインがCD16にさらに結合するCD19-F6-NKp46(F5形態のタンパク質)は、Daudi標的細胞の溶解の媒介において完全長lgG1抗CD19抗体又はF6形態の二重特異的タンパク質よりも遥かに強力である。同等のレベルの標的細胞の溶解では、CD19-F6-NKp46は、完全長抗CD19 IgG1よりも少なくとも1000倍強力であった。
【0273】
実施例11:
様々な二重特異的形態のFcRnに対する結合性
様々な抗体形態のヒトFcRNに対する親和性を、実施例2~6に記載されているように、組換えFcRnタンパク質をSensor Chip CM5上のデキストラン層のカルボキシル基に共有結合により固定化することにより、表面プラズモン共鳴(SPR)によって試験した。
【0274】
ヒトIgG1定常領域を有するキメラ完全長抗CD19抗体、及びNKp46-3(F2ではNKp46-2)からの抗NKp46可変ドメインを有する実施例3又は4に記載のF3、F4、F5、F6、F9、F10、F11、F13、又はF14形態に従った配置を有するNKp46xCD19二重特異的タンパク質をそれぞれの分析物について試験し、全てのセンサーグラムを、定常状態又は1:1のSCK結合モデルを用いてフィッティングした。
【0275】
結果は以下の表4に示されている。二量体Fcドメイン(形態F5、F6、F13、F14)を有する二重特異的タンパク質は、完全長IgG1抗体の親和性と同様の親和性でFcRnに結合した。単量体Fcドメイン(F3、F4、F9、F10、F11)を有する二重特異的タンパク質もFcRnに対する結合性を示したが、二量体Fcドメインを有する二重特異的タンパク質よりも低い結合性であった。
【0276】
【0277】
実施例12:
FcγRへの結合
このような二重特異的単量体Fcタンパク質がFcγ受容体への結合性を維持できるか否かを評価するために、様々な多量体Fcタンパク質を評価した。
【0278】
SPR測定は、Biacore T100装置(Biacore GE Healthcare)において25℃で行った。全てのBiacore実験では、HBS-EP+(Biacore GE Healthcare)及び10mM NaOH、500mM NaClがそれぞれ泳動用緩衝液及び再生緩衝液としての役割を果たした。センサーグラムをBiacore T100 Evaluationソフトウェアで分析した。組換えヒトFcR(CD64、CD32a、CD32b、CD16a、及びCD16b)をクローニングし、産生し、且つ精製した。
【0279】
F5及びF6二重特異的抗体CD19-F5-NKp46-3又はCD19-F6-NKp46-3をセンサーチップCM5上のデキストラン層のカルボキシル基に共有結合により固定した。チップ表面をEDC/NHS(N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及びN-ヒドロキシスクシンイミド(Biacore GE Healthcare))で活性化した。二重特異的抗体を結合緩衝液(10mM酢酸、pH5.6)で10μg/mlに希釈し、適切な固定レベル(即ち、800~900RU)に達するまで注入した。残りの活性化基の非活性化を、100mM エタノールアミン pH8(Biacore GE Healthcare)を用いて行った。
【0280】
一価親和性試験を典型的な動力学的ウィザード(メーカーの推奨)に従って評価した。CD64について0.7~60nM、他の全てのFcRについて60~5000nMの可溶性分析物(FcR)の連続希釈液を固定化二重特異的抗体上に注入し、再生前に10分間解離させた。全てのセンサーグラムセットを、CD64には1:1動力学的結合モデルを用い、他の全てのFcRには定常状態アフィニティーモデルを用いてフィッティングした。
【0281】
完全長野生型ヒトIgG1は、全てのカニクイザル及びヒトFcγ受容体に結合したが、CD19-F6-NKp46-3二重特異的抗体はいずれの受容体にも結合しなかった。他方、CD19-F5-NKp46-3は、ヒト受容体CD64(KD=0.7nM)、CD32a(KD=846nM)、CD32b(KD=1850nM)、CD16a(KD=1098nM)、及びCD16b(KD=2426nM)のそれぞれに結合した。従来のヒト抗IgG1抗体は、Fc受容体に対して同等の結合(以下の表に示されているKD)を有する。
【0282】
【0283】
実施例13:
抗NKp46抗体のエピトープマッピング
A.競合アッセイ
競合アッセイを以下に記載の方法に従って表面プラズモン共鳴(SPR)によって行った。
【0284】
SPR測定をBiacore T100装置(Biacore GE Healthcare)において25℃で行った。全てのBiacore実験では、HBS-EP+(Biacore GE Healthcare)及びNaOH 10mM NaCl 500mMがそれぞれ泳動用緩衝液及び再生緩衝液としての役割を果たした。センサーグラムをBiacore T100 Evaluationソフトウェアで分析した。抗6xHis標識抗体をQIAGENから購入した。ヒト6xHis標識NKp46組換えタンパク質(NKp46-His)をクローニングし、産生し、且つInnate Pharmaで精製した。
【0285】
抗His抗体をSensor Chip CM5上のデキストラン層のカルボキシル基に共有結合により固定した。チップ表面をEDC/NHS(N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及びN-ヒドロキシスクシンイミド(Biacore GE Healthcare))で活性化した。プロテインA及び抗His抗体を結合緩衝液(10mM酢酸、pH5.6)で10μg/mlに希釈し、適切な固定化レベル(即ち、2000~2500RU)に達するまで注入した。残りの活性化基の不活性化を、100mMエタノールアミン pH8(Biacore GE Healthcare)を用いて行った。
【0286】
NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、又はNKp46-4に一致するNKp46結合領域を有する正常なヒトIgG1キメラ親抗体を、抗6xHis標識抗体チップを用いて行われた競合試験に使用した。
【0287】
1μg/mLの、NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、又はNKp46-4をベースとするNKp46結合領域を有する二重特異的抗体をプロテインAチップで捕捉し、組換えヒトNKp46タンパク質をNKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、又はNKp46-4の群の第2の試験二重特異的抗体と共に5μg/mLで注入した。
【0288】
NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、又はNKp46-4のいずれも、NKp46に対する結合について互いに競合せず、これらの抗体はそれぞれ異なるエピトープを表している。
【0289】
B.NKp46変異体に対する結合性
抗NKp46抗体のエピトープを定義するために、本発明者らは、NKp46の2つのドメイン上の分子表面に露出された1つ、2つ、又は3つのアミノ酸置換によって定義されるNKp46変異体を設計した。このアプローチにより、以下の表に示されている、Hek-293T細胞でトランスフェクトされた42の変異体が作製された。以下の表5の標的アミノ酸変異は共に、配列番号1の付番を用いて示されている(Jaron-Mendelson et al.(2012)J.Immunol.88(12):6165-74で使用された付番にも一致している)。
【0290】
【0291】
変異体の生成
NKp46変異体をPCRによって生成した。増幅された配列をアガロースゲルにかけて、Macherey Nagel PCR Clean-Up Gel Extractionキット(参照番号740609)を用いて精製した。次いで、それぞれの変異体について生成された2つ又は3つの精製PCR産物をClonTech InFusionシステムで発現ベクターに連結した。変異配列を含むベクターをMiniprepで調製し、配列決定した。配列決定後、変異配列を含むベクターを、Promega PureYield(商標)Plasmid Midiprep Systemを用いてMiniprepで調製した。HEK293T細胞をDMEM培地(Invitrogen)で増殖させ、InvitrogenのLipofectamine 2000を用いてベクターでトランスフェクトし、導入遺伝子発現の試験前にCO2インキュベーターで37℃において24時間インキュベートした。
【0292】
抗NKp46のHEK293Tトランスフェクト細胞に対する結合性のフローサイトメトリー分析
全ての抗NKp46抗体をそれらのそれぞれの変異体に対する結合性についてフローサイトメトリーによって試験した。1つ又はいくつかの変異体に対する結合性をある濃度(10μg/ml)で失う抗体を決定するために最初の実験を行った。結合性の消失を確認するために、抗体の滴定を、結合性がNKp46変異体(1~0,1~0.01~0.001μg/ml)によって影響を受けると思われる抗体に対して行った。
【0293】
結果
抗体NKp46-1は、野生型NK46と比較して、残基K41、E42、及びE119(NKp46野生型で付番)に変異を有する変異体2に対して低い結合性を有していた。同様に、NKp46-1はまた、残基Y121及びY194に変異を有する追加変異Supp7に対して低い結合性を有していた。
【0294】
抗体NKp46-3は、残基I135及びS136に変異を有する変異体19に対して低い結合性を有していた。同様に、NKp46-1はまた、残基P132及びE133に変異を有する追加変異Supp8に対して低い結合性を有していた。
【0295】
抗体NKp46-4は、残基R101及びV102に変異を有する変異体6に対して低い結合性を有していた。同様に、NKp46-1はまた、残基E104及びL105に変異を有する追加変異Supp6に対して低い結合性を有していた。
【0296】
この試験では、本発明者らは、抗NKp46抗体(NKp46-1、NKp46-3、及びNKp46-4)のエピトープを特定した。NKp46-4、NKp46-3、及びNKp46-1のエピトープは、それぞれNKp46のD1ドメイン、D2ドメイン、及びD1/D2接合部にある。R101、V012、E104、及びL105は、NKp46結合性に不可欠の残基であり、NKp46-4のエピトープの一部と定義される。NKp46-1のエピトープは、K41、E42、E119、Y121、及びY194残基を含む。NKp46-3のエピトープは、P132、E133、I135、及びS136残基を含む。
【0297】
表題及び副題は、本明細書では便宜のためにのみ使用され、本発明を限定すると決して一切解釈するべきではない。上述の要素の全ての可能なバリエーションでのあらゆる組み合わせが、本明細書に特段の記載がない限り、又は文脈から他の旨である場合を除き、本発明に包含される。本明細書で述べられた値の範囲は、本明細書に特段の記載がない限り、範囲内に含まれるそれぞれの別個の値について個々に述べられる省略方法の役割を単に果たすものであり、それぞれの別個の値は、本明細書で個々に述べられたかのように本明細書に包含される。特段の記載がない限り、本明細書に記載される全ての正確な値は、対応するおおよその値を代表する(例えば、特定の因子又は測定値に関して記載される全ての正確な例示的な値は、適切な場合は「約」によって変更される、対応するおおよその測定値を示すものと見なすことができる)。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書に特段の記載がない限り、又は文脈から他の旨である場合を除き、任意の適切な順序で行うことができる。
【0298】
本明細書に記載されるあらゆる例又は例示的な語(例えば、「~など」)の使用は、単に本発明をより明確にするためのものであり、特段の記載がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。明確な記載がない限り、いずれの要素も本発明の実施に不可欠であることを示すと解釈される語は本明細書には存在しない。
【0299】
語、例えば、1つ又は複数の要素を指す語を用いた、本発明の任意の態様又は実施形態の本明細書の説明は、特段の記載がない限り、又は文脈から明確に他の旨である場合を除き、その1つ又は複数の特定の要素「からなる」、「から実質的になる」、又は「を実質的に含む」本発明の同様の態様又は実施形態を支援するためである(例えば、特定の要素を含むとして本明細書に記載される組成物は、特段の記載がない限り、又は文脈から明確に他の旨である場合を除き、その要素からなる組成物の記載でもあることを理解されたい)。
【0300】
本発明は、適用される法律によって許容される最大程度まで、本明細書に記載される態様又は請求項で述べられる主題の全ての変更形態及び均等物を含む。
【0301】
本明細書で述べられる全ての刊行物及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物又は特許出願が、参照により含められると具体的且つ個別に示されたかのように、参照によりそれらの全内容が本明細書に組み入れられる。
【0302】
前述の発明は、理解を明確にするために例示及び例によってある程度詳細に説明されたが、当業者であれば、添付の特許請求の趣旨又は範囲から逸脱することなく、特定の変形形態及び変更形態をなし得ることが本発明の教示から明白であろう。
【配列表】